圧電振動素子、圧電振動子、圧電発振器及び圧電基板ウェハ
【課題】異方性圧電結晶材料から成る圧電基板面にエッチングによって凹陥部を形成することによって振動部を形成した超小型の圧電基板を、大面積の圧電基板ウェハを用いたバッチ処理により量産する場合に、凹陥部を包囲する環状部の肉厚を十分に確保して分割時のひび割れを防止する。
【解決手段】薄肉の振動部4と、振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部5と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部3を形成した圧電基板2であって、異方性を有した圧電結晶から成るものにおいて、環状部は、一方の結晶軸方向側の内壁5aが、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えており、圧電基板の外形寸法は、他の結晶軸方向の基板長さよりも、一方の結晶軸方向の基板長さが長い。
【解決手段】薄肉の振動部4と、振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部5と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部3を形成した圧電基板2であって、異方性を有した圧電結晶から成るものにおいて、環状部は、一方の結晶軸方向側の内壁5aが、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えており、圧電基板の外形寸法は、他の結晶軸方向の基板長さよりも、一方の結晶軸方向の基板長さが長い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超薄肉の振動部を厚肉の環状部で一体的に包囲した構造の圧電基板、この圧電基板に励振電極等の導電パターンを形成した圧電振動素子、圧電振動素子をパッケージ内に気密封止した圧電振動子、更にはこの圧電振動子を用いた圧電発振器、圧電基板ウェハの改良に関し、特に異方性を有した圧電結晶材料から成る圧電基板面にエッチングによって凹陥部を形成することによって前記振動部を形成した場合に、環状部内壁に発生するエッチング残渣(緩斜面)を利用することによって、圧電基板の超小型化に対応した最適の形状を実現する技術、及び品質を維持しながらバッチ処理における量産性を高める技術に関するものである。更に、本発明は、圧電基板ウェハ上に複数の凹陥部を一括形成した後に、凹陥部底面の振動部の肉厚を微調整するのに好適な加工方法、及び限られた狭い圧電基板内において可能な限り広い面積の振動部を確保するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
[第一の従来例]
水晶振動子等の如く圧電振動素子をパッケージ内に気密封止した構造の表面実装型の圧電デバイスは、携帯電話機、ページャ等の通信機器や、コンピュータ等の電子機器等において、基準周波数発生源、フィルタ等として利用されているが、これらの各種機器の小型化に対応して圧電デバイスに対しても小型化が求められている。
また、表面実装用の圧電デバイスとしての圧電発振器は、例えばセラミック等から成るパッケージ本体の上面に形成された凹所内に、圧電振動素子と、発振回路を構成する回路部品を収納した状態で凹所開口を金属蓋により封止した構成を備えている。
従来から、上記の如き圧電デバイスに使用される圧電振動素子として、高周波化に対応できるように圧電基板の片側表面を一部掘削することにより凹陥部を形成してその底面を薄肉の振動部とすると共に、この振動部周縁を厚肉の環状部により一体的に包囲した構造の圧電基板と、この振動部の表裏両面に夫々形成した入出力用の電極と接地電極と、から成る圧電振動素子が知られている(特開平9−55635号公報)。
【0003】
図9(a)及び(b)は、このような圧電振動素子の一例としてのATカット水晶振動素子の構成を示す斜視図、及び断面図である。この水晶振動素子100は、異方性を有した圧電結晶材料としてのATカット水晶から成る水晶基板101と、水晶基板の両主面に夫々形成した励振電極110、及び各励振電極110から延びるリード電極111と、各リード電極端部の接続パッド112と、を備えている。水晶基板101は、x軸方向に長尺な矩形平板状の基板本体の一方の主面上に凹陥部102をエッチングにより形成することにより、凹陥部102の内底面に超薄肉の振動部103を位置させると共に、振動部103の外周縁を厚肉の環状部104にて一体的に保持した構成を備えている。環状部104のx軸方向に位置する一辺104Aは、x軸方向へ所定長延長形成されて張り出し部105となっている。張り出し部105の一面上には、各リード電極111が引き出され、各リード電極111の端部には接続パッド112が位置している。
このようにATカットの水晶基板101の形状をx軸方向へ長尺に構成する理由は、励振時のx軸方向の波の伝搬速度がz軸方向の波の伝搬速度の約1.2倍であるため、x軸方向に長尺なx軸ロング構造を採るのが慣例となっていた。
水晶基板101上に凹陥部102を形成する方法として化学エッチングを採用した場合には、異方性結晶材料としての水晶の特性から、エッチングを終了した際にz軸方向に位置する環状部104の内壁にエッチング残渣としての傾斜角度θが小さい緩やかな緩斜面104a、104bが形成される。
図9(c)は、上記の如き構成を備えた水晶振動素子100を表面実装用のパッケージ120内にマウントした状態を示す断面図であり、凹陥部102を下向きにした水晶振動素子100の接続パッド112を、パッケージ120の内底面に配置したパッド121上に導電性接着剤122を介して電気的機械的に固定する。パッケージ120の上部開口は金属蓋123にて気密封止する。
【0004】
ところで、上記の如き水晶基板101(或いは、水晶振動素子100)を大面積の圧電基板ウェハを用いてバッチ処理により生産する場合、図10に示した如く水晶振動素子個片100の配列がレイアウトされる。即ち、ウェハ130上には、予め縦横に交差する複数の直線状ダイシング溝(分割溝)131を碁盤の目状に形成し、溝間に形成される矩形領域が個々の水晶基板101となる。凹陥部102に相当する水晶基板面だけを露出させたマスク(レジスト膜)をウェハ130上に被覆した状態で所要のエッチャントを用いてエッチングを実施すると、図示の如くエッチング速度が遅い結晶方向に相当するz軸方向の内壁にエッチング残渣としての緩やかな緩斜面104a、104bが形成される。その後、各個片領域に蒸着等の方法により励振電極110、リード電極111、接続パッド112等を形成してから、ダイシング溝131に沿って切断することにより、個片としての水晶振動素子100が完成する。
【0005】
ところで、縦横寸法が2.5×2.0mmである超小型パッケージ内に収納される水晶基板の縦横寸法は、1.3×0.9mm未満と、更に超小型化せざるを得ない。一方、ウェハ130を用いたバッチ処理を実施する際には、一枚のウェハから採取できる水晶基板の数を増やしてその量産性を高めるために、水晶基板個片間の間隔を接近させて密集配置する必要があるが、上記の如き超小型化の水晶基板を生産する場合には、図示の如く、ダイシング溝131と、凹陥部102の3つの外周縁との間隔wが極めて狭くなり、分割後に十分な幅と十分な強度を備えた環状部104を確保することが困難となる。このため、ダイシング溝131に沿ってダイシングブレード等の分割手段によって切断した場合に、環状部104と振動部103にひび割れが形成され易くなり、生産性が大幅に低下するという問題があった。
【0006】
また、図9(a)に示した如く、振動部103の表裏両面に夫々形成された励振電極110から夫々延びるリード電極111は、傾斜が急峻なx軸方向に位置する環状部104の一辺104Aの内壁に沿って引き出す必要があるため、急角度で屈曲している角部にて導電パターンが断線し易いという問題がある。
更に、図9(c)のように接続パッド112は、内壁の傾斜が急峻な一辺104Aと連続した張り出し部105上に形成され、導電性接着剤122でパッケージ内底面のパッド121と接続されることにより、水晶振動素子全体が片持ち状態で支持されることになるが、この場合、導電性接着剤122を接着した位置から振動部103までの距離が短くなるため、水晶振動素子の自重によるストレスが振動部103にかかり易くなり、振動部に歪みが発生し、共振周波数変動の原因となる。
【0007】
[第2の従来例]
次に、図11(a)及び(b)は他の従来例に係る表面実装型水晶振動子の断面図、及びA−A断面図であり、水晶振動素子100をパッケージ120の凹所内に片持ち支持した状態で金属蓋123により気密封止した構成を備えている。
水晶基板101の張り出し部105の表裏両面上には、夫々2つの接続パッド112a、112bが形成されている。この場合、パッケージ内底面と対面する接続パッド112aは対応する位置関係にあるパッド121aと導電性接着122にて容易に電気的機械的に接続されるが、他方の接続パッド112bは、水晶基板の平坦面側に位置しているため対応するパッケージの凹所内に設けたパッド121bと接続するためには、接着剤を二度盛りする必要がある。接着剤の二度盛りにおいては、パッド121bと水晶基板下面との間に第一回目の接着剤を塗布してから、上側の接続パッド112bと第一回目の接着剤とを接続するように第二回目の接着剤塗布が行われる。
【0008】
しかし、導電性接着剤122を二度盛りした場合には、上側の接続パッド112b上に接着剤の一部が突出し、接着剤と金属蓋123下面との接触を回避するために、パッケージ120の外周壁の高さを大きく設定する必要が生じる。この結果、パッケージの低背化に支障が生じ、小型化の要請に反する結果をもたらす。
このような不具合を解消するため従来は、図11(c)に示した如く、上面側の接続パッド112b端縁に相当する基板端縁に、内壁全体に導体膜を備えた凹状切欠き140(140a、140b)を形成し、凹状切欠き140b内壁の導体膜と上面側接続パッド112bとを導通させる一方で、対応する基板下面側にも凹状切欠き140b内壁の導体膜と導通する下側の接続パッド112b’を形成する。このため、下側の接続パッド112b’とパッケージ内底面のパッド121bとを導電性接着剤122により接続することにより、一回の接着剤塗布により上側の接続パッド112bとパッド121bとの電気的導通を確保することができる。
上記の如き凹状切欠きの形成に当たっては、図11(d)に示す如く、大面積の圧電基板ウェハ130に対するマスク(レジスト膜)を用いた化学エッチングにより水晶基板個片101の表裏両面側から小凹所の掘削を行い、両小凹所を連通させることにより貫通穴140Hを形成してから、貫通穴内壁に導電膜を塗布し、ダイシング溝131に沿って分割する手順が行われる。しかし、例えば縦横寸法が1.3×0.9mm以下の超小型水晶振動素子上の接続パッド112b内に形成される個々の貫通穴140Hの径(幅)はμmオーダーの微小寸法とならざるを得ないため、表裏両面側から形成される両小凹所間が完全に連通しないエッチング不良が多発し易くなる。一方、凹状切欠き140を構成する貫通穴140Hは、面積が極限された接続パッド112bの狭い面積内に形成される以上、その大径化に限界がある。特に、極めて小面積の圧電基板の一端縁に沿って2つの貫通穴を形成すること自体が困難である。
従って、大面積の圧電基板ウェハ130上に凹状切欠き140を構成する貫通穴140Hを化学的エッチングにより形成する際の貫通穴形成不良に起因した超小型水晶振動素子の歩留まりの低下という問題の解決が従来から強く望まれていた。
【0009】
なお、凹状切欠き140を水晶基板101の端縁に2個設ける理由は、一方の凹状切欠き140bについては、上述の如く、下側の接続パッド112b上側の接続パッド112bとパッケージ側のパッド121bとの導通を確保する為であり、他方の凹状切欠き140aについては、下側の接続パッド112aと導通した上側の接続パッド112a’を水晶基板の上面に設けるためである。この結果、ウェハ130上に形成された個々の水晶振動素子についての共振周波数等の特性を測定する際に、水晶基板の上面に配置された2つの接続パッド112b、112a’、或いは、下面側の2つの接続パッド112a、112b’に対して、測定器のプローブピンを同一方向から当接させた測定が可能となる。これは、基板上の同一面上に位置する2つの接続パッドにプローブピンを当接させた測定を行うことが最も効率的だからである。
また、水晶振動素子100をパッケージ内に搭載する際の方向としては、図11(a)のように凹陥部側を常に下向きにする訳ではなく、凹陥部側を上向きにした搭載も行われる。このため、各接続パッドを基板の両面に2個ずつ配置しておけば、一つの水晶振動素子100を任意の向きにて、パッケージ内へ搭載することができる。
【0010】
[第3の従来例]
次に、複数の圧電基板を縦横に配列して連結した構成を備えたシート状の圧電基板ウェハ上の各個片領域に凹陥部を化学エッチングによって形成した際に、全ての凹陥部底部の超薄肉振動部の肉厚を均一化することは困難である。このため、従来は、予め各凹陥部毎にその深さ、換言すれば各凹陥部内の振動部の肉厚のばらつきを測定しておき、規定肉厚に達しない振動部の肉厚を微調整するために各凹陥部毎に個別にエッチング液を用いた調整作業を行っていた。
図12(a)及び(b)は、従来の凹陥部毎の微調整方法を説明するための図であり、圧電基板ウェハ130の一方の主面上に図示しないマスク(レジスト膜)を被覆した状態でマスクの各開口部から露出したウェハ面だけを一括してエッチングすることにより、凹陥部102を一括形成する。このようなエッチングによる一括作業では、各凹陥部102の底部に位置する振動部103の肉厚は一定とはならないため、各凹陥部102内の振動部103の肉厚を予め測定しておき、次いで、符号150で示した如き碁盤目状の構成を備えたガイドマスクをウェハ130の凹陥部側面に密着配置した状態で、個別エッチングを実施する。即ち、ガイドマスク150は、例えば樹脂薄板に所定のピッチにて矩形、その他の形状の開口152を形成した構成を備え、碁盤目状に交差した仕切り部151間に、凹陥部102の平面形状と整合した形状の開口152が複数形成されている。
このガイドマスク150を、図12(b)のように仕切り部151を凹陥部102の周縁の平面上に密着配置した状態でウェハ130上に固定する。この状態で、最大肉厚を有する振動部を備えた凹陥部から肉厚が薄い振動部を備えた凹陥部の順に、予め計算された所要の時間差をもって、順次各凹陥部内にエッチング液155を適量ずつ充填してゆく。そして、全ての振動部の肉厚が一定値にまでエッチングされた時点で一括してウェハごと洗浄を行い、エッチング液を除去する。
【0011】
ところで、上記ガイドマスク150が有する開口152の寸法は、機械加工技術上の制限から微小化に限界があり、図12(b)に示した如き寸法が限界である。従って、例えば図12(c)に示した如く、更に微小サイズの圧電基板個片から成るウェハ130に形成した微小サイズの凹陥部102の振動部の肉厚を個別エッチングによって微調整する為には、大きいサイズの凹陥部用に製作したガイドマスク150をそのまま使用せざるを得なくなる。或いは、エッチング液を凹陥部内に確実に滴下する為には、最低限図12(b)に示した程度の大きさの開口152が必要となる。すると、図示した如く、仕切り部151の間の開口152内に凹陥部102とダイシング溝131が露出した状態となる。このような状態で、開口152内にエッチング液を充填した場合には、凹陥部内からはみ出したエッチング液がダイシング溝131内を浸透してエッチングしたくない部分までエッチングしてしまい当該部分の強度低下を来す。更に、(d)に示すように、エッチング液155の表面張力によって、凹陥部102内に充填されたエッチング液が凹陥部内底部に密着せずに、未充填空所156を形成する虞があり、この場合には個別エッチングが不良となる。
このようにウェハ上に一括形成した凹陥部の深さのばらつきを解消するために、凹陥部毎に個別にエッチング行おうとした場合には、使用するガイドマスク150の開口寸法についての制限から、エッチング不要箇所に対するエッチングが行われたり、或いは振動部に対するエッチングが不良となる虞がある。
【0012】
[第4の従来例]
次に、図13は、圧電基板の一例としてのATカット水晶基板の構成を示す断面図である。この水晶基板101は、異方性を有した圧電結晶材料としてのATカット水晶から成り、水晶基板101の両主面には夫々点対称形状の凹陥部102a、102bが化学エッチングにより形成されている。即ち、水晶基板101は、矩形平板状の基板本体の両主面上にマスク(レジスト)160を被覆した状態で、凹陥部102a、102bをエッチングにより形成することにより、各凹陥部102a、102bの共通する内底面に超薄肉の振動部103を位置させると共に、振動部103の外周縁を厚肉の環状部104にて一体的に保持した構成を備えている。z軸方向とx軸方向へのエッチングの速度差により、各環状部104のz軸方向に位置する2つの辺の内壁104a、104bは、x軸方向側に位置する他の内壁よりも緩やかな傾斜面となっている。しかも、両内壁104a、104bの傾斜角度は異なっている。
しかし、このように同一開口形状を備えたマスク160を、水晶基板101の両面の同一位置に整合させた状態で被覆してエッチングを行うと、図示の如く各凹陥部102a、102bのz軸方向側の各内壁104a、104bが対称の位置関係となり、各凹陥部102a、102bの内底面の端縁102a’、102b’の位置が合致しない。このように各凹陥部102a、102bの内底面の端縁102a’、102b’の位置がz軸方向にずれているため、両内底面が合致せず、振動部103の面積が狭くなり、有効薄肉領域(有効振動領域)が狭くなる。このため、この水晶基板に電極等を形成することによって製造された水晶振動素子の特性が低下するという問題があった。特に、圧電基板の小型化が進行すると、このような不具合が深刻化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−55635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、第一の従来例に対応する第一の課題は、異方性を有した圧電結晶材料から成る圧電基板面にエッチングによって凹陥部を形成することによって振動部を形成した超小型の圧電基板を、大面積の圧電基板ウェハを用いたバッチ処理により量産する場合に、凹陥部を包囲する環状部の肉厚を十分に確保して分割時のひび割れを防止することにある。また、環状部内壁に発生するエッチング残渣により形成される急峻な傾斜面を避けた環状部内壁を経由して導電パターンを配線することによって断線を防止することを他の課題とする。更に、パッケージ内に圧電振動素子を片持ち状態で支持した場合に、片持ち支持部から振動部までの距離を可能な限り離間させることにより、水晶振動素子の自重に起因したストレスが振動部に加わることを防止することを他の課題とする。このように、第一の課題は、超薄肉の振動部と、それを包囲する厚肉の環状部を備えた圧電基板において、圧電基板の超小型化に対応した最適の形状を実現することにある。
第二の従来例に対応する第二の課題は、圧電基板個片をシート状に連結した大面積の圧電基板ウェハ上に、各基板個片の表裏両面に夫々接続パッドを2個ずつ形成するための電気的接続手段としての貫通穴(凹状切欠き)を化学的エッチングにより形成する際に、貫通穴の開口寸法の大型化に制約があることに起因して発生する貫通穴形成不良と、それに起因した生産性の低下を防止することにある。
第三の従来例に対応する第三の課題は、圧電基板ウェハ上に複数の凹陥部を一括形成した後に、個々の凹陥部内の振動部の肉厚を時間差によるエッチングにより個別調整する場合に発生する種々の不具合を解決するために、凹陥部内にエッチング液を充填する調整作業に代えて、平坦面側からエッチングを行うことにより、振動部の微調整を行うようにすることにある。
第四の従来例に対応する第四の課題は、異方性結晶材料から成る圧電基板の両主面に夫々化学エッチングにより凹陥部を形成することによって薄肉の振動部を形成した圧電基板において、振動部を介して対向配置された両凹陥部の位置が一方の結晶軸方向にずれていることにより、有効な振動領域が狭く形成される不具合を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に係る圧電基板は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、異方性を有した圧電結晶から成るものにおいて、前記環状部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えており、前記圧電基板の外形寸法は、前記他の結晶軸方向の基板長さよりも、前記一方の結晶軸方向の基板長さが長いことを特徴とする。
異方性圧電材料を、直交する2つの結晶軸に沿った平板状の圧電基板に加工した場合、この圧電基板面に化学エッチングにより凹陥部を形成すると、一方の結晶軸方向へのエッチング速度が他方のエッチング速度よりも速くなるため、凹陥部を構成する環状部の内壁のうち、エッチング速度が遅い結晶軸方向側の内壁が緩やかな傾斜面(緩斜面)となる。本発明では、環状部の内壁のうちこのような緩斜面を備えた一辺を延長形成して張り出し部としたので、大面積の圧電基板ウェハを用いたバッチ処理により圧電基板(圧電振動素子)を量産する際に、同一面積でありながら、個片間を区画するダイシング溝等の分割溝と凹陥部との間の幅を十分に確保することができ、その結果環状部の肉厚を大きく確保できる。従って、分割溝に沿った切断時に環状部にひび割れが発生することが無くなる。この結果、超薄肉の振動部と、それを包囲する厚肉の環状部を備えた圧電基板において、圧電基板の超小型化に対応した最適の形状を実現することができる。
請求項2に係る圧電基板は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成したATカット水晶から成る圧電基板において、前記ATカット水晶から成る圧電基板の外形寸法は、z’軸方向寸法が、x軸方向寸法よりも長いことを特徴とする。
前記圧電基板として、ATカット水晶基板を採用した場合には、z軸方向に沿った基板長さをx軸方向に沿った基板長さよりも長く構成することが好ましい。
【0016】
請求項3に係る圧電振動素子は、請求項1又は2に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備え、を備え、前記凹陥部側の励振電極から延びるリード電極は前記緩やかな傾斜角度を備えた環状部内壁を経て引き出されることを特徴とする。
これによれば、環状部内壁に発生するエッチング残渣により形成される急峻な傾斜面を避けた環状部内壁を経由してリード電極(導電パターン)を配線することによって断線を防止することができる。
請求項4に係る圧電振動子は、請求項3に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の長手方向一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする。
これによれば、パッケージ内に圧電振動素子を片持ち状態で支持した場合に、片持ち支持部から振動部までの距離を可能な限り離間させることにより、水晶振動素子の自重に起因したストレスが振動部に加わることを防止できる。
請求項5に係る表面実装型の圧電発振器は、請求項4に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る圧電基板は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、前記環状部の一辺を延長形成した張り出し部を備えたものにおいて、前記張り出し部の終端縁に、圧電基板の表裏両面側に貫通する少なくとも一つ凹状切欠きを備えたことを特徴とする。
圧電基板の張り出し部の同一面上に、表裏2つの励振電極と導通接続された接続パッドを配置する場合には、導電性接着剤を一回塗布するだけで、パッケージ内底面のパッドとの接続が可能となり、パッケージの外周壁の大型化を防止できる。一方、前記張り出し部の表裏両面側に夫々2つの接続パッドを配置した場合には、圧電振動素子をパッケージ内に搭載する際の表裏の方向性を任意に選択することができるため、張り出し部の終端縁に2つの凹状切欠きを配置して表裏両面に夫々2つずつ配置した接続パッド同士を導通させる必要がある。この際、従来のように、張り出し部の終端縁の幅内に2つの凹状切欠きを配置するとすれば、個々の凹状切欠きの幅が極小となり、圧電基板ウェハに対するエッチングによって表裏両面側に貫通した凹状切欠き(貫通穴)を形成できなくなる虞が高まる。そこで、本発明では、ウェハ上において隣接し合う基板個片領域に跨った長穴状の貫通穴を形成することにより、エッチング不良による凹状切欠きの形成不良が発生することを防止できる。
請求項7に係る圧電基板は、請求項6において、前記凹状切欠きは、前記張り出し部の終端縁の両端角部に夫々一個ずつ配置されていることを特徴とする。
このように、圧電基板ウェハ上における一つの圧電基板の張り出し部の終端縁の両端角部に対して隣接する領域に跨った前記貫通穴を形成することが有効である。
請求項8に係る圧電振動素子は、請求項6、又は7の何れか一項に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から前記張り出し部の終端縁に夫々延びるリード電極と、を備え、何れか一方のリード電極は前記凹状切欠き内を経て反対側面に引き回されて該反対側面に形成した接続パッドと導通していることを特徴とする。
張り出し部の同一面上に2つの接続パッドを並置したり、張り出し部の表裏両面に夫々2つの接続パッドを並置することができる。
【0018】
請求項9に係る圧電振動子は、請求項8に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の張り出し部の同一面上に並置された2つの接続パッドを、表面実装用のパッケージ内の各パッドと夫々導電性接着剤にて接着保持したことを特徴とする。
請求項10に係る表面実装型圧電発振器は、請求項9に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
請求項11に係る圧電基板ウェハの構造は、請求項6乃至8に記載の圧電基板を複数個シート状に連結した圧電基板ウェハであって、前記凹状切欠きは、ウェハ上において隣接し合う圧電基板個片間に跨る貫通穴を形成することにより両圧電基板個片上に同時に形成されることを特徴とする。
ウェハ上において隣接し合う個片領域間に跨るように貫通穴を形成する際には、貫通穴の長さを大きくできる。この結果、圧電基板上の表裏両面側から夫々同時に小凹所をエッチング形成する場合に、確実に両小凹所間を連通させて貫通穴を完成することができることとなる。或いは、一つの圧電基板の端縁に設ける凹状切欠きは2個である必要はなく、張り出し部の終端縁の幅内部に設けた一つの長穴であっても良い。この場合には、ウェハ上の圧電基板個片の張り出し部終端縁の幅内に長穴状の貫通穴を形成すればよい。
請求項12に係る圧電基板ウェハは、請求項6又は7に記載の圧電基板を複数個シート状に連結した圧電基板ウェハであって、隣接し合う前記圧電基板個片間には、未使用領域が配置されており、前記凹状切欠きは、一つの圧電基板個片と隣接する未使用領域間に跨る貫通穴を形成することにより該圧電基板個片上に形成されることを特徴とする。
圧電基板個片の両隣側に圧電基板個片を直接配置すると、励振電極、リード電極、及び接続パッドを形成してから、プローブピンを各接続パッド上に当接して当該圧電振動素子個片の特性の測定を行う場合に、プローブピンの当接圧が共振周波数の変動をもたらし、正確な測定が不可能となる。そこで、圧電基板の両隣位置に未使用領域(ダミー領域)を配置し、当該未使用領域上に接続パッドを跨って形成する。そして、プローブピンを未使用領域上の接続パッドに対して当接して測定を行えば、プローブピンの当接圧力による悪影響が解消される。特に、圧電基板個片と未使用領域との間の基板面に分割溝を形成しておけば、当接圧力による悪影響がさらに減殺される。
【0019】
請求項13に係る圧電基板は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板において、前記凹陥部の反対側の基板面に振動部の板厚微調整加工部を備えたことを特徴とする。
圧電ウェハの一方の主面上に複数の凹陥部を所定のピッチにてエッチング形成した後で、凹陥部内の振動部の肉厚を微調整するために、ガイドマスクを基板面上に添設した状態で、個々の凹陥部内にエッチング液を充填することが従来から行われているが、凹陥部のサイズが超小型化すると、エッチング液が個片間に形成した分割溝を介して他の部位に浸透してエッチング不要箇所をエッチングすることによる基板強度の低下等の不具合が発生する。
本発明では、上記ガイドマスクをウェハの平坦面側に当接して、ガイドマスクの開口内にエッチング液を個別充填して振動部肉厚を微調整するようにしたので、上記従来の不具合が解消され、凹陥部サイズが超小型化した圧電基板における振動部の肉厚調整を確実化することができる。
請求項14に係る圧電振動素子は、請求項13に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備えたことを特徴とする。
請求項15に係る圧電振動子は、請求項14に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする。
請求項16に係る表面実装型の圧電発振器は、請求項15に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
請求項17に係る圧電基板ウェハは、請求項13に記載の圧電基板を複数個シート状に連結したことを特徴とする。
【0020】
請求項18に係る圧電基板ウェハは、請求項17において、前記圧電基板ウェハは、圧電基板個片間に2本の平行な分割溝を介してデッドスペースを介在させた構成を備えていることを特徴とする。
圧電基板個片間に十分なデッドスペースとなるダミー領域を配置することにより、ウェハの平坦面側からの肉厚調整作業に際してのエッチング液による悪影響を回避できる。
請求項19に係る圧電基板ウェハの製造方法は、請求項17又は18に記載の圧電基板ウェハ上の各圧電基板個片の凹陥部と反対側面に形成した振動部の板厚微調整加工部は、凹陥部よりも大きい開口部を複数個配列した碁盤目状のガイドマスクを圧電基板ウェハの該反対側面に当接した状態で、該ガイドマスクの各開口部内にエッチング液を充填することによって加工形成されることを特徴とする。
請求項20に係る圧電基板は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、両主面上に夫々凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、異方性を有した圧電結晶から成るものにおいて、前記各凹陥部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えており、前記各凹陥部の各内底面の端縁のうち前記一方の結晶軸方向側の端縁同士の位置が合致するように構成されていることを特徴とする。
異方性圧電結晶材料から成る圧電基板の表裏両面から同一形状のマスクを用いてエッチングによって凹陥部を形成する場合、表裏の各マスクの開口部の位置が合致していると、各凹陥部は点対称形状となり、各凹陥部の内底面の端縁(特に、エッチング速度が遅い軸方向側の端縁)同士の位置関係が一致しない。このため、薄肉の振動部の面積が狭くなる。
本発明では、表裏のマスクの開口部の端縁(特に、エッチング速度が遅い軸方向側の端縁)の位置を予め所定にずらしておくことにより、エッチング後に両凹陥部の端縁同士の位置が合致するようにした。このため、振動部の面積を最大にすることができ、信頼性の高い圧電基板、圧電振動子等を得ることができる。
【0021】
請求項21に係る圧電基板は、請求項20において、前記圧電基板がATカット水晶であることを特徴とする。
請求項22に係る圧電振動素子は、請求項20又は21に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備えたことを特徴とする。
請求項23に係る圧電振動子は、請求項22に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の長手方向一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする。
請求項24に係る表面自走型の圧電発振器は、請求項23に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
請求項25に係る圧電基板の製造方法は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、両主面上に夫々凹陥部を形成した構成の圧電基板であって異方性を有した圧電結晶から成り、且つ前記各凹陥部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えた圧電基板の製造方法において、平板状の圧電基板の両主面に対して夫々前記各凹陥部を掘削形成するためのマスクを被覆するマスク形成工程と、前記各マスクを被覆した圧電基板に対してエッチングを行うことにより、各マスクの開口内に露出した圧電基板の両主面に夫々凹陥部を形成する凹陥部形成工程と、から成り、前記各マスクの位置を、前記一方の結晶軸方向にずらすことにより、前記各凹陥部の各内底面の端縁同士を合致させたことを特徴とする。
請求項26に係る圧電基板の製造方法は、請求項25において、前記圧電基板は、複数の圧電基板個片をシート状に連結した圧電基板ウェハであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように構成したので、請求項1乃至5に対応する第一の本発明によれば、異方性圧電結晶材料から成る圧電基板面にエッチングによって凹陥部を形成することによって振動部を形成した超小型の圧電基板を、大面積の圧電基板ウェハを用いたバッチ処理により量産する場合に、凹陥部を包囲する環状部の肉厚を十分に確保して分割時のひび割れを防止することができる。また、環状部内壁により形成される急峻な傾斜面を避けた緩斜面を経由して導電パターンを配線することによって断線を防止することができる。更に、パッケージ内に圧電振動素子を片持ち状態で支持した場合に、片持ち支持部から振動部までの距離を可能な限り離間させることにより、水晶振動素子の自重に起因したストレスが振動部に加わることを防止することを他の課題とする。このように、第一の課題は、超薄肉の振動部と、それを包囲する厚肉の環状部を備えた圧電基板において、圧電基板の超小型化に対応した最適の形状を実現することにある。
請求項6乃至12に対応する第二の本発明によれば、圧電基板ウェハ上に、各基板個片の表裏両面に夫々接続パッドを2個ずつ形成するための電気的接続手段としての貫通穴(凹状切欠き)を化学的エッチングにより形成する際に、貫通穴の開口寸法の大型化に制約があることに起因して発生する貫通穴形成不良と、それに起因した生産性の低下を防止することができる。
請求項13乃至19に対応する第三の本発明によれば、圧電基板ウェハ上に複数の凹陥部を一括形成した後に、個々の凹陥部内の振動部の肉厚を時間差によるエッチングにより個別調整する場合に発生する種々の不具合を解決するために、凹陥部内にエッチング液を充填する調整作業に代えて、平坦面側からエッチングを行うことにより、各振動部肉厚の微調整を行うことができる。
請求項20乃至26に対応する第四の発明によれば、異方性結晶材料から成る圧電基板の両主面に夫々化学エッチングにより凹陥部を形成することによって薄肉の振動部を形成した圧電基板において、振動部を介して対向配置された両凹陥部の位置が一方の結晶軸方向にずれていることにより、有効な振動領域が狭く形成される不具合を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係る圧電振動素子の一例としてのATカット水晶から成る水晶振動素子の外観斜視図、平面図、及びウェハの要部構成図。
【図2】図1の水晶振動素子をパッケージ内に気密収納した水晶振動子の断面図。
【図3】本発明の水晶振動素子を表面実装型の水晶発振器に適用した例を示す図。
【図4】(a)(b)及び(c)は第2の従来例に対応する本発明の一実施形態に係る水晶振動素子(水晶基板)の斜視図、パッケージに搭載した状態の断面図、及びウェハの構成説明図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る圧電基板ウェハの要部構成を示す平面図。
【図6】(a)及び(b)は、他の実施形態に係る圧電基板ウェハの要部構成図、及び水晶振動素子個片の斜視図。
【図7】(a)及び(b)は第3の従来例に対応する実施形態の説明図、(c)は板厚微調整加工部の説明図。
【図8】(a)は第4の従来例に対応する本発明の実施形態に係る圧電基板の断面図、(b)は圧電振動子の断面図。
【図9】(a)及び(b)は従来の圧電振動素子の一例としてのATカット水晶振動素子の構成を示す斜視図、及び断面図、(c)は水晶振動素子を表面実装用のパッケージ内にマウントした状態を示す断面図。
【図10】図9の圧電基板を形成する際に使用する圧電基板ウェハの要部構成図。
【図11】(a)及び(b)は他の従来例に係る表面実装型水晶振動子の断面図、及びA−A断面図、(c)は張り出し部終端縁に設けた凹状切欠きの構成を示す斜視図、(d)は圧電ウェハの要部構成図。
【図12】(a)(b)、及び(c)は、従来の凹陥部毎の微調整方法を説明するための図、(d)は従来の微調整方法の欠点を説明する為の図。
【図13】両面に凹陥部を備えた従来の圧電基板の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
[第1の従来例に対応する実施の形態]
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る圧電振動素子の一例としてのATカット水晶から成る水晶振動素子1の外観斜視図、及び平面図である。
この水晶振動素子1は、異方性を有した圧電結晶材料としてのATカット水晶から成る水晶基板2と、水晶基板2の両主面に夫々形成した励振電極10a、10b、及び各励振電極10a、10bから夫々延びるリード電極11a、11bと、各リード電極端部の接続パッド12a、12bと、を備えている。
水晶基板2は、z軸方向に長尺な矩形平板状の基板本体の一方の主面上に凹陥部3をエッチングにより形成することにより、凹陥部3の内底面に超薄肉の振動部4を位置させると共に、振動部4の外周縁を厚肉の環状部5にて一体的に保持した構成を備えている。環状部5のz軸方向に位置する一辺5Aは、z軸方向へ所定長延長形成されて平板状の張り出し部6となっている。張り出し部6の一面上には、各リード電極11a、11bが引き出され、各リード電極11a、11bの端部には接続パッド12a、12bが位置している。
この実施形態に係る水晶振動素子1が従来例に係る水晶振動素子と異なる一つの特徴的な点は、水晶基板2をz軸方向に長尺なz軸ロングな長方形状とし、その結果、環状部5の幅と強度を十分に大きく確保した点にある。従って、最も傾斜角度が緩やかな緩斜面5aは張り出し部6側に位置することとなる。また、振動部4の凹陥部側内底面に形成される励振電極10aから引き出されるリード電極11aを最も緩やかな緩斜面5aに沿って配線することが可能となる。更に、パッケージ内に水晶振動素子を片持ち支持した場合における支持部と振動部との間の距離を可能な限り短くすることができる。
【0025】
水晶基板2の主面上に凹陥部3を形成する際には、凹陥部3に相当する箇所のみを露出させた状態で他の箇所をマスクにて隠蔽し、所要のエッチャントを用いてエッチングを行うが、この際に、凹陥部3の4つの内壁のうち、z軸方向に位置する各内壁5a、5bには、x軸方向に位置する各内壁よりも緩やかな緩斜面がエッチング残渣として形成される。本実施形態では、エッチングに際してのこの現象を利用して、凹陥部3のz軸方向に張り出し部6が位置するように水晶基板2をレイアウトした。このため、ウェハ30上にダイシング溝等の分割溝31を介して各水晶基板個片を配列する場合には、図1(c)のように横長の状態となる。この際、個々の水晶基板の面積は、図10に示した従来の水晶基板と同等である。
即ち、本発明においては、水晶基板自体の面積、形状を図10に示した従来例と同等に設定する一方で、水晶基板の長手方向がz軸方向と一致するように構成している。従って、凹陥部3の3つの端縁と各分割溝31との間の間隔wを十分に大きく確保することが可能となり、環状部5の肉厚をより厚くすることができるため、分割溝31に沿った切断分割時にひび割れが発生することを防止できることとなる。
また、リード電極11a、11b間の間隔、及び接続パッド12a、12b間の間隔が夫々近すぎる場合には、電気的な干渉が発生して水晶振動素子の特性に悪影響を及ぼす虞があるため、凹陥部側のリード電極11aを緩斜面5aに沿って形成した場合は、平坦面側のリード電極11bはできる限りリード電極11aから離間する経路にて凹陥部側面に配線する。
凹陥部側のリード電極11aと接続された接続パッド12aについては張り出し部6の幅方向(x軸方向)一端縁寄りに配置する一方で、平坦面側から凹陥部側へ引き回されたリード電極11bについては幅方向他端寄りに偏位させることにより他の接続パッド12bを接続パッド12aからできるだけ離間させる。
【0026】
次に、図2は図1に示した水晶振動素子1を表面実装用のパッケージ20内に搭載して気密収納した状態を示す断面図である。このパッケージ20は、凹所を備えたパッケージ本体21と、パッケージ本体21の凹所の開口を閉止する金属蓋26と、を備えている。パッケージ本体21は、外底面に形成した外部電極22と、凹所内底面に形成され且つ外部電極22と導通された内部電極23と、を備えており、内部電極23上に導電性接着剤25を介して接続パッド12を電気的機械的に接続することにより水晶振動素子1を片持ち状態で支持する。
この際、接続パッド12と内部電極23との接続部(支持部)と、振動部4とは、凹陥部3の内壁のうち最も傾斜角度の緩やかな緩斜面5aを介して連設された構成となっている。即ち、緩やかな傾斜を有した緩斜面5aを利用して接着剤による接続部を振動部4から遠ざけ、片持ち支持構造により振動部に加わる応力を緩和し、振動部に歪みが発生しにくくしている。
【0027】
次に、図3は本発明の水晶振動素子1を表面実装型の水晶発振器に適用した例であり、この水晶発振器40は、例えば水晶振動素子1をパッケージ本体21内に設けた段差上の内部電極23上に導電性接着剤25により接続パッド12を固定して片持ち支持すると共に、パッケージ本体21の内底面上に設けたパッド上に発振回路等を構成する回路部品41を搭載した上で、パッケージ本体21の凹所を金属蓋26により封止した構成を備えている。
なお、上記実施形態は、異方性圧電結晶材料としてATカット水晶を例示したが、これは一例に過ぎず、本発明(他の実施形態についても同様)はあらゆる異方性圧電結晶材料に適用可能である。即ち、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成を備え、且つ異方性圧電結晶材料から成る圧電基板に対して本発明の圧電基板構造を適用することが可能であり、この場合、圧電基板の外形寸法を、環状部内壁のうち傾斜角度が最も小さい緩斜面が存在する方向に沿った基板長さを、該緩斜面が存在する方向と直交する方向に沿った基板長さよりも長く設定する。
このように構成することにより、環状部の厚肉化、リード電極の断線の防止、及びパッケージ内に片持ち状態でマウントした場合における振動部での歪み発生防止、といった効果を発揮することが可能となる。
【0028】
[第2の従来例に対応する実施の形態]
図4(a)(b)及び(c)は第2の従来例に対応する本発明の一実施形態に係る水晶振動素子(水晶基板)の斜視図、パッケージに搭載した状態の断面図、及びウェハの構成説明図である。なお、本実施形態でも圧電材料として水晶基板を用いた例を示しているが、これは一例に過ぎず、本発明はあらゆるタイプの圧電材料に適用可能である。
この水晶振動素子1は、圧電結晶材料としてのATカット水晶から成る水晶基板2と、水晶基板2の両主面に夫々形成した励振電極10a、10b、及び各励振電極10a、10bから夫々延びるリード電極11a、11bと、各リード電極端部の接続パッド12a、12a’、12b、12b’と、を備えている。
水晶基板2は、薄肉の振動部4と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部5と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部3を形成した構成の圧電基板であって、環状部5の一辺5Aを延長形成した張り出し部6を備えている。この張り出し部6の終端縁6aには、水晶基板2の表裏両面側に貫通する少なくとも一つの凹状切欠き7a、7bを備えている。この例では、終端縁6aの両端部、即ち張り出し部6の両角部に凹状切欠き7a、7bを備えており、各凹状切欠き7a、7bの内壁には各接続パッド12a、12a’、12b、12b’と導通する導体膜が形成されている。
【0029】
凹陥部3側に設けた励振電極10aから延びるリード電極11aと接続された接続パッド12aは、凹状切欠き7aの内壁の導体膜を介して平坦面側に設けた接続パッド12a’と導通する。一方、基板の平坦面側に設けた励振電極10bから延びるリード電極11bと接続された接続パッド12bは、凹状切欠き7bの内壁の導体膜を介して凹陥部側に設けた接続パッド12b’と導通する。
なお、凹状切欠きを一つだけ設け、いずれか一方のリード電極のみを反対側面に引き回して、基板の反対側面に第2の接続パッドを配置するようにしてもよい。
このように本実施形態では、圧電基板2の振動部4の両面に夫々対向形成した励振電極10a、10bから張り出し部6の終端縁6aに夫々延びるリード電極11a、11bのうちの何れか一方を、凹状切欠き内の導体膜を経て反対側面に引き回し、該反対側面に接続パッドを配置しているので、図4(b)のようにパッケージ20内に凹陥部側を下向きにして水晶振動素子1を搭載する際に、凹陥部側の張り出し部6上に2つの接続パッド12a、12b’が位置していることとなり、夫々導電性接着剤を一回塗布するだけでパッケージ側のパッド23a、23bとの接続が可能となり、その結果、基板の平坦面側に導電性接着剤が突出することがなくなる。このため、パッケージ20の外周壁の高さを導電性接着剤の突出量にあわせて高くする必要が無くなり、パッケージの低背化を実現できる。
また、張り出し部6の両面側に2個ずつの接続パッド12a、12b’と、接続パッド12b、12b’を夫々配置することにより、水晶振動素子1を任意の方向に向けた状態でパッケージ内に搭載することができる。
【0030】
次に、図4(c)に基づいて、本発明の圧電基板2、或いは水晶振動素子1を大面積の水晶基板ウェハ(圧電基板ウェハ)30を用いたバッチ処理により量産する手順を説明する。(なお、参考のため、図4(c)の一部にのみ導体パターンを形成した状態を示した。)即ち、本実施形態では、分割溝31を縦横に形成することによって分割溝間に形成される矩形のスペースを水晶基板個片とし、所要のエッチャントとマスクを用いた化学エッチング方法により、凹陥部3と、凹状切欠き7a、7bを構成する貫通穴7Hを形成する。このウェハの特徴的な構成は、凹状切欠きを構成する貫通穴7Hを、左右に隣接し合う2つの基板個片に跨って形成することにより、張り出し部6の終端縁6aの両端角部に凹状切欠き7a、7bが夫々位置するようにした点にある。
なお、貫通穴7Hは、従来例の説明において言及した如く、基板の両面側の同一箇所から小凹所を同時に形成し、両小凹所を貫通させることにより形成される。そして、小凹所の径が過小な場合には、貫通不良が生じ易い不具合を有する。
【0031】
このように本実施形態においては、凹状切欠き7a、7bは、ウェハ30上において隣接し合う水晶基板個片間に跨る貫通穴7Hを形成することにより両水晶基板個片上に同時に形成される。この際、貫通穴7Hは、凹状切欠きを2個連結した大きな寸法を有するため、基板の表裏両面側の対応位置に夫々小凹所を同時にエッチング形成することにより、両小凹所を連通させた貫通穴を形成する際に、貫通不良が発生する虞が大幅に低減する。
その後、所要のマスクを用いた蒸着、スパッタリング等の任意の方法により、各基板個片の表裏に励振電極10a、10b、リード電極11a、11b、及び接続パッド12a、12a’、12b、12b’を夫々形成すると共に、各凹状切欠き7a、7b内には導体膜を形成する。
これらの導体パターンの形成後に、平坦面側の接続パッド12a’、12b、或いは凹陥部側の接続パッド12a、12b’に対して測定装置のプローブピンを当接させることにより、各水晶振動素子個片の共振周波数等の特性を測定する作業が行われ、測定結果に基づいて個片毎の調整作業を行った後で、分割溝31に沿った切断が行われる。
【0032】
ところで、水晶基板ウェハ30上の各水晶基板個片上に励振電極等の導体パターンを形成して水晶振動素子個片を形成した後で、プローブピンを用いた水晶振動素子個片毎の特性を測定する作業が行われるが、この際、図4(c)のように個片同士が直近位置にて直接隣接し合っていると、測定対象となる一つの水晶振動素子個片に設けられた2つの接続パッド12a、12b’に対するプローブピンの当接を左右の分割溝31の内側にて行うことになる。しかし、プローブピンを当接する位置と振動部4との距離は、0.5mm以下の至近距離であるため、プローブピンが各接続パッドを介して基板面に当接する僅かな圧力であっても、振動部4の共振周波数に影響を及ぼす虞があり、正確な測定が困難になる要因となっている。
図5はこのような不具合を解消するための実施形態に係る圧電基板ウェハの要部構成を示す平面図である。
この圧電基板ウェハ30の特徴的な構成は、水晶振動素子1(圧電基板2)の左右両側に、分割溝31を介して個片を構成しない領域としてのデッドスペース50を配置し、当該デッドスペース50上には、水晶振動素子個片上に設けた接続パッド12a、12b’、又は12a’、12bと夫々導通するダミー接続パッド51を形成するようにした点にある。各ダミー接続パッド51は、貫通孔7H(凹状切欠き7a、7b)内面の導体膜を介して隣接する位置にある表裏両面側の各接続パッドと導通している。
【0033】
以上の構成を備えた圧電基板ウェハ30上の各振動素子個片1の特性測定を行う場合には、図示しない測定装置のプローブピンを接続パッド12a、12b’、又は12a’、12b上に直接当接させることなく、分割溝31を介して各接続パッドと隣接配置されたダミー接続パッド51に対してプローブピンを当接させた状態での測定を実施することができる。
この場合、ダミー接続パッド51に対してプローブピンを当接させることによって発生した応力の伝達は、分割溝31により遮断され、水晶振動素子個片1の振動部4に及ぼす影響が減殺され、正確な測定が可能となる。
なお、図示の例では、デッドスペース50の面積を隣接する圧電基板2と同等に図示したが、これは一例に過ぎず、デッドスペース50の面積を更に狭くしてもよい。
なお、図4、図5の実施形態では、夫々貫通穴7Hを隣接し合う個片領域間、或いは個片領域とデッドスペース間に跨って形成したため、一つの圧電基板2の張り出し部6の終端縁6aの両端部に一カ所ずつ、合計2個の凹状切欠き7a、7bが形成されたが、凹状切欠きの個数は1個であってもよい。
【0034】
図6(a)及び(b)は、他の実施形態に係る圧電基板ウェハの要部構成図、及び水晶振動素子個片の斜視図である。この圧電基板ウェハ30は、圧電基板個片2の張り出し部6の終端縁6aに沿って長穴状の貫通穴7Hを貫通形成した構成を備えるとともに、貫通穴7Hの内壁に分割導体膜7Cを形成することによって表裏両面側の接続パッド12a、12a’間、及び12b、12b’間を夫々導通させている。
励振電極10a、10b、リード電極11a、11b、接続パッド12a、12a’12b、12b’、及び分割導体膜7Cを夫々形成し、各接続パッド、或いはダミー接続パッド51(図5参照)を利用したプローブピンによる測定を行った後で、分割溝31に沿って切断分割することにより、図6(b)の如き個片が得られる。この際、貫通穴7Hに相当する部分は、分割溝31の軌跡に沿った切断により、凹状切欠き7となる。凹状切欠き7内壁の各分割導体膜7Cは互いに分離している。
これによれば、各個片毎に一個の貫通穴を形成すればよいので、エッチング時に使用するマスクの構成が簡略化され、製造コストが低減し、量産性が高まる。
なお、上記の如き構成を備えた圧電基板の振動部の両面に夫々励振電極を対向形成すると共に、各励振電極から張り出し部の終端縁に夫々延びるリード電極と、接続パッドとを形成することにより圧電振動素子が完成する。
また、上記圧電振動素子を構成する圧電基板の張り出し部の同一面上に並置された2つの接続パッドを、表面実装用のパッケージ内の各パッドと夫々導電性接着剤にて接着保持することにより圧電振動子が完成する。
更に、上記の如き圧電振動子を構成するパッケージ対して、発振回路を構成する回路部品を組み付けることにより、表面実装用の圧電発振器が完成する。
【0035】
[第3の従来例に対応する実施の形態]
図7(a)及び(b)は第3の従来例に対応する実施形態の説明図であり、本実施形態では予め開口部61(仕切り62)のサイズ、及びピッチが確定したガイドマスク60を、圧電基板ウェハ30の平坦面側に当接させ、各開口部61内に露出する各圧電基板個片2の振動部4の平坦面側を個別にエッチングする。
即ち、従来技術の説明にて言及した如く、機械加工技術上の制約から、ガイドマスク60の開口部61のサイズ、及びピッチの極小化には限界がある。このため、最小サイズの開口部61よりも更に小さい凹陥部3内の振動部4の肉厚を個別調整するとすれば、ガイドマスク60を使用せざるを得ない。しかし、従来の如く凹陥部側にガイドマスク60を当接した個別エッチングにはデメリットが多過ぎる。
そこで、本発明では、ウェハ30上の圧電基板個片2の配置間隔を、予めガイドマスク60の開口部61の開口寸法、ピッチに合わせて広く設定するとともに、圧電基板個片2間の厚肉部上には2本の平行な分割溝31を形成する。各凹陥部3内の振動部4の肉厚は、予め測定済みの状態であり、肉厚の異なる振動部4を均一肉厚にエッチングするのに要する時間について予め算出しておく。
そして、ガイドマスク60の全ての開口部61の中心部に各振動部4が位置決めされる様に、ウェハ30の平坦面側にガイドマスク60を添設固定する。この状態で、各開口部61を介して各凹陥部内にエッチング液を所定の順序にて充填する。この際、肉厚の厚い振動部4を有した凹陥部から、順次薄い肉厚の振動部を有した凹陥部の順に、エッチング液を充填して行き、全ての振動部の肉厚が規定肉厚にまで薄肉化された時点でエッチング液を一括して洗浄する。
【0036】
この結果、図7(c)に示すように、開口部61内に露出していたウェハ平坦面に凹陥部よりも広い面積を備えた微小凹所としての板厚微調整加工部65が形成された状態となる。なお、符号50は個片間に配置したダミー領域である。
このように、本実施形態では、ウェハの平坦面側にガイドマスクを当接し、振動部の肉厚の微調整が必要な凹陥部内にエッチング液を時間差をもって充填し、エッチング終了時に一括洗浄するようにしたので、ウェハの凹陥部側にはエッチング液による悪影響が及ぼされることがなくなり、分割溝31を介してエッチング液が他所に浸透して不具合をもたらすことが無くなる。また、凹陥部内に充填されたエッチング液がその表面張力により凹陥部内壁に密着できないことによるエッチング不良等の不具合も勿論発生しない。
なお、圧電基板個片間に2本ずつの分割溝31を平行に配置することにより、2本の分割溝間に位置する厚肉部はデッドスペースとなる。このデッドスペースの幅を十分に確保することにより、ある開口部61内に充填されたエッチング液が隣接する圧電基板個片に悪影響を及ぼす虞を回避することができる。このようにして凹陥部内の振動部4の肉厚調整を経たウェハ30を分割溝31に沿って切断分割することにより、凹陥部3の反対側の基板面に振動部4の板厚微調整加工部65を備えた圧電基板個片2を得ることができる。
このような構成を備えた圧電基板2の振動部4の両面に夫々励振電極を対向形成するとともに、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を蒸着等により形成することにより、圧電振動素子が完成する。
【0037】
また、このような圧電振動素子を構成する圧電基板の一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持し、且つパッケージを蓋により気密封止することにより圧電振動子が完成する。
更に、上記圧電振動子を構成するパッケージの適所に発振回路を構成する回路部品を組付け一体化することにより、表面実装型の圧電発振器が完成する。
【0038】
[第4の従来例に対応する実施の形態]
次に、図8(a)は第4の従来例に対応する本発明の実施形態に係る圧電基板の断面図である。
ここでは、異方性を有した圧電結晶材料の一例としてATカット水晶から成る圧電基板を示す。
この水晶基板2は、薄肉の振動部4と、振動部4の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部5と、を備えることにより、両主面上に夫々凹陥部3a、3bを形成した構成を有する。各凹陥部3a、3bは、一方の結晶軸方向(z軸方向)側の内壁5a、5bが、これと直交する他の結晶軸方向(x軸方向)側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えている。そして、各凹陥部3a、3bの各内底面の端縁3a’、3b’の位置が合致するように構成されている。このため、振動部4の有効領域面積を最大とすることができる。
【0039】
このような構成を備えた水晶基板2の凹陥部3a、3bを化学エッチングにより製造する場合は、図8(b)中に示した如く基板の表裏に夫々被覆形成する各マスク(レジスト)70a、70bの開口部70a’、70b’のz軸方向端縁の位置を所定距離Lだけずらしておく。この所定距離Lは、エッチングを行った際に、各凹陥部3a、3bの各内底面の端縁3a’、3b’の位置が合致することとなるように設定すればよい。
なお、上記の如き構成を備えた圧電基板2の振動部4の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を形成することにより圧電振動素子が完成する。
また、前記圧電振動素子を構成する圧電基板2の一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持することにより圧電振動子が構築される。
また、前記圧電振動子を構成するパッケージに、発振回路を構成する回路部品を組み込むことにより表面実装型の圧電発振器が構築される。
なお、図8に示した如き圧電基板の製造に当たっては、平板状の圧電基板2の両主面に対して夫々各凹陥部を掘削形成するためのマスク70a、70bを被覆するマスク形成工程と、各マスクを被覆した圧電基板に対してエッチングを行うことにより、各マスクの開口内に露出した圧電基板の両主面に夫々凹陥部3a、3bを形成する凹陥部形成工程と、が実施されるが、マスク形成工程においては、各マスク70a、70bの位置を、一方の結晶軸方向(z軸方向)にずらすことにより、各凹陥部の各内底面の端縁3a’、3b’同士を合致させる。
なお、上記圧電基板2は、複数の圧電基板個片をシート状に連結した圧電基板ウェハであってもよく、この場合にはバッチ処理による量産が可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 水晶振動素子(圧電振動素子)、2 水晶基板(圧電基板)、3 凹陥部、3a、3b 凹陥部、3a’、3b’ 内底面の端縁、4 振動部、5 環状部、5a 緩斜面、5b 内壁、5A 一辺、6 張り出し部、6a 終端縁、7、7a、7b 凹状切欠き、7H 貫通穴、10a、10b 励振電極、11a、11b リード電極、12a、12b 接続パッド、12a’、12b’ 接続パッド、20 パッケージ、21 パッケージ本体、22 外部電極、23内部電極、25 導電性接着剤、26 金属蓋、30 水晶基板ウェハ(圧電基板ウェハ)、31 分割溝、40 水晶発振器、41 回路部品、50 デッドスペース、51 ダミー接続パッド、60 ガイドマスク、61 開口部、65 板厚微調整加工部、70a、70b マスク、70a’、70b’ 開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は超薄肉の振動部を厚肉の環状部で一体的に包囲した構造の圧電基板、この圧電基板に励振電極等の導電パターンを形成した圧電振動素子、圧電振動素子をパッケージ内に気密封止した圧電振動子、更にはこの圧電振動子を用いた圧電発振器、圧電基板ウェハの改良に関し、特に異方性を有した圧電結晶材料から成る圧電基板面にエッチングによって凹陥部を形成することによって前記振動部を形成した場合に、環状部内壁に発生するエッチング残渣(緩斜面)を利用することによって、圧電基板の超小型化に対応した最適の形状を実現する技術、及び品質を維持しながらバッチ処理における量産性を高める技術に関するものである。更に、本発明は、圧電基板ウェハ上に複数の凹陥部を一括形成した後に、凹陥部底面の振動部の肉厚を微調整するのに好適な加工方法、及び限られた狭い圧電基板内において可能な限り広い面積の振動部を確保するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
[第一の従来例]
水晶振動子等の如く圧電振動素子をパッケージ内に気密封止した構造の表面実装型の圧電デバイスは、携帯電話機、ページャ等の通信機器や、コンピュータ等の電子機器等において、基準周波数発生源、フィルタ等として利用されているが、これらの各種機器の小型化に対応して圧電デバイスに対しても小型化が求められている。
また、表面実装用の圧電デバイスとしての圧電発振器は、例えばセラミック等から成るパッケージ本体の上面に形成された凹所内に、圧電振動素子と、発振回路を構成する回路部品を収納した状態で凹所開口を金属蓋により封止した構成を備えている。
従来から、上記の如き圧電デバイスに使用される圧電振動素子として、高周波化に対応できるように圧電基板の片側表面を一部掘削することにより凹陥部を形成してその底面を薄肉の振動部とすると共に、この振動部周縁を厚肉の環状部により一体的に包囲した構造の圧電基板と、この振動部の表裏両面に夫々形成した入出力用の電極と接地電極と、から成る圧電振動素子が知られている(特開平9−55635号公報)。
【0003】
図9(a)及び(b)は、このような圧電振動素子の一例としてのATカット水晶振動素子の構成を示す斜視図、及び断面図である。この水晶振動素子100は、異方性を有した圧電結晶材料としてのATカット水晶から成る水晶基板101と、水晶基板の両主面に夫々形成した励振電極110、及び各励振電極110から延びるリード電極111と、各リード電極端部の接続パッド112と、を備えている。水晶基板101は、x軸方向に長尺な矩形平板状の基板本体の一方の主面上に凹陥部102をエッチングにより形成することにより、凹陥部102の内底面に超薄肉の振動部103を位置させると共に、振動部103の外周縁を厚肉の環状部104にて一体的に保持した構成を備えている。環状部104のx軸方向に位置する一辺104Aは、x軸方向へ所定長延長形成されて張り出し部105となっている。張り出し部105の一面上には、各リード電極111が引き出され、各リード電極111の端部には接続パッド112が位置している。
このようにATカットの水晶基板101の形状をx軸方向へ長尺に構成する理由は、励振時のx軸方向の波の伝搬速度がz軸方向の波の伝搬速度の約1.2倍であるため、x軸方向に長尺なx軸ロング構造を採るのが慣例となっていた。
水晶基板101上に凹陥部102を形成する方法として化学エッチングを採用した場合には、異方性結晶材料としての水晶の特性から、エッチングを終了した際にz軸方向に位置する環状部104の内壁にエッチング残渣としての傾斜角度θが小さい緩やかな緩斜面104a、104bが形成される。
図9(c)は、上記の如き構成を備えた水晶振動素子100を表面実装用のパッケージ120内にマウントした状態を示す断面図であり、凹陥部102を下向きにした水晶振動素子100の接続パッド112を、パッケージ120の内底面に配置したパッド121上に導電性接着剤122を介して電気的機械的に固定する。パッケージ120の上部開口は金属蓋123にて気密封止する。
【0004】
ところで、上記の如き水晶基板101(或いは、水晶振動素子100)を大面積の圧電基板ウェハを用いてバッチ処理により生産する場合、図10に示した如く水晶振動素子個片100の配列がレイアウトされる。即ち、ウェハ130上には、予め縦横に交差する複数の直線状ダイシング溝(分割溝)131を碁盤の目状に形成し、溝間に形成される矩形領域が個々の水晶基板101となる。凹陥部102に相当する水晶基板面だけを露出させたマスク(レジスト膜)をウェハ130上に被覆した状態で所要のエッチャントを用いてエッチングを実施すると、図示の如くエッチング速度が遅い結晶方向に相当するz軸方向の内壁にエッチング残渣としての緩やかな緩斜面104a、104bが形成される。その後、各個片領域に蒸着等の方法により励振電極110、リード電極111、接続パッド112等を形成してから、ダイシング溝131に沿って切断することにより、個片としての水晶振動素子100が完成する。
【0005】
ところで、縦横寸法が2.5×2.0mmである超小型パッケージ内に収納される水晶基板の縦横寸法は、1.3×0.9mm未満と、更に超小型化せざるを得ない。一方、ウェハ130を用いたバッチ処理を実施する際には、一枚のウェハから採取できる水晶基板の数を増やしてその量産性を高めるために、水晶基板個片間の間隔を接近させて密集配置する必要があるが、上記の如き超小型化の水晶基板を生産する場合には、図示の如く、ダイシング溝131と、凹陥部102の3つの外周縁との間隔wが極めて狭くなり、分割後に十分な幅と十分な強度を備えた環状部104を確保することが困難となる。このため、ダイシング溝131に沿ってダイシングブレード等の分割手段によって切断した場合に、環状部104と振動部103にひび割れが形成され易くなり、生産性が大幅に低下するという問題があった。
【0006】
また、図9(a)に示した如く、振動部103の表裏両面に夫々形成された励振電極110から夫々延びるリード電極111は、傾斜が急峻なx軸方向に位置する環状部104の一辺104Aの内壁に沿って引き出す必要があるため、急角度で屈曲している角部にて導電パターンが断線し易いという問題がある。
更に、図9(c)のように接続パッド112は、内壁の傾斜が急峻な一辺104Aと連続した張り出し部105上に形成され、導電性接着剤122でパッケージ内底面のパッド121と接続されることにより、水晶振動素子全体が片持ち状態で支持されることになるが、この場合、導電性接着剤122を接着した位置から振動部103までの距離が短くなるため、水晶振動素子の自重によるストレスが振動部103にかかり易くなり、振動部に歪みが発生し、共振周波数変動の原因となる。
【0007】
[第2の従来例]
次に、図11(a)及び(b)は他の従来例に係る表面実装型水晶振動子の断面図、及びA−A断面図であり、水晶振動素子100をパッケージ120の凹所内に片持ち支持した状態で金属蓋123により気密封止した構成を備えている。
水晶基板101の張り出し部105の表裏両面上には、夫々2つの接続パッド112a、112bが形成されている。この場合、パッケージ内底面と対面する接続パッド112aは対応する位置関係にあるパッド121aと導電性接着122にて容易に電気的機械的に接続されるが、他方の接続パッド112bは、水晶基板の平坦面側に位置しているため対応するパッケージの凹所内に設けたパッド121bと接続するためには、接着剤を二度盛りする必要がある。接着剤の二度盛りにおいては、パッド121bと水晶基板下面との間に第一回目の接着剤を塗布してから、上側の接続パッド112bと第一回目の接着剤とを接続するように第二回目の接着剤塗布が行われる。
【0008】
しかし、導電性接着剤122を二度盛りした場合には、上側の接続パッド112b上に接着剤の一部が突出し、接着剤と金属蓋123下面との接触を回避するために、パッケージ120の外周壁の高さを大きく設定する必要が生じる。この結果、パッケージの低背化に支障が生じ、小型化の要請に反する結果をもたらす。
このような不具合を解消するため従来は、図11(c)に示した如く、上面側の接続パッド112b端縁に相当する基板端縁に、内壁全体に導体膜を備えた凹状切欠き140(140a、140b)を形成し、凹状切欠き140b内壁の導体膜と上面側接続パッド112bとを導通させる一方で、対応する基板下面側にも凹状切欠き140b内壁の導体膜と導通する下側の接続パッド112b’を形成する。このため、下側の接続パッド112b’とパッケージ内底面のパッド121bとを導電性接着剤122により接続することにより、一回の接着剤塗布により上側の接続パッド112bとパッド121bとの電気的導通を確保することができる。
上記の如き凹状切欠きの形成に当たっては、図11(d)に示す如く、大面積の圧電基板ウェハ130に対するマスク(レジスト膜)を用いた化学エッチングにより水晶基板個片101の表裏両面側から小凹所の掘削を行い、両小凹所を連通させることにより貫通穴140Hを形成してから、貫通穴内壁に導電膜を塗布し、ダイシング溝131に沿って分割する手順が行われる。しかし、例えば縦横寸法が1.3×0.9mm以下の超小型水晶振動素子上の接続パッド112b内に形成される個々の貫通穴140Hの径(幅)はμmオーダーの微小寸法とならざるを得ないため、表裏両面側から形成される両小凹所間が完全に連通しないエッチング不良が多発し易くなる。一方、凹状切欠き140を構成する貫通穴140Hは、面積が極限された接続パッド112bの狭い面積内に形成される以上、その大径化に限界がある。特に、極めて小面積の圧電基板の一端縁に沿って2つの貫通穴を形成すること自体が困難である。
従って、大面積の圧電基板ウェハ130上に凹状切欠き140を構成する貫通穴140Hを化学的エッチングにより形成する際の貫通穴形成不良に起因した超小型水晶振動素子の歩留まりの低下という問題の解決が従来から強く望まれていた。
【0009】
なお、凹状切欠き140を水晶基板101の端縁に2個設ける理由は、一方の凹状切欠き140bについては、上述の如く、下側の接続パッド112b上側の接続パッド112bとパッケージ側のパッド121bとの導通を確保する為であり、他方の凹状切欠き140aについては、下側の接続パッド112aと導通した上側の接続パッド112a’を水晶基板の上面に設けるためである。この結果、ウェハ130上に形成された個々の水晶振動素子についての共振周波数等の特性を測定する際に、水晶基板の上面に配置された2つの接続パッド112b、112a’、或いは、下面側の2つの接続パッド112a、112b’に対して、測定器のプローブピンを同一方向から当接させた測定が可能となる。これは、基板上の同一面上に位置する2つの接続パッドにプローブピンを当接させた測定を行うことが最も効率的だからである。
また、水晶振動素子100をパッケージ内に搭載する際の方向としては、図11(a)のように凹陥部側を常に下向きにする訳ではなく、凹陥部側を上向きにした搭載も行われる。このため、各接続パッドを基板の両面に2個ずつ配置しておけば、一つの水晶振動素子100を任意の向きにて、パッケージ内へ搭載することができる。
【0010】
[第3の従来例]
次に、複数の圧電基板を縦横に配列して連結した構成を備えたシート状の圧電基板ウェハ上の各個片領域に凹陥部を化学エッチングによって形成した際に、全ての凹陥部底部の超薄肉振動部の肉厚を均一化することは困難である。このため、従来は、予め各凹陥部毎にその深さ、換言すれば各凹陥部内の振動部の肉厚のばらつきを測定しておき、規定肉厚に達しない振動部の肉厚を微調整するために各凹陥部毎に個別にエッチング液を用いた調整作業を行っていた。
図12(a)及び(b)は、従来の凹陥部毎の微調整方法を説明するための図であり、圧電基板ウェハ130の一方の主面上に図示しないマスク(レジスト膜)を被覆した状態でマスクの各開口部から露出したウェハ面だけを一括してエッチングすることにより、凹陥部102を一括形成する。このようなエッチングによる一括作業では、各凹陥部102の底部に位置する振動部103の肉厚は一定とはならないため、各凹陥部102内の振動部103の肉厚を予め測定しておき、次いで、符号150で示した如き碁盤目状の構成を備えたガイドマスクをウェハ130の凹陥部側面に密着配置した状態で、個別エッチングを実施する。即ち、ガイドマスク150は、例えば樹脂薄板に所定のピッチにて矩形、その他の形状の開口152を形成した構成を備え、碁盤目状に交差した仕切り部151間に、凹陥部102の平面形状と整合した形状の開口152が複数形成されている。
このガイドマスク150を、図12(b)のように仕切り部151を凹陥部102の周縁の平面上に密着配置した状態でウェハ130上に固定する。この状態で、最大肉厚を有する振動部を備えた凹陥部から肉厚が薄い振動部を備えた凹陥部の順に、予め計算された所要の時間差をもって、順次各凹陥部内にエッチング液155を適量ずつ充填してゆく。そして、全ての振動部の肉厚が一定値にまでエッチングされた時点で一括してウェハごと洗浄を行い、エッチング液を除去する。
【0011】
ところで、上記ガイドマスク150が有する開口152の寸法は、機械加工技術上の制限から微小化に限界があり、図12(b)に示した如き寸法が限界である。従って、例えば図12(c)に示した如く、更に微小サイズの圧電基板個片から成るウェハ130に形成した微小サイズの凹陥部102の振動部の肉厚を個別エッチングによって微調整する為には、大きいサイズの凹陥部用に製作したガイドマスク150をそのまま使用せざるを得なくなる。或いは、エッチング液を凹陥部内に確実に滴下する為には、最低限図12(b)に示した程度の大きさの開口152が必要となる。すると、図示した如く、仕切り部151の間の開口152内に凹陥部102とダイシング溝131が露出した状態となる。このような状態で、開口152内にエッチング液を充填した場合には、凹陥部内からはみ出したエッチング液がダイシング溝131内を浸透してエッチングしたくない部分までエッチングしてしまい当該部分の強度低下を来す。更に、(d)に示すように、エッチング液155の表面張力によって、凹陥部102内に充填されたエッチング液が凹陥部内底部に密着せずに、未充填空所156を形成する虞があり、この場合には個別エッチングが不良となる。
このようにウェハ上に一括形成した凹陥部の深さのばらつきを解消するために、凹陥部毎に個別にエッチング行おうとした場合には、使用するガイドマスク150の開口寸法についての制限から、エッチング不要箇所に対するエッチングが行われたり、或いは振動部に対するエッチングが不良となる虞がある。
【0012】
[第4の従来例]
次に、図13は、圧電基板の一例としてのATカット水晶基板の構成を示す断面図である。この水晶基板101は、異方性を有した圧電結晶材料としてのATカット水晶から成り、水晶基板101の両主面には夫々点対称形状の凹陥部102a、102bが化学エッチングにより形成されている。即ち、水晶基板101は、矩形平板状の基板本体の両主面上にマスク(レジスト)160を被覆した状態で、凹陥部102a、102bをエッチングにより形成することにより、各凹陥部102a、102bの共通する内底面に超薄肉の振動部103を位置させると共に、振動部103の外周縁を厚肉の環状部104にて一体的に保持した構成を備えている。z軸方向とx軸方向へのエッチングの速度差により、各環状部104のz軸方向に位置する2つの辺の内壁104a、104bは、x軸方向側に位置する他の内壁よりも緩やかな傾斜面となっている。しかも、両内壁104a、104bの傾斜角度は異なっている。
しかし、このように同一開口形状を備えたマスク160を、水晶基板101の両面の同一位置に整合させた状態で被覆してエッチングを行うと、図示の如く各凹陥部102a、102bのz軸方向側の各内壁104a、104bが対称の位置関係となり、各凹陥部102a、102bの内底面の端縁102a’、102b’の位置が合致しない。このように各凹陥部102a、102bの内底面の端縁102a’、102b’の位置がz軸方向にずれているため、両内底面が合致せず、振動部103の面積が狭くなり、有効薄肉領域(有効振動領域)が狭くなる。このため、この水晶基板に電極等を形成することによって製造された水晶振動素子の特性が低下するという問題があった。特に、圧電基板の小型化が進行すると、このような不具合が深刻化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−55635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、第一の従来例に対応する第一の課題は、異方性を有した圧電結晶材料から成る圧電基板面にエッチングによって凹陥部を形成することによって振動部を形成した超小型の圧電基板を、大面積の圧電基板ウェハを用いたバッチ処理により量産する場合に、凹陥部を包囲する環状部の肉厚を十分に確保して分割時のひび割れを防止することにある。また、環状部内壁に発生するエッチング残渣により形成される急峻な傾斜面を避けた環状部内壁を経由して導電パターンを配線することによって断線を防止することを他の課題とする。更に、パッケージ内に圧電振動素子を片持ち状態で支持した場合に、片持ち支持部から振動部までの距離を可能な限り離間させることにより、水晶振動素子の自重に起因したストレスが振動部に加わることを防止することを他の課題とする。このように、第一の課題は、超薄肉の振動部と、それを包囲する厚肉の環状部を備えた圧電基板において、圧電基板の超小型化に対応した最適の形状を実現することにある。
第二の従来例に対応する第二の課題は、圧電基板個片をシート状に連結した大面積の圧電基板ウェハ上に、各基板個片の表裏両面に夫々接続パッドを2個ずつ形成するための電気的接続手段としての貫通穴(凹状切欠き)を化学的エッチングにより形成する際に、貫通穴の開口寸法の大型化に制約があることに起因して発生する貫通穴形成不良と、それに起因した生産性の低下を防止することにある。
第三の従来例に対応する第三の課題は、圧電基板ウェハ上に複数の凹陥部を一括形成した後に、個々の凹陥部内の振動部の肉厚を時間差によるエッチングにより個別調整する場合に発生する種々の不具合を解決するために、凹陥部内にエッチング液を充填する調整作業に代えて、平坦面側からエッチングを行うことにより、振動部の微調整を行うようにすることにある。
第四の従来例に対応する第四の課題は、異方性結晶材料から成る圧電基板の両主面に夫々化学エッチングにより凹陥部を形成することによって薄肉の振動部を形成した圧電基板において、振動部を介して対向配置された両凹陥部の位置が一方の結晶軸方向にずれていることにより、有効な振動領域が狭く形成される不具合を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に係る圧電基板は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、異方性を有した圧電結晶から成るものにおいて、前記環状部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えており、前記圧電基板の外形寸法は、前記他の結晶軸方向の基板長さよりも、前記一方の結晶軸方向の基板長さが長いことを特徴とする。
異方性圧電材料を、直交する2つの結晶軸に沿った平板状の圧電基板に加工した場合、この圧電基板面に化学エッチングにより凹陥部を形成すると、一方の結晶軸方向へのエッチング速度が他方のエッチング速度よりも速くなるため、凹陥部を構成する環状部の内壁のうち、エッチング速度が遅い結晶軸方向側の内壁が緩やかな傾斜面(緩斜面)となる。本発明では、環状部の内壁のうちこのような緩斜面を備えた一辺を延長形成して張り出し部としたので、大面積の圧電基板ウェハを用いたバッチ処理により圧電基板(圧電振動素子)を量産する際に、同一面積でありながら、個片間を区画するダイシング溝等の分割溝と凹陥部との間の幅を十分に確保することができ、その結果環状部の肉厚を大きく確保できる。従って、分割溝に沿った切断時に環状部にひび割れが発生することが無くなる。この結果、超薄肉の振動部と、それを包囲する厚肉の環状部を備えた圧電基板において、圧電基板の超小型化に対応した最適の形状を実現することができる。
請求項2に係る圧電基板は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成したATカット水晶から成る圧電基板において、前記ATカット水晶から成る圧電基板の外形寸法は、z’軸方向寸法が、x軸方向寸法よりも長いことを特徴とする。
前記圧電基板として、ATカット水晶基板を採用した場合には、z軸方向に沿った基板長さをx軸方向に沿った基板長さよりも長く構成することが好ましい。
【0016】
請求項3に係る圧電振動素子は、請求項1又は2に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備え、を備え、前記凹陥部側の励振電極から延びるリード電極は前記緩やかな傾斜角度を備えた環状部内壁を経て引き出されることを特徴とする。
これによれば、環状部内壁に発生するエッチング残渣により形成される急峻な傾斜面を避けた環状部内壁を経由してリード電極(導電パターン)を配線することによって断線を防止することができる。
請求項4に係る圧電振動子は、請求項3に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の長手方向一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする。
これによれば、パッケージ内に圧電振動素子を片持ち状態で支持した場合に、片持ち支持部から振動部までの距離を可能な限り離間させることにより、水晶振動素子の自重に起因したストレスが振動部に加わることを防止できる。
請求項5に係る表面実装型の圧電発振器は、請求項4に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る圧電基板は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、前記環状部の一辺を延長形成した張り出し部を備えたものにおいて、前記張り出し部の終端縁に、圧電基板の表裏両面側に貫通する少なくとも一つ凹状切欠きを備えたことを特徴とする。
圧電基板の張り出し部の同一面上に、表裏2つの励振電極と導通接続された接続パッドを配置する場合には、導電性接着剤を一回塗布するだけで、パッケージ内底面のパッドとの接続が可能となり、パッケージの外周壁の大型化を防止できる。一方、前記張り出し部の表裏両面側に夫々2つの接続パッドを配置した場合には、圧電振動素子をパッケージ内に搭載する際の表裏の方向性を任意に選択することができるため、張り出し部の終端縁に2つの凹状切欠きを配置して表裏両面に夫々2つずつ配置した接続パッド同士を導通させる必要がある。この際、従来のように、張り出し部の終端縁の幅内に2つの凹状切欠きを配置するとすれば、個々の凹状切欠きの幅が極小となり、圧電基板ウェハに対するエッチングによって表裏両面側に貫通した凹状切欠き(貫通穴)を形成できなくなる虞が高まる。そこで、本発明では、ウェハ上において隣接し合う基板個片領域に跨った長穴状の貫通穴を形成することにより、エッチング不良による凹状切欠きの形成不良が発生することを防止できる。
請求項7に係る圧電基板は、請求項6において、前記凹状切欠きは、前記張り出し部の終端縁の両端角部に夫々一個ずつ配置されていることを特徴とする。
このように、圧電基板ウェハ上における一つの圧電基板の張り出し部の終端縁の両端角部に対して隣接する領域に跨った前記貫通穴を形成することが有効である。
請求項8に係る圧電振動素子は、請求項6、又は7の何れか一項に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から前記張り出し部の終端縁に夫々延びるリード電極と、を備え、何れか一方のリード電極は前記凹状切欠き内を経て反対側面に引き回されて該反対側面に形成した接続パッドと導通していることを特徴とする。
張り出し部の同一面上に2つの接続パッドを並置したり、張り出し部の表裏両面に夫々2つの接続パッドを並置することができる。
【0018】
請求項9に係る圧電振動子は、請求項8に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の張り出し部の同一面上に並置された2つの接続パッドを、表面実装用のパッケージ内の各パッドと夫々導電性接着剤にて接着保持したことを特徴とする。
請求項10に係る表面実装型圧電発振器は、請求項9に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
請求項11に係る圧電基板ウェハの構造は、請求項6乃至8に記載の圧電基板を複数個シート状に連結した圧電基板ウェハであって、前記凹状切欠きは、ウェハ上において隣接し合う圧電基板個片間に跨る貫通穴を形成することにより両圧電基板個片上に同時に形成されることを特徴とする。
ウェハ上において隣接し合う個片領域間に跨るように貫通穴を形成する際には、貫通穴の長さを大きくできる。この結果、圧電基板上の表裏両面側から夫々同時に小凹所をエッチング形成する場合に、確実に両小凹所間を連通させて貫通穴を完成することができることとなる。或いは、一つの圧電基板の端縁に設ける凹状切欠きは2個である必要はなく、張り出し部の終端縁の幅内部に設けた一つの長穴であっても良い。この場合には、ウェハ上の圧電基板個片の張り出し部終端縁の幅内に長穴状の貫通穴を形成すればよい。
請求項12に係る圧電基板ウェハは、請求項6又は7に記載の圧電基板を複数個シート状に連結した圧電基板ウェハであって、隣接し合う前記圧電基板個片間には、未使用領域が配置されており、前記凹状切欠きは、一つの圧電基板個片と隣接する未使用領域間に跨る貫通穴を形成することにより該圧電基板個片上に形成されることを特徴とする。
圧電基板個片の両隣側に圧電基板個片を直接配置すると、励振電極、リード電極、及び接続パッドを形成してから、プローブピンを各接続パッド上に当接して当該圧電振動素子個片の特性の測定を行う場合に、プローブピンの当接圧が共振周波数の変動をもたらし、正確な測定が不可能となる。そこで、圧電基板の両隣位置に未使用領域(ダミー領域)を配置し、当該未使用領域上に接続パッドを跨って形成する。そして、プローブピンを未使用領域上の接続パッドに対して当接して測定を行えば、プローブピンの当接圧力による悪影響が解消される。特に、圧電基板個片と未使用領域との間の基板面に分割溝を形成しておけば、当接圧力による悪影響がさらに減殺される。
【0019】
請求項13に係る圧電基板は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板において、前記凹陥部の反対側の基板面に振動部の板厚微調整加工部を備えたことを特徴とする。
圧電ウェハの一方の主面上に複数の凹陥部を所定のピッチにてエッチング形成した後で、凹陥部内の振動部の肉厚を微調整するために、ガイドマスクを基板面上に添設した状態で、個々の凹陥部内にエッチング液を充填することが従来から行われているが、凹陥部のサイズが超小型化すると、エッチング液が個片間に形成した分割溝を介して他の部位に浸透してエッチング不要箇所をエッチングすることによる基板強度の低下等の不具合が発生する。
本発明では、上記ガイドマスクをウェハの平坦面側に当接して、ガイドマスクの開口内にエッチング液を個別充填して振動部肉厚を微調整するようにしたので、上記従来の不具合が解消され、凹陥部サイズが超小型化した圧電基板における振動部の肉厚調整を確実化することができる。
請求項14に係る圧電振動素子は、請求項13に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備えたことを特徴とする。
請求項15に係る圧電振動子は、請求項14に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする。
請求項16に係る表面実装型の圧電発振器は、請求項15に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
請求項17に係る圧電基板ウェハは、請求項13に記載の圧電基板を複数個シート状に連結したことを特徴とする。
【0020】
請求項18に係る圧電基板ウェハは、請求項17において、前記圧電基板ウェハは、圧電基板個片間に2本の平行な分割溝を介してデッドスペースを介在させた構成を備えていることを特徴とする。
圧電基板個片間に十分なデッドスペースとなるダミー領域を配置することにより、ウェハの平坦面側からの肉厚調整作業に際してのエッチング液による悪影響を回避できる。
請求項19に係る圧電基板ウェハの製造方法は、請求項17又は18に記載の圧電基板ウェハ上の各圧電基板個片の凹陥部と反対側面に形成した振動部の板厚微調整加工部は、凹陥部よりも大きい開口部を複数個配列した碁盤目状のガイドマスクを圧電基板ウェハの該反対側面に当接した状態で、該ガイドマスクの各開口部内にエッチング液を充填することによって加工形成されることを特徴とする。
請求項20に係る圧電基板は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、両主面上に夫々凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、異方性を有した圧電結晶から成るものにおいて、前記各凹陥部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えており、前記各凹陥部の各内底面の端縁のうち前記一方の結晶軸方向側の端縁同士の位置が合致するように構成されていることを特徴とする。
異方性圧電結晶材料から成る圧電基板の表裏両面から同一形状のマスクを用いてエッチングによって凹陥部を形成する場合、表裏の各マスクの開口部の位置が合致していると、各凹陥部は点対称形状となり、各凹陥部の内底面の端縁(特に、エッチング速度が遅い軸方向側の端縁)同士の位置関係が一致しない。このため、薄肉の振動部の面積が狭くなる。
本発明では、表裏のマスクの開口部の端縁(特に、エッチング速度が遅い軸方向側の端縁)の位置を予め所定にずらしておくことにより、エッチング後に両凹陥部の端縁同士の位置が合致するようにした。このため、振動部の面積を最大にすることができ、信頼性の高い圧電基板、圧電振動子等を得ることができる。
【0021】
請求項21に係る圧電基板は、請求項20において、前記圧電基板がATカット水晶であることを特徴とする。
請求項22に係る圧電振動素子は、請求項20又は21に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備えたことを特徴とする。
請求項23に係る圧電振動子は、請求項22に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の長手方向一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする。
請求項24に係る表面自走型の圧電発振器は、請求項23に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
請求項25に係る圧電基板の製造方法は、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、両主面上に夫々凹陥部を形成した構成の圧電基板であって異方性を有した圧電結晶から成り、且つ前記各凹陥部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えた圧電基板の製造方法において、平板状の圧電基板の両主面に対して夫々前記各凹陥部を掘削形成するためのマスクを被覆するマスク形成工程と、前記各マスクを被覆した圧電基板に対してエッチングを行うことにより、各マスクの開口内に露出した圧電基板の両主面に夫々凹陥部を形成する凹陥部形成工程と、から成り、前記各マスクの位置を、前記一方の結晶軸方向にずらすことにより、前記各凹陥部の各内底面の端縁同士を合致させたことを特徴とする。
請求項26に係る圧電基板の製造方法は、請求項25において、前記圧電基板は、複数の圧電基板個片をシート状に連結した圧電基板ウェハであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上のように構成したので、請求項1乃至5に対応する第一の本発明によれば、異方性圧電結晶材料から成る圧電基板面にエッチングによって凹陥部を形成することによって振動部を形成した超小型の圧電基板を、大面積の圧電基板ウェハを用いたバッチ処理により量産する場合に、凹陥部を包囲する環状部の肉厚を十分に確保して分割時のひび割れを防止することができる。また、環状部内壁により形成される急峻な傾斜面を避けた緩斜面を経由して導電パターンを配線することによって断線を防止することができる。更に、パッケージ内に圧電振動素子を片持ち状態で支持した場合に、片持ち支持部から振動部までの距離を可能な限り離間させることにより、水晶振動素子の自重に起因したストレスが振動部に加わることを防止することを他の課題とする。このように、第一の課題は、超薄肉の振動部と、それを包囲する厚肉の環状部を備えた圧電基板において、圧電基板の超小型化に対応した最適の形状を実現することにある。
請求項6乃至12に対応する第二の本発明によれば、圧電基板ウェハ上に、各基板個片の表裏両面に夫々接続パッドを2個ずつ形成するための電気的接続手段としての貫通穴(凹状切欠き)を化学的エッチングにより形成する際に、貫通穴の開口寸法の大型化に制約があることに起因して発生する貫通穴形成不良と、それに起因した生産性の低下を防止することができる。
請求項13乃至19に対応する第三の本発明によれば、圧電基板ウェハ上に複数の凹陥部を一括形成した後に、個々の凹陥部内の振動部の肉厚を時間差によるエッチングにより個別調整する場合に発生する種々の不具合を解決するために、凹陥部内にエッチング液を充填する調整作業に代えて、平坦面側からエッチングを行うことにより、各振動部肉厚の微調整を行うことができる。
請求項20乃至26に対応する第四の発明によれば、異方性結晶材料から成る圧電基板の両主面に夫々化学エッチングにより凹陥部を形成することによって薄肉の振動部を形成した圧電基板において、振動部を介して対向配置された両凹陥部の位置が一方の結晶軸方向にずれていることにより、有効な振動領域が狭く形成される不具合を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)(b)及び(c)は本発明の一実施形態に係る圧電振動素子の一例としてのATカット水晶から成る水晶振動素子の外観斜視図、平面図、及びウェハの要部構成図。
【図2】図1の水晶振動素子をパッケージ内に気密収納した水晶振動子の断面図。
【図3】本発明の水晶振動素子を表面実装型の水晶発振器に適用した例を示す図。
【図4】(a)(b)及び(c)は第2の従来例に対応する本発明の一実施形態に係る水晶振動素子(水晶基板)の斜視図、パッケージに搭載した状態の断面図、及びウェハの構成説明図。
【図5】本発明の他の実施形態に係る圧電基板ウェハの要部構成を示す平面図。
【図6】(a)及び(b)は、他の実施形態に係る圧電基板ウェハの要部構成図、及び水晶振動素子個片の斜視図。
【図7】(a)及び(b)は第3の従来例に対応する実施形態の説明図、(c)は板厚微調整加工部の説明図。
【図8】(a)は第4の従来例に対応する本発明の実施形態に係る圧電基板の断面図、(b)は圧電振動子の断面図。
【図9】(a)及び(b)は従来の圧電振動素子の一例としてのATカット水晶振動素子の構成を示す斜視図、及び断面図、(c)は水晶振動素子を表面実装用のパッケージ内にマウントした状態を示す断面図。
【図10】図9の圧電基板を形成する際に使用する圧電基板ウェハの要部構成図。
【図11】(a)及び(b)は他の従来例に係る表面実装型水晶振動子の断面図、及びA−A断面図、(c)は張り出し部終端縁に設けた凹状切欠きの構成を示す斜視図、(d)は圧電ウェハの要部構成図。
【図12】(a)(b)、及び(c)は、従来の凹陥部毎の微調整方法を説明するための図、(d)は従来の微調整方法の欠点を説明する為の図。
【図13】両面に凹陥部を備えた従来の圧電基板の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
[第1の従来例に対応する実施の形態]
図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る圧電振動素子の一例としてのATカット水晶から成る水晶振動素子1の外観斜視図、及び平面図である。
この水晶振動素子1は、異方性を有した圧電結晶材料としてのATカット水晶から成る水晶基板2と、水晶基板2の両主面に夫々形成した励振電極10a、10b、及び各励振電極10a、10bから夫々延びるリード電極11a、11bと、各リード電極端部の接続パッド12a、12bと、を備えている。
水晶基板2は、z軸方向に長尺な矩形平板状の基板本体の一方の主面上に凹陥部3をエッチングにより形成することにより、凹陥部3の内底面に超薄肉の振動部4を位置させると共に、振動部4の外周縁を厚肉の環状部5にて一体的に保持した構成を備えている。環状部5のz軸方向に位置する一辺5Aは、z軸方向へ所定長延長形成されて平板状の張り出し部6となっている。張り出し部6の一面上には、各リード電極11a、11bが引き出され、各リード電極11a、11bの端部には接続パッド12a、12bが位置している。
この実施形態に係る水晶振動素子1が従来例に係る水晶振動素子と異なる一つの特徴的な点は、水晶基板2をz軸方向に長尺なz軸ロングな長方形状とし、その結果、環状部5の幅と強度を十分に大きく確保した点にある。従って、最も傾斜角度が緩やかな緩斜面5aは張り出し部6側に位置することとなる。また、振動部4の凹陥部側内底面に形成される励振電極10aから引き出されるリード電極11aを最も緩やかな緩斜面5aに沿って配線することが可能となる。更に、パッケージ内に水晶振動素子を片持ち支持した場合における支持部と振動部との間の距離を可能な限り短くすることができる。
【0025】
水晶基板2の主面上に凹陥部3を形成する際には、凹陥部3に相当する箇所のみを露出させた状態で他の箇所をマスクにて隠蔽し、所要のエッチャントを用いてエッチングを行うが、この際に、凹陥部3の4つの内壁のうち、z軸方向に位置する各内壁5a、5bには、x軸方向に位置する各内壁よりも緩やかな緩斜面がエッチング残渣として形成される。本実施形態では、エッチングに際してのこの現象を利用して、凹陥部3のz軸方向に張り出し部6が位置するように水晶基板2をレイアウトした。このため、ウェハ30上にダイシング溝等の分割溝31を介して各水晶基板個片を配列する場合には、図1(c)のように横長の状態となる。この際、個々の水晶基板の面積は、図10に示した従来の水晶基板と同等である。
即ち、本発明においては、水晶基板自体の面積、形状を図10に示した従来例と同等に設定する一方で、水晶基板の長手方向がz軸方向と一致するように構成している。従って、凹陥部3の3つの端縁と各分割溝31との間の間隔wを十分に大きく確保することが可能となり、環状部5の肉厚をより厚くすることができるため、分割溝31に沿った切断分割時にひび割れが発生することを防止できることとなる。
また、リード電極11a、11b間の間隔、及び接続パッド12a、12b間の間隔が夫々近すぎる場合には、電気的な干渉が発生して水晶振動素子の特性に悪影響を及ぼす虞があるため、凹陥部側のリード電極11aを緩斜面5aに沿って形成した場合は、平坦面側のリード電極11bはできる限りリード電極11aから離間する経路にて凹陥部側面に配線する。
凹陥部側のリード電極11aと接続された接続パッド12aについては張り出し部6の幅方向(x軸方向)一端縁寄りに配置する一方で、平坦面側から凹陥部側へ引き回されたリード電極11bについては幅方向他端寄りに偏位させることにより他の接続パッド12bを接続パッド12aからできるだけ離間させる。
【0026】
次に、図2は図1に示した水晶振動素子1を表面実装用のパッケージ20内に搭載して気密収納した状態を示す断面図である。このパッケージ20は、凹所を備えたパッケージ本体21と、パッケージ本体21の凹所の開口を閉止する金属蓋26と、を備えている。パッケージ本体21は、外底面に形成した外部電極22と、凹所内底面に形成され且つ外部電極22と導通された内部電極23と、を備えており、内部電極23上に導電性接着剤25を介して接続パッド12を電気的機械的に接続することにより水晶振動素子1を片持ち状態で支持する。
この際、接続パッド12と内部電極23との接続部(支持部)と、振動部4とは、凹陥部3の内壁のうち最も傾斜角度の緩やかな緩斜面5aを介して連設された構成となっている。即ち、緩やかな傾斜を有した緩斜面5aを利用して接着剤による接続部を振動部4から遠ざけ、片持ち支持構造により振動部に加わる応力を緩和し、振動部に歪みが発生しにくくしている。
【0027】
次に、図3は本発明の水晶振動素子1を表面実装型の水晶発振器に適用した例であり、この水晶発振器40は、例えば水晶振動素子1をパッケージ本体21内に設けた段差上の内部電極23上に導電性接着剤25により接続パッド12を固定して片持ち支持すると共に、パッケージ本体21の内底面上に設けたパッド上に発振回路等を構成する回路部品41を搭載した上で、パッケージ本体21の凹所を金属蓋26により封止した構成を備えている。
なお、上記実施形態は、異方性圧電結晶材料としてATカット水晶を例示したが、これは一例に過ぎず、本発明(他の実施形態についても同様)はあらゆる異方性圧電結晶材料に適用可能である。即ち、薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成を備え、且つ異方性圧電結晶材料から成る圧電基板に対して本発明の圧電基板構造を適用することが可能であり、この場合、圧電基板の外形寸法を、環状部内壁のうち傾斜角度が最も小さい緩斜面が存在する方向に沿った基板長さを、該緩斜面が存在する方向と直交する方向に沿った基板長さよりも長く設定する。
このように構成することにより、環状部の厚肉化、リード電極の断線の防止、及びパッケージ内に片持ち状態でマウントした場合における振動部での歪み発生防止、といった効果を発揮することが可能となる。
【0028】
[第2の従来例に対応する実施の形態]
図4(a)(b)及び(c)は第2の従来例に対応する本発明の一実施形態に係る水晶振動素子(水晶基板)の斜視図、パッケージに搭載した状態の断面図、及びウェハの構成説明図である。なお、本実施形態でも圧電材料として水晶基板を用いた例を示しているが、これは一例に過ぎず、本発明はあらゆるタイプの圧電材料に適用可能である。
この水晶振動素子1は、圧電結晶材料としてのATカット水晶から成る水晶基板2と、水晶基板2の両主面に夫々形成した励振電極10a、10b、及び各励振電極10a、10bから夫々延びるリード電極11a、11bと、各リード電極端部の接続パッド12a、12a’、12b、12b’と、を備えている。
水晶基板2は、薄肉の振動部4と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部5と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部3を形成した構成の圧電基板であって、環状部5の一辺5Aを延長形成した張り出し部6を備えている。この張り出し部6の終端縁6aには、水晶基板2の表裏両面側に貫通する少なくとも一つの凹状切欠き7a、7bを備えている。この例では、終端縁6aの両端部、即ち張り出し部6の両角部に凹状切欠き7a、7bを備えており、各凹状切欠き7a、7bの内壁には各接続パッド12a、12a’、12b、12b’と導通する導体膜が形成されている。
【0029】
凹陥部3側に設けた励振電極10aから延びるリード電極11aと接続された接続パッド12aは、凹状切欠き7aの内壁の導体膜を介して平坦面側に設けた接続パッド12a’と導通する。一方、基板の平坦面側に設けた励振電極10bから延びるリード電極11bと接続された接続パッド12bは、凹状切欠き7bの内壁の導体膜を介して凹陥部側に設けた接続パッド12b’と導通する。
なお、凹状切欠きを一つだけ設け、いずれか一方のリード電極のみを反対側面に引き回して、基板の反対側面に第2の接続パッドを配置するようにしてもよい。
このように本実施形態では、圧電基板2の振動部4の両面に夫々対向形成した励振電極10a、10bから張り出し部6の終端縁6aに夫々延びるリード電極11a、11bのうちの何れか一方を、凹状切欠き内の導体膜を経て反対側面に引き回し、該反対側面に接続パッドを配置しているので、図4(b)のようにパッケージ20内に凹陥部側を下向きにして水晶振動素子1を搭載する際に、凹陥部側の張り出し部6上に2つの接続パッド12a、12b’が位置していることとなり、夫々導電性接着剤を一回塗布するだけでパッケージ側のパッド23a、23bとの接続が可能となり、その結果、基板の平坦面側に導電性接着剤が突出することがなくなる。このため、パッケージ20の外周壁の高さを導電性接着剤の突出量にあわせて高くする必要が無くなり、パッケージの低背化を実現できる。
また、張り出し部6の両面側に2個ずつの接続パッド12a、12b’と、接続パッド12b、12b’を夫々配置することにより、水晶振動素子1を任意の方向に向けた状態でパッケージ内に搭載することができる。
【0030】
次に、図4(c)に基づいて、本発明の圧電基板2、或いは水晶振動素子1を大面積の水晶基板ウェハ(圧電基板ウェハ)30を用いたバッチ処理により量産する手順を説明する。(なお、参考のため、図4(c)の一部にのみ導体パターンを形成した状態を示した。)即ち、本実施形態では、分割溝31を縦横に形成することによって分割溝間に形成される矩形のスペースを水晶基板個片とし、所要のエッチャントとマスクを用いた化学エッチング方法により、凹陥部3と、凹状切欠き7a、7bを構成する貫通穴7Hを形成する。このウェハの特徴的な構成は、凹状切欠きを構成する貫通穴7Hを、左右に隣接し合う2つの基板個片に跨って形成することにより、張り出し部6の終端縁6aの両端角部に凹状切欠き7a、7bが夫々位置するようにした点にある。
なお、貫通穴7Hは、従来例の説明において言及した如く、基板の両面側の同一箇所から小凹所を同時に形成し、両小凹所を貫通させることにより形成される。そして、小凹所の径が過小な場合には、貫通不良が生じ易い不具合を有する。
【0031】
このように本実施形態においては、凹状切欠き7a、7bは、ウェハ30上において隣接し合う水晶基板個片間に跨る貫通穴7Hを形成することにより両水晶基板個片上に同時に形成される。この際、貫通穴7Hは、凹状切欠きを2個連結した大きな寸法を有するため、基板の表裏両面側の対応位置に夫々小凹所を同時にエッチング形成することにより、両小凹所を連通させた貫通穴を形成する際に、貫通不良が発生する虞が大幅に低減する。
その後、所要のマスクを用いた蒸着、スパッタリング等の任意の方法により、各基板個片の表裏に励振電極10a、10b、リード電極11a、11b、及び接続パッド12a、12a’、12b、12b’を夫々形成すると共に、各凹状切欠き7a、7b内には導体膜を形成する。
これらの導体パターンの形成後に、平坦面側の接続パッド12a’、12b、或いは凹陥部側の接続パッド12a、12b’に対して測定装置のプローブピンを当接させることにより、各水晶振動素子個片の共振周波数等の特性を測定する作業が行われ、測定結果に基づいて個片毎の調整作業を行った後で、分割溝31に沿った切断が行われる。
【0032】
ところで、水晶基板ウェハ30上の各水晶基板個片上に励振電極等の導体パターンを形成して水晶振動素子個片を形成した後で、プローブピンを用いた水晶振動素子個片毎の特性を測定する作業が行われるが、この際、図4(c)のように個片同士が直近位置にて直接隣接し合っていると、測定対象となる一つの水晶振動素子個片に設けられた2つの接続パッド12a、12b’に対するプローブピンの当接を左右の分割溝31の内側にて行うことになる。しかし、プローブピンを当接する位置と振動部4との距離は、0.5mm以下の至近距離であるため、プローブピンが各接続パッドを介して基板面に当接する僅かな圧力であっても、振動部4の共振周波数に影響を及ぼす虞があり、正確な測定が困難になる要因となっている。
図5はこのような不具合を解消するための実施形態に係る圧電基板ウェハの要部構成を示す平面図である。
この圧電基板ウェハ30の特徴的な構成は、水晶振動素子1(圧電基板2)の左右両側に、分割溝31を介して個片を構成しない領域としてのデッドスペース50を配置し、当該デッドスペース50上には、水晶振動素子個片上に設けた接続パッド12a、12b’、又は12a’、12bと夫々導通するダミー接続パッド51を形成するようにした点にある。各ダミー接続パッド51は、貫通孔7H(凹状切欠き7a、7b)内面の導体膜を介して隣接する位置にある表裏両面側の各接続パッドと導通している。
【0033】
以上の構成を備えた圧電基板ウェハ30上の各振動素子個片1の特性測定を行う場合には、図示しない測定装置のプローブピンを接続パッド12a、12b’、又は12a’、12b上に直接当接させることなく、分割溝31を介して各接続パッドと隣接配置されたダミー接続パッド51に対してプローブピンを当接させた状態での測定を実施することができる。
この場合、ダミー接続パッド51に対してプローブピンを当接させることによって発生した応力の伝達は、分割溝31により遮断され、水晶振動素子個片1の振動部4に及ぼす影響が減殺され、正確な測定が可能となる。
なお、図示の例では、デッドスペース50の面積を隣接する圧電基板2と同等に図示したが、これは一例に過ぎず、デッドスペース50の面積を更に狭くしてもよい。
なお、図4、図5の実施形態では、夫々貫通穴7Hを隣接し合う個片領域間、或いは個片領域とデッドスペース間に跨って形成したため、一つの圧電基板2の張り出し部6の終端縁6aの両端部に一カ所ずつ、合計2個の凹状切欠き7a、7bが形成されたが、凹状切欠きの個数は1個であってもよい。
【0034】
図6(a)及び(b)は、他の実施形態に係る圧電基板ウェハの要部構成図、及び水晶振動素子個片の斜視図である。この圧電基板ウェハ30は、圧電基板個片2の張り出し部6の終端縁6aに沿って長穴状の貫通穴7Hを貫通形成した構成を備えるとともに、貫通穴7Hの内壁に分割導体膜7Cを形成することによって表裏両面側の接続パッド12a、12a’間、及び12b、12b’間を夫々導通させている。
励振電極10a、10b、リード電極11a、11b、接続パッド12a、12a’12b、12b’、及び分割導体膜7Cを夫々形成し、各接続パッド、或いはダミー接続パッド51(図5参照)を利用したプローブピンによる測定を行った後で、分割溝31に沿って切断分割することにより、図6(b)の如き個片が得られる。この際、貫通穴7Hに相当する部分は、分割溝31の軌跡に沿った切断により、凹状切欠き7となる。凹状切欠き7内壁の各分割導体膜7Cは互いに分離している。
これによれば、各個片毎に一個の貫通穴を形成すればよいので、エッチング時に使用するマスクの構成が簡略化され、製造コストが低減し、量産性が高まる。
なお、上記の如き構成を備えた圧電基板の振動部の両面に夫々励振電極を対向形成すると共に、各励振電極から張り出し部の終端縁に夫々延びるリード電極と、接続パッドとを形成することにより圧電振動素子が完成する。
また、上記圧電振動素子を構成する圧電基板の張り出し部の同一面上に並置された2つの接続パッドを、表面実装用のパッケージ内の各パッドと夫々導電性接着剤にて接着保持することにより圧電振動子が完成する。
更に、上記の如き圧電振動子を構成するパッケージ対して、発振回路を構成する回路部品を組み付けることにより、表面実装用の圧電発振器が完成する。
【0035】
[第3の従来例に対応する実施の形態]
図7(a)及び(b)は第3の従来例に対応する実施形態の説明図であり、本実施形態では予め開口部61(仕切り62)のサイズ、及びピッチが確定したガイドマスク60を、圧電基板ウェハ30の平坦面側に当接させ、各開口部61内に露出する各圧電基板個片2の振動部4の平坦面側を個別にエッチングする。
即ち、従来技術の説明にて言及した如く、機械加工技術上の制約から、ガイドマスク60の開口部61のサイズ、及びピッチの極小化には限界がある。このため、最小サイズの開口部61よりも更に小さい凹陥部3内の振動部4の肉厚を個別調整するとすれば、ガイドマスク60を使用せざるを得ない。しかし、従来の如く凹陥部側にガイドマスク60を当接した個別エッチングにはデメリットが多過ぎる。
そこで、本発明では、ウェハ30上の圧電基板個片2の配置間隔を、予めガイドマスク60の開口部61の開口寸法、ピッチに合わせて広く設定するとともに、圧電基板個片2間の厚肉部上には2本の平行な分割溝31を形成する。各凹陥部3内の振動部4の肉厚は、予め測定済みの状態であり、肉厚の異なる振動部4を均一肉厚にエッチングするのに要する時間について予め算出しておく。
そして、ガイドマスク60の全ての開口部61の中心部に各振動部4が位置決めされる様に、ウェハ30の平坦面側にガイドマスク60を添設固定する。この状態で、各開口部61を介して各凹陥部内にエッチング液を所定の順序にて充填する。この際、肉厚の厚い振動部4を有した凹陥部から、順次薄い肉厚の振動部を有した凹陥部の順に、エッチング液を充填して行き、全ての振動部の肉厚が規定肉厚にまで薄肉化された時点でエッチング液を一括して洗浄する。
【0036】
この結果、図7(c)に示すように、開口部61内に露出していたウェハ平坦面に凹陥部よりも広い面積を備えた微小凹所としての板厚微調整加工部65が形成された状態となる。なお、符号50は個片間に配置したダミー領域である。
このように、本実施形態では、ウェハの平坦面側にガイドマスクを当接し、振動部の肉厚の微調整が必要な凹陥部内にエッチング液を時間差をもって充填し、エッチング終了時に一括洗浄するようにしたので、ウェハの凹陥部側にはエッチング液による悪影響が及ぼされることがなくなり、分割溝31を介してエッチング液が他所に浸透して不具合をもたらすことが無くなる。また、凹陥部内に充填されたエッチング液がその表面張力により凹陥部内壁に密着できないことによるエッチング不良等の不具合も勿論発生しない。
なお、圧電基板個片間に2本ずつの分割溝31を平行に配置することにより、2本の分割溝間に位置する厚肉部はデッドスペースとなる。このデッドスペースの幅を十分に確保することにより、ある開口部61内に充填されたエッチング液が隣接する圧電基板個片に悪影響を及ぼす虞を回避することができる。このようにして凹陥部内の振動部4の肉厚調整を経たウェハ30を分割溝31に沿って切断分割することにより、凹陥部3の反対側の基板面に振動部4の板厚微調整加工部65を備えた圧電基板個片2を得ることができる。
このような構成を備えた圧電基板2の振動部4の両面に夫々励振電極を対向形成するとともに、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を蒸着等により形成することにより、圧電振動素子が完成する。
【0037】
また、このような圧電振動素子を構成する圧電基板の一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持し、且つパッケージを蓋により気密封止することにより圧電振動子が完成する。
更に、上記圧電振動子を構成するパッケージの適所に発振回路を構成する回路部品を組付け一体化することにより、表面実装型の圧電発振器が完成する。
【0038】
[第4の従来例に対応する実施の形態]
次に、図8(a)は第4の従来例に対応する本発明の実施形態に係る圧電基板の断面図である。
ここでは、異方性を有した圧電結晶材料の一例としてATカット水晶から成る圧電基板を示す。
この水晶基板2は、薄肉の振動部4と、振動部4の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部5と、を備えることにより、両主面上に夫々凹陥部3a、3bを形成した構成を有する。各凹陥部3a、3bは、一方の結晶軸方向(z軸方向)側の内壁5a、5bが、これと直交する他の結晶軸方向(x軸方向)側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えている。そして、各凹陥部3a、3bの各内底面の端縁3a’、3b’の位置が合致するように構成されている。このため、振動部4の有効領域面積を最大とすることができる。
【0039】
このような構成を備えた水晶基板2の凹陥部3a、3bを化学エッチングにより製造する場合は、図8(b)中に示した如く基板の表裏に夫々被覆形成する各マスク(レジスト)70a、70bの開口部70a’、70b’のz軸方向端縁の位置を所定距離Lだけずらしておく。この所定距離Lは、エッチングを行った際に、各凹陥部3a、3bの各内底面の端縁3a’、3b’の位置が合致することとなるように設定すればよい。
なお、上記の如き構成を備えた圧電基板2の振動部4の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を形成することにより圧電振動素子が完成する。
また、前記圧電振動素子を構成する圧電基板2の一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持することにより圧電振動子が構築される。
また、前記圧電振動子を構成するパッケージに、発振回路を構成する回路部品を組み込むことにより表面実装型の圧電発振器が構築される。
なお、図8に示した如き圧電基板の製造に当たっては、平板状の圧電基板2の両主面に対して夫々各凹陥部を掘削形成するためのマスク70a、70bを被覆するマスク形成工程と、各マスクを被覆した圧電基板に対してエッチングを行うことにより、各マスクの開口内に露出した圧電基板の両主面に夫々凹陥部3a、3bを形成する凹陥部形成工程と、が実施されるが、マスク形成工程においては、各マスク70a、70bの位置を、一方の結晶軸方向(z軸方向)にずらすことにより、各凹陥部の各内底面の端縁3a’、3b’同士を合致させる。
なお、上記圧電基板2は、複数の圧電基板個片をシート状に連結した圧電基板ウェハであってもよく、この場合にはバッチ処理による量産が可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 水晶振動素子(圧電振動素子)、2 水晶基板(圧電基板)、3 凹陥部、3a、3b 凹陥部、3a’、3b’ 内底面の端縁、4 振動部、5 環状部、5a 緩斜面、5b 内壁、5A 一辺、6 張り出し部、6a 終端縁、7、7a、7b 凹状切欠き、7H 貫通穴、10a、10b 励振電極、11a、11b リード電極、12a、12b 接続パッド、12a’、12b’ 接続パッド、20 パッケージ、21 パッケージ本体、22 外部電極、23内部電極、25 導電性接着剤、26 金属蓋、30 水晶基板ウェハ(圧電基板ウェハ)、31 分割溝、40 水晶発振器、41 回路部品、50 デッドスペース、51 ダミー接続パッド、60 ガイドマスク、61 開口部、65 板厚微調整加工部、70a、70b マスク、70a’、70b’ 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、異方性を有した圧電結晶から成るものにおいて、
前記環状部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えており、
前記圧電基板の外形寸法は、前記他の結晶軸方向の基板長さよりも、前記一方の結晶軸方向の基板長さが長いことを特徴とする圧電基板。
【請求項2】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成したATカット水晶から成る圧電基板において、
前記ATカット水晶から成る圧電基板の外形寸法は、z’軸方向寸法が、x軸方向寸法よりも長いことを特徴とする圧電基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備え、前記凹陥部側の励振電極から延びるリード電極は前記緩やかな傾斜角度を備えた環状部内壁を経て引き出されることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の長手方向一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする表面実装型の圧電発振器。
【請求項6】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、前記環状部の一辺を延長形成した張り出し部を備えたものにおいて、
前記張り出し部の終端縁に、圧電基板の表裏両面側に貫通する少なくとも一つ凹状切欠きを備えたことを特徴とする圧電基板。
【請求項7】
前記凹状切欠きは、前記張り出し部の終端縁の両端角部に夫々一個ずつ配置されていることを特徴とする請求項6に記載の圧電基板。
【請求項8】
請求項6、又は7の何れか一項に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から前記張り出し部の終端縁に夫々延びるリード電極と、を備え、何れか一方のリード電極は前記凹状切欠き内を経て反対側面に引き回されて該反対側面に形成した接続パッドと導通していることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の張り出し部の同一面上に並置された2つの接続パッドを、表面実装用のパッケージ内の各パッドと夫々導電性接着剤にて接着保持したことを特徴とする圧電振動子。
【請求項10】
請求項9に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする表面実装型圧電発振器。
【請求項11】
請求項6乃至8に記載の圧電基板を複数個シート状に連結した圧電基板ウェハであって、
前記凹状切欠きは、ウェハ上において隣接し合う圧電基板個片間に跨る貫通穴を形成することにより両圧電基板個片上に同時に形成されることを特徴とする圧電基板ウェハの構造。
【請求項12】
請求項6又は7に記載の圧電基板を複数個シート状に連結した圧電基板ウェハであって、
隣接し合う前記圧電基板個片間には、未使用領域が配置されており、
前記凹状切欠きは、一つの圧電基板個片と隣接する未使用領域間に跨る貫通穴を形成することにより該圧電基板個片上に形成されることを特徴とする圧電基板ウェハ。
【請求項13】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板において、
前記凹陥部の反対側の基板面に振動部の板厚微調整加工部を備えたことを特徴とする圧電基板。
【請求項14】
請求項13に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備えたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項15】
請求項14に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする圧電振動子。
【請求項16】
請求項15に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする表面実装型の圧電発振器。
【請求項17】
請求項13に記載の圧電基板を複数個シート状に連結したことを特徴とする圧電基板ウェハ。
【請求項18】
前記圧電基板ウェハは、圧電基板個片間に2本の平行な分割溝を介してデッドスペースを介在させた構成を備えていることを特徴とする請求項17に記載の圧電基板ウェハ。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の圧電基板ウェハ上の各圧電基板個片の凹陥部と反対側面に形成した振動部の板厚微調整加工部は、凹陥部よりも大きい開口部を複数個配列した碁盤目状のガイドマスクを圧電基板ウェハの該反対側面に当接した状態で、該ガイドマスクの各開口部内にエッチング液を充填することによって加工形成されることを特徴とする圧電基板ウェハの製造方法。
【請求項20】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、両主面上に夫々凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、異方性を有した圧電結晶から成るものにおいて、
前記各凹陥部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えており、
前記各凹陥部の各内底面の端縁のうち前記一方の結晶軸方向側の端縁同士の位置が合致するように構成されていることを特徴とする圧電基板。
【請求項21】
前記圧電基板は、ATカット水晶であることを特徴とする請求項20に記載の圧電基板。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備えたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項23】
請求項22に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の長手方向一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする圧電振動子。
【請求項24】
請求項23に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする表面実装型の圧電発振器。
【請求項25】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、両主面上に夫々凹陥部を形成した構成の圧電基板であって異方性を有した圧電結晶から成り、且つ前記各凹陥部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えた圧電基板の製造方法において、
平板状の圧電基板の両主面に対して夫々前記各凹陥部を掘削形成するためのマスクを被覆するマスク形成工程と、
前記各マスクを被覆した圧電基板に対してエッチングを行うことにより、各マスクの開口内に露出した圧電基板の両主面に夫々凹陥部を形成する凹陥部形成工程と、
から成り、
前記各マスクの位置を、前記一方の結晶軸方向にずらすことにより、前記各凹陥部の各内底面の端縁同士を合致させたことを特徴とする圧電基板の製造方法。
【請求項26】
前記圧電基板は、複数の圧電基板個片をシート状に連結した圧電基板ウェハであることを特徴とする請求項25に記載の圧電基板の製造方法。
【請求項1】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、異方性を有した圧電結晶から成るものにおいて、
前記環状部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えており、
前記圧電基板の外形寸法は、前記他の結晶軸方向の基板長さよりも、前記一方の結晶軸方向の基板長さが長いことを特徴とする圧電基板。
【請求項2】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成したATカット水晶から成る圧電基板において、
前記ATカット水晶から成る圧電基板の外形寸法は、z’軸方向寸法が、x軸方向寸法よりも長いことを特徴とする圧電基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備え、前記凹陥部側の励振電極から延びるリード電極は前記緩やかな傾斜角度を備えた環状部内壁を経て引き出されることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の長手方向一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする圧電振動子。
【請求項5】
請求項4に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする表面実装型の圧電発振器。
【請求項6】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、前記環状部の一辺を延長形成した張り出し部を備えたものにおいて、
前記張り出し部の終端縁に、圧電基板の表裏両面側に貫通する少なくとも一つ凹状切欠きを備えたことを特徴とする圧電基板。
【請求項7】
前記凹状切欠きは、前記張り出し部の終端縁の両端角部に夫々一個ずつ配置されていることを特徴とする請求項6に記載の圧電基板。
【請求項8】
請求項6、又は7の何れか一項に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から前記張り出し部の終端縁に夫々延びるリード電極と、を備え、何れか一方のリード電極は前記凹状切欠き内を経て反対側面に引き回されて該反対側面に形成した接続パッドと導通していることを特徴とする圧電振動素子。
【請求項9】
請求項8に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の張り出し部の同一面上に並置された2つの接続パッドを、表面実装用のパッケージ内の各パッドと夫々導電性接着剤にて接着保持したことを特徴とする圧電振動子。
【請求項10】
請求項9に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする表面実装型圧電発振器。
【請求項11】
請求項6乃至8に記載の圧電基板を複数個シート状に連結した圧電基板ウェハであって、
前記凹状切欠きは、ウェハ上において隣接し合う圧電基板個片間に跨る貫通穴を形成することにより両圧電基板個片上に同時に形成されることを特徴とする圧電基板ウェハの構造。
【請求項12】
請求項6又は7に記載の圧電基板を複数個シート状に連結した圧電基板ウェハであって、
隣接し合う前記圧電基板個片間には、未使用領域が配置されており、
前記凹状切欠きは、一つの圧電基板個片と隣接する未使用領域間に跨る貫通穴を形成することにより該圧電基板個片上に形成されることを特徴とする圧電基板ウェハ。
【請求項13】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、少なくとも一方の主面側に凹陥部を形成した構成の圧電基板において、
前記凹陥部の反対側の基板面に振動部の板厚微調整加工部を備えたことを特徴とする圧電基板。
【請求項14】
請求項13に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備えたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項15】
請求項14に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする圧電振動子。
【請求項16】
請求項15に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする表面実装型の圧電発振器。
【請求項17】
請求項13に記載の圧電基板を複数個シート状に連結したことを特徴とする圧電基板ウェハ。
【請求項18】
前記圧電基板ウェハは、圧電基板個片間に2本の平行な分割溝を介してデッドスペースを介在させた構成を備えていることを特徴とする請求項17に記載の圧電基板ウェハ。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の圧電基板ウェハ上の各圧電基板個片の凹陥部と反対側面に形成した振動部の板厚微調整加工部は、凹陥部よりも大きい開口部を複数個配列した碁盤目状のガイドマスクを圧電基板ウェハの該反対側面に当接した状態で、該ガイドマスクの各開口部内にエッチング液を充填することによって加工形成されることを特徴とする圧電基板ウェハの製造方法。
【請求項20】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、両主面上に夫々凹陥部を形成した構成の圧電基板であって、異方性を有した圧電結晶から成るものにおいて、
前記各凹陥部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えており、
前記各凹陥部の各内底面の端縁のうち前記一方の結晶軸方向側の端縁同士の位置が合致するように構成されていることを特徴とする圧電基板。
【請求項21】
前記圧電基板は、ATカット水晶であることを特徴とする請求項20に記載の圧電基板。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の圧電基板の前記振動部の両面に夫々対向形成した励振電極と、各励振電極から圧電基板の長手方向一端縁に延びるリード電極と、各リード電極と夫々接続された接続パッドと、を備えたことを特徴とする圧電振動素子。
【請求項23】
請求項22に記載の圧電振動素子を構成する圧電基板の長手方向一端部を表面実装用のパッケージ内に片持ち状態で接着保持したことを特徴とする圧電振動子。
【請求項24】
請求項23に記載の圧電振動子と、発振回路と、を少なくとも備えたことを特徴とする表面実装型の圧電発振器。
【請求項25】
薄肉の振動部と、該振動部の外周縁を一体的に包囲する厚肉の環状部と、を備えることにより、両主面上に夫々凹陥部を形成した構成の圧電基板であって異方性を有した圧電結晶から成り、且つ前記各凹陥部は、一方の結晶軸方向側の内壁が、これと直交する他の結晶軸方向側の内壁よりも緩やかな傾斜角度を備えた圧電基板の製造方法において、
平板状の圧電基板の両主面に対して夫々前記各凹陥部を掘削形成するためのマスクを被覆するマスク形成工程と、
前記各マスクを被覆した圧電基板に対してエッチングを行うことにより、各マスクの開口内に露出した圧電基板の両主面に夫々凹陥部を形成する凹陥部形成工程と、
から成り、
前記各マスクの位置を、前記一方の結晶軸方向にずらすことにより、前記各凹陥部の各内底面の端縁同士を合致させたことを特徴とする圧電基板の製造方法。
【請求項26】
前記圧電基板は、複数の圧電基板個片をシート状に連結した圧電基板ウェハであることを特徴とする請求項25に記載の圧電基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−45113(P2011−45113A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223897(P2010−223897)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願2008−114041(P2008−114041)の分割
【原出願日】平成14年11月8日(2002.11.8)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【分割の表示】特願2008−114041(P2008−114041)の分割
【原出願日】平成14年11月8日(2002.11.8)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】
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