説明

圧電発振器の製造方法

【課題】圧電発振器内に外部からの不要物の進入による悪影響がない、発振周波数の安定した発振特性を得ることができる圧電発振器の製造方法を提供する。
【解決手段】第2のパッケージ体の圧電振動子部接続用端子上に導電性接合材を塗布し、第2のパッケージ体上に圧電振動子部を配置する工程と、導電性接合材を固化させ、圧電振動子部と第2のパッケージ体とを接続固着する工程と、第2のパッケージ体の側壁切欠部を第1の絶縁性樹脂材により充填する工程と、第2のパッケージ体の第2の側壁部頂部面上及び第1の絶縁性樹脂材表面上と、圧電振動子部の外底面との隙間に、第2の絶縁性樹脂材を充填する工程と、第1の絶縁性樹脂材と前記第2の絶縁性樹脂材を加熱固化する工程とを具備する圧電発振器の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に搭載される電子部品の一つである圧電発振器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯用通信機器等の電子機器には、その電子機器内に搭載される各種電子部品の一つである圧電発振器が、電子機器或いは電子機器に搭載される電子部品の基準信号やクロック信号等の発生源として用いられている。
【0003】
このような圧電発振器には様々な構造のものが発明考案されているが、そのうちの一例を図4に示す。即ち、圧電振動素子(不図示)が内部に搭載されている圧電振動子部401を、第2の空間部431内に前記の圧電振動素子の振動に基づいて発振出力を制御する集積回路素子420やコンデンサ421等の電子部品素子が搭載されている第2のパッケージ体430上に重ね合わせ取着させた構造の圧電発振器400が知られている。かかる圧電発振器400は、マザーボード等の外部実装回路基板上に載置れ、第2のパッケージ体420の外底面に設けられている外部接続用電極端子432を外部実装回路基板の配線に半田接合することにより実装回路基板上に実装される。
【0004】
尚、圧電振動子部401や第2のパッケージ体430は、通常、セラミック材料によって形成されており、その内部や表面には配線導体が形成され、従来周知のセラミックグリーンシート積層法等を採用することにより製作される。又、圧電発振器の小型化により、第2のパッケージ体の第2の空間部内に搭載が困難になったコンデンサ等の電子部品素子を搭載可能とするために、第2のパッケージ体430の側壁部の一部を切り欠いて側壁切欠部440を形成し、その側壁切欠部440部分にコンデンサ421等の電子部品素子を搭載した形態としている。
【0005】
更に、集積回路素子420の内部には、発振回路の他に、圧電振動素子の温度特性に応じて作成された温度補償データに基づいて圧電発振器400の発振周波数を補正するための温度補償回路が設けられており、圧電発振器を組み立てた後、温度補償回路を構成するメモリ内に、第2のパッケージ体21の外底面や外側面等に設けられた温度補償データ書込用電極端子(不図示)から前記の温度補償データを入力する。この温度補償データ書込用電極端子に、別に設けた温度補償データ書込装置のプローブ針を接触させて、上記メモリに温度補償データを入力し、その温度補償データに基づいて、外部温度等により可変する圧電振動素子からの発振周波数信号が、ほぼ一定の周波数値に補償され、圧電発振器外に出力される。
【0006】
従来の圧電発振器400の製造方法としては、内部に圧電振動素子を搭載し、蓋体403により圧電振動素子搭載空間を気密封止した圧電振動子部401を形成する工程と、基体の一方の主面には凹形状の第2の空間部431が形成され、この第2の空間部431内に発振回路が具備された集積回路素子420を搭載し、この集積回路素子420を第2の空間部431を形成する第2の側壁部頂部面に形成した圧電振動子部接続用端子433と電気的に接続し、更に集積回路素子420を基体の他方の主面に形成した外部接続電極端子432とも電気的に接続した第2のパッケージ体430を形成する工程と、この圧電振動子部接続用端子433と圧電振動子部401底面に形成した第2のパッケージ体接続用端子402とを、半田、金属バンプや導電性接着剤等の導電性接合材により機械的及び電気的に接続固着し圧電発振器400を製造する工程が用いられている。
【0007】
従来の圧電発振器については、以下のような先行技術文献に開示がある。
【特許文献1】特開2003−158441公報
【特許文献2】特開2002−329839公報
【特許文献3】特開2005−101848公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図4に図示し且つ前記するように、圧電振動素子を内部に搭載した圧電振動子部401と、集積回路素子420等を搭載した第2のパッケージ体430とを、上下に重ね合わせ接合する従来の製造方法により形成した圧電発振器400では、圧電振動子部401の外底面の四隅に形成した第2のパッケージ体接続用電極端子402と、第2のパッケージ体430の第2の空間部431を囲繞する側壁部の第2の空間部431開口側頂面の4つの角部に形成した圧電振動部接続用電極端子433とを、半田や導電性接着剤等の導電性接合材により電気的且つ機械的に接続しているため、圧電振動子部401の外底面と第2のパッケージ体430の側壁部頂面との間に、圧電振動子部接続用電極端子433と第2のパッケージ体接続用電極端子402及び導電性接合材の厚さ分の隙間が空いてしまう。この隙間から、圧電発振器400を外部実装回路基板に搭載後に外部実装回路基板表面に絶縁性保護のために塗布形成される硬化前のフィル樹脂やコンタミ等の不要物が第2の空間部25内に入り込んでしてしまい、内部に搭載された集積回路素子420や電子部品素子(コンデンサ421)に不要物が接触或いは付着することで、圧電発振器から出力される発振周波数信号に不要な変動が生じていた。
【0009】
又、第2のパッケージ体430の側壁部の一部を切り欠いて側壁切欠部440を形成し、その側壁切欠部440部分にコンデンサ421等の電子部品素子を搭載した形態の第2のパッケージ体430を使用し製造した圧電発振器400では、その側壁切欠部からも、圧電発振器を外部実装回路基板に搭載後に外部実装回路基板表面に絶縁性保護のために塗布形成される硬化前のフィル樹脂やコンタミ等の不要物が第2の空間部内に入り込んでしまう。この不要物が内部に入り込むことにより、圧電発振器から出力される発振周波数信号に不要な変動が生じるという欠点を有していた。
【0010】
従って本発明の目的は、圧電発振器内に外部からの不要物の進入による悪影響がない、発振周波数の安定した発振特性を得ることができる圧電発振器を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前記したような課題を解決するために成されたものであり、第1の基体に凹形状の第1の空間部が形成され、この第1の空間部内に圧電振動素子が搭載され、蓋体を第1の空間部の開口部に被せて気密封止することにより構成されている圧電振動子部を形成する工程と、第2の基体に凹形状の第2の空間部が形成され、この第2の空間部内には集積回路素子が搭載され、この集積回路素子は第2の側壁部頂部面に形成した圧電振動子部接続用端子と電気的に接続されており、更に集積回路素子は外部接続電極端子とも電気的に接続され、第2の側壁部の一部には側壁切欠部が形成され、この側壁切欠部には前記集積回路素子と電気的に接続した電子素子が搭載されている第2のパッケージ体を形成する工程と、この第2のパッケージ体に形成した圧電振動子部接続用端子上に導電性接合材を塗布し、この導電性接合材に各々所定の圧電振動子部の底面に形成した第2のパッケージ体接続用端子が接触するように、第2のパッケージ体上に圧電振動子部を重ねて配置する工程と、重ねて配置した圧電振動子部及び第2のパッケージ体を加熱し、導電性接合材を固化させ、圧電振動子部と第2のパッケージ体とを機械的及び電気的に接続固着する工程と、第2のパッケージ体の側壁切欠部に第1の絶縁性樹脂材を充填する工程と、第2のパッケージ体の第2の側壁部頂部面上及び第2の側壁部頂部面に挟まれた第1の絶縁性樹脂材表面上と、圧電振動子部の外底面との隙間に、第1の絶縁性樹脂材より粘度が低い第2の絶縁性樹脂材を充填する工程と、この第1の絶縁性樹脂材と第2の絶縁性樹脂材を同時に加熱固化することにより、第2の空間部を封止する工程とを具備することを特徴とする圧電発振器の製造方法である。
【0012】
又、第1の絶縁性樹脂材の25℃時の粘度が400〜600Pa・sの範囲内であり、第2の絶縁性樹脂材の25℃時の粘度が8〜20Pa・sの範囲内であることを特徴とする前記記載の圧電発振器の製造方法でもある。
【発明の効果】
【0013】
このような圧電発振器の製造方法によれば、第2のパッケージ体の側壁切欠部を第1の絶縁性樹脂材により充填する工程と、第2のパッケージ体の第2の側壁部頂部面上及び第2の側壁部頂部面に挟まれた第1の絶縁性樹脂材表面上と、圧電振動子部の外底面との隙間に、第1の絶縁性樹脂材より粘度が低い第2の絶縁性樹脂材を充填する工程により、圧電振動子部と第2のパッケージ体21との隙間を容易に塞ぐことができるので、第2のパッケージ体の第2の空間部内に、外部からの不要物の浸入を遮断し、外部環境の影響を受けない安定した圧電発振器を得ることができる。
【0014】
又、第1の絶縁性樹脂材として25℃時の粘度が400〜600Pa・sの範囲内であるものを使用し、第2の絶縁性樹脂材として25℃時の粘度が8〜20Pa・sの範囲内であるものを使用することにより、第1の絶縁性樹脂材としては、側壁切欠部の隙間部分に塗布注入する際のシリンジによる注入作業性が良好であり、又絶縁性樹脂材を側壁切欠部34の隙間部分に塗布注入した場合、塗布注入した絶縁性樹脂材が側壁切欠部以外の部分へ不要に流出することがない。更に第2の絶縁性樹脂材としては、隙間外への塗布注入した絶縁性樹脂材がそのまま第2の空間部内などに流出することがなく、且つ毛管現象により隙間全体に絶縁性樹脂材を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明における圧電発振器の製造方法の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1の(a)〜(c)は、本発明における圧電発振器の製造方法の各工程を、圧電発振器の概略断面図を用いて示した工程説明図である。尚、図1の各断面図は、図2に記載の仮想切断線A−A′の位置で切断した場合の断面図である。図2の(a)及び(b)は、図1(c)以降の本発明における圧電発振器の製造方法の各工程を、圧電発振器の概略断面図を用いて示した工程説明図である。図3は、本実施形態の圧電発振器の製造方法により製造された圧電発振器を示した分解斜視図である。図4の(a)は、圧電発振器の側壁切欠部側から見た側面図であり、(b)は(a)記載の点線円A部分を拡大して図示した部分側面図である。尚、各図では、説明を明りょうにするため構造体の一部を図示せず、また寸法も一部誇張して図示している。特に各部分の厚み寸法は誇張して図示している。
【0016】
図1、図2,図3及び図4において、本発明の実施形態に係る圧電発振器の製造方法により製造される圧電発振器100は、大略的に、圧電振動素子11が内部に搭載された圧電振動子部10と、集積回路素子20を内部に収納する第2のパッケージ体30と、第2のパッケージ体30に形成されている側壁切欠部34を充填した第1の絶縁性樹脂材39と、第2の側壁部31B頂部面にその四隅(圧電振動子部接続用電極端子部分)を残して形成される第2の絶縁性樹脂材40とから構成されている。この圧電発振器100は、この第2のパッケージ体30と圧電振動子部10とを取着し一体に構成したものである。
【0017】
圧電振動子部10の外形は、平面視矩形形状となっており、圧電振動素子11と、この圧電振動素子11を内部に収納して搭載する基体12と、蓋体13とから主に構成されている。
【0018】
第1の基体12は、例えば、ガラス−セラミック、アルミナセラミックス等のセラミック材料から成る第1の基板部12Aと、第1の基板部12Aと同様のセラミック材料から成る第1の側壁部12Bとを積層してなり、従来周知のセラミックグリーンシート積層法等を採用することにより製作される。第1の基板部12Aの一方の主面の辺縁部に沿って第1の側壁部12Bを設けることで、第1の基板12Aの一方の主面上に第1の側壁部12Bに囲繞された第1の空間部12Cを形成し、この第1の空間部12C内に圧電振動素子11を収納するようになっている。ここで、第1の空間部12C内に露出している第1の基板部12Aの一方の主面には、圧電振動素子11に設けられた励振電極(不図示)に対応して搭載パッド(不図示)が設けられている。この搭載パッドは、第1の基板部12Aの他方の主面であってその四隅に設けられた第2のパッケージ体接続用端子12Dのうちの一部と、圧電振動子部10の内部に形成した導配線やビアホール等を介して電気的に接続している。
【0019】
蓋体13は、第1の空間部12Cを気密封止するために用いられ、例えば、42アロイやコバール,リン青銅等の金属からなり、第1の空間部12Cを塞ぐように、第1の基板部12Aの第1の側壁部12Bの上面に蓋体13を載置して固定させる。この固定は、例えば、第1の側壁部12Bの蓋体13と接触する面にメタライズ層を設けておき、また、蓋体13の第1の側壁部12Bと接触する面に封止材を設けておき、メタライズ層と封止材とを接触させた後に例えばシーム溶接することによって行われる。
【0020】
集積回路素子20は、例えばフリップチップ型であって、後述する第2のパッケージ体30に搭載される際に用いられる複数の接続パッド(図示せず)と、その回路形成面には、周囲の温度状態を検知するサーミスタといった感温素子と、圧電振動素子11の温度特性を補償する温度補償データを格納するメモリと、メモリ内の温度補償データに基づいて圧電振動素子11の振動特性を温度変化に応じて補正する温度補償回路と、先の温度補償回路に接続されて所定の発振出力を生成する発振回路とを少なくとも備えている(不図示)。この発振回路で生成された発振出力は、外部に出力された後、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。
【0021】
尚、温度補償回路は、圧電振動素子11の温度特性に応じて作成された温度補償データに基づいて圧電発振器の発振周波数を補正するために用いられている。圧電発振器100には、圧電発振器100を組み立てた後、前記温度補償データを集積回路素子20のメモリ内に格納するために、後述する第2のパッケージ体30の外底面や外側面に温度補償データ書込用の書込制御端子(不図示)が設けられている。温度補償データは、書込制御端子に温度補償データ書込装置のプローブ針を当てることにより集積回路素子20内のメモリに入力されメモリ内に格納される。
【0022】
第2のパッケージ体30は、ガラス布基材エポキシ樹脂やポリカーボネイト,エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂等の絶縁性樹脂材料やガラス−セラミック,アルミナセラミックス等のセラミック材料等から成る平面視矩形形状の第2の基板部31Aと、この第2の基板部31Aと同様のセラミック材料から成る第2の側壁部31Bとからなる第2の基体31を主構成物としており、従来周知のセラミックグリーンシート積層法等を採用することにより製作される。第2の基板部31Aの一方の主面の縁に沿って第2の側壁部31Bを設けることで第2の空間部31Cを形成し、この第2の空間部31C内に集積回路素子20を収納しつつ搭載するようになっている。また、第2の側壁部31Bには電子素子32を搭載するためのスペースを確保するために側壁切欠部34が形成されている。
【0023】
この側壁切欠部34内は第1の絶縁性樹脂材39で充填され、側壁切欠部34内では、第2の空間部31C内と第2のパッケージ体30外空間とを第1の絶縁性樹脂材39により完全に遮断している。又、第2のパッケージ体30の第2の側壁部31B頂部面上及び第2の側壁部31B頂部面に挟まれた第1の絶縁性樹脂材39表面上と、圧電振動子部10の外底面との隙間には、第2の絶縁性樹脂材40が充填されており、第1の絶縁性樹脂材39及び第2の絶縁性樹脂材が充填されることにより、第2の空間部31Cが封止されている。
【0024】
次に本発明の圧電発振器の製造方法について図1及び図2を用いて説明する。
(圧電振動子部と第2のパッケージ体との配置工程)
まず図1(a)において、第2の基体31に凹形状の第2の空間部31Cが形成され、この第2の空間部31C内には集積回路素子20が搭載され、この集積回路素子20は第2の側壁部頂部面に形成した圧電振動子部接続用端子31Eと電気的に接続されており、更に集積回路素子20は外部接続電極端子31Dとも電気的に接続され、第2の側壁部の一部には側壁切欠部34が形成され、この側壁切欠部34には集積回路素子と電気的に接続した電子素子32(本実施形態ではコンデンサ素子)が搭載されている第2のパッケージ体30に形成されている複数個の圧電振動子部接続用端子31Eの上に、導電性接合材として個々に半田15を塗布し、この個々の半田15にそれぞれ所定の第2のパッケージ体接続用端子12Dが接触するように、第1の基体12に凹形状の第1の空間部12Cが形成され、この第1の空間部12C内に圧電振動素子11が搭載され、蓋体13を第1の空間部12Cの開口部に被せて気密封止することにより構成されている圧電振動子部10を重ねて配置する。
【0025】
(圧電振動子部と第2のパッケージ体との接続固着工程)
次に図1(b)において、重ねて配置した圧電振動子部10及び第2のパッケージ体30ごと半田15を加熱し、半田15を固化させ、圧電振動子部接続用端子31Eと第2のパッケージ体接続用端子12Dとを機械的及び電気的に接続固着することで、圧電振動子部10と第2のパッケージ体30とを固着一体化し、圧電発振器100を仮組み立てする。
【0026】
(第1の絶縁性樹脂材充填工程)
次に図1(c)において、第2のパッケージ体30に形成されている側壁切欠部34内を第1の絶縁性樹脂材39により充填する。この第1の絶縁性樹脂材39は、第2の空間部31C内に集積回路素子20を収納した第2のパッケージ体30の第2の側壁部31Bに設けられた圧電振動子部接続用端子31Eと、圧電振動素子11を内部に収納した圧電振動子部10に設けられた第2のパッケージ体接続用端子12Dとを当接させた状態で電子素子32が搭載される側壁切欠部34部分に形成される隙間を跨ぐように、別途用意した樹脂注入用シリンジ41により側壁切欠部34の切欠部分に塗布注入することにより充填される。
【0027】
尚、本実施形態では、粘度が400Pa・s以上600Pa・s以下(25℃時)の範囲内の第1の絶縁性樹脂材39が使用されている。粘度が600Pa・sより大きいと、側壁切欠部34の隙間部分に塗布注入する際のシリンジによる注入作業性が著しく低下してしまい、又粘度が400Pa・sより小さいと、絶縁性樹脂材を側壁切欠部34の隙間部分に塗布注入した場合、塗布注入した絶縁性樹脂材が側壁切欠部39以外の部分(例えば、第2の空間部31C内)へ流出してしまい、側壁切欠部39を絶縁性樹脂材で充填することが非常に難しくなる。
【0028】
(第2の絶縁性樹脂材充填工程)
次に図2(a)において、第2のパッケージ体30の第2の側壁部31B頂部面上及び第2の側壁部31B頂部面に挟まれた第1の絶縁性樹脂材39表面上と、圧電振動子部10の外底面との隙間に、第1の絶縁性樹脂材39より粘度が低い第2の絶縁性樹脂材40を充填する。第2の絶縁性樹脂材40は、第2の空間部31C内に集積回路素子20を収納した第2のパッケージ体30の第2の側壁部31Bに設けられた圧電振動子部接続用端子31Eと、圧電振動素子11を内部に収納した圧電振動子部10に設けられた第2のパッケージ体接続用端子12Dとを当接させた状態で半田15によって機械的・電気的に接合させたときに形成される圧電振動子部10底面と第2のパッケージ体30上面間の隙間を跨ぐように別途用意した樹脂注入用シリンジ42により塗布注入し充填させる。尚、塗布注入方法としては、第2のパッケージ体30の第2の側壁部31B頂部面上及び第2の側壁部31B頂部面に挟まれた第1の絶縁性樹脂材39表面上と、圧電振動子部10の外底面との隙間に、隙間外側に樹脂注入用シリンジ42の注入口を当接し隙間内に第2の絶縁性樹脂材40を塗布注入する。この塗布注入された第2の絶縁性樹脂材40は、注入圧力と毛管現象により隙間全体に広がり、隙間を充填し塞ぐことが可能となる。
【0029】
尚、本実施形態では、粘度が8Pa・s以上20Pa・s以下(25℃時)の範囲内とした第2の絶縁性樹脂材40が使用されている。第2の絶縁性樹脂材40の粘度を8Pa・s(25℃時)よりも小さいのものとした場合、第2のパッケージ体30の第2の側壁部31B頂部面上及び第2の側壁部31B頂部面に挟まれた第1の絶縁性樹脂材39表面上と、圧電振動子部10の外底面との隙間に、第2の絶縁性樹脂材40を塗布注入した際に、第2の空間部31C内などの隙間外への塗布注入した絶縁性樹脂材がそのまま流出してしまう虞がある。又、塗布注入後の第2の絶縁性樹脂材40は毛管現象により隙間内全体に広がっていくが、。第2の絶縁性樹脂材40の粘度を20Pa・s(25℃時)よりも大きいのものとした場合、毛管現象が低下して隙間全体に第2の絶縁性樹脂材40を形成することが難しくなる虞がある。
【0030】
(第1の絶縁性樹脂材及び第2の絶縁性樹脂材加熱固化工程)
次に図2(b)において、第1の絶縁性樹脂材39と第2の絶縁性樹脂材40を同時に加熱固化することにより、第2の空間部31Cを封止し、圧電発振器100を製造する。
【0031】
以上の圧電発振器の製造方法により、第1の絶縁性樹脂材39と第2の絶縁性樹脂材40により、圧電振動子部10と第2のパッケージ体30との間の隙間を完全に塞ぐことができる。したがって、集積回路素子20を収納する第2の空間部31C内への外部からの不要物の浸入を遮断することができ、外部環境の影響を受けない安定した圧電発振器を得ることができる。
【0032】
なお、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、第2の絶縁性樹脂材40は、圧電振動子部10底面と第2のパッケージ体30上面の隙間部分のみを充填するように形成したが、圧電振動子部10の底面と第2のパッケージ体30上面間の隙間部分と、更にその隙間部分から連続する圧電振動子部及び第2のパッケージ体の外側面までを被うように設けても構わない。この場合も本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明に係る圧電発振器の製造方法を、圧電発振器の概略断面図を用いて示した工程説明図であり、(a)は圧電振動子部と第2のパッケージ体との配置工程であり、(b)は圧電振動子部と第2のパッケージ体との接続固着工程であり、(c)は第1の絶縁性樹脂材充填工程を示している。
【図2】図2は、図1(c)記載の工程から続く本発明に係る圧電発振器の製造方法を、圧電発振器の概略断面図を用いて示した工程説明図であり、(a)は第2の絶縁性樹脂材充填工程であり、(b)は第1の絶縁性樹脂材及び第2の絶縁性樹脂材加熱固化工程を示している。
【図3】図3は、本発明に係る圧電発振器の製造方法により製造された圧電発振器の形態を示した分解外観斜視図である。
【図4】図4(a)は、本発明に係る圧電発振器の製造方法により製造された圧電発振器の側壁切欠部側から見た側面図であり、図4(b)は図4(a)に記載の点線円A部分を拡大して示した部分側面図である。
【図5】図5は、従来の圧電発振器の一実施形態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
100・・・圧電発振器
10・・・圧電振動子部
11・・・圧電振動素子
12・・・第1の基体
12A・・・第1の基板部
12B・・・第1の側壁部
12C・・・第1の空間部
12D・・・第2のパッケージ体接続用端子
13・・・蓋体
15・・・半田(導電性接合材)
20・・・集積回路素子
30・・・第2のパッケージ体
31・・・第2の基体
31A・・・第2の基板部
31B・・・第2の側壁部
31C・・・第2の空間部
31D・・・外部接続用電極端子
31E・・・圧電振動子部接続用端子
32・・・電子素子
34・・・側壁切欠部
39・・・第1の絶縁性樹脂材
40・・・第2の絶縁性樹脂材
41,42・・・樹脂注入用シリンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基体に凹形状の第1の空間部が形成され、前記第1の空間部内に圧電振動素子が搭載され、蓋体を前記第1の空間部の開口部に被せて前記第1の空間部を気密封止することにより構成されている圧電振動子部を形成する工程と、
第2の基体に凹形状の第2の空間部が形成され、前記第2の空間部内には集積回路素子が搭載され、前記集積回路素子は第2の側壁部頂部面に形成した圧電振動子部接続用端子と電気的に接続されており、更に前記集積回路素子は外部接続電極端子とも電気的に接続され、前記第2の側壁部の一部には側壁切欠部が形成され、前記側壁切欠部には前記集積回路素子と電気的に接続した電子素子が搭載されている第2のパッケージ体を形成する工程と、
前記第2のパッケージ体に形成した前記圧電振動子部接続用端子上に導電性接合材を塗布し、前記導電性接合材に所定の前記圧電振動子部の底面に形成した第2のパッケージ体接続用端子が接触するように、前記第2のパッケージ体上に前記圧電振動子部を重ねて配置する工程と、
前記圧電振動子部及び前記第2のパッケージ体を加熱し、前記導電性接合材を固化させ、前記圧電振動子部と前記第2のパッケージ体とを機械的及び電気的に接続固着する工程と、
前記第2のパッケージ体の前記側壁切欠部に第1の絶縁性樹脂材を充填する工程と、
前記第2のパッケージ体の第2の側壁部頂部面上及び前記第2の側壁部頂部面に挟まれた第1の絶縁性樹脂材表面上と、前記圧電振動子部の外底面との隙間に、前記第1の絶縁性樹脂材より粘度が低い第2の絶縁性樹脂材を充填する工程と、
前記第1の絶縁性樹脂材と前記第2の絶縁性樹脂材を同時に加熱固化することにより、前記第2の空間部を封止する工程と
を具備することを特徴とする圧電発振器の製造方法。
【請求項2】
第1の絶縁性樹脂材の25℃時の粘度が400〜600Pa・sの範囲内であり、第2の絶縁性樹脂材の25℃時の粘度が8〜20Pa・sの範囲内であることを特徴とする請求項1記載の圧電発振器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−193154(P2008−193154A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22275(P2007−22275)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】