説明

回路基板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体装置

【課題】 熱膨張率が低く、耐熱性、及び導体回路との密着性に優れる回路基板用樹脂組成物、並びに、これを用いたプリプレグ、積層板、プリント配線板、及び、半導体装置を提供する。
【解決手段】(A)分子内に2つ以上のマレイミド基を有する化合物、(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有し、かつ芳香族環構造を有する化合物と、(C)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を必須成分することを特徴とする回路基板用樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んでおり、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等は、従来にも増して小型化かつ高密度化が進んでいる。
【0003】
プリント配線板を薄くした場合は、実装信頼性の低下、プリント配線板の反りが大きくなるという問題が生じるため、プリント配線板に用いられる樹脂組成物の熱膨張率を下げ、ガラス転移温度を高くする方法が様々検討されている。
【0004】
低熱膨張率と高ガラス転移温度とを兼ね備えた樹脂組成物として、マレイミド樹脂と、ジアミン類化合物を反応させることが一般に知られている(例えば、特許文献1、及ぶ2に記載。)。低熱膨張率と高耐熱性とを十分に発現するためには、マレイミド樹脂と、ジアミン化合物とを完全に反応させることが必要であるが、完全に反応させるためには高温で反応させることが必要であり、低温での反応では十分に反応が進まないことから、十分な低熱膨張率と高耐熱性とを得ることができなかった。また、高温で反応させると、マレイミド樹脂が自己重合するため、硬化収縮が大きくなり、プリント配線板等に用いた場合、十分な導体回路との密着性を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−86138号公報
【特許文献2】特開2006−104337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱膨張率が低く、耐熱性、及び導体回路との密着性に優れる回路基板用樹脂組成物、並びに、これを用いたプリプレグ、積層板、プリント配線板、及び、半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記[1]〜[8]項に記載の本発明により達成される。
[1](A)分子内に2つ以上のマレイミド基を有する化合物、(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有し、かつ芳香族環構造を有する化合物と、(C)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を必須成分とすることを特徴とする回路基板用樹脂組成物。
[2]前記(C)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が、ジヒドロキシナフタレン、カテコール、およびピロガロールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である[1]項に記載の回路基板用樹脂組成物
[3]前記(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有し、かつ芳香族環構造を有する化合物が、ジアミノジフェニルスルホンである[1]または[2]項に記載の回路基板用樹脂組成物
[4][1]ないし[3]項のいずれかに記載の回路基板用樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ。
[5][4]項に記載のプリプレグを少なくとも1枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を有する積層板。
[6][1]ないし[3]項のいずれかに記載の回路基板用樹脂組成物よりなる絶縁層をフィルム上、又は金属箔上に形成してなる樹脂シート。
[7][4]項に記載のプリプレグ、[5]項に記載の積層板、および[6]項に記載の樹脂シートからなる群より選ばれる少なくとも1つを用いて作製されるプリント配線板。
[8][7]項に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回路用樹脂組成物は、熱膨張率が低く、優れた耐熱性を有し、プリント配線板等に用いた場合、導体回路との密着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の回路基板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板、プリント配線板、及び半導体装置について説明する。
【0010】
本発明の回路板用樹脂組成物は、ガラス繊維基材等の基材に含浸させプリプレグ、前記プリプレグを用いた積層板に用いることができる。
また、本発明の回路板用樹脂組成物は、優れた絶縁性を有することから、例えばプリント配線板の絶縁層に用いることができる。
さらに本願発明の回路用樹脂組成物は、低線膨張であり、耐熱性、及び導体回路との密着性に優れることから、半導体装置のインターポーザとして用いることができる。
【0011】
半導体装置のプリント配線板としては、マザーボード及びインターポーザが知られている。インターポーザは、マザーボードと同様のプリント配線板であるが、半導体素子(ベアチップ)又は半導体パッケージとマザーボードの間に介在し、マザーボード上に搭載される。
インターポーザは、マザーボードと同様に、半導体パッケージを実装する基板として用いても良いが、マザーボードと異なる特有の使用方法としては、パッケージ基板又はモジュール基板として用いられる。
【0012】
パッケージ基板とは、半導体パッケージの基板としてインターポーザが用いられるという意味である。半導体パッケージには、半導体素子をリードフレーム上に搭載し、両者をワイアボンディングで接続し、樹脂で封止するタイプと、インターポーザをパッケージ基板として用い、半導体素子を当該インターポーザ上に搭載し、両者をワイアボンディング等の方法で接続し、樹脂で封止するタイプとがある。
【0013】
次に本発明の回路基板用樹脂組成物について詳細を説明する。
【0014】
本発明の回路基板用樹脂組成物は、(A)分子内に2つ以上のマレイミド基を有する化合物、(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有し、かつ芳香族環構造を有する化合物と、(C)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を必須成分とする。このことにより、低熱膨張率を達成でき、耐熱性、及び導体回路との密着性に優れるものとなる。
【0015】
前記(A)分子内に2つ以上のマレイミド基を有する化合物(以下、「(A)マレイミド樹脂」ということがある。)は、マレイミド基が、5員環の平面構造を有し、またマレイミド基の二重結合が分子間で相互作用しやすく、さらに極性が高いため、特に、マレイミド基、ベンゼン環、その他の平面構造を有する化合物と強い分子間相互作用を示し、分子運動を抑制することができるため、回路用樹脂組成物の硬化物の熱膨張率を下げることができ、また耐熱性に優れるものとなる。
【0016】
上記(A)マレイミド樹脂は、特に限定されないが、例えば、4,4‘−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N‘−エチレンジマレイミド、N,N‘−ヘキサメチレンジマレイミドなどのビスマレイミド、また、ポリフェニルメタンマレイミドのようなポリマレイミドがあげられる。低吸水率などを考慮すると、2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンが特に好ましい。
【0017】
上記(A)マレイミド樹脂は、1種類もしくは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
上記(A)マレイミド樹脂の含有量は、特に限定されないが、回路用樹脂組成物全体のうちシリカ、水酸化アルミニウム、その他の無機充填材を除いた樹脂組成物中60〜95重量%であることが好ましい。さらに好ましくは70〜85重量%である。これにより、回路用樹脂組成物は、効果的に低線膨張係数を発現させることができる。(A)マレイミド樹脂の含有量が前記下限値未満であると線膨張係数が十分に低くならない場合があり、実装信頼性が低下したり、プリント配線板の反りが大きくなる場合がある。また前記上限値を超えると導体回路と樹脂層との密着性に関し、ピール強度が低下する場合がある。
【0019】
上記(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有し、かつ芳香族環構造を有する化合物(以下、(B)芳香族ジアミン化合物)ということがある)は、(A)マレイミド樹脂と反応させることにより、回路用樹脂組成物の硬化物の熱膨張率をさらに下げることができ、また耐熱性がさらに向上する。
【0020】
更に、(B)芳香族ジアミン化合物は、分子内に窒素原子を有するため、(A)マレイミド樹脂と反応して得られる硬化物は、導体回路と高い密着性を有するものとなる。
【0021】
(B)芳香族ジアミン類化合物としては、分子内に2つ以上のアミノ基を有し、かつ芳香族環構造を1つ以上有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、o−キシレンジアミン等の芳香族環を1個有する芳香族ジアミン化合物、ビフェニル系ジアミン化合物、ジフェニルエーテル系ジアミン化合物、ベンゾフェノン系ジアミン化合物、ジフェニルスルホン系ジアミン化合物、ジフェニルメタン系ジアミン化合物、ジフェニルプロパン系ジアミン化合物、ジフェニルチオエーテル系ジアミン化合物等の芳香族環を2個有する芳香族ジアミン化合物、 ビス(フェノキシ)ベンゼン系ジアミン化合物、ビス(フェノキシフェニル)スルホン系ジアミン化合物等の芳香族環を3個有する芳香族ジアミン化合物、ビス(フェノキシ)ジフェニルスルホン系ジアミン化合物、ビス(フェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン系ジアミン化合物、ビス(フェノキシフェニル)プロパン系ジアミン化合物等の芳香族環を4個有する芳香族ジアミン化合物を挙げることができ、それらを単独、または、混合物として使用することができる。
これらの中でも、芳香族環が2個以上、4個以下の芳香族ジアミン類化合物が好ましい。
このような化合物は、例えば、芳香族環を2個有する4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4‘−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5‘−ジメチルジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4‘−ジアミノジフェニルメタン、芳香族環を3個有する4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、、3つ 1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、芳香族環を3個有する2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンなどが挙げられる。
また、樹脂組成物を低熱膨張率にする観点から4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンなどが好ましい。
【0022】
(B)芳香族ジアミン化合物の配合量は、特に限定されないが、(A)マレイミド樹脂と(B)芳香族ジアミン化合物の当量比は0.8〜1.2が好ましい。前記当量比が0.8未満もしくは1.2を超えると、未反応の化合物が残存し、耐熱性が低下しする場合がある。
【0023】
上記(C)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(以下、「化合物(C)」ということがある。)は、(A)マレイミド樹脂と(B)芳香族ジアミン化合物の反応を促進させることができる。
【0024】
化合物(C)は、その構造が有する水素イオンを容易に離脱しやすい。
化合物(C)より離脱した水素イオンは、(A)マレイミド樹脂のマレイミド基のC−C二重結合に付加し、二重結合の一方の炭素がカチオンとなる。
そうすると(B)芳香族ジアミン化合物の窒素原子が(A)マレイミド樹脂のC−C二重結合を求核攻撃しやすくなりなることから、硬化反応を促進させることができると推察される。
従って、化合物(C)存在下において、(A)マレイミド樹脂と(B)芳香族ジアミン化合物とは低温でも反応をすることができるため従来に比べ、本発明の回路用樹脂組成物の硬化物の熱膨張率をさらに下げることができ、また耐熱性がさらに向上すると推察する。
【0025】
また化合物(C)は、(A)マレイミド樹脂の自己重合を抑制し、樹脂組成物の硬化物の架橋構造に歪を生じないため、残留応力が小さく導体回路との密着性に優れると推察する。
【0026】
化合物(C)は、水酸基以外の置換基を有していてもよい。化合物(C)としては、下記一般式( 1 ) で示される単環式化合物又は下記一般式( 2 ) で示される多環式化合物を用いることができ、上記化合物(C)は、2種以上併用してもよい。
【0027】
【化1】


( 上記一般式( 1 ) において、R 、R はどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素、水酸基又は水酸基以外の置換基。R 、R 、R は水素、水酸基又は水酸基以外の置換基。)
【0028】
【化2】


( 上記一般式( 2 ) において、R 、R はどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素、水酸基又は水酸基以外の置換基。R 、R 、R 、R 、R は水素、水酸基又は水酸基以外の置換基。)
【0029】
上記、一般式( 1 ) で示される単環式化合物の具体例として、例えば、カテコール、クロロカテコール、メトキシカテコール、メチルカテコール、メチルカテコール、ブチルカテコール、3,5−ジ−t−ブチルカテコールピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル又はこれらの誘導体が挙げられる。反応促進性の点からはピロガロールが好ましい。
【0030】
また、上記一般式( 2 ) で示される多環式化合物の具体例として、例えば、1 , 2 − ジヒドロキシナフタレン、2 , 3 − ジヒドロキシナフタレンおよびこれらの誘導体が挙げられる。そのうち硬化性の制御のしやすさの観点、融点や揮発性の観点から、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレンが好ましい。
【0031】
上記回路基板用樹脂組成物の硬化物とは、回路基板用樹脂組成物を構成する硬化性樹脂組成物中の硬化性樹脂成分が有する官能基の反応が実質的に完結した状態を意味し、例えば、示差走査熱量測定(DSC)装置により発熱量を測定することにより評価することができる。
具体的には、この発熱量がほとんど検出されない状態を指すものである。
このような樹脂材料の硬化物を得る条件としては、例えば、120〜220℃で、30〜180分間処理することが好ましく、特に、180〜230℃で、45〜120分間処理することが好ましい。
【0032】
本発明の回路基板用樹脂組成物は、上述した分子内に2つ以上のマレイミド基を含有する化合物と芳香族ジアミン類とオルト位に2つ以上の水酸基を有する芳香族化合物を必須成分として含有するが、本発明の目的に反しない範囲において、その他の樹脂、硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、カップリング剤、無機充填材、その他の成分を添加することは差し支えない。
【0033】
次に、プリプレグについて説明する。
【0034】
本発明のプリプレグは、上述の回路基板用樹脂組成物を基材に含浸させてなるものである。これにより、耐熱性等の各種特性に優れたプリプレグを得ることができる。
本発明のプリプレグで用いる基材としては、例えばガラス繊布、ガラス不繊布等のガラス繊維基材、あるいはガラス以外の無機化合物を成分とする繊布又は不繊布等の無機繊維基材、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の有機繊維で構成される有機繊維基材等が挙げられる。これら基材の中でも強度、吸水率の点でガラス織布に代表されるガラス繊維基材が好ましい。
【0035】
前記回路基板用樹脂組成物を前記基材に含浸させる方法は、例えば、溶剤を用い回路基板用樹脂組成物を樹脂ワニスにし、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターによる塗布する方法、スプレーによる吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上することができる。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。
【0036】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記回路基板用樹脂組成物に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えばN−メチルピロリドン等が挙げられる。
前記樹脂ワニス中の固形分は、特に限定されないが、前記回路基板用樹脂組成物の固形分40〜80重量%が好ましく、特に50〜65重量%が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を更に向上できる。
前記基材に前記回路基板用樹脂組成物を含浸させ、所定温度、例えば80〜200℃で乾燥させることによりプリプレグを得ることができる。
【0037】
次に、樹脂シートについて説明する。
前記回路基板用樹脂組成物を用いた樹脂シートは、前記樹脂ワニスからなる絶縁層をキャリアフィルム、又は金属箔上に形成することにより得られる。
【0038】
前記樹脂ワニス中の回路基板用樹脂組成物の含有量は、特に限定されないが、45〜85重量%が好ましく、特に55〜75重量%が好ましい。
【0039】
次に前記樹脂ワニスを、各種塗工装置を用いて、キャリアフィルム上または金属箔上に塗工した後、これを乾燥する。または、樹脂ワニスをスプレー装置によりキャリアフィルムまたは金属箔に噴霧塗工した後、これを乾燥する。これらの方法により樹脂シートを作製することができる。
【0040】
前記塗工装置は、特に限定されないが、例えば、ロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーターおよびカーテンコーターなどを用いることができる。これらの中でも、ダイコーター、ナイフコーター、およびコンマコーターを用いる方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な絶縁層の厚みを有する樹脂シートを効率よく製造することができる。
【0041】
前記キャリアフィルムは、キャリアフィルムに絶縁層を形成するため、取扱いが容易であるものを選択することが好ましい。また、樹脂シートの絶縁層を内層回路基板面に積層後、キャリアフィルムを剥離することから、内層回路基板に積層後、剥離が容易であるものであることが好ましい。したがって、前記キャリアフィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂フィルムなどを用いることが好ましい。これらキャリアフィルムの中でも、ポリエステルで構成されるフィルムが最も好ましい。これにより、絶縁層から適度な強度で剥離することが容易となる。
【0042】
前記キャリアフィルムの厚さは、特に限定されないが、1〜100μmが好ましく、特に3〜50μmが好ましい。キャリアフィルムの厚さが前記範囲内であると、取扱いが容易で、また絶縁層表面の平坦性に優れる。
【0043】
前記金属箔は、前記キャリアフィルム同様、内層回路基板に樹脂シートを積層後、剥離して用いても良いし、また、金属箔をエッチングし導体回路として用いても良い。前記金属箔は、特に限定されないが、例えば、銅及び/又は銅系合金、アルミ及び/又はアルミ系合金、鉄及び/又は鉄系合金、銀及び/又は銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金等の金属箔などを用いることができる。
【0044】
前記金属箔の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上70μm以下であることが好ましい。さらには1μm以上35μ以下が好ましく、さらに好ましくは1.5μm以上18μm以下が好ましい。前記金属箔の厚さが上記下限値未満であると、金属箔の傷つき、ピンホールの発生し、金属箔をエッチングし導体回路として用いて場合、回路パターン成形時のメッキバラツキ、回路断線、エッチング液やデスミア液等の薬液の染み込みなどが発生する怖れがあり、前記上限値を超えると、金属箔の厚みバラツキが大きくなったり、金属箔粗化面の表面粗さバラツキが大きくなったりする場合がある。
【0045】
また、前記金属箔は、キャリア箔付き極薄金属箔を用いることもできる。キャリア箔付き極薄金属箔とは、剥離可能なキャリア箔と極薄金属箔とを張り合わせた金属箔である。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることで前記絶縁層の両面に極薄金属箔層を形成できることから、例えば、セミアディティブ法などで回路を形成する場合、無電解メッキを行うことなく、極薄金属箔を直接給電層として電解メッキすることで、回路を形成後、極薄銅箔をフラッシュエッチングすることができる。キャリア箔付き極薄金属箔を用いることによって、厚さ10μm以下の極薄金属箔でも、例えばプレス工程での極薄金属箔のハンドリング性の低下や、極薄銅箔の割れや切れを防ぐことができる。前記極薄金属箔の厚さは、0.1μm以上10μm以下が好ましい。さらに、0.5μm以上5μm以下が好ましく、さらに1μm以上3μm以下が好ましい。前記極薄金属箔の厚さが前記下限値未満であると、キャリア箔を剥離後の極薄金属箔の傷つき、極薄金属箔のピンホールの発生、ピンホールの発生による回路パターン成形時のメッキバラツキ、回路配線の断線、エッチング液やデスミア液等の薬液の染み込みなどが発生する怖れがあり、前記上限値を超えると、極薄金属箔の厚みバラツキが大きくなったり、極薄金属箔粗化面の表面粗さのバラツキが大きくなったりする場合がある。
通常、キャリア箔付き極薄金属箔は、プレス成形後の積層板に回路パターン形成する前にキャリア箔を剥離する。
【0046】
次に、積層板について説明する。
【0047】
本発明の積層板は、上述のプリプレグを少なくとも1枚成形してなるものである。これにより、優れた耐熱性と密着性を有し、誘電率や誘電正接が低い積層板を得ることができる。
【0048】
プリプレグ1枚のときは、その上下両面もしくは片面に金属箔あるいはキャリアフィルムを重ねる。
また、プリプレグを2枚以上積層することもできる。プリプレグ2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。尚、積層板に用いる金属箔あるいはキャリアフィルムは、前記樹脂シートに用いるものを用いることができる。
【0049】
次に、プリプレグと金属箔、及び/またはキャリアフィルムとを重ねたものを加熱、加圧して成形することで積層板を得ることができる。
前記加熱する温度は、特に限定されないが、150〜240℃が好ましく、特に180〜220℃が好ましい。
また、前記加圧する圧力は、特に限定されないが、2〜5MPaが好ましく、特に2.5〜4MPaが好ましい。
【0050】
次に、プリント配線板について説明するが、プリント配線板の製造方法は特に限定されるものでない。例えば、以下のように製造することができる。
【0051】
前記で得られた両面に銅箔を有する積層板を用意し、ドリル等によりスルーホールを形成し、メッキにより前記スルーホールを充填した後、積層板の両面に、エッチング等により所定の導体回路(内層回路)を形成し、導体回路を黒化処理等の粗化処理することにより内層回路基板を作製する。
【0052】
本発明の回路用樹脂組成物を用いた場合、従来に比べ微細スルーホールを歩留まり良く形成することができ、また従来にスルーホール形成後の壁の凹凸が非常に小さなものとなる。
【0053】
次に内層回路基板の上下面に、前述した樹脂シート、または前述したプリプレグを形成し、加熱加圧成形する。
具体的には、前記樹脂シート、またはプリプレグと内層回路基板とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形させる。その後、熱風乾燥装置等で加熱硬化させることにより内層回路基板上に絶縁層を形成することができる。
ここで加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
【0054】
または、前記樹脂シート、またはプリプレグを内層回路基板に重ね合わせ、これを平板プレス装置などを用いて加熱加圧成形することにより内層回路基板上に絶縁層を形成することもできる。
ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、圧力1〜4MPaで実施することができる。
【0055】
上述した方法にて得られた積層体は、絶縁層表面を過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより粗化処理した後、金属メッキにより新たな導電配線回路を形成することができる。
【0056】
本発明の回路用樹脂組成物を用いた場合、従来に比べ微細配線加工に優れ、導体回路を形成した際の導体幅(ライン)、及び導体間(スペース)が非常に狭い配線を歩留まり良く形成することができる。
【0057】
その後、前記絶縁層を加熱することにより硬化させる。硬化させる温度は、特に限定されないが、例えば、160℃〜240℃の範囲で硬化させることができる。好ましくは180℃〜200℃で硬化させることである。
次に、絶縁層に、炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁層表面に外層回路形成を行い、外層回路と内層回路との導通を図る。なお、外層回路には、半導体素子を実装するための接続用電極部を設ける。
その後、最外層にソルダーレジストを形成し、露光・現像により半導体素子が実装できるよう接続用電極部を露出させ、ニッケル金メッキ処理を施し、所定の大きさに切断し、多層プリント配線板を得ることができる。
【0058】
本発明の回路用樹脂組成物を用いた場合、ニッケル金メッキの際に従来のエポキシ樹脂組成物を用いた場合に比べ、絶縁層にニッケル等の金属原子が残らないため、電気信頼性に優れる。
【0059】
次に、半導体装置について説明する。
半導体装置は、上述した方法にて製造されたプリント配線板に半導体素子を実装し、製造することができる。半導体素子の実装方法、封止方法は特に限定されない。例えば、半導体素子とプリント配線板とを用い、フリップチップボンダーなどを用いて多層プリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプの位置合わせを行う。その後、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。そして、プリント配線板と半導体素子との間に液状封止樹脂を充填し、硬化させることで半導体装置を得ることができる。
【0060】
本発明の回路用樹脂組成物を用いた場合、半導体素子を実装する約260℃の温度においてもプリント配線板の反りを抑制でき、実装性に優れる。
【0061】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
(1)樹脂ワニスの調製
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを81.0重量部、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンを17.6重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.4重量部、水酸化アルミニウム(昭和電工製HP−360)を150重量部にN−メチルピロリドンを加え不揮発分65%となるように調整し、樹脂ワニスを得た。
【0064】
(2)プリプレグの製造
上述の樹脂ワニスを用いて、ガラス繊布(厚さ0.18mm、日東紡績社製)100重量部に対して、樹脂ワニスを固形分で80重量部含浸させて、190℃の乾燥炉で7分間乾燥させ、樹脂含有量44.4重量%のプリプレグを作製した。
【0065】
(3)樹脂シートの製造
前記で得られた樹脂ワニスを、剥離可能なキャリア箔層と0.5〜5.0μmの厚みの電解銅箔層とを張り合わせた銅箔(三井金属鉱山社製、マイクロシンEx−3、キャリア箔層:銅箔(18μm)、電解銅箔層(3μm))の電解銅箔層に、コンマコーターを用いて乾燥後の樹脂層が40μmとなるように塗工し、これを150℃の乾燥装置で10分間乾燥して、樹脂シートを製造した。
【0066】
(3)積層板の製造
上記プリプレグを2枚重ね、上下に厚さ18μmの電解銅箔(日本電解製YGP−18)を重ねて、圧力4MPa、温度220℃で180分間加熱加圧成形を行い、厚さ0.4mmの両面に銅箔を有する積層板を得た。
【0067】
(4)プリント配線板の作製
前記で得られた積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、メッキによりスルーホールを充填した。さらに、両面をエッチングにより回路形成し、内層回路基板として用いた。前記内層回路基板の表裏に、前記で得られたプリプレグを重ね合わせ、これを、真空加圧式ラミネーター装置を用いて、温度100℃、圧力1MPaにて真空加熱加圧成形させた。これを、熱風乾燥装置にて170℃で60分間加熱し硬化させて、積層体を得た。
【0068】
次に、表面の電解銅箔層に黒化処理を施した後、炭酸ガスレーザーで、層間接続用のφ60μmのビアホールを形成した。次いで、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に15分浸漬後、中和してビアホール内のデスミア処理を行った。次に、フラッシュエッチングにより電解銅箔層表面を1μm程度エッチングした後、無電解銅メッキを厚さ0.5μmで行い、電解銅メッキ用レジスト層を厚さ18μm形成しパターン銅メッキし、温度200℃時間60分加熱してポストキュアした。次いで、メッキレジストを剥離し全面をフラッシュエッチングして、L/S=20/20μmのパターンを形成した。
最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製PSR4000/AUS308)を厚さ20μm形成しプリント配線板を得た。
【0069】
(5)半導体装置の製造
プリント配線板は、前記で得られたプリント配線板であって、半導体素子の半田バンプ配列に相当するニッケル金メッキ処理が施された接続用電極部を配したものを50mm×50mmの大きさに切断し使用した。半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、Sn/Pb組成の共晶で形成された半田バンプを有し、半導体素子の回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、多層プリント配線板上に加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂の硬化条件は、温度150℃、120分の条件であった。
【0070】
(実施例2)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを78.2重量部、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンを20.4重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.4重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0071】
(実施例3)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを83.9重量部、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンを14.6重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.5重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0072】
(実施例4)
ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを76.7重量部、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンを32.5重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.7重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0073】
(実施例5)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを82.0重量部、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンを17.6重量部、1,2−ジヒドロキシナフタレンを1.4重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0074】
(実施例6)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを82.5重量部、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンを17.7重量部、ピロガロールを0.8重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0075】
(実施例7)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを81.0重量部、4,4‘−ジアミノジフェニルスルホンを17.6重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.4重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0076】
(実施例8)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを83.8重量部、4,4‘−ジアミノジフェニルメタンを14.7重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.5重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0077】
(実施例9)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを75.8重量部、4,4‘−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリンを22.9重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.3重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0078】
(実施例10)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを79.1重量部、4,4‘−ジアミノ−3,3’−ジエチル−5,5‘−ジメチルジフェニルメタン(イハラケミカル社製 商品名:キュアハードMED)を19.5重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.4重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0079】
(実施例11)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを80.6重量部、3,3’−ジエチル−4,4‘−ジアミノジフェニルメタン(日本化薬社製 商品名:カヤハードA−A)を17.9重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.5重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0080】
(実施例12)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを78.9重量部、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンを19.8重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.3重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0081】
(実施例13)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを72.6重量部、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(和歌山精化製 商品名BAPP)を26.1重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.3重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0082】
(比較例1)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを84.1重量部、4,4‘−ジアミノジフェニルメタンを15.9重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0083】
(比較例2)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを75.3重量部、4,4‘−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリンを24.7重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0084】
(比較例3)
ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンを72.0重量部、4,4‘−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリンを28.0重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0085】
(比較例4)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを81.0重量部、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンを19.0重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0086】
(比較例5)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを81.0重量部、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンを17.6重量部、1,6−ジヒドロキシナフタレンを1.4重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0087】
(比較例6)
2,2’−[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンを81.0重量部、3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンを17.6重量部、2,7−ジヒドロキシナフタレンを1.4重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0088】
(比較例7)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC製エピクロンN−690、エポキシ当量220)を76.7重量部、3,3’−ジアミノジフェニルスルホンを32.5重量部、2,3−ジヒドロキシナフタレンを1.7重量部、水酸化アルミニウムを150重量部とした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを調製し、プリプレグ、樹脂シート、積層板、プリント配線板、及び半導体装置を得た。
【0089】
各実施例および比較例により得られた樹脂ワニスおよび積層板について、次の各評価を行った。各評価を、評価方法と共に以下に示す。また得られた結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
・ 評価方法
(1)ゲルタイム
JIS C6521に準拠して、固形質量が0.15gとなる量の樹脂ワニスを170℃に加熱したキュアプレート上に載せ、ストップウォッチで計時を開始する。棒の先端にて試料を均一に攪拌し、糸状に試料が切れてプレートに残るようになった時、ストップウォッチを止める。この試料が切れてプレートに残るようになるまでの時間をゲルタイムとした。
【0092】
(2)ガラス転移温度
前記実施例、及び比較例で得られた厚さ0.4mmの両面銅張積層板を全面エッチ
ングし、6mm×25mmの試験片を作製し、DMA装置(TAインスツルメント社製動的粘弾性測定装置DMA983)を用いて5℃/分で昇温し、tanδのピーク位置をガラス転移温度とした。
【0093】
(3)線膨張係数
前記実施例、及び比較例で得られた厚さ0.4mmの両面に銅箔を有する積層板の銅箔を全面エッチングし、得られた積層板から5mm×20mmの試験片を作製し、TMA装置(TAインスツルメント社製)を用いて5℃/分の条件で、面方向(X方向)の線膨張係数を測定した。
【0094】
(4)ピール強度
前記実施例、及び比較例で得られた厚さ0.4mmの両面に銅箔を有する積層板から100mm×20mmの試験片を作製し、23℃におけるピール強度を測定した。
尚、ピール強度測定は、JIS C 6481に準拠して行った。
【0095】
(5)反応率
反応率は、DSC装置(TAインスツルメント社製 示差走査熱量測定DSC2920)を用い測定することにより求めた。
未反応の樹脂組成物と、硬化後の樹脂組成物の双方についてDSCの反応による発熱ピークの面積を比較することにより、次式(I)により求めた。なお、測定は昇温速度10℃/分、窒素雰囲気下で行った。
反応率(%)=(1−硬化後の樹脂組成物の反応ピークの面積/未反応の樹脂組成物の反応ピーク面積)×100(I)
ここで、未反応の樹脂組成物の発熱ピークは、本発明の実施例および比較例の樹脂組成物からなる樹脂ワニスを基材に含浸し、40℃で10分風乾後、40℃、1kPaの真空下、1時間で、溶剤を除去したものを試料として、DSC測定を行った際に得られた発熱ピークである。
硬化後の樹脂組成物の発熱ピークは、本発明の実施例および比較例の厚さ0.4mmの両面に銅箔を有する積層板の銅箔をエッチングし、表面より樹脂を削り取ったものを試料としてDSC測定を行った際の発熱ピークである。
【0096】
表から明らかなように、実施例1〜13は、分子内に2つ以上のマレイミド基を含有する化合物と芳香族ジアミン類化合物とオルト位に2つ以上の水酸基を有する芳香族化合物を含有する本発明の回路基板用樹脂組成物を用いた積層板であり、ガラス転移温度も高く、熱膨張係数も低い値であり、密着性に優れていた。
さらに、ゲルタイムが短いことから、生産性に優れるものであった。
これに対して比較例1ないし6はゲルタイムが長く、生産性が悪化した。
【0097】
比較例1ないし4はいずれも密着性を示すピール強度測定において十分な値とならなかった。
また、比較例1ないし6はゲルタイムが長く、生産性に劣るものとなった。
実施例と同等の生産性を得るにはより高温で硬化させる必があることが分かる。
また、比較例3ないし7は、反応率の結果から、反応率が十分でなく、220℃で180分のプレス条件では、成形できないことが分かった。
【0098】
エポキシ樹脂を用いた比較例7は、ゲルタイムは良好であるが、線膨張率が高いという課題があった。
【0099】
実施例で得られたプリント配線板、及び半導体装置は、すべて歩留まり良く良品が製造できた。一方、比較例はすべて、歩留まりが悪く、特に半導体装置製造時の半導体素子とプリント配線板との接続信頼性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の回路基板用樹脂組成物、プリプレグ、積層板は、高いガラス転移温度を有し、かつ熱膨張係数が低く、耐熱性にも優れる。これにより薄型のシステムインパッケージ基板、半導体装置に有用に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内に2つ以上のマレイミド基を有する化合物、(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有し、かつ芳香族環構造を有する化合物と、(C)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を必須成分とすることを特徴とする回路基板用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が、ジヒドロキシナフタレン、カテコール、およびピロガロールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の回路基板用樹脂組成物
【請求項3】
前記(B)分子内に2つ以上のアミノ基を有し、かつ芳香族環構造を有する化合物が、ジアミノジフェニルスルホンである請求項1または2に記載の回路基板用樹脂組成物
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の回路基板用樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリプレグを少なくとも1枚以上重ね合わせた積層体の少なくとも片面に金属箔を有する積層板。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかに記載の回路基板用樹脂組成物よりなる絶縁層をフィルム上、又は金属箔上に形成してなる樹脂シート。
【請求項7】
請求項4に記載のプリプレグ、請求項5に記載の積層板、および請求項6に記載の樹脂シートからなる群より選ばれる少なくとも1つを用いて作製されるプリント配線板。
【請求項8】
請求項7に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。

【公開番号】特開2011−84711(P2011−84711A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56948(P2010−56948)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】