説明

基板処理方法、膜ストレス制御方法および基板処理装置

【課題】膜ストレスを制御することができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】ウエハ200を処理する空間を成す処理室201に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出して、ウエハ200に所望の薄膜を形成する基板処理方法であって、アンモニアガスの供給時間を、塩素を含むガスを供給する時間の2倍より長く供給するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理方法および基板処理装置に関し、特に、Si半導体デバイスを製造する際に用いられるALD(Atomic Layer Deposition:原子層成膜)法による成膜を行う基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、ALD法を用いた成膜処理について、簡単に説明する。
ALD法は、ある成膜条件(温度、時間等)の下で、成膜に用いる2種類(またはそれ以上)の原料となるガスを1種類ずつ交互に基板上に供給し、1原子層単位で吸着させ、表面反応を利用して成膜を行う手法である。
【0003】
即ち、利用する化学反応は、例えばSiN(窒化珪素)膜形成の場合ALD法ではDCS(SiHCl、ジクロルシラン)とNH(アンモニア)を用いて300〜600℃の低温で高品質の成膜が可能である。また、ガス供給は、複数種類の反応性ガスを1種類ずつ交互に供給する。そして、膜厚制御は、反応性ガス供給のサイクル数で制御する。(例えば、成膜速度が1Å/サイクルとすると、20Åの膜を形成する場合、処理を20サイクル行う。)
【0004】
縦型ALDリモートプラズマ装置を例としてさらに詳細に説明する。
【0005】
Siウエハ上にALD法により窒化シリコン膜を成膜するには、その原料にNHとDCS(SiHCl)を用いる。
【0006】
窒化シリコン膜の成膜手順を以下に示す。
(1)石英ボートにウエハを移載する。この時ウエハは石英製の支持部によって支えられている。
(2)石英ボートを300℃度の処理室内へ挿入する。
(3)石英ボートの挿入が終わると処理室内を真空引きし、窒化プロセスの450℃程度まで昇温する。
(4)DCSを照射(3秒)→Nパージ(5秒)→プラズマ励起NH照射(6秒)→Nパージ(3秒)を1サイクルとして所定の膜厚を得るまでサイクルを繰り返す。
(5)処理室内の反応ガスのガス引きを行なうと同時に、処理室温度を300℃程度まで降温する。
(6)処理室内を大気圧に復帰し、石英ボートを処理室より引き出す。
【0007】
ここで、従来条件のNH照射時間6秒の理由を説明する。図7に示すように成膜速度のみを考慮すると、NH照射時間をむやみに長くすることはスループットにおいて利点ではない。これは、図7よりNH照射時間が7秒以上では膜厚は大きく変動しないからである。従って,スループットを考慮して、膜厚が飽和する手前のNH照射時間を標準条件とした。これは従来条件では膜ストレスという点において考慮していなかったためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の半導体デバイス構造では、歪緩和の目的で1.5Gpa程度の膜ストレスが要求されているが、上記工程を経て成膜された膜ストレスは約1.2Gpa程度と目標値より低い。
【0009】
従って、本発明の主な目的は、膜ストレスを制御することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出して、前記基板に所望の薄膜を形成する基板処理方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間の2倍より長く供給するように制御する基板処理方法が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出して、前記基板に所望の薄膜を形成する基板処理方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間より長く、かつ6秒より長く供給するように制御する基板処理方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出して、Atomic Layer Deposition法で前記基板に窒化シリコン膜を形成する基板処理方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間の2倍より長く供給するように制御する基板処理方法が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出して、Atomic Layer Deposition法で前記基板に窒化シリコン膜を形成する基板処理方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間より長く、かつ6秒より長く供給するように制御する基板処理方法が提供される。
【0014】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出することによって前記基板に形成される薄膜の膜ストレスを制御する膜ストレス制御方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間の2倍より長く供給するように制御する膜ストレス制御方法が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出することによって前記基板に形成される薄膜の膜ストレスを制御する膜ストレス制御方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間より長く、かつ6秒より長く供給するように制御する膜ストレス制御方法が提供される。
【0016】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する空間を成す処理室と、
前記処理室内に塩素を含むガス及びアンモニアガスを供給するガス供給部と、
前記処理室内の雰囲気を排出する排出部と、
前記塩素を含むガス及び前記アンモニアガスの供給時間を任意に設定可能な制御部と、を有し、
前記処理室に対し前記塩素を含むガスと、前記アンモニアガスとを交互に供給、排出させて、前記基板に所望の薄膜を形成する基板処理装置であって、
前記制御部は、前記アンモニアガスを供給する時間を前記塩素を含むガスを供給する時間の2倍より長く供給するように制御することによって、前記薄膜中に存在し前記薄膜の膜ストレスがその存在量に依存する化学種の量を制御し、これにより前記薄膜の膜ストレスを制御する基板処理装置が提供される。
【0017】
本発明のさらに他の態様によれば、
基板を処理する空間を成す処理室と、
前記処理室内に塩素を含むガス及びアンモニアガスを供給するガス供給部と、
前記処理室内の雰囲気を排出する排出部と、
前記塩素を含むガス及び前記アンモニアガスの供給時間を任意に設定可能な制御部と、を有し、
前記処理室に対し前記塩素を含むガスと、前記アンモニアガスとを交互に供給、排出させて、前記基板に所望の薄膜を形成する基板処理装置であって、
前記制御部は、前記アンモニアガスを供給する時間を前記塩素を含むガスを供給する時間より長く、かつ6秒より長く供給するように制御することによって、前記薄膜中に存在し前記薄膜の膜ストレスがその存在量に依存する化学種の量を制御し、これにより前記薄膜の膜ストレスを制御する基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ALDの反応メカニズムを説明するための図である。
【図2】本発明の好ましい実施例のALD成長サイクルを説明するための図である。
【図3】NH照射時間とH濃度およびCl濃度との関係を示す図である。
【図4】NH照射時間と膜ストレスとの関係を示す図である。
【図5】DCS照射時間と膜ストレスとの関係を示す図である。
【図6】膜ストレスの温度依存性を示す図である。
【図7】NH照射時間と成膜膜厚との関係を示す図である。
【図8】本発明の好ましい実施例に係る基板処理装置の縦型の基板処理炉を説明するための概略縦断面図である。
【図9】本発明の好ましい実施例に係る基板処理装置の縦型の基板処理炉を説明するための概略横断面図である。
【図10】本発明の好ましい実施例に係る基板処理装置を説明するための概略斜視図である。
【図11】本発明の好ましい実施例に係る基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の好ましい実施例を説明する。
本発明の好ましい実施例では、ALD法による窒化シリコン膜(ALD窒化膜)形成プロセスにおいてNH供給時間を制御することで形成される窒化膜の膜ストレスを制御する。
また、本発明の好ましい実施例では、ALD法によって形成される窒化シリコン膜の膜中のCl、H濃度を制御することで膜ストレスを制御する。
【0020】
次に、図面を参照して本発明の好ましい実施例をさらに詳細に説明する。
【0021】
まずALDの反応メカニズムについて図1を参照して説明する。
(1)まず、DCS照射(供給)によって、表面にSiとClが吸着する(DCS)。
(2)次に、DCSとNHの混合を防ぐため、Nパージを行う(PRG)。
(3)次に、励起したNHを照射(供給)することによって、(1)で吸着したClがHClとして脱離し、NとHが吸着する(NH)。
(4)次に、NHとDCSの混合を防ぐため、Nパージを行う(PRG)。
所定の膜厚に達するまで、上記(1)〜(4)のサイクルを繰り返す。
【0022】
上記のように反応が進むので、膜中にはALD窒化膜の主成分であるSi、NのほかにH、Clの不純物が取り込まれていく。
【0023】
膜ストレス制御のためにまず、励起したNHの照射時間を変更する実験を行った。図2に従来のサイクルと改善サイクルを示す。NH照射時間を6秒、9秒、14秒と変更した。このときの膜ストレスの結果を図4に示すが、励起したNH照射時間を延ばすことによって、膜ストレスが増加していくことが判明した。
【0024】
また、膜中のH(水素)、Cl(塩素)濃度をSIMSを用いて測定した結果を図3に示すが、NH照射時間を延ばすことによってHとClは共に低減していく。Clはその原料であるDCSから表面に取り込まれるが、NHを照射する過程で表面から脱離していく。従って、NH照射時間が長いほどClの脱離効果は高く、膜中のCl濃度は低減していく。
【0025】
従って、膜ストレスは膜中のH、Clなる不純物濃度に依存していることがわかる。
つまりH,Cl濃度を制御すること、すなわち、NH照射時間を制御することで膜ストレスを制御が可能となる。
【0026】
なお、一方のガスであるDCSの照射時間に対する膜ストレスの依存についても調査した。図5に結果を示すがDCS照射時間ではストレスが変化しないことがわかる。よって膜ストレスはNH照射時間に大きく影響を受けている。
【0027】
また、温度依存を図6に示すが温度が高いほど膜ストレスが高く、かつCl濃度も低いことがわかる。膜ストレスだけを考慮すれば、温度の高いプロセス条件が有利であるが、多くの場合、プロセス温度を変更できない。なぜならば温度をあげることによってNiSi(ニッケルシリサイド)の変質、不純物の再拡散といったデメリットが生じるからである。したがって低温でNH照射時間を長くすることは、膜ストレスを上げ、かつ、NiSiの変質、不純物再拡散を抑制できるメリットがある。なお、ここで、NiSiは、ロジック用途半導体の電極に使われる材料である。従来電極の材料としてはCoSi(コバルトシリサイド)が一般的であったが、電極の低抵抗化の要求があり、より 抵抗が低いNiSiが近年採用されている。低抵抗化することでスイッチング速度が速くなり、すなわち微細化、高集積化が可能となり、重要な要素となっている。
【0028】
次に、図面を参照して、本発明の好ましい実施例で使用される基板処理装置の一例を説明する。
【0029】
図8は、本実施例にかかる縦型の基板処理炉を説明するための概略構成図であり、処理炉部分を縦断面で示し、図9は本実施例にかかる縦型の基板処理炉を説明するための概略構成図であり、処理炉部分を横断面で示す。
【0030】
加熱手段であるヒータ207の内側に、基板であるウエハ200を処理する反応容器として石英製の反応管203が設けられ、この反応管203の下端開口は蓋体であるシールキャップ219により気密部材であるOリング220を介して気密に閉塞されている。反応管203およびヒータ207の外側には断熱部材208が設けられている。断熱部材208はヒータ207の上方端を覆うように設けられている。少なくとも、ヒータ207、断熱部材208、反応管203、及びシールキャップ219により処理炉202を形成している。また、反応管203、シールキャップ219および後述する反応管203内に形成されたバッファ室237により処理室201を形成している。シールキャップ219には石英キャップ218を介して基板保持手段であるボート217が立設され、石英キャップ218はボート217を保持する保持体となっている。そして、ボート217は処理炉202に挿入される。ボート217にはバッチ処理される複数のウエハ200が水平姿勢で管軸方向に多段に垂直方向に積載される。ヒータ207は処理炉202に挿入されたウエハ200を所定の温度に加熱する。
【0031】
そして、処理炉202へは複数種類、ここでは2種類のガスを供給する供給管としての2本のガス供給管232a、232bが設けられる。ここではガス供給管232aからは流量制御手段であるマスフローコントローラ241a及び開閉弁であるバルブ243aを介し、更に後述する反応管203内に形成されたバッファ室237を介して処理室201に反応ガスが供給され、ガス供給管232bからは流量制御手段であるマスフローコントローラ241b、開閉弁であるバルブ243b、ガス溜め247、及び開閉弁であるバルブ243cを介し、更に後述するガス供給部249を介して処理室201に反応ガスが供給される。
【0032】
2本のガス供給管232a、232bには、反応副生成物であるNHClの付着を防ぐために、120℃程度まで加熱できる配管ヒータ(図示せず。)を装着している。
【0033】
処理室201は、ガスを排気する排気管であるガス排気管231によりバルブ243dを介して排気手段である真空ポンプ246に接続され、真空排気されるようになっている。尚、このバルブ243dは弁を開閉して処理室201の真空排気・真空排気停止ができ、更に弁開度を調節して圧力調整可能になっている開閉弁である。
【0034】
処理室201を構成している反応管203の内壁とウエハ200との間における円弧状の空間には、反応管203の下部より上部の内壁にウエハ200の積載方向に沿って、ガス分散空間であるバッファ室237が設けられている。バッファ室237のウエハ200と隣接する内側の壁の端部近傍にはガスを供給する供給孔であるガス供給孔248aが設けられている。このガス供給孔248aは反応管203の中心へ向けて開口している。このガス供給孔248aは、ウエハ200の積載方向に沿って下部から上部に所定の長さにわたってそれぞれ同一の開口面積を有し、更に同じ開口ピッチで設けられている。
【0035】
そしてバッファ室237のガス供給孔248aが設けられた端部と反対側の端部近傍には、ノズル233が、やはり反応管203の下部より上部にわたりウエハ200の積載方向に沿って配設されている。そしてノズル233にはガスを供給する供給孔であるガス供給孔248bが複数設けられている。複数のガス供給孔248bは、ガス供給孔248aの場合と同じ所定の長さにわたってウエハ200の積載方向に沿って配設されている。そして、複数のガス供給孔248bと複数のガス供給孔248aとをそれぞれ1対1で対応させて配置している。
【0036】
また、ガス供給孔248bの開口面積は、バッファ室237と処理炉202の差圧が小さい場合には、上流側から下流側まで同一の開口面積で同一の開口ピッチとすると良いが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって開口面積を大きくするか、開口ピッチを小さくすると良い。
【0037】
ガス供給孔248bの開口面積や開口ピッチを上流側から下流にかけて調節することで、まず、各ガス供給孔248bよりガスの流速の差はあるが、流量はほぼ同量であるガスを噴出させる。そしてこの各ガス供給孔248bから噴出するガスをバッファ室237に噴出させて一旦導入し、ガスの流速差の均一化を行うことができる。
【0038】
すなわち、バッファ室237において、各ガス供給孔248bより噴出したガスはバッファ室237で各ガスの粒子速度が緩和された後、ガス供給孔248aより処理室201に噴出する。この間に、各ガス供給孔248bより噴出したガスは、各ガス供給孔248aより噴出する際には、均一な流量と流速とを有するガスとすることができる。
【0039】
さらに、バッファ室237に、細長い構造を有する棒状電極269及び棒状電極270が上部より下部にわたって電極を保護する保護管である電極保護管275に保護されて配設され、この棒状電極269又は棒状電極270のいずれか一方は整合器272を介して高周波電源273に接続され、他方は基準電位であるアースに接続されている。この結果、棒状電極269及び棒状電極270間のプラズマ生成領域224にプラズマが生成される。
【0040】
この電極保護管275は、棒状電極269及び棒状電極270のそれぞれをバッファ室237の雰囲気と隔離した状態でバッファ室237に挿入できる構造となっている。ここで、電極保護管275の内部は外気(大気)と同一雰囲気であると、電極保護管275にそれぞれ挿入された棒状電極269及び棒状電極270はヒータ207の加熱で酸化されてしまう。そこで、電極保護管275の内部は窒素などの不活性ガスを充填あるいはパージし、酸素濃度を充分低く抑えて棒状電極269又は棒状電極270の酸化を防止するための不活性ガスパージ機構が設けられる。
【0041】
さらに、ガス供給孔248aの位置より、反応管203の内周を120°程度回った内壁に、ガス供給部249が設けられている。このガス供給部249は、ALD法による成膜においてウエハ200へ、複数種類のガスを1種類ずつ交互に供給する際に、バッファ室237とガス供給種を分担する供給部である。
【0042】
このガス供給部249もバッファ室237と同様にウエハと隣接する位置に同一ピッチでガスを供給する供給孔であるガス供給孔248cを有し、下部ではガス供給管232bが接続されている。
【0043】
ガス供給孔248cの開口面積はバッファ室237と処理室201の差圧が小さい場合には、上流側から下流側まで同一の開口面積で同一の開口ピッチとすると良いが、差圧が大きい場合には上流側から下流側に向かって開口面積を大きくするか開口ピッチを小さくすると良い。
【0044】
反応管203内の中央部には複数枚のウエハ200を多段に同一間隔で鉛直方向に載置するボート217が設けられており、このボート217は図中省略のボートエレベータ機構により反応管203に出入りできるようになっている。また処理の均一性を向上するためにボート217を回転するための回転手段であるボート回転機構267が設けてあり、ボート回転機構267を回転することにより、石英キャップ218に保持されたボート217を回転するようになっている。
【0045】
制御手段であるコントローラ321は、マスフローコントローラ241a、241b、バルブ243a、243b、243c、243d、ヒータ207、真空ポンプ246、ボート回転機構267、ボートエレベータ121、高周波電源273、整合器272に接続されており、マスフローコントローラ241a、241bの流量調整、バルブ243a、243b、243cの開閉動作、バルブ243dの開閉及び圧力調整動作、ヒータ207の温度調節、真空ポンプ246の起動・停止、ボート回転機構267の回転速度調節、ボートエレベータ121の昇降動作制御、高周波電源273の電力供給制御、整合器272によるインピーダンス制御が行われる。コントローラ321によってバルブ243a、243b、243c、バルブ243dの開閉動作を制御することにより、2本のガス供給管232a、232bからそれぞれ供給される処理ガスの供給時間は任意に設定される。
【0046】
次にALD法による成膜例について、DCS及びNHガスを用いてSiN膜を成膜する例で説明する。
【0047】
まず成膜しようとするウエハ200をボート217に装填し、処理炉202に搬入する。搬入後、次のステップ4〜7を順次繰り返し実行する。
【0048】
[ステップ1]
まず、ガス排気管231のバルブ243dを開いて真空ポンプ246により、処理室201を20Pa以下に排気する。
一方では、ガス供給管232bの上流側のバルブ243bを開け、下流側のバルブ243cを閉めて、DCSを流すようにする。これによりバルブ243b、243c間に設けたガス溜め247にDCSを溜める。ガス溜め247に所定圧(例えば、20000Pa以上)、所定量のDCSが溜まったら上流側のバルブ243bを閉めて、ガス溜め247にDCSを閉じ込める。ガス溜め247と処理室201との間のコンダクタンスが1.5×10−3/s以上になるように装置を構成する。また、反応管203の容積とこれに対する必要なガス溜め247の容積との比として考えると、反応管203の容積1001(リットル)の場合においては、100〜300ccであることが好ましく、容積比としてはガス溜め247は反応室容積の1/1000〜3/1000倍とすることが好ましい。
【0049】
[ステップ2]
ステップ2では、処理室201の排気が終わったらガス排気管231のバルブ243cを閉じて排気を止める。ガス供給管232bの下流側のバルブ243cを開く。これによりガス溜め247に溜められたDCSが処理室201に一気に供給される。このときガス排気管231のバルブ243dが閉じられているので、処理室201内の圧力は急激に上昇して約931Pa(7Torr)まで昇圧される。DCSを供給するための時間は2〜4秒設定し、その後上昇した圧力雰囲気中に晒す時間を2〜4秒に設定し、合計6秒とした。このときのウエハ温度は、450℃である。
【0050】
[ステップ3]
その後、バルブ243cを閉じ、バルブ243dを開けて処理室201を真空排気し、残留するDCSガスを排除する。また、この時にはN等の不活性ガスを処理室201に供給すると、更に残留するDCSの成膜に寄与した後のガスを処理室201から排除する効果が高まる。またバルブ243bを開いてガス溜め247へのDCSの供給を開始する。
【0051】
[ステップ4]
ステップ3では、ガス供給管232aに設けたバルブ243a、及びガス排気管231に設けたバルブ243dを共に開けて、ガス供給管232aからマスフローコントローラ241aにより流量調整されたNHガスをノズル233のガス供給孔248bからバッファ室237へ噴出し、棒状電極269及び棒状電極270間に高周波電源273から整合器272を介して高周波電力を印加してNHをプラズマ励起し、活性種として処理室201に供給しつつガス排気管231から排気する。NHガスをプラズマ励起することにより活性種として流すときは、バルブ243dを適正に調整して処理室201内圧力を10〜100Paとする。マスフローコントローラ241aで制御するNHの供給流量は1000〜10000sccmである。NHをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ200を晒す時間は従来の6秒よりも多く、9秒または14秒である。このときのヒータ207の温度はウエハが450℃になるよう設定してある。NHは反応温度が高いため、上記ウエハ温度では反応しないので、プラズマ励起することにより活性種としてから流すようにしており、このためウエハ温度は設定した低い温度範囲のままで行える。
【0052】
このNHをプラズマ励起することにより活性種として供給しているとき、ガス供給管232bの上流側のバルブ243bを開け、下流側のバルブ243cを閉めて、DCSも流すようにする。これによりバルブ243b、243c間に設けたガス溜め247にDCSを溜める。このとき、処理室201内に流しているガスはNHをプラズマ励起することにより得られた活性種であり、DCSは存在しない。したがって、NHは気相反応を起こすことはなく、プラズマにより励起され活性種となったNHはウエハ200上に吸着しているDCSと表面反応して、ウエハ200上にSiN膜が成膜される。
【0053】
そして、NHをプラズマ励起することにより得られた活性種にウエハ200を晒す時間を従来の6秒よりも多く、9秒または14秒としているので、NHを流すことによって形成される膜の膜厚が飽和した後もNHをプラズマ励起することにより得られた活性種を流し続けることになる。また、形成される膜の膜ストレスも増加する。
【0054】
[ステップ5]
ステップ5では、ガス供給管232aのバルブ243aを閉めて、NHの供給を止めるが、引続きガス溜め247へ供給を継続する。ガス溜め247に所定圧、所定量のDCSが溜まったら上流側のバルブ243bも閉めて、ガス溜め247にDCSを閉じ込めておく。また、ガス排気管231のバルブ243dは開いたままにし真空ポンプ246により、処理室201を20Pa以下に排気し、残留NHを処理室201から排除する。また、この時にはN等の不活性ガスを処理室201に供給すると、更に残留NHを排除する効果が高まる。ガス溜め247内には、圧力が20000Pa以上になるようにDCSを溜める。
【0055】
[ステップ6]
ステップ6では、処理室201の排気が終わったらガス排気管231のバルブ243cを閉じて排気を止める。ガス供給管232bの下流側のバルブ243cを開く。これによりガス溜め247に溜められたDCSが処理室201に一気に供給される。このときガス排気管231のバルブ243dが閉じられているので、処理室201内の圧力は急激に上昇して約931Pa(7Torr)まで昇圧される。DCSを供給するための時間は2〜4秒設定し、その後上昇した圧力雰囲気中に晒す時間を2〜4秒に設定し、合計6秒とした。このときのウエハ温度はNHの供給時と同じく、450℃である。DCSの供給により、下地膜上にDCSが吸着する。
【0056】
[ステップ7]
ステップ7では、バルブ243cを閉じ、バルブ243dを開けて処理室201を真空排気し、残留するDCSガスを排除する。また、この時にはN等の不活性ガスを処理室201に供給すると、更に残留するDCSの成膜に寄与した後のガスを処理室201から排除する効果が高まる。またバルブ243bを開いてガス溜め247へのDCSの供給を開始する。
【0057】
上記ステップ4〜7を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことによりウエハ上に所定膜厚のSiN膜を成膜する。
【0058】
なお、ALD装置では、ガスは下地膜表面に吸着する。このガスの吸着量は、ガスの圧力、及びガスの暴露時間に比例する。よって、希望する一定量のガスを、短時間で吸着させるためには、ガスの圧力を短時間で大きくする必要がある。この点で、本実施例では、バルブ243dを閉めたうえで、ガス溜め247内に溜めたDCSを瞬間的に供給しているので、処理室201内のDCSの圧力を急激に上げることができ、希望する一定量のガスを瞬間的に吸着させることができる。
【0059】
また、本実施例では、ガス溜め247にDCSを溜めている間に、ALD法で必要なステップであるNHガスをプラズマ励起することにより活性種として供給、及び処理室201の排気をしているので、DCSを溜めるための特別なステップを必要としない。また、処理室201内を排気してNHガスを除去しているからDCSを流すので、両者はウエハ200に向かう途中で反応しない。供給されたDCSは、ウエハ200に吸着しているNHとのみ有効に反応させることができる。
【0060】
次に、図10、図11を参照して本実施例の基板処理装置の概略を説明する。
【0061】
筐体101内部の前面側には、図示しない外部搬送装置との間で基板収納容器としてのカセット100の授受を行う保持具授受部材としてのカセットステージ105が設けられ、カセットステージ105の後側には昇降手段としてのカセットエレベータ115が設けられ、カセットエレベータ115には搬送手段としてのカセット移載機114が取りつけられている。又、カセットエレベータ115の後側には、カセット100の載置手段としてのカセット棚109が設けられると共にカセットステージ105の上方にも予備カセット棚110が設けられている。予備カセット棚110の上方にはクリーンユニット118が設けられクリーンエアを筐体101の内部を流通させるように構成されている。
【0062】
筐体101の後部上方には、処理炉202が設けられ、処理炉202の下方には基板としてのウエハ200を水平姿勢で多段に保持する基板保持手段としてのボート217を処理炉202に昇降させる昇降手段としてのボートエレベータ121が設けられ、ボートエレベータ121に取りつけられた昇降部材122の先端部には蓋体としてのシールキャップ219が取りつけられボート217を垂直に支持している。ボートエレベータ121とカセット棚109との間には昇降手段としての移載エレベータ113が設けられ、移載エレベータ113には搬送手段としてのウエハ移載機112が取りつけられている。又、ボートエレベータ121の横には、開閉機構を持ち処理炉202の下側を気密に閉塞する閉塞手段としての炉口シャッタ116が設けられている。
【0063】
ウエハ200が装填されたカセット100は、図示しない外部搬送装置からカセットステージ105にウエハ200が上向き姿勢で搬入され、ウエハ200が水平姿勢となるようカセットステージ105で90°回転させられる。更に、カセット100は、カセットエレベータ115の昇降動作、横行動作及びカセット移載機114の進退動作、回転動作の協働によりカセットステージ105からカセット棚109又は予備カセット棚110に搬送される。
【0064】
カセット棚109にはウエハ移載機112の搬送対象となるカセット100が収納される移載棚123があり、ウエハ200が移載に供されるカセット100はカセットエレベータ115、カセット移載機114により移載棚123に移載される。
【0065】
カセット100が移載棚123に移載されると、ウエハ移載機112の進退動作、回転動作及び移載エレベータ113の昇降動作の協働により移載棚123から降下状態のボート217にウエハ200を移載する。
【0066】
ボート217に所定枚数のウエハ200が移載されるとボートエレベータ121によりボート217が処理炉202に挿入され、シールキャップ219により処理炉202が気密に閉塞される。気密に閉塞された処理炉202内ではウエハ200が加熱されると共に処理ガスが処理炉202内に供給され、ウエハ200に処理がなされる。
【0067】
ウエハ200への処理が完了すると、ウエハ200は上記した作動の逆の手順により、ボート217から移載棚123のカセット100に移載され、カセット100はカセット移載機114により移載棚123からカセットステージ105に移載され、図示しない外部搬送装置により筐体101の外部に搬出される。炉口シャッタ116は、ボート217が降下状態の際に処理炉202の下面を気密に閉塞し、外気が処理炉202内に巻き込まれるのを防止している。
なお、カセット移載機114等の搬送動作は、搬送制御手段124により制御される。
【0068】
明細書、特許請求の範囲、図面および要約書を含む2005年2月17日提出の日本国特許出願2005−40471号の開示内容全体は、本国際出願で指定した指定国、又は選択した選択国の国内法令の許す限り、そのまま引用してここに組み込まれる。
【0069】
種々の典型的な実施の形態を示しかつ説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明の一形態によれば、膜ストレスを制御することができる。
その結果、本発明は、Si半導体デバイスを製造する際に用いられるALD法による成膜を行う基板処理方法および基板処理装置に特に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0071】
200 ウエハ(基板)
201 処理室
231 ガス排気管
232a ガス供給管
232b ガス供給管
246 真空ポンプ
248a ガス供給孔
248b ガス供給孔
248c ガス供給孔
249 ガス供給部
321 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出して、前記基板に所望の薄膜を形成する基板処理方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間の2倍より長く供給するように制御する基板処理方法。
【請求項2】
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出して、前記基板に所望の薄膜を形成する基板処理方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間より長く、かつ6秒より長く供給するように制御する基板処理方法。
【請求項3】
前記アンモニアガスは、励起されたアンモニアガスである請求項1又は2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記塩素を含むガスは、Siと塩素を含むガスである請求項1又は2記載の基板処理方法。
【請求項5】
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出して、Atomic Layer Deposition法で前記基板に窒化シリコン膜を形成する基板処理方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間の2倍より長く供給するように制御する基板処理方法。
【請求項6】
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出して、Atomic Layer Deposition法で前記基板に窒化シリコン膜を形成する基板処理方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間より長く、かつ6秒より長く供給するように制御する基板処理方法。
【請求項7】
前記アンモニアガスの供給時間を制御することによって、前記窒化シリコン膜中のCl濃度又はH濃度の少なくとも一方を制御する請求項5又は6記載の基板処理方法。
【請求項8】
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出することによって前記基板に形成される薄膜の膜ストレスを制御する膜ストレス制御方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間の2倍より長く供給するように制御する膜ストレス制御方法。
【請求項9】
基板を処理する空間を成す処理室に対し、塩素を含むガスと、アンモニアガスとを交互に供給、排出することによって前記基板に形成される薄膜の膜ストレスを制御する膜ストレス制御方法であって、
前記アンモニアガスの供給時間を、前記塩素を含むガスを供給する時間より長く、かつ6秒より長く供給するように制御する膜ストレス制御方法。
【請求項10】
基板を処理する空間を成す処理室と、
前記処理室内に塩素を含むガス及びアンモニアガスを供給するガス供給部と、
前記処理室内の雰囲気を排出する排出部と、
前記塩素を含むガス及び前記アンモニアガスの供給時間を任意に設定可能な制御部と、を有し、
前記処理室に対し前記塩素を含むガスと、前記アンモニアガスとを交互に供給、排出させて、前記基板に所望の薄膜を形成する基板処理装置であって、
前記制御部は、前記アンモニアガスを供給する時間を前記塩素を含むガスを供給する時間の2倍より長く供給するように制御することによって、前記薄膜中に存在し前記薄膜の膜ストレスがその存在量に依存する化学種の量を制御し、これにより前記薄膜の膜ストレスを制御する基板処理装置。
【請求項11】
基板を処理する空間を成す処理室と、
前記処理室内に塩素を含むガス及びアンモニアガスを供給するガス供給部と、
前記処理室内の雰囲気を排出する排出部と、
前記塩素を含むガス及び前記アンモニアガスの供給時間を任意に設定可能な制御部と、を有し、
前記処理室に対し前記塩素を含むガスと、前記アンモニアガスとを交互に供給、排出させて、前記基板に所望の薄膜を形成する基板処理装置であって、
前記制御部は、前記アンモニアガスを供給する時間を前記塩素を含むガスを供給する時間より長く、かつ6秒より長く供給するように制御することによって、前記薄膜中に存在し前記薄膜の膜ストレスがその存在量に依存する化学種の量を制御し、これにより前記薄膜の膜ストレスを制御する基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−287903(P2010−287903A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167110(P2010−167110)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【分割の表示】特願2007−503600(P2007−503600)の分割
【原出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】