説明

埋込配線の形成方法

【課題】 埋込配線の形成方法に関し、比誘電率の増加をもたらすことなくエッチング残渣を除去するとともに、金属の浸食をもたらすことなく配線露出表面の清浄化を行う。
【解決手段】 下層の配線1を露出させるための開口を伴う配線溝孔エッチング後に、プラズマ励起により配線上の残渣5を剥離処理したのち、大気中に晒すことなく、気体状態の有機系ガス6により配線の露出部表面の清浄化処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は埋込配線の形成方法に関するものであり、特に、ダマシン構造を有する半導体装置の配線溝孔エッチング後の残渣をダメージなく除去するとともに、埋込配線或いはビアの浸食を防止するための構成に特徴のある埋込配線の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の電極材料、配線材料としては、アルミニウムが広く実用されてきたが、近年の半導体装置の微細化や処理の高速化の要求に伴い、電極や配線の形成をアルミニウムで対応することは困難になってきている。
【0003】
そのため、アルミニウムの次世代材料として、エレクトロマイグレーションに強く、比抵抗がアルミニウムより小さな銅を利用する試みが進められている。
【0004】
電極材料や配線材料として銅を用いる場合、銅が選択エッチングの困難な材料であることから、電極や配線はダマシン法により埋込電極或いは埋込配線として形成されることになるが、この場合は、形成される電極や配線のアスペクト比を高くすることによって、半導体装置の微細化、高速化を実現することが可能になる。
【0005】
このような電極材料や配線材料として用いられる銅は、酸化されやすい性質を有しているため、半導体装置の製造過程においては、電極や配線として形成した銅の表面に、酸化銅(CuO)や亜酸化銅(Cu2 O)といった銅酸化物が生成する。
【0006】
この銅酸化物は、電気抵抗の上昇など、半導体装置の特性低下を招くため、電極形成後あるいは配線形成後に、生成してしまった銅酸化物を除去するための清浄化処理が必要となる。
【0007】
一方、電極材料や配線材料を埋め込むための配線溝孔を形成するエッチング工程においては、下層の金属配線が露出するまで配線上下を繋ぐ溝孔を形成した後、レジスト等の残渣を除去するためにプラズマを用いたアッシングが行われるが、このアッシング工程におけるプラズマ処理により、エッチングで露出した下層配線の金属表面は酸化されることになる。
【0008】
そこで、酸化された金属表面は、通常、ブラシスクラバーによるパーティクル除去と、絶縁層上に生成した銅酸化物およびビアホール底に露出する銅の表面に生成した銅酸化物の薬液による除去とが行われる。
【0009】
その際用いられる薬液としては、クエン酸〔C3 4 (OH)(COOH)3 〕やシュウ酸〔(COOH)2 〕などのカルボン酸、あるいはフッ化水素(HF)等の銅酸化物は除去するが金属銅に対してはエッチング作用の少ないものが選択されるのが通常である。
【0010】
或いは、銅酸化物に水蒸気あるいは酢酸を作用させることにより、その銅酸化物を除去する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0011】
一方、半導体装置の高速化のためには、配線・電極の低抵抗化とともに、寄生容量を低減するためには層間絶縁膜の低誘電率化が必要となり、低誘電率の層間絶縁膜としてポリアエーテル等の低誘電率の有機絶縁材料(例えば、ダウケミカル社登録商標SiLK)やポーラスシリカの採用が試みられている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−271192号公報
【特許文献2】特開2004−071705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、従来の清浄化処理には、以下に示すような問題点があった。
従来の清浄化処理では、パーティクル除去および薬液による除去が行われ、その後、付着している薬液除去のために純水洗浄が行われるが、この純水洗浄において、薬液が次第に除去されることによって洗浄水が酸性から中性に変化してpH値が高くなるに伴って埋込電極や埋込配線を形成している銅の浸食が起こるという問題点がある。
【0013】
このとき、薬液濃度が高くpH値が低い酸性の場合には、電極や配線の露出面における浸食が若干進行する程度であるが、薬液濃度が低くpH値が高まり中性に近くなった場合には、電極や配線を形成している銅を構成する結晶粒界に局所的な浸食が起こって表面に凹凸が生じ、電極や配線の露出面の平坦性を保つことが困難になる。
【0014】
一方、層間絶縁膜としてポーラスシリカ等の有機系の低誘電率絶縁膜を用いた場合に、配線溝孔を形成工程後の残渣除去のためのアッシング工程において層間絶縁膜の誘電率が増大して、半導体装置の高速化を妨げるという問題が発生する。
【0015】
例えば、ポーラスシリカ膜に対して400sccmのNH3 ガスを流して120Paの圧力にし、250℃において1000Wの電力を印加して60秒間プラズマ処理を行ったところ、処理前に2.2であった比誘電率が2.8へと大幅に増大されるのが観測された。
【0016】
したがって、本発明は、比誘電率の増加をもたらすことなくエッチング残渣を除去するとともに、金属の浸食をもたらすことなく配線露出表面の清浄化を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記課題を解決するために、本発明は、埋込配線の形成方法において、下層の配線1を露出させるための開口を伴う配線溝孔エッチング後に、プラズマ励起により配線上の残渣5を剥離処理したのち、大気中に晒すことなく、気体状態の有機系ガス6により配線の露出部表面の清浄化処理を行う工程を有することを特徴とする。
【0018】
このように、プラズマ励起により配線上の残渣5を剥離処理したのち、大気中に晒すことなく、気体状態の有機系ガス6により配線の露出部表面の清浄化処理を行うことにより、従来の液体状の薬液を用いた場合のような洗浄処理が不要になるため、洗浄処理に伴う配線の露出表面の再酸化或いは埋込配線の浸食を回避することができる。
【0019】
また、残渣5を剥離処理したのちの配線は大気中に晒されることがないので、配線の露出表面の大気中のO2 等による酸化を回避することができ、さらに、清浄化処理後の絶縁膜2の比誘電率の増加も抑制することができる。
【0020】
この場合、清浄化処理は、ゲートバルブを介して接続された処理室でプラズマ4による剥離処理とは個別に行っても良いが、剥離処理を行った処理装置内において、プラズマ4を切った状態で引き続き行っても良く、それによって、装置構成が簡素化される。
【0021】
また、プラズマ励起による剥離処理工程においてプラズマ4を発生させるためには、酸素、水素、窒素、アンモニア、或いは、フロロカーボン系ガスの内の少なくとも1種のガスを用いれば良く、配線溝孔3を形成する絶縁膜2がSiを構成元素として含む有機系の低誘電率膜の場合には反応がソフトな水素或いはアンモニアが望ましい。
【0022】
また、清浄化処理工程において使用する有機系ガス6としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸或いは酪酸等のカルボン酸を有するガスが望ましく、清浄化処理に伴って配線溝孔3を形成する絶縁膜2の誘電率が増大することがない。
なお、カルボン酸の分子量が大きくなるほど反応がソフトになる。
【0023】
或いは、清浄化処理工程において使用する有機系ガス6としては、メタノール等のアルコール類でも良く、一般的にはカルボン酸を有するガスより反応がソフトであるので、配線溝孔3を形成する絶縁膜2がSiを構成元素として含む有機系絶縁膜2である場合にも、清浄化処理に伴って絶縁膜2の誘電率が増大することがない。
【0024】
上述の残渣5の剥離処理及びその後の清浄化処理は、各種の材料からなる配線に適用されるものであるが、表面の酸化物やその後の腐食が問題となる銅或いはCu−Al,Cu−Si等の銅を含む合金の場合に特に有効となる。
【0025】
また、処理装置の構成としては、プラズマ励起用電極、被処理基板を加熱する加熱手段、及び、有機系ガス6を多数の微小孔から供給する有機系ガス供給手段を内部に備えた処理チャンバー、及び、処理チャンバー内にプラズマ用ガスを供給するプラズマ用ガス供給用配管を少なくとも備えれば良い。
【0026】
この場合、有機系ガス6となる有機系材料は一般的には常温で液体であるので、その場合には、有機系ガス供給手段に有機系ガス6を供給する有機系ガス供給用配管の途中に有機系材料を気化して有機系ガス6とする気化器を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、プラズマ処理後の清浄化工程を気相処理として行っているので、処理後の洗浄処理が不要になるため、配線の腐食等が発生することなくビアコンタクト歩留りの高い銅多層配線を得ることができる。
【0028】
また、清浄化工程に伴って配線溝孔を形成する絶縁膜の誘電率が増大することがないので、設計通りの高速半導体装置を構成することができる。
【0029】
なお、CVD装置などの処理チャンバー内の清掃に関するものであるが、処理チャンバーの内壁に付着した金属薄膜に、カルボン酸またはその誘導体を含むクリーニングガスを作用させることにより、金属を錯体化して除去する方法(例えば、特開2001−254178号公報参照)が提案されているが、半導体装置を構成する配線材料及び層間絶縁膜に対する影響を全く考慮していないものであり、本発明の具体的構成を示唆するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、下層配線或いはビア上に層間絶縁膜を設け、シングルダマシン法或いはデュアルダマシン法を用いて上層配線或いはビアを形成する際に、層間絶縁膜にフロロカーボン等を用いたドライエッチングによって埋込用溝或いは埋込用孔を形成したのち、プラズマを用いたアッシング処理によってエッチング後の剥離残渣を除去し、引き続いて、被処理基板を大気中に晒すことなく、有機系ガスを用いて下層配線やビアの露出表面に形成された酸化物を還元して清浄化処理したのち、埋込用溝或いは埋込用孔中にCu等の金属を埋め込み、CMP法によって不要部を研磨することによって埋込配線或いはビアを同時に或いは個別の工程で形成するものである。
【0031】
この場合のアッシング処理におけるガス種としては主に酸素が用いられるが、水素、窒素、アンモニア、フロロカーボン系ガスを混合させても良く、酸素を使用しない場合には、灰化処理というより物理的なスパッタ反応による除去が中心となるが、チャンバ内の僅かな酸素成分により金属表面は酸化される。
【0032】
また、清浄化処理に用いる有機系ガスとしては、カルボン酸或いはアルコール類を用い、例えば、銅に生成した酸化銅あるいは亜酸化銅といった銅酸化物を、気体状態のカルボン酸〔RCOOH:R=H,Cn 2n+1,Cn m 2n-m+1(n,mは自然数、X=F
,Cl)〕を用いて還元して清浄化される。
【0033】
カルボン酸は、銅酸化物に対して還元剤として作用し、銅酸化物を金属銅(Cu)に還元し、二酸化炭素(CO2 )及び水(H2 O)を生成する。
例えば、カルボン酸としてギ酸〔HCOOH:メタン酸(methanoic acid)〕を用いた場合、酸化銅(CuO)は反応式、
HCOOH+CuO→Cu+CO2 +H2
に基づいて、また、亜酸化銅(Cu2 O)は反応式、
HCOOH+Cu2 O→2Cu+CO2 +H2
に基づいて、それぞれ金属銅に還元される。
【0034】
ここで、ギ酸による酸化銅または亜酸化銅の還元反応における標準ギブズエネルギーは、上記反応式に基づいて生成するH2 Oが気体状態の場合には、それぞれ約−132kJ/mol、約−112kJ/molとなる。
即ち、この還元反応は、金属銅を生成する方向に進行し易く、この方向に反応が進行する還元温度で処理を行うことにより、半導体装置の製造過程で電極や配線に生成した酸化銅あるいは亜酸化銅を還元することができるようになる。
【0035】
この場合、気相清浄化処理において生成する二酸化炭素および水は、上記の反応条件においては気体状態であるため、気相清浄化処理後に、これらが不純物として残留することがなく、したがって、従来のような水蒸気による処理を必要とせず、気相清浄化処理後の工程に影響を及ぼすことなく、安定した特性を有する半導体装置を製造することが可能になる。
【0036】
また、この場合の気相清浄化処理条件としては、処理チャンバ内のカルボン酸の分圧を50Pa〜10000Paの範囲とし、還元温度100℃〜400℃、全圧100Torr〜300Torrで還元時間3分、特に還元温度400℃の場合には、圧力100Torr〜200Torrで還元時間1分の反応条件で処理することにより、電極や配線の表面に凹凸を生じさせることなく、短い還元時間で均一に銅酸化物を還元することができる。
【0037】
この様な清浄化処理によって、溝孔エッチングで開口露出した下層銅配線表面上に付着するフロロカーボンと層間絶縁膜材料を起因するデポ物、ならびにアッシングによる銅酸化物を同時に除去することが可能になる。
【0038】
なお、化学大辞典(共立出版刊)によれば、銅と蟻酸が反応し蟻酸銅となる場合もあるが、生成された蟻酸銅は加熱により気化するので、アッシングで取れ切れなかった銅表面に付着したデポ物を蟻酸蒸気を用い、気相中でリフトオフして装置のダウンフローで排出除去できる。
【0039】
なお、還元剤として用いるカルボン酸は、ギ酸〔HCOOH〕のほか、
酢酸〔CH3 COOH:エタン酸(ethanoic acid )〕
プロピオン酸〔C2 5 COOH:プロパン酸(propanoic acid)〕 酪酸〔C3 7 COOH:ブタン酸(butanoic acid )〕
などの比較的沸点の低いものを用いるのが好ましい。
【0040】
また、有機系ガスとして、カルボン酸を含む成分以外に、メタノール或いはエタノール等のアルコール系成分を気化させて噴出させても清浄化作用が得られる。
【実施例1】
【0041】
次に、図2乃至図5を参照して、本発明の実施例1のデュアルダマシン工程を説明するが、まず、図2及び図3を参照して本発明の実施に用いる処理装置を説明する。
図2参照
図2は本発明の実施に用いる処理装置の概念的構成図であり、アッシング工程における状態を示している。
この処理装置は、ガス導入口12及び排気口13を備えた処理チャンバー11、処理チャンバー11内に設けられたステージを兼ねる下部電極14、下部電極14と対向するように設けられたリング状上部電極15、リング状上部電極15の中央部に移動可能に嵌め込まれた有機系ガス噴出シャワーヘッド16、有機系材料を貯蔵する貯蔵槽19と有機系ガス噴出シャワーヘッド16との間に接続された有機系ガス供給用配管17、有機系ガス供給用配管17の途中に設けられ有機系材料を加熱して気化して有機系ガスとする気化器18、及び、ステージを兼ねる下部電極14の下部に配置されて被処理基板21を加熱するヒータ20によって構成される。
【0042】
アッシング工程においては、ガス導入口13からO2 ガス等のガス種22を処理チャンバー11内に導入し、リング状上部電極15と下部電極14との間に電力を印加してガス種22をプラズマ化して、発生したプラズマによって、配線溝孔をエッチング形成した被処理基板21の表面に付着しているエッチング残渣をアッシング処理して排気口13から除去する。
【0043】
図3参照
図3は清浄化処理工程における処理装置の概念的構成図であり、有機系ガス噴出シャワーヘッド16を下降させてリング状上部電極15の中央部に嵌め込んだ状態を示しており、この状態で有機系ガス噴出シャワーヘッド16から気化器18によって気化された有機系ガス23を噴出して、ヒータ20によって反応生成物が気体状態となる温度以上に加熱したアッシング処理後の被処理基板21を清浄化処理して、気体状の反応生成物及び未反応の有機系ガス23を排気口13からダウンフローで排出する。
【0044】
次に、図4及び図5を参照して、本発明の実施例1のデュアルダマシン工程を説明する。
図4参照
まず、p型シリコン基板31に素子分離絶縁膜32を形成したのち、ゲート絶縁膜33を介してゲート電極34を設け、このゲート電極34をマスクとしてn型不純物を導入することによってn型エクステンション領域35を形成し、次いで、サイドウォール36を形成したのち、再び、n型不純物を導入することによって、n型ソース・ドレイン領域37を形成する。
【0045】
次いで、全面にCoを堆積させたのち、熱処理することによってCoシリサイド電極38,39を形成し、次いで、未反応のCoを除去したのち全面にSiO2 膜40及びBPSG膜41を堆積させたのち、表面平坦化を行いエッチングストッパーとなるSiCN膜42を形成する。
【0046】
次いで、n型ソース・ドレイン領域37に達するビアホールを形成したのち、TiNからなるバリア膜43を介してWを埋め込み、CMP法によって不要部を除去することによってWプラグ44を形成する。
【0047】
次いで、プラズマCVD法を用いてSiOCからなる第1配線用絶縁膜45を堆積させたのち、Wプラグ44を露出する配線用溝を形成し、次いで、TaNからなるバリア膜46を介してCuを埋め込み、CMP法によって不要部を除去することによって第1Cu埋込配線47を形成する。
【0048】
次いで、プラズマCVD法を用いて厚さが、例えば、50nmのSiCN膜48、厚さが、例えば、150nmのSiO2 からなるビア形成用絶縁膜49、厚さが、例えば、50nmのSiCN膜50、厚さが、例えば、250nmのSiOCからなる第2配線用絶縁膜51、及び、厚さが、例えば、50nmのSiCN膜52を順次堆積させる。
【0049】
次いで、フロロカーボン系のエッチングガスを用いたプラズマエッチングによって、第2配線用絶縁膜51に幅が例えば、0.12μmの配線用溝53を形成したのち、ビア形成用絶縁膜49に第1Cu埋込配線47に達する直径が例えば、0.12μmのビアホール54を形成する。
【0050】
図5参照
次いで、配線用溝53及びビアホール54を形成した被処理基板を上述の処理チャンバー内の下部電極14上に載置・固定したのち、ガス導入口から400sccmのO2 を導入して70Paとした状態で、ヒータ20によって80℃の基板温度に加熱して600Wの電力を印加して酸素プラズマ55を発生させ、この酸素プラズマ55中で60秒間のプラズマ処理を行って、エッチング処理に伴うレジスト残渣等のエッチング残渣をアッシングして除去する。
【0051】
引き続いて、プラズマを切ったのち、処理チャンバー11内に有機系ガス噴出シャワーヘッド16から気化器18によって気化された蟻酸ガス56を蟻酸ガス56の分圧が200Paになるように導入して、ヒータ20によって基板温度を150℃とし、全圧が200Torrの状態で還元時間2分で被処理基板を還元処理して、第1Cu埋込配線47の表面に形成された銅酸化物を金属銅に還元するとともに、アッシングで取れ切れなかった銅表面に付着したデポ物を蟻酸化反応によって形成された蟻酸銅とともにリフトオフし、還元反応で生成されたCO2 及び水蒸気(H2 O)とともに排気口13から排気除去する。
【0052】
次いで、再び、配線用溝53及びビアホール54をTaNからなるバリア膜57を介してCuで埋め込み、CMP法によって不要部を除去することによってCuビア58及び第2Cu埋込配線59を形成する。
【0053】
以降は、必要とする多層配線層数に応じてビア形成用絶縁膜及び層間絶縁膜の堆積工程、配線用溝及びビアホールの形成工程、アッシング処理工程及び清浄化処理工程、及び、ビア及び埋込配線の形成工程を繰り返すことによって半導体装置が完成する。
【0054】
この本発明の実施例1において、上述の図示した2層配線構造において20M(2×107 )個のビアチェーンを形成して信頼性を確認したところ、ビアチェーンのコンタクト歩留りは100%であり、十分な信頼性が得られた。
【0055】
また、この場合のSiOC膜からなる第2配線用絶縁膜51の清浄化処理後の比誘電率を測定したところ、約2.7であり、処理前と殆ど同じか寧ろ低下していた。
なお、バリア膜52,50,48となるSiCN膜の清浄化処理後の比誘電率を測定したところ、約40であり、処理前の約3.8に対して若干増大していたが、このバリア膜52,50,48は構造的に配線の寄生容量に対する影響は小さいので問題はない。
【0056】
このように、本発明の実施例1においては、アッシング処理後の清浄化処理を気化した蟻酸ガスを用いて気相処理として行っているので、反応生成物等は被処理基板の表面の残存することがなく、したがって、純水を用いた洗浄処理が不要になるので、埋込配線或いはビアの腐食に伴うコンタクト不良が発生することがなく、また、清浄化処理に伴う層間絶縁膜の比誘電率の増大も見られないので、寄生容量の増大による信号遅延が発生することがない。
【0057】
因に、上述の酸素プラズマによるアッシング処理工程の後、蟻酸ガスによる清浄化処理を行わずに5%シュウ酸水溶液で被処理基板を洗浄した後、純水リンスを行い、IPA(イソプロピルアルコール)に浸漬したのち、窒素ブローを行い被処理基板を乾燥させ、次いで、バリア膜、銅埋めこみ等の工程を経て、二層配線構造を作製したところ、実施例1と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりは50%であり、信頼性が大きく欠如していた。
【実施例2】
【0058】
次に、本発明の実施例2のデュアルダマシン工程を説明するが、第2配線用絶縁膜51としてポリアエーテル等の低誘電率の有機絶縁材料(例えば、ダウケミカル社登録商標SiLKTM)を用いて塗布形成したものであり、それにともなって、アッシング処理を水素プラズマを用いて行うとともに、清浄化処理をメタノールガスを用いて行ったものであり、基本的な工程及び構造は上記の実施例1と全く同様であるので、詳細な工程の説明は省略する。
【0059】
この実施例2のアッシング処理においては、ガス導入口12から300sccmのH2 ガスを導入して圧力を70Paとした状態で、ヒータ20によって80℃の基板温度に加熱して600Wの電力を印加して水素プラズマを発生させ、この水素プラズマ中で60秒間のプラズマ処理を行って、エッチング処理に伴うレジスト残渣等のエッチング残渣をアッシングして除去する。
なお、この場合の基本的反応は、水素プラズマによる物理的なスパッタエッチングが主なものであるが、処理チャンバー11内に残留するO2 によるアッシングも生ずる。
【0060】
引き続いて、プラズマを切ったのち、処理チャンバー11内に有機系ガス噴出シャワーヘッド16から気化器18によって気化されたメタノールガスをメタノールガスの分圧が200Paになるように導入して、ヒータ20によって基板温度を150℃とし、全圧が200Torrの状態で還元時間2分で被処理基板を還元処理して、第1Cu埋込配線47の表面に形成された銅酸化物を金属銅に還元するものである。
【0061】
この実施例2におけるコンタクト歩留りは、上述の実施例1と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりとして100%であり、実施例1と同等の信頼性が得られた。
【0062】
因に、上述の水素プラズマによるアッシング処理工程の後、メタノールガスによる清浄化処理を行わずに5%シュウ酸水溶液で被処理基板を洗浄した後、純水リンスを行い、IPAに浸漬したのち、窒素ブローを行い被処理基板を乾燥させ、次いで、バリア膜、銅埋めこみ等の工程を経て、二層配線構造を作製したところ、実施例1と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりは40%であり、信頼性が大きく欠如していた。
【実施例3】
【0063】
次に、本発明の実施例3のデュアルダマシン工程を説明するが、第2配線用絶縁膜51としてポーラスシリカを用いたものであり、それにともなって、アッシング処理を酸素プラズマを用いて軽めに行うとともに、清浄化処理を蟻酸ガスより反応がソフトな酢酸ガスを用いて行ったものであり、基本的な工程及び構造は上記の実施例1と全く同様であるので、詳細な工程の説明は省略する。
【0064】
この場合のポーラスシリカは、例えば、触媒化成工業株式会社製のポーラスシリカ原料(IPS)を被処理基板上にスピンコートしたのち、焼成(ベーク)及び硬化(キュア)することによって形成する。
【0065】
また、この実施例3のアッシング処理においては、ガス導入口12から200sccmの酸素ガス及び200sccmのN2 ガスを導入して圧力を70Paとした状態で、ヒータ20によって80℃の基板温度に加熱して600Wの電力を印加して水素プラズマを発生させ、この水素プラズマ中で60秒間のプラズマ処理を行って、エッチング処理に伴うレジスト残渣等のエッチング残渣をアッシングして除去する。
【0066】
引き続いて、プラズマを切ったのち、処理チャンバー11内に有機系ガス噴出シャワーヘッド16から気化器18によって気化された酢酸ガスを酢酸ガスの分圧が200Paになるように導入して、ヒータ20によって基板温度を200℃とし、全圧が200Torrの状態で還元時間2分で被処理基板を還元処理して、第1Cu埋込配線47の表面に形成された銅酸化物を金属銅に還元するものである。
【0067】
この実施例3におけるコンタクト歩留りは、上述の実施例1と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりとして100%であり、実施例1と同等の信頼性が得られた。
また、清浄化処理後のポーラスシリカの被誘電率は約2.2であり、処理前の被誘電率の間に殆ど変化は見られなかった。
【0068】
因に、上述の酸素プラズマによるアッシング処理工程の後、酢酸ガスによる清浄化処理を行わずに5%シュウ酸水溶液で被処理基板を洗浄した後、純水リンスを行い、IPAに浸漬したのち、窒素ブローを行い被処理基板を乾燥させ、次いで、バリア膜、銅埋めこみ等の工程を経て、二層配線構造を作製したところ、実施例1と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりは45%であり、信頼性が大きく欠如していた。
【実施例4】
【0069】
次に、本発明の実施例4のデュアルダマシン工程を説明するが、ビア形成等絶縁膜49として第2配線用絶縁膜51と同じSiOC膜を用いたものであり、それ以外の工程及び構造は上記の実施例1と全く同様であるので、詳細な工程の説明は省略する。
【0070】
この実施例4におけるコンタクト歩留りは、上述の実施例1と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりとして100%であり、実施例1と同等の信頼性が得られた。
【0071】
因に、上述の酸素プラズマによるアッシング処理工程の後、酢酸ガスによる清浄化処理を行わずに5%シュウ酸水溶液で被処理基板を洗浄した後、純水リンスを行い、IPAに浸漬したのち、窒素ブローを行い被処理基板を乾燥させ、次いで、バリア膜、銅埋めこみ等の工程を経て、二層配線構造を作製したところ、実施例1と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりは45%であり、信頼性が大幅に低下していた。
【実施例5】
【0072】
次に、図6乃至図8を参照して、本発明の実施例5のシングルダマシン工程を説明するが、デュアルダマシン工程をシングルダマシン工程に置き換えただけで、基本的構造及び処理条件は上記の実施例1と全く同様である。
図6参照
まず、図示を省略するが、図4と全く同様にMOSFET及びn型ソース・ドレイン領域上に設けたCoシリサイド電極に接続するWプラグ44を形成したのち、プラズマCVD法を用いてSiOCからなる第1配線用絶縁膜45を堆積させたのち、Wプラグ44を露出する配線用溝を形成し、次いで、TaNからなるバリア膜46を介してCuを埋め込み、CMP法によって不要部を除去することによって第1Cu埋込配線47を形成する。
【0073】
次いで、プラズマCVD法を用いて厚さが、例えば、50nmのSiCN膜48、厚さが、例えば、150nmのSiO2 からなるビア形成用絶縁膜49、及び、厚さが、例えば、50nmのSiCN膜50を順次堆積させたのち、フロロカーボン系のエッチングガスを用いたプラズマエッチングによって、ビア形成用絶縁膜49に第1Cu埋込配線47に達する直径が例えば、0.12μmのビアホール60を形成する。
【0074】
次いで、ビアホール60を形成した被処理基板を上述の処理チャンバー内の下部電極14上に載置・固定したのち、ガス導入口から400sccmのO2 を導入して70Paとした状態で、ヒータ20によって80℃の基板温度に加熱して600Wの電力を印加して酸素プラズマ61を発生させ、この酸素プラズマ61中で60秒間のプラズマ処理を行って、エッチング処理に伴うレジスト残渣等のエッチング残渣をアッシングして除去する。
【0075】
引き続いて、プラズマを切ったのち、処理チャンバー11内に有機系ガス噴出シャワーヘッド16から気化器18によって気化された蟻酸ガス62を蟻酸ガス62の分圧が200Paになるように導入して、ヒータ20によって基板温度を150℃とし、全圧が200Torrの状態で還元時間2分で被処理基板を還元処理して、第1Cu埋込配線47の表面に形成された銅酸化物を金属銅に還元するとともに、アッシングで取れ切れなかった銅表面に付着したデポ物を蟻酸化反応によって形成された蟻酸銅とともにリフトオフし、還元反応で生成されたCO2 及び水蒸気(H2 O)とともに排気口13から排気除去する。
【0076】
図7参照
次いで、再び、ビアホール60をTaNからなるバリア膜63を介してCuで埋め込み、CMP法によって不要部を除去することによってCuビア64を形成する。
【0077】
次いで、再び、プラズマCVD法を用いて、厚さが、例えば、250nmのSiOCからなる第2配線用絶縁膜51及び厚さが、例えば、50nmのSiCN膜52を順次堆積させる。
【0078】
次いで、再び、フロロカーボン系のエッチングガスを用いたプラズマエッチングによって、第2配線用絶縁膜51にCuビア64に達する幅が例えば、0.12μmの配線用溝65を形成する。
【0079】
図8参照
次いで、再び、配線用溝65を形成した被処理基板を上述の処理チャンバー内の下部電極14上に載置・固定したのち、ガス導入口から400sccmのO2 を導入して70Paとした状態で、ヒータ20によって80℃の基板温度に加熱して600Wの電力を印加して酸素プラズマ66を発生させ、この酸素プラズマ66中で60秒間のプラズマ処理を行って、エッチング処理に伴うレジスト残渣等のエッチング残渣をアッシングして除去する。
【0080】
引き続いて、プラズマを切ったのち、処理チャンバー11内に有機系ガス噴出シャワーヘッド16から気化器18によって気化された蟻酸ガス67を蟻酸ガス67の分圧が200Paになるように導入して、ヒータ20によって基板温度を150℃とし、全圧が200Torrの状態で還元時間2分で被処理基板を還元処理して、Cuビア64の表面に形成された銅酸化物を金属銅に還元するとともに、アッシングで取れ切れなかった銅表面に付着したデポ物を蟻酸化反応によって形成された蟻酸銅とともにリフトオフし、還元反応で生成されたCO2 及び水蒸気(H2 O)とともに排気口13から排気除去する。
【0081】
次いで、再び、配線用溝65をTaNからなるバリア膜68を介してCuで埋め込み、CMP法によって不要部を除去することによって第2Cu埋込配線69を形成する。
【0082】
以降は、必要とする多層配線層数に応じてビア形成用絶縁膜堆積工程、ビアホールの形成工程、アッシング処理工程及び清浄化処理工程、ビア形成工程、層間絶縁膜の堆積工程、配線用溝の形成工程、アッシング処理工程及び清浄化処理工程、及び、埋込配線の形成工程を繰り返すことによって半導体装置が完成する。
【0083】
この本発明の実施例5においても実施例1と同様の構造の2層配線構造において20M(2×107 )個のビアチェーンを形成して信頼性を確認したところ、ビアチェーンのコンタクト歩留りは100%であり、十分な信頼性が得られた。
【0084】
因に、上述のビアホール形成工程及び配線用溝の形成工程の各工程において、酸素プラズマによるアッシング処理工程の後、蟻酸ガスによる清浄化処理を行わずに5%シュウ酸水溶液で被処理基板を洗浄した後、純水リンスを行い、IPAに浸漬したのち、窒素ブローを行い被処理基板を乾燥させ、次いで、バリア膜、銅埋めこみ等の工程を経て、二層配線構造を作製したところ、実施例1と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりは40%であり、信頼性の大幅な低下が見られた。
【実施例6】
【0085】
次に、本発明の実施例6のシングルダマシン工程を説明するが、第2配線用絶縁膜51としてポリアエーテル等の低誘電率の有機絶縁材料(例えば、ダウケミカル社登録商標SiLKTM)を用いて塗布形成したものであり、それにともなって、配線用溝のエッチング形成後のアッシング処理を水素プラズマを用いて行うとともに、清浄化処理をメタノールガスを用いて行ったものであり、基本的な工程及び構造は上記の実施例5と全く同様であるので、詳細な工程の説明は省略する。
【0086】
この実施例6の配線用溝のエッチング形成後のアッシング処理においては、ガス導入口12から300sccmのH2 ガスを導入して圧力を70Paとした状態で、ヒータ20によって80℃の基板温度に加熱して600Wの電力を印加して水素プラズマを発生させ、この水素プラズマ中で60秒間のプラズマ処理を行って、エッチング処理に伴うレジスト残渣等のエッチング残渣をアッシングして除去する。
【0087】
引き続いて、プラズマを切ったのち、処理チャンバー11内に有機系ガス噴出シャワーヘッド16から気化器18によって気化されたメタノールガスをメタノールガスの分圧が200Paになるように導入して、ヒータ20によって基板温度を150℃とし、全圧が200Torrの状態で還元時間2分で被処理基板を還元処理して、第1Cu埋込配線47の表面に形成された銅酸化物を金属銅に還元するものである。
【0088】
この実施例6におけるコンタクト歩留りは、上述の実施例5と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりとして100%であり、実施例5と同等の信頼性が得られた。
【0089】
因に、上述のビアホール形成工程後の酸素プラズマによるアッシング処理工程の後、蟻酸ガスによる清浄化処理を行わずに5%シュウ酸水溶液で被処理基板を洗浄した後、純水リンスを行い、IPAに浸漬したのち、窒素ブローを行い被処理基板を乾燥させるとともに、配線用溝の形成工程後の水素プラズマによるアッシング処理工程の後、メタノールガスによる清浄化処理を行わずに5%シュウ酸水溶液で被処理基板を洗浄した後、純水リンスを行い、IPAに浸漬したのち、窒素ブローを行い被処理基板を乾燥させて二層配線構造を作製したところ、実施例6と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりは50%であり、信頼性の大幅な低下が見られた。
【実施例7】
【0090】
次に、本発明の実施例7のシングルダマシン工程を説明するが、第2配線用絶縁膜51としてポーラスシリカを用いたものであり、それにともなって、配線用溝のエッチング形成後のアッシング処理を酸素プラズマを用いて軽めに行うとともに、清浄化処理を蟻酸ガスより反応がソフトな酢酸ガスを用いて行ったものであり、基本的な工程及び構造は上記の実施例5と全く同様であるので、詳細な工程の説明は省略する。
【0091】
この場合もポーラスシリカも上述の実施例3と同様に、例えば、触媒化成工業株式会社製のポーラスシリカ原料(IPS)を被処理基板上にスピンコートしたのち、焼成(ベーク)及び硬化(キュア)することによって形成する。
【0092】
また、この実施例7の配線用溝のエッチング形成後のアッシング処理においては、ガス導入口12から200sccmの酸素ガス及び200sccmのN2 ガスを導入して圧力を70Paとした状態で、ヒータ20によって80℃の基板温度に加熱して600Wの電力を印加して水素プラズマを発生させ、この水素プラズマ中で60秒間のプラズマ処理を行って、エッチング処理に伴うレジスト残渣等のエッチング残渣をアッシングして除去する。
【0093】
引き続いて、プラズマを切ったのち、処理チャンバー11内に有機系ガス噴出シャワーヘッド16から気化器18によって気化された酢酸ガスを酢酸ガスの分圧が200Paになるように導入して、ヒータ20によって基板温度を200℃とし、全圧が200Torrの状態で還元時間2分で被処理基板を還元処理して、第1Cu埋込配線47の表面に形成された銅酸化物を金属銅に還元するものである。
【0094】
この実施例7におけるコンタクト歩留りは、上述の実施例5と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりとして100%であり、実施例5と同等の信頼性が得られた。
【0095】
因に、上述のビアホール形成工程後の酸素プラズマによるアッシング処理工程の後、蟻酸ガスによる清浄化処理を行わずに5%シュウ酸水溶液で被処理基板を洗浄した後、純水リンスを行い、IPAに浸漬したのち、窒素ブローを行い被処理基板を乾燥させるとともに、配線用溝の形成工程後の酸素プラズマによる軽めのアッシング処理工程の後、酢酸ガスによる清浄化処理を行わずに5%シュウ酸水溶液で被処理基板を洗浄した後、純水リンスを行い、IPAに浸漬したのち、窒素ブローを行い被処理基板を乾燥させて二層配線構造を作製したところ、実施例7と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりは60%であり、信頼性の大幅な低下が見られた。
【実施例8】
【0096】
次に、本発明の実施例8のシングルダマシン工程を説明するが、ビア形成用絶縁膜49として第2配線用絶縁膜51と同じSiOC膜を用いたものであり、それ以外の工程及び構造は上記の実施例5と全く同様であるので、詳細な工程の説明は省略する。
【0097】
この実施例8におけるコンタクト歩留りは、上述の実施例5と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりとして100%であり、実施例5と同等の信頼性が得られた。
【0098】
因に、上述のビアホール形成工程及び配線用溝の形成工程の各工程において、酸素プラズマによるアッシング処理工程の後、蟻酸ガスによる清浄化処理を行わずに5%シュウ酸水溶液で被処理基板を洗浄した後、純水リンスを行い、IPAに浸漬したのち、窒素ブローを行い被処理基板を乾燥させて二層配線構造を作製したところ、実施例8と同じ構造のビアチェーンのコンタクト歩留まりは40%であり、信頼性の大幅な低下が見られた。
【0099】
以上、本発明の各実施例を説明してきたが、本発明は各実施例に記載された構成・条件等に限られるものではなく各種の変更が可能であり、例えば、ビアホールのサイズ及び埋込配線の幅等は任意であり、必要とする集積度に応じて適宜決定すれば良い。
【0100】
また、上記の各実施例においては、ビア及び埋込配線をCuによって形成しているが、Cuに限られるものではなく、Cu−AlやCu−Si等のCuを主成分とする合金にも適用されるものであり、さらには、AlやAgいったCu以外の金属、或いは、TiNやTaN等の金属窒化物にも適用されるものである。
【0101】
また、上記の各実施例においては、エッチング残渣の剥離処理工程にけるプラズマとして、酸素プラズマ、水素プラズマ、或いは、酸素と窒素の混合プラズマを用いているが、これらのプラズマ種に限られるものではなく、アンモニア或いはフロロカーボン系ガスを用いても良い。
【0102】
また、上記の各実施例においては、剥離処理工程後の清浄化処理工程におけるカルボン酸として、蟻酸或いは酢酸を用いているが、これらのカルボン酸に限られるものではなく、プロピオン酸或いは酪酸等の他のカルボン酸を用いても良いものである。
【0103】
また、上記の実施例2及び実施例6においては、剥離処理工程後の清浄化処理工程をメタノールを用いて行っているが、メタノールに限られるものではなく、エタノール或いはプロピルアルコール等の他のアルコール類を用いても良いものである。
【0104】
また、上記の各実施例においては、使用する層間絶縁膜の種類に応じてプラズマ種及び有機系ガスを使い分けているが、このような使い分けは必須ではなく、互いに、他のプラズマ種及び有機系ガスに置き換えて実施しても良いものである。
【0105】
また、上記の各実施例における配線用絶縁膜及びビア形成用絶縁膜の組み合わせた単なる一例であり、他の絶縁材料を用いた層間絶縁膜構造に適用できることは言うまでもないことであり、SiCN膜の代わりにSiN膜またはSiOCN膜を用いても良いし、或いは、SiOC膜の代わりにSiO2 膜或いはSiOCN膜を用いても良いものである。
【0106】
なお、SiOCN膜に対して本発明の実施例と同様のプラズマ処理及び清浄化処理を行った場合、処理後の比誘電率は約2.9であり、処理前の比誘電率と殆ど変化がないか若干の低下が見られた。
【0107】
また、上記の各実施例においては、エッチング工程後に直ちにエッチング残渣の剥離処理工程及び清浄化処理工程を行っているが、エッチング工程後に所謂後洗浄液を用いて予備洗浄した後、上述のエッチング残渣の剥離処理工程及び清浄化処理工程を行っても良いものである。
【0108】
また、上記の各実施例に用いる処理装置においては、有機系ガス噴出用シャワーヘッドを可動にして、プラズマ種をリング状上部電極の中央部から導入しているが、有機系ガス噴出用シャワーヘッドを固定にして、上下の電極の間に横方向からプラズマ種を導入するようにしても良いものである。
【0109】
また、上記の各実施例においては、プラズマ処理後の被処理基板を大気に晒さないために同じ処理チャンバー内で引き続いて清浄化処理を行っているが、これらの工程を同じ処理チャンバー内で行う必要は必ずしもなく、プラズマ処理室と清浄化処理室とをゲートバルブを介して連結して各処理をそれぞれの処理室で行うようにしても良いものである。
【0110】
ここで再び図1を参照して、本発明の詳細な特徴を改めて説明する。
再び、図1参照
(付記1) 下層の配線1を露出させるための開口を伴う配線溝孔エッチング後に、プラズマ励起により前記配線1上の残渣5を剥離処理したのち、大気中に晒すことなく、気体状態の有機系ガス6により前記配線1の露出部表面の清浄化処理を行う工程を有することを特徴とする埋込配線の形成方法。
(付記2) 上記清浄化処理を、上記剥離処理を行った処理装置内において、プラズマ4を切った状態で引き続き行うことを特徴とする付記1記載の埋込配線の形成方法。
(付記3) 上記プラズマ励起による剥離処理工程において、プラズマ4を発生させるために酸素、水素、窒素、アンモニア、或いは、フロロカーボン系ガスの内の少なくとも1種のガスを用いることを特徴とする付記1または2に記載の埋込配線の形成方法。
(付記4) 上記プラズマ4を発生させるためのガスが水素であり、且つ、上記配線溝孔3を形成する絶縁膜2がSiを構成元素として含む有機系絶縁膜であることを特徴とする付記3記載の埋込配線の形成方法。
(付記5) 上記有機系ガス6がカルボン酸を有することを特徴とする付記1乃至4のいずれか1に記載の埋込配線の形成方法。
(付記6) 上記カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸或いは酪酸の内のいずれか1種であるであることを特徴とする付記5記載の埋込配線の形成方法。
(付記7) 上記有機系ガス6がアルコール類であることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1に記載の埋込配線の形成方法。
(付記8) 上記配線溝孔3を形成する絶縁膜2がSiを構成元素として含む有機系絶縁膜であることを特徴とする付記7記載の埋込配線の形成方法。
(付記9) 上記配線1が、銅或いは銅を含む合金であることを特徴とする付記1乃至8のいずれか1に記載の埋込配線の形成方法。
(付記10) プラズマ励起用電極、被処理基板を加熱する加熱手段、及び、有機系ガス6を多数の微小孔から供給する有機系ガス供給手段を内部に備えた処理チャンバー、及び、前記処理チャンバー内にプラズマ用ガスを供給するプラズマ用ガス供給用配管を少なくとも備えたことを特徴とする処理装置。
(付記11) 上記有機系ガス供給手段に有機系ガス6を供給する有機系ガス供給用配管の途中に有機系材料を気化して有機系ガス6とする気化器を備えたことを特徴とする付記10記載の処理装置。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の活用例としては、高集積度半導体装置の多層配線構造が典型的なものであるが、半導体装置における配線構造に限られるものではなく、強誘電体を用いた光デバイスの配線接続構造としても適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施に用いる処理装置のアッシング工程における状態を示す概念的構成図である。
【図3】本発明の実施に用いる処理装置の清浄化処理工程における状態を示す概念的構成図である。
【図4】本発明の実施例1のデュアルダマシン工程の途中までの説明図である。
【図5】本発明の実施例1のデュアルダマシン工程の図4以降の説明図である。
【図6】本発明の実施例5のシングルダマシン工程の途中までの説明図である。
【図7】本発明の実施例5のシングルダマシン工程の図6以降の途中までの説明図である。
【図8】本発明の実施例5のシングルダマシン工程の図7以降の説明図である。
【符号の説明】
【0113】
1 下層の配線
2 絶縁膜
3 配線溝孔
4 プラズマ
5 残渣
6 有機系ガス
11 処理チャンバー
12 ガス導入口
13 排気口
14 下部電極
15 リング状上部電極
16 有機系ガス噴出シャワーヘッド
17 有機系ガス供給用配管
18 気化器
19 貯蔵槽
20 ヒータ
21 被処理基板
22 ガス種
23 有機系ガス
31 p型シリコン基板
32 素子分離絶縁膜
33 ゲート絶縁膜
34 ゲート電極
35 n型エクステンション領域
36 サイドウォール
37 n型ソース・ドレイン領域
38 Coシリサイド電極
39 Coシリサイド電極
40 SiO2
41 BPSG膜
42 SiCN膜
43 バリア膜
44 Wプラグ
45 第1配線用絶縁膜
46 バリア膜
47 第1Cu埋込配線
48 SiCN膜
49 ビア形成用絶縁膜
50 SiCN膜
51 第2配線用絶縁膜
52 SiCN膜
53 配線用溝
54 ビアホール
55 酸素プラズマ
56 蟻酸ガス
57 バリア膜
58 Cuビア
59 第2Cu埋込配線
60 ビアホール
61 酸素プラズマ
62 蟻酸ガス
63 バリア膜
64 Cuビア
65 配線用溝
66 酸素プラズマ
67 蟻酸ガス
68 バリア膜
69 第2Cu埋込配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層の配線を露出させるための開口を伴う配線溝孔エッチング後に、プラズマ励起により前記配線上の残渣を剥離処理したのち、大気中に晒すことなく、気体状態の有機系ガスにより前記配線の露出部表面の清浄化処理を行う工程を有することを特徴とする埋込配線の形成方法。
【請求項2】
上記清浄化処理を、上記剥離処理を行った処理装置内において、プラズマを切った状態で引き続き行うことを特徴とする請求項1記載の埋込配線の形成方法。
【請求項3】
上記プラズマ励起による剥離処理工程において、プラズマを発生させるために酸素、水素、窒素、アンモニア、或いは、フロロカーボン系ガスの内の少なくとも1種のガスを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の埋込配線の形成方法。
【請求項4】
上記有機系ガスがカルボン酸を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の埋込配線の形成方法。
【請求項5】
上記有機系ガスがアルコール類であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の埋込配線の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−286802(P2006−286802A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−102777(P2005−102777)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「基盤技術研究促進事業(民間基盤技術研究支援制度)有機酸ドライクリーニング技術の銅配線形成プロセスへの試験研究」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】