説明

半導体装置

【課題】 ダマシン配線構造体を有する半導体装置において、シールリングと配線あるいは電極パッドとの短絡発生を無くする。
【解決手段】 半導体装置の層間絶縁膜の溝側壁に形成され導電性のバリア材料膜から成る上層バリア層4、溝内に埋め込まれ配線材料膜から成るたとえば10μm幅の上層シールリング配線5が設けられ、上層シールリング配線5内に混在して複数の島状の絶縁体6が形成されている。この島状の絶縁体6は、上記ダマシン配線が形成される層間絶縁膜により形成される。そして、素子形成領域に第1上層溝配線7、第2上層溝配線8等が配設され、上層バリア層4がその周囲に設けてある。ここで、上層シールリング配線5および両上層配線は共に(デュアル)ダマシン配線構造になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に係り、詳しくは、ダマシン配線構造体を有する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を構成する素子の微細化は、半導体装置の高性能化にとって最も有効であり、現在、その寸法の設計基準は65nmから45nmに向けて技術開発が精力的に進められている。また、上記微細な構造を有する半導体装置の高性能化においては、素子間を接続する配線の低抵抗化および配線の寄生容量の低減化のために、微細加工で溝が形成された層間絶縁膜上に銅(Cu)膜等の配線材料膜を堆積し、溝内に埋め込まれた部分以外にある上記配線材料膜を化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)により除去する、いわゆるダマシン法で形成する溝配線、すなわちダマシン配線が必須になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記ダマシン配線の形成では、層間絶縁膜の材料としてシリコン酸化膜に代わり、それより比誘電率が低くなる、いわゆる低誘電率膜の絶縁膜材料が必須である。そして、層間絶縁膜の低誘電率化を推し進めるためには、低誘電率膜の多孔質化が必要になってくる。ここで、低誘電率膜とは二酸化シリコン膜の比誘電率3.9以下の絶縁膜のことをいう。
【0004】
しかし、低誘電率膜は一般に膜密度が低く吸湿性あるいは透湿性が高くなるために、低誘電率膜への水分の進入を防止することが必要になる。この水分の僅かな浸入により、低誘電率膜の比誘電率の増加、ダマシン配線の信頼性の低下等が生じるようになるからである。そこで、半導体チップの周縁部に沿い配線層を構成する材料で成る隔壁(シールリング)を設けることが一般的になってきた(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
以下、従来のシールリングについて図6〜9を参照して説明する。図6は半導体ウエハ上に2次元配列している半導体チップの平面図、図7は半導体チップの周縁部の一部拡大図、図8はシールリング部の断面図、図9はシールリング部の製造工程別素子断面図である。
【0006】
図6に示すように、半導体チップ101の周縁部、詳細には半導体チップのダイシングラインに沿い素子形成領域を囲うようにしてシールリング102が形成される。その一部拡大領域103は図7に示すようになる。シールリング102は、素子形成領域の配線およびビアプラグを構成する導電体材料が多層に積層し接合して構成される。図7はダマシン配線から成る最上層の配線を示す。シールリング102では、半導体装置の層間絶縁膜の溝側壁に形成された導電性のバリア材料膜から成る上層バリア層104、溝内に埋め込まれた銅等の配線材料膜から成る上層シールリング配線105が設けられ、素子形成領域には第1上層溝配線106、第2上層溝配線107が配設され、上層バリア層104がその周囲に設けてある。ここで、上層シールリング配線105および両上層配線は共に(デュアル)ダマシン配線構造になっている。
【0007】
上記のシールリング102領域の断面構造は図8に示すようになる。図8は、図7のX−Xの矢視断面図である。図8に示すように、シリコン基板108上にシリコン酸化膜から成る下地絶縁膜109が形成され、半導体チップ周縁部の下地絶縁膜109の所定の領域に、シリコン基板108表面に達するシールリング用コンタクト孔110が設けられている。ここで、シールリング用コンタクト孔110は、図6に示したように半導体チップ101の周縁部を一周するように形成してある。そして、シールリング用コンタクト孔110にはタングステン(W)等の導電体で成るシールリングコンタクトプラグ111が充填されている。同様に、素子形成領域のシリコン基板108表面に形成された拡散層、ゲート電極(不図示)に達するコンタクト孔112が設けられ、コンタクト孔112にはタングステン等の導電体で成るコンタクトプラグ113が充填されている。
【0008】
そして、半導体装置の下層のダマシン配線のために、第1エッチングストッパ層114a、第1低誘電率膜114b、第1キャップ層114cが積層して形成され、これらの積層膜が第1層間絶縁膜114を構成し、その所定の領域に設けられたシールリング用溝に下層バリア層115と下層シールリング配線116が形成されシールリングコンタクトプラグ111に接合している。ここで、下層シールリング配線116はダマシン配線構造であり、その線幅は10μm程度になる。同様に、第1層間絶縁膜114の所定の領域に設けられた配線用溝に下層バリア層115と第1下層溝配線117、第2下層溝配線118が形成され、それぞれのコンタクトプラグ113に電気接続している。ここで、両下層溝配線の線幅は0.1μm程度になる。また、第1低誘電率膜114bは、比誘電率が2.0程度の多孔質のメチルシルセスキオキサン(p−MSQ:Porous Methyl Silsesquioxane)膜であり、第1エッチングストッパ層114a、第1キャップ層114cは、炭化珪素(SiC)膜、炭素含有シリコン酸化膜(SiOC膜)のような比誘電率が3程度になる絶縁膜である。
【0009】
次に、第2エッチングストッパ層119a、第2低誘電率膜119b、第2キャップ層119cが積層して第2層間絶縁膜119が形成され、更に、第3エッチングストッパ層120a、第3低誘電率膜120b、第3キャップ層120cの積層した第3層間絶縁膜120が形成されている。そして、上記第2層間絶縁膜119と第3層間絶縁膜120にシールリング用溝が形成され、デュアルダマシン配線構造になる上層シールリング配線105が、上記下層シールリング配線116に接合して上層バリア層104と共に設けられている。同様に、第2層間絶縁膜119と第3層間絶縁膜120にデュアルダマシン配線構造の第1上層溝配線106が、第3層間絶縁膜120にダマシン配線構造の第2上層溝配線107が、それぞれ上層バリア層104と共に形成されている。ここで、第2低誘電率膜119b、第3低誘電率膜120bは、比誘電率が2.0程度のp−MSQ膜であり、第2エッチングストッパ層119aと第3エッチングストッパ層120a、第2キャップ層119cと第3キャップ層120cは、SiC膜、SiOC膜のような比誘電率が3程度になる絶縁膜である。
【0010】
そして、全面を被覆するように、SiC膜あるいはSiOC膜から成る第4エッチングストッパ層121およびシリコン酸窒化(SiON)膜から成るパッシベーション膜122が形成されている。
【0011】
この従来例では、上記のシールリングコンタクトプラグ111、下層シールリング配線116、上層シールリング配線105がシールリング102を構成する。このシールリング102は、上記のような下層シールリング配線と上層シールリング配線の2層構造に限られるものでなく、互いに接合する2層以上の多層構造でも同様に形成される。
【0012】
しかし、上記従来例のようなシールリング102が(デュアル)ダマシン配線構造に形成された場合には、図7に示すように、半導体チップ101の一部領域においてシールリング102と素子形成領域の溝配線あるいは溝構造の電極パッド(不図示)とのブリッジ領域123がある頻度で生じることが判ってきた。以下、この問題について図9に基づいて説明する。図9は、図7のX−X矢視断面図である。図9において図8と同じものは同一符号を附している。
【0013】
図9(a)に示すように、半導体ウエハのシリコン基板108上に周知の化学気相成長(CVD)法でシリコン酸化膜を堆積させ、CMP法による表面平坦化を行い、下地絶縁膜109を形成する。公知のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術とで所望の領域に、シールリング用コンタクト孔110、コンタクト孔112を形成し、これらのコンタクト孔にチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)およびタングステン等を充填して、シールリングコンタクトプラグ111およびコンタクトプラグ113を形成する。
【0014】
続いて、第1エッチングストッパ層114a、第1低誘電率膜114b、第1キャップ層114cから成る第1層間絶縁膜114を、CVD法およびスピン塗布法を用いて形成する。そして、公知のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術とで、第1キャップ層114c、第1低誘電率膜114bおよび第1エッチングストッパ層114aを順次にエッチングし、パターン幅が10μm程度の下層シールリング用溝124、パターン幅が0.1μm程度の第1下層配線用溝125および第2下層配線用溝126を形成する。そして、全面に窒化タンタル(TaN)のようなバリア材料膜127をスパッタリング(PVD)法で堆積し、更に、メッキ法等を用いてCu膜のような配線材料膜128を成膜する。
【0015】
次に、図9(b)に示すように、第1キャップ層114c上の不要な部分の配線材料膜128およびバリア材料膜127を除去しダマシン配線構造の下層配線を形成するために、順次に上記配線材料膜128およびバリア材料膜127のCMPを行う。しかし、シールリング用溝124の幅は後述するように10μm程度と大きくなるために、上記CMPの工程において、下層シールリング配線116表面においていわゆるディッシングと呼ばれる配線窪み129が生じる。そして、このディッシングが生じてくると、このCMP工程において、下層シールリング配線116周辺の第1層間絶縁膜114表面に対しCMPの研磨パッドからの局所的な高い研磨圧力が加わり、その領域にエロージョンが発生して絶縁膜窪み130が形成されるようになる。
【0016】
そして、図9(c)に示すように、上記のディッシングの生じた下層シールリング配線116、一部でエロージョンの生じた第1層間絶縁膜114上に第2エッチングストッパ層119a、第2低誘電率膜119b、第2キャップ層119cから成る第2層間絶縁膜119を形成し、続いて、第3エッチングストッパ層120a、第3低誘電率膜120b、第3キャップ層120cの積層した第3層間絶縁膜120を上記第2層間絶縁膜119上に設けることになる。そして、公知のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術とで、上記第2層間絶縁膜119と第3層間絶縁膜120にデュアルダマシン構造の上層シールリング用溝131および第1上層配線用溝132を、第3層間絶縁膜120に第2上層配線用溝133を形成する。ここで、上記エロージョンにより第1層間絶縁膜114の一部に生成した絶縁膜窪み130の上部では、第3層間絶縁膜120の表面位置は、エロージョンの生じていない他の領域の第3層間絶縁膜120の表面位置より窪んでしまう。
【0017】
そして、その後のダマシン配線構造の上層配線の形成のために、導電性のバリア材料膜と配線材料膜の成膜およびCMPを行うと、上記絶縁膜窪み130上のバリア材料膜と配線材料膜はCMP除去できないで残存するようになり、これが図7で説明したブリッジ領域123になる。
【特許文献1】特開平2−278822号公報
【特許文献2】特開20002−353307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
半導体装置の層間絶縁膜に低誘電率膜を用いる場合、上述したようなシールリングの形成が必要であり、このシールリングの幅は、半導体装置の65nm〜45nmと微細な素子寸法に比し10μm程度と非常に大きくなる。これは、ダマシン配線構造体を形成するためのCMP工程、あるいは半導体チップのダイシング工程において生じ易くなる低誘電率膜のクラックを回避するために必要となるからである。なお、このクラックが生じると上述したように低誘電率膜に水分が浸入し問題を生じさせる。このクラックの発生は、低誘電率膜の低誘電率化と共に生じ易くなる。これは、低誘電率化で層間絶縁膜の機械的強度が不可避的に低減するからである。また、ダマシン配線構造体の多層化、半導体チップ面積の増加と共に上記クラックは発生し易くなる。これらのために、半導体装置の素子構造が微細化しても、上記シールリング幅の微細化は進まない。
【0019】
そこで、少なくともその一部がダマシン配線構造になる上記のようなシールリング102を形成すると、シ−ルリング102に近接する溝配線あるいは電極パッドとの間にブリッジ領域123がある頻度で発生するようになる。このようなブリッジ領域が生じると、素子形成領域の溝配線あるいは電極パッドはシールリング102に電気的に短絡し、半導体装置の上記溝配線あるいは電極パッドが機能しなくなる。そして、半導体装置の製造工程において良品の半導体チップが低減し半導体装置の歩留まりが低下するという問題が生じる。しかも、このブリッジ領域の発生は、ダマシン配線が多層化すると共に更に顕著になってくる。
【0020】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、半導体装置のシールリング部において上述したブリッジ領域の発生を根本的に解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、半導体装置にかかる発明は、半導体基板上に半導体素子と配線層と複数の層間絶縁膜層とを有する半導体装置において、前記半導体素子周辺を囲うように配設されるシールリングが、前記配線層を構成する導電体材料によりダマシン配線構造に形成され、前記導電体材料で成るシールリングの所定の領域に島状の絶縁体材料が配置されている構成となっている。
【0022】
上記発明において、好ましくは、前記島状の絶縁体材料は、前記シールリングにおいて前記半導体素子の形成領域側に偏在している。また、前記島状の絶縁体材料は、前記層間絶縁膜層を構成する絶縁膜材料で成る。
【0023】
上記の発明において、前記シールリングは互いに接合する上層のダマシン配線構造体と下層のダマシン配線構造体の多層構造に形成され、前記上層のダマシン配線構造体の所定の領域に設けられた島状の絶縁体材料と、前記下層のダマシン配線構造体の所定の領域に設けられた島状の絶縁体材料とが重畳して配置されている。あるいは、前記シールリングは互いに接合する上層のダマシン配線構造体と下層のダマシン配線構造体の多層構造に形成され、前記上層のダマシン配線構造体の所定の領域に設けられた島状の絶縁体材料と、前記下層のダマシン配線構造体の所定の領域に設けられた島状の絶縁体材料とが重畳することなく配置され形成されている。
【0024】
そして、好ましくは、前記島状の絶縁体材料の平面上パターンが矩形状である。あるいは、前記島状の絶縁体材料の平面上パターン寸法が0.5μm以上になっている。
【発明の効果】
【0025】
本発明の構成によれば、ダマシン配線構造体を有する半導体装置において、ダマシン配線構造を含んだシールリングとシールリングに近接する溝配線あるいは電極パッドとの間で生じる電気的な短絡は皆無になり、上記半導体装置の歩留まりが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。この説明において全図に共通するものには共通する符号を附す。図1は半導体ウエハ上に2次元配列している半導体チップの平面図、図2は半導体チップ周縁部の一部拡大図、図3は本発明のシールリング部の断面図、図4は本発明のシールリング部の製造工程別素子断面図である。
【0027】
図1に示すように、半導体チップ1の周縁部に沿い素子形成領域を囲うようにしてシールリング2が形成される。その一部拡大領域3は図2に示す。この実施形態のシールリング2は、従来の技術で説明したのと同様に半導体装置の配線およびビアプラグを構成する材料が多層に積層し接合して構成される。図2はダマシン配線から成る最上層の配線を示す。
【0028】
従来の技術で説明したのと同様に、半導体装置の層間絶縁膜の溝側壁に形成され導電性のバリア材料膜から成る上層バリア層4、溝内に埋め込まれ配線材料膜(以上、導電体材料)から成るたとえば10μm幅の上層シールリング配線5が設けられている。そして、上層シールリング配線5内に混在して複数の島状の絶縁体6(絶縁体材料)が形成されている。ここで、それぞれの島状の絶縁体6は平面形状が矩形であり、その寸法は0.5μm以上になることが好ましい。この島状の絶縁体6は、後述するが上記層間絶縁膜で構成される。そして、素子形成領域に第1上層溝配線7、第2上層溝配線8等が配設され、上層バリア層4がその周囲に設けてある。ここで、上層シールリング配線5および両上層配線は共に(デュアル)ダマシン配線構造になっている。
【0029】
本実施形態のシールリング部の断面構造は図3に示すようになる。図3は、図2のA−Aの矢視断面図である。図3に示すように、シリコン基板9上にシリコン酸化膜から成る下地絶縁膜10が形成され、半導体チップ周縁部の下地絶縁膜10の所定の領域に、シリコン基板9表面に達するシールリング用コンタクト孔11が設けられている。ここで、シールリング用コンタクト孔11は、図1に示したように半導体チップ1の周縁部を一周するように形成される。このシールリング用コンタクト孔11にはタングステン等の導電体で成るシールリングコンタクトプラグ12が充填されている。同様に、素子形成領域のシリコン基板9表面に形成された拡散層、ゲート電極(不図示)に達するコンタクト孔13が設けられ、コンタクト孔13にタングステン等の導電体で成るコンタクトプラグ14が充填されている。
【0030】
そして、従来の技術で説明したのと同様にして、半導体装置の下層のダマシン配線のために、第1エッチングストッパ層15a、第1低誘電率膜15b、第1キャップ層15cが積層した第1層間絶縁膜15が形成され、その所定の領域に設けられた下層シールリング用溝16に下層バリア層17と下層シールリング配線18が形成され、シールリングコンタクトプラグ12に接合されている。そして、下層シールリング用溝16内にたとえば直方体構造の島状の下層絶縁体19が配置されている。ここで、島状の下層絶縁体19は、第1層間絶縁膜15を構成する絶縁体材料で成る。ここで、下層シールリング配線18はダマシン配線構造になっている。
【0031】
同様にして、第1層間絶縁膜15の所定領域の配線用溝に下層バリア層17と第1下層溝配線20、第2下層溝配線21が形成され、それぞれのコンタクトプラグ14に電気接続されている。ここで、両下層溝配線の線幅は0.1μm程度である。そして、第1低誘電率膜15bは、比誘電率が2.0程度のp−MSQ膜であり、第1エッチングストッパ層15a、第1キャップ層15cは、SiC膜、SiOC膜のような絶縁膜である。
【0032】
次に、第2エッチングストッパ層22a、第2低誘電率膜22b、第2キャップ層22cの積層した第2層間絶縁膜22が形成され、更に、第3エッチングストッパ層23a、第3低誘電率膜23b、第3キャップ層23cの積層した第3層間絶縁膜23が形成されている。そして、上記第2層間絶縁膜22と第3層間絶縁膜23にデュアルダマシン構造の上層シールリング用溝24が形成され、デュアルダマシン配線構造になる上層シールリング配線5が、上記下層シールリング配線18に接合して上層バリア層4と共に設けられている。そして、上層シールリング用溝24内にたとえば直方体構造の島状の上層絶縁体25が混在して形成されている。島状の上層絶縁体25は、第3層間絶縁膜23を構成する絶縁体材料で成り、上述した島状の下層絶縁体19に重畳するパターン配置になっている。
【0033】
そして、第2層間絶縁膜22と第3層間絶縁膜23にデュアルダマシン配線構造の第1上層溝配線7が第1下層溝配線20に電気接続して形成され、第3層間絶縁膜23にダマシン配線構造の第2上層溝配線8が上層バリア層4と共に形成されている。ここで、第2低誘電率膜22b、第3低誘電率膜23bは、比誘電率が2.0程度のp−MSQ膜であり、第2エッチングストッパ層22aと第3エッチングストッパ層23a、第2キャップ層22cと第3キャップ層23cは、SiC膜、SiOC膜のような絶縁膜である。
【0034】
そして、全面を被覆するように、SiC膜あるいはSiOC膜から成る第4エッチングストッパ層26およびSiON膜から成るパッシベーション膜27が形成されている。
【0035】
次に、本実施形態のシールリングの製造方法について図4を参照して説明する。図4は、図2のA−A矢視断面における工程別素子断面図である。図4において図3と同じものは同一符号を附している。
【0036】
図4(a)に示すように、従来の技術で説明したのと同様に、半導体ウエハのシリコン基板9上に周知のCVD法でシリコン酸化膜を堆積させ、CMP法による表面平坦化を行い、下地絶縁膜10を形成する。公知のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術とで所望の領域に、上述したようなシールリング用コンタクト孔11、コンタクト孔13を形成し、これらのコンタクト孔にチタン、窒化チタンおよびタングステン等を充填して、シールリングコンタクトプラグ12およびコンタクトプラグ14を形成する。
【0037】
続いて、第1エッチングストッパ層15a、第1低誘電率膜15b、第1キャップ層15cから成る第1層間絶縁膜15を、CVD法およびスピン塗布法を用いて形成する。そして、公知のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術とで、第1キャップ層15c、第1低誘電率膜15bおよび第1エッチングストッパ層15aを順次にエッチングし、線幅が10μm程度の下層シールリング用溝16、たとえば平面寸法が0.5μm〜1μm程度の矩形状で島状の下層絶縁体19、線幅が0.1μm程度の第1下層配線用溝28および第2下層配線用溝29を形成する。そして、全面に窒化タンタルのようなバリア材料膜30をPVD法で堆積し、更に、メッキ法等を用いてCu膜のような配線材料膜31を成膜する。
【0038】
次に、図4(b)に示すように、第1キャップ層15c上の不要な部分の配線材料膜31およびバリア材料膜30を除去するために、順次に上記配線材料膜31およびバリア材料膜31のCMPを行う。そして、下層シールリング配線18、第1下層溝配線20、第2下層溝配線21を形成する。このCMPの工程においては、上述したようにシールリング用溝16の幅は10μm程度と大きいが、島状の下層絶縁体19が存在するために、下層シールリング配線18上において従来の技術で生じていたディッシングは起こらない。そして、このCMP工程において、下層シールリング配線18周辺の第1層間絶縁膜15表面に対してエロージョンが発生することもない。
【0039】
このようにした後、図4(c)に示すように、表面が同一平面になる、下層シールリング配線18、島状の下層絶縁体19、第1層間絶縁膜15、第1下層溝配線20および第2下層溝配線21上に、上述した第2エッチングストッパ層22a、第2低誘電率膜22b、第2キャップ層22cから成る第2層間絶縁膜22を形成し、続いて、第3エッチングストッパ層23a、第3低誘電率膜23b、第3キャップ層23cの積層した第3層間絶縁膜23を上記第2層間絶縁膜22上に設ける。そして、公知のフォトリソグラフィ技術とドライエッチング技術とで、上記第2層間絶縁膜22と第3層間絶縁膜23に上層シールリング用溝24、第1上層配線用溝32、第2上層配線用溝33を形成する。そして、全面に窒化タンタルのようなバリア材料膜をPVD法で堆積し、更に、メッキ法等を用いてCu膜のような配線材料膜を成膜し、第3キャップ層23c上の不要な部分の配線材料膜およびバリア材料膜をCMPで除去する。このようにして、上層バリア層4と共に、上層シールリング配線5、第1上層溝配線7、第2上層溝配線8を形成する。ここで、上層シールリング配線5は下層シールリング配線18に接合し、第1上層溝配線7は第1下層溝配線20に電気接続する。
【0040】
そして、第4エッチングストッパ層26およびパッシベーション膜27をCVD法で成膜し図3に示すダマシン配線構造体を有しシールリングの形成された半導体装置が完成する。
【0041】
次に、本発明の実施形態の別の変形例について図5を参照して説明する。この例は、シールリング2において上述した島状の下層絶縁体19と島状の上層絶縁体25とのパターン配置に位置ズレが生じるようになっている。ここで、その他は図2で説明したのと同じ構造である。半導体装置の層間絶縁膜の溝側壁に形成されバリア材料膜から成る上層バリア層4、溝内に埋め込まれ配線材料膜から成るたとえば10μm幅の上層シールリング配線5が設けられる。そして、上層シールリング配線5内に混在して複数の島状の上層絶縁体25が、図3で説明した下層シールリング配線18に設けた島状の下層絶縁体19のパターン配置に重なることのないように形成されている。この場合も、それぞれの島状の絶縁体6は平面形状が矩形であり、その寸法は0.5μm以上であり好ましくは1.0μmになることが好ましい。
【0042】
上述した好適な実施形態により、ダマシン配線構造体を有する半導体装置において、ダマシン配線構造を含んだシールリングとこのシールリングに近接する溝配線あるいは電極パッドとの間で生じていた電気的に短絡は皆無になり、半導体装置の歩留まりが向上する。また、この実施形態により、シールリングの幅を広くしても、上記のディッシングに起因のブリッジ領域の発生はなく、シールリング幅を広くすることできる。そして、上述したような層間絶縁膜のクラック発生による低誘電率膜への水分の浸入をなくすることができる。また、半導体装置においてダマシン配線の多層化も容易になる。更には、ダマシン配線構造体の層間絶縁膜の低誘電率化が容易になり、半導体装置の高速化が促進される。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0044】
例えば、島状の絶縁体の平面形状は矩形以外にも種々の形態がある。図2,5では、その平面形状が正方形になる場合について示しているが、その他に円形、楕円形、任意の閉曲線で囲まれる形状の場合でも本発明は適用できる。また、シールリングが、ダマシン配線構造と非ダマシン配線構造の重層構造の場合でも同様に適用できる。そして、シールリングが2層以上の多層構造に形成される場合でも同様に適用できる。
【0045】
また、本発明の島状の絶縁体としては、上述したようなダマシン配線を形成する層間絶縁膜の他に、シールリングを形成する領域の層間絶縁膜上に薄いシリコン窒化膜のようにCMP工程での研磨耐性の高い絶縁膜を積層したものを用いてもよい。
【0046】
また、本発明のシールリングにおいて、下層シールリング配線と上層のシールリング配線のような配線およびビアプラグを構成する導電体材料が多層に積層し接合する場合に、これらの接合部は必ずしも電気的に接続する必要はなく、吸湿性あるいは透湿性の低いシリコン窒化膜あるいはシリコン酸窒化膜のような絶縁膜がそれらの間に介在していてもよい。
【0047】
また、本発明の低誘電率膜としては、p−MSQ膜と同様に、シロキサン骨格を有する他の絶縁膜あるいは有機高分子を主骨格とした絶縁膜、更にはこれらを多孔質化した絶縁膜を用いることができる。なお、上記シロキサン骨格を有する絶縁膜には、シルセスキオキサン類の絶縁膜であるSi−CH3結合、Si−H結合、Si−F結合のうち少なくとも1つの結合を含むシリカ膜があり、有機高分子を主骨格とした絶縁膜には、有機ポリマーで成るSiLK(登録商標)がある。そして、シルセスキオキサン類の絶縁膜としてよく知られた絶縁材料には、上記MSQの他、ハイドロゲンシルセスキオキサン(HSQ:Hydrogen Silsesquioxane)、メチレーテッドハイドロゲンシルセスキオキサン(MHSQ:Methylated Hydrogen Silsesquioxane)等がある。
【0048】
また、上述したエッチングストッパ層あるいはキャップ層としては、SiCN膜、SiN膜(シリコン窒化膜)、SiO膜、SiOF膜あるいはSiON膜を用いてもよい。そして、上述したバリア層となるバリア材料膜しては、Ta膜、W膜、WN膜、WSiN膜、Ti膜、TiN膜、TiSiN膜を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態にかかるシールリングを示す半導体チップの平面図である。
【図2】同シールリングを示す半導体チップ周縁部の拡大した平面図である。
【図3】同シールリングを示す半導体チップ周縁部の断面図である。
【図4】同シールリングの製造工程別素子断面図である。
【図5】本発明の実施形態における別の例のシールリングを示す半導体チップ周縁部の拡大した平面図である。
【図6】従来の技術にかかるシールリングを示す半導体チップの平面図である。
【図7】同シールリングを示す半導体チップ周縁部の拡大した平面図である。
【図8】同シールリングを示す半導体チップ周縁部の断面図である。
【図9】同シールリングの製造工程別素子断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 半導体チップ
2 シールリング
3 一部拡大領域
4 上層バリア層
5 上層シールリング配線
6 島状の絶縁体
7 第1上層溝配線
8 第2上層溝配線
9 シリコン基板
10 下層絶縁膜
11 シールリング用コンタクト孔
12 シールリングコンタクトプラグ
13 コンタクト孔
14 コンタクトプラグ
15 第1層間絶縁膜
16 下層シールリング用溝
17 下層バリア層
18 下層シールリング配線
19 島状の下層絶縁体
20 第1下層溝配線
21 第2下層溝配線
22 第2層間絶縁膜
23 第3層間絶縁膜
24 上層シールリング用溝
25 島状の上層絶縁体
26 第4エッチングストッパ層
27 パッシベーション膜
28 第1下層配線用溝
29 第2下層配線用溝
30 バリア材料膜
31 配線材料膜
32 第1上層配線用溝
33 第2上層配線用溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に半導体素子と配線層と複数の層間絶縁膜層とを有する半導体装置において、
前記半導体素子周辺を囲うように配設されるシールリングが、前記配線層を構成する導電体材料によりダマシン配線構造に形成され、前記導電体材料で成るシールリングの所定の領域に島状の絶縁体材料が配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記島状の絶縁体材料は、前記シールリングにおいて前記半導体素子の形成領域側に偏在していることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記島状の絶縁体材料は、前記層間絶縁膜層を構成する絶縁膜材料で成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記シールリングは互いに接合する上層のダマシン配線構造体と下層のダマシン配線構造体の多層構造に形成され、前記上層のダマシン配線構造体の所定の領域に設けられた島状の絶縁体材料と、前記下層のダマシン配線構造体の所定の領域に設けられた島状の絶縁体材料とが重畳して配置されていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記シールリングは互いに接合する上層のダマシン配線構造体と下層のダマシン配線構造体の多層構造に形成され、前記上層のダマシン配線構造体の所定の領域に設けられた島状の絶縁体材料と、前記下層のダマシン配線構造体の所定の領域に設けられた島状の絶縁体材料とが重畳しないように配置されていることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記島状の絶縁体材料の平面上パターンが矩形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記島状の絶縁体材料の平面上パターン寸法が0.5μm以上であることを特徴とする請求項6に記載の半導体装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−5011(P2006−5011A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177259(P2004−177259)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】