説明

基板の処理装置

【課題】この発明はオゾンや熱に対して耐性を備えた金属製の駆動ローラによって基板を損傷させることなく搬送できるようにした基板の処理装置を提供することにある。
【解決手段】基板を所定の角度で傾斜した起立状態で搬送しながら処理する基板の処理装置であって、
チャンバ内に設けられ基板の傾斜方向下方の面を支持する支持ローラと、回転駆動される回転軸19に取着され傾斜方向下方の面が支持ローラによって支持された基板の下端を支持してその基板を所定方向に搬送する駆動ローラ17を具備し、
駆動ローラは、回転軸に取着される金属製の輪体58と、輪体の外周面に設けられ基板が搬送方向上流側の駆動ローラから乗り移るときに加わる力で弾性的に変形する金属製の板状部材61とによって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板を所定の角度で傾斜した起立状態で搬送しながら処理する基板の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられるガラス製の基板には回路パターンが形成される。基板に回路パターンを形成するにはリソグラフィープロセスが採用される。リソグラフィープロセスは周知のように上記基板にレジストを塗布し、このレジストに回路パターンが形成されたマスクを介して光を照射する。
【0003】
つぎに、レジストの光が照射されない部分或いは光が照射された部分を除去し、基板のレジストが除去された部分をエッチングする。そして、エッチング後にレジストを除去するという一連の工程を複数回繰り返すことで、上記基板に回路パターンを形成する。
【0004】
基板に回路パターンを形成する場合、基板の板面が清浄であることが要求される。基板の板面の汚れは無機物と有機物とに分けられる。無機物は洗浄液によって洗浄除去することが可能であるが、有機物は洗浄液では除去することができないため、紫外線を照射して洗浄する、いわゆる紫外線洗浄が行なわれる。
【0005】
すなわち、基板を精密に洗浄処理する場合、基板に紫外線を照射して有機物を除去したのち、処理液によって無機物を除去し、ついでリンス液でリンス処理してから熱風によって乾燥処理するということが行なわれる。
【0006】
一方、上記基板に対して上述した一連の処理を行う場合、基板を水平に搬送したのでは、基板に供給される処理液やリンス液の重量によって基板に撓みが生じ、撓んだ部分に処理液やリンス液が残留しやすくなるから、基板の処理を全面にわたって均一に行なうことができなくなるということがある。
【0007】
そこで、基板を処理する際、上記基板が処理液やリンス液の重量によって撓むのを防止するため、基板を所定の角度で傾斜した起立状態、たとえば75度の角度で傾斜させて搬送するということが考えられている。基板を傾斜させて搬送すれば、処理液やリンス液が基板の板面に溜まらず、上方から下方へ円滑に流れるから、基板が撓むのを防止することができる。
【0008】
ところで、基板を所定の角度で傾斜した起立状態で搬送する場合、その基板は傾斜方向の下方の面が支持ローラによって支持され、下端が駆動ローラによって支持される。この駆動ローラは回転軸に取着されていて、この回転軸は駆動源によって回転駆動される。それによって、基板は上記駆動ローラの回転方向に搬送されることになる。
【0009】
上記駆動ローラは基板の搬送方向に沿って所定間隔で配置されている。そのため、駆動ローラが回転駆動されて基板が搬送される際、その基板の搬送方向先端の下端が搬送方向下流側に位置する駆動ローラの外周面に乗り移るとき、その先端の下端角部が駆動ローラの外周面に衝突し、その衝撃によって下端角部に欠けが生じることがある。
【0010】
とくに、基板を起立状態で搬送すると、基板の下端に基板全体の重量がかかるから、基板を水平搬送する場合に比べて基板の先端が搬送方向下流側の駆動ローラの外周面に乗り移るときに衝突すると、衝撃が大きくなって欠けが発生し易いということがある。
【0011】
特許文献1には基板を所定の角度で傾斜した起立状態で搬送しながら処理する処理装置が示されている。しかしながら、基板を駆動ローラによって搬送する際、その搬送方向先端の下端部が下流側に位置する搬送ローラの外周面に衝突したときに、欠けが生じることや欠けが生じるのを防止することは示されていない。
【特許文献1】特開2004−210511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、上記駆動ローラをゴムや樹脂などの弾性材料によって形成するということが考えられている。駆動ローラをゴムや樹脂などの弾性材料によって形成すれば、基板の先端の下端部が搬送方向の下流側の駆動ローラの外周面に乗り移るとき、その先端の下端角部が駆動ローラの外周面に衝突しても、そのときの衝撃を駆動ローラが弾性的に吸収するため、基板に欠けが生じ難くなる。
【0013】
しかしながら、弾性材料で形成された駆動ローラは、基板に紫外線を照射することで発生するオゾンによって早期に劣化し易いということがある。そのため、紫外線によって基板を処理する処理装置においては、駆動ローラをゴムや樹脂などの弾性材料で形成することは実用的でない。
【0014】
しかも、ゴムや樹脂などの弾性材料で形成された駆動ローラは、オゾンだけでなく、基板を乾燥処理するときに用いられる熱風によっても早期に劣化し易いということがあるから、乾燥処理部でも用いることができない。
【0015】
一方、オゾンや熱に対して耐性を有する材料としてはステンレス鋼などの鉄系金属やアルミニウム合金などの非鉄系金属の金属材料が知られている。しかしながら、駆動ローラを金属材料で形成したのでは、上述したように基板の先端下端部が搬送方向下流側の駆動ローラの外周面に乗り移るとき、衝突による衝撃を吸収することができないから、基板に欠けが生じることになる。
【0016】
この発明は、駆動ローラをオゾンや熱に対して耐性を有する金属材料で形成した場合に、基板の先端の下端角部が衝突したときの衝撃を吸収して基板に欠けが生じるのを防止できるようにした基板の処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、基板を所定の角度で傾斜した起立状態で搬送しながら処理する基板の処理装置であって、
チャンバと、
このチャンバ内に設けられ上記基板の傾斜方向下方の面を支持する支持ローラと、
回転駆動される回転軸に取着され傾斜方向下方の面が上記支持ローラによって支持された上記基板の下端を支持してその基板を所定方向に搬送する駆動ローラを具備し、
上記駆動ローラは、
上記回転軸に取着される金属製の輪体と、この輪体の外周面に設けられ上記基板が搬送方向上流側の駆動ローラから乗り移るときに加わる力で弾性的に変形する金属製の板状部材とによって構成されていることを特徴とする基板の処理装置にある。
【0018】
上記輪体の外周面には周方向全長にわたる凹部が形成され、上記板状部材にはこの板状部材を部分的に上記凹部内へ弾性変形可能とする複数のスリットが上記輪体の周方向に所定間隔で設けられていることが好ましい。
【0019】
上記凹部は上記輪体の幅方向両端部を除く部分に形成されていることが好ましい。
【0020】
上記チャンバ内には上記基板に紫外線を照射する紫外線ランプが設けられていることが好ましい。
【0021】
上記板状部材は帯状であって、上記輪体の外周面に沿って湾曲されるとともに、幅方向の一端部が上記輪体にねじ止め固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、駆動ローラを金属製の輪体と、この輪体の外周面に設けられ基板が乗り移るときに弾性的に変形する金属製の板状部材とで形成した。そのため、駆動ローラはオゾンや熱に対して耐性を備えるばかりか、基板が乗り移るときに加わる衝撃を弾性的に吸収するため、基板に欠けが生じるのを防止することがきる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5はこの発明の第1の実施の形態を示す。図1はこの発明の処理装置の概略的構成を示す斜視図であって、この処理装置は装置本体1を有する。この装置本体1は分割された複数の処理ユニット、この実施の形態では第1乃至第5の処理ユニット1A〜1Eを分解可能に一列に連結してなる。
【0024】
各処理ユニット1A〜1Eは架台2を有する。この架台2の前面には箱型状の処理部3が所定の角度で傾斜して保持されている。上記架台2と処理部3の上面には上部搬送部4が設けられている。上記架台2の下端の幅方向両端には板状の一対の脚体5(一方のみ図示)が分解可能に設けられる。この脚体5によって上記架台2の下面側に空間部6が形成される。
【0025】
上記空間部6には、上記処理部3で後述するように行なわれる基板Wの処理に用いられる薬液やリンス液などの処理液を供給するタンクやポンプ或いは処理液の供給を制御するための制御装置などの機器7をフレーム8に載置した機器部9が収納されるようになっている。つまり、各処理ユニット1A〜1Eは架台2を脚体5で支持して処理部3の下方に空間部6を形成することで、上下方向に位置する処理部3、上部搬送部4及び機器部9の3つの部分に分割されている。
【0026】
上記処理部3はチャンバ12を有する。このチャンバ12は上記架台2に所定の角度である、たとえば垂直線に対して75度の角度で傾斜して保持されていて、幅方向の両側面には75度の角度で傾斜して搬送される基板Wが通過するスリット13(図1に一箇所のだけ図示)が形成されている。
【0027】
上記チャンバ12の内部には、図2に示すように傾斜搬送手段を構成する複数の搬送軸15(1つのみ図示)がチャンバ12の幅方向に所定間隔で設けられている。この搬送軸15には複数の支持ローラ14が軸方向に所定間隔で回転可能に設けられている。上記搬送軸15は、軸線が上記スリット13と同じ角度で傾斜するよう、上下端及び中途部がそれぞれブラケット15a(上下端のブラケットのみ図示)によって支持されている。
【0028】
上記チャンバ12内には、上記スリット13から基板Wが図1に鎖線で示す第1の姿勢変換部16によって水平状態から75度の角度に変換されて搬入される。すなわち、未処理の基板Wは上記上部搬送部4によって第5の処理ユニット1E側から第1の処理ユニット1A側に搬送されて上記第1の姿勢変換部16で水平状態から75度の角度に傾斜されて上記第1の処理ユニット1Aに搬入される。
【0029】
第1の処理ユニット1Aのチャンバ12内に搬入された基板Wは上記搬送軸15に設けられた支持ローラ14によって非デバイス面である背面が支持される。この基板Wの下端は駆動ローラ17(図2に示す)によって支持される。この駆動ローラ17は駆動ユニット18の回転軸19に設けられていて、この回転軸19が回転駆動さることで、駆動ローラ17に下端が支持され背面が上記支持ローラ14に支持された上記基板Wが上記駆動ローラ17の回転方向に搬送されるようになっている。
【0030】
基板Wは搬送方向上流側の第1の処理ユニット1Aで紫外線が照射されて有機物の除去が行なわれ、ついで第2、第3の処理ユニット1B,1Cで処理液による洗浄処理が順次行なわれる。第4の処理ユニット1Dではリンス液によるリンス処理が行なわれ、第5の処理ユニット1Eで熱風による乾燥処理が行なわれる。
【0031】
図2は基板Wに紫外線を照射して有機物の処理を行なう第1の処理ユニット1Aを示す断面図である。この第1の処理ユニット1Aの処理部3内には、傾斜して搬送される基板Wの傾斜方向の上側の面、つまり回路パターンが形成される面と平行に離間対向して紫外線ランプ21が配設されている。基板Wに紫外線が照射されることで、この処理ユニット1Aのチャンバ12内にはオゾンが発生し、そのオゾンの作用によって基板Wの板面に付着した有機物が分解除去される。
【0032】
各処理ユニット1A〜1Eを順次通過して処理された基板Wは75度の角度で傾斜した状態で上記第5の処理ユニッチ1Eから搬出される。第5の処理ユニット1Eから搬出された基板Wは、図1に鎖線で示す第2の姿勢変換部23で傾斜状態から水平状態に姿勢が変換されて次工程に受け渡される。
【0033】
図2に示すように、上記駆動ユニット18はチャンバ12の幅方向(基板Wの搬送方向)に沿って長い板状の下部ベース部材24を有する。この下部ベース部材24の上面には下部ベース部材24と同じ長さのチャンネル状の上部ベース部材25が両側下端を固着して設けられている。
【0034】
上記上部ベース部材25には、上記下部ベース部材24とほぼ同じ大きさの平板状の取付け部材26の幅方向の一端部と他端部とが上部ベース部材25に対して傾きの調整可能に連結して設けられている。つまり、上記取り付け部材26はチャンバ12の前後方向に傾き角度の調整ができるようになっている。
【0035】
上記取付け部材26の幅方向の一端と他端とには、それぞれ複数のブラケット31が上記取付け部材26の長手方向に対して所定間隔で、しかも幅方向に対応する位置に設けられている。幅方向において対応する一対のブラケットには図示しない軸受を介して上記回転軸19の軸方向の中途部が回転可能に支持されている。この回転軸19の先端には上記駆動ローラ17が取り付けられ、後端には第1の歯車33が嵌着される。
【0036】
そして、上記架台2にチャンバ12を設置したならば、この架台2に設けられた支持部41の上面にロッド状の4本の基準部材35の下端面がねじ42によって取付け固定される。上記駆動ユニット18は、下部ベース部材24の四隅部下面が上記基準部材35の上端面にねじ42によって取付け固定される。4本の基準部材35の上端面は同一平面に位置している。そのため、駆動ユニット18はその下部ベース部材24の幅方向及び長手方向に歪が生じることなく取付け固定される。
【0037】
上記駆動ユニット18を基準部材35の上端面を基準にしてチャンバ12内に組み込む際、駆動ユニット18に支持された複数の回転軸19の後端部はチャンバ12の前板12bに開口された導出孔44から駆動室45に突出する。そして、駆動ユニット18をチャンバ12内に組み込んだ後で、上記回転軸19の後端に上記第1の歯車33が嵌着される。
【0038】
上記駆動室45には駆動源51が設けられている。この駆動源51の出力軸には駆動プーリ53が嵌着されている。この駆動プーリ53と従動プーリ54とにはベルト55が張設されている。上記従動プーリ54は図示しない第2の歯車が同軸に設けられている。この第2の歯車は上記第1の歯車33に噛合している。それによって、駆動源51が作動すれば、上記回転軸19が回転駆動されることになるから、この回転軸19の先端に設けられた上記駆動ローラ17も回転駆動される。
【0039】
駆動ローラ17が回転駆動されれば、これらの駆動ローラ17によって下端が支持された基板Wは上記駆動ローラ17の回転方向に搬送されることになる。
【0040】
図3(a)〜(c)はそれぞれ上記駆動ローラ17を示す図であって、この駆動ローラ17は上記回転軸19の先端部に嵌着されるボス部56が設けられた円盤状の端板57を有する。この端板57の一側面の周辺部にはリング状の輪体58が取り付け固定されている。
【0041】
上記輪体58の外周面には、輪体58の幅方向の一端部と他端部とを除く中途部に凹部59が周方向全長にわたって形成されている。さらに、輪体58の外周面には、帯状の板状部材61が幅方向の一端部をねじ62によって上記輪体58に固定されて設けられている。この板状部材61は幅方向の中途部が上記輪体58の外周面に形成された凹部59に対向している。
【0042】
上記板状部材61には、幅方向の他端に開放した複数のスリット64が長手方向に対して所定間隔で設けられている。それによって、上記板状部材61には隣り合う一対のスリット64によって分離された複数の分離片61aが形成されている。分離片61aは外面に加わる力に対して幅方向の中途部が上記凹部59内に弾性的に変形可能となっている。
【0043】
上記ボス部56、端板57、輪体58及び板状部材61はオゾンに対して耐性を有する材料、たとえばステンレス鋼などの鉄系金属或いはアルミニウム合金などの非鉄金属などの金属材料によって形成されている。この実施の形態ではステンレス鋼によって形成されている。
【0044】
なお、上記構成の駆動ローラ17は、第1乃至第5の全てのチャンバ1A〜1Eに用いられている。
【0045】
図4は複数の駆動ローラ17によって鎖線で示す基板Wの下端が支持されて矢印Z方向へ搬送されている状態を示している。基板Wの搬送方向先端に位置する下端角部Eが同図にX1で示す駆動ローラ17からX2で示す駆動ローラ17に乗り移るとき、上記下端角部EはX2の駆動ローラ17の斜線で示す分離片61aの外面に衝突する。とくに、隣り合う駆動ローラ17の高さにずれがあると、衝突時の衝撃が大きくなる。
【0046】
基板Wの先端の下端角部Eが搬送方向上流側の駆動ローラ17の外周面の分離片61aに衝突すると、分離片61aはその衝突によって受ける力で幅方向の中途部が輪体58の凹部59内へ入り込む状態に弾性変形する。つまり、分離片61aは凹状に弾性変形する。それによって、基板Wが分離片61aと衝突したときの衝撃が吸収されるから、基板Wの下端角部Eに欠けが生じるのが防止される。
【0047】
上記駆動ローラ17は、輪体58及び板状部材61などの全ての部品がオゾンに対して耐性を備えた金属材料によって形成されている。そのため、上記駆動ローラ17が基板Wに紫外線を照射して有機物を除去する第1の処理ユニット1Aに用いられていても、この第1の処理ユニット1Aで発生するオゾンによってゴムや合成樹脂などのように早期に劣化するということがない。
【0048】
上記構成の駆動ローラ17は、第2乃至第5の処理ユニット1B〜1Eにも使用されている。そのため、基板Wは第1の処理ユニット1Aだけでなく、第2乃至第5の処理ユニット1B〜1Eを搬送される間も、その先端の下端角部が搬送方向の下流側に位置する駆動ローラ17に乗り移る際、その下端角部Eに衝撃が加わって欠けが生じるのを、駆動ローラ17の板状部材61の分離片61aの弾性変形によって防止することができる。
【0049】
上記第5の処理ユニット1Eでは、基板Wを熱風で乾燥処理するようになっている。第5の処理ユニット1Eの駆動ローラ17がゴムや樹脂などの弾性材料で形成されていると、熱風によって早期に劣化する虞がある。
【0050】
しかしながら、駆動ローラ17は金属製であるから、熱風に対しても早期に劣化することがなく、長期間にわたって安定した性能で使用することができる。
【0051】
上記輪体58の外周面に形成される凹部59は幅方向一端部と他端部を除く中途部に形成されている。そのため、板状部材61の各分離片61aは幅方向の中途部が凹部59内へ弾性的に変形して基板Wの下端を支持することになる。つまり、分離片61aは凹状に弾性変形して基板Wの下端を支持する。
【0052】
それによって、分離片61aに支持された基板Wの下端は駆動ローラ17の幅方向、つまりチャンバ12の前後方向にずれ動き難くなるから、基板Wの下端が駆動ローラ17の外周面から外れることなく、安定した状態で確実に搬送することができる。
【0053】
なお、上記一実施の形態では駆動ローラ17の輪体58の外周面に凹部59を、輪体58の幅方向一端部と他端部を除く中途部に形成したが、図5に示すように幅方向の他端部に開放した形状であっても差し支えない。
【0054】
凹部59を輪体58の幅方向他端に開放させれば、板状部材61の分離片61aに基板Wの先端の下端角部Eが衝突したとき、上記分離片61aが弾性変形し易い。そのため、基板Wの下端角部Eに欠けが生じるのをより一層確実に防止することが可能となる。
【0055】
また、板状部材をスリットによって複数の分離片に分割して弾性変形し易くしたが、板状部材を弾性変形し易い薄さに形成すれば、スリットがなくても、基板の下端角部との衝突時に弾性変形して衝撃を吸収することができる。
【0056】
また、処理ユニット1Aでの有機物の除去は、紫外線ランプだけでなく、高周波電流を印加して放電によるプラズマを発生し、そのプラズマで酸素を励起し、その酸素励起によって基板に付着した有機物を分解除去する大気圧プラズマが用いられることがある。
【0057】
このような場合も、励起酸素によってゴムや樹脂などの弾性材料で形成された駆動ローラは早期に劣化し易いということがあるが、金属製の駆動ローラ17を用いることで、励起酸素に対しても早期に劣化することなく、長期間にわたって安定した性能で使用することが可能となる。
【0058】
また、板状部材は予めリング状に形成しておいて、輪体の外周面に装着するようにしてもよい。さらに、板状部材を輪体に固定するねじの数は限定されず、されにねじに代わって溶接などの他の手段によって固定するようにしてもよい。
【0059】
また、第1乃至第5のチャンバの全ての駆動ローラを金属製とした場合について説明したが、第1のチャンバと第5のチャンバ以外のチャンバの駆動ローラはゴムや樹脂などの合成樹脂製であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の第1の実施の形態の処理装置の概略的構成を示す斜視図。
【図2】上記処理装置のチャンバの断面図。
【図3】(a)は駆動ローラの正面図、(b)は同じく平面図、(c)は同じく側断面図。
【図4】複数の駆動ローラによって基板を搬送する状態を示す斜視図。
【図5】この発明の他の実施の形態を示す駆動ローラの輪体の一部を示す断面図。
【符号の説明】
【0061】
12…チャンバ、14…支持ローラ、17…駆動ローラ、19…回転軸、58…輪体、59…凹部、64…スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を所定の角度で傾斜した起立状態で搬送しながら処理する基板の処理装置であって、
チャンバと、
このチャンバ内に設けられ上記基板の傾斜方向下方の面を支持する支持ローラと、
回転駆動される回転軸に取着され傾斜方向下方の面が上記支持ローラによって支持された上記基板の下端を支持してその基板を所定方向に搬送する駆動ローラを具備し、
上記駆動ローラは、
上記回転軸に取着される金属製の輪体と、この輪体の外周面に設けられ上記基板が搬送方向上流側の駆動ローラから乗り移るときに加わる力で弾性的に変形する金属製の板状部材とによって構成されていることを特徴とする基板の処理装置。
【請求項2】
上記輪体の外周面には周方向全長にわたる凹部が形成され、上記板状部材にはこの板状部材を部分的に上記凹部内へ弾性変形可能とする複数のスリットが上記輪体の周方向に所定間隔で設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項3】
上記凹部は上記輪体の幅方向両端部を除く部分に形成されていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項4】
上記チャンバ内には上記基板に紫外線を照射する紫外線ランプが設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。
【請求項5】
上記板状部材は帯状であって、上記輪体の外周面に沿って湾曲されるとともに、幅方向の一端部が上記輪体にねじ止め固定されることを特徴とする請求項1記載の基板の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−7227(P2008−7227A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176728(P2006−176728)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】