説明

圧電振動素子、その製造方法、圧電振動子及び圧電発振器

【課題】小型で、オーバーエッチングにより所定の周波数からの周波数偏差の少ない圧電振動素子を得る。
【解決手段】複数の棒状の振動腕15a、15b、各振動腕15a、15bの一方の端部間を連接する基部12、各振動腕15a、15bの他方の端部に夫々形成され各振動腕15a、15bよりも幅広の錘部20a、20b、及び、各振動腕15a、15bの振動中心線Bに沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部17a、17b、を備えた圧電基板10である。更に各溝部内を含めた各振動腕の表裏面に夫々形成された励振電極30〜36を備え、各錘部20には夫々表裏面を貫通し、且つ前記各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリット25が、複数本形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動素子、圧電振動素子の製造方法、圧電振動子及び圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動子、例えば音叉型水晶振動子が知られている。音叉型水晶振動子は、時計用の基準周波数源や、圧電ジャイロ装置用の角速度センサなどに用いられ、これらを搭載した電子機器等の小型化が進んでいる。これに伴い、圧電振動子も小型化が求められている。
音叉型圧電振動子の振動周波数は、振動腕の幅に比例し、長さの自乗に反比例する。圧電振動子の小型化を図るには、振動腕の長さを短くするすると同時に振動腕の幅を小さくする必要がある。しかし、このように構成すると高次振動モードが発生し易く、振動モードが不安定になり易い。
【0003】
この高次振動モードの発生を抑え、安定した振動姿態を得るために、圧電振動素子の振動腕の先端部に、振動腕の腕部の幅よりも広い錘部(バランスヘッド)を形成した圧電振動素子(水晶振動素子)が、特許文献1に開示されている。図13の平面図に示すように、この音叉型圧電振動素子は、振動腕の先端部に形成した錘部に、略四角形の孔部を設けた構成を有する。圧電振動素子150は、その基部180の一端縁から一対の細棒状の振動腕170が並行に突出形成されており、各振動腕170の長手方向先端部には振動腕170の腕部171の幅よりも広く設定された略四角形の錘部160が夫々連接して形成されている。一対の振動腕170は相似形である。各錘部160は、各振動腕170の振動中心線Bに対して左右対称であり、腕部171には、振動中心線Bに沿って、溝部172が形成されている。この溝部172も振動中心線Bに対して対称形に形成されている。
錘部160の幅方向中央部には、表面から裏面に貫通する略四角形の孔部163が設けられている。この孔部163は、圧電振動素子150の表裏面に形成される電極を接続するためのスルーホールであり、振動腕170の振動中心線Bの延長上に位置し、対称形である。
【0004】
図14は、圧電振動片150の錘部160の変形例を示す平面図である。錘部160の2つの角隅部からは、図13に示した基部180に向かって腕部171と離間しつつ、腕部171に沿って一対の突出部166が突出されている。2つの突出部166は、同等な形状である。
また、特許文献2には、振動ジャイロ素子が開示されている。図15に示すように振動ジャイロ素子は、中心部に位置する基部200と、基部200の上下端縁中央部から夫々直線状に突設された1対の検出用振動腕211a、211bと、基部200の左右両端縁中央部から夫々検出用振動腕211a、211bに直交する方向に延出された1対の連結腕213a、213bと、各連結腕の先端部からそれと直交して上下方向へ突設された各1対の駆動用振動腕214a、214b、215a、215bと、を備えている。更に、基部200の各角隅部から夫々L字状に延出される2対の梁220a、220b、221a、221bと、梁220a、220bの先端部間、及び梁221a、221bの先端部間を連結する支持部222a、222bと、を同一平面に備え、支持部222a、222bを検出用振動腕の延出する方向であって検出用振動腕の外側で、且つ前記駆動用振動腕の間に配置するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−201162公報
【特許文献2】特開2010−2430公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、振動腕部の先端部に錘部が形成されているので、圧電振動素子の小型化が可能であり、振動周波数の安定性を得ることができると開示されている。しかしながら、圧電振動基板をフォトグラフィ技法とエッチング手法で形成する際に、エッチング液の濃度、温度、エッチング時間等のバラツキにより圧電振動基板の形状が設計形状と同一とは成らずに微妙にばらつき、この圧電振動基板で圧電振動素子を構成すると、その周波数が所定の周波数からばらつくという問題があった。
また、特許文献2には、基部から直線状に両側へ延出された1対の検出用振動腕と、基部から延出された1対の連結腕と、各連結腕の先端部からそれと直交して両側へ延出された各1対の駆動用振動腕を備えた振動ジャイロ素子が開示されている。しかしながら、振動ジャイロ素子用の圧電基板を、フォトグラフィ技法とエッチング手法で形成すると、エッチング時間等のバラツキにより設計時の形状と同一の振動ジャイロ素子用圧電基板が得られず、所期の特性が得られないという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、エッチング時間等のバラツキにより圧電基板にオーバーエッチングが生じても、圧電振動素子及び振動ジャイロ素子の周波数バラツキを低減することができる圧電振動素子及び振動ジャイロ素子、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本発明に係る圧電振動素子は、複数の棒状の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、前記各振動腕の他方の端部に夫々形成され該各振動腕よりも幅広の錘部、及び、前記各振動腕の振動中心線に沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部、を備えた圧電基板と、少なくとも前記各溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面に夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、を備えた圧電振動素子であって、前記各錘部には夫々表裏面を貫通し、且つ前記各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリットが、複数本形成されていることを特徴とする圧電振動素子である。
【0009】
一対の振動腕の端部に夫々各振動腕よりも幅広の錘部を設けると共に、各錘部に夫々複数の周波数調整用スリットを形成した圧電基板を用いて、音叉型圧電振動素子を構成する。幅広の錘部に周波数調整用スリットを配設することにより、圧電基板の外形を、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング加工で形成する際に、エッチング時間の超過、つまりオーバーエッチングが生じても、各振動腕の幅が狭くなることによる音叉振動の共振周波数の低下と、周波数調整用スリットの幅が広くなることによる共振周波数の上昇とが相殺し、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。エッチング時間が不足しても、各振動腕の幅が設計値よりも広いことによる音叉振動の共振周波数の上昇と、周波数調整用スリットの幅が設計値よりも狭くなることによる共振周波数の対価と、が相殺し、エッチング時間の不足による所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。錘部を設けることにより圧電振動素子を小型化することができるという効果もある。
【0010】
[適用例2]また、圧電振動素子は、前記各周波数調整用スリットは、幅寸法、及び長手方向寸法が互いに同一であり、且つ長手方向両端部の位置が一致していることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0011】
幅広の錘部に錘部に幅寸法、及び長手方向寸法が互いに同一であり、且つ長手方向両端部の位置が一致した周波数調整用スリットを形成することにより、圧電基板の形状をエッチング手法で形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできると共に、周波数調整用スリットのフォトマスクパターンの製作が容易になるという効果がある。
【0012】
[適用例3]また、圧電振動素子は、前記各周波数調整用スリットは、幅寸法、及び長手方向寸法が互いに同一であり、且つ長手方向両端部の位置が交互にずれていることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0013】
幅広の錘部に幅寸法、及び長手方向寸法が互いに同一であり、且つ長手方向両端部の位置が交互にずれた周波数調整用スリットを形成することにより、振動腕が屈曲振動する際の錘部の慣性を微細に制御でき、音叉型圧電振動素子の周波数を微調整することが可能となる。更に、周波数調整用スリットを設けることにより、圧電基板の形状をエッチング手法で形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0014】
[適用例4]また、圧電振動素子は、前記各周波数調整用スリットは、長手方向寸法が互いに同一であると共に、幅寸法が互いに異なることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0015】
幅広の錘部に長手方向寸法が互いに同一であると共に、幅寸法が互いに異なる周波数調整用スリットを形成することにより、振動腕が屈曲振動をする際の錘部の慣性を微細に制御でき、音叉型圧電振動素子の周波数を微調整することが可能となる。更に、周波数調整用スリットを設けることにより、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0016】
[適用例5]また、圧電振動素子は、前記各周波数調整用スリットは、幅寸法、及び長手方向寸法が互いに同一であり、且つ長手方向両端部の位置が一致し、更に隣在する2本の周波数調整用スリットの長手方向一端部間を連通スリットにより連通させたコ字状の周波数調整用スリット組を複数組備え、隣接する前記周波数調整用ユニット組における前記連通スリットの位置が交互に逆向きとなるように配置されていることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0017】
幅広の錘部に幅寸法、及び長手方向寸法が互いに同一であり、且つ長手方向両端部の位置が一致し、更に隣接する2本のスリットの長手方向一端部間を連通させたコ字状の周波数調整用スリットを形成することにより、振動腕が屈曲振動をする際の錘部の慣性を微細に制御でき、音叉型圧電振動素子の周波数を微調整することが可能となる。更に、周波数調整用スリットを設けることにより、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0018】
[適用例6]また、圧電振動素子は、前記各周波数調整用スリットの一端部は、前記錘部の端縁にて開放していることを特徴とする適用例1に記載の圧電振動素子である。
【0019】
幅広の錘部に、一端部が錘部の端縁で開放した周波数調整用スリットを形成することにより、振動腕が屈曲振動する際の錘部の慣性を微細に制御でき、音叉型圧電振動素子の周波数を微調整することが可能となる。更に、周波数調整用スリットを設けることにより、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0020】
[適用例7]また、圧電振動素子は、前記各周波数調整用スリットは、前記圧電基板の振動中心線に対し対称に形成されていることを特徴とする適用例1乃至6項の何れか一項に記載の圧電振動素子である。
【0021】
幅広の錘部に、圧電基板の振動中心線に対し対称に配置された周波数調整用スリットを形成することにより、錘部のバランスがよくなり、音叉型圧電振動素子に生じる不要なスプリアス振動を抑止して、周波数安定度を向上させる効果がある。更に、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0022】
[適用例8]また、圧電振動素子は、複数の棒状の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、及び、前記各振動腕の振動中心線に沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部を備えた圧電基板と、少なくとも前記各溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面に夫々形成され、且つ前記基部に設けた電極パッドとの間を電気的に接続される励振電極と、を備えた圧電振動素子であって、前記各振動腕の他方の端部には、夫々表裏面を貫通し、且つ前記各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリットが、複数本形成されていることを特徴とする圧電振動素子である。
【0023】
各振動腕の端部には、夫々表裏面を貫通し、且つ各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリットを形成することにより、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を小さくできると共に、小型化した音叉型圧電振動素子の構成が可能であるという効果がある。
【0024】
[適用例9]また、圧電振動素子は、複数の棒状の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、前記各振動腕の他方の端部に夫々形成され該各振動腕よりも幅広の錘部、及び、前記各振動腕の振動中心線に沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部、を備えた圧電基板と、前記各溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面及び両側側面に夫々形成された励振電極と、を備えた圧電振動素子であって、前記各錘部には夫々表裏面を貫通し、且つ前記各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリットが複数本形成され、前記表裏面の対向する励振電極には異符号の電圧が印加され、前記両側側面の励振電極は二分割され、対向する前記表裏面の励振電極と異符号の電圧が印加されていることを特徴とする圧電振動素子である。
【0025】
各振動腕の幅広の錘部に周波数調整用スリットを形成すると共に、各振動腕の表裏面及び両側面に上記のように励振電極を配設する。周波数調整用スリットにより、圧電基板の形状をエッチング加工で形成する際に、エッチング時間の超過、つまりオーバーエッチングが生じても、各振動腕の幅が狭くなることによる捩れ振動の共振周波数の低下と、周波数調整用スリットの幅が広くなることによる共振周波数の上昇とが相殺し、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。更に、錘部を形成することにより圧電振動子を小型化することが可能となるという効果がある。
【0026】
[適用例10]本発明に係る振動ジャイロ素子は、基部と、該基部の対向する2つの端縁から夫々同一直線上に突設された1対の検出用振動腕と、前記基部の対向する他の2つの端縁から夫々前記検出用振動腕と直交する方向に同一直線上に突設された1対の連結腕と、前記各連結腕の先部からそれと直交する両方向へ夫々突設された各1対の駆動用振動腕と、少なくとも前記1対の検出用振動腕と、前記各1対の駆動用振動腕とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、を備えた振動ジャイロ素子であって、前記各検出用振動腕及び駆動用振動腕は、先部に夫々各検出用振動腕及び各駆動用振動腕よりも幅広の錘部を有し、該錘部に周波数調整用スリットが複数本形成されていることを特徴とする振動ジャイロ素子である。
【0027】
各検出用振動腕及び駆動用振動腕の先部に、夫々各検出用振動腕及び各駆動用振動腕よりも幅広の錘部を設け、この錘部に周波数調整用スリットを形成する。各振動腕は屈曲振動で励振されるので、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0028】
[適用例11]本発明に係る圧電振動素子の製造方法は、適用例1乃至9の何れか一項に記載の前記圧電振動素子を製造する方法であって、前記圧電振動素子の外形及び前記周波数調整用スリットをエッチングにより形成する工程と、前記溝部をエッチングにより形成する工程と、前記励振電極を成膜する工程と、を有することを特徴とする前記圧電振動素子の製造方法である。
【0029】
上記製造方法を用いることにより、音叉型圧電振動素子用の圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0030】
[適用例12]本発明に係る振動ジャイロ素子の製造方法は、適用例10に記載の振動ジャイロ素子を製造する方法であって、前記振動ジャイロ素子の外形(輪郭等の形状)及び前記周波数調整用スリットをエッチングにより形成する工程と、前記励振電極を形成する工程と、を有することを特徴とする前記圧電振動素子又は前記振動ジャイロ素子の製造方法である。
【0031】
上記製造方法を用いることにより、振動ジャイロ素子用の圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0032】
[適用例13]本発明に係る圧電振動子は、適用例1乃至9の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージとを備えたることを特徴とする圧電振動子である。
【0033】
基部、複数の棒状の振動腕、各振動腕に夫々形成された幅広の錘部、各錘に形成した周波数調整用スリット、各振動腕の表面裏面に夫々形成された溝部を有する圧電基板の各振動腕の表裏面に夫々励振電極を配設した圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えた圧電振動子を構成する。
幅広の錘部に周波数調整用スリットを配設することにより、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、エッチング時間の超過、つまりオーバーエッチングが生じても、各振動腕の幅が狭くなることによる音叉振動の共振周波数の低下と、周波数調整用スリットの幅が広くなることによる共振周波数の上昇とが相殺し、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。錘部を形成することにより圧電振動子を小型化することが可能となるという効果がある。
【0034】
[適用例14]本発明に係る振動ジャイロセンサーは、適用例10に記載の振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子を収容するパッケージとを備えたることを特徴とする振動ジャイロセンサーである。
【0035】
基部、1対の検出用振動腕、1対の連結腕、各1対の駆動用振動腕、各検出用振動腕及び駆動用振動腕の先部に夫々設けた幅広の錘部、及び錘部に形成した周波数調整用スリットを備えた振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子を収容するパッケージと、を備えた振動ジャイロセンサーを構成する。
各振動腕は屈曲振動で励振されるので、周波数調整用スリットを設けたことにより、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0036】
[適用例15]本発明に係る圧電発振器は、適用例1乃至9の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振するIC部品と、前記圧電振動素子を気密封止すると共に前記IC部品を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電発振器である。
【0037】
上記の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振するIC部品と、これらを収容するパッケージと、を備えた圧電発振器を構成すると、小型で不要振動が少なく、且つ圧電振動素子の周波数の調整量が少ない圧電発振器が得られるという効果がある。
【0038】
[適用例16]本発明に係る振動ジャイロ装置は、適用例10に記載の振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子の各駆動用振動腕を励振し且つ各検出用振動腕の周波数を検出し処理するIC部品と、前記振動ジャイロ素子を気密封止すると共に前記IC部品を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする振動ジャイロ装置である。
【0039】
振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子の各駆動用振動腕を励振し且つ各検出用振動腕の周波数を検出し処理する励振するIC部品と、これらを収容するパッケージと、を備えた振動ジャイロ装置を構成する。各振動腕は屈曲振動で励振されるので、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、周波数調整用スリットを設けたことにより、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくでき、振動ジャイロ素子の周波数の調整量が少なく、小型で不要振動の少ない振動ジャイロ装置が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る圧電振動素子の構造を示した概略図であり、(a)は平面図、(b)は断面図。
【図2】本発明の圧電振動素子の動作を定性的に説明する図。
【図3】スリット数と周波数変動量との関係をシミュレーションにより求めた図。
【図4】(a)〜(d)は、錘部に形成した周波数調整スリットの変形例の平面図。
【図5】第2の実施形態の圧電振動素子の概略図であり、(a)は平面図、(b)は断面図。
【図6】第3の実施形態の圧電振動素子(捩れ振動素子)の概略図であり、(a)は平面図、(b)は断面図。
【図7】第4の実施形態の圧電振動素子(振動ジャイロ素子)の概略図であり、(a)は平面図、(b)は動作説明図。
【図8】圧電基板の外形形成工程のフローチャート図。
【図9】圧電基板の溝部形成工程のフローチャート図。
【図10】電極形成工程のフローチャート図。
【図11】圧電振動子の構成を示す断面図。
【図12】圧電発振器の構成を示す断面図。
【図13】従来の音叉型圧電振動素子の構成を示す平面図。
【図14】従来の音叉型圧電振動素子の錘部の構成を示す平面図。
【図15】従来の振動ジャイロ素子の構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る圧電振動素子1の構成を示す概略図であり、同図(a)は平面図、同図(b)はP−P断面図である。
圧電振動素子(音叉型水晶振動素子)1は、圧電基板10と、励振電極30、32、34、36と、を概略備えている。
圧電基板10は、並行に離間配置された複数の棒状の振動腕15a、15bと、各振動腕15a、15bの一方の端部間を連接する基部12と、各振動腕15a、15bの他方の端部に夫々連接され各振動腕15a、15bよりも幅広の錘部20a、20bと、を備えている。更に、圧電基板10は、各振動腕15a、15bの振動中心線Bに沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部17a、17bを備えている。各錘部20a、20bには夫々表裏面を貫通し、且つ各振動腕15a、15bの長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリット25が、複数本形成されている。
圧電振動素子1は、圧電基板10の少なくとも各溝部17a、17b及びその側面を含めた各振動腕15a、15bの表裏面と、各振動腕15a、15bの両側面とに夫々形成され、且つ基部12に設けた複数の電極パッド(図示せず)との間を夫々電気的に接続される励振電極30、32、34、36を備えている。
【0042】
基部12は、略矩形状の基部本体12aと、基部本体12aの他端縁中心部(連結部12d)を介して基部本体と連結されたL字状及び逆L字状の支持部12b、12cと、連結部12dと、を備えている。L字状支持部12bの端部と、逆L字状の支持部12cの各基端部とが連接され、この連接部分が連結部12dを介して基部本体12aの一方の端縁中央に連結され、基部本体の他方の端縁には各振動腕15a、15bの端部が連結されている。
各振動腕15a、15bは、基部本体12aの一端縁より所定の間隔を隔てて互いに平行に突設され、各振動腕15a、15bの先端部には振動腕15a、15bよりも幅広の各錘部20a、20bが連接されている。各錘部20a、20bには表裏面を貫通する複数のスリット25が形成され、スリット25は各振動腕と並行に延びており、各振動腕15a、15bの中心を通る振動中心線Bに対し対称に配置されている。
溝部17a、17bは、各振動腕15a、15bの表裏面に各振動中心線Bに対して対称に、各振動腕15a、15bの長手方向に沿って形成されている。つまり、各振動腕15a、15b及びスリット25を含む各錘部20a、20bは、互いに同一形状に形成され、音叉振動が安定的に励振されるよう圧電基板10の重心を通る中心線に対し対称に形成されている。
【0043】
図1(b)は、各振動腕15a、15bに夫々形成された励振電極30、32、34、36の配置を示す断面図である。励振電極30、34は、各溝部17a、17bの表裏面、及び各溝部17a、17bの側面に形成され、励振電極32、36は各振動腕15a、15bの夫々両側面に形成されている。
励振電極30、36と、励振電極32、34に対しては、互いに異符号の電圧が基部に設けた複数の電極パッドを介して印加される。つまり、励振電極30、36に+電圧が印加されるとき、励振電極32、34には−電圧が印加され、図1(b)の矢印で示すような電界が生じ、圧電振動素子1の重心を通る中心線に対し対称な音叉振動が励振される。
なお、溝部17a、17bを形成することにより電界強度が強まり、音叉振動をより効率的に励振することができる。即ち、圧電振動素子のCI(クリスタルインピーダンスー)を小さくすることができる。
また、図1の実施形態において、基部12は、基部本体12aと、L字状支持部12bと、逆L字状支持部12cと、連結部12dと、から構成されると説明したが、基部本体12aのみでもよい。
【0044】
図2は、本発明に係る音叉型圧電基板10に励振電極を形成して共振周波数を測定した際の、エッチング時間と、共振周波数との関係を定性的に示した図である。エッチング時間軸上に設計値とあるのは、この値が設計エッチング時間であることを示す。設計エッチング時間では、音叉型圧電基板10の周波数は所定の周波数f0となる。エッチング時間が設計エッチング時間を超えると(オーバーエッチング)、各振動腕15a、15bの幅wが狭くなり共振周波数は、図2の曲線(破線)Aに示すように、所定の周波数f0より減少する。一方、図1に示す圧電振動素子1のように、錘部20a、20bに複数のスリット25が形成されていると、オーバーエッチングにより音叉型圧電素子1の周波数は、錘部20a、20bの質量が減少するため、曲線(実線)Bに示すように上昇する。つまり、本発明のように錘部20a、20bに複数のスリット25を設けることにより、エッチング時間のバラツキ(エッチング液の濃度のバラツキ、エッチング液の温度によるバラツキを含む)により、所定の周波数f0から周波数偏差が大幅に縮小されることが推測される。
【0045】
図3の左図は、スリット本数と周波数変動量との関係を示す図であって、周波数調整用スリット本数を横軸に、屈曲型圧電振動子の共振周波数変動量(%)を縦軸にした場合の図である。ここで周波数変動量(%)とは、屈曲型圧電振動子の設計値の共振周波数をf0とし、その周波数からの周波数変化をΔfとした場合、Δf/f0をパーセント表示したものである。
シミュレーションに用いた屈曲型圧電振動子は、図3の右図のように、周波数調整用スリットが形成された錘部と振動腕とが連結された屈曲型圧電振動子である。屈曲型圧電振動子の長さは1.37mmであり、振動腕の厚さを100μmとし、厚さ45μmの溝部を表裏面に形成して振動腕の端部を固定した。オーバーエッチング量として錘部を含む振動腕全体の幅(X軸方向)を設計値に対し−4μmとした。
【0046】
振動腕の幅を設計値より4μmだけ狭めて(オーバーエッチング)いるので、周波数調整用スリットを設けないときは、屈曲型圧電振動子の共振周波数はf0より低下し、点αで示す変動量を示している。
次に、錘部に周波数調整用スリットを形成すると錘部の質量が軽くなり、屈曲型圧電振動子の周波数が上昇する。図3の菱形マークは、周波数調整用スリットの本数を5本、9本、11本、13本、15本と増加させ、屈曲型圧電振動子の周波数変動量をプロットした図である。計算例では、周波数調整用スリット本数を15本とした場合に、周波数変動量が点βになり、振動腕の幅のオーバーエッチング、つまり−4μmによる周波数減少と、15本の周波数調整用スリットを形成したことによる周波数上昇とが互いに相殺し、周波数変動量が零に近づくことが判明した。
【0047】
一対の振動腕の端部に夫々各振動腕よりも幅広の錘部を設けると共に、各錘部に夫々複数の周波数調整用スリットを形成した圧電基板を用いて、音叉型圧電振動素子を構成する。幅広の錘部に周波数調整用スリットを配設することにより、圧電基板の外形を、フォトリソグラフィ技術を用いたエッチング加工で形成する際に、エッチング時間の超過、つまりオーバーエッチングが生じても、各振動腕の幅が狭くなることによる音叉振動の共振周波数の低下と、周波数調整用スリットの幅が広くなることによる共振周波数の上昇とが相殺し、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできる。逆に、エッチング時間が不足した場合でも、各振動腕の幅が設計値よりも広くなることによる音叉振動の共振周波数の上昇と、周波数調整用スリットの幅が設計値よりも狭くなることによる共振周波数の低下とが相殺し、エッチング時間の不足による所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできる。
また、錘部を設けることにより圧電振動子の小型化が可能になるが、各振動腕15a、15bの表裏両面に形成した溝部17a、17bは必須ではない。
【0048】
図1(a)に示す圧電振動素子では、錘部20a、20bに形成した各周波数調整用スリット25の夫々の幅寸法、及び長手方向寸法が同一であり、且つ長手方向両端部の位置が夫々一致している例である。
図4は周波数調整用スリット25の変形例であり、同図(a)は、各周波数調整用スリット25が、夫々幅寸法、及び長手方向寸法が同一であり、且つ長手方向両端部の位置が交互にずれている例である。
図4(b)は、各周波数調整用スリット25bが、長手方向寸法が同一であると共に、幅寸法が一致していない例である。
図1(a)のように幅広の錘部に幅寸法、及び長手方向寸法が同一であり、且つ長手方向両端部の位置が一致した周波数調整用スリットを形成することにより、圧電基板の形状(外形、輪郭)をエッチング手法で形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできると共に、周波数調整用スリットのフォトマスクパターンの製作が容易になるという効果がある。
【0049】
また、図4(a)のように幅広の錘部に幅寸法、及び長手方向寸法が同一であり、且つ長手方向両端部の位置が交互にずれた周波数調整用スリットを形成することにより、振動腕が屈曲振動をする際の錘部の慣性を微細に制御でき、音叉型圧電振動素子の周波数を微調整することが可能となる。更に、周波数調整用スリットを設けることにより、圧電基板の形状をエッチング手法で形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
また、図4(b)のように幅広の錘部に長手方向寸法が同一であると共に、幅寸法が一致していない周波数調整用スリットを形成することにより、振動腕が屈曲振動をする際の錘部の慣性を微細に制御でき、音叉型圧電振動素子の周波数を微調整することが可能となる。更に、周波数調整用スリットを設けることにより、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0050】
図4(c)は、各周波数調整用スリット25が、夫々幅寸法、及び長手方向寸法が同一であり、且つ長手方向両端部の位置が一致し、更に隣接する2本の周波数調整用スリットの長手方向一端部間を連通スリットにより連通させたコ字状の周波数調整用スリット組25pを複数組備えている。隣接する前記周波数調整用スリット組25pにおける連通スリットの位置が交互に逆向きとなるように配置されている。
図4(d)は、各周波数調整用スリット25dの一端部は、前記錘部の端縁にて開放しているスリットである。
また、図4(a)〜(d)に示すスリット25a〜25pを適宜組み合わせて用いてもよいし、上記に周波数調整用スリットを二段、三段に形成してもよい。また、周波数調整用スリットは表裏でずれていてもよい。
【0051】
図4(c)のように幅広の錘部に幅寸法、及び長手方向寸法が同一であり、且つ長手方向両端部の位置が一致し、更に隣接する2本のスリットの長手方向一端部間を連通させたコ字状の周波数調整用スリットを形成することにより、振動腕が屈曲振動をする際の錘部の慣性を微細に制御でき、音叉型圧電振動素子の周波数を微調整することが可能となる。更に、周波数調整用スリットを設けることにより、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
また、図4(d)のように幅広の錘部に、一端部が錘部の端縁で開放した周波数調整用スリットを形成することにより、振動腕が屈曲振動をする際の錘部の慣性を微細に制御でき、音叉型圧電振動素子の周波数を微調整することが可能となる。更に、周波数調整用スリットを設けることにより、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0052】
圧電振動素子(音叉型水晶振動素子)1に形成する各周波数調整用スリット25は、各振動腕15a、15bの各振動中心線Bに対し対称に形成されていることが望ましい。これは振動腕15a、15bが屈曲振動で励振される際にバランスがよく、振動の安定度が保持されるためである。
幅広の錘部に、圧電基板の振動中心線Bに対し対称に配置された周波数調整用スリットを形成することにより、錘部のバランスがよくなり、音叉型圧電振動素子に生じる不要なスプリアス振動を抑止して、周波数安定度を向上させる効果がある。更に、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0053】
図5は、第2の実施形態の圧電振動素子(音叉型水晶振動素子)2の構成を示す図であり、同図(a)は平面図、同図(b)はP−P断面図である。圧電振動素子2の圧電基板10は、互いに離間しつつ並行に配置された複数の棒状の振動腕15a、15bと、各振動腕15a、15bの一方の端部間を連接する基部12と、各振動腕15a、15bの各振動中心線Bに沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部17a、17bと、を備えている。更に、各振動腕15a、15bの他方の端部には、夫々表裏面を貫通し、且つ各振動腕15a、15bの長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリット25eが、複数本形成されている。周波数調整用スリット25eは、各振動腕15a、15bの振動中心線Bに対し、対称に形成さている。
そして、少なくとも各溝部17a、17b及びその側面を含めた各振動腕15a、15bの表裏面と、各振動腕15a、15bの夫々両側面には、図5(b)の断面図に示すように夫々励振電極30、32、及び34、36形成され、基部12に設けた電極パッド(図示せず)との間を電気的に接続されるリード電極(図示せず)が形成されている。
【0054】
基部12は、図1に示す圧電振動素子1と同様に、矩形状の基部本体12aと、L字状、及び逆L字状の支持部12b、12cと、連結部12dと、備えている。L字状支持部12bの端部と、逆L字状の支持部12cの端部とが連接され、この連接部分が連結部12dを介して基部本体12aの一方の端部に連結され、他方の端部には各振動腕15a、15bの端部が連結されている。
支持部12b、12cは必須ではなく、基部12は基部本体12aのみであってもよい。
各振動腕の端部には、夫々表裏面を貫通し、且つ各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリットを形成することにより、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を小さくできると共に、小型化した音叉型圧電振動素子の構成が可能であるという効果がある。
なお、図4に示した周波数調整用スリットの形状、配置のパターンは、本例にも適用することができる。
【0055】
図6は、第3の実施形態の圧電振動素子(捩れ型水晶振動素子)3の構成を示す図であり、同図(a)は錘部を省略した要部平面図、同図(b)はP−P断面図である。圧電振動素子(捩れ型水晶振動素子)3の錘部は、図1の実施形態に示した錘部20a、20bや、図4に示した錘部20と同様な構造であり、重複するので省略している。
捩れ型水晶振動素子3の水晶基板40は、複数の棒状の振動腕45a、45bと、各振動腕45a、45bの一方の端部間を連接する基部42と、各振動腕45a、45bの他方の端部に夫々形成され各振動腕45a、45bよりも幅広の錘部(図1(a)、又は図4の錘部と同様)と、各振動腕45a、45bの振動中心線Bに沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部47a、47bと、を備えている。更に、各振動腕45a、45bの先端部に設けられた錘部には、夫々表裏面を貫通し、且つ各振動腕45a、45bの長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリットが複数本形成されている。
【0056】
各溝部47a、47b内及びその側面を含めた各振動腕45a、45bの表裏面には、夫々励振電極50a、50b、及び54a、54bが形成されている。更に、各振動腕45a、45bの両側面の励振電極は、図6(b)に示すように、図中上下に二分割され、各振動腕45a、45bには夫々励振電極52a、52b、及び56a、56bが形成されている。つまり、振動腕45aの表裏面の励振電極50aと50bに対しては、互いに異符号の電圧が印加され、振動腕45bの表裏面の励振電極54aと54bには互いに異符号の電圧が印加され、且つ励振電極50aと54b(50bと54a)には互いに異符号の電圧が印加される。
更に、両側面の励振電極52b、52a(56a、56b)には、対向する表裏面の励振電極50a、50b(54a、54b)と異符号の電圧が印加される。
【0057】
つまり、振動腕45aの表面の励振電極50aと、両側面の図中上部の励振電極52bに対しては異符号の電圧が印加され、裏面の励振電極50bと、両側面の図中下部の励振電極52aに対しては異符号の電圧が印加される。同様に、振動腕45bの表面の励振電極54bと、対向する両側面の図中上部の励振電極56aに対しては異符号の電圧が印加され、裏面の励振電極54aと、対向する両側面の図中下部の励振電極56bに対しては異符号の電圧が印加される。その結果、図6(b)の矢印に示すような電界が生じ、同図(a)の矢印R1、R2で示すような互いに逆方向に捩れる捩れ振動が励振される。
【0058】
捩れ振動型水晶振動子3の錘部に形成するスリットは、各振動中心線Bに対し両外側から対称となるように形成すると効率がよい。これは捩れ振動に関しては振動中心線Bから離れた位置にある質量がより共振周波数に関与するからである。つまり、同じ質量を除去する場合に、振動中心線Bに近い位置より遠い位置の質量を除去した方が周波数変化が大きいからである。
各振動腕の幅広の錘部に周波数調整用スリットを形成すると共に、各振動腕の表裏面及び両側面に上記のように励振電極を配設する。周波数調整用スリットにより、圧電基板の形状をエッチング加工で形成する際に、エッチング時間の超過、つまりオーバーエッチングが生じても、各振動腕の幅が狭くなることによる捩れ振動の共振周波数の低下と、周波数調整用スリットの幅が広くなることによる共振周波数の上昇とが相殺し、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。更に、錘部を形成することにより圧電振動子を小型化することが可能となるという効果がある。
【0059】
図7は、第4の実施形態に係る振動ジャイロ素子4の構成を示す平面図である。振動ジャイロ素子4の圧電基板60は、略矩形の基部61と、基部61の対向する2つの端縁中心部から夫々同一直線上に突設された1対の検出用振動腕62a、62bと、基部61の対向する他の2つの端縁中心部から夫々検出用振動腕62a、62bと直交する方向に同一直線上に突設された1対の連結腕65a、65bと、各連結腕65a、65bの先部からそれと直交する両方向へ夫々突設された各1対の駆動用振動腕67a、67b、70a、70bと、を備えている。
各検出用振動腕62a、62b、及び駆動用振動腕67a、67b、70a、70bは、先部に夫々各検出用振動腕62a、62b、及び各駆動用振動腕67a、67b、70a、70bよりも幅広の錘部64a、64b、及び69a、69b、72a、72bを有し、各錘部64a、64b、69a、69b、72a、72bには、夫々表裏面を貫通し、且つ各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリット25が複数本形成されている。
更に、振動ジャイロ素子4の励振電極(図示せず)は、少なくとも1対の検出用振動腕62a、62bと、各1対の駆動用振動腕67a、67b、70a、70bとの表裏面に夫々形成され、且つ基部61に設けた複数の電極パッド(図示せず)との間を夫々リード電極により電気的に接続されている。
【0060】
図7(b)は振動ジャイロ素子の動作を説明する模式平面図である。振動ジャイロ素子4は角速度が加わらない状態では、駆動用振動腕67a、67b、70a、70bが矢印Eで示す方向に屈曲振動を行う。このとき、駆動用振動腕67a、67bと駆動用振動腕70a、70bとが、重心Gを通るY軸に関して線対称の振動を行っているため、基部61、連結腕65a、65b、検出用振動腕62a、62bはほとんど振動しない。
振動ジャイロ素子4にZ軸回りの角速度ωが加わると、駆動用振動腕67a、67b、70a、70b及び連結腕65a、65bにコリオリ力が働き、新たな振動が励起される。この振動は重心Gに対して周方向の振動である。同時に、検出用振動腕62a、62bは、前記振動に応じて検出振動が励起される。この振動により発生した歪を検出用振動腕62a、62bに形成した検出電極が検出して角速度が求められる。
各検出用振動腕及び駆動用振動腕の先部に、夫々各検出用振動腕及び各駆動用振動腕よりも幅広の錘部を設け、この錘部に周波数調整用スリットを形成する。各振動腕は屈曲振動で励振されるので、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0061】
図8、図9及び図10は、夫々図1、図5、図6及び図7に示す圧電振動子1〜4の圧電基板の形状及びスリット、溝部の形成、及び励振電極の形成に係る製造工程を示すフローチャートである。
図8は、圧電振動子1〜4の形状(外形、輪郭)及び周波数調整用スリットを形成する製造工程を示すフローチャート図である。工程S10では、圧電ウエハー(水晶ウエハー)の全面に蒸着、スパッタリング等により(Cr+Au)等の金属膜を形成する。
工程S11では、金属膜の上にフォトレジスト膜(レジスト膜と称す)を全面に塗布する。工程12では、露光装置を用いて、周波数調整用スリット及び外形のマスクパターンを表裏両面に形成したレジスト膜に露光する。
工程S13では、レジスト膜を現像して、感光したレジスト膜を除去する。更に、レジスト膜から露出した金層膜を所定の溶液を用いて溶かして除去すると、周波数調整用スリットと圧電基板の外形パターンとが、多数形成された圧電ウエハーが得られる。
工程S14では、フッ酸溶液を用いて、レジスト膜及び金属膜から露出した圧電ウエハーを、所望の周波数調整用スリットを有する圧電基板の外形となるようにウェットエッチングを行う。
工程S15では、余分のレジスト膜と金属膜を除去することによりに所望の形状の圧電基板が得られる。所望の形状の圧電基板と圧電ウエハーとは支持片により連結されており、分離されていない。
【0062】
図9は、振動腕に溝部を形成する製造工程を示すフローチャートである。工程S20は、図8で説明したように、周波数調整用スリットが形成された圧電基板の輪郭形状が、格子状に並んだ圧電ウエハーの全面に金属膜を成膜する工程である。工程S21では、全面にレジスト膜を塗布する。
工程S22では、形成する溝部に対応した溝部マスクを用いて、溝部パターンを表裏面のレジスト膜に露光する。工程S23では、レジスト膜を現像後、感光したレジスト膜を除去し、レジスト膜から露出した金層膜を溶かす。
工程S24では、溝部と対応し、レジスト膜から露出した圧電基板を、ハーフエッチングする。工程S25では、余分のレジスト膜と金属膜とを除去する。
【0063】
図10は、励振電極形成の製造工程を示すフローチャートである。工程30では、圧電基板の全面に励振電極等を形成するため金属膜を蒸着、スパッタリング等を用いて成膜する。工程S31では、全面にレジスト塗布する。
工程S32では、電極パターンと対応したフォトマスクを用い、電極パターンを表裏両面のレジスト膜に露光する。工程S33では、レジスト膜を現像した後、感光したレジスト膜を除去する。そして、電極パターンと対応したレジスト膜から露出した金層膜を溶かす。
工程S34でレジスト膜を除去する。ここで、圧電基板の所定の位置に励振電極等が形成された圧電振動素子が形成される。工程S35では、圧電ウエハーと圧電振動素子とを連接する支持片を折り取り、圧電ウエハーから圧電振動素子を分割する。
以上では圧電振動素子1〜3の製造工程について説明したが、振動ジャイロ素子4についても、外形及び周波数調整用スリット、励振電極の形成に係る製造工程は同様であるので、省略する。
【0064】
上記製造方法を用いることにより、音叉型圧電振動素子用の圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
また、上記製造方法を振動ジャイロ素子に適用することにより、振動ジャイロ素子用の圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0065】
図11は、上記の圧電振動素子1〜3と、圧電振動素子1〜3を収容するパッケージとを備えた圧電振動子の構成を示す断面図である。パッケージは、矩形の箱状に形成されているパッケージ本体120と、ガラス等からなる窓部材135aを有する蓋部材135とから成る。
パッケージ本体120は、図11に示すように、絶縁基板として第1の基板121と、第2の基板122と、第3の基板123とを積層して形成されている。絶縁材料としての酸化アルミニウム質のセラミック・グリーンシートを成形し箱状とした後で、焼結して形成されている。実装端子125は、第1の基板121の外部底面に複数形成されている。
第3の基板123は中央部が除去された環状体であり、第3の基板123の上部周縁に例えばコバール等の金属シールリング24が形成されている。
第3の基板123と第2の基板122とにより、圧電振動素子1を収容する凹部が形成されている。第2の基板122の上面の所定の位置には、導体126により実装端子125と電気的に導通する複数の素子搭載パッド127が設けられている。
素子搭載パッド127の位置は、圧電振動素子1を載置した際にL字状の支持部12b、12cに形成したパッド電極(図示せず)に対応するように配置されている。
【0066】
圧電振動子5の製造においては、まず、パッケージ本体120の素子搭載パッド127に導電性接着剤130、例えばエポキシ系接着剤、ポリイミド系接着剤、ビスマレイミド系接着剤の何れかを適量塗布し、その上に圧電振動素子1を載置して荷重をかける。
パッケージ本体120に搭載された圧電振動子1の導電性接着剤130を硬化させるために所定温度の高温炉内に所定時間入れる。アニール処理を施した後、上方からレーザー光を照射して各振動腕に形成された周波数調整用金属膜の一部を蒸散させて周波数粗調を行う。ガラス窓部135aを備えた蓋部材135を、パッケージ本体120の上面に形成したシールリング124に、シーム溶接する。
パッケージの貫通孔128を封止する前に、加熱処理を施す。パッケージの上下を逆にして、貫通孔128内の段差部上に金属球の充填材128aを載置する。充填材128aとしては金−ゲルマニウム合金等がよい。充填材128aにレーザー光を照射して溶融させ、貫通孔128を封止すると共にパッケージ内部を真空とする。パッケージの外部から窓部材135aを介してレーザー光をパッケージ内に照射し、振動腕に形成した周波数調整用金属膜を蒸散させて周波数微調整を行い、圧電振動子5を完成する。
振動ジャイロ素子4をパッケージに収容して構成する振動ジャイロセンサーについても、圧電振動子5の場合と同様であるので、省略する。
【0067】
このように、基部、複数の棒状の振動腕、各振動腕に夫々形成された幅広の錘部、各錘に形成した周波数調整用スリット、各振動腕の表面裏面に夫々形成された溝部を有する圧電基板の各振動腕の表裏面に夫々励振電極を配設した圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージと、を備えた圧電振動子を構成する。
幅広の錘部に周波数調整用スリットを配設することにより、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、エッチング時間の超過、つまりオーバーエッチングが生じても、各振動腕の幅が狭くなることによる音叉振動の共振周波数の低下と、周波数調整用スリットの幅が広くなることによる共振周波数の上昇とが相殺し、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできる。錘部を形成することにより圧電振動子を小型化することが可能となる。
また、振動ジャイロセンサーは、基部、1対の検出用振動腕、1対の連結腕、各1対の駆動用振動腕、各検出用振動腕及び駆動用振動腕の先部に夫々設けた幅広の錘部、及び錘部に形成した周波数調整用スリットを備えた振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子を収容するパッケージと、を備える。
各振動腕は屈曲振動で励振されるので、周波数調整用スリットを設けたことにより、圧電基板の形状(外形、輪郭)をエッチングで形成する際に、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくできるという効果がある。
【0068】
図12は、圧電発振器6の構成を示す断面図である。圧電発振器6は、上記の圧電振動素子1〜3と、圧電振動素子1〜3を励振するIC部品138と、圧電振動素子1〜3を真空封止すると共にIC部品138を収容するパッケージ120a及び窓部材135a有する蓋部材135と、を備えている。圧電振動素子にレーザー光を照射して粗調製、微調整する手法、また、パッケージの内部を真空にして貫通孔28の封止する手法等は、圧電振動子5の場合と同様であるので省略する。IC部品138はパッケージ120aのIC部品搭載パッド129に、金属バンプ136等を用いて電気的に導通接続する。
なお、図12に示した圧電発振器6の断面図では、IC部品138が気密封止されていない例を示したが、IC部品138をパッケージ内部に配置し、気密封止してもよい。
【0069】
上記の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振するIC部品と、これらを収容するパッケージと、を備えた圧電発振器を構成すると、小型で不要振動が少なく、且つ圧電振動素子の周波数の調整量が少ない圧電発振器が得られるという効果がある。
振動ジャイロ装置の一例の断面図は、図12と同様であるので省略する。
振動ジャイロ装置は、振動ジャイロ素子4と、振動ジャイロ素子4の駆動用振動腕67a、67b、70a、70bを励振し且つ検出用振動腕62a、62bの周波数を検出し処理するIC部品と、振動ジャイロ素子4を気密封止すると共に前記IC部品を収容するパッケージと、を備える。
振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子の各駆動用振動腕を励振し且つ各検出用振動腕の周波数を検出し処理する励振するIC部品と、これらを収容するパッケージと、を備えた振動ジャイロ装置を構成する。各振動腕は屈曲振動で励振されるので、圧電基板の形状をエッチングで形成する際に、周波数調整用スリットを設けたことにより、オーバーエッチングによる所定の周波数からの偏差を大幅に小さくでき、振動ジャイロ素子の周波数の調整量が少なく、小型で不要振動の少ない振動ジャイロ装置が得られるという効果がある。
【符号の説明】
【0070】
1、2、3…圧電振動素子、4…振動ジャイロ素子、5…圧電振動子、6…圧電発振器、10、40、60…圧電基板、12、42、61…基部、12a、42a…基部本体、12b、42a…L字状支持部、12c、42c…逆L字状支持部、12d、42d…連結部、15a、15b、45a、45b…振動腕、17a、17b、47a、47b…溝部、20、20a、20b…錘部、25、25a、25b、25d、25e、25p…周波数調整用スリット、30、32、34、36、50a、50b、52a、52b、54a、54b、56a、56b…励振電極、58a、58b…リード電極、59a、59b…パッド電極、65a、65b…連結腕、62a、62b…検出用振動腕、67a、67b、70a、70b…駆動用振動腕、120、120a…パッケージ本体、121、122、123…基板、124…シールリング、125…実装端子、126…導体、127…素子搭載パッド、128…貫通孔、128a…充填材、130…導電性接着剤、135…蓋部材、135a…窓部材、129…IC部品搭載パッド、136…金属バンプ、138…IC部品、B…振動中心線、G…重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の棒状の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、前記各振動腕の他方の端部に夫々形成され該各振動腕よりも幅広の錘部、及び、前記各振動腕の振動中心線に沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部、を備えた圧電基板と、少なくとも前記各溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面に夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、を備えた圧電振動素子であって、
前記各錘部には夫々表裏面を貫通し、且つ前記各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリットが、複数本形成されていることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項2】
前記各周波数調整用スリットは、幅寸法、及び長手方向寸法が互いに同一であり、且つ長手方向両端部の位置が一致していることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項3】
前記各周波数調整用スリットは、幅寸法、及び長手方向寸法が互いに同一であり、且つ長手方向両端部の位置が交互にずれていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項4】
前記各周波数調整用スリットは、長手方向寸法が互いに同一であると共に、幅寸法が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項5】
前記各周波数調整用スリットは、幅寸法、及び長手方向寸法が互いに同一であり、且つ長手方向両端部の位置が一致し、更に隣在する2本の周波数調整用スリットの長手方向一端部間を連通スリットにより連通させたコ字状の周波数調整用スリット組を複数組備え、
隣接する前記周波数調整用ユニット組における前記連通スリットの位置が交互に逆向きとなるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項6】
前記各周波数調整用スリットの一端部は、前記錘部の端縁にて開放していることを特徴とする請求項1に記載の圧電振動素子。
【請求項7】
前記各周波数調整用スリットは、前記圧電基板の振動中心線に対し対称に形成されていることを特徴とする請求項1乃至6項の何れか一項に記載の圧電振動素子。
【請求項8】
複数の棒状の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、及び、前記各振動腕の振動中心線に沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部を備えた圧電基板と、少なくとも前記各溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面に夫々形成され、且つ前記基部に設けた電極パッドとの間を電気的に接続される励振電極と、を備えた圧電振動素子であって、
前記各振動腕の他方の端部には、夫々表裏面を貫通し、且つ前記各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリットが、複数本形成されていることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項9】
複数の棒状の振動腕、該各振動腕の一方の端部間を連接する基部、前記各振動腕の他方の端部に夫々形成され該各振動腕よりも幅広の錘部、及び、前記各振動腕の振動中心線に沿った表面及び裏面に夫々形成された溝部、を備えた圧電基板と、前記各溝部内を含めた前記各振動腕の表裏面及び両側側面に夫々形成された励振電極と、を備えた圧電振動素子であって、
前記各錘部には夫々表裏面を貫通し、且つ前記各振動腕の長手方向に沿って直線状に延びる周波数調整用スリットが複数本形成され、
前記表裏面の対向する励振電極には異符号の電圧が印加され、前記両側側面の励振電極は二分割され、対向する前記表裏面の励振電極と異符号の電圧が印加されていることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項10】
基部と、該基部の対向する2つの端縁から夫々同一直線上に突設された1対の検出用振動腕と、前記基部の対向する他の2つの端縁から夫々前記検出用振動腕と直交する方向に同一直線上に突設された1対の連結腕と、前記各連結腕の先部からそれと直交する両方向へ夫々突設された各1対の駆動用振動腕と、少なくとも前記1対の検出用振動腕と、前記各1対の駆動用振動腕とに夫々形成され、且つ前記基部に設けた複数の電極パッドとの間を夫々電気的に接続される励振電極と、を備えた振動ジャイロ素子であって、
前記各検出用振動腕及び駆動用振動腕は、先部に夫々各検出用振動腕及び各駆動用振動腕よりも幅広の錘部を有し、該錘部に周波数調整用スリットが複数本形成されていることを特徴とする振動ジャイロ素子。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の前記圧電振動素子を製造する方法であって、
前記圧電振動素子の外形及び前記周波数調整用スリットをエッチングにより形成する工程と、
前記溝部をエッチングにより形成する工程と、
前記励振電極を成膜する工程と、
を有することを特徴とする前記圧電振動素子の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の振動ジャイロ素子を製造する方法であって、
前記振動ジャイロ素子の外形及び前記周波数調整用スリットをエッチングにより形成する工程と、
前記励振電極を形成する工程と、
を有することを特徴とする前記圧電振動素子又は前記振動ジャイロ素子の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を収容するパッケージとを備えたることを特徴とする圧電振動子。
【請求項14】
請求項10に記載の振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子を収容するパッケージとを備えたることを特徴とする振動ジャイロセンサー。
【請求項15】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の圧電振動素子と、該圧電振動素子を励振するIC部品と、前記圧電振動素子を気密封止すると共に前記IC部品を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする圧電発振器。
【請求項16】
請求項10に記載の振動ジャイロ素子と、該振動ジャイロ素子の各駆動用振動腕を励振し且つ各検出用振動腕の周波数を検出し処理するIC部品と、前記振動ジャイロ素子を気密封止すると共に前記IC部品を収容するパッケージと、を備えたことを特徴とする振動ジャイロ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−120014(P2012−120014A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269063(P2010−269063)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】