説明

圧縮成形用樹脂組成物と樹脂封止型半導体装置およびその製造方法

【課題】半導体素子の樹脂封止成形時に生じるボンディングワイヤの変形などによる不良を抑えるとともに、樹脂充填性を向上させてボイドの発生を防止する。
【解決手段】本発明の圧縮成形用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)フェノール樹脂硬化剤と、(C)無機充填剤をそれぞれ必須成分として含有し、溶融温度における粘度が15Pa・s以下でありかつゲルタイムが45〜80秒であることを特徴とする。樹脂封止型半導体装置は、この圧縮成形用樹脂組成物の硬化物により封止された半導体素子を具備する。また、樹脂封止型半導体装置の製造方法は、半導体素子を基材の上に搭載する工程と、前記圧縮成形用樹脂組成物を所定の形状に圧縮成形することにより、前記半導体素子を封止する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子などの電子部品の封止材料として使用される圧縮成形用樹脂組成物とそれを用いて封止された樹脂封止型半導体装置、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイオード、トランジスタ、コンデンサ、集積回路などの半導体装置においては、熱硬化性樹脂による封止が広く行われている。封止用樹脂としては、熱硬化性樹脂のなかでもエポキシ樹脂が一般に用いられており、特にフェノール樹脂を硬化剤とし、シリカ粉末のような無機充填剤や顔料などを配合したエポキシ樹脂組成物が、成形性や信頼性に優れ、毒性がなくまた安価であることから多用されている。
【0003】
近年、半導体素子の高集積化、高速化、多機能化などが求められていることに加えて、設計技術や製造技術の進歩により、年々微細化が進められている。そして、半導体素子の高集積化や微細化などに伴って、パッケージ構造として、半導体素子と基材の配線部とを接続するボンディングワイヤ(金線)の超微細配線化や長ループ化が要求されている。また、小型化、軽量化の要求も大きい。
【0004】
半導体素子のエポキシ樹脂による封止は、従来からトランスファ成形により行われている。この方法は、エポキシ樹脂と充填剤などの成形材料から成る未硬化樹脂を加熱・溶融し、トランスファ成形機を用いて金型内に注入し、高温高圧状態で硬化させることにより、金型内に配置された半導体チップなどの素子を封止する方法である。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
この方法によれば、半導体チップを樹脂硬化物が完全に覆うため、信頼性に優れかつパッケージの外観が良好な半導体装置が得られる。
【0006】
しかしながら、トランスファ成形で樹脂硬化物の内部にボイドができないようにするには、金型内への未硬化樹脂の充填性を上げる必要がある。そのため、未硬化樹脂の注入の際に金型内部に圧力がかかり過ぎて、金線の変形が生じるという問題があった。
【特許文献1】特開平7−115103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、半導体素子の樹脂封止成形時に生じるボンディングワイヤの変形などによる不良を抑えるとともに、樹脂充填性を向上させてボイドの発生を防止することを可能にする封止用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。また、そのようなエポキシ樹脂組成物を用いることにより、信頼性が向上された樹脂封止型半導体装置およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、成形時の樹脂流動距離を短くすることが有効であることを見出した。すなわち、シート形状などの樹脂組成物を使用し圧縮成形法により樹脂封止層を形成することにより、金線変形などを防止することができることを見出した。さらに、封止用樹脂組成物の特性において、圧縮成形法により樹脂封止を行うために必須の範囲が存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の圧縮成形用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)フェノール樹脂硬化剤と、(C)無機充填剤をそれぞれ必須成分として含有する樹脂組成物であり、溶融温度における粘度が15Pa・s以下でありかつゲルタイムが45〜80秒であることを特徴としている。
【0010】
本発明の樹脂封止型半導体装置は、上述した本発明の圧縮成形用樹脂組成物の硬化物により封止された半導体素子を具備することを特徴としている。
【0011】
本発明の樹脂封止型半導体装置の製造方法は、半導体素子を基材の上に搭載する工程と、上述した本発明の圧縮成形用樹脂組成物を所定の形状に圧縮成形することにより、前記半導体素子を封止する工程を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の圧縮成形用樹脂組成物は、溶融温度において十分に低い粘度を有し、かつ十分に長いゲルタイムを有しているので、この樹脂組成物を用いることで圧縮成形によりボイドのない樹脂封止層を形成することができる。そして、こうして圧縮成形により樹脂封止を行うことで、成形時の樹脂流動距離を短くすることができるので、金線の変形などを防止することができ、信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を歩留まり良く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0014】
本発明の第1の実施形態は圧縮成形用樹脂組成物であり、(A)エポキシ樹脂と、(B)フェノール樹脂硬化剤と、(C)無機充填剤をそれぞれ必須成分として含有する。そして、樹脂溶融温度(約175℃)における粘度が15Pa・s以下であり、かつ45〜80秒のゲルタイムを有している。
【0015】
実施形態の樹脂組成物をさらに詳細に説明する。
【0016】
(A)成分のエポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であればよく、その種類などは限定されない。例えば、フェノールまたはアルキルフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合物をエポキシ化することにより得られるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラ(ヒドロキシフェニル)アルカンのエポキシ化物、ビスヒドロキシビフェニル系エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。また、半導体装置の信頼性を確保するために、エポキシ樹脂中に含まれる塩素量が1000ppm以下であることが好ましい。
【0017】
(B)成分のフェノール樹脂硬化剤としては、分子中にフェノール性水酸基を有し、(A)成分であるエポキシ樹脂中のエポキシ基と反応して硬化させ得るものであれば、いかなるものであってもよい。すなわち、フェノール、アルキルフェノールなどのフェノール類とホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドとを反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂など、これらノボラック型フェノール樹脂の変性樹脂、例えばエポキシ化またはブチル化したノボラック型フェノール樹脂など、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、パラキシレン変性フェノール樹脂、フェノール類とベンズアルデヒド、ナフチルアルデヒドなどとの縮合物、トリフェノールメタン化合物、テルペンフェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂などが挙げられる。これらの1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
このようなフェノール樹脂硬化剤は、水酸基当量が130以上であることが好ましい。水酸基当量を130以上とすることで、十分な難燃性や低吸湿性が得られる。また、樹脂封止の信頼性を確保するために、フェノール樹脂中に含まれるフリーのフェノール類の濃度を1%以下とすることが好ましい。
【0019】
(B)成分のフェノール樹脂硬化剤の具体例としては、明和化成株式会社製のMEH−7851シリーズ(ビフェノールノボラック型フェノール樹脂)、三井化学株式会社製のXL、XLCシリーズ(フェノールアラルキル樹脂)、鹿島工業株式会社製のFPIシリーズ(多官能芳香族フェノール樹脂)などが挙げられる。
【0020】
(A)成分のエポキシ樹脂と(B)成分のフェノール樹脂硬化剤との配合比は、特に限定されるものではないが、それぞれの未反応成分を少なく抑えるために、(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数(a)に対する(B)フェノール樹脂のフェノール性水酸基数(b)の比(フェノール性水酸基数(b)/エポキシ基数(a))が、0.5〜1.5の範囲になるように設定することが望ましい。さらに、(b)/(a)が0.8〜1.1の範囲がより好ましい。
【0021】
(b)/(a)の比が0.5未満では、エポキシ樹脂の硬化反応が十分に生起しないおそれがある。一方、(b)/(a)の比が1.5を超えると、硬化物の特性特に耐湿性が劣化しやすくなる。
【0022】
(C)成分の無機充填剤は、樹脂組成物の硬化物の難燃性、耐クラック性、熱伝導率、熱膨張係数、吸水性、弾性率、機械的強度などを改善する目的で配合されるものである。このような無機充填剤としては、一般にエポキシ樹脂組成物に使用されている各種の充填剤を使用することができる。例えば、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどが挙げられる。これらの充填剤は、目的に応じて1種または2種以上の混合物として使用されるが、特にコストや特性のバランスなどの点から溶融シリカを使用することが好ましい。
【0023】
(C)成分である無機充填剤の配合量は、樹脂組成物全体に対して80〜90重量%の範囲とすることが好ましい。無機充填剤の配合量が80重量%未満であると、前記したような特性の改善効果を十分に得ることができない。一方、無機充填剤の配合量が90重量%を超えると、樹脂組成物の流動性が著しく低下し、成形性に劣ることから実用に適さなくなる。
【0024】
この実施形態の封止用樹脂組成物には、上述した(A)〜(C)の必須成分以外に必要に応じて他の添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。その他の添加剤としては、通常エポキシ樹脂組成物に配合される硬化促進剤、アミノシラン系、エポキシシラン系、ビニルシラン系、アルキルシラン系、メルカプトシラン系などのシラン系カップリング剤や、アルキルチタネート、アミン変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイルのような表面処理剤、カーボンブラック、酸化チタンなどの着色剤、天然ワックスや合成ワックスなどの離型剤、シリコーンゴムなどの低応力化剤などが挙げられる。なお、これらに限定されるものではない。
【0025】
これらの添加剤のうちで硬化促進剤は、樹脂組成物に速やかな硬化性を付与するために配合されるものであり、フェノール樹脂硬化剤を用いてエポキシ樹脂を硬化させる際に使用されるものであれば、いかなるものでも使用することができる。例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタンなどの有機ホスフィン化合物、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール化合物およびその誘導体、DBU(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7)またはそのフェノール塩などが挙げられる。これらは必要に応じて単独でまたは2種以上の混合物として使用される。
【0026】
これらの硬化促進剤は、それぞれの触媒活性が異なるため、好適な配合割合を決めることが難しいが、一般には樹脂組成物全体に対して0.1〜5重量%の範囲で加えることが好ましい。硬化促進剤の配合割合が樹脂組成物全体に対して0.1重量%未満であると、硬化促進の効果を十分に発揮することができない。一方、硬化促進剤の配合割合が5重量%を超えると、硬化物の耐湿信頼性などが低下するおそれがある。
【0027】
本発明の実施形態の樹脂組成物では、前記した(A)〜(C)の各成分の配合量および前記したその他の添加剤の配合量を調整することにより、樹脂溶融温度(約175℃)における粘度が15Pa・s以下でゲルタイムが45〜80秒となっている。このような粘度およびゲルタイムの調整は、特に硬化促進剤の配合割合を調整することにより容易に行われる。
【0028】
上述した実施形態の樹脂組成物を製造するには、例えば、(A)〜(C)の必須成分および必要に応じて他の添加成分を、ミキサーなどで均一に混合(ドライブレンド)し、さらに熱ロール、ニーダ、押出し機などで加熱溶融混合する。次いで、冷却固化させた後、固化物を適当な大きさに粉砕して樹脂組成物を得る。
【0029】
このようにして得られるエポキシ樹脂組成物は、半導体素子の封止をはじめとする各種電気・電子部品の封止、被覆、絶縁などに使用され、優れた特性と信頼性を付与することができる。具体的には、実施形態の樹脂組成物を使用し、圧縮成形法により半導体素子などの電子部品を封止した後、エポキシ樹脂組成物を加熱して硬化させることによって、エポキシ樹脂硬化物により封止された半導体装置を得ることができる。
【0030】
ここで、圧縮成形用の材料としては、実施形態の樹脂組成物をシート状に成形した成形体を使用するが好ましい。こうして、成形の際の金線変形などをより有効に防止することができ、ボイドがなく信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を歩留まりよく製造することができる。
【0031】
本発明の一実施形態の樹脂封止型半導体装置は、前記した実施形態のエポキシ樹脂組成物の硬化物により封止された半導体素子を備えている。半導体素子は特に限定されるものではなく、例えば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオードなどの半導体素子が適用可能である。
【0032】
この樹脂封止型半導体装置を製造するには、半導体素子を配線基板のような基材の上に搭載し、基材の配線部にワイヤボンディングにより電気的に接続した後、接続部を覆うように前記した樹脂組成物を圧縮成形することにより、半導体素子を封止する。ここで、圧縮成形は30〜120kgf/cmの比較的低圧で行うことが好ましい。
【0033】
より具体的には、基材に搭載された半導体素子を上下金型のキャビティ内にセットし、ワイヤボンディング部の上に、実施形態の樹脂組成物のシート状成形体を載せた後、プレス機を用いて上下金型を型締めし、加圧しながら加熱してシート状成形体を硬化させる。こうして金線変形などを防止することができ、ボイドがなく信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を得ることができる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、「%」は重量%を意味する。
【0035】
実施例1
多官能型エポキシ樹脂(EPPN−502、日本化薬株式会社製)9.5%と、臭素化エポキシ樹脂(AER−8028、旭化成工業株式会社製)3.0%と、多官能型フェノール樹脂(MEH−7500、明和化成株式会社製)4.4%と、硬化促進剤であるトリフェニルホスフィン0.15%と、エステル系ワックス0.4%と、シラン系カップリング剤0.3%と、カーボンブラック0.2%および球状シリカ(平均粒径:17μm)82.0%を、常温で混合した後、さらに90〜110℃に加熱しながら混練した。次いで、これを冷却した後、粉砕して成形材料とした。得られた成形材料の粘度を樹脂溶融温度である175℃で測定したところ、8Pa・sであった。また、ゲルタイムは53秒であり、45〜80秒の範囲の十分に長いゲルタイムを有していた。
【0036】
次に、この成形材料を、常温で直径55mm、厚さ1mmのシート状に圧縮成形したものを、175℃に加熱した金型を使用し減圧状態で圧縮成形した後、硬化させた。こうして得られた成形品の特性を、以下に示すように測定し評価した。
【0037】
また、金線変形確認試験および内部欠陥確認試験を行い、金線変形発生率および内部欠陥であるボイド発生の有無をそれぞれ調べた。すなわち、シリコンチップをBTレジン基板(ビスマレイミド型ポリイミド基板)上にエポキシ系接着剤で接着した後、直径25μmの金線をシリコンチップの外周部に放射状にボンディングした。次いで、これを175℃に加熱された金型内にセットし、前記成形材料である樹脂組成物をシート状に圧縮成形したものを、シリコンチップの上に載せた。そして、30〜120kgf/cmの低圧で10分間圧縮成形し、樹脂組成物を硬化させた。こうして厚さ0.7mmの樹脂封止層を有する半導体パッケージを12個作製した。
【0038】
次に、得られたパッケージの樹脂封止層を切断し、金線変形の発生率および内部欠陥であるボイドやクラックが見られるパッケージの数を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0039】
実施例2
いずれも実施例1と同じ多官能型エポキシ樹脂9.5%と、臭素化エポキシ樹脂3.0%と、多官能型フェノール樹脂4.4%と、硬化促進剤であるトリフェニルホスフィン0.12%と、エステル系ワックス0.4%と、シラン系カップリング剤0.3%と、カーボンブラック0.1%および球状シリカ82.0%を、実施例1と同様にして常温で混合した後、加熱・混練し、冷却して直径55mm、厚さ1mmのシート状に伸展して成形材料とした。得られた成形材料の粘度を樹脂溶融温度である175℃で測定したところ、9Pa・sであった。また、ゲルタイムは61秒であり、45〜80秒の範囲の十分に長いゲルタイムを有していた。
【0040】
次に、シリコンチップをBTレジン基板(ビスマレイミド型ポリイミド基板)上にエポキシ系接着剤で接着し、直径25μmの金線をシリコンチップの外周部に放射状にボンディングした後、これを175℃に加熱された金型内にセットし、前記した成形材料をシリコンチップの上に載せた。そして、30〜120kgf/cmの低圧で1分間圧縮成形し、樹脂組成物を硬化させた。こうして厚さ0.7mmの樹脂封止層を有する半導体パッケージを12個作製した。
【0041】
次いで、得られたパッケージの樹脂封止層を切断し、金線変形の発生率および内部欠陥であるボイドなどが見られるパッケージの数を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【0042】
比較例
実施例1と同じ多官能型エポキシ樹脂9.5%と、臭素化エポキシ樹脂3.0%と、多官能型フェノール樹脂4.4%と、硬化促進剤であるトリフェニルホスフィン0.2%と、エステル系ワックス0.4%と、シラン系カップリング剤0.3%と、カーボンブラック0.2%および球状シリカ82.0%を、実施例1と同様にして常温で混合した後、さらに90〜110℃に加熱しながら混練した。次いで、これを冷却した後、粉砕して成形材料とした。得られた成形材料の粘度を樹脂溶融温度である175℃で測定したところ、8Pa・sであった。また、ゲルタイムは32秒であった。
【0043】
次に、シリコンチップをBTレジン基板(ビスマレイミド型ポリイミド基板)上にエポキシ系接着剤で接着し、直径25μmの金線をシリコンチップの外周部に放射状にボンディングした後、これを175℃に加熱された金型内にセットし、前記した成形材料を減圧状態でシリコンチップ上にトランスファ成形した。こうして厚さ0.7mmの樹脂封止層を有する半導体パッケージを12個作製した。
【0044】
次いで、得られたパッケージの樹脂封止層を切断し、金線変形の発生率および内部欠陥であるボイドなどが見られるパッケージの数を調べた。これらの測定結果を表1に示す。
【表1】

【0045】
表1から明らかなように、実施例1,2のエポキシ樹脂組成物で樹脂封止された半導体パッケージは、比較例のエポキシ樹脂組成物で樹脂封止された半導体パッケージに比べて金線の変形が少なかった。また、樹脂封止層内部のクラックやボイドのような欠陥の発生がほとんどなく、長期の信頼性が保証されるものであることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、(B)フェノール樹脂硬化剤と、(C)無機充填剤をそれぞれ必須成分として含有する樹脂組成物であり、溶融温度における粘度が15Pa・s以下でありかつゲルタイムが45〜80秒であることを特徴とする圧縮成形用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の圧縮成形用樹脂組成物の硬化物により封止された半導体素子を具備することを特徴とする樹脂封止型半導体装置。
【請求項3】
半導体素子を基材の上に搭載する工程と、請求項1記載の圧縮成形用樹脂組成物を所定の形状に圧縮成形することにより、前記半導体素子を封止する工程を有することを特徴とする樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体素子の封止工程で、前記圧縮成形用樹脂組成物を30〜120kgf/cmの低圧で圧縮成形することを特徴とする請求項3記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体素子の封止工程で、前記圧縮成形用樹脂組成物のシート状成形体を圧縮成形することを特徴とする請求項3または4記載の樹脂封止型半導体装置の製造方法。

【公開番号】特開2006−70197(P2006−70197A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257010(P2004−257010)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】