説明

回路パターンの修復方法、修復装置およびそれらに用いる修復用ヘッド

【課題】幅広い材料を使用することができ、しかも、描画速度が速い回路パターンの修復方法及び装置、並びに、それに用いる転写材を提供する。
【解決手段】レーザ光を透過させるガラス板40の片面に導電性被膜39を形成してなる転写板18を、ガラス基板7のゲート電極41の断線箇所に対向するように配置し、転写板18とガラス基板7との間に窒素ガスを供給する一方、前記転写板18のガラス板40側からレーザ光42を照射することにより、導電性被膜39を、ガラス基板7の断線箇所に転写して修復するようにしている。また、転写板18を保持するホルダ23は、窒素ガスをガラス基板7に向けて噴射する噴射孔よりも転写板18の外周側に延びて、レーザ光の光路となる開口を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイといった表示装置などの回路パターンの欠陥の修復(リペア)に好適な回路パターンの修復方法及び装置、並びに、それらに用いる修復用ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶ディスプレイには、マトリクス状に多数の走査線及び信号線の回路パターンが形成されており、この回路パターンのパターンニングプロセス中への塵埃の混入等に起因して、走査線や信号線の導通不良や断線等といった欠陥が生ずることがある。
【0003】
特に、ディスプレイの一層の高精細化や大画面化が進む中、配線数や画素数の増加に伴って欠陥の発生を完全に防ぐことはできない。一方、液晶ディスプレイの製造コストの低減を図るためには、歩留まりの向上が望まれる。
【0004】
このため、かかる回路パターン上の欠陥が発生したパネルを不良品とするのではなく、例えば、特許文献1に示すようなレーザCVD法を用いて欠陥を修復して良品とする作業が行われている。
【特許文献1】特開2002−182246
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レーザCVD法を用いた欠陥の修復方法では、例えば、断線を修復する場合には、W(CO)等の原料ガス中でレーザビームを走査してW等の導電性材料を堆積させて断線部分を接続するので、使用できる導電性材料としては、ガス化できる材料、例えば、W、Cr、Mo等に限定され、また、ガス化した導電性材料を堆積させて断線部分を接続するので、描画の速度が遅いといった難点がある。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたものであって、幅広い材料を使用することができ、しかも、描画速度が速い回路パターンの修復方法及び装置、並びに、それらに用いる修復用ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の回路パターンの修復方法は、レーザ光を透過させる母材の片面に転写被膜を形成してなる転写材を、修復用ヘッドのホルダで保持して、修復対象となる欠陥を有する回路パターン上に前記転写被膜が対向するように配置し、前記転写材と前記回路パターンとの間にガスを供給する一方、前記転写材の前記母材側からレーザ光を照射することにより、前記転写被膜を回路パターン上の欠陥個所に転写する方法であって、前記ホルダは、前記レーザ光の光路となる開口および前記ガスを供給するガスの噴射孔を有するとともに、前記転写材を保持する領域において、前記開口の少なくとも一部が、前記噴射孔よりも前記転写材の外周側へ延びている。
【0008】
母材は、レーザ光を透過させる材料であり、例えば、ガラス、あるいは、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの樹脂フィルムなどを用いることができる。透過したレーザ光が転写被膜を転写できるだけのエネルギーを有する程度にレーザ光を透過させればよい。又、自らが、そのレーザ光によって変形や液体、気体への状態変化が生じない程度であればレーザ光を吸収してもよい。
【0009】
転写被膜は、真空蒸着、スパッタリング、金属箔の張り付け等のような任意の被膜形成技術を用いて母材に形成することができる。
【0010】
転写被膜は、Al、Ni、Ta、W、Ti、Au,Ag,Cu,Cr等の導電性材料が好ましい。
【0011】
回路パターン上の欠陥には、少なくとも断線若しくは導通不良を含む。
【0012】
噴射孔は、ガスを供給できればよく、その噴射口の形状は、任意であり、例えば、円形、長円形、矩形、多角形、溝状、あるいは、円弧などの形状であってもよい。
【0013】
ホルダの開口の前記一部は、噴射孔よりも転写材の外周側に延びておればよく、転写材の外周よりも外方に延びているのが好ましいが、転写材の外周よりも内方までしか延びていなくてもよい。
【0014】
この開口には、レーザ光を透過させる材料が介在してもよい。
【0015】
本発明の回路パターンの修復方法によると、回路パターンの欠陥に、転写材の転写被膜を対向させて背面からレーザ光を照射して転写被膜を局所的に熔融させ、もしくは、レーザ光が照射される転写被膜のうち母材と接する部分を含む一部を熔融または気化(昇華を含む)させて前記欠陥に転写することによって欠陥を修復するので、従来のレーザCVD法のように、ガス化できる導電性材料に限定されることなく、また、転写被膜をレーザ光で一括して転写できるので、ガス化した導電性材料を堆積させるレーザCVD法に比べて迅速に修復できる。
【0016】
しかも、転写材と回路パターンとの間にガスを供給して冷却することができるので、転写被膜が欠陥箇所に転写されるときには、少なくとも表面の一部に固相の状態を含むようにすることができるので、これによって、転写被膜が欠陥部分の周囲に広がって転写される、いわゆる飛び散りによる汚染を抑制することができる。
【0017】
また、転写材を保持するホルダには、レーザ光の光路となる開口が、噴射孔よりも転写材の外周側へ延びているので、この開口部分を利用して、転写材の外周寄りの領域の転写被膜を、回路パターンに転写することが可能となる。
【0018】
(2)本発明の回路パターンの修復方法の一つの実施形態では、前記転写材を保持する前記ホルダを、前記回路パターンが形成された基板に対して、近接離反変位自在に保持し、前記ガスを、前記噴射孔に連通する前記転写材に形成された貫通孔から前記基板に向けて噴射し、該噴射を制御して前記転写材と前記基板との間隔を制御してもよい。
【0019】
基板に対して近接離反変位自在とは、基板に対して略垂直方向に変位自在であることをいう。
【0020】
ホルダの噴射孔と転写材の貫通孔とは、少なくとも一部が連通しておればよく、したがって、噴射孔と貫通孔との形状が異なっていてもよい。
【0021】
転写材と基板との間隔が、所望の間隔になるように、その間隔を計測してガスの噴射を制御してもよいし、所望の間隔となるガスの噴射の流量や供給するガスの圧力を予め把握しておき、それらを制御してもよい。
【0022】
転写材と基板とが接した状態でレーザ光を照射すると、両者が接合されてしまうので、間隔を空けることは必須である一方、この間隔が大きくなると、被膜の転写位置精度が低下したり、レーザ光の照射条件によっては飛び散りが広範囲になるため、間隔の制御は重要である。
【0023】
この実施形態によると、基板に向けて噴射するガス流量を制御することによって、転写被膜を転写するのに好適な間隔に制御することができる。
【0024】
また、かかる間隔の制御を行なうためには、ガスを基板に向かって噴射する必要があるので、転写材を保持するホルダのガスの噴射孔を、基板に対向するように位置させる必要がある。このため、基板のエッジに近い回路パターンの修復では、ガスの噴射孔が、基板に対向できるように、修復用ヘッドのホルダの移動位置、したがって、レーザの光路となるホルダの開口の位置が制限を受けることになるが、この実施形態によると、開口の少なくとも一部は、ガスの噴射孔よりも転写材の外周側まで延びているので、ガスの噴射孔は、基板のエッジの内方に位置させて基板に対向させながら、それよりも外方位置の回路パターンの修復が可能となる。
【0025】
(3)本発明の回路パターンの修復方法の他の実施形態では、前記ガスを、不活性ガスまたは窒素ガスとしている。
【0026】
この実施形態によると、転写被膜や回路パターンの材料が酸化され易い材料である場合に、レーザ光の照射により温度が上昇した状態にある転写被膜及びその被膜が転写されて温度が上昇した回路パターンの材料の酸化を抑制することができる。
【0027】
(4)本発明の回路パターンの修復装置は、レーザ光を透過させる母材の片面に転写被膜を形成してなる転写材を、修復用ヘッドのホルダで保持して、修復対象となる欠陥を有する回路パターン上に前記転写被膜が対向するように配置し、前記転写材に前記母材側からレーザ光を照射することにより、前記転写被膜を回路パターン上の欠陥個所に転写する回路パターンの修復装置であって、前記ホルダは、前記レーザ光の光路となる開口および前記転写材と前記回路パターンとの間にガスを供給するガスの噴射孔を有するとともに、前記転写材を保持する領域において、前記開口の少なくとも一部が、前記噴射孔よりも前記転写材の外周側へ延びている。
【0028】
本発明の回路パターンの修復装置によると、回路パターンの欠陥に、転写材の転写被膜を対向させて背面からレーザ光を照射して転写被膜を局所的に熔融させ、もしくは、レーザ光が照射される転写被膜のうち母材と接する部分を含む一部を熔融または気化(昇華を含む)させて前記欠陥に転写することによって欠陥を修復するので、従来のレーザCVD法のように、ガス化できる導電性材料に限定されることなく、また、転写被膜をレーザ光で一括して転写できるので、ガス化した導電性材料を堆積させるレーザCVD法に比べて迅速に修復できる。
【0029】
しかも、転写材と回路パターンとの間にガスを供給して冷却することができるので、転写被膜が欠陥箇所に転写されるときには、少なくとも表面の一部に固相の状態を含むようにすることができるので、これによって、転写被膜が欠陥部分の周囲に広がって転写される、いわゆる飛び散りによる汚染を抑制することができる。
【0030】
また、転写材を保持するホルダには、レーザ光の光路となる開口が、噴射孔よりも転写材の外周側へ延びているので、この開口部分を利用して、転写材の外周寄りの領域の転写被膜を、回路パターンに転写することが可能となる。
【0031】
(5)本発明の回路パターンの修復装置の一つの実施形態では、前記ガスの供給流量を制御する流量制御手段を備え、前記修復用ヘッドは、前記ホルダを、前記回路パターンが形成された基板に対して、近接離反変位自在に保持する保持部材を備え、前記流量制御手段は、前記ホルダのガスの噴射孔から前記転写材に形成された貫通孔を介して前記基板に向けて噴射されるガスの流量を制御して、前記ホルダに保持された前記転写材と前記基板との間隔を制御するものである。
【0032】
転写材と基板とが接した状態でレーザ光を照射すると、両者が接合されてしまうので、間隔を空けることは必須である一方、この間隔が大きくなると、被膜の転写位置精度が低下したり、レーザ光の照射条件によっては飛び散りが広範囲になるため、間隔の制御は重要である。
【0033】
この実施形態によると、基板に向けて噴射するガス流量を制御することによって、転写被膜を転写するのに好適な間隔に制御することができる。
【0034】
また、かかる間隔の制御を行なうためには、ガスを基板に向かって噴射する必要があるので、転写材を保持するホルダのガスの噴射孔を、基板に対向するように位置させる必要がある。このため、基板のエッジに近い回路パターンの修復では、ガスの噴射孔が、基板に対向できるように、修復用ヘッドのホルダの移動位置、したがって、レーザの光路となるホルダの開口の位置が制限を受けることになるが、この実施形態によると、開口の少なくとも一部は、ガスの噴射孔よりも転写材の外周側まで延びているので、ガスの噴射孔は、基板のエッジの内方に位置させて基板に対向させながら、それよりも外方位置の回路パターンの修復が可能となる。
【0035】
(6)本発明の修復用ヘッドは、レーザ光を透過させる母材の片面に転写被膜を形成してなる転写材を、修復対象となる欠陥を有する回路パターン上に前記転写被膜が対向するように配置し、前記転写材に前記母材側からレーザ光を照射することにより、前記転写被膜を回路パターン上の欠陥個所に転写して修復するのに用いる修復用ヘッドであって、前記転写材を保持するホルダを備え、前記ホルダは、前記レーザ光の光路となる開口を有するとともに、前記転写材と前記回路パターンとの間にガスを供給するガスの噴射孔を有し、かつ、前記転写材を保持する領域において、前記開口の少なくとも一部が、前記噴射孔よりも前記転写材の外周側へ延びている。
【0036】
本発明の修復用ヘッドによると、レーザ光の光路となる開口が、噴射孔よりも転写材の外周側へ延びているので、この開口部分を利用して、転写材の外周寄りの領域の転写被膜を、回路パターンに転写することが可能となる。
【0037】
(7)本発明の修復用ヘッドの一つの実施形態では、前記ホルダを、前記回路パターンが形成された基板に対して、近接離反変位自在に保持する保持部材を備え、前記ホルダの前記噴射孔は、前記転写材に形成された貫通孔を介して前記基板に向けてガスを噴射するものである。
【0038】
この実施形態によると、ホルダのガスの噴射孔から転写材の貫通孔を介して基板に向けて噴射するガス流量を制御することによって、転写材と基板との間隔を、転写被膜を転写するのに好適な間隔に制御することができる。
【0039】
また、かかる間隔の制御を行なうためには、ガスを基板に向かって噴射する必要があるので、転写材を保持するホルダのガスの噴射孔を、基板に対向するように位置させる必要がある。このため、基板のエッジに近い回路パターンの修復では、ガスの噴射孔が、基板に対向できるように、修復用ヘッドのホルダの移動位置、したがって、レーザの光路となるホルダの開口の位置が制限を受けることになるが、この実施形態によると、開口の少なくとも一部は、ガスの噴射孔よりも転写材の外周側まで延びているので、ガスの噴射孔は、基板のエッジの内方に位置させて基板に対向させながら、それよりも外方位置の回路パターンの修復が可能となる。
【0040】
(8)本発明の修復用ヘッドの他の実施形態では、前記ホルダは、前記転写材を真空吸着する吸着孔を有している。
【0041】
吸着孔は、一箇所でもよいが、二箇所以上に設けられるのが好ましい。
【0042】
吸着孔は、ガスの噴射孔の近傍に配置するのが好ましい。
【0043】
この実施形態によると、転写材を真空吸着して保持することができる。
【0044】
(9)上記(8)の実施形態では、前記ホルダの吸着面が面一とされている。
【0045】
この実施形態によると、転写材を、面一に保持して、転写材と基板との間隔を、精度よく制御できる。
【0046】
(10)本発明の修復用ヘッドの他の実施形態では、前記ホルダには、前記噴射孔が3箇所以上形成されている。
【0047】
三箇所以上の噴射孔は、点対象あるいは線対称に配置されるのが好ましい。
【0048】
この実施形態によると、三箇所以上でガスを噴射して、転写材と基板との間隔を安定に維持することができる。また、各箇所の噴射孔のガスの流量を個別に制御して基板に対する転写材の傾きを調整することができる。
【0049】
(11)上記(10)の実施形態では、前記ホルダの外方に配置される集合配管部材を備え、前記ホルダの各噴射孔にそれぞれ連通する各ガス供給路が、前記集合配管部材の共通のガス供給配管に、それぞれ連結される。
【0050】
この実施形態では、共通のガス供給配管を介してガスを供給するので、ホルダの各噴射孔から噴射されるガス流量を均一にすることができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によると、転写被膜をレーザ光で一括して転写できるので、ガス化した導電性材料を堆積させるレーザCVD法に比べて迅速に修復できるとともに、転写被膜の材料がガス化できる材料に限定されることもない。
【0052】
しかも、転写材と回路パターンとの間にガスを供給して冷却することができるので、転写被膜が欠陥箇所に転写されるときには、少なくとも表面の一部に固相の状態を含むようにすることができるので、これによって、転写被膜が欠陥部分の周囲に広がって転写される、いわゆる飛び散りによる汚染を抑制することができる。
【0053】
また、転写材を保持するホルダには、レーザ光の光路となる開口が、噴射孔よりも転写材の外周側へ延びているので、この開口部分を利用して、転写材の外周寄りの領域の転写被膜を、回路パターンに転写することが可能となる。
【0054】
特に、基板のエッジ付近の回路パターンの修復において、ガスの噴射孔は、基板のエッジの内方に位置させて、ガスを基板に向かって噴射することにより、転写材と基板との間隔を制御しながら、ガスの噴射孔よりも外方に延びる開口を利用して、転写被膜を転写して回路パターンを修復することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下に、本発明の好適な実施の形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0056】
ここで、実施形態の説明に先立って、本発明の回路パターンの修復に用いられる転写の基本的な原理を、図1に基づいて説明する。
【0057】
同図において、1は加工対象となる、例えば、ガラス基板であり、このガラス基板1上には、例えば、ゲート電極2が形成されており、このゲート電極2には、修復対象となる欠陥である断線が生じている。
【0058】
一方、3は修復に用いる転写材としての転写板であり、この転写板3は、レーザ光を透過させる母材、例えば、ガラス板4の片面に、金属からなる転写被膜5が、真空蒸着やスパッタリングなどの手法によって形成されている。
【0059】
この転写板3を、その転写被膜5がゲート電極2の断線箇所に対向させるように配置し、同図(b)に示すように転写板3の背後からレーザ光6を、スリットを介して照射して転写被膜5を局所的に熔融させ、もしくは、レーザ光が照射される転写被膜5のうちガラス板4と接する部分を含む一部を熔融または気化(昇華を含む)させて同図(c)、(d)に示すようにゲート電極2に転写し、同図(e)に示すようにゲート電極2の断線箇所を修復するものである。
【0060】
図2は、かかる転写を利用した本発明の実施形態に係る回路パターンの修復装置の全体構成を示す図である。
【0061】
加工対象である液晶のTFT基板などのガラス基板7が、紙面に平行なX軸方向および紙面に垂直なY軸方向に移動可能なステージ8上に載置されており、このステージ8に対向するように、装置本体9が配置されている。
【0062】
この装置本体9の上部には、パルス波レーザ発振器10および波長切替器11が設けられている。パルス波レーザ発振器10は、例えば、Nd:YAGレーザであり、波長切替器11によって、基本波である1064nm、第2高調波である532nm、第3高調波である355nmまたは第4高調波である266nmのレーザ光を切替選択できるようになっており、転写の際には、基本波である1064nmのレーザ光が使用される。
【0063】
波長切替器11の下端側には、鏡筒12が設けられており、この鏡筒12内には、レーザ光を所要の矩形形状にするための電動のスリット13が設けられている。また、この鏡筒12には、観察用のCCDカメラ14および照明用の光源15が装着されている。
【0064】
鏡筒12の下方には、X軸方向に移動自在なレボルバー16に取り付けられた紫外および赤外用の倍率の異なる複数の対物レンズ17の一つが選択配置されており、レボルバー16を移動させることにより、所望の対物レンズ17を選択することができる。
【0065】
この鏡筒12の下端には、転写板18を真空吸着によって保持する修復用ヘッドとしての転写ヘッド19が取り付けられており、この転写ヘッド19には、マスフローコントローラ20を介して窒素ガス供給源21からの窒素ガスを供給できるように構成されている。
【0066】
鏡筒12は、図3に示すように、光軸方向であるZ軸方向に移動自在な移動フレーム26に取り付けられている。更に、この移動フレーム26には、同じくZ軸方向に移動自在な移動フレーム27を介して転写ヘッド19が、X軸方向およびY軸方向に移動自在に取り付けられている。
【0067】
図4は、修復用ヘッドとしての転写ヘッド19を下方側から見た図であり、図5は、その切断面線ABCDEに沿う断面図である。なお、各図において、転写板18を所定の保持位置からずらした状態を示している。
【0068】
例えば、ステンレスなどから構成される転写ヘッド19は、該転写ヘッド19を、上述の装置本体9に取り付けるための取付け板22と、転写板18を吸着保持するホルダ23と、このホルダ23に複数の配管33,36を介して連結された集合配管部材としてのマニホルド24と、前記複数の配管33,36によってホルダ23およびマニホルド24を、上下方向(Z軸方向)に変位自在に保持するとともに、前記取付け板22に固定される保持部材としての固定リング28とを備えている。
【0069】
取付け板22には、図5の矢符で示す装置本体9からのレーザ光の光路となる開口22aが形成されている。
【0070】
ホルダ23は、転写板18を吸着保持する4つの保持部23aと、それらを連結する連結部23bとが一体に成形されており、これら保持部23aと連結部23bとで囲まれる部分は、開口23cとなっており、この開口23cが、装置本体9からのレーザ光の光路となる。
【0071】
このように開口23cは、4つの保持部23a以外の部分では、転写板18が保持される円形の領域Sよりも径方向外方まで延びており、図4においては、中央部から上下方向および左右方向に延びている。
【0072】
これによって、後述のように、修復対象となるガラス基板のエッジに近い回路パターンの修復も可能となる。
【0073】
各保持部23aは、第1のパッキン29で囲まれた吸着部分に、転写板18を真空吸着するため吸着孔30を2箇所にそれぞれ有するとともに、第2のパッキン31で囲まれた部分に、転写板18に形成された貫通孔18aに連通して、転写の際に窒素ガスを下方へ噴射する噴射孔32をそれぞれ有している。
【0074】
吸着孔30および噴射孔32は、転写板18が保持される円形の領域Sの中心を、対称の中心として点対称に配置されている。
【0075】
各保持部23aの各吸着孔30は、内部の吸引路を介して外部の吸引用配管33の一端にそれぞれ連結され、各吸引用配管33の他端が、マニホルド24の共通の吸引路34にそれぞれ連結され、吸引路34が、ホースカプラ35を介して真空源に連結される。
【0076】
また、各保持部23aの各噴射孔32は、内部の供給路を介して外部の窒素ガスの供給用配管36の一端にそれぞれ連結され、各供給用配管36の他端が、図5に示すように、マニホルド24の窒素ガスの供給路37にそれぞれ連結され、供給路37が、ホースカプラ38を介して、上述の窒素ガス供給源21に連結される。
【0077】
固定リング28は、複数の吸引用配管33および供給用配管36にそれぞれ対応する、上方が切り欠かれた複数の保持溝28aを有しており、各保持溝28a内に、各配管33,36が上下方向に変位自在に保持される。この固定リング28は、取付け板22に対して、適宜箇所で固定的に取付けられている。
【0078】
再び、図2を参照して、装置本体9を制御する本体制御部25は、例えば、パーソナルコンピュータやPLC(プログラマブルロジックコントローラ)で構成され、マスフローコントローラ20を介して窒素ガス供給源21からの流量を制御する流量制御部25a、レーザ制御部25b、オートフォーカス制御部25c、鏡筒12および転写ヘッド18の駆動制御を行う駆動制御部25d、CCDカメラ14が撮像した画像を処理する画像処理部25e等を備えるとともに、ガラス基板7のレーザ光照射部分を画像表示するモニタ25fを備えている。
【0079】
円板状の転写板18は、図6の平面図および断面図に示すように、母材としてのガラス板40の片面に、転写被膜としての導電性被膜39を被着させて構成されている。この導電性被膜39の材質としては、例えば、Al、Ni、Ta、W、Ti、Au,Ag,Cu,Cr等を採用することができる。
【0080】
また被膜の厚さは、例えば、0.1μm〜0.5μm程度である。
【0081】
なお、この実施形態では、例えば、線幅は数μm、長さは数十μm程度までの欠陥の修復に適用することができる。
【0082】
この転写板18には、上述のように、転写ヘッド19から供給される窒素ガスを噴出するための貫通孔18aが周方向の4箇所に形成されている。
【0083】
なお、転写板18は、円板状に限らず、矩形板状やその他の形状であってもよい。
【0084】
図7は、この実施形態の修復装置を用いた修復方法を説明するための要部の断面図である。
【0085】
同図(a)に示すように、転写板18は、転写ヘッド19のホルダ23の保持部23aに、真空吸着されて保持されるとともに、該保持部23aの噴射孔32を介して、転写板18に形成されている貫通孔18aから窒素ガスが噴射され、転写板18とガラス基板7との間に窒素ガスが供給されて冷却が行われる一方、この窒素ガスによって、ホルダ23の上下方向(Z軸方向)の変位が制御されて所要の間隔が確保される。
【0086】
次に、パルス波レーザ発振器10から出射したレーザ光42は、波長切替器11を介してスリット13が配置された鏡筒12及び対物レンズ17を経由して転写板18に照射される。その際に駆動制御部25dは、鏡筒12の移動制御やオートフォーカス制御を行い、同図(b)に示すようにレーザ光42を転写板18に照射する。
【0087】
このようにしてレーザ光が照射されると、転写板18の下面に被着された導電性被膜39は、局所的に熔融し、もしくは、レーザ光が照射される導電性被膜39のうちガラス板40と接する部分を含む一部が熔融または気化(昇華を含む)し、同図(c)に示すようにガラス板40から分離して落下し、同図(d),(e)に示すように、ガラス基板7表面のゲート電極41の欠陥である断線箇所に転写されることになる。
【0088】
この転写の際に、窒素ガスによって導電性被膜39が冷却され、少なくとも表面の一部に固相の状態を含むようにすることができるので、導電性被膜39が欠陥部分の周囲に広がって転写される、いわゆる飛び散りによる汚染を抑制することができる。
【0089】
これによって、ガラス基板7上のゲート電極41は、転写された導電性被膜39が熔融拡散または固相拡散により電気的に接続され、断線個所の修復が行われる。
【0090】
転写被膜の厚さは、転写板18上の導電性被膜39の素材並びに厚さを調整することによって、あるいは、転写回数を選択する、すなわち、転写ヘッド19を水平方向に移動させて導電性被膜を、転写された断線箇所に対向させて転写を繰り返すことによって、任意に設定することができる。
【0091】
更に、窒素ガスの噴射流量によって、転写板18とガラス基板7との距離を制御することができ、一定の流量に制御することにより、ガラス基板7の配線の凹凸に応じて、ホルダ23がZ軸方向に変位することになり、所要の間隔、例えば、1μm〜10μmが確保される。
【0092】
この間隔は、導電性被膜39を転写した際に、導電性被膜39が断線箇所の周囲へ広がらないように、狭いのが好ましいが、転写板18を移動させた場合に、ガラス基板40に接触して傷つけない間隔である必要がある。
【0093】
また、窒素ガスは、冷却および間隔の制御と共に、導電性被膜39およびゲート電極41の酸化を防止する機能を果たすことができる。
【0094】
また、図7(e)の転写が終了した後、引き続いてレーザ光のパワーを、転写のときよりも低くしてレーザアニールを行って転写被膜を安定化させるようにしてもよい。例えば、転写用のパルス光照射の後に、パワーを低くしたCW光照射を行ったり、平均照射パワーを低くするようなパルス駆動(低デューティ化や低尖頭値駆動)としてもよい。
【0095】
この実施形態では、転写板18を保持するホルダ23は、開口23cが、保持部23a以外の部分では、噴射孔32よりも転写板18の外周側の外方まで広く開放しているので、修復対象となる回路パターンが、ガラス基板7のエッジに近くに形成されていても、修復可能である。
【0096】
例えば、図8の断面図に示すように、ホルダ43の中央部に、レーザ光の光路となる開口43aを有し、下面に周方向に連続した二つの溝43b,43cを形成し、外側の溝43bは、転写板18を真空吸着するための吸着用溝とし、内側の溝43cは、転写板18の貫通孔18aに連通し、転写する際に窒素ガスを供給するための窒素ガスの供給用溝とし、各溝43b,43cを、吸着用および供給用の各管路にそれぞれ連通するように構成した場合を考える。
【0097】
かかるホルダ43を用いて、上述の図7と同様にしてガラス基板7のエッジの回路パターンを修復しようとすると、ガラス基板7と転写材18との距離を制御する窒素ガスの噴射孔を、ガラス基板7に対向させる必要があり、噴射孔よりも内方の開口43aを介してレーザ光を照射して転写することになる。
【0098】
したがって、例えば、図9に示すように、窒素ガスの噴射孔をガラス基板7に対向させると、ガラス基板7のエッジに近接した回路パターンの断線箇所44の上方には、ホルダ43の開口43aを位置させることができず、レーザ光42を照射して転写できず、回路パターンを修復することができない。
【0099】
これに対して、この実施形態のホルダ23では、上述のように、開口23cが、窒素ガスの噴射孔32よりも外方まで延びているので、図10に示すように、外方に延びている開口23cを介してレーザ光42を照射して転写することができ、ガラス基板7のエッジ部分の回路パターンも修復することが可能となる。
【0100】
本発明は、液晶ディスプレイに限らず、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、表面電界デスプレイ(SED)といった表示装置、あるいは、シリコンウェハ上の半導体集積回路に含まれる回路パターンの修復に適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明に用いる転写の基本的な原理を説明するための図である。
【図2】本発明に係る回路パターンの修復装置の全体構成図である。
【図3】図2の装置本体の側面図である。
【図4】転写ヘッドを下方側から見た図である。
【図5】図4の切断面線ABCDEに沿う断面図である。
【図6】転写板を示す図である。
【図7】回路パターンの修復の手順を示す断面図である。
【図8】ホルダの他の構成を示す断面図である。
【図9】図9のホルダを用いた修復の課題を説明するための断面図である。
【図10】本発明に係るホルダを用いた修復を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1,7 ガラス基板
2,41 ゲート電極
3,18 転写板
19 転写ヘッド
23 ホルダ
23c 開口
24 マニホルド
28 固定リング
32 噴射孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を透過させる母材の片面に転写被膜を形成してなる転写材を、修復用ヘッドのホルダで保持して、修復対象となる欠陥を有する回路パターン上に前記転写被膜が対向するように配置し、前記転写材と前記回路パターンとの間にガスを供給する一方、前記転写材の前記母材側からレーザ光を照射することにより、前記転写被膜を回路パターン上の欠陥個所に転写する方法であって、
前記ホルダは、前記レーザ光の光路となる開口および前記ガスを供給するガスの噴射孔を有するとともに、前記転写材を保持する領域において、前記開口の少なくとも一部が、前記噴射孔よりも前記転写材の外周側へ延びていることを特徴とする回路パターンの修復方法。
【請求項2】
前記転写材を保持する前記ホルダを、前記回路パターンが形成された基板に対して、近接離反変位自在に保持し、前記ガスを、前記噴射孔に連通する前記転写材に形成された貫通孔から前記基板に向けて噴射し、該噴射を制御して前記転写材と前記基板との間隔を制御する請求項1に記載の回路パターンの修復方法。
【請求項3】
前記ガスが、不活性ガスまたは窒素ガスである請求項1または2に記載の回路パターンの修復方法。
【請求項4】
レーザ光を透過させる母材の片面に転写被膜を形成してなる転写材を、修復用ヘッドのホルダで保持して、修復対象となる欠陥を有する回路パターン上に前記転写被膜が対向するように配置し、前記転写材に前記母材側からレーザ光を照射することにより、前記転写被膜を回路パターン上の欠陥個所に転写する回路パターンの修復装置であって、
前記ホルダは、前記レーザ光の光路となる開口および前記転写材と前記回路パターンとの間にガスを供給するガスの噴射孔を有するとともに、前記転写材を保持する領域において、前記開口の少なくとも一部が、前記噴射孔よりも前記転写材の外周側へ延びていることを特徴とする回路パターンの修復装置。
【請求項5】
前記ガスの供給流量を制御する流量制御手段を備え、
前記修復用ヘッドは、前記ホルダを、前記回路パターンが形成された基板に対して、近接離反変位自在に保持する保持部材を備え、
前記流量制御手段は、前記ホルダのガスの噴射孔から前記転写材に形成された貫通孔を介して前記基板に向けて噴射されるガスの流量を制御して、前記ホルダに保持された前記転写材と前記基板との間隔を制御する請求項4に記載の回路パターンの修復装置。
【請求項6】
レーザ光を透過させる母材の片面に転写被膜を形成してなる転写材を、修復対象となる欠陥を有する回路パターン上に前記転写被膜が対向するように配置し、前記転写材に前記母材側からレーザ光を照射することにより、前記転写被膜を回路パターン上の欠陥個所に転写して修復するのに用いる修復用ヘッドであって、
前記転写材を保持するホルダを備え、
前記ホルダは、前記レーザ光の光路となる開口を有するとともに、前記転写材と前記回路パターンとの間にガスを供給するガスの噴射孔を有し、かつ、前記転写材を保持する領域において、前記開口の少なくとも一部が、前記噴射孔よりも前記転写材の外周側へ延びていることを特徴とする修復用ヘッド。
【請求項7】
前記ホルダを、前記回路パターンが形成された基板に対して、近接離反変位自在に保持する保持部材を備え、
前記ホルダの前記噴射孔は、前記転写材に形成された貫通孔を介して前記基板に向けてガスを噴射するものである請求項6に記載の修復用ヘッド。
【請求項8】
前記ホルダは、前記転写材を真空吸着する吸着孔を有する請求項6または7に記載の修復用ヘッド。
【請求項9】
前記ホルダの吸着面が面一とされている請求項8に記載の修復用ヘッド。
【請求項10】
前記ホルダには、前記噴射孔が3箇所以上形成されている請求項6〜9のいずれか1項に記載の修復用ヘッド。
【請求項11】
前記ホルダの外方に配置される集合配管部材を備え、
前記ホルダの各噴射孔にそれぞれ連通する各ガス供給路が、前記集合配管部材の共通のガス供給配管に、それぞれ連結される請求項10に記載の修復用ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−185680(P2008−185680A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17541(P2007−17541)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】