説明

回転検出装置

【課題】第1センサ部の出力信号が所定レベルから変化しなくなる異常が生じている場合であれ、回転体の回転角度の変化量を的確に把握することができる。
【解決手段】クランクポジションセンサ42はクランクシャフト31が所定角度回転する毎にパルス状の信号を出力するメインセンサ61、サブセンサ62を有し、これらは互いに位相のずれた信号を出力する。サブ信号がハイレベルであり且つメイン信号が変化したとの条件が成立したときにこのときのメイン信号の変化方向に応じて異なるパルス幅のクランク信号を出力する。ECU41は、サブ信号がハイレベルから変化しなくなる異常が生じているか否かを判定し、同異常が生じている旨判定された場合にクランク信号のパルス幅と機関回転速度と上記異常時に出力されるクランク信号数との対応関係に基づき当該出力されるクランク信号数を正常時におけるクランク信号数に換算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の正回転及び逆回転の双方を検出可能な回転センサを備える回転検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の回転検出装置としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の回転検出装置も含め従来一般の回転検出装置では、内燃機関の出力軸であるクランクシャフトに円板状のシグナルロータが取り付けられており、このシグナルロータに対向してクランクポジションセンサが配置されている。
【0003】
シグナルロータは、その外周に沿って、すなわちその回転方向に沿って所定角度(例えば10度)毎に設けられる複数の歯と、上記回転方向において互いに隣り合う歯と歯との間に設けられてこれら歯と歯との間隔を不等間隔とする欠歯部とを有している。
【0004】
クランクポジションセンサは、その近傍を歯が通過する毎にパルス状の信号を出力するセンサ部であって、互いに位相のずれた信号を出力するメインセンサ及びサブセンサからなるセンサ部を有している。具体的には、これらセンサから出力される信号はそれぞれ、1つの歯が通過する毎にローレベルからハイレベルに変化するように構成されている。ここで、クランクシャフトが正回転した場合には、サブセンサの出力信号がハイレベルであり且つメインセンサの出力信号がハイレベルからローレベルに変化する、すなわち立ち下がるようにセンサ部が構成されている。そのため、センサ部から出力される信号の出力態様のこうした組み合わせが成立すると、クランクシャフトが正回転しているとして、クランクポジションセンサからパルス幅の短いパルス信号(クランク信号)が出力されるようになっている。
【0005】
一方、クランクシャフトが逆回転した場合には、サブセンサの出力信号がハイレベルであり且つメインセンサの出力信号がローレベルからハイレベルに変化する、すなわち立ち上がるようにセンサ部が構成されている。そのため、センサ部から出力される信号の出力態様のこうした組み合わせが成立すると、クランクシャフトが逆回転しているとして、クランクポジションセンサからパルス幅の長いパルス信号(クランク信号)が出力されるようになっている。
【0006】
このようなクランクポジションセンサによれば、出力されるクランク信号を計数することによってクランクシャフトの回転角度の変化量の絶対値を把握することができるとともに、同クランク信号のパルス幅に基づいてクランクシャフトの回転方向を把握することができる。従って、クランクシャフトの逆回転を考慮した上でクランクシャフトの回転角度を精度良く求めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005―233622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記クランクポジションセンサでは、サブセンサの出力信号がハイレベルから変化しなくなる異常が生じることがある。この場合には、クランクポジションセンサの近傍を1つの歯が通過する毎にクランクポジションセンサから例えば2つのパルス信号が出力されるといったように、クランクシャフトが所定角度回転する毎にクランクポジションセンサから出力されるパルス信号数が「1」以外の数となることがある。そのため、こうした異常が生じた場合には、クランクポジションセンサから出力されるパルス信号の信頼性が低くなるために、クランクシャフトの回転角度の変化量を的確に把握することができなくなるといったいった問題が生じる。
【0009】
尚、このような問題は、内燃機関のクランクシャフトの回転を検出するためのクランクポジションセンサに限られるものではなく、任意の回転体の回転を検出する回転センサを備えるものであれば、概ね共通して生じ得るものである。
【0010】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転センサを構成する第1センサ部の出力信号が所定レベルから変化しなくなる異常が生じている場合であれ、回転体の回転角度の変化量を的確に把握することのできる回転検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、回転体が所定角度回転する毎にパルス状の信号を出力するセンサ部であって互いに位相のずれた信号を出力する第1センサ部及び第2センサ部を有して、前記第1センサ部の出力信号が所定レベルであり且つ前記第2センサ部の出力信号が変化したとの条件が成立したときに同条件の成立時における前記第2センサ部の出力信号の変化方向に応じて異なるパルス幅のパルス信号を出力する回転センサを備える回転検出装置において、前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅を検出するパルス幅検出部と、前記回転体の回転速度を検出する回転速度検出部と、前記第1センサ部の出力信号が前記所定レベルから変化しなくなる異常が生じているか否かを判定する異常判定部と、前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合に、前記パルス幅検出部により検出されたパルス信号のパルス幅と前記回転速度検出部により検出された回転体の回転速度と前記異常時に前記回転センサから出力されるパルス信号数との対応関係に基づいて、当該出力されるパルス信号数を、前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算する換算部と、を備えることをその要旨としている。
【0012】
回転センサが正常であれば回転体が所定角度回転する毎に回転センサから1つのパルス信号が出力されるところ、回転センサを構成する第1センサ部の出力信号が所定レベルから変化しなくなる異常が生じている場合には、回転体が所定角度回転する毎に回転センサから出力されるパルス信号数の平均値(以下、パルス信号数の平均値)が「1」よりも大きくなることがある。この場合、パルス信号数の平均値は、パルス信号のパルス幅及び回転体の回転速度によって異なる。上記構成によれば、異常判定部により異常が生じている旨判定された場合には、これらパルス信号のパルス幅と回転体の回転速度と異常時に回転センサから出力されるパルス信号数との対応関係に基づいて、当該出力されるパルス信号数が、回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算される。これにより、回転センサを構成する第1センサ部の出力信号が所定レベルから変化しなくなる異常が生じている場合であれ、回転体の回転角度の変化量を的確に把握することができるようになる。
【0013】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転検出装置において、前記回転センサに前記異常が生じており、且つ前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅がその公差の最大値であるときに、前記回転体が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから2つのパルス信号が出力される前記回転体の回転速度の最大値を所定回転速度とするとき、前記換算部は、前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合、前記回転体の回転速度が前記所定回転速度以下のときに、前記回転体が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数を2分の1倍して前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算することをその要旨としている。
【0014】
回転センサに上記異常が生じており、且つ回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅がその公差の最大値であるときには、回転体の回転速度が「0」から上記所定回転速度までの範囲内に含まれる場合には、パルス信号数の平均値は「2」となる。またこのとき、回転体の回転速度が上記所定回転速度よりも大きくなると、パルス信号数の平均値が「2」よりも小さくなる。また、回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅がその最大値よりも小さい場合には、パルス信号数の平均値が「2」となる回転体の回転速度の最大値は、上記所定回転速度よりも高くなる。これらのことから、回転体の回転速度が上記所定回転速度以下であれば、回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅に拘わらず、パルス信号数の平均値は「2」となる。上記構成によれば、回転センサに上記異常が生じている場合、回転体の回転速度が上記所定回転速度以下のときに、回転体が所定角度回転する毎に回転センサから出力されるパルス信号数が2分の1倍されて回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算される。これにより、換算部によるパルス信号数の換算を簡易且つ精度良く行なうことができるようになる。
【0015】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の回転検出装置において、前記回転センサに前記異常が生じているときに、前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅と前記回転体の回転速度と前記回転体が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数との間に成立する対応関係が予め規定され、前記換算部は、前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合、前記パルス幅検出部により検出されたパルス信号のパルス幅と、前記回転体の回転速度と、前記対応関係とに基づいて換算係数を求め、同換算係数に基づいて、前記回転体が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数を前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算することをその要旨としている。
【0016】
回転センサに上記異常が生じている場合には、回転体の回転速度が「0」から、所定回転速度までの範囲内に含まれる場合には、パルス信号数の平均値は「2」となる。ここで、回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅には公差が存在する。そして、パルス幅が小さい場合ほど上記所定回転速度は大きくなる。また、回転体の回転速度が上記所定回転速度よりも大きくなると、パルス信号数の平均値は「2」よりも小さくなる。また、回転体の回転速度が大きくなるほど、パルス信号数の平均値は小さくなる。これらのことから、パルス信号のパルス幅と回転体の回転速度とパルス信号数の平均値との間には所定の対応関係が成立する。上記構成によれば、回転センサに上記異常が生じている場合、パルス信号のパルス幅と、回転体の回転速度と、上記対応関係とに基づいて換算係数を求め、同換算係数に基づいて、回転体が所定角度回転する毎に回転センサから出力されるパルス信号数が、回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算される。これにより、回転体の回転速度がある程度高い場合であれ、換算部によるパルス信号数の換算を精度良く行なうことができるようになる。
【0017】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の回転検出装置において、前記異常判定部は、前記回転体が所定方向へのみ回転する判定期間内において前記回転センサから連続して出力された2つのパルス信号の一方のパルス幅と他方のパルス幅とが異なることをもって前記異常が生じている旨判定することをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、回転センサを構成する第1センサ部の出力信号が所定レベルから変化しなくなる異常が生じている場合には、こうした異常を的確に判定することができるようになる。
【0019】
(5)請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明は、請求項5に記載の発明によるように、前記回転体は内燃機関の出力軸であり、前記回転速度検出部は、内燃機関の出力軸の回転速度を検出するといった態様をもって具体化することができる。このような内燃機関の回転検出装置に対して、例えば請求項1に記載の発明を適用すれば、回転センサを構成する第1センサ部の出力信号が所定レベルから変化しなくなる異常が生じている場合であれ、内燃機関の出力軸が所定角度回転することを的確に把握することができるようになる。
【0020】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の回転検出装置において、前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合に、内燃機関の出力を所定の態様にて低減する出力低減部を備えることをその要旨としている。
【0021】
内燃機関の回転検出装置においては、回転センサから出力されるパルス信号に基づいてその出力軸の基準回転角度を求めるとともに、回転センサからパルス信号が出力される毎に所定角度を同基準回転角度に加算することにより、現在の出力軸の回転角度が求められる。そして、こうして求められた出力軸の回転角度に基づいて内燃機関の燃料噴射制御や点火制御が行なわれる。そのため、回転センサに上記異常が生じていることに起因して、内燃機関の出力軸が所定角度回転する毎に回転センサから出力されるパルス信号数が「1」以外の数となると、それ以降において内燃機関の出力軸の回転角度が誤って求められるようになる。その結果、誤算出された出力軸の回転角度に基づいて燃料噴射制御や点火制御が行なわれることとなり、例えば機関出力の過度の増大を招くといった問題が生じるおそれがある。
【0022】
この点、上記構成によれば、回転センサに上記異常が生じている旨判定された場合には、内燃機関の出力が所定の態様にて低減されるようになることから、回転センサに上記異常が生じることに起因して機関出力が過度に増大することを抑制することができるようになる。
【0023】
(7)請求項5又は請求項6に記載の発明は、請求項7に記載の発明によるように、内燃機関の出力軸には、その回転方向に沿って前記所定角度毎に設けられる複数の歯と、前記回転方向において隣り合う前記歯の間に設けられてこれら歯の間隔を不等間隔とする欠歯部とを有するシグナルロータが連結され、前記回転センサは、前記シグナルロータに対向して配置されるといった態様をもって具体化することができる。この場合、上記欠歯部を内燃機関の出力軸の基準回転角度とすれば、同欠歯部の通過の有無を判定することにより、内燃機関の出力軸の基準回転角度を的確に求めることができる。そして、このような内燃機関の回転検出装置に対して、請求項1に記載の発明を適用すれば、回転センサを構成する第1センサ部の出力信号が所定レベルから変化しなくなる異常が生じている場合であれ、内燃機関の出力軸の回転角度を的確に把握することができるようになる。
【0024】
(8)請求項7に記載の発明は、請求項8に記載の発明によるように、前記回転センサから連続して出力される2つのパルス信号間の時間間隔に基づいて前記欠歯部の通過の有無を判定する欠歯通過判定部と、内燃機関の出力軸の回転に伴い回転する第2の回転体の基準回転角度の通過に対応した信号を出力するセンサであって、前記シグナルロータの前記欠歯部が前記回転センサを通過したときに前記信号を出力する第2の回転センサと、前記欠歯通過判定部により前記欠歯部が通過した旨判定されたことと前記第2の回転センサから前記信号が出力されたこととの少なくとも一方に基づいて内燃機関の出力軸の基準回転角度を検出する基準回転角度検出部と、を備えるといった態様をもって具体化することができる。この場合、例えば、欠歯部が通過した旨判定されたことと第2の回転センサから上記信号が出力されたこととの双方に基づいて内燃機関の出力軸の基準回転角度を検出することとすれば、何等かの原因により欠歯部が回転センサを通過したにも拘わらずその旨判定されない場合であっても、第2の回転センサから上記信号が出力されることをもって内燃機関の出力軸の基準回転角度が検出されることから、内燃機関の出力軸の基準回転角度を的確に把握することができるようになる。
【0025】
(9)請求項8に記載の発明は、請求項9に記載の発明によるように、前記第2の回転体は、機関バルブを開閉駆動するカムが設けられるカムシャフトであり、前記第2の回転センサは前記カムシャフトの基準回転角度の通過に対応した信号を出力するといった態様をもって具体化することができる。
【0026】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項8又は請求項9に記載の回転検出装置において、前記基準回転角度検出部は、前記換算部により当該出力されるパルス信号数を前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算するようにした後に、内燃機関の出力軸の基準回転角度を検出することをその要旨としている。
【0027】
同構成によれば、内燃機関の出力軸の基準回転角度を的確に検出することができ、こうして検出した基準回転角度に基づいて内燃機関の出力軸の回転角度を的確に把握することができるようになる。
【0028】
(11)請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の回転検出装置において、前記回転センサに前記異常が生じており、且つ前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅がその公差の最大値であるときに、内燃機関の出力軸が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから2つのパルス信号が出力される機関回転速度の最大値を所定回転速度とするとき、前記換算部は、前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合、機関回転速度が前記所定回転速度以下のときに、内燃機関の出力軸が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数を2分の1倍して前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算するものであり、前記基準回転角度検出部により前記基準回転角度が検出された後に、機関回転速度が前記所定回転速度よりも大きくなることが抑制されるように内燃機関の出力を制限する出力制限部を備えることをその要旨としている。
【0029】
機関回転速度が上記所定回転速度以下のときに、内燃機関の出力軸が上記所定角度回転する毎に回転センサから出力されるパルス信号数を2分の1倍して回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算するものにあっては、機関回転速度が上記所定回転速度よりも大きくなると、回転センサから出力されるパルス信号数を簡易且つ精度良く換算することができなくなる。
【0030】
この点、上記構成によれば、内燃機関の出力軸の基準回転角度が検出された後に、機関回転速度が上記所定回転速度よりも大きくなることが抑制されるように内燃機関の出力が制限されることから、回転センサから出力されるパルス信号数が的確に換算されなくなることを抑制することができるようになる。
【0031】
(12)請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の回転検出装置において、前記出力制限部は、機関回転速度が前記所定回転速度以下の停止回転速度以上となると燃料噴射を停止することをその要旨としている。
【0032】
同構成によれば、機関回転速度が上記停止回転速度以上となると燃料噴射を停止することを通じて、機関回転速度が所定回転速度以上となることを的確且つ容易に抑制することができるようになる。
【0033】
(13)請求項13に記載の発明は、請求項10に記載の回転検出装置において、前記回転センサに前記異常が生じているときに、前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅と機関回転速度と内燃機関の出力軸が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数との間に成立する対応関係が予め規定され、前記換算部は、前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合、前記パルス幅検出部により検出されたパルス信号のパルス幅と、機関回転速度と、前記対応関係とに基づいて換算係数を求め、同換算係数に基づいて、内燃機関の出力軸が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数を前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算するものであり、前記回転センサに前記異常が生じており、且つ前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅が所定の大きさであるときに、内燃機関の出力軸が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから1つ以上のパルス信号が出力される機関回転速度の最大値を最大回転速度とするとき、前記基準回転角度検出部により前記基準回転角度が検出された後に、機関回転速度が前記最大回転速度よりも大きくなることが抑制されるように内燃機関の出力を制限する出力制限部を備えることをその要旨としている。
【0034】
回転センサに上記異常が生じており、パルス信号のパルス幅が所定の大きさである場合に、機関回転速度が上記最大回転速度よりも大きくなると、パルス信号数の平均値が「1」よりも小さくなる。ここで、回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅には公差が存在する。そして、パルス幅が小さい場合ほど、上記最大回転速度は大きくなる。これらのことから、パルス信号のパルス幅と、機関回転速度と、上記対応関係とに基づいて換算係数を求め、同換算係数に基づいて、内燃機関の出力軸が上記所定角度回転する毎に回転センサから出力されるパルス信号数を回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算するものにあっては、機関回転速度が上記最大回転速度よりも大きくなると、回転センサから出力されるパルス信号数を的確に換算することができなくなり、正常時のパルス信号数を精度良く把握することができなくなる。
【0035】
この点、上記構成によれば、内燃機関の出力軸の基準回転角度が検出された後に、機関回転速度が上記最大回転速度よりも大きくなることが抑制されるように内燃機関の出力が制限されることから、回転センサから出力されるパルス信号数が的確に換算されなくなることを抑制することができ、正常時のパルス信号数が精度良く把握することができなくなるといった問題の発生を抑制することができるようになる。
【0036】
(14)請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の回転検出装置において、前記出力制限部は、機関回転速度が上記最大回転速度以下の停止回転速度以上となると燃料噴射を停止することをその要旨としている。
【0037】
同構成によれば、機関回転速度が上記停止回転速度以上となると燃料噴射を停止することを通じて、機関回転速度が最大回転速度よりも大きくなることを的確且つ容易に抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る回転検出装置の第1実施形態について、同装置が適用される車載多気筒内燃機関及びその周辺構成を示す概略図。
【図2】同実施形態のクランクポジションセンサ及びその周辺構成を示す概略図。
【図3】同実施形態におけるメインセンサからのメイン信号の変化態様と、サブセンサからのサブ信号のレベルと、クランクシャフトの回転方向との関係を示す表。
【図4】同実施形態のクランクシャフトの正回転時におけるメイン信号、サブ信号、クランク信号、及びクランクカウンタの推移を併せ示すタイミングチャート。
【図5】同実施形態のクランクシャフトの逆回転時におけるメイン信号、サブ信号、クランク信号、及びクランクカウンタの推移を併せ示すタイミングチャート。
【図6】同実施形態のクランクポジションセンサが正常である場合におけるクランク信号、仮判定条件の成否、及び本判定条件の成否の関係を併せ示すタイミングチャート。
【図7】同実施形態のクランクシャフトの正回転時であってクランクポジションセンサに異常が生じている場合におけるメイン信号、サブ信号、クランク信号、及びクランクカウンタの推移を併せ示すタイミングチャート。
【図8】同実施形態におけるクランクシャフトの正回転時におけるシグナルロータ及びクランク信号の推移を併せ示すチャート。
【図9】クランクポジションセンサに上記異常が生じているときのクランク信号のパルス幅と、機関回転速度と、クランク信号数の平均値を正常時の平均値にて除した値との対応関係を示す表。
【図10】同実施形態における機関制御の処理手順を示したフローチャート。
【図11】同実施形態のクランクポジションセンサが異常である場合におけるクランク信号、仮判定条件の成否、及び本判定条件の成否の関係を併せ示すタイミングチャート。
【図12】本発明に係る回転検出装置の第1実施形態における機関制御の処理手順を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第1実施形態>
以下、図1〜図11を参照して、本発明に係る回転検出装置を車載多気筒内燃機関に適用される回転検出装置として具体化した第1実施形態について詳細に説明する。
【0040】
図1に、本発明に係る多気筒内燃機関(以下、内燃機関11)及びその周辺構成を模式的に示す。尚、図1では、複数の気筒12のうちの1つを模式的に示している。
図1に示すように、内燃機関11の各気筒12内にはピストン13が往復動可能に設けられている。各気筒12には、このピストン13の頂面と気筒12の内周面とによって燃焼室14が区画形成されている。
【0041】
また、内燃機関11には、各気筒12に対応して各別に、燃料を噴射する燃料噴射弁15が設けられている。そして、各燃焼室14では、吸入空気と噴射燃料とからなる混合気に対して点火プラグ16による点火が行われ、これによって同混合気が燃焼してピストン13が往復移動し、出力軸としてのクランクシャフト31が回転する。このクランクシャフト31の駆動力は、変速機32を介して駆動輪(図示略)へ伝達される。尚、内燃機関11の出力によりクランクシャフト31が回転する方向を正回転方向とし、その反対方向を逆回転方向とする。また、このクランクシャフト31は、機関始動時にスタータモータ33で回転駆動されることによりクランキングされる。
【0042】
上記内燃機関11は、吸気通路21と燃焼室14との間が吸気バルブ22の開閉動作によって連通・遮断され、燃焼室14と排気通路23との間が排気バルブ24の開閉動作によって連通・遮断される。これら吸気バルブ22及び排気バルブ24はクランクシャフト31の回転が伝達される吸気カムシャフト26及び排気カムシャフト27の回転に伴ってそれぞれ開閉動作する。
【0043】
こうした内燃機関11の各種制御は、車両に搭載された電子制御装置(以下、ECU41)によって行われる。ECU41は、内燃機関11の制御に係る演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果が一時的に記憶されるRAM、外部からの信号を入力するための入力ポート及び外部に信号を出力するための出力ポート等から構成されている。
【0044】
ECU41の入力ポートには、内燃機関11や車両の状態を検出する各種センサが接続されている。この各種センサとしては、クランクシャフト31の回転角度であるクランク角CA及びクランクシャフト31の回転速度である機関回転速度NEを検出するためのクランクポジションセンサ42や吸気カムシャフト26の回転角度であるカム角を検出するためのカムポジションセンサ43が挙げられる。また、上記センサ以外には、運転者により操作されるシフトレバー(図示略)のシフト位置を検出するためのシフトポジションセンサ44、アクセル踏込み量を検出するためのアクセルポジションセンサ45、ブレーキペダルの操作状態を検出するためのブレーキセンサ46、及び車両走行速度を検出するための車速センサ47等のセンサが挙げられる。
【0045】
一方、ECU41の出力ポートには、燃料噴射弁15やスタータモータ33等がそれぞれ電気的に接続されている。そして、ECU41は、これら各種センサの検出結果に基づいて燃料噴射や機関始動時におけるクランキング等の各種制御を行う。
【0046】
具体的には、クランクポジションセンサ42及びカムポジションセンサ43から出力される信号に基づき気筒判別を実行するとともに、クランク角CAに基づいて各気筒12に対する燃料噴射時期及び点火時期を設定する。
【0047】
また、ECU41は、所定の停止条件が成立した場合に、内燃機関11を自動停止する一方、所定の再始動条件が成立した場合に内燃機関11を自動始動する自動停止再始動制御を実行する。
【0048】
自動停止再始動制御では、例えばブレーキが踏み込まれており、且つ車両が停止している状態が所定期間継続しているといった所定の停止条件が成立したときに、燃料噴射を停止して内燃機関11を自動的に停止させる。また、ECU41は、内燃機関11が自動停止されているときに、例えばブレーキの踏み込みが解除されたといった所定の再始動条件が成立したときには、内燃機関11に対して機関始動指令が出力されたとしてスタータモータ33を駆動して内燃機関11を自動的に再始動させる。
【0049】
そして、ECU41は、内燃機関11が自動停止する際のクランク角CAを記憶しておき、そのクランク角CAに基づいて再始動時の燃料噴射を実行することにより、再始動時の始動時間を短縮するようにしている。
【0050】
ここで、内燃機関11の停止時において、クランクシャフト31は正回転及び逆回転を繰り返した後に完全に停止するため、上記クランクポジションセンサ42は、クランクシャフト31の正逆両方向の回転を検出可能なものが用いられている。
【0051】
次に、図2を参照して、回転センサとしてのクランクポジションセンサ42及びその周辺構成について説明する。
図2に示すように、クランクシャフト31の端部には、円板状のシグナルロータ51が同クランクシャフト31と一体回転可能に設けられている。このシグナルロータ51の外周には、その回転方向に沿って複数の歯52が所定角度(10度)毎に設けられるとともに、その一部には、基準クランク角CA0を検知するべく2枚の歯52を欠損させた欠歯部53が形成されている。すなわち、欠歯部53は、クランクシャフト31の回転方向において互いに隣り合う歯52と歯52との間に設けられてこれら歯52の間隔を不等間隔としている。そして、クランクポジションセンサ42は、このシグナルロータ51の上記歯52と対向する位置に配置されて、クランク角CA及びクランクシャフト31の回転速度である機関回転速度NEを検出する。
【0052】
クランクポジションセンサ42は、歯52と対向するメインセンサ61と、同メインセンサ61からクランクシャフト31の回転方向に所定間隔を空けて配置されるサブセンサ62と、これらメインセンサ61から出力される信号(以下、メイン信号Sm)及びサブセンサ62から出力される信号(以下、サブ信号Ss)に応じて生成されるパルス信号(以下、クランク信号Sc)をECU41に出力する処理装置63を備えている。メインセンサ61及びサブセンサ62は共に、クランクシャフト31の回転に伴いこれらメインセンサ61及びサブセンサ62の近傍をシグナルロータ51の1つの歯52が通過する度にパルス状の信号を出力するものであり、互いに所定角度(例えば5度)だけ位相のずれた信号を出力する位置にそれぞれ配置されている。尚、処理装置63には、クランク信号Scのパルス幅を制御するためのタイマ64が設けられている。そして、クランクポジションセンサ42は、クランクシャフト31が所定角度回転する毎に、その回転方向に応じて異なるパルス幅のクランク信号Scを出力する。
【0053】
尚、メインセンサ61が本発明に係る第2センサ部として機能し、サブセンサ62が本発明に係る第1センサ部として機能する。
クランク信号Scは以下のような考えのもとに生成される。
【0054】
図3に、メインセンサ61からのメイン信号Smの変化態様と、サブセンサ62からのサブ信号Ssのレベルと、クランクシャフト31の回転方向との関係を示す。
図3の[条件A]に示すように、クランクシャフト31が正回転した場合には、メインセンサ61からのメイン信号Smのハイレベルからローレベルへの変化(以下、立ち下がり)時においてサブセンサ62からのサブ信号Ssがハイレベルとなるように構成されている。すなわち、[条件A]が成立すると、クランクシャフト31が正回転しているといえる。そしてこの場合、クランクポジションセンサ42からパルス幅の短いクランク信号Scが出力されるようになっている。
【0055】
また、図3の[条件B]に示すように、クランクシャフト31が逆回転した場合には、メインセンサ61からのメイン信号Smのローレベルからハイレベルへの変化(以下、立ち上がり)時においてサブセンサ62からのサブ信号Ssがハイレベルとなるように構成されている。すなわち、[条件B]が成立すると、クランクシャフト31が逆回転しているといえる。そしてこの場合、クランクポジションセンサ42からパルス幅の長いクランク信号Scが出力されるようになっている。
【0056】
このように本実施形態では、サブセンサ62からのサブ信号Ssがハイレベルであり且つメインセンサ61からのメイン信号Smが変化したとの条件が成立したときにクランクシャフト31が所定角度だけ回転したことが検出される。また、同条件の成立時におけるメイン信号Smの変化方向(立ち下がり、或いは立ち上がり)に基づいてクランクシャフト31の回転方向(正回転、或いは逆回転)が検出される。
【0057】
そして、これらの情報に基づいてクランク信号Scが以下のように生成されて出力される。
図4に、クランクシャフト31の正回転時におけるメインセンサ61からのメイン信号Sm、サブセンサ62からのサブ信号Ss、クランク信号Sc、及びクランクカウンタの関係を併せ示す。
【0058】
図4に示すように、ハイレベルになっているクランク信号Scは、上記[条件A](図3参照)の成立したタイミングから、予め定められた所定時間Δt1(例えば、数十ミリ秒)が経過するまでの間(時刻t11〜t12,t13〜t14,t15〜t16)においてローレベルに変更される。ここで、ローレベルに設定されている所定時間Δt1が、クランク信号Scのパルス幅に相当する。
【0059】
ECU41は、このクランク信号Scのパルス数を計数してクランク角CAに相当する値(詳しくは、図4に併せ示すクランクカウンタ)を求めることにより同クランク角CAを検出する。この場合、クランク信号Scがハイレベルからローレベルに変化する度に、クランクカウンタのカウント値に、「1」がインクリメントされる(時刻t11,t13,t15)。尚、クランクカウンタのカウント値は、大きい値になるほどクランク角CAが大きいことを示す値であり、720°CAに相当する値に達すると、再び0°CAに初期化される。
【0060】
また、後に詳述するように、ECU41により、連続して出力されるクランク信号Sc間の時間間隔に基づいて基準角度としての欠歯部53の通過の有無を判定する欠歯通過判定が行なわれる。また、前述したカムポジションセンサ43は、吸気カムシャフト26の基準回転角度(基準カム角)の通過に対応した信号Gを出力するものであり、同信号Gは、シグナルロータ51の欠歯部53がクランクポジションセンサ42を通過したときに出力されるように構成されている。従って、欠歯部53が通過した旨判定されたこととカムポジションセンサ43により信号Gが出力されたこととの双方に基づいてクランク角CAが基準クランク角CA0になったと判断して、クランクカウンタのカウント値が同基準クランク角CA0に対応する値に初期化される。
【0061】
図5に、クランクシャフト31の逆回転時におけるメインセンサ61からのメイン信号Sm、サブセンサ62からのサブ信号Ss、クランク信号Sc、及びクランクカウンタの関係を併せ示す。
【0062】
図5に示すように、ハイレベルになっているクランク信号Scは、上記[条件B](図3参照)の成立したタイミングから、予め定められた所定時間Δt2(例えば、数百ミリ秒)が経過するまでの間(時刻t21〜t23,t24〜t26,t27〜t29)においてローレベルに変更される。ここで、ローレベルに設定されている所定時間Δt2が、クランク信号Scのパルス幅に相当する。また、所定時間Δt2は、クランクシャフト31の正回転時における所定時間Δt1(図5参照)よりも長い時間に設定されている(Δt2≫Δt1)。
【0063】
ECU41は、次のようにしてクランクカウンタを求める。すなわち先ず、クランク信号Scがハイレベルからローレベルに変化する度に、クランクカウンタのカウント値に、「1」がインクリメントされる(時刻t21,t24,t27)。また、その後においてクランク信号Scがローレベルになっている期間が判定時間(ただし、所定時間Δt1<判定時間<所定時間Δt2)以上になると(時刻t22,t25,t28)、同クランク信号Scのパルス幅がクランクシャフト31の逆回転を示す値になっているとして、クランクカウンタのカウント値から「2」がデクリメントされる。これら一連の操作を通じてクランクカウンタのカウント値がデクリメントされる。
【0064】
ちなみに、機関回転速度NEが、内燃機関11の始動完了を判定する判定回転速度(例えば400rpm)以上となる判定期間内においては、クランクシャフト31は正回転方向へのみ回転する。そのため、こうした判定期間内においては、クランク信号Scがハイレベルからローレベルに変化する度にクランクカウンタのカウント値に、「1」をインクリメントする一方、クランク信号Scがローレベルになっている期間に拘わらずクランクカウンタのカウント値から「2」をディクリメントする制御構成を割愛するようにしている。これにより、上記判定期間内においてクランク信号Scがローレベルになっている期間の計測や判定時間との比較に起因する制御負荷の増大を抑制するようにしている。
【0065】
また、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号Scのパルス幅Wには公差が存在する。すなわち、クランクポジションセンサ42の個体差によって、パルス幅Wはその最小値Wminから最大値Wmaxまでの範囲内の大きさをとる。本実施形態では、ECU41を通じて、クランク信号Scの立ち下がりから立ち上がりまでの時間を計測することによりクランク信号Scのパルス幅Wを検出するようにしている。
【0066】
尚、ECU41が本発明に係るパルス幅検出部として機能する。
このようなクランクポジションセンサ42を採用することにより、出力されるクランク信号Scを計数することを通じてクランク角CAの変化量の絶対値を把握することができるとともに、同クランク信号Scのパルス幅(所定時間Δt1,Δt2)に基づいてクランクシャフト31の回転方向を把握することができる。従って、クランクシャフト31の逆回転を考慮した上でクランク角CAを精度良く求めることが可能となる。
【0067】
ここで、図6を参照して、前述した欠歯通過判定の判定態様について詳細に説明する。
図6に、クランクポジションセンサ42が正常である場合におけるクランク信号Sc、仮判定条件の成否、及び本判定条件の成否の推移を併せ示す。
【0068】
図6に示すように、連続して出力されるクランク信号Sc間の時間間隔Tm(m=−1,0,1,2,3,4)は、クランクポジションセンサ42近傍を、等間隔に設けられた歯52と歯52との間が通過する時間間隔T−1(時刻t31〜t32),T0(時刻t32〜t33),T2(時刻t34〜t35),T3(時刻t35〜t36),T4(時刻t36〜t37))は、不等間隔に設けられた歯52と歯52との間が通過する時間間隔T1(時刻t33〜t34)よりも短い。
【0069】
このことに着目することで、連続して計測した2つの時間間隔のうち後に計測した時間間隔を前に計測した時間間隔にて除算した除算値(T0/(T−1),T1/T0,T2/T1,T3/T2,T4/T3)と判定値Knとを比較することにより、欠歯部53の通過の有無を判定することが可能となる。
【0070】
具体的には、以下の2つの条件(a)、(b)が共に成立した場合に、仮判定条件が成立した旨判定するようにしている。

(a)T0/(T−1) ≧ K1

(b)T1/T0 ≧ K2

ここで、除算値(T0/(T−1))は、通常であれば、「1」となるが、実際にはクランクシャフト31の回転変動等に起因して「1」よりも小さい下限値から「1」よりも大きい上限値までの範囲内の値となる。そこで、除算値の算出され得る範囲を考慮することで、第1判定値K1は、上記下限値よりも僅かに小さい値に設定されている。
【0071】
また、除算値(T1/T0)は、通常であれば、「3」となるが、実際にはクランクシャフト31の回転変動等に起因して「3」よりも小さい下限値から「3」よりも大きい上限値までの範囲内の値となる。そこで、除算値の算出され得る範囲を考慮することで、第2判定値K2は、上記下限値よりも僅かに小さい値に設定されている。
【0072】
尚、第2判定値K2は、第1判定値K1よりも大きい値とされている(K2>K1)。また、これら判定値K1,K2は予め実験やシミュレーション等を通じて設定されている。
【0073】
また、仮判定条件が成立しているとき、すなわち上記2つの条件(a)、(b)が共に成立している場合に、更に、以下の条件(c)〜(g)の全てが成立した場合に、本判定を行なうようにしている。

(c)T1/T0 < K3

(d)T3/T2 ≧ K4

(e)T4/T3 ≧ K4

(f)T0/(T−1) ≧ K1

(g)T2/T1 < K5

ここで、機関始動開始直後のように機関回転速度の変化速度が大きいときには、等間隔に設けられた歯52と歯52との間が通過した場合であっても、連続して計測される時間間隔(例えばT3,T4)のうち前に計測した時間間隔T3が後に計測した時間間隔T4よりも大きくなることがある。そしてこの場合、仮判定条件が成立したことのみをもって欠歯部53が通過した旨判定することとすると、実際には欠歯部53が通過していないにも拘わらず、後に計測した時間間隔T3を前に計測した時間間隔T2にて除算した除算値(T4/T3)が上記第2判定値K2以上となって上記仮判定条件が成立してしまい、欠歯部53が通過した旨の誤判定がなされるおそれがある。
【0074】
そこで、第3判定値K3は、上記除算値(T1/T0)の算出され得る範囲の上限値よりも大きく、且つ機関回転速度の変化速度が大きいときに、等間隔に設けられた歯52と歯52との間が通過した場合に、連続して計測される時間間隔の除算値(例えばT4/T3)が取り得る範囲の下限値よりも小さい値に設定されている。
【0075】
尚、第3判定値K3は、第2判定値K2よりも大きい値とされている(K3>K2)。 また、第4判定値K4は、除算値(T3/T2、T4/T3)が異常に小さい値でないか否かを判定するための判定値であり、第2判定値K2よりも小さい値とされている(K4<K2)。
【0076】
また、除算値(T2/T1)は、通常であれば、約「0.33」となるが、実際には機関回転変動等に起因して「0.33」よりも小さい下限値から「0.33」よりも大きい上限値までの範囲内の値となる。そこで、除算値の算出され得る範囲を考慮して、第5判定値K5は、上記上限値よりも僅かに大きい値に設定されている。
【0077】
尚、これら判定値K3〜K5は予め実験やシミュレーション等を通じて設定されている。
そして、本判定条件が成立したことをもって欠歯部53が通過した旨判定するようにしている。こうした欠歯通過判定を行なうことにより、欠歯部53の通過の有無を精度良く判定することが可能となる。
【0078】
ところで、前述したように、こうしたクランクポジションセンサ42では、サブセンサ62のサブ信号Ssがハイレベルから変化しなくなる異常が生じることがある。この場合には、例えばクランクポジションセンサ42の近傍を1つの歯52が通過する毎にクランクポジションセンサ42から2つのクランク信号Scが出力されるといったように、クランクシャフト31が所定角度回転する毎にクランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数が「1」以外の数となることがある。そのため、こうした異常が生じた場合には、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号Scの信頼性が低くなり、それ以降においてクランク角CAが誤って求められるようになる。その結果、誤算出された機関回転角度に基づいて燃料噴射制御や点火制御が行なわれることとなり、例えば機関出力の過度の増大を招くといった問題が生じるおそれがある。
【0079】
図7に、クランクポジションセンサ42に上述した異常が生じている場合であって、クランクシャフト31の正回転時、より詳細には、機関回転速度NEが始動判定回転速度以上であるときにおける各種信号の推移の一例を示す。
【0080】
図7に示すように、サブセンサ62のサブ信号Ssがハイレベルから変化しなくなると、先の図3において示した[条件A]と[条件B]とが交互に成立することとなるため、クランク信号Scとして正回転したことを示すパルス幅の短い信号と、逆回転したことを示すパルス幅の長い信号とが交互に出力されるようになる。すなわち、1つの歯52が通過する毎に2つのクランク信号Scが出力されることとなる。その結果、クランク角CAが誤って求められるようになり、誤算出されたクランク角CAに基づいて燃料噴射制御や点火制御が行なわれることとなり、例えば機関出力の過度の増大を招くといった問題が生じるおそれがある。
【0081】
そこで、本実施形態では、上記異常が生じているか否かを判定するとともに、上記異常が生じている旨判定された場合には、クランク信号Scのパルス幅Wと機関回転速度NEと上記異常時においてクランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数Caとの対応関係に基づいて、当該出力されるクランク信号数Caを、クランクポジションセンサ42が正常である場合におけるクランク信号数Cnに換算するようにしている。これにより、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じている場合であれ、クランク角CAの変化量を的確に把握するようにしている。
【0082】
図8は、正回転時におけるシグナルロータ51及びクランク信号Scの推移を併せ示すチャートであって、同図中において上から順に、クランクポジションセンサ42の正常時、異常時状態A、異常時状態B、及び異常時状態Cのそれぞれにおける推移を併せ示している。尚、図8では、クランク信号Scのパルス幅がその平均値Waveであるきの推移を示している。また、異常時状態Aは機関回転速度NEが「0」よりも大きく、且つN5以下の範囲内にあるときの推移である(0<NE≦N5)。また、異常時状態Bは機関回転速度NEがN5よりも大きく、且つN8以下の範囲内にあるときの推移である(N5<NE≦N8)。また、異常時状態Cは機関回転速度NEがN8よりも大きく、且つN14以下の範囲内にあるときの推移である(N8<NE≦N14)。
【0083】
図8に示すように、正常時には、シグナルロータ51の1つの歯52が通過する毎にクランクポジションセンサ42から1つのクランク信号Scが出力される(タイミングt51,t57,t65)。尚、ここでは、次の異常時状態Aと同じく低速回転時における一例を示している。
【0084】
また、低速回転時である異常時状態Aには、先の図7に示した例と同様にして、シグナルロータ51の1つの歯52が通過する毎にクランクポジションセンサ42から2つのクランク信号Scが出力される(タイミングt51,t57,t65に加えて、タイミングt55,t60,t68)。
【0085】
一方、中速回転時である異常時状態Bには、シグナルロータ51の回転速度がある程度大きく、これに伴い歯52の通過速度がある程度大きくなる。そのため、クランクポジションセンサ42を1つの歯52が通過するのに要する時間が短くなる分だけ、シグナルロータ51の歯52の幅に対してクランク信号Scのパルス幅Wが相対的に大きくなる。このとき、先の図3において示した[条件B]が成立することにより出力される2番目のクランク信号Scは、パルス幅Wが大きいために、次の歯52が通過し始めても未だローレベルのままとなる。そのため、先の異常時状態Aにおいて3番目のクランク信号Scが出力されたタイミングではクランク信号Scが出力されない。これは、先に出力されたクランク信号Scがハイレベルに戻るまでは、後に出力される予定のクランク信号Scの出力を待機するように構成されていることによるものである。そして、当該ローレベルとなっていたクランク信号Scが再びハイレベルとなった後に、上記3番目の信号に対応するクランク信号Scが出力される。またこれに伴い、先の異常時状態Aにおいて4番目のクランク信号Scが出力されたタイミングよりも後に、上記4番目の信号に対応するクランク信号Scが出力される。このように、機関回転速度NEの上昇に伴いクランク信号Scの遅延が生じる結果、シグナルロータ51の歯52が通過する毎にクランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数Caの平均値(以下、パルス信号数の平均値)は、「2」よりも小さく、「1」よりも大きくなる。
【0086】
他方、高速回転時である異常時状態Cには、シグナルロータ51の回転速度が一層大きいために、シグナルロータ51の歯52の幅に対してクランク信号Scのパルス幅が相対的に一層大きくなる。このとき、先の図3において示した[条件B]が成立することにより出力される2番目のクランク信号Scは、次の歯52が通過してその次の歯52が通過した後までローレベルのままとなる。そのため、先の異常時状態Aにおいて3番目及び4番目のクランク信号Scが出力されたタイミングにおいてこれらに対応するクランク信号Scが出力されない。そして、当該ローレベルとなっていたクランク信号Scが再びハイレベルとなった後に、先の異常時状態Aにおいて上記5番目の信号に対応するクランク信号Scが出力される。すなわち、上記3番目及び4番目のクランク信号Scに対応するクランク信号Scは出力されることはない。このように、機関回転速度NEの上昇に伴いクランク信号Scの出力が行なわれなくなる結果、パルス信号数の平均値は「1」以下となる。
【0087】
以上のように、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じている場合には、機関回転速度が「0」から、所定の回転速度(図8の例では、NE=N5)までの範囲内に含まれる場合には、クランクシャフト31が所定角度回転する毎にクランクポジションセンサ42から2つのクランク信号Scが出力される。
【0088】
ここで、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号Scのパルス幅Wに公差が存在することについては上述した。そのため、図8からも明らかなように、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じている場合には、クランク信号Scのパルス幅Wが大きくなるほど、遅延される或いは非出力とされるクランク信号Scが多くなる。そのため、クランク信号Scのパルス幅Wが大きいほど、また機関回転速度NEが大きいほど、クランク信号数の平均値は小さくなる。
【0089】
図9に、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じているときのクランク信号Scのパルス幅Wと、機関回転速度NEと、クランク信号数の平均値を正常時の平均値にて除した値(換算係数)との対応関係を示す。尚、図9では、クランク信号Scのパルス幅Wとして、その公差の最小値(最小公差Wmin)、その公差の平均値(平均公差Wave)、及びその公差の最大値(最大公差Wmax)について示している。ここで、N1<N2<N3<N4<N5<N6<N7<N8<N9<N10<N11<N12<N13<N14<N15である。
【0090】
次に、図10を参照して、本実施形態における機関制御について説明する。
尚、図10は、本実施形態における機関制御の処理手順を示したフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、機関運転中において所定期間毎に繰り返し実行される。
【0091】
図10に示すように、この一連の処理ではまず、ステップS1の処理として、異常判定フラグFが「OFF」であるか否かを判断する。ここで、異常判定フラグFは当初、「OFF」に設定されているため、最初の制御周期では、異常判定フラグFが「OFF」である旨判定される。
【0092】
そして、次に、ステップS2に進み、上記異常が生じているか否かを判断する。ここでは、クランクシャフト31が正回転方向へのみ回転する判定期間内においてクランクポジションセンサ42から連続して出力された2つのクランク信号Scの一方のパルス幅と他方のパルス幅とが異なることをもって上記異常が生じている旨判断するようにしている。具体的には、クランクシャフト31が正回転方向のみに回転する判定期間として、機関回転速度NEが前述した判定回転速度(例えば400rpm)以上である期間を採用している。そして、機関回転速度NEが判定回転速度以上であるときに、クランク信号Scとして正回転したことを示すパルス幅の短い信号と、逆回転したことを示すパルス幅の長い信号とが交互に出力されることが所定回数(本実施形態では、2回)継続した場合に上記異常が生じていると判断している。ちなみに、本実施形態では、以下のようにして、機関回転速度NEが判定回転速度以上であるか否かを判断している。すなわち、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じると、その発生からの経過時間が長くなるほど、検出される機関回転速度NEの信頼性は低いものとなる。そこで、クランク信号Scとしてパルス幅の短い信号と、パルス幅の長い信号とが交互に出力されることが初めて生じた場合に、そのときの機関回転速度NEを検出するとともに、同機関回転速度NEが上記判定回転速度以上であるか否かを判断するようにしている。このように、信頼性のある程度高い機関回転速度NEを用いることで、上記異常が生じている旨判断するに先立ち、機関回転速度NEが判定回転速度以上であるか否かを的確に判断することができる。
【0093】
ステップS2において、異常が生じている旨判断されなかった場合(ステップS2:「NO」)には、次に、クランク角CAに基づいて通常の機関制御、すなわち通常の燃料噴射制御や点火制御を実行して、この一連の処理を一旦終了する。
【0094】
一方、ステップS2において、異常が生じている旨判断された場合には、次に、ステップS3に進み、異常判定フラグFを「ON」にする。そして、次に、ステップS4に進み、クランク信号数の換算処理の実行開始後にクランク位置が確定していないか否かを判断する。
【0095】
上記異常が生じている旨判断された直後においては、後のステップS7において行なわれるクランク信号Scの間引き処理が実行されていないため、当初は、S4において肯定判断され、次に、ステップS5に進む。
【0096】
ステップS5においては、機関出力低減処理を実行する。ここでは、燃料噴射の停止及び点火の停止を行なうといった所定の態様にて、内燃機関11の出力を低減するようにしている。これは、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じている旨判断された後、クランク信号Scの間引き処理を実行してクランク位置が確定するまでの期間において、機関出力が過度に増大することを抑制するための処理である。尚、この処理は、クランク位置が確定するまで継続される。
【0097】
こうして機関出力低減処理を実行すると、次に、ステップS6に進み、機関回転速度NEが所定回転速度N1以下であるか否かを判断する(N1については先の図9の表を参照)。ここでの機関回転速度NEは先のステップS2の処理に検出された値を用いる。そして、機関回転速度NEが所定回転速度N1以下ではない場合(ステップS6:「NO」)には、この一連の処理を一旦終了する。
【0098】
一方、機関回転速度NEが所定の回転速度N1以下である場合(ステップS6:「YES」)には、次に、ステップS7に進み、クランク信号Scの間引き処理を実行する。
ここで、機関回転速度NEが所定回転速度N1以下である場合におけるクランク信号数の換算処理の実行態様について説明する。すなわち、前述したように、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じており、且つクランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号Scのパルス幅Wがその公差の最大値Wmaxであるときには、機関回転速度が「0」から上記所定回転速度N1までの範囲内に含まれる場合には、クランク信号数の平均値は「2」となる(先の図9の表、下段参照)。またこのとき、機関回転速度NEが上記所定回転速度N1よりも大きくなると、クランク信号数の平均値が「2」よりも小さくなる。また、クランク信号Scのパルス幅Wがその最大値Wmaxよりも小さい場合には、クランク信号数の平均値が「2」となる機関回転速度NEの最大値は、上記所定回転速度N1よりも高くなる(例えば、パルス幅Wが平均公差WaveのときにはN5、パルス幅Wが最小公差WminのときにはN9、N1<N5<N9)。これらのことから、機関回転速度NEが上記所定回転速度N1以下であれば、クランク信号Scのパルス幅Wに拘わらず、クランク信号数の平均値は「2」となる。従って、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じている場合、機関回転速度NEが所定回転速度N1以下のときに、クランクシャフト31が所定角度回転する毎に出力されるクランク信号数Caを単純に2分の1倍すれば、クランクポジションセンサ42が正常である場合におけるパルス信号数Cnに換算することができる。(削除)
こうしてクランク信号数の換算処理、換言すればクランク信号Scの間引き処理を開始すると、次に、ステップS8に進み、クランク位置が確定したか否かを判断する。すなわち、前述した欠歯部通過判定により欠歯部53が通過した旨判定された場合、或いは、カムポジションセンサ43により信号Gが出力された場合には、クランク角CAが基準クランク角CA0になったと判断して、クランクカウンタのカウント値が同基準クランク角CAOに対応する値に初期化されるとともに、このことをもってクランク位置が確定したと判断する。
【0099】
ところで、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じると、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号Scの信頼性が低いために、上記欠歯通過判定において、実際には欠歯部53が通過したにも拘わらず、例えば条件(c)が成立しなくなることで、欠歯部53の通過の有無の判定を精度良く行なうことができなくなるといった問題が生じるおそれがある。
【0100】
そこで、本実施形態では、ECU41により、欠歯通過判定に際して、上記異常が生じている旨判定された場合とそうでない場合とで、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号Sc間の時間間隔Tmに基づく判定態様を変更するようにしている。具体的には、欠歯通過判定に際して、上記異常が生じている旨判定された場合には上記判定値Kn(n=1,2,3,4,5)として異常時用判定値Dn(n=1,2,3,4,5)を設定する一方、上記異常が生じていない場合には上記判定値Knとして正常時用判定値Cn(n=1,2,3,4,5)を設定するようにしている。異常時用判定値Dnはそれぞれ正常時用判定値Cnとは異なる値に設定されている。
【0101】
図11に、クランクポジションセンサ42が異常である場合におけるクランク信号Sc、仮判定条件の成否、及び本判定条件の成否の関係を併せ示す。尚、同図では、時刻t83においてクランクポジションセンサ42に上記異常が生じたものとする。
【0102】
図11に示すように、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じた場合には、上記異常が生じていない正常時に比べて、同異常の発生以降における時間間隔T0(時刻t84〜t85)、T2(時刻t86〜t87)に対する時間間隔T1(=t86−t85)の乖離度合が大きくなる。そのため、これら時間間隔T0,T1の除算値T1/T0の算出され得る範囲の上限値及び下限値はそれぞれ、正常時に比べて大きくなる。一方、これら時間間隔T2,T1の除算値T2/T1の算出され得る範囲の上限値及び下限値はそれぞれ、正常時に比べて小さくなる。
【0103】
そこで、本実施形態では、これらのことを考慮して、異常時用の第2判定値D2を正常時用の第2判定値C2よりも大きい値に設定している(D2>C2)。また、異常時用の第3判定値D3を正常時用の第3判定値C3よりも大きい値に設定している(D3>C2)。一方、異常時用の第5判定値D5を正常時用の第5判定値C5よりも小さい値に設定している(D5<C5)。またこれら以外の判定値についても、実験等を通じて、上記異常が生じているときと同異常が生じていないときとにそれぞれ対応した値に設定されている。これにより、上記異常が生じている場合であれ、欠歯部53の通過の有無を的確に判定することができるようになる。
【0104】
先の図10のステップS8においてクランク位置が確定したと判断すると、次に、ステップS9に進み、クランク角CAに基づいて通常の機関制御、すなわち通常の燃料噴射制御及び点火制御を再開する。そして、次に、ステップS10に進み、機関回転速度NEが上記所定回転速度N1よりも大きいか否かを判断する。ここで、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じている場合における機関回転速度NEの算出は、ECU41を通じて以下の態様にて行なわれる。すなわち、この場合、先の図7に示したように、クランクカウンタは正常時に比べて2倍の速度で増大することとなる。そのため、正常時の算出態様にて得られるクランクカウンタの値を1/2倍することによって、換言すれば、正常時の算出態様にて得られる機関回転速度を1/2倍することによって機関回転速度NEを算出するようにしている。
【0105】
ステップS10において、機関回転速度NEが上記所定回転速度N1よりも大きくない場合(ステップS10:「NO」)には、次に、ステップS12に進み、通常の燃料噴射制御及び点火制御を継続して、この一連の処理を一旦終了する。そして、次回の制御周期においては、ステップS1において否定判断されるとともに(ステップS1:「NO」)、ステップS4において否定判断されて(ステップS4:「NO」)、再び、ステップS10において機関回転速度NEと上記所定回転速度N1との比較が行なわれる。そして、機関回転速度NEが上記所定回転速度N1よりも大きい旨判断された場合(ステップS10:「YES」)には、次に、ステップS11に進み、機関出力制限処理を実行して、この一連の処理を一旦終了する。
【0106】
ここで、機関出力制限処理では、燃料噴射の停止及び点火の停止を行なうことにより、内燃機関11の出力の増大を制限するようにしている。これは、機関回転速度NEが上記所定回転速度N1よりも大きくなると、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数を上述した態様にて簡易且つ精度良くすることができなくなるためである。尚、この処理は、機関回転速度NEが所定回転速度N1以下となるまで継続される。
【0107】
以上説明した本実施形態に係る回転検出装置によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、ECU41により、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号Scのパルス幅Wを検出するとともに、機関回転速度NEを検出するようにしている。また、サブセンサ62のサブ信号Ssがハイレベルから変化しなくなる異常が生じているか否かを判定するようにしている。そして、上記異常が生じている旨判定された場合に、クランク信号Scのパルス幅Wと機関回転速度NEと上記異常時にクランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数Caとの対応関係に基づいて、当該出力されるクランク信号数Caを、クランクポジションセンサ42が正常である場合におけるクランク信号数Cnに換算するようにしている。これにより、クランクポジションセンサ42を構成するサブセンサ62のサブ信号Ssがハイレベルから変化しなくなる異常が生じている場合であれ、クランク角CAの変化量を的確に把握することができるようになる。
【0108】
(2)クランクポジションセンサ42に上記異常が生じており、且つクランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号Scのパルス幅Wがその公差の最大値Wmaxであるときに、クランクシャフト31が所定角度回転する毎にクランクポジションセンサ42から2つのクランク信号Scが出力される機関回転速度NEの最大値を所定回転速度N1とする。本実施形態では、ECU41により、上記異常が生じている旨判定された場合、機関回転速度NEが上記所定回転速度N1以下のときに、クランクシャフト31が所定角度回転する毎にクランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数Caを2分の1倍してクランクポジションセンサ42が正常である場合におけるパルス信号数Cnに換算するようにしている。これにより、ECU41によるクランク信号数の換算を簡易且つ精度良く行なうことができるようになる。
【0109】
(3)本実施形態では、ECU41により、クランクシャフト31が正回転方向へのみ回転する判定期間内においてクランクポジションセンサ42から連続して出力された2つのクランク信号Scの一方のパルス幅Wと他方のパルス幅Wとが異なることをもって上記異常が生じている旨判定するようにしている。これにより、クランクポジションセンサ42を構成するサブセンサ62のサブ信号Ssがハイレベルから変化しなくなる異常が生じている場合には、こうした異常を的確に判定することができるようになる。
【0110】
(4)本実施形態では、ECU41により上記異常が生じている旨判定された場合に、燃料噴射を停止して内燃機関11の出力を低減するようにしている。これにより、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じることに起因して機関出力が過度に増大することを抑制することができるようになる。
【0111】
(5)本実施形態では、クランクポジションセンサ42から連続して出力される2つのクランク信号Sc間の時間間隔Tmに基づいて欠歯部53の通過の有無を判定するようにしている。また、クランクシャフト31の回転に伴い回転する吸気カムシャフト26の基準回転角度(基準カム角)の通過に対応した信号Gを出力するセンサであって、シグナルロータ51の欠歯部53がクランクポジションセンサ42を通過したときに上記信号Gを出力するカムポジションセンサ43を備えている。そして、欠歯部53が通過した旨判定されたこととカムポジションセンサ43から上記信号Gが出力されたこととの双方に基づいてクランクシャフト31の基準回転角度(基準クランク角)を検出するようにしている。これにより、例えば何等かの原因によりクランクポジションセンサ42を欠歯部53が通過したにも拘わらずその旨判定されない場合であっても、カムポジションセンサ43から上記信号Gが出力されることをもって基準クランク角CA0が検出されることから、基準クランク角CA0を的確に把握することができるようになる。
【0112】
(6)本実施形態では、当該出力されるパルス信号数Caをクランクポジションセンサ42が正常である場合におけるクランク信号数Cnに換算するようにした後に、基準クランク角CA0を検出するようにしている。これにより、基準クランク角CA0を的確に検出することができ、こうして検出した基準クランク角に基づいてクランク角CAを的確に把握することができるようになる。
【0113】
(7)本実施形態では、基準クランク角CA0が検出された後に、機関回転速度NEが所定回転速度N1よりも大きくなることが抑制されるように内燃機関11の出力を制限するようにしている。具体的には、機関回転速度NEが所定回転速度N1以上となると燃料噴射を停止するようにしている。これにより、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数Caが的確に換算されなくなることを抑制することができることができるようになる。また、機関回転速度NEが上記所定回転速度N1以上となると燃料噴射を停止することを通じて、機関回転速度NEが所定回転速度N1以上となることを的確且つ容易に抑制することができるようになる。
<第2実施形態>
以下、図12を参照して、本発明に係る回転検出装置の第2実施形態について説明する。
【0114】
先の第1実施形態では、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じている旨判定された場合、機関回転速度NEが上記所定回転速度N1以下のときに、クランクシャフト31が所定角度回転する毎にクランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数Caを2分の1倍してクランクポジションセンサ42が正常である場合におけるパルス信号数Cnに換算するようにした。これに対して、本実施形態では、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じている旨判定された場合、クランク信号Scのパルス幅Wと、機関回転速度NEと、上記対応関係とに基づいて換算係数を求め、同換算係数に基づいて、クランクシャフト31が所定角度回転する毎にクランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数Caをクランクポジションセンサ42が正常である場合におけるクランク信号数Cnに換算するようにしている。すなわち、本実施形態では、機関回転速度NEがN1よりも大きい場合であってもクランク信号数の換算を行なう点で先の第1実施形態と相違している。
【0115】
以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
先の図9に示したように、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じているときのクランク信号Scのパルス幅Wと、機関回転速度NEと、クランク信号数Caの平均値を正常時の平均値にて除した値(換算係数)との間には所定の対応関係が成立する。
【0116】
すなわち、機関回転速度が「0」から、所定回転速度Nth2(W)までの範囲内に含まれる場合には、クランク信号数Caの平均値は「2」となる。ここで、前述したように、クランク信号Scのパルス幅Wが小さい場合ほど上記所定回転速度Nth2(W)は大きくなる。例えば図9においては、パルス幅Wがその最小公差Wminである場合には、所定回転速度Nth2(Wmin)はN9となり、パルス幅Wがその平均公差Waveである場合には、所定回転速度Nth2(Wave)はN5となり、パルス幅Wがその最大公差Wmaxである場合には、所定回転速度Nth2(Wmax)はN1となる(N1<N5<N9)
また、機関回転速度NEが上記所定回転速度Nth2(W)よりも大きくなると、換算係数は「2」よりも小さくなる。また、機関回転速度NEが大きくなるほど、換算係数は小さくなる。
【0117】
次に、図12を参照して、本実施形態における機関制御について説明する。
尚、図12は、本実施形態における機関制御の処理手順を示したフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、機関運転中において所定期間毎に繰り返し実行される。また、このフローチャートに示される一連の処理において、ステップS101〜ステップS105、及びステップS113の処理は、先の図10に示したフローチャートのステップS1〜ステップS5、及びステップS13の処理と同一であるため、これらについての説明を割愛する。
【0118】
図12に示すように、ステップS105において機関出力低減処理を実行すると、次に、ステップS106に進み、クランク信号Scのパルス幅Wと、そのときの機関回転速度NEとに基づいてマップを参照して換算係数を設定する。このマップは、先の図9に示した表に準じたものである。また、このマップでは、図9に示したクランク信号Scのパルス幅Wについて最小公差Wminと最大公差Wmaxとの間で複数の領域に細分化されており、実際に検出されたパルス幅Wが含まれる領域と、そのときの機関回転速度NEが含まれる領域とから一義的に換算係数が設定されるようになっている。
【0119】
こうして換算係数を設定すると、次に、ステップS107に進み、クランク信号数の換算処理を実行する。例えば、クランク信号Scのパルス幅Wが平均公差Waveであり、機関回転速度NEがN6よりも大きく、且つN7以下である範囲に含まれている場合には、先のステップS106の処理において、換算係数として、「1.5」が設定される。そして、ステップS107の処理では、クランクポジションセンサ42から単位時間当りにクランク信号Scが出力される毎に、その信号数Caを換算係数「1.5」にて除すことにより、クランクポジションセンサ42が正常である場合におけるクランク信号数Cnに換算する。例えば、換算係数が「1.5」であるとき、クランクポジションセンサ42から単位時間当りに3つのクランク信号Scが出力された場合には、「3」を「1.5」にて除すことにより、クランクポジションセンサ42が正常である場合におけるクランク信号数Cnは「2」となる。
【0120】
こうしてクランク信号数の換算処理、換言すればクランク信号Scの間引き処理を開始すると、次に、ステップS108に進み、クランク位置が確定したか否かを判断する。すなわち、前述した欠歯部通過判定により欠歯部53が通過した旨判定された場合、或いは、カムポジションセンサ43により信号Gが出力された場合には、クランク角CAが基準クランク角CA0になったと判断して、クランクカウンタのカウント値が同基準クランク角CAOに対応する値に初期化されるとともに、このことをもってクランク位置が確定したと判断する。
【0121】
ちなみに、本実施形態においても先の第1位実施形態と同様にして、欠歯通過判定に際して、上記異常が生じている旨判定された場合とそうでない場合とで、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号Sc間の時間間隔Tmに基づく判定態様を変更するようにしている。ただし、先の第1実施形態では、換算係数が「2」である場合のみを想定したが、本実施形態では、換算係数として、「1」〜「2」までの値を取り得る。そこで、本実施形態では、そのときどきの換算係数に応じて、異常時用判定値Dn(n=1,2,3,4,5)を設定するようにしている。またこれら判定値は、実験等を通じて、それぞれ対応した値に設定されている。
【0122】
先のステップS108においてクランク位置が確定したと判断すると、次に、ステップS109に進み、クランク角CAに基づいて通常の機関制御、すなわち通常の燃料噴射制御及び点火制御を再開する。そして、次に、ステップS110に進み、機関回転速度NEが最大回転速度Nth1(W)よりも大きいか否かを判断する。この最大回転速度Nth1(W)は、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じており、且つクランク信号Scのパルス幅Wが所定の大きさWであるときに、クランクシャフト31が上記所定角度回転する毎にクランクポジションセンサ42から1つ以上のクランク信号Scが出力される機関回転速度NEの最大値である。例えば図9においては、パルス幅Wがその最小公差Wminである場合には、最大回転速度Nth1(Wmin)はN15となり、パルス幅Wがその平均公差Waveである場合には、最大回転速度Nth1(Wave)はN14となり、パルス幅Wがその最大公差Wmaxである場合には、最大回転速度Nth1(Wmax)はN12となる(N12<N14<N15)。また、ここでの機関回転速度NEの算出は、ECU41を通じて以下の態様にて行なわれる。すなわち、この場合、先の第1実施形態と同様の理由から、クランクカウンタは正常時に比べて換算係数を乗じた速度で増大することとなる。そのため、正常時の算出態様にて得られるクランクカウンタの値を換算係数にて除することによって、換言すれば、正常時の算出態様にて得られる機関回転速度を換算係数にて除することによって機関回転速度NEを算出するようにしている。ちなみに、機関回転速度NEの変化に伴い対応する換算係数が変更された場合には、変更後の換算係数を用いることとなる。
【0123】
ここで、機関回転速度NEが上記最大回転速度Nth1(W)よりも大きくない場合(ステップS110:「NO」)には、次に、ステップS112に進み、通常の燃料噴射制御及び点火制御を継続して、この一連の処理を一旦終了する。そして、次回の制御周期においては、ステップS101において否定判断されるとともに(ステップS101:「NO」)、ステップS104において否定判断されて(ステップS104:「NO」)、再び、ステップS110において機関回転速度NEとそのときの最大回転速度Nth1(W)との比較が行なわれる。そして、機関回転速度NEが上記最大回転速度Nth1(W)よりも大きい旨判断された場合(ステップS110:「YES」)には、次に、ステップS111に進み、機関出力制限処理を実行して、この一連の処理を一旦終了する。
【0124】
ここで、機関出力制限処理では、燃料噴射の停止及び点火の停止を行なうことにより、内燃機関11の出力の増大を制限するようにしている。これは、機関回転速度NEが上記最大回転速度Nth1(W)よりも大きくなると、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数Caを的確に換算することができなくなり、正常時のパルス信号数Cnを精度良く把握することができなくなるためである。尚、この処理は、機関回転速度NEが最大回転速度Nth1(W)以下となるまで継続される。
【0125】
以上説明した本実施形態に係る回転検出装置によれば、先の第1実施形態の作用効果(1)、(3)〜(6)に加えて、新たに以下に示す作用効果が得られるようになる。
(8)クランクポジションセンサ42に上記異常が生じているときに、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号Scのパルス幅Wと機関回転速度NEとクランクシャフト31が所定角度回転する毎にクランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数Caとの間に成立する対応関係が予め規定される。本実施形態では、ECU41により、上記異常が生じている旨判定された場合、クランク信号Scのパルス幅Wと、機関回転速度NEと、上記対応関係とに基づいて換算係数を求め、同換算係数に基づいて、クランクシャフト31が所定角度回転する毎にクランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数Caをクランクポジションセンサ42が正常である場合におけるクランク信号数Cnに換算するようにしている。これにより、機関回転速度NEがある程度高い場合であれ、パルス信号数の換算を精度良く行なうことができるようになる。
【0126】
(9)本実施形態では、ECU41により、基準クランク角CA0が検出された後に、機関回転速度NEが最大回転速度Nth1(W)よりも大きくなることが抑制されるように内燃機関11の出力を制限するようにしている。具体的には、機関回転速度NEが最大回転速度Nth1(W)以上となると燃料噴射を停止するようにしている。これにより、クランクポジションセンサ42から出力されるクランク信号数Caが的確に換算されなくなることを抑制することができ、正常時のパルス信号数Cnが精度良く把握することができなくなるといった問題の発生を抑制することができるようになる。また、機関回転速度NEが上記最大回転速度Nth1(W)以上となると燃料噴射を停止することを通じて、機関回転速度NEが最大回転速度Nth1(W)よりも大きくなることを的確且つ容易に抑制することができるようになる。
【0127】
尚、本発明に係る回転検出装置は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
・上記第1実施形態では、図10のステップS10において機関回転速度NEが上記所定回転速度N1以上であると判断すると、ステップS11において燃料噴射を停止するようにした。しかしながら、本発明に係る出力制限部はこれに限られるものではなく、他に例えば、機関回転速度NEが上記所定回転速度N1よりも小さい停止回転速度Nstp(Nstp<N1)以上となると燃料噴射を停止するようにしてもよい。また、燃料噴射を停止することに代えて、燃料噴射量をそのときの燃料噴射量よりも少なくするようにして内燃機関11の出力を制限するようにしてもよい。
【0128】
・上記第2実施形態では、図12のステップS110において機関回転速度NEが上記最大回転速度Nth1(W)以上であると判断すると、ステップS111において燃料噴射を停止するようにした。しかしながら、本発明に係る出力制限部はこれに限られるものではなく、他に例えば、機関回転速度NEが上記最大回転速度Nth1(W)よりも小さい停止回転速度Nstp(W)以上となると燃料噴射を停止するようにしてもよい。また、燃料噴射を停止することに代えて、燃料噴射量をそのときの燃料噴射量よりも少なくするようにしても内燃機関11の出力を制限するようにしてもよい。
【0129】
・上記各実施形態では、本発明に係る回転検出装置の第2の回転体及び第2の回転センサを、吸気カムシャフト26及びカムポジションセンサ43としてそれぞれ具体化したものについて例示した。しかしながら、第2の回転体及び第2の回転センサはこれらに限られるものではない。他に例えば、第2の回転センサが排気カムシャフト27の基準回転角度の通過に対応した信号を出力するものにあっては、第2の回転体を排気カムシャフトとして具体化することもできる。
【0130】
・上記各実施形態及びその変形例では、第2の回転センサがカムシャフトの基準回転角度の通過に対応した信号を出力するものであったが、これに代えて、カムシャフト以外の回転体についてその基準回転角度の通過に対応した信号を出力するものとしてもよい。要するに、第2の回転体としては、クランクシャフト31の回転に伴い回転するものであればよく、第2の回転センサとしては、シグナルロータ51の欠歯部53がクランクポジションセンサ42を通過したときに上記基準回転角度の通過に対応した信号を出力するものであればよい。
【0131】
・上記各実施形態及びその変形例では、シグナルロータ51の欠歯部53が通過した旨判定されたことと第2の回転センサから上記信号が出力されたこととの双方に基づいてクランクシャフト31の基準回転角度(基準クランク角CA0)を検出するようにした。しかしながら、本発明に係る基準回転角度検出部の構成はこれに限られるものではなく、他に例えば、シグナルロータ51の欠歯部53が通過した旨判定されたことのみに基づいて基準クランク角CA0を検出するようにしてもよい。
【0132】
・上記各実施形態によるように、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じている旨判定された場合に、機関出力低減処理を行なう、具体的には燃料噴射を停止して内燃機関11の出力を低減する処理を行なうことが、クランクポジションセンサ42に上記異常が生じることに起因して機関出力が過度に増大することを抑制する上では望ましい。しかしながら、本発明に係る出力低減部の構成はこれに限られるものではなく、燃料噴射を停止する制御構成に代えて、燃料噴射量をそのときの燃料噴射量に比べて少なくするようにしてもよい。この場合であっても、内燃機関11の出力をある程度は低減することができる。
【0133】
・上記実施形態では、クランクシャフト31が正回転方向のみに回転する期間である判定期間を、機関始動後、機関回転速度NEが判定回転速度以上となった後の期間としたが、本発明に係る判定期間はこれに限られるものではない。要するに、クランクシャフト31が正回転方向のみに回転する期間であればよく、他に例えば、上記判定回転速度よりも低い回転速度範囲以上となった後の期間としてもよい。
【0134】
・上記各実施形態では、回転検出装置の回転体をクランクシャフト31、すなわち内燃機関の出力軸に具体化したものについて例示したが、本発明はこれに限られるものではなく、本発明を他の出力軸の回転検出装置、例えば電動機の出力軸の回転検出装置に対して適用することもできる。
【0135】
・上記各実施形態では、回転体が正回転方向へのみ回転する判定期間内において回転センサから連続して出力された2つのパルス信号の一方のパルス幅と他方のパルス幅とが異なることをもって上記異常が生じている旨判定するようにした。しかしながら、本発明に係る異常判定部の構成はこれに限られるものではなく、他に例えば、回転体が回転しているときに、第2センサ部からの出力信号がハイレベルとローレベルとの間で変化する一方、且つ第2センサ部からの出力信号が所定レベル(上記各実施形態においてはハイレベル)にて変化しない状態である旨判断されたことをもって、上記異常が生じている旨判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0136】
11…内燃機関、12…気筒、13…ピストン、14…燃焼室、15…燃料噴射弁、16…点火プラグ、21…吸気通路、22…吸気バルブ、23…排気通路、24…排気バルブ、26…吸気カムシャフト(第2の回転体、カムシャフト)、27…排気カムシャフト、31…クランクシャフト(回転体、内燃機関の出力軸)、32…変速機、33…スタータモータ、41…ECU(電子制御装置、パルス幅検出部、回転速度検出部、異常判定部、換算部、出力低減部、欠歯通過判定部、基準回転角度検出部、出力制限部)、42…クランクポジションセンサ、43…カムポジションセンサ(第2の回転センサ)、44…シフトポジションセンサ、45…アクセルポジションセンサ、46…ブレーキセンサ、47…車速センサ、51…シグナルロータ、52…歯、53…欠歯部、61…メインセンサ、62…サブセンサ、63…処理装置、64…タイマ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体が所定角度回転する毎にパルス状の信号を出力するセンサ部であって互いに位相のずれた信号を出力する第1センサ部及び第2センサ部を有して、前記第1センサ部の出力信号が所定レベルであり且つ前記第2センサ部の出力信号が変化したとの条件が成立したときに同条件の成立時における前記第2センサ部の出力信号の変化方向に応じて異なるパルス幅のパルス信号を出力する回転センサを備える回転検出装置において、
前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅を検出するパルス幅検出部と、
前記回転体の回転速度を検出する回転速度検出部と、
前記第1センサ部の出力信号が前記所定レベルから変化しなくなる異常が生じているか否かを判定する異常判定部と、
前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合に、前記パルス幅検出部により検出されたパルス信号のパルス幅と前記回転速度検出部により検出された回転体の回転速度と前記異常時に前記回転センサから出力されるパルス信号数との対応関係に基づいて、当該出力されるパルス信号数を、前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算する換算部と、を備える
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転検出装置において、
前記回転センサに前記異常が生じており、且つ前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅がその公差の最大値であるときに、前記回転体が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから2つのパルス信号が出力される前記回転体の回転速度の最大値を所定回転速度とするとき、
前記換算部は、前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合、前記回転体の回転速度が前記所定回転速度以下のときに、前記回転体が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数を2分の1倍して前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の回転検出装置において、
前記回転センサに前記異常が生じているときに、前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅と前記回転体の回転速度と前記回転体が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数との間に成立する対応関係が予め規定され、
前記換算部は、前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合、前記パルス幅検出部により検出されたパルス信号のパルス幅と、前記回転体の回転速度と、前記対応関係とに基づいて換算係数を求め、同換算係数に基づいて、前記回転体が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数を前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の回転検出装置において、
前記異常判定部は、前記回転体が所定方向へのみ回転する判定期間内において前記回転センサから連続して出力された2つのパルス信号の一方のパルス幅と他方のパルス幅とが異なることをもって前記異常が生じている旨判定する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の回転検出装置において、
前記回転体は内燃機関の出力軸であり、
前記回転速度検出部は、内燃機関の出力軸の回転速度を検出する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の回転検出装置において、
前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合に、内燃機関の出力を所定の態様にて低減する出力低減部を備える
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の回転検出装置において、
内燃機関の出力軸には、その回転方向に沿って前記所定角度毎に設けられる複数の歯と、前記回転方向において互いに隣り合う前記歯間に設けられてこれら歯の間隔を不等間隔とする欠歯部とを有するシグナルロータが連結され、
前記回転センサは、前記シグナルロータに対向して配置される
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の回転検出装置において、
前記回転センサから連続して出力される2つのパルス信号間の時間間隔に基づいて前記欠歯部の通過の有無を判定する欠歯通過判定部と、
内燃機関の出力軸の回転に伴い回転する第2の回転体の基準回転角度の通過に対応した信号を出力するセンサであって、前記シグナルロータの前記欠歯部が前記回転センサを通過したときに前記信号を出力する第2の回転センサと、
前記欠歯通過判定部により前記欠歯部が通過した旨判定されたことと前記第2の回転センサから前記信号が出力されたこととの少なくとも一方に基づいて内燃機関の出力軸の基準回転角度を検出する基準回転角度検出部と、を備える
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の回転検出装置において、
前記第2の回転体は、機関バルブを開閉駆動するカムが設けられるカムシャフトであり、
前記第2の回転センサは前記カムシャフトの基準回転角度の通過に対応した信号を出力する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の回転検出装置において、
前記基準回転角度検出部は、前記換算部により当該出力されるパルス信号数を前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算するようにした後に、内燃機関の出力軸の基準回転角度を検出する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載の回転検出装置において、
前記回転センサに前記異常が生じており、且つ前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅がその公差の最大値であるときに、内燃機関の出力軸が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから2つのパルス信号が出力される機関回転速度の最大値を所定回転速度とするとき、
前記換算部は、前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合、機関回転速度が前記所定回転速度以下のときに、内燃機関の出力軸が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数を2分の1倍して前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算するものであり、
前記基準回転角度検出部により前記基準回転角度が検出された後に、機関回転速度が前記所定回転速度よりも大きくなることが抑制されるように内燃機関の出力を制限する出力制限部を備える
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項12】
請求項11に記載の回転検出装置において、
前記出力制限部は、機関回転速度が前記所定回転速度以下の停止回転速度以上となると燃料噴射を停止する
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項13】
請求項10に記載の回転検出装置において、
前記回転センサに前記異常が生じているときに、前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅と機関回転速度と内燃機関の出力軸が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数との間に成立する対応関係が予め規定され、
前記換算部は、前記異常判定部により前記異常が生じている旨判定された場合、前記パルス幅検出部により検出されたパルス信号のパルス幅と、機関回転速度と、前記対応関係とに基づいて換算係数を求め、同換算係数に基づいて、内燃機関の出力軸が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから出力されるパルス信号数を前記回転センサが正常である場合におけるパルス信号数に換算するものであり、
前記回転センサに前記異常が生じており、且つ前記回転センサから出力されるパルス信号のパルス幅が所定の大きさであるときに、内燃機関の出力軸が前記所定角度回転する毎に前記回転センサから1つ以上のパルス信号が出力される機関回転速度の最大値を最大回転速度とするとき、
前記基準回転角度検出部により前記基準回転角度が検出された後に、機関回転速度が前記最大回転速度よりも大きくなることが抑制されるように内燃機関の出力を制限する出力制限部を備える
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の回転検出装置において、
前記出力制限部は、機関回転速度が上記最大回転速度以下の停止回転速度以上となると燃料噴射を停止する
ことを特徴とする回転検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−73054(P2012−73054A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216608(P2010−216608)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】