圧電振動子、圧電振動子の製造方法および発振器
【課題】水晶板の形状に左右されることなく、水晶板をベース基板に対して平行に保持することができる圧電振動子、圧電振動子の製造方法および発振器を提供する。
【解決手段】ベース基板2と、リッド基板3と、水晶板17の外表面に励振電極5,6とマウント電極7とが形成された圧電振動片4と、ベース基板に形成された貫通孔24,25に設けられた貫通電極13,14と、ベース基板の上面に形成された引き回し電極9,10と、引き回し電極の所定の位置に形成された金属バンプ11と、を備え、圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されるとともに、圧電振動片が金属バンプにより片持ち状態で実装された圧電振動子1において、金属バンプが、圧電振動片の長手方向に沿って複数形成されるとともに、金属バンプの高さが、圧電振動片の長手方向の端部に対応する位置に向かって高くなるように形成されている。
【解決手段】ベース基板2と、リッド基板3と、水晶板17の外表面に励振電極5,6とマウント電極7とが形成された圧電振動片4と、ベース基板に形成された貫通孔24,25に設けられた貫通電極13,14と、ベース基板の上面に形成された引き回し電極9,10と、引き回し電極の所定の位置に形成された金属バンプ11と、を備え、圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されるとともに、圧電振動片が金属バンプにより片持ち状態で実装された圧電振動子1において、金属バンプが、圧電振動片の長手方向に沿って複数形成されるとともに、金属バンプの高さが、圧電振動片の長手方向の端部に対応する位置に向かって高くなるように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子、圧電振動子の製造方法および発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源などとして水晶などを利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子としては、様々なものが提供されているが、その一つとして、MHz帯の発振周波数を有する制御、通信機用の振動子として好適に用いられている厚み滑り振動子(AT振動子)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、AT振動子は、圧電振動片と、該圧電振動片を内部に収納するベース基板およびリッド基板と、を備えている。圧電振動片は、特許文献1にも示されているように、一定の厚みで板状に形成され、平面視で外形が矩形状に形成された水晶板と、該水晶板の両面に形成された励振電極、引き出し電極およびマウント電極と、を有している。具体的には、水晶板の両面の略中央部分に、励振電極がそれぞれ対向する位置に形成されている。また、水晶板の端部には、引き出し電極を介して励振電極に電気的に接続されたマウント電極が形成されている。なお、マウント電極は、一方の励振電極に接続されたものと、他方の励振電極に接続されたものとが、それぞれ水晶板の両面に形成されている。この際、一方の面に形成されたマウント電極は、水晶板の側面を回り込むようにして他方の面に形成されたマウント電極と電気的に接続されている。
【0004】
そして、圧電振動片のマウント電極をベース基板上に形成されたバンプに載置するように配する。なお、バンプは引き回し電極と電気的に接続されており、引き回し電極は貫通電極を介して外部電極と電気的に接続されている。このように構成することにより、外部電極より圧電振動片の励振電極へ電流を印加することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3911838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、圧電振動片として一定の厚みで板状に形成された水晶板を用いる場合は、上記の構成を用いれば、特に問題はなかった。
しかしながら、図13,14に示すように、近年では、圧電振動片に用いる水晶板101,102として厚みが一定でない、ベベル形状の水晶板101やコンベックス形状の水晶板102を用いることがある。このようなベベル形状やコンベックス形状の水晶板101,102をベース基板上にバンプ接続すると、図15に示すように、水晶板がベース基板103と平行に保持することができず、傾いてしまう虞がある。水晶板の傾きが大きくなり、水晶板101とベース基板103とが接触すると、圧電振動子の電気特性に影響を与え、本来の電気特性が得られない虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、水晶板の形状に左右されることなく、水晶板をベース基板に対して平行に保持することができる圧電振動子、圧電振動子の製造方法および発振器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明の圧電振動子は、ベース基板と、該ベース基板に対向させた状態で前記ベース基板に接合されるリッド基板と、前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納されるとともに、前記ベース基板の上面に接合され、水晶板の外表面に励振電極と該励振電極に電気的に接続されたマウント電極とが形成された圧電振動片と、前記ベース基板に形成された貫通孔に設けられた貫通電極と、前記圧電振動片と前記貫通電極とを電気的に接続するために前記ベース基板の上面に形成された引き回し電極と、該引き回し電極の所定の位置に、該引き回し電極と前記マウント電極とを電気的に接続するために形成された金属バンプと、を備え、前記圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されるとともに、前記圧電振動片が前記金属バンプにより片持ち状態で実装された圧電振動子において、前記金属バンプが、前記圧電振動片の長手方向に沿って複数形成されるとともに、前記金属バンプの高さが、前記圧電振動片の長手方向の端部に対応する位置に向かって高くなるように形成されていることを特徴としている。
【0009】
この発明に係る圧電振動子においては、金属バンプに圧電振動片のマウント電極を電気的に接続する際に、水晶板とベース基板とを平行な状態に保持したときのベース基板の表面(引き回し電極の表面)と水晶板の表面(マウント電極の表面)との距離に対応した高さを有する金属バンプが形成されている。したがって、水晶板の端部が先細り形状に形成されている場合にも、圧電振動片の軸方向とベース基板とが平行状態を保持した状態でバンプ接合することができる。つまり、水晶板の形状に左右されることなく、水晶板をベース基板に対して平行に保持することができる。また、複数の金属バンプで圧電振動片を支持するため、より確実に圧電振動片とベース基板とを平行状態に保持することができる。
【0010】
本発明の圧電振動子は、前記圧電振動片が、ATカット振動片であることを特徴としている。
【0011】
この発明に係る圧電振動子においては、発振周波数帯が調整し易く、広範囲な温度に対して周波数の安定度が優れているATカット振動片を有する圧電振動子を提供することができる。
【0012】
本発明の圧電振動子は、前記金属バンプが、金バンプであることを特徴としている。
【0013】
この発明に係る圧電振動子においては、金バンプに圧電振動片をバンプ接合する際に、バンプの先端近傍のみを超音波を用いて溶融して圧電振動片と接合させることができるため、圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されている場合にも、圧電振動片とベース基板とを平行状態に保持した状態で、圧電振動片の端部形状に合わせて確実にバンプ接合することができる。
【0014】
本発明の圧電振動子は、前記水晶板の形状が、ベベル形状またはコンベックス形状であることを特徴としている。
【0015】
この発明に係る圧電振動子においては、圧電振動子の周波数特性およびインピーダンス特性などの電気特性を安定化させることができる。
【0016】
本発明の圧電振動子の製造方法は、ベース基板と、該ベース基板に対向させた状態で前記ベース基板に接合されるリッド基板と、前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納されるとともに、前記ベース基板の上面に接合され、水晶板の外表面に励振電極と該励振電極に電気的に接続されたマウント電極とが形成された圧電振動片と、前記ベース基板に形成された貫通孔に設けられた貫通電極と、前記圧電振動片と前記貫通電極とを電気的に接続するために前記ベース基板の上面に形成された引き回し電極と、該引き回し電極の所定の位置に、該引き回し電極と前記マウント電極とを電気的に接続するために形成された金属バンプと、を備え、前記圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されるとともに、前記圧電振動片が前記金属バンプにより片持ち状態で実装された圧電振動子の製造方法において、前記ベース基板の上面に引き回し電極を形成する工程と、前記引き回し電極の所定位置に、前記金属バンプを前記圧電振動片の長手方向に沿うように複数形成する工程と、前記金属バンプに前記圧電振動片のマウント電極を接合する工程と、を備え、前記金属バンプの高さが前記圧電振動片の長手方向の端部に対応する位置に向かって高くなるように、前記金属バンプを形成することを特徴としている。
【0017】
この発明に係る圧電振動子の製造方法においては、金属バンプに圧電振動片のマウント電極を電気的に接続する際に、水晶板とベース基板とを平行な状態に保持したときのベース基板の表面(引き回し電極の表面)と水晶板の表面(マウント電極の表面)との距離に対応した高さを有する金属バンプを形成する。したがって、水晶板の端部が先細り形状に形成されている場合にも、圧電振動片の軸方向とベース基板とが平行状態を保持した状態でバンプ接合することができる。つまり、水晶板の形状に左右されることなく、水晶板をベース基板に対して平行に保持することができる。また、複数の金属バンプで圧電振動片を支持するため、より確実に圧電振動片とベース基板とを平行状態に保持することができる。
【0018】
本発明の発振器は、上述のいずれかに記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
この発明に係る発振器においては、周波数特性およびインピーダンス特性などの電気特性が安定化された圧電振動子が用いられているため、電気特性が安定化した高品質な発振器を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る圧電振動子によれば、金属バンプに圧電振動片のマウント電極を電気的に接続する際に、水晶板とベース基板とを平行な状態に保持したときのベース基板の表面(引き回し電極の表面)と水晶板の表面(マウント電極の表面)との距離に対応した高さを有する金属バンプが形成されている。したがって、水晶板の端部が先細り形状に形成されている場合にも、圧電振動片の軸方向とベース基板とが平行状態を保持した状態でバンプ接合することができる。つまり、水晶板の形状に左右されることなく、水晶板をベース基板に対して平行に保持することができる。また、複数の金属バンプで圧電振動片を支持するため、より確実に圧電振動片とベース基板とを平行状態に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態における圧電振動子の概略構成図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明の実施形態における圧電振動子の水平断面図である。
【図4】本発明の実施形態における圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態におけるバンプの形成方法を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態における圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【図7】図6に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、リッド基板の元となるリッド基板用ウエハに複数の凹部を形成した状態を示す図である。
【図8】図6に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ベース基板用ウエハの上面に接合膜および引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
【図9】図8の部分拡大斜視図である。
【図10】図6に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収納した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ体の分解斜視図である。
【図11】本発明の実施形態における圧電振動子を搭載した発振器を示す概略構成図である。
【図12】本発明の実施形態におけるバンプの形成方法の別の態様を示す説明図である。
【図13】ベベル形状の水晶板を示す斜視図である。
【図14】コンベックス形状の水晶板を示す斜視図である。
【図15】従来の方法でベベル形状の水晶体をバンプ接合した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る圧電振動子の実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。
図1〜図4に示すように、圧電振動子1は、ベース基板2とリッド基板3とで2層に積層された箱型に形成されており、内部に形成されたキャビティ部16内に圧電振動片4が収容された表面実装型の圧電振動子である。
なお、図4においては、図面を見易くするために後述する貫通電極13,14およびスルーホール24,25の図示を省略している。
【0023】
圧電振動片4は、水晶の圧電材料から形成されたATカット型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平面視略矩形で、断面がベベル形状に加工された水晶板17と、水晶板17の両面に対向する位置で配置された一対の励振電極5,6と、励振電極5,6に電気的に接続された引き出し電極19,20と、引き出し電極19,20に電気的に接続されたマウント電極7,8と、を有している。マウント電極7は、水晶板17の側面電極15に電気的に接続され、励振電極6が形成された側の面に形成されたマウント電極7に電気的に接続されている。
【0024】
励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、金(Au)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)などの導電性膜の被膜あるいはこれら導電性膜のいくつかを組み合わせた積層膜により形成されたものである。
【0025】
このように構成された圧電振動片4は、金などのバンプ11,12を利用して、ベース基板2の上面にバンプ接合されている。具体的には、ベース基板2の上面にパターニングされた後述する引き回し電極9,10上に形成されたバンプ11,12上に、一対のマウント電極7,8がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面からバンプ11,12の厚さ分、浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極7,8と引き回し電極9,10とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0026】
ここで、圧電振動片4(マウント電極7)とバンプ11との接合方法について説明する。なお、マウント電極8とバンプ12との接合方法は、マウント電極7とバンプ11との接合方法と略同一であるため、説明は省略する。
【0027】
本実施形態の水晶板17は断面形状がベベル形状に加工されている。つまり、水晶板17は長手方向の端部が先細り形状に加工されているため、水晶板17の軸方向(励振電極5,6が形成された面と平行な方向)がベース基板2の表面と平行になるように配しても、ベース基板2の表面と水晶板17の先細り部分の表面との距離は一定にはならない。そこで、本実施形態では、引き回し電極9に対してバンプ11を水晶板17の長手方向に沿って2個形成し、それぞれバンプの高さを異なる高さにして形成した。具体的には、図5に示すように、高さの異なる2個のバンプ11A,11Bを水晶板17の長手方向に沿って形成し、バンプ11Aの高さH1は、引き回し電極9(ベース基板2)の表面とバンプ接合する位置における水晶板17(マウント電極7)の表面との隙間と略同一の高さで形成し、バンプ11Bの高さH2は、引き回し電極9(ベース基板2)の表面とバンプ接合する位置の水晶板17(マウント電極7)の表面との隙間と略同一の高さで形成した。
【0028】
このように構成することにより、バンプ11A,11B上に水晶板17のマウント電極7をバンプ接合すると、水晶板17の軸方向がベース基板2の表面と平行に保持された状態で確実に支持されることとなる。
【0029】
リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスで形成された透明の絶縁基板であり、ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部(キャビティ)16が形成されている。この凹部16は、ベース基板2とリッド基板3とが重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティ16となるキャビティ用の凹部16である。そして、リッド基板3はこの凹部16をベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して陽極接合されている。
【0030】
ベース基板2は、リッド基板3と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、リッド基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで略板状に形成されている。
【0031】
また、ベース基板2には、該ベース基板2を貫通する一対のスルーホール(貫通孔)24,25が形成されている。スルーホール24,25の一端は、キャビティ16内を臨むように形成されている。具体的には、マウントされた圧電振動片4のマウント電極7,8側に一方のスルーホール24が位置し、圧電振動片4のマウント電極7,8側と反対側に他方のスルーホール25が位置するように形成されている。また、スルーホール24,25は、ベース基板2の厚さ方向に平行になるように略円柱状に貫通されている。なお、スルーホール24,25は、例えばベース基板2の下面に向かって漸次縮径または拡径するテーパ状に形成してもよい。
【0032】
そして、一対のスルーホール24,25には、該スルーホール24,25を埋めるように形成された一対の貫通電極13,14が形成されている。この貫通電極13,14は、スルーホール24,25を閉塞してキャビティ16内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極21,22と引き回し電極9,10とを導通させる役割を担っている。また、スルーホール24,25と貫通電極13,14の隙間は、ベース基板2のガラス材料と略同一の熱膨張係数を有するガラスフリット材(不図示)を用いて完全に孔を閉塞している。
【0033】
ベース基板2の上面側(リッド基板3が接合される接合面側)には、導電性材料(例えば、アルミニウム、シリコンなど)により、陽極接合用の接合膜23と、一対の引き回し電極9,10とがパターニングされている。このうち接合膜23は、リッド基板3に形成された凹部16の周囲を囲むようにベース基板2の周縁に沿って形成されている。
【0034】
一対の引き回し電極9,10は、一対の貫通電極13,14のうち、一方の貫通電極13と圧電振動片4の一方のマウント電極7とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極14と圧電振動片4の他方のマウント電極8とを電気的に接続するようにパターニングされている。具体的には、一方の引き回し電極9は、圧電振動片4のマウント電極7,8側に位置するように一方の貫通電極13の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極10は、一方の引き回し電極9に隣接した位置から圧電振動片4に沿って、ベース基板2上の貫通電極13と対向する側に引き回しされた後、他方の貫通電極14の真上に位置するように形成されている。
【0035】
そして、これら一対の引き回し電極9,10上にバンプ11,12が形成されており、該バンプ11,12を利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極7が、一方の引き回し電極9を介して一方の貫通電極13に導通し、他方のマウント電極8が、他方の引き回し電極10を介して他方の貫通電極14に導通するようになっている。
【0036】
また、ベース基板2の下面には、一対の貫通電極13,14に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極21,22が形成されている。つまり、一方の外部電極21は、一方の貫通電極13および一方の引き回し電極9を介して圧電振動片4の第1の励振電極5に電気的に接続されている。また、他方の外部電極22は、他方の貫通電極14および他方の引き回し電極10を介して圧電振動片4の第2の励振電極6に電気的に接続されている。
【0037】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極21,22に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極5および第2の励振電極6からなる励振電極に電流を流すことができ、所定の周波数で振動させることができる。そして、振動を利用して、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源などとして利用することができる。
【0038】
次に、圧電振動子1を、図6に示すフローチャートを参照しながら、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とを利用して一度に複数製造する製造方法について以下に説明する。
【0039】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図2〜図4に示す圧電振動片4を作製する(S10)。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、バレル装置などで断面がベベル形状になるように加工し、続いて、ウエハに洗浄などの適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製する。
【0040】
次に、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S20)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、図7に示すように、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の接合面に、エッチングなどにより行列方向にキャビティ用の凹部16を複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。この時点で、第1のウエハ作製工程が終了する。
【0041】
次に、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第2のウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極13,14を複数形成する貫通電極形成工程を行う(S32)。
【0042】
次に、ベース基板用ウエハ40の上面に導電性材料をパターニングして、図8、9に示すように、接合膜23を形成する接合膜形成工程を行う(S33)とともに、各一対の貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極9,10を複数形成する引き回し電極形成工程を行う(S34)。なお、図8、9に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
特に、貫通電極13,14は、上述したようにベース基板用ウエハ40の上面に対して略面一な状態となっている。そのため、ベース基板用ウエハ40の上面にパターニングされた引き回し電極9,10は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極13,14に対して密着した状態で接する。これにより、一方の引き回し電極9と一方の貫通電極13との導通性、並びに、他方の引き回し電極10と他方の貫通電極14との導通性を確実なものにすることができる。この時点で第2のウエハ作製工程が終了する。
【0043】
ところで、図6では、接合膜形成工程(S33)の後に、引き回し電極形成工程(S34)を行う工程順序としているが、これとは逆に、引き回し電極形成工程(S34)の後に、接合膜形成工程(S33)を行っても構わないし、両工程を同時に行っても構わない。いずれの工程順序であっても、同一の作用効果を奏することができる。よって、必要に応じて適宜、工程順序を変更して構わない。
【0044】
次に、作製した複数の圧電振動片4を、それぞれ引き回し電極9,10を介してベース基板用ウエハ40の上面に接合するマウント工程を行う(S40)。まず、一対の引き回し電極9,10上にそれぞれ金ワイヤを用いてバンプ11,12を形成する。
【0045】
ここで、本実施形態では、それぞれのバンプ11,12に高さの異なるバンプをそれぞれ2個形成する。具体的には、バンプ11は、高さの異なる2個のバンプ11A,11Bを水晶板17の長手方向に沿って形成し、バンプ11Aの高さH1は、ベース基板2の表面とバンプ接合する位置の水晶板17の表面との隙間と略同一の高さで形成し、バンプ11Bの高さH2は、ベース基板2の表面とバンプ接合する位置の水晶板17の表面との隙間と略同一の高さで形成した。同様に、バンプ12は、高さH1を有するバンプ12Aと、高さH2を有するバンプ12Bと、を形成する。なお、高さの異なるバンプを形成するには、例えば金ワイヤを用いる場合には線径の異なるワイヤを用いてそれぞれのバンプを形成する方法や、バンプ形成時の圧着力、圧着時間などを調整してバンプを形成する方法を採用すればよい。金ワイヤを用いてバンプを形成するには、超音波と放電により引き回し電極9,10上に金ワイヤを接合し、適切なタイミングでさらに放電することにより金ワイヤを切断して、所望の大きさを有するバンプを形成する。例えば、バンプ11A(12A)と11B(12B)とが、その底部において接するように2個のバンプを形成する場合には、バンプ11A(12A)の高さH1を80〜100μmに形成し、バンプ11B(12B)の高さH2を40〜70μmに形成する。
【0046】
そして、圧電振動片4の先細りした基部をバンプ11,12上に載置した後、バンプ11,12を所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプ11,12に押し付ける。これにより、圧電振動片4は、バンプ11,12に機械的に支持されるとともに、マウント電極7,8と引き回し電極9,10とが電気的に接続された状態となる。また、バンプ11A,11B上に水晶板17のマウント電極7をバンプ接合するとともに、バンプ12A,12B上に水晶板17のマウント電極8をバンプ接合すると、水晶板17がベース基板2と平行に保持された状態で確実に支持されることとなる。結果として、圧電振動片4は、バンプ接合されるとともに、ベース基板用ウエハ40の上面から浮いた状態で支持される。また、この時点で圧電振動片4の一対の励振電極5,6は、一対の貫通電極13,14に対してそれぞれ導通した状態となる。
【0047】
圧電振動片4のマウントが終了した後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マークなどを指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片4が、両ウエハ40、50とで囲まれるキャビティ16内に収容された状態となる。
【0048】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40、50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片4をキャビティ16内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合した図10に示すウエハ体60を得ることができる。なお、図10においては、図面を見易くするために、ウエハ体60を分解した状態を図示しており、ベース基板用ウエハ40から接合膜23の図示を省略している。なお、図10に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
【0049】
ところで、陽極接合を行う際、ベース基板用ウエハ40に形成されたスルーホール24,25は、貫通電極13,14によって完全に塞がれているため、キャビティC内の気密がスルーホール24,25を通じて損なわれることがない。
【0050】
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の下面に導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極21,22を複数形成する外部電極形成工程を行う(S70)。この工程により、外部電極21,22を利用してキャビティ16内に封止された圧電振動片4を作動させることができる。
特に、この工程を行う場合も引き回し電極9,10の形成時と同様に、ベース基板用ウエハ40の下面に対して貫通電極13,14が略面一な状態となっているため、パターニングされた外部電極21,22は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極13,14に対して密着した状態で接する。これにより、外部電極21,22と貫通電極13,14との導通性を確実なものにすることができる。
【0051】
次に、接合されたウエハ体60を図10に示す切断線Mに沿って切断して小片化する切断工程を行う(S80)。その結果、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティ16内に圧電振動片4が封止された、図1に示す2層構造式表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
【0052】
その後、内部の電気特性検査を行う(S90)。即ち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)などを測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性などを併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質などを最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0053】
次に、本発明に係る圧電振動子を搭載した発振器の実施形態について、図11を参照しながら説明する。
図11に示すように、発振器155は、圧電振動子1を集積回路156に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器155は、コンデンサなどの電子部品157が実装された基板158を備えている。基板158には、発振器用の集積回路156が実装されており、この集積回路156の近傍に圧電振動子1の圧電振動片4が実装されている。これら電子部品157、集積回路156および圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0054】
このように構成された発振器155において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路156に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路156により各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
【0055】
本実施形態の発振器155によれば、周波数特性およびインピーダンス特性などの電気特性が安定化された圧電振動子1が用いられているため、電気特性が安定化した高品質な発振器155を提供することができる。
【0056】
尚、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な構造や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態において、圧電振動片(水晶板)の平面視形状を矩形状として説明したが、この場合に限られず、円形状でもよい。圧電振動片(水晶板)の厚さ方向の形状に合わせてバンプ形状(バンプ高さ)を調整すればよい。
また、本実施形態において、ベベル形状の水晶板を用いた場合の説明をしたが、コンベックス形状の水晶板を用いてもよい。
さらに、本実施形態において、バンプを圧電振動片の長手方向に沿って2個形成した場合の説明をしたが、3個以上形成してもよい。また、本実施形態では、2個のバンプは間隔を空けて形成されているが、図12に示すように、間隔を空けずに連続的に形成してもよい。バンプの頂部が圧電振動片の形状に合うように複数形成されていればよい。
【符号の説明】
【0057】
1…圧電振動子 2…ベース基板 3…リッド基板 4…圧電振動片 5…励振電極 6…励振電極 7…マウント電極 8…マウント電極 9…引き回し電極 10…引き回し電極 11(11A,11B)…バンプ(金属バンプ) 12(12A,12B)…バンプ(金属バンプ) 13…貫通電極 14…貫通電極 16…キャビティ 17…水晶板 24…スルーホール(貫通孔) 25…スルーホール(貫通孔) H1,H2…バンプの高さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子、圧電振動子の製造方法および発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源などとして水晶などを利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子としては、様々なものが提供されているが、その一つとして、MHz帯の発振周波数を有する制御、通信機用の振動子として好適に用いられている厚み滑り振動子(AT振動子)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、AT振動子は、圧電振動片と、該圧電振動片を内部に収納するベース基板およびリッド基板と、を備えている。圧電振動片は、特許文献1にも示されているように、一定の厚みで板状に形成され、平面視で外形が矩形状に形成された水晶板と、該水晶板の両面に形成された励振電極、引き出し電極およびマウント電極と、を有している。具体的には、水晶板の両面の略中央部分に、励振電極がそれぞれ対向する位置に形成されている。また、水晶板の端部には、引き出し電極を介して励振電極に電気的に接続されたマウント電極が形成されている。なお、マウント電極は、一方の励振電極に接続されたものと、他方の励振電極に接続されたものとが、それぞれ水晶板の両面に形成されている。この際、一方の面に形成されたマウント電極は、水晶板の側面を回り込むようにして他方の面に形成されたマウント電極と電気的に接続されている。
【0004】
そして、圧電振動片のマウント電極をベース基板上に形成されたバンプに載置するように配する。なお、バンプは引き回し電極と電気的に接続されており、引き回し電極は貫通電極を介して外部電極と電気的に接続されている。このように構成することにより、外部電極より圧電振動片の励振電極へ電流を印加することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3911838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、圧電振動片として一定の厚みで板状に形成された水晶板を用いる場合は、上記の構成を用いれば、特に問題はなかった。
しかしながら、図13,14に示すように、近年では、圧電振動片に用いる水晶板101,102として厚みが一定でない、ベベル形状の水晶板101やコンベックス形状の水晶板102を用いることがある。このようなベベル形状やコンベックス形状の水晶板101,102をベース基板上にバンプ接続すると、図15に示すように、水晶板がベース基板103と平行に保持することができず、傾いてしまう虞がある。水晶板の傾きが大きくなり、水晶板101とベース基板103とが接触すると、圧電振動子の電気特性に影響を与え、本来の電気特性が得られない虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、水晶板の形状に左右されることなく、水晶板をベース基板に対して平行に保持することができる圧電振動子、圧電振動子の製造方法および発振器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明の圧電振動子は、ベース基板と、該ベース基板に対向させた状態で前記ベース基板に接合されるリッド基板と、前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納されるとともに、前記ベース基板の上面に接合され、水晶板の外表面に励振電極と該励振電極に電気的に接続されたマウント電極とが形成された圧電振動片と、前記ベース基板に形成された貫通孔に設けられた貫通電極と、前記圧電振動片と前記貫通電極とを電気的に接続するために前記ベース基板の上面に形成された引き回し電極と、該引き回し電極の所定の位置に、該引き回し電極と前記マウント電極とを電気的に接続するために形成された金属バンプと、を備え、前記圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されるとともに、前記圧電振動片が前記金属バンプにより片持ち状態で実装された圧電振動子において、前記金属バンプが、前記圧電振動片の長手方向に沿って複数形成されるとともに、前記金属バンプの高さが、前記圧電振動片の長手方向の端部に対応する位置に向かって高くなるように形成されていることを特徴としている。
【0009】
この発明に係る圧電振動子においては、金属バンプに圧電振動片のマウント電極を電気的に接続する際に、水晶板とベース基板とを平行な状態に保持したときのベース基板の表面(引き回し電極の表面)と水晶板の表面(マウント電極の表面)との距離に対応した高さを有する金属バンプが形成されている。したがって、水晶板の端部が先細り形状に形成されている場合にも、圧電振動片の軸方向とベース基板とが平行状態を保持した状態でバンプ接合することができる。つまり、水晶板の形状に左右されることなく、水晶板をベース基板に対して平行に保持することができる。また、複数の金属バンプで圧電振動片を支持するため、より確実に圧電振動片とベース基板とを平行状態に保持することができる。
【0010】
本発明の圧電振動子は、前記圧電振動片が、ATカット振動片であることを特徴としている。
【0011】
この発明に係る圧電振動子においては、発振周波数帯が調整し易く、広範囲な温度に対して周波数の安定度が優れているATカット振動片を有する圧電振動子を提供することができる。
【0012】
本発明の圧電振動子は、前記金属バンプが、金バンプであることを特徴としている。
【0013】
この発明に係る圧電振動子においては、金バンプに圧電振動片をバンプ接合する際に、バンプの先端近傍のみを超音波を用いて溶融して圧電振動片と接合させることができるため、圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されている場合にも、圧電振動片とベース基板とを平行状態に保持した状態で、圧電振動片の端部形状に合わせて確実にバンプ接合することができる。
【0014】
本発明の圧電振動子は、前記水晶板の形状が、ベベル形状またはコンベックス形状であることを特徴としている。
【0015】
この発明に係る圧電振動子においては、圧電振動子の周波数特性およびインピーダンス特性などの電気特性を安定化させることができる。
【0016】
本発明の圧電振動子の製造方法は、ベース基板と、該ベース基板に対向させた状態で前記ベース基板に接合されるリッド基板と、前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納されるとともに、前記ベース基板の上面に接合され、水晶板の外表面に励振電極と該励振電極に電気的に接続されたマウント電極とが形成された圧電振動片と、前記ベース基板に形成された貫通孔に設けられた貫通電極と、前記圧電振動片と前記貫通電極とを電気的に接続するために前記ベース基板の上面に形成された引き回し電極と、該引き回し電極の所定の位置に、該引き回し電極と前記マウント電極とを電気的に接続するために形成された金属バンプと、を備え、前記圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されるとともに、前記圧電振動片が前記金属バンプにより片持ち状態で実装された圧電振動子の製造方法において、前記ベース基板の上面に引き回し電極を形成する工程と、前記引き回し電極の所定位置に、前記金属バンプを前記圧電振動片の長手方向に沿うように複数形成する工程と、前記金属バンプに前記圧電振動片のマウント電極を接合する工程と、を備え、前記金属バンプの高さが前記圧電振動片の長手方向の端部に対応する位置に向かって高くなるように、前記金属バンプを形成することを特徴としている。
【0017】
この発明に係る圧電振動子の製造方法においては、金属バンプに圧電振動片のマウント電極を電気的に接続する際に、水晶板とベース基板とを平行な状態に保持したときのベース基板の表面(引き回し電極の表面)と水晶板の表面(マウント電極の表面)との距離に対応した高さを有する金属バンプを形成する。したがって、水晶板の端部が先細り形状に形成されている場合にも、圧電振動片の軸方向とベース基板とが平行状態を保持した状態でバンプ接合することができる。つまり、水晶板の形状に左右されることなく、水晶板をベース基板に対して平行に保持することができる。また、複数の金属バンプで圧電振動片を支持するため、より確実に圧電振動片とベース基板とを平行状態に保持することができる。
【0018】
本発明の発振器は、上述のいずれかに記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴としている。
【0019】
この発明に係る発振器においては、周波数特性およびインピーダンス特性などの電気特性が安定化された圧電振動子が用いられているため、電気特性が安定化した高品質な発振器を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る圧電振動子によれば、金属バンプに圧電振動片のマウント電極を電気的に接続する際に、水晶板とベース基板とを平行な状態に保持したときのベース基板の表面(引き回し電極の表面)と水晶板の表面(マウント電極の表面)との距離に対応した高さを有する金属バンプが形成されている。したがって、水晶板の端部が先細り形状に形成されている場合にも、圧電振動片の軸方向とベース基板とが平行状態を保持した状態でバンプ接合することができる。つまり、水晶板の形状に左右されることなく、水晶板をベース基板に対して平行に保持することができる。また、複数の金属バンプで圧電振動片を支持するため、より確実に圧電振動片とベース基板とを平行状態に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態における圧電振動子の概略構成図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本発明の実施形態における圧電振動子の水平断面図である。
【図4】本発明の実施形態における圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態におけるバンプの形成方法を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態における圧電振動子の製造方法を示すフローチャートである。
【図7】図6に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、リッド基板の元となるリッド基板用ウエハに複数の凹部を形成した状態を示す図である。
【図8】図6に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ベース基板用ウエハの上面に接合膜および引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
【図9】図8の部分拡大斜視図である。
【図10】図6に示すフローチャートに沿って圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、圧電振動片をキャビティ内に収納した状態でベース基板用ウエハとリッド基板用ウエハとが陽極接合されたウエハ体の分解斜視図である。
【図11】本発明の実施形態における圧電振動子を搭載した発振器を示す概略構成図である。
【図12】本発明の実施形態におけるバンプの形成方法の別の態様を示す説明図である。
【図13】ベベル形状の水晶板を示す斜視図である。
【図14】コンベックス形状の水晶板を示す斜視図である。
【図15】従来の方法でベベル形状の水晶体をバンプ接合した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明に係る圧電振動子の実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。
図1〜図4に示すように、圧電振動子1は、ベース基板2とリッド基板3とで2層に積層された箱型に形成されており、内部に形成されたキャビティ部16内に圧電振動片4が収容された表面実装型の圧電振動子である。
なお、図4においては、図面を見易くするために後述する貫通電極13,14およびスルーホール24,25の図示を省略している。
【0023】
圧電振動片4は、水晶の圧電材料から形成されたATカット型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平面視略矩形で、断面がベベル形状に加工された水晶板17と、水晶板17の両面に対向する位置で配置された一対の励振電極5,6と、励振電極5,6に電気的に接続された引き出し電極19,20と、引き出し電極19,20に電気的に接続されたマウント電極7,8と、を有している。マウント電極7は、水晶板17の側面電極15に電気的に接続され、励振電極6が形成された側の面に形成されたマウント電極7に電気的に接続されている。
【0024】
励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15は、例えば、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、金(Au)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)などの導電性膜の被膜あるいはこれら導電性膜のいくつかを組み合わせた積層膜により形成されたものである。
【0025】
このように構成された圧電振動片4は、金などのバンプ11,12を利用して、ベース基板2の上面にバンプ接合されている。具体的には、ベース基板2の上面にパターニングされた後述する引き回し電極9,10上に形成されたバンプ11,12上に、一対のマウント電極7,8がそれぞれ接触した状態でバンプ接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面からバンプ11,12の厚さ分、浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極7,8と引き回し電極9,10とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0026】
ここで、圧電振動片4(マウント電極7)とバンプ11との接合方法について説明する。なお、マウント電極8とバンプ12との接合方法は、マウント電極7とバンプ11との接合方法と略同一であるため、説明は省略する。
【0027】
本実施形態の水晶板17は断面形状がベベル形状に加工されている。つまり、水晶板17は長手方向の端部が先細り形状に加工されているため、水晶板17の軸方向(励振電極5,6が形成された面と平行な方向)がベース基板2の表面と平行になるように配しても、ベース基板2の表面と水晶板17の先細り部分の表面との距離は一定にはならない。そこで、本実施形態では、引き回し電極9に対してバンプ11を水晶板17の長手方向に沿って2個形成し、それぞれバンプの高さを異なる高さにして形成した。具体的には、図5に示すように、高さの異なる2個のバンプ11A,11Bを水晶板17の長手方向に沿って形成し、バンプ11Aの高さH1は、引き回し電極9(ベース基板2)の表面とバンプ接合する位置における水晶板17(マウント電極7)の表面との隙間と略同一の高さで形成し、バンプ11Bの高さH2は、引き回し電極9(ベース基板2)の表面とバンプ接合する位置の水晶板17(マウント電極7)の表面との隙間と略同一の高さで形成した。
【0028】
このように構成することにより、バンプ11A,11B上に水晶板17のマウント電極7をバンプ接合すると、水晶板17の軸方向がベース基板2の表面と平行に保持された状態で確実に支持されることとなる。
【0029】
リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスで形成された透明の絶縁基板であり、ベース基板2が接合される接合面側には、圧電振動片4が収まる矩形状の凹部(キャビティ)16が形成されている。この凹部16は、ベース基板2とリッド基板3とが重ね合わされたときに、圧電振動片4を収容するキャビティ16となるキャビティ用の凹部16である。そして、リッド基板3はこの凹部16をベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して陽極接合されている。
【0030】
ベース基板2は、リッド基板3と同様にガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる透明な絶縁基板であり、リッド基板3に対して重ね合わせ可能な大きさで略板状に形成されている。
【0031】
また、ベース基板2には、該ベース基板2を貫通する一対のスルーホール(貫通孔)24,25が形成されている。スルーホール24,25の一端は、キャビティ16内を臨むように形成されている。具体的には、マウントされた圧電振動片4のマウント電極7,8側に一方のスルーホール24が位置し、圧電振動片4のマウント電極7,8側と反対側に他方のスルーホール25が位置するように形成されている。また、スルーホール24,25は、ベース基板2の厚さ方向に平行になるように略円柱状に貫通されている。なお、スルーホール24,25は、例えばベース基板2の下面に向かって漸次縮径または拡径するテーパ状に形成してもよい。
【0032】
そして、一対のスルーホール24,25には、該スルーホール24,25を埋めるように形成された一対の貫通電極13,14が形成されている。この貫通電極13,14は、スルーホール24,25を閉塞してキャビティ16内の気密を維持しているとともに、後述する外部電極21,22と引き回し電極9,10とを導通させる役割を担っている。また、スルーホール24,25と貫通電極13,14の隙間は、ベース基板2のガラス材料と略同一の熱膨張係数を有するガラスフリット材(不図示)を用いて完全に孔を閉塞している。
【0033】
ベース基板2の上面側(リッド基板3が接合される接合面側)には、導電性材料(例えば、アルミニウム、シリコンなど)により、陽極接合用の接合膜23と、一対の引き回し電極9,10とがパターニングされている。このうち接合膜23は、リッド基板3に形成された凹部16の周囲を囲むようにベース基板2の周縁に沿って形成されている。
【0034】
一対の引き回し電極9,10は、一対の貫通電極13,14のうち、一方の貫通電極13と圧電振動片4の一方のマウント電極7とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極14と圧電振動片4の他方のマウント電極8とを電気的に接続するようにパターニングされている。具体的には、一方の引き回し電極9は、圧電振動片4のマウント電極7,8側に位置するように一方の貫通電極13の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極10は、一方の引き回し電極9に隣接した位置から圧電振動片4に沿って、ベース基板2上の貫通電極13と対向する側に引き回しされた後、他方の貫通電極14の真上に位置するように形成されている。
【0035】
そして、これら一対の引き回し電極9,10上にバンプ11,12が形成されており、該バンプ11,12を利用して圧電振動片4がマウントされている。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極7が、一方の引き回し電極9を介して一方の貫通電極13に導通し、他方のマウント電極8が、他方の引き回し電極10を介して他方の貫通電極14に導通するようになっている。
【0036】
また、ベース基板2の下面には、一対の貫通電極13,14に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極21,22が形成されている。つまり、一方の外部電極21は、一方の貫通電極13および一方の引き回し電極9を介して圧電振動片4の第1の励振電極5に電気的に接続されている。また、他方の外部電極22は、他方の貫通電極14および他方の引き回し電極10を介して圧電振動片4の第2の励振電極6に電気的に接続されている。
【0037】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極21,22に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極5および第2の励振電極6からなる励振電極に電流を流すことができ、所定の周波数で振動させることができる。そして、振動を利用して、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源などとして利用することができる。
【0038】
次に、圧電振動子1を、図6に示すフローチャートを参照しながら、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とを利用して一度に複数製造する製造方法について以下に説明する。
【0039】
初めに、圧電振動片作製工程を行って図2〜図4に示す圧電振動片4を作製する(S10)。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、バレル装置などで断面がベベル形状になるように加工し、続いて、ウエハに洗浄などの適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製する。
【0040】
次に、後にリッド基板3となるリッド基板用ウエハ50を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第1のウエハ作製工程を行う(S20)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、図7に示すように、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去した円板状のリッド基板用ウエハ50を形成する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50の接合面に、エッチングなどにより行列方向にキャビティ用の凹部16を複数形成する凹部形成工程を行う(S22)。この時点で、第1のウエハ作製工程が終了する。
【0041】
次に、上記工程と同時或いは前後のタイミングで、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を、陽極接合を行う直前の状態まで作製する第2のウエハ作製工程を行う(S30)。まず、ソーダ石灰ガラスを所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去した円板状のベース基板用ウエハ40を形成する(S31)。次いで、ベース基板用ウエハ40に一対の貫通電極13,14を複数形成する貫通電極形成工程を行う(S32)。
【0042】
次に、ベース基板用ウエハ40の上面に導電性材料をパターニングして、図8、9に示すように、接合膜23を形成する接合膜形成工程を行う(S33)とともに、各一対の貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極9,10を複数形成する引き回し電極形成工程を行う(S34)。なお、図8、9に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
特に、貫通電極13,14は、上述したようにベース基板用ウエハ40の上面に対して略面一な状態となっている。そのため、ベース基板用ウエハ40の上面にパターニングされた引き回し電極9,10は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極13,14に対して密着した状態で接する。これにより、一方の引き回し電極9と一方の貫通電極13との導通性、並びに、他方の引き回し電極10と他方の貫通電極14との導通性を確実なものにすることができる。この時点で第2のウエハ作製工程が終了する。
【0043】
ところで、図6では、接合膜形成工程(S33)の後に、引き回し電極形成工程(S34)を行う工程順序としているが、これとは逆に、引き回し電極形成工程(S34)の後に、接合膜形成工程(S33)を行っても構わないし、両工程を同時に行っても構わない。いずれの工程順序であっても、同一の作用効果を奏することができる。よって、必要に応じて適宜、工程順序を変更して構わない。
【0044】
次に、作製した複数の圧電振動片4を、それぞれ引き回し電極9,10を介してベース基板用ウエハ40の上面に接合するマウント工程を行う(S40)。まず、一対の引き回し電極9,10上にそれぞれ金ワイヤを用いてバンプ11,12を形成する。
【0045】
ここで、本実施形態では、それぞれのバンプ11,12に高さの異なるバンプをそれぞれ2個形成する。具体的には、バンプ11は、高さの異なる2個のバンプ11A,11Bを水晶板17の長手方向に沿って形成し、バンプ11Aの高さH1は、ベース基板2の表面とバンプ接合する位置の水晶板17の表面との隙間と略同一の高さで形成し、バンプ11Bの高さH2は、ベース基板2の表面とバンプ接合する位置の水晶板17の表面との隙間と略同一の高さで形成した。同様に、バンプ12は、高さH1を有するバンプ12Aと、高さH2を有するバンプ12Bと、を形成する。なお、高さの異なるバンプを形成するには、例えば金ワイヤを用いる場合には線径の異なるワイヤを用いてそれぞれのバンプを形成する方法や、バンプ形成時の圧着力、圧着時間などを調整してバンプを形成する方法を採用すればよい。金ワイヤを用いてバンプを形成するには、超音波と放電により引き回し電極9,10上に金ワイヤを接合し、適切なタイミングでさらに放電することにより金ワイヤを切断して、所望の大きさを有するバンプを形成する。例えば、バンプ11A(12A)と11B(12B)とが、その底部において接するように2個のバンプを形成する場合には、バンプ11A(12A)の高さH1を80〜100μmに形成し、バンプ11B(12B)の高さH2を40〜70μmに形成する。
【0046】
そして、圧電振動片4の先細りした基部をバンプ11,12上に載置した後、バンプ11,12を所定温度に加熱しながら圧電振動片4をバンプ11,12に押し付ける。これにより、圧電振動片4は、バンプ11,12に機械的に支持されるとともに、マウント電極7,8と引き回し電極9,10とが電気的に接続された状態となる。また、バンプ11A,11B上に水晶板17のマウント電極7をバンプ接合するとともに、バンプ12A,12B上に水晶板17のマウント電極8をバンプ接合すると、水晶板17がベース基板2と平行に保持された状態で確実に支持されることとなる。結果として、圧電振動片4は、バンプ接合されるとともに、ベース基板用ウエハ40の上面から浮いた状態で支持される。また、この時点で圧電振動片4の一対の励振電極5,6は、一対の貫通電極13,14に対してそれぞれ導通した状態となる。
【0047】
圧電振動片4のマウントが終了した後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程を行う(S50)。具体的には、図示しない基準マークなどを指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、マウントされた圧電振動片4が、両ウエハ40、50とで囲まれるキャビティ16内に収容された状態となる。
【0048】
重ね合わせ工程後、重ね合わせた2枚のウエハ40、50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程を行う(S60)。具体的には、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。これにより、圧電振動片4をキャビティ16内に封止することができ、ベース基板用ウエハ40とリッド基板用ウエハ50とが接合した図10に示すウエハ体60を得ることができる。なお、図10においては、図面を見易くするために、ウエハ体60を分解した状態を図示しており、ベース基板用ウエハ40から接合膜23の図示を省略している。なお、図10に示す点線Mは、後に行う切断工程で切断する切断線を図示している。
【0049】
ところで、陽極接合を行う際、ベース基板用ウエハ40に形成されたスルーホール24,25は、貫通電極13,14によって完全に塞がれているため、キャビティC内の気密がスルーホール24,25を通じて損なわれることがない。
【0050】
そして、上述した陽極接合が終了した後、ベース基板用ウエハ40の下面に導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極21,22を複数形成する外部電極形成工程を行う(S70)。この工程により、外部電極21,22を利用してキャビティ16内に封止された圧電振動片4を作動させることができる。
特に、この工程を行う場合も引き回し電極9,10の形成時と同様に、ベース基板用ウエハ40の下面に対して貫通電極13,14が略面一な状態となっているため、パターニングされた外部電極21,22は、間に隙間等を発生させることなく貫通電極13,14に対して密着した状態で接する。これにより、外部電極21,22と貫通電極13,14との導通性を確実なものにすることができる。
【0051】
次に、接合されたウエハ体60を図10に示す切断線Mに沿って切断して小片化する切断工程を行う(S80)。その結果、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティ16内に圧電振動片4が封止された、図1に示す2層構造式表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
【0052】
その後、内部の電気特性検査を行う(S90)。即ち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)などを測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性などを併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質などを最終的にチェックする。これをもって圧電振動子1の製造が終了する。
【0053】
次に、本発明に係る圧電振動子を搭載した発振器の実施形態について、図11を参照しながら説明する。
図11に示すように、発振器155は、圧電振動子1を集積回路156に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器155は、コンデンサなどの電子部品157が実装された基板158を備えている。基板158には、発振器用の集積回路156が実装されており、この集積回路156の近傍に圧電振動子1の圧電振動片4が実装されている。これら電子部品157、集積回路156および圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0054】
このように構成された発振器155において、圧電振動子1に電圧を印加すると、圧電振動子1内の圧電振動片4が振動する。この振動は、圧電振動片4が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路156に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路156により各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
【0055】
本実施形態の発振器155によれば、周波数特性およびインピーダンス特性などの電気特性が安定化された圧電振動子1が用いられているため、電気特性が安定化した高品質な発振器155を提供することができる。
【0056】
尚、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な構造や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態において、圧電振動片(水晶板)の平面視形状を矩形状として説明したが、この場合に限られず、円形状でもよい。圧電振動片(水晶板)の厚さ方向の形状に合わせてバンプ形状(バンプ高さ)を調整すればよい。
また、本実施形態において、ベベル形状の水晶板を用いた場合の説明をしたが、コンベックス形状の水晶板を用いてもよい。
さらに、本実施形態において、バンプを圧電振動片の長手方向に沿って2個形成した場合の説明をしたが、3個以上形成してもよい。また、本実施形態では、2個のバンプは間隔を空けて形成されているが、図12に示すように、間隔を空けずに連続的に形成してもよい。バンプの頂部が圧電振動片の形状に合うように複数形成されていればよい。
【符号の説明】
【0057】
1…圧電振動子 2…ベース基板 3…リッド基板 4…圧電振動片 5…励振電極 6…励振電極 7…マウント電極 8…マウント電極 9…引き回し電極 10…引き回し電極 11(11A,11B)…バンプ(金属バンプ) 12(12A,12B)…バンプ(金属バンプ) 13…貫通電極 14…貫通電極 16…キャビティ 17…水晶板 24…スルーホール(貫通孔) 25…スルーホール(貫通孔) H1,H2…バンプの高さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板と、
該ベース基板に対向させた状態で前記ベース基板に接合されるリッド基板と、
前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納されるとともに、前記ベース基板の上面に接合され、水晶板の外表面に励振電極と該励振電極に電気的に接続されたマウント電極とが形成された圧電振動片と、
前記ベース基板に形成された貫通孔に設けられた貫通電極と、
前記圧電振動片と前記貫通電極とを電気的に接続するために前記ベース基板の上面に形成された引き回し電極と、
該引き回し電極の所定の位置に、該引き回し電極と前記マウント電極とを電気的に接続するために形成された金属バンプと、を備え、
前記圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されるとともに、
前記圧電振動片が前記金属バンプにより片持ち状態で実装された圧電振動子において、
前記金属バンプが、前記圧電振動片の長手方向に沿って複数形成されるとともに、
前記金属バンプの高さが、前記圧電振動片の長手方向の端部に対応する位置に向かって高くなるように形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
前記圧電振動片が、ATカット振動片であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記金属バンプが、金バンプであることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記水晶板の形状が、ベベル形状またはコンベックス形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電振動子。
【請求項5】
ベース基板と、
該ベース基板に対向させた状態で前記ベース基板に接合されるリッド基板と、
前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納されるとともに、前記ベース基板の上面に接合され、水晶板の外表面に励振電極と該励振電極に電気的に接続されたマウント電極とが形成された圧電振動片と、
前記ベース基板に形成された貫通孔に設けられた貫通電極と、
前記圧電振動片と前記貫通電極とを電気的に接続するために前記ベース基板の上面に形成された引き回し電極と、
該引き回し電極の所定の位置に、該引き回し電極と前記マウント電極とを電気的に接続するために形成された金属バンプと、を備え、
前記圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されるとともに、
前記圧電振動片が前記金属バンプにより片持ち状態で実装された圧電振動子の製造方法において、
前記ベース基板の上面に引き回し電極を形成する工程と、
前記引き回し電極の所定位置に、前記金属バンプを前記圧電振動片の長手方向に沿うように複数形成する工程と、
前記金属バンプに前記圧電振動片のマウント電極を接合する工程と、を備え、
前記金属バンプの高さが前記圧電振動片の長手方向の端部に対応する位置に向かって高くなるように、前記金属バンプを形成することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項1】
ベース基板と、
該ベース基板に対向させた状態で前記ベース基板に接合されるリッド基板と、
前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納されるとともに、前記ベース基板の上面に接合され、水晶板の外表面に励振電極と該励振電極に電気的に接続されたマウント電極とが形成された圧電振動片と、
前記ベース基板に形成された貫通孔に設けられた貫通電極と、
前記圧電振動片と前記貫通電極とを電気的に接続するために前記ベース基板の上面に形成された引き回し電極と、
該引き回し電極の所定の位置に、該引き回し電極と前記マウント電極とを電気的に接続するために形成された金属バンプと、を備え、
前記圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されるとともに、
前記圧電振動片が前記金属バンプにより片持ち状態で実装された圧電振動子において、
前記金属バンプが、前記圧電振動片の長手方向に沿って複数形成されるとともに、
前記金属バンプの高さが、前記圧電振動片の長手方向の端部に対応する位置に向かって高くなるように形成されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項2】
前記圧電振動片が、ATカット振動片であることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
前記金属バンプが、金バンプであることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
前記水晶板の形状が、ベベル形状またはコンベックス形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の圧電振動子。
【請求項5】
ベース基板と、
該ベース基板に対向させた状態で前記ベース基板に接合されるリッド基板と、
前記ベース基板と前記リッド基板との間に形成されたキャビティ内に収納されるとともに、前記ベース基板の上面に接合され、水晶板の外表面に励振電極と該励振電極に電気的に接続されたマウント電極とが形成された圧電振動片と、
前記ベース基板に形成された貫通孔に設けられた貫通電極と、
前記圧電振動片と前記貫通電極とを電気的に接続するために前記ベース基板の上面に形成された引き回し電極と、
該引き回し電極の所定の位置に、該引き回し電極と前記マウント電極とを電気的に接続するために形成された金属バンプと、を備え、
前記圧電振動片の長手方向の端部が先細り形状に形成されるとともに、
前記圧電振動片が前記金属バンプにより片持ち状態で実装された圧電振動子の製造方法において、
前記ベース基板の上面に引き回し電極を形成する工程と、
前記引き回し電極の所定位置に、前記金属バンプを前記圧電振動片の長手方向に沿うように複数形成する工程と、
前記金属バンプに前記圧電振動片のマウント電極を接合する工程と、を備え、
前記金属バンプの高さが前記圧電振動片の長手方向の端部に対応する位置に向かって高くなるように、前記金属バンプを形成することを特徴とする圧電振動子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−187333(P2010−187333A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31705(P2009−31705)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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