説明

印刷検査装置および印刷検査方法

【課題】生産効率の向上と印刷精度確保のバランスがとれた最適な検査形態を実現することができる印刷検査装置および印刷検査方法を提供すること。
【解決手段】スクリーン印刷後の基板のクリーム半田の印刷状態を検査する印刷検査において、基板の回路形成面に設けられた電子部品接合用の電極に印刷される要素半田印刷部の形状および位置を示す単位形状・位置データを、検査形態に応じて選定されるグループ化条件に従ってデータ群に括ることによって検査用データを作成する。検査時の良否判定はこのデータ群毎に行い、判定結果を各データ群毎に表示する。これにより、検査対象の基板の特性に応じた最適な検査形態をフレキシブルに選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に印刷されたクリーム半田の印刷状態を検査する印刷検査装置および印刷検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品の実装においては、基板への電子部品の搭載に先立って基板の表面にクリーム半田が塗布される。クリーム半田塗布の方法としてはスクリーン印刷による方法が広く用いられており、印刷工程の後にはクリーム半田の印刷状態を検査する印刷検査が行われる。この印刷検査は、スクリーン印刷後の基板をカメラにより撮像し、撮像結果を画像処理することにより印刷部位に正しくクリーム半田が印刷されているか否かを判定するものである。
【0003】
ところで基板に実装される電子部品の特性は多種多様であり、上記の半田印刷工程においても印刷後に搭載される電子部品によって検査精度が異なる。すなわち、価格が高くしかも高信頼性が求められ、良好な印刷精度を要する電子部品が搭載される印刷部位については、印刷精度が確実に保証されるような方法で検査を行う必要がある。これに対し、半田接合が容易で印刷精度がさほど重要視されないような電子部品が搭載される印刷部位については、極力短時間で検査が完了するようにしなければならない。このため、検査を実行する印刷検査装置には、対象となる基板に搭載される電子部品の特性に応じて、フレキシブルな検査形態が可能であることが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら電子部品接合用の電極は、通常1枚の基板に数千から数万のオーダーで形成される場合が多い。このため上述のようにフレキシブルな検査形態を選択しようとすれば、基板品種を換えるたびに検査用データや検査対象範囲の入力をその都度行う必要があった。特に近年電子機器製造現場の生産形態における多品種少量型の割合が増大していることから、このようなデータ処理作業を多数の品種について高頻度で行う必要があり、この作業に多大な手間を要して生産性の向上が阻害される要因となっていた。このように従来の印刷検査装置は、生産効率の向上と印刷精度確保のバランスがとれた最適な検査形態を実現することが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、生産効率の向上と印刷精度確保のバランスがとれた最適な検査形態を実現することができる印刷検査装置および印刷検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の印刷検査装置は、スクリーン印刷後の基板のクリーム半田の印刷状態を検査する印刷検査装置であって、前記基板を撮像する撮像手段と、この撮像手段による前記基板の撮像結果と印刷検査実行に必要な検査用データとに基づいて前記印刷状態の良否判定を行う印刷判定手段と、判定結果を表示する表示手段とを備え、前記検査用データは、前記基板の回路形成面に設けられた電子部品接合用の電極に印刷により形成される要素半田印刷部の形状および位置を示す要素形状・位置データをグループ化条件に従って括ることによってデータ群に分類して作成され、前記表示手段は、判定結果を前記データ群に関連づけて表示する。
【0007】
請求項2記載の印刷検査装置は、請求項1記載の印刷検査装置であって、前記グループ
化条件は、前記基板の印刷面における幾何学的範囲に基づいて決定されており、前記印刷判定手段は検査実行範囲としてグループ化されたデータ群のみを用いて印刷状態の判定を行う。
【0008】
請求項3記載の印刷検査装置は、請求項1記載の印刷検査装置であって、前記グループ化条件は、前記電子部品の属性に基づいて決定されており、前記印刷判定手段は検査実行対象となる属性を有する電子部品としてグループ化されたデータ群のみを用いて印刷状態の判定を行う。
【0009】
請求項4記載の印刷検査装置は、請求項1記載の印刷検査装置であって、前記グループ化条件は、前記電子部品のそれぞれを1つのデータ群に対応させて決定されており、前記表示手段は前記判定結果を前記データ群毎に表示する。
【0010】
請求項5記載の印刷検査方法は、スクリーン印刷後の基板のクリーム半田の印刷状態を検査する印刷検査方法であって、前記基板の回路形成面に設けられた電子部品接合用の電極に印刷により形成される要素半田印刷部の形状および位置を示す単位形状・位置データをグループ化条件に従って括ることによってデータ群に分類して作成された検査用データおよび撮像手段による前記基板の撮像結果に基づいて前記印刷状態の良否判定を行う印刷判定工程と、判定結果を前記データ群に関連づけて表示する表示工程とを含む。
【0011】
請求項6記載の印刷検査方法は、請求項5記載の印刷検査方法であって、前記グループ化条件は、前記基板の印刷面における幾何学的範囲に基づいて決定されており、検査実行範囲としてグループ化されたデータ群のみを用いて印刷状態の判定を行う。
【0012】
請求項7記載の印刷検査方法は、請求項5記載の印刷検査方法であって、前記グループ化条件は、前記電子部品の属性に基づいて決定されており、検査実行対象となる属性を有する電子部品としてグループ化されたデータ群のみを用いて印刷状態の判定を行う。
【0013】
請求項8記載の印刷検査方法は、請求項5記載の印刷検査方法であって、前記グループ化条件は、前記電子部品のそれぞれを1つのデータ群に対応させて決定されており、前記判定結果を前記データ群毎に表示する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電極に印刷される単位印刷部の形状および位置を示す単位形状・位置データをグループ化条件に従って括ることによってデータ群に分類して作成された検査用データと撮像手段による基板の撮像結果を比較することにより印刷状態の判定を行い、判定結果をデータ群に関連づけて表示することにより、基板種類に応じて設定される検査の重要度や優先順位に従って検査を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の正面図、図2は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の側面図、図3は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の平面図、図4は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置による基板印刷面の平面図、図5は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の制御系の構成を示すブロック図、図6は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置のプログラム記憶部およびデータ記憶部の記憶内容を示す図、図7は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の要素半田印刷部の要素形状・位置データの説明図、図8は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の実装データおよびマスク開口パターンの説明図、図9は本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の検査しきい値ライブラリの説明図、図10は本発明の一実施の形態の印刷検査用データ作成処理のフロー図
、図11,図12,図13,図14は本発明の一実施の形態の印刷検査装置の表示画面を示す図である。
【0016】
まず図1、図2および図3を参照してスクリーン印刷装置の構造を説明する。このスクリーン印刷装置は、電子部品が実装される基板にクリーム半田を印刷する印刷機構のみならず、後述するように、印刷状態の良否を判定する印刷検査装置としての機能およびこの印刷検査において用いられる印刷検査用データを作成する印刷検査用データ作成装置としての機能をも併せ持った構成となっている。
【0017】
図1、図2において、基板位置決め部1は、X軸テーブル2およびY軸テーブル3よりなる移動テーブル上にθ軸テーブル4を段積みし、さらにその上にZ軸テーブル5を配設して構成されており、Z軸テーブル5上にはクランパ8によって挟み込まれた基板6を下方から保持する基板保持部7が設けられている。印刷対象の基板6は、図1,図3に示す搬入コンベア14によって基板位置決め部1に搬入される。基板位置決め部1を駆動することにより、基板6はXY方向に移動し、後述する印刷位置、基板認識位置に位置決めされる。印刷後の基板6は、搬出コンベア15によって搬出される。
【0018】
基板位置決め部1の上方には、スクリーンマスク10が配設されており、スクリーンマスク10はホルダ11にマスクプレート12を装着して構成されている。基板6は基板位置決め部1によってマスクプレート12に対して位置合わせされ下方から当接する。基板6の回路形成面の半田印刷範囲6a内には、図4(a)に示すように種類の異なる電子部品P1,P2,P3,P4を接合するための電極6b、6c、6d、6eが設けられている。
【0019】
スクリーンマスク10上には、スキージヘッド13が水平方向に往復動自在に配設されている。基板6がマスクプレート12の下面に当接した状態で、マスクプレート12上にクリーム半田9を供給し、スキージヘッド13のスキージ13aをマスクプレート12の表面に当接させて摺動させることにより、基板6の印刷面にはマスクプレート12に設けられたパターン孔16を介してクリーム半田9が印刷される。これにより、図4(b)に示すように、電極6b、6c、6d、6e上にはそれぞれ要素半田印刷部S1,S2,S3,S4が形成される。
【0020】
スクリーンマスク10の上方には、撮像手段であるカメラ20が設けられている。図3に示すように、カメラ20はX軸テーブル21およびY軸テーブル22によってXY方向に水平移動する。X軸テーブル21およびY軸テーブル22は、カメラ20を移動させるカメラ移動手段となっている。カメラ20をカメラ移動手段によってマスクプレート12に対して移動させることにより、カメラ20はマスクプレート12の任意の位置を撮像する。
【0021】
基板位置決め部1は、図2に示すようにY軸テーブル3によってスクリーンマスク10の下方からY方向に移動して保持した基板6を基板認識位置まで移動させることができるようになっており、この状態でカメラ20を基板位置決め部1上の基板6に移動させることにより、カメラ20によって基板6の任意の位置を撮像することができる。
【0022】
次に、図5を参照してスクリーン印刷装置の制御系の構成について説明する。図5において、演算部25はCPUであり、プログラム記憶部26に記憶された各種プログラムを実行することにより、後述する各種演算・処理を行う。これらの演算・処理においては、データ記憶部27に記憶された各種のデータが用いられる。
【0023】
操作・入力部28は、キーボードやマウスなどの入力手段であり、各種の制御コマンド
やデータの入力を行う。通信部29はスクリーン印刷装置とともに電子部品実装ラインを構成する他装置との間でデータの授受を行う。画像処理部30は、カメラ20による撮像データを画像処理することにより、後述するように、印刷検査のための半田印刷部の認識や、印刷検査データ作成のためのマスク開口検出を行う。
【0024】
機構制御部31は、カメラ20を移動させるカメラ移動手段や、スキージヘッド13を移動させるスキージ移動手段を制御する。表示部32はディスプレイ装置であり、カメラ20によって取得された画像のほか、後述する印刷検査用データ作成処置における操作画面や、印刷検査の判定結果などの表示を行う表示手段となっている。
【0025】
次に図6を参照して、プログラム記憶部26およびデータ記憶部27にそれぞれ記憶されるプログラムおよびデータについて説明する。プログラム記憶部26には、印刷動作プログラム26a、画像処理プログラム26b、印刷良否判定プログラム26c、グループ化処理プログラム26d、検査しきい値付与処理プログラム26eが記憶されている。
【0026】
印刷動作プログラム26aは、基板位置決め部1およびスキージヘッド13の動作を制御して基板6へのクリーム半田9の印刷を行う印刷動作のためのプログラムである。画像処理プログラム26bは、画像処理部30がカメラ20の撮像結果に基づき、以下に説明する2種類の処理を行うためのプログラムである。
【0027】
まず、印刷後の基板6を撮像した撮像結果を認識処理することにより、基板6の各電極に形成された要素半田印刷部(図4(b)参照)を検出し、各要素半田印刷部の面積を算出する。また、マスクプレート12を撮像した撮像結果を認識処理することにより、マスクプレート12に設けられた各パターン孔16の位置と形状を示すマスク開口データを求める処理を行う。このマスク開口データは、印刷検査のための検査用データとして用いられる。
【0028】
印刷良否判定プログラム26cは、画像処理部30によって算出された要素半田印刷部の面積を検査しきい値(後述)と比較することによって、要素半田印刷部毎に印刷状態の良否判定を行う。すなわち、画像処理部30および演算部25が印刷良否判定プログラム26cを実行することにより実現される機能は、基板の撮像結果と印刷検査実行に必要な検査用データとに基づいて印刷状態の良否判定を行う印刷判定手段を構成する。
【0029】
グループ化処理プログラム26dは、印刷検査に用いられる検査用データの作成において、各要素半田印刷部の位置と形状を示す個別の要素位置・形状データを、特定のグループ化条件に従ってグループ化する処理を行うためのプログラムである。すなわち、演算部25がグループ化処理プログラム26dを実行することにより実現される機能は、要素形状・位置データをグループ化条件に従って括ることによってデータ群に分類して各データ群を特定するグループ化手段となっている。
【0030】
検査しきい値付与処理プログラム26eは、要素位置・形状データがグループ化されたデータ群に対して、検査しきい値を付与する処理を行うためのプログラムである。演算部25がグループ化処理プログラム26dを実行することにより実現される機能は、固有検査データである検査しきい値を付与する検査しきい値付与手段となっている。
【0031】
データ記憶部27には、実装データ27a、部品データライブラリ27b、マスク開口データライブラリ27c、検査しきい値ライブラリ27dおよび実行用データ27eが記憶されている。これらのデータのうち、実装データ27a、部品データライブラリ27b、マスク開口データライブラリ27c、検査しきい値ライブラリ27dは、通信部29を介してデータ管理用のコンピュータなどの他装置から転送され記憶される。
【0032】
実装データ27aは、クリーム半田印刷後の基板に対して電子部品を実装する実装動作において用いられるデータ、すなわち実装される電子部品の種類を基板上における実装位置座標と関連させたデータである。部品データライブラリ27bは、基板に実装される個々の電子部品に関するデータであり、電子部品の部品コード、実装動作における必要精度や半田接合のための半田印刷における難易度などを示す属性データとともに、部品形状・サイズや、半田接合時の要素半田印刷部の配置を示す部品別開口パターン(図8に示す33A,33B,33C,33D参照)を数値表現した数値データを含んでいる。
【0033】
実装データ27aと部品データライブラリ27bにより、マスクプレート12の個々のパターン孔16とこれらのパターン孔を介して印刷された半田印刷部に対応した電子部品とをデータ上で関連づけることができ、後述するように印刷検査用データ作成において、多種類のデータを相互にリンクさせてデータ作成処理の効率化を可能としている。
【0034】
マスク開口データライブラリ27cは、印刷に使用されるマスクプレート12のパターン孔16の開口位置やサイズを示す数値データを多種類の品種について記憶したものであり、個々のマスクプレートに付随したマスク開口データとして予め与えられる。すなわち、図7に示すマスクプレート12の例では、各パターン16a〜16dについてのデータが与えられ、例えばパターン孔16cについては、パターン孔サイズを示す寸法a、bや、基準原点に対する各パターン孔16cの位置座標値x1,x2,x3・・・、y1,y2,・・・が、数値データの形で与えられる。他のパターン孔についても同様である。
【0035】
後述するように、このマスク開口データは、印刷検査において図4(b)に示す要素半田印刷部(S1〜S4)の位置・形状を示す要素位置・形状データとして用いられる。したがって、マスク開口データライブラリ27cを含んだデータ記憶部27は、要素半田印刷部の形状および位置を示す要素形状・位置データを提供するデータ提供手段となっている。
【0036】
なお前述のように、マスクプレート12をカメラ20で撮像することによっても、パターン孔の開口位置や開口サイズを示すデータを取得することができることから、所要のマスク開口データがマスク開口データライブラリ27cに含まれていない場合には、現物のマスクプレート12を用いて図7に示すデータと同様のデータを取得することができる。この場合には、カメラ20および画像処理部30が、スクリーン印刷に用いられるマスクプレート12から検出されたマスク開口データに基づいて取得された要素形状・位置データを提供するデータ提供手段となる。
【0037】
さらには、要素形状・位置データを求める方法として、実装データ27a、部品データライブラリ27bに含まれるデータを組み合わせる方法を採用してもよい。すなわち、図8に示すように、実装データ27aから、電子部品P1,P2,P3,P4の実装位置を示す実装点M1,M2A,M2B,M3,M4を求め、これらの実装点に、部品データライブラリ27bの部品別開口パターン33A,33B,33C,33Dを重ね合わせることにより、マスク開口データと等価の数値データを得ることができる。
【0038】
検査しきい値ライブラリ27dは、印刷検査において用いられる検査しきい値を算出するためのデータを提供するデータライブラリである。本実施の形態においては、図9に示すように、パターン孔の開口タイプに関連づけられたライブラリおよび電子部品の種類に関連づけられたライブラリの2種類の検査しきい値ライブラリが準備されている。
【0039】
パターン孔の開口タイプに関連づけられたライブラリでは、しきい値算出のためのしきい値データが予め準備された開口タイプ毎に予め設定されている。パターン孔の開口タイ
プは、パターン孔の形状(正方形、長方形、円形など)とサイズの区分の組み合わせによって複数種類が設定される。すなわち対象とする開口部がどの開口タイプに該当するかを判断することにより、半田印刷面積をベースにした検査しきい値が算出できるようになっている。
【0040】
またパターン孔の開口タイプに関連づけられたライブラリでは、電子部品の種類(P1,P2,・・)が指定されることにより、同様のしきい値データが直接求められるようになっており、この場合には、開口タイプの種類判別を行う必要がない。いずれの例においても、しきい値データは、各要素半田印刷部の面積の正常範囲((−)OK〜(+)OK)、警告範囲((−)Warning〜(+)Warning)および不合格の下限および下限((−)NG、(+)NG)を、正規形状の要素半田印刷部の面積に対する百分率で規定している。
【0041】
実行用データ27eは、半田印刷に引き続いて実行される印刷後検査において実際に用いられる検査用データであり、後述するように印刷対象の基板品種が指定され、さらに当該基板において検査対象となる範囲が特定されることにより、これらの検査範囲に対応した検査データが作成され、データ記憶部27に実行用データ27eとして記憶される。
【0042】
このスクリーン印刷装置は上記のように構成されており、次に印刷検査用データ作成処理について、図10のフローに沿って各図を参照して説明する。このデータ作成処理は、スクリーン印刷後の基板のクリーム半田の印刷状態を検査する印刷検査装置に用いられ、印刷面にクリーム半田を印刷することにより形成された半田印刷部の形状および位置を示す形状・位置データを少なくとも含む検査用データを作成するものである。
【0043】
まず図10において、マスク開口データの読み込みが行われる(ST1)。これにより、表示部32に表示されるデータ作成処理用の操作画面40には、印刷範囲12a内における開口部の配置を示す開口パターンが表示される。これらの開口部は、回路形成面の各電極に形成された要素半田印刷部の形状および位置を示す要素形状・位置データに対応している。
【0044】
ここで、マスク開口データとしては、対象となるマスクプレート12に対応したマスク開口データがデータ記憶部27のマスク開口データライブラリ27cに使用される記憶されている場合には、このライブラリデータが用いられる。そしてこのライブラリデータが未入手である場合には、実装データ27aと部品データライブラリ27bから等価のマスクデータを作成する処理が行われる。さらに、これらの実装データ27aと部品データライブラリ27bが未入手であれば、前述のようにマスクプレート12を撮像して得られた画像データから開口部を検出して、要素形状・位置データとするデータ生成処理が行われる。
【0045】
次に表示された各パターン孔に対応したこれらの要素形状・位置データを、グループ化条件に従って括ることによってデータ群に分類して、各データ群を特定するグループ化処理が行われる(ST2)。このグループ化処理は、操作画面40上に表示された開口部を予め定められたグループ化条件に従って関連づけることによって、個々の要素形状・位置データをデータ群に括るものであり、グループ化処理プログラムによって自動的に行われる。
【0046】
ここでは、図12に示す操作画面40上に表示されるグループ条件選択ウイザード41によって、3つのグループ化条件、すなわち部品単位42a、属性指定42b、範囲指定42cによるグループ化条件のいずれかを選択することができるようになっている。この選択は、各選択肢のそれぞれに設けられたチェック枠43によって行われる。
【0047】
部品単位42aを選択すると、基板6に実装される電子部品のそれぞれを1つのグループとするようにグループ化条件が決定される。すなわち、図13(a)に示すように、4つの電子部品P1,P2,P3、P4を半田接合するために設けられた電極(図4参照)にそれぞれ対応したパターン孔16a、16b、16c、16dが、グループ化枠45a、45b、45c、45dによって囲まれ、これにより、個別のパターン孔に対応した要素形状・位置データは、各電子部品単位に括られてデータ群に分類され、これらのデータ群は各電子部品(P1,P2・・)によって特定される。
【0048】
また属性指定42bを選択すると、電子部品の属性に基づいてグループ化条件が決定される。すなわち、実装される全ての電子部品のうち、指定入力枠44に入力されることによって特定された属性を有する電子部品のみが、グループ化の対象となる。例えば、属性として電子部品の種類「QFP」を指定すると、図13(b)に示すように、当該種類に該当する電子部品P4に対応したパターン孔16dのみがグループ化枠45dによって囲まれる。これにより、パターン孔16dに対応した要素形状・位置データは、入力された属性によって括られたデータ群とそれ以外のデータ群とに分類され、括られたデータ群は、属性「QFP」によって特定される。
【0049】
範囲指定42cを選択すると、基板の印刷面における幾何学的範囲に基づいてグループ化条件が決定される。この場合には、図13(c)に示すように、操作画面上において、マウスなどのポインティングデバイスによってグループ化対象となるパターン孔(ここでは、パターン孔16c、16d)のみを囲むグループ化枠45eを設定する操作を行う。これにより、これらのパターン孔に対応した要素形状・位置データは、枠設定操作によって決定された幾何学的範囲に基づいて括られたデータ群と、それ以外のデータ群とに分類され、括られたデータ群は、指定された範囲の特性(例えば、「同一検査しきい値付与範囲」、「印刷検査対象範囲」など)によって特定される。
【0050】
このようにして、グループ化処理が完了したならば、検査実行対象の指定が行われる(ST3)。ここでは、グループ化処理によって分類されたデータ群を対象として、スクリーン印刷後の印刷検査の対象となるか否かを指定する。本実施の形態では、グループ化処理によってグループ化枠で囲まれた範囲は原則として検査実行対象となる。すなわち、属性指定42bや範囲指定42cの場合には、グループ化された範囲がそのまま検査実行対象となる。そして、前述の印刷判定手段は、検査実行対象としてグループ化された範囲に属するデータ群のみを用いて印刷状態の判定を行う。
【0051】
なお部品単位42aを選択した場合には、全電子部品に対応したパターン孔がグループ化の対象となるが、この場合においていずれかの電子部品について印刷検査が不要であると判断されたならば、操作画面40上でグループ化を解除する操作を行う。これにより、グループ化が解除されたパターン孔については検査対象から除外する処理が行われる。
【0052】
印刷検査においては、必ずしも基板全面を検査対象とする必要はなく、所要検査時間と必要な検査品質との兼ね合いで、その都度検査実行対象となる範囲をきめ細かく設定する必要があるが、上述のような方法を採用することによって、本実施の形態では簡便且つフレキシブルな設定操作方法が実現されている。
【0053】
次いで、検査しきい値の付与が行われる(ST4)。すなわち、検査実行対象として指定されたデータ群に対して固有の検査データとしての検査しきい値が付与され、各データ群に属する複数のパターン孔に対して、一括して検査しきい値が付与される。これにより、膨大な数のパターン孔を有する基板を対象とする場合においても、検査しきい値付与のためのデータ処理を容易にすることができる。
【0054】
そして各データ群毎に検査しきい値が付与された検査用データは、実行用データ27eとしてデータ記憶部27に記憶される。なお、上記フローにおいて、グループ化処理(ST2)、検査実行対象の指定(ST3)および検査しきい値の付与(ST3)は、上述の順序通りに行う必要は必ずしもなく、個々のデータ群について順不同で行ってもよい。
【0055】
この後、スクリーン印刷作業が開始される。まずマスクプレート12上にクリーム半田9が供給され、そして基板6をマスクプレート12の下面に当接させる。次いでスキージヘッド13を移動させて、クリーム半田9をパターン孔16a〜16cを介して基板6の各電極6b〜6d上に印刷する。この後、Z軸テーブル5を下降させて版離れを行うことにより、基板6の電極上には要素半田印刷部S1〜S4(図4参照)が形成される。
【0056】
この後、印刷検査が行われる。この印刷検査は、基板位置決め部1を再びスクリーンマスク10の下方から基板認識位置(図2参照)へ移動させ、カメラ20によって印刷後の基板6の上面を撮像して、要素半田印刷部S1〜S4の面積を検出することによって行われる。そしてこの面積検出結果を検査しきい値ライブラリ27dに基づいて求められた検査しきい値と比較することにより、印刷状態の良否が判定される(印刷判定行程)。
【0057】
ここで、印刷状態の最終判定はグループ化条件にしたがってグループ化されたデータ群に関連づけて判定され、判定結果の表示も同様にデータ群に関連づけてデータ群毎に行われる。例えば、グループ化が部品単位で行われている場合には、判定および判定結果の表示は部品単位で行われる。すなわち、各電子部品に対応した要素半田印刷部がすべて良好であれば、その電子部品についての半田印刷は良好であると判定され、1つでも印刷状態不良の要素半田印刷部が存在する場合には、その電子部品については、印刷状態不良であると判定される。
【0058】
そしてこれらの判定結果は、操作画面40上に表示される(表示工程)。図14は判定結果の表示例を示しており、判定結果はグループ化されたデータ群に関連づけて表示され、ここでは、判定結果の表示を電子部品単位および要素半田印刷部単位を併用して行われる例を示している。例えば、上述のように1つの電子部品に対応した半田印刷部がすべて良好で、その電子部品についての半田印刷は良好であると判定された電子部品については、画面上では特別な表示はなされず、印刷状態の不良が検出された要素半田印刷部およびこの要素半田印刷部に対応した電子部品について、不良表示が行われる。
【0059】
図14の例では、パターン孔16dによって電子部品P4に対応して印刷された半田印刷部に不良が検出された場合の例を示しており、P4を囲む枠が反転表示されることにより、不良箇所を電子部品単位で容易に確認できるようになっている。また不良が検出された要素半田印刷部に対応したパターン孔16d*が反転表示されるとともに、不良内容を示す表示欄46が当該パターン孔毎に対応して表示される。
【0060】
上記説明したように、本実施の形態に示す印刷検査においては、電極に印刷により形成される要素半田印刷部の形状および位置を示す要素形状・位置データを、対象とされる基板に応じて選択されるグループ化条件に従ってグループ化することによって作成された印刷検査用データを用いるようにしている。これにより、膨大な数の電子部品を有する基板を対象として印刷検査用データを作成する場合においてもデータ処理を効率的に行うことができる。
【0061】
したがって、基板や基板に実装される電子部品の特性に応じたフレキシブルな検査形態が可能となり、生産効率の向上と印刷精度確保のバランスがとれた最適な検査形態を実現することができる。また印刷検査の判定結果を、電子部品単位や部品種類単位など所望の
区分で表示させることができるため、不良箇所の特定が容易に行え、有用な品質管理データを入手することができる。
【0062】
なお、本実施の形態では、印刷検査機能を備えたスクリーン印刷装置によって印刷後の検査を行う形態を示しているが、スクリーン印刷装置とは別個に独立して専用の印刷検査装置を設ける場合にあっても、本実施の形態に示す構成を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の印刷検査装置および印刷検査方法は、生産効率の向上と印刷精度確保のバランスがとれた最適な検査形態を実現することができるという効果を有し、電子部品実装分野において基板に印刷されたクリーム半田の印刷状態を検査する用途に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の正面図
【図2】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の側面図
【図3】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の平面図
【図4】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置による基板印刷面の平面図
【図5】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の制御系の構成を示すブロック図
【図6】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置のプログラム記憶部およびデータ記憶部の記憶内容を示す図
【図7】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の要素半田印刷部の要素形状・位置データの説明図
【図8】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の実装データおよびマスク開口パターンの説明図
【図9】本発明の一実施の形態のスクリーン印刷装置の検査しきい値ライブラリの説明図
【図10】本発明の一実施の形態の印刷検査用データ作成処理のフロー図
【図11】本発明の一実施の形態の印刷検査装置の表示画面を示す図
【図12】本発明の一実施の形態の印刷検査装置の表示画面を示す図
【図13】本発明の一実施の形態の印刷検査装置の表示画面を示す図
【図14】本発明の一実施の形態の印刷検査装置の表示画面を示す図
【符号の説明】
【0065】
1 基板位置決め部
6 基板
6b,6c,6d,6e 電極
9 クリーム半田
12 マスクプレート
13 スキージヘッド
16、16a、16b、16c、16d パターン孔
20 カメラ
25 演算部
26 プログラム記憶部
26b 画像処理プログラム
26c 印刷良否判定プログラム
26d グループ化処理プログラム
26e 検査しきい値付与プログラム
27 データ記憶部
27c マスク開口データライブラリ
27d 検査しきい値ライブラリ
30 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン印刷後の基板のクリーム半田の印刷状態を検査する印刷検査装置であって、前記基板を撮像する撮像手段と、この撮像手段による前記基板の撮像結果と印刷検査実行に必要な検査用データとに基づいて前記印刷状態の良否判定を行う印刷判定手段と、判定結果を表示する表示手段とを備え、前記検査用データは、前記基板の回路形成面に設けられた電子部品接合用の電極に印刷により形成される要素半田印刷部の形状および位置を示す要素形状・位置データをグループ化条件に従って括ることによってデータ群に分類して作成され、前記表示手段は、判定結果を前記データ群に関連づけて表示することを特徴とする印刷検査装置。
【請求項2】
前記グループ化条件は、前記基板の印刷面における幾何学的範囲に基づいて決定されており、前記印刷判定手段は検査実行範囲としてグループ化されたデータ群のみを用いて印刷状態の判定を行うことを特徴とする請求項1記載の印刷検査装置。
【請求項3】
前記グループ化条件は、前記電子部品の属性に基づいて決定されており、前記印刷判定手段は検査実行対象となる属性を有する電子部品としてグループ化されたデータ群のみを用いて印刷状態の判定を行うことを特徴とする請求項1記載の印刷検査装置。
【請求項4】
前記グループ化条件は、前記電子部品のそれぞれを1つのデータ群に対応させて決定されており、前記表示手段は前記判定結果を前記データ群毎に表示することを特徴とする請求項1記載の印刷検査装置。
【請求項5】
スクリーン印刷後の基板のクリーム半田の印刷状態を検査する印刷検査方法であって、前記基板の回路形成面に設けられた電子部品接合用の電極に印刷により形成される要素半田印刷部の形状および位置を示す単位形状・位置データをグループ化条件に従って括ることによってデータ群に分類して作成された検査用データおよび撮像手段による前記基板の撮像結果に基づいて前記印刷状態の良否判定を行う印刷判定工程と、判定結果を前記データ群に関連づけて表示する表示工程とを含むことを特徴とする印刷検査方法。
【請求項6】
前記グループ化条件は、前記基板の印刷面における幾何学的範囲に基づいて決定されており、検査実行範囲としてグループ化されたデータ群のみを用いて印刷状態の判定を行うことを特徴とする請求項5記載の印刷検査方法。
【請求項7】
前記グループ化条件は、前記電子部品の属性に基づいて決定されており、検査実行対象となる属性を有する電子部品としてグループ化されたデータ群のみを用いて印刷状態の判定を行うことを特徴とする請求項5記載の印刷検査方法。
【請求項8】
前記グループ化条件は、前記電子部品のそれぞれを1つのデータ群に対応させて決定されており、前記判定結果を前記データ群毎に表示することを特徴とする請求項5記載の印刷検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−218925(P2007−218925A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104800(P2007−104800)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【分割の表示】特願2002−216327(P2002−216327)の分割
【原出願日】平成14年7月25日(2002.7.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】