説明

基板処理槽及びその製造方法

【課題】重量及びコストの著しい増大を回避しながら大型化が可能な基板処理槽と、これを製造するための方法を提供する。
【解決手段】基板処理槽は、槽本体10と支持枠体20とを備える。槽本体10は、樹脂製の板材からなるもので、底板13とその外縁14から立上がる補強板14とを一体に有する底部材12と、その補強板14の内側面に沿って立設される側板16A,16Bとからなる。支持枠体20は、底板13を下方から支持する底部枠23と、側板16A,16Bを外側から支持する側部枠26A,26Bとを備える。これらの支持は、槽本体10の形状を保ち、その形状保持のために板材の厚みを大幅に増やす必要をなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ、液晶表示装置用ガラス基板、PDP用ガラス基板、磁気/光ディスク用のガラス/セラミック基板といった各種基板に対して薬液処理、水洗処理、乾燥処理といった各種処理を行うのに好適な基板処理槽とこれを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、処理対象である基板をその下方及び側方から覆うための基板処理槽として、例えば特許文献1に記載されるように樹脂製の板材で構成されたものが広く知られている。具体的に、この種の基板処理槽は、底板と、この底板の外縁から立上がる複数枚の側板とからなり、当該底板と各側板の下端同士が接合されるとともに、互いに隣接する側板の側縁同士が接合されることにより、槽全体が構築される。
【特許文献1】特開2006−93339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、処理対象とされる基板の大型化が著しく、これに伴って当該基板を収容するための基板処理槽の大型化も余儀なくされている。しかし、当該基板処理槽は、耐薬液性、帯電防止などの諸事情により、金属材料に比して剛性の低い樹脂からなる板材で構成されるのが一般的であり、このような樹脂製の板材を用いながら処理槽の大型化にかかわらずその形状を十分に保つための剛性を確保するには、各板材の板厚を大きくせざるを得ない。この板厚の増加は、処理槽全体の重量及びコストを増加させ、その増加の度合いは、当該板材の面積が大きいほど著しいものとなる。
【0004】
なお、前記特許文献1には、処理槽の上端の開口を開閉するための蓋部材を備える関係上、当該処理槽の上端に補強フレームを設けて当該補強フレームに前記蓋部材を取付けることが記載されているが、この補強フレームはあくまで前記蓋部材を支持するために処理槽上端を補強するに過ぎず、当該処理槽の形状を保つための剛性の向上(特に処理槽の下部の剛性の向上)に寄与するものではない。従って、同文献1記載の処理槽においても、処理槽の大型化に伴う槽構成板材の厚みの著しい増加は避けられない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、重量及びコストの著しい増大を回避しながら大型化が可能な基板処理槽と、これを製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、処理される基板を少なくとも側方及び下方から覆うための基板処理槽であって、樹脂製の底板と、この底板の外縁に沿って立設される複数枚の樹脂製の側板とを有し、これらの側板の内側に前記基板を収容することが可能な形状をなす槽本体と、互いに間欠的に配列される複数本の棒状部材が組み合わされてなり、前記槽本体の底板を下方から支持する底部枠とこの底部枠から立ち上がって前記槽本体の側板を外側から支持する側部枠とを有し、これらの支持によって前記槽本体の形状を保つ支持枠体とを備えたものである。
【0007】
この基板処理槽では、支持枠体が槽本体をその下方及び外側から支持するため、当該槽本体を構成する樹脂製の板材の厚みを特に大きくすることなく、その形状を保持することができる。しかも、前記支持枠体は、互いに間欠的に配列される複数本の棒状部材からなり、かつ、前記槽本体をその下方及び外側から支持するだけの強度を有する限りにおいて特に材質の制約もないため、当該支持枠体の追加にかかわらず、従来のように槽本体を構成する樹脂板の厚みを大きくする場合よりも槽全体の重量及びコストを小さく抑えることが可能である。
【0008】
ここで、前記槽本体としては、前記底板とこの底板の外縁から前記側板よりも低い寸法で立上がる樹脂製の補強板とを一体に有する底部材を備え、前記各側板は前記補強板の内側面に沿って配列され、当該側板の下端部が当該補強板にその内側から重ね合わされかつ前記底板の上面に突き当たった状態でこれら補強板及び底板に接合され、かつ、互いに隣接する側板の側縁同士が接合されているものが、好適である。
【0009】
このような槽本体では、全体の厚みを特に大きくすることなく、当該槽本体の強度が効果的に高められる。すなわち、底板とその外縁から立上がる補強板とが一体化されることにより底部材が構成された上で、その補強板に側板の下端部が内側から重ね合わされた状態で当該補強板と底板とに接合されるため、単に底板の外縁と側板の下端とが接合されるだけの槽構造と異なり、底板上での各側板の立設状態が安定する。すなわち、各側板が立直状態から傾くような変形が有効に抑えられる。
【0010】
さらに、この槽本体では、前記各側板の板厚を前記底部材を構成する底板及び補強板の板厚よりも小さくすることにより、特に大きな荷重が作用しやすい槽本体の底部では十分な強度を確保し、かつ、補強板による補強効果を確保しながら、各側板の厚みの抑制によってさらなる軽量化及びコスト削減を図ることが可能である。
【0011】
本発明に係る基板処理槽では、さらに、前記側部枠とその内側に位置する槽本体の側板との間に介在し、当該槽本体の側板がその厚み方向に変位するのを許容するように弾性変形することにより当該側板に加わる衝撃を吸収する弾性体を備えることが、より好ましい。この弾性体の介在は、例えば前記槽本体の側板が前記側部枠に直接接触する場合に比べ、当該槽本体の側板に衝撃(例えば輸送時の衝撃)が加わったときに当該側板が前記側部枠から受ける支持反力を有効に緩和することができ、当該衝撃に起因する槽本体の破損を防ぐことができる。
【0012】
より具体的に、前記側部枠と前記槽本体の側板の上部とがその間に前記弾性体を挟んだ状態で相互締結されるものでは、当該弾性体の介在によって前記衝撃の緩和を図りながら当該側部枠と槽本体の側板との締結によって当該側部枠による槽本体の支持状態をさらに安定させることができる。
【0013】
また本発明は、基板を所定方向に搬送しながら処理するための装置であって、上述の基板処理槽と、この基板処理槽の槽本体の内側で前記所定方向に前記基板を搬送する基板搬送機構とを備え、この基板搬送機構が前記基板処理槽の支持枠体側に支持されるものである。
【0014】
この基板処理装置では、槽本体に加えて重量の大きい基板搬送機構も支持枠体に支持されることにより、槽本体に加わる機械的荷重がさらに軽減され、当該槽本体に求められる剛性がさらに低く抑えられる。
【0015】
例えば、前記基板搬送機構が、前記所定方向に並ぶ複数本の搬送ローラ軸と、各搬送ローラ軸に固定されて当該搬送ローラ軸と一体に回転することにより前記基板を前記所定方向に搬送する搬送ローラと、前記各搬送ローラ軸を駆動するための駆動系とを含む場合、前記各搬送ローラ軸が前記本体槽の側板を貫通して当該搬送ローラ軸の端部及び前記駆動系が前記支持枠体側に支持されればよい。この構造は、搬送ローラ軸及びその駆動のための駆動系を槽本体の外側の支持枠体側で支持しながら、当該槽本体の内側での基板の搬送を可能にする。
【0016】
この基板処理装置では、前記支持枠体が、その底部枠からさらに下方に延びて槽設置面上に置かれる脚部を有し、この脚部が、当該支持枠体に支持される槽本体及び基板搬送機構を前記基板の搬送方向と直交する方向に傾かせながら支持する形状を有するという態様をとることが可能である。この態様では、前記槽設置面が例えば水平面であっても、槽本体を支持する支持枠体の脚部を利用して当該槽本体及び基板搬送機構を基板の搬送方向と直交する方向に傾かせることができる。このような傾斜状態での基板の搬送は、例えば当該基板の薬液供給処理、洗浄処理、エアの吹付けによる乾燥処理などに有効である。
【0017】
また本発明は、処理される基板を少なくとも側方及び下方から覆うための基板処理槽を製造する方法であって、処理される基板を少なくとも側方及び下方から覆うための基板処理槽を製造する方法であって、複数本の棒状部材を間欠的に配列して相互結合することにより、底部枠とこの底部枠から立ち上がって前記槽本体の側板を側方から支持する側部枠とを有する支持枠体を構築する工程と、樹脂製の底板及びこの底板の外縁から立上がる補強板とが一体化された底部材を製造する工程と、前記底部材の底板を前記支持枠体の底部枠上に載せる工程と、前記底部枠上に前記底部材が載せられた状態で、前記補強板の立上り寸法よりも大きな高さ寸法を有する複数枚の樹脂製の側板を前記底部材における補強板の内側面に沿って配列し、当該側板の下端部を当該補強板に対してその内側から重ね合わせかつ前記底板の上面に上から突き当てた状態でこれら補強板及び底板に前記側板を接合し、かつ、互いに隣接する側板の側縁同士を接合することにより、前記基板を少なくとも側方及び下方から覆うことが可能な上向きに開口する形状の槽本体を構築する工程と、前記各側板が前記側部枠に外側から支持されるように両者を連結する工程とを含むものである。
【0018】
この製造方法では、予め底板と補強板とが一体化された底部材が支持枠体の底部枠に載せられた状態で当該底部枠に対する各側板の接合が行われるので、槽本体全体をリフトアップするという大掛かりな作業が不要となる。すなわち、槽本体が完成してからこれを支持枠体の内側にセットする場合には、当該槽本体を支持枠体の側部枠の上端よりもさらに高い位置まで持ち上げ、さらに、これを吊るしながら側部枠の内側に挿入して底部枠上の所定位置にセットするという大掛かりな作業が必要となるが、前記の製造方法では、前記槽本体のうちの底部材のみが前記底部枠上にセットされればよく、その後は、当該底部材に対する各側板の接合が前記底部枠上で行われることにより、槽本体全体を持ち上げることなく当該槽本体が支持枠体に支持される最終形態を得ることができる。
【0019】
しかも、前記槽本体の構築にあたっては、予め底板と補強板とが一体化された底部材に対してその補強板の内側に各側板を重ね合わせながらこれらを接合すればよいので、当該構築作業は比較的簡単であって作業者は前記底板上で行うことができる。従って、前記底部材が支持枠体の内側にセットされた状態でも前記接合作業を支障なく行うことができる。
【0020】
この製造方法では、前記各側板が、その厚み方向の変位を許容するように弾性変形することが可能な弾性体を介して前記側部枠に締結されることが、より好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る基板処理槽では、複数の棒状部材からなる支持枠体が槽本体を下方及び側方から支持することにより当該槽本体の形状を保つので、当該槽本体を構成する樹脂製の板材の厚みを特に大きくすることなくこれを大型化することができる。また、本発明に係る基板処理槽の製造方法では、本体槽全体をリフトアップするといった大掛かりな作業を要することなく、前記の効果を奏する基板処理槽を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の好ましい実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0023】
この実施の形態に係る基板処理槽は、図1等に示されるような槽本体10と、図2〜図5に示される支持枠体20とを備える。そして、この基板処理槽に図5及び図6に示されるような基板搬送機構50が付加されることにより、基板を特定方向に搬送しながらこれに対して処理を行う基板処理装置が構成される。
【0024】
前記槽本体10は、処理される基板を側方及び下方から覆うように収容することが可能な形状、すなわち、上向きに開口する形状を有するもので、複数枚の樹脂製の板材により構築される。具体的には、底板13と補強板14とが一体化された底部材12と、この底部材12の底板13上に立設される一対の第1側板16A,16B及び一対の第2側板18A,18Bとで構成される。
【0025】
この実施の形態に係る底板13は、平面視矩形状の平板からなり、その外縁から前記補強板14が立上がる。この補強板14は、前記各側板16A,16B,18A,18Bの高さ寸法よりも小さい高さ寸法(立上り寸法)を有し、その下端部が前記底板13と接合される(例えば接着や溶接により接合される;下記の他の接合についても同様)。
【0026】
前記各第1側板16A,16Bは、前記補強板14のうち底板13の長辺上に立設される部分の内側面に沿って配置され、前記各第2側板18A,18Bは前記補強板14のうち底板13の短辺上に立設される部分の内側に沿って配置される。この実施の形態では、補強板14が側板16A,16B,18A,18Bの下部のみを覆う程度に当該補強板14の立上り寸法が設定され、この補強板14に前記側板16A,16B,18A,18Bの下部が内側から重ねられ、かつ、前記底板13の上面に上から突き当たった状態で(図3参照)、当該下部が当該補強板14および当該底板13に接合されるとともに互いに隣接する側板16A,16B,18A,18Bの側縁同士が互いに隣接することにより、上方に開口する形状の槽本体10が構築される。
【0027】
本発明では、前記補強板14が省略されて側板16A,16B,18A,18Bの下端部が直接、底板13の外縁部に接合されてもよい。しかし、前記底板13と前記補強板14との一体化により底部材12が構築された上でその内側に側板16A,16B,18A,18Bの下部が接合されることは、当該側板の立設状態をより安定化させる。すなわち、各側板16A,16B,18A,18Bの下部の支持剛性を高めてこれらの側板が例えばその板厚方向に傾くような変形を有効に抑止できる。
【0028】
さらに、この実施の形態では、前記各側板16A,16B,18A,18Bの板厚が前記底部材12を構成する底板13及び補強板14の板厚よりも小さく設定されている。このことは、特に大きな荷重が作用しやすい槽本体10の底部で十分な強度を確保し、かつ、上述の補強板14による補強効果を確保しながら、各側板16A,16B,18A,18Bの厚みの抑制によってさらなる軽量化及びコスト削減を図ることを可能にする。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば前記各側板16A,16B,18A,18Bの板厚が前記底板13や前記補強板14の板厚と同等であってもよい。
【0029】
この実施の形態では、図2及び図3に示すように、一方の第1側板16A側から槽本体10内に基板が搬入され、他方の第1側板16B側から当該基板が搬出される。そこで、前記第1側板16A,16Bの中段部にそれぞれ、外側に膨出する形状の基板搬入部17A及び基板搬出部17Bが形成され、前記基板搬入部17A及び前記基板搬出部17Bにそれぞれ、横長スリット状の基板搬入口17a及び基板搬出口17bが形成されている。当該基板搬入部17A及び当該基板搬出部17Bは、図1では便宜上省略されている。
【0030】
この槽本体10において、前記各板13,14,16,18を構成する樹脂の種類は、基板処理の内容等に応じて適宜選定されればよい。一般には、硬質で耐薬液性の高い塩化ビニルが好適である。また、基板にエアを吹付けて乾燥させる処理では、母材の表面に帯電防止処理(例えば導電性樹脂のコーティング)が施された板材が使用されることが好ましい。
【0031】
前記支持枠体20は、前記槽本体10を下方及び側方から支持することで当該槽本体10の形状を保つためのもので、当該槽本体10と同様に上方に開口する形状を有する。具体的には、前記槽本体10の底板13を下方から支持する底部枠23と、この底部枠23から立ち上がって前記槽本体10の第1側板16A,16Bを外側から支持する第1側部枠26A,26Bと、同じく底部枠23から立上がって前記槽本体10の第2側板18A,18Bをそれぞれ外側から支持する第2側部枠28A,28Bと、前記底部枠23から下方に延出する脚部25とを有する。
【0032】
この支持枠体20は、互いに間欠的に配列される複数本の棒状部材を組み合わせることにより構築される。これらの棒状部材としては、比較的軽量で強度の高いものが好ましく、アルミニウム合金といった軽金属材料や比較的強度の高い樹脂材料で成形されたものが、好適である。各棒状部材の断面形状は中実である必要はなく、逆に、ある程度の断面係数を確保し得る範囲で中空構造とすることにより、処理槽全体の軽量化を促進することが可能である。
【0033】
この実施の形態では、前記棒状部材として、2本の長支柱30A、2本の短支柱30B、4本の第1横桟361,362,363,364、3本の第2横桟381,382,383、複数本の補助縦桟32、複数本の底桟33、複数本の補助脚34、及び脚枠35が含まれる。
【0034】
前記各支柱30A,30Bは、それぞれ、最終状態において図2に示すように前記槽本体10の四隅の外側にその高さ方向に沿うように、配置される。具体的には、そのうちの長支柱30Aが第2側板18Aの両側に、短支柱30Bが第2側板18Bの両側に、それぞれ配置される。前記長支柱30Aは短支柱30Bよりも長く、その差分だけ支持枠体20全体が後に詳述するように傾斜した状態で設置されるようになっている(図4)。
【0035】
前記第1横桟361〜364は、前記支柱30A,30Bとともに前記第1側部枠26A,26Bを構成するもので、両第1側板16A,16Bの外側において互いに平行な姿勢で上から順に配列される。そして、前記長支柱30Aと前記短支柱30Bとを連結するようにこれらの支柱30A,30Bに接合される。これらの第1桟361〜364のうち、最上段の第1桟361は両支柱30A,30Bの上端に接合される高さ位置に配され、最下段の第1桟364は短支柱30Bの下端近傍の部位に接合される高さ位置に配される。
【0036】
前記第2横桟381〜383は、前記支柱30A,30Bとともに前記第2側部枠28A,28Bを構成するもので、両第2側板18A,18Bの外側において互いに平行な姿勢で上から順に配列される。そして、前記両長支柱30A同士または前記両短支柱30B同士を連結するように、これらの支柱30A,30Bに接合される。これらの第2桟381〜383のうち、最上段の第2桟381は両支柱30A,30Bの上端に接合される高さ位置であって同じく最上段の第1桟361と同じ高さ位置に配され、最下段の第2桟383は短支柱30Bの下端近傍の部位に接合される高さ位置であって同じく最下段の第1桟364と同じ高さ位置に配される。
【0037】
前記補助縦桟32は、前記第1横桟361,362同士の間、前記第1横桟363,364同士の間、及び前記第2横桟381,382同士の間にそれぞれ配設され、その横桟同士を連結することにより枠体を補強する。
【0038】
前記底桟33は、最下段の第1横桟364及び第2横桟383とともに前記底枠23を構成するもので、これらの横桟364,383により囲まれる領域内で縦横に配置され、当該第1横桟364または当該第2横桟383に適宜連結される。前記槽本体10の底板13は前記底桟33の上に配置される。
【0039】
前記脚枠35は、槽本体10の外側で支柱30A,30Bの下端同士を連結するもので、当該支柱30A,30Bの下部(前記底部枠23からさらに下側に延びる部分)及び補助脚34とともに、前記脚部25を構成する。この脚部25は、水平面、例えば図4に示すような基台2の上面に前記脚枠35が載せられた状態で、既述の長支柱30Aと短支柱30Bの長さの差分だけ前記底部枠23さらにはその上に載せられる槽本体10の底板13を傾かせる形状を有する。具体的には、前記槽本体10の第1側板18Aおよびこれを支持する第1側部枠28Aが第1側板18Bおよびこれを支持する第1側部枠28Bよりも高くなる向きに傾斜させる。
【0040】
前記補助脚34は、最下段の第1桟364及び第2桟383と前記底枠35との間に配設され、これらを相互連結することにより、脚部25を補強する。
【0041】
このような構造をもつ支持枠体20は、前記槽本体10をその下方及び外側から支持することによって当該槽本体10の形状を保持するので、その形状の保持のために当該槽本体10を構成する樹脂製の板材(底板13や側板16A,…など)の厚みを特に大きくする必要をなくす。しかも、この支持枠体20は、前記のように互いに間欠的に配列される複数本の棒状部材からなり、かつ、前記槽本体をその下方及び外側から支持するだけの強度を有する限りにおいて特に材質の制約もないため、前記形状保持のために槽本体10を構成する樹脂板の厚みを大きくする場合よりも槽全体の重量及びコストを小さく抑えることが可能である。
【0042】
さらに、この実施の形態では、薄肉の槽本体10を衝撃等からより有効に保護するために、側板16A,16B,18A,18Bと各側部枠26A,26B,28A,28Bとの間に、図6及び図7に示すような弾性体40がそれぞれ介設される(これらの図では代表的に第2側板18Aとこれを支持する第2側部枠28Aとの間の弾性体40が例示される。)。この弾性体40は、当該槽本体10の側板がその厚み方向に変位するのを許容するように弾性変形する(具体的には横向きに弾性圧縮変形する)ことにより、当該側板に加わる衝撃を吸収するように、配置される。この弾性体40の介在は、例えば前記側板16A,…が前記側部枠26A,…に直接接触する場合に比べ、当該側板に衝撃(例えば輸送時の衝撃)が加わったときに当該側板が前記側部枠から受ける支持反力を有効に緩和することを可能にし、当該衝撃に起因する槽本体10の破損を防ぐことができる。
【0043】
図6及び図7に示す例では、前記弾性体40は、第2側板18Aの上部と、第2側部枠28Aを構成する最上段の第2横桟381との間に介在し、かつ、その介在状態で当該第2側板18Aと当該第2横桟381とが締結される。具体的には、図7に示すように、前記第2横桟381の下面に当該下面から下方に突出する姿勢でブラケット42が固定される一方、前記第2側板18Aにはその外側面から外向きに突出するようにボス44が突設され、このボス44にねじ孔44aが設けられるとともに前記弾性体40及び前記ブラケット42にこれらをそれぞれ厚み方向に貫通するボルト挿通孔40a,42aが形成されている。そして、前記ブラケット42と前記ボス44との間に前記弾性体40が介在した状態で、前記ボルト挿通孔42a,40aを通じて前記ボス44のねじ孔にボルト46が螺合しながら挿入されることにより、前記第2側板18Aと前記第2横桟381とが前記ブラケット42、前記ボス44、及び前記弾性体40を介して相互に締結され、支持枠体20による槽本体10の支持状態がより安定する。
【0044】
なお、この実施の形態では、底部材12の補強板14の外側面に複数の樹脂板48が固着され、この樹脂板48が、最下段の第2横桟383の上面に立設されたブラケット47にボルト等によって締結されている。すなわち、この実施の形態では、槽本体10の下部が側部枠28に固定されている。
【0045】
前記基板搬送機構50は、図3に示されるように、槽本体10内において基板を基板搬入部17Aから基板搬出口17Bに向けて搬送するものである。この基板搬送機構50は単一のものでもよいが、この実施の形態では、図5に示すように前記搬送方向の上流側の領域と下流側の領域とに分割してそれぞれの領域に共通の構成の基板搬送機構50が設けられている。
【0046】
前記各基板搬送機構50は、前記基板搬送方向に並ぶ複数本の搬送ローラ軸52と、図6に示すように各搬送ローラ軸52に固定される複数個の搬送ローラ54と、特定の搬送ローラ軸52の上方に設けられる押えローラ軸56と、この押えローラ軸56に固定される押えローラ58と、前記各ローラ軸52,56を駆動するための駆動系60とを備える。
【0047】
前記各搬送ローラ54は、前記各搬送ローラ軸52の軸方向に間隔をおいて配設され、当該搬送ローラ軸52と一体に回転するように当該搬送ローラ軸52に固定される。そして、当該搬送ローラ54の上に図6に示すような基板Pが載せられた状態で回転することにより、当該基板Pをその回転接線方向に搬送する。一方、前記各押えローラ58は、前記搬送ローラ54のうち最も外側の搬送ローラ54の上方に位置し、その位置で前記押えローラ軸56にこれと一体に回転するように固定され、前記基板Pの幅方向の端部を上から押え込む。すなわち当該基板Pの端部を前記搬送ローラ54とで上下から挟み込む。この状態で当該搬送ローラ54と同期して回転することにより、基板Pの搬送を許容しながらその浮き上がりを抑制する。
【0048】
なお、前記押えローラ軸56及び前記押えローラ58は、仕様に応じて適宜省略が可能である。
【0049】
この基板搬送装置の特徴として、前記各搬送ローラ軸52の中間部位は槽本体10側に支持される一方、当該搬送ローラ軸52の少なくとも一方の端部及び押えローラ軸58は槽本体10の側板(図6に示される例では第2側板18A)を貫通して槽本体10の外部に突出し、その突出した端部が支持枠体20側に支持されることにより、槽本体10の強度的な負担が軽減されている。
【0050】
具体的に、槽本体10においては、その底板13上に軸受装置70が立設され、その上端に設けられた軸受72が前記搬送ローラ軸52の中間部位を回転可能に支持する。一方、支持枠体20においては、最下段の第2横桟383の上方の位置に支持板74が配設され、この支持板74がブラケット76を介して前記第2横桟383に支持されるとともに、前記搬送ローラ軸52さらには前記押えローラ軸56を回転可能に支持している。詳しくは、前記支持板74の上端に、前記押えローラ軸56を支持するための軸受部材82が固定される一方、当該支持板74の内側(図6では左側)に補助支持板78が配設されて当該支持板74に連結軸77を介して連結され、この補助支持板78の上端に前記搬送ローラ軸52を支持するための軸受部材80さらには前記押えローラ軸56を支持するための軸受部材84が固定されている。
【0051】
前記駆動系60は、駆動源であるモータ62と、このモータ62の出力する駆動力を各搬送ローラ軸52に伝達するための駆動伝達機構とを含み、当該駆動伝達機構は、前記モータ62の出力軸及び各搬送ローラ軸52の端部に固定されるプーリ64と、これらのプーリ64に巻き掛けられる駆動伝達ベルト66とで構成される。そして、この装置の特徴として、前記モータ62も前記支持板74に固定され、駆動系60全体が支持枠体20側に支持されており、これにより槽本体10の強度的な負担がさらに軽減されている。
【0052】
なお、前記搬送ローラ軸52及び前記押えローラ軸56にはそれぞれ互いに噛合する歯車86,88が固定されている。従って、前記搬送ローラ軸52の回転駆動により、これと同期して押えローラ軸56も逆向きに回転駆動される。
【0053】
この実施の形態では、さらに、前記のように支持枠体20の脚部25が底部枠23及び側部枠26A,26B,28A,28Bを傾かせる、具体的には第2側板18Aが第2側板18Bよりも高くなる向きに傾かせるので、槽設置面が水平であっても当該支持枠体20に支持される槽本体10及び基板搬送機構50をその基板搬送方向に対して直交する方向に傾けることができる。このような傾斜姿勢での基板搬送は、各種処理、例えば薬液供給処理、水洗処理、あるいはエアの吹付けによる乾燥処理などに有効である。乾燥処理の場合、エア吹付け用のエアナイフは例えば図2に二点鎖線100で示されるように基板搬送路を斜めに横切るような姿勢で支持枠体20に支持されればよい。
【0054】
そして、以上説明した基板処理槽は、例えば次の工程を経ることによって効率よく製造されることが可能である。
【0055】
1)支持枠体20を構築する工程
支持枠体20は、前記支柱30A,30B、前記各桟23,26A,…等を含む複数本の棒状部材を3次元的に間欠的に配列してこれらを溶接等で相互結合することにより、構築される。なお、ここでいう「間欠的に配列」とは、全ての棒状部材が互いに離間するように配置されることを限定するものではない。例えば、一部の棒状部材が補強のために相互密着した状態で組み合わされて使用されてもよい。
【0056】
2)底部材12を製造する工程
1)の支持枠体20の構築と並行して、あるいはこれと前後して、槽本体10のうちの底部材12が先行して製造される。この底部材12は、底板13の外縁に補強板14を立直状態でセットして両者を接合することにより製造される。あるいは、金型成形その他の成形法によって、底板13及び補強板14を一体に含む形状の底部材12を成形することも可能である。
【0057】
3)底部材12をセットする工程
2)の工程により製造された底部材12が、支持枠体20の底部枠23上の所定の位置に載置される。この実施の形態では、当該底部材12のセット後、図6に示すように補強板14に固着された樹脂板48がブラケット47を介して側部枠最下段の横桟383(及び361)に連結される。
【0058】
このように、槽本体10のうちの底部材12のみが予め支持枠体20にセットされることは、槽全体の製造効率の向上に大きく寄与する。例えば、槽本体10の全体が組み上げられてからこれを支持枠体20内にセットする方法では、大重量の槽本体10全体を支持枠体20の上端よりも高い位置まで吊上げ、かつ、その吊上げ状態のまま支持枠体20の内側へ静かに下降させてその底部枠23上に位置決めするという大掛かりな作業が必要になるが、その槽本体10のうちの比較的軽量な底部材12のみが先行して支持枠体20内にセットされることは、前記の大掛かりな作業を不要にしてその効率を高める。
【0059】
4)支持枠体20内で槽本体10を構築する工程
前記のようにして支持枠体20の底部枠23上に底部材12が載せられた後、そのまま当該支持枠体20の内側で槽本体10の構築が行われる。具体的には、槽本体10を構成するための各側板16A,16B,18A,18Bが前記底部材12における補強板14の内側面に沿って配列され、当該側板16A,…の下端部が当該補強板14に対してその内側から重ね合わされかつ前記底部材12における底板13の上面に上から突き当てられる。そして、この状態で当該補強板14及び当該底板13に側板16A,…が溶接や接着等の手段で接合され、かつ、互いに隣接する側板の側縁同士が接合されることにより、基板を少なくとも側方及び下方から覆うことが可能な上向きに開口する形状の槽本体10が支持枠体20内で構築される。
【0060】
前記側板16A,…の組立にあたり、支持枠体20内では予め底板13だけでなく当該底板13から立上がる補強板14が当該底板13と一体化された底部材12がセットされているので、作業者は、この底部材12が支持枠体20により囲まれた状態にあっても前記側板16A,…の接合を支障なく容易に行うことができる。具体的に、当該作業者は、例えば前記底板13の上に載ったまま、当該底板13と一体化されている補強板14と各側板16A,…との重ね合わせ作業、及び接合作業を槽内側から行うことができるので、当該作業にあたって支持枠体20の存在が邪魔にになることがない。
【0061】
5)槽本体10と支持枠体20とを連結する工程
最後に、前記槽本体10と前記支持枠体20とが連結される。この実施の形態では、図7に示されるように、槽本体10の側板(同図では第2側板18A)の上部に設けられたボス44と、予め側部枠の横桟(同図では第2側部枠28Aの第2横桟381)に固定されたブラケット42との間に弾性体40を介在させた状態で、当該ブラケット42と当該ボス44とをボルト46によって締結することにより、当該横桟と当該側板との連結がなされる。
【0062】
なお、この連結は、処理槽全体の輸送がされない場合、例えば使用場所にて処理槽が組立てられる場合には、適宜省略することも可能である。その場合、槽本体の側板と支持枠体の側部枠との間に単に弾性体を介在させるだけでも(すなわち当該側板と当該側部枠とを積極的に締結しなくても)、前記弾性体によって衝撃吸収をすることが可能である。
【0063】
以上のようにして基板処理槽が完成した後、これに基板搬送機構等の必要な機構が付加されることにより、各種基板処理装置が製造される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係る基板処理槽を構成する槽本体の斜視図である。
【図2】図4のII矢視図である。
【図3】前記基板処理槽の断面正面図であって図2のIII−III線断面図である。
【図4】前記基板処理槽の側面図である。
【図5】図4のV矢視図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】図6のVII部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0065】
10 槽本体
12 底部材
13 底板
14 補強板
16A,16B 第1側板
18A,18B 第2側板
20 支持枠体
23 底部枠
25 脚部
26A,26B 第1側部枠
28A,28B 第2側部枠
40 弾性体
46 ボルト
50 基板搬送機構
52 搬送ローラ軸
54 搬送ローラ
60 駆動系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理される基板を少なくとも側方及び下方から覆うための基板処理槽であって、
樹脂製の底板と、この底板の外縁に沿って立設される複数枚の樹脂製の側板とを有し、これらの側板の内側に前記基板を収容することが可能な形状をなす槽本体と、
互いに間欠的に配列される複数本の棒状部材が組み合わされてなり、前記槽本体の底板を下方から支持する底部枠とこの底部枠から立ち上がって前記槽本体の側板を外側から支持する側部枠とを有し、これらの支持によって前記槽本体の形状を保つ支持枠体とを備えたことを特徴とする基板処理槽。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理槽において、
前記槽本体は、前記底板とこの底板の外縁から前記側板よりも低い寸法で立上がる樹脂製の補強板とを一体に有する底部材を備え、前記各側板は前記補強板の内側面に沿って配列され、当該側板の下端部が当該補強板にその内側から重ね合わされかつ前記底板の上面に突き当たった状態でこれら補強板及び底板に接合され、かつ、互いに隣接する側板の側縁同士が接合されていることを特徴とする基板処理槽。
【請求項3】
請求項2記載の基板処理槽において、
前記各側板の板厚が、前記底部材を構成する底板及び補強板の板厚よりも小さいことを特徴とする基板処理槽。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の基板処理槽において、
前記側部枠とその内側に位置する槽本体の側板との間に介在し、当該槽本体の側板がその厚み方向に変位するのを許容するように弾性変形することにより当該側板に加わる衝撃を吸収する弾性体をさらに備えることを特徴とする基板処理槽。
【請求項5】
請求項4記載の基板処理槽において、
前記側部枠と前記槽本体の側板の上部とがその間に前記弾性体を挟んだ状態で相互締結されることを特徴とする基板処理槽。
【請求項6】
基板を所定方向に搬送しながら処理するための装置であって、
請求項1〜5のいずれかに記載の基板処理槽と、
前記基板処理槽の槽本体の内側で前記所定方向に前記基板を搬送する基板搬送機構とを備え、
前記基板搬送機構が前記基板処理槽の支持枠体側に支持されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項6記載の基板処理装置において、
前記基板搬送機構は、前記所定方向に並ぶ複数本の搬送ローラ軸と、各搬送ローラ軸に固定されて当該搬送ローラ軸と一体に回転することにより前記基板を前記所定方向に搬送する搬送ローラと、前記各搬送ローラ軸を駆動するための駆動系とを含み、前記各搬送ローラ軸が前記本体槽の側板を貫通して当該搬送ローラ軸の端部及び前記駆動系が前記支持枠体側に支持されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項6または7記載の基板処理装置において、
前記支持枠体は、その底部枠からさらに下方に延びて槽設置面上に置かれる脚部を有し、この脚部は、当該支持枠体に支持される槽本体及び基板搬送機構を前記基板の搬送方向と直交する方向に傾かせながら支持する形状を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
処理される基板を少なくとも側方及び下方から覆うための基板処理槽を製造する方法であって、
複数本の棒状部材を間欠的に配列して相互結合することにより、底部枠とこの底部枠から立ち上がって前記槽本体の側板を側方から支持する側部枠とを有する支持枠体を構築する工程と、
樹脂製の底板及びこの底板の外縁から立上がる補強板とが一体化された底部材を製造する工程と、
前記底部材の底板を前記支持枠体の底部枠上に載せる工程と、
前記底部枠上に前記底部材が載せられた状態で、前記補強板の立上り寸法よりも大きな高さ寸法を有する複数枚の樹脂製の側板を前記底部材における補強板の内側面に沿って配列し、当該側板の下端部を当該補強板に対してその内側から重ね合わせかつ前記底板の上面に上から突き当てた状態でこれら補強板及び底板に前記側板を接合し、かつ、互いに隣接する側板の側縁同士を接合することにより、前記基板を少なくとも側方及び下方から覆うことが可能な上向きに開口する形状の槽本体を構築する工程と、
前記各側板が前記側部枠に外側から支持されるように両者を連結する工程とを含むことを特徴とする基板処理槽の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の基板処理槽の製造方法において、
前記各側板は、その厚み方向の変位を許容するように弾性変形することが可能な弾性体を介して前記側部枠に締結されることを特徴とする基板処理槽の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−91727(P2010−91727A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260775(P2008−260775)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】