回転機械用の部品及びその製造方法、蒸気タービン並びに圧縮機
【課題】気体と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性に優れた回転機械用の部品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材1の表面1a上にセラミック硬質皮膜3が形成されてなり、該セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレットの密度が1000個/mm2以内とされており、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレットの密度が550個/mm2以内とされている。
【解決手段】基材1の表面1a上にセラミック硬質皮膜3が形成されてなり、該セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレットの密度が1000個/mm2以内とされており、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレットの密度が550個/mm2以内とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械用の部品及びその製造方法、蒸気タービン並びに圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、蒸気タービンやコンプレッサポンプ等の回転機械に用いられるブレード等の部品においては、耐熱性や耐食性等を考慮した表面処理が施されている。蒸気タービンは、作動流体である蒸気がタービンの動翼に噴射されて駆動されるものであり、動翼(蒸気タービンブレード)やロータ等の回転機械の部品が、直接蒸気と接触する。また、化学プラント等で用いられ、各種流体を圧縮する圧縮機(コンプレッサ、ポンプ)は、外部から動力を与えられてインペラが回転し、前記流体を圧縮する。このようなコンプレッサポンプにおいても、インペラやロータ等の回転機械の部品が直接気体に接触する。
【0003】
ここで、水滴が高速で衝突する部品、例えば、蒸気タービンのブレードや、コンプレッサポンプのインペラにおいては、衝突する水滴によって表面にエロージョン摩耗が発生するという問題がある。この対策として、例えば、ステライトの肉盛を施すことや、イオンプレーティング等の物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)法により、硬質皮膜を表面に形成する技術が知られている。
しかしながら、上述のようなステライト肉盛の技術では、基材を溶融するために基材の変形が他の方法よりも大きくなる点や、セラミックコーティング等に比べて硬さが低いため、数ミリオーダーで厚膜化しないと、エロージョン摩耗からの基材保護効果が発現し難いという問題がある。
【0004】
一方、イオンプレーティング法により、基材を硬質皮膜で被覆して耐エロージョン性を向上させる方法としては、例えば、図13及び図14に示すように、ステンレスからなる基材100上にCr膜101を形成し、このCr膜101表面にTiN膜102をコーティングして多層膜を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、このような方法を用いた場合、コーティング層102の表面に、図14の顕微鏡写真図に示すようなドロップレット(図14中の符号110を参照)と呼ばれる粒子状の付着物が存在し、その大きさが大きく、また数が多い場合には、水滴によるエロージョン摩耗(ドレンエロージョン)が大きくなるという問題がある。
【0005】
以下に、図15(a)〜(c)の模式図を用いて、従来の蒸気タービンブレードの硬質皮膜の表面からドロップレットが欠落するメカニズムについて説明する。図15(a)に示すように、蒸気をなすドレン(水滴)250は概ね100〜200μmの径を有しており、蒸気タービンブレードの表面に備えられる硬質皮膜210に衝突する。この際、図15(b)に示すように、硬質皮膜210の表面に存在するドロップレット220にもドレン250が衝突することにより、該ドロップレット250が硬質皮膜210から欠落することがある。そして、図15(c)に示すように、硬質皮膜210の表面において、ドロップレット250が欠落した部分は凹部230となり、この凹部230を起点にエロージョンが拡大する。この際、ドロップレット250の密度が大きい場合には、エロージョンが一層拡大してしまうという問題がある。またさらに、欠落したドロップレット250の一部が凹部230の内部に残留した場合にも、上記同様の問題が発生する。
【0006】
また、ボールエンドミル等の切削工具の分野において、スパッタリング法により、表面に存在するマイクロパーティクル(ドロップレット)が、最大径が10μm以下とされ、且つ、表面における占有面積率が10%以下とされた皮膜を形成することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、特許文献2に記載の皮膜を蒸気タービンブレード等の回転機械用部品に適用したとしても、径が100〜200μmの水滴(蒸気)径に対し、最大径が10μmとされたドロップレットが皮膜の表面上に存在すると、皮膜の境界における応力集中によってドロップレットが欠落し易いという問題がある。また、皮膜表面においてドロップレットが占有する面積が比較的大きいため、ドロップレットが欠落してドレンエロージョンが発生した場合に、ドロップレット欠落箇所間の相互作用によってドレンエロージョンが拡大する虞がある。
【0007】
また、皮膜表面に形成されたドロップレットを、予め、研磨等の方法によって除去する技術も提案されている(例えば、特許文献3を参照)。しかしながら、皮膜表面においてドロップレットが除去された箇所は耐エロージョン性が低下するため、この位置を起点として侵食が拡大するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平8−30264号公報
【特許文献2】特開2006−116633号公報
【特許文献3】特開2005−1088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、ドロップレットの粒径や個数を少なくするたには、皮膜の成膜速度を小さくし、膜厚も薄くすることによって改善できるが、耐ドレンエロージョン性を硬質皮膜によって改善するためには、数μm〜数十μm程度の膜厚が必要となる。このように、硬質皮膜を厚く形成した場合には、ドロップレットの粒径や個数も厚さに応じて増加するため、一般的な切削工具等に用いられるような硬質皮膜を、例えば、蒸気タービンブレード等の回転機械用部品における耐ドレンエロージョン性コーティングとして適用することは困難であった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性に優れた回転機械用の部品及びその製造方法、蒸気タービン並びに圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明では以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る回転機械用の部品は、基材の表面上に、少なくともセラミック硬質皮膜が形成されてなり、該セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの密度が1000個/mm2以内とされており、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレットの密度が550個/mm2以内とされていることを特徴とする。
【0012】
係る構成の回転機械用の部品によれば、セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの密度を1000個/mm2以内とし、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレットの密度を550個/mm2以内とすることにより、ドレンエロージョンの発生起点が少なくなり、耐エロージョン性が向上できる。
【0013】
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記セラミック硬質皮膜が、TiN、CrN、TiAlN、TiC、TiCN、ZrNの内の少なくとも1種以上からなることを特徴とする。
係る構成の回転機械用の部品によれば、セラミック硬質皮膜を上記材料から構成することにより、耐摩耗性、耐ドレンエロージョン性を向上できる。
【0014】
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記基材と前記セラミック硬質皮膜との間に中間層が形成されてなることを特徴とする。
係る構成の回転機械用の部品によれば、中間層を設けることにより、セラミック硬質皮膜に発生する内部応力が緩和され、密着性が向上する。
【0015】
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記中間層が、Cr又はTiを含有することを特徴とする。
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記中間層が、CrN又はTiNからなることを特徴とする。
係る構成の回転機械用の部品によれば、セラミック硬質皮膜に発生する内部応力がより効果的に緩和され、さらに密着性が向上する。
【0016】
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記セラミック硬質皮膜の膜厚が5〜15μmの範囲とされていることが好ましい。
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記セラミック硬質皮膜の膜厚が、前記中間層の膜厚よりも大きな寸法とされているとともに、前記セラミック硬質皮膜と前記中間層との合計の膜厚が5〜20μmの範囲とされていることが好ましい。
係る構成の回転機械用の部品によれば、各皮膜の膜厚が上記範囲とされることで、耐摩耗性、耐ドレンエロージョン性を向上できる。
【0017】
本発明に係る回転機械用の部品の製造方法は、上記構成の回転機械用の部品を製造する方法であって、基材の表面上に、少なくとも、イオンプレーティング法、もしくはスパッタリング法によってセラミック硬質皮膜を形成することを特徴とする。
【0018】
係る構成の回転機械用の部品の製造方法によれば、セラミック硬質皮膜を上記条件で基材上に成膜することにより、セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの粒径及び密度を小さくすることが可能となる。
【0019】
本発明に係る蒸気タービンによれば、上記の回転機械用の部品が蒸気タービンブレードであり、該蒸気タービンブレードが備えられてなることを特徴とする。
係る構成の蒸気タービンによれば、上記構成の蒸気タービンブレードが備えられてなる構成なので、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性に優れたものとなる。
【0020】
本発明に係る圧縮機によれば、上記の回転機械用の部品がインペラであり、該インペラが備えられてなることを特徴とする。
係る構成の圧縮機によれば、上記構成のインペラが備えられてなる構成なので、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回転機械用の部品によれば、上記構成により、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性が向上し、安価で高寿命な回転機械用の部品が実現できる。
また、本発明の回転機械用の部品の製造方法によれば、上記方法とすることにより、耐ドレンエロージョン性に優れ、安価で高寿命な回転機械用の部品を、高い生産効率で製造することが可能となる。
また、本発明の蒸気タービン並びに圧縮機によれば、上記構成の回転機械用の部品が、それぞれ、蒸気タービンブレード又はインペラとして備えられてなるものなので、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性が向上し、安価で高寿命なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る回転機械用の部品の一例である蒸気タービンブレードを模式的に説明する図であり、蒸気タービンブレードが用いられる蒸気タービンを示す概略図である。
【図2】本発明に係る蒸気タービンブレードの第1の実施形態について模式的に説明する斜視図である。
【図3】本発明に係る蒸気タービンブレードの第1の実施形態について説明する図であり、基材上に中間層及びセラミック硬質皮膜が順次積層された構造を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る蒸気タービンブレードの一例を模式的に説明する図であり、セラミック硬質皮膜の表面において、ドロップレットの欠落及びドレンエロージョンを抑制する作用について説明する概略図である。
【図5】本発明に係る蒸気タービンブレードの第1の実施形態について説明する図であり、セラミック硬質皮膜の表面を示す顕微鏡写真図である。
【図6】本発明に係る蒸気タービンブレード(回転機械用の部品)の製造方法を模式的に説明する図であり、基材上に中間層及びセラミック硬質皮膜を形成する際に用いられる成膜装置の一例を示す概略図である。
【図7】本発明に係る蒸気タービンブレードの第2の実施形態について説明する図であり、基材上にセラミック硬質皮膜が積層された構造を示す模式断面図である。
【図8】本発明に係る蒸気タービンブレードの第3の実施形態について説明する図であり、基材上に中間層及びセラミック硬質皮膜が順次積層された構造を示す模式断面図である。
【図9】本発明に係る回転機械用の部品の実施例について説明する模式図であり、セラミック硬質皮膜の表面におけるドロップレットの粒径及び個数の測定方法を示す顕微鏡写真図である。
【図10】本発明に係る回転機械用の部品の実施例について説明する模式図であり、セラミック硬質皮膜の表面におけるドロップレットの個数測定結果を示すグラフである。
【図11】本発明に係る回転機械用の部品の実施例について説明する模式図であり、耐ドレンエロージョン性評価に用いられるキャビテーション・エロージョン試験方法の一例を示す概略図である。
【図12】本発明に係る回転機械用の部品の実施例について説明する模式図であり、耐ドレンエロージョン性の評価結果を示すグラフである。
【図13】従来の蒸気タービンブレードを説明する模式図であり、基材上に硬質皮膜が形成された積層構造を示す断面図である。
【図14】従来の蒸気タービンブレードを説明する図であり、硬質皮膜の表面を示す顕微鏡写真図である。
【図15】従来の蒸気タービンブレードを説明する図であり、硬質皮膜の表面からドロップレットが欠落するメカニズムについて説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る回転機械用の部品及びその製造方法、蒸気タービン並びに圧縮機について、蒸気タービンブレードを例にして、図面を適宜参照しながら説明する。
図1〜図6は、本発明に係る蒸気タービンブレード(回転機械用の部品)の第1の実施形態を説明する模式図であり、図1は蒸気タービンブレードが用いられる蒸気タービンの一例を示す模式図、図2は蒸気タービンブレードを示す斜視図、図3は基材上に中間層及びセラミック硬質皮膜が順次積層された構造を示す断面図、図4はセラミック硬質皮膜の表面においてドロップレットの欠落及びドレンエロージョンを抑制する作用を説明する模式図、図5はセラミック硬質皮膜の表面を示す顕微鏡写真図、図6はセラミック硬質皮膜を形成する際に用いられる成膜装置の一例を示す概略図である。また、図7は本発明に係る蒸気タービンブレードの第2の実施形態を説明する模式図、図8は第3の実施形態を説明する模式図である。
なお、以下の説明において参照する各図面は、蒸気タービンブレード(回転機械用の部品)を説明するための図面であって、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の寸法関係とは異なっていることがある。
【0024】
[蒸気タービンブレードの第1の実施形態]
以下、本発明に係る回転機械用の部品である蒸気タービンブレードの第1の実施形態について詳述する。
本発明に係る蒸気タービンブレードは、例えば、図1に示す蒸気タービン40において、動翼(図中における蒸気タービンブレード10を参照)として用いられる回転機械用の部品である。蒸気タービン40は、作動流体である蒸気が、タービン41に取り付けられた蒸気タービンブレード10(動翼)に噴射されて駆動されるものであり、このような蒸気タービン40においては、蒸気タービンブレード10が直接蒸気と接触するような構成とされている。
そして、本発明に係る蒸気タービンブレード10は、図3の断面図に示すように、基材1の表面1a上に、耐ドレンエロージョン性を向上させるためのセラミック硬質皮膜が形成された構成とされている。
【0025】
『蒸気タービンブレード』
蒸気タービンブレード10は、図3の断面図に示すように、基材1の表面1a上に中間層2及びセラミック硬質皮膜3が積層されている。また、蒸気タービンブレード10においては、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4(図4を参照)の密度が1000個/mm2以内とされ、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレット4の密度が550個/mm2以内とされている。
【0026】
「材質」
以下に、本実施形態の蒸気タービンブレード10を構成する基材1、セラミック硬質皮膜3並びに中間層2の材質について詳述する。
基材1としては、例えば、SUS410J1をはじめとするステンレス鋼等、この分野において一般に用いられている材料を何ら制限無く用いることができ、適宜選択することが可能である。
【0027】
セラミック硬質皮膜3は、蒸気タービンブレード10において基材1の表面1a上にコーティングされてなる皮膜である。
セラミック硬質皮膜3の材質としては、皮膜としての高い密着性や耐ドレンエロージョン性を備えるものであれば如何なるものでも採用することが可能であるが、窒化物又は炭化物からなることが好ましい。また、セラミック硬質皮膜3は、窒化物又は炭化物のなかでも、例えば、TiN、CrN、TiAlN、TiC、TiCN、ZrNの内の少なくとも1種以上からなる皮膜であることがより好ましい。セラミック硬質皮膜3を上記材質から構成することにより、耐摩耗性、耐ドレンエロージョン性に優れるセラミック硬質皮膜3を得ることが可能となる。
【0028】
中間層2は、上述のような基材1とセラミック硬質皮膜3との間に設けられる皮膜であり、セラミック硬質皮膜3に発生する内部応力を緩和し、基材1とセラミック硬質皮膜3との間の密着性をより高める作用がある。
中間層2の材質としては、Cr又はTiからなることが好ましい。このような材質で中間層2を構成することにより、セラミック硬質皮膜3に発生する内部応力がより効果的に緩和され、基材1とセラミック硬質皮膜3との間の密着性がさらに向上する。
なお、中間層2の成膜方法としては、詳細を後述するセラミック硬質皮膜3の成膜方法と同じ方法を、何ら制限無く採用することができる。
【0029】
「膜厚」
図3に示すような、本実施形態の蒸気タービンブレード10においては、セラミック硬質皮膜3の膜厚が5〜15μmの範囲とされていることが好ましい。セラミック硬質皮膜3の膜厚が5μm未満だと、耐ドレンエロージョン性が低下する虞があり、また、膜厚が15μmを超えると生産性が低下する。
また、本実施形態では、セラミック硬質皮膜3の膜厚が中間層2の膜厚よりも大きく構成されるとともに、セラミック硬質皮膜3と中間層2との合計の膜厚が5〜20μmの範囲とされていることが、優れた耐ドレンエロージョン性と高い密着性の両方が得られる点から、より好ましい。
【0030】
「ドロップレットの粒径及び密度」
本発明の蒸気タービンブレードでは、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4の密度を1000個/mm2以内に規定し、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレット4の密度を550個/mm2以内、より好ましくは500個/mm2以内に規定する(図5の顕微鏡写真図も参照)。
【0031】
本実施形態の蒸気タービンブレード10では、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在する全てのドロップレット4の密度を1000個/mm2以内とすることにより、侵食の起点が減少する。これにより、仮に、一部のドロップレット4が欠落してその周囲が侵食された場合でも、その他のドロップレット4並びにその周囲には影響しないと考えられる。従って、セラミック硬質皮膜3の表面3aにおける全体的な耐ドレンエロージョン性が低下するのを防止することができる。
また、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在する平均粒径が1μm以下のドロップレット4の密度を550個/mm2以内とすることにより、図4(a)〜(c)の模式図に示すように、粒径が100〜200μmのドレン50がドロップレット4に衝突した際の、ドロップレット4に作用する単位面積あたりの応力が緩和されると考えられる。これにより、ドロップレット4がセラミック硬質皮膜3の表面3aから欠落するのが抑制される。従って、セラミック硬質皮膜3の表面3aにおける侵食の起点が減少し、耐ドレンエロージョン性が低下するのを防止することができる。
【0032】
本発明に係る蒸気タービンブレード10を、図1に示すような蒸気タービン40に取り付けた際に、セラミック硬質皮膜3の表面3aにおいてドロップレット4の欠落が抑制されるメカニズムについて、図4(a)〜(c)の模式図を参照しながら、以下に説明する。同様に、図4(a)〜(c)を参照しながら、ドロップレット4が欠落した場合であってもドレンエロージョンの拡大が抑制されるメカニズムについて、以下に説明する。
【0033】
蒸気タービン40のタービン41に蒸気が噴射された際、図4(a)に示すように、まず、概ね100〜200μmの径を有するドレン50がセラミック硬質皮膜3の表面3aに衝突する。この際、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4は、上述のように、主として小径のものであるとともに低密度であるため、ドロップレット4に作用する単位面積あたりの応力が小さなものとなる。このため、図4(b)に示すように、ドロップレット4が欠落せず、セラミック硬質皮膜3の表面3a上に残留する。また、図4(c)に示すように、仮に、一部のドロップレット4が欠落した場合であっても、その部分に生じる溝3bは小径であるため、この溝3bを基点にドレンエロージョンが大きく拡大することが無い。また、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4の密度が抑制されているので、ドロップレット4が欠落した場合でも、相互作用によってドレンエロージョンが拡大するのを抑制することが可能となる。
【0034】
なお、ドロップレット4の粒径や数は、例えば、図5に示すように(図3の断面図も参照)、セラミック硬質皮膜3の表面3aを、電子顕微鏡を用いて300倍(視野0.42mm×0.316mm)で任意の視野の撮影を行い、これをA4サイズ程度に拡大した後、カウントして各任意の視野における平均を求めることによって計測できる。
また、セラミック硬質皮膜3の表面3aの耐ドレンエロージョン性については、例えば、キャビテーション・エロージョン試験によって評価することができる。この場合、例えば、時間を6Hr程度として試験を行った後のエロージョン量(重量減少量)を測定することで評価が可能である。
【0035】
『蒸気タービンブレードの製造方法』
以下に、本実施形態の蒸気タービンブレード(回転機械用の部品)10の製造方法について、主に図6を参照しながら詳述する。図6は、基材1の表面1a上に、中間層2並びにセラミック硬質皮膜3を形成する際に用いられる成膜装置の一例を示す模式図である。
本実施形態では、図3に示すような蒸気タービンブレード10の積層構造に備えられるセラミック硬質皮膜3を、図6に示すような成膜装置60を用いて成膜する方法を例に挙げて説明する。
【0036】
本発明に係る蒸気タービンブレードの製造方法は、上記構成の蒸気タービンブレード10を製造する際、基材1の表面1a上に、少なくとも、イオンプレーティング法、もしくはスパッタリング法によってセラミック硬質皮膜3を形成する方法である。また、本実施形態では、セラミック硬質皮膜3を、中空陰極式のイオンプレーティング法で形成するとともに、該イオンプレーティング法による成膜条件として、コーティング材料64(蒸発源)の蒸発面の面積あたりでのプラズマガン65の電子線66の出力である溶融パワー(P1)を550〜980(W/cm2)の範囲とし、集束コイル70の表面積あたりでの電磁出力である集束パワー(P2)を80〜150(W/cm2)の範囲とする方法を説明する。
【0037】
セラミック硬質皮膜の成膜方法としては、一般的なPVD法を用いることができるが、最も適した成膜方法の一つとして、材料を電子ビーム等によって溶融させ、蒸着するイオンプレーティング法が挙げられ、中でも、プラズマガンと集束コイルによってコーティング材料を溶融させて蒸着処理を行なう中空陰極式のイオンプレーティング法(HCD法:ホローカソード法:Hollow Cathode Discharge)を用いることが好ましい。このような方法においては、蒸着する材料を溶解させる際のプラズマガンの出力や、集束コイル出力を精密に制御することにより、本発明で規定するドロップレットの粒径及び密度を達成することが可能となる。
【0038】
図6に、中空陰極式のイオンプレーティング法を用いた成膜装置の一例を示す。この成膜装置60は、排気孔62から真空排気可能とされた真空容器61と、この真空容器61の内部に配され、コーティング材料64が収容されるルツボ63と、コーティング材料64を加熱蒸発するとともにイオン化して基板1の表面1a上に堆積させるための電子線66を放出するプラズマガン65と、電子線66をコーティング材料64に向けて集束させる集束コイル70と、基板1を加熱するためのヒータ67とが備えられ、概略構成されている。
また、図示例のように、通常、ルツボ63と基板1の間にはシャッター71が設けられ、不要なコーティング材料64の付着を防止できる構成とされており、さらに、基板1に、ルツボ63対して負の電圧(バイアス電圧)を印加するための直流バイアス電源を接続した構成とされている。またさらに、成膜装置60には、真空容器61内の残留ガス成分等を計測するための質量分析計72が設けられている。
【0039】
以下に、上記構成の成膜装置60を用いて製膜工程を実施する場合の手順の一例を説明する。
まず、真空容器61内に、13Crステンレス鋼(SUS410J1)からなる基板1を配置し、真空容器61内を5×10−5torr以下まで真空排気して減圧する。
次いで、基板1をヒータ67によって450〜550℃の温度まで加熱し、この温度で30分以上保持することで基板1を灼熱する。
【0040】
次いで、プラズマガン65及び集束コイル70の出力を適宜調整して、溶融パワーP1(W/cm2)及び集束パワーP2(W/cm2)を制御しながら、これらプラズマガン65及び集束コイル70を起動する。この際、シャッター71は閉じたままの状態とする。ここで、本発明において説明する溶融パワーP1(W/cm2)とは、プラズマガン65の電子線66の出力(W)を、ルツボ63に収容されたコーティング材料64の蒸発面の面積(cm2)で除した数値である。また、集束パワーP2(W/cm2)とは、集束コイル70の電磁出力(W)を、集束コイル70の表面積(cm2)で除した数値である。
【0041】
本発明においては、基板1上にコーティング材料64を蒸着させる前に、シャッター71を閉じた状態でプラズマガン65の出力を増加させ、溶融パワーP1を定格出力よりも5〜20%程度増加させた出力で10〜30分間保持した後、定格出力に戻してシャッター71を開放し、製膜処理を行なうことが好ましい。これにより、基板1の表面1a上にコーティング材料64を蒸着させる前に、予め、飛び出し易い粒子を取り出すことができるので、ドロップレットが低減でき、安定した膜を形成することができる。
【0042】
そして、シャッター71を開放することにより、コーティング材料64を基板1の表面1a上に堆積、蒸着させて成膜処理を行なう。この際、必要に応じて、基板1とルツボ63との間にバイアス電圧を印加しながら成膜処理を行なう。
【0043】
なお、上述した溶融パワーP1は、550〜980(W/cm2)の範囲とすることが好ましい。出力P1が上記範囲であれば、コーティング材料64を効率的且つ確実に溶解して取り出し、良好な膜質で成膜処理を行なうことが可能となる。また、溶融パワーP1を上記範囲とした場合の、集束パワーP2は、80〜150(mW/cm2)の範囲とすることが好ましい。
溶融パワーP1を上記範囲としたうえで、集束パワーP2をこのような範囲とし、これらP1、P2を精密に制御することにより、本発明で規定するドロップレットの粒径及び密度を達成することが可能となる。
【0044】
ここで溶融パワーP1が980(W/cm2)を超えると、パワーが強すぎて膜表面にドロップフィレットの大きな粒ができてしまう虞がある。一方、溶融パワーP1が550(W/cm2)未満だと、成膜レートが低くなり、生産性が低下する虞がある。
また、集束パワーP2は、上記範囲が好ましいが、この集束パワーP2が上記範囲を越える場合には、膜表面にドロップフィレットの大きな粒ができてしまう虞があり、集束パワーP2が上記範囲を下回ると、溶融パワーP1を精密に集束させるのが困難になる。
【0045】
また、成膜装置60を用いてTiNのような化合物をコーティングする場合には、例えば、コーティング材料64にTiを用いて蒸発させるとともに、導入口69から反応ガス(N2)を供給することにより、基板1の表面1a上にTiNを堆積させることができる。
【0046】
また、上述したようなHCD法を用いたセラミック硬質皮膜の成膜方法は、中間層の成膜処理においても何ら制限無く適用することが可能である。このような場合には、例えば、溶融パワーP1は、450〜550(W/cm2)の範囲とすることが好ましく、また、溶融パワーP1を上記範囲とした場合の、集束パワーP2は、80〜120(mW/cm2)の範囲とすることが好ましい。
【0047】
[蒸気タービンブレードの第2の実施形態]
以下に、本実施形態の蒸気タービンブレード11について、図7を参照しながら詳述する。なお、以下の説明において、第1の実施形態の蒸気タービンブレード10と同様の構成には共通の符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略する。
本実施形態の蒸気タービンブレード11は、基材1とセラミック硬質皮膜31との間に中間層が設けられていない点で、第1の実施形態の蒸気タービンブレード10とは異なる構成とされている。
【0048】
本実施形態の蒸気タービンブレード11は、基材1の表面1a上に形成される皮膜が、セラミック硬質皮膜31のみからなる単層膜とされている。このような単層膜構造を有するセラミック硬質皮膜31の膜厚は、5〜15μmの範囲とされていることが好ましい。セラミック硬質皮膜31の膜厚が上記範囲とされることで、セラミック硬質皮膜31の表面に存在するドロップレット4(図4を参照)の粒径及び密度を、上記第1の実施形態の蒸気タービンブレード10と同様の範囲で、適正且つ容易に制御出来る。
【0049】
なお、本実施形態の蒸気タービンブレード11に備えられる基材1及びセラミック硬質皮膜31としては、上記第1の実施形態の蒸気タービンブレード10に備えられる基材1及びセラミック硬質皮膜3と同様のものを用いることができる。また、基材1の表面1a上へのセラミック硬質皮膜31の成膜方法としても、第1の実施形態の蒸気タービンブレード10の場合と同様の方法を採用することが可能である。
本実施形態の蒸気タービンブレード11によれば、上記構成により、上記第1の実施形態の蒸気タービンブレード10と同様に、耐ドレンエロージョン性が向上する効果が得られる。
【0050】
なお、本実施形態においては、まず、基材1上にセラミック硬質皮膜31と同材料、例えばTiN等からなる中間層を形成し、その上にTiNからなるセラミック硬質皮膜31を形成することにより、結果として、図7に示すような単一材質膜とすることも可能である。この場合には、セラミック硬質皮膜31と同材料の中間層の作用により、第1の実施形態の蒸気タービンブレード10と同様にセラミック硬質皮膜31に発生する内部応力が緩和され、基材1とセラミック硬質皮膜3との間の密着性が向上する効果が得られる。
【0051】
[蒸気タービンブレードの第3の実施形態]
以下に、本実施形態の蒸気タービンブレード12について、図8を参照しながら詳述する。なお、以下の説明において、第1及び第2の実施形態の蒸気タービンブレード10、11と同様の構成には共通の符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略する。
本実施形態の蒸気タービンブレード12は、基材1とセラミック硬質皮膜3との間に形成される中間層21が、CrN又はTiNからなる構成とされている点で、上記第1の実施形態の蒸気タービンブレード10とは異なる。
【0052】
本実施形態では、上記材質で中間層21を構成することにより、第1の実施形態の蒸気タービンブレード10と同様に、セラミック硬質皮膜3に発生する内部応力が効果的に緩和され、基材1とセラミック硬質皮膜3との間の密着性が良好となる。
また、中間層21及びセラミック硬質皮膜3の膜厚についても、上記第1の実施形態と同様、セラミック硬質皮膜3の膜厚が中間層21の膜厚よりも大きな寸法とされているとともに、セラミック硬質皮膜3と中間層21との合計の膜厚が5〜20μmの範囲とされていることが好ましい。セラミック硬質皮膜3と中間膜21の厚さが上記関係とされ、且つ、上記範囲の厚さとされることで、上記第1の実施形態と同様、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4の粒径及び密度を、適正な範囲で容易に制御できる。また、上記構成の積層膜とすることで、中間層21の残留応力も緩和され、基材1上に形成された皮膜全体の内部応力が、同一厚さの単層皮膜に比べて小さくなる。
【0053】
また、本実施形態のセラミック硬質皮膜3は、上記第1の実施形態と同様の皮膜であり、その材質や膜厚、成膜方法等は共通とすることができる。
また、上述のような中間層21を成膜する方法としても、第1の実施形態におけるセラミック硬質皮膜3と同様の成膜方法を、何ら制限無く適用することが可能である。
【0054】
[回転機械用の部品の他の例]
本発明においては、上述の蒸気タービンブレードと同様のセラミック硬質皮膜を基材の表面上に形成することにより、例えば、化学プラント等で用いられ、各種気体を圧縮するコンプレッサポンプ(圧縮機)に備えられるインペラや、ロータ等の回転機械用の部品を構成することが可能となる。
【0055】
本発明に係る回転機械用の部品の他の例としては、詳細な図示を省略するが、例えば、コンプレッサポンプのインペラを構成した場合には、該インペラの表面に、図3等に示すような蒸気タービンブレードと同様のセラミック硬質皮膜が設けられた構成とすることができる。これにより、気体がインペラに直接接触しても、上述の蒸気タービンブレードと同様、セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットが欠落するのを抑制できる。また、セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの一部が欠落して周囲にドレンエロージョンが生じた場合でも、他のドロップレットに影響が及ぶのを抑制できる。従って、全体的な耐ドレンエロージョン性が低下するのを抑制する効果が得られる。
【0056】
さらに、上述の蒸気タービンブレードと同様の中間層が、基材とセラミック硬質皮膜との間に設けられている構成とすれば、セラミック硬質皮膜に発生する内部応力を緩和し、基材とセラミック硬質皮膜との間の密着性をより高める効果が得られる点から、より好ましい。
【0057】
また、本発明に係る回転機械用の部品のセラミック硬質皮膜及び中間層は、上記蒸気タービンブレードと同様の皮膜であることから、その材質や膜厚の他、成膜方法等の製造工程も共通とすることが可能である。
例えば、上述のようなコンプレッサポンプのインペラ表面にセラミック硬質皮膜を形成する方法としてHCD法を採用し、上記同様の条件で基材の表面上にセラミック硬質皮膜を形成することにより、該セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの粒径及び密度を、上記同様の適正範囲に制御することが可能となる。
【0058】
以上説明したように、本発明に係る蒸気タービンブレード(回転機械用の部品)によれば、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4の密度を1000個/mm2以内とし、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレット4の密度を550個/mm2以内とすることにより、ドレンエロージョンの発生起点が少なくなるので、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性が向上する。従って、耐ドレンエロージョン性に優れ、安価で高寿命な蒸気タービンブレードが実現できる。
【0059】
また、本発明に係る蒸気タービンブレードの製造方法(回転機械用の部品の製造方法)によれば、上記構成の蒸気タービンブレードを製造する際、基材1の表面1a上に、少なくとも、イオンプレーティング法、もしくはスパッタリング法によってセラミック硬質皮膜3を形成する方法とすることにより、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4の粒径及び密度を小さくすることが可能となる。従って、耐ドレンエロージョン性に優れ、安価で高寿命な蒸気タービンブレードを、高い生産効率で製造することが可能となる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を示して、本発明の回転機械用の部品及びその製造方法を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものでは無い。
図9〜図12は、本発明の実施例について説明する模式図であり、図9はセラミック硬質皮膜の表面におけるドロップレットの粒径及び個数の測定方法を示す顕微鏡写真図、図10はセラミック硬質皮膜の表面におけるドロップレットの個数測定結果を示すグラフ、図11は耐ドレンエロージョン性評価のための試験装置を示す概略図、図12は耐ドレンエロージョン性の評価結果を示すグラフである。
【0061】
本実施例では、まず、基材上に、HCD法(Hollow Cathode Discharge:中空陰極放電)を用いたイオンプレーティング法で、下記表1に示すような各成膜条件で中間層及びセラミック硬質皮膜を順次成膜することにより、実施例1〜4のサンプルを作製した。また、基材上に、HCD法あるいはAIP法(Arc Ion Plating:アークイオンプレーティング)を用いて(下記表3も参照)、下記表2に示すような各成膜条件で中間層及びセラミック硬質皮膜を順次成膜することにより、比較例1〜4のサンプルを作製した。そして、これらサンプルについて、以下に説明する各評価試験を行った。
【0062】
[実施例1〜4の試験片の作製]
まず、基材1として、13Crステンレス鋼(SUS410J1)からなる基材を準備した。そして、図6に示すような成膜装置60を使用し、以下の手順で、基材1の表面1a上に、中間層及びセラミック硬質皮膜を順次成膜した。
まず、基板1を真空容器61内に配置し、真空容器61内を5×10−5torr以下まで真空排気して減圧した。次に、基板1を、ヒータ67によって450〜550℃の温度まで加熱し、この温度で30分以上保持して基板1を灼熱状態とした。
また、ルツボ63には、中間層2の成膜時は、該中間層2の材料となるコーティング材料64としてCrを収容し、その上のセラミック硬質皮膜3の成膜時は、該セラミック硬質皮膜3の材料となるコーティング材料としてTiを収容した。
【0063】
次に、シャッター71を閉じた状態で、プラズマガン65及び集束コイル70の出力を適宜調整し、溶融パワーP1(W/cm2)及び集束パワーP2(W/cm2)を、下記表1に示す数値に制御しながら、これらプラズマガン65及び集束コイル70を起動した。ここで、本実施例で説明する溶融パワーP1(W/cm2)は、プラズマガン65の電子線66出力(W)をルツボ63に収容されたコーティング材料64の蒸発面の面積(cm2)で除した数値であり、また、集束パワーP2(W/cm2)は、集束コイル70の電磁出力(W)を集束コイル70の表面積(cm2)で除した数値である。
【0064】
そして、シャッター71を閉じた状態でプラズマガン65の出力を増加させ、溶融パワーP1を定格出力よりも5〜20%程度増加させた出力で10〜30分間保持し、予め、コーティング材料64中における飛び出し易い粒子を取り出しておいた。
次に、溶融パワーP1を定格出力に戻してシャッター71を開放し、基板1の表面1a上にコーティング材料64(この場合はCr)を蒸着、堆積させることにより、まず、Crからなる中間層2を成膜した。
【0065】
次いで、ルツボ63に収容するコーティング材料64をTiに変更し、また、各成膜条件を下記表1に示すような数値として、上記手順で成膜したCrからなる中間層2上に、TiNからなるセラミック硬質皮膜3を、上記同様の手順によって成膜した。なお、TiNからなるセラミック硬質皮膜3を成膜する際は、コーティング材料64(この場合はTi)を蒸発させながら、導入口69から反応ガス(N2)を供給した。
【0066】
なお、中間層2及びセラミック硬質皮膜3の成膜処理においては、必要に応じて、基板1とルツボ63との間に、下記表1に示す数値のバイアス電圧を印加した。
また、成膜前のプラズマガン65及びコーティング材料64の溶解安定化のため、出力P1を標準値の5〜20%増しとして数分間の動作を行い、真空容器61に接続された質量分析計72により、H2O並びにO2の各分圧の時間変化を測定した。
【0067】
上記手順により、下記表1に示す各条件で基板1の表面1a上に、中間層2として膜厚が3μmのCrを成膜し、その上に、セラミック硬質皮膜3として膜厚が10μmのTiNを成膜することにより、実施例1〜4の4種の試験片を各々作製した。
【0068】
【表1】
【0069】
[比較例1〜4の試験片の作製]
上記実施例1〜4と同様、13Crステンレス鋼(SUS410J1)からなる基材を準備し、下記表2に示す各条件で、以下の手順で、基材上に中間層及び硬質皮膜を順次成膜した。
まず、比較例1として、HCD法により、下記表2に示す各成膜条件で基材上に中間層及び硬質皮膜を順次成膜し、試験片を作製した。これは、上述した特許文献1(特公平8−30264号公報)において開示されている条件と同様の成膜条件である。
また、比較例2〜4として、AIP法により、下記表2に示す各成膜条件で基材上に中間層及び硬質皮膜を順次成膜し、各試験片を作製した。AIP法は、工具等に適用されている硬質皮膜の成膜方法の一つであり、特に、密着力に優れた皮膜を成膜することができる方法である(AIP法による成膜方法については、特許第3633837号の段落0059〜0065等も参照)。また、比較例2〜4の試験片を作製する際は、成膜条件としては、通常の工具等において適用されているTiNの成膜条件と同様の条件とし、バイアス電圧を変更して成膜処理することにより、3種類の試験片とした。
【0070】
[評価試験項目]
上記手順によって作製した実施例1〜4及び比較例1〜4の試験片について、以下に説明するような項目の各種評価試験を実施し、結果を下記表3に示した。
【0071】
「ドロップレットの粒径及び密度の測定」
ドロップレットの粒径及び数量(密度)は、図9(a)、(b)の顕微鏡写真図に示すように、試験片の表面を、走査型電子顕微鏡を用いて300倍(視野0.42mm×0.316mm)で任意の視野で撮影し、これをA4サイズに拡大した後、カウントして各任意の視野における平均を求めて計測した。また、この際、「1μm以下」、「1μm超5μm以下」、「5μm超10μm以下」、「10μm超」の4水準で各々ドロップレットの数量をカウントし、その平均を求めて1mm2あたりの数量に換算することによって密度(個/mm2)を求め、結果を図10のグラフ及び下記表1に示した。
【0072】
「耐ドレンエロージョン性の評価」
各試験片の表面に形成された皮膜の耐ドレンエロージョン性については、ASTM G32−77に準じ、キャビテーション・エロージョン試験によって評価した。
図11(a)に、キャビテーション・エロージョン試験に用いた各実施例及び比較例の試験片Aの形状並びに寸法値を示す。図11(a)に示すように、各試験片Aにおける皮膜の形成範囲は、15.9mmの平面部と、ネジ部を除く7mmの周方向とした。
図11(b)に、本実施例で用いたキャビテーション・エロージョン試験装置80のフローシート図を示す。本実施例においては、超音波発信器86にて振動子81を発振させ,Ti−6Al−4V合金製拡大ホーン82によって振幅を拡大させて、ホーン先端に取付けた試験片Aを振動させる方法で評価試験を行った。この際、試験片Aの先端を2〜3mm程度、試験片液85に浸漬しながら振動させて気泡を発生させ、この、気泡が崩壊する際の衝撃圧力や液ジェットにより、エロージョンを発生させた。また、この際の試験環境としては、イオン交換水(室温)を用いて、繰返し速度:18.5KHz、試験片A先端の振幅:25μmで、最長6hまで実施する条件とした。
そして、上記手順のキャビテーション・エロージョン試験を行った後、試験片Aの重量減少量(エロージョン量)を電子天秤(精度:0.1mg)によって測定し、この結果を図12のグラフ及び下記表3に示した。
【0073】
表2に、各実施例及び比較例における各成膜条件の一覧を示し、表3に、各評価試験における結果の一覧を示す。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
[評価結果]
表3に示すように、本発明で規定する条件でセラミック硬質皮膜を形成し、該セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの粒径及び密度が本発明で規定する範囲とされた実施例1〜4の試験片は、セラミック硬質皮膜の表面における粒径dが1μm以下のドロップレットの平均密度が550個/mm2以内であった(図9(a)に示す顕微鏡写真図を参照)。また、セラミック硬質皮膜の表面における全てのドロップレットの密度も、各実施例において1000個/mm2以内であり、エロージョン量が少なく、耐ドレンエロージョン性に優れることが確認された。
【0077】
これに対し、実施例1〜4と同様のHCD法を用い、従来の条件で基材上に硬質皮膜を形成し、該硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの粒径や密度が本発明の規定範囲外とされた比較例1の試験片は、硬質皮膜の表面において、粒径が1μm以下のドロップレットの平均密度が1380個/mm2超と非常に高いことから、耐ドレンエロージョン性が劣っている(図9(b)に示す顕微鏡写真図を参照)。
【0078】
また、比較例2〜4の試験片は、工具の分野で実績のあるAIP法によって基材上に中間層及び硬質皮膜を成膜して作製したものであるが、全体的にドロップレットの数量が多く、耐ドレンエロージョン性についても、上記実施例1〜4の試験片に対して大きく劣ることがわかる。
【0079】
上述のように、実施例1〜4の試験片は、工具の分野において従来公知の方法であるAIP法で作製した試験片と比較しても、セラミック硬質皮膜の表面における粒径及び密度が本発明で規定する範囲とされていることにより、良好な耐ドレンエロージョン性が得られることが確認された。
【0080】
以上説明した各評価試験の結果により、本発明に係る回転機械用の部品が、気体と直接接触する環境下においてドレンエロージョンが発生するのが抑制され、耐ドレンエロージョン性に優れていることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0081】
1…基材、1a…表面(基材)、2…中間層、3、31…セラミック硬質皮膜、3a、31a…表面(セラミック硬質皮膜)、4…ドロップレット、10、11、12…蒸気タービンブレード(回転機械用部品)、60…成膜装置、63…ルツボ、64…コーティング材料(蒸発源)、65…プラズマガン、66…電子線、70…集束コイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械用の部品及びその製造方法、蒸気タービン並びに圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、蒸気タービンやコンプレッサポンプ等の回転機械に用いられるブレード等の部品においては、耐熱性や耐食性等を考慮した表面処理が施されている。蒸気タービンは、作動流体である蒸気がタービンの動翼に噴射されて駆動されるものであり、動翼(蒸気タービンブレード)やロータ等の回転機械の部品が、直接蒸気と接触する。また、化学プラント等で用いられ、各種流体を圧縮する圧縮機(コンプレッサ、ポンプ)は、外部から動力を与えられてインペラが回転し、前記流体を圧縮する。このようなコンプレッサポンプにおいても、インペラやロータ等の回転機械の部品が直接気体に接触する。
【0003】
ここで、水滴が高速で衝突する部品、例えば、蒸気タービンのブレードや、コンプレッサポンプのインペラにおいては、衝突する水滴によって表面にエロージョン摩耗が発生するという問題がある。この対策として、例えば、ステライトの肉盛を施すことや、イオンプレーティング等の物理気相成長(PVD:Physical Vapor Deposition)法により、硬質皮膜を表面に形成する技術が知られている。
しかしながら、上述のようなステライト肉盛の技術では、基材を溶融するために基材の変形が他の方法よりも大きくなる点や、セラミックコーティング等に比べて硬さが低いため、数ミリオーダーで厚膜化しないと、エロージョン摩耗からの基材保護効果が発現し難いという問題がある。
【0004】
一方、イオンプレーティング法により、基材を硬質皮膜で被覆して耐エロージョン性を向上させる方法としては、例えば、図13及び図14に示すように、ステンレスからなる基材100上にCr膜101を形成し、このCr膜101表面にTiN膜102をコーティングして多層膜を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、このような方法を用いた場合、コーティング層102の表面に、図14の顕微鏡写真図に示すようなドロップレット(図14中の符号110を参照)と呼ばれる粒子状の付着物が存在し、その大きさが大きく、また数が多い場合には、水滴によるエロージョン摩耗(ドレンエロージョン)が大きくなるという問題がある。
【0005】
以下に、図15(a)〜(c)の模式図を用いて、従来の蒸気タービンブレードの硬質皮膜の表面からドロップレットが欠落するメカニズムについて説明する。図15(a)に示すように、蒸気をなすドレン(水滴)250は概ね100〜200μmの径を有しており、蒸気タービンブレードの表面に備えられる硬質皮膜210に衝突する。この際、図15(b)に示すように、硬質皮膜210の表面に存在するドロップレット220にもドレン250が衝突することにより、該ドロップレット250が硬質皮膜210から欠落することがある。そして、図15(c)に示すように、硬質皮膜210の表面において、ドロップレット250が欠落した部分は凹部230となり、この凹部230を起点にエロージョンが拡大する。この際、ドロップレット250の密度が大きい場合には、エロージョンが一層拡大してしまうという問題がある。またさらに、欠落したドロップレット250の一部が凹部230の内部に残留した場合にも、上記同様の問題が発生する。
【0006】
また、ボールエンドミル等の切削工具の分野において、スパッタリング法により、表面に存在するマイクロパーティクル(ドロップレット)が、最大径が10μm以下とされ、且つ、表面における占有面積率が10%以下とされた皮膜を形成することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。しかしながら、特許文献2に記載の皮膜を蒸気タービンブレード等の回転機械用部品に適用したとしても、径が100〜200μmの水滴(蒸気)径に対し、最大径が10μmとされたドロップレットが皮膜の表面上に存在すると、皮膜の境界における応力集中によってドロップレットが欠落し易いという問題がある。また、皮膜表面においてドロップレットが占有する面積が比較的大きいため、ドロップレットが欠落してドレンエロージョンが発生した場合に、ドロップレット欠落箇所間の相互作用によってドレンエロージョンが拡大する虞がある。
【0007】
また、皮膜表面に形成されたドロップレットを、予め、研磨等の方法によって除去する技術も提案されている(例えば、特許文献3を参照)。しかしながら、皮膜表面においてドロップレットが除去された箇所は耐エロージョン性が低下するため、この位置を起点として侵食が拡大するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平8−30264号公報
【特許文献2】特開2006−116633号公報
【特許文献3】特開2005−1088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、ドロップレットの粒径や個数を少なくするたには、皮膜の成膜速度を小さくし、膜厚も薄くすることによって改善できるが、耐ドレンエロージョン性を硬質皮膜によって改善するためには、数μm〜数十μm程度の膜厚が必要となる。このように、硬質皮膜を厚く形成した場合には、ドロップレットの粒径や個数も厚さに応じて増加するため、一般的な切削工具等に用いられるような硬質皮膜を、例えば、蒸気タービンブレード等の回転機械用部品における耐ドレンエロージョン性コーティングとして適用することは困難であった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性に優れた回転機械用の部品及びその製造方法、蒸気タービン並びに圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明では以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る回転機械用の部品は、基材の表面上に、少なくともセラミック硬質皮膜が形成されてなり、該セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの密度が1000個/mm2以内とされており、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレットの密度が550個/mm2以内とされていることを特徴とする。
【0012】
係る構成の回転機械用の部品によれば、セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの密度を1000個/mm2以内とし、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレットの密度を550個/mm2以内とすることにより、ドレンエロージョンの発生起点が少なくなり、耐エロージョン性が向上できる。
【0013】
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記セラミック硬質皮膜が、TiN、CrN、TiAlN、TiC、TiCN、ZrNの内の少なくとも1種以上からなることを特徴とする。
係る構成の回転機械用の部品によれば、セラミック硬質皮膜を上記材料から構成することにより、耐摩耗性、耐ドレンエロージョン性を向上できる。
【0014】
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記基材と前記セラミック硬質皮膜との間に中間層が形成されてなることを特徴とする。
係る構成の回転機械用の部品によれば、中間層を設けることにより、セラミック硬質皮膜に発生する内部応力が緩和され、密着性が向上する。
【0015】
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記中間層が、Cr又はTiを含有することを特徴とする。
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記中間層が、CrN又はTiNからなることを特徴とする。
係る構成の回転機械用の部品によれば、セラミック硬質皮膜に発生する内部応力がより効果的に緩和され、さらに密着性が向上する。
【0016】
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記セラミック硬質皮膜の膜厚が5〜15μmの範囲とされていることが好ましい。
また、本発明に係る回転機械用の部品は、前記セラミック硬質皮膜の膜厚が、前記中間層の膜厚よりも大きな寸法とされているとともに、前記セラミック硬質皮膜と前記中間層との合計の膜厚が5〜20μmの範囲とされていることが好ましい。
係る構成の回転機械用の部品によれば、各皮膜の膜厚が上記範囲とされることで、耐摩耗性、耐ドレンエロージョン性を向上できる。
【0017】
本発明に係る回転機械用の部品の製造方法は、上記構成の回転機械用の部品を製造する方法であって、基材の表面上に、少なくとも、イオンプレーティング法、もしくはスパッタリング法によってセラミック硬質皮膜を形成することを特徴とする。
【0018】
係る構成の回転機械用の部品の製造方法によれば、セラミック硬質皮膜を上記条件で基材上に成膜することにより、セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの粒径及び密度を小さくすることが可能となる。
【0019】
本発明に係る蒸気タービンによれば、上記の回転機械用の部品が蒸気タービンブレードであり、該蒸気タービンブレードが備えられてなることを特徴とする。
係る構成の蒸気タービンによれば、上記構成の蒸気タービンブレードが備えられてなる構成なので、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性に優れたものとなる。
【0020】
本発明に係る圧縮機によれば、上記の回転機械用の部品がインペラであり、該インペラが備えられてなることを特徴とする。
係る構成の圧縮機によれば、上記構成のインペラが備えられてなる構成なので、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回転機械用の部品によれば、上記構成により、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性が向上し、安価で高寿命な回転機械用の部品が実現できる。
また、本発明の回転機械用の部品の製造方法によれば、上記方法とすることにより、耐ドレンエロージョン性に優れ、安価で高寿命な回転機械用の部品を、高い生産効率で製造することが可能となる。
また、本発明の蒸気タービン並びに圧縮機によれば、上記構成の回転機械用の部品が、それぞれ、蒸気タービンブレード又はインペラとして備えられてなるものなので、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性が向上し、安価で高寿命なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る回転機械用の部品の一例である蒸気タービンブレードを模式的に説明する図であり、蒸気タービンブレードが用いられる蒸気タービンを示す概略図である。
【図2】本発明に係る蒸気タービンブレードの第1の実施形態について模式的に説明する斜視図である。
【図3】本発明に係る蒸気タービンブレードの第1の実施形態について説明する図であり、基材上に中間層及びセラミック硬質皮膜が順次積層された構造を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る蒸気タービンブレードの一例を模式的に説明する図であり、セラミック硬質皮膜の表面において、ドロップレットの欠落及びドレンエロージョンを抑制する作用について説明する概略図である。
【図5】本発明に係る蒸気タービンブレードの第1の実施形態について説明する図であり、セラミック硬質皮膜の表面を示す顕微鏡写真図である。
【図6】本発明に係る蒸気タービンブレード(回転機械用の部品)の製造方法を模式的に説明する図であり、基材上に中間層及びセラミック硬質皮膜を形成する際に用いられる成膜装置の一例を示す概略図である。
【図7】本発明に係る蒸気タービンブレードの第2の実施形態について説明する図であり、基材上にセラミック硬質皮膜が積層された構造を示す模式断面図である。
【図8】本発明に係る蒸気タービンブレードの第3の実施形態について説明する図であり、基材上に中間層及びセラミック硬質皮膜が順次積層された構造を示す模式断面図である。
【図9】本発明に係る回転機械用の部品の実施例について説明する模式図であり、セラミック硬質皮膜の表面におけるドロップレットの粒径及び個数の測定方法を示す顕微鏡写真図である。
【図10】本発明に係る回転機械用の部品の実施例について説明する模式図であり、セラミック硬質皮膜の表面におけるドロップレットの個数測定結果を示すグラフである。
【図11】本発明に係る回転機械用の部品の実施例について説明する模式図であり、耐ドレンエロージョン性評価に用いられるキャビテーション・エロージョン試験方法の一例を示す概略図である。
【図12】本発明に係る回転機械用の部品の実施例について説明する模式図であり、耐ドレンエロージョン性の評価結果を示すグラフである。
【図13】従来の蒸気タービンブレードを説明する模式図であり、基材上に硬質皮膜が形成された積層構造を示す断面図である。
【図14】従来の蒸気タービンブレードを説明する図であり、硬質皮膜の表面を示す顕微鏡写真図である。
【図15】従来の蒸気タービンブレードを説明する図であり、硬質皮膜の表面からドロップレットが欠落するメカニズムについて説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る回転機械用の部品及びその製造方法、蒸気タービン並びに圧縮機について、蒸気タービンブレードを例にして、図面を適宜参照しながら説明する。
図1〜図6は、本発明に係る蒸気タービンブレード(回転機械用の部品)の第1の実施形態を説明する模式図であり、図1は蒸気タービンブレードが用いられる蒸気タービンの一例を示す模式図、図2は蒸気タービンブレードを示す斜視図、図3は基材上に中間層及びセラミック硬質皮膜が順次積層された構造を示す断面図、図4はセラミック硬質皮膜の表面においてドロップレットの欠落及びドレンエロージョンを抑制する作用を説明する模式図、図5はセラミック硬質皮膜の表面を示す顕微鏡写真図、図6はセラミック硬質皮膜を形成する際に用いられる成膜装置の一例を示す概略図である。また、図7は本発明に係る蒸気タービンブレードの第2の実施形態を説明する模式図、図8は第3の実施形態を説明する模式図である。
なお、以下の説明において参照する各図面は、蒸気タービンブレード(回転機械用の部品)を説明するための図面であって、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の寸法関係とは異なっていることがある。
【0024】
[蒸気タービンブレードの第1の実施形態]
以下、本発明に係る回転機械用の部品である蒸気タービンブレードの第1の実施形態について詳述する。
本発明に係る蒸気タービンブレードは、例えば、図1に示す蒸気タービン40において、動翼(図中における蒸気タービンブレード10を参照)として用いられる回転機械用の部品である。蒸気タービン40は、作動流体である蒸気が、タービン41に取り付けられた蒸気タービンブレード10(動翼)に噴射されて駆動されるものであり、このような蒸気タービン40においては、蒸気タービンブレード10が直接蒸気と接触するような構成とされている。
そして、本発明に係る蒸気タービンブレード10は、図3の断面図に示すように、基材1の表面1a上に、耐ドレンエロージョン性を向上させるためのセラミック硬質皮膜が形成された構成とされている。
【0025】
『蒸気タービンブレード』
蒸気タービンブレード10は、図3の断面図に示すように、基材1の表面1a上に中間層2及びセラミック硬質皮膜3が積層されている。また、蒸気タービンブレード10においては、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4(図4を参照)の密度が1000個/mm2以内とされ、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレット4の密度が550個/mm2以内とされている。
【0026】
「材質」
以下に、本実施形態の蒸気タービンブレード10を構成する基材1、セラミック硬質皮膜3並びに中間層2の材質について詳述する。
基材1としては、例えば、SUS410J1をはじめとするステンレス鋼等、この分野において一般に用いられている材料を何ら制限無く用いることができ、適宜選択することが可能である。
【0027】
セラミック硬質皮膜3は、蒸気タービンブレード10において基材1の表面1a上にコーティングされてなる皮膜である。
セラミック硬質皮膜3の材質としては、皮膜としての高い密着性や耐ドレンエロージョン性を備えるものであれば如何なるものでも採用することが可能であるが、窒化物又は炭化物からなることが好ましい。また、セラミック硬質皮膜3は、窒化物又は炭化物のなかでも、例えば、TiN、CrN、TiAlN、TiC、TiCN、ZrNの内の少なくとも1種以上からなる皮膜であることがより好ましい。セラミック硬質皮膜3を上記材質から構成することにより、耐摩耗性、耐ドレンエロージョン性に優れるセラミック硬質皮膜3を得ることが可能となる。
【0028】
中間層2は、上述のような基材1とセラミック硬質皮膜3との間に設けられる皮膜であり、セラミック硬質皮膜3に発生する内部応力を緩和し、基材1とセラミック硬質皮膜3との間の密着性をより高める作用がある。
中間層2の材質としては、Cr又はTiからなることが好ましい。このような材質で中間層2を構成することにより、セラミック硬質皮膜3に発生する内部応力がより効果的に緩和され、基材1とセラミック硬質皮膜3との間の密着性がさらに向上する。
なお、中間層2の成膜方法としては、詳細を後述するセラミック硬質皮膜3の成膜方法と同じ方法を、何ら制限無く採用することができる。
【0029】
「膜厚」
図3に示すような、本実施形態の蒸気タービンブレード10においては、セラミック硬質皮膜3の膜厚が5〜15μmの範囲とされていることが好ましい。セラミック硬質皮膜3の膜厚が5μm未満だと、耐ドレンエロージョン性が低下する虞があり、また、膜厚が15μmを超えると生産性が低下する。
また、本実施形態では、セラミック硬質皮膜3の膜厚が中間層2の膜厚よりも大きく構成されるとともに、セラミック硬質皮膜3と中間層2との合計の膜厚が5〜20μmの範囲とされていることが、優れた耐ドレンエロージョン性と高い密着性の両方が得られる点から、より好ましい。
【0030】
「ドロップレットの粒径及び密度」
本発明の蒸気タービンブレードでは、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4の密度を1000個/mm2以内に規定し、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレット4の密度を550個/mm2以内、より好ましくは500個/mm2以内に規定する(図5の顕微鏡写真図も参照)。
【0031】
本実施形態の蒸気タービンブレード10では、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在する全てのドロップレット4の密度を1000個/mm2以内とすることにより、侵食の起点が減少する。これにより、仮に、一部のドロップレット4が欠落してその周囲が侵食された場合でも、その他のドロップレット4並びにその周囲には影響しないと考えられる。従って、セラミック硬質皮膜3の表面3aにおける全体的な耐ドレンエロージョン性が低下するのを防止することができる。
また、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在する平均粒径が1μm以下のドロップレット4の密度を550個/mm2以内とすることにより、図4(a)〜(c)の模式図に示すように、粒径が100〜200μmのドレン50がドロップレット4に衝突した際の、ドロップレット4に作用する単位面積あたりの応力が緩和されると考えられる。これにより、ドロップレット4がセラミック硬質皮膜3の表面3aから欠落するのが抑制される。従って、セラミック硬質皮膜3の表面3aにおける侵食の起点が減少し、耐ドレンエロージョン性が低下するのを防止することができる。
【0032】
本発明に係る蒸気タービンブレード10を、図1に示すような蒸気タービン40に取り付けた際に、セラミック硬質皮膜3の表面3aにおいてドロップレット4の欠落が抑制されるメカニズムについて、図4(a)〜(c)の模式図を参照しながら、以下に説明する。同様に、図4(a)〜(c)を参照しながら、ドロップレット4が欠落した場合であってもドレンエロージョンの拡大が抑制されるメカニズムについて、以下に説明する。
【0033】
蒸気タービン40のタービン41に蒸気が噴射された際、図4(a)に示すように、まず、概ね100〜200μmの径を有するドレン50がセラミック硬質皮膜3の表面3aに衝突する。この際、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4は、上述のように、主として小径のものであるとともに低密度であるため、ドロップレット4に作用する単位面積あたりの応力が小さなものとなる。このため、図4(b)に示すように、ドロップレット4が欠落せず、セラミック硬質皮膜3の表面3a上に残留する。また、図4(c)に示すように、仮に、一部のドロップレット4が欠落した場合であっても、その部分に生じる溝3bは小径であるため、この溝3bを基点にドレンエロージョンが大きく拡大することが無い。また、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4の密度が抑制されているので、ドロップレット4が欠落した場合でも、相互作用によってドレンエロージョンが拡大するのを抑制することが可能となる。
【0034】
なお、ドロップレット4の粒径や数は、例えば、図5に示すように(図3の断面図も参照)、セラミック硬質皮膜3の表面3aを、電子顕微鏡を用いて300倍(視野0.42mm×0.316mm)で任意の視野の撮影を行い、これをA4サイズ程度に拡大した後、カウントして各任意の視野における平均を求めることによって計測できる。
また、セラミック硬質皮膜3の表面3aの耐ドレンエロージョン性については、例えば、キャビテーション・エロージョン試験によって評価することができる。この場合、例えば、時間を6Hr程度として試験を行った後のエロージョン量(重量減少量)を測定することで評価が可能である。
【0035】
『蒸気タービンブレードの製造方法』
以下に、本実施形態の蒸気タービンブレード(回転機械用の部品)10の製造方法について、主に図6を参照しながら詳述する。図6は、基材1の表面1a上に、中間層2並びにセラミック硬質皮膜3を形成する際に用いられる成膜装置の一例を示す模式図である。
本実施形態では、図3に示すような蒸気タービンブレード10の積層構造に備えられるセラミック硬質皮膜3を、図6に示すような成膜装置60を用いて成膜する方法を例に挙げて説明する。
【0036】
本発明に係る蒸気タービンブレードの製造方法は、上記構成の蒸気タービンブレード10を製造する際、基材1の表面1a上に、少なくとも、イオンプレーティング法、もしくはスパッタリング法によってセラミック硬質皮膜3を形成する方法である。また、本実施形態では、セラミック硬質皮膜3を、中空陰極式のイオンプレーティング法で形成するとともに、該イオンプレーティング法による成膜条件として、コーティング材料64(蒸発源)の蒸発面の面積あたりでのプラズマガン65の電子線66の出力である溶融パワー(P1)を550〜980(W/cm2)の範囲とし、集束コイル70の表面積あたりでの電磁出力である集束パワー(P2)を80〜150(W/cm2)の範囲とする方法を説明する。
【0037】
セラミック硬質皮膜の成膜方法としては、一般的なPVD法を用いることができるが、最も適した成膜方法の一つとして、材料を電子ビーム等によって溶融させ、蒸着するイオンプレーティング法が挙げられ、中でも、プラズマガンと集束コイルによってコーティング材料を溶融させて蒸着処理を行なう中空陰極式のイオンプレーティング法(HCD法:ホローカソード法:Hollow Cathode Discharge)を用いることが好ましい。このような方法においては、蒸着する材料を溶解させる際のプラズマガンの出力や、集束コイル出力を精密に制御することにより、本発明で規定するドロップレットの粒径及び密度を達成することが可能となる。
【0038】
図6に、中空陰極式のイオンプレーティング法を用いた成膜装置の一例を示す。この成膜装置60は、排気孔62から真空排気可能とされた真空容器61と、この真空容器61の内部に配され、コーティング材料64が収容されるルツボ63と、コーティング材料64を加熱蒸発するとともにイオン化して基板1の表面1a上に堆積させるための電子線66を放出するプラズマガン65と、電子線66をコーティング材料64に向けて集束させる集束コイル70と、基板1を加熱するためのヒータ67とが備えられ、概略構成されている。
また、図示例のように、通常、ルツボ63と基板1の間にはシャッター71が設けられ、不要なコーティング材料64の付着を防止できる構成とされており、さらに、基板1に、ルツボ63対して負の電圧(バイアス電圧)を印加するための直流バイアス電源を接続した構成とされている。またさらに、成膜装置60には、真空容器61内の残留ガス成分等を計測するための質量分析計72が設けられている。
【0039】
以下に、上記構成の成膜装置60を用いて製膜工程を実施する場合の手順の一例を説明する。
まず、真空容器61内に、13Crステンレス鋼(SUS410J1)からなる基板1を配置し、真空容器61内を5×10−5torr以下まで真空排気して減圧する。
次いで、基板1をヒータ67によって450〜550℃の温度まで加熱し、この温度で30分以上保持することで基板1を灼熱する。
【0040】
次いで、プラズマガン65及び集束コイル70の出力を適宜調整して、溶融パワーP1(W/cm2)及び集束パワーP2(W/cm2)を制御しながら、これらプラズマガン65及び集束コイル70を起動する。この際、シャッター71は閉じたままの状態とする。ここで、本発明において説明する溶融パワーP1(W/cm2)とは、プラズマガン65の電子線66の出力(W)を、ルツボ63に収容されたコーティング材料64の蒸発面の面積(cm2)で除した数値である。また、集束パワーP2(W/cm2)とは、集束コイル70の電磁出力(W)を、集束コイル70の表面積(cm2)で除した数値である。
【0041】
本発明においては、基板1上にコーティング材料64を蒸着させる前に、シャッター71を閉じた状態でプラズマガン65の出力を増加させ、溶融パワーP1を定格出力よりも5〜20%程度増加させた出力で10〜30分間保持した後、定格出力に戻してシャッター71を開放し、製膜処理を行なうことが好ましい。これにより、基板1の表面1a上にコーティング材料64を蒸着させる前に、予め、飛び出し易い粒子を取り出すことができるので、ドロップレットが低減でき、安定した膜を形成することができる。
【0042】
そして、シャッター71を開放することにより、コーティング材料64を基板1の表面1a上に堆積、蒸着させて成膜処理を行なう。この際、必要に応じて、基板1とルツボ63との間にバイアス電圧を印加しながら成膜処理を行なう。
【0043】
なお、上述した溶融パワーP1は、550〜980(W/cm2)の範囲とすることが好ましい。出力P1が上記範囲であれば、コーティング材料64を効率的且つ確実に溶解して取り出し、良好な膜質で成膜処理を行なうことが可能となる。また、溶融パワーP1を上記範囲とした場合の、集束パワーP2は、80〜150(mW/cm2)の範囲とすることが好ましい。
溶融パワーP1を上記範囲としたうえで、集束パワーP2をこのような範囲とし、これらP1、P2を精密に制御することにより、本発明で規定するドロップレットの粒径及び密度を達成することが可能となる。
【0044】
ここで溶融パワーP1が980(W/cm2)を超えると、パワーが強すぎて膜表面にドロップフィレットの大きな粒ができてしまう虞がある。一方、溶融パワーP1が550(W/cm2)未満だと、成膜レートが低くなり、生産性が低下する虞がある。
また、集束パワーP2は、上記範囲が好ましいが、この集束パワーP2が上記範囲を越える場合には、膜表面にドロップフィレットの大きな粒ができてしまう虞があり、集束パワーP2が上記範囲を下回ると、溶融パワーP1を精密に集束させるのが困難になる。
【0045】
また、成膜装置60を用いてTiNのような化合物をコーティングする場合には、例えば、コーティング材料64にTiを用いて蒸発させるとともに、導入口69から反応ガス(N2)を供給することにより、基板1の表面1a上にTiNを堆積させることができる。
【0046】
また、上述したようなHCD法を用いたセラミック硬質皮膜の成膜方法は、中間層の成膜処理においても何ら制限無く適用することが可能である。このような場合には、例えば、溶融パワーP1は、450〜550(W/cm2)の範囲とすることが好ましく、また、溶融パワーP1を上記範囲とした場合の、集束パワーP2は、80〜120(mW/cm2)の範囲とすることが好ましい。
【0047】
[蒸気タービンブレードの第2の実施形態]
以下に、本実施形態の蒸気タービンブレード11について、図7を参照しながら詳述する。なお、以下の説明において、第1の実施形態の蒸気タービンブレード10と同様の構成には共通の符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略する。
本実施形態の蒸気タービンブレード11は、基材1とセラミック硬質皮膜31との間に中間層が設けられていない点で、第1の実施形態の蒸気タービンブレード10とは異なる構成とされている。
【0048】
本実施形態の蒸気タービンブレード11は、基材1の表面1a上に形成される皮膜が、セラミック硬質皮膜31のみからなる単層膜とされている。このような単層膜構造を有するセラミック硬質皮膜31の膜厚は、5〜15μmの範囲とされていることが好ましい。セラミック硬質皮膜31の膜厚が上記範囲とされることで、セラミック硬質皮膜31の表面に存在するドロップレット4(図4を参照)の粒径及び密度を、上記第1の実施形態の蒸気タービンブレード10と同様の範囲で、適正且つ容易に制御出来る。
【0049】
なお、本実施形態の蒸気タービンブレード11に備えられる基材1及びセラミック硬質皮膜31としては、上記第1の実施形態の蒸気タービンブレード10に備えられる基材1及びセラミック硬質皮膜3と同様のものを用いることができる。また、基材1の表面1a上へのセラミック硬質皮膜31の成膜方法としても、第1の実施形態の蒸気タービンブレード10の場合と同様の方法を採用することが可能である。
本実施形態の蒸気タービンブレード11によれば、上記構成により、上記第1の実施形態の蒸気タービンブレード10と同様に、耐ドレンエロージョン性が向上する効果が得られる。
【0050】
なお、本実施形態においては、まず、基材1上にセラミック硬質皮膜31と同材料、例えばTiN等からなる中間層を形成し、その上にTiNからなるセラミック硬質皮膜31を形成することにより、結果として、図7に示すような単一材質膜とすることも可能である。この場合には、セラミック硬質皮膜31と同材料の中間層の作用により、第1の実施形態の蒸気タービンブレード10と同様にセラミック硬質皮膜31に発生する内部応力が緩和され、基材1とセラミック硬質皮膜3との間の密着性が向上する効果が得られる。
【0051】
[蒸気タービンブレードの第3の実施形態]
以下に、本実施形態の蒸気タービンブレード12について、図8を参照しながら詳述する。なお、以下の説明において、第1及び第2の実施形態の蒸気タービンブレード10、11と同様の構成には共通の符号を付与するとともに、その詳しい説明を省略する。
本実施形態の蒸気タービンブレード12は、基材1とセラミック硬質皮膜3との間に形成される中間層21が、CrN又はTiNからなる構成とされている点で、上記第1の実施形態の蒸気タービンブレード10とは異なる。
【0052】
本実施形態では、上記材質で中間層21を構成することにより、第1の実施形態の蒸気タービンブレード10と同様に、セラミック硬質皮膜3に発生する内部応力が効果的に緩和され、基材1とセラミック硬質皮膜3との間の密着性が良好となる。
また、中間層21及びセラミック硬質皮膜3の膜厚についても、上記第1の実施形態と同様、セラミック硬質皮膜3の膜厚が中間層21の膜厚よりも大きな寸法とされているとともに、セラミック硬質皮膜3と中間層21との合計の膜厚が5〜20μmの範囲とされていることが好ましい。セラミック硬質皮膜3と中間膜21の厚さが上記関係とされ、且つ、上記範囲の厚さとされることで、上記第1の実施形態と同様、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4の粒径及び密度を、適正な範囲で容易に制御できる。また、上記構成の積層膜とすることで、中間層21の残留応力も緩和され、基材1上に形成された皮膜全体の内部応力が、同一厚さの単層皮膜に比べて小さくなる。
【0053】
また、本実施形態のセラミック硬質皮膜3は、上記第1の実施形態と同様の皮膜であり、その材質や膜厚、成膜方法等は共通とすることができる。
また、上述のような中間層21を成膜する方法としても、第1の実施形態におけるセラミック硬質皮膜3と同様の成膜方法を、何ら制限無く適用することが可能である。
【0054】
[回転機械用の部品の他の例]
本発明においては、上述の蒸気タービンブレードと同様のセラミック硬質皮膜を基材の表面上に形成することにより、例えば、化学プラント等で用いられ、各種気体を圧縮するコンプレッサポンプ(圧縮機)に備えられるインペラや、ロータ等の回転機械用の部品を構成することが可能となる。
【0055】
本発明に係る回転機械用の部品の他の例としては、詳細な図示を省略するが、例えば、コンプレッサポンプのインペラを構成した場合には、該インペラの表面に、図3等に示すような蒸気タービンブレードと同様のセラミック硬質皮膜が設けられた構成とすることができる。これにより、気体がインペラに直接接触しても、上述の蒸気タービンブレードと同様、セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットが欠落するのを抑制できる。また、セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの一部が欠落して周囲にドレンエロージョンが生じた場合でも、他のドロップレットに影響が及ぶのを抑制できる。従って、全体的な耐ドレンエロージョン性が低下するのを抑制する効果が得られる。
【0056】
さらに、上述の蒸気タービンブレードと同様の中間層が、基材とセラミック硬質皮膜との間に設けられている構成とすれば、セラミック硬質皮膜に発生する内部応力を緩和し、基材とセラミック硬質皮膜との間の密着性をより高める効果が得られる点から、より好ましい。
【0057】
また、本発明に係る回転機械用の部品のセラミック硬質皮膜及び中間層は、上記蒸気タービンブレードと同様の皮膜であることから、その材質や膜厚の他、成膜方法等の製造工程も共通とすることが可能である。
例えば、上述のようなコンプレッサポンプのインペラ表面にセラミック硬質皮膜を形成する方法としてHCD法を採用し、上記同様の条件で基材の表面上にセラミック硬質皮膜を形成することにより、該セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの粒径及び密度を、上記同様の適正範囲に制御することが可能となる。
【0058】
以上説明したように、本発明に係る蒸気タービンブレード(回転機械用の部品)によれば、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4の密度を1000個/mm2以内とし、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレット4の密度を550個/mm2以内とすることにより、ドレンエロージョンの発生起点が少なくなるので、水蒸気と直接接触する環境下における耐ドレンエロージョン性が向上する。従って、耐ドレンエロージョン性に優れ、安価で高寿命な蒸気タービンブレードが実現できる。
【0059】
また、本発明に係る蒸気タービンブレードの製造方法(回転機械用の部品の製造方法)によれば、上記構成の蒸気タービンブレードを製造する際、基材1の表面1a上に、少なくとも、イオンプレーティング法、もしくはスパッタリング法によってセラミック硬質皮膜3を形成する方法とすることにより、セラミック硬質皮膜3の表面3aに存在するドロップレット4の粒径及び密度を小さくすることが可能となる。従って、耐ドレンエロージョン性に優れ、安価で高寿命な蒸気タービンブレードを、高い生産効率で製造することが可能となる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を示して、本発明の回転機械用の部品及びその製造方法を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものでは無い。
図9〜図12は、本発明の実施例について説明する模式図であり、図9はセラミック硬質皮膜の表面におけるドロップレットの粒径及び個数の測定方法を示す顕微鏡写真図、図10はセラミック硬質皮膜の表面におけるドロップレットの個数測定結果を示すグラフ、図11は耐ドレンエロージョン性評価のための試験装置を示す概略図、図12は耐ドレンエロージョン性の評価結果を示すグラフである。
【0061】
本実施例では、まず、基材上に、HCD法(Hollow Cathode Discharge:中空陰極放電)を用いたイオンプレーティング法で、下記表1に示すような各成膜条件で中間層及びセラミック硬質皮膜を順次成膜することにより、実施例1〜4のサンプルを作製した。また、基材上に、HCD法あるいはAIP法(Arc Ion Plating:アークイオンプレーティング)を用いて(下記表3も参照)、下記表2に示すような各成膜条件で中間層及びセラミック硬質皮膜を順次成膜することにより、比較例1〜4のサンプルを作製した。そして、これらサンプルについて、以下に説明する各評価試験を行った。
【0062】
[実施例1〜4の試験片の作製]
まず、基材1として、13Crステンレス鋼(SUS410J1)からなる基材を準備した。そして、図6に示すような成膜装置60を使用し、以下の手順で、基材1の表面1a上に、中間層及びセラミック硬質皮膜を順次成膜した。
まず、基板1を真空容器61内に配置し、真空容器61内を5×10−5torr以下まで真空排気して減圧した。次に、基板1を、ヒータ67によって450〜550℃の温度まで加熱し、この温度で30分以上保持して基板1を灼熱状態とした。
また、ルツボ63には、中間層2の成膜時は、該中間層2の材料となるコーティング材料64としてCrを収容し、その上のセラミック硬質皮膜3の成膜時は、該セラミック硬質皮膜3の材料となるコーティング材料としてTiを収容した。
【0063】
次に、シャッター71を閉じた状態で、プラズマガン65及び集束コイル70の出力を適宜調整し、溶融パワーP1(W/cm2)及び集束パワーP2(W/cm2)を、下記表1に示す数値に制御しながら、これらプラズマガン65及び集束コイル70を起動した。ここで、本実施例で説明する溶融パワーP1(W/cm2)は、プラズマガン65の電子線66出力(W)をルツボ63に収容されたコーティング材料64の蒸発面の面積(cm2)で除した数値であり、また、集束パワーP2(W/cm2)は、集束コイル70の電磁出力(W)を集束コイル70の表面積(cm2)で除した数値である。
【0064】
そして、シャッター71を閉じた状態でプラズマガン65の出力を増加させ、溶融パワーP1を定格出力よりも5〜20%程度増加させた出力で10〜30分間保持し、予め、コーティング材料64中における飛び出し易い粒子を取り出しておいた。
次に、溶融パワーP1を定格出力に戻してシャッター71を開放し、基板1の表面1a上にコーティング材料64(この場合はCr)を蒸着、堆積させることにより、まず、Crからなる中間層2を成膜した。
【0065】
次いで、ルツボ63に収容するコーティング材料64をTiに変更し、また、各成膜条件を下記表1に示すような数値として、上記手順で成膜したCrからなる中間層2上に、TiNからなるセラミック硬質皮膜3を、上記同様の手順によって成膜した。なお、TiNからなるセラミック硬質皮膜3を成膜する際は、コーティング材料64(この場合はTi)を蒸発させながら、導入口69から反応ガス(N2)を供給した。
【0066】
なお、中間層2及びセラミック硬質皮膜3の成膜処理においては、必要に応じて、基板1とルツボ63との間に、下記表1に示す数値のバイアス電圧を印加した。
また、成膜前のプラズマガン65及びコーティング材料64の溶解安定化のため、出力P1を標準値の5〜20%増しとして数分間の動作を行い、真空容器61に接続された質量分析計72により、H2O並びにO2の各分圧の時間変化を測定した。
【0067】
上記手順により、下記表1に示す各条件で基板1の表面1a上に、中間層2として膜厚が3μmのCrを成膜し、その上に、セラミック硬質皮膜3として膜厚が10μmのTiNを成膜することにより、実施例1〜4の4種の試験片を各々作製した。
【0068】
【表1】
【0069】
[比較例1〜4の試験片の作製]
上記実施例1〜4と同様、13Crステンレス鋼(SUS410J1)からなる基材を準備し、下記表2に示す各条件で、以下の手順で、基材上に中間層及び硬質皮膜を順次成膜した。
まず、比較例1として、HCD法により、下記表2に示す各成膜条件で基材上に中間層及び硬質皮膜を順次成膜し、試験片を作製した。これは、上述した特許文献1(特公平8−30264号公報)において開示されている条件と同様の成膜条件である。
また、比較例2〜4として、AIP法により、下記表2に示す各成膜条件で基材上に中間層及び硬質皮膜を順次成膜し、各試験片を作製した。AIP法は、工具等に適用されている硬質皮膜の成膜方法の一つであり、特に、密着力に優れた皮膜を成膜することができる方法である(AIP法による成膜方法については、特許第3633837号の段落0059〜0065等も参照)。また、比較例2〜4の試験片を作製する際は、成膜条件としては、通常の工具等において適用されているTiNの成膜条件と同様の条件とし、バイアス電圧を変更して成膜処理することにより、3種類の試験片とした。
【0070】
[評価試験項目]
上記手順によって作製した実施例1〜4及び比較例1〜4の試験片について、以下に説明するような項目の各種評価試験を実施し、結果を下記表3に示した。
【0071】
「ドロップレットの粒径及び密度の測定」
ドロップレットの粒径及び数量(密度)は、図9(a)、(b)の顕微鏡写真図に示すように、試験片の表面を、走査型電子顕微鏡を用いて300倍(視野0.42mm×0.316mm)で任意の視野で撮影し、これをA4サイズに拡大した後、カウントして各任意の視野における平均を求めて計測した。また、この際、「1μm以下」、「1μm超5μm以下」、「5μm超10μm以下」、「10μm超」の4水準で各々ドロップレットの数量をカウントし、その平均を求めて1mm2あたりの数量に換算することによって密度(個/mm2)を求め、結果を図10のグラフ及び下記表1に示した。
【0072】
「耐ドレンエロージョン性の評価」
各試験片の表面に形成された皮膜の耐ドレンエロージョン性については、ASTM G32−77に準じ、キャビテーション・エロージョン試験によって評価した。
図11(a)に、キャビテーション・エロージョン試験に用いた各実施例及び比較例の試験片Aの形状並びに寸法値を示す。図11(a)に示すように、各試験片Aにおける皮膜の形成範囲は、15.9mmの平面部と、ネジ部を除く7mmの周方向とした。
図11(b)に、本実施例で用いたキャビテーション・エロージョン試験装置80のフローシート図を示す。本実施例においては、超音波発信器86にて振動子81を発振させ,Ti−6Al−4V合金製拡大ホーン82によって振幅を拡大させて、ホーン先端に取付けた試験片Aを振動させる方法で評価試験を行った。この際、試験片Aの先端を2〜3mm程度、試験片液85に浸漬しながら振動させて気泡を発生させ、この、気泡が崩壊する際の衝撃圧力や液ジェットにより、エロージョンを発生させた。また、この際の試験環境としては、イオン交換水(室温)を用いて、繰返し速度:18.5KHz、試験片A先端の振幅:25μmで、最長6hまで実施する条件とした。
そして、上記手順のキャビテーション・エロージョン試験を行った後、試験片Aの重量減少量(エロージョン量)を電子天秤(精度:0.1mg)によって測定し、この結果を図12のグラフ及び下記表3に示した。
【0073】
表2に、各実施例及び比較例における各成膜条件の一覧を示し、表3に、各評価試験における結果の一覧を示す。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
[評価結果]
表3に示すように、本発明で規定する条件でセラミック硬質皮膜を形成し、該セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの粒径及び密度が本発明で規定する範囲とされた実施例1〜4の試験片は、セラミック硬質皮膜の表面における粒径dが1μm以下のドロップレットの平均密度が550個/mm2以内であった(図9(a)に示す顕微鏡写真図を参照)。また、セラミック硬質皮膜の表面における全てのドロップレットの密度も、各実施例において1000個/mm2以内であり、エロージョン量が少なく、耐ドレンエロージョン性に優れることが確認された。
【0077】
これに対し、実施例1〜4と同様のHCD法を用い、従来の条件で基材上に硬質皮膜を形成し、該硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの粒径や密度が本発明の規定範囲外とされた比較例1の試験片は、硬質皮膜の表面において、粒径が1μm以下のドロップレットの平均密度が1380個/mm2超と非常に高いことから、耐ドレンエロージョン性が劣っている(図9(b)に示す顕微鏡写真図を参照)。
【0078】
また、比較例2〜4の試験片は、工具の分野で実績のあるAIP法によって基材上に中間層及び硬質皮膜を成膜して作製したものであるが、全体的にドロップレットの数量が多く、耐ドレンエロージョン性についても、上記実施例1〜4の試験片に対して大きく劣ることがわかる。
【0079】
上述のように、実施例1〜4の試験片は、工具の分野において従来公知の方法であるAIP法で作製した試験片と比較しても、セラミック硬質皮膜の表面における粒径及び密度が本発明で規定する範囲とされていることにより、良好な耐ドレンエロージョン性が得られることが確認された。
【0080】
以上説明した各評価試験の結果により、本発明に係る回転機械用の部品が、気体と直接接触する環境下においてドレンエロージョンが発生するのが抑制され、耐ドレンエロージョン性に優れていることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0081】
1…基材、1a…表面(基材)、2…中間層、3、31…セラミック硬質皮膜、3a、31a…表面(セラミック硬質皮膜)、4…ドロップレット、10、11、12…蒸気タービンブレード(回転機械用部品)、60…成膜装置、63…ルツボ、64…コーティング材料(蒸発源)、65…プラズマガン、66…電子線、70…集束コイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面上に、少なくともセラミック硬質皮膜が形成されてなり、該セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの密度が1000個/mm2以内とされており、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレットの密度が550個/mm2以内とされていることを特徴とする回転機械用の部品。
【請求項2】
前記セラミック硬質皮膜が、TiN、CrN、TiAlN、TiC、TiCN、ZrNの内の少なくとも1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の回転機械用の部品。
【請求項3】
前記基材と前記セラミック硬質皮膜との間に中間層が形成されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転機械用の部品。
【請求項4】
前記中間層が、Cr又はTiからなることを特徴とする請求項3に記載の回転機械用の部品。
【請求項5】
前記中間層が、CrN又はTiNからなることを特徴とする請求項3に記載の回転機械用の部品。
【請求項6】
前記セラミック硬質皮膜の膜厚が5〜15μmの範囲とされていることを特徴する請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の回転機械用の部品。
【請求項7】
前記セラミック硬質皮膜の膜厚が、前記中間層の膜厚よりも大きくされているとともに、前記セラミック硬質皮膜と前記中間層との合計の膜厚が5〜20μmの範囲とされていることを特徴する請求項3〜請求項6の何れか1項に記載の回転機械用の部品。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の回転機械用の部品を製造する方法であって、
基材の表面上に、少なくとも、イオンプレーティング法、もしくはスパッタリング法によってセラミック硬質皮膜を形成することを特徴とする回転機械用の部品の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の回転機械用の部品が蒸気タービンブレードであり、該蒸気タービンブレードが備えられてなることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項10】
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の回転機械用の部品がインペラであり、該インペラが備えられてなることを特徴とする圧縮機。
【請求項1】
基材の表面上に、少なくともセラミック硬質皮膜が形成されてなり、該セラミック硬質皮膜の表面に存在するドロップレットの密度が1000個/mm2以内とされており、且つ、平均粒径が1μm以下のドロップレットの密度が550個/mm2以内とされていることを特徴とする回転機械用の部品。
【請求項2】
前記セラミック硬質皮膜が、TiN、CrN、TiAlN、TiC、TiCN、ZrNの内の少なくとも1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載の回転機械用の部品。
【請求項3】
前記基材と前記セラミック硬質皮膜との間に中間層が形成されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の回転機械用の部品。
【請求項4】
前記中間層が、Cr又はTiからなることを特徴とする請求項3に記載の回転機械用の部品。
【請求項5】
前記中間層が、CrN又はTiNからなることを特徴とする請求項3に記載の回転機械用の部品。
【請求項6】
前記セラミック硬質皮膜の膜厚が5〜15μmの範囲とされていることを特徴する請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の回転機械用の部品。
【請求項7】
前記セラミック硬質皮膜の膜厚が、前記中間層の膜厚よりも大きくされているとともに、前記セラミック硬質皮膜と前記中間層との合計の膜厚が5〜20μmの範囲とされていることを特徴する請求項3〜請求項6の何れか1項に記載の回転機械用の部品。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の回転機械用の部品を製造する方法であって、
基材の表面上に、少なくとも、イオンプレーティング法、もしくはスパッタリング法によってセラミック硬質皮膜を形成することを特徴とする回転機械用の部品の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の回転機械用の部品が蒸気タービンブレードであり、該蒸気タービンブレードが備えられてなることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項10】
請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の回転機械用の部品がインペラであり、該インペラが備えられてなることを特徴とする圧縮機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図5】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図5】
【図14】
【公開番号】特開2010−59534(P2010−59534A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−13593(P2009−13593)
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月23日(2009.1.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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