圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法
【課題】同一面に極性等の信号の異なるパッド電極を配置した場合であっても、パッド電極間の短絡を防止することを可能とする圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】圧力センサー1の感圧素子層100は、一辺を二分するように切り欠くスリット126が設けられ、一方の主面側であってスリット126により隔離された位置に夫々設けられ、スリット126により一対の接続部が分離して配置され、前記一対の接続部は少なくとも一部がダイアフラム層200よりも外側へ露出しており、一対の接続部の一方の主面側に夫々設けられた互いに信号の異なる第1パッド電極34、第2パッド電極36と、前記一対の接続部の一方に設けられ厚さ方向に貫通する貫通孔134と、貫通孔134の内部に設けられた導通手段135とを備え、前記一対の接続部の他方の主面に設けられた引出し電極109は、導通手段135により引出し電極109と極性が同じ第1パッド電極34とを電気的に接続されている。
【解決手段】圧力センサー1の感圧素子層100は、一辺を二分するように切り欠くスリット126が設けられ、一方の主面側であってスリット126により隔離された位置に夫々設けられ、スリット126により一対の接続部が分離して配置され、前記一対の接続部は少なくとも一部がダイアフラム層200よりも外側へ露出しており、一対の接続部の一方の主面側に夫々設けられた互いに信号の異なる第1パッド電極34、第2パッド電極36と、前記一対の接続部の一方に設けられ厚さ方向に貫通する貫通孔134と、貫通孔134の内部に設けられた導通手段135とを備え、前記一対の接続部の他方の主面に設けられた引出し電極109は、導通手段135により引出し電極109と極性が同じ第1パッド電極34とを電気的に接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動部の正負の励振電極から夫々延在された引出し電極と電気的に夫々接続された一対のパッド電極を同一主面に配置した圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動子を利用する圧電デバイスの1つとして、ダイアフラム式の圧力センサー等の力検出器が存在する。例えば、特許文献1には圧力センサーが開示されている。圧力センサーは、ダイアフラムと、容器と、該ダイアフラムに設けた支持部に搭載された双音叉振動子(感圧素子)とから構成され、被検出圧力を受圧したダイアフラムが撓み変位すると、その変位が支持部を介して双音叉振動子に伝達される。
【0003】
また、特許文献2には、ダイアフラム層と、ベース層と、該ダイアフラム層に設けた支持部に搭載された双音叉振動子(感圧素子)層とから構成される圧力センサー素子が開示されている。前記感圧素子層は、前記ダイアフラム層と接する一方の面に、前記ダイアフラム層と平面視して重ならない位置に複数のパッド電極が設けられている。前記ダイアフラム層は、前記感圧素子層のパッド電極を互いに分割し、積層時の位置決め用となる凸部が設けられた構造が開示されている。
【0004】
ここで、特許文献2において、ダイアフラム層と、感圧素子層と、ベース層と、を接合剤で接合するとき、導電性接着剤、半田等、共晶合金(Au−Ge、Au−Si、Au−Sn、Au−In等)等の導電性を有する接合剤を用いて接合するのが一般的である。ところが、導電性を有する接合剤を用いて各層を接合すると、感圧素子層の一方の主面に設けた、極性等の信号が互いに異なる一対のパッド電極と接合剤とが接触し、パッド電極同士が短絡してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献3において提案されている3層型圧電デバイスの構造では、中間層である感圧素子層の表面に一方の極性のパッド電極と引出し電極を配置し、裏面に他方の極性のパッド電極と引出し電極を配置することで、前述の短絡の問題を解消している。しかし、特許文献3で提案されている構造では、同一面に極性の異なるパッド電極を配置することができない。
【0006】
そこで、特許文献4には、3層構造の圧電デバイスにおいて同一面に極性の異なるパッド電極の配置を可能とする手段として、導電性を有する接合剤である共晶合金(Au−Ge、Au−Si)を用いて極性の異なるパッド電極及び引出し電極が短絡しないように部分的に各層を接合した後、非導電性の接合剤であるガラス材を用いて極性の異なるパッド電極の間隙領域を接合し、容器内部の気密封止を行っている。
【0007】
一方、このような3層構造の電子デバイスを製造する場合、各層を圧電デバイスの個片を連結してなる母基板(マザーウェーハ)から構成し、これら3つの母基板を積層した後、ダイシングで個片に分離することが行われている(例えば、特許文献5、6参照)。また、特許文献7では、積層された3層のマザー基板を個片に分離するに当たり、最外層(上層と下層)の母基板の切り代に予め、単層状態時にダイシングブレードにより断面がベベル形状の溝(ハーフカット)を入れておき、積層された母基板を前記溝に沿ってダイシングブレードにてフルカットして分離する製造方法が提案されている。
【0008】
更に従来より、基板の厚さ方向に貫通孔を設け、当該貫通孔を電極配線に利用することが行われている。例えば、特許文献8には、圧電振動板の内部で導通を行うためのコンタクトホールを設け、圧電振動板側面の電極を除去することにより、角部の露出をなくし、接合時の放電の発生を防止することが記載されている。
【0009】
また、特許文献9には、下部筐体に水晶振動子の内部電極を筐体の外部に導くための2つの貫通孔を設け、貫通孔の内側面に真空蒸着などにより金属膜からなる接続電極を形成し、当該接続電極で筐体内部の水晶振動子に設けられた内部電極と、下部筐体の外側に形成された外部電極とを導通することが記載されている。
また、特許文献10には、圧電振動子を貫通し、電極配線に用いるためのスルーホールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−230401号
【特許文献2】特開2010−243207号
【特許文献3】特開2010−124448号
【特許文献4】特開2011−045041号
【特許文献5】特開2007−325250号
【特許文献6】特開2009−065520号
【特許文献7】特開2006−157872号
【特許文献8】特開2002−76826号公報
【特許文献9】特開2003−87078号公報
【特許文献10】特開2007−256068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献4のように、接合剤として導電性を有する接合剤と非導電性を有する接合剤との2種類を用いる手法では、接合剤の管理が煩雑であり、更に接合工程が少なくとも2工程必要であるため、結果的に生産コストが高くなるという問題があった。更に、2種類の接合剤を用いるため、素子に熱歪に起因した内部応力の発生が生じないように互いの熱膨張係数の最適な仕様の選定が必要となるため、仕様の選択肢が狭まり、その結果、設計自由度が制限されるという大きな問題が生じることとなる。
【0012】
また、特許文献5乃至7に記載の製造方法では、3層のマザー基板をダイシングにより個片に分離するとき、各層の切り代に隣接する接合部にダイシングにより生じる振動により剥離現象が発生し、剥離に伴って切断部のチッピングのダメージも大きくなっていた。また側面に電極を形成した場合に、ダイシングにより電極が削れてしまうという問題があった。また更に、前記振動により感圧素子(双音叉振動子)自体に破損が生じてしまうという問題があった。
【0013】
また、特許文献8乃至10に記載されているように貫通孔を電極配線に用いることも考えられるが、同一面に極性の異なるパッド電極を配置する場合には、当該貫通孔を用いてどのような電極配置とするかを検討する必要がある。
【0014】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであって、同一面に極性等の信号の異なるパッド電極を配置した場合であっても、パッド電極間の短絡を防止することを可能とする圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、母基板(マザーウェーハ)から個片を分離するときに生じる剥離現象等を防止し、高い生産性と良品率を有する圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、基板の同一面に極性の異なるパッド電極を配置する場合に、貫通孔を用いてパッド電極間の短絡を防止することを可能とする圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]圧電振動片と、前記圧電振動片の外周を囲むように設けられた枠部と、を有する圧電振動基板と、前記圧電振動片と前記枠部とを挟み、前記枠部の主面に接合された第1基板及び第2基板と、を備えた圧電デバイスであって、前記圧電振動基板と前記第2基板には、一辺を二分するように切り欠くスリットが設けられ、前記スリットにより一対の接続部が分離して配置され、前記一対の接続部は、少なくとも一部が前記第1基板よりも外側へ露出しており、前記圧電振動基板は、前記一対の接続部の一方の主面側に夫々設けられた互いに信号の異なる電極パッドと、前記一対の接続部の一方に設けられ、厚さ方向に貫通する貫通孔と、当該貫通孔の内部に設けられた導通手段と、を有し、前記一対の接続部の他方の主面に設けられた引出し電極は、前記導通手段により前記引出し電極と信号が同じ前記電極パッドに電気的に接続されている、ことを特徴とする圧電デバイス。
本発明によれば、前記一対の接続部の他方の主面に設けられた引出し電極は、前記導通手段により前記引出し電極と信号が同じ前記電極パッドに電気的に接続されているため、圧電振動基板と、第1基板又は第2基板とを、導電性のある接合剤で接合したとしても、圧電振動基板の各主面において接合剤が同一の信号の電極とのみ接触するように接合剤及び電極を配置することができ、信号の異なるパッド電極間の短絡を防止することができる。
【0018】
[適用例2]前記導通手段は、前記貫通孔を充填する導電性接着剤であることを特徴とする適用例1に記載の圧電デバイス。
本発明によれば、貫通孔に導電性接着剤を充填して、他方の主面に設けられた前記引出し電極と該引出し電極と信号が同じ電極パッドとを電気的に接続することで、圧電振動基板の各主面において接合剤が同一の信号の電極とのみ接触するようにすることができ、信号の異なるパッド電極間の短絡を防止することができる。
【0019】
[適用例3]前記導通手段は、前記貫通孔の内壁面に設けられた導電膜であることを特徴とする適用例1又は2に記載の圧電デバイス。
本発明によれば、貫通孔の内壁面に導電膜を設けて、他方の主面に設けられた前記引出し電極と該引出し電極と信号が同じ電極パッドとを電気的に接続することで、圧電振動基板の各主面において接合剤が同一の信号の電極とのみ接触するようにすることができ、信号の異なるパッド電極間の短絡を防止することができる。
【0020】
[適用例4]前記第1基板は、可撓性を有する可撓部を備えたダイアフラムであり、前記圧電振動基板の振動部は、少なくとも一以上の柱状ビームからなる振動素子であり、前記ダイアフラムの可撓部には、前記振動素子の両端に位置する一対の基部を夫々支持する支持部が設けられていることを特徴とする適用例1から3の何れか1例に記載の圧電デバイス。
本発明によれば、振動部が1本の柱状ビームからなる場合は高い感度を有する振動部となり、振動部が2本以上の柱状ビームからなる場合は振動漏れを抑制したQ値の高い振動部とすることができる。
【0021】
[適用例5]前記第1基板と前記圧電振動基板と前記第2基板のうち少なくとも2つ以上の基板の周縁部夫々には、互いに重なり合う少なくとも1つ以上の第1の凸部が設けられていることを特徴とする適用例1から4の何れか1例に記載の圧電デバイス。
本発明によれば、圧力センサーの製造時に、凸部をアライメントマークとして各基板を積層する際の位置合わせに用いることができ、圧力センサーの良品率を向上させることができる。
【0022】
[適用例6]励振電極を有する圧電振動基板と、前記圧電振動基板の一方の主面と接するように積層された第1基板と、前記圧電振動基板の他方の主面と接するように積層された第2基板と、を備え、前記圧電振動基板と前記第2基板には、一辺を二分するように切り欠くスリットが設けられた圧電デバイスの製造方法であって、複数の前記第1基板が連結された状態の第1のマザーウェーハを形成する第1のマザーウェーハ形成工程と、複数の前記圧電振動基板が連結された状態の第2のマザーウェーハを形成する第2のマザーウェーハ形成工程と、複数の前記第2基板が連結された状態の第3のマザーウェーハを形成する第3のマザーウェーハ形成工程と、前記第2のマザーウェーハの前記第1基板の前記スリットにより分離された一対の接続部のうちの一方の接続部に、厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記第2のマザーウェーハの一方の主面側の前記第2基板の前記一対の接続部に、互いに信号の異なるパッド電極を形成し、前記第2基板の両主面夫々に、前記励振電極から引き出された互いに信号の異なる引出し電極を形成する電極形成工程と、他方の主面に形成された前記引出し電極と該引出し電極と信号が同じ前記パッド電極とを電気的に接続する導電性接着剤を前記貫通孔に充填する貫通孔充填工程と、前記第1、第2、第3のマザーウェーハを積層して接合する接合工程と、前記接合工程により積層された積層マザーウェーハをダイシングにより個片に分離する分離工程とを備えたことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
本発明によれば、圧電振動基板の側面に電極を設けていないため、分離工程においてダイシングで個片に切り離しても側面電極が削れることがなく、生産性と良品率を向上させることができる。
【0023】
[適用例7]複数の前記第1基板夫々は第1の梁部により連結されており、複数の前記圧電振動基板夫々は第2の梁部により連結されており、複数の前記第2基板夫々は第3の梁部により連結されており、前記接合工程で、前記第1の梁部と前記第2の梁部と前記第3の梁部とが重なり合うように、前記第1、第2、第3のマザーウェーハを積層して接合し、前記分離工程で、前記第1の梁部と前記第2の梁部と前記第3の梁部とを切断することにより、個片に分離することを特徴とする適用例6に記載の圧電デバイスの製造方法。
本発明によれば、第1の梁部と第2の梁部と第3の梁部とが重なり合うように、第1、第2、第3のマザーウェーハを積層して接合することで、梁部を用いて位置合わせをすることができ、生産性と良品率を向上させることができる。
【0024】
[適用例8]前記接着剤充填工程で前記貫通孔に導電性接着剤を充填することに替えて、又は、該導電性接着剤を充填することに加えて、前記電極形成工程で、他方の主面に形成された引出し電極と該引出し電極と信号が同じ前記電極パッドとを電気的に接続する導電膜を前記貫通孔の内壁面に形成することを特徴とする適用例6又は7に記載の圧電デバイスの製造方法。
本発明によれば、導電性接着剤の導電性に応じて、貫通孔の内壁面に電極を形成し、導通手段の導電性を強くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧力センサーの分解斜視図である。
【図2】同実施形態に係る圧力センサーの斜視図である。
【図3】図2の圧力センサーをA−A’線で切断したときの断面図である。
【図4】感圧素子層の一方の主面(表面)に配置された電極の構成と接合剤塗布領域を示す図である。
【図5】感圧素子層の他方の面(裏面)に配置された電極の構成と接合剤塗布領域を示す図である。
【図6】同実施形態に係るダイアフラム層、感圧素子層、ベース層夫々の外形が形成された3枚のマザーウェーハの斜視図である。
【図7】第2実施形態に係る圧力センサーの分解斜視図である。
【図8】同実施形態に係る圧力センサーの斜視図である。
【図9】同実施形態に係るダイアフラム層、感圧素子層、ベース層夫々の外形が形成された3枚のマザーウェーハの斜視図である。
【図10】第3実施形態に係る感圧素子層の斜視図である。
【図11】同実施形態に係るダイアフラム層、感圧素子層、ベース層夫々の外形が形成された3枚のマザーウェーハの斜視図である。
【図12】第4実施形態において、各チップを連結する梁部に溝部を設けた様子を説明する図である。
【図13】溝の変形例を示す図である。
【図14】溝の他の変形例を示す図である。
【図15】第5実施形態に係る圧力センサーの分解斜視図である。
【図16】同実施形態に係る感圧素子層を表面側から見た斜視図である。
【図17】同実施形態に係る感圧素子層の裏面に配置された電極の構成を透過させた状態を示す平面図である。
【図18】第6実施形態に係る圧電モジュールの斜視図である。
【図19】同実施形態に係る圧電モジュールの長手方向中央断面図である。
【図20】第7実施形態に係る圧電モジュールの長手方向中央断面図である。
【図21】同実施形態に係る圧電モジュール内の圧力センサーをスリットが設けられている側から見た図である。
【図22】振動部としてATカット振動子を用いた場合の圧力センサーの分解斜視図である。
【図23】本発明に係る圧電デバイスの圧電振動基板の振動部が音叉振動子である場合の、圧電デバイスの分解斜視図及び圧電振動基板の裏面図である。
【図24】本発明に係る圧電デバイスの圧電振動基板の振動部がATカット水晶振動子である場合の、圧電デバイスの分解斜視図及び圧電振動基板の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る圧電デバイスを圧力センサーに適用した場合の実施形態について詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る圧力センサー1の分解斜視図であり、図2は圧力センサー1の斜視図であり、図3は圧力センサー1の長辺方向断面図である。
【0027】
本実施形態に係る圧力センサー1は、ダイアフラム層(第1基板)200と、ベース層(第2基板)300と、このダイアフラム層200とベース層300によって挟持される感圧素子層(圧電振動基板)100とを有する絶対圧計である。ダイアフラム層200と、ベース層300と、感圧素子層100とは、それぞれ短辺と長辺を有する矩形の平面形状を有し、水晶基板により形成されている。感圧素子層100とベース層300の長辺はダイアフラム層200より長く形成され、その長い部分により張り出し部分が形成されている。
【0028】
ダイアフラム層200は、外部からの被測定圧力を受圧すると撓み変形する可撓部202を有している。可撓部202の周囲には枠型の枠部204が形成されている。ダイアフラム層200は、可撓部202のうち感圧素子層100と対向する側の面に、一対の支持部206を有する。支持部206は、感圧素子層100が有する後述する振動部の両端に配置された一対の基部を支持する。支持部206は、被測定圧力を受けて変形した可撓部202の撓みを力に変換して振動部に伝達する。
【0029】
ベース層300は、前述したダイアフラム層200よりも長手方向に長く形成されている。ベース層300の周縁には枠部304が形成されている。また、ベース層300の周縁のうちダイアフラム層200より張り出した張り出し部分には、スリット302が形成されており、当該スリット302により張り出し部に一対の接続部が形成される。スリット302は、ベース層300の1つの短辺の中央部を長辺方向に切り欠いている。感圧素子層100に対向する側の面であって、枠部304の内側には凹部306が形成されている。
【0030】
感圧素子層100は、中央部に感圧素子としての双音叉素子120と、その周囲を囲む枠型の枠部122とを有している。双音叉素子120は、振動部としての一対の平行な第1柱状ビーム24及び第2柱状ビーム26(振動素子)と、両柱状ビーム24、26の両端に接続される一対の基部12、22とを有している。双音叉素子120は、両柱状ビーム24、26に引張り応力又は圧縮応力が印加されると、その共振周波数が変化する周波数変化型の感圧素子であり、所謂、双音叉型の圧電振動子である。
【0031】
枠部122は、各基部12、22から柱状ビーム24、26と直交する方向に延びる一対の梁状の腕部124を介して双音叉素子120と連結されている。
感圧素子層100の周縁部におけるダイアフラム層200より張り出した張り出し部分には、当該周縁部を隔離するスリット126が設けられている。当該スリット126は感圧素子層100の前記両柱状ビーム24、26に直交する方向に平行な1つの短辺の中央部を前記両柱状ビーム24、26が伸びる方向に沿って、即ち長辺方向に切り欠いている。また、当該スリット126により、分離された一対の接続部が当該張り出し部分に配置されることとなる。一対の接続部のうち一方の接続部には、厚さ方向に貫通する貫通孔134が設けられている。貫通孔134内には後述する両主面に形成された電極同士を電気的に接続する導通手段135が設けられている。なお、導通手段135としては、貫通孔134を充填する導電性接着剤であってもよいし、貫通孔134の内壁面に設けられた導電膜であってもよい。或いは、これらの導電性接着剤と貫通孔134の内壁面に設けられた導電膜との両方を、導通手段135として用いてもよい。
【0032】
感圧素子層100とベース層300とは外縁形状が同一となるように形成されており、感圧素子層100の枠部122及びスリット126は、ベース層300の枠部304及びスリット302と対向するように配置される。
【0033】
このように感圧素子層100、ベース層300夫々にスリット126、302を設けることで、実装時にベース層300の下面のうちスリット302で隔離された2点を実装基板に固定すれば、スリット126、302が当該2点に作用する歪みを吸収するため、2点間に作用するマウント歪を抑制することができる。
【0034】
また、感圧素子層100の枠部122は、一対の接続部を除いてダイアフラム層200の枠部204と対向するように配置されている。感圧素子層100の一対の接続部における一方の主面は、図2、図3に示すように、外部に露出するように配置されている。
【0035】
図4は感圧素子層100のダイアフラム層200に対向する側の一方の主面(以下「表面」という)に配置された電極の構成と接合剤塗布領域を示す図であり、図5は感圧素子層100の他方の面(以下「裏面」という)に配置された電極の構成と接合剤塗布領域を示す図である。
【0036】
双音叉振動子の柱状ビーム24、26には、詳細を後述する正負の極性の異なる励振電極130が設けられている。励振電極130は、第1柱状ビーム24及び第2柱状ビーム26を励振させるための電極である。感圧素子層100の表面においては、図4に示すように、一方の極性の励振電極130から第2引出し電極110が基部12を支えている腕部124を介して枠部122に引き出されている。裏面においては、図5に示すように、他方の極性の励振電極130から第1引出し電極109が基部12を支えている腕部124を介して枠部122に引き出されている。
【0037】
感圧素子層100の表面側であってスリット126により分離された一対の接続部夫々には、図4に示すように互いに極性が異なる第1パッド電極34及び第2パッド電極36が設けられている。これらの第1パッド電極34及び第2パッド電極36は、感圧素子層100とダイアフラム層200とを接合する接合剤が塗布される接合剤塗布領域132よりも外側に配置されている。パッド電極34、36は、圧力センサー1を実装する実装基板(不図示)が備える端子(不図示)に接続するための電極であり、励振電極130に対して電圧を印加するための信号や、励振によって得られた信号の入出力を行う。
【0038】
図4に示すように、第2引出し電極110は第2パッド電極36の位置まで引き出されている。また、裏面の第1引出し電極109は、貫通孔134の導通手段135と電気的に接続し、当該導通手段135は表面の第1パッド電極34と電気的に接続している。すなわち、貫通孔134内の導通手段135は、裏面の第1引出し電極109と、表面の第1パッド電極34とを電気的に接続する役割を有する。
【0039】
次に、励振電極130の構成について詳細に説明する。以下では、平行して配置された第1柱状ビーム24と第2柱状ビーム26とが対向する側面を内側面といい、第1柱状ビーム24と第2柱状ビーム26夫々において内側面の反対側に位置する側面を外側面という。
【0040】
励振電極130は、第1柱状ビーム24、第2柱状ビーム26上の長手方向に3つに区分けされた励振領域(第1領域28、第2領域30、第3領域32)に設けられる。第1柱状ビーム24、第2柱状ビーム26における各振動領域では、表面、裏面、内側面、及び外側面のそれぞれに励振電極130としての金属パターンが形成されている。なお、第1柱状ビーム24、第2柱状ビーム26の内側面及び外側面に形成される励振電極42、44、50、52、58、60、66、68は、その一部が表面及び裏面を跨ぐように配設される。
【0041】
まず、一方の極性の励振電極130について説明する。本実施形態では、一方の極性の励振電極130は、外側面励振電極44、68、76と、表面励振電極46、54、78と、内側面励振電極42、66、74と、裏面励振電極48、56、80と、引出し電極101、102、103、104、105、106、107とで構成される。
【0042】
第1パッド電極34から貫通孔134の導通手段135を介して引き出された図5に示す裏面の第1引出し電極109は分岐され、分岐路の一方が第1柱状ビーム24における第1領域28の外側面励振電極44の基部12側端部へ、他方が第2柱状ビーム26における第1領域28の裏面励振電極48の基部12側端部へそれぞれ接続される。外側面励振電極44は、外側面励振電極44の第2領域30側端部から第1柱状ビーム24の表面へ引き回される引出し電極101と、裏面の引出し電極102とに導通した構成である。引出し電極101は、第1柱状ビーム24の表面内にて二股に分岐される。即ち、引出し電極101は、表面において第1柱状ビーム24における第2領域30の表面励振電極54と表面励振電極38との間の領域に形成された1本の引出し電極とこの1本の引出し電極の一端から二股に分岐した引出し電極を有する。そして引出し電極101は、一本の引出し電極の他端を表面励振電極54と接続し、分岐した1本の引出し電極を外側振動電極44の第1領域28側端部に接続し、分岐した他方の引出し電極を第1柱状ビーム24における第1領域28の内側面励振電極42の第2領域30側端部へ接続する。そして、内側面励振電極42の基部12側端部からは、基部12の表面側へ引き回される引出し電極103が引き出される。基部12の表面側へ引き回された引出し電極103は、第2柱状ビーム26における第1領域28の表面励振電極46の基部12側端部に接続される。
【0043】
引出し電極104は、図5に示すように第2柱状ビーム26の裏面側であって第1領域28と第2領域30との間に存在する。そして更に、引出し電極104は、3本の分岐を有する3股構成であり、1本の分岐の一端を第1領域28の裏面励振電極48に接続し、他の1本の分岐の一端を内側面励振電極66に接続し、残る1本の分岐の一端を外側面励振電極68に接続した構成である。
【0044】
図4に示す引出し電極105は、第2柱状ビーム26における第2領域30の内側面励振電極66の第3領域32側端部と、外側面励振電極68の第3領域32側端部とからそれぞれ表面に引き出された引出し電極を第2柱状ビーム26の表面内で1本の引出し電極の一端に接続し、1本の引出し電極の他端を、第2柱状ビーム26における第3領域32の表面励振電極78の第2領域30側端部へ接続した構成を有する。
【0045】
第2柱状ビーム26における第3領域32の表面励振電極78の基部22側端部から引き出された引出し電極106は、基部22の表面を引き回されて第1柱状ビーム24における第3領域32の外側面励振電極76の基部22側端部へ接続される。
【0046】
第1柱状ビーム24における第3領域32の外側面励振電極76の第2領域30側端部から裏面に引き出された図5に示す引出し電極107は、外側面励振電極76と一端が接続した1本の引出し電極の他端を二股に分岐した構成を有する。分岐された引出し電極107は、分岐路の一方が第1柱状ビーム24における第2領域30の裏面励振電極56の第3領域32側端部へ接続され、他方が第1柱状ビーム24における第3領域32の内側面励振電極74の第2領域30側端部へ接続される。
【0047】
第1柱状ビーム24における第3領域32の内側面励振電極74の基部22側端部から基部22の裏面に引き出された引出し電極108は、第2柱状ビーム26における第3領域32の裏面励振電極80の基部22側端部に接続される。
【0048】
次に、他方の極性の励振電極130について説明する。他方の極性の励振電極130は、表面励振電極38、62、70と、裏面励振電極40、64、72と、外側面励振電極52、60、84、内側面励振電極50、58、82と、引出し電極111、112、113、114、115、116、117とで構成される。
【0049】
第2パッド電極36から引出された図4に示す第2引出し電極110は分岐され、分岐路の一方が第1柱状ビーム24における第1領域28の表面励振電極38の基部12側端部へ、他方が第2柱状ビーム26における第1領域28の外側面励振電極52の基部12側端部へそれぞれ接続される。
【0050】
第2柱状ビーム26における第2領域30の表面励振電極62と表面励振電極46との間に形成された引出し電極111は、1本の引出し電極の一端を表面励振電極62に接続し、1本の引出し電極の他端を第2柱状ビーム26の表面で分岐した構成を有する。分岐された引出し電極111は、分岐路の一方が第2柱状ビーム26における第1領域28の内側面励振電極50の第2領域30側端部へ接続され、他方が第2柱状ビーム26における第2領域30の表面励振電極62の第1領域28側端部へ接続される。
【0051】
第2柱状ビーム26における第1領域28の内側面励振電極50の基部12側端部から基部12の裏面へ引き出された引出し電極112は、第1柱状ビーム24における第1領域28の裏面励振電極40の基部12側端部へ接続される。
【0052】
第1柱状ビーム24における第1領域28の裏面励振電極40の第2領域30側端部から引き出された引出し電極113は、第1柱状ビーム24の裏面上で二股に分岐される。分岐された引出し電極113は、分岐路の一方が第1柱状ビーム24における第2領域30の外側面励振電極60の第1領域28側端部へ接続され、他方が同第2領域30の内側面励振電極58の第1領域28側端部へ接続される。
【0053】
図4に示す引出し電極114は、第1柱状ビーム24における第2領域30の外側面励振電極60の第3領域32側端部と内側面励振電極58の第3領域32側端部とからそれぞれ表面に引き出された引出し電極を表面内で1本の引出し電極の一端に接続し、1本の引出し電極の他端を第1柱状ビーム24における第3領域32の表面励振電極70の第2領域30側端部へ接続した構成を有する。
【0054】
第1柱状ビーム24における第3領域32の表面励振電極70の基部22側端部から引き出された引出し電極115は、基部22の表面側を引き回されて第2柱状ビーム26における第3領域32の内側面励振電極82の基部22側端部へ接続される。
【0055】
第2柱状ビーム26における第3領域32の内側面励振電極82の第2領域30側端部から引き出された図5に示す引出し電極116は、第2柱状ビーム26の裏面側へ引き回され、二股に分岐される。分岐された引出し電極116は、一方が第2柱状ビーム26における第2領域30の裏面励振電極64の第3領域32側端部へ接続され、他方が第2柱状ビーム26における第3領域32の外側面励振電極84の第2領域30側端部へ接続される。
【0056】
第2柱状ビーム26における第3領域32の外側面励振電極84の基部22側端部から引き出された図5に示す引出し電極117は、基部22の裏面側へ引き回され、その後に第1柱状ビーム24における第3領域32の裏面励振電極72の基部22側端部へ接続される。
【0057】
上記のような構成とすることにより、第2領域30における内側面励振電極58、66及び外側面励振電極60、68に対しては、第1領域28における裏面励振電極40、48と、第3領域32における表面励振電極70、78との双方に導通が図れるように引出し電極113、104、114、105が引き回されることとなる。
【0058】
以上説明したように、感圧素子層100の裏面の第1引出し電極109は、貫通孔134の導通手段135を介して、表面に設けた第1パッド電極34と電気的に接続している。また、表面の第2引出し電極110は第2パッド電極36と電気的に接続している。すなわち、感圧素子層100の表面と裏面とに極性の異なる第1引出し電極109、第2引出し電極110が夫々分かれて延在されている。したがって、感圧素子層100の表裏面の接合剤塗布領域132、136に接合剤を塗布して、感圧素子層100をダイアフラム層200及びベース層300と接合し図2に示す圧力センサー1を形成する場合に、第2引出し電極110はダイアフラム層200としか機械的・電気的に接触せず、一方、第1引出し電極109はベース層300としか機械的・電気的に接触しない構造となるため、導電性のある接合剤を用いて接合しても、極性の異なる正負の電極同士がショートすることがない。このように、感圧素子層100の各主面において導電性の接合剤が同一の極性の電極とのみ接触するように電極及び接合剤塗布領域132、136を配置することができるため、同一面に極性の異なるパッド電極34、36を配置した場合であっても、パッド電極34、36間の短絡を防止することができる。
【0059】
なお、第1引出し電極109、第2引出し電極110の引き回し方は一例であり、第2引出し電極110は一方の極性の励振電極130から感圧素子層100の表面を引き回されて第2パッド電極36に導通し、第1引出し電極109は他方の極性の励振電極130から感圧素子層100の裏面を引き回され、貫通孔134内の導通手段135を介して第1パッド電極34に導通していれば、どのような引き回し方でもよい。
【0060】
このような圧力センサー1は、図示せぬ発振回路と電気的に接続され、双音叉素子120は当該発振回路から供給される交流電圧により、固有の共振周波数で屈曲振動を行う。被検出圧力を受圧したダイアフラム層200が撓み変位すると、その変位がダイアフラム層200を介して力に変換されて、双音叉素子120に伝わる。双音叉素子120には、伝達された力によって内部応力(引張り応力又は圧縮応力)が生じ、これにより共振周波数が変化する。この共振周波数の変動を測定して被検出圧力を検出する。
【0061】
双音叉素子120は加えられた力に対して共振周波数の変化が大きく、圧力を感度よく検出できる。即ち、双音叉型の圧電振動子は、厚みすべり振動をするATカット水晶を用いた厚みすべり振動子などに比べて、振動部(柱状ビーム)に生じる伸長・圧縮応力に起因した共振周波数の変化が極めて大きく、共振周波数の可変幅が大きいので、わずかな物理量の差(圧力差)を検出するような分解能力に優れた力センサーにおいては、好適な感圧素子である。
【0062】
次に、上記構成の圧力センサー1の製造方法について説明する。
まず、フォトリソグラフィー技術を用いたウエットエッチング又はサンドブラストにより、図6に示すように、ダイアフラム層200に対応する複数の第1の個片が連結された状態の第1のマザーウェーハ40aを形成する(第1のマザーウェーハ形成工程)。また、感圧素子層100に対応する複数の第2の個片が連結された状態の第2のマザーウェーハ40bを形成する(第2のマザーウェーハ形成工程)。そして、ベース層300に対応する複数の第3の個片が連結された状態の第3のマザーウェーハ40cを形成する(第3のマザーウェーハ形成工程)。
【0063】
次に、第2のマザーウェーハ40bの第2の個片のスリット126により分離された一対の接続部のうちの一方の接続部に、例えばレーザ等を用いて貫通孔134を形成する(貫通孔形成工程)。
【0064】
次に、マザーウェーハ40a、40b、40c夫々に形成した第1の個片、第2の個片、第3の個片に所定の電極を形成する。(電極形成工程)。感圧素子層100に対応する第2の個片については、図4及び図5に示す電極を形成するとともに、貫通孔134の内壁面に導電膜を形成する。電極及び導電膜は、例えば、ニッケル又はクロムを下層として、その上に蒸着又はスパッタリングにより例えば金による電極層を成膜し、その後フォトリソグラフィーを用いてパターニングすることにより形成することができる。
【0065】
次に、導電性接着剤を貫通孔134に充填する(貫通孔充填工程)。
次に、感圧素子層100の図4及び図5に示す接合剤塗布領域132、136に導電性接着剤を塗布し、マザーウェーハ40a、40b、40cの順に積層して、導電性接着剤で接合する(接合工程)。なお、接合方法としては、金(Au)を用いた陽極接合を行ってもよい。
【0066】
次に、接合した3層のマザーウェーハ40a、40b、40cをダイシングにより個片に切り離す(分離工程)。これにより、図2に示す圧力センサー1が複数形成される。
このような製造方法では、電極や導電性接着剤は、ダイアフラム層200、感圧素子層100、ベース層300の外形の主面及び貫通孔134の内部に設けられており、側面に設けていないため、ダイシングを行っても必要な電極配線が削れることがない。したがって、高い生産性と良品率を保持することができる。
【0067】
なお、導通手段135を貫通孔134の内壁面の導電膜のみとする場合は、上記貫通孔充填工程を省略すればよい。また、導通手段135を貫通孔134内に充填する導電性接着剤のみとする場合は、上記電極形成工程において貫通孔134の内壁面に対する導電膜形成を省略すればよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、ベース層300にスリット302を設け、感圧素子層100とベース層300との外縁形状を同一としたが、これに限らず、ダイアフラム層200にスリットを設けて感圧素子層100とダイアフラム層200の外縁形状を同一とし、感圧素子層100の張り出し部の裏面にパッド電極34、36を設けるようにしてもよい。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態では、第1実施形態と同等の部分には同一の番号を付し、重複した説明を省略する。
図7には、第2実施形態に係る圧力センサー1Aの分解斜視図を示す。
【0070】
同図に示すように、ダイアフラム層200Aの対向する2つの長辺の側面にはそれぞれ1つの凸部400aが設けられ、2つの短辺のうち一方の短辺の側面には2つの凸部400bが設けられている。この凸部400a、400bは、マザーウェーハに形成された複数のダイアフラム層200A同士を連結する梁部を切断することにより形成される。
【0071】
ベース層300Aの2つの長辺の側面にはそれぞれ1つの凸部402aが設けられ、2つの短辺の側面にはそれぞれ2つの凸部402b、402cが設けられている。スリット302が形成されている短辺側の側面については、当該スリット302で隔離される2つの側面にそれぞれ1つの凸部402cが設けられている。この凸部402a、402b、402cは、後述するマザーウェーハに形成された複数のベース層300A同士を連結する梁部を切断することにより形成される。
【0072】
感圧素子層100Aの2つの長辺の側面にはそれぞれ1つの凸部401aが設けられ、2つの短辺の側面にはそれぞれ2つの凸部401b、401cが設けられている。スリット126が形成されている短辺側の側面については、当該スリット126で隔離される2つの側面にそれぞれ1つずつ凸部401cが設けられている。この凸部401a、401b、401cは、後述するマザーウェーハに形成された複数の感圧素子層100A同士を連結する梁部を切断することにより形成される。
【0073】
図8に示すように、ダイアフラム層200Aと感圧素子層100Aとベース層300Aとを重ね合わせた場合に、ダイアフラム層200Aの凸部400aと感圧素子層100Aの凸部401aとは互いに重なり合い、感圧素子層100Aの凸部401aとベース層300Aの凸部402aとは互いに重なり合い、ダイアフラム層200Aの凸部400bと感圧素子層100Aの凸部401bとは互いに重なり合い、感圧素子層100Aの凸部401bとベース層300Aの凸部402bとは互いに重なり合い、感圧素子層100Aの凸部401cとベース層300Aの凸部402cとは互いに重なり合う。したがって、これらの凸部(第1の凸部)400a、400b、401a、401b、401c、402a、402b、402cは、圧力センサー1Aの製造時にダイアフラム層200Aと感圧素子層100Aとベース層300Aとを積層する際のアライメントマークとして用いることができる。これにより、正確に位置合わせを行って積層することができ、圧力センサー1の良品率を向上させることができる。
【0074】
なお、各層100A、200A、300Aの各辺に設けられる上述した凸部の数は一例に過ぎず、例えば3つ以上であってもよい。また、各層100A、200A、300Aの平面形状が矩形以外の形状であっても、少なくとも2つ以上の何れかの層に少なくとも1つ以上の凸部を設けることで、当該凸部をアライメントマークとして用いることができる。
【0075】
次に、第2実施形態に係る圧力センサー1Aの製造方法について説明する。
まず、フォトリソグラフィー技術を用いたウエットエッチング又はサンドブラストにより、ダイアフラム層200Aに対応する複数の第1の個片が梁部(第1の梁部)400により連結された状態の第1のマザーウェーハ40dを形成する(第1のマザーウェーハ形成工程)。また、感圧素子層100Aに対応する複数の第2の個片が梁部(第2の梁部)400により連結された状態の第2のマザーウェーハ40eを形成する(第2のマザーウェーハ形成工程)。そして、ベース層300Aに対応する複数の第3の個片が梁部(第3の梁部)400により連結された状態の第3のマザーウェーハ40fを形成する(第3のマザーウェーハ形成工程)。図9には各マザーウェーハ40d、40e、40fの斜視図を示す。図9に示すように、各マザーウェーハ40d、40e、40fにおいて、複数のダイアフラム層200A、感圧素子層100A、ベース層300Aに対応する個片同士が互いに梁部400を介して保持し合っている。この場合、各個片の対向する一対の短辺の側面には夫々2本の梁部400が設けられ、対向する一対の長辺の側面には夫々1本の梁部400が設けられている。
【0076】
次に、第2のマザーウェーハ40eの第2の個片のスリット126により分離された一対の接続部のうちの一方の接続部に、例えばレーザ等を用いて貫通孔134を形成する(貫通孔形成工程)。
【0077】
次に、マザーウェーハ40d、40e、40f夫々に形成したダイアフラム層200A、感圧素子層100A、ベース層300Aに対応する個片夫々に所定の電極を形成する。(電極形成工程)。感圧素子層100Aに対応する第2の個片については、図4及び図5に示す電極を形成するとともに、貫通孔134の内壁面に導電膜を形成する。
【0078】
次に、感圧素子層100Aに対応する第2の個片の図4及び図5に示す接合剤塗布領域132、136に接合剤を塗布し、梁部400をアライメントマークとして用いて、各マザーウェーハ40d、40e、40fの梁部400が積層方向に重なり合うように、第1のマザーウェーハ40d、第2のマザーウェーハ40e、第3のマザーウェーハ40fの順に積層し、3枚のマザーウェーハ40d、40e、40fを接合剤で接合する(接合工程)。なお、接合方法としては、金(Au)を用いた陽極接合を行ってもよい。
【0079】
次に、導電性接着剤を貫通孔134に充填する(接着剤充填工程)。
次に、接合した3層のマザーウェーハ40d、40e、40fの各梁部400をダイシング又は折り取りにより切断することで、個片に切り離す(分離工程)。そして、ダイアフラム層200Aのスリットに近い短辺側の側面に残存した梁部400を取り除くことで、図8に示す圧力センサー1Aが複数形成される。
【0080】
このような製造方法によれば、積層して接合した3層からなるマザーウェーハ40d、40e、40fを個片状の圧力センサー1Aとなるように分離する場合に、切り代付近の接合部の剥離、大きなチッピング、衝撃によるチップの破損等を抑制することができ、高い生産性と良品率を保持することができる。
【0081】
また、梁部400を、マザーウェーハ40d、40e、40fを積層の際のアライメントマークとして用いて、位置合わせを行うことができる。
また、チップの分離時に各チップに梁部400の残渣(凸部400a、400b、401a、401b、401c、402a、402b、402c)を残すように梁400を切断することで、パッケージ等の実装基板への圧力センサー1Aのマウント時に、梁部の残渣をアライメントマークとして用いることができる。具体的には、当該梁部の残渣と実装基板のマウント面に予め配置したアライメントマークとの位置合わせを行った上で、圧力センサー1Aを実装基板へ搭載することができる。これにより、アライメントの精度を向上させることができる。
【0082】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図10は本実施形態に係る感圧素子層の斜視図であり、図11は本実施形態に係る各マザーウェーハの斜視図である。図10に示すように、第3実施形態に係る感圧素子層100Bは、第2実施形態に係る感圧素子層100Aに対して凸部(第2の凸部)403を構成要素として追加したものである。当該凸部403は、感圧素子層100Bとダイアフラム層200Aとの接合部と、第1のパッド電極34及び第2のパッド電極36と、の間に存在する感圧素子層100Bの2つの側面夫々に設けられている。なお、接合部は、接合剤塗布領域132に接合剤が塗布されて感圧素子層100Bとダイアフラム層200Aとが接合されることにより形成される。
【0083】
この凸部403は、図11に示す第2のマザーウェーハ40gに形成された複数の感圧素子層100B同士を連結する梁部404を切断することにより形成されたものである。
このような凸部403を設けることにより、接合部から溢れ出た導電性の接合剤が側面にまで至ってしまった場合や、電極形成工程で側面に不要な電極が残っている場合等に、当該導電性接合剤や側面に残った電極と第1パッド電極34とを電気的に分離することができる。同様に、当該導電性接合剤や側面に残った電極と、第2パッド電極36とを電気的に分離することができる。したがって、感圧素子層100に設けられた互いに極性が異なる正・負の電極間でショートすることが確実に無くなり、生産歩留まりを更に向上させることが出来る。
【0084】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、第2実施形態に係る各マザーウェーハ40a、40b、40cに形成された複数の各チップを連結する梁部400に溝402が設けられている。当該溝402は、図12に示すように梁部400の両主面(厚さ方向)に設けることができる。なお、梁部400の一方の主面に設けることもできる。或いは、図13に示すように梁部400の両方の側面(幅方向)に溝402を設けてもよいし、図14に示すように一方の側面に溝402を設けてもよい。さらに、側面と主面との両方に溝402を設けてもよい。
【0085】
このように溝402を設けることにより、積層した3層からなるマザーウェーハ40a、40b、40cを分離するときに、ダイシング等の切断手段を使用することなしに、個片状の圧力センサーとなるように容易に分離することができる。よって、分離工程を簡素化することができる。
また、ダイシングを行う必要がないため、ダイシング時の振動や衝撃によって各チップに与えるダメージを低減できる。
【0086】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態では、第1〜第4実施形態において感圧素子層100の振動部を2本の柱状ビーム(第1柱状ビーム24と第2柱状ビーム26)で構成していたのを、1本の柱状ビーム10Aで構成する。振動部を2本の柱状ビームで構成した場合は、柱状ビームの振動に対称性を持たせることにより振動漏れを抑制してQ値を高めることができるが、振動部を1本の柱状ビームで構成した場合は、基部12、22から印加される力が大きくなることにより共振周波数の変化量が大きくなり、感度を向上させることができる。
【0087】
図15は、第5実施形態に係る圧力センサー1Cの分解斜視図であり、図16は第5実施形態に係る感圧素子層100Cを表面側から見た斜視図であり、図17は感圧素子層100Cの裏面に配置された電極の構成を透過させた状態を示す平面図である。
【0088】
図16及び図17を参照して感圧素子層100Cに形成される電極の配置の一例について説明する。柱状ビーム10Aは、第1実施形態と同様に、励振電極の配置により第1領域、第2領域、第3領域に分けられる。第1領域の柱状ビーム10Aの対向する表面及び裏面夫々の長手方向中央には、電位の同じ励振電極25a及び励振電極25bが平面視で重なる位置に設けられている。同様に、柱状ビーム10Aの第2領域の表面及び裏面夫々の長手方向中央には、励振電極25a、25bとは電位の異なる励振電極26a及び励振電極26bが平面視で重なる位置に設けられ、第3領域には励振電極27a及び励振電極27bが平面視で重なる位置に設けられている。
【0089】
第1パッド電極34は、貫通孔134の導通手段135を介して裏面の第1引出し電極109に引き出され、第1領域の両側面に設けられた励振電極25c、25dに接続される。それらの励振電極25c、25dが第2領域の裏面の励振電極26bに接続されている。また、第1パッド電極34と接続された励振電極25c、25dのうち一方の励振電極25cは、裏面に設けられた引出し電極29dに引き出されている。柱状ビーム10Aの第2領域の表面に設けられた励振電極26aは、第3領域の両側面の励振電極27c、27dに接続され、これらの励振電極27c、27dのうち励振電極27cは裏面の引出し電極28dに引き出されている。図17に示すように、引出し電極28dと引出し電極29dとは、枠部122に設けられた接続配線28bにより接続されている。以上述べた電極の構成により、第1パッド電極34と、柱状ビーム10Aの第2領域の表裏面に設けられた励振電極26a、26bとが電気的に接続される。
【0090】
また、第2パッド電極36と、その第2パッド電極36と同一面にある第1領域の表面の励振電極25aとは接続されている。また、第2パッド電極36と第1領域の裏面の励振電極25bとは、引出し電極29cを介して接続されている。
【0091】
第1領域の表面の励振電極25aは、第2領域の両側面に設けられた励振電極26c,26dに引き出され、それらの励振電極26c,26dを介して領域Cの裏面の励振電極27bに接続されている。図17に示すように、励振電極27bは、引出し電極28cに引き出されている。引出し電極28cは、上面側に引き出され、第3領域の表面の励振電極27aに接続されている。表面の第2パッド電極36と、表面の引出し電極28cとは、枠部122の表面に設けられた接続配線28aにより接続されている。
【0092】
以上述べた電極の構成により、第2パッド電極36と、柱状ビーム10Aの第1領域及び第3領域の表裏面に設けられた励振電極25a、25b、27a、27bとが、電気的に接続される。
【0093】
本実施形態においても、ダイアフラム層200、感圧素子層100C、ベース層300の順に周縁を接合剤で接合する場合、接続配線28aはダイアフラム層200としか機械的・電気的に接触せず、第1引出し電極109はベース層300としか機械的・電気的に接触しない構造とすることができるため、導電性のある接合剤を用いて接合しても、電位の異なる電極同士がショートすることがない。したがって、同一面に極性の異なるパッド電極34、36を配置した場合であっても、パッド電極間の短絡を防止することができる。
【0094】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態として、上述した圧力センサー1を実装基板に実装して形成した圧電モジュールについて説明する。図18は圧電モジュール500の斜視図であり、図19は圧電モジュール500の長手方向中央断面図である。
【0095】
圧力センサー1の実装先となる実装基板502は、プラスチック、セラミック、ポリイミド等の絶縁体によって形成される。圧力センサー1のベース層300の感圧素子層100と積層される面とは反対側の主面の中央部(ベース層300下面の長手方向の略中央かつ短手方向の略中央)、即ちベース層300の下面中央部にはエポキシ樹脂等の接合部材504が塗布され、圧力センサー1はこの中央部において、1点支持状態で当該接合部材504を介して実装基板502に固定されている。このように1点支持とすることで、実装基板502と圧力センサー1との接合時に熱歪み等の応力が振動部に伝搬するのを緩和することができる。
【0096】
実装基板502の上面には感圧素子を駆動する駆動回路(不図示)に接続された接続電極506が形成されている。また圧力センサー1の第1パッド電極34、第2パッド電極36と、接続電極506とは、Au等のワイヤー線508により接続されている。また、実装基板502と圧力センサー1との間には接合部材504の高さ分だけ隙間が生じるが、好ましくはこの隙間にシリコン系樹脂で形成された緩衝材510を設けることにより、圧電モジュール500の耐衝撃性を高めることが期待できる。
【0097】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。図20は第7実施形態に係る圧電モジュール500aの長手方向中央断面図であり、図21は圧電モジュール500a内の圧力センサー1をスリット126、302が設けられている側から見た図である。
【0098】
第6実施形態と第7実施形態との異なる点は、第6実施形態に係る圧電モジュール500では圧力センサー1と実装基板502とを1点で固定していたのに対して、第7実施形態に係る圧電モジュール500aでは2点で固定している点である。具体的には、第7実施形態では、ベース層300の感圧素子層100と積層される面とは反対側の一対の接続部の主面、即ち、圧力センサー1のベース層300の下面であって第1パッド電極34及び第2パッド電極36と対向する位置夫々に、接合部材504を塗布して、圧力センサー1を2点支持状態で接合部材504を介して実装基板502に固定する。このようにスリット126、302で隔離された2点で支持することで、実装基板502と圧力センサー1との接合部材504による接合時にスリット126、302が熱歪み等の応力を緩和するため、振動部に熱歪み等の応力が伝搬するのを防ぐことができる。
【0099】
なお、圧力センサー1のベース層300の凹部306に、双音叉素子120を駆動するための発振回路を内蔵したIC(Integrated Circuit)等の回路を搭載してもよい。
また、第1実施形態では、振動部として一対の柱状ビーム24、26を設けたが、図22に示すように、一対の柱状ビーム24、26に替えてATカット水晶を用いた厚みすべり振動子(以下「ATカット振動子」という)600を用いてもよい。ATカット振動子600の両主面には励振電極602が設けられており、第1実施形態と同様に、励振電極602には引出し電極109、110が接続されパッド電極34、36まで引き出されている。振動部としてATカット振動子600を用いることで、温度に対する周波数安定性が向上し、周波数温度特性を良好にすることができるとともに、衝撃に強く丈夫な圧力センサーとすることができる。
【0100】
なお、上述した実施形態では、第1パッド電極34及び第2パッド電極36の正負の極性が互いに異なる場合について説明したが、これに限らず、本発明は、信号の極性が互いに異なる場合も含めて、何らかの電子デバイスにおいて、第1パッド電極34及び第2パッド電極36から出力される電気信号が互いに異なる場合にも適用することができる。
【0101】
また、上述した実施形態では、圧電デバイスとして圧力センサーについて説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、本発明は、3層以上の構造を有し且つ中間層として圧電振動基板が含まれる温度センサー、圧電振動子等の圧電デバイスに適用することができる。圧電振動基板の振動部としては、音叉振動子(図23参照)、ATカット水晶振動子(図24参照)、水晶のX軸(電気軸)を中心にして所定の角度だけ回転して得られる回転Y板を用いた水晶振動子、その他のカットで切断された水晶振動子、水晶以外の圧電材料を用いた圧電振動子、等を広く適用できる。
【0102】
圧電デバイスが温度センサーの場合、圧電デバイス内にICを搭載する場合には、ICに温度センサーとしての音叉振動子を駆動するための発振回路、温度補償回路、検出値の補正回路等を内蔵すればよい。
【0103】
また、本発明の圧電デバイスは、上述した圧電モジュール以外に、例えば携帯電話、ハードディスク、パーソナルコンピューター、BS及びCS放送用の受信チューナー、同軸ケーブルや光ケーブル中を伝搬する高周波信号や光信号用の各種処理装置、広い温度範囲で高周波・高精度クロック(低ジッタ、低位相雑音)を必要とするサーバー・ネットワーク機器、無線通信用機器等の様々な電子機器、加速度センサー、回転速度センサー等の各種センサー装置にも広く適用することができる。
【0104】
このような各種センサー装置及び電子機器としては、例えば一般工業用計測機器、電子血圧計、高度・気圧・水深計測機能付き電子機器、携帯機器、自動車などが挙げられる。
そして、上述のように外力によるダイアフラムの機械的な変形を電気的信号として計測するものとして、携帯電話機やパソコン等の小型の携帯機器での高度計測に前記圧力センサーを応用してマイクロホンとして利用可能である。
【0105】
更に、近年注目をされるようになった水素やメタノール等の燃料電池は、軽量化や利便性等に起因して、例えば、ビデオカメラ、ノート型パーソナルコンピューター、携帯用電話機、携帯情報端末機(Personal Digital Assistants:PDA)、オーディオプレーヤ、プロジェクタ載置台、カプセル型医療機器の通信機能を具備した電子機器といった各種情報処理装置の燃料費電池としての用途が考えられる。即ち、水素を燃料として電力を発生させる燃料電池セルと、該燃料電池セルに水素を供給する水素吸蔵合金容器筐体と、該水素吸蔵合金容器筐体と上記燃料電池セルとの間に配設された検出用圧力センサーと、圧力調整弁と安全弁とを備えた燃料電池システムに於いて、本発明に係る圧電デバイスとしての圧力センサーを使用することができる。
【0106】
更に、事故等のイベント発生時前後の必要な時間のみについて、デジタルタコグラフとドライブレコーダの双方が生成するデータを関連付けて記録し、その後の解析等に有用なデータを提供することが可能な車両用情報記録装置において、前記デジタルタコグラフは、前記車両の走行状況を検出する走行状況検知手段と、前記ドライブレコーダとの間で情報を送受信するデジタルタコグラフ通信手段と、情報を記録するデジタルタコグラフ記録手段と、前記走行状況検知手段から入力した走行状況および前記デジタルタコグラフ通信手段から受信した情報を受けて、前記デジタルタコグラフ記録手段に情報を記録するデジタルタコグラフ制御部と、を有しているが、前記走行状況検知手段として、高精度な圧力検出が可能な本発明に係る圧力センサーを適用できる。
【0107】
更に、被測定者にかかる負荷を検出する活動量計側システムにおいて、前記負荷を圧力として検出する場合においては、検出器として、本発明に係る圧力センサーを適用できる。
また、外部からの侵入または異常を検知する異常検知センサーと、前記異常検知センサーが異常を検知したときに警報を発する警報手段と含むセキュリティシステムにおいて、警戒モード設定手段は、警戒モードに応じて、前記異常検知センサーと前記警報手段とによる警戒動作を作動させる場合に、前記異常検知センサーとして、本発明に係る圧力センサーを適用できる。
【0108】
更に、本発明の電子機器の一例として腕時計型電子機器の本体が存在し、当該本体には、本発明に係る圧力センサーが備えられており、当該圧力センサーはダイナミックレンジやリニアリティなどの特性に優れたものとすることができる。
更に、特に自動車においては、例えばインテークマニホールド圧若しくはチャージ圧、ブレーキ圧、エアサスペンション圧、タイヤ圧、ハイドロリック貯蔵圧、ショックアブソーバ圧、冷却媒体圧、自動変速機における変調圧、ブレーキ圧、タンク圧のような圧力検出に本発明に係る圧力センサーを適用できる。
【0109】
また、自動車のサイドドアの内部の圧力変化により側面衝突を検出する装置においては、衝突時に圧力センサーのダイアフラムが衝撃力を受けた場合に、これを圧力変化として検出する度合いを少なくして、圧力の変化をより高精度に検出するという要求がある。この場合、車両のサイドドアの内部に配設された圧力センサーにより、車両の側面に加わる衝撃を検出する側面衝突検出装置が利用されるが、前記側面衝突検出装置の前記圧力センサーが、圧力を検出するダイアフラムを持ち、そのダイアフラムの受圧面が前記サイドドアの内部の圧力変動により歪むことを検出することによって車両の側面に加わる衝撃を検出する構成を有する場合に、前記圧力センサーに本発明に係る圧力センサーを適用できる。
【符号の説明】
【0110】
1、1A、1C………圧力センサー、100、100A、100B、100C………感圧素子層、12、22………基部、24………第1柱状ビーム、26………第2柱状ビーム、34………第1パッド電極、36………第2パッド電極、109………第1引出し電極、110………第2引出し電極、130………励振電極、134……貫通孔、135……導通手段、120………双音叉素子、122………枠部、124………腕部、126………スリット、200、200A………ダイアフラム層、202………可撓部、204………枠部、206………支持部、300、300A………ベース層、302………スリット、304………枠部、306………凹部、400a、400b、401a、401b、401c、402a、402b、402c、403………凸部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動部の正負の励振電極から夫々延在された引出し電極と電気的に夫々接続された一対のパッド電極を同一主面に配置した圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動子を利用する圧電デバイスの1つとして、ダイアフラム式の圧力センサー等の力検出器が存在する。例えば、特許文献1には圧力センサーが開示されている。圧力センサーは、ダイアフラムと、容器と、該ダイアフラムに設けた支持部に搭載された双音叉振動子(感圧素子)とから構成され、被検出圧力を受圧したダイアフラムが撓み変位すると、その変位が支持部を介して双音叉振動子に伝達される。
【0003】
また、特許文献2には、ダイアフラム層と、ベース層と、該ダイアフラム層に設けた支持部に搭載された双音叉振動子(感圧素子)層とから構成される圧力センサー素子が開示されている。前記感圧素子層は、前記ダイアフラム層と接する一方の面に、前記ダイアフラム層と平面視して重ならない位置に複数のパッド電極が設けられている。前記ダイアフラム層は、前記感圧素子層のパッド電極を互いに分割し、積層時の位置決め用となる凸部が設けられた構造が開示されている。
【0004】
ここで、特許文献2において、ダイアフラム層と、感圧素子層と、ベース層と、を接合剤で接合するとき、導電性接着剤、半田等、共晶合金(Au−Ge、Au−Si、Au−Sn、Au−In等)等の導電性を有する接合剤を用いて接合するのが一般的である。ところが、導電性を有する接合剤を用いて各層を接合すると、感圧素子層の一方の主面に設けた、極性等の信号が互いに異なる一対のパッド電極と接合剤とが接触し、パッド電極同士が短絡してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献3において提案されている3層型圧電デバイスの構造では、中間層である感圧素子層の表面に一方の極性のパッド電極と引出し電極を配置し、裏面に他方の極性のパッド電極と引出し電極を配置することで、前述の短絡の問題を解消している。しかし、特許文献3で提案されている構造では、同一面に極性の異なるパッド電極を配置することができない。
【0006】
そこで、特許文献4には、3層構造の圧電デバイスにおいて同一面に極性の異なるパッド電極の配置を可能とする手段として、導電性を有する接合剤である共晶合金(Au−Ge、Au−Si)を用いて極性の異なるパッド電極及び引出し電極が短絡しないように部分的に各層を接合した後、非導電性の接合剤であるガラス材を用いて極性の異なるパッド電極の間隙領域を接合し、容器内部の気密封止を行っている。
【0007】
一方、このような3層構造の電子デバイスを製造する場合、各層を圧電デバイスの個片を連結してなる母基板(マザーウェーハ)から構成し、これら3つの母基板を積層した後、ダイシングで個片に分離することが行われている(例えば、特許文献5、6参照)。また、特許文献7では、積層された3層のマザー基板を個片に分離するに当たり、最外層(上層と下層)の母基板の切り代に予め、単層状態時にダイシングブレードにより断面がベベル形状の溝(ハーフカット)を入れておき、積層された母基板を前記溝に沿ってダイシングブレードにてフルカットして分離する製造方法が提案されている。
【0008】
更に従来より、基板の厚さ方向に貫通孔を設け、当該貫通孔を電極配線に利用することが行われている。例えば、特許文献8には、圧電振動板の内部で導通を行うためのコンタクトホールを設け、圧電振動板側面の電極を除去することにより、角部の露出をなくし、接合時の放電の発生を防止することが記載されている。
【0009】
また、特許文献9には、下部筐体に水晶振動子の内部電極を筐体の外部に導くための2つの貫通孔を設け、貫通孔の内側面に真空蒸着などにより金属膜からなる接続電極を形成し、当該接続電極で筐体内部の水晶振動子に設けられた内部電極と、下部筐体の外側に形成された外部電極とを導通することが記載されている。
また、特許文献10には、圧電振動子を貫通し、電極配線に用いるためのスルーホールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−230401号
【特許文献2】特開2010−243207号
【特許文献3】特開2010−124448号
【特許文献4】特開2011−045041号
【特許文献5】特開2007−325250号
【特許文献6】特開2009−065520号
【特許文献7】特開2006−157872号
【特許文献8】特開2002−76826号公報
【特許文献9】特開2003−87078号公報
【特許文献10】特開2007−256068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献4のように、接合剤として導電性を有する接合剤と非導電性を有する接合剤との2種類を用いる手法では、接合剤の管理が煩雑であり、更に接合工程が少なくとも2工程必要であるため、結果的に生産コストが高くなるという問題があった。更に、2種類の接合剤を用いるため、素子に熱歪に起因した内部応力の発生が生じないように互いの熱膨張係数の最適な仕様の選定が必要となるため、仕様の選択肢が狭まり、その結果、設計自由度が制限されるという大きな問題が生じることとなる。
【0012】
また、特許文献5乃至7に記載の製造方法では、3層のマザー基板をダイシングにより個片に分離するとき、各層の切り代に隣接する接合部にダイシングにより生じる振動により剥離現象が発生し、剥離に伴って切断部のチッピングのダメージも大きくなっていた。また側面に電極を形成した場合に、ダイシングにより電極が削れてしまうという問題があった。また更に、前記振動により感圧素子(双音叉振動子)自体に破損が生じてしまうという問題があった。
【0013】
また、特許文献8乃至10に記載されているように貫通孔を電極配線に用いることも考えられるが、同一面に極性の異なるパッド電極を配置する場合には、当該貫通孔を用いてどのような電極配置とするかを検討する必要がある。
【0014】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであって、同一面に極性等の信号の異なるパッド電極を配置した場合であっても、パッド電極間の短絡を防止することを可能とする圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、母基板(マザーウェーハ)から個片を分離するときに生じる剥離現象等を防止し、高い生産性と良品率を有する圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、基板の同一面に極性の異なるパッド電極を配置する場合に、貫通孔を用いてパッド電極間の短絡を防止することを可能とする圧電デバイス及び圧電デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]圧電振動片と、前記圧電振動片の外周を囲むように設けられた枠部と、を有する圧電振動基板と、前記圧電振動片と前記枠部とを挟み、前記枠部の主面に接合された第1基板及び第2基板と、を備えた圧電デバイスであって、前記圧電振動基板と前記第2基板には、一辺を二分するように切り欠くスリットが設けられ、前記スリットにより一対の接続部が分離して配置され、前記一対の接続部は、少なくとも一部が前記第1基板よりも外側へ露出しており、前記圧電振動基板は、前記一対の接続部の一方の主面側に夫々設けられた互いに信号の異なる電極パッドと、前記一対の接続部の一方に設けられ、厚さ方向に貫通する貫通孔と、当該貫通孔の内部に設けられた導通手段と、を有し、前記一対の接続部の他方の主面に設けられた引出し電極は、前記導通手段により前記引出し電極と信号が同じ前記電極パッドに電気的に接続されている、ことを特徴とする圧電デバイス。
本発明によれば、前記一対の接続部の他方の主面に設けられた引出し電極は、前記導通手段により前記引出し電極と信号が同じ前記電極パッドに電気的に接続されているため、圧電振動基板と、第1基板又は第2基板とを、導電性のある接合剤で接合したとしても、圧電振動基板の各主面において接合剤が同一の信号の電極とのみ接触するように接合剤及び電極を配置することができ、信号の異なるパッド電極間の短絡を防止することができる。
【0018】
[適用例2]前記導通手段は、前記貫通孔を充填する導電性接着剤であることを特徴とする適用例1に記載の圧電デバイス。
本発明によれば、貫通孔に導電性接着剤を充填して、他方の主面に設けられた前記引出し電極と該引出し電極と信号が同じ電極パッドとを電気的に接続することで、圧電振動基板の各主面において接合剤が同一の信号の電極とのみ接触するようにすることができ、信号の異なるパッド電極間の短絡を防止することができる。
【0019】
[適用例3]前記導通手段は、前記貫通孔の内壁面に設けられた導電膜であることを特徴とする適用例1又は2に記載の圧電デバイス。
本発明によれば、貫通孔の内壁面に導電膜を設けて、他方の主面に設けられた前記引出し電極と該引出し電極と信号が同じ電極パッドとを電気的に接続することで、圧電振動基板の各主面において接合剤が同一の信号の電極とのみ接触するようにすることができ、信号の異なるパッド電極間の短絡を防止することができる。
【0020】
[適用例4]前記第1基板は、可撓性を有する可撓部を備えたダイアフラムであり、前記圧電振動基板の振動部は、少なくとも一以上の柱状ビームからなる振動素子であり、前記ダイアフラムの可撓部には、前記振動素子の両端に位置する一対の基部を夫々支持する支持部が設けられていることを特徴とする適用例1から3の何れか1例に記載の圧電デバイス。
本発明によれば、振動部が1本の柱状ビームからなる場合は高い感度を有する振動部となり、振動部が2本以上の柱状ビームからなる場合は振動漏れを抑制したQ値の高い振動部とすることができる。
【0021】
[適用例5]前記第1基板と前記圧電振動基板と前記第2基板のうち少なくとも2つ以上の基板の周縁部夫々には、互いに重なり合う少なくとも1つ以上の第1の凸部が設けられていることを特徴とする適用例1から4の何れか1例に記載の圧電デバイス。
本発明によれば、圧力センサーの製造時に、凸部をアライメントマークとして各基板を積層する際の位置合わせに用いることができ、圧力センサーの良品率を向上させることができる。
【0022】
[適用例6]励振電極を有する圧電振動基板と、前記圧電振動基板の一方の主面と接するように積層された第1基板と、前記圧電振動基板の他方の主面と接するように積層された第2基板と、を備え、前記圧電振動基板と前記第2基板には、一辺を二分するように切り欠くスリットが設けられた圧電デバイスの製造方法であって、複数の前記第1基板が連結された状態の第1のマザーウェーハを形成する第1のマザーウェーハ形成工程と、複数の前記圧電振動基板が連結された状態の第2のマザーウェーハを形成する第2のマザーウェーハ形成工程と、複数の前記第2基板が連結された状態の第3のマザーウェーハを形成する第3のマザーウェーハ形成工程と、前記第2のマザーウェーハの前記第1基板の前記スリットにより分離された一対の接続部のうちの一方の接続部に、厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記第2のマザーウェーハの一方の主面側の前記第2基板の前記一対の接続部に、互いに信号の異なるパッド電極を形成し、前記第2基板の両主面夫々に、前記励振電極から引き出された互いに信号の異なる引出し電極を形成する電極形成工程と、他方の主面に形成された前記引出し電極と該引出し電極と信号が同じ前記パッド電極とを電気的に接続する導電性接着剤を前記貫通孔に充填する貫通孔充填工程と、前記第1、第2、第3のマザーウェーハを積層して接合する接合工程と、前記接合工程により積層された積層マザーウェーハをダイシングにより個片に分離する分離工程とを備えたことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
本発明によれば、圧電振動基板の側面に電極を設けていないため、分離工程においてダイシングで個片に切り離しても側面電極が削れることがなく、生産性と良品率を向上させることができる。
【0023】
[適用例7]複数の前記第1基板夫々は第1の梁部により連結されており、複数の前記圧電振動基板夫々は第2の梁部により連結されており、複数の前記第2基板夫々は第3の梁部により連結されており、前記接合工程で、前記第1の梁部と前記第2の梁部と前記第3の梁部とが重なり合うように、前記第1、第2、第3のマザーウェーハを積層して接合し、前記分離工程で、前記第1の梁部と前記第2の梁部と前記第3の梁部とを切断することにより、個片に分離することを特徴とする適用例6に記載の圧電デバイスの製造方法。
本発明によれば、第1の梁部と第2の梁部と第3の梁部とが重なり合うように、第1、第2、第3のマザーウェーハを積層して接合することで、梁部を用いて位置合わせをすることができ、生産性と良品率を向上させることができる。
【0024】
[適用例8]前記接着剤充填工程で前記貫通孔に導電性接着剤を充填することに替えて、又は、該導電性接着剤を充填することに加えて、前記電極形成工程で、他方の主面に形成された引出し電極と該引出し電極と信号が同じ前記電極パッドとを電気的に接続する導電膜を前記貫通孔の内壁面に形成することを特徴とする適用例6又は7に記載の圧電デバイスの製造方法。
本発明によれば、導電性接着剤の導電性に応じて、貫通孔の内壁面に電極を形成し、導通手段の導電性を強くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧力センサーの分解斜視図である。
【図2】同実施形態に係る圧力センサーの斜視図である。
【図3】図2の圧力センサーをA−A’線で切断したときの断面図である。
【図4】感圧素子層の一方の主面(表面)に配置された電極の構成と接合剤塗布領域を示す図である。
【図5】感圧素子層の他方の面(裏面)に配置された電極の構成と接合剤塗布領域を示す図である。
【図6】同実施形態に係るダイアフラム層、感圧素子層、ベース層夫々の外形が形成された3枚のマザーウェーハの斜視図である。
【図7】第2実施形態に係る圧力センサーの分解斜視図である。
【図8】同実施形態に係る圧力センサーの斜視図である。
【図9】同実施形態に係るダイアフラム層、感圧素子層、ベース層夫々の外形が形成された3枚のマザーウェーハの斜視図である。
【図10】第3実施形態に係る感圧素子層の斜視図である。
【図11】同実施形態に係るダイアフラム層、感圧素子層、ベース層夫々の外形が形成された3枚のマザーウェーハの斜視図である。
【図12】第4実施形態において、各チップを連結する梁部に溝部を設けた様子を説明する図である。
【図13】溝の変形例を示す図である。
【図14】溝の他の変形例を示す図である。
【図15】第5実施形態に係る圧力センサーの分解斜視図である。
【図16】同実施形態に係る感圧素子層を表面側から見た斜視図である。
【図17】同実施形態に係る感圧素子層の裏面に配置された電極の構成を透過させた状態を示す平面図である。
【図18】第6実施形態に係る圧電モジュールの斜視図である。
【図19】同実施形態に係る圧電モジュールの長手方向中央断面図である。
【図20】第7実施形態に係る圧電モジュールの長手方向中央断面図である。
【図21】同実施形態に係る圧電モジュール内の圧力センサーをスリットが設けられている側から見た図である。
【図22】振動部としてATカット振動子を用いた場合の圧力センサーの分解斜視図である。
【図23】本発明に係る圧電デバイスの圧電振動基板の振動部が音叉振動子である場合の、圧電デバイスの分解斜視図及び圧電振動基板の裏面図である。
【図24】本発明に係る圧電デバイスの圧電振動基板の振動部がATカット水晶振動子である場合の、圧電デバイスの分解斜視図及び圧電振動基板の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る圧電デバイスを圧力センサーに適用した場合の実施形態について詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る圧力センサー1の分解斜視図であり、図2は圧力センサー1の斜視図であり、図3は圧力センサー1の長辺方向断面図である。
【0027】
本実施形態に係る圧力センサー1は、ダイアフラム層(第1基板)200と、ベース層(第2基板)300と、このダイアフラム層200とベース層300によって挟持される感圧素子層(圧電振動基板)100とを有する絶対圧計である。ダイアフラム層200と、ベース層300と、感圧素子層100とは、それぞれ短辺と長辺を有する矩形の平面形状を有し、水晶基板により形成されている。感圧素子層100とベース層300の長辺はダイアフラム層200より長く形成され、その長い部分により張り出し部分が形成されている。
【0028】
ダイアフラム層200は、外部からの被測定圧力を受圧すると撓み変形する可撓部202を有している。可撓部202の周囲には枠型の枠部204が形成されている。ダイアフラム層200は、可撓部202のうち感圧素子層100と対向する側の面に、一対の支持部206を有する。支持部206は、感圧素子層100が有する後述する振動部の両端に配置された一対の基部を支持する。支持部206は、被測定圧力を受けて変形した可撓部202の撓みを力に変換して振動部に伝達する。
【0029】
ベース層300は、前述したダイアフラム層200よりも長手方向に長く形成されている。ベース層300の周縁には枠部304が形成されている。また、ベース層300の周縁のうちダイアフラム層200より張り出した張り出し部分には、スリット302が形成されており、当該スリット302により張り出し部に一対の接続部が形成される。スリット302は、ベース層300の1つの短辺の中央部を長辺方向に切り欠いている。感圧素子層100に対向する側の面であって、枠部304の内側には凹部306が形成されている。
【0030】
感圧素子層100は、中央部に感圧素子としての双音叉素子120と、その周囲を囲む枠型の枠部122とを有している。双音叉素子120は、振動部としての一対の平行な第1柱状ビーム24及び第2柱状ビーム26(振動素子)と、両柱状ビーム24、26の両端に接続される一対の基部12、22とを有している。双音叉素子120は、両柱状ビーム24、26に引張り応力又は圧縮応力が印加されると、その共振周波数が変化する周波数変化型の感圧素子であり、所謂、双音叉型の圧電振動子である。
【0031】
枠部122は、各基部12、22から柱状ビーム24、26と直交する方向に延びる一対の梁状の腕部124を介して双音叉素子120と連結されている。
感圧素子層100の周縁部におけるダイアフラム層200より張り出した張り出し部分には、当該周縁部を隔離するスリット126が設けられている。当該スリット126は感圧素子層100の前記両柱状ビーム24、26に直交する方向に平行な1つの短辺の中央部を前記両柱状ビーム24、26が伸びる方向に沿って、即ち長辺方向に切り欠いている。また、当該スリット126により、分離された一対の接続部が当該張り出し部分に配置されることとなる。一対の接続部のうち一方の接続部には、厚さ方向に貫通する貫通孔134が設けられている。貫通孔134内には後述する両主面に形成された電極同士を電気的に接続する導通手段135が設けられている。なお、導通手段135としては、貫通孔134を充填する導電性接着剤であってもよいし、貫通孔134の内壁面に設けられた導電膜であってもよい。或いは、これらの導電性接着剤と貫通孔134の内壁面に設けられた導電膜との両方を、導通手段135として用いてもよい。
【0032】
感圧素子層100とベース層300とは外縁形状が同一となるように形成されており、感圧素子層100の枠部122及びスリット126は、ベース層300の枠部304及びスリット302と対向するように配置される。
【0033】
このように感圧素子層100、ベース層300夫々にスリット126、302を設けることで、実装時にベース層300の下面のうちスリット302で隔離された2点を実装基板に固定すれば、スリット126、302が当該2点に作用する歪みを吸収するため、2点間に作用するマウント歪を抑制することができる。
【0034】
また、感圧素子層100の枠部122は、一対の接続部を除いてダイアフラム層200の枠部204と対向するように配置されている。感圧素子層100の一対の接続部における一方の主面は、図2、図3に示すように、外部に露出するように配置されている。
【0035】
図4は感圧素子層100のダイアフラム層200に対向する側の一方の主面(以下「表面」という)に配置された電極の構成と接合剤塗布領域を示す図であり、図5は感圧素子層100の他方の面(以下「裏面」という)に配置された電極の構成と接合剤塗布領域を示す図である。
【0036】
双音叉振動子の柱状ビーム24、26には、詳細を後述する正負の極性の異なる励振電極130が設けられている。励振電極130は、第1柱状ビーム24及び第2柱状ビーム26を励振させるための電極である。感圧素子層100の表面においては、図4に示すように、一方の極性の励振電極130から第2引出し電極110が基部12を支えている腕部124を介して枠部122に引き出されている。裏面においては、図5に示すように、他方の極性の励振電極130から第1引出し電極109が基部12を支えている腕部124を介して枠部122に引き出されている。
【0037】
感圧素子層100の表面側であってスリット126により分離された一対の接続部夫々には、図4に示すように互いに極性が異なる第1パッド電極34及び第2パッド電極36が設けられている。これらの第1パッド電極34及び第2パッド電極36は、感圧素子層100とダイアフラム層200とを接合する接合剤が塗布される接合剤塗布領域132よりも外側に配置されている。パッド電極34、36は、圧力センサー1を実装する実装基板(不図示)が備える端子(不図示)に接続するための電極であり、励振電極130に対して電圧を印加するための信号や、励振によって得られた信号の入出力を行う。
【0038】
図4に示すように、第2引出し電極110は第2パッド電極36の位置まで引き出されている。また、裏面の第1引出し電極109は、貫通孔134の導通手段135と電気的に接続し、当該導通手段135は表面の第1パッド電極34と電気的に接続している。すなわち、貫通孔134内の導通手段135は、裏面の第1引出し電極109と、表面の第1パッド電極34とを電気的に接続する役割を有する。
【0039】
次に、励振電極130の構成について詳細に説明する。以下では、平行して配置された第1柱状ビーム24と第2柱状ビーム26とが対向する側面を内側面といい、第1柱状ビーム24と第2柱状ビーム26夫々において内側面の反対側に位置する側面を外側面という。
【0040】
励振電極130は、第1柱状ビーム24、第2柱状ビーム26上の長手方向に3つに区分けされた励振領域(第1領域28、第2領域30、第3領域32)に設けられる。第1柱状ビーム24、第2柱状ビーム26における各振動領域では、表面、裏面、内側面、及び外側面のそれぞれに励振電極130としての金属パターンが形成されている。なお、第1柱状ビーム24、第2柱状ビーム26の内側面及び外側面に形成される励振電極42、44、50、52、58、60、66、68は、その一部が表面及び裏面を跨ぐように配設される。
【0041】
まず、一方の極性の励振電極130について説明する。本実施形態では、一方の極性の励振電極130は、外側面励振電極44、68、76と、表面励振電極46、54、78と、内側面励振電極42、66、74と、裏面励振電極48、56、80と、引出し電極101、102、103、104、105、106、107とで構成される。
【0042】
第1パッド電極34から貫通孔134の導通手段135を介して引き出された図5に示す裏面の第1引出し電極109は分岐され、分岐路の一方が第1柱状ビーム24における第1領域28の外側面励振電極44の基部12側端部へ、他方が第2柱状ビーム26における第1領域28の裏面励振電極48の基部12側端部へそれぞれ接続される。外側面励振電極44は、外側面励振電極44の第2領域30側端部から第1柱状ビーム24の表面へ引き回される引出し電極101と、裏面の引出し電極102とに導通した構成である。引出し電極101は、第1柱状ビーム24の表面内にて二股に分岐される。即ち、引出し電極101は、表面において第1柱状ビーム24における第2領域30の表面励振電極54と表面励振電極38との間の領域に形成された1本の引出し電極とこの1本の引出し電極の一端から二股に分岐した引出し電極を有する。そして引出し電極101は、一本の引出し電極の他端を表面励振電極54と接続し、分岐した1本の引出し電極を外側振動電極44の第1領域28側端部に接続し、分岐した他方の引出し電極を第1柱状ビーム24における第1領域28の内側面励振電極42の第2領域30側端部へ接続する。そして、内側面励振電極42の基部12側端部からは、基部12の表面側へ引き回される引出し電極103が引き出される。基部12の表面側へ引き回された引出し電極103は、第2柱状ビーム26における第1領域28の表面励振電極46の基部12側端部に接続される。
【0043】
引出し電極104は、図5に示すように第2柱状ビーム26の裏面側であって第1領域28と第2領域30との間に存在する。そして更に、引出し電極104は、3本の分岐を有する3股構成であり、1本の分岐の一端を第1領域28の裏面励振電極48に接続し、他の1本の分岐の一端を内側面励振電極66に接続し、残る1本の分岐の一端を外側面励振電極68に接続した構成である。
【0044】
図4に示す引出し電極105は、第2柱状ビーム26における第2領域30の内側面励振電極66の第3領域32側端部と、外側面励振電極68の第3領域32側端部とからそれぞれ表面に引き出された引出し電極を第2柱状ビーム26の表面内で1本の引出し電極の一端に接続し、1本の引出し電極の他端を、第2柱状ビーム26における第3領域32の表面励振電極78の第2領域30側端部へ接続した構成を有する。
【0045】
第2柱状ビーム26における第3領域32の表面励振電極78の基部22側端部から引き出された引出し電極106は、基部22の表面を引き回されて第1柱状ビーム24における第3領域32の外側面励振電極76の基部22側端部へ接続される。
【0046】
第1柱状ビーム24における第3領域32の外側面励振電極76の第2領域30側端部から裏面に引き出された図5に示す引出し電極107は、外側面励振電極76と一端が接続した1本の引出し電極の他端を二股に分岐した構成を有する。分岐された引出し電極107は、分岐路の一方が第1柱状ビーム24における第2領域30の裏面励振電極56の第3領域32側端部へ接続され、他方が第1柱状ビーム24における第3領域32の内側面励振電極74の第2領域30側端部へ接続される。
【0047】
第1柱状ビーム24における第3領域32の内側面励振電極74の基部22側端部から基部22の裏面に引き出された引出し電極108は、第2柱状ビーム26における第3領域32の裏面励振電極80の基部22側端部に接続される。
【0048】
次に、他方の極性の励振電極130について説明する。他方の極性の励振電極130は、表面励振電極38、62、70と、裏面励振電極40、64、72と、外側面励振電極52、60、84、内側面励振電極50、58、82と、引出し電極111、112、113、114、115、116、117とで構成される。
【0049】
第2パッド電極36から引出された図4に示す第2引出し電極110は分岐され、分岐路の一方が第1柱状ビーム24における第1領域28の表面励振電極38の基部12側端部へ、他方が第2柱状ビーム26における第1領域28の外側面励振電極52の基部12側端部へそれぞれ接続される。
【0050】
第2柱状ビーム26における第2領域30の表面励振電極62と表面励振電極46との間に形成された引出し電極111は、1本の引出し電極の一端を表面励振電極62に接続し、1本の引出し電極の他端を第2柱状ビーム26の表面で分岐した構成を有する。分岐された引出し電極111は、分岐路の一方が第2柱状ビーム26における第1領域28の内側面励振電極50の第2領域30側端部へ接続され、他方が第2柱状ビーム26における第2領域30の表面励振電極62の第1領域28側端部へ接続される。
【0051】
第2柱状ビーム26における第1領域28の内側面励振電極50の基部12側端部から基部12の裏面へ引き出された引出し電極112は、第1柱状ビーム24における第1領域28の裏面励振電極40の基部12側端部へ接続される。
【0052】
第1柱状ビーム24における第1領域28の裏面励振電極40の第2領域30側端部から引き出された引出し電極113は、第1柱状ビーム24の裏面上で二股に分岐される。分岐された引出し電極113は、分岐路の一方が第1柱状ビーム24における第2領域30の外側面励振電極60の第1領域28側端部へ接続され、他方が同第2領域30の内側面励振電極58の第1領域28側端部へ接続される。
【0053】
図4に示す引出し電極114は、第1柱状ビーム24における第2領域30の外側面励振電極60の第3領域32側端部と内側面励振電極58の第3領域32側端部とからそれぞれ表面に引き出された引出し電極を表面内で1本の引出し電極の一端に接続し、1本の引出し電極の他端を第1柱状ビーム24における第3領域32の表面励振電極70の第2領域30側端部へ接続した構成を有する。
【0054】
第1柱状ビーム24における第3領域32の表面励振電極70の基部22側端部から引き出された引出し電極115は、基部22の表面側を引き回されて第2柱状ビーム26における第3領域32の内側面励振電極82の基部22側端部へ接続される。
【0055】
第2柱状ビーム26における第3領域32の内側面励振電極82の第2領域30側端部から引き出された図5に示す引出し電極116は、第2柱状ビーム26の裏面側へ引き回され、二股に分岐される。分岐された引出し電極116は、一方が第2柱状ビーム26における第2領域30の裏面励振電極64の第3領域32側端部へ接続され、他方が第2柱状ビーム26における第3領域32の外側面励振電極84の第2領域30側端部へ接続される。
【0056】
第2柱状ビーム26における第3領域32の外側面励振電極84の基部22側端部から引き出された図5に示す引出し電極117は、基部22の裏面側へ引き回され、その後に第1柱状ビーム24における第3領域32の裏面励振電極72の基部22側端部へ接続される。
【0057】
上記のような構成とすることにより、第2領域30における内側面励振電極58、66及び外側面励振電極60、68に対しては、第1領域28における裏面励振電極40、48と、第3領域32における表面励振電極70、78との双方に導通が図れるように引出し電極113、104、114、105が引き回されることとなる。
【0058】
以上説明したように、感圧素子層100の裏面の第1引出し電極109は、貫通孔134の導通手段135を介して、表面に設けた第1パッド電極34と電気的に接続している。また、表面の第2引出し電極110は第2パッド電極36と電気的に接続している。すなわち、感圧素子層100の表面と裏面とに極性の異なる第1引出し電極109、第2引出し電極110が夫々分かれて延在されている。したがって、感圧素子層100の表裏面の接合剤塗布領域132、136に接合剤を塗布して、感圧素子層100をダイアフラム層200及びベース層300と接合し図2に示す圧力センサー1を形成する場合に、第2引出し電極110はダイアフラム層200としか機械的・電気的に接触せず、一方、第1引出し電極109はベース層300としか機械的・電気的に接触しない構造となるため、導電性のある接合剤を用いて接合しても、極性の異なる正負の電極同士がショートすることがない。このように、感圧素子層100の各主面において導電性の接合剤が同一の極性の電極とのみ接触するように電極及び接合剤塗布領域132、136を配置することができるため、同一面に極性の異なるパッド電極34、36を配置した場合であっても、パッド電極34、36間の短絡を防止することができる。
【0059】
なお、第1引出し電極109、第2引出し電極110の引き回し方は一例であり、第2引出し電極110は一方の極性の励振電極130から感圧素子層100の表面を引き回されて第2パッド電極36に導通し、第1引出し電極109は他方の極性の励振電極130から感圧素子層100の裏面を引き回され、貫通孔134内の導通手段135を介して第1パッド電極34に導通していれば、どのような引き回し方でもよい。
【0060】
このような圧力センサー1は、図示せぬ発振回路と電気的に接続され、双音叉素子120は当該発振回路から供給される交流電圧により、固有の共振周波数で屈曲振動を行う。被検出圧力を受圧したダイアフラム層200が撓み変位すると、その変位がダイアフラム層200を介して力に変換されて、双音叉素子120に伝わる。双音叉素子120には、伝達された力によって内部応力(引張り応力又は圧縮応力)が生じ、これにより共振周波数が変化する。この共振周波数の変動を測定して被検出圧力を検出する。
【0061】
双音叉素子120は加えられた力に対して共振周波数の変化が大きく、圧力を感度よく検出できる。即ち、双音叉型の圧電振動子は、厚みすべり振動をするATカット水晶を用いた厚みすべり振動子などに比べて、振動部(柱状ビーム)に生じる伸長・圧縮応力に起因した共振周波数の変化が極めて大きく、共振周波数の可変幅が大きいので、わずかな物理量の差(圧力差)を検出するような分解能力に優れた力センサーにおいては、好適な感圧素子である。
【0062】
次に、上記構成の圧力センサー1の製造方法について説明する。
まず、フォトリソグラフィー技術を用いたウエットエッチング又はサンドブラストにより、図6に示すように、ダイアフラム層200に対応する複数の第1の個片が連結された状態の第1のマザーウェーハ40aを形成する(第1のマザーウェーハ形成工程)。また、感圧素子層100に対応する複数の第2の個片が連結された状態の第2のマザーウェーハ40bを形成する(第2のマザーウェーハ形成工程)。そして、ベース層300に対応する複数の第3の個片が連結された状態の第3のマザーウェーハ40cを形成する(第3のマザーウェーハ形成工程)。
【0063】
次に、第2のマザーウェーハ40bの第2の個片のスリット126により分離された一対の接続部のうちの一方の接続部に、例えばレーザ等を用いて貫通孔134を形成する(貫通孔形成工程)。
【0064】
次に、マザーウェーハ40a、40b、40c夫々に形成した第1の個片、第2の個片、第3の個片に所定の電極を形成する。(電極形成工程)。感圧素子層100に対応する第2の個片については、図4及び図5に示す電極を形成するとともに、貫通孔134の内壁面に導電膜を形成する。電極及び導電膜は、例えば、ニッケル又はクロムを下層として、その上に蒸着又はスパッタリングにより例えば金による電極層を成膜し、その後フォトリソグラフィーを用いてパターニングすることにより形成することができる。
【0065】
次に、導電性接着剤を貫通孔134に充填する(貫通孔充填工程)。
次に、感圧素子層100の図4及び図5に示す接合剤塗布領域132、136に導電性接着剤を塗布し、マザーウェーハ40a、40b、40cの順に積層して、導電性接着剤で接合する(接合工程)。なお、接合方法としては、金(Au)を用いた陽極接合を行ってもよい。
【0066】
次に、接合した3層のマザーウェーハ40a、40b、40cをダイシングにより個片に切り離す(分離工程)。これにより、図2に示す圧力センサー1が複数形成される。
このような製造方法では、電極や導電性接着剤は、ダイアフラム層200、感圧素子層100、ベース層300の外形の主面及び貫通孔134の内部に設けられており、側面に設けていないため、ダイシングを行っても必要な電極配線が削れることがない。したがって、高い生産性と良品率を保持することができる。
【0067】
なお、導通手段135を貫通孔134の内壁面の導電膜のみとする場合は、上記貫通孔充填工程を省略すればよい。また、導通手段135を貫通孔134内に充填する導電性接着剤のみとする場合は、上記電極形成工程において貫通孔134の内壁面に対する導電膜形成を省略すればよい。
【0068】
また、上述した実施形態では、ベース層300にスリット302を設け、感圧素子層100とベース層300との外縁形状を同一としたが、これに限らず、ダイアフラム層200にスリットを設けて感圧素子層100とダイアフラム層200の外縁形状を同一とし、感圧素子層100の張り出し部の裏面にパッド電極34、36を設けるようにしてもよい。
【0069】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態では、第1実施形態と同等の部分には同一の番号を付し、重複した説明を省略する。
図7には、第2実施形態に係る圧力センサー1Aの分解斜視図を示す。
【0070】
同図に示すように、ダイアフラム層200Aの対向する2つの長辺の側面にはそれぞれ1つの凸部400aが設けられ、2つの短辺のうち一方の短辺の側面には2つの凸部400bが設けられている。この凸部400a、400bは、マザーウェーハに形成された複数のダイアフラム層200A同士を連結する梁部を切断することにより形成される。
【0071】
ベース層300Aの2つの長辺の側面にはそれぞれ1つの凸部402aが設けられ、2つの短辺の側面にはそれぞれ2つの凸部402b、402cが設けられている。スリット302が形成されている短辺側の側面については、当該スリット302で隔離される2つの側面にそれぞれ1つの凸部402cが設けられている。この凸部402a、402b、402cは、後述するマザーウェーハに形成された複数のベース層300A同士を連結する梁部を切断することにより形成される。
【0072】
感圧素子層100Aの2つの長辺の側面にはそれぞれ1つの凸部401aが設けられ、2つの短辺の側面にはそれぞれ2つの凸部401b、401cが設けられている。スリット126が形成されている短辺側の側面については、当該スリット126で隔離される2つの側面にそれぞれ1つずつ凸部401cが設けられている。この凸部401a、401b、401cは、後述するマザーウェーハに形成された複数の感圧素子層100A同士を連結する梁部を切断することにより形成される。
【0073】
図8に示すように、ダイアフラム層200Aと感圧素子層100Aとベース層300Aとを重ね合わせた場合に、ダイアフラム層200Aの凸部400aと感圧素子層100Aの凸部401aとは互いに重なり合い、感圧素子層100Aの凸部401aとベース層300Aの凸部402aとは互いに重なり合い、ダイアフラム層200Aの凸部400bと感圧素子層100Aの凸部401bとは互いに重なり合い、感圧素子層100Aの凸部401bとベース層300Aの凸部402bとは互いに重なり合い、感圧素子層100Aの凸部401cとベース層300Aの凸部402cとは互いに重なり合う。したがって、これらの凸部(第1の凸部)400a、400b、401a、401b、401c、402a、402b、402cは、圧力センサー1Aの製造時にダイアフラム層200Aと感圧素子層100Aとベース層300Aとを積層する際のアライメントマークとして用いることができる。これにより、正確に位置合わせを行って積層することができ、圧力センサー1の良品率を向上させることができる。
【0074】
なお、各層100A、200A、300Aの各辺に設けられる上述した凸部の数は一例に過ぎず、例えば3つ以上であってもよい。また、各層100A、200A、300Aの平面形状が矩形以外の形状であっても、少なくとも2つ以上の何れかの層に少なくとも1つ以上の凸部を設けることで、当該凸部をアライメントマークとして用いることができる。
【0075】
次に、第2実施形態に係る圧力センサー1Aの製造方法について説明する。
まず、フォトリソグラフィー技術を用いたウエットエッチング又はサンドブラストにより、ダイアフラム層200Aに対応する複数の第1の個片が梁部(第1の梁部)400により連結された状態の第1のマザーウェーハ40dを形成する(第1のマザーウェーハ形成工程)。また、感圧素子層100Aに対応する複数の第2の個片が梁部(第2の梁部)400により連結された状態の第2のマザーウェーハ40eを形成する(第2のマザーウェーハ形成工程)。そして、ベース層300Aに対応する複数の第3の個片が梁部(第3の梁部)400により連結された状態の第3のマザーウェーハ40fを形成する(第3のマザーウェーハ形成工程)。図9には各マザーウェーハ40d、40e、40fの斜視図を示す。図9に示すように、各マザーウェーハ40d、40e、40fにおいて、複数のダイアフラム層200A、感圧素子層100A、ベース層300Aに対応する個片同士が互いに梁部400を介して保持し合っている。この場合、各個片の対向する一対の短辺の側面には夫々2本の梁部400が設けられ、対向する一対の長辺の側面には夫々1本の梁部400が設けられている。
【0076】
次に、第2のマザーウェーハ40eの第2の個片のスリット126により分離された一対の接続部のうちの一方の接続部に、例えばレーザ等を用いて貫通孔134を形成する(貫通孔形成工程)。
【0077】
次に、マザーウェーハ40d、40e、40f夫々に形成したダイアフラム層200A、感圧素子層100A、ベース層300Aに対応する個片夫々に所定の電極を形成する。(電極形成工程)。感圧素子層100Aに対応する第2の個片については、図4及び図5に示す電極を形成するとともに、貫通孔134の内壁面に導電膜を形成する。
【0078】
次に、感圧素子層100Aに対応する第2の個片の図4及び図5に示す接合剤塗布領域132、136に接合剤を塗布し、梁部400をアライメントマークとして用いて、各マザーウェーハ40d、40e、40fの梁部400が積層方向に重なり合うように、第1のマザーウェーハ40d、第2のマザーウェーハ40e、第3のマザーウェーハ40fの順に積層し、3枚のマザーウェーハ40d、40e、40fを接合剤で接合する(接合工程)。なお、接合方法としては、金(Au)を用いた陽極接合を行ってもよい。
【0079】
次に、導電性接着剤を貫通孔134に充填する(接着剤充填工程)。
次に、接合した3層のマザーウェーハ40d、40e、40fの各梁部400をダイシング又は折り取りにより切断することで、個片に切り離す(分離工程)。そして、ダイアフラム層200Aのスリットに近い短辺側の側面に残存した梁部400を取り除くことで、図8に示す圧力センサー1Aが複数形成される。
【0080】
このような製造方法によれば、積層して接合した3層からなるマザーウェーハ40d、40e、40fを個片状の圧力センサー1Aとなるように分離する場合に、切り代付近の接合部の剥離、大きなチッピング、衝撃によるチップの破損等を抑制することができ、高い生産性と良品率を保持することができる。
【0081】
また、梁部400を、マザーウェーハ40d、40e、40fを積層の際のアライメントマークとして用いて、位置合わせを行うことができる。
また、チップの分離時に各チップに梁部400の残渣(凸部400a、400b、401a、401b、401c、402a、402b、402c)を残すように梁400を切断することで、パッケージ等の実装基板への圧力センサー1Aのマウント時に、梁部の残渣をアライメントマークとして用いることができる。具体的には、当該梁部の残渣と実装基板のマウント面に予め配置したアライメントマークとの位置合わせを行った上で、圧力センサー1Aを実装基板へ搭載することができる。これにより、アライメントの精度を向上させることができる。
【0082】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図10は本実施形態に係る感圧素子層の斜視図であり、図11は本実施形態に係る各マザーウェーハの斜視図である。図10に示すように、第3実施形態に係る感圧素子層100Bは、第2実施形態に係る感圧素子層100Aに対して凸部(第2の凸部)403を構成要素として追加したものである。当該凸部403は、感圧素子層100Bとダイアフラム層200Aとの接合部と、第1のパッド電極34及び第2のパッド電極36と、の間に存在する感圧素子層100Bの2つの側面夫々に設けられている。なお、接合部は、接合剤塗布領域132に接合剤が塗布されて感圧素子層100Bとダイアフラム層200Aとが接合されることにより形成される。
【0083】
この凸部403は、図11に示す第2のマザーウェーハ40gに形成された複数の感圧素子層100B同士を連結する梁部404を切断することにより形成されたものである。
このような凸部403を設けることにより、接合部から溢れ出た導電性の接合剤が側面にまで至ってしまった場合や、電極形成工程で側面に不要な電極が残っている場合等に、当該導電性接合剤や側面に残った電極と第1パッド電極34とを電気的に分離することができる。同様に、当該導電性接合剤や側面に残った電極と、第2パッド電極36とを電気的に分離することができる。したがって、感圧素子層100に設けられた互いに極性が異なる正・負の電極間でショートすることが確実に無くなり、生産歩留まりを更に向上させることが出来る。
【0084】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、第2実施形態に係る各マザーウェーハ40a、40b、40cに形成された複数の各チップを連結する梁部400に溝402が設けられている。当該溝402は、図12に示すように梁部400の両主面(厚さ方向)に設けることができる。なお、梁部400の一方の主面に設けることもできる。或いは、図13に示すように梁部400の両方の側面(幅方向)に溝402を設けてもよいし、図14に示すように一方の側面に溝402を設けてもよい。さらに、側面と主面との両方に溝402を設けてもよい。
【0085】
このように溝402を設けることにより、積層した3層からなるマザーウェーハ40a、40b、40cを分離するときに、ダイシング等の切断手段を使用することなしに、個片状の圧力センサーとなるように容易に分離することができる。よって、分離工程を簡素化することができる。
また、ダイシングを行う必要がないため、ダイシング時の振動や衝撃によって各チップに与えるダメージを低減できる。
【0086】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態では、第1〜第4実施形態において感圧素子層100の振動部を2本の柱状ビーム(第1柱状ビーム24と第2柱状ビーム26)で構成していたのを、1本の柱状ビーム10Aで構成する。振動部を2本の柱状ビームで構成した場合は、柱状ビームの振動に対称性を持たせることにより振動漏れを抑制してQ値を高めることができるが、振動部を1本の柱状ビームで構成した場合は、基部12、22から印加される力が大きくなることにより共振周波数の変化量が大きくなり、感度を向上させることができる。
【0087】
図15は、第5実施形態に係る圧力センサー1Cの分解斜視図であり、図16は第5実施形態に係る感圧素子層100Cを表面側から見た斜視図であり、図17は感圧素子層100Cの裏面に配置された電極の構成を透過させた状態を示す平面図である。
【0088】
図16及び図17を参照して感圧素子層100Cに形成される電極の配置の一例について説明する。柱状ビーム10Aは、第1実施形態と同様に、励振電極の配置により第1領域、第2領域、第3領域に分けられる。第1領域の柱状ビーム10Aの対向する表面及び裏面夫々の長手方向中央には、電位の同じ励振電極25a及び励振電極25bが平面視で重なる位置に設けられている。同様に、柱状ビーム10Aの第2領域の表面及び裏面夫々の長手方向中央には、励振電極25a、25bとは電位の異なる励振電極26a及び励振電極26bが平面視で重なる位置に設けられ、第3領域には励振電極27a及び励振電極27bが平面視で重なる位置に設けられている。
【0089】
第1パッド電極34は、貫通孔134の導通手段135を介して裏面の第1引出し電極109に引き出され、第1領域の両側面に設けられた励振電極25c、25dに接続される。それらの励振電極25c、25dが第2領域の裏面の励振電極26bに接続されている。また、第1パッド電極34と接続された励振電極25c、25dのうち一方の励振電極25cは、裏面に設けられた引出し電極29dに引き出されている。柱状ビーム10Aの第2領域の表面に設けられた励振電極26aは、第3領域の両側面の励振電極27c、27dに接続され、これらの励振電極27c、27dのうち励振電極27cは裏面の引出し電極28dに引き出されている。図17に示すように、引出し電極28dと引出し電極29dとは、枠部122に設けられた接続配線28bにより接続されている。以上述べた電極の構成により、第1パッド電極34と、柱状ビーム10Aの第2領域の表裏面に設けられた励振電極26a、26bとが電気的に接続される。
【0090】
また、第2パッド電極36と、その第2パッド電極36と同一面にある第1領域の表面の励振電極25aとは接続されている。また、第2パッド電極36と第1領域の裏面の励振電極25bとは、引出し電極29cを介して接続されている。
【0091】
第1領域の表面の励振電極25aは、第2領域の両側面に設けられた励振電極26c,26dに引き出され、それらの励振電極26c,26dを介して領域Cの裏面の励振電極27bに接続されている。図17に示すように、励振電極27bは、引出し電極28cに引き出されている。引出し電極28cは、上面側に引き出され、第3領域の表面の励振電極27aに接続されている。表面の第2パッド電極36と、表面の引出し電極28cとは、枠部122の表面に設けられた接続配線28aにより接続されている。
【0092】
以上述べた電極の構成により、第2パッド電極36と、柱状ビーム10Aの第1領域及び第3領域の表裏面に設けられた励振電極25a、25b、27a、27bとが、電気的に接続される。
【0093】
本実施形態においても、ダイアフラム層200、感圧素子層100C、ベース層300の順に周縁を接合剤で接合する場合、接続配線28aはダイアフラム層200としか機械的・電気的に接触せず、第1引出し電極109はベース層300としか機械的・電気的に接触しない構造とすることができるため、導電性のある接合剤を用いて接合しても、電位の異なる電極同士がショートすることがない。したがって、同一面に極性の異なるパッド電極34、36を配置した場合であっても、パッド電極間の短絡を防止することができる。
【0094】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態として、上述した圧力センサー1を実装基板に実装して形成した圧電モジュールについて説明する。図18は圧電モジュール500の斜視図であり、図19は圧電モジュール500の長手方向中央断面図である。
【0095】
圧力センサー1の実装先となる実装基板502は、プラスチック、セラミック、ポリイミド等の絶縁体によって形成される。圧力センサー1のベース層300の感圧素子層100と積層される面とは反対側の主面の中央部(ベース層300下面の長手方向の略中央かつ短手方向の略中央)、即ちベース層300の下面中央部にはエポキシ樹脂等の接合部材504が塗布され、圧力センサー1はこの中央部において、1点支持状態で当該接合部材504を介して実装基板502に固定されている。このように1点支持とすることで、実装基板502と圧力センサー1との接合時に熱歪み等の応力が振動部に伝搬するのを緩和することができる。
【0096】
実装基板502の上面には感圧素子を駆動する駆動回路(不図示)に接続された接続電極506が形成されている。また圧力センサー1の第1パッド電極34、第2パッド電極36と、接続電極506とは、Au等のワイヤー線508により接続されている。また、実装基板502と圧力センサー1との間には接合部材504の高さ分だけ隙間が生じるが、好ましくはこの隙間にシリコン系樹脂で形成された緩衝材510を設けることにより、圧電モジュール500の耐衝撃性を高めることが期待できる。
【0097】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。図20は第7実施形態に係る圧電モジュール500aの長手方向中央断面図であり、図21は圧電モジュール500a内の圧力センサー1をスリット126、302が設けられている側から見た図である。
【0098】
第6実施形態と第7実施形態との異なる点は、第6実施形態に係る圧電モジュール500では圧力センサー1と実装基板502とを1点で固定していたのに対して、第7実施形態に係る圧電モジュール500aでは2点で固定している点である。具体的には、第7実施形態では、ベース層300の感圧素子層100と積層される面とは反対側の一対の接続部の主面、即ち、圧力センサー1のベース層300の下面であって第1パッド電極34及び第2パッド電極36と対向する位置夫々に、接合部材504を塗布して、圧力センサー1を2点支持状態で接合部材504を介して実装基板502に固定する。このようにスリット126、302で隔離された2点で支持することで、実装基板502と圧力センサー1との接合部材504による接合時にスリット126、302が熱歪み等の応力を緩和するため、振動部に熱歪み等の応力が伝搬するのを防ぐことができる。
【0099】
なお、圧力センサー1のベース層300の凹部306に、双音叉素子120を駆動するための発振回路を内蔵したIC(Integrated Circuit)等の回路を搭載してもよい。
また、第1実施形態では、振動部として一対の柱状ビーム24、26を設けたが、図22に示すように、一対の柱状ビーム24、26に替えてATカット水晶を用いた厚みすべり振動子(以下「ATカット振動子」という)600を用いてもよい。ATカット振動子600の両主面には励振電極602が設けられており、第1実施形態と同様に、励振電極602には引出し電極109、110が接続されパッド電極34、36まで引き出されている。振動部としてATカット振動子600を用いることで、温度に対する周波数安定性が向上し、周波数温度特性を良好にすることができるとともに、衝撃に強く丈夫な圧力センサーとすることができる。
【0100】
なお、上述した実施形態では、第1パッド電極34及び第2パッド電極36の正負の極性が互いに異なる場合について説明したが、これに限らず、本発明は、信号の極性が互いに異なる場合も含めて、何らかの電子デバイスにおいて、第1パッド電極34及び第2パッド電極36から出力される電気信号が互いに異なる場合にも適用することができる。
【0101】
また、上述した実施形態では、圧電デバイスとして圧力センサーについて説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、本発明は、3層以上の構造を有し且つ中間層として圧電振動基板が含まれる温度センサー、圧電振動子等の圧電デバイスに適用することができる。圧電振動基板の振動部としては、音叉振動子(図23参照)、ATカット水晶振動子(図24参照)、水晶のX軸(電気軸)を中心にして所定の角度だけ回転して得られる回転Y板を用いた水晶振動子、その他のカットで切断された水晶振動子、水晶以外の圧電材料を用いた圧電振動子、等を広く適用できる。
【0102】
圧電デバイスが温度センサーの場合、圧電デバイス内にICを搭載する場合には、ICに温度センサーとしての音叉振動子を駆動するための発振回路、温度補償回路、検出値の補正回路等を内蔵すればよい。
【0103】
また、本発明の圧電デバイスは、上述した圧電モジュール以外に、例えば携帯電話、ハードディスク、パーソナルコンピューター、BS及びCS放送用の受信チューナー、同軸ケーブルや光ケーブル中を伝搬する高周波信号や光信号用の各種処理装置、広い温度範囲で高周波・高精度クロック(低ジッタ、低位相雑音)を必要とするサーバー・ネットワーク機器、無線通信用機器等の様々な電子機器、加速度センサー、回転速度センサー等の各種センサー装置にも広く適用することができる。
【0104】
このような各種センサー装置及び電子機器としては、例えば一般工業用計測機器、電子血圧計、高度・気圧・水深計測機能付き電子機器、携帯機器、自動車などが挙げられる。
そして、上述のように外力によるダイアフラムの機械的な変形を電気的信号として計測するものとして、携帯電話機やパソコン等の小型の携帯機器での高度計測に前記圧力センサーを応用してマイクロホンとして利用可能である。
【0105】
更に、近年注目をされるようになった水素やメタノール等の燃料電池は、軽量化や利便性等に起因して、例えば、ビデオカメラ、ノート型パーソナルコンピューター、携帯用電話機、携帯情報端末機(Personal Digital Assistants:PDA)、オーディオプレーヤ、プロジェクタ載置台、カプセル型医療機器の通信機能を具備した電子機器といった各種情報処理装置の燃料費電池としての用途が考えられる。即ち、水素を燃料として電力を発生させる燃料電池セルと、該燃料電池セルに水素を供給する水素吸蔵合金容器筐体と、該水素吸蔵合金容器筐体と上記燃料電池セルとの間に配設された検出用圧力センサーと、圧力調整弁と安全弁とを備えた燃料電池システムに於いて、本発明に係る圧電デバイスとしての圧力センサーを使用することができる。
【0106】
更に、事故等のイベント発生時前後の必要な時間のみについて、デジタルタコグラフとドライブレコーダの双方が生成するデータを関連付けて記録し、その後の解析等に有用なデータを提供することが可能な車両用情報記録装置において、前記デジタルタコグラフは、前記車両の走行状況を検出する走行状況検知手段と、前記ドライブレコーダとの間で情報を送受信するデジタルタコグラフ通信手段と、情報を記録するデジタルタコグラフ記録手段と、前記走行状況検知手段から入力した走行状況および前記デジタルタコグラフ通信手段から受信した情報を受けて、前記デジタルタコグラフ記録手段に情報を記録するデジタルタコグラフ制御部と、を有しているが、前記走行状況検知手段として、高精度な圧力検出が可能な本発明に係る圧力センサーを適用できる。
【0107】
更に、被測定者にかかる負荷を検出する活動量計側システムにおいて、前記負荷を圧力として検出する場合においては、検出器として、本発明に係る圧力センサーを適用できる。
また、外部からの侵入または異常を検知する異常検知センサーと、前記異常検知センサーが異常を検知したときに警報を発する警報手段と含むセキュリティシステムにおいて、警戒モード設定手段は、警戒モードに応じて、前記異常検知センサーと前記警報手段とによる警戒動作を作動させる場合に、前記異常検知センサーとして、本発明に係る圧力センサーを適用できる。
【0108】
更に、本発明の電子機器の一例として腕時計型電子機器の本体が存在し、当該本体には、本発明に係る圧力センサーが備えられており、当該圧力センサーはダイナミックレンジやリニアリティなどの特性に優れたものとすることができる。
更に、特に自動車においては、例えばインテークマニホールド圧若しくはチャージ圧、ブレーキ圧、エアサスペンション圧、タイヤ圧、ハイドロリック貯蔵圧、ショックアブソーバ圧、冷却媒体圧、自動変速機における変調圧、ブレーキ圧、タンク圧のような圧力検出に本発明に係る圧力センサーを適用できる。
【0109】
また、自動車のサイドドアの内部の圧力変化により側面衝突を検出する装置においては、衝突時に圧力センサーのダイアフラムが衝撃力を受けた場合に、これを圧力変化として検出する度合いを少なくして、圧力の変化をより高精度に検出するという要求がある。この場合、車両のサイドドアの内部に配設された圧力センサーにより、車両の側面に加わる衝撃を検出する側面衝突検出装置が利用されるが、前記側面衝突検出装置の前記圧力センサーが、圧力を検出するダイアフラムを持ち、そのダイアフラムの受圧面が前記サイドドアの内部の圧力変動により歪むことを検出することによって車両の側面に加わる衝撃を検出する構成を有する場合に、前記圧力センサーに本発明に係る圧力センサーを適用できる。
【符号の説明】
【0110】
1、1A、1C………圧力センサー、100、100A、100B、100C………感圧素子層、12、22………基部、24………第1柱状ビーム、26………第2柱状ビーム、34………第1パッド電極、36………第2パッド電極、109………第1引出し電極、110………第2引出し電極、130………励振電極、134……貫通孔、135……導通手段、120………双音叉素子、122………枠部、124………腕部、126………スリット、200、200A………ダイアフラム層、202………可撓部、204………枠部、206………支持部、300、300A………ベース層、302………スリット、304………枠部、306………凹部、400a、400b、401a、401b、401c、402a、402b、402c、403………凸部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動片と、前記圧電振動片の外周を囲むように設けられた枠部と、を有する圧電振動基板と、
前記圧電振動片と前記枠部とを挟み、前記枠部の主面に接合された第1基板及び第2基板と、
を備えた圧電デバイスであって、
前記圧電振動基板と前記第2基板には、
一辺を二分するように切り欠くスリットが設けられ、
前記スリットにより一対の接続部が分離して配置され、
前記一対の接続部は、少なくとも一部が前記第1基板よりも外側へ露出しており、
前記圧電振動基板は、
前記一対の接続部の一方の主面側に夫々設けられた互いに信号の異なる電極パッドと、
前記一対の接続部の一方に設けられ、厚さ方向に貫通する貫通孔と、
当該貫通孔の内部に設けられた導通手段と、
を有し、
前記一対の接続部の他方の主面に設けられた引出し電極は、
前記導通手段により前記引出し電極と信号が同じ前記電極パッドに電気的に接続されている、
ことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記導通手段は、前記貫通孔を充填する導電性接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記導通手段は、前記貫通孔の内壁面に設けられた導電膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記第1基板は、可撓性を有する可撓部を備えたダイアフラムであり、
前記圧電振動基板の振動部は、少なくとも一以上の柱状ビームからなる振動素子であり、
前記ダイアフラムの可撓部には、前記振動素子の両端に位置する一対の基部を夫々支持する支持部が設けられている
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記第1基板と前記圧電振動基板と前記第2基板のうち少なくとも2つ以上の基板の周縁部夫々には、互いに重なり合う少なくとも1つ以上の第1の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
励振電極を有する圧電振動基板と、
前記圧電振動基板の一方の主面と接するように積層された第1基板と、
前記圧電振動基板の他方の主面と接するように積層された第2基板と、
を備え、
前記圧電振動基板と前記第2基板には、一辺を二分するように切り欠くスリットが設けられた圧電デバイスの製造方法であって、
複数の前記第1基板が連結された状態の第1のマザーウェーハを形成する第1のマザーウェーハ形成工程と、
複数の前記圧電振動基板が連結された状態の第2のマザーウェーハを形成する第2のマザーウェーハ形成工程と、
複数の前記第2基板が連結された状態の第3のマザーウェーハを形成する第3のマザーウェーハ形成工程と、
前記第2のマザーウェーハの前記第1基板の前記スリットにより分離された一対の接続部のうちの一方の接続部に、厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記第2のマザーウェーハの一方の主面側の前記第2基板の前記一対の接続部に、互いに信号の異なるパッド電極を形成し、前記第2基板の両主面夫々に、前記励振電極から引き出された互いに信号の異なる引出し電極を形成する電極形成工程と、
他方の主面に形成された前記引出し電極と該引出し電極と信号が同じ前記パッド電極とを電気的に接続する導電性接着剤を前記貫通孔に充填する貫通孔充填工程と、
前記第1、第2、第3のマザーウェーハを積層して接合する接合工程と、
前記接合工程により積層された積層マザーウェーハをダイシングにより個片に分離する分離工程と
を備えたことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項7】
複数の前記第1基板夫々は第1の梁部により連結されており、
複数の前記圧電振動基板夫々は第2の梁部により連結されており、
複数の前記第2基板夫々は第3の梁部により連結されており、
前記接合工程で、前記第1の梁部と前記第2の梁部と前記第3の梁部とが重なり合うように、前記第1、第2、第3のマザーウェーハを積層して接合し、
前記分離工程で、前記第1の梁部と前記第2の梁部と前記第3の梁部とを切断することにより、個片に分離することを特徴とする請求項6に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記接着剤充填工程で前記貫通孔に導電性接着剤を充填することに替えて、又は、該導電性接着剤を充填することに加えて、
前記電極形成工程で、他方の主面に形成された引出し電極と該引出し電極と信号が同じ前記電極パッドとを電気的に接続する導電膜を前記貫通孔の内壁面に形成することを特徴とする請求項6又は7に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項1】
圧電振動片と、前記圧電振動片の外周を囲むように設けられた枠部と、を有する圧電振動基板と、
前記圧電振動片と前記枠部とを挟み、前記枠部の主面に接合された第1基板及び第2基板と、
を備えた圧電デバイスであって、
前記圧電振動基板と前記第2基板には、
一辺を二分するように切り欠くスリットが設けられ、
前記スリットにより一対の接続部が分離して配置され、
前記一対の接続部は、少なくとも一部が前記第1基板よりも外側へ露出しており、
前記圧電振動基板は、
前記一対の接続部の一方の主面側に夫々設けられた互いに信号の異なる電極パッドと、
前記一対の接続部の一方に設けられ、厚さ方向に貫通する貫通孔と、
当該貫通孔の内部に設けられた導通手段と、
を有し、
前記一対の接続部の他方の主面に設けられた引出し電極は、
前記導通手段により前記引出し電極と信号が同じ前記電極パッドに電気的に接続されている、
ことを特徴とする圧電デバイス。
【請求項2】
前記導通手段は、前記貫通孔を充填する導電性接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記導通手段は、前記貫通孔の内壁面に設けられた導電膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記第1基板は、可撓性を有する可撓部を備えたダイアフラムであり、
前記圧電振動基板の振動部は、少なくとも一以上の柱状ビームからなる振動素子であり、
前記ダイアフラムの可撓部には、前記振動素子の両端に位置する一対の基部を夫々支持する支持部が設けられている
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記第1基板と前記圧電振動基板と前記第2基板のうち少なくとも2つ以上の基板の周縁部夫々には、互いに重なり合う少なくとも1つ以上の第1の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
励振電極を有する圧電振動基板と、
前記圧電振動基板の一方の主面と接するように積層された第1基板と、
前記圧電振動基板の他方の主面と接するように積層された第2基板と、
を備え、
前記圧電振動基板と前記第2基板には、一辺を二分するように切り欠くスリットが設けられた圧電デバイスの製造方法であって、
複数の前記第1基板が連結された状態の第1のマザーウェーハを形成する第1のマザーウェーハ形成工程と、
複数の前記圧電振動基板が連結された状態の第2のマザーウェーハを形成する第2のマザーウェーハ形成工程と、
複数の前記第2基板が連結された状態の第3のマザーウェーハを形成する第3のマザーウェーハ形成工程と、
前記第2のマザーウェーハの前記第1基板の前記スリットにより分離された一対の接続部のうちの一方の接続部に、厚さ方向に貫通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記第2のマザーウェーハの一方の主面側の前記第2基板の前記一対の接続部に、互いに信号の異なるパッド電極を形成し、前記第2基板の両主面夫々に、前記励振電極から引き出された互いに信号の異なる引出し電極を形成する電極形成工程と、
他方の主面に形成された前記引出し電極と該引出し電極と信号が同じ前記パッド電極とを電気的に接続する導電性接着剤を前記貫通孔に充填する貫通孔充填工程と、
前記第1、第2、第3のマザーウェーハを積層して接合する接合工程と、
前記接合工程により積層された積層マザーウェーハをダイシングにより個片に分離する分離工程と
を備えたことを特徴とする圧電デバイスの製造方法。
【請求項7】
複数の前記第1基板夫々は第1の梁部により連結されており、
複数の前記圧電振動基板夫々は第2の梁部により連結されており、
複数の前記第2基板夫々は第3の梁部により連結されており、
前記接合工程で、前記第1の梁部と前記第2の梁部と前記第3の梁部とが重なり合うように、前記第1、第2、第3のマザーウェーハを積層して接合し、
前記分離工程で、前記第1の梁部と前記第2の梁部と前記第3の梁部とを切断することにより、個片に分離することを特徴とする請求項6に記載の圧電デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記接着剤充填工程で前記貫通孔に導電性接着剤を充填することに替えて、又は、該導電性接着剤を充填することに加えて、
前記電極形成工程で、他方の主面に形成された引出し電極と該引出し電極と信号が同じ前記電極パッドとを電気的に接続する導電膜を前記貫通孔の内壁面に形成することを特徴とする請求項6又は7に記載の圧電デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図22】
【図4】
【図5】
【図10】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図22】
【図4】
【図5】
【図10】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−247367(P2012−247367A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120912(P2011−120912)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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