説明

半導体集積回路

【課題】回路面積の小さく、配線長の短い、高性能な半導体集積回路を提供する。
【解決手段】多層構造で構成される半導体集積回路であって、複数の半導体層にそれぞれ形成された複数のトランジスタによって、複数の信号線の間をそれぞれスイッチングするスイッチブロックと、複数の半導体層のそれぞれに形成され、複数の信号線のそれぞれに接続された複数の論理ブロックとを備える。第1スイッチブロックは、複数の信号線の間の接続形態を変更することができるプログラマブルスイッチブロックである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路に関する。特に本発明は、多層構造で構成されるプログラマブルな半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のプログラマブルな半導体集積回路10の構成を示す。半導体集積回路10は、プログラム可能に組み合わせられた論理回路やフリップフロップ回路等の遅延回路が内蔵されたCLB(Configurable Logic Block)14と、複数のプログラマブルスイッチによって複数のCLB間をスイッチングするPSM(Programmable Switch Matrix)12とを備える。
【0003】
図2は、PSM12の構成を示す。PSM12は、複数のプログラマブルスイッチ16を有し、それぞれのプログラマブルスイッチ16は、4本の配線を相互にスイッチングする。図3は、プログラマブルスイッチ16の構成を示す。プログラマブルスイッチ16は、例えば、4本の配線に対して6個のスイッチ18、20、22、24、26、及び28を備え、4本の信号線の間を相互にスイッチングする。半導体集積回路10は、CLB14の論理動作とPSMのスイッチング動作とが外部からの制御信号で指定されることにより、所望の回路動作を実現する。
【0004】
図4は、メッシュ型の配線構造の半導体集積回路10をグラフ化したものを示す。メッシュ型の配線構造の半導体集積回路10において、複数のノード30は、配線32によってメッシュ型に接続される。ノード30は、例えばCLB14である。なお、ノード30の階層に応じてLevel1、2、3・・・を定義する。
【0005】
また、次のように用語を定義する。配線数とは、ある型のグラフを構成するために必要な配線の数をいう。例えば図4のグラフでは配線数は12である。経路とは、2つのノード間で通信するために通過する最小の配線の数をいう。最長経路とは、経路が最大となる2つのノード間の経路をいう。隣接とは、経路が1である2つのノードの関係をいう。分岐数とは、あるノードに隣接可能なノードの数をいう。
【0006】
図5及び図6は、ツリー型の配線構造の半導体集積回路をグラフ化したものを示す。ツリー型の配線構造の半導体集積回路において、複数のノード34は、配線36によってツリー型に接続される。ノード34aは、例えばPSMであり、ノード34bは、例えばCLBである。なお、図5及び図6に示すように、ノード34の階層に応じてLevel1、2、3・・・を定義する。
【0007】
Level1のノードは、1つだけであり、このノードをルートノードという。また、P分木ツリー型の配線構造の半導体集積回路において、ノード34に親子関係が存在する。即ち、Level(L)のノードは、Level(L−1)のノードである親ノードと、P個のLevel(L+1)のノードである子ノードとに隣接する。
【0008】
図7は、メッシュ型の配線構造及びツリー型の配線構造におけるノード数Nと配線数との関係を示す。Level(L)におけるノード数は、メッシュ型の場合がLであり、P分木ツリー型の場合がPL−1である。また、Level(L)における配線数は、メッシュ型の場合が2L(L−1)であり、P分木ツリー型の場合がPL−1である。したがって、図7に示すように、メッシュ型の配線構造と2分木ツリー型の配線構造とでは、ノード数が同一であれば配線数もほぼ同一となるが、4分木ツリー型、8分木ツリー型と親ノードからの分岐数が大きくなるにつれて、配線数が小さくなる。
【0009】
図8は、メッシュ型の配線構造及びツリー型の配線構造におけるノード数Nと最長経路との関係を示す。Level(L)におけるノード数は、メッシュ型の場合がLであり、P分木ツリー型の場合がPL−1である。また、Level(L)における最長経路は、メッシュ型の場合が2(L−1)であり、P分木ツリー型の場合が2(L−1)である。したがって、図8に示すように、ノード数Nが40以上になると、2分木ツリー型、4分木ツリー型、8分木ツリー型のいずれもの配線構造であっても、ツリー型の配線構造より、最長経路が小さくなる。
【0010】
以上のように、ツリー型の配線構造は、配線数の面においても最長経路の面においても、メッシュ型の配線構造に比べて有利である。さらに、ツリー型の配線構造は、分岐数が大きい程、メッシュ型の配線構造に比べて有利である。
【0011】
【特許文献1】特開平5−53689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図9は、8入出力のPSMの平面図を示す。8入出力のPSMは、8本の信号線に対して28個のスイッチとしてのMOSFETを備え、8本の信号線の間を相互にスイッチングする。そのため、従来技術による半導体集積回路においてはMOSFETが一層の半導体層に平面的に配置されるので、多数のMOSFETを用いて複雑な回路を実装する場合に、回路面積が非常に大きくなってしまうという問題がある。したがって、ツリー型の配線構造は、上述のように、メッシュ型の配線構造に比べて有利であり、さらに分岐数が大きい程有利であるが、回路面積が大きくなってしまうことから実現が困難である。
【0013】
そこで本発明は、上記の課題を解決することができる半導体集積回路を提供することを目的とする。この目的は特許請求の範囲における独立項に記載の特徴の組み合わせにより達成される。また従属項は本発明の更なる有利な具体例を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の形態によると、多層構造で構成される半導体集積回路であって、複数の半導体層にそれぞれ形成された複数のトランジスタによって、複数の信号線の間をそれぞれスイッチングする第1スイッチブロックと、複数の半導体層のそれぞれに形成され、複数の信号線のそれぞれに接続された複数の第1論理ブロックとを備える。
【0015】
第1スイッチブロックは、複数の信号線の間の接続形態を変更することができるプログラマブルスイッチブロックであってもよい。
【0016】
第1論理ブロックは、論理回路の動作を変更することができるプログラマブル論理ブロックであってもよい。
【0017】
第1スイッチブロックは、第1半導体層に形成された複数の第1半導体層トランジスタと、第2半導体層に形成された複数の第2半導体層トランジスタとを有し、複数の第1論理ブロックのうちの複数の第1半導体層論理ブロックは、第1半導体層に形成され、複数の第1論理ブロックのうちの複数の第2半導体層論理ブロックは、第2半導体層に形成され、複数の第1半導体層論理ブロックは、複数の第1半導体層トランジスタのいずれかによって相互に接続され、複数の第2半導体層論理ブロックは、複数の第2半導体層トランジスタのいずれかによって相互に接続されてもよい。
【0018】
第1半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性と、第2半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性とは概ね同等であってもよい。
【0019】
第1半導体層論理ブロックと第2半導体層論理ブロックとは、第1半導体層トランジスタによって相互に接続されてもよい。
【0020】
デジタル信号を入力又は出力する第1半導体層論理ブロック及び第2半導体層論理ブロックは、複数の第1半導体層トランジスタのいずれかによって相互に接続され、アナログ信号を入力又は出力する第1半導体層論理ブロック及び第2半導体層論理ブロックは、複数の第2半導体層トランジスタのいずれかによって相互に接続されてもよい。
【0021】
複数の第1半導体層論理ブロックと複数の第2半導体層論理ブロックとは、第1半導体層又は第2半導体層における同一の位置に形成されてもよい。
【0022】
複数の第1論理ブロックのそれぞれは、複数の半導体層にそれぞれ形成された複数のトランジスタによって、複数の信号線の間をそれぞれスイッチングする第2スイッチブロックと、複数の半導体層のそれぞれに形成され、複数の信号線のそれぞれに接続された複数の第2論理ブロックとを有してもよい。
【0023】
一の第1論理ブロックが有する第2スイッチブロックは、複数の半導体層のうちの第1半導体層に形成された第1半導体層トランジスタと、複数の半導体層のうちの第1半導体層の上層である第2半導体層に形成された第2半導体層トランジスタとを有し、一の第1論理ブロックが有する複数の第2論理ブロックのうちの第1半導体層論理ブロックは、第1半導体層に形成され、一の第1論理ブロックが有する複数の第2論理ブロックのうちの第2半導体層論理ブロックは、第2半導体層に形成され、第1半導体層トランジスタ又は第2半導体層トランジスタは、第1半導体層論理ブロックと第2半導体層論理ブロックとに接続された信号線の間をスイッチングし、他の第1論理ブロックが有する第2スイッチブロックは、複数の半導体層のうちの第2半導体層の上層である第3半導体層に形成された第3半導体層トランジスタと、複数の半導体層のうちの第3半導体層の上層である第4半導体層に形成された第4半導体層トランジスタとを有し、他の第1論理ブロックが有する複数の第2論理ブロックのうちの第3半導体層論理ブロックは、第3半導体層に形成され、他の第1論理ブロックが有する複数の第2論理ブロックのうちの第4半導体層論理ブロックは、第4半導体層に形成され、第3半導体層トランジスタ又は第4半導体層トランジスタは、第3半導体層論理ブロックと第4半導体層論理ブロックとに接続された信号線の間をスイッチングし、第1スイッチブロックは、第1半導体層、第2半導体層、第3半導体層、及び第4半導体層のいずれかにそれぞれ形成された第1上位トランジスタ及び第2上位トランジスタを有し、第1上位トランジスタ又は第2上位トランジスタは、一の第2スイッチブロックと他の第2スイッチブロックとに接続された信号線の間をスイッチングしてもよい。
【0024】
なお上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となりうる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、回路面積の小さく、配線長の短い、高性能な半導体集積回路を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
図10は、本発明の第1実施形態に係る半導体集積回路100の一例をグラフ化したものを示す。半導体集積回路100は、PSM102及び複数のCLB104を備える。本例において、PSM102は、8入出力であり、8個のCLB104と接続される。即ち、半導体集積回路100は、8分木ツリー型のLEVEL2の配線構造を有する。PSM102は、本発明のスイッチブロックの一例であり、外部からの設定に基づき複数の信号線の間の接続形態を変更することができるプログラマブルスイッチブロックである。CLB104は、本発明の論理ブロックの一例であり、外部からの設定に基づき論理回路の動作を変更することができるプログラマブル論理ブロックである。
【0028】
PSM102は、複数の半導体層にそれぞれ形成された複数のMOSFETによって、複数のCLB104のそれぞれに接続される複数の信号線の間をそれぞれスイッチングする。複数のCLB104は、複数の半導体層のそれぞれに形成され、PSM102に接続された複数の信号線のそれぞれに接続される。
【0029】
以上のようにPSM102及びCLB104を多層構造で構成し、ツリー型の配線構造を有するプログラマブルな半導体集積回路100を、小さい回路面積で実装することができる。
【0030】
図11は、第1実施形態に係る半導体集積回路100の構成の一例を示す。半導体集積回路100は、PSM102と、CLB104と、PSM102から複数のCLB104のそれぞれへ信号を入力する複数の入力信号線101と、複数のCLB104のそれぞれからPSM102へ信号を出力する複数の出力信号線103とを備える。PSM102は、多層構造で構成され、それぞれの層に設けられたMOSFETで複数の入力信号線101及び複数の出力信号線103の間を相互にスイッチングすることによって、半導体集積回路100の所定の機能又はプログラマブルな機能を実現する。
【0031】
図12は、第1実施形態に係る半導体集積回路100の構成の他の例を示す。半導体集積回路100は、PSM102と、CLB104と、PSM102とCLB104との間で信号を伝送する複数の入出力信号線105とを備える。PSM102は、多層構造で構成され、それぞれの層に設けられたMOSFETで複数の入出力信号線105の間を相互にスイッチングすることによって、半導体集積回路100の所定の機能又はプログラマブルな機能を実現する。即ち、1本の信号線を入力信号線及び出力信号線として機能させてもよい。これにより、半導体集積回路100の配線量を低減することができる。
【0032】
図13は、第1実施形態に係るPSM102の構成の一例を断面図で示す。PSM102は、単結晶のシリコンで形成された第1半導体層400と、第1半導体層400に形成された複数のMOSFET404及び406と、第1半導体層400の上層である多結晶のシリコンで形成された第2半導体層408と、第2半導体層408に形成された複数のMOSFET410及び412と、第2半導体層408の上層である配線層414とを備える。MOSFET404及び406は、本発明の第1半導体層トランジスタの一例であり、MOSFET410及び412は、本発明の第2半導体層トランジスタの一例である。
【0033】
第1半導体層400に形成されたMOSFET404及び406、並び第2半導体層408に形成されたMOSFET410及び412が有するソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極は、配線層414に形成された配線416を介して、相互に又はCLB104等の外部に接続される。第1半導体層400に形成されたMOSFET404及び406に接続された配線416は、第2半導体層408に貫通して形成されたビアホールを経由して配線層414に接続される。また、MOSFET404又は406とMOSFET410及び412とは、第1半導体層400から第2半導体層408への方向において少なくとも一部分が重なっていることが好ましい。これにより、PSM102の回路面積を小さくすることができる。
【0034】
次に、PSM102の製造方法について説明する。まず、第1半導体層400を形成し、MOSFET404及び406を第1半導体層400に形成する。第1半導体層400にMOSFET404及び406を形成する場合、第1半導体層400に、ソース電極及びドレイン電極を形成した後、熱酸化によりゲート絶縁膜を形成して第1ゲート電極を形成する。次に、第1半導体層400上に第2半導体層408を堆積させ、MOSFET410及び412を第2半導体層400に形成する。第2半導体層408にMOSFET410及び412を形成する場合、第2半導体層408に、ソース電極及びドレイン電極を形成した後、ラジカル酸化又はラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成してゲート電極を形成する。次に、配線416を含む配線層414を形成する。
【0035】
第1半導体層400のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層408のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成しても、MOSFET404及び406のゲート絶縁膜の絶縁性は、MOSFET410及び412のゲート絶縁膜の絶縁性とは概ね同等に形成される。なお、図21から図24において、熱酸化により形成されたゲート絶縁膜と比較した、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたゲート絶縁膜の性能について説明する。
【0036】
以上のように、第1半導体層400のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層408のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、高性能なPSM102を製造することができる。即ち、第2半導体層408のゲート絶縁膜を高温プロセス(800度)である熱酸化によって生成する場合には、第1半導体層400に形成された配線、例えば融点が660度であるアルミニウムで形成された配線が融けてしまうので、PSM102を形成することができない。なお、第1半導体層400に融点が高いポリシリコン等で配線を形成することも考えられるが、配線の抵抗が高くなってしまうので、PSM102の性能を低下させてしまう。そこで、第2半導体層408のゲート絶縁膜を低電子温度プラズマ(400度)等のラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、第1半導体層400の配線をアルミニウム等の抵抗が低い金属により形成することができ、高性能なPSM102を製造することができる。
【0037】
一方、第1半導体層400のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層408のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、MOSFET404及び406のゲート絶縁膜は、MOSFET410及び412のゲート絶縁膜より絶縁性が高く、つまり、MOSFET404又は406のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性は、MOSFET410又は412のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性より高くなる場合には、MOSFET404及び406とMOSFET410及び412との電気的特性を統一するため、MOSFET404及び406を、MOSFET410及び412より小さくしてもよい。また、この場合、MOSFET404及び406のゲート電圧は、MOSFET410及び412のゲート電圧より小さく、MOSFET404及び406は、MOSFET410及び412より動作速度が速い。
【0038】
そこで、MOSFET404及び406又はMOSFET410及び412が伝送する信号を次にように決定することによって、MOSFET404及び406又はMOSFET410及び412を性能に応じて動作させ、PSM102全体として高性能に動作させてもよい。例えば、ゲート絶縁膜が熱酸化により形成されたMOSFET404及び406は、所定周波数より高い周波数の高周波信号を伝送し、ゲート絶縁膜がラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたMOSFET410及び412は、所定周波数より低い周波数の低周波信号を伝送する。他の例においては、ゲート絶縁膜が熱酸化により形成されたMOSFET404及び406は、アナログ信号を伝送し、ゲート絶縁膜がラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたMOSFET410及び412は、デジタル信号を伝送する。このように、熱酸化及びラジカル酸化又はラジカル窒化のいずれによってゲート絶縁膜が形成されたか否かによるMOSFETの性能に応じて異なる種類の信号を入出力させることによって、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたことによるMOSFETの性能の低下に起因するPSM102の性能の低下を防ぐことができる。
【0039】
図14は、第1実施形態に係るPSM102の構成の他の例を断面図で示す。PSM102は、単結晶のシリコンで形成された第1半導体層500と、第1半導体層500に形成された複数のMOSFET504及び506と、第1半導体層500の上層である多結晶のシリコンで形成された第2半導体層508と、第2半導体層508に形成された複数のMOSFET510及び512と、第2半導体層508の上層である多結晶のシリコンで形成された第3半導体層522と、第3半導体層522に形成された複数のMOSFET524及び526と、第1半導体層500と第2半導体層508との間に設けられた配線層514と、第2半導体層508と第3半導体層522との間に設けられ配線層518と、第3半導体層522の上層である配線層528とを備える。MOSFET504及び506は、本発明の第1半導体層トランジスタの一例であり、MOSFET510及び512は、本発明の第2半導体層トランジスタの一例であり、MOSFET524及び526は、本発明の第3半導体層トランジスタの一例である。
【0040】
配線層514には、第1半導体層500に形成されたMOSFET504及び506をMOSFET510、512、524、若しくは528又はCLB104等の外部と接続する金属配線516が形成されている。配線層518には、第2半導体層508に形成されたMOSFET510及び512をMOSFET504、506、524、若しくは526又は外部と接続する金属配線520が形成されている。配線層528には、第3半導体層522に形成されたMOSFET524及び526をMOSFET504、506、510、若しくは512又は外部と接続する配線530が形成されている。MOSFET504又は506とMOSFET510及び512とは、第1半導体層500から第2半導体層508への方向において少なくとも一部分が重なっていることが好ましく、MOSFET504又は506とMOSFET524及び526とは、第2半導体層508から第3半導体層522への方向において少なくとも一部分が重なっていることが好ましい。また、MOSFET504又は506とMOSFET524及び526とは、第2半導体層508又は第3半導体層における同一の位置に形成されてもよい。これにより、PSM102の回路面積を小さくすることができる。
【0041】
次に、PSM102の製造方法について説明する。まず、第1半導体層500を形成し、MOSFET504及び506を第1半導体層500に形成する。第1半導体層500にMOSFET504及び506を形成する場合、第1半導体層500に、ソース電極及びドレイン電極を形成した後、熱酸化によりゲート絶縁膜を形成して第1ゲート電極を形成する。次に、配線層514を第1半導体層500上に堆積させ、例えばアルミニウム等の金属を材料とする金属配線516を配線層514に形成する。次に、配線層514上に第2半導体層508を堆積させ、MOSFET510及び512を第2半導体層508に形成する。第2半導体層508にMOSFET510及び512を形成する場合、第2半導体層508に、ソース電極及びドレイン電極を形成した後、ラジカル酸化又はラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成してゲート電極を形成する。
【0042】
次に、配線層518を第2半導体層508上に堆積させ、例えばアルミニウム等の金属を材料とする金属配線520を配線層518に形成する。次に、配線層518上に第3半導体層522を堆積させ、MOSFET524及び526を第3半導体層522に形成する。第3半導体層522にMOSFET524及び526を形成する場合、第3半導体層522に、ソース電極及びドレイン電極を形成した後、ラジカル酸化又はラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成してゲート電極を形成する。次に、配線530を含む配線層528を形成する。なお、MOSFET510及び512は、同一のフォトマスクを用いて、第2半導体層508又は第3半導体層522における同一の位置に同一の構造で同一のプロセスにより形成される形成される。
【0043】
以上のように、第1半導体層500のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層508及び第3半導体層522のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、高性能なPSM102を製造することができる。即ち、第2半導体層508及び第3半導体層522のゲート絶縁膜を高温プロセス(800度)である熱酸化によって生成する場合には、第1半導体層500及び第2半導体層508に形成された配線、例えば融点が660度であるアルミニウムで形成された配線が融けてしまうので、PSM102を形成することができない。なお、第1半導体層500及び第2半導体層508に融点が高いポリシリコン等で配線を形成することも考えられるが、配線の抵抗が高くなってしまうので、PSM102の性能を低下させてしまう。そこで、第2半導体層508及び第3半導体層522のゲート絶縁膜を低電子温度プラズマ(400度)等のラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、第1半導体層500の配線をアルミニウム等の抵抗が低い金属により形成することができ、高性能なPSM102を製造することができる。
【0044】
また、MOSFET504又は506とMOSFET524及び526とを、第2半導体層508又は第3半導体層における同一の位置に同一のレイアウトパターンで形成することによって、同一のフォトマスクを繰り返し使用することができるので、マスクコストを低減することができる。また、第1半導体層500と第2半導体層508との間に配線層514を設け、また、第2半導体層508と第3半導体層522との間の配線層518を設けることによって、第2半導体層508及び第3半導体層522にビアホールを形成する必要がないので、回路の集積度を向上することができ、回路面積を小さくすることができる。
【0045】
第1半導体層500のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層508のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成しても、MOSFET504及び506のゲート絶縁膜の絶縁性は、MOSFET510、512、524、及び526のゲート絶縁膜の絶縁性とは概ね同等に形成される。なお、図21及び図22において、熱酸化により形成されたゲート絶縁膜と比較した、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたゲート絶縁膜の性能について説明する。
【0046】
一方、第1半導体層500のゲート絶縁膜を熱酸化により形成し、第2半導体層508及び第3半導体層522のゲート絶縁膜をラジカル酸化又はラジカル窒化により形成することによって、MOSFET504及び506のゲート絶縁膜は、MOSFET510、512、524、及び526のゲート絶縁膜より絶縁性が高くなり、MOSFET510及び512のゲート絶縁膜は、MOSFET524及び526のゲート絶縁膜と絶縁性が略同一である場合、つまり、MOSFET504又は506のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性は、MOSFET510、512、524、又は526のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性より高く、MOSFET510又は512のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性は、MOSFET524又は526のソース電極とドレイン電極との間の単位長さ当たりの絶縁性と略同一である場合には、MOSFET504及び506とMOSFET510、512、524、及び526との電気的特性を統一するため、MOSFET504及び506を、MOSFET510、512、524、及び526より小さく、MOSFET510及び512を、MOSFET524及び526と略同一の大きさにしてもよい。
【0047】
また、この場合、MOSFET504及び506のゲート電圧は、MOSFET510、512、524、及び526のゲート電圧より小さく、MOSFET510及び512のゲート電圧は、MOSFET524及び526のゲート電圧と略同一となる。また、MOSFET504及び506は、MOSFET510、512、524、及び526より動作速度が速く、MOSFET510及び512は、MOSFET524及び526と略同一の動作速度である。
【0048】
そこで、MOSFET504及び506又はMOSFET510、512、524、及び526が伝送する信号を次にように決定することによって、MOSFET504及び506又はMOSFET510、512、524、及び526を性能に応じて動作させ、PSM102全体として高性能に動作させてもよい。例えば、ゲート絶縁膜が熱酸化により形成されたMOSFET504及び506は、所定周波数より高い周波数の高周波信号を伝送し、ゲート絶縁膜がラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたMOSFET510、512、524、及び526は、所定周波数より低い周波数の低周波信号を伝送する。他の例においては、ゲート絶縁膜が熱酸化により形成されたMOSFET504及び506は、アナログ信号を伝送し、ゲート絶縁膜がラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたMOSFET510、512、524、及び526は、デジタル信号を伝送する。このように、熱酸化及びラジカル酸化又はラジカル窒化のいずれによってゲート絶縁膜が形成されたか否かによるMOSFETの性能に応じて異なる種類の信号を入出力させることによって、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたことによるMOSFETの性能の低下に起因するPSM102の性能の低下を防ぐことができる。
【0049】
図15及び図16は、第1実施形態に係るPSM102の構成の一例を平面図で示す。図15は、第1半導体層500及び配線層514の平面図であり、図16は、第2半導体層508及び配線層518の平面図である。
【0050】
図15に示すように、第1半導体層500には、MOSFET701〜718が形成されており、図16に示すように、第2半導体層508には、MOSFET719〜728が形成されている。PSM102は、複数の信号線601〜608の間をそれぞれスイッチングする8入出力のPSMであり、配線層514及び配線層518に形成された配線、並びにスルーホール801〜807によって、MOSFET701〜728は相互に接続され、MOSFET701〜728は、複数の信号線601〜608の間のいずれかをそれぞれスイッチングする。
【0051】
具体的には、MOSFET701は信号線601と信号線605との間を、MOSFET702は信号線602と信号線605との間を、MOSFET703は信号線603と信号線605との間を、MOSFET704は信号線604と信号線605との間を、MOSFET705は信号線601と信号線606との間を、MOSFET706は信号線602と信号線606との間を、MOSFET707は信号線603と信号線606との間を、MOSFET708は信号線604と信号線606との間を、MOSFET709は信号線601と信号線607との間を、MOSFET710は信号線602と信号線607との間を、MOSFET711は信号線603と信号線607との間を、MOSFET712は信号線604と信号線607との間を、MOSFET713は信号線602と信号線604との間を、MOSFET714は信号線601と信号線603との間を、MOSFET715は信号線602と信号線603との間を、MOSFET716は信号線601と信号線602との間を、MOSFET717は信号線603と信号線604との間を、MOSFET718信号線601と信号線604との間をそれぞれスイッチングする。
【0052】
また、MOSFET719は信号線605と信号線608との間を、MOSFET720は信号線605と信号線606との間を、MOSFET721は信号線607と信号線608との間を、MOSFET722は信号線606と信号線607との間を、MOSFET723は信号線605と信号線607との間を、MOSFET724信号線606と信号線608との間を、MOSFET725は信号線601と信号線608との間を、MOSFET726は信号線602と信号線608との間を、MOSFET727は信号線603と信号線608との間を、MOSFET728は信号線604と信号線608との間をそれぞれスイッチングする。
【0053】
以上のように、MOSFET701〜728を第1半導体層500及び第2半導体層508に分割し積層してPSM102を構成することによって、図9に示した従来技術による8入出力のPSMと比較すると明らかなように、PSM102の回路面積を小さくすることができる。そのため、チップ面積を小さくすることができるので配線長を短くすることができ、その結果、配線遅延時間が小さくなり、回路を高速で動作させることができる。
【0054】
また、図13及び図14において説明したように、第1半導体層500に形成されるMOSFET701〜718のゲート絶縁膜は、熱酸化により形成され、第2半導体層508に形成されるMOSFET719〜728のゲート絶縁膜は、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されることにより、MOSFET719〜728は、MOSFET701〜718より大きくなる場合には、第2半導体層518に形成されるMOSFETの数は、第1半導体層に形成されるMOSFETの数より少ないことが好ましい。これにより、第1半導体層500に形成される回路の回路面積と第2半導体層508に形成される回路の回路面積とを略等しくすることができるので、PSM102のチップ面積を小さくすることができる。
【0055】
図17及び図18は、第1実施形態に係る半導体集積回路100の構成の一例を示す、図17は、半導体集積回路100の構成を断面図で示し、図18は、半導体集積回路100の構成を平面図で示す。
【0056】
半導体集積回路100は、下層PSM108及び上層PSM110を有するPSM102と、複数のCLB104a〜104hとを備える。下層PSM108は、図16に示した第1半導体層に形成された、PSM102の一部である。また、上層PSM110は、図15に示した第2半導体層に形成された、PSM102の一部である。
【0057】
CLB104a〜104dは、本発明の第2半導体層論理ブロックの一例であり、第2半導体層に形成されている。また、CLB104e〜104hは、本発明の第2半導体層論理ブロックの一例であり、第1半導体層に形成されている。そして、CLB104a〜104hは、下層PSM108又は上層PSM110が有するMOSFETによって相互に接続されてスイッチングされる。なお、CLB104a〜104dとCLB104e〜104hとは、第1半導体層又は第2半導体層における同一の位置に形成されることが好ましい。これにより、半導体集積回路100の回路面積を小さくすることができる。
【0058】
第2半導体層に形成されたCLB104a〜104dは、第2半導体層に形成された上層PSM110が有する複数のMOSFETのいずれかによって相互に接続されることが好ましい。また、第1半導体層に形成されたCLB104e〜104hは、第1半導体層に形成された下層PSM108が有する複数のMOSFETのいずれかによって相互に接続されることが好ましい。このように、同一の半導体層に形成されたCLB間を、当該半導体層に形成されたMOSFETを介して接続することによってCLB間の配線長を短くすることができる。
【0059】
また、図13において説明したように、下層PSM108が有するMOSFETのゲート絶縁膜は、熱酸化によってゲート絶縁膜が形成され、上層PSM110が有するMOSFETのゲート絶縁膜は、ラジカル酸化又はラジカル窒化によって形成されているため、下層PSM108の方が上層PSM110より性能が高い。そのため、第1半導体層に形成されたCLB104a〜104dと第2半導体層に形成されたCLB104e〜104hとは、第1半導体層に形成された下層PSM108が有するMOSFETによって相互に接続されることが好ましい。
【0060】
また、同様の理由から、デジタル信号を入力又は出力するCLB104a〜104hは、第1半導体層に形成された下層PSM108が有する複数のMOSFETのいずれかによって相互に接続され、アナログ信号を入力又は出力するCLB104a〜104hは、第2半導体層に形成された上層PSM110が有する複数のMOSFETのいずれかによって相互に接続されることが好ましい。また、所定周波数より高い周波数の高周波信号を入力又は出力するCLB104a〜104hは、第1半導体層に形成された下層PSM108が有する複数のMOSFETのいずれかによって相互に接続され、所定周波数より低い周波数の低周波信号を入力又は出力するCLB104a〜104hは、第2半導体層に形成された上層PSM110が有する複数のMOSFETのいずれかによって相互に接続されることが好ましい。
【0061】
以上のように、CLB104a〜104hの機能に基づいてMOSFETを選択することによって、ラジカル酸化又はラジカル窒化により形成されたことによるMOSFETの性能の低下に起因するPSM102の性能の低下を防ぐことができ、半導体集積回路100全体として高性能に動作させることができる。
【0062】
図19は、本発明の第2実施形態に係る半導体集積回路200の一例をグラフ化したものを示す。以下に説明する部分を除き、構造、機能、作用、効果等において、第2実施形態に係る半導体集積回路200は、第1実施形態に係る半導体集積回路100と同一である。
【0063】
半導体集積回路200は、PSM202、複数のPSM204、及び複数CLB206を備える。本例において、PSM202は、8入出力であり、8個のPSM204と接続される。また、PSM204は、8入出力であり、8個のCLB206と接続される。即ち、半導体集積回路200は、8分木ツリー型のLEVEL3の配線構造を有する。PSM202及び204は、本発明のスイッチブロックの一例であり、外部からの設定に基づき複数の信号線の間の接続形態を変更することができるプログラマブルスイッチブロックである。CLB206は、本発明の論理ブロックの一例であり、外部からの設定に基づき論理回路の動作を変更することができるプログラマブル論理ブロックである。
【0064】
PSM202は、複数の半導体層にそれぞれ形成された複数のMOSFETによって、複数のPSM204のそれぞれに接続される複数の信号線の間をそれぞれスイッチングする。複数のPSM204は、複数の半導体層にそれぞれ形成された複数のMOSFETによって、PSM202及び複数のCLB206のそれぞれに接続される複数の信号線の間をそれぞれスイッチングする。複数のCLB206は、複数の半導体層のそれぞれに形成され、PSM204に接続された複数の信号線のそれぞれに接続される。
【0065】
以上のようにPSM202、PSM204、及びCLB206を多層構造で構成し、ツリー型の配線構造を有するプログラマブルな半導体集積回路100を、小さい回路面積で実装することができる。
【0066】
図20は、第2実施形態に係る半導体集積回路200の構成の一例を示す。
【0067】
半導体集積回路200は、上層PSM208及び下層PSM210を有するPSM202と、下層PSM212a及び上層PSM214aを有するPSM204aと、下層PSM212b及び上層PSM214bを有するPSM204bと、下層PSM212c及び上層PSM214cを有するPSM204cと、下層PSM212d及び上層PSM214dを有するPSM204dと、下層PSM212e及び上層PSM214eを有するPSM204dと、下層PSM212f及び上層PSM214fを有するPSM204fと、下層PSM212g及び上層PSM214gを有するPSM204gと、下層PSM212h及び上層PSM214hを有するPSM204hと、複数のCLB206a〜206h及びCLB206a’〜206h’とを備える。なお、PSM204e〜204h及びCLB206e〜204hは図示していない。
【0068】
なお、PSM202は、本発明の第1スイッチブロックの一例であり、図13又は図14に示した構造を有する。PSM204a、CLB206a、及びCLB206a’を含む全体で、PSM204b、CLB206b、及びCLB206b’を含む全体で、PSM204c、CLB206c、及びCLB206c’を含む全体で、PSM204d、CLB206d、及びCLB206d’を含む全体で、それぞれ本発明の第1論理ブロックの一例である。また、PSM204a〜204dのそれぞれは、本発明の第2スイッチブロックの一例であり、図13又は図14に示した構造を有する。また、CLB206a〜206d及びCLB206a’〜206d’のそれぞれは、本発明の第2論理ブロックの一例である。
【0069】
PSM204a及び204bは、第1半導体層及び第2半導体層に形成される。具体的には、下層PSM212a及び212bは、第1半導体層に形成され、上層PSM214a及び214bは、第2半導体層に形成される。また、PSM204c及び204dは、第3半導体層及び第4半導体層に形成される。具体的には、下層PSM212c及び212dは、第3半導体層に形成され、上層PSM214c及び214dは、第4半導体層に形成される。
【0070】
CLB206a及び206bは、第1半導体層に形成され、CLB206a’及び206b’は、第1半導体層の上層である第2半導体層に形成され、CLB206c及び206dは、第2半導体層の上層である第3半導体層に形成され、CLB206c’及び206d’は、第3半導体層の上層である第4半導体層に形成される。
【0071】
PSM202は、第1半導体層、第2半導体層、第3半導体層、及び第4半導体層のいずれかに形成される。本例では、下層PSM210が第1半導体層に形成され、上層PSM208が第3半導体層に形成される。他の例では、下層PSM210が第1半導体層に形成され、上層PSM208が第2半導体層に形成されてもよいし、下層PSM210が第2半導体層に形成され、上層PSM208が第3半導体層に形成されてもよいし、下層PSM210が第2半導体層に形成され、上層PSM208が第4半導体層に形成されてもよいし、下層PSM210が第3半導体層に形成され、上層PSM208が第4半導体層に形成されてもよい。また、PSM202は、第1半導体層、第2半導体層、第3半導体層、及び第4半導体層のうちの3つ又は4つの層に形成されてもよい。
【0072】
PSM202は、第1半導体層、第2半導体層、第3半導体層、及び第4半導体層のいずれかにそれぞれ形成された複数のMOSFETを有する。本例では、PSM202は、第1半導体層に形成された下層PSM210が含むMOSFET、及び第3半導体層に形成されたMOSFETを有する。PSM202が有するMOSFETは、PSM204a〜204dに接続された信号線の間をスイッチングし、PSM204a〜204dの接続形態を設定する。なお、PSM202が有するMOSFETは、本発明の第1上位トランジスタ又は第2上位トランジスタの一例である。
【0073】
PSM204aは下層PSM212aが有するMOSFETと、上層PSM214aが有するMOSFETとを有する。PSM204aが有するMOSFETは、複数のCLB206a及び206a’にそれぞれ接続された信号線の間をスイッチングし、複数のCLB206a及び206a’の接続形態を設定する。なお、下層PSM212aが有するMOSFETは、本発明の第1半導体層トランジスタの一例であり、上層PSM214aが有するMOSFETは、本発明の第2半導体層トランジスタの一例である。
【0074】
PSM204bは、下層PSM212bが有するMOSFETと、上層PSM214bが有するMOSFETとを有する。PSM204bが有するMOSFETは、複数のCLB206b及び206b’にそれぞれ接続された信号線の間をスイッチングし、CLB206b及び206b’の接続形態を設定する。なお、下層PSM212bが有するMOSFETは、本発明の第1半導体層トランジスタの一例であり、上層PSM214bが有するMOSFETは、本発明の第2半導体層トランジスタの一例である。
【0075】
PSM204cは、下層PSM212cが有するMOSFETと、上層PSM214cが有するMOSFETとを有する。PSM204cが有するMOSFETは、複数のCLB206c及び206c’にそれぞれ接続された信号線の間をスイッチングし、CLB206c及び206c’の接続形態を設定する。なお、下層PSM212cが有するMOSFETは、本発明の第3半導体層トランジスタの一例であり、上層PSM214cが有するMOSFETは、本発明の第4半導体層トランジスタの一例である。
【0076】
PSM204dは、下層PSM212dが有するMOSFETと、上層PSM214dが有するMOSFETとを有する。PSM204dが有するMOSFETは、複数のCLB206d及び206d’にそれぞれ接続された信号線の間をスイッチングし、CLB206d及び206d’の接続形態を設定する。なお、下層PSM212dが有するMOSFETは、本発明の第3半導体層トランジスタの一例であり、上層PSM214dが有するMOSFETは、本発明の第4半導体層トランジスタの一例である。
【0077】
以上のようにPSM202、PSM204a〜204d、並びにCLB206a〜206d及びCLB206a’〜206d’を多層構造で構成し、ツリー型の配線構造を有するプログラマブルな半導体集積回路100を、小さい回路面積で実装することができる。
【0078】
第1実施形態及び第2実施形態によれば、P分木ツリー型の配線構造を実現するために必要となるPSM102等の複雑な構造の回路を多層構造で構成することによって、単位面積当たりに実装するMOSFETの数を多くすることができる。この結果、従来技術による平面的にMOSFETが実装された回路よりも回路面積を小さくすることができ、また配線長を短くすることができる。配線長を短くすることができることにより、配線遅延時間が小さくなり、回路を高速に動作させることができる。
【0079】
図21は、ゲート絶縁膜に印加される電界とリーク電流の電流密度との関係を示す。横軸はゲート絶縁膜に印加される電界(MV/cm)であり、縦軸はリーク電流の電流密度(A/cm)である。そして、熱酸化により形成されたゲート絶縁膜(熱酸化膜:膜厚20.7nm)、熱酸化により形成されたゲート絶縁膜(熱酸化膜:膜厚15nm)、ラジカル酸化により形成されたゲート絶縁膜(ラジカル酸化膜:膜厚18.4nm)、ラジカル酸化により形成されたゲート絶縁膜(ラジカル酸化膜:膜厚9.4nm)、及びラジカル窒化により形成されたゲート絶縁膜(ラジカル窒化膜:膜厚9.8nm)についてリーク電流の大きさを比較する。なお、ゲート電極直下におけるキャリアの濃度を規定する不純物の濃度(substrate injection)が10−4cm−2である場合を示す。
【0080】
図21に示すように、ラジカル酸化膜のリーク電流は、熱酸化膜のリーク電流と概ね同等か、又は熱酸化膜のリーク電流より小さい。また、ラジカル窒化膜のリーク電流は、電界が約4(MV/cm)より大きい場合には膜厚が20.7nmの熱酸化膜のリーク電流より小さく、電界が約7(MV/cm)より大きい場合には膜厚が15nmの熱酸化膜のリーク電流より小さい。したがって、ラジカル酸化又はラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成した場合であっても、熱酸化によりゲート絶縁膜を形成した場合に比べて、より高性能なMOSFETを形成することができる。
【0081】
図22は、ゲート電圧とゲート絶縁膜の寿命との関係を示す。横軸はゲート電圧であり、縦軸はTDDB(酸化膜経時破壊)評価による半数のゲート絶縁膜が破壊されるまでの時間(寿命)である。そして、熱酸化により形成された熱酸化膜(Dry SiO)、及びラジカル窒化により形成されたラジカル窒化膜(Xe/NH、Ar/NH、Kr/NH)についての寿命を比較する。なお、熱酸化膜及びラジカル窒化膜の膜厚が2.4nmである場合を示す。
【0082】
図22に示すように、ラジカル窒化膜は、熱酸化膜に比べて寿命が約3万倍になる場合がある。また、熱酸化膜(Dry SiO)の寿命と、キセノンプラズマによるラジカル窒化により形成されたラジカル窒化膜(Xe/NH)の寿命とを例えば10年に設定すると、熱酸化膜(Dry SiO)の場合にはゲート電圧として2.1Vを印加することができるのに対し、ラジカル窒化膜(Xe/NH)の場合にはゲート電圧として3.0Vを印加することができる。したがって、ラジカル窒化によりゲート絶縁膜を形成した場合、熱酸化によりゲート絶縁膜を形成した場合に比べて、より動作速度が高速なMOSFETを形成することができる。
【0083】
図23は、ゲート絶縁膜の耐圧を示す。縦軸はワイブル分布であり、横軸はゲート絶縁膜に印加する電界(Breakdown Field)(MV/cm)である。ここでは、所定の電圧を印加した場合に絶縁破壊が起きる確率が50%であるときのワイブル分布を0とする。3.5nm、5.0nm、及び7.8nmの3種類の膜厚について実験した結果、低電子温度クリプトンプラズマを用いてラジカル酸化により形成されたゲート絶縁膜は、3種類の膜厚のすべてにおいて、熱酸化により形成されたゲート絶縁膜と概ね同等の耐圧を示している。したがって、低電子温度(400度)でも高品質なゲート絶縁膜を形成することができることが分かる。
【0084】
図24は、ゲート絶縁膜の膜厚と絶縁膜破壊までの電荷Qbdとの関係を示す。ここで、(破壊までの電荷Qbd)=(固定電流)×(破壊までの時間)であり、ゲート絶縁膜の信頼性指標のひとつである。横軸は実効的なゲート絶縁膜の膜厚であり、縦軸は歩留まり63%となる場合の電荷Qbdである。そして、熱酸化により形成された熱酸化膜、及びラジカル酸化により形成されたラジカル酸化膜について比較する。
【0085】
図24に示すように、実効的なゲート絶縁膜の膜厚が小さい場合(Teff<100A)、ラジカル酸化膜は、熱酸化膜に比べてQbd指標での信頼性が約1.5倍になる。これは、ラジカル酸化膜には、熱酸化膜よりも破壊されにくいことを意味する。したがって、ラジカル酸化によりゲート絶縁膜を形成した場合、熱酸化によりゲート絶縁膜を形成した場合に比べて、寿命が長いMOSFETを形成することができる。
【0086】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】半導体集積回路10の構成を示す図である。
【図2】PSM12の構成を示す図である。
【図3】プログラマブルスイッチ16の構成を示す図である。
【図4】メッシュ型の半導体集積回路10をグラフ化したものを示す図である。
【図5】ツリー型の半導体集積回路をグラフ化したものを示す図である。
【図6】ツリー型の半導体集積回路をグラフ化したものを示す図である。
【図7】ノード数Nと配線数との関係を示す図である。
【図8】ノード数Nと最長経路との関係を示す図である。
【図9】8入出力のPSMの平面図を示す図である。
【図10】半導体集積回路100の一例をグラフ化したものを示す図である。
【図11】半導体集積回路100の構成の一例を示す図である。
【図12】半導体集積回路100の構成の他の例を示す図である。
【図13】PSM102の構成の一例の断面図である。
【図14】PSM102の構成の他の例の断面図である。
【図15】第1半導体層500及び配線層514の平面図である。
【図16】第2半導体層508及び配線層518の平面図である。
【図17】半導体集積回路100の構成の断面図である。
【図18】半導体集積回路100の構成の平面図である。
【図19】半導体集積回路200の一例をグラフ化したものを示す図である。
【図20】半導体集積回路200の構成の一例を示す図である。
【図21】ゲート絶縁膜に印加される電界とリーク電流との関係を示す図である。
【図22】ゲート電圧とゲート絶縁膜の寿命との関係を示す図である。
【図23】ゲート絶縁膜の耐圧を示す図である。
【図24】ゲート絶縁膜の膜厚と絶縁膜破壊までの電荷との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0088】
100 半導体集積回路
101 入力信号線
102 PSM
103 出力信号線
104 CLB
105 入出力信号線
108 下層PSM
110 上層PSM
200 半導体集積回路
202 PSM
204 PSM
206 CLB
208 上層PSM
210 下層PSM
212 下層PSM
214 上層PSM
400 第1半導体層
404 MOSFET
406 MOSFET
408 第2半導体層
410 MOSFET
412 MOSFET
414 配線層
416 配線
500 第1半導体層
504 MOSFET
506 MOSFET
508 第2半導体層
510 MOSFET
512 MOSFET
514 配線層
516 金属配線
518 配線層
520 金属配線
522 第3半導体層
524 MOSFET
526 MOSFET
528 配線層
530 配線
601〜608 信号線
701〜728 MOSFET
801〜807 スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造で構成される半導体集積回路であって、
複数の半導体層にそれぞれ形成された複数のトランジスタによって、複数の信号線の間をそれぞれスイッチングする第1スイッチブロックと、
前記複数の半導体層のそれぞれに形成され、前記複数の信号線のそれぞれに接続された複数の第1論理ブロックと
を備える半導体集積回路。
【請求項2】
前記第1スイッチブロックは、前記複数の信号線の間の接続形態を変更することができるプログラマブルスイッチブロックである
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記第1論理ブロックは、論理回路の動作を変更することができるプログラマブル論理ブロックである
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記第1スイッチブロックは、
前記第1半導体層に形成された複数の第1半導体層トランジスタと、
前記第2半導体層に形成された複数の第2半導体層トランジスタと
を有し、
前記複数の第1論理ブロックのうちの複数の第1半導体層論理ブロックは、前記第1半導体層に形成され、
前記複数の第1論理ブロックのうちの複数の第2半導体層論理ブロックは、前記第2半導体層に形成され、
前記複数の第1半導体層論理ブロックは、前記複数の第1半導体層トランジスタのいずれかによって相互に接続され、
前記複数の第2半導体層論理ブロックは、前記複数の第2半導体層トランジスタのいずれかによって相互に接続される
請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記第1半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性と、前記第2半導体層トランジスタのゲート絶縁膜の絶縁性とは概ね同等である
請求項4に記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記第1半導体層論理ブロックと前記第2半導体層論理ブロックとは、前記第1半導体層トランジスタによって相互に接続される
請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
デジタル信号を入力又は出力する前記第1半導体層論理ブロック及び前記第2半導体層論理ブロックは、前記複数の第1半導体層トランジスタのいずれかによって相互に接続され、
アナログ信号を入力又は出力する前記第1半導体層論理ブロック及び前記第2半導体層論理ブロックは、前記複数の第2半導体層トランジスタのいずれかによって相互に接続される
請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記複数の第1半導体層論理ブロックと前記複数の第2半導体層論理ブロックとは、前記第1半導体層又は前記第2半導体層における同一の位置に形成される
請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項9】
前記複数の第1論理ブロックのそれぞれは、
複数の半導体層にそれぞれ形成された複数のトランジスタによって、複数の信号線の間をそれぞれスイッチングする第2スイッチブロックと、
前記複数の半導体層のそれぞれに形成され、前記複数の信号線のそれぞれに接続された複数の第2論理ブロックと
を有する請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項10】
一の前記第1論理ブロックが有する前記第2スイッチブロックは、
前記複数の半導体層のうちの第1半導体層に形成された第1半導体層トランジスタと、
前記複数の半導体層のうちの前記第1半導体層の上層である第2半導体層に形成された第2半導体層トランジスタと
を有し、
前記一の第1論理ブロックが有する前記複数の第2論理ブロックのうちの第1半導体層論理ブロックは、前記第1半導体層に形成され、
前記一の第1論理ブロックが有する前記複数の第2論理ブロックのうちの第2半導体層論理ブロックは、前記第2半導体層に形成され、
前記第1半導体層トランジスタ又は前記第2半導体層トランジスタは、前記第1半導体層論理ブロックと前記第2半導体層論理ブロックとに接続された信号線の間をスイッチングし、
他の前記第1論理ブロックが有する前記第2スイッチブロックは、
前記複数の半導体層のうちの前記第2半導体層の上層である第3半導体層に形成された第3半導体層トランジスタと、
前記複数の半導体層のうちの前記第3半導体層の上層である第4半導体層に形成された第4半導体層トランジスタと
を有し、
前記他の第1論理ブロックが有する前記複数の第2論理ブロックのうちの第3半導体層論理ブロックは、前記第3半導体層に形成され、
前記他の第1論理ブロックが有する前記複数の第2論理ブロックのうちの第4半導体層論理ブロックは、前記第4半導体層に形成され、
前記第3半導体層トランジスタ又は前記第4半導体層トランジスタは、前記第3半導体層論理ブロックと前記第4半導体層論理ブロックとに接続された信号線の間をスイッチングし、
前記第1スイッチブロックは、
前記第1半導体層、前記第2半導体層、前記第3半導体層、及び前記第4半導体層のいずれかにそれぞれ形成された第1上位トランジスタ及び第2上位トランジスタ
を有し、
前記第1上位トランジスタ又は前記第2上位トランジスタは、前記一の第2スイッチブロックと前記他の第2スイッチブロックとに接続された信号線の間をスイッチングする
請求項9に記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2006−32731(P2006−32731A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210698(P2004−210698)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(390005175)株式会社アドバンテスト (1,005)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】