説明

基板処理装置、基板処理装置のための装置情報保存方法およびプログラム、ならびにそのプログラムを記録した記録媒体

【課題】基板処理動作の停止を要することなく必要な装置情報を複製でき、かつ、必要な装置情報のバックアップに要する時間を短縮できるようにする。
【解決手段】基板処理装置の動作に関する履歴情報を含む装置情報を記憶する第1記憶手段41と、前記装置情報の複製情報を記憶するための第2記憶手段42とが設けられている。第1記憶手段41に記憶された装置情報の複製情報の格納先であるミラーリングフォルダ50が第2記憶手段42の記憶領域内に設定される。操作者がデバッグログ保存ボタン45を操作すると、ミラーリングフォルダ50Aが新規作成され、従前のミラーリングフォルダ50はリネームされてデバッグログフォルダ54となる。第1記憶手段41に記憶されている最新の装置情報の複製情報は、ミラーリングフォルダ50,50Aに格納され、かつ、定期的に更新される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理するための基板処理装置、基板処理装置のための装置情報保存方法、基板処理装置のためのプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。記録媒体は、コンピュータによる読取が可能な記録媒体であり、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、メモリカードなどが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体基板や液晶表示装置用基板に代表される基板を処理するための基板処理装置は、コンピュータからなる制御装置を備えており、この制御装置によって装置各部の自動制御がなされるようになっている。装置に障害が発生した場合に、その原因を事後的に分析する目的で、装置の動作履歴を表す履歴情報を含む装置情報が、前記制御装置に備えられたハードディスク装置に格納されて保存されるようになっている。この装置情報は、必要に応じて、USBメモリその他の外部記録媒体(いわゆるリムーバブルメディア)にバックアップされ、このバックアップされた装置情報を分析することによって障害の原因が特定される。
【0003】
基板処理装置の稼働中(基板処理動作中)は、装置各部の制御、表示装置に対する表示制御、および操作部からの操作入力受け付け制御などの様々な処理が制御装置によって行われている。そのため、制御装置のCPUやハードディスク装置に対する負荷が大きくなっている。そこで、基板処理装置の稼働中には、大量の装置情報を外部記録媒体に書き出すバックアップ処理は禁止され、制御装置に対する負荷が過大にならないようにし、とくに基板処理に支障が生じないようにしている。したがって、装置情報のバックアップは、基板処理動作を停止したうえで行う必要がある。
【0004】
一方、基板処理装置に備えられるハードディスク装置の記憶容量は有限であるので、装置情報は、その記録から一定時間(たとえば2〜3日)が経過すると、ハードディスク装置から削除されるようになっている。したがって、基板処理装置が24時間連続稼働されるような使用環境においては、外部記録媒体へのバックアップがなされないまま装置情報が削除される場合がある。したがって、障害発生時の装置情報が失われ、事後的な原因分析が妨げられるおそれがある。
【0005】
この問題は、基板処理装置の動作を定期的に停止してバックアップ処理を行うことによって解決される。しかし、基板処理装置の動作を定期的に停止しなければならないとすれば、生産性の低下は免れない。しかも、ハードディスク装置に格納された膨大な装置情報(たとえば2〜3日分)をバックアップするには長い時間が必要であるから、基板処理装置が用いられる生産現場において許容される基板処理停止時間内にバックアップ処理を完了できないおそれがある。
【特許文献1】特開2003−77787号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の目的は、基板処理動作の停止を要することなく必要な装置情報を複製しておくことができ、かつ、必要な装置情報のバックアップに要する時間を短縮できる基板処理装置、このような基板処理装置のための装置情報保存方法およびプログラム、ならびにそのようなプログラムを記録した記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板に対して処理を施す基板処理装置であって、基板処理装置の動作に関する履歴情報を含む装置情報を記憶する第1記憶手段(41)と、前記装置情報の複製情報を記憶するための第2記憶手段(42)と、前記第1記憶手段に記憶された装置情報の複製情報の格納先を前記第2記憶手段の記憶領域内に設定するとともに、操作者による所定の操作に応答して、前記複製情報の格納先を新規設定する格納先設定手段(63,S12)と、前記第1記憶手段に記憶されている最新の装置情報の複製情報を前記格納先設定手段によって設定された格納先に格納するとともに、当該複製情報を定期的に更新する複製手段(64,S15〜S18)とを含む、基板処理装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0008】
この構成によれば、基板処理装置の動作履歴情報を含む装置情報が第1記憶手段に記憶される一方で、最新の装置情報の複製情報が複製手段によって第2記憶手段に格納され、定期的に更新される(ミラーリング処理)。「更新」とは、ここでは、第1記憶手段に記憶されている装置情報が第2記憶手段に記憶されている複製情報よりも新しい場合に、当該新しい装置情報の複製情報を第2記憶手段に書き込む(たとえば上書きする)ことをいう。複製手段は、最新の装置情報を第2記憶手段に格納し、それを定期的に更新するだけであり、第1記憶手段に記憶されている全装置情報の複製情報を一気に第2記憶手段へ書き写すわけではない。したがって、複製手段による処理は、基板処理装置に備えられる制御装置(コンピュータ)に大きな負荷を掛けるものではなく、基板処理動作中に実行しても差し支えない。
【0009】
一方、複製情報の格納先は、第2記憶手段の記憶領域内に設定されるが、操作者によって所定の操作がされると、格納先が新規設定される。格納先が新規設定されると、それ以後は、複製手段は当該新規設定された格納先に複製情報を格納し、その格納した複製情報の更新を行う。したがって、従前の格納先に格納された複製情報は、そのまま残される。よって、基板処理装置に何らかの障害が発生したときに操作者が前記所定の操作を実行することで、その時点での前記複製情報は更新されずに保存されることになる。
【0010】
障害の原因を事後的に分析するには、第2記憶手段に格納された複製情報を外部記憶媒体(たとえば、USBメモリやメモリカード等のリムーバブルメディアや、ネットワークを介して接続された記憶装置)に取り出すバックアップ処理を行えばよい。障害発生時に前記所定の操作が行われて、複製情報の格納先が切り換えられていれば、障害発生時の情報(装置情報の複製情報)は、当該切換えが行われる直前の格納先に格納されているので、障害原因を確実に分析することができる。すなわち、第1記憶手段に記憶された装置情報が古いものから破棄される場合であっても、障害発生時の前後における装置情報の複製情報を、第2記憶手段に保持しておくことができる。そのため、第1記憶手段から装置情報が破棄されないように定期的にバックアップ処理を行う必要がない。つまり、使用者にとって好都合な任意の時機に第2記憶手段から前記複製情報を適当な外部記憶媒体に取り出すバックアップ処理を行うことで、障害原因の分析に必要な情報を確保できる。また、第1記憶手段に記憶された大量の装置情報の全てをバックアップする場合に比較して、短時間でバックアップ処理を終えることができる。
【0011】
このようにして、基板処理動作の停止を要することなく必要な装置情報を複製しておくことができ、かつ、必要な装置情報のバックアップに要する時間を短縮できる。これにより、基板処理装置の生産性の向上に寄与することができる。
請求項2記載の発明は、前記複製手段による現在の格納先に格納されている所定の複製情報を前記複製情報の更新周期よりも長い所定時間の経過後に削除する複製情報削除手段(65,S19,S20)をさらに含む、請求項1記載の基板処理装置である。
【0012】
この構成によれば、現在の格納先に格納されている所定の複製情報が、所定時間の経過後に削除される(リング処理)。当該所定時間は、障害原因の分析に必要充分な装置情報の複製情報を確保できる長さ(たとえば2時間)に定めればよい。こうすれば、障害発生時に操作者が前記所定の操作を行うことで、前記所定時間分の装置情報の複製情報を確保することができる。これにより、障害原因の分析に必要充分な複製情報を第2記憶手段に記憶させておく一方で、複製情報の記憶のための容量(第2記憶手段の記憶容量)を低減できる。それに応じて、第2記憶手段から複製情報を適当な記憶媒体に取り出すバックアップ処理に要する時間を短縮できる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記格納先設定手段によって設定された格納先が所定の上限数に達したときに、最古の格納先および当該最古の格納先に格納されている複製情報を削除する手段(65,S13,S14)をさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置である。この構成によれば、格納先の個数の上限を定めていることにより、複製情報の記憶のための容量を低減しつつ、新しい装置情報の複製情報を確実に第2記憶手段に記憶させることができる。
【0014】
前記基板処理装置は、第1所定時間毎に動作履歴情報ファイルを新規作成して前記第1記憶手段に格納する動作履歴ファイル作成手段(S5〜S7)と、この動作履歴情報ファイル作成手段によって作成された最新の動作履歴情報ファイルに動作履歴情報を書き込む動作履歴情報書込み手段(S4)と、前記動作履歴ファイル作成手段によって作成されたファイルを、その作成から前記第1所定時間よりも長い第2所定時間の経過した後に削除するファイル削除手段(S9)とをさらに含むものであってもよい。
【0015】
また、前記複製手段は、前記動作履歴情報ファイルの更新の有無を定期的に監視し、更新された動作履歴情報ファイルを前記格納先設定手段によって設定された格納先に格納する手段(S17,S18)を含むものであることが好ましい。
さらに、前記複製情報削除手段は、現在の格納先に格納されている動作履歴情報ファイルを、その最終更新時から所定時間の経過の後に削除する(ステップS19,S20)ものであることが好ましい。
【0016】
請求項4記載の発明は、基板処理装置が備えるコンピュータ(10)によって実行されることにより、前記基板処理装置が請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置として動作する、プログラムである。このプログラムを基板処理装置のコンピュータにインストールして実行させることによって、基板処理動作の停止を要することなく必要な装置情報を複製しておくことができ、かつ、必要な装置情報のバックアップに要する時間を短縮できる基板処理装置を実現できる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項4に記載のプログラムを記録してある、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(24)である。この記録媒体を用いて基板処理装置のコンピュータにプログラムをインストールすることができる。
請求項6記載の発明は、基板に対して処理を施す基板処理装置において当該基板処理装置の動作に関する履歴情報を含む装置情報を保存するための方法であって、前記装置情報を第1記憶手段(41)に記憶するステップ(S3〜S7)と、前記第1記憶手段に記憶された装置情報の複製情報の格納先を第2記憶手段(42)の記憶領域内に設定するとともに、操作者による所定の操作に応答して、前記複製情報の格納先を新規設定する格納先設定ステップ(S12)と、前記第1記憶手段に記憶されている最新の装置情報の複製情報を前記格納先設定ステップによって設定された格納先に格納するとともに、当該複製情報を定期的に更新する複製ステップ(S15〜S18)とを含む、基板処理装置のための装置情報保存方法である。この方法により、請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な平面図である。この基板処理装置は、インデクサ部1と、基板処理部2と、制御装置3とを備えている。
インデクサ部1は、収容器保持部5と、インデクサロボット6とを備えている。収容器保持部5は、複数枚の基板を積層状態で保持する基板収容器4を複数個保持することができる。インデクサロボット6は、基板収容器4から未処理の基板を取り出して基板処理部2に渡し、基板処理部2から処理済みの基板を受け取って基板収容器4に収容するように動作する。
【0019】
基板処理部2は、複数の処理ユニット8と、主搬送ロボット9とを備えている。図1の例では、中央に主搬送ロボット9が配置され、これを取り囲むように4つの処理ユニット8が配置されている。主搬送ロボット9は、インデクサ部1から未処理基板を受け取っていずれかの処理ユニット8に搬入し、処理済みの基板を処理ユニット8から搬出してインデクサ部1に渡すように動作する。処理ユニット8は、たとえば、基板を1枚ずつ処理する枚葉処理型のユニットであってもよい。たとえば、処理ユニット8は、基板を略水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板に対して処理液を供給する処理液ノズルとを含むものであってもよい。処理ユニット8は、基板の洗浄処理を行うものであってもよいし、基板の表面にレジスト液を塗布する塗布ユニットであってもよいし、基板の表面に現像液を供給して露光済みのレジスト膜を現像する現像ユニットであってもよい。複数の処理ユニット8は、同種のユニットであってもよいし、異種ユニットであってもよい。
【0020】
図2は、制御装置3の電気的構成を説明するためのブロック図である。制御装置3は、基板処理装置全体を統括的に制御するシステム制御部10と、複数の処理ユニット8の動作を制御するユニット制御部11とを有している。システム制御部10は、ホストコンピュータ12と通信回線13を介して接続されていて、このホストコンピュータ12からの指令を受けたり、ホストコンピュータ12に対して装置状態その他の情報を送信したりする。また、システム制御部10は、ユニット制御部11に対して基板処理内容に関する指令を与え、また、ユニット制御部11から各処理ユニット8の動作状態その他の情報を受け取る。さらに、ユニット制御部11は、インデクサロボット6および主搬送ロボット9の動作を制御する。
【0021】
システム制御部10は、コンピュータとしての基本形態を有している。すなわち、システム制御部10は、CPU15と、ROM16と、RAM17と、記憶部18と、通信部19とを有し、これらはバスライン14を介してコマンドやデータを授受するようになっている。記憶部18は、ハードディスク装置(固定記憶装置)等の書込み/読出し可能な記憶媒体からなる。この記憶部18に格納されたアプリケーションプログラムが、CPU15、ROM16およびRAM17の働きによって実行されることにより、システム制御部10は、当該アプリケーションプログラムに従って機能処理手段として機能する。通信部19は、ホストコンピュータ12との通信を通信回線13を介して行うためのものである。
【0022】
システム制御部10には、表示部20と、操作部21と、読取装置22と、リーダ・ライタ23(外部記憶媒体への書込み装置)とが接続されている。表示部20は、たとえば液晶表示装置等の二次元表示装置からなり、基板処理装置の動作状態を表示したり、操作者が基板処理条件その他の指令情報を入力する際のインタフェースを提供する。操作部21は、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネルその他の入力手段からなる。操作者は、表示部20の表示内容を参照しながら操作部21を操作することによって、各種の指令情報を入力することができる。読取装置22は、プログラムやデータを記録した記録媒体24の内容を読み取るためのものである。記録媒体24は、たとえば、CD−ROMやDVD−ROMなどである。たとえば、アプリケーションプログラムを記録した記録媒体24を読取装置22に装填して読み取らせ、そのアプリケーションプログラムを記憶部18にインストールすることができる。リーダ・ライタ23は、外部記憶媒体25に対するデータの書込みや、外部記憶媒体25からのデータの読出を行うことができるものである。外部記憶媒体25は、たとえば、USBメモリやメモリカードなどの書込み可能な記憶媒体である。この外部記憶媒体をリーダ・ライタ23に装填し、所定の操作を行うことによって、記憶部18に格納された装置情報をバックアップすることができる。
【0023】
ユニット制御部11は、ネットワーク28を介してシステム制御部10に接続されており、バスライン29を介して複数の処理ユニット8に接続されている。ユニット制御部11は、コンピュータとしての基本形態を有しており、CPU31、ROM32およびRAM33を有している。CPU31は、ROM32に格納された動作プログラムに従って、RAM33の記憶領域を用いながら所定の演算処理を実行する。これにより、ユニット制御部11は、インデクサロボット6、主搬送ロボット9および各処理ユニット8の動作を制御する機能処理手段として機能するようになっている。
【0024】
図3は、システム制御部10の記憶部18に記憶されるプログラムおよびデータの内容を説明するための図である。記憶部18には、アプリケーションプログラム35と、設定ファイル36と、装置情報37と、複製情報38とが格納されている。換言すれば、それらのための記憶領域が設けられている。装置情報37のための記憶領域が第1記憶手段41を構成し、複製情報38のための記憶領域が第2記憶手段42を構成している。
【0025】
アプリケーションプログラム35は、前述のとおり、記録媒体24に記録されて配布等され、この記録媒体24を読取装置22によって読み取らせることによって、記憶部18にインストールすることができる。アプリケーションプログラム35には、基板処理装置の制御のための制御プログラム351と、装置情報を保存するための装置情報保存プログラム352と、装置情報の複製情報を作成して保存するための複製プログラム353と、その複製情報を外部記憶媒体25に書き写してバックアップするための保守プログラム354とが含まれている。
【0026】
設定ファイル36は、第1記憶手段41に格納される装置情報37のうち、第2記憶手段42に複製情報を記憶すべき情報の種類を定義するファイルである。また、設定ファイル36には、複製情報のうち動作履歴等の履歴情報に関するファイルの使用時間(たとえば、1分〜60分)と、そのファイルの保存時間(たとえば、2時間)と、装置情報37の更新の有無を監視する時間間隔(更新周期)である監視間隔(たとえば、1分)とが併せて記述される。この設定ファイル36の内容は、操作者が操作部21から所定の編集操作を行うことによって書き換えることができる。つまり、複製情報を作成して記憶すべき情報の種類や、複製情報の作成および保存に関する情報を、設定ファイル36によって定めることができ、これらはアプリケーションプログラム35に拘束されない。
【0027】
装置情報37は、設定データ(Equipment Data)と、動作履歴データ(Log)と、通信データ(Online Data)と、スケジュールデータ(Scheduler Data)とを含む。これらは、第1記憶手段41の記憶領域に作成したフォルダ371,372,373,374にそれぞれ保存される。
設定データは、基板処理条件および処理手順を記述したレシピデータと、インデクサロボット6および主搬送ロボット9の動作(移動距離やアーム回転角など)を規定するロボットデータと、ロボットデータを補正するためのティーチングデータとを含む。ティーチングデータとは、個々の基板処理装置ごとに、インデクサロボット6および主搬送ロボット9の動作を最適化するために調整(ティーチング)して得られる補正データである。
【0028】
動作履歴データは、ソフトウェア的な動作の履歴を記録したデータである。一定時間ごとに新たな動作履歴ファイル(ログファイル)が作成され、最新の動作履歴ファイルに動作履歴情報が追記される。障害発生時には、主として、この動作履歴ファイルの内容を調べることによって、障害原因の分析が行われる。
通信データは、ホストコンピュータ12とやり取りしたデータである。一定時間ごとに新たな通信履歴ファイルが作成され、最新の通信履歴ファイルに通信履歴情報が追記される。
【0029】
スケジュールデータは、基板搬送のための設定スケジュール情報と、基板搬送動作の履歴情報(搬送履歴情報)とを含む。設定スケジュール情報は、いつどのロボットにどのような動作指令を生成するかを計画した結果を表す情報である。搬送履歴情報の記録のために、一定時間ごとに搬送履歴ファイルが作成され、最新の搬送履歴ファイルに搬送履歴情報が追記される。
【0030】
複製情報38は、装置情報37のうち設定ファイル36によって定義された情報の複製である。この実施形態では、設定データ(Equipment Data)、動作履歴データ(Log)、通信データ(Online Data)、およびスケジュールデータ(Scheduler Data)の複製情報が第2記憶手段42に格納されるようになっている。この複製情報38を第2記憶手段42に書き込む処理を「ミラーリング処理」という。
【0031】
複製情報38は、第2記憶手段42に作成されたミラーリングフォルダ50と、デバッグログフォルダ51,52,53,…に格納される。ミラーリングフォルダ50は、最新の複製情報が格納される格納先フォルダであり、たとえば、フォルダ名称を「MirroringYYYYMMDDhhmmss」(”YYYYMMDDhhmmss”はミラーリングフォルダが作成された日時情報であり、西暦年月日および時分秒を順に並べた数字列からなる。)としてある。デバッグログフォルダ51,52,53,…は、過去の複製情報が格納された格納先フォルダであり、たとえば、フォルダ名称を「DebugLogBackupYYYYMMDDhhmmss」(”YYYYMMDDhhmmss”はデバッグログフォルダが作成された日時情報であり、西暦年月日および時分秒を順に並べた数字列からなる。)としてある。これらの格納先フォルダのサブフォルダとして、設定データ(Equipment Data)、動作履歴データ(Log)、通信データ(Online Data)、およびスケジュールデータ(Scheduler Data)をそれぞれ格納するためのフォルダが作成されている。
【0032】
操作部21には、障害発生時等に操作者によって操作されるデバッグログ保存ボタン45が備えられている。このデバッグログ保存ボタン45が操作されると、これに応答して、複製情報の新たな格納先として、新たなミラーリングフォルダ50Aが作成される。そして、従前のミラーリングフォルダ50は、リネームされてデバッグログフォルダ54となる。以後は、複製情報の格納先は、新たなミラーリングフォルダ50となる。したがって、デバッグログ保存ボタン45が操作された時点でミラーリングフォルダ50に格納されていた複製情報は、そのミラーリングフォルダ50がデバッグログフォルダ54にリネームされることによって、そのままの状態で保存される。
【0033】
デバッグログフォルダの上限数は、たとえば、設定ファイル36に記述されている。デバッグログフォルダの数が当該上限数に達したときには、最古のデバッグログフォルダが、当該デバッグログフォルダに保存されているファイルとともに削除される。
図4は、システム制御部10の機能的な構成を説明するためのブロック図であり、アプリケーションプログラム35がCPU15等の働きで実行されることによって実現される複数の機能処理部を示している。この複数の機能処理部は、装置制御ユニット61と、装置情報保存ユニット62と、格納先設定ユニット63と、複製ユニット(ミラーリングユニット)64と、削除ユニット65と、バックアップ処理ユニット66とを含む。また、前述のとおり、記憶部18内の記憶領域に第1記憶手段41および第2記憶手段42が形成されている。
【0034】
装置制御ユニット61は、制御プログラム351によって実現される機能処理部である。この装置制御ユニット61は、インデクサロボット6および主搬送ロボット9の動作ならびに処理ユニット8の動作を制御する。
装置情報保存ユニット62は、装置情報保存プログラム352によって実現される機能処理部である。この装置情報保存ユニット62は、第1記憶手段41に装置情報37を格納する働きを担う。
【0035】
格納先設定ユニット63、複製ユニット64および削除ユニット65は、複製プログラム353によって実現される機能処理部である。格納先設定ユニット63は、第2記憶手段42に、装置情報の複製情報を格納するための格納先フォルダ(ミラーリングフォルダ)を作成する。複製ユニット64は、設定ファイル36に従って装置情報の複製情報を作成し、この複製情報を格納先設定ユニット63によって設定された格納先フォルダ(ミラーリングフォルダ)に格納するミラーリング処理を実行する。削除ユニット65は、第2記憶手段42の複製情報から、所定の削除条件が満たされたものを選択して削除するリング処理を実行する。
【0036】
バックアップ処理ユニット66は、保守プログラム354によって実現される機能処理部である。このバックアップ処理ユニット66は、操作部21からの操作によって複製情報のバックアップが指示されたときに、第2記憶手段42に記憶されている複製情報をリーダ・ライタ23を介して外部記憶媒体25へと書き出すバックアップ処理を実行する。
図5は、装置情報保存ユニット62による処理内容を説明するためのフローチャートであり、動作履歴データ(Log)の保存に関する処理が示されている。基板処理装置が起動されると、装置情報保存ユニット62は、動作履歴データの保存情報を読み込む(ステップS1)。この場合の保存情報とは、1つの動作履歴ファイルの使用時間(たとえば、1分〜60分)と、動作履歴用フォルダ372内における動作履歴ファイルの保存時間(たとえば2〜3日)とを含む。
【0037】
さらに、装置情報保存ユニット62は、動作履歴用フォルダ372が未作成であれば、これを作成する(ステップS2)。
そして、装置情報保存ユニット62は、動作履歴ファイルを新規作成し(ステップS3)、アプリケーションプログラム35に従うソフトウェア上の動作履歴データをその動作履歴ファイルに書き込む(ステップS4)。この動作を、一つの動作履歴ファイルの使用時間が経過するまで、繰り返す(ステップS5)。すなわち、当該使用時間の間は、同じ動作履歴ファイルに動作履歴データを追記していく。
【0038】
前記使用時間が経過すると、装置情報保存ユニット62は、使用中の動作履歴ファイルを閉じ(ステップS6)、新たな動作履歴ファイルを作成する(ステップS7)。したがって、以後は、その新たに作成された動作履歴ファイルに動作履歴データが書き込まれることになる(ステップS4)。
装置情報保存ユニット62は、動作履歴用フォルダ372内に格納されている動作履歴ファイルのタイムスタンプ(最終更新日時情報)を調べることによって、動作履歴用フォルダ372内における動作履歴ファイルの保存時間を経過した動作履歴ファイルの有無を調べる(ステップS8)。そして、当該保存時間を経過した動作履歴ファイルがあれば、当該動作履歴ファイルを削除する(ステップS9)。
【0039】
このようにして、基板処理装置の動作履歴データは、前記使用時間ごとに新たな動作履歴ファイルを生成しながら、記録されていく。そして、所定の保存時間が経過すると、第1記憶手段41から削除され、新たな動作履歴データの保存に備えられる。こうして、現在から保存時間だけさかのぼった時点までの動作履歴データが第1記憶手段41に蓄積される。
【0040】
装置情報保存ユニット62は、通信データ(通信履歴情報)およびスケジュールデータ(設定スケジュール情報および搬送履歴情報)に関しても、動作履歴データと同様な動作を行う。すなわち、基板処理装置の起動によってデータ保存用のファイルを作成してデータを記録し、そのファイルの使用時間が経過すると、新たなファイルを作成してデータの記録を行う。そして、保存時間が経過した古いファイルがあれば、当該古いファイルを削除する。
【0041】
設定データに関しては、装置情報保存ユニット62は、更新があったときに、設定データ用フォルダ371に更新後の設定データを書き込むように動作する。
図6は、格納先設定ユニット63、複製ユニット64および削除ユニット65の働き(すなわち、複製プログラム353の働き)を説明するためのフローチャートである。
複製ユニット64は、設定ファイル36を参照して、複製情報を記憶すべき装置情報を特定し、履歴情報に関するファイルの保存時間と、装置情報の更新の有無を監視する監視間隔と、デバッグログフォルダの上限数とが読み込まれる(ステップS11)。次に、格納先設定ユニット63によって、複製情報の格納先フォルダであるミラーリングフォルダが第2記憶手段42内の記憶領域に作成される(ステップS12)。このとき、従前のミラーリングフォルダがあれば、このミラーリングフォルダがデバッグログフォルダにリネームされて、新たなミラーリングフォルダが作成される。
【0042】
次に、削除ユニット65により、デバッグログフォルダの数が上限数に達しているかどうかが判断される(ステップS13)。デバッグログフォルダの数が上限数に達していれば、削除ユニット65は、最古のデバッグログフォルダを削除する(ステップS14。リング処理の一種)。デバッグログフォルダの数が上限数に達していなければ、ステップS14の処理は省かれる。
【0043】
次いで、複製ユニット64によって、設定ファイル36によって特定された装置情報が第1記憶手段41から読み出され、その複製情報が作成される。そして、複製ユニット64は、ミラーリングフォルダにその複製情報を格納する(ステップS15。ミラーリング処理)。
次に、複製ユニット64は、監視間隔だけ待機した後(ステップS16)、ミラーリング処理対象の装置情報が更新されたかどうかを調べる(ステップS17)。もしも、更新された装置情報があれば(ステップS17:YES)、複製ユニット64は、その装置情報の複製情報を作成して、ミラーリングフォルダに格納する(ステップS18。ミラーリング処理)。更新された装置情報がなければ(ステップS17:NO)、ステップS18の処理は省かれる。
【0044】
次に、削除ユニット65は、前記ミラーリングフォルダに格納された複製情報のうち、履歴情報に関するファイル(動作履歴ファイル、通信履歴ファイルおよび搬送履歴ファイル)のタイムスタンプ(最終更新日時情報)を参照し、保存時間が経過したものがないかどうかを判断する(ステップS19)。そして、保存時間を経過した履歴情報ファイルがあれば、これを削除する(ステップS20。リング処理の一種)。その後は、ステップS16からの処理が繰り返される。
【0045】
操作部21からの操作によって、デバッグログ保存ボタン45が操作されると、割り込みが発生し(ステップS21)、ステップS12からの処理が行われる。このとき、格納先設定ユニット63は、現在のミラーリングフォルダをリネームしてデバッグログフォルダとするとともに、新たなミラーリングフォルダを作成する(ステップS12)。したがって、当該新たなミラーリングフォルダに対するミラーリング処理が行われることになる。これにより、デバッグログ保存ボタン45が操作される直前の保存時間(たとえば2時間)内の履歴情報を含む複製情報が削除ユニット65による削除処理(ステップS20)を免れ、第2記憶手段42に記憶された状態で保存される。したがって、何らかの障害が発生したときに、デバッグログ保存ボタン45を操作しておけば、その障害の原因の分析のために必要な複製情報を確保できる。一般に、障害発生前2時間分の複製情報が確保されれば、障害原因の分析が可能である。前述の保存時間はこのような観点から定められればよい。
【0046】
バックアップ処理ユニット66は、操作部21から所定のバックアップ処理開始操作を実行することによって処理を開始し、第2記憶手段42に格納された複製情報をリーダ・ライタ23を介して外部記憶媒体25に書き出す。第1記憶手段41の装置情報は、2〜3日で上書きされていくが、障害発生以前(デバッグログ保存ボタン45の操作以前)の前記保存時間における複製情報は第2記憶手段42に保持されている。したがって、使用者の都合の良いときに、基板処理装置の稼働を停止して、バックアップ処理を行えばよい。しかも、第1記憶手段41には、2〜3日分の装置情報が蓄積されるのに対して、第2記憶手段42に格納される複製情報は、一つのデバッグログフォルダに対して高々2時間分程度である。したがって、バックアップ処理は、第1記憶手段41の全データを読み出す場合に比較して、格段に少量のデータを書き写す処理であり、短時間で終了することができる。
【0047】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、第2記憶手段42に記憶された複製情報を外部記憶媒体25にバックアップするようにしているが、ネットワークを介して接続された記憶媒体に複製情報のバックアップを行うようにしてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な平面図である。
【図2】制御装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図3】システム制御部の記憶部に記憶されるプログラムおよびデータの内容を説明するための図である。
【図4】システム制御部の機能的な構成を説明するためのブロック図である。
【図5】装置情報保存ユニットによる処理内容を説明するためのフローチャートであり、動作履歴データ(Log)の保存に関する処理が示されている。
【図6】格納先設定ユニット、複製ユニットおよび削除ユニットの働き(複製プログラムの働き)を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 インデクサ部
2 基板処理部
3 制御装置
4 基板収容器
5 収容器保持部
6 インデクサロボット
8 処理ユニット
9 主搬送ロボット
10 システム制御部
11 ユニット制御部
12 ホストコンピュータ
13 通信回線
14 バスライン
18 記憶部
19 通信部
20 表示部
21 操作部
22 読取装置
23 リーダ・ライタ
24 記録媒体
25 外部記憶媒体
28 ネットワーク
29 バスライン
31 CPU
32 ROM
33 RAM
35 アプリケーションプログラム
351 制御プログラム
352 装置情報保存プログラム
353 複製プログラム
354 保守プログラム
36 設定ファイル
37 装置情報
371 設定データ用フォルダ
372 動作履歴用フォルダ
373 通信データ用フォルダ
374 スケジュールデータ用フォルダ
38 複製情報
41 第1記憶手段
42 第2記憶手段
45 デバッグログ保存ボタン
50 ミラーリングフォルダ
50A ミラーリングフォルダ
51〜54 デバッグログフォルダ
61 装置制御ユニット
62 装置情報保存ユニット
63 格納先設定ユニット
64 複製ユニット
65 削除ユニット
66 バックアップ処理ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して処理を施す基板処理装置であって、
基板処理装置の動作に関する履歴情報を含む装置情報を記憶する第1記憶手段と、
前記装置情報の複製情報を記憶するための第2記憶手段と、
前記第1記憶手段に記憶された装置情報の複製情報の格納先を前記第2記憶手段の記憶領域内に設定するとともに、操作者による所定の操作に応答して、前記複製情報の格納先を新規設定する格納先設定手段と、
前記第1記憶手段に記憶されている最新の装置情報の複製情報を前記格納先設定手段によって設定された格納先に格納するとともに、当該複製情報を定期的に更新する複製手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記複製手段による現在の格納先に格納されている所定の複製情報を前記複製情報の更新周期よりも長い所定時間の経過後に削除する複製情報削除手段をさらに含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記格納先設定手段によって設定された格納先が所定の上限数に達したときに、最古の格納先および当該最古の格納先に格納されている複製情報を削除する手段をさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板処理装置が備えるコンピュータによって実行されることにより、前記基板処理装置が請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置として動作する、プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載のプログラムを記録してある、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項6】
基板に対して処理を施す基板処理装置において当該基板処理装置の動作に関する履歴情報を含む装置情報を保存するための方法であって、
前記装置情報を第1記憶手段に記憶するステップと、
前記第1記憶手段に記憶された装置情報の複製情報の格納先を第2記憶手段の記憶領域内に設定するとともに、操作者による所定の操作に応答して、前記複製情報の格納先を新規設定する格納先設定ステップと、
前記第1記憶手段に記憶されている最新の装置情報の複製情報を前記格納先設定ステップによって設定された格納先に格納するとともに、当該複製情報を定期的に更新する複製ステップとを含む、基板処理装置のための装置情報保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−92927(P2010−92927A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258784(P2008−258784)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】