説明

回路基板及びその製造方法、半導体装置、並びに電子回路装置

【課題】特に携帯型の電子機器において、半導体装置と回路基板間をアンダーフィルなどで樹脂封止しなくても、落下などの衝撃に対する耐性を向上させることを目的とする。且つ、この場合には、低背化を妨げずに小型化に寄与でき、低コストで実現できる構造を提供することを目的とする。
【解決手段】回路基板、この回路基板上に搭載された半導体チップを有する半導体装置、この半導体装置を接続したマザーボードを有する電子回路装置などにおいて、これらの電極構造1が、表面からくぼんだくぼみ4と、このくぼみ4の内部に設けられる樹脂の突起5と、このくぼみ4および突起5の表面を覆う配線層6とを有する構造からなる。このような電極構造1にすることにより、接続高さを低減するとともに耐衝撃性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造技術に関し、特に携帯型の電子機器において、回路基板上に半導体チップを実装した半導体装置、この半導体装置をマザーボード上に実装した電子回路装置などに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の、携帯電話やデジタルカメラなどの携帯型の電子機器においては、高機能化・小型軽量化の要求により、内部に搭載される電子部品が高密度化、小型薄型化し、回路基板においても、薄型化、配線の微細、狭ピッチ化が進んでいる。特に、これらの電子機器の性能に関与している半導体装置においては、パッケージの構造として、SiP(System in Package)技術により、高密度化、小型薄型化が進められている。
【0003】
SiPの構造は、インターポーザー基板などと呼ばれる中間基板に複数の半導体チップを搭載し樹脂封止したもので、半導体チップの電極と、インターポーザー基板の電極間は、Au線によるワイヤボンディング、或いは、はんだバンプ、Auバンプなどにより、フリップチップ接続することが多い。また、上記の半導体チップを接続した中間基板と電子機器のマザーボード間の接続は、半導体チップを搭載した面と反対側の中間基板の面に外部端子としてはんだバンプを形成し、このはんだバンプにより接続する、いわゆるBGA(Ball Grid Array)構造を採ることが多い。
【0004】
SiPが進化した構造として、PoP(Package on Package)と言われるような、半導体チップを上記の中間基板に搭載し、この中間基板に、他の半導体チップを搭載した中間基板とをはんだボールを介して積層接続する半導体装置の使用も増加している。この構造でも、外部端子としてははんだバンプを用いるBGA構造であることが多い。
【0005】
ここで、これらの高機能化、小型薄型化している電子部品においては、実使用時における接続部の信頼性を確保することが重要である。すなわち、電子機器の使用時には、電子部品の発熱によって接続部温度が上昇するため、接続部の温度サイクル信頼性を確保する必要がある。さらに、携帯型の電子機器では、落下などによる衝撃的な力に耐え得ることも重要になっている。
【0006】
一方、接続部に多く用いられているはんだの材料は、従来は鉛を含有していたが、鉛の人体への悪影響を懸念して、鉛を含有しないはんだ(鉛フリーはんだ)の使用が多くなっている。しかし、鉛フリーはんだは、一般的に、鉛入りはんだに比較して硬く、伸び率も小さいため、特に衝撃的な力に対して耐性が低いことが懸念されている。
【0007】
このため、半導体装置内部は樹脂封止されているのが一般的であるが、外部端子のはんだバンプとマザーボード間もアンダーフィルと言われる樹脂材料で封止されることも多い。
【0008】
他の方法として、外部端子のはんだバンプに、樹脂をコアにしたはんだボールを使用して、温度サイクル性を向上させる方法も知られている。
【0009】
回路基板の電極構造は、基板の表面に主にCuによる平らな電極を形成したものが多い。他の構造としては、基板の内部の配線層との接続のために、基板表面の絶縁層にビアを形成し、Cuめっきによりこのビアを埋めて平らに形成した電極、或いは、Cuによりビア表面をめっきし、回路基板の表面からくぼんだ形状の電極構造も用いられている。これらのCu電極上には、はんだへのぬれ性を向上させるため、Ni/Auなどのメタライズが施される例もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−103614号公報
【特許文献2】特開2007−305741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、基板表面に平らに形成された電極を用いて、はんだバンプにより半導体装置と接続した構造では、落下などによる衝撃的な力に対する耐性が低いという問題がある。すなわち、基板電極との界面に形成されている界面化合物は、一般的にはんだと比較して硬いため、界面化合物の内部、或いはこの近傍で界面破壊が起きやすい。
【0012】
樹脂をコアにするはんだボールを用いれば、衝撃性が向上すると考えられるが、高機能の製品ではピン数が多いため、通常のはんだボールに比較して高価な樹脂をコアとするはんだボールを用いると、コストアップにつながってしまう。
【0013】
このため、特許文献2(特開2007−305741号公報)に記載のように、導電性の樹脂層を回路基板の表面に形成し、この樹脂層の表面に電極を形成し、耐衝撃性を向上させた例もある。しかし、回路基板の外側に形成した樹脂層を含めると、同じ大きさのはんだバンプでは、接続高さが高くなってしまう。このような携帯機器では、小型軽量化のため、部品の高さ方向の制約も大きく、この例のように回路基板の外側に樹脂層を設けられない場合も多い。また、導電性樹脂の導電性は近年向上しているが、高速信号を処理する電子回路では、未だ使用実績が少ない。また、このように新たな構造の電極を形成するためには、プロセス数も増え、基板のコスト上昇にもつながる。
【0014】
一方、回路基板の絶縁層に形成したビアによるくぼみの残る電極では、はんだバンプを接続したときに、ビアのくぼみにはんだが充填できず、ボイドが残る割合が多い。接続部のボイドは接続強度の低下につながり、温度サイクル性の低下、衝撃的な力への耐性の低下も懸念される。
【0015】
さらに、半導体チップ、回路基板においては、電極、配線が狭ピッチ・微細化し、接続部の高さも低くなっていることから、半導体チップと回路基板間に樹脂を注入した場合、ボイドレスで封止することが難しくなっている。また、コストアップの要因となる樹脂による封止の工程を、なるべく省略したいという考えも増えてきている。
【0016】
以上から、本発明は、特に携帯型の電子機器において、半導体装置と回路基板間をアンダーフィルなどで樹脂封止しなくても、落下などの衝撃に対する耐性を向上させることを目的とする。且つ、この場合には、低背化を妨げずに小型化に寄与でき、低コストで実現できる構造を提供することを目的とするものである。
【0017】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0019】
すなわち、代表的なものの概要は、回路基板、この回路基板上に搭載された半導体チップを有する半導体装置、この半導体装置を接続したマザーボードを有する電子回路装置などにおいて、これらの電極の構造が、表面からくぼんだくぼみと、このくぼみの内部に設けられる樹脂の突起と、このくぼみおよび突起の表面を覆う配線層とを有する構造からなるものである。
【0020】
具体的には、回路基板において、半導体チップまたは電子部品などと接続する回路基板上の電極にくぼみを設け、このくぼみの内部に樹脂の突起、表面に配線層を設ける構造とする。
【0021】
また、半導体チップの電極と回路基板上の電極を接続した半導体装置においては、回路基板上の所定の位置に配置した電極にくぼみと、このくぼみの内部に樹脂の突起、表面に配線層を設けた構造とし、この回路基板の電極にはんだバンプを用いて半導体チップの電極とを接続した構造とする。
【0022】
また、半導体チップの電極と回路基板上の電極を接続した半導体装置において、半導体チップを接続した回路基板の面と反対側の回路基板の面内の所定の位置に電極を形成し、この電極にくぼみと、このくぼみの内部に樹脂の突起、表面に配線層を設け、この電極にはんだバンプを搭載した構造とする。
【0023】
また、半導体チップを回路基板に接続した半導体装置を、マザーボードに接続した電子回路装置において、半導体チップの電極と接続する回路基板上の電極、半導体チップを接続した面と反対の回路基板の面の電極、半導体装置を搭載するマザーボードの電極のうち、1箇所以上に、くぼみを有していて、このくぼみの内部に樹脂の突起、表面に配線層を設けた電極構造を適用した電子回路装置とする。
【0024】
また、回路基板において、この回路基板上の電極の一部には、くぼみが設けてあり、このくぼみの内部に樹脂の突起、表面に配線層を設けた構造を有し、さらに他の電極の直径より大きい構造とする。
【0025】
また、上記の電極のくぼみと、このくぼみの内部の樹脂の突起は、基板形成時に最外層に層間絶縁層を設け、基板内部の配線層と接続するためのビア穴を加工する際に、同時に形成するものである。すなわち、ビア形成時の露光現像工程において、ビアの中央部が残るようにマスクの開口を調整することによって、ビアの内部に樹脂の突起を作る。或いは、レーザー加工によりビアを形成する場合には、レーザービームをドーナツ状に照射することにより、ビアの内部に樹脂の突起を作ることが可能となる。従って、ビアの内部の樹脂の突起は、層間絶縁層と同じ材料となる。そして、これらの内部の樹脂の突起のあるビアに通常のめっき工程でめっきを行うことにより、くぼみのある電極構造を形成する。
【発明の効果】
【0026】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0027】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、特に携帯型の電子機器において、半導体装置と回路基板間をアンダーフィルなどで樹脂封止しなくても、落下などの衝撃に対する耐性を向上させることができる。且つ、この場合には、低背化を妨げずに小型化に寄与でき、低コストで実現できる構造を提供することができる。
【0028】
具体的には、くぼみと樹脂の突起との電極構造を有することにより、はんだバンプは基板表面から内部方向に入り、落下などによる衝撃的な力を基板と平行な方向に受けた場合に、硬い界面化合物が基板内部に存在するため、衝撃への耐性が向上する。
【0029】
さらに、くぼみの内部に樹脂の突起があることから、全く樹脂がない場合に比較して、ボイドの発生が抑えられ、界面強度を向上させることができる。
【0030】
また、はんだより柔らかい樹脂の突起がくぼみの内部にあるために、くぼみの内部全体がはんだで覆われている場合に比較して、応力緩和効果を有している。このため、衝撃的な力が付加された場合でも、この樹脂により応力を低減させることが可能である。この樹脂の突起は、実使用時に部品が発熱により温度上昇した場合、接続部に熱膨張係数差による歪が生じるが、温度サイクル信頼性の向上にも寄与する。
【0031】
これらの効果は、基板製造時のビア形成工程での条件を変更するのみで実現可能であるため、工程数の増加につながることはなく、低コストでこれらの効果を得ることができる。
【0032】
また、くぼみを有することにより、同じ径のはんだボールを用いた場合に、接続高さを低くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1における回路基板の電極構造を示す図である。
【図2】図1に示した回路基板の電極構造の製造方法を示す図である。
【図3】図2に示したマスクの平面及び断面を示す図である。
【図4】図2に示したマスクの別の例において、吊りを有するマスクの平面を示す図である。
【図5】図1に示した回路基板の電極構造の別の製造方法を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2において、回路基板の電極構造を適用した半導体装置の構造を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態3において、回路基板の電極構造を適用した別の半導体装置の構造を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態4において、回路基板の電極構造を適用した電子回路装置の構造を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態5において、回路基板の電極構造を適用した別の電子回路装置の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0035】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における回路基板の電極構造及びその製造方法の一例を図1〜図5を用いて説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施の形態1における回路基板の電極構造を示す図である。この回路基板上には、例えば半導体チップまたは電子部品などが搭載される。具体例については、実施の形態2以降で後述する。
【0037】
図1に示した回路基板の電極構造1は、基板表面2に形成した層間絶縁層3に、基板表面2より基板の内側方向にくぼみ4が形成され、このくぼみ4の内部には樹脂による突起5が形成してある。これらの表面にCuによる配線層6が設けてある。すなわち、本実施の形態における回路基板の電極構造1は、基板表面2からくぼんだくぼみ4と、このくぼみ4の内部に設けられる樹脂の突起5と、これらのくぼみ4および突起5の表面を覆う配線層6とを有する構造からなる。
【0038】
図1に示した回路基板の電極構造の製造方法を図2に示す。図2は、回路基板の片方の面に電極構造を製造する方法を示した図である。まず、基板基材としての両面銅張板7に対して、ドリル加工によるスルーホール8の穴あけ、スルーホールめっき9、サブトラクティブ法による内層回路10の形成を順に行い、そして、スルーホール部分を樹脂などにより穴埋めする(図2−(1))。その後、層間絶縁層3となる感光性樹脂をコートする(図2−(2))。
【0039】
続いて、この層間絶縁層3にビアを形成するために、マスク11を所定の箇所に位置合わせし、開口部14を形成したマスク11を通して紫外線12により露光する(図2−(3))。その後、現像によってくぼみ4となるビア13を形成する(図2−(4))。このとき、ビア13内で、樹脂の突起5の部分を形成できるように、マスク11中に樹脂突起形成用の島15を作り込んでおくことにより、ビア13内に層間絶縁層3が残り、樹脂の突起5が同時に形成される。図3にマスク11の平面図及び断面図を示す。図3に示したように、開口部14の内部に樹脂突起形成用の島15がある。
【0040】
ここで、この開口部14の内部に樹脂突起形成用の島15ができない場合には、図4に示したように、樹脂突起形成用の島15に吊り16を形成したマスクの構造にしても良い。この吊り16は、1つの樹脂の突起5に対し、2つに限らず、1つでも良いし、3つ以上設けても良い。但し、数をあまり多くしたり、幅を太くすると、ビアの形状、内部の樹脂の突起の形状が変わる可能性があるため、なるべく少なく細い方が望ましい。
【0041】
次に、表面の粗化処理、無電解銅めっき、レジストによるパターニング、電解銅めっき、レジスト除去、銅のライトエッチングなどの処理によって、ビア13のくぼみ4および樹脂の突起5の表面にCuによる配線層6を形成する(図2−(5))。その後、図示していないが、必要箇所にソルダーレジスト層を形成する。
【0042】
従って、本実施の形態における回路基板の電極構造の製造方法では、図2に示したように、くぼみ4となるビア13を形成するのと同時にビア13の内部に突起5が形成できることになり、若干のマスク11の変更は必要であるが、プロセス工程数の増加はない。
【0043】
上記図2の例では、両面銅張板7上に1層の層間絶縁層3を積層し、Cuによる配線層6を形成したが、図2−(2)から図2−(5)までの工程を繰り返すことにより、配線層を多層に形成することが可能である。このとき、最表面の層間絶縁層3以外では、ビアの内部に樹脂の突起は不要であり、外部端子用の電極となる部分にのみ樹脂の突起5を形成する。
【0044】
本実施の形態における回路基板の電極構造の製造方法について、別の製造方法を図5に示す。この製造方法では、図2−(1)と同じように処理(図5−(1))した後、両面銅張板7に液状の層間絶縁層21を塗布、或いは、フィルム状の層間絶縁層21をラミネートし(図5−(2))、これにレーザー22により穴加工を行う(図5−(3))。このとき、レーザー22からは、中央部の強度を弱くしたドーナツ状のレーザービーム23を照射することにより、樹脂による突起5を形成することが可能である。この後の工程(図5−(4)、(5))は、図2−(4)、(5)の場合と同じである。
【0045】
従って、図5に示した回路基板の電極構造の製造方法でも、樹脂の突起5を形成するために、プロセスを追加する必要がない。
【0046】
以上から、本実施の形態における回路基板の電極構造及びその製造方法によれば、図2、図5に示した回路基板の電極構造の製造方法により、新たなプロセス、材料を追加せずに、図1に示したくぼみ4と樹脂の突起5と配線層6とを有する電極構造1を形成することが可能である。
【0047】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2においては、図1に示した回路基板の電極構造を、半導体チップを接続する中間基板の電極に適用した半導体装置の例を図6を用いて説明する。図6は、本実施の形態において、回路基板の電極構造を適用した半導体装置の構造を示す図である。
【0048】
図6に示した半導体装置は、PoP構造として用いられる半導体装置31の断面の一部を模式的に示したものである。半導体チップ32のはんだバンプ33に対応する中間基板34の電極35には、くぼみ36があり、このくぼみ36の内部に樹脂の突起37があり、これらの表面にはCuによる配線層38が設けてある。図6では、半導体チップ32と中間基板34の間にアンダーフィル39が封止されているが、これは半導体チップ32の形状に応じて不要である。しかし、アンダーフィル39は、外部端子40の取り付け、半導体装置31をマザーボードに接続する際、加熱されてはんだバンプ33が溶融した場合に、半導体チップ32が中間基板34から脱落するのを防ぐ役割がある。
【0049】
以上から、本実施の形態における半導体装置31によれば、中間基板34上に搭載された半導体チップ32を有し、半導体チップ32の電極と中間基板34上の電極とを接続した構造において、図6に示したくぼみ36と樹脂の突起37と配線層38とを有する中間基板34上の電極35により、温度サイクル性、耐落下衝撃性を確保することができる。
【0050】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3においては、図1に示した回路基板の電極構造を、半導体チップを接続した中間基板の面と反対側の外部端子用の電極に適用した半導体装置の例を図7を用いて説明する。
【0051】
図7に示した半導体装置は、2枚の半導体チップが積層されている半導体装置51を示したものである。第1の半導体チップ52が中間基板53にAu線54によりワイヤボンディングされ、次に第2の半導体チップ55が中間基板53に同様にAu線54によりワイヤボンディングされている。これらの半導体チップ52、55やAu線54が樹脂56により封止されている。半導体チップ52、55が実装された中間基板53の面と反対の面の電極57にはんだバンプ58が形成されている。この電極57は、くぼみ59が形成され、このくぼみ59の内部に樹脂による突起60が形成されている。これらの表面層はCuによる配線層61である。
【0052】
次に、この図7に示した半導体装置51をマザーボードに接続し、半導体装置51とマザーボードとの間にアンダーフィルを注入しない状態で、温度サイクル性と耐落下衝撃性を調べた。温度サイクル性は、温度サイクル試験機を用い、−40℃から125℃を30分ずつ繰り返した。本実施の形態のようにくぼみ59の内部に樹脂の突起60のある電極57の場合、くぼみ59の内部に樹脂の突起60のない電極の場合に比較し、寿命が約1.2倍に向上した。
【0053】
落下衝撃試験は、半導体装置51を実装したマザーボードを、携帯電話のケースに納め、1.5mの高さから所定の板に落下させた。落下の方向としては、携帯電話の各6面を下に向けた場合を1セットとした。本実施の形態のようにくぼみ59の内部に樹脂の突起60のある電極57の半導体装置51の場合には、20セット以上問題がなかった。しかし、くぼみ59のない電極、くぼみ59があっても内部の樹脂の突起60のない電極の場合には、それぞれ、9セット、15セットで導通が不安定な箇所が発生した。
【0054】
この試験結果を検討すると、くぼみ59がない場合には、中間基板53と電極、界面化合物がすべてほぼ平行となっているので、落下時にはんだバンプ58と電極界面の端部に生じた応力が界面化合物層に直接伝わりやすいが、くぼみ59がある場合には、界面化合物層が基板内部に入り込んでいるため、落下時にはんだバンプ58と電極界面の端部に生じた応力が界面化合物層を伝わり難く、より柔らかいはんだ内で吸収できるためと推定される。さらに、内部に樹脂の突起60がある場合には、樹脂の応力緩和機能のため、応力を低減できたものと考えられる。
【0055】
以上より、本発明の回路基板の電極構造を、半導体装置に適用することは、温度サイクル信頼性、耐落下衝撃性の向上に有効である。
【0056】
また、図7に示した半導体装置51の別の効果としては、中間基板53の電極57にはくぼみ59があるため、はんだバンプ58を形成するときの、はんだボールの整列が容易になり、はんだバンプ付け工程での歩留まり向上に有効である。
【0057】
また、くぼみ59の内部の樹脂の突起60により、はんだバンプ58内のボイドの発生は、樹脂の突起60のない場合に比較して発生率が抑えられ、且つ、ボイドの大きさも小さくなった。従って、信頼性向上に寄与していると考えられる。
【0058】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4においては、図1に示した回路基板の電極構造を、半導体装置を搭載するマザーボードに適用した電子回路装置の例を図8を用いて説明する。図8は、本実施の形態において、図1の回路基板の電極構造を適用した電子回路装置の構造を示す図である。
【0059】
図8に示した電子回路装置は、半導体装置71をマザーボード72に実装した構造を示している。半導体装置71は、中間基板73に第1の半導体チップ74をAu線75によるワイヤボンディングにより接続し、第2の半導体チップ76をはんだによるマイクロバンプ77を用いて第1の半導体チップ74に接続し、第1の半導体チップ74と第2の半導体チップ76の間はアンダーフィル78により封止されている。これらは樹脂79により全体が封止され、外部端子のはんだバンプ80が形成されている。外部端子のはんだバンプ80を接続したマザーボード72の電極81は、くぼみ82が形成され、このくぼみ82の内部に樹脂の突起83が形成されている。これら表面にはCuによる配線層84が形成されている。
【0060】
半導体装置71のマザーボード72への実装は、まず、マザーボード72の電極81にはんだペーストを印刷により供給し、これに搭載機を用いて半導体装置71を位置合わせして搭載し、リフロー炉内で加熱し、はんだバンプ80を溶融させて接続している。マザーボード72と半導体装置71の間は、アンダーフィルによる封止は行わなかった。
【0061】
上記のような電子回路装置の構造の半導体装置71を実装したマザーボード72を、携帯電話のケースに納めて落下衝撃試験を行った。1.5mの高さから落下させ、6面方向を1セットとすると、20回以上の耐性がみられ、アンダーフィルによる封止が不必要であることが判った。
【0062】
また、はんだバンプ80はマザーボード72のくぼみ82のある電極81に入り込むため、接続高さも従来より低くすることが可能である。
【0063】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5においては、図1に示した回路基板の電極構造を、半導体装置を搭載するマザーボードの電極の一部に適用した電子回路装置の例を図9を用いて説明する。図9は、図8に示した電子回路装置とは異なり、図1の回路基板の電極構造を適用した別の電子回路装置の構造を示す図である。
【0064】
図9に示した電子回路装置は、図8に示した半導体装置71を別のマザーボード85に接続した構造を示したものである。このマザーボード85では、くぼみ82と、このくぼみ82の内部の樹脂の突起83のある電極81が最外周の電極に適用され、内部の電極86は、通常の平らな電極を適用してある。落下などによる衝撃は、最外周の電極に最も大きく作用すると考えられ、このような構造にすることによっても衝撃への耐性を向上させることができる。また、くぼみ82と樹脂の突起83を有する電極81は、最外周に限らず、4隅やこの周辺数ピンを含む領域に適用することも有効である。
【0065】
さらに、衝撃への耐性を向上させるためには、例えば、くぼみ82と樹脂の突起83を有する電極81に対応する半導体装置71の中間基板73の電極も、同じように、くぼみとくぼみの内部に樹脂の突起のある形状とすることも有効である。
【0066】
さらに、積極的に耐落下衝撃性を向上させるためには、くぼみとくぼみの内部に樹脂の突起のある電極を、他の電極に比べて直径を大きく作成する。この場合に、はんだ量が不足するのであれば、若干大きいはんだボールを用いて接続する。この電極は、耐落下衝撃性を向上させるための電極として、電気的な配線としては意味をなさなくても良い。
【0067】
以上より、本発明の回路基板の電極構造を採ることにより、基板製造時のプロセス数を増やすことなく、耐落下衝撃性を向上させることが可能である。これらは、半導体装置の内部の中間基板、半導体装置を搭載するマザーボードへの電極などに適用可能である。
【0068】
(実施の形態1〜5の効果)
以上において説明した、実施の形態1の回路基板、実施の形態2、3の回路基板上に搭載された半導体チップを有する半導体装置、実施の形態4、5の半導体装置を接続したマザーボードを有する電子回路装置における効果を纏めると、以下の通りである。
【0069】
(1)くぼみと樹脂の突起との電極構造を有することにより、はんだバンプは基板表面から内部方向に入り、落下などによる衝撃的な力を基板と平行な方向に受けた場合に、硬い界面化合物が基板内部に存在するため、衝撃への耐性が向上する。
【0070】
(2)くぼみの内部に樹脂の突起があることから、全く樹脂がない場合に比較して、ボイドの発生が抑えられ、界面強度を向上させることができる。
【0071】
(3)はんだより柔らかい樹脂の突起がくぼみの内部にあるために、くぼみの内部全体がはんだで覆われている場合に比較して、応力緩和効果を有している。このため、衝撃的な力が付加された場合でも、この樹脂により応力を低減させることが可能である。この樹脂の突起は、実使用時に部品が発熱により温度上昇した場合、接続部に熱膨張係数差による歪が生じるが、温度サイクル信頼性の向上にも寄与する。
【0072】
(4)(1)〜(3)の効果は、基板製造時のビア形成工程での条件を変更するのみで実現可能であるため、工程数の増加につながることはなく、低コストでこれらの効果を得ることができる。
【0073】
(5)くぼみを有することにより、同じ径のはんだボールを用いた場合に、接続高さを低くすることが可能である。
【0074】
(6)特に携帯型の電子機器において、半導体装置と回路基板間をアンダーフィルなどで樹脂封止しなくても、落下などの衝撃に対する耐性を向上させることができる。且つ、この場合には、低背化を妨げずに小型化に寄与でき、低コストで実現できる構造を提供することができる。
【0075】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の回路基板の製造技術は、回路基板及びその製造方法に限らず、この回路基板上に半導体チップを実装した半導体装置、この半導体装置をマザーボード上に実装した電子回路装置などに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…電極構造、2…基板表面、3…層間絶縁層、4…くぼみ、5…突起(樹脂)、6…配線層(Cu)、7…両面銅張板、8…スルーホール、9…スルーホールめっき、10…内層回路、11…マスク、12…紫外線、13…ビア、14…開口部、15…島、16…吊り、
21…層間絶縁層(液状或いはフィルム状)、22…レーザー、23…レーザービーム(ドーナツ状)、
31…半導体装置、32…半導体チップ、33…はんだバンプ、34…中間基板、35…電極、36…くぼみ、37…突起(樹脂)、38…配線層(Cu)、39…アンダーフィル、40…外部端子、
51…半導体装置、52…半導体チップ(第1)、53…中間基板、54…Au線、55…半導体チップ(第2)、56…樹脂、57…電極、58…はんだバンプ、59…くぼみ、60…突起(樹脂)、61…配線層(Cu)、
71…半導体装置、72…マザーボード、73…中間基板、74…半導体チップ(第1)、75…Au線、76…半導体チップ(第2)、77…マイクロバンプ(はんだ)、78…アンダーフィル、79…樹脂、80…はんだバンプ(外部端子)、81…電極(マザーボード)、82…くぼみ、83…突起(樹脂)、84…配線層(Cu)、
85…マザーボード、86…電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップまたは電子部品が搭載される回路基板であって、
前記半導体チップまたは前記電子部品と接続する前記回路基板上の電極は、前記回路基板の表面からくぼんだくぼみと、前記くぼみの内部に設けられる樹脂の突起と、前記くぼみおよび前記突起の表面を覆う配線層とを有する構造からなることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
回路基板と、前記回路基板上に搭載された半導体チップとを有し、前記半導体チップの電極と前記回路基板上の電極とを接続した半導体装置であって、
前記回路基板上の電極は、前記回路基板の表面からくぼんだくぼみと、前記くぼみの内部に設けられる樹脂の突起と、前記くぼみおよび前記突起の表面を覆う配線層とを有する構造からなり、
前記回路基板上の電極と前記半導体チップの電極とは、はんだバンプを用いて接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
回路基板と、前記回路基板上に搭載された半導体チップとを有し、前記半導体チップの電極と前記回路基板上の電極とを接続した半導体装置であって、
前記回路基板は、前記半導体チップが搭載される面と反対側の面に配置される外部端子用の電極を有し、
前記回路基板上の前記外部端子用の電極は、前記回路基板の表面からくぼんだくぼみと、前記くぼみの内部に設けられる樹脂の突起と、前記くぼみおよび前記突起の表面を覆う配線層とを有する構造からなり、
前記回路基板上の前記外部端子用の電極には、はんだバンプが搭載されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
回路基板と、前記回路基板上に搭載された半導体チップとを有し、前記半導体チップの電極と前記回路基板上の電極とを接続した半導体装置と、
前記半導体装置を接続したマザーボードと、を有する電子回路装置であって、
前記半導体チップと接続する前記回路基板上の電極と、前記半導体チップを接続した面と反対側の前記回路基板の面の電極と、前記半導体装置を接続した前記マザーボードの電極とのうちの1箇所以上の電極は、前記回路基板または前記マザーボードの表面からくぼんだくぼみと、前記くぼみの内部に設けられる樹脂の突起と、前記くぼみおよび前記突起の表面を覆う配線層とを有する構造からなることを特徴とする電子回路装置。
【請求項5】
半導体チップまたは電子部品が搭載される回路基板であって、
前記半導体チップまたは前記電子部品と接続する前記回路基板上の電極は複数からなり、
前記複数の電極のうちの第1の電極は、前記回路基板の表面からくぼんだくぼみと、前記くぼみの内部に設けられる樹脂の突起と、前記くぼみおよび前記突起の表面を覆う配線層とを有する構造からなることを特徴とする回路基板。
【請求項6】
請求項5に記載の回路基板において、
前記第1の電極は、前記第1の電極以外の他の第2の電極の直径より大きい構造からなることを特徴とする回路基板。
【請求項7】
基板基材を用いた回路基板の製造方法であって、
前記基板基材上に回路を形成する工程と、前記回路上に層間絶縁層を積層する工程と、前記層間絶縁層にビアを加工する工程とを有し、
前記層間絶縁層にビアを加工する工程においては、前記ビアとなるくぼみと、前記くぼみの内部に設けられる樹脂の突起とを同じ工程で同時に形成することを特徴とする回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−146490(P2011−146490A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5404(P2010−5404)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】