説明

半導体集積回路装置の製造方法

【課題】プラズマCVD法を用いてCu配線上に良好な拡散バリア膜を形成する技術を提供する。
【解決手段】ダマシン法を用いて形成したCu配線19上にCuの拡散を防止する窒化シリコン膜21を形成する工程は、Cu配線19が形成された基板1をプラズマCVD装置のチャンバ内に搬入し、基板1を所定の温度に加熱する工程と、チャンバ内にアンモニアを供給し、第1のRFパワーでアンモニアをプラズマ分解することによって、Cu配線19の表面を還元処理する工程と、RFパワーが印加された状態で、チャンバ内にアンモニアとモノシランとを含む原料ガスを供給し、第2のRFパワーでアンモニアとシラン系ガスとをプラズマ分解することによって、Cu配線19上に窒化シリコン膜21を形成する工程とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置の製造技術に関し、特に、ダマシン(Damascene)法を用いたCu配線の形成に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路装置の製造工程では、ダマシン(Damascene)法を用いた微細配線形成方法が主流になりつつある。ダマシン法は、半導体基板上の層間絶縁膜に配線溝を形成した後、この配線溝の内部を含む層間絶縁膜上にCu(銅)膜を堆積し、次に化学的機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)法を用いて配線溝の外部のCu膜を除去することにより、配線溝の内部にCu配線を形成する方法である。
【0003】
ダマシン法には、シングルダマシン(Single-Damascene)法とデュアルダマシン(Dual-Damascene)法とがある。デュアルダマシン法は、層間絶縁膜に形成した配線溝の下部に下層配線接続用のビアホールを形成し、配線溝とビアホールとに同時にCu膜を埋め込んでCu配線を形成する方法である。一方、シングルダマシン法は、あらかじめビアホールの内部にタングステンプラグを形成した後、配線溝の内部にCu配線を形成する方法である。
【0004】
ところで、Cuは、Al(アルミニウム)のような他の配線材料と比較して絶縁膜中に拡散し易い特性がある。そこで、層間絶縁膜に形成した配線溝の内部にダマシン法を用いてCu配線を形成する場合は、あらかじめTiN(窒化チタン)などのバリア膜を配線溝の内部に形成してからCu膜を埋め込んでいる。
【0005】
また、Cu配線の表面から周囲の絶縁膜にCuイオンが拡散すると、Cu配線のTDDB(Time Dependence on Dielectric Breakdown)特性が低下することが知られており、これを防止するために、Cu配線上に拡散バリア膜を形成している。ここで、Cu配線のTDDB特性とは、絶縁破壊の時間的依存性を客観的に計る尺度であって、所定の温度の測定条件下でCu配線間に比較的高い電圧を加え、この電圧印加からCu配線間の絶縁膜が絶縁破壊するまでの時間を印加電界に対してプロットしたグラフを作成し、このグラフから実際の使用電界強度に外挿して求めた時間(寿命)をいう。拡散バリア膜としては、Cu配線との密着性や誘電率を考慮し、プラズマCVD法で形成したSiN(窒化シリコン)膜またはSiCN(炭窒化シリコン)膜が使用されている。
【0006】
Cu配線上に拡散バリア膜を形成するには、まずダマシン法を用いてCu配線を形成した後、半導体基板の表面を酸およびアルカリで洗浄し、化学的機械研磨工程で付着したスラリなどの異物を除去する。次に、プラズマCVD装置を使って半導体基板上に拡散バリア膜を堆積する。拡散バリア膜が窒化シリコン膜の場合、原料ガスはモノシラン(SiH)とアンモニアである。また、拡散バリア膜が炭窒化シリコン膜の場合、原料ガスはトリメチルシラン(SiH(CH))またはテトラメチルシラン(Si(CH3))とアンモニアである。
【0007】
J.Noguchi IEEEOOCH37059 38th Annual International Reliability Physics Symposium(2000)(非特許文献1)は、Cu配線上に窒化シリコンからなる拡散バリア膜を形成する技術を開示している。この文献に記載された拡散バリア膜の形成方法は、Cu配線を形成した半導体ウエハをプラズマCVD装置のチャンバに搬入し、まずアンモニア(NH)プラズマ処理によってCu配線の表面の酸化膜(CuO膜)を除去する。続いて、チャンバ内にモノシランとアンモニアを導入し、これらの原料をプラズマ分解することによって窒化シリコン膜を堆積する。
【0008】
T.Takewaki Symposium on VLSI Tech. Digest of Technical Papers, pp.31-32(1995)(非特許文献2)は、Cu配線上に窒化シリコンからなる拡散バリア膜を形成する工程に先立って、Cu配線の表面にシリサイド層(CuSi)を形成する技術を開示している。このシリサイド層は、Cu配線の表面からCuが拡散するのを防ぐと共に、Cu配線と拡散バリア膜(窒化シリコン膜)との接着性を高めるために形成される。
【0009】
特開2004−296515号公報(特許文献1)は、Cu配線上のバリア膜を炭窒化シリコン膜と炭化シリコンとの積層膜で構成する技術を開示している。
【0010】
特開2000−150517号公報(特許文献2)は、Cu配線の表面をモノシランでシリサイド化した後、その上部に窒化シリコン膜を形成する技術を開示している。
【0011】
特開2001−176878号公報(特許文献3)は、モノシランによってCu配線の表面にCuシリサイドの突起が生じるのを防ぐため、モノシランの流量を少なくして窒化シリコン膜を形成する技術を開示している。
【0012】
特開2000−260767号公報(特許文献4)は、異なるガスを用いて窒化シリコン膜を2回に分けて形成することにより、窒化シリコン膜中のダングリングボンドの発生を抑制する技術を開示している。
【0013】
特開平7−300680号公報(特許文献5)は、ステップカバレージに優れた窒化シリコン膜を形成するために、間欠的にプラズマを発生させて窒化シリコン膜を形成する技術を開示している。
【0014】
特開平5−129285号公報(特許文献6)は、モノシランとアンモニアを含むガスを用いて窒化シリコン膜を形成した後、モノシランの供給を絶って窒化シリコン膜の成長を継続する技術を開示している。
【0015】
特開2002−9150号公報(特許文献7)は、Cu配線の表面を還元処理した後、低温で窒化シリコン膜を形成し、続いて高温で窒化シリコン膜を形成する技術を開示している。
【0016】
特開2001−77192号公報(特許文献8)は、モノシランに対するアンモニアの流量比を大きくして窒化シリコン膜を堆積することにより、窒化シリコン膜中の窒素含有量を増加させて誘電率を下げる技術を開示している。
【0017】
特開2004−241464号公報(特許文献9)は、Cu配線に近い側で炭素濃度が低い炭窒化シリコン膜からなるバリア膜を形成する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2004−296515号公報([0046]〜[0050]、図6、[0084]〜[0090]、図23)
【特許文献2】特開2000−150517号公報([0022]〜[0024]、図4、[0038]、図8)
【特許文献3】特開2001−176878号公報([0020]〜[0027]、[0040]〜[0047])
【特許文献4】特開2000−260767号公報([0027]〜[0031])
【特許文献5】特開平7−300680号公報([0009]〜[0011]、[0021])
【特許文献6】特開平5−129285号公報([0007]〜[0013])
【特許文献7】特開2002−9150号公報([0009]〜[0013]、[0027]、[0028])
【特許文献8】特開2001−77192号公報([0005]〜[0008]、[0014]、[0015])
【特許文献9】特開2004−241464号公報([0036]〜[0038]、図2)
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】J.Noguchi IEEEOOCH37059 38th Annual International Reliability Physics Symposium(2000)
【非特許文献2】T.Takewaki Symposium on VLSI Tech. Digest of Technical Papers, pp.31-32(1995)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明者は、プラズマCVD装置を用いてCu配線上に窒化シリコンからなる拡散バリア膜を形成する方法を検討し、次のような問題を見いだした。本発明者が検討した窒化シリコン膜の形成方法は、次の通りである。
【0021】
まず、ダマシン法を用いてCu配線を形成した半導体ウエハをCVD装置のチャンバ内に設けられたステージ上に搭載し、ステージの温度を約400℃程度に設定する(ステップ1)。次に、アンモニアをチャンバ内に供給して予備加熱を行う(ステップ2)。次に、RF(13.56MHz)パワーをオンにしてアンモニアをプラズマ分解し、Cu配線の表面に形成された酸化膜(CuO膜)を還元、除去する(ステップ3)。次に、RFパワーをオフにしてチャンバ内にモノシランを導入する(ステップ4)。次に、再びRFパワーをオンにしてモノシランとアンモニアをプラズマ分解し、Cu配線上に窒化シリコン膜を堆積する(ステップ5)。次に、モノシランとアンモニアの供給を停止し、チャンバ内の未反応ガスを排気すると共に、半導体ウエハをチャンバから取り出す(ステップ6)。以下、上記ステップ1〜ステップ6を繰り返すことによって、複数枚の半導体ウエハ上に順次窒化シリコン膜を堆積する。
【0022】
ところが、上記した方法でCu配線上に堆積した拡散バリア膜の成分を分析したところ、純度の高い窒化シリコン膜ではなく、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコンなどが混在した異常成膜であることが判明した。そこで、このような異常成膜が発生する原因を調べたところ、上記ステップ4でチャンバ内にモノシランとアンモニアを導入した際、Cuの触媒作用によって、Cu配線の表面近傍でモノシランが熱分解し、その分解生成物がCu配線の表面に堆積するためであることが明らかとなった。
【0023】
Cu配線の表面に形成されたこのような異常成膜は、純度の高い窒化シリコン膜とは異なり、Cuイオンの拡散を防ぐ機能が乏しいことから、Cu配線のTDDB特性の低下を引き起こす原因となる。従って、Cu配線のTDDB特性を向上させるためには、上記のような異常成膜の発生を防止する対策が必要となる。
【0024】
本発明の目的は、プラズマCVD法を用いてCu配線上に良好な拡散バリア膜を形成する技術を提供することにある。
【0025】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0027】
本発明は、半導体基板上にダマシン法を用いてCu配線を形成した後、前記Cu配線上にCuの拡散を防止するバリア膜を形成する半導体集積回路装置の製造方法であって、(a)前記Cu配線が形成された前記半導体基板をプラズマCVD装置のチャンバ内に搬入し、前記半導体基板を所定の温度に加熱する工程と、(b)前記チャンバ内にアンモニアを供給し、第1のRFパワーで前記アンモニアをプラズマ分解することによって、前記Cu配線の表面を還元処理する工程と、(c)前記RFパワーが印加された状態で、前記チャンバ内にアンモニアとシラン系ガスとを含む原料ガスを供給し、第2のRFパワーで前記アンモニアと前記シラン系ガスとをプラズマ分解することによって、前記Cu配線上に前記バリア膜を形成する工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0028】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0029】
上記した手段によれば、工程(c)において、プラズマCVD装置のチャンバ内にシラン系ガスとアンモニアを導入した際、Cu配線の表面近傍におけるシラン系ガスの熱分解が抑制され、RFパワーによって良好にプラズマ分解されるので、Cu配線の表面に異常成膜が発生する不具合を抑制することができる。
【0030】
これにより、Cu配線の表面からCuイオンが拡散する不具合を抑制し、Cu配線のTDDB特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態である半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図2】図1に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図3】図2に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図4】図3に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図5】図4に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図6】窒化シリコン膜の堆積に用いる枚葉式RFプラズマCVD装置の主要部を示す概略図である。
【図7】窒化シリコン膜の堆積に用いる枚葉式RFプラズマCVD装置の別例を示す主要部概略図である。
【図8】(a)、(b)は、炭窒化シリコン膜の組成をXPS分析法によって調べた結果を示すグラフである。
【図9】図5に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図10】図9に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図11】図10に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図12】図11に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図13】図12に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図14】図13に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図15】図14に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図16】図15に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図17】図16に続く半導体集積回路装置の製造方法を示す半導体基板の要部断面図である。
【図18】炭窒化シリコン膜の組成をXPS分析法によって調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0033】
本実施の形態による半導体集積回路装置の製造方法を図1〜図18を用いて工程順に説明する。
【0034】
まず、図1に示すように、例えば、単結晶シリコンからなる半導体基板(以下、単に基板という)1の主面にnチャネル型MISFET(Qn)およびpチャネル型MISFET(Qp)を形成する。なお、図中の符号2は素子分離溝、符号4はp型ウエル、符号5はn型ウエルをそれぞれ示している。
【0035】
素子分離溝2は、基板1をエッチングして形成した溝の内部に絶縁膜として、例えば、酸化シリコン膜3を埋め込んで形成する。p型ウエル4およびn型ウエル5は、基板1にp型不純物(ホウ素)およびn型不純物(リン)をイオン注入し、続いて基板1を熱処理してこれらの不純物を基板1中に拡散させることによって形成する。
【0036】
nチャネル型MISFET(Qn)は、p型ウエル4の表面に形成された酸化シリコン膜または酸窒化シリコン膜からなるゲート絶縁膜6、ゲート絶縁膜6の上部に形成された多結晶シリコン膜などからなるゲート電極7、ゲート電極7の側壁に形成された酸化シリコン膜などからなるサイドウォールスペーサ8、ゲート電極7の両側のp型ウエル4に形成された一対のn型半導体領域(ソース、ドレイン)11などによって構成される。pチャネル型MISFET(Qp)は、ゲート絶縁膜6、ゲート電極7、サイドウォールスペーサ8、ゲート電極7の両側のn型ウエル5に形成された一対のp型半導体領域(ソース、ドレイン)12などによって構成される。nチャネル型MISFET(Qn)のゲート電極7を構成する多結晶シリコン膜中にはn型不純物(リン)が導入され、pチャネル型MISFET(Qp)のゲート電極7を構成する多結晶シリコン膜中にはp型不純物(ホウ素)が導入される。また、nチャネル型MISFET(Qn)のゲート電極7とn型半導体領域(ソース、ドレイン)11のそれぞれの表面、およびpチャネル型MISFET(Qp)のゲート電極7とp型半導体領域(ソース、ドレイン)12のそれぞれの表面には、ゲート電極7およびソース、ドレインの低抵抗化を目的としてCo(コバルト)シリサイド膜9が形成される。
【0037】
次に、図2に示すように、基板1上にCVD法で窒化シリコン膜13と酸化シリコン膜14とを堆積した後、酸化シリコン膜14の表面を化学的機械研磨法で平坦化する。続いて、nチャネル型MISFET(Qn)のn型半導体領域(ソース、ドレイン)11およびpチャネル型MISFET(Qp)のp型半導体領域(ソース、ドレイン)12のそれぞれの上部の酸化シリコン膜14をエッチングし、続いてその下層の窒化シリコン膜13をエッチングしてコンタクトホール15を形成する。次に、コンタクトホール15の内部にプラグ16を形成する。プラグ16は、例えばTiN膜とW(タングステン)膜との積層膜で構成する。ここで、TiN膜はW膜のバリアメタル膜として機能する。バリアメタル膜は、窒化チタン膜とTi(チタン)膜との積層膜で構成してもよい。
【0038】
次に、図3に示すように、酸化シリコン膜14の上部にCVD法で膜厚200nm程度のSiOC膜17と膜厚50nm程度の酸化シリコン膜からなるキャップ絶縁膜18とを堆積した後、フォトレジスト膜をマスクにしてキャップ絶縁膜18およびSiOC膜17をドライエッチングすることにより、配線溝20を形成する。SiOC膜17は、配線間容量を低減するための低誘電率絶縁膜であり、その比誘電率は2.7程度である。SiOC膜17の上部に形成するキャップ絶縁膜18は、機械的強度が低いSiOC膜17が化学的機械研磨によって劣化するのを防ぐ保護膜として機能する。
【0039】
次に、図4に示すように、ダマシン法を用いて配線溝20の内部に第1層目のCu配線19を形成する。Cu配線19は、バリアメタル膜とCu膜との積層膜からなる。Cu配線19を形成するには、まず、配線溝20の内部とキャップ絶縁膜18上に膜厚50nm程度のTiN膜、またはTiN膜とTi膜との積層膜からなるバリアメタル膜をスパッタリング法で堆積し、続いて配線溝20の内部を完全に埋め込む厚い(800nm〜1600nm程度)Cu膜をスパッタリング法またはメッキ法で堆積する。バリアメタル膜は、Cu膜が周囲の絶縁膜中に拡散するのを防ぐと共に、Cu膜とSiOC膜17と接着性を向上させるために形成する。バリアメタル膜としては、TiN膜の他、WN(窒化タングステン)膜やTaN(窒化タンタル)膜のような窒化金属膜またはこれらにSiを添加した合金膜、またTa膜、Ti膜、W膜、TiW膜のような高融点金属膜、もしくはこれら高融点金属膜の積層膜など、Cuと反応し難い各種導電膜を使用することができる。次に、配線溝20の外部のCu膜とバリアメタル膜とを化学的機械研磨法で除去することにより、配線溝20の内部に残ったバリアメタル膜とCu膜との積層膜からなるCu配線19が形成される。なお、Cu膜は、単体のCu膜の他、Cuを主成分として含むCu合金膜で構成してもよい。
【0040】
次に、基板1を洗浄処理部に搬送し、上記化学的機械研磨処理によって基板1の表面に付着したスラリなどの異物を除去するための洗浄を行う。この洗浄工程は、アルカリ洗浄処理とその後の酸洗浄処理とからなる。アルカリ洗浄処理では、基板1の表面に付着した酸化剤を含む酸性のスラリを中和するために弱アルカリ薬液を供給しながら基板1の表面を洗浄する。アルカリ洗浄処理後の酸洗浄処理は、残留金属の除去、絶縁膜の表面のダングリングボンドの低減および絶縁膜の表面の凹凸の除去などを目的とするもので、有機酸を含む水溶液を供給しながら基板1の表面を洗浄する。また、洗浄工程に先だって、ベンゾトリアゾール(BTA)のような防蝕剤を含んだ薬液を基板1の表面に供給し、Cu配線19の表面に疎水性の保護膜を形成する防食処理を行ってもよい。
【0041】
次に、図5に示すように、基板1上に膜厚50nm〜75nm程度の窒化シリコン膜21を堆積することによって、Cu配線19の表面を窒化シリコン膜21で被覆する。窒化シリコン膜21は、Cu配線19の表面からCuイオンが拡散するのを防止するバリア膜として機能する。窒化シリコン膜21の堆積は、Cu配線19の表面の再酸化、腐蝕を最小限に止めるために、上記洗浄工程が完了した後、できるだけ速やかに行うことが望ましい。
【0042】
図6は、窒化シリコン膜21の堆積に用いる枚葉式RFプラズマCVD装置の主要部を示す概略図である。RFプラズマCVD装置50の主要部は、ウエハ状態の基板1を水平に搭載する下部電極51と、この下部電極51に対向して配置された上部電極52とが設置されたチャンバ53を備えている。チャンバ53の内部は、減圧ポンプ54によって所望の真空度に維持される。
【0043】
下部電極51は、ウエハステージを兼ねており、その上面に搭載された基板1は、下部電極51に内蔵された抵抗加熱式のヒータによって、所望の温度に加熱される。そして、RF電源55を通じて下部電極51と上部電極52とに13.56MHzのRFパワーが印加されると、基板1の上方にプラズマが形成される。下部電極51は、図示しない駆動機構によって上下動され、下部電極51上の基板1とプラズマとの距離が調整される。
【0044】
チャンバ53には、アンモニア供給源56、モノシラン供給源57およびキャリアガス供給源58がそれぞれ配管59を介して接続されている。これらの配管59の途中には、配管59の開放/遮断を制御するバルブ60と、チャンバ53内に供給するガスの流量を調節するマスフローコントローラ61とが設けられている。
【0045】
上記RFプラズマCVD装置50を用いて基板1上に窒化シリコン膜21を堆積する工程を図6および表1の堆積シーケンスを用いて説明する。なお、表1中に記載した各数値は、好ましい数値の一例を示したものであって、これらの数値に限定されることを意味するものではない。
【0046】
【表1】

【0047】
まず、前記図4の工程(Cu配線19の形成および洗浄)が完了した基板1をチャンバ53内に搬入して下部電極51上に搭載する。このとき、チャンバ53内の圧力は、実質的に0torrである。下部電極51の温度は、基板1をチャンバ53内に搬入してから窒化シリコン膜21の堆積が完了するまでの間、常に400℃となるように設定する(ステップ1)。
【0048】
次に、アンモニアをキャリアガス(窒素)と共にチャンバ53内に供給し、約30秒間予備加熱を行う。チャンバ53内に供給するアンモニアの流量は160sccm、このときのチャンバ内圧力は4.2torrである(ステップ2)。
【0049】
次に、RF電源55をオンにしてパワーを240Wに設定し、下部電極51の上面近傍においてアンモニアをプラズマ分解する。これにより、アンモニアがプラズマ分解されて生成した水素イオンなどの還元性物質によって、Cu配線19の表面が還元処理される。還元処理の時間は、10秒程度である。この還元処理を行うと、洗浄工程で除去できなかった基板1の表面の異物、洗浄工程で基板1の表面に付着した有機物残渣、洗浄が完了してから基板1をチャンバ53内に搬入するまでの間にCu配線19の表面に生じた自然酸化膜(CuO膜)などが除去されるので、Cu配線19の表面が清浄化される(ステップ3)。
【0050】
次に、RFパワーを240Wから850Wに上昇させながら、モノシランとアンモニアをキャリアガス(窒素)と共にチャンバ53内に供給する。チャンバ53内に供給するモノシランの流量は460sccm、アンモニアの流量は160sccm、このときのチャンバ内圧力は4.2torrである。これにより、下部電極51の上面近傍においてモノシランとアンモニアがプラズマ分解され、Cu配線19の表面を含む基板1上に窒化シリコン膜21が堆積する。窒化シリコン膜21の堆積時間は約11秒、膜厚は50nm〜75nmである(ステップ4)。
【0051】
上記ステップ4において、モノシランは、RFパワーを240Wから850Wに上昇させると同時に、またはあらかじめ850Wに上昇させた後にチャンバ53内に供給する。また、RFパワーを240Wから850Wに上昇させる際には、連続的に上昇させるようにし、途中でRFパワーを0にしたり、必要以上に下げたりしてはならない。
【0052】
モノシランをチャンバ53内に供給し始めてから窒化シリコン膜21の堆積が完了するまでの間に、RFパワーが0になったり、RFパワーが不足したりすると、基板1の上面近傍においてモノシランのプラズマ分解が充分に行われなくなる。また、モノシランをチャンバ53内に供給し始めてから、RFパワーを850Wに上昇させた場合も、モノシランのプラズマ分解が充分に行われなくなるおそれがある。モノシランのプラズマ分解が充分に行われない場合は、モノシランの一部がCu配線19の表面近傍で熱分解し、その分解生成物がCu配線19の表面に堆積して異常成膜が発生する。
【0053】
これに対し、モノシランをプラズマ分解するに足るだけのエネルギーを持ったRFパワーが印加された状態でモノシランをチャンバ53内に供給した場合には、モノシランがCu配線19の表面近傍で熱分解することなくプラズマ分解する。従って、この場合は、Cu配線19の表面における異常成膜の発生が抑制されるので、還元処理によって清浄化されたCu配線19の表面に高純度の窒化シリコン膜21を堆積することができる。
【0054】
次に、RF電源55をオフにすると共に、モノシランとアンモニアの供給を停止する。続いて、チャンバ内の未反応ガスを減圧ポンプ54で排気した後、基板1をチャンバ53から取り出す(ステップ5)。
【0055】
このように、上記したステップ1〜ステップ5に従って窒化シリコン膜21を堆積することにより、Cu配線19の表面に異常成膜が発生することなく、高純度の窒化シリコン膜21を堆積することができるので、Cu配線19の表面からCuイオンが拡散する不具合を抑制し、Cu配線19のTDDB特性を向上させることができる。
【0056】
なお、実際の製造工程では、上記ステップ1〜ステップ5を繰り返すことによって、複数枚の基板1上に順次窒化シリコン膜21を堆積する。従って、RFプラズマCVD装置50の配管59の内部、特にマスフローコントローラ61からバルブ62までの間の配管59内には、ステップ5が完了した時点で原料ガスが残留している。(ステップ5においてチャンバ53を真空引きする際、通常ファイナルバルブ64を開にするため、配管63の残留ガスは除去される。よって、マスフローコントローラー61とその直下のバルブ62との間の配管59に原料ガスが残留する。)
そのため、次の基板1をチャンバ53内に搬入し、ステップ4でモノシランをチャンバ53内に供給する際、配管59の内部の残留モノシランもチャンバ53内に流入することがある。この場合は、あらかじめ設定した流量よりも過剰のモノシランがチャンバ53内に供給されるので、その一部がプラズマ分解するよりも先にCu配線19の表面近傍で熱分解し、異常成膜を引き起こすことがある。
【0057】
このような不具合を防止するためには、配管59の内部の残留モノシランがステップ4でチャンバ53内に流入しないよう、装置構造を改善することが望ましい。例えば図7に示すように、モノシラン供給源57に接続された配管59の途中に別の配管65を接続し、ステップ4でモノシランをチャンバ53内に供給する際、あらかじめマスフローコントローラ61とバルブ62との間の配管59内に残留したモノシランを配管65を通じて外部に排気してもよい。また、例えばモノシラン供給源57に接続された配管59の途中に複数のマスフローコントローラ61を接続し、これら複数のマスフローコントローラ61を通過するモノシランの流量を調節することにより、ステップ4でモノシランをチャンバ53内に供給する際、あらかじめマスフローコントローラ61とチャンバ53バルブ62との間の配管59内に残留したモノシランの圧力をチャンバ53内の圧力に近づけるようにしてもよい。
【0058】
Cu配線19上に形成するバリア膜は、上記窒化シリコン膜21に代えて炭窒化シリコン(SiCN)膜で構成することもできる。炭窒化シリコン膜は、窒化シリコン膜に比べてCu配線との密着性が低い反面、窒化シリコン膜に比べて誘電率が低いので、配線間容量の低減に有効である。Cu配線19上の炭窒化シリコン膜は、原料ガスの種類や流量、基板1の加熱温度などが異なる他は、前述した窒化シリコン膜21の形成方法に準じて形成することができる。
【0059】
前記図6に示すRFプラズマCVD装置50を用いてCu配線19上に炭窒化シリコンを堆積する工程を表2の堆積シーケンスを用いて説明する。なお、表2中に記載した各数値は、好ましい数値の一例を示したものであって、これらの数値に限定されることを意味するものではない。
【0060】
【表2】

【0061】
まず、Cu配線19の形成および洗浄が完了した基板1をチャンバ53内に搬入して下部電極51上に搭載する。このとき、チャンバ53内の圧力は実質的に0torrである。下部電極51の温度は、基板1をチャンバ53内に搬入してから炭窒化シリコン膜の堆積が完了するまでの間、常に350℃となるように設定する(ステップ1)。
【0062】
次に、アンモニアをキャリアガス(ヘリウム)と共にチャンバ53内に供給し、約30秒間予備加熱を行う。チャンバ53内に供給するアンモニアの流量は330sccm、このときのチャンバ内圧力は3.0torrである(ステップ2)。
【0063】
次に、RF電源55をオンにしてパワーを240Wに設定し、下部電極51の上面近傍でアンモニアをプラズマ分解することによって、Cu配線19の表面を約10秒間還元処理する(ステップ3)。
【0064】
次に、RFパワーを240Wから500Wに上昇させながら、トリメチルシラン(SiH(CH))とアンモニアをキャリアガス(ヘリウム)と共にチャンバ53内に供給する。チャンバ53内に供給するトリメチルシランの流量は175sccm、アンモニアの流量は330sccm、このときのチャンバ内圧力は3.0torrである。これにより、下部電極51の上面近傍においてトリメチルシランとアンモニアがプラズマ分解され、Cu配線19の表面を含む基板1上に炭窒化シリコン膜が堆積する。炭窒化シリコンの堆積時間は約30秒、膜厚は50nm〜75nmである(ステップ4)。
【0065】
窒化シリコン膜21を堆積する場合と同様、上記ステップ4において、トリメチルシランは、RFパワーを上昇させると同時に、またはあらかじめ上昇させた後にチャンバ53内に供給する。また、RFパワーを上昇させる際には、連続的に上昇させるようにし、途中でRFパワーを0にしたり、必要以上に下げたりしてはならない。
【0066】
次に、RF電源55をオフにすると共に、トリメチルシランとアンモニアの供給を停止する。続いて、チャンバ内の未反応ガスを減圧ポンプ54で排気した後、基板1をチャンバ53から取り出す(ステップ5)。
【0067】
上記したステップ1〜ステップ5に従って炭窒化シリコン膜を堆積することにより、Cu配線19の表面に異常成膜が発生することなく、高純度の炭窒化シリコン膜を堆積することができるので、Cu配線19の表面からCuイオンが拡散する不具合を抑制し、Cu配線19のTDDB特性を向上させることができる。また、炭窒化シリコン膜の堆積に用いる原料ガスとして、上記トリメチルシランとアンモニアの混合ガスに代え、テトラメチルシラン(Si(CH3))とアンモニアの混合ガスを用いることもできる。この場合も、ステップ4でチャンバ53内に原料ガスを供給する際には、テトラメチルシランをプラズマ分解するのに充分なRFパワーが印加されると同時に、または印加された後に原料ガスを供給する。これにより、Cu配線19の表面に異常成膜が発生することなく、高純度の炭窒化シリコン膜を堆積することができるので、Cu配線19のTDDB特性を向上させることができる。
【0068】
Cu配線19上の炭窒化シリコンは、表3の堆積シーケンスに従って形成することもできる。
【0069】
【表3】

【0070】
まず、Cu配線19の形成および洗浄が完了した基板1をチャンバ53内に搬入して下部電極51上に搭載する。このとき、チャンバ53内の圧力は実質的に0torrである。下部電極51の温度は、基板1をチャンバ53内に搬入してから炭窒化シリコン膜の堆積が完了するまでの間、常に350℃となるように設定する(ステップ1)。
【0071】
次に、アンモニアをキャリアガス(窒素)と共にチャンバ53内に供給し、約30秒間予備加熱を行う。チャンバ53内に供給するアンモニアの流量は160sccm、このときのチャンバ内圧力は4.2torrである(ステップ2)。
【0072】
次に、RF電源55をオンにしてパワーを240Wに設定し、下部電極51の上面近傍でアンモニアをプラズマ分解することによって、Cu配線19の表面を約10秒間還元処理する(ステップ3)。ここまでは、アンモニアのキャリアガスがヘリウムから窒素に代わった他は、表3の堆積シーケンスとほぼ同じである。
【0073】
次に、RF電源55をオフにしてチャンバ53内のガスを排気する(ステップ4)。これは、後のステップ5でチャンバ53内に供給するアンモニアのキャリアガスとステップ6でチャンバ53内に供給するアンモニアのトリメチルシランのキャリアガスがヘリウムであるため、ガス流量と圧力を調整する必要があるためである。
【0074】
次に、RF電源55をオフにしたまま、アンモニアをキャリアガス(ヘリウム)と共にチャンバ53内に供給する。チャンバ53内に供給するアンモニアの流量は330sccm、このときのチャンバ内圧力は3.0torrである。(ステップ5)。
【0075】
次に、RF電源55をオンにしてRFパワーを500Wに設定すると同時に、トリメチルシランをキャリアガス(ヘリウム)と共にチャンバ53内に供給する。チャンバ53内に供給するトリメチルシランの流量は170sccm、このときのチャンバ内圧力は3.0torrである。これにより、下部電極51の上面近傍においてトリメチルシランとアンモニアがプラズマ分解され、Cu配線19の表面を含む基板1上に炭窒化シリコン膜が堆積する。炭窒化シリコンの堆積時間は約30秒、膜厚は50nm〜75nmである(ステップ6)。
【0076】
次に、RF電源55をオフにすると共に、トリメチルシランとアンモニアの供給を停止する。続いて、チャンバ内の未反応ガスを減圧ポンプ54で排気した後、基板1をチャンバ53から取り出す(ステップ7)。
【0077】
上記したステップ1〜ステップ7に従って炭窒化シリコン膜を堆積する場合も、RF電源55がオフのときにはチャンバ53内にトリメチルシランを供給せず、RF電源55がオンになってからトリメチルシランを供給することにより、Cu配線19の表面に異常成膜が発生することなく、高純度の炭窒化シリコン膜を堆積することができる。また、ステップ6でまずRFパワーを500Wに設定し、その後、トリメチルシランをチャンバ53内に供給してもよく、この場合も同様の効果を得ることができる。
【0078】
図8は、トリメチルシランとアンモニアの混合ガスを用い、表2のステップ1〜ステップ5に従って形成した炭窒化シリコン膜の組成をXPS分析(X-ray photoelectron spectroscopy analysis)法によって調べた結果を示すグラフであり、(a)はCu配線19との界面近傍における組成、(b)はCu配線19との界面から離間した領域における組成をそれぞれ示している。グラフから明らかなように、Cu配線19との界面近傍における組成は、シリコン(Si)−炭素(C)結合が59%、シリコン(Si)−窒素(N)結合が41%であり、極めて純度の高い炭窒化シリコン膜であった。これに対し、Cu配線19との界面から離間した領域における組成は、シリコン−炭素結合が44%、シリコン−窒素結合が52%、SiOが3%であり、Cu配線19との界面近傍に比べてシリコン−窒素結合の割合が高いという特徴が見られた。
【0079】
次に、図9に示すように、Cu配線19の上層に層間絶縁膜23およびキャップ絶縁膜24を順次堆積する。層間絶縁膜23は、Cu配線19と後の工程で形成する第2層目のCu配線との間に形成される容量を低減するために、誘電率の低い絶縁膜、例えばSiOC膜で構成する。SiOC膜はCVD法で堆積し、その膜厚は460nm程度とする。また、層間絶縁膜23の上部に形成するキャップ絶縁膜24は、下層のキャップ絶縁膜18と同じく、機械的強度が低いSiOC膜からなる層間絶縁膜23を保護するための絶縁膜であり、例えばCVD法で堆積した膜厚50nm程度の酸化シリコン膜で構成する。
【0080】
次に、図10に示すように、キャップ絶縁膜24上に反射防止膜25を形成し、反射防止膜25上にフォトレジスト膜26を形成する。反射防止膜25は、フォトレジスト膜26を露光する際、Cu配線19の表面で反射した露光光がフォトレジスト膜26に入射して解像度を低下させるのを防ぐために形成する。フォトレジスト膜26は、ビアホールパターンが形成されたフォトマスク(図示せず)を使って露光を行い、続いて現像を行うことにより、ビアホール形成領域が開口されたパターンを転写する。
【0081】
次に、図11に示すように、フォトレジスト膜26をマスクにして反射防止膜25、キャップ絶縁膜24および層間絶縁膜23を順次ドライエッチングすることにより、Cu配線19の上部にビアホール27を形成する。
【0082】
次に、フォトレジスト膜26と反射防止膜25とを除去した後、図12に示すように、ビアホール27の内部に埋め込み剤28を充填する。埋め込み剤28は、反射防止膜25とほぼ同一組成の絶縁材料からなる。埋め込み剤28を充填するには、ビアホール27の内部を含むキャップ絶縁膜24上に埋め込み剤28をスピン塗布して硬化させた後、ビアホール27の外部の埋め込み剤28をエッチバックにより除去する。Cu配線19と後に形成する第2層配線とを接続するビアホール27の径は、比較的小さい。そのため、このエッチバックを行うと、ビアホール27に充填された埋め込み剤28の表面は、ほぼ平坦な面となり、かつキャップ絶縁膜24の表面とほぼ同じ高さになる。
【0083】
次に、図13に示すように、キャップ絶縁膜24上に反射防止膜30を形成し、反射防止膜30上にフォトレジスト膜31を形成する。フォトレジスト膜31は、配線溝パターンが形成されたフォトマスク(図示せず)を使って露光を行い、続いて現像を行うことにより、配線溝形成領域が開口されたパターンを転写する。
【0084】
次に、図14に示すように、フォトレジスト膜31をマスクにして反射防止膜30およびキャップ絶縁膜24を順次ドライエッチングし、続いて層間絶縁膜23をその途中までドライエッチングすることにより、配線溝32を形成する。
【0085】
次に、フォトレジスト膜31を除去した後、図15に示すように、キャップ絶縁膜24上の反射防止膜30をドライエッチングで除去する。このとき、ビアホール27に充填された埋め込み剤28とその下層の窒化シリコン膜21もエッチングし、ビアホール27の底部にCu配線19の表面を露出させる。
【0086】
次に、図16に示すように、配線溝32およびビアホール27の内部に第2層目のCu配線33を形成する。Cu配線33を形成するには、まず、配線溝32およびビアホール27の内部を含むキャップ絶縁膜24上に50nm程度の薄いTiN膜(バリアメタル膜)をスパッタリング法で堆積する。続いて、このTiN膜上に配線溝32およびビアホール27の内部を完全に埋め込む厚いCu膜をスパッタリング法またはメッキ法で堆積した後、配線溝32の外部のCu膜とバリアメタル膜とを化学的機械研磨法によって除去する。
【0087】
次に、基板1を洗浄処理部に搬送し、上記化学的機械研磨処理によって基板1の表面に付着したスラリなどの異物を除去するための洗浄を行った後、図17に示すように、基板1上に膜厚50nm〜75nm程度の炭窒化シリコン膜34を堆積することによって、Cu配線33の表面を炭窒化シリコン膜34で被覆する。炭窒化シリコン膜34は、Cu配線33の表面からCuイオンが拡散するのを防止するバリア膜として機能する。
【0088】
Cu配線33の表面を覆う炭窒化シリコン膜34は、前記図6に示すRFプラズマCVD装置50を用いて第1層目のCu配線19上に炭窒化シリコンを堆積する場合と同じように、前記表2の堆積シーケンスに従って形成することができる。また、Cu配線33上に形成するバリア膜は、上記炭窒化シリコン膜34に代えて窒化シリコン膜で構成することもできる。この場合は、前記図6に示すRFプラズマCVD装置50を用いて第1層目のCu配線19上に窒化シリコン21を堆積する場合と同じように、前記表1の堆積シーケンスに従って形成することができる。
【0089】
Cu配線33の表面を覆う炭窒化シリコン膜34は、前記図6に示すRFプラズマCVD装置50を用い、次の表4に示す堆積シーケンスに従って形成することもできる。
【0090】
【表4】

【0091】
前記表3に示す堆積シーケンスとの相違は、ステップ5である。すなわち、表3に示す堆積シーケンスでは、RF電源55をオフにした状態でチャンバ53内にトリメチルシランを供給しないのに対し、表4に示す堆積シーケンスでは、RF電源55をオフにした状態でチャンバ53内にトリメチルシランを供給する。ただし、この場合は、基板1の温度が350℃以上になっていると、トリメチルシランの熱分解によってCu配線19の表面に異常成膜が発生する。従って、基板1を搭載する下部電極51の温度は、基板1をチャンバ53内に搬入してから炭窒化シリコン膜34の堆積が完了するまでの間、常に350℃未満、例えば335℃となるように設定する。
【0092】
図18は、表4のステップ1〜ステップ7に従って形成した炭窒化シリコン膜34のCu配線33との界面近傍における組成をXPS分析法によって調べた結果を示すグラフである。このグラフから、炭窒化シリコン膜34のCu配線33との界面には、膜厚5nm以下、最大でも8nm以下の極めて薄い窒化シリコン膜が形成されていることが判明した。
【0093】
これは、基板1の温度が350℃未満に設定されているときに、RF電源55をオフにした状態でチャンバ53内にアンモニアとトリメチルシランを供給した場合、アンモニアのN−H結合とトリメチルシランのSi−CH結合はCu配線33の表面近傍で解離するのに対して、比較的結合力の大きいメチル基(CH)のC−H結合は解離しないため、アンモニアに由来するNとトリメチルシランに由来するSiとが結合して窒化シリコン膜が生成するためであると考えられる。また、基板1の温度が350℃未満に設定されているときは、チャンバ53内の微量酸素が窒化シリコン膜中のシリコンと結合しないために、酸化シリコンを含まない高純度の窒化シリコン膜が得られるものと考えられる。また、トリメチルシランに代えてテトラメチルシランを用いた場合も、同様の理由から炭窒化シリコン膜34のCu配線33との界面に極めて薄い窒化シリコン膜が形成される。
【0094】
このように、表4のステップ1〜ステップ7に従って形成した炭窒化シリコン膜34は、Cu配線33との界面に窒化シリコン膜が形成されるので、炭窒化シリコン膜単体に比べてCu配線33との密着性が向上する。また、窒化シリコン膜は、炭窒化シリコン膜に比べてCuイオンの拡散を防ぐバリア性も高いので、炭窒化シリコン膜単体に比べてCu配線33のTDDB特性をより一層向上させることができる。さらに、Cu配線33との界面に形成される窒化シリコン膜は炭窒化シリコン膜34に比べて極めて薄いため、炭窒化シリコン膜単体と比べた誘電率の増加も極めて僅かである。
【0095】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、ダマシン法を用いてCu配線を形成する半導体集積回路装置に適用して有用なものである。
【符号の説明】
【0097】
1 半導体基板
2 素子分離溝
3 酸化シリコン膜
4 p型ウエル
5 n型ウエル
6 ゲート絶縁膜
7 ゲート電極
8 サイドウォールスペーサ
9 Co(コバルト)シリサイド膜
11 n型半導体領域(ソース、ドレイン)
12 p型半導体領域(ソース、ドレイン)
13 窒化シリコン膜
14 酸化シリコン膜
15 コンタクトホール
16 プラグ
17 SiOC膜
18 キャップ絶縁膜
19 Cu配線
20 配線溝
21 窒化シリコン膜
23 層間絶縁膜
24 キャップ絶縁膜
25 反射防止膜
26 フォトレジスト膜
27 ビアホール
28 埋め込み剤
30 反射防止膜
31 フォトレジスト膜
32 配線溝
33 Cu配線
34 炭窒化シリコン膜
50 RFプラズマCVD装置
51 下部電極
52 上部電極
53 チャンバ
54 減圧ポンプ
55 RF電源
56 アンモニア供給源
57 モノシラン供給源
58 キャリアガス供給源
59 配管
60 バルブ
61 マスフローコントローラ
62 バルブ
63 配管
64 ファイナルバルブ
65 配管
Qn nチャネル型MISFET
Qp pチャネル型MISFET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にダマシン法を用いてCu配線を形成した後、前記Cu配線上にCuの拡散を防止するバリア膜を形成する半導体集積回路装置の製造方法であって、
(a)前記Cu配線が形成された前記半導体基板をプラズマCVD装置のチャンバ内に搬入し、前記半導体基板を所定の温度に加熱する工程と、
(b)前記チャンバ内にアンモニアを供給し、第1のRFパワーで前記アンモニアをプラズマ分解することによって、前記Cu配線の表面を還元処理する工程と、
(c)前記RFパワーが印加された状態で、前記チャンバ内にアンモニアとシラン系ガスとを含む原料ガスを供給し、第2のRFパワーで前記アンモニアと前記シラン系ガスとをプラズマ分解することによって、前記Cu配線上に前記バリア膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体集積回路装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(b)と前記工程(c)との間に、前記RFパワーをオフにしないことを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路装置の製造方法。
【請求項3】
前記シラン系ガスはモノシランであり、前記バリア膜は窒化シリコンを主成分とする膜であることを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路装置の製造方法。
【請求項4】
前記シラン系ガスはトリメチルシランまたはテトラメチルシランであり、前記バリア膜は炭窒化シリコンを主成分とする膜であることを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2のRFパワーは、前記第1のRFパワーよりも大きく、前記第1のRFパワーから前記第2のRFパワーへの切り替えを連続的に行うことを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(b)と前記工程(c)との間に、前記RFパワーをオフにする工程を含み、前記工程(c)で前記RFパワーを印加すると同時に、または前記RFパワーを印加した後に、前記チャンバ内に前記原料ガスを供給することを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−60148(P2012−60148A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248345(P2011−248345)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2007−530868(P2007−530868)の分割
【原出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】