説明

半導体装置

【課題】ESD放電経路におけるメタル配線の電流密度の許容値を高くとることが可能であり、また、配線抵抗を小さくすることが可能である半導体装置を提供する。
【解決手段】信号パッド(101)と、電源線(103)と、接地線(104)と、一端が信号パッド(101)と接続されたインダクタ(111)と、インダクタ(111)の他端と電源線(103)または接地線(104)との間に設けられた終端抵抗(112)と、インダクタ(111)の中間の第1位置(Aa)に接続された第1ESD保護素子(ESD_G)と、インダクタ(111)の中間の第1位置(Aa)とは異なる第2位置(Ab)に接続された第2ESD保護素子(ESD_V)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ESD(ElectroStatic Discarge)保護素子を備える半導体装置に関し、特にT−coilを備えたインターフェース回路を構成する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリッジドT−coilによるインピーダンスマッチング技術が知られている(非特許文献1)。ESD保護素子を搭載した高速インターフェース回路では、ESD保護素子の寄生容量や入出力回路の寄生容量がインピーダンス整合性能に影響を及ぼす。特に、高周波数領域で所望のインピーダンス(50Ω)からずれを生じる。このインピーダンスのずれを幅広い周波数帯域で整合させる技術として、つまり、これらの寄生容量をキャンセルする技術として、T−coilによるインピーダンスマッチングがある。
【0003】
図1を用いて、従来のT−coilとESD保護素子とを備えるインターフェース回路の説明を行う。図1は、従来のT−coilとESD保護素子とを備えるインターフェース回路の回路図である。図1のインターフェース回路は、信号入力パッド(INPUT)1と、信号線2と、電源線3と、接地線4と、引出し配線5と、T−coil部10と、終端抵抗12と、ESD保護素子部20と、電源間ESDクランプ回路(Power ESD Clamp)30とを備える。
【0004】
信号入力パッド1は、外部からの信号入力を行うパッドである。信号線2は、信号入力パッド1と接続されて入力信号を伝送する。T−coil部10は、インダクタ部11とキャパシタCbとを備える。インダクタ部10は、インダクタL1、L2を備える。なお、キャパシタCbは、インダクタL1、L2のブリッジ容量である。また、kは、結合係数である。インダクタL1は、一端を信号線2と接続され、インダクタL2は、一端を終端抵抗12と接続される。インダクタL1と、インダクタL2の他端は、センタータップAで接続される。センタータップAには引出し配線5が接続される。引出し配線5は、T−coil部10とESD保護素子部20とを接続する。終端抵抗12は、一端をインダクタ部11と接続され、もう一端を電源線3と接続されている。なお、終端抵抗12は、AC的にGNDである電源線3、接地線4のどちらへ接続されていてもよい。電源線3は、図示されないVDDと接続され、電源電位VDDを供給する。
【0005】
ESD保護素子部20は、一端を配線21を介して接地線4に接続されたESD保護素子ESD_G(以下、ESD_G)と、一端を配線22を介して電源線3と接続されたESD保護素子ESD_V(以下、ESD_V)とを備える。通常、信号入力パッド1から、電源線3、接地線4、の両方への放電経路を確保するため、このように、2つの保護素子が用いられる。ESD_GとESD_Vとは、それぞれ引出し配線5の接続点Bで接続される。また、引出し配線5は、接続点Bに内部回路が接続される。電源間ESDクランプ回路30は、電源線3と接地線4とに接続されており、VDDとGND間のESD放電経路となる。接地線4は、GNDと接続されて接地電位を供給する。なお、r1、r2、r3は、それぞれ、引出し配線5、配線21、並びに配線22を構成するメタル配線の寄生抵抗である。なお、放電経路100は、INPUTにGND供給する接地電位に対して正の電位(Positive)となるようなESDが入力された場合の放電経路である。
【0006】
従来、このようなインターフェース回路において、T−coil部10からESD保護素子部20への引出し配線5は、インダクタ部11のセンタータップAの1箇所で接続されていた(非特許文献2、3)。これは、CMOSプロセスによるT−coil部10のレイアウトに、T−coil部10の設計パラメータ(図1のL1、L2、Cb、k)を正確に反映させるためである。T−coil部10のレイアウトは、次のようにして決定されている。まず、T−coil部10の設計パラメータを算出する。これらのパラメータは、キャンセルするべき容量値C_Total(ESD容量を含む入力回路のゲート容量などの寄生容量)と整合するべきインピーダンス値Rs(図1の例では50Ω)に基づいて算出される。算出されたT−coil部10のパラメータL1、L2、Cb、kを実現するように、メタル配線を渦巻状にレイアウトすることでCMOSプロセスにおいてもT−coil部10を形成可能である。ここで、渦巻状もインダクタ部11のある中間点がセンタータップAとなり、センタータップAの位置でL1とL2のインダクタンス値が決定される。最後に、センタータップAにこの寄生容量成分C_totalを持つノードを接続すると、広い周波数帯域でインピーダンス整合が可能となる。従って、センタータップAの位置とそのA点の1箇所からキャンセルしたい寄生容量成分へ接続するということは、T−coil部10の設計パラメータを正確にレイアウトに反映させるためには重要となる。
【0007】
ここで、T−coil部10の設計パラメータの算出式を示す。図2は、T−coilと終端抵抗を備えたインターフェース回路の回路図である。図2に示すようなT−coilと終端抵抗を備えたインターフェース回路において、T−coilの設計パラメータであるインダクタL1、及びL2のインダクタンス、ブリッジ容量Cb、結合係数kは、次式で表すことができる(非特許文献2)。
【数1】

【0008】
数式(1)において、Cは、ESD容量などを含めたキャンセルすべき寄生容量である。Rは、終端抵抗値である。ζは、特性に応じて用いられる係数である。例えば、ζは、MFD(最大平坦群遅延:Maximally Flat group Delay)を重視するのであれば次の係数を用いる。
【数2】

【0009】
この場合、数式(1)で示された設計パラメータは、次式のとおりとなる。
【数3】

【0010】
なお、上述した数式(1)の詳細な算出方法は、非特許文献4を参照されたい。このように、キャンセルすべき寄生容量C、終端抵抗値R、係数ζを用いてT−coilの設計パラメータを表すことができる。これらの設計パラメータを用いて、例えば、キャンセルすべき寄生容量C=1pF、終端抵抗50Ωとして、上述の条件である入力インピーダンスZinが全周波数で50Ωとなること、また、Vout/IinがMFD(すなわち、ζ=√3/2)となることを実現しようとすれば、次のような値が算出される。
【数4】

【0011】
つまり、これら値を満たすようにインダクタL1、L2およびセンタータップAのレイアウトを決定すれば、幅広い周波数帯域におけるインピーダンス整合を可能にし、ESD保護素子の寄生容量や入出力回路の寄生容量をキャンセルすることができる。
【0012】
なお、図1の従来技術では、単相信号を入力する入力回路の説明を行っているが、T−coil部10へ接続される内部回路は、入力回路だけでなく出力回路であっても適用可能である。また、単相信号ではなく、差動信号を用いた回路にも適用可能である。非特許文献2のfig 10.5.3、および、fig 10.5.4は、ESD保護素子とT−coil備えた差動構成による入力回路、および出力回路を開示している。非特許文献2の差動構成による入出力回路では、信号を入出力する2つの入出力パッドと内部回路の備える2つのトランジスタとの間に、それぞれ、上述したT−coilおよびESD保護素子を備えることで、各入出力に対して幅広い周波数帯域におけるインピーダンス整合とESD耐性とを実現している。
【0013】
また、ESD保護回路とインダクタを備えた半導体装置が、特許文献1、及び特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−173133号公報
【特許文献2】特開2009−064923号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】”40-Gb/s Amplifier and ESD Protection Circuit in 0.18-μm CMOS Technology”, Sherif Galal, Behzad Razavi, IEEE Journal of Solid-State Circuits VOL.39, No.12, December 2004 2389-2396
【非特許文献2】”Broadband ESD Protection Circuits in CMOS Technology”, Sherif Galal, Behzad Razavi, ISSCC 2003, Session10, High Speed Building Blocks, Paper 10.5
【非特許文献3】”Novel T-Coil Structure and Implementation in a 6.4-Gb/s CMOS Receiver to Meet Return Loss Specifications”, Pillai Edward,Weiss Jonas, Electronic Components and Technology Conference, 2007.ECTC’07.Proceedings.57th 147-153
【非特許文献4】”Handbook of Analog Circuit Design”, Dennis Feucht, San Diego, CA;Academic, 1990.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
T−coilとESD保護素子を備えたインターフェース回路を構成する半導体装置における第1の課題は、ESD印加時のESD電流による電圧上昇により、CMOS内部回路が破壊されてしまうことである。CMOSの微細化が進行しており、基盤の下層に形成されるメタル配線の膜厚も薄くなっている。また、薄膜化によって、メタル配線の配線抵抗が大きくなっている。メタル配線のシート抵抗は、0.2Ω/□程度である。一方、微細化された40nmノードのCMOS内部回路のゲート酸化膜のゲート耐圧は、4V程度となっている。このため、例えば、幅1μmで長さ10μmのメタル配線は、そのメタル配線の配線抵抗は2Ωとなり、仮にESD印加時に、3AのESD電流が流れると、IRドロップによる6Vもの電圧上昇が発生する。このような電圧ストレスは、ゲート酸化膜のゲート耐圧の4Vを大きく上回り、微細なCMOS内部回路を容易に破壊してしまう。
【0017】
これには、前述の通り、T−coil部10からセンタータップAの一箇所で配線引出しを行っているため、各ESD保護素子までのメタル配線引き回しが必要となることが影響する。図1で説明したとおり、一般にESD保護素子部20は、VDDと接続されたESD_Vと、GNDと接続されたESD_Gとが必要となる。しかし、T−coil部10からESD保護素子部20への引出し線は、前述の通り1箇所とされているため、2箇所の各ESD保護素子までメタル配線の引き回しが必要となる。そのため、メタル配線経路が複雑になり、メタル配線長を長くせざるを得ない。これにより、各ESD保護素子まで寄生配線抵抗が上昇し、最終的にはESD電流による電圧上昇によるCMOS内部回路の破壊を生じさせてしまう。
【0018】
また、第2の課題は、ESD印加時の放電経路の電流密度が大きくなり、メタル配線が溶断してしまうことである。メタル配線の膜厚は、薄膜化に伴い40nmノードのCMOSプロセスにおいて0.1μm程度まで薄膜化されており、なおも薄膜化傾向は継続している。一方で、ESD印加時に放電経路に流れるESD電流の大きさは変わりない。そのため、ESD印加時における放電経路の電流密度が大きくなり、メタル配線が溶断してしまう。
【0019】
さらに、第3の課題は、上記のような課題を解決しようとするとESD保護素子とT−coilの面積が大きくなってしまうことである。図1の回路において、放電経路100は、信号入力パッド1→L1→r1→ESD_V→r3→PowerESD→GNDとなる。この放電経路100のメタル配線の幅を拡幅することで、電流密度と配線抵抗を下げて、第1、及び第2の課題を解決することが考えられる。しかし、ここでも、T−coil部10からESD保護素子部20への引出し線が1箇所であることが影響する。1箇所のセンタータップAから2箇所のESD保護素子へ引き出し線を引き回す必要があり、メタル配線経路が複雑となりメタル配線長が長くなるため、メタル配線の幅を拡幅すると、一層大きなメタル領域が必要となり、ESD保護素子部20の面積が大きくなってしまう。
【0020】
また、2箇所のESD保護素子への引き出し線の大きなメタル領域のために、T−coil部10を構成する2つのインダクタL1、L2のインダクタンス値のロスが大きくなる。そのため、T−coil設計パラメータを実現するために、より大きなインダクタ領域が必要となる。従って、T−coil部10の面積が大きくなってしまう。前述のとおり、CMOSデバイスの微細化が進んでおり、世代が進むにつれてCMOS回路の面積は縮小されている。一方で、T−coil部10を構成するインダクタやESD保護素子部20は、CMOS微細化の恩恵を受け難いため、面積の縮小という要求も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号および符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号および符号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号および符号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0022】
上記の課題を解決するために、本発明の半導体装置は、T−coilを構成するインダクタ中の異なる2点において、2つのESD保護素子の各々と接続を行う。
【0023】
すなわち、本発明の半導体装置は、信号パッド(101)と、電源線(103)と、接地線(104)と、一端が信号パッド(101)と接続されたインダクタ(111)と、インダクタ(111)の他端と電源線(103)または接地線(104)との間に設けられた終端抵抗(112)と、インダクタ(111)の中間の第1位置(Aa)に接続された第1ESD保護素子(ESD_G)と、インダクタ(111)の中間の第1位置(Aa)とは異なる第2位置(Ab)に接続された第2ESD保護素子(ESD_V)とを備える。
【0024】
これにより、本発明の半導体装置は、T−coilと2箇所のESD保護素子とを近距離で接続して、2つのESD保護素子間を接続する引き回し配線を不要とし、引き出し線の配線長を削減している。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ESD放電経路におけるメタル配線の配線抵抗を小さくでき、電流密度の許容値を高くとることが可能であり、また、ESD保護能力を向上させることが可能である半導体装置を提供することができる。
【0026】
また、本発明によれば、T−coil及びESD保護素子の形成面積を縮小することが可能な半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来のT−coilとESD保護素子とを備えるインターフェース回路の回路図である。
【図2】T−coilと終端抵抗を備えたインターフェース回路の回路図である。
【図3】第1の実施形態におけるT−coilとESD保護素子とを備えたインターフェース回路の回路図である。
【図4】第1の実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
【図5A】第1の実施形態におけるインダクタ部111の第3層の平面構造を示す図である。
【図5B】第1の実施形態におけるインダクタ部111の第2層の平面構造を示す図である。
【図5C】第1の実施形態におけるインダクタ部111の第1層の平面構造を示す図である。
【図5D】第1の実施形態における最下層の配線層と基板との平面構造を示す図である。
【図6】引出し箇所が従来のセンタータップAの1箇所である場合の半導体装置の構造を示す断面図である。
【図7】引出し箇所が従来のセンタータップAの1箇所である場合における最下層の配線層と基板との平面構造を示す図である。
【図8】第2の実施形態における半導体装置の断面図である。
【図9】第2の実施形態における最下層の配線層と基板との平面構造を示す図である。
【図10】第2の実施形態におけるインダクタ部111の第2層の平面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付図面を参照して、本発明の実施形態による半導体装置を以下に説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
はじめに、本発明の第1の実施形態による半導体装置の説明を行う。図3は、本実施形態におけるT−coilとESD保護素子とを備えたインターフェース回路の回路図である。
【0030】
図3のインターフェース回路は、信号入力パッド(INPUT)101と、信号線102と、電源線103と、接地線104と、引出し配線151、152と、T−coil部110と、終端抵抗112と、ESD保護素子部120と、電源間ESDクランプ回路(Power ESD Clamp)130とを備える。
【0031】
信号入力パッド101は、外部との信号入力を行うパッドである。信号線102は、信号入力パッド1と接続されて入力信号を伝送する。T−coil部110は、インダクタ部111とキャパシタCbとを備える。インダクタ部111は、インダクタL1とインダクタL2を備える。なお、キャパシタCbは、インダクタ部111のブリッジ容量である。また、kは、結合係数である。インダクタL1は、一端を信号線102と接続され、インダクタL2は、一端を終端抵抗112と接続される。インダクタ部111は、インダクタL1とインダクタL2との間に、位置の異なるタップノードAaとタップノードAbとを設けている。タップノードAaには、引出し配線151が接続される。タップノードAbには、引出し配線152が接続される。引出し配線151、及び152は、T−coil部110とESD保護素子部120とを接続する。また、Lpとrpは、それぞれタップノードAaとタップノードAbとの間に発生する寄生インダクタンスと寄生抵抗である。終端抵抗112は、一端をインダクタ部111と接続され、もう一端を電源線103と接続されている。なお、終端抵抗112は、AC的にGNDである電源線103、接地線104のどちらへ接続されていてもよい。電源線103は、図示されないVDDと接続され、電源電位VDDを供給する。
【0032】
ESD保護素子部120は、一端を配線121を介して接地線104に接続されて、他端を引出し配線151と接続されたESD保護素子ESD_G(以下、ESD_G)と、一端を配線122を介して電源線103と接続されて、他端を引出し配線152と接続されたESD保護素子ESD_V(以下、ESD_V)とを備える。また、引出し配線151には、内部回路も接続される。なお、内部回路は、引出し配線152と接続されてもよいし、引出し配線151、152の双方に接続されてもよい。
【0033】
電源間ESDクランプ回路130は、電源線103と接地線104とに接続されている。接地線104は、GNDと接続されて接地電位を供給する。なお、r1a、r1b、r2、r3は、それぞれ、引出し配線151、152、配線121、並びに配線122を構成するメタル配線の寄生抵抗である。
【0034】
このように、本実施形態の半導体装置は、T−coil部110のインダクタ部111に設けられた2個所のタップノードAa、AbでESD_V及び、ESD_Gの各々と接続される。2箇所のタップノードから各ESD保護素子へ引出し配線を引き出すことで、従来のセンタータップ1箇所で接続される場合に比べ、T−coil部11とESD保護素子部120とを短い距離で接続することができ、また、一度引出した後にESD_VとESD_Gとの間でメタル配線の引き回す必要が無くなるため、メタル配線長を削減することが可能となる。
【0035】
次に、図4及び図5A〜Dを用いて、本実施形態における半導体装置の構造を説明する。図4は、本実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。また、図5A〜Dは、本実施形態の半導体装置の構造を示す平面図である。図4は、図5A〜Dは記載されたC−C’間における断面図である。
【0036】
本実施形態のT−coil部110のインダクタ部111は多層構造で形成される。以下の説明では、特に3層で形成されたインダクタ部111の説明を行う。しかし、インダクタ部111を形成する層は、3層構造に限らない。インダクタ部111は、より多くの層、あるいは少ない層によって形成されても良い。
【0037】
図4を参照すると、3層構造のインダクタ部111が形成されている。最下層の第1層から、最上層の第3層までインダクタ部111が形成されている。第3層と第2層の一部とによりインダクタL1が形成され、第2層の一部と第1層とによりインダクタL2が形成されている。第2層には、ESD保護素子部120への引出し配線151、152の接続箇所であるタップノードAaとタップノードAbとが設けられている。タップノードAa、Abからは引出し配線として第1層へ伸びるビアが設けられる。ビアは、第1層を介して、基板上に形成されたESD_V、ESD_Gまで到達して、T−coil部110とESD保護素子部120とを接続する。具体的には、引出し配線151によりタップノードAaとESD_Gとが接続され、引出し配線152によりタップノードAbとESD_Vとが接続される。タップノードAaとタップノードAbの位置は、T−coil部110の設計パラメータ、およびインダクタ部111とESD保護素子部120とのレイアウトに基づいて決定される。
【0038】
基板には、ESD保護素子部120とインダクタ部111の面積を削減する目的でインダクタ部111の下層に、ESD_VとESD_Gとが形成されている。基板のESD_Gは、メタル配線121により、T−coil部110の外で最終的に接地線103と接続されており、また、ESD_Vは、メタル配線122により、T−coil部110の外で最終的に電源線104と接続されている。このようにして、インダクタ部111の中間に設けられた2箇所のタップノードAa、Abと、ESD保護素子部120のESD_G、及びESD_Vとが、引出し配線151、152であるビアによって接続される。
【0039】
ここで、図4を参照すると、インダクタ部111において、インダクタL1は上層側(第3層と第2層の一部)に形成され、インダクタL2は下層側(第2層の一部と第1層)に形成されている。このように構成することは、インダクタL1の電流密度に対する許容値を、インダクタL2よりも高い値で確保するために好適である。図4に示すように、一般に、CMOSプロセスの上層配線は、下層配線より厚く形成される。実際には、上層配線は、下層配線に比べて2倍〜8倍程度厚く形成され、通常Cuなどの同一材料を用いているために厚い膜ほど電流密度に対する許容値は高く、配線シート抵抗も小さくなる。図3において、インダクタL2は、終端抵抗112(50Ω)と直列に接続される。これに対して、ESD放電経路(Input→L1→ESD_V→VDD)は、通常、数Ω以下で構成される。そのため、インダクタL2には殆どESD電流が流れることはない。一方、インダクタL1は、常にESD放電経路に含まれる。そのため、インダクタL1の電流密度に対する許容値を、インダクタL2よりも高くとることで、電流密度の許容値以上のESD電流による配線溶断や、ESD電流による電圧上昇を効果的に抑えることができる。そのため、本実施形態の半導体装置では、上層側の厚い配線層でインダクタL1を形成することで、インダクタL1の電流密度の許容値を高くし、かつ、配線の寄生抵抗の値を低減している。
【0040】
次に、図5Aから図5Cは、各層におけるインダクタ部111の平面構造を示す図である。まず、図5Aは、本実施形態におけるインダクタ部111の第3層の平面構造を示す図である。図5Aに示すように、インダクタ部111は、配線層による辺を渦巻状に形成することにより構成される。なお、これは各層とも同様である。第3層は、配線層による辺を9辺備えている。前述のとおり、層の厚さの厚い第3層は、インダクタL1を形成する。第3層の配線層における内側の端にINPUTが接続される。また、配線層における外側の端には、第2層へ伸びるビアが設けられており、ビアを介して第2層と接続される。なお、第3層は、INPUTが外側の端へ接続されて、内側の端からビアを介して第2層と接続されてもよい。これらは、半導体装置のレイアウトに応じて決定されることであり、その場合には、他の配線層における接続も対応して変更される。
【0041】
次に、図5Bは、本実施形態におけるインダクタ部111の第2層の平面構造を示す図である。第2層も第3層と同様に配線層による辺を渦巻状に形成することで構成される。第2層は、8辺を備えている。配線層の外側の端には、第3層からのビアが接続される。配線層の内側の端には、第1層へのビアが形成される。第2層には、配線層の外側の端から第1辺に、タップノードAaが設けられる。また、タップノードAaよりも配線層の内側の端よりである、配線層の外側の端から第3辺にタップノードAbが設けられる。タップノードAaより配線層の外側の端よりがインダクタL1であり、タップノードAbより配線層の内側の端よりがインダクタL2である。このように、インダクタ部111は、タップノードAa、AbによりインダクタL1及びL2に分離されている。また、タップノードAaとタップノードAbの位置には間隔があり、タップノードAaとAbとの間に、寄生抵抗Lpと寄生インダクタンスLpとが発生する。
【0042】
ここで、タップノードAa、及びAbのレイアウトの決定方法を説明する。まず、本実施形態におけるT−coilの設計パラメータは、従来技術と同様に、従来技術の説明で示した数式(1)を用いて算出された設計パラメータを用いる(非特許文献2)。すなわち、T−coilの設計パラメータであるインダクタL1、L2のインダクタンス、ブリッジ容量Cb、及び結合係数kは、数式(1)を用いて算出される。次に、これらの設計パラメータを実現するようにインダクタ部111を形成し、従来技術と同様の手法でセンタータップの位置を求める。さらに、ESD保護性能を高めつつ、各ESD保護素子へ接続を行い易くするために、このセンタータップの位置から、所定の距離を開けた位置にタップノードAaとタップノードAbとの位置を決定する。なお、本実施形態ではタップノードAaとタップノードAbとの間の所定の距離はインダクタ部111を形成する1辺分である。このようにして、本実施形態におけるインダクタ部111におけるタップノードAaとタップノードAbとがレイアウトされる。
【0043】
本実施形態では、上述の通り、タップノードAaとAbとが距離を開けてレイアウトされるため、タップノードAaとAbとの間に寄生抵抗rpと寄生インダクタンスLpが発生する。この、タップノードAaとAbとの間に形成される寄生抵抗rpと寄生インダクタンスLpによるインダクタL1、L2のインダクタンスへの影響を考える。本実施形態では、多層構造によりインダクタが形成されており(マルチレイヤインダクタ)、各層2巻のレイアウトでインダクタ部111を形成している。本実施形態では、タップノードAaとAbとを約1辺分あけて設けているため、インダクタL1とL2は、後述する第1層を含めて、25辺で形成されている。そのため、タップノードAaとAbとを1辺分を引き離して設けたとしても、所望のパラメータであるインダクタL1、及びL2のインダクタンスへの影響は、1/25=4%程度となり、回路特性への影響は無視することができる。
【0044】
次に、図5Cは、本実施形態におけるインダクタ部111の第1層の平面構造を示す図である。第1層も第3層、第2層と同様に配線層による辺を渦巻状に形成することで構成される。第1層は、8辺を備えている。配線層の内側の端には、第2からのビアが接続されている。配線層の外側の端は、図示されない終端抵抗112と接続される。前述のとおり、層の厚さが薄い第1層には、インダクタL2が形成され、第1層の配線層の外側の端が、インダクタL2の端となる。また、第2層のタップノードAaとAbと対応する位置に、引出し配線151、152の経路となる配線層の島が設けられる。島は、第1層のインダクタL1とは接触されないように設けられており、第2層の各タップノードからのビアと、基板上のESD_G、ESD_Vへ到達するビアとを、それぞれ接続している。
【0045】
図5Dは、本実施形態における最下層の配線層と基板との平面構造を示す図である。基板には、ESD_VとESD_Gとが形成されている。また、最下層に位置する配線層として、図示されない接地線104へ接続される配線121と、図示されない電源線103へ接続される配線122とが形成されている。ESD_Gは、図示されないビアを介して配線121と接続される。ESD_Vは、図示されないビアを介して配線122と接続される。また、ESD_Gの第1層における島に対応する位置には、第2層から伸びる引出し配線151であるビアが接続される。同様に、ESD_Vの第1層における島に対応する位置には、第2層から伸びる引出し配線152であるビアが接続される。これらビアによって、ESD_GとタップノードAa、及びESD_VとタップノードAbとが接続される。
【0046】
このようにして、本実施形態の半導体装置は、3層で形成されたインダクタ部111において、第2層の異なる位置に設けられたタップノードAa及びタップノードAbと、基板に形成されたESD_VとESD_Gとを、引出し配線151、152であるビアにより接続することで、ESD_G及びESD_Vの間に引き回し配線を形成する必要がない。ビアを用いて、引出し配線151、152をインダクタ部111の上層部分から基板上に形成されたESD保護素子部120の下層へと、ESD電流経路が上下に流れるようにレイアウトすることには大きな利点がある。電流経路を上下方向にすることで特に微細CMOSで薄膜化された配線においては、電流密度の許容値を高くし、また、寄生抵抗r1a、rabの値を小さくすることができる。これは、配線の電流密度の許容値、および寄生配線抵抗は、電流が流れる断面積に依存し、断面積が大きい場合は電流密度の許容値が高く、単位長さあたりの寄生配線抵抗は小さくなるからである。微細化に伴い配線が薄くなり配線膜厚は0.1μm程度である。一方、インダクタL1、L2は10μm程度の幅でレイアウトされる。電流を水平方向に流した場合、配線幅を10μmとすると、断面積は、0.1μm×10μm=1μmとなる。一方、電流を上下方向に流した場合は、10μm×10μm=100μmとなり、100倍の断面積、つまり、100倍の電流密度を許容でき、100分の1の寄生抵抗値が実現できる。
【0047】
ここで、図6及び図7を用いて、図1のような従来の引出し箇所がセンタータップAの1箇所である場合に、本実施形態と同様のレイアウトによりインダクタ部10とESD保護素子部20を構成した場合を考えてみる。図6は、引出し箇所が従来のセンタータップAの1箇所である場合の半導体装置の構造を示す断面図である。また、図7は、引出し箇所が従来のセンタータップAの1箇所である場合におけるESD保護素子部20のある最下層の配線層と基板との平面構造を示す図である。図6は、図7のC−C’における断面図である。
【0048】
図6を参照すると、インダクタ部11の第2層に設けられたセンタータップAから第1層を介して基板に形成されたESD_Vへ到達する引出し配線5であるビアが形成されている。このビアは、センタータップAとESD_Vとを接続する。また最下層の配線層には、ESD_VとESD_Gとを接続する引き回し配線5が形成されている。センタータップAとESD_Vとを接続するビアは、この引き回し配線と接続されている。このようにして、センタータップAと、ESD_V及びESD_Gは接続される。この引出し配線5は、図1のおけるr1に相当し、ESD電流は水平方向に流れることになり、図7のように幅の広い配線でレイアウトする必要が生じる。この幅が広く、面積の大きい配線が、インダクタL1、L2の直下にレイアウトされるため、インダクタL1、L2のインダクタンスが大きく減少してしまう。これは、インダクタ部11付近にメタルレイアウトが存在すると磁界が結合しそのため不要な電流が流れるため、インダクタンスのロスが生じるためである。例えば、T−coil10の設計パラメータがインダクタL1=0.45nH、L2=0.42nHであるべきものが、T−coilの下部に引き回し配線5をレイアウトすることで、インダクタL1=0.3nH、インダクタL2=0.15nHとインダクタンス値が大きく減少してしまう。そのため、T−coil設計パラメータのターゲットであるインダクタL1、L2を0.4nH程度にするためには、インダクタをより大きな構造とする必要があり、T−coil部10の面積が増大してしまう。
【0049】
また、引き回し配線を形成する最下層の配線層は、シート抵抗が大きく、電流密度の許容値が低い薄膜のメタルレイヤである。そのため、引き回し配線5は、ESD電流に耐えうる幅広い配線でメタル配線をレイアウトする必要が生じる。図7を参照すると、引き回し配線5が幅広い構造で形成されていることが確認できる。これによって、図1におけるr1の抵抗値が大きくなってしまいESD保護時の電圧上昇、内部破壊を引き起こし、またインダクタ直下のメタル配線の面積が増えることにより、インダクタの性能を劣化させてしまう。
【0050】
これに対して、本実施形態の半導体装置は、3層に形成されたインダクタ部111において、第2層の異なる位置に設けられたタップノードAaとAbと、基板に形成されたESD_VとESD_Gとを接続することで、ESD_VとESD_Gとの間の引き回し配線を形成する必要が無く、引出し配線151、152の配線長を短くすることができる。また、引き回し配線によるインダクタ部111への影響も排除できるため、T−coil部110の面積が増大することもインダクタL1、及びインダクタL2の性能劣化を招くこともない。
【0051】
なお、本実施形態では、インダクタ部111の直下にESD保護素子部120であるESD_G、及びESD_Gをレイアウトする場合を説明した。本実施形態のように、インダクタ部111の直下にESD保護素子部120をレイアウトすることは、T−coil部110及びESD保護素子部120に必要な面積を縮小するために効果的である。しかし、必ずしも、インダクタ部111の直下にESD保護素子部120が配置されなければならないわけではない。ESD保護素子部120のESD_V、あるいはESD_Gの少なくとも一部が、インダクタ部111の形成される範囲と重なるようにレイアウトすることで、T−coil部110及びESD保護素子部120の形成される面積を縮小する効果を得ることができる。
【0052】
また、タップノードAa、及びタップノードAbと基板に形成されたESD_V、及びESD_Gとを接続する引出し配線151、152は、図4に示すビアのようにインダクタ部111の形成される面に対して(あるいは基板に対して)、垂直方向に形成されることが好ましい。引出し配線151、152が、インダクタの形成面に対して垂直に形成されることで、薄膜化された配線を持つCMOSプロセスにおいても電流密度の許容値を向上できそのためESD保護素子部120の性能劣化、インダクタ部111の性能劣化を防止することができる。
【0053】
以上が、本実施形態における半導体装置の説明である。本実施形態の半導体装置は、インダクタ部111に設けられた2箇所のタップノードAa、及びAbにおいてESD保護素子と接続される。そのため、従来のセンタータップAの1箇所で、ESD保護素子と接続を行う場合にくらべ、ESD保護素子間の引き回し配線が不要であり配線長を短くできる。そのため、引出し配線の抵抗値を低く抑えることができ、引出し配線の溶断や、内部素子の破壊を防ぐことができる。
【0054】
また、インダクタ部111は、多層構造で構成されており、層の厚い上層部にインダクタL1を形成し、層の薄い下層部にインダクタL2を形成することにより、ESD電流の放電経路となるインダクタL1の電流密度の許容値を大きくとることができる。
【0055】
また、基板に形成されるESD_V、及びESD_Gは、少なくともその一部がインダクタ部111の形成される範囲と重なるように、好ましくは全てがインダクタ部111の形成される範囲に重なるように形成されるため、T−coil部110とESD保護素子部120の面積を縮小させることができる。
【0056】
さらに、インダクタ部111に設けられたタップノードAaとESD_V、及びタップノードAbとESD_Gとを接続する引出し線151、152をビアにより、電流経路を、インダクタが形成される面に対して垂直に形成されることで、インダクタ部111のインダクタンスL1及びL2のインダクタンスの劣化を防ぐことができる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による半導体装置の説明を行う。本実施形態の半導体装置は、第1の実施形態で説明を行った半導体装置を複数配置する場合において、隣接する半導体装置とGND配線104へ接続する配線121、及びVDD配線103へ接続する配線122を共用することで、図3におけるr2、r3の配線幅を拡幅して、電流密度の許容値を大きくとることができる点に特徴がある。
【0058】
図8は、本実施形態における半導体装置の断面図である。また、図9、図10は、本実施形態の半導体装置の平面図である。図9は、本実施形態における最下層の配線層と基板との平面構造を示す図である。図10は、本実施形態におけるインダクタ部111の第2層の平面構造を示す図である。図8は、図9におけるC−C’の断面図を示している。
【0059】
図8を参照すると、I/Oブロック1〜3が形成されている。各I/Oブロック1〜3は、それぞれ、第1の実施形態で説明を行った半導体装置であり、1つの信号入力端子を構成するブロックを本実施形態ではI/Oブロックと呼ぶ。図8を参照すると、各I/Oブロックは、第1の実施形態と同様に、3層から成る多層構造のインダクタ部111と、最下層に形成される配線層と、基板とを備える。なお、図3の回路を構成する構成要素のうち、本実施形態における発明に直接関係のない構成の説明は、適宜省略される。各I/Oブロックには、インダクタ部111の形成される範囲に重なるように、それぞれESD保護素子部120が形成されている。本実施形態では、各I/Oブロックにおいて、隣接するI/OブロックのESD_V同士、あるいはESD_G同士が、隣り合うように基板に形成されている。つまり、I/Oブロック1のESD_G1とI/Oブロック2のESD_G2とが隣り合い、また、I/Oブロック2のESD_V2とI/Oブロック3のESD_V3とが隣り合うように形成される。図示はしないが、I/Oブロック1に隣接するI/Oブロックが存在する場合は、I/Oブロック1のESD_V1と隣接するI/OブロックのESD_Vxとが隣接するように形成される。同様に、I/Oブロック3に隣接するI/Oブロックが存在する場合は、I/Oブロック3のESD_G3と隣接するI/OブロックのESD_Gxとが隣接するように形成される。
【0060】
また、図10を参照すると、各I/Oブロックのインダクタ部111の第2層では、基板に形成されるESD保護素子部120のレイアウトに対応して、第2層に設けられるタップノードAa同士、及びAb同士を、隣接するI/Oブロック間で、それぞれ隣接するようにレイアウトされる。また、各I/Oブロックでは、インダクタ部111の層の厚い上層側にインダクタL1を形成されて、インダクタL1の電流密度の許容値を高く確保することができる。
【0061】
このように各ESD保護素子をレイアウトすることで、隣接するI/Oブロック間で、最下層の配線層のGND配線104へ接続する配線121、及びVDD配線103へ接続する配線122を共用することができる。図8に示すとおり、I/Oブロック1とI/Oブロック2とは、GND配線104へ接続する配線121を共用している。また、I/Oブロック2とI/Oブロック3とは、VDD配線103へ接続する配線122を共用している。
【0062】
そのため、本実施形態の半導体装置は、GND配線104へ接続する配線121、及びVDD配線103へ接続する配線122の配線幅を広く取ることが可能となる、図9を参照すると、各I/Oブロックの隣接するESD保護素子120が、GND配線104へ接続する配線121、及びVDD配線103へ接続する配線122を共用しており、それぞれの配線幅が広く取られていることが確認できる。このような構成によって、本実施形態の半導体装置は、第1の実施形態と比べると、配線121、及び配線122の配線幅を2倍にすることができる。ここで、配線121は、図3におけるr3であり、配線122は、図3におけるr2である。そのため、放電経路となる電源線103、及び接地線104の電流密度の許容値を高くとることが可能となる。
【0063】
以上が、本実施形態における半導体装置の説明である。なお、この他の部分については、第1の実施形態と同様である。本実施形態の半導体装置は、隣接するI/Oブロックにおいて、ESD保護素子部120のESD_G、ESD_Vをそれぞれ隣り合うようにレイアウトする。このような構成とすることで、隣接するI/Oブロックは、最下層の配線層に形成されるGND配線104へ接続する配線121、及びVDD配線103へ接続する配線122とを共用することができる。そのため、GND配線104へ接続する配線121、及びVDD配線103へ接続する配線122との配線幅を広くとることができ、GND配線へ接続する配線121、及びVDD配線103へ接続する配線122の電流密度の許容値を高くすることができる。また、各I/Oブロックは、第1の実施形態で説明を行った効果と同様の効果を得ることができる。
【0064】
なお、第1、第2の実施形態を通して、いずれの実施形態においても、単相信号を入力する入力回路を用いて説明を行っているが、T−coil部111へ接続される内部回路は、入力回路だけでなく出力回路であっても適用可能である。また、非特許文献2のfig 10.5.3、および、fig 10.5.4に開示されるように、単相信号のみではなく、差動信号を用いた回路にも適用が可能である。
【0065】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 信号入力パッド
2 信号線
3 電源線
4 接地線
5 引出し配線
10 T−coil部
11 インダクタ部
12 終端抵抗
20 ESD保護素子部
21 配線
22 配線
30 電源間ESDクランプ回路
100 放電経路
101 信号入力パッド
102 信号線
103 電源線
104 接地線
110 T−coil部
111 インダクタ部
112 終端抵抗
120 ESD保護素子部
121 配線
122 配線
130 電源間ESDクランプ回路
151 引出し配線
152 引出し配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号パッドと、
電源線と、
接地線と、
一端が前記信号パッドと接続されたインダクタと、
前記インダクタの他端と前記電源線または前記接地線との間に設けられた終端抵抗と、
前記インダクタの中間の第1位置に接続された第1ESD保護素子と、
前記インダクタの中間の前記第1位置とは異なる第2位置に接続された第2ESD保護素子と
を備える半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記インダクタは、
前記信号パッドと前記第1位置との間に形成される第1インダクタと、
前記終端抵抗と前記第2位置との間に形成される第2インダクタと
を備える半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体装置であって、
前記第1位置と前記第2位置との少なくとも一方に内部回路が電気的に接続される
半導体装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第1ESD保護素子は、前記接地線と前記第1位置との間に接続される
半導体装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の半導体装置であって、
前記第2ESD保護素子は、前記電源線と前記第2位置との間に接続される
半導体装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5までのいずれかに記載の半導体装置であって、
前記インダクタは、複数の層により構成され、
前記第1インダクタは、前記層を構成する配線である第1配線層により形成され、
前記第2インダクタは、前記層を構成する配線である第2配線層により形成され、
前記第1配線層は、前記第2配線層より厚い
半導体装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の半導体装置であって
前記第1ESD保護素子と前記第2ESD保護素子とは基板に形成され、
前記第1ESD保護素子か前記第2ESD保護素子の少なくとも一部が、前記インダクタの形成される範囲と重なり、
前記第1位置と前記第1ESD保護素子は、第1ビアで接続され、
前記第2位置と前記第2ESD保護素子とは、第2ビアで接続される
半導体装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の半導体装置であって、
前記基板には、前記半導体装置が複数形成され、
前記複数の半導体装置の各々は、隣接する前記半導体装置と、前記第1ESD保護素子同士、あるいは前記第2ESD保護素子同士が、それぞれ隣り合うように形成され、
隣り合う前記第1ESD保護素子は、接続された前記接地線を共有し、
隣り合う前記第2ESD保護素子は、接続された前記電源線を共有する
半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−49235(P2011−49235A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194467(P2009−194467)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】