説明

回転運動変換装置

【課題】
回転ローラの半径方向の変形、消耗を抑制しつつ、摩擦係数を高めることができるようにして、直動部材の直動位置の計測精度を向上させる。
【解決手段】
回転ローラ110のうち、少なくともロッド2に接触する部分の一部110dを、回転ローラ110の回転中心軸110cとロッド202の表面との距離を一定値dに保持することができる程度に硬い材料(たとえばS45C)で構成し、回転ローラ110のうち、少なくともロッド2に接触する部分の他の一部114を、回転ローラ110とロッド202との間で滑りが生じない程度に摩擦係数が高い材料(NBR等の弾性部材)で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動部材の直線運動を回転運動に変換する回転運動変換装置に関し、特に、シリンダのロッドの直動に応じて、回転ローラの回転させ、回転ローラの回転量を、シリンダロッドの直動位置として計測する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、回転センサの構造を概念的に示している。
【0003】
図1に示すように、回転軸1000は、固定部材2000にベアリング等を介して回転自在に支持されている。回転軸1000の一端には回転体3000が設けられている。回転体3000には、回転位置に応じて周期的に磁束密度が変化するように、磁石4000が配置されている。回転軸1000の他端には継手等を介して回転ローラ6000が設けられている。回転ローラ1000は、シリンダのロッド7000の表面に接触するように設けられている。回転ローラ1000は、ロッド7000の直動に応じて回転するように設けられている。
【0004】
回転軸1000の軸方向にあって、回転体3000に対向する位置には、磁石4000によって生成される磁束密度を検出し、磁束密度に応じた電気信号を出力する磁気センサ部5000が設けられている。磁気センサ部5000で検出された電気信号は、後段の演算処理部で、回転軸1000の回転量、つまりシリンダのロッド7000の変位量に変換される。
【0005】
このように回転ローラをシリンダのロッドの表面に接触させ、回転ローラの回転量をシリンダロッドの変位量として計測する回転センサは、種々特許出願されて公知となっている。
【0006】
下記特許文献1には、バネによって、回転ローラをシリンダのロッドに圧接させるという発明が記載されている。
【0007】
下記特許文献2には、カム機構によって、回転ローラをシリンダのロッドに圧接させるという発明が記載されている。
【0008】
下記特許文献3には、シリンダのロッドと回転ローラとの間に塵埃などの異物が挟まって回転ローラが回転しなくなった場合に、ロッドの移動を停止させるとともに警報を発するという発明が記載されている。
【特許文献1】実開平5−75603号公報
【特許文献2】実開昭60−28607号公報
【特許文献3】実開平2−117406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
シリンダのロッドの変位量の計測精度を向上させるには、回転ローラが容易に変形したり消耗したりせずに、回転半径が一定に保持されることが必要である。また、シリンダの変位に応じて忠実に回転ローラが回転し、スリップしないことが必要である。
【0010】
このため回転ローラは、容易に変形、消耗しないように、硬い材質、たとえばS45Cで構成されている。また、上記特許文献1、2に示されるように、バネやカム機構等によって回転ローラをロッドに圧接させることで、摩擦力を発生させて、スリップを防止しようとしている。
【0011】
しかし、シリンダのロッド表面は、通常クロムメッキ処理が施されており、回転ローラ、シリンダロッド間の摩擦係数は低い。このため、たとえばバネ等によって回転ローラをシリンダのロッド表面に押圧させていても、スリップが生じ、シリンダの変位の計測誤差が発生することがある。
【0012】
そこで、摩擦係数を高くするために、回転ローラを、NBR等の弾性部材で構成することが考えられるが、そうすると、摩擦係数は高くなりスリップは防止されるものの、回転ローラが変形し、それによる計測精度誤差が発生する。
【0013】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、回転ローラの半径方向の変形、消耗を抑制しつつ、摩擦係数を高めることができるようにして、直動部材の変位の計測精度を向上させることを解決課題とするものである。
【0014】
なお、上記特許文献1、2には、回転ローラを構成する材質、摩擦係数、回転ローラの表面の構成については特に記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1発明は、
直動部材(202)と、
前記直動部材(202)の表面に接触し、前記直動部材(202)の変位に応じて回転するように設けられた回転ローラ(110)と、
前記回転ローラ(110)を前記直動部材(202)の表面に押圧する押圧部材(120)と
が備えられ、
回転ローラ(110)のうち、少なくとも直動部材(202)に接触する部分の一部(110d)は、
回転ローラ(110)の回転中心軸(110c)と直動部材(202)の表面との距離を一定(d)に保持することができる程度に硬い材料で構成され、
回転ローラ(110)のうち、少なくとも直動部材(202)に接触する部分の他の一部(114)は、
回転ローラ(110)と直動部材(202)との間で滑りが生じない程度に摩擦係数が高い材料で構成された、直線運動を回転運動に変換する回転運動変換装置であることを特徴とする。
【0016】
第2発明は、
直動部材(202)と、
前記直動部材(202)の表面に接触し、前記直動部材(202)の変位に応じて回転するように設けられた回転ローラ(110)と、
前記回転ローラ(110)を前記直動部材(202)の表面に押圧する押圧部材(120)と
が備えられ、
回転ローラ(110)のうち、少なくとも直動部材(202)に接触する部分の一部(114)は、回転ローラ(110)の他の接触部分(110d)よりも、摩擦係数が高い材料で構成された、直線運動を回転運動に変換する回転運動変換装置であることを特徴とする。
【0017】
第3発明は、第1発明または第2発明において、
前記回転ローラ(110)の回転量を検出する回転センサ部(130)
が更に設けられたことを特徴とする。
【0018】
第4発明は、第1発明または第2発明または第3発明において、
前記直動部材(202)の直動方向の各位置にあって、回転ローラ(110)の前後位置に、ダストシール(205b、208)が更に設けられたことを特徴とする。
【0019】
すなわち、本発明を図面に即して具体的に説明すると、図2(a)に示すように、回転ローラ110のうち、少なくともロッド2に接触する部分の一部110dを、回転ローラ110の回転中心軸110cとロッド202の表面との距離を一定値dに保持することができる程度に硬い材料(たとえばS45C)で構成し、回転ローラ110のうち、少なくともロッド2に接触する部分の他の一部114を、回転ローラ110とロッド202との間で滑りが生じない程度に摩擦係数が高い材料(NBR等の弾性部材)で構成するようにしている(第1発明)。
【0020】
別の見方で本発明を説明すれば、回転ローラ110のうち、少なくともロッド2に接触する部分の一部114は、回転ローラ110の他の接触部分110d(S45C)よりも、摩擦係数が高い材料(NBR等の弾性部材)で構成するようにしている(第2発明)。
【0021】
回転ローラ110は、押圧部材120のバネ122のバネ力によって、ロッド202の表面に押圧される。このため回転ローラ110のうち、ロッド202との接触面では、弾性部材114が変形し撓み、凸部110dがロッド202の表面に接触し回転中心軸110cからロッド202表面までの距離が、回転ローラ110の回転半径dとほぼ同じ距離になる。
【0022】
回転ローラ110は、バネ力によってロッド202の表面に押圧されているため、弾性部材114がロッド202の表面と接触する面で、バネ力と弾性部材114の摩擦係数に応じた摩擦力が発生する。ここで、弾性部材114は、回転ローラ110(回転ローラ本体)の材質(S45C)よりも摩擦係数が大きいため、スリップを生じることなく、ロッド202の直動運動を、回転ローラ110の回転運動に忠実に変換する。
【0023】
一方、凸部110dについてもバネ力によってロッド202の表面に接触するが、凸部110dは、回転ローラ110(回転ローラ本体)の材質(S45C)で構成されているため、硬く、直動するロッド表面に押圧されても、容易に変形したり、消耗したりすることがない。このため回転中心軸110cから回転ローラ表面までの距離は、一定値d、つまり当初の設計値である回転ローラ110の回転半径dに保持される。
【0024】
このため回転ローラ110のスリップによる誤差を招くことがなく、また、回転ローラ110が半径方向に変形したり摩耗したりして実際の回転半径が設計上の回転半径dからずれてしまうことによる演算誤差も生じることない。これによりロッド202の変位量(ストローク)は、極めて精度よく計測される。
【0025】
ただし、本発明としては、回転センサ部130は必ずしも必須ではない(第1発明、第2発明)。
【0026】
すなわち、ロッド202のような直動部材の直動運動を、回転ローラ110の回転運動に変換する運動方向変換機構であれば、回転センサ部130のようなセンサがなくてもよい。このように構成した場合であっても、回転ローラ110は、回転半径dを保持しつつスリップを生じることなく、直動部材の直動運動に応じて忠実に回転するため、かかる機構の信頼性が高められるという効果が得られる。
【0027】
特に第3発明では、回転ローラ110の回転量を検出する回転センサ部130が設けられ、計測精度が高められるという上述した効果が得られる。
【0028】
第4発明では、ロッド202の直動方向の各位置にあって、回転ローラ110の前後位置に、ダストシール205b、208が設けられる。これにより回転ローラ110の初期なじみ時に発生する摩耗粉等がロッドシール205aに侵入して油漏れが発生することを防止することができる。また、ダストシール205b、208によって、回転センサ100が囲まれる空間が形成されるため、ロッドシール205aに影響を及ぼすことなく、回転センサ100内に油脂類を封入することができ、耐久性の向上を図れ、防錆等の効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明に係る回転運動変換装置の実施の形態について説明する。
【0030】
図2(a)は、実施形態の回転センサ100の構成を示している。また、図3(a)は、シリンダ200と回転センサ100の位置関係を示している。図3(a)のA−A断面が図2(a)に相当する。図3(a)の部分拡大図を図3(b)に示す。
【0031】
図3に示すように、シリンダ200には、ピストン201が摺動自在に設けられている。ピストン201には、ロッド202が取り付けられている。ロッド202は、シリンダヘッド203に摺動自在に設けられている。シリンダヘッド203とピストン201とシリンダ内壁とによって画成された室が、シリンダヘッド側油室204を構成する。シリンダヘッド203には、ロッド202との隙間を密封し、塵埃等のコンタミがシリンダヘッド側油室204に入り込まないようにするロッドシール205a、ダストシール205bが設けられている。
【0032】
シリンダ200には、油圧ポート206が形成されている。油圧ポート206を介して、シリンダヘッド側油室204に圧油が供給され、若しくは同油室204から油圧ポート206を介して圧油が排出される。シリンダヘッド側油室204に圧油が供給されることによって、ロッド202が縮退し、シリンダヘッド側油室204から圧油が排出されることによって、ロッド202が伸張する。すなわち、ロッド202は図中左右方向に変位する。
【0033】
シリンダヘッド側油室204の外部にあって、シリンダヘッド203に密接した場所には、回転センサ100を覆い、内部に収容するケース207が形成されている。ケース207は、シリンダヘッド203にボルト等によって締結等されて、シリンダヘッド203に固定されている。すなわち、ケース207(回転センサ100)は、シリンダ200に簡易に取り付けたり、取り外すことができる。
【0034】
回転センサ100を構成する後述する回転ローラ110は、その表面がロッド202の表面に接触し、ロッド202の変位に応じて回転自在に設けられている。すなわち、回転ローラ110によって、ロッド202の直動が回転運動に変換される。
【0035】
回転ローラ110は、その回転中心軸110cが、ロッド202の直動方向に対して、直交(紙面の背後方向、看者方向)するように配置されている。ケース207には、ロッド202との隙間を密封し、塵埃等のコンタミが回転ローラ110とロッド202との間に入り込まないようにするダストシール208が設けられている。これにより回転ローラ110とロッド202との間に塵埃等が入り込んで、回転ローラ110が動作不良となるような事態を回避することができる。
【0036】
このように本実施形態では、ロッド202の直動方向の各位置にあって、回転ローラ110の前後位置に、ダストシール205b、208が設けられている。これにより回転ローラ110の初期なじみ時に発生する摩耗粉等がロッドシール205aに侵入して油漏れが発生することを防止することができる。また、ダストシール205b、208によって、回転センサ100が囲まれる空間が形成されるため、ロッドシール205aに影響を及ぼすことなく、回転センサ100内に油脂類を封入することができ、耐久性の向上を図れ、防錆等の効果を高めることができる。
【0037】
つぎに、図2(a)を中心に説明すると、同図2(a)に示すように、回転センサ100は、大きくは、前述したように、ロッド202の表面に接触し、ロッド202の変位動に応じて回転するように設けられた回転ローラ110と、回転ローラ110をロッド202の表面に押圧する押圧部材120と、回転ローラ110の回転量を検出する回転センサ部130とから構成されている。
【0038】
押圧部材120は、ホルダ121とバネ122とからなる。ホルダ121は、ケース207に、ロッド202の表面に向かう方向および同表面から離れる方向に摺動自在に、ケース207に嵌装されている。バネ122は、ホルダ121がロッド202の表面に向かう方向にバネ力が付与されるように、両端がそれぞれケース207の内壁とホルダ121との間に配置されている。ホルダ121には、回転ローラ110の回転軸111が、ベアリング123a、123bを介して回転自在に支持されている。なお、図2(b)は、図2(a)のB−B断面を示している。同図2(b)に示すように、ホルダ121には、ピン124が装着されており、ピン124は、ケース207に摺動自在に嵌装されている。
【0039】
よって、回転ローラ110は、バネ122のバネ力によって、ロッド202の表面に押圧される。
【0040】
回転センサ部130は、固定部材131と、メインシャフト(回転軸)132と、回転体133と、カバー134と、センサ部材135とからなる。
【0041】
固定部材131の周囲には、ネジ部136が形成されており、固定部材131はホルダ121に形成されたネジ穴121aにねじ込まれる。更に固定部材131は、Oリング137、ワッシャ138を介してナット140によってホルダ121に締結されている。
【0042】
メインシャフト132は、固定部材131の挿通孔131a内に、挿通されている。メインシャフト132は、固定部材131にベアリング(ローラベアリング)141、142を介して回転自在に挿通されている。
【0043】
メインシャフト132は、その中心軸132cが、回転ローラ110の回転中心軸と110cと軸芯を同じくするように、回転ローラ110に連結されている。メインシャフト132は、回転ローラ110と一体に回転するように、継手部143を介して回転ローラ110に連結されている。
【0044】
図2(c)は、継手部143を図2(a)の断面図で示している。同図2(c)に示すように、継手部143は、回転ローラ110の回転軸111の穴111aに嵌合されたスリーブ144と、メインシャフト132の断面長方形状の先端部132aとからなる。回転ローラ110のスリーブ144に、メインシャフト132の先端部132aがはめ込まれることにより、メインシャフト132は、回転ローラ110に対する相対回転方向の動きが規制されて、メインシャフト132は、回転ローラ110と一体になって回転する。
【0045】
回転体133は、メインシャフト132の他端に、嵌合されることによって固定されている。回転体133には、検出媒体である磁石145が設けられている。磁石145は、回転体133の回転、つまり回転ローラ110の回転に応じて、回転する。
【0046】
カバー134は、回転体133を内部に収容するように固定部材131に、かしめによって、Oリング146を介して、固定されている。
【0047】
センサ部材135は、磁石145によって生成される磁束密度を電気信号として検出する磁力センサであり、カバー134に装着されている。センサ部材135は、メインシャフト132の軸方向に沿って、磁石145から所定距離離間された位置に設けられている。
【0048】
検出媒体である磁石145は、回転体133の一回転、つまり回転ローラ110の一回転を一周期として、センサ部材135で検出される磁束密度が周期的に変動するような態様で、回転体133に装着されている。磁石145の着磁面の構成例、センサ部材135の配置例については、後述する。
【0049】
センサ部材135には、ハーネス150が電気的に接続されている。センサ部材135で検出された電気信号は、ハーネス150を介して、回転センサ100の外部に設けられた図示しない演算処理部に送られ、この演算処理部で、センサ部材135の電気信号が、回転ローラ110の回転量、つまりシリンダ200のロッド202の変位量(ストローク位置)に変換される。なお、センサ部材135は、たとえばホールICが使用される。
【0050】
図4は、回転ローラ110の回転角度と、センサ部材135で検出される電気信号(電圧)との関係を例示している。センサ部材135から出力される電圧の大きさから回転ローラ110の回転角度を計測することができる。また、センサ部材135から出力される電気信号(電圧)の1周期が繰り返される数をカウントすることで、回転ローラ110の回転数を計測することができる。そして、これら回転ローラ110の回転数と、回転ローラ110の回転角度とに基づいて、シリンダ200のロッド202の変位量(ストローク)が計測される。
【0051】
本実施形態では、検出媒体である磁石145とは、別に一対の磁石147、148が設けられている。
【0052】
一対の磁石147、148のうち、一方の磁石147は、固定部材131に設けられ、他方の磁石148は、回転体133の磁石147に対面する側に設けられている。なお、検出媒体である磁石145は、回転体133の磁石147が設けられた側とは反対側に設けられている。
【0053】
本実施形態では、一対の磁石147、148は、共に環状に形成されており、磁石の着磁面が、メインシャフト132の中心軸132cに対して直交する平面となるように、配置されている。検出媒体である磁石145は、円板状に形成されており、磁石の着磁面が、メインシャフト132の中心軸132cに対して直交する平面となるように、配置されている。
【0054】
一対の磁石147、148は、反発力を生じさせる同極同士(N極同士、S極同士)で構成されている。このため回転体133には、同極の磁石147、148同士の反発力が、メインシャフト132の軸方向に作用する。回転体133には、図2(a)中、右方向に、上記反発力が作用する。
【0055】
回転体133は、磁石147、148同士の反発力に抗して、支持部材としてのベアリング142によって支持されている。
【0056】
メインシャフト132は、回転ローラ110側の大径部132dと、回転体133側の小径部132eとからなり、小径部132eには、ベアリング(ローラベアリング)142が環装されている。回転体133には、図2(a)中、右方向に、一対の磁石147、148同士の反発力が作用するが、メインシャフト132の大径部132dと小径部132eとの段差がベアリング142に当接されていることによって、回転体133の図中右方向の動きが規制され、回転体133は、定位置に位置決めされる。このため回転体133に設けられた検出媒体の磁石145と、センサ部材135との距離が、一定に保持される。つまり、メインシャフト132と固定部材131との間のガタを無くすことにより、検出媒体としての磁石145とセンサ部材135との距離が一定に保持される。
【0057】
このように本実施形態によれば、検出媒体としての磁石145とセンサ部材135との距離が一定に保持されるため、センサ部材135の検出精度、つまり回転ローラ110の回転量、ロッド202の変位量の計測精度が向上する。
【0058】
(第1実施例)
上述したように、本実施例の回転センサ100は、ロッド202の直動を回転ローラ110の回転運動に変換し、その回転量を回転センサ部130で検出することを前提としている。したがって、回転ローラ110は、半径方向に容易に変形したり消耗したりせずに、回転半径が一定値に保持されることが、回転センサ部130の検出精度、ロッド202の変位量(ストローク)の計測精度を高める上で必要である。また、ロッド202の変位が回転ローラ110の回転運動に忠実に変換されスリップしないことが、回転センサ部130の検出精度、ロッド202の変位量(ストローク)の計測精度を高める上で必要である。
【0059】
そこで、本実施例では、図2(a)に示すように、回転ローラ110のうち、少なくともロッド2に接触する部分の一部110d(凸部)を、回転ローラ110の回転中心軸110cとロッド202の表面との距離を一定値dに保持することができる程度に硬い材料(たとえばS45C)で構成し、回転ローラ110のうち、少なくともロッド2に接触する部分の他の一部114を、回転ローラ110とロッド202との間で滑りが生じない程度に摩擦係数が高い材料(たとえばNBR等の弾性部材)で構成するようにしている。
【0060】
いいかえれば、回転ローラ110のうち、少なくともロッド2に接触する部分の一部114は、回転ローラ110の他の接触部分110d(S45C)よりも、摩擦係数が高い材料(NBR等の弾性部材)で構成するようにしている。
【0061】
すなわち、回転ローラ110の周方向には、円環状の溝112、113が形成されている。溝112と溝113の間は、回転中心軸110cから回転ローラ表面までの距離が、回転ローラ110の回転半径dに設定された凸部110dを構成している。ここで回転半径dとは、ロッド202の表面から回転ローラ110の回転中心軸110cまでの距離とみなされ、回転ローラ110の回転量をロッド202の変位量(ストローク)に変換する指標となるパラメータである。たとえば回転ローラ110が1回転したときのロッド202の直動量は、回転半径dを用いて、2πdとして計算される。
【0062】
溝112、113には、NBR等を材料とするチューブ状の弾性部材114、114が、全周にわたり嵌装される。回転ローラ110が押圧部材120によってロッド202の表面に押圧されていないフリーの状態では、回転中心軸110cから弾性部材114の最外周面までの距離d1は、回転ローラ110の回転半径dよりも僅かに大きな距離(d1>d)に設定されている。
【0063】
回転ローラ110は、押圧部材120のバネ122のバネ力によって、ロッド202の表面に押圧される。このため回転ローラ110のうち、ロッド202との接触面では、弾性部材114が変形し撓み、凸部110dがロッド202の表面に接触し回転中心軸110cからロッド202表面までの距離が、回転ローラ110の回転半径dとほぼ同じ距離になる。
【0064】
回転ローラ110は、バネ力によってロッド202の表面に押圧されているため、弾性部材114がロッド202の表面と接触する面で、バネ力と弾性部材114の摩擦係数に応じた摩擦力が発生する。ここで、弾性部材114は、回転ローラ110(回転ローラ本体)の材質(S45C)よりも摩擦係数が大きいため、スリップを生じることなく、ロッド202の直動運動を、回転ローラ110の回転運動に忠実に変換する。
【0065】
一方、凸部110dについてもバネ力によってロッド202の表面に接触するが、凸部110dは、回転ローラ110(回転ローラ本体)の材質(S45C)で構成されているため、硬く、直動するロッド表面に押圧されても、半径方向に容易に変形したり、消耗したりすることがない。このため回転中心軸110cから回転ローラ表面までの距離は、一定値d、つまり当初の設計値である回転ローラ110の回転半径dに保持される。
【0066】
このため回転ローラ110のスリップによる誤差を招くことがなく、また、回転ローラ110が変形したり摩耗したりして実際の回転半径が設計上の回転半径dからずれてしまうことによる演算誤差も生じることない。これによりロッド202の直動量(ストローク)は、極めて精度よく計測される。
【0067】
以下第1実施例の変形例について説明する。
【0068】
(第2実施例)
回転ローラ110のうち、ロッド202の表面に接触する面は、ロッド202の曲率半径に合わせた形状に形成してもよい。
【0069】
図5は、図2(a)に対応する回転ローラ110の断面図である。同じ機能ものには同じ符号を付して説明を省略する。なお、図5では、溝112の両側に、凸部110dが形成されている。同図5に示すように、凸部110dの表面は、ロッド202の曲率半径と同じ曲率半径をもつ形状に形成されている。このため回転ローラ110がロッド202に接触するときの接触面積が増加する。
【0070】
(第3実施例)
また、上述した説明では、ロッド202の表面に接触する凸部110dが、回転ローラ(本体)110と同じ材質であると説明したが、少なくともロッド202の表面に接触する部分が、硬い材料でありさえすればよい。
【0071】
たとえば、図6(a)に示すように、回転ローラ110のうち、ロッド202の表面に接触する部分の一部110eが、S45C等の硬い材質で構成され、他の表面接触部分の一部110fが、弾性部材114で構成される。上記接触部110e、110fを除いた回転ローラ110の他の部分については、硬い材料であっても柔らかい材料であってもよい。
【0072】
さらには、上記接触部110eに相当する部分を、材料そのものが持つ特性で硬くするのではなく、材料に対して表面処理を施すことで硬くしてもよい。たとえば高周波焼入れ、浸炭焼入れ、チッ化処理、タフトライド処理、溶射、DLC処理、ショットピーニング、メッキ等を施すことで、材料を硬くしてもよい。
【0073】
なお、図2(a)では、弾性部材114を、回転ローラ110の周方向に全周にわたり、設けるようにしているが、弾性部材114は、図6(b)に示すように、回転ローラ110の周方向に間欠的に設けてもよい。
【0074】
また、硬い部分である凸部110d、接触部110eについても、回転ローラ110の周方向に全周にたわり設けることは、必ずしも必須ではなく、凸部110d、接触部110eは、図6(c)に示すように、回転ローラ110の周方向に間欠的に設けてもよい。
【0075】
(第4実施例)
また、第1実施例〜第3実施例については、回転センサ部130の存在を前提として説明したが、本発明としては、回転センサ部130は必ずしも必須ではない。
【0076】
すなわち、ロッド202のような直動部材の直動運動を、回転ローラ110の回転運動に変換する運動方向変換機構であれば、回転センサ部130のようなセンサがなくても、第1実施例〜第3実施例を適用することができる。この発明によれば、回転ローラ110は、回転半径dを保持し、スリップを生じることなく直動部材の直動運動に応じて忠実に回転するため、運動方向変換機構の信頼性を高めることができる。
【0077】
なお、上述した各実施例では、検出媒体は磁石(磁力)であることを前提に説明したが、検出媒体は必ずしも磁石(磁力)である必要はなく、たとえば検出媒体を光とし、光センサで光を検出する構成にも本発明を適用することができる。たとえば、図2(a)、図6における検出媒体用磁石145を、発光部材に置き換えるとともに、センサ部材135を、光を検出するセンサ部材に置き換える実施も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は回転センサの構成を概念的に示す図である。
【図2】図2(a)、(b)、(c)は第1実施例の構成図である。
【図3】図3(a)、(b)はシリンダと回転センサとの関係を説明するために用いた断面図である。
【図4】図4は、回転ローラの回転角度と、センサ部材で検出される電気信号(電圧)との関係を例示した図である。
【図5】図5は第2実施例の構成を説明する図である。
【図6】図6(a)、(b)、(c)は第3実施例の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0079】
100 回転センサ 132 メインシャフト 133 回転体 135 センサ部材 142 ベアリング 145、147、148 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直動部材(202)と、
前記直動部材(202)の表面に接触し、前記直動部材(202)の変位に応じて回転するように設けられた回転ローラ(110)と、
前記回転ローラ(110)を前記直動部材(202)の表面に押圧する押圧部材(120)と
が備えられ、
回転ローラ(110)のうち、少なくとも直動部材(202)に接触する部分の一部(110d)は、
回転ローラ(110)の回転中心軸(110c)と直動部材(202)の表面との距離を一定(d)に保持することができる程度に硬い材料で構成され、
回転ローラ(110)のうち、少なくとも直動部材(202)に接触する部分の他の一部(114)は、
回転ローラ(110)と直動部材(202)との間で滑りが生じない程度に摩擦係数が高い材料で構成されていること
を特徴とする直線運動を回転運動に変換する回転運動変換装置。
【請求項2】
直動部材(202)と、
前記直動部材(202)の表面に接触し、前記直動部材(202)の変位に応じて回転するように設けられた回転ローラ(110)と、
前記回転ローラ(110)を前記直動部材(202)の表面に押圧する押圧部材(120)と
が備えられ、
回転ローラ(110)のうち、少なくとも直動部材(202)に接触する部分の一部(114)は、回転ローラ(110)の他の接触部分(110d)よりも、摩擦係数が高い材料で構成されていること
を特徴とする直線運動を回転運動に変換する回転運動変換装置。
【請求項3】
前記回転ローラ(110)の回転量を検出する回転センサ部(130)
が更に設けられた請求項1または2記載の回転運動変換装置。
【請求項4】
前記直動部材(202)の直動方向の各位置にあって、前記回転ローラ(110)の前後位置に、ダストシール(205b、208)
が更に設けられた請求項1または2または3記載の回転運動変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−258251(P2006−258251A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79659(P2005−79659)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000184632)小松ゼノア株式会社 (60)
【Fターム(参考)】