説明

固体撮像素子

【課題】 暗電流の抑制や受光部の入射光量の増大により、得られる画像データ画質を改善した固体撮像素子を提供する。
【解決手段】 固体撮像素子1は、半導体から成る基板10と、基板10中に形成され光電変換によって生じた電荷を蓄積する基板とは逆の導電型の半導体から成る受光部11と、基板10上に設けられる絶縁層12と、絶縁層12上に設けられ受光部11が蓄積する電荷と同じ極性の固定電荷を有する固定電荷層13と、固定電荷層13上に設けられる反射防止層14と、基板10中の受光部11と隣接する位置に設けられ受光部11から読み出された電荷が一時的に蓄積される電荷転送部15と、少なくとも電荷転送部15の直上に設けられる転送電極16と、を備える。反射防止層14は、受光部11の直上の領域内に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサに代表される固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDイメージセンサは、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサと比べて、ノイズが小さく高画質であるため、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラなどの撮像装置や、カメラ付き携帯電話機などの撮像機能を備えた様々な電子機器に搭載されている。CCDイメージセンサは、照射される光を受光部で光電変換することで電荷を生成し、生成された電荷を順次転送するとともに当該電荷による電位を増幅することで、画像データを生成する。
【0003】
近年、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの固体撮像素子において、画素の微細化が要請されている。しかしながら、画素を微細化すると、不可避的に受光部の直上における開口部(外部から光が入射する部分)の面積が小さくなる。そのため、受光部の入射光量が減少することで感度が低下し、得られる画像データのSN(Signal to Noise)比が小さく(悪く)なる。即ち、画像データの画質が劣化する。
【0004】
これについて、ノイズの原因になる暗電流を抑制するための構造や、受光部の入射光量を増大させるための構造など、得られる画像データの画質を改善するための固体撮像素子の構造が、種々提案されている。
【0005】
暗電流は、受光部が設けられた基板の表面に形成される準位から、電荷が供給されることで発生する。そこで、特許文献1では、基板の上方に負の固定電荷を有する層を設けて基板の表面近傍に正孔を蓄積させ、基板表面の準位から電子が供給されることを抑制することで暗電流を抑制する、裏面照射型のCMOSイメージセンサが提案されている。
【0006】
また、受光部の入射光量は、光が通過する受光部の直上部分の構造の影響を受ける。そこで、例えば特許文献2では、受光部の直上で、配線部間を埋め込むために設けられる絶縁体の屈折率を、酸化シリコンよりも大きくすることで、受光部の入射光量を増大させたCMOSイメージセンサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−206022号公報
【特許文献2】特開2010−177391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1及び2で提案されるようなCMOSイメージセンサに限られず、CCDイメージセンサなどの他の構造の固体撮像素子においても、暗電流の抑制や受光部の入射光量の増大を図ると、得られる画像データの画質を改善することができるため、好ましい。
【0009】
そこで、本発明は、暗電流の抑制や受光部の入射光量の増大により、得られる画像データの画質を改善した固体撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、半導体から成る基板と、
前記基板中に形成され、光電変換によって生じた電荷を蓄積する、前記基板とは逆の導電型の半導体から成る受光部と、
前記基板上に設けられる絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられ、前記受光部が蓄積する前記電荷と同じ極性の固定電荷を有する固定電荷層と、
前記固定電荷層上に設けられる反射防止層と、
前記基板中の前記受光部と隣接する位置に設けられ、前記受光部から読み出された前記電荷が一時的に蓄積される電荷転送部と、
少なくとも前記電荷転送部の直上に設けられる転送電極と、を備え、
前記反射防止層が、前記受光部の直上の領域内に設けられることを特徴とする固体撮像素子を提供する。
【0011】
なお、基板を成す半導体の導電型は、p型またはn型である。また例えば、基板を成す半導体がp型であれば、受光部を成す半導体はn型であり、基板を成す半導体がn型であれば、受光部を成す半導体はp型である。また、「基板を成す半導体の導電型」とは、基板の素子構造が形成される部分の導電型を示すものであり、基板全体の導電型を示す場合に限られず、ウェルの導電型を示す場合も当然に含まれる。
【0012】
さらに、上記特徴の固体撮像素子において、前記転送電極上及びその周囲に設けられる遮光層を、さらに備え、
前記転送電極と前記遮光層との間に、前記絶縁層及び前記固定電荷層が設けられ、
前記遮光層の端部が、前記反射防止層が設けられる平面上まで拡がるとともに、前記反射防止層の端部から離間すると、好ましい。
【0013】
この場合、遮光層の端部の下方に反射防止層が入り込むことを防止して、遮光層の端部を基板の表面に近づけることが可能になる。したがって、遮光層の端部と基板の表面との間から光が差し込むことで発生するスミア(意図せず発生した電荷が電荷転送部に混入すること)を、抑制することができる。
【0014】
さらに、上記特徴の固体撮像素子において、前記遮光層の端部と前記基板表面との距離が、30nm以下であると、好ましい。
【0015】
この場合、遮光層の端部を基板の表面に十分に近づけることができるため、スミアを効果的に抑制することができる。
【0016】
さらに、上記特徴の固体撮像素子において、前記絶縁層の厚さが、3nm以上10nm以下であり、前記固定電荷層の厚さが5nm以上20nm以下、前記反射防止層の厚さが50nm以上70nm以下であると、好ましい。
【0017】
この場合、スミアを抑制しつつ、絶縁層及び固定電荷層を設けたことによる効果を十分に発揮させることが可能になる。また、受光部の入射光量を、効果的に増大することが可能になる。
【0018】
さらに、上記特徴の固体撮像素子において、前記固定電荷層の屈折率が、前記絶縁層の屈折率よりも、前記反射防止層の屈折率に近いと、好ましい。
【0019】
この場合、絶縁層の基板側の界面で反射してその反対側の界面から出射されようとする光を、固定電荷層または反射防止層で効率良く反射して基板へ再入射させることが可能になる。そのため、受光部の入射光量を、効果的に増大することが可能になる。
【0020】
さらに、上記特徴の固体撮像素子において、前記基板がシリコンから成り、前記絶縁層が酸化シリコンから成り、前記固定電荷層が酸化ハフニウムから成り、前記反射防止層が窒化シリコンから成ると、好ましい。
【0021】
この場合、上述の好適な屈折率となる状況を、実現することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
上記特徴の固体撮像素子によれば、受光部が蓄積する電荷と同じ極性の固定電荷を有する固定電荷層が、絶縁層上に設けられることで、受光部が蓄積する電荷とは逆の極性の電荷が、基板の表面近傍に蓄積される。そのため、基板の表面の準位に起因して電子が発生したとしても、基板の表面に蓄積させた正孔によって消滅させることが可能になる。したがって、暗電流を抑制することが可能になる。
【0023】
さらに、上記特徴の固体撮像素子によれば、受光部の直上の領域かつ固定電荷層上に、反射防止層が設けられる。そのため、周辺の構造(例えば、転送電極や電荷転送部)の設計等に影響を与えることなく、基板の入射光量が反射によって減少することを、抑制することが可能になる。したがって、受光部の入射光量を、増大することが可能になる。
【0024】
以上より、上記特徴の固体撮像素子によれば、固体撮像素子から得られる画像データの画質を、改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る固体撮像素子の構造の一例を示す要部断面図。
【図2】図1に示す固体撮像素子の製造方法の一例を示す要部断面図。
【図3】図1に示す固体撮像素子の製造方法の一例を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<固体撮像素子の構造例>
最初に、本発明の実施形態に係る固体撮像素子(CCDイメージセンサ)の構造の一例について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る固体撮像素子の構造の一例を示す要部断面図である。なお、図1は、電荷の転送方向(紙面垂直方向)に対して垂直な断面であり、かつ、いくつかの画素が含まれる部分的な断面を示すものである。また、図1では図示の明確化のため、異なるそれぞれの部分に対して、異なるパターンを付加して表示している。
【0027】
図1に示すように、固体撮像素子1は、基板10と、基板10中に形成され光電変換によって生じた電荷を蓄積する受光部11と、基板10上に設けられる絶縁層12と、絶縁層12上に設けられるとともに固定電荷を有する固定電荷層13と、固定電荷層13上に設けられる反射防止層14と、基板10中の受光部11と隣接する位置に設けられ受光部11から読み出された電荷が一時的に蓄積される電荷転送部15と、少なくとも電荷転送部15の直上に設けられる転送電極16と、転送電極16と基板10との間に設けられるゲート絶縁膜17と、転送電極16上及びその周囲に設けられる遮光層18と、を備える。
【0028】
基板10は、p型またはn型の半導体から成る。受光部11は、基板10とは逆の導電型の半導体から成り、フォトダイオードを構成する。固定電荷層13は、受光部11が蓄積する電荷と同じ極性の固定電荷を有する。電荷転送部15は、受光部11と同じ導電型の半導体から成る領域を含む。
【0029】
以下では説明の具体化のため、基板10がp型の半導体から成り、受光部11がn型の半導体から成るとともに光電変換によって生じた電子を蓄積するものであり、固定電荷層13が負の固定電荷を有するものであり、電荷転送部15がn型の半導体から成る領域を含むとともに受光部11から読み出した電子を一時的に蓄積する場合について、例示する。
【0030】
また、基板10を成す半導体がp型であるとは、基板10の素子構造が形成される部分の導電型がp型であることを示すものであり、基板10全体の導電型がp型である場合に限られず、ウェルの導電型がp型である場合(例えば、全体がn型の基板にp型のウェルが形成される場合)も、当然に含まれる。
【0031】
基板10は、例えばシリコンから成る。この場合、p型の不純物として、ホウ素などを用いることができる。またこの場合、n型の不純物として、リンやヒ素などを用いることができる。さらに、これらの不純物は、例えばイオン注入などの方法を適用することで、基板10内に注入される。
【0032】
受光部11は、基板10にn型の不純物を注入し、基板10の表面と受光部11との間に、p型の不純物を注入することで形成される。これにより、受光部11は、基板10の表面から離間した位置に設けられる。即ち、受光部11は、埋め込み型のフォトダイオードを構成する。
【0033】
電荷転送部15は、n型の不純物が注入された領域を含む。例えば、ポリシリコンから成る転送電極16に、所定の電圧が印加されると、当該領域の外縁近傍に埋め込みチャネルが形成される。そして、この埋め込みチャネルを介して、受光部11から読み出された電子の一時的な蓄積や転送(垂直転送)が行われる。なお、図1では特に図示していないが、受光部11と、当該受光部11に隣接する2つの電荷転送部15のいずれか一方(当該受光部11から電子が読み出されない方)と、の間には、素子分離のための構造(例えば、p型の不純物が注入された領域)が設けられ得る。
【0034】
絶縁層12及びゲート絶縁膜17は、例えば酸化シリコンから成る。固定電荷層13は、例えば酸化ハフニウムから成る。反射防止層14は、例えば窒化シリコンから成る。また、受光部11の直上の領域内において、基板10の表面に絶縁層12が設けられ、さらにその表面上に固定電荷層13が設けられ、さらにその表面上に反射防止層14が設けられている。絶縁層12及び固定電荷層13は、受光部11の直上の領域内だけでなく、電荷転送部15の上方にも設けられる。特に、転送電極16と遮光層18との間にも、絶縁層12及び固定電荷層13が設けられる。
【0035】
遮光層18は、例えばタングステンなどの光を遮蔽可能な材料から成る。また、遮光層18の端部は、反射防止層14が設けられている平面上(固定電荷層13上)まで拡がっている。ただし、この遮光層18の端部は、反射防止層14の端部から離間している。
【0036】
本例の固体撮像素子1によれば、受光部11が蓄積する電荷と同じ極性である負の固定電荷を有する固定電荷層13が、絶縁層12上に設けられることで、受光部11が蓄積する電子とは逆の極性である正孔が、基板10の表面近傍に蓄積される。そのため、基板10の表面の準位に起因して電子が発生したとしても、基板10の表面に蓄積させた正孔によって消滅させることが可能になる。したがって、暗電流を抑制することが可能になる。
【0037】
さらに、本例の固体撮像素子1によれば、受光部11の直上の領域かつ固定電荷層13上に、反射防止層14が設けられる。そのため、周辺の構造(例えば、転送電極16や電荷転送部15)の設計等に影響を与えることなく、基板10の入射光量が反射によって減少することを、抑制することが可能になる。したがって、受光部11の入射光量を、増大させることが可能になる。
【0038】
以上より、本例の固体撮像素子1によれば、得られる画像データの画質を、改善することができる。
【0039】
また、本例の固体撮像素子1では、遮光層18の端部と反射防止層14の端部とが離間している。そのため、遮光層18の端部の下方に反射防止層14が入り込むことを防止して、遮光層18の端部を基板10の表面に近づけることが可能になる。したがって、遮光層18の端部と基板10の表面との間から光が差し込むことで発生するスミア(意図せず発生した電子が電荷転送部15に混入すること)を、抑制することができる。
【0040】
さらに、本例の固体撮像素子1において、遮光層18の端部と基板10の表面との距離を30nm以下にすると、遮光層18の端部を基板10の表面に十分に近づけることができ、スミアを効果的に抑制することができるため、好ましい。
【0041】
また、スミアを抑制する観点から、遮光層18と基板10の表面との間に形成される絶縁層12及び固定電荷層13は、薄くするほど好ましい。しかし、絶縁層12を薄くし過ぎると、絶縁性が不十分になるとともに、受光部11の直上の領域内で基板10の表面における光の反射の抑制が不十分になる。同様に、固定電荷層13を薄くし過ぎると、上述した正孔の蓄積が不十分になる。したがって、スミアを抑制しつつ、絶縁層12及び固定電荷層14を設けたことによる効果を十分に発揮させるためには、絶縁層12の厚さを3nm以上10nm以下、固定電荷層13の厚さを5nm以上20nm以下にすると、好ましい。
【0042】
また、反射防止層14は、受光部11の直上の領域内に設けられ、周辺の構造(例えば、転送電極16や電荷転送部15)に影響を与えないため、受光部11の入射光量を増大する最適な厚さを選択可能である。したがって、受光部11の入射光量を効果的に増大する観点から、反射防止層14の厚さを50nm以上70nm以下にすると、好ましい。
【0043】
また、基板10にシリコン(屈折率:4.2、空気の屈折率は1)を用いるとともに、当該シリコンを熱酸化して得られる酸化シリコン(屈折率:1.46)を絶縁層12として適用する場合、これらの屈折率差は大きいものとなる。光は、屈折率が異なる物質の界面において、その屈折率差に応じた強度で反射する。そのため、仮に、基板10と絶縁層12のみから成る構造に対して絶縁層12側から光を入射させた場合、絶縁層12の上面側の界面(空気側の界面)及び下面側の界面(基板10側の界面)で多重反射が生じる。この多重反射において、絶縁層12の上面から光が出射されたり、光の吸収が生じたりすることで、受光部11の入射光量が減少する。
【0044】
本例の固体撮像素子1では、絶縁層12の上面側に反射防止層14を設ける。これにより、絶縁層12の下面側の界面で反射して上面側の界面から出射されようとする光を、反射防止層14により反射して基板10へ再入射させ、受光部11の入射光量を増大させることが可能になる。
【0045】
この反射防止層14として、絶縁層12を成す酸化シリコンよりも屈折率が大きく、基板10を成すシリコンよりも屈折率が小さくなる窒化シリコン(屈折率:2.0)を適用すると、効果的に反射を抑制することができるため、好ましい。
【0046】
さらに、絶縁層12と反射防止層14との間に設けられる固定電荷層13は、屈折率が絶縁層12よりも反射防止層14に近い材料を適用すると、好ましい。具体的に例えば、固定電荷層13として酸化ハフニウム(屈折率:2.0)を適用すると、好ましい。この場合、絶縁層12の下面側の界面で反射して上面側の界面から出射されようとする光を、固定電荷層13または反射防止層14で効率良く反射して、基板10へ再入射させることが可能になる。そのため、受光部11の入射光量を、効果的に増大することが可能になる。
【0047】
<固体撮像素子の製造方法例>
次に、上述した固体撮像素子1の製造方法の一例について、図面を参照して説明する。図2及び図3は、図1に示す固体撮像素子の製造方法の一例を示す要部断面図である。なお、図2及び図3は、図1に示した断面と同じ部分の断面を示すものであり、図1と同じ方法で断面を表示するものである。また、図2(a)、図2(b)、図2(c)、図3(a)、図3(b)、図3(c)の順番で、固体撮像素子1の製造の進行を示す。
【0048】
本例の固体撮像素子1の製造方法では、最初に、図2(a)に示すように、受光部11と、電荷転送部15と、転送電極16と、ゲート絶縁膜17と、のそれぞれを、基板10に設ける。具体的に、受光部11及び電荷転送部15は、シリコンから成る基板10にn型の不純物を注入することで形成する。また、ゲート絶縁膜17は、シリコンから成る基板10を熱酸化することで形成する。また、転送電極16は、ゲート絶縁膜17上にポリシリコンを成膜することで形成する。
【0049】
このとき、受光部11及び電荷転送部15を、基板10中で隣接する位置に形成する。また、ゲート絶縁膜17及び転送電極16を、少なくとも電荷転送部15の直上に位置するように形成する。
【0050】
次に、図2(b)に示すように、シリコンから成る基板10の熱酸化により、基板10の表面に酸化シリコンから成る絶縁層12を形成する。このとき、ポリシリコンから成る転送電極16も同様に酸化され、その表面に酸化シリコンから成る絶縁層12が形成される。なお、基板10の表面に形成する絶縁層12の厚さを、上述のように3nm以上10nm以下にすると、好ましい。
【0051】
次に、図2(c)に示すように、絶縁層12(基板10の表面上に形成されるものだけでなく、転送電極16の表面に形成される部分をも含む)の表面に、例えばALD(Atomic Layer Deposition)法により、酸化ハフニウムから成る固定電荷層13を形成する。なお、形成する固定電荷層13の厚さを、上述のように5nm以上20nm以下にすると、好ましい。
【0052】
次に、図3(a)に示すように、固定電荷層13の表面に、例えばLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により、窒化シリコンから成る反射防止層14を形成する。なお、形成する反射防止層14の厚さを、上述のように50nm以上70nm以下にすると、好ましい。
【0053】
次に、図3(b)に示すように、反射防止層14について、受光部11の直上の領域内における所定の部分を残し、他を選択的に除去する。例えば、反射防止層14に対して、残すべき部分の表面にフォトリソグラフィによりマスクを形成し、ドライエッチングを行う。これにより、反射防止層14の、表面にマスクが形成されなかった部分が、選択的に除去される。
【0054】
次に、固定電荷層13及び反射防止層14の表面に、例えばCVD法により、タングステンから成る遮光層18を形成する。そして、遮光層18の、受光部11の直上の領域内の所定の部分(図3(b)に示す反射防止層14を包含する部分)を、選択的に除去する。例えば、遮光層18に対して、残すべき部分の表面にフォトリソグラフィによりマスクを形成し、ドライエッチングを行う。これにより、遮光層18の、表面にマスクが形成されなかった部分が、選択的に除去される。
【0055】
これにより、図3(c)に示すように、遮光層18が、転送電極16上とその周囲に形成されるとともに、受光部11の直上に開口部を有した構造になる。ただし、遮光層18の端部は、反射防止層14の端部から離間している。
【0056】
以上の製造方法により、本例の固体撮像素子1を製造することができる。ただし、図2及び図3に示した製造方法は一例に過ぎず、他の製造方法で本例の固体撮像素子1を製造してもよい。
【0057】
<変形等>
固体撮像素子1を構成する半導体の導電型や電荷の極性は、上述した例の逆であってもよい。具体的に例えば、基板10がn型の半導体から成り、受光部11がp型の半導体から成るとともに光電変換によって生じた正孔を蓄積するものであり、固定電荷層13が正の固定電荷を有するものであり、電荷転送部15がp型の半導体から成る領域を含むとともに受光部11から読み出した正孔を一時的に蓄積するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る固体撮像素子は、例えば撮像機能を有する各種電子機器に搭載されるCCDイメージセンサ等に、好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0059】
1 : 固体撮像素子
10 : 基板
11 : 受光部
12 : 絶縁層
13 : 固定電荷層
14 : 反射防止層
15 : 電荷転送部
16 : 転送電極
17 : ゲート絶縁膜
18 : 遮光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体から成る基板と、
前記基板中に形成され、光電変換によって生じた電荷を蓄積する、前記基板とは逆の導電型の半導体から成る受光部と、
前記基板上に設けられる絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられ、前記受光部が蓄積する前記電荷と同じ極性の固定電荷を有する固定電荷層と、
前記固定電荷層上に設けられる反射防止層と、
前記基板中の前記受光部と隣接する位置に設けられ、前記受光部から読み出された前記電荷が一時的に蓄積される電荷転送部と、
少なくとも前記電荷転送部の直上に設けられる転送電極と、を備え、
前記反射防止層が、前記受光部の直上の領域内に設けられることを特徴とする固体撮像素子。
【請求項2】
前記転送電極上及びその周囲に設けられる遮光層を、さらに備え、
前記転送電極と前記遮光層との間に、前記絶縁層及び前記固定電荷層が設けられ、
前記遮光層の端部が、前記反射防止層が設けられる平面上まで拡がるとともに、前記反射防止層の端部から離間することを特徴とする請求項1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記遮光層の端部と前記基板表面との距離が、30nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記絶縁層の厚さが、3nm以上10nm以下であり、前記固定電荷層の厚さが5nm以上20nm以下、前記反射防止層の厚さが50nm以上70nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記固定電荷層の屈折率が、前記絶縁層の屈折率よりも、前記反射防止層の屈折率に近いことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記基板がシリコンから成り、前記絶縁層が酸化シリコンから成り、前記固定電荷層が酸化ハフニウムから成り、前記反射防止層が窒化シリコンから成ることを特徴とする請求項5に記載の固体撮像素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−55113(P2013−55113A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190565(P2011−190565)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】