圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置
【課題】弁体を円滑に開閉動作させることができる圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置を提供することである。
【解決手段】機能液供給装置41から1次室75に供給された機能液を、弁体84の開閉動作により圧力調整して2次室76に供給し、2次室76からインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッド14に供給する圧力調整弁27であって、弁体84は、1次室75に配設され弁座83に対し直接開閉動作する弁体本体94と、弁体本体94を保持する保持部97、および保持部97から連通流路78を同軸上に挿通して延び受圧膜体73に当接する作動軸部99から成る弁ホルダー95と、を有し、作動軸部99は、受圧膜体73に向って先細りのテーパー形状に形成され、連通流路78は、作動軸部99に対し相補的形状に形成されているものである。
【解決手段】機能液供給装置41から1次室75に供給された機能液を、弁体84の開閉動作により圧力調整して2次室76に供給し、2次室76からインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッド14に供給する圧力調整弁27であって、弁体84は、1次室75に配設され弁座83に対し直接開閉動作する弁体本体94と、弁体本体94を保持する保持部97、および保持部97から連通流路78を同軸上に挿通して延び受圧膜体73に当接する作動軸部99から成る弁ホルダー95と、を有し、作動軸部99は、受圧膜体73に向って先細りのテーパー形状に形成され、連通流路78は、作動軸部99に対し相補的形状に形成されているものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液供給手段から機能液滴吐出ヘッドに機能液を適正に減圧供給する圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サブタンクの機能液を、所定の圧力に減圧して機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁が知られている(特許文献1参照)。この圧力調整弁は、バルブハウジング内に形成された流入ポートに連通する1次室および流出ポートに連通する2次室と、1次室と2次室との間の隔壁を連通する連通流路と、1次室側の連通流路開口縁部を弁座として連通流路を1次室側から開閉する弁体と、2次室の1の面を構成すると共に、弁体を大気圧基準で開閉するダイヤフラム(受圧膜体)と、弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねと、を備えている。圧力調整弁を構成するバルブハウジング、隔壁および弁体等の部材は、導入する機能液に対する耐溶剤性やガスバリアー性を担保するためにステンレス等の耐食性金属で形成されている。
一方、弁体は、弁座に直接接触するOリングと、Oリングを保持する保持部、および保持部から連通流路を挿通して延びる軸部から成る弁ホルダーと、を有している。また、連通流路は断面十字状に形成され、これに挿通した軸部がダイヤフラムに当接している。すなわち、ダイヤフラムと弁体ばねが拮抗した状態で、ダイヤフラムの挙動を受けて弁体が開閉するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−163733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような圧力調整弁では、弁体の軸部と連通流路との間に微小な間隙を有しているものの、連通流路が断面十字状に形成されているため、弁体の開閉動作に伴って、弁体の軸部と連通流路の流路壁とが接触すると、部分当りとなって比較的大きな摺動抵抗を生ずる。特に、弁体の軸部と連通流路の流路壁とは、ステンレス等の金属同士であるため、摩擦が大きく、弁体の円滑な開閉動作が阻害され、弁体が円滑に動作しなくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、弁体を円滑に開閉動作させることができる圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力調整弁は、バルブハウジング内の1次室と2次室とを画成する隔壁に貫通形成された連通流路と、連通流路を形成した隔壁の1次室側開口縁部を弁座として、連通流路を開閉する弁体と、2次室の1の面を構成すると共に弁体を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体と、を備え、機能液供給手段から1次室に供給された機能液を、弁体の開閉動作により圧力調整して2次室に供給し、2次室からインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁であって、弁体は、1次室に配設され弁座に対し直接開閉動作する弁体本体と、弁体本体を保持する保持部、および保持部から連通流路を同軸上に挿通して延び受圧膜体に当接する作動軸部から成る弁ホルダーと、を有し、作動軸部は、受圧膜体に向って先細りのテーパー形状に形成され、連通流路は、作動軸部に対し相補的形状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
この場合、弁体本体が弁座に密接する閉弁状態において、作動軸部は、連通流路に対し微小間隙を存して挿通していることが、好ましい。
【0008】
これらの構成によれば、作動軸部が受圧膜体に向ってテーパー形状に形成されていると共に、連通流路が作動軸部と相補的形状に形成されているため、弁体が開弁動作する際、作動軸部が連通流路の流路壁から離れるように移動する。したがって、作動軸部が連通流路の流路壁に接触することがあっても、大きな摺動抵抗が生じることがなく、受圧膜体の動きに対応して開閉動作する弁体を、円滑に動作させることができなる。また、弁体の弁開度に応じて連通流路の流路面積が変化するため、例えば機能液滴吐出ヘッド側から、機能液を強制吸引する動作においては、弁体が大きく開弁したときに、これに応じて多量の機能液を流路抵抗無く(圧力損失無く)2次室に流入させることができる。
【0009】
この場合、弁体本体は、Oリングで構成され、保持部と作動軸部との境界部分には、作動軸部を延長して形成された弁体本体の抜止め部が形成されていることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、作動軸部のテーパー形状を利用することで、Oリングの抜止め部を簡単に形成することができる。
【0011】
本発明の液滴吐出装置は、上記の圧力調整弁と、機能液供給手段と、機能液滴吐出ヘッドと、を備え、ワークに対し機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、ワーク上に機能液を吐出して描画を行なうことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、機能液供給手段から機能液滴吐出ヘッドに機能液を適正圧力で安定して供給することができ、機能液滴吐出ヘッドのワークへの描画品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】キャリッジの外観斜視図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図6】機能液供給装置の模式図である。
【図7】圧力調整弁の平面図である。
【図8】圧力調整弁のA−A断面図である。
【図9】弁体廻りの拡大図である。
【図10】圧力調整弁の開閉動作を説明するための説明図(1)である。
【図11】圧力調整弁の開閉動作を説明するための説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る圧力調整弁を備えた液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。また、圧力調整弁は、機能液滴吐出ヘッドに機能液を一定圧力で減圧供給するものである。
【0015】
図1ないし図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース11上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在してワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル2と、複数本の支柱12を介してX軸テーブル2を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース13上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル3と、Y軸テーブル3に移動自在に吊設され、複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド14が搭載された13個のキャリッジユニット4と、から構成されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ5と、チャンバ5を貫通して、機能液滴吐出ヘッド14に機能液を供給する機能液供給ユニット6と、を備えている。また、チャンバ5の側壁の一部には、機能液を貯留するメインタンク51等を収納するタンクキャビネット7が設けられている。液滴吐出装置1は、X軸テーブル2およびY軸テーブル3の駆動と同期して、機能液滴吐出ヘッド14を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット6から供給された機能液を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンを描画する。
【0016】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット15、吸引ユニット16、ワイピングユニット17および吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置8を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド14の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド14の機能維持・機能回復を図るようになっている。本実施形態の液滴吐出装置1では、X軸テーブル2とY軸テーブル3とが交わる領域にキャリッジユニット4を臨ませてワークWの描画を行い、Y軸テーブル3とメンテナンス装置8(吸引ユニット16、ワイピングユニット17)が交わる領域にキャリッジユニット4を臨ませて、機能液滴吐出ヘッド14の機能維持・機能回復を行う。
【0017】
図2および図3に示すように、X軸テーブル2は、ワークWを吸着セットするセットテーブル21と、セットテーブル21をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダー22と、上記したフラッシングユニット15および吐出性能検査ユニット18をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダー23と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダー22およびX軸第2スライダー23をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。
【0018】
Y軸テーブル3は、13個のキャリッジユニット4をそれぞれ吊設した13個のブリッジプレート24と、各ブリッジプレート24を両持ちで支持する13組のY軸スライダー(図示省略)と、一対のY軸支持ベース13上に設置され、ブリッジプレート24をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル3は、各キャリッジユニット4を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド14を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド14を吸引ユニット16およびワイピングユニット17に臨ませる。この場合、各キャリッジユニット4を独立させて個別に移動させることも可能であるし、13個のキャリッジユニット4を一体として移動させることも可能である。
【0019】
図4に示すように、各キャリッジユニット4は、R・G・Bの3色、各4個(計12個)の機能液滴吐出ヘッド14と、12個の機能液滴吐出ヘッド14を6個ずつ2群に分けて、各機能液滴吐出ヘッド14が同一の水平面内に配設されるように支持するヘッドプレート25と、から成るヘッドユニット26を備えている。また、各キャリッジユニット4は、機能液滴吐出ヘッド14に機能液を大気圧基準で減圧供給する圧力調整弁27(詳細は後述する。)と、ヘッドユニット26をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構28と、θ回転機構28を介して、ヘッドユニット26をブリッジプレート24に支持させる吊設部材29(共に図3参照)と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット4は、機能液を一時的に貯留するサブタンク46(図1参照)が配設されており(実際には、ブリッジプレート24上に配設)、このサブタンク46および圧力調整弁27により、各機能液滴吐出ヘッド14に対して一定圧力で機能液が供給されるようになっている。
【0020】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド14は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針34を有する機能液導入部31と、機能液導入部31に連なる2連のヘッド基板32と、ヘッド基板32の下方に連なり機能液を吐出するヘッド本体33と、を備えている(図5(a)参照)。機能液導入部31は、ノズル列39の数に対応した2連の接続針34を有しており、サブタンク46からの機能液を、機能液供給システム48(図6参照)を介して供給されるようになっている。また、ヘッド本体33は、ピエゾ素子等で構成される2連のポンプ部35と、複数の吐出ノズル37が形成されたノズル面38を有するノズルプレート36と、を有している。ノズルプレート36のノズル面38に形成された多数の吐出ノズル37は、相互に平行且つ半ノズルピッチ位置ズレして列設された2列のノズル列39を構成しており、各ノズル列39は、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル37で構成されている(図5(b)参照)。ヘッド基板32には、2連のコネクター40が設けられており、各コネクター40は、フレキシブルフラットケーブル19(図4参照)を介して図外の制御装置に接続されている。そして、この制御装置から出力された駆動波形が各コネクター40を介して各ポンプ部35(圧電素子)に印加されることで、各吐出ノズル37から機能液が吐出される。
【0021】
次に、図6を参照して、機能液供給ユニット6について説明する。機能液供給ユニット6は、上記した3色に対応した3組の機能液供給装置(機能液供給手段)41と、メインタンク51およびサブタンク46等に制御用の圧縮窒素ガスを供給する窒素ガス供給設備42と、各種開閉弁の制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備43と、各部からガス排気を行うためのガス排気設備44と、を備えている。3組の機能液供給装置41は、それぞれ3色に対応した機能液滴吐出ヘッド14に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド14には、対応する色の機能液が供給される。
【0022】
各機能液供給装置41は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク51,51を有するメインタンクユニット45と、各キャリッジユニット4に対応した13個のサブタンク46と、メインタンクユニット45および各サブタンク46を接続する上流側機能液流路47と、サブタンク46からの機能液を機能液滴吐出ヘッド14に減圧供給する圧力調整弁27と、各サブタンク46および各圧力調整弁27を接続する13組の下流側機能液流路49と、を備えている。各メインタンク51内の機能液は、これに接続した窒素ガス供給設備42からの圧縮窒素ガスにより加圧され、ガス排気設備44を介して大気開放された13個のサブタンク46に上流側機能液流路47を介して選択的に供給される。そして、サブタンク46の機能液は、下流側機能液流路49および圧力調整弁27を介して、各機能液滴吐出ヘッド14に一定圧力で供給される。
【0023】
上流側機能液流路47は、上流端がメインタンクユニット45に接続されており、13分岐流路52を介して、下流端がサブタンク46にそれぞれ接続されている。また、上流側機能液流路47には、上流側から、機能液中の気泡を除去する気泡除去ユニット53と、上流側の上流側機能液流路47内に混入した気泡を除去するエアー抜きユニット54と、が介設されている。メインタンクユニット45から供給された機能液は、13分岐流路52により13個に分流して各サブタンク46に供給される。
【0024】
次に、図7ないし図9を参照して、圧力調整弁27について説明する。圧力調整弁27は、主要部を成す調整弁本体61と、調整弁本体61の流入側に差込み接合した流入コネクター62と、調整弁本体61の流出側に差込み接合した流出コネクター63と、を備えている。そして、流入コネクター62には、流入側押えナット64を介して、サブタンク46に接続した下流側機能液流路49が接続され、流出コネクター63には、流出側押えナット65を介して、機能液滴吐出ヘッド14に連なるヘッド接続チューブ100が接続されている。
【0025】
調整弁本体61(圧力調整弁27)は、前面および後面の中央部が凹型形成されたバルブハウジング71と、バルブハウジング71と共に1次室75を画成する蓋体72と、バルブハウジング71に受圧膜体73を固定することでバルブハウジング71と共に2次室76を画成する膜体押え部材74と、で構成されている。また、1次室75および2次室76は、バルブハウジング71の一部を構成する隔壁77を隔てて同軸上に配設されており、隔壁77の中心部(軸心)には、1次室75および2次室76を連通する連通流路78が貫通形成されている。
【0026】
1次室75は、隔壁77を主体とするバルブハウジング71の後面および蓋体72により形成されている。また、1次室75の上部には、1次室75から径方向斜めに延びる流入ポート81が形成され、中心部には、連通流路78に連なる1次室側開口部82が開口している。そして、この1次室側開口部82には、1次室75側から連通流路78を開閉する弁体84が臨む一方、これに対応して、1次室側開口部82の周縁部により、弁体84が離接する弁座83が構成されている。なお、弁体84は、係合した弁体付勢ばね85によって、閉弁方向(2次室76側)に弱い力で付勢されている。
【0027】
2次室76は、バルブハウジング71の前面および受圧膜体73により形成されている。また、2次室76の下部には、真下に延びる流出ポート86が形成され、中心部には、連通流路78に連なる2次室側開口部87が開口している。そして、この2次室側開口部87の周縁部と受圧膜体73との間には、受圧膜体73を前方向に向かって付勢する膜体付勢ばね88が介設されている。
【0028】
受圧膜体73は、樹脂フィルムで構成した膜体本体91と、膜体本体91の中央部に接着した樹脂製の受圧板92と、で構成されている。受圧板92は、膜体本体91と同心の円板状に、且つ膜体本体91に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に弁体84が当接するようになっている。
【0029】
連通流路78は、上記したように、バルブハウジング71の中央部分を構成する隔壁77を直交方向から貫通するように形成されている。連通流路78は、その1次室側開口部82が大径で、2次室側開口部87が小径となる、先細りのテーパー形状に形成されている。詳細は後述するが、連通流路78に挿通する弁体84の作動軸部99が先細りのテーパー形状に形成されており、連通流路78は、この作動軸部99と相補的形状に形成されている。
【0030】
弁体84は、図9に示すように、弁機能を奏する弁体本体94と、弁体本体94を保持する弁ホルダー95と、を備えている。弁体84は、受圧膜体73による大気圧基準で、弁座83となる1次室側開口部82の周縁部に離接することで開閉し、この開閉を繰り返すことにより、機能液が1次室75から2次室76に間欠的に流入する。
【0031】
弁体本体94は、耐薬品性のパーフルオロゴムの素材で構成された、いわゆるОリングであり、通常に用いられるシリコンゴム製の弁体本体94に比して硬質なものとなっている。そして、弁ホルダー95に装着した弁体本体94の前端部分が、弁座83に離接して弁の機能を奏するようになっている。
【0032】
弁ホルダー95は、断面略「T」字状に形成されており、同軸上において軸線方向の後方から、弁体付勢ばね85が係合する厚肉円板状のホルダーベース96と、ホルダーベース96に連なり、弁体本体94を直接保持する保持部97と、保持部97に連なり、弁体本体94を抜止め状態に保持する抜止め部98と、抜止め部98の先端から延在した作動軸部99と、から構成されている。そして、弁体本体94は、作動軸部99側から抜止め部98を乗り越えて装着されている。また、作動軸部99(弁ホルダー95)は、上記の連通流路78に挿通して、その先端が受圧板92(受圧膜体73)に当接している。なお、請求項に言う保持部は、上記のホルダーベース96と保持部97とから構成されている。
【0033】
ホルダーベース96は、円形の板状に形成されており、1次室75側の受圧部を構成すると共に、その背面側には、弁体付勢ばね85が係合する環状のばね受け部102が形成されている。ホルダーベース96は、その背面で1次室75の圧力を受けると共に、弁体付勢ばね85により閉弁方向に弱い力で付勢されている。
【0034】
保持部97は、ホルダーベース96に連なり、弁体本体94の内径より僅かに太径に形成され、且つ弁体本体94の装着時において、弁体本体94の前端より突出しない長さに形成されている。
【0035】
抜止め部98は、保持部97の先端に連なる段部で構成され、弁体本体94が弁座83に当接する部位を僅かに残して、抜止め状態に保持する。すなわち、抜止め部98の前端は、弁体本体94の前端より後退した位置にあり、弁体本体94の内径より僅かに太径に形成された作動軸部99からの延長部分で構成されている。
【0036】
作動軸部99は、太径に形成された抜止め部98の先端から先細りのテーパー形状に形成されており、先端が受圧板92からの押圧を受けるように平坦面、或いは半球状(図示省略)に形成されている。また、作動軸部99は、上記の連通流路78に1次室75側から挿通しており、上記の連通流路78は、作動軸部99に対して相補的形状にされている。弁体本体94が弁座83に当接する閉弁状態では、作動軸部99と連通流路78の流路壁との間に微少間隙が生ずるように構成されており、後述する閉弁動作において、弁体本体94が弁座83に当接する前に作動軸部99が流路壁に接触しないようになっている。そして、この状態から弁体本体94が開弁し、作動軸部99が後退すると、作動軸部99の連通流路78の流路壁との間に十分な断面積の流路が確保される。この場合、作動軸部99と流路壁との間の流路面積は、弁体84のストロークに比例して大小変化することになる。
【0037】
次に、図10および図11を参照して、弁体84の開閉動作について説明する。上記のように構成された圧力調整弁27では、例えば機能液滴吐出ヘッド14の液滴吐出により2次室76の圧力が下がってゆくと(図10(a)参照)、大気圧により受圧膜体73が凹変形してゆき、受圧板92が作動軸部99を介して弁体84を1次室75側に押圧する。このとき、作動軸部99は、その周面が連通流路78の流路壁から離れるように後退する。また、同時に弁体本体94が弁座83から離れて開弁状態となる(図10(b)参照)。このようにして、弁体84が開弁すると、連通流路78を介して1次室75の機能液が2次室76に流入し、2次室76の圧力が高くなることで、受圧膜体73が外部に向かって凸変形する。このとき、作動軸部99は、その周面が連通流路78の流路壁に近づくように、弁体付勢ばね85の付勢力により前進する。また、同時に弁体本体94が、弁体付勢ばね85のばね力で弁座83に当接し、閉弁状態となる。
【0038】
一方、機能液の初期充填やクリーニング時における機能液の強制的な吸引時においては、多量の機能液が吸引されるため、それに対応して、2次室76の負圧も急激に高まり、弁開度が最大になる。係る場合、多量の機能液が連通流路78に流れ込むが、弁開度に応じて連通流路78の流路面積もさらに大きくなる(図11参照)ため、機能液を圧力損失なく2次室76に流入させることができる。
【0039】
このように、圧力調整弁27は、大気圧と機能液滴吐出ヘッド14に連なる2次室76との内部圧力のバランスにより受圧膜体73が変形することで連通流路78を開閉する。その際、弁体付勢ばね85および膜体付勢ばね88に力が分散して作用し、且つ弁体本体94の弾性力により、弁体84は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体84の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッド14の吐出駆動に影響を与えないようになっている。
【0040】
以上の構成によれば、作動軸部99および連通流路78が共に、受圧膜体73に向ってテーパー形状に形成されているため、弁体84が開弁動作する際、摺動抵抗が生じることがなく、弁体84を円滑に開閉させることができなる。また、弁体84の弁開度に応じて連通流路78の断面積が変化するため、流れ込む機能液量に関係なく、所定の機能液を圧力損失なく、2次室76に供給させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…液滴吐出装置 14…機能液滴吐出ヘッド 27…圧力調整弁 41…機能液供給装置 71…バルブハウジング 73…受圧膜体 75…1次室 76…2次室 77…隔壁 78…連通流路 83…弁座 84…弁体 94…弁体本体 95…弁ホルダー 97…保持部 98…抜止め部 99…作動軸部 W…ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液供給手段から機能液滴吐出ヘッドに機能液を適正に減圧供給する圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、サブタンクの機能液を、所定の圧力に減圧して機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁が知られている(特許文献1参照)。この圧力調整弁は、バルブハウジング内に形成された流入ポートに連通する1次室および流出ポートに連通する2次室と、1次室と2次室との間の隔壁を連通する連通流路と、1次室側の連通流路開口縁部を弁座として連通流路を1次室側から開閉する弁体と、2次室の1の面を構成すると共に、弁体を大気圧基準で開閉するダイヤフラム(受圧膜体)と、弁体を閉弁方向に付勢する弁体ばねと、を備えている。圧力調整弁を構成するバルブハウジング、隔壁および弁体等の部材は、導入する機能液に対する耐溶剤性やガスバリアー性を担保するためにステンレス等の耐食性金属で形成されている。
一方、弁体は、弁座に直接接触するOリングと、Oリングを保持する保持部、および保持部から連通流路を挿通して延びる軸部から成る弁ホルダーと、を有している。また、連通流路は断面十字状に形成され、これに挿通した軸部がダイヤフラムに当接している。すなわち、ダイヤフラムと弁体ばねが拮抗した状態で、ダイヤフラムの挙動を受けて弁体が開閉するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−163733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような圧力調整弁では、弁体の軸部と連通流路との間に微小な間隙を有しているものの、連通流路が断面十字状に形成されているため、弁体の開閉動作に伴って、弁体の軸部と連通流路の流路壁とが接触すると、部分当りとなって比較的大きな摺動抵抗を生ずる。特に、弁体の軸部と連通流路の流路壁とは、ステンレス等の金属同士であるため、摩擦が大きく、弁体の円滑な開閉動作が阻害され、弁体が円滑に動作しなくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、弁体を円滑に開閉動作させることができる圧力調整弁およびこれを備えた液滴吐出装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧力調整弁は、バルブハウジング内の1次室と2次室とを画成する隔壁に貫通形成された連通流路と、連通流路を形成した隔壁の1次室側開口縁部を弁座として、連通流路を開閉する弁体と、2次室の1の面を構成すると共に弁体を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体と、を備え、機能液供給手段から1次室に供給された機能液を、弁体の開閉動作により圧力調整して2次室に供給し、2次室からインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁であって、弁体は、1次室に配設され弁座に対し直接開閉動作する弁体本体と、弁体本体を保持する保持部、および保持部から連通流路を同軸上に挿通して延び受圧膜体に当接する作動軸部から成る弁ホルダーと、を有し、作動軸部は、受圧膜体に向って先細りのテーパー形状に形成され、連通流路は、作動軸部に対し相補的形状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
この場合、弁体本体が弁座に密接する閉弁状態において、作動軸部は、連通流路に対し微小間隙を存して挿通していることが、好ましい。
【0008】
これらの構成によれば、作動軸部が受圧膜体に向ってテーパー形状に形成されていると共に、連通流路が作動軸部と相補的形状に形成されているため、弁体が開弁動作する際、作動軸部が連通流路の流路壁から離れるように移動する。したがって、作動軸部が連通流路の流路壁に接触することがあっても、大きな摺動抵抗が生じることがなく、受圧膜体の動きに対応して開閉動作する弁体を、円滑に動作させることができなる。また、弁体の弁開度に応じて連通流路の流路面積が変化するため、例えば機能液滴吐出ヘッド側から、機能液を強制吸引する動作においては、弁体が大きく開弁したときに、これに応じて多量の機能液を流路抵抗無く(圧力損失無く)2次室に流入させることができる。
【0009】
この場合、弁体本体は、Oリングで構成され、保持部と作動軸部との境界部分には、作動軸部を延長して形成された弁体本体の抜止め部が形成されていることが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、作動軸部のテーパー形状を利用することで、Oリングの抜止め部を簡単に形成することができる。
【0011】
本発明の液滴吐出装置は、上記の圧力調整弁と、機能液供給手段と、機能液滴吐出ヘッドと、を備え、ワークに対し機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、ワーク上に機能液を吐出して描画を行なうことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、機能液供給手段から機能液滴吐出ヘッドに機能液を適正圧力で安定して供給することができ、機能液滴吐出ヘッドのワークへの描画品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】液滴吐出装置の平面図である。
【図3】液滴吐出装置の側面図である。
【図4】キャリッジの外観斜視図である。
【図5】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図6】機能液供給装置の模式図である。
【図7】圧力調整弁の平面図である。
【図8】圧力調整弁のA−A断面図である。
【図9】弁体廻りの拡大図である。
【図10】圧力調整弁の開閉動作を説明するための説明図(1)である。
【図11】圧力調整弁の開閉動作を説明するための説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る圧力調整弁を備えた液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。また、圧力調整弁は、機能液滴吐出ヘッドに機能液を一定圧力で減圧供給するものである。
【0015】
図1ないし図3に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース11上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在してワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル2と、複数本の支柱12を介してX軸テーブル2を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース13上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル3と、Y軸テーブル3に移動自在に吊設され、複数(12個)の機能液滴吐出ヘッド14が搭載された13個のキャリッジユニット4と、から構成されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ5と、チャンバ5を貫通して、機能液滴吐出ヘッド14に機能液を供給する機能液供給ユニット6と、を備えている。また、チャンバ5の側壁の一部には、機能液を貯留するメインタンク51等を収納するタンクキャビネット7が設けられている。液滴吐出装置1は、X軸テーブル2およびY軸テーブル3の駆動と同期して、機能液滴吐出ヘッド14を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット6から供給された機能液を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンを描画する。
【0016】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット15、吸引ユニット16、ワイピングユニット17および吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置8を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド14の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド14の機能維持・機能回復を図るようになっている。本実施形態の液滴吐出装置1では、X軸テーブル2とY軸テーブル3とが交わる領域にキャリッジユニット4を臨ませてワークWの描画を行い、Y軸テーブル3とメンテナンス装置8(吸引ユニット16、ワイピングユニット17)が交わる領域にキャリッジユニット4を臨ませて、機能液滴吐出ヘッド14の機能維持・機能回復を行う。
【0017】
図2および図3に示すように、X軸テーブル2は、ワークWを吸着セットするセットテーブル21と、セットテーブル21をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第1スライダー22と、上記したフラッシングユニット15および吐出性能検査ユニット18をX軸方向にスライド自在に支持するX軸第2スライダー23と、X軸方向に延在し、X軸第1スライダー22およびX軸第2スライダー23をX軸方向に移動させる左右一対のX軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。
【0018】
Y軸テーブル3は、13個のキャリッジユニット4をそれぞれ吊設した13個のブリッジプレート24と、各ブリッジプレート24を両持ちで支持する13組のY軸スライダー(図示省略)と、一対のY軸支持ベース13上に設置され、ブリッジプレート24をY軸方向に移動させる一対のY軸リニアモーター(図示省略)と、を備えている。また、Y軸テーブル3は、各キャリッジユニット4を介して描画時に機能液滴吐出ヘッド14を副走査するほか、機能液滴吐出ヘッド14を吸引ユニット16およびワイピングユニット17に臨ませる。この場合、各キャリッジユニット4を独立させて個別に移動させることも可能であるし、13個のキャリッジユニット4を一体として移動させることも可能である。
【0019】
図4に示すように、各キャリッジユニット4は、R・G・Bの3色、各4個(計12個)の機能液滴吐出ヘッド14と、12個の機能液滴吐出ヘッド14を6個ずつ2群に分けて、各機能液滴吐出ヘッド14が同一の水平面内に配設されるように支持するヘッドプレート25と、から成るヘッドユニット26を備えている。また、各キャリッジユニット4は、機能液滴吐出ヘッド14に機能液を大気圧基準で減圧供給する圧力調整弁27(詳細は後述する。)と、ヘッドユニット26をθ補正(θ回転)可能に支持するθ回転機構28と、θ回転機構28を介して、ヘッドユニット26をブリッジプレート24に支持させる吊設部材29(共に図3参照)と、を備えている。加えて、各キャリッジユニット4は、機能液を一時的に貯留するサブタンク46(図1参照)が配設されており(実際には、ブリッジプレート24上に配設)、このサブタンク46および圧力調整弁27により、各機能液滴吐出ヘッド14に対して一定圧力で機能液が供給されるようになっている。
【0020】
図5に示すように、機能液滴吐出ヘッド14は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針34を有する機能液導入部31と、機能液導入部31に連なる2連のヘッド基板32と、ヘッド基板32の下方に連なり機能液を吐出するヘッド本体33と、を備えている(図5(a)参照)。機能液導入部31は、ノズル列39の数に対応した2連の接続針34を有しており、サブタンク46からの機能液を、機能液供給システム48(図6参照)を介して供給されるようになっている。また、ヘッド本体33は、ピエゾ素子等で構成される2連のポンプ部35と、複数の吐出ノズル37が形成されたノズル面38を有するノズルプレート36と、を有している。ノズルプレート36のノズル面38に形成された多数の吐出ノズル37は、相互に平行且つ半ノズルピッチ位置ズレして列設された2列のノズル列39を構成しており、各ノズル列39は、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル37で構成されている(図5(b)参照)。ヘッド基板32には、2連のコネクター40が設けられており、各コネクター40は、フレキシブルフラットケーブル19(図4参照)を介して図外の制御装置に接続されている。そして、この制御装置から出力された駆動波形が各コネクター40を介して各ポンプ部35(圧電素子)に印加されることで、各吐出ノズル37から機能液が吐出される。
【0021】
次に、図6を参照して、機能液供給ユニット6について説明する。機能液供給ユニット6は、上記した3色に対応した3組の機能液供給装置(機能液供給手段)41と、メインタンク51およびサブタンク46等に制御用の圧縮窒素ガスを供給する窒素ガス供給設備42と、各種開閉弁の制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備43と、各部からガス排気を行うためのガス排気設備44と、を備えている。3組の機能液供給装置41は、それぞれ3色に対応した機能液滴吐出ヘッド14に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド14には、対応する色の機能液が供給される。
【0022】
各機能液供給装置41は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク51,51を有するメインタンクユニット45と、各キャリッジユニット4に対応した13個のサブタンク46と、メインタンクユニット45および各サブタンク46を接続する上流側機能液流路47と、サブタンク46からの機能液を機能液滴吐出ヘッド14に減圧供給する圧力調整弁27と、各サブタンク46および各圧力調整弁27を接続する13組の下流側機能液流路49と、を備えている。各メインタンク51内の機能液は、これに接続した窒素ガス供給設備42からの圧縮窒素ガスにより加圧され、ガス排気設備44を介して大気開放された13個のサブタンク46に上流側機能液流路47を介して選択的に供給される。そして、サブタンク46の機能液は、下流側機能液流路49および圧力調整弁27を介して、各機能液滴吐出ヘッド14に一定圧力で供給される。
【0023】
上流側機能液流路47は、上流端がメインタンクユニット45に接続されており、13分岐流路52を介して、下流端がサブタンク46にそれぞれ接続されている。また、上流側機能液流路47には、上流側から、機能液中の気泡を除去する気泡除去ユニット53と、上流側の上流側機能液流路47内に混入した気泡を除去するエアー抜きユニット54と、が介設されている。メインタンクユニット45から供給された機能液は、13分岐流路52により13個に分流して各サブタンク46に供給される。
【0024】
次に、図7ないし図9を参照して、圧力調整弁27について説明する。圧力調整弁27は、主要部を成す調整弁本体61と、調整弁本体61の流入側に差込み接合した流入コネクター62と、調整弁本体61の流出側に差込み接合した流出コネクター63と、を備えている。そして、流入コネクター62には、流入側押えナット64を介して、サブタンク46に接続した下流側機能液流路49が接続され、流出コネクター63には、流出側押えナット65を介して、機能液滴吐出ヘッド14に連なるヘッド接続チューブ100が接続されている。
【0025】
調整弁本体61(圧力調整弁27)は、前面および後面の中央部が凹型形成されたバルブハウジング71と、バルブハウジング71と共に1次室75を画成する蓋体72と、バルブハウジング71に受圧膜体73を固定することでバルブハウジング71と共に2次室76を画成する膜体押え部材74と、で構成されている。また、1次室75および2次室76は、バルブハウジング71の一部を構成する隔壁77を隔てて同軸上に配設されており、隔壁77の中心部(軸心)には、1次室75および2次室76を連通する連通流路78が貫通形成されている。
【0026】
1次室75は、隔壁77を主体とするバルブハウジング71の後面および蓋体72により形成されている。また、1次室75の上部には、1次室75から径方向斜めに延びる流入ポート81が形成され、中心部には、連通流路78に連なる1次室側開口部82が開口している。そして、この1次室側開口部82には、1次室75側から連通流路78を開閉する弁体84が臨む一方、これに対応して、1次室側開口部82の周縁部により、弁体84が離接する弁座83が構成されている。なお、弁体84は、係合した弁体付勢ばね85によって、閉弁方向(2次室76側)に弱い力で付勢されている。
【0027】
2次室76は、バルブハウジング71の前面および受圧膜体73により形成されている。また、2次室76の下部には、真下に延びる流出ポート86が形成され、中心部には、連通流路78に連なる2次室側開口部87が開口している。そして、この2次室側開口部87の周縁部と受圧膜体73との間には、受圧膜体73を前方向に向かって付勢する膜体付勢ばね88が介設されている。
【0028】
受圧膜体73は、樹脂フィルムで構成した膜体本体91と、膜体本体91の中央部に接着した樹脂製の受圧板92と、で構成されている。受圧板92は、膜体本体91と同心の円板状に、且つ膜体本体91に対し十分に小さい径に形成されており、その中央に弁体84が当接するようになっている。
【0029】
連通流路78は、上記したように、バルブハウジング71の中央部分を構成する隔壁77を直交方向から貫通するように形成されている。連通流路78は、その1次室側開口部82が大径で、2次室側開口部87が小径となる、先細りのテーパー形状に形成されている。詳細は後述するが、連通流路78に挿通する弁体84の作動軸部99が先細りのテーパー形状に形成されており、連通流路78は、この作動軸部99と相補的形状に形成されている。
【0030】
弁体84は、図9に示すように、弁機能を奏する弁体本体94と、弁体本体94を保持する弁ホルダー95と、を備えている。弁体84は、受圧膜体73による大気圧基準で、弁座83となる1次室側開口部82の周縁部に離接することで開閉し、この開閉を繰り返すことにより、機能液が1次室75から2次室76に間欠的に流入する。
【0031】
弁体本体94は、耐薬品性のパーフルオロゴムの素材で構成された、いわゆるОリングであり、通常に用いられるシリコンゴム製の弁体本体94に比して硬質なものとなっている。そして、弁ホルダー95に装着した弁体本体94の前端部分が、弁座83に離接して弁の機能を奏するようになっている。
【0032】
弁ホルダー95は、断面略「T」字状に形成されており、同軸上において軸線方向の後方から、弁体付勢ばね85が係合する厚肉円板状のホルダーベース96と、ホルダーベース96に連なり、弁体本体94を直接保持する保持部97と、保持部97に連なり、弁体本体94を抜止め状態に保持する抜止め部98と、抜止め部98の先端から延在した作動軸部99と、から構成されている。そして、弁体本体94は、作動軸部99側から抜止め部98を乗り越えて装着されている。また、作動軸部99(弁ホルダー95)は、上記の連通流路78に挿通して、その先端が受圧板92(受圧膜体73)に当接している。なお、請求項に言う保持部は、上記のホルダーベース96と保持部97とから構成されている。
【0033】
ホルダーベース96は、円形の板状に形成されており、1次室75側の受圧部を構成すると共に、その背面側には、弁体付勢ばね85が係合する環状のばね受け部102が形成されている。ホルダーベース96は、その背面で1次室75の圧力を受けると共に、弁体付勢ばね85により閉弁方向に弱い力で付勢されている。
【0034】
保持部97は、ホルダーベース96に連なり、弁体本体94の内径より僅かに太径に形成され、且つ弁体本体94の装着時において、弁体本体94の前端より突出しない長さに形成されている。
【0035】
抜止め部98は、保持部97の先端に連なる段部で構成され、弁体本体94が弁座83に当接する部位を僅かに残して、抜止め状態に保持する。すなわち、抜止め部98の前端は、弁体本体94の前端より後退した位置にあり、弁体本体94の内径より僅かに太径に形成された作動軸部99からの延長部分で構成されている。
【0036】
作動軸部99は、太径に形成された抜止め部98の先端から先細りのテーパー形状に形成されており、先端が受圧板92からの押圧を受けるように平坦面、或いは半球状(図示省略)に形成されている。また、作動軸部99は、上記の連通流路78に1次室75側から挿通しており、上記の連通流路78は、作動軸部99に対して相補的形状にされている。弁体本体94が弁座83に当接する閉弁状態では、作動軸部99と連通流路78の流路壁との間に微少間隙が生ずるように構成されており、後述する閉弁動作において、弁体本体94が弁座83に当接する前に作動軸部99が流路壁に接触しないようになっている。そして、この状態から弁体本体94が開弁し、作動軸部99が後退すると、作動軸部99の連通流路78の流路壁との間に十分な断面積の流路が確保される。この場合、作動軸部99と流路壁との間の流路面積は、弁体84のストロークに比例して大小変化することになる。
【0037】
次に、図10および図11を参照して、弁体84の開閉動作について説明する。上記のように構成された圧力調整弁27では、例えば機能液滴吐出ヘッド14の液滴吐出により2次室76の圧力が下がってゆくと(図10(a)参照)、大気圧により受圧膜体73が凹変形してゆき、受圧板92が作動軸部99を介して弁体84を1次室75側に押圧する。このとき、作動軸部99は、その周面が連通流路78の流路壁から離れるように後退する。また、同時に弁体本体94が弁座83から離れて開弁状態となる(図10(b)参照)。このようにして、弁体84が開弁すると、連通流路78を介して1次室75の機能液が2次室76に流入し、2次室76の圧力が高くなることで、受圧膜体73が外部に向かって凸変形する。このとき、作動軸部99は、その周面が連通流路78の流路壁に近づくように、弁体付勢ばね85の付勢力により前進する。また、同時に弁体本体94が、弁体付勢ばね85のばね力で弁座83に当接し、閉弁状態となる。
【0038】
一方、機能液の初期充填やクリーニング時における機能液の強制的な吸引時においては、多量の機能液が吸引されるため、それに対応して、2次室76の負圧も急激に高まり、弁開度が最大になる。係る場合、多量の機能液が連通流路78に流れ込むが、弁開度に応じて連通流路78の流路面積もさらに大きくなる(図11参照)ため、機能液を圧力損失なく2次室76に流入させることができる。
【0039】
このように、圧力調整弁27は、大気圧と機能液滴吐出ヘッド14に連なる2次室76との内部圧力のバランスにより受圧膜体73が変形することで連通流路78を開閉する。その際、弁体付勢ばね85および膜体付勢ばね88に力が分散して作用し、且つ弁体本体94の弾性力により、弁体84は極めてゆっくり開閉動作する。このため、弁体84の開閉による圧力変動(キャビテーション)が抑制され、機能液滴吐出ヘッド14の吐出駆動に影響を与えないようになっている。
【0040】
以上の構成によれば、作動軸部99および連通流路78が共に、受圧膜体73に向ってテーパー形状に形成されているため、弁体84が開弁動作する際、摺動抵抗が生じることがなく、弁体84を円滑に開閉させることができなる。また、弁体84の弁開度に応じて連通流路78の断面積が変化するため、流れ込む機能液量に関係なく、所定の機能液を圧力損失なく、2次室76に供給させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…液滴吐出装置 14…機能液滴吐出ヘッド 27…圧力調整弁 41…機能液供給装置 71…バルブハウジング 73…受圧膜体 75…1次室 76…2次室 77…隔壁 78…連通流路 83…弁座 84…弁体 94…弁体本体 95…弁ホルダー 97…保持部 98…抜止め部 99…作動軸部 W…ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブハウジング内の1次室と2次室とを画成する隔壁に貫通形成された連通流路と、前記連通流路を形成した前記隔壁の1次室側開口縁部を弁座として、前記連通流路を開閉する弁体と、前記2次室の1の面を構成すると共に前記弁体を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体と、を備え、
機能液供給手段から前記1次室に供給された機能液を、前記弁体の開閉動作により圧力調整して前記2次室に供給し、前記2次室からインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁であって、
前記弁体は、前記1次室に配設され前記弁座に対し直接開閉動作する弁体本体と、前記弁体本体を保持する保持部、および前記保持部から前記連通流路を同軸上に挿通して延び前記受圧膜体に当接する作動軸部から成る弁ホルダーと、を有し、
前記作動軸部は、前記受圧膜体に向って先細りのテーパー形状に形成され、
前記連通流路は、前記作動軸部に対し相補的形状に形成されていることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項2】
前記弁体本体が前記弁座に密接する閉弁状態において、前記作動軸部は、前記連通流路に対し微小間隙を存して挿通していることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項3】
前記弁体本体は、Oリングで構成され、
前記保持部と前記作動軸部との境界部分には、前記作動軸部を延長して形成された前記弁体本体の抜止め部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力調整弁。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の圧力調整弁と、
前記機能液供給手段と、
前記機能液滴吐出ヘッドと、を備え、
ワークに対し前記機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記ワーク上に機能液を吐出して描画を行なうことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項1】
バルブハウジング内の1次室と2次室とを画成する隔壁に貫通形成された連通流路と、前記連通流路を形成した前記隔壁の1次室側開口縁部を弁座として、前記連通流路を開閉する弁体と、前記2次室の1の面を構成すると共に前記弁体を大気圧基準で開閉動作させる受圧膜体と、を備え、
機能液供給手段から前記1次室に供給された機能液を、前記弁体の開閉動作により圧力調整して前記2次室に供給し、前記2次室からインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに供給する圧力調整弁であって、
前記弁体は、前記1次室に配設され前記弁座に対し直接開閉動作する弁体本体と、前記弁体本体を保持する保持部、および前記保持部から前記連通流路を同軸上に挿通して延び前記受圧膜体に当接する作動軸部から成る弁ホルダーと、を有し、
前記作動軸部は、前記受圧膜体に向って先細りのテーパー形状に形成され、
前記連通流路は、前記作動軸部に対し相補的形状に形成されていることを特徴とする圧力調整弁。
【請求項2】
前記弁体本体が前記弁座に密接する閉弁状態において、前記作動軸部は、前記連通流路に対し微小間隙を存して挿通していることを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁。
【請求項3】
前記弁体本体は、Oリングで構成され、
前記保持部と前記作動軸部との境界部分には、前記作動軸部を延長して形成された前記弁体本体の抜止め部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の圧力調整弁。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の圧力調整弁と、
前記機能液供給手段と、
前記機能液滴吐出ヘッドと、を備え、
ワークに対し前記機能液滴吐出ヘッドを相対的に移動させながら、前記ワーク上に機能液を吐出して描画を行なうことを特徴とする液滴吐出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−191258(P2010−191258A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−36388(P2009−36388)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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