説明

取付けフランジを有する複合材構造体を含む物品

【課題】取付けフランジを有する複合材構造体を含む物品を提供する。
【解決手段】本物品は、周辺部を有するファンケーシング(16)と、周辺部の周りでファンケーシング(16)に対して作動可能に連結された少なくとも1つの取付けフランジ(46)とを含み、取付けフランジ(46)は、少なくとも1つの円周方向に配向されたコア繊維(52)を有する。取付けフランジ(46)は、一方向性繊維トウ、織物プリフォーム及びそれらの組合せから成る群から選択された複数のコア繊維(52)を含むことができる。取付けフランジ(46)は、前記コア繊維(52)を前記主要複合材構造体(38)に対して作動可能に連結した少なくとも1つの付着繊維(54)の層をさらに含むこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載した実施形態は、総括的にはその上に配置された一体形取付けフランジを有する物品に関する。より具体的には、本明細書における実施形態は、総括的には補助的構造体をそれに作動可能に連結するための一体形取付けフランジを有する複合材構造体を含む物品について記述する。
【背景技術】
【0002】
航空機エンジンのようなガスタービンエンジンでは、空気は、エンジンの前面内に吸い込まれ、シャフト支持圧縮機によって加圧され、かつ燃焼器内で燃料と混合される。次に混合気は燃焼され、高温排出ガスが、同一のシャフト上に支持したタービンを通って流れる。燃焼ガスの流れは、タービン内で膨張し、タービンが次に、シャフトを回転させ、圧縮機に動力を提供する。高温排出ガスはさらに、エンジンの後部におけるノズル内で膨張して強力な推力を発生し、この推力により航空機を前方に駆動する。
【0003】
エンジンは多様な条件で作動するので、時として望ましくない異物がエンジン内に入るおそれがある。より具体的には、大型の鳥、雹粒、砂塵及び雨のような異物が、エンジンの吸気口内に進入するおそれがある。その結果、これらの異物は、ファンブレードに衝突し、衝突を受けたブレードの一部分をロータから遊離させるおそれがあり、これは一般にファンブレードアウトとして知られている。遊離したファンブレードは次に、ファンケーシングの内部に衝突して、ケーシングの一部分を膨出又は変形させるおそれがある。ケーシングのこの変形は、該エンジンケーシングの全周辺部に沿って大きな応力を生じさせる可能性がある。
【0004】
近年、複合材料は、それらの耐久性及び比較的軽量の故に、多様な航空宇宙用途における使用が益々普及してきた。複合材料は、優れた強度及び重量特性をもたらすことができ、またブレードアウトのような衝突時におけるファンケーシングに対する損傷度を軽減することができるが、複合材料で製作した構造体上にフランジを設計することは、依然として困難な課題として残っている。
【0005】
積層複合材構造体は一般に、連続強化繊維の存在により優れた面内強度を有する。しかしながら、複合材構造体の端部の周りではなく複合材構造体の本体の周りに設置された中間フランジに対して補助的構造体を取り付ける場合には、問題が生じる可能性がある。そのような問題は、フランジと主要複合材構造体との間の取付け又は結合の箇所において、一般に連続繊維が不足していることによって起こる。補助的構造体の重量によって生じる大きな面外荷重に加えて、この連続繊維の不足により、ファンブレードアウトにより生じる応力又は補助的構造体の重量のために本来的に存在する応力のような大きな応力によって損傷を受け易い脆弱な取付け結合部になるおそれがある。
【0006】
取付け箇所におけるそのような脆弱性に対処するために、付加的繊維又は金属ブラケットのような補助的補強を取付けフランジの結合部に対して与えることが望ましいことになる。しかしながら、これらの補強を加えた場合には、複合材構造体を使用することによって得られた重量軽減の利点が、大きく低下するおそれがある。さらに、付加的補強を加えた場合であっても、取付けフランジは、ブレードアウトによって引き起こされる付加的応力がある場合でも或いはない場合でも、取付けた補助的構造体の重量を適切に支持するのに十分なほどの強度を依然として有しない可能性がある。最終的には、既に脆弱化したフランジに対して絶え間なく応力が作用することにより、主要複合材構造体、取付け補助的構造体、エンジン又は航空機の1つ又はそれ以上に対する壊滅的破損が生じるおそれがある。
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0201135号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0134251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、上記の重量又は破損の問題がない状態で所望の取付けを可能にする一体形取付けフランジを有する複合材構造体を含む物品に対する必要性が未だに存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書における実施形態は、全体的には物品に関し、本物品は、周辺部を有する主要複合材構造体と、周辺部の周りで主要複合材構造体に対して作動可能に連結された少なくとも1つの取付けフランジとを含み、取付けフランジは、少なくとも1つの円周方向に配向されたコア繊維を含む。
【0009】
本明細書における実施形態はまた、全体的には物品に関し、本物品は、周辺部を有する主要複合材構造体と、少なくとも1つの円周方向に配向されたコア繊維を含む少なくとも1つの取付けフランジと、周辺部の周りで主要複合材構造体に対してコア繊維を作動可能に連結した少なくとも1つの付着繊維の層とを含む。
【0010】
本明細書における実施形態はまた、全体的にはエンジンを含む物品に関し、本エンジンは、周辺部を有する主要複合材構造体と、周辺部の周りで主要複合材構造体に対して作動可能に連結された少なくとも1つの取付けフランジとを含み、取付けフランジは、複数の円周方向に配向されたコア繊維を含み、コア繊維は、第1のコア側面と第2のコア側面とを有し、少なくとも1つの付着繊維の層が、周辺部の周りで主要複合材構造体に対してコア繊維の第1のコア側面及び第2のコア側面の各々を作動可能に連結し、また補助的構造体が、取付けフランジにおいて主要複合材構造体に対して作動可能に連結される。
【0011】
これらの及びその他の特徴、態様及び利点は、以下の開示から当業者には明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書は、本発明を具体的に指摘しかつ明瞭に特許請求している特許請求の範囲を伴っているが、本明細書に記載した実施形態は、同じ参照符号が同様な要素を表している添付図面を参照しながら以下の説明を読むことにより一層よく理解されるようになると思われる。
【0013】
一体形複合材取付けフランジ
本明細書に記載した実施形態は、全体的には、それに対して作動可能に連結された少なくとも1つの取付けフランジを有する主要複合材構造体を含む物品に関し、本物品は、主要複合材構造体と取付け補助的構造体との両方に対する厳しい部品損傷の発生を減少させると同時に、壊滅的な部品破損を排除するのを助けることができる。本明細書における実施形態では、全体としてガスタービンエンジンの複合材ファンケーシング上の一体形取付けフランジに焦点を当てているが、説明はそのようなものに限定されるべきではないことは、当業者には分かるであろう。実際に、以下の記述が説明しているように、本明細書に記載した一体形取付けフランジは、あらゆるほぼ円筒形状の複合材構造体上で利用することができる。
【0014】
図面を参照すると、図1は、一般にファン組立体12とコアエンジン14とを含むガスタービンエンジン10の1つの実施形態の概略図である。ファン組立体12は、ファンケーシング16と、ロータディスク20から半径方向外向きに延びるファンブレード18の列とを含むことができる。コアエンジン14は、高圧圧縮機22と、燃焼器24と、高圧タービン26と、低圧タービン28とを含むことができる。エンジン10は、吸入側30と排出側32とを有する。ファン組立体12と低圧タービン28とは、第1のロータシャフト34によって結合することができ、他方、高圧圧縮機22と高圧タービン26とは、第2のロータシャフト36によって結合することができる。
【0015】
図2は、許容可能な主要複合材構造体38の1つの実施形態を示している。本明細書で使用する場合、「複合材構造体(プリフォーム)」というのは、複合材料で製作されたあらゆる構成要素又はそのプリフォームを意味している。複合材構造体38は、ファンケーシング16のようなほぼ円筒形の部材を含むことができる。以後その円筒形部材は、それに限定されないが、ファンケーシング16と呼ぶことにする。ファンケーシング16は、形状がほぼ円筒形とすることができ、あらゆる許容可能な材料で製作することができる。しかしながら、1つの実施形態では、ファンケーシング16は、それに限定されないが、ガラス繊維、黒鉛繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)繊維(つまり、KEVLAR(登録商標))のような芳香族ポリアミド繊維、及びそれらの組合せのような複合材料で製作することができる。1つの実施形態では、複合材料は、炭素繊維を含むことができる。さらに、ファンケーシング16は、当業者には公知のあらゆる許容可能な製造方法を用いて製作することができる。例えば、Xie他の米国特許出願第2006/0201135号を参照されたい。
【0016】
ファンケーシング16は一般に、前端部42と後端部44とを有する本体40を含むことができる。本明細書で使用する場合に、「ファンケーシング」というのは、硬化前及び硬化後の複合材ファンケーシングの両方を指すために使用する。どちらの段階のファンケーシングについて述べているかは、当業者にはその記述から分かるであろう。ファンケーシング16はまた、少なくとも1つの一体形複合材取付けフランジ46を含むことができる。本明細書で使用する場合、「取付けフランジ」というのは、ファンケーシング16の本体40、又は以下に述べるように補助的構造体を主要構造体に対して作動可能に連結するために使用することができるその他の主要複合材構造体の周りで中間位置に円周方向に配置されたあらゆるフランジを意味している。「中間位置に配置された」というのは、取付けフランジ46が、前端部42又は後端部44のいずれかの周りではなくて、ファンケーシング16の本体40の周りに円周方向に設置することができることを意味している。
【0017】
ファンケーシング16はまた、当業者には公知のあらゆるツールを使用して製作することができる。例えば、Blanton他の米国特許出願第2006/0134251号を参照されたい。図3に示すような1つの実施形態では、複合材構造体成形ツール37は、周囲長を有しかつほぼ円筒形状のコア33を有し、またツール37のコア33に対して着脱自在に取付けることができる第1のエンドプレート72及び第2のエンドプレート84を含むことができる。
【0018】
次に図4を参照すると、一体形複合材取付けフランジ46は一般に、少なくとも1つのコア繊維52を含むことができるが、1つの実施形態では、取付けフランジ46は、複数のコア繊維52を含むことができる。コア繊維52は、ファンケーシング16の周りで円周方向に配向することができる。「円周方向に配向した」というのは、コア繊維52が、それが繊維トウであれ、織物プリフォームであれ又はそれらの組合せであれ、ファンケーシング16を全体的に囲み、かつ円周方向に連続していることを意味している。一般に取付けフランジ46はまた、以下に述べるように、コア繊維52をファンケーシング16に対して作動可能に連結することができる少なくとも1つの多方向性付着繊維54の層を含むことができる。本明細書で使用する場合、「多方向性」というのは、1つよりも多い方向に配向された繊維トウを有する付着繊維を含んだ織物プリフォームを意味している。
【0019】
当業者には分かるように、コア繊維52は、様々な方法で製作することができる。1つの実施形態では、コア繊維52は、束ねられかつ互いに結合された複数の連続的な一方向性繊維で製作することができる。別の実施形態では、コア繊維52は、円周方向に連続した大部分の繊維トウと円周方向以外の方向に連続的又は不連続的のいずれかである残りの部分の繊維とを有する、偏平化二軸性編組スリーブのような織物プリフォームを含むことができる。本明細書において以下に説明するように、フランジに対して円周方向における付加的強度を与えることができるのは、コア繊維52のこのほぼ円周方向の配向である。利用する特定の組立体に関係なく、コア繊維52は、第1のコア側面56と第2のコア側面58とを含むことができる。
【0020】
コア繊維52の繊維トウは、それに限定されないが、ガラス繊維、黒鉛繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)繊維(つまり、KEVLAR(登録商標))のような芳香族ポリアミド繊維、及びそれらの組合せを含む、当業者には公知のあらゆる適当な強化繊維で構成することができる。さらに、あらゆる数の繊維トウを使用してコア繊維52を作ることできるが、1つの実施形態では、コア繊維52を作るために約100〜約5,000の繊維トウを使用することができる。さらに、各繊維トウは、約3,000〜約24,000の繊維フィラメントを含むことができる。一般に、コア繊維52は、それが組立てられた時に、取付けフランジ46の全体厚さTの約半分を構成することができる。取付けフランジ46の厚さは、用途に応じて変化させることができるが、1つの実施形態では、取付けフランジ46は、約0.5インチ(1.27cm)〜約1インチ(2.54cm)の厚さを有することができる。
【0021】
前に説明したように、円周方向のコア繊維52に加えて、各取付けフランジ46はまた、コア繊維52の第1のコア側面56及び第2のコア側面58の各々をファンケーシング16に対して作動可能に連結する少なくとも1つの付着繊維54の層を含むことができる。コア繊維52とは異なり、付着繊維54は、繊維トウの大部分が円周方向に配向される必要のない織物又は組紐のような多方向性織物プリフォームで作ることができる。このようにして、付着繊維54は、全体を通してほぼ均一な強度分布を示すことができる。コア繊維の場合と同様に、付着繊維54の各繊維トウは、約3,000〜約24,000の繊維フィラメントを含むことができる。一般に、付着繊維54は、それが組み立てられた時に、フランジ46の全体厚さの残りの半分を構成することができる。
【0022】
図5に示すように、取付けフランジ46は、それが硬化すると、少なくとも1つの補助的構造体48をファンケーシング16に対して作動可能に連結するために使用することができ、従ってフランジ46は、ファンケーシング16の本体40の長さに沿った様々な位置に設置することができる。幾つかの場合には、1つよりも多い取付けフランジ46を含むのが望ましい場合がある。図5に示すように、1つの実施形態では、補助的構造体48は、例えば取付けフランジ46及びボルトのような当業者には公知のあらゆる取付け方法を用いてファンケーシング16に取付けることができる付属ギヤボックス50とすることができる。その他の可能性がある補助的構造体には、それに限定されないが、オイルタンク、オイル及び燃料監視モジュール、その他のエンジン外部装置、及びそれらの組合せを含むことができる。「エンジン外部装置」というのは、エンジンの外部に連結することのできるあらゆる付属装置、モジュール又は構成要素を意味していることを理解されたい。そのような補助的構造体は、例えばアルミニウムのような当業者には公知のあらゆる許容可能な材料で作ることができ、また前に述べたように、それらが取付けられる対応するファンケーシングよりも重量が著しく大きいものとすることができる。例えば、1つの実施形態では、ファンケーシング16の重量は約200ポンドとすることができ、一方、付属ギヤボックス50の重量は約300ポンドとすることができる。
【0023】
本明細書に記載した取付けフランジの実施形態により、現存の取付け機構に勝る幾つかの利点を得ることができる。具体的には、一体形取付けフランジは、主要複合材構造体とこれに取付けられた補助的構造体の両方に対する厳しい部品損傷の発生を減少させると同時に、破滅的な部品破損を排除する働きをすることができる。理論に捕らわれる意図はないが、一般に、本明細書における取付けフランジのような繊維強化複合材構造体は、繊維層間に比較的弱い境界面を有し、従ってそれらの面内強度と比べて比較的弱い厚さ方向強度を有する可能性がある。複合材構造体上の応力が所定の最大許容レベルを超えた場合には、これらの繊維層は、実際の繊維破損が起こる前に、剥離又は分離する傾向をもつことができる。剥離又は分離により、取付けフランジが主要構造体に連結している付着接合部上の荷重及び応力を低下させることができる。当業者には分かるように、主要複合材構造体の最大応力許容レベルは、製作に用いた材料、製作方法及びそれらに類したもののような因子に応じて変化させることができる。
【0024】
本明細書に記載した実施形態は、前に述べた現象を利用して設計される。より具体的には、一体形取付けフランジは、ファンブレードアウト又は取付けた補助的構造体の重量によって起こる剥離又は分離のような、過度な応力下での接合部における主要複合材構造体からのフランジの剥離又は分離すらも許すように製作することができる。しかしながら、フランジのコア繊維は、連続的でかつ円周方向に配向された繊維で作ることができるので、フランジは、剥離又は分離した後でさえも、主要構造体の周りで移動可能であるが依然として損傷のないリングを保つことができる。従って、一体形取付けフランジが主要複合材構造体から剥離又は分離した場合であっても、取付けフランジは、全体的に全ての補助的構造体を取付けた状態で所定の位置に留まる。このことは、主要複合材構造体及び取付けフランジの両方における応力の低下を可能にしながら、取付けた補助的構造体を元々意図したのとほぼ同じ位置に維持することを可能にすることができる。そのような理由で、剥離又は分離は、主要及び補助的構造体に対する損傷を軽減すると共に、破滅的な部品破損を防止するのを助けることができる。
【0025】
一体形複合材取付けフランジを製作する方法
本明細書に記載したような取付けフランジを製作する方法は一般に、主要複合材構造体の周りにコア繊維を取付け、その後コア繊維をファンケーシング又はその他の主要複合材構造体に対して作動可能に連結するように付着繊維を取付ける段階を含むことができる。より具体的には、図6のステップ100に示すように、取付けフランジの製作は、ファンケーシング16のような周辺部を有する主要複合材構造体を準備する段階で始まることができる。1つの実施形態では、主要複合材構造体は、最終硬化を除けば、完成したものとすることができる。次にステップ102において、取付けフランジが望ましい各位置において、ファンケーシング16の本体40の周りに、対応する形状のガイド60を配置することができる。ガイド60は、例えば収縮テープによって所定の位置に着脱自在に保持することができる。1つの実施形態では、ガイド60は、各々がファンケーシング16の本体40の周りで180°にわたって延びる個別の弓形部材で構成することができる。ガイド60の弓形部材は、ファンケーシング16の周りでの容易な配置及び調整のために互いに解除可能に連結することができる。しかしながら、ガイド60は、あらゆる数の部片で構成することができ、また主要複合材構造体の形状に対応したあらゆる形状を有することができることが分かるであろう。ガイド60は、本明細書で以下に説明するように、コア繊維及び付着繊維の両方を後で取付けるための支持体として働くことができる。前に言及したように、ガイド60は、円周方向に延びかつ図示するようにL字形状の断面を有するものとすることができ、また例えばアルミニウム又は複合材のようなあらゆる剛性がありかつ軽量の材料で作ることができる。
【0026】
全てのガイド60をファンケーシング16の本体40の周りの所望の位置に配置した後に、ステップ104において、コア繊維52の取付けを開始することができる。前に説明したように、コア繊維52は、互いに束ねられかつ結合された一方向性の円周方向に配向された繊維トウ又は大部分を占める連続的かつ円周方向に配向された繊維トウを有する偏平化二軸性編組スリーブのような織物プリフォームのいずれかを含むことができる。
【0027】
一方向性繊維トウを使用してコア繊維52を作る場合には、トウは、ファンケーシング16の周りに巻くことができる繊維フィラメントを含むことができる。一般に、単一の粘着力を高めた繊維トウは、ファンケーシングの周りの所望の位置に正確に配置することができ、またこの工程は、コア繊維52が所望の寸法及び形状を有するまで反復することができる。本明細書において以下に説明するように、コア繊維52を緻密化するために、次にデバルキング工程を実施することができる。それに代えて、織物プリフォームを使用してコア繊維52を作る場合には、織物層をテーブル又はツールのような平坦な無孔表面上に積層しかつ粘着力を高めることができる。より具体的には、粘着力を高めた織物層を積み重ねて、所望の厚さ及び高さを有しかつ同時にファンケーシングを囲むのに十分な長さを有するコア繊維52を形成することができる。デバルキング工程の後に、以下に述べるように、緻密化した織物層は、ファンケーシング又はその他の主要複合材構造体に適合する適正半径を有するようにそれらの層を手動的又は機械的に成形することを可能にするのに十分な可撓性を保持する。如何なるタイプの繊維を使用するかに関係なく、仕上がったコア繊維52は、第1のコア側面56及び第2のコア側面58を有することができる。
【0028】
コア繊維52をファンケーシング16の周りの所望の位置に配置した後に、付着繊維54をコア繊維52の第1のコア側面56及び第2のコア側面58の各々に対してまたファンケーシング16に対して取付けて、コア繊維52をファンケーシング16に対して作動可能に連結することができる。ステップ106において、付着繊維54を例えばコア繊維52の第1のコア側面56に取付けている間、ガイド60は、所定の位置に留めておくことができる。前に説明したように、付着繊維54は、織物又は組紐のような多方向性織物プリフォーム層を含むことができる。付着繊維54の層は、所望の厚さが得られるまで、コア繊維52の第1のコア側面56及びファンケーシング16の両方に対して巻くことができる。より具体的には、エポキシのような液体樹脂をコア繊維52及びファンケーシング16に塗付して、付着繊維54を取付けることができる粘着層を形成することができる。次に、付着繊維54の層を液体樹脂上に取付けることができる。この工程は、付着繊維54の所望の厚さが達成されるまで反復することができる。付着繊維54は、あらゆる厚さ有することができるが、1つの実施形態では、付着繊維の厚さは、約0.125インチ(約0.3cm)〜約0.25インチ(約0.6cm)とすることができる。
【0029】
付着繊維54がコア繊維52の第1のコア側面56に取付けられると、デバルキング工程(或いは圧密化工程)を再び実施して構造体を一層緻密化することができる。具体的には、コア繊維52及び付着繊維54のような強化繊維は、本来的にかなり大きな量の体積を有することになる。複合体の最終硬化中におけるシワ及び/又は空隙の発生防止を助けるために、また最終硬化中にニアネットシェイプツールを利用するために、複合体の繊維は、所望の最終硬化厚さに近い寸法まで緻密化つまり圧縮することができる。この緻密化は、デバルキング中に行われる。
【0030】
デバルキングは、例えば真空バッグ、収縮テープ又はその他の機械的手段のいずれかを用いて複合材繊維に圧力を加えることによるような、当業者には公知のあらゆる一般的な方法を使用して実施することができる。デバルキングの前に繊維に加えた樹脂は、圧力が加えられると繊維を所定の位置に「粘着」又は固定するのを助けることができる。粘着力を高めた繊維が室温にて望み通りに緻密化することができない場合には、熱を加えて樹脂の粘性を低下させることができる。その結果、樹脂は複合材繊維により良好に浸潤させることができ、緻密化を所望の度合いまで実施することが可能になる。1つの実施形態では、ガイドは、デバルキング工程中に所定の位置に留めておいて、製作中における支持を与えることができる。
【0031】
デバルキング後に、ステップ108に示すように、ガイド60をフランジの完成した側に隣接させて再配置して、付着繊維54をフランジの反対側に取付けるようにすることができる。次に、ステップ110において、例えばコア繊維52の第2のコア側面58で前述した付着繊維54の取付け及びデバルキングを反復して、一体形複合材取付けフランジプリフォーム61を得ることができる。
【0032】
任意選択的に、ステップ112に示す1つの実施形態では、最終硬化に先立って取付けフランジプリフォーム61の付着繊維54に追加的な個々の繊維トウ62を取付けて、付加的なフープ強度を与えることができる。そのような繊維トウは、複合材構造体の最終硬化に影響を与えることはない。しかしながら、複合材料を使用することによって得られる重量節減の利点が制限されるのを回避するために、付加的な個々の繊維トウ62の使用は、最小限にすることが望ましいと言える。
【0033】
コア繊維52、付着繊維54及び任意選択的な個々の繊維トウ62が積み重ねられかつデバルキングされると、各ガイド60を除去し、硬化工程中の鋳型として働くように、最終硬化用ツールをあらゆるフランジプリフォームを含むファンケーシング16の周りに配置することができる。当業者には分かるように、最終硬化用ツール及び方法は、使用する樹脂、部品の幾何学形状及び装置の能力のような因子に応じて変化させることができる。しかしながら、1つの実施形態では、ツールは、ニアネットシェイプツールを含むことができ、このツールは、原材料及び機械加工時間の無駄を防止するのを助けるだけでなく、繊維を破断してフランジ内に脆弱点を生じさせるおそれがある機械加工して付着繊維を作り出す必要性をも排除する。
【0034】
一般に、最終硬化用ツール64は、フランジシュー及び拡張フランジシューの様々な組合せを含むことができる。フランジシュー66は、あらゆる数の部片を含むことができ、それらの部片は、互いに結合された時に、ファンケーシング16及び任意選択的に取付けフランジプリフォーム61の周りに円周方向に配置することができ、また図7に示すようにほぼL字形状の断面を含むことができる。図8に示す拡張フランジシュー68は、第1の側面69及び第2の側面71を有することができ、またあらゆる数の部片を含むことができ、それらの部片は、互いに結合された時に、ファンケーシング16及び任意選択的に取付けフランジプリフォーム61の周りに円周方向に配置することができる。拡張フランジシュー68は、図8に示すようにほぼL字形状の断面を含むことができる。フランジシュー66及び拡張フランジシュー68の両方は、ファンケーシングプリフォームよりも大きい熱膨張率を有するあらゆる材料で作ることができる。1つの実施形態では、フランジシュー66及び拡張フランジシュー68は、アルミニウム又は鋼のような金属、合金又はそれらの組合せで作ることができる。さらに、本明細書において以下に説明するように、フランジシュー66及び拡張フランジシュー68のいずれか又は両方は、端部フランジプリフォーム又は取付けフランジプリフォームを収容するためのフランジ空洞を含むことができる。
【0035】
より具体的には、図9に示すように、第1の拡張フランジシュー70は、ファンケーシング16がその上で製作される複合材構造体成形ツール74の第1のエンドプレート72に対して該第1の拡張フランジシュー70の第1の側面69が隣接するように、ファンケーシング16の周りに配置することができる。第1の拡張フランジシュー70は、例えばボルトのような当業者には公知のあらゆる取付け方法を用いて、第1のエンドプレート72に対して着脱自在に結合することができる。第1の拡張フランジシュー70は、一旦配置されると、図9に示すように、存在するあらゆる第1のエンドプレートプリフォーム76に重なり、かつファンケーシング16の本体40に沿って第1の取付けフランジプリフォーム78まで連続することができる。次に第1のフランジシュー80は、第1の拡張フランジシュー70の第2の側面71に隣接させてファンケーシング16の周りに配置することができ、これら2つのフランジシューは、第1の取付けフランジプリフォーム78の周りで互いに着脱自在に結合することができる。このようにして、第1の拡張フランジシュー70は、第1のフランジシュー80に対するエンドプレートとして働き、また第1の取付けフランジプリフォーム78が最終硬化中にファンケーシング16の周りでその所望の形状及び配向を保持するような所定の位置に第1のフランジシュー80が留まることを保証するのを助けるために必要な支持を与えることができる。
【0036】
また図9に示すように、第2の拡張フランジシュー82は、該第2の拡張フランジシュー82の第1の側面69が複合材構造体成形ツール74の第2のエンドプレート84に隣接するように、ファンケーシング16の周りに配置することができる。第2の拡張フランジシュー82は、第1の拡張フランジシュー70に関して上述したのと同じ方式で、第2のエンドプレート84に対して着脱自在に結合することができる。この場合にもまた、第2の拡張フランジシュー82は、図9に示すように、存在するあらゆる第2の端部フランジプリフォーム86に重なり、かつファンケーシング16の本体40に沿って第2の取付けフランジプリフォーム88まで連続することができる。次に第2のフランジシュー90は、第2の拡張フランジシュー82の第2の側面71に隣接させてファンケーシング16の周りに配置することができ、これら2つのフランジシューは、第2の取付けフランジプリフォーム88の周りで互いに着脱自在に結合することができる。前述したように、第2の拡張フランジシュー82は、第2のフランジシュー90に対する支持を与えることができ、また第2の取付けフランジプリフォーム88が最終硬化中にファンケーシング16の周りでその所望の形状及び配向を保持するような所定の位置に第2のフランジシュー90が留まることを保証するのを助けることができる。
【0037】
拡張フランジシューとフランジシューとの各結合のために、あらゆる取付けフランジプリフォームを収容するように形成されたフランジ形状の空洞をさらに設けることができる。この空洞は、フランジシュー、拡張フランジシュー又はそれらの組合せ内に形成することができることが当業者には分かるであろう。例えば、図9においては、第1の拡張フランジシュー70は、第1の取付けフランジプリフォーム78を収容するための空洞92を含み、他方、第2のフランジシュー90は、第2の取付けフランジプリフォーム88を収容するための空洞92を含む。端部フランジが存在する場合には、それを考慮して付加的な空洞92を含むようにすることができる。
【0038】
図10に示すように、隣り合う取付けフランジプリフォームが存在する場合には、第1の側面69及び第2の側面71を有する第1の拡張フランジシュー70は、第1の側面69及び第2の側面71を有する第2の拡張フランジシュー82に対して着脱自在に結合して、第1の取付けフランジプリフォーム78の周りでそれら2つのフランジシュー間に空洞92を形成することができる。次に第1のフランジシュー80は、前述した方式で第2の拡張フランジシュー82の第2の側面71に対して着脱自在に結合して、第2の取付けフランジプリフォーム88の周りに別の空洞92を形成することができる。実際には、このようにして複数の隣り合う取付けフランジプリフォームを有するファンケーシングを収容するようにあらゆる数の拡張フランジシューを互いに結合して、フランジプリフォームが適正に配置されかつ釣り合いのとれた状態に保たれるために必要な支持を有することを保証するのを助けることができる。
【0039】
全てのフランジシュー及び拡張フランジシューが、ファンケーシング及び取付けフランジプリフォームの周りで互いに結合されると、ファンケーシングの最終硬化を開始することができる。部品寸法及び利用する樹脂のような因子に基づいて適正な最終硬化パラメータがどのようにして決定されるかは、当業者には分かるであろう。最終硬化の終了時に、ツールは、取外すことができ、少なくとも1つの取付けフランジを有する複合材構造体を含む物品が得られ、次にその物品に対してあらゆる所望の補助的構造体を取付けることができる。
【0040】
以上の記述は、最良の形態を含む実施例を使用して、本発明を開示しまたあらゆる当業者が本発明を作りかつ使用することを可能にしている。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲によって定まり、また当業者が想起するその他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例は、それらが記載した特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を有する場合には或いはそれらが特許請求の範囲の文言とは実質的に相違しない均等な構造的要素を有する場合には、特許請求の範囲内に含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ガスタービンエンジンの1つの実施形態の概略断面図。
【図2】取付けフランジを有するファンケーシングの1つの実施形態の概略図。
【図3】複合材構造体成形ツールの1つの実施形態の概略斜視図。
【図4】ファンケーシングに対して作動可能に連結された取付けフランジの1つの実施形態の概略断面図。
【図5】取付けフランジを有しかつ補助的構造体に取付けられたファンケーシングの1つの実施形態の概略図。
【図6】取付けフランジを製作するための方法の1つの実施形態を表す概略図。
【図7】フランジシューの1つの実施形態の概略断面図。
【図8】拡張フランジシューの1つの実施形態の概略断面図。
【図9】2つの取付けフランジを有する複合材ファンケーシングの最終硬化中に使用するツールの1つの実施形態の概略断面図。
【図10】2つの隣り合う取付けフランジを有する複合材ファンケーシングの最終硬化中に使用するツールの1つの実施形態の概略断面図の一部を示す図。
【符号の説明】
【0042】
10 ガスタービンエンジン
12 ファン組立体
14 コアエンジン
16 ファンケーシング
18 ファンブレード
20 ロータディスク
22 高圧圧縮機
24 燃焼器
26 高圧タービン
28 低圧タービン
30 吸入側
32 排出側
33 ツールコア
34 第1のロータシャフト
36 第2のロータシャフト
37 複合材構造体成形ツール
38 主要複合材構造体
40 本体(ファンケーシングの)
42 前端部
44 後端部
46 取付けフランジ
48 補助的構造体
50 付属ギヤボックス
52 コア繊維
54 付着繊維
56 第1の側面(コアファイバの)
58 第2の側面(コアファイバの)
60 ガイド
61 一体形取付けフランジプリフォーム
62 個々の繊維トウ
64 最終硬化用ツール
66 フランジシュー
68 拡張フランジシュー
69 第1の側面(拡張フランジシューの)
70 第1の拡張フランジシュー
71 第2の側面(拡張フランジシューの)
72 第1のエンドプレート
74 複合材構造体成形ツール
76 第1の端部フランジプリフォーム
78 第1の取付けフランジプリフォーム
80 第1のフランジシュー
82 第2の拡張フランジシュー
84 第2のエンドプレート
86 第2の端部フランジプリフォーム
88 第2の取付けフランジプリフォーム
90 第2のフランジシュー
92 フランジ空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺部を有する主要複合材構造体(38)と、
前記周辺部の周りで前記主要複合材構造体(38)に対して作動可能に連結された少なくとも1つの取付けフランジ(46)と、を含み、
前記取付けフランジ(46)が、少なくとも1つの円周方向に配向されたコア繊維(52)を含む、
物品。
【請求項2】
前記取付けフランジ(46)が、一方向性繊維トウ、織物プリフォーム及びそれらの組合せから成る群から選択された複数のコア繊維(52)を含む、請求項1記載の物品。
【請求項3】
前記取付けフランジ(46)が、前記コア繊維(52)を前記主要複合材構造体(38)に対して作動可能に連結した少なくとも1つの付着繊維(54)の層をさらに含む、請求項2記載の物品。
【請求項4】
前記コア繊維(52)が、第1のコア側面(56)と第2のコア側面(58)とをさらに含み、
前記少なくとも1つの付着繊維(54)の層が、前記主要複合材構造体(38)の周辺部の周りで前記主要複合材構造体(38)に対して前記コア繊維(52)の第1のコア側面(56)及び第2のコア側面(58)の各々を作動可能に連結する、
請求項3記載の物品。
【請求項5】
前記取付けフランジにおいて前記主要複合材構造体に対して作動可能に連結された補助的構造体をさらに含む、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4のいずれか1項記載の物品。
【請求項6】
前記主要複合材構造体(38)が、ガラス繊維、黒鉛繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)繊維のような芳香族ポリアミド繊維及びそれらの組合せから成る群から選択された材料を含む、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5のいずれか1項記載の物品。
【請求項7】
前記取付けフランジ(46)が、ガラス繊維、黒鉛繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)繊維のような芳香族ポリアミド繊維及びそれらの組合せから成る群から選択された材料を含む、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5又は請求項6のいずれか1項記載の物品。
【請求項8】
前記主要複合材構造体(38)が、ガスタービンエンジンファンケーシング(16)を含む、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6又は請求項7のいずれか1項記載の物品。
【請求項9】
前記補助的構造体(48)が、付属ギヤボックス、オイルタンク、オイル監視モジュール、燃料監視モジュール、その他のエンジン外部装置及びそれらの組合せから成る群から選択された構造体である、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7又は請求項8のいずれか1項記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−144757(P2008−144757A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300078(P2007−300078)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】