説明

圧縮型緩衝体

【課題】この発明は、耐久性があり、弾性体の弾性力を効率よく利用して、圧縮力吸収性能を向上する圧縮型緩衝体を提供することを目的とする。
【解決手段】所望の弾性を有し、圧縮力Fの入力を許容する平板弾性ゴム10と、平板弾性ゴム10の内部に形成した貫通孔12と、貫通孔12の内部に配置した帯状プレート20と、帯状プレート20を平板弾性ゴム10に一体化する加硫接着剤とで構成し、帯状プレート20を、圧縮力Fの圧縮方向、すなわち厚みD方向に対して交差する方向に配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ゴム等の弾性材を用いて圧縮力を吸収することのできる緩衝体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム等の弾性体と他の部材を組合せて構成し、衝撃等の圧縮力吸収性能を向上させた緩衝体が提案されている。
例えば、特許文献1に提案されている緩衝材はゴム材の中に鋼管を埋め込んで一体成形して、ゴム材と鋼管の中間の弾性係数を有する緩衝材を構成し、圧縮力を吸収する圧縮力吸収性能を向上している。
【0003】
しかし、この特許文献1に提案されている緩衝材は、鋼管の弾性変形を利用しており、圧縮力が繰り返し入力されることによって鋼管は繰り返し変形し、疲労破壊を招く惧れがあり、耐久性に関する信頼性が低かった。
【0004】
【特許文献1】特開2001−263398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、耐久性があり、弾性体の弾性力を効率よく利用して、圧縮力吸収性能を向上する圧縮型緩衝体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、所望の弾性を有し、圧縮力の入力を許容する弾性体と、該弾性体の内部に形成した空洞と、該弾性体の内部に配置した薄板材と、該薄板材を前記弾性体に一体化する一体化手段とで構成し、該薄板材を、前記圧縮力の圧縮方向に対して交差する方向に配設した圧縮型緩衝体であることを特徴とする。
【0007】
上記弾性体は、天然ゴム、合成ゴム等で構成された弾性体であることを含む。
上記薄板材は、金属製や樹脂製等の薄板形状で形成され、適宜の強度を有する板材であることを含む。
上記一体化手段は、弾性体の形成時に薄板材を一体形成する一体化手段、又は形成された弾性体に挿入して一体化する一体化手段であることを含む。
【0008】
これにより、入力された圧縮力を弾性体で吸収することができる。詳しくは、上記圧縮力が入力された弾性体は弾性変形し、この弾性変形によって圧縮力を吸収することができる。なお、弾性体の内部に空洞を形成しているため、弾性体は、空洞に向かって、すなわち空洞をつぶす方向に変形することができる。この変形によって、弾性体の内部に配置した薄板材は圧縮方向に対して直交する方向の軸を回転中心とした回転移動することとなる。一体化手段によって弾性体と一体化された薄板材の回転移動によって、薄板材と弾性体との境界面にはせん断力が生じ、該せん断力によって弾性体に引張力が付与されることとなる。この引張力によって、入力された圧縮力をより効率的に吸収することができる。
【0009】
このように、内部に空洞を形成したことにより、入力された圧縮力によって内側に大きく変形し、この変形によって内部に配置した薄板材を回転移動させ、この回転移動により薄板材の境界部分の弾性体に引張力を付与し、弾性体自身が有する弾性性能を最大限に発揮させ、圧縮力吸収性能を向上させた圧縮型緩衝体を得ることができる。
【0010】
また、弾性体内部に配置された薄板材は付与された圧縮力によって変形しないため、繰り返し荷重による疲労破壊の惧れもなく、耐久性のある圧縮型緩衝体を構成することができる。
【0011】
この発明の態様として、前記弾性体を、厚み方向の前記圧縮力の入力を許容する平板形状の平板弾性体で構成し、入力される前記圧縮力を前記平板弾性体に伝達する圧縮力伝達薄板材を、前記平板弾性体の前記厚み方向の両端面に備えることができる。
【0012】
これにより、圧縮力伝達薄板材を介して、前記平板弾性体に対して圧縮力を略均等に入力することができる。また、前記厚み方向の両端面に圧縮力伝達薄板材を備えているため、前記平板弾性体が外部からの損傷を受ける可能性を低減することができる。
【0013】
また、前記弾性体を、厚み方向の前記圧縮力の入力を許容する平板形状の平板弾性体で構成したことによって、例えば、圧縮力によって面外方向に変形することを防止して、弾性体を確実に内部方向に変形させることができる。
【0014】
したがって、圧縮力伝達薄板材によって均等に入力された圧縮力によって、内部に配置した薄板材を確実に回転移動させ、この回転移動により、圧縮力吸収性能を確実に向上させることができる。
【0015】
また、この発明の態様として、前記空洞を、前記平板弾性体の長さ方向に貫通する貫通孔で構成し、前記薄板材を、前記平板弾性体の長さ方向に沿って配設するとともに、前記平板弾性体の厚み方向且つ幅方向に対して交差する方向に配設することができる。
【0016】
これにより、例えば、空気が密閉された空洞の場合と比較して、前記空洞を、前記平板弾性体の長さ方向に貫通する貫通孔で構成したことによって、厚み方向の変形、すなわち貫通孔を形成する空間をつぶす方向に容易に変形することができる。
【0017】
また、前記薄板材を、前記平板弾性体の長さ方向、すなわち貫通孔に略平行に配設し、前記平板弾性体の厚み方向且つ幅方向に対して交差する方向に配設したため、厚み方向の変形、すなわち貫通孔を形成する空間をつぶす方向の変形によって、より効率よく薄板材を回転移動させることができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記薄板材に、厚み方向且つ幅方向で構成された幅方向断面における回転の回転中心となる長さ方向の回転中心軸を備えることができる。
【0019】
これにより、上記弾性体の変形による薄板材の回転移動を確実にすることができる。詳しくは、例えば圧縮力による前記空洞を形成する空間をつぶす方向の変形によって薄板材に幅方向の力が付与された場合であっても、該幅方向の力を回転中心軸を中心とする回転力に変換して薄板材を回転移動させることができる。したがって、薄板材の回転移動による圧縮力吸収性能を確実に向上させることができる。
【0020】
また、この発明の態様として、前記薄板材に、前記一体化手段による前記薄板材と前記弾性体との一体化を補強する一体化補強手段を備えることができる。
前記一体化補強手段は、薄板材の肉厚方向に貫通する薄板材貫通孔や、薄板材の表面に形成した凹凸や表面処理による摩擦力増進手段で構成することを含む。
【0021】
これにより、前記薄板材と前記弾性体との一体化をより堅固にすることができるため、入力された圧縮力による薄板材の回転移動に伴うせん断方向の引張力を境界付近の弾性体に確実に付与することができ、圧縮型緩衝体の圧縮力吸収性能をさらに向上することができる。
【0022】
また、この発明の態様として、前記弾性体を、ゴム材で構成するとともに、前記一体化手段を、前記ゴム材の加硫時に、前記ゴム材と前記薄板材とを接着する加硫接着で構成することができる。
【0023】
前記ゴム材は、減衰ゴム等の合成ゴム材や天然ゴム材等であることを含む。
上記加硫接着は、ゴム材の加硫成型時の熱と圧力を利用して加硫と同時に薄板材とゴム材とを接着する接着手段であり、接着剤を塗布しない直接加硫接着及び接着剤を塗布する間接加硫接着であることを含む。
【0024】
これにより、ゴム材と薄板材とをさらに確実に一体化させることができるとともに、ゴム材の形成が完了した時点ですでに薄板材との一体化も完了しているため、ゴム材の形成後に薄板材を挿着して一体化する場合と比較して、圧縮型緩衝体を形成する工程を低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、耐久性があり、弾性体の弾性力を効率よく利用して、圧縮力吸収性能を向上する圧縮型緩衝体を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施例について説明する。
圧縮型緩衝体1の斜視図を示す図1と、圧縮型緩衝体1の平面方向の断面図による説明図を示す図2とともに圧縮型緩衝体1について説明する。
【0027】
圧縮型緩衝体1は、平面板状の平板弾性ゴム10と、該平板弾性ゴム10の正面と背面に配置して平板弾性ゴム10をサンドイッチ状に挟みこむ鋼板11と、平板弾性ゴム10内部に配置した帯状の帯状プレート20とで構成している。
【0028】
平板弾性ゴム10は、縦長且つ幅広の直方体形状で形成され、幅W(図2において左右方向の長さ)を略3等分する位置に、平板弾性ゴム10を上下方向に貫通し、平板弾性ゴム10の厚みD(図2において上下方向の長さ)の1/3程度の径を有する円筒形状の貫通孔12を有するとともに、平板弾性ゴム10の側面10aに貫通孔12の半分の半円断面で形成した半円柱形状の半円柱凹部13を備えている。
【0029】
なお、平板弾性ゴム10は、高減衰ゴムで構成している。高減衰ゴムは、ゴム分子間の摩擦減衰および分子間に存在する粘性体による粘性減衰をあわせ持つように配合設計されたゴム材料である。
鋼板11は、平板弾性ゴム10の正面及び背面の全面を覆う金属製の薄板であり、平板弾性ゴム10の正面及び背面に接着固定されている。
【0030】
帯状プレート20は金属製の帯状の薄板材で構成され、半円柱凹部13と貫通孔12の間、及び貫通孔12同士の間で、平板弾性ゴム10の長さL(図1において上下方向の長さ)に沿って、すなわち貫通孔12に平行に配置されている。
【0031】
なお、帯状プレート20の配置方向は、圧縮力Fが付与される前の状態の圧縮型緩衝体1の断面図である図2(a)に示すように、厚みD方向に対して交差する方向、すなわち隣合う帯状プレート20,20とで平面視ハの字形状となるよう配置されている。
【0032】
また、帯状プレート20は、加硫接着剤が塗布され、平板弾性ゴム10の加硫成型時の熱と圧力を利用し平板弾性ゴム10に間接加硫接着されているが、加硫接着剤を用いない直接加硫接着で接着してもよい。
【0033】
このように構成された圧縮型緩衝体1を、厚みD方向の圧縮力Fで圧縮すると、鋼板11を介して平板弾性ゴム10に圧縮力Fは伝達され、平板弾性ゴム10は圧縮方向(厚みDの内側方向)に変形する。
【0034】
この圧縮方向の変形について詳述すると、入力された圧縮力Fによって、貫通孔12が隣合う帯状プレート20,20で構成するハの字状の上側(図2において左側と中央の帯状プレート20で構成する左側のハの字の場合は図2の上側、中央と右側の帯状プレート20で構成する右側のハの字の場合は図2の下側)を凸とするおむすび形状になるように、また半円柱凹部13も貫通孔12の半断面と同様の形状となるように平板弾性ゴム10が変形する。
【0035】
なお、おむすび形状になる変形についてさらに詳述すると、図2(b)に示すように、平面視円形断面の貫通孔12の等間隔3方向のうち1方向が内側に変形し(矢印di)、残る2方向が外側に変形する(矢印do)ことで形成される。
【0036】
これにより、圧縮力Fが付与されて変形した状態の圧縮型緩衝体1の断面図である図2(b)に示すように、平板弾性ゴム10は厚みDが薄くなり、帯状プレート20は矢印rに示すように回転し、隣合う帯状プレート20,20で構成する平面視ハの字形状の裾が広がるように変形する。
【0037】
このとき、ハの字形状の上側を凸とするおむすび形状になる貫通孔12及び半円柱凹部13の変形、及び帯状プレート20の矢印rの回転移動によって、帯状プレート20と平板弾性ゴム10との境界部分には、矢印Sで示すせん断力Sが生じている(図2(b)参照)。
【0038】
このせん断力Sは、帯状プレート20の両面側において帯状プレート20の幅方向に平行、且つそれぞれが逆方向に付与される力であり、このせん断力Sによって平板弾性ゴム10には引張力が付与されることとなる。
【0039】
したがって、圧縮型緩衝体1に入力された圧縮力Fは、減衰ゴムで形成され、弾性変形する平板弾性ゴム10の減衰効果によって、その圧縮力Fのエネルギーが吸収され、さらに、上記平板弾性ゴム10の弾性変形に伴う帯状プレート20の回転移動によって生じたせん断力Sに基づく引張力によって、さらに吸収される。
【0040】
このように、圧縮型緩衝体1は、平板弾性ゴム10内部に帯状プレート20を配置するとともに、該帯状プレート20と隣り合うように貫通孔12及び半円柱凹部13を形成することによって、入力された圧縮力Fに対して平板弾性ゴム10自身が有する弾性性能を十分に発揮して、圧縮力Fのエネルギーを効率よく吸収することができる。
【0041】
なお、貫通孔12及び半円柱凹部13の間或いは貫通孔12同士の間で、帯状プレート20を互い違いの方向で配置したことによって、貫通孔12及び半円柱凹部13をおむすび形状に変形させて、効果的に帯状プレート20を矢印r方向に回転させることができる。したがって、帯状プレート20との境界付近での平板弾性ゴム10に有効に引張力を付与して、圧縮力Fを吸収することができる。
【0042】
また、平板弾性ゴム10を上下方向に貫通する貫通孔12を備えているため、容易に貫通孔12をつぶす方向に変形させることができる。詳述すると、例えば、平板弾性ゴム10を貫通せず、内側に空気が密閉された空洞の場合、前記空洞内部の空気が圧縮抵抗となり、空洞をつぶす方向の平板弾性ゴム10の変形を抑制するが、上述したように、貫通孔12は平板弾性ゴム10を貫通しているため、貫通孔12を形成する空間をつぶす方向、すなわち厚み方向に容易に変形することができる。したがって、貫通孔12をつぶす方向の平板弾性ゴム10の変形による平板弾性ゴム10の圧縮力吸収性能を容易に向上することができる。
【0043】
さらにまた、平板弾性ゴム10内部に配置された帯状プレート20は、付与された圧縮力Fによって平板弾性ゴム10内部で回転移動するが、変形しないため、繰り返しの圧縮力Fによる繰り返し変形に起因する疲労破壊の惧れもなく、耐久性のある圧縮型緩衝体1を構成することができる。
【0044】
このように構成した圧縮型緩衝体1を利用した衝撃吸収装置のひとつとして、乗用車100に装備するバンパー装置110について、バンパー装置110を装着した乗用車100の平面図を示す図3とともに説明する。
【0045】
バンパー装置110は乗用車100の前後端に配置したバンパーであり、内部に幅方向wに並列配置した圧縮型緩衝体1を備え、圧縮型緩衝体1は車体前後部に直接固定されている。
【0046】
この構成により、乗用車100が前後方向に衝突した場合であっても、衝突の衝撃はバンパー装置110内部の圧縮型緩衝体1に圧縮力として入力されるため、圧縮型緩衝体1が衝突の衝撃を吸収することができる。したがって、衝突による衝撃が車体本体に及ぼす影響を低減することができる。
【0047】
なお、乗用車100の車体前部が対向車と衝突する場合、車体前部が全て衝突するフルラップ衝突と、車体前部の一部のみが衝突するオフセット衝突がある。道路運送車両法の保安基準では、上記フルラップ衝突及びオフセット衝突の両基準のクリアが義務化されている。フルラップ衝突に比べて衝突面積が小さいオフセット衝突の場合、フルラップ衝突での損傷レベルと同程度のレベルに押えるためには、車体本体の剛性強化が必要となるが、この剛性強化によって車体重量が増加し、車体重量増加に伴う衝突時の慣性力が大きくなり、剛性強化による損傷レベルの低減効果は大きくはなかった。
【0048】
上述したように、バンパー装置110に圧縮型緩衝体1を備えたことによって、車体の剛性を強化する場合と比較して、少ない重量増で、バンパー装置110の圧縮力吸収性能を向上することができる。したがって、道路運送車両法の保安基準によるフルラップ衝突及びオフセット衝突の両基準をクリアできるバンパー装置110を備えた乗用車100を構成することができる。
【0049】
なお、車体の剛性を強化する場合と比較して、少ない重量増で、バンパー装置110の圧縮力吸収性能を向上することができるため、乗用車100の燃費の低下も抑制することもできる。
【0050】
次に、このように構成した圧縮型緩衝体1を利用した緩衝装置のひとつとして、連続桁橋梁に組み込んだ減衰装置210について、減衰装置210の設置部分の減衰連結桁橋梁200の縦断面図を示す図4と、図4に示す断面位置での減衰連結桁橋梁200の横断面図を示す図5と、図4に示す断面位置での減衰連結桁橋梁200の平面方向断面図を示す図6とともに説明する。
【0051】
なお、図5において、中心線CLより左側の横断面図は減衰連結桁橋梁200の横断面におけるA−A矢視方向の断面図を示し、中心線CLより右側の横断面図は減衰連結桁橋梁200の横断面におけるB−B矢視方向の断面図を示している。また、図6は図4に示すC−C矢視方向の断面図を示し、図4は図5に示すD−D矢視方向の断面図を示している。
【0052】
減衰連結桁橋梁200は、橋脚220と、該橋脚220の上面に設置した支承部221を介して支承されるT型PC桁230と、減衰装置210とで構成されている。
T型PC桁230は、水平方向の床板231と、該床板231の底面で橋軸方向(図4において左右方向)に配設された縦長長方形断面の主桁232とで構成されている。なお、主桁232は幅方向(図5参照)に所定間隔を隔てて複数配置され、隣り合う主桁232の間を連結する幅方向の横桁233を、橋脚220部分に備えている。
【0053】
また、可動支承のひとつである弾性すべり支承で構成した支承部221によって、T型PC桁230の鉛直荷重を橋脚220で支承しているため、T型PC桁230の水平移動時には10%程度の摩擦によるエネルギー低減効果を有している。
【0054】
減衰装置210は、T型PC桁230の横桁233の橋軸方向両側に備えた圧縮型緩衝部211と、橋脚220の橋軸方向両端部のうち横桁233に対応する部分の上面を突出させた褄壁212とで構成されている。
【0055】
圧縮型緩衝部211は、図4のa部拡大図や図6のb部拡大図に示すように、橋軸方向に2つの平板弾性ゴム10を並置し、その平板弾性ゴム10同士の間および平板弾性ゴム10の両端に配置した鋼板11とを配置して積層状態に構成している。
【0056】
圧縮型緩衝部211を構成する各平板弾性ゴム10には、上述した圧縮型緩衝体1の平板弾性ゴム10と同様に長さ方向(図5において上下方向)に貫通する貫通孔12と、半円柱凹部13と、半円柱凹部13と貫通孔12或いは貫通孔12同士の間に配置された帯状プレート20とを備えている。
圧縮型緩衝部211は、横桁233と褄壁212との間で挟まれるようにして配置している。
【0057】
このように構成された減衰連結桁橋梁200に水平地震動が入力されると、詳しくは、支持地盤の水平地震動が橋脚220に入力されると、その水平地震動は支承部221を介してT型PC桁230に入力される。
【0058】
しかし、横桁233の両側で褄壁212との間に圧縮型緩衝部211を配置しているため、入力された水平地震動は、圧縮型緩衝部211に圧縮力として入力され、圧縮型緩衝部211が水平地震動の振動エネルギーを吸収する。したがって、橋脚220から入力され、T型PC桁230に伝達される水平地震動を低減することができ、耐久性のある減衰連結桁橋梁200を構成することができる。
【0059】
また、圧縮型緩衝部211が水平地震動の振動エネルギーを吸収し、T型PC桁230に伝達される水平地震動を低減することができるため、T型PC桁230の水平移動量は減少する。したがって、T型PC桁230と隣接構造物との遊間を狭く設定することができる。
【0060】
なお、既設橋梁においても、可動支承で支承する橋脚の上面の橋軸方向端部に褄壁212を増設し、横桁233に圧縮型緩衝部211を設置することによって上記既設橋梁を、上記減衰装置210を備えた橋梁に改修することができる。
【0061】
また、箱桁橋梁の場合においては、減衰連結桁橋梁200の横桁233に対応する突出部分を箱桁底面から下方に突出する態様で増設して、該突出部分に圧縮型緩衝部211を設置するとともに、橋脚に褄壁212を増設することで減衰装置210を備えた箱桁橋梁を構成することができる。
【0062】
さらに、例えば図7に示すように、減衰建築構造物200aの減衰装置210aとして圧縮型緩衝部211aを用いてもよい。なお、図7は減衰建築構造物200aの説明図を示し、詳しくは、図7(a)は減衰装置210aを備えた減衰建築構造物200aの縦断面図を示し、図7(b)は図7(a)に示すE−E矢視方向の平面方向断面を示し、図7(c)は図7(b)におけるc部の拡大図を示している。
【0063】
この場合、地中で地上構造物230aの鉛直荷重を、支持部材221aを介して支持する基礎構造220aの上面に圧縮型緩衝部211aを設置する平面視八角形の設置凹部212aを設置し、地上構造物230aの底面に下方に突出し、上記設置凹部212aに遊嵌する底面視八角形の八角形突起201aを設置し、設置凹部212aの鉛直内面と八角形突起201a外面との間に圧縮型緩衝部211aを設置する。
【0064】
圧縮型緩衝部211aは、図7(c)のc部拡大図に示すように、八角形突起201aの径方向、すなわち放射方向に2つの平板弾性ゴム10を並置し、その平板弾性ゴム10同士の間および平板弾性ゴム10の両端に配置した鋼板11とを配置して積層状態に構成している。
【0065】
圧縮型緩衝部211aを構成する各平板弾性ゴム10には、上述した圧縮型緩衝体1の平板弾性ゴム10と同様に長さ方向(図7(a)において上下方向)に貫通する貫通孔12と、半円柱凹部13と、半円柱凹部13と貫通孔12或いは貫通孔12同士の間に配置された帯状プレート20とを備えている。
【0066】
このように構成された減衰建築構造物200aに水平地震動が入力されると、詳しくは、基礎構造220aを介して水平地震動が減衰建築構造物200aに入力されると、その水平地震動は支持部材221aを介して地上構造物230aに入力される。
【0067】
しかし、八角形突起201aと設置凹部212aとの間に圧縮型緩衝部211aを配置しているため、入力された水平地震動は、圧縮型緩衝部211aに圧縮力として入力され、圧縮型緩衝部211aが水平地震動の振動エネルギーを吸収する。したがって、基礎構造220aから入力され、地上構造物230aに伝達される水平地震動を低減することができる。したがって、耐久性のある減衰建築構造物200aを構成することができる。
【0068】
このように上述の構成で構成した圧縮型緩衝体1を利用して衝撃吸収装置や緩衝装置を構成し、入力された圧縮力を効率よく吸収することができるが、さらには図8に示すように、プレートの厚み方向に貫通する薄板材貫通孔21aを有する帯状プレート21で圧縮型緩衝体1aを構成してもよい。なお、図8(a)は圧縮力Fが付与される前の状態の圧縮型緩衝体1aの断面図を示し、図8(b)は圧縮力Fが付与されて変形した状態の圧縮型緩衝体1aの断面図を示す。
【0069】
これにより、平板弾性ゴム10は薄板材貫通孔21aを貫通して、帯状プレート21の両側の平板弾性ゴム10を一体化することができる。したがって、帯状プレート21と平板弾性ゴム10との境界部分に生じるせん断力Sによって平板弾性ゴム10に確実に引張力を付与することができる。よって、確実な圧縮力吸収性能を有する圧縮型緩衝体1aを構成することができる。
【0070】
また、図9に示すように、プレートの厚み方向に突出する一体化凸部22aを備えた帯状プレート22で圧縮型緩衝体1bを構成してもよい。なお、図9(a)は圧縮力Fが付与される前の状態の圧縮型緩衝体1bの断面図を示し、図9(b)は圧縮力Fが付与されて変形した状態の圧縮型緩衝体1bの断面図を示す。
【0071】
帯状プレート22は、図9に示すように、帯状プレート22の両側のそれぞれの面において、帯状プレート22の長さ方向の中央位置より矢印rの先端側の長さ方向半面に、半円断面で突出する半円柱形状の一体化凸部22aを複数備えている。
【0072】
これにより、平板弾性ゴム10と帯状プレート22との一体化をより堅固なものとできるため、貫通孔12や半円柱凹部13をつぶす方向の平板弾性ゴム10の変形による矢印r方向の回転移動によって、エネルギーをロスすることなく平板弾性ゴム10と帯状プレート22との境界部分にせん断力Sを生じることができる。したがって、平板弾性ゴム10に、確実に引張力を付与することができる。よって、確実な圧縮力吸収性能を有する圧縮型緩衝体1bを構成することができる。
【0073】
なお、帯状プレート22に一体化凸部22aを備えずとも、帯状プレート22の表面に施した粗化処理によって、平板弾性ゴム10と帯状プレート22との一体化をより堅固なものとすることができる。
【0074】
さらにまた、図10及び11に示すように、回転軸23aを備えた帯状プレート23で圧縮型緩衝体1cを構成してもよい。なお、図10(a)は圧縮型緩衝体1cの斜視図を示し、図10(b)は1bの分解斜視図を示している。図11(a)は圧縮力Fが付与される前の状態の圧縮型緩衝体1cの平面図を示し、図11(b)は圧縮力Fが付与されて変形した状態の圧縮型緩衝体1cの平面図を示す。
【0075】
圧縮型緩衝体1cは、圧縮型緩衝体1と同様に貫通孔12及び半円柱凹部13を備えた平板弾性ゴム10と、平板弾性ゴム10の上下端から突出する長さLで形成された鋼板11bとで構成している。
【0076】
なお、鋼板11bの上下の突出部分における上下端の所望の位置に回転軸23aの遊嵌を許容する平面視U字状の遊嵌リング23bを備えている。詳述すると、平板弾性ゴム10の手前側(図11において下側)の鋼板11bの上端の幅W方向左右位置にひとつずつ計2つの遊嵌リング23bを備え、奥側(図11において上側)の鋼板11bの上端の幅W方向中央位置にひとつの遊嵌リング23bを備えている。鋼板11bの下端はこの逆であり、手前側中央にひとつの遊嵌リング23bを備え、奥側左右にそれぞれ遊嵌リング23bを備えている。
【0077】
帯状プレート23は、帯状プレートの上下端面の幅方向及び肉厚方向の中央位置に配置し、平板弾性ゴム10と一体化された状態で平板弾性ゴム10の上下面より突出する回転軸23aを備えている。なお、回転軸23aは、圧縮型緩衝体1cにおいて、回転自在及び厚みD方向にスライド自在に遊嵌リング23bに遊嵌している。
【0078】
このように構成した圧縮型緩衝体1cを厚みD方向の圧縮力Fで圧縮すると、圧縮型緩衝体1と同様に、平板弾性ゴム10が圧縮方向に変形する。このとき、圧縮型緩衝体1cの貫通孔12及び半円柱凹部13も圧縮型緩衝体1と同様の変形をする。
【0079】
その平板弾性ゴム10の変形によって、帯状プレート23は矢印rに示すように回転し、隣合う帯状プレート23で構成する平面視ハの字形状が広がるように変形する。
【0080】
このとき、帯状プレート23は、貫通孔12及び半円柱凹部13の矢印di及び矢印do方向の変形によって、例えば幅W方向の力が付与されることもあるが、帯状プレート23は回転軸23aを介して遊嵌リング23bによって幅W方向の移動が規制されているため、幅W方向の力を矢印r方向の回転力に変換し、圧縮力Fによる平板弾性ゴム10の変形に基づく帯状プレート23の回転量を増大することができる。
【0081】
したがって、回転量が増大した帯状プレート23と平板弾性ゴム10との境界部分に生じるせん断力Sを増大させ、このせん断力Sに伴って平板弾性ゴム10に付与される引張力も増大するため、圧縮型緩衝体1cのエネルギー吸収性能を向上することができる。
【0082】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の圧縮型緩衝体は、圧縮型緩衝体1,1a,1b,1cまたは圧縮型緩衝部211,211aに対応し、
以下同様に、
弾性体及び平板弾性体は、平板弾性ゴム10に対応し、
空洞及び貫通孔は、貫通孔12に対応し、
薄板材は、帯状プレート20,21,22,23に対応し、
一体化手段は、間接加硫接着に対応し、
圧縮力伝達薄板材は、鋼板11,11cに対応し、
厚み方向は、厚みDに対応し、
幅方向は、幅Wに対応し、
長さ方向は、長さLに対応し、
一体化補強手段は、薄板材貫通孔21aや一体化凸部22aに対応し、
回転中心軸は、回転軸23aに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】圧縮型緩衝体の斜視図。
【図2】圧縮型緩衝体の説明図。
【図3】圧縮型緩衝体を利用したバンパー装置を備えた乗用車の平面図。
【図4】減衰装置の設置部分の減衰連結桁橋梁の縦断面図。
【図5】減衰連結桁橋梁の横断面図。
【図6】減衰連結桁橋梁の平面方向断面図。
【図7】減衰建築構造物の説明図。
【図8】別の実施形態の圧縮型緩衝体の説明図。
【図9】別の実施形態の圧縮型緩衝体の説明図。
【図10】さらに別の実施形態の圧縮型緩衝体の説明図。
【図11】さらに別の実施形態の圧縮型緩衝体の説明図。
【符号の説明】
【0084】
1,1a,1b,1c…圧縮型緩衝体
11,11c…鋼板
10…平板弾性ゴム
12…貫通孔
20,21,22,23…帯状プレート
21a…薄板材貫通孔
22a…一体化凸部
23a…回転軸
211,211a…圧縮型緩衝部
D…厚み
F…圧縮力
L…長さ
W…幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の弾性を有し、圧縮力の入力を許容する弾性体と、
該弾性体の内部に形成した空洞と、
該弾性体の内部に配置した薄板材と、
該薄板材を前記弾性体に一体化する一体化手段とで構成し、
該薄板材を、前記圧縮力の圧縮方向に対して交差する方向に配設した
圧縮型緩衝体。
【請求項2】
前記弾性体を、厚み方向の前記圧縮力の入力を許容する平板形状の平板弾性体で構成し、
入力される前記圧縮力を前記平板弾性体に伝達する圧縮力伝達薄板材を、前記平板弾性体の前記厚み方向の両端面に備えた
請求項1に記載の圧縮型緩衝体。
【請求項3】
前記空洞を、前記平板弾性体の長さ方向に貫通する貫通孔で構成し、
前記薄板材を、前記平板弾性体の長さ方向に沿って配設するとともに、
前記平板弾性体の厚み方向且つ幅方向に対して交差する方向に配設した
請求項2に記載の圧縮型緩衝体。
【請求項4】
前記薄板材に、
厚み方向且つ幅方向で構成された幅方向断面における回転の回転中心となる長さ方向の回転中心軸を備えた
請求項1、2或いは3に記載の圧縮型緩衝体。
【請求項5】
前記薄板材に、
前記一体化手段による前記薄板材と前記弾性体との一体化を補強する一体化補強手段を備えた
請求項1から4のうちいずれかに記載の圧縮型緩衝体。
【請求項6】
前記弾性体を、ゴム材で構成するとともに、
前記一体化手段を、
前記ゴム材の加硫時に、前記ゴム材と前記薄板材とを接着する加硫接着で構成した
請求項1から5のうちいずれかに記載の圧縮型緩衝体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−162365(P2009−162365A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2979(P2008−2979)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(508010857)
【Fターム(参考)】