説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】簡単な構成で基板上の処理液を良好に分離して排液できるようにしてコストの低減を図る。
【解決手段】この基板処理装置は、基板Wを保持する基板保持機構1と、基板Wの姿勢を水平姿勢と傾斜姿勢とに変更する基板姿勢変更機構2と、基板Wの上面に第1薬液を供給する第1薬液ノズル11と、基板Wの上面に第2薬液を供給する第2薬液ノズル12と、基板Wの上面にリンス液としての純水を供給する第1および第2純水ノズル13A,13Bと、基板Wが傾斜姿勢とされたときに当該基板Wの表面から重力によって流下する処理液を受ける第1〜第3処理液受け部21,22,23と基板Wを乾燥させる基板乾燥ユニット3とを備えている。基板姿勢変更機構2によって3方向に基板Wを傾斜させることにより、第1〜第3処理液受け部21,22,23へと処理液を分離排液する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理液で処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程では、被処理基板としての半導体ウエハの表面に処理液(薬液またはリンス液)を供給する基板処理装置が用いられる。基板を一枚ずつ処理する枚葉型の基板処理装置は、基板を水平に保持して回転するスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板に薬液を供給する薬液ノズルと、スピンチャックに保持された基板にリンス液としての純水(脱イオン化された水)を供給する純水ノズルと、スピンチャックを包囲するガードとを備えている。
【0003】
この構成により、スピンチャックによって回転されている基板に薬液ノズルから薬液を供給して薬液処理が行われ、さらに、薬液の供給を止めて、純水ノズルからの純水を回転状態の基板上に供給することによってリンス処理が行われる。その後、純水の供給を停止して、スピンチャックを高速回転させることによって、基板上の純水を振り切る乾燥処理が行われる。薬液処理、リンス処理および乾燥処理時に遠心力によって基板外へと飛び出す処理液はガードによって受け止められる。
【0004】
ガードには、薬液受け部と純水受け部とが備えられる場合がある(特許文献1)。この場合、たとえば、薬液受け部で受け止められた薬液は、薬液タンクへと回収されて再利用される一方、純水受け部で受け止められた純水は、工場の排液設備へと導かれる。
【特許文献1】特開平10−172950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述のような構成では、水平姿勢の基板上の処理液(薬液または純水)を排除するために基板を回転させているため、処理液の飛散を抑制するガードが必須の構成となっている。これにより、基板処理装置の構成が複雑になり、また、製造コストが高くついている。
さらに、基板から飛び出す処理液は飛沫化しているから、たとえば、薬液の飛沫が純水受け部に入り込んだり、純水の飛沫が薬液受け部に入り込んだりする。こうして処理液の混合が生じることにより、薬液の回収率が低下したり、薬液の希釈が生じたりするという問題がある。
【0006】
また、基板を高速回転させるためのモータが必要であり、さらには、モータ周辺部品からの発塵対策も必要であるので、スピンチャック下方の構成が複雑で大がかりとなり、それに応じてコスト高となるという問題もある。また、高速回転状態の基板を安定に保持するために、スピンチャックには、高速回転時の負荷に耐えられる強固な保持部材(保持ピン)を備える必要があり、このことがコストの圧縮を妨げる一因となっている。高速回転時に基板がスピンチャックから受ける大きな負荷による基板品質の悪化も無視できない。
【0007】
さらにまた、ガード内壁や処理室内の部材に処理液(とくに薬液)が付着すると、この付着物からの雰囲気の拡散により、基板処理品質が悪化するおそれもある。
また、前述のような構成では、処理の面内均一化のために、回転状態(一般に数十〜数百回転/分)の基板の表面を処理液で覆う必要がある。そのためには、大量の(数リットル/分)薬液および純水を回転状態の基板に対して供給する必要があるから、処理液の消費量が多く、ランニングコストが高くつくという問題がある。
【0008】
そこで、この発明の一つの目的は、簡単な構成で基板上の処理液を良好に分離して排液することができ、これによりコストの低減を図った基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
また、この発明の他の目的は、付着物からの雰囲気拡散を抑制して基板処理品質を向上できる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【0009】
この発明のさらに他の目的は、処理液消費量を低減して、ランニングコストの圧縮を図ることができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を保持する基板保持手段(1)と、この基板保持手段に保持された基板の姿勢をほぼ水平姿勢と水平面に対して傾斜した傾斜姿勢とに変更することができる基板姿勢変更手段(2)と、前記基板保持手段に保持されている基板に複数種類の処理液を供給する処理液供給手段(11,12,13A,13B)と、前記基板姿勢変更手段によって前記基板保持手段に保持された基板が前記傾斜姿勢とされたときに、前記基板の表面から流れ落ちる処理液を受ける複数の処理液受け部(21,22,23,61,62,63)と、前記基板保持手段に保持されている基板上の処理液の種類に応じて、前記傾斜姿勢とされた基板から流れ落ちる処理液を受けるべき処理液受け部を前記複数の処理液受け部から選択する受け部選択手段(10,8,46,66)とを含む、基板処理装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0011】
この構成により、基板の姿勢を傾斜姿勢とすることによって、基板を回転することなく、基板上の処理液を排液することができる。そして、基板から流下する処理液を、その処理液の種類に応じて複数の処理液受け部へと分離することによって、処理液の分離排液が可能となる。基板を傾斜させて排液する構成では、基板を高速回転させてその表面の処理液を排除する構成に比較して、基板外に排除される処理液が周囲に飛び散ることを抑制できるので、従来装置のようなガードを設けたりする必要がない。これにより、基板処理装置の構成を簡単にしてそのコストを低減しつつ、複数種類の処理液を良好に分離して排液することができる。また、排液時の処理液の飛び散りを抑制できるので、周囲への付着物を低減でき、付着物からの雰囲気拡散を抑制できる。これにより、基板処理品質を向上できる。
【0012】
なお、前記処理液供給手段は、複数の処理液をそれぞれ供給する複数のノズルであってもよいし、接続されたバルブ機構等により複数の処理液を選択的に供給する1つの共通のノズルであってもよい。
請求項2記載の発明は、前記基板保持手段は、基板表面が処理液で覆われている期間中(好ましくは全期間中)、前記基板を非回転状態で保持するものである、請求項1記載の基板処理装置である。この構成によれば、少なくとも基板表面が処理液で覆われている期間中には基板が非回転状態で保持されるので、処理液が周囲に飛び散ることがなく、従来装置のようなガードが不要である。また、基板を高速に回転させる基板高速回転機構が不要であり、このような基板高速回転機構からの発塵対策も不要となる。その結果、基板処理装置の構成を一層簡単にすることができ、一層のコストダウンを図ることができる。さらに、基板を水平姿勢で非回転状態に保てば、基板上面に処理液を液盛りすることができる。このような液盛り処理を行うことで、処理液の消費量を少なくすることができ、ランニングコストの低減に寄与することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記処理液供給手段から前記基板保持手段に保持されている基板に処理液が供給されるときに、基板が前記水平姿勢となるように前記基板姿勢変更手段を制御する基板姿勢制御手段(10)をさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置である。この構成により、基板上に処理液を溜めて液盛りしたりすることが可能となり、処理液の消費量を抑制でき、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記処理液供給手段から前記基板保持手段に保持されている基板に処理液が供給されるときに、当該処理液供給手段からの処理液の供給を制御するとともに、基板が前記水平姿勢となるように前記基板姿勢変更手段を制御することによって、前記基板上に処理液を液盛りし、この液盛り状態を所定時間だけ保持する液盛り処理を実行する液盛り制御手段(10)をさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置である。この構成によれば、水平姿勢の基板上に処理液を溜めて液盛りし、この液盛り状態を一定時間保持することによって、基板の処理が行われる。これにより、処理液の使用量を格段に低減できるので、基板処理装置のランニングコストを低減できる。
【0015】
請求項5記載の発明は、前記処理液供給手段から基板保持手段に保持されている基板に処理液が供給されるときに、基板が前記傾斜姿勢となるように前記基板姿勢変更手段を制御する基板姿勢制御手段(10)をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の基板処理装置である。この構成によれば、基板を傾斜姿勢としつつ、この基板に対して処理液を供給できる。このとき、基板上には処理液の流れが形成されることになる。こうして、基板を回転させなくとも、基板各部に常に新液を供給しつつ、基板処理を行うことができる。この場合に、傾斜姿勢の基板に処理液を供給する処理液供給手段は、基板の側方から基板の上面に向けて処理液を供給するノズル(サイドノズル)であることが好ましい。
【0016】
請求項6記載の発明は、前記複数の処理液受け部は、前記基板保持手段に保持される基板の外周に沿って配置されており、前記受け部選択手段は、前記基板姿勢変更手段によって傾斜姿勢とされる基板から処理液が流下するのに先立って、処理液の流下位置と、前記複数の処理液受け部との相対位置関係を前記基板の外周に沿って変更する流下・受け位置相対移動手段(5,6,7,8,46)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の基板処理装置である。この構成によれば、処理液の流下位置と処理液受け部との相対位置を基板の外周に沿って変更することによって、複数種類の処理液を複数の処理液受け部へと分離排液できる。
【0017】
請求項7記載の発明は、前記流下・受け位置相対移動手段は、前記基板姿勢変更手段によって基板が傾斜させられる方向を変更する傾斜方向変更手段(5,6,7,8)を含む、請求項6記載の基板処理装置である。この構成によれば、基板の傾斜方向を変更することによって、処理液の流下位置を基板の外周に沿って変更できるので、簡単な構成で、複数種類の処理液の分離排液を行える。
【0018】
請求項8記載の発明は、前記基板保持手段は、基板の下面を支持する少なくとも3個の基板支持部材(31,32,33)を含み、前記基板姿勢変更手段は、前記少なくとも3個の基板支持部材による基板支持高さを相対的に変更させる基板支持高さ変更手段(5,6,7)を含み、前記傾斜方向変更手段は、前記基板支持高さ変更手段を制御することによって、前記少なくとも3個の基板支持部材の基板支持高さを調節して基板の傾斜方向を変更するものである、請求項7記載の基板処理装置である。この構成によれば、3個の基板支持部材の基板支持高さを相対的に変更する簡単な構成で基板の傾斜方向を変更することができる。すなわち、3個の基板支持部材によって基板中心を取り囲む3箇所を支持する場合に、たとえば、いずれか1個の基板支持部材の基板支持高さを他の2個の基板支持部材の基板支持高さよりも高くしたり、いずれか2個の基板支持部材の高さを他の1個の基板支持部材の基板支持高さよりも低くしたりすることによって、基板を傾斜姿勢することができる。この場合に、たとえば、3個の基板支持部材の基板支持高さを独立して変更することができるようにしておくと、基板支持高さが高くなる1個の基板支持部材の選択肢は3個であるから、基板の傾斜方向を3方向に選択できる。
【0019】
この構成の他、基板保持手段に保持された基板の外周のいずれか一箇所を基板支持部材で昇降させて基板を水平姿勢と傾斜姿勢とに姿勢変更させる一方で、基板保持手段を回動させることによって、傾斜姿勢のときの傾斜方向を基板の外周に沿って変更する構成とすることもできる。
請求項9記載の発明は、前記流下・受け位置相対移動手段は、前記複数の処理液受け部を前記基板保持手段に保持される基板の外周に沿って回動させる受け部回動手段(45,46)を含む、請求項6〜8のいずれかに記載の基板処理装置である。この構成では、基板からの処理液の流下位置に応じて複数の処理液受け部を基板の外周に沿って回動させることによって、複数種類の処理液を分離して排液できる。
【0020】
請求項10記載の発明は、前記複数の処理液受け部は、前記基板保持手段の側方において上下方向に積層配置されており、前記受け部選択手段は、前記基板姿勢変更手段によって傾斜姿勢とされる基板から処理液が流下するのに先立って、処理液の流下位置と、当該処理液を受けるべき処理液受け部との相対位置関係を変更する流下・受け位置相対移動手段(52,66)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の基板処理装置である。この構成によれば、基板保持手段の側方に複数の処理液受け部が積層配置されているので、基板処理装置の専有面積を少なくすることができる。なお、前記流下・受け位置相対移動手段は、複数の処理液受け部と基板保持手段との上下方向の相対位置を変更する手段を含むことが好ましい。
【0021】
請求項11記載の発明は、前記流下・受け位置相対移動手段は、前記基板保持手段を前記処理液受け部に対して相対移動させる基板移動手段(52)を含む、請求項10記載の基板処理装置である。この構成によれば、基板保持手段を処理液受け部に対して相対移動させることによって、いずれかの処理液受け部を選択して基板から流下する処理液を排液できる。
【0022】
請求項12記載の発明は、前記流下・受け位置相対移動手段は、前記処理液受け部を前記基板保持手段に対して相対移動させる受け部移動手段(66)を含む、請求項10または11記載の基板処理装置である。この構成によれば、処理液受け部を基板保持手段に対して相対移動させることによって、いずれかの処理液受け部を選択して基板から流下する処理液を排液できる。この場合に、複数の処理液受け部が一括して移動されてもよいし、選択された一つの処理液受け部が基板からの処理液の流下位置へと移動されてもよい。
【0023】
請求項13記載の発明は、前記基板姿勢変更手段によって傾斜姿勢とされる基板から流下する処理液を伝わせて前記処理液受け部へと誘導する処理液誘導部材(61b,62b,63b)をさらに含む、請求項1〜12のいずれかの記載の基板処理装置である。この構成によれば、処理液誘導部材によって基板上の処理液が処理液受け部に誘導されるので、処理液を効率的に処理液受け部に導くことができる。
【0024】
請求項14記載の発明は、前記処理液誘導部材は、処理液に接し、基板には接しないように配置されている、請求項13記載の基板処理装置である。この構成によれば、処理液誘導部材と基板との接触に起因する基板の破損または汚染を抑制または防止しつつ、基板上の処理液を処理液受け部へと効率的に誘導できる。
請求項15記載の発明は、前記基板保持手段に保持されている基板に赤外線を照射する赤外線発生手段(35)をさらに含む、請求項1ないし14のいずれかに記載の基板処理装置である。この構成によれば、基板を高速回転させるのではなく、赤外線の照射によって、基板上の液成分を蒸発させて排除し、基板を乾燥させることができる。この構成の場合に、前記赤外線発生手段と前記基板保持手段に保持されている基板との間に配置され、前記赤外線発生手段から照射される赤外線のうち、少なくとも前記基板保持手段に保持されている基板が吸収する波長の赤外線を吸収し、それ以外の波長の赤外線を透過させるフィルタ板(37)をさら含むことが好ましい。これにより、基板の昇温を抑制しつつ、その表面の液成分に赤外線を吸収させて、その液成分を蒸発させることができる。これにより、基板の加熱に伴う基板材料の溶出を抑制できるので、ウォーターマークの発生を抑制できる。
【0025】
請求項16記載の発明は、基板(W)上に複数種類の処理液を順次供給するステップと、基板を傾斜姿勢として基板上の処理液を流下させる排液ステップと、傾斜姿勢の基板から流下する処理液を、複数の処理液受け部(21,22,23,61,62,63)のなかから当該処理液の種類に応じて選択した処理液受け部で受けるステップとを含む、基板処理方法である。この方法により、請求項1の発明と同様な効果を得ることができる。むろん、この基板処理方法の発明についても、基板処理装置の発明について説明した種々の変更を施すことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な断面図である。また、図2は、その図解的な平面図である。この基板処理装置は、たとえば半導体ウエハのようなほぼ円形の基板Wに対して薬液またはリンス液を含む処理液による処理を施すための枚葉型の処理装置である。基板Wは、たとえば、表面にLow-k膜が形成されたシリコンウエハや、ふっ酸などのエッチング液によって表面がエッチング処理された後のシリコンウエハのように、表面(デバイス形成面)が疎水性表面となっている基板であってもよい。
【0027】
この基板処理装置は、1枚の基板Wを保持する基板保持機構1と、この基板保持機構1に保持された基板Wの姿勢を水平姿勢と傾斜姿勢とに変更する基板姿勢変更機構2と、基板保持機構1に保持されている基板Wの上面に第1薬液を供給する第1薬液ノズル11と、基板保持機構1に保持されている基板Wの上面に第2薬液を供給する第2薬液ノズル12と、基板保持機構1に保持されている基板Wの上面にリンス液としての純水を供給する第1および第2純水ノズル13A,13Bと、基板Wが傾斜姿勢とされたときに当該基板Wの表面から重力によって流下する処理液を受ける第1〜第3処理液受け部21,22,23と、基板保持機構1上の基板Wを乾燥させる基板乾燥ユニット3とを備えている。図2には、基板乾燥ユニット3を除いた構成の平面図が示されている。
【0028】
基板保持機構1は、基板Wをそのデバイス形成面を上面として非回転状態で保持するものである。この基板保持機構1は、ベース4と、このベース4の上面から突出した3本の支持ピン31,32,33とを備えている。支持ピン31,32,33は、基板Wの中心を重心とする正三角形の頂点に対応する位置にそれぞれ配置されている(ただし、図1では、便宜上、支持ピン31,32,33を実際の配置と異ならせて図示してある。)これらの支持ピン31,32,33は、鉛直方向に沿って配置されており、それぞれ、ベース4に対して昇降可能に取り付けられている。これらの支持ピン31,32,33は、それらの頭部が基板Wの下面に当接し、この基板Wを支持するようになっている。
【0029】
基板姿勢変更機構2は、支持ピン31,32,33をそれぞれ昇降させるシリンダ5,6,7を備えている。これらのシリンダ5,6,7の駆動軸5a,6a,7aがそれぞれ支持ピン31,32,33に結合されている。したがって、シリンダ5,6,7を駆動することにより、支持ピン31,32,33を独立に昇降させ、それらの基板支持高さを独立して変更することができる。このように、シリンダ5,6,7は、基板支持高さ変更手段としての機能を有している。
【0030】
シリンダ5を駆動して、支持ピン31の基板支持高さを、他の2本の支持ピン32,33の基板支持高さよりも高くすると、基板Wの姿勢は、支持ピン31から基板Wの中心へと向かう方向に下降する傾斜姿勢(たとえば、水平面に対して3度の角度をなす姿勢)となる。同様に、支持ピン32の基板支持高さを他の2本の支持ピン31,33の基板支持高さよりも高くすると、基板Wの姿勢は、当該支持ピン32から基板Wの中心へと向かう方向に下降する傾斜姿勢となる。さらに、支持ピン33の基板支持高さを他の2本の支持ピン31,32の基板支持高さよりも高くすれば、支持ピン33から基板Wの中心へと向かう方向に下降する傾斜姿勢となる。このようにして、シリンダ5,6,7の動作を制御することにより、基板Wを水平姿勢から傾斜姿勢へと姿勢変更させることができ、傾斜姿勢における傾斜方向を3方向に選択することができる。
【0031】
第1〜第3処理液受け部21,22,23は、基板保持機構1に保持された基板Wの外周に沿って固定配置されている。より具体的には、第1〜第3処理液受け部21,22,23は、それぞれ、基板Wの外周の下方にほぼ120度の角度範囲にわたる円弧形状の排液ポート21a,22a,23aを有している(ただし、図1では、便宜上、第1〜第3処理液受け部21,22,23を実際の配置と異ならせて図示してある。)。第1〜第3処理液受け部21,22,23は、それぞれ溝状に形成されており、基板Wの外周から流下する処理液を受けるようになっている。第1処理液受け部21は、基板Wの中心を挟んで支持ピン31に対向する位置に配置されている。すなわち、第1処理液受け部21の排液ポート21aの中心は、支持ピン31および基板Wの中心を通る鉛直面内に位置している。同様に、第2処理液受け部22は、基板Wの中心を挟んで支持ピン32に対向する位置に配置されている。すなわち、第2処理液受け部22の排液ポート22aの中心は、支持ピン32および基板Wの中心を通る鉛直面内に位置している。第3処理液受け部23についても同様であり、基板Wの中心を挟んで支持ピン33に対向する位置に配置されている。すなわち、第3処理液受け部23の排液ポート23aの中心は、支持ピン33および基板Wの中心を通る鉛直面内に位置している。
【0032】
支持ピン31,32,33および第1〜第3処理液受け部21,22,23の前述のような相対位置関係により、支持ピン31を支持ピン32,33よりも高くすると基板Wは第1処理液受け部21に向かって下降する傾斜姿勢となり、支持ピン32を支持ピン31,33よりも高くすると基板Wは第2処理液受け部22に向かって下降する傾斜姿勢となり、支持ピン33を支持ピン31,32よりも高くすると基板Wは第3処理液受け部23に向かって下降する傾斜姿勢となる。
【0033】
第1薬液ノズル11は、基板Wの表面に沿って移動する長尺形状のものであり、その下面に薬液を吐出するための細長いスリット(薬液吐出口)が形成されたスリットノズルとしての形態を有している。この第1薬液ノズル11には、第1薬液タンク14に貯留された第1薬液がポンプ15によって汲み出され、薬液バルブ16を介して供給される。第1薬液ノズル11は、ノズル移動機構28によって、基板保持機構1に保持された基板Wの上面に沿って移動させられ、基板Wの上面を走査しながら、第1薬液を供給できるようになっている。このような構成により、硫酸等の粘度の高い薬液であっても、基板Wの上面の全域に塗り広げるようにして均一に供給できる。
【0034】
第2薬液ノズル12は、基板Wのほぼ中心に向けて薬液を吐出するストレートノズルである。アンモニア過酸化水素水混合液のように比較的粘度の低い薬液の供給には、この第2薬液ノズル12が用いられる。第2薬液ノズル12には、第2薬液タンク17に貯留された第2薬液がポンプ18によって汲み出され、薬液バルブ19を介して供給されるようになっている。
【0035】
第1処理液受け部21には、薬液回収配管25の一端が接続されている。この薬液回収配管25の他端は、第1薬液タンク14に接続されている。また、第2処理液受け部22には、薬液回収配管26の一端が接続されている。この薬液回収配管26の他端は、第2薬液タンク17に接続されている。したがって、第1処理液受け部21によって受けられた処理液は、薬液回収配管25を介して第1薬液タンク14へと回収され、第2処理液受け部22によって受けられた処理液は、薬液回収配管26を介して、第2薬液タンク17へと回収される。
【0036】
第3処理液受け部23には、廃液配管27の一端が接続されている。この廃液配管27の他端は、当該基板処理装置が配置される工場の廃液設備へと接続されることになる。
第1および第2純水ノズル13A,13Bに対しては、純水バルブ20A,20Bをそれぞれ介して純水供給源からの純水が供給されるようになっている。第1純水ノズル13Aは、この実施形態では、基板保持機構1に保持された基板Wの上面に対して、側方から純水を供給する複数のサイドノズル群で構成されている。この複数のサイドノズル群は、基板Wの外周に沿って円弧状に配列された吐出口を有し、基板Wの上面に対してほぼ平行な方向に純水を吐出する。これにより、第1純水ノズル13Aは、基板Wの上面に、純水の流れ(流水)を形成する流水形成手段として機能するようになっている。第2純水ノズル13Bは、基板Wのほぼ中心に向けて純水を供給するストレートノズルの形態を有している。
【0037】
基板乾燥ユニット3は、基板保持機構1の上方に配置されている。この基板乾燥ユニット3は、基板Wのとほぼ同じ径を有する円板状の板状ヒータ(たとえばセラミックス製品ヒータ)35を備えている。この板状ヒータ35は、昇降機構34によって昇降される支持筒36によってほぼ水平姿勢で支持されている。さらに、板状ヒータ35の下方には、この板状ヒータ35とほぼ同じ径の薄い円板状のフィルタ板37がほぼ水平に(すなわち、板状ヒータ35とほぼ平行に)設けられている。フィルタ板37は、石英ガラス製のものであり、円板状ヒータ35は、石英ガラスからなるフィルタ板37を介して基板Wの上面に赤外線を照射することができる。
【0038】
支持筒36の内部には、基板Wの上面の中央部分に向けて冷却ガスとしてのほぼ室温程度(約21〜23℃)に温度調整された窒素ガスを供給するための第1窒素ガス供給通路38が形成されている。この第1窒素ガス供給通路38から供給された窒素ガスは、基板Wの上面とフィルタ板37の下面(基板対向面)との間の空間に供給される。第1窒素ガス供給通路38には、窒素ガスバルブ39を介して窒素ガスが供給されるようになっている。
【0039】
また、第1窒素ガス供給通路38の周囲には、フィルタ板37の上面と板状ヒータ35の下面との間の空間内に、冷却ガスとしてのほぼ室温程度(約21〜23℃)に温度調整された窒素ガスを供給するための第2窒素ガス供給通路40が形成されている。この第2窒素ガス供給通路40から供給された窒素ガスは、フィルタ板37の上面と板状ヒータ35の下面との間の空間に供給される。第2窒素ガス供給通路40には、窒素ガスバルブ41を介して窒素ガスが供給されるようになっている。
【0040】
基板保持機構1上の基板Wを乾燥させるときには、板状ヒータ35に通電し、窒素ガスバルブ39,41を開くとともに、フィルタ板37の基板対向面(下面)を基板Wの表面に接近させる(たとえば、距離1mm程度まで接近)。これにより、フィルタ板37を通過した赤外線によって基板W表面の水分が蒸発させられることになる。
石英ガラスからなるフィルタ板37は、赤外線のうち、一部の波長領域の赤外線を吸収する。すなわち、板状ヒータ35から照射される赤外線の中で、石英ガラスが吸収する波長の赤外線はフィルタ板37によって遮断され、基板Wにはほとんど照射されない。そして、フィルタ板37、つまり石英ガラスを透過する波長領域の赤外線が選択的に基板Wに照射されることとなる。具体的には、赤外線セラミック製ヒータからなる板状ヒータ35は、約3〜20μmの波長領域の赤外線を照射する。また、例えば5mmの厚さの石英ガラスは4μm以上の波長の赤外線を吸収する。したがって、これらの赤外線セラミック製ヒータと石英ガラスを用いた場合、約3μmから4μm未満の波長の赤外線が選択的に基板Wに照射されることとなる。
【0041】
一方、水は、波長3μmおよび6μmの赤外線を特に吸収する性質を持っている。水に吸収された赤外線のエネルギーは、水分子を振動させ、振動させられた水分子間で摩擦熱が発生する。つまり、水が特に吸収する波長の赤外線を水に照射することによって、効率的に水を加熱し、乾燥させることができる。したがって、基板W上に約3μmの波長の赤外線が照射されると、基板W上に付着している純水の微小液滴は、赤外線を吸収し、加熱乾燥される。
【0042】
また、基板W自体は、シリコン基板の場合、7μmよりも長い波長の赤外線を吸収し7μmよりも短い波長の赤外線を透過させる性質を持っているので、3μmの波長の赤外線を照射しても、ほとんど加熱されない。つまり、赤外線セラミック製ヒータから照射される赤外線のうち、水に効率的に吸収され、基板W自体を透過する波長領域の赤外線が選択的に基板Wに照射されることによって、基板W自体をほとんど加熱することなく、基板Wに付着している微小液滴を効率的に加熱乾燥させることができる。フィルタ板37としては、水に効率的に吸収される波長の赤外線を透過させ、かつ、基板W自体が吸収する波長の赤外線を吸収するような材質のものが用いられればよい。
【0043】
板状ヒータ(セラミック製ヒータ)35を通電させると、この板状ヒータ35から基板Wへの対流熱の伝熱が考えられるが、この伝熱はフィルタ板37によって遮断される。しかし、板状ヒータ35の下面とフィルタ板37の上面との間の空間は対流熱により温度が上昇するので、これによりフィルタ板37が次第に加熱され、このフィルタ板37からの対流熱が基板Wに伝熱し、基板Wが加熱されるおそれがある。そこで、板状ヒータ35の下面とフィルタ板37の上面との間の空間に冷却ガスとして窒素ガスを供給することで、その空間の昇温を抑制する。また、フィルタ板37は板状ヒータ35からの赤外線を吸収するが、板状ヒータ35とフィルタ板37の間への窒素ガスの供給によって、フィルタ板37の昇温も抑制でき、フィルタ板37からの対流熱による基板Wの加熱も防止できる。
【0044】
図3は、前記基板処理装置の制御のための構成を説明するためのブロック図である。この基板処理装置には、コンピュータ等を含む制御部10が備えられている。この制御部10は、シリンダ5,6,7の動作、薬液バルブ16,19および純水バルブ20A,20Bの開閉、ノズル移動機構28の動作、昇降機構34の動作、板状ヒータ35への通電、ならびに窒素ガスバルブ39,40の開閉を制御する。
【0045】
図4は、基板Wの処理フローの一例を工程順に示す図解図であり、図5は当該処理フローに対応した基板処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。ここでは、基板W表面を第1薬液としての硫酸で処理し、水洗(リンス)した後に、さらに第2薬液としてのアンモニア過酸化水素水混合液で処理し、その後に水洗(リンス)および乾燥を行う基板洗浄工程を例にとって説明する。
【0046】
未処理の基板Wは、図示しない基板搬送ロボットによって当該基板処理装置に搬入され、基板保持機構1の支持ピン31,32,32に受け渡される(ステップS1)。このとき、支持ピン31,32,33の基板支持高さは等しくされており、基板Wは水平姿勢で支持されることになる。この状態から、制御部10は、ノズル移動機構28を制御して第1薬液ノズル11を基板Wの上面に沿って移動させる(ステップS2)。それとともに、制御部10は、薬液バルブ16を開き、第1薬液ノズル11から第1薬液としての硫酸を吐出させる。これにより、第1薬液ノズル11の移動に伴って、基板W上面に硫酸が液盛り(パドル)される(ステップS3)。基板W上面の全域に硫酸が行き渡ると、制御部10は、薬液バルブ16を閉じて、硫酸の供給を停止させる(ステップS4)。
【0047】
硫酸は比較的粘土の高い液体であるが、スリットノズルとしての形態を有する第1薬液ノズル11で基板W上面をスキャンすることによって、基板W上面の全域に均一に硫酸を液盛りすることができる。
硫酸の液盛り状態を一定時間だけ保持した後、制御部10は、シリンダ5を駆動して、支持ピン31の基板支持高さを上昇させる。このとき、支持ピン32,33の基板支持高さは不変に保持される。これにより、基板Wは、第1処理液受け部21に向かって傾斜した傾斜姿勢となり、基板W上面の硫酸は、第1処理液受け部21に向かって流れ、この第1処理液受け部21に流下して受け止められる(ステップS5)。第1処理液受け部21に受けられた硫酸は、薬液回収配管25を介して第1薬液タンク14へと回収される。
【0048】
次に、制御部10は、シリンダ5を駆動して支持ピン31の基板支持高さを元の高さに戻すとともに、シリンダ7を駆動し、支持ピン33の基板支持高さを上昇させる。このとき、支持ピン32の基板支持高さは不変に保持される。これにより、基板Wは、第3処理液受け部23に向かって傾斜した傾斜姿勢となる(ステップS6)。この状態で、制御部10は、純水バルブ20Aを開き、第1純水ノズル13Aから、基板Wの上面に向けて、側方から純水を供給する。これにより、基板W上には、第1純水ノズル13Aから第3処理液受け部23に向かう流水が形成される(ステップS7)。そして、基板Wからは、第1処理液受け部23に向かって、純水が流下する。この純水は、廃液配管27を介して、廃棄されることになる。このようにして、基板W上に残留する硫酸が流水によって洗い流される。
【0049】
こうして、一定時間だけ基板Wの上面に流水を形成した後、制御部10は、純水バルブ20Aを閉じて、純水の吐出を停止させる(ステップS8)。その後、制御部10は、シリンダ7を駆動し、支持ピン33の基板支持高さを元の高さに戻す。これにより、基板Wは水平姿勢となる(ステップS9)。
次いで、制御部10は、薬液バルブ19を開き、第2薬液ノズル12から、第2薬液としてのアンモニア過酸化水素水混合液を基板Wの中心に向けて吐出させる(ステップS10)。このときの薬液流量は、基板Wの上面に供給された薬液が液盛り状態(パドル)で保持される流量とされる。こうして、基板Wの上面に第2薬液としてのアンモニア過酸化水素水混合液を液盛りすることができる。アンモニア過酸化水素水混合液は比較的粘度の低い薬液であり、ストレートノズルの形態を有する第2薬液ノズル12からの供給によって、基板W表面の全域に容易に広がる。基板Wの表面全域にアンモニア過酸化水素水混合液が行き渡ると、制御部10は、薬液バルブ19を閉じて、アンモニア過酸化水素水混合液の供給を停止する(ステップS11)。そして、水平姿勢の基板Wの上面にアンモニア過酸化水素水混合液が液盛りされた状態を、一定時間だけ保持する。液盛りされたアンモニア過酸化水素水混合液は、基板Wが水平姿勢に保持されている限り、その表面張力によって基板Wの上面に保持される。
【0050】
その後、制御部10は、シリンダ6を駆動して、支持ピン32の基板支持高さを上昇させる。このとき、支持ピン31,33の基板支持高さは不変に保持される。その結果、基板Wは、第2処理液受け部22に向かって下降する傾斜姿勢となる。これにより、基板W上面に液盛りされていたアンモニア過酸化水素水混合液は、第2処理液受け部22へと向かって流れ、この第2処理液受け部22へと流下する(ステップS12)。この流下したアンモニア過酸化水素水混合液は、薬液回収配管26を介して、第2薬液タンク17へと回収される。
【0051】
基板Wの傾斜姿勢を一定時間だけ保持した後、制御部10は、シリンダ6を駆動して、支持ピン32の基板支持高さを元の高さに戻す。これにより、基板Wは水平姿勢となる(ステップS13)。この状態で、制御部10は、純水バルブ20Bを開き、第2純水ノズル13Bから、基板Wの中心に向けて純水を吐出させる(ステップS14)。このとき、供給される純水の流量は、水平姿勢の基板Wの表面に純水を液盛りすることができる流量とされる。こうして、基板Wの上面に純水が液盛り(パドル)され、その上面の全域に純水が行き渡ると、制御部10は、純水バルブ20Bを閉じる(ステップS15)。基板W上の純水は、基板Wが水平姿勢に保持されている限り、その表面張力によって基板W上に液盛り状態で保持される。
【0052】
こうして、基板Wの表面に純水が液盛りされた状態が、一定時間だけ保持されると、制御部10は、シリンダ7を駆動して、支持ピン33の基板支持高さを上昇させる。このとき、支持ピン31,33の基板支持高さは不変に保持される。その結果、基板Wは、第3処理液受け部23に向かって下降する傾斜姿勢となる。これにより、基板Wの表面に液盛りされた純水は、第3処理液受け部23に向かって流れ、この第3処理液受け部23に流下し、廃液配管27を介して排液される(ステップS16)。
【0053】
制御部10は、基板Wを一定時間だけ前記傾斜姿勢に保持した後、シリンダ7を駆動し、支持ピン33の基板支持高さを元の高さに戻す。これにより、基板Wは水平姿勢に戻される(ステップS17)。
次いで、制御部10は、昇降機構34によって、フィルタ板37の基板対向面(下面)が基板Wの上面に所定距離(たとえば1mm)まで接近した状態となる所定の処理位置まで、板状ヒータ35を下降させる。むろん、これに先だって、薬液ノズル11,12および純水ノズル13A,13bは基板Wの外方へと退避させられる。この状態で、制御部10は、板状ヒータ35に通電する。これにより、フィルタ板37を通過して基板W表面に至る赤外線によって、傾斜排液後の基板W上に残る水滴が蒸発させられる。また、制御部10は、窒素ガスバルブ39,41を開いて、第1および第2窒素ガス供給通路38,40へと窒素ガスを供給する。これにより、基板Wとフィルタ板37との間の空間、およびフィルタ板37と板状ヒータ35との間の空間に、室温に温度調整された窒素ガス(冷却ガス)が供給される。これにより、板状ヒータ35およびフィルタ板37から基板Wへの伝熱を抑制しつつ、基板W上面を窒素ガス雰囲気に保持し、赤外線を基板W上面に残る水滴に吸収させて、基板乾燥処理を行うことができる(ステップS18)。
【0054】
この乾燥処理の後、処理済みの基板Wは、基板搬送ロボットによって装置外に搬出される(ステップS19)。
こうして、1枚の基板Wに対する処理が終了する。さらに処理すべき未処理基板がある場合には、同様の処理が繰り返される。
以上のようにこの実施形態によれば、基板保持機構1に設けられた3本の支持ピン31,32,33をシリンダ5,6,7によって上下動させる構成によって、支持ピン31,32,33上に支持された基板Wを3方向に傾斜させることができる。そして、それぞれの傾斜方向に、第1、第2および第3処理液受け部21,22,23を配置しているため、基板W上の処理液を3方向に分離して排除することができる。これにより、第1薬液、第2薬液および純水を分離して排液でき、第1薬液および第2薬液をそれぞれ回収して再利用することができる。
【0055】
さらに、この実施形態では、基板保持機構1によって基板Wを回転する構成ではなく、基板Wを水平姿勢または傾斜姿勢に保持して、処理液を基板Wに供給するようにしている。すなわち、基板Wを非回転状態に保持して、基板Wの上面を処理液の液膜で覆うようにして、この処理液で基板Wの表面処理を行っている。したがって、基板Wの外方へと処理液が勢い良く飛び出すことがない。そのため、従来技術の構成のように、飛散する処理液を受け止めるガードを設ける必要がない。これにより、構成を簡単にすることができ、基板処理装置のコストダウンを図ることができる。さらに、処理液の飛沫の装置内への拡散を従来の装置に比較して著しく抑制することができるので、薬液付着物からの雰囲気拡散の問題も抑制または防止できる。またさらに、基板W外に高速に飛び出した液滴がガードで跳ね返って基板Wに再付着するといった問題もないので、基板処理の品質を向上することができる。
【0056】
しかも、基板Wを高速に回転させる必要がないので、基板回転のためのモータを設ける必要がない。したがって、モータ周辺の発塵対策も不要である。その結果、基板処理装置の製造コストを一層低減することができる。
また、ガードおよびモータが不要であるので、基板保持機構1の周辺に大きなスペースを確保する必要もない。そのため、小さなスペースで基板Wを液処理できるので、基板処理装置の大幅な小型化が可能になる。逆に言えば、基板処理装置の大きさを従来と同程度とすることにすれば、多数の基板処理ユニットを当該基板処理装置に備えることが可能になる。より具体的には、同種または異種の多数の基板処理ユニットを上下に積層配置したりすることが可能になる。
【0057】
さらに、第1および第2薬液を基板W上に液盛りして薬液処理を行う構成であるため、従来の構成に比較して薬液使用量を著しく少なくすることができる。これにより、ランニングコストを低減することができる。さらに、第2薬液(アンモニア過酸化水素水混合液)後のリンス処理は純水の液盛り処理によって行っているので、純水の使用量も低減でき、それに応じて装置のランニングコストを低減できる。
【0058】
また、基板Wの乾燥を基板Wの高速回転によって行う構成では、高速回転に伴って放射状に飛散する微小液滴に起因するウォータマークが生じるが、この実施形態では、基板Wを非回転状態として赤外線乾燥を行うようにしているので、ウォータマークの発生も抑制または防止できる。
さらに、基板Wを高速回転させる必要がないことから、基板Wを強固に支持する支持部材を設ける必要がない。また、そのような支持部材に起因する大きな負荷が基板Wにかかるという問題もなく、基板Wの欠け等の不良を抑制または防止できる。
【0059】
さらにまた、基板Wを高速回転させる従来の構成では、薬液または空気と基板表面との摩擦に起因する静電気の発生の問題が不可避であるが、この実施形態では、基板Wを基本的に非回転で処理するようにしているので、摩擦帯電の問題を抑制または防止できる。
図6は、この発明の第2の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な断面図である。この図6において、前述の図1〜図5に示された各部に対応する部分には、前述の場合と同一の参照符号を付して示す。
【0060】
この実施形態では、3本の支持ピン31,32,33のうち、1本の支持ピン31に関してのみシリンダ5が設けられており、他の2本の支持ピン32,33はベース4に固定されていて、それらの基板支持高さは一定とされている。
一方、ベース4は、基板回転機構8によって、基板Wのほぼ中心を通る鉛直な回転軸線まわりに回転可能とされている。この基板回転機構8は、基板Wの回転位置を低速で変更するために回転するものであり、基板W上面の処理液を振り切るほど高速にベース4を回転するものである必要はない。
【0061】
制御部10は、基板W上の処理液を第1処理液受け部21へ排出すべきときには、基板回転機構8を制御し、ベース4を回転させて、昇降可能な支持ピン31を、基板Wの中心を挟んで第1処理液受け部21に対向する位置に導く。この状態で、制御部10は、シリンダ5を駆動して、支持ピン31の基板支持高さを上昇させる。これによって、基板Wは、第1処理液受け部21に向かって下降する傾斜姿勢となる。同様に、制御部10は、基板W上の処理液を第2処理液受け部22へ排出すべきときには、基板回転機構8を制御することにより、ベース4を回転させ、支持ピン31を、基板Wの中心を挟んで第2処理液受け部22に対向する位置に導く。この状態で、制御部10は、シリンダ5を駆動し、支持ピン31の基板支持高さを上昇させる。すると、基板Wは、第2処理液受け部22に向かって下降する傾斜姿勢となる。さらに、基板W上の処理液を第3処理液受け部23へ排出すべきときは、制御部10は、基板回転機構8を制御することにより、支持ピン31を、基板Wの中心を挟んで第3処理液受け部23に対向する位置へと導く。この状態で、制御部10は、シリンダ5を駆動し、支持ピン31の基板支持高さを上昇させる。こうして、基板Wは、第3処理液受け部23に向かって下降する傾斜姿勢となる。
【0062】
このような構成によっても、基板保持機構1に保持された基板Wの外周に沿って配置された第1〜第3処理液受け部21,22,23のいずれかを選択して、基板W上の処理液を排液することができる。これにより、前述の第1の実施形態の場合と同様に、基板W上の処理液をその種類に応じて分離して排液できるので、薬液の回収効率を向上できる。また、基板Wの高速回転を要することなく基板W上の処理液を排除できるので、従来技術のようなガードは不要であるといった効果のほか、前述の第1の実施形態に関連して説明した効果を奏することができる。
【0063】
この実施形態では、ベース4を回転させるための基板回転機構8が設けられているが、この基板回転機構8は、単に昇降可能な1つの支持ピン31の回転位置を変化させることができれば充分であり、基板W上の処理液を遠心力によって振り切るほど高速にベース4を回転させるものである必要がない。そのため、小型モータ等の回転機構を設ければ充分であり、このような回転機構が基板処理装置内の大きなスペースを占有することはない。
【0064】
図7は、この発明の第3の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な断面図である。この図7において、前述の図1〜図5に示された各部に対応する部分には、前述の場合と同一の参照符号を付して示す。
この実施形態においても、前述の第2の実施形態の場合と同じく、3本の支持ピン31,32,33のうち、1本の支持ピン31に関してのみシリンダ5が設けられており、他の2本の支持ピン32,33はベース4に固定されていて、それらの基板支持高さは一定とされている。
【0065】
一方、第1〜第3処理液受け部21,22,23は、基板保持機構1に保持された基板Wの中心をほぼ通る鉛直軸線回りに回転可能な受け部ベース45に保持されている。この受け部ベース45は、受け部ベース回転機構46により、回転駆動されるようになっている。
制御部10は、基板W上の処理液を第1処理液受け部21に排出すべきときには、受け部ベース回転機構46を制御し、受け部ベース45を回転させ、第1処理液受け部21を昇降可能な支持ピン31に対して基板Wの中心を挟んで対向する位置に導く。この状態で、制御部10は、シリンダ5を駆動して、支持ピン31を上昇させる。これにより、基板Wは第1処理液受け部21に向かって下降する傾斜姿勢となる。同様に、制御部10は、基板W上の処理液を第2処理液受け部22に排出すべきときには、受け部ベース回転機構46を制御し、受け部ベース45を回転させて、第2処理液受け部22を支持ピン31に対して基板Wの中心を挟んで対向する位置へと導く。この状態で、制御部10がシリンダ5を駆動して支持ピン31を上昇させることにより、基板Wは、第2処理液受け部22へ向かって下降する傾斜姿勢となる。さらに、基板W上の処理液を第3処理液受け部23に排出すべときは、制御部10は、受け部ベース回転機構46を制御して、受け部ベース45を回転させ、第2処理液受け部23を基板Wの中止を挟んで支持ピン31に対向する位置に導く。この状態で、制御部10がシリンダ5を駆動し、支持ピン31を上昇させると、基板Wは、第3処理液受け部23へ向かって下降する傾斜姿勢となる。
【0066】
このような構成によっても、基板保持機構1に保持された基板Wの外周に沿って配置された第1〜第3処理液受け部21,22,23のいずれかを選択して、基板W上の処理液を排液することができる。これにより、前述の第1および第2の実施形態の場合と同様に、基板W上の処理液を処理液の種類に応じて分離排液できるので、薬液の回収効率を向上できる。また、基板Wの高速回転を要することなく基板W上の処理液を排除できるから、従来技術のようなガードが不要であるといった効果をはじめ、前述の第1の実施形態に関連して説明した効果を奏することができる。
【0067】
この実施形態では、受け部ベース45を回転させるための受け部ベース回転機構46が設けられているが、この受け部ベース回転機構46は、単に第1〜第3処理液受け部21,22,23の回転位置を一体的に変化させることができれば充分であり、基板W上の処理液を遠心力によって振り切る場合ほど高速に受け部ベース45を回転させるものである必要がない。そのため、第2の実施形態における基板回転機構8の場合と同様に、小型モータ等の回転機構で十分にその機能を果たすことができ、このような回転機構が基板処理装置内の大きなスペースを占有することはない。
【0068】
図8は、この発明の第4の実施形態係る基板処理装置の構成を示す図解的な断面図であり、図9は、当該基板処理装置の図解的な平面図である。これらの図8および図9において、前述の図1ないし図5に示された各部に対応する部分には、同一の参照符号を付して示す。
この実施形態では、基板保持機構1は、当該基板処理装置のフレーム50に固定されたレール51に沿って、水平方向に直線移動可能とされている。そして、ベース4をレール51に沿って移動させるためのベース移動機構52が設けられている。ベース4の移動範囲の一端付近には、上下方向に積層配置された第1〜第3処理液受け部61,62,63が設けられている。これらの第1〜第3処理液受け部61,62,63は、支持部65に一体的に支持されている。さらに、支持部65には、第1〜第3処理液受け部61,62,63を昇降させるための受け部昇降機構66が結合されている。
【0069】
最上段に配置された第1処理液受け部61は、第1薬液ノズル11から供給される第1薬液を受け取るものであり、この第1処理液受け部61に受け取られた薬液は、薬液回収配管25を介して第1薬液タンク14へと回収されて再利用されるようになっている。
2段目に配置された第2処理液受け部62は、第2薬液ノズル12から供給される第2薬液を受け取るものであり、この第2処理液受け部62に受け取られた薬液は、薬液回収配管26を介して第2薬液タンク17へと回収されて再利用されるようになっている。
【0070】
最下段に配置された第3処理液受け部63は、第1,第2純水ノズル13A,13Bから供給される純水を受け取るものであり、この第3処理液受け部63に受け取られた純水は、廃液配管27へと導かれるようになっている。
ベース4に備えられた3本の支持ピン31,32,33は、この実施形態では、一本の支持ピン31がシリンダ5によって昇降されるようになっており、他の2本の支持ピン32,33は、ベース4に固定されていて、それらの基板支持高さは不変とされている。より具体的には、昇降可能な支持ピン31は、基板Wの中心を挟んで第1〜第3処理液受け部61,62,63に対向する位置に配置されている。そして、残る2本の支持ピン32,33は、基板Wの中心よりも、第1〜第3処理液受け部61,62,63に近い位置に配置されている。ベース4は、非回転状態でレール51上を摺動する。
【0071】
図9の平面図に示されているように、第1〜第3処理液受け部61,62,63は、基板の外周のほぼ180度の角度範囲にわたる円弧形状をなす排液ポート61a,62a,63aを備えている。
このような構成により、ベース移動機構52を駆動して、基板保持機構1を第1〜第3処理液受け部61,62,63から離間した処理位置(図8において実線で示す位置)と、第1〜第3処理液受け部61,62,63に接近した排液位置(図8において二点鎖線で示す位置)との間で移動させることができる。また、シリンダ5を駆動して支持ピン31を上昇させることによって、基板Wを第1〜第3処理液受け部61,62,63に向かって下降する傾斜姿勢とすることができる。支持ピン31を下降させた状態では、基板Wはほぼ水平姿勢となる。
【0072】
一方、受け部昇降機構66を制御することによって、第1〜第3処理液受け部61,62,63は、一体的に上下動する。これにより、第1〜第3処理液受け部61,62,63の排液ポート61a,62a,63aのいずれか1つを選択して、基板保持機構1に保持された基板Wの縁部に対向させることができる。
第1薬液ノズル11または第2薬液ノズル12から基板に薬液を供給し、それらの薬液によって液盛り処理を行うときは、基板保持機構1は、第1〜第3処理液受け部61,62,63から離間した前記処理位置に配置され、支持ピン31は下降位置に制御される。これにより、基板Wは、第1〜第3処理液受け部61,62,63から離間した状態で、水平姿勢に保持される。第2純水ノズル13Bから基板Wに純水を供給して液盛りするとき、および基板乾燥ユニット3によって基板Wを乾燥させるときも、同様の制御が行われる。
【0073】
一方、基板W上に液盛りされた第1薬液を基板W上から排除するときは、制御部10は、受け部昇降機構66を制御し、第1処理液受け部61を基板Wの縁部に対向させる。また、制御部10は、ベース移動機構52を制御し、基板保持機構1を前記排液位置へと導く。そして、制御部10は、シリンダ5を駆動して、支持ピン31を上昇させる。これにより、基板Wは、第1処理液受け部61にその縁部を対向させた状態で、この第1処理液受け部61に向かって下降する傾斜姿勢となる。その結果、基板W上の第1薬液は、第1処理液受け部61に受け取られることになる。
【0074】
また、基板W上に液盛りされた第2薬液を基板W上から排除するときは、制御部10は、受け部昇降機構66を制御し、第2処理液受け部62を基板Wの縁部に対向させる。さらに、制御部10は、ベース移動機構52を制御することにより、基板保持機構1を前記排液位置へと導く。この状態で、制御部10は、シリンダ5を駆動して、支持ピン31を上昇させる。その結果、基板Wは、その下方側の縁部を第2処理液受け部62に対向させた状態で、この第2処理液受け部62に向かって下降する傾斜姿勢となる。これにより、基板W上の第2薬液は、第2処理液受け部62に受け取られることになる。
【0075】
第2純水ノズル13Bによって基板W上に液盛りされた純水を基板W上から排除するときは、制御部10は、受け部昇降機構66を制御し、第3処理液受け部62を基板Wの縁部に対向させる。そして、制御部10は、ベース移動機構52を制御し、基板保持機構1を前記排液位置へと導く。この状態で、制御部10は、シリンダ5を駆動し、支持ピン31を上昇させる。これにより、基板Wは、その下方側の縁部を第3処理液受け部63に対向させた状態で、この第3処理液受け部63に向かって下降する傾斜姿勢となる。その結果、基板W上の純水は、第3処理液受け部63によって受け取られることになる。
【0076】
第1純水ノズル13Aから純水を供給して、基板W上に流水を形成する場合にも、制御部10は、受け部昇降機構66、ベース移動機構52およびシリンダ5を同様に制御する。その状態で、制御部10は、第1純水ノズル13Aから傾斜姿勢の基板W上に向けて純水を吐出させるために、純水バルブ20Aを開く。これにより、傾斜姿勢の基板W上に流水が形成され、この流水を形成する純水は、基板Wの下方側縁部から流下し、第3処理液受け部63に受け取られる。
【0077】
第1〜第3処理液受け部61,62,63の排液ポート61a,62a,63aには、基板W上の処理液を第1〜第3処理液受け部61,62,63の内方へと導入するための誘導部材(誘導ピン)61b,62b,63bがそれぞれ設けられている。これらの誘導部材61b,62b,63bは、第1〜第3処理液受け部61,62,63の天井面から鉛直下方に垂下して設けられている。誘導部材61b,62b,63bは、傾斜姿勢の基板Wの下縁において当該基板W上の処理液に接し、その処理液が基板Wの下面に裏まわりしないように、処理液受け部61,62,63の内方へと案内する働きを担う。これにより、処理液をより効率的に第1〜第3処理液受け部61,62,63へと導くことができ、第1〜第3処理液受け部61,62,63によって受け取られずに落下してしまう処理液を可及的に少なくすることができる。これにより、薬液の回収率を向上したり、基板処理装置内の汚染を抑制したりすることができる。
【0078】
とくに、基板W上に液盛りされた処理液は、基板Wを傾斜姿勢とした場合でも、表面張力によってその上面にとどまろうとする。このような状態の処理液の液膜に誘導部材61b,62b,63bを接触させることによって、表面張力による液膜保持状態を解消して、基板W上の処理液を速やかに基板W外へと流下させることができる。
誘導部材61b,62b,63bは、基板W上の処理液に接するが、基板W自体には接触しないことが好ましい。より具体的には、基板保持機構1の前記排液位置および誘導部材61b,62b,63bの位置関係が、基板W上の処理液に誘導部材61b,62b,63bが接触し、かつ、誘導部材61b,62b,63bが基板Wに接触しないように定められていることが好ましい。これにより、誘導部材61b,62b,63bとの接触に起因する基板Wの汚染または破損の抑制または防止することができる。
【0079】
このように、この実施形態の構成によっても、基板Wを回転させるのではなく、傾斜姿勢とすることにより、基板W上の処理液をその種類に応じて第1〜第3処理液受け部61,62,63に分離して排液することができる。
なお、この実施形態では、受け部昇降機構66によって第1〜第3処理液受け部61,62,63を昇降させることにより、それらのいずれかを基板Wの縁部に対向させる構成となっているが、第1〜第3処理液受け部61,62,63の高さを固定しておき、基板保持機構1に支持される基板Wの高さを変更する基板高さ変更機構を設けてもよい。このような基板高さ変更機構は、ベース4をフレーム50に対して昇降する機構であってもよく、ベース4に対して支持ピン31,32,33を等しく昇降させる機構であってもよい。また、第1〜第3処理液受け部61,62,63を昇降させるとともに、基板高さをも変更する構成としてもよい。
【0080】
また、この実施形態では、ベース移動機構52により、基板保持機構1を処理液受け部61,62,63に対して接近/離反させる構成としているが、基板保持機構1の水平位置を固定位置とし、処理液受け部61,62,63を基板保持機構1に対して接近/離反するように水平移動させる処理液受け部移動機構を設けてもよい。このような処理液受け部移動機構は、第1〜第3処理液受け部61,62,63を一体的に水平移動させるものであってもよいし、第1、第2および第3処理液受け部61,62,63を、それぞれ独立に基板保持機構1に対して進退させる個別進退機構であってもよい。また、基板保持機構1を水平移動するとともに、第1〜第3処理液受け部61,62,63を一括して、または個別に水平移動させる構成としてもよい。
【0081】
以上、この発明の4つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、上記の実施形態では、基板Wを水平姿勢と傾斜姿勢との間で姿勢変更するために、支持ピン31,32,33を昇降させる構成を用いているが、ベース4を傾斜させる構成、すなわち、基板保持機構1全体を傾斜させる構成によっても、基板Wの姿勢を水平姿勢と傾斜姿勢の間で変更することができる。同様に、基板処理装置全体を傾斜させる構成によっても、基板Wの姿勢を水平姿勢と傾斜姿勢と間で変更することができる。
【0082】
さらに、前述の実施形態では、2種類の薬液とリンス液としての純水とを用いる構成について説明したが、薬液の処理は3種類以上でもよいし、1種類であってもよい。すなわち、使用する処理液の種類の数に応じて、処理液受け部の数を定めればよい。
また、前述の実施形態では、基板保持機構1に保持された基板Wの外周に沿って複数の処理液受け部が配置された構成と、基板保持機構1の側方位置において複数の処理液受け部を上下方向に積層した構成とを例示したが、これらの構成を組み合わせて、基板保持機構1の周囲の複数箇所に、各複数の処理液受け部を積層配置してもよい。これにより、基板処理装置の高さを抑制しながら、より多種類の処理液の分離排液を実現することができる。
【0083】
また、図6および図7の構成を組み合わせて、基板保持機構1を回転するとともに、第1〜第3処理液受け部61,62,63も回転することとして、基板Wからの処理液の流下位置と処理液受け部との相対位置関係を変更できるようにしてもよい。
さらに前述の図8に示された構成では、誘導部材61b,62b,63bが、処理液受け部61,62,63の各天井面から垂れ下がって形成されている例を示してあるが、これらの誘導部材61b,62b,63bは、処理液受け部61,62,63の各内底面から立設形成されていてもよい。
【0084】
また、リンス液としては、純水のほか、炭酸水、電解イオン水、水素水、磁気水などの機能水、または希薄濃度(たとえば1ppm程度)のアンモニア水などが用いられる場合がある。
また、前述の実施形態では、円形の基板Wを3本の支持ピン31,32,33で支持する構成の基板保持機構1を例示したが、4本以上の支持ピンで基板Wを支持する構成の基板保持機構を用いてもよい。
【0085】
また、前述の実施形態では、処理液を供給するノズル11,12,13A,13Bは複数設けられており、それぞれのノズルから異なる薬液やリンス液が供給されるようになっているが、これに限らず、1つの共通のノズルから複数の薬液やリンス液が供給されてもよい。たとえば、バルブ機構等が接続された1つのノズルから前記第1薬液、第2薬液およびリンス液のうちの2以上の処理液が選択的に供給されるようになっていてもよい。
【0086】
さらに、前述の実施形態では、円形の基板を処理対象とした基板処理装置について説明したが、液晶表示装置用ガラス基板に代表される矩形基板を処理する基板処理装置についてもこの発明の適用が可能である。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図2】前記基板処理装置の図解的な平面図である。
【図3】前記基板処理装置の制御のための構成を説明するためのブロック図である。
【図4】基板の処理フローの一例を工程順に示す図解図である。
【図5】図4の処理フローに対応した基板処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明の第2の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図7】この発明の第3の実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための図解的な断面図である。
【図8】この発明の第4の実施形態係る基板処理装置の構成を示す図解的な断面図である。
【図9】図8の基板処理装置の図解的な平面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 基板保持機構
2 基板姿勢変更機構
3 基板乾燥ユニット
4 ベース
5,6,7 シリンダ
8 基板回転機構
10 制御部
11 第1薬液ノズル
12 第2薬液ノズル
13A 第1純水ノズル
13B 第2純水ノズル
14 第1薬液タンク
15,18 ポンプ
16,19 薬液バルブ
17 第2薬液タンク
20A,20B 純水バルブ
21 第1処理液受け部
21a,22a,23a 排液ポート
22 第2処理液受け部
23 第3処理液受け部
25,26 薬液回収配管
27 廃液配管
28 ノズル移動機構
31,32,33 支持ピン
34 昇降機構
35 板状ヒータ
36 支持筒
37 フィルタ板
38,40 窒素ガス供給通路
39,41 窒素ガスバルブ
45 受け部ベース
46 受け部ベース回転機構
50 フレーム
51 レール
52 ベース移動機構
61 第1処理液受け部
61a,62a,63a 排液ポート
61b,62b,63b 誘導部材
62 第2処理液受け部
63 第3処理液受け部
65 支持部
66 受け部昇降機構
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持手段と、
この基板保持手段に保持された基板の姿勢をほぼ水平姿勢と水平面に対して傾斜した傾斜姿勢とに変更することができる基板姿勢変更手段と、
前記基板保持手段に保持されている基板に複数種類の処理液を供給する処理液供給手段と、
前記基板姿勢変更手段によって前記基板保持手段に保持された基板が前記傾斜姿勢とされたときに、前記基板の表面から流れ落ちる処理液を受ける複数の処理液受け部と、
前記基板保持手段に保持されている基板上の処理液の種類に応じて、前記傾斜姿勢とされた基板から流れ落ちる処理液を受けるべき処理液受け部を前記複数の処理液受け部から選択する受け部選択手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記基板保持手段は、基板表面が処理液で覆われている期間中、前記基板を非回転状態で保持するものである、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理液供給手段から前記基板保持手段に保持されている基板に処理液が供給されるときに、基板が前記水平姿勢となるように前記基板姿勢変更手段を制御する基板姿勢制御手段をさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理液供給手段から前記基板保持手段に保持されている基板に処理液が供給されるときに、当該処理液供給手段からの処理液の供給を制御するとともに、基板が前記水平姿勢となるように前記基板姿勢変更手段を制御することによって、前記基板上に処理液を液盛りし、この液盛り状態を所定時間だけ保持する液盛り処理を実行する液盛り制御手段をさらに含む、請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理液供給手段から基板保持手段に保持されている基板に処理液が供給されるときに、基板が前記傾斜姿勢となるように前記基板姿勢変更手段を制御する基板姿勢制御手段をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記複数の処理液受け部は、前記基板保持手段に保持される基板の外周に沿って配置されており、
前記受け部選択手段は、前記基板姿勢変更手段によって傾斜姿勢とされる基板から処理液が流下するのに先立って、処理液の流下位置と、前記複数の処理液受け部との相対位置関係を前記基板の外周に沿って変更する流下・受け位置相対移動手段を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記流下・受け位置相対移動手段は、前記基板姿勢変更手段によって基板が傾斜させられる方向を変更する傾斜方向変更手段を含む、請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板保持手段は、基板の下面を支持する少なくとも3個の基板支持部材を含み、
前記基板姿勢変更手段は、前記少なくとも3個の基板支持部材による基板支持高さを相対的に変更させる基板支持高さ変更手段を含み、
前記傾斜方向変更手段は、前記基板支持高さ変更手段を制御することによって、前記少なくとも3個の基板支持部材の基板支持高さを調節して基板の傾斜方向を変更するものである、請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記流下・受け位置相対移動手段は、前記複数の処理液受け部を前記基板保持手段に保持される基板の外周に沿って回動させる受け部回動手段を含む、請求項6〜8のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記複数の処理液受け部は、前記基板保持手段の側方において上下方向に積層配置されており、
前記受け部選択手段は、前記基板姿勢変更手段によって傾斜姿勢とされる基板から処理液が流下するのに先立って、処理液の流下位置と、当該処理液を受けるべき処理液受け部との相対位置関係を変更する流下・受け位置相対移動手段を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記流下・受け位置相対移動手段は、前記基板保持手段を前記処理液受け部に対して移動させる基板移動手段を含む、請求項10記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記流下・受け位置相対移動手段は、前記処理液受け部を前記基板保持手段に対して移動させる受け部移動手段を含む、請求項10または11記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記基板姿勢変更手段によって傾斜姿勢とされる基板から流下する処理液を伝わせて前記処理液受け部へと誘導する処理液誘導部材をさらに含む、請求項1〜12のいずれかの記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記処理液誘導部材は、処理液に接し、基板には接しないように配置されている、請求項13記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記基板保持手段に保持されている基板に赤外線を照射する赤外線発生手段をさらに含む、請求項1ないし14のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項16】
基板上に複数種類の処理液を順次供給するステップと、
基板を傾斜姿勢として基板上の処理液を流下させる排液ステップと、
傾斜姿勢の基板から流下する処理液を、複数の処理液受け部のなかから当該処理液の種類に応じて選択した処理液受け部で受けるステップとを含む、基板処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−180426(P2007−180426A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379664(P2005−379664)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】