説明

半導体製造装置に搭載可能な除電装置

【課題】プラズマ処理後のウエーハ表面の帯電による静電気を原因とした汚染の問題を解決した非処理基板であるウエーハを複数枚一括してプラズマで処理する半導体製造装置を提供する。
【解決手段】基板18にプラズマ処理を行う処理炉16の搬入出口の近傍に、交流電源55および正極の直流電源56を接続した複数の針電極を備えた除電装置34を配置し、ボートエレベータ22により処理炉16から搬出された帯電基板18を除電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置に搭載可能な除電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基板処理装置としては、プラズマを用いて基板を処理するものがあり、プラズマを利用する目的として、ガスのイオン化やラジカル反応促進により低温下での基板処理を可能にし、温度による基板のダメージを防ぐことが挙げられる。このプラズマを利用した装置として、縦型バッチ処理装置があり、具体的な一例として、均熱管と反応管の間に高周波を印加できる電極をストライプ状に交互に全周配置し、これにより反応管内のガスをプラズマ化する。プラズマ化すると、ガスはイオン、電子、ラジカル等に変化し、基板表面で反応してエッチングされたり、成膜される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プラズマ化して処理する際に、未反応のイオン、電子などが基板表面に存在することもあるため、これら未反応のイオン、電子などが基板の帯電となって静電気を持つ状態となり、基板の周りの雰囲気に不純物が存在している場合、その静電気の吸引力よって不純物を吸着して基板が汚染されてしまう可能性がある。
【0004】
また、基板が帯電していてもアースと接地されていれば除電が可能であるが、通常基板を積載するボートは多くの材質が石英の絶縁体であるためアースに流れにくくなり、基板に帯電を起こし易くしている原因ともなっている。その帯電基板をできるだけ早く除電するためには、処理炉でのプラズマ処理後に基板が搬出される際に除電すればよいが、その搬出先の空間はN2リッチ雰囲気中となっており、通常の除電装置による除電では、N2リッチ雰囲気中のイオン生成バランスが悪く、中和されずに逆に基板を帯電させてしまう可能性がある。
【0005】
本発明の主な目的は、プラズマ処理後の基板表面の帯電による静電気を原因とした汚染の問題を解決するために、その静電気を除去できる除電装置を半導体製造装置内に配置し、さらにN2リッチ雰囲気中においてイオン生成バランスの保持を可能とする除電装置を搭載した半導体製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、基板にプラズマ処理を行うことが可能な処理炉に、基板を処理可能に保持するボートを搬入及び搬出する半導体製造装置において、該処理炉のボートの搬入出口の近傍に基板を除電することが可能な除電装置を配置し、該除電装置は、複数の針電極を備え、該針電極の少なくとも1つに交流電源を接続し、他の少なくとも1つに正極の直流電源を接続してなることを特徴とする。
【0007】
なお、実施の形態においては、以下の構成が示されている。
【0008】
処理炉のボートの搬入出口の近傍に基板を除電することが可能な除電装置を配置し、該除電装置は、ボートエレベータが処理炉から基板を搬出する動作を開始したときに作動し、所定時間経過後に作動を停止するように構成されている。
【0009】
また実施の形態の半導体製造装置においては、基板を複数枚処理可能にし、ヒータで熱処理してかつ減圧状態にする処理室を備え、該処理室内にガスを供給して減圧化し、基板を処理する反応管を備え、該反応管の内部或いは外部に高周波を印加できる電極を配置し、それによりガスをプラズマ化して基板に対してプラズマによる処理を可能にする手段と、該処理室内でプラズマ処理後に帯電された基板を除電するための除電装置を該処理室下部の空間に設置する手段と、該除電装置内に、針電極を少なくとも2個の針電極を用意して、少なくとも1個の針電極に交流電源、少なくとも1個の針電極に正極の直流電源を接続して高電圧をかけることにより、N2リッチ雰囲気中において必要な荷電粒子を生成可能とし、イオンバランスを保ちながら基板の除電を可能とする手段とを備え、該処理室下の空間に設置されたサイドクリーンユニットからのN2フローを受けて該除電装置から発生する荷電粒子が、ボート上の帯電した基板に向かって流れて行き、その荷電粒子により基板が中和されて除電を可能にすることを特徴とする。
【0010】
さらに実施の形態の半導体製造装置においては、基板を複数枚搭載可能なボートを持ち、反応炉まで相対的に昇降可能なエレベータを備え、処理室の下に積載された基板を移載するための空間を持ち、その空間に自然酸化膜を制御するためにN2リッチ雰囲気を可能とする手段とを備え、プラズマ処理後、基板を移載するために該エレベータにより該処理室からボートが相対的に降下する動作を利用して、ボート上の帯電基板がその近傍に配置された除電装置を通過することにより、ボート上の基板全てが除電可能となることを特徴としている。
【0011】
また実施の形態の半導体製造装置は、基板にプラズマ処理を行うことが可能な処理炉に、基板を処理可能に保持するボートをボートエレベータにより搬入及び搬出する半導体製造装置において、処理室下のN2リッチ雰囲気となる空間で、ボート上の帯電基板をボートエレベータの相対的降下動作後に除電させるため、除電装置を複数個設置或いは上下動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、除電装置内に複数の針電極を備え、少なくとも1個の針電極に交流電圧を印加し、他の少なくとも1個の針電極に直流電圧を印加するようにしたため、例えばN2リッチ雰囲気中において必要な荷電粒子を生成可能とし、イオンバランスを保ちながらウエーハの除電を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好ましい実施の形態として添付図面を参照して、非処理基板であるウエーハを複数枚一括してプラズマで処理する基板処理装置について説明する。
【0014】
図1は本発明の好ましい実施の形態に係る基板処理装置の平面図、図2は図1の基板処理装置の背面図である。また図3は、帯電値測定センサを取り付けた場合の構成図である。
【0015】
筐体10内部の正面側には、図示しない外部搬送装置との間で基板収納容器としてカセットの授受を行うカセットラック12が設けられて、カセットラック12の後側には昇降手段としてのカセットエレベータ14が設けられている。
【0016】
筐体10の後部上方には、処理炉16が設けられ、処理炉16の下方には基板としてのウエーハ18を水平姿勢で多段に保持するボート20が配設されている。ボート20にはこれを処理炉16に昇降させるボートエレベータ22が設けられ、ボートエレベータ22に取付けられた昇降部材の先端部には蓋体としてのシールキャップ36が取付けられボート20を垂直に支持している。
【0017】
処理炉16では、ヒータ38が灼熱管44を取り囲むように設けられており、灼熱管44内部には、導電性材料で構成され、高周波を印加することができる電極46が設けられた電極管48が配設されている。電極管48の内側には、反応管40が配設されており、反応管40は石英などの誘電体で構成される。処理室42は、反応管40とシールキャップ36などで気密に構成され、ウエーハ18を処理する空間を形成する。また、シールキャップ36は接地されている。
【0018】
ボートエレベータ22とカセットラック12との間には昇降手段としての移載エレベータ24が設けられており、移載エレベータ24にはカセットとボート20との間でウエーハを搬送するウエーハ移載機26が取付けられている。ウエーハ移載機26のあるウエーハ移載エリア28からボート20のあるボートエリア30にかけてサイドクリーンユニット32が配設される。サイドクリーンユニット32は、ウエーハ移載エリア28とボートエリア30の領域にN2フロー65を供給して、この領域のウエーハ18上にパーティクルが付着しないようにするものである。
【0019】
また、処理炉16のボート20の搬入出口の近傍、詳しくは、サイドクリーンユニット32とボートエリア30との間の領域の処理炉16の搬入出口下部近傍の空間であり、かつサイドクリーンユニット32の方向板の近くに、ウエーハ18を除電する除電装置34が配設される。これにより、サイドクリーンユニット32からのN2フロー65を利用して除電装置34から発生する荷電粒子を含むガスをボート20上の帯電したウエーハ18に向かって流し、その荷電粒子により中和して除電を行う。
【0020】
ボートエレベータ22の後側には背面ファン50が設けられており、図1中矢印で示すように、サイドクリーンユニット32からのN2フロー65を背面ファン50から外部に排出する。
【0021】
本実施の形態で使用する除電装置34について説明する。
【0022】
除電装置の種類としては、主に、コロナ放電式と光照射式とに分けられるが、ここでは、実績済みのコロナ放電式について説明する。コロナ放電とは、先端の尖った電極針に高電圧を印加させることで針の先端に部分的に放電を発生させる手法である。放電が発生すると針周辺に存在しているガスが電離されてイオン、電子となり、それを帯電物に向かって吹き付けることにより中和されて除電する。
【0023】
しかしN2リッチ雰囲気中でコロナ放電した場合、イオンバランスが悪く+極の荷電粒子が−極に対して少なく発生してしまう。その対策として、補助除電の役割として+DC電源(正極の直流電源)を針電極に接続する。
【0024】
除電装置内に配置された複数の針電極(本実施の形態では2本)に対して、針電極55をAC電源に接続して帯電ウエーハ18の除電を行い、さらに−極に偏った帯電圧のバランスを取るためにもう一方の針電極56を+DC電源に接続することで、+極の荷電粒子を多く発生させる。その結果、N2リッチ雰囲気中においてイオンバランスが図られ、帯電ウエーハ18を除電することが可能となる。この除電装置34を前記に示した場所に装着することにより、プラズマ熱処理後の処理ウエーハ18に対して速やかに除電が可能になる。
【0025】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
【0026】
処理室42が大気圧の状態で、所要の枚数のウエーハ18を載置したボート20をボートエレベータ22により上昇させて、処理室42内に搬入する。ヒータ38に電力を投入し、ウエーハ18、反応管40など処理室42内部の部材を所定の温度に加熱すると同時に、反応管40内部の気体を排気し減圧状態にする。ウエーハ18が所定の温度になった時点で処理室42に反応ガスを導入し、次いで処理ガスをウエーハ18に向けて噴出させる。処理室42内部の圧力が所定の圧力になった時点で、電極46により高周波を印加し、処理ガスをプラズマ化してウエーハ18にプラズマ処理を施す。
【0027】
処理後、ボートエレベータ22によりボート20を下降させ、ボート20を処理室42から搬出する。このとき、ボート20はボートエレベータ22により処理炉16からゆっくりと下に降りてくるが、ボート20が処理炉16から出るタイミングにあわせて、除電装置34を作動させる。除電装置34により発生されたイオンはサイドクリーンユニット32からのN2フロー65により、ボートエリア30に流れて行き、まず、除電装置34の前を通過するボート20の最下端のスロットに載置されているウエーハ18にイオンが吹き付けられて除電される。その後、ボート20が下降するにしたがって、ボート20の上方のスロットに載置されているウエーハ18が除電装置34の前を順次通過し、除電されていき、ボートエレベータ22の動作が終了するまでにボート20上の全てのウエーハ18が除電される。なお、上記においては、ボート20を昇降動させる例を示したが、本発明においては反応炉16を昇降動させるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0028】
このように、除電装置34を処理炉16の搬入出口の近傍に配設するため、処理後のボートエレベータ22の搬出動作を利用することによりボート20上の全てのウエーハ18の除電を行うことができる。したがって、複数個の除電装置34を用意する必要はなく、コンパクトな形状の除電装置34で対応することができる。勿論、除電装置を複数個配置して、ボートエレベータ22の降下動作後に、帯電された複数枚のウエーハ18を一括して除電することも可能であるし、反対に除電装置を上下作動可能として帯電ウエーハに荷電粒子を吹き付けて除電を行ってもよい。
【0029】
また、サイドクリーンユニット32のN2フロー65を利用することにより、除電装置34に対して効果的にウエーハ18の除電を行うことができる。
【0030】
除電装置34の作動制御は、次のように行われる。
すなわち、予め、ウエーハ18がどの程度の速度で除電装置34の前を通過すれば除電できるかを計測し、この値を元にボート20上の全てのウエーハ18を除電するために必要な時間を計算し、除電装置34が作動後、計算された時間が経過した後に自動的に停止するように設定する。
【0031】
また、ボートエレベータ22が最下端まで下降した時点で除電装置34を停止するようにしてもよい。
【0032】
また図3の構成図では、サイドクリーンユニット32から供給されるN2フロー上流部に、AC電源に接続された針電極55、+DC電源に接続された針電極56および絶縁プレート57で構成された除電装置34を配置し、N2フロー中流部にウエーハ18を配置し、N2フロー下流部に帯電値測定センサ60を設置している。除電装置34はウエーハ18に対しイオンを吹き付けて除電を行い、除電されているかどうかを帯電値測定センサ60により判断し、除電されていれば除電装置34を停止するようにしてもよい。
【0033】
本発明の実施の形態によれば、処理炉の搬入出口近傍に除電装置を配置し、ボートエレベータが処理炉から基板を搬出する動作を開始したときに除電装置を作動させることにより、処理炉から搬出される基板が順次、除電装置の前を通過し、除電されるため、帯電による静電気を原因とする汚染の付着を最小限に抑えることができる。
【0034】
また、本発明の実施の形態によれば、処理炉の搬入出口近傍に除電装置を配置したことにより、例えばボートエレベータの下降に伴って全ての基板を除電装置の前を通過させることができるため、コンパクトな除電装置ですべての基板の除電に対応することができ、装置内占有率を抑えて、コストも低減することができる。
【0035】
また、本発明の実施の形態によれば、イオンバランスの悪い環境下であるN2リッチ雰囲気中で本発明の除電装置を使用することにより、半導体製造装置に搭載可能なアプリケーションが増える。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係る基板処理装置の平面図である。
【図2】図1の基板処理装置の背面図である。
【図3】帯電値測定センサを取り付けた場合の構成図である。
【符号の説明】
【0037】
16 処理炉
18 ウエーハ(基板)
20 ボート
22 ボートエレベータ
34 除電装置
55 AC電源接続された針電極
56 +DC電源接続された針電極
57 絶縁プレート
60 帯電値測定センサ
65 N2フロー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にプラズマ処理を行うことが可能な処理炉に、基板を処理可能に保持するボートを搬入及び搬出する半導体製造装置において、
該処理炉のボートの搬入出口の近傍に基板を除電することが可能な除電装置を配置し、
該除電装置は複数の針電極を備え、該針電極の少なくとも1つに交流電源を接続し、他の少なくとも1つに正極の直流電源を接続してなることを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−78461(P2008−78461A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−257228(P2006−257228)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【Fターム(参考)】