説明

基板処理装置

【課題】基板上の処理液の温度をより適正に保ちながら処理を進めることができ、しかも、装置構成を簡単、かつ安価とする。
【解決手段】エッチング装置10は基板Sを水平姿勢で搬送しながらその上面にエッチング液を供給するものである。このエッチング装置10は、基板Sのうちその幅方向両端部分であって、かつ所定のパターン形成領域よりも外側の領域をローラ26により支持した状態で基板Sを搬送するローラコンベア16と、前記ローラ26による基板Sの支持位置よりも幅方向内側の位置でエッチング液と同温度の流体(エッチング液)を噴出することによりその流体圧により基板Sをその下側から支持する流体圧支持装置17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD(液晶表示装置)やPDP(プラズマディスプレイ)等のFPD(フラットパネルディスプレイ)用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板、プリント基板、半導体基板等の基板に各種処理液を供給して処理を施す基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の基板処理装置として、例えば特許文献1には、水平姿勢で搬送されるLCD用ガラス基板等の基板の表面に処理液を供給することにより基板上に液層を形成し、この状態で基板を搬送しながら、あるいは一時的に静止させた状態で処理を行う、いわゆるパドル方式の処理を行う装置が提案されている。
【0003】
他方、特許文献2には、基板を水平姿勢で搬送しながら、その途中で基板全体を処理液中に浸漬することにより処理を進める、いわゆるディップ方式の処理を行う装置が提案されている。
【特許文献1】特開2002−324751号公報
【特許文献2】特開平11−305449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような基板処理装置は、基板に対して現像処理やエッチング処理等を施す装置として適用されているが、処理液の温度管理の観点から次のような課題がある。
【0005】
すなわち、パドル方式やディップ方式の処理プロセスでは、所定温度に温調された処理液を基板に供給して処理を進めるケースが多い。この場合、特許文献1の装置(パドル方式の処理装置)では、搬送ローラによりその下側から基板が支持されているため、熱伝導によりローラとの接触部分で処理液の温度が低下し易く、これによっていわゆる処理ムラを招くことが考えられる。これに対し、特許文献2の装置(ディップ方式の処理装置)では、基板を処理液に浸漬させるため、パドル方式のようなローラとの接触による処理液の温度低下という問題は無いが、基板の搬送経路上に処理液の貯溜設備を設ける必要があるため、装置構成が複雑、かつ高価なものとなるという課題ある。
【0006】
本発明は、このような従来装置の課題に鑑みて成されたものであり、基板上の処理液の温度をより適正に保ちながら処理を進めることができ、しかも、装置構成が簡単、かつ安価な基板処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題に鑑み、本発明は、水平姿勢で搬送される基板の上面に、処理液供給手段により処理液を供給することにより当該基板に処理を施す基板処理装置において、前記基板のうち、その搬送方向と直交する方向である幅方向の両端部分であって、かつ所定のパターン形成領域よりも外側の領域を支持部材により支持した状態で前記基板を搬送する搬送手段と、前記支持部材による基板の支持位置よりも幅方向内側の位置で前記処理液と同温度の流体を噴出することによりその流体圧により前記基板をその下側から支持する流体圧支持手段とを備えているものである。
【0008】
この構成によると、基板は、その両端部分を搬送手段の支持部材により支持された状態で、この支持部材の作動に伴い搬送されるが、支持部材は、所定のパターン形成領域よりも幅方向外側の領域で基板を支持するため、支持部材と基板との接触部分で処理液の温度が熱伝導により低下しても実質的な処理への影響は無い。しかも、基板は、流体圧支持手段による流体圧により支持されているため自重により撓むことなく水平に保たれる。その上、その流体は、処理液と同温度であることから、基板上の処理液の温度に影響を与えることがないばかりか、基板上の処理液の保温に有効に作用することとなる。
【0009】
この装置において、前記流体圧支持手段は、前記基板に対し、少なくとも前記パターン形成領域における幅方向全体に亘って流体圧が作用するように前記流体を噴出させるのが好適である。
【0010】
この構成によると、基板のパターン形成領域により確実に流体圧を作用させることが可能となる。
【0011】
また、上記装置において、前記流体圧支持手段は、それぞれ前記流体を噴出し、かつ所定の配列で配備される複数の単位支持部を有するのが好適である。
【0012】
この構成によると、各単位支持部から噴出した流体が隣設される単位支持部材間の隙間に速やかに流れ込むこととなるため、基板と流体圧支持手段との間に流体が長時間滞留するのを防止することが可能となる。
【0013】
この場合、前記単位支持部は、基板の搬送方向に所定間隔を隔てて複数並べて配備されており、前記搬送手段は、前記支持部材として基板の幅方向両端部分を支持する一対のローラをローラ軸により連結した複数の搬送ローラが基板の搬送方向に並設されてなるローラコンベアからなり、前記搬送ローラは、前記流体圧支持手段の各単位支持部の間にそれぞれ配備されているのが好適である。
【0014】
この構成によると、流体圧支持手段を設けながらも、従来のこの種の装置と同様にローラコンベアを用いた簡素な構成で基板を搬送することができ、しかも、発明の実施の形態中で詳細に説明するように、ローラの支持強度を確保するとともに、基板両側のローラを同期回転させる機構を簡素な構成とすることが可能となる。
【0015】
なお、上記装置において、処理液供給手段が、基板の搬送方向に所定間隔を隔てて配備されるものでは、前記流体圧支持手段は、前記処理液供給手段に対応する部分の流体の噴出圧力がそれ以外の部分の噴出圧力よりも高くなるように構成されているのが好ましい。
【0016】
つまり、処理液供給手段に対応する位置では、基板上に供給される処理液の液圧により基板が下向きに撓み易くなるが、上記のように処理液供給手段に対応する部分の流体の噴出圧力を高めにしておくことで、そのような基板の撓みを防止することが可能となる。
【0017】
また、上記装置において、前記流体圧支持手段は、前記処理液供給手段よる処理液の供給位置よりも基板搬送方向における下流側に配備されているものであってもよい。
【0018】
例えば、流体圧支持手段を処理液の供給位置を含む広い範囲に配備し、処理液の供給前から流体圧支持手段の流体を基板に作用させるようにしてもよいが、上記のように、処理液の供給位置よりも下流側、つまり基板上に処理液が供給された後に当該基板に流体圧を作用させる方が、無駄がなく装置構成が合理的なものとなる。
【0019】
また、上記装置において、前記流体圧支持手段は、水平面に多数の開口が形成された前記流体の噴出面をもつ箱形のノズルを有するものであるのが好適である。
【0020】
この構成によれば、簡素なノズル構成で基板の下面に対して均等に流体圧を作用させることが可能となる。
【0021】
なお、前記流体圧支持手段は、前記流体として前記処理液と同種の処理液を噴出するもの、あるいは前記流体として気体を噴出するものであるのが好適である。
【0022】
例えば、前記流体として処理液と異なる液体を用いてもよいが、上記のような流体を用いれば処理液等の供給や回収に関し種々の利点がある。つまり、前者の場合は、流体として処理液と同種のものを用いるので、流体圧支持手段における流体の供給系統や回収系統を処理液のものと共通化することが可能となる。また、後者の場合には、処理液と気体とを容易に分離して回収することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の請求項1に係る基板処理装置によると、基板のうちパターン形成領域よりも外側の領域を搬送手段の支持部材により支持し、パターン形成領域については処理液と同温度の流体による流体圧により支持するようにしたので、基板上に供給される処理液の温度を適正に保ちながら処理を進めることができる。しかも、構成的には、基板の両端を支持して当該基板を搬送する搬送手段と、流体を噴出させて基板の下面に作用させる流体圧支持手段とを設けただけの簡単、かつ安価な構成で上記効果を得ることができる。
【0024】
請求項2に係る基板処理装置によると、基板のうちパターン形成領域に供給された処理液の温度変化を効果的に防止することが可能となり、パターン形成領域に対する処理をより適切に進めることができる。
【0025】
請求項3に係る基板処理装置によると、基板と流体圧支持手段との間に流体が長時間滞留するのを防止することができ、当該滞留による弊害、例えば滞留した流体により基板が持ち上げられて上向きに撓むといった現象の発生を効果的に防止することができる。
【0026】
請求項4に係る基板処理装置によると、請求項3の効果に加え、搬送ローラを用いた簡素な構成で基板を搬送することができる。また、構造上、ローラ本体の支持強度を高めることができる等の利点もある。
【0027】
請求項5に係る基板処理装置によると、処理液供給手段により供給される処理液の液圧で基板が下向きに撓むのを有効に防止することができ、より確実に基板を水平に保つことができる。
【0028】
請求項6に係る基板処理装置によると、基板上に供給される処理液の温度を適正に保ちながら処理を進める一方で、必要最小限の箇所に流体圧支持手段を配備した合理的な構成が達成される。
【0029】
請求項7に係る基板処理装置によると、簡素な構成で基板の下面に均等に流体圧を作用させることが可能となり、その結果、基板の水平姿勢をより確実に保ちながら処理を進めることができる。
【0030】
請求項8に係る基板処理装置によると、流体圧支持手段における流体の供給系統や回収系統を処理液供給手段のものと共通化することが可能となり、装置構成の合理化を進めることができる。
【0031】
請求項9に係る基板処理装置によると、流体圧支持手段の流体として処理液とは異なる種類のものを用いながらもその分離回収を容易に行うことができ、装置構成を簡素化する上で有利になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の第1の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0033】
図1は本発明に係る基板処理装置であるエッチング装置の概略を側面図で示している。この図に示すように、エッチング装置10は、区画形成された処理槽12を有しており、この処理槽12の内部に、矩形の基板Sを水平姿勢で搬送するローラコンベア16と、当該コンベア16とは別に、基板Sをその下側から支持する流体圧支持装置17と、基板Sにエッチング液(処理液)を供給する複数のノズル18(本発明に係る処理液供給手段に相当する)とを備えている。
【0034】
上記処理槽12には、その壁面に基板の導入口14aおよび導出口14bが設けられており、これら導入口14aおよび導出口14bを介して処理槽12と隣設された処理槽11,13とが互いに連通している。つまり、上流側の処理槽11で処理を終えた基板Sが導入口14aを介して処理槽12に搬入され、ここで同図中白抜き矢印方向に搬送されながらエッチング処理が施された後、上記導出口14bを介して下流側の処理槽13に搬出されるようになっている。なお、図示を省略するが、導入口14aおよび導出口14bには、それぞれシャッターが設けられており、処理中は、該シャッターにより導入口14aおよび導出口14bが閉じられることにより処理槽12内が密閉されるようになっている。
【0035】
前記ノズル18は、例えばシャワーノズルからなり、前記ローラコンベア16により水平姿勢で搬送される基板Sの上面にエッチング液を供給するようになっている。
【0036】
各ノズル18は、例えば基板Sの搬送方向と直交する方向(以下、幅方向という)に延びる筒状のバッファ部に複数の吐出口が一定間隔で幅方向に並んだ構成を有しており、基板Sの搬送方向に一定間隔で配列されて処理槽12の天井部分に支持されている。
【0037】
エッチング液は、同図に示すように、処理槽外に設置される貯溜タンク40に貯溜されており、ポンプ44の作動により前記タンク40から導出管42を通じて導出されつつ供給管46を通じて各ノズル18に供給される。そして、使用済みのエッチング液は、処理槽12の内底部に形成される漏斗状の集液パン12bによって集液されながら廃液管48を通じて図外の廃液タンクに導出されるようになっている。なお、貯溜タンク40には、温調器として例えばヒータ41が設けられており、これによってエッチング液が最適温度に温調されつつ基板Sに供給されるようになっている。
【0038】
前記ローラコンベア16は、図1および図2に示すように、基板Sの搬送方向に並ぶ複数の搬送ローラと、モータを駆動源としてこれらの搬送ローラを同期して回転させる駆動機構とから構成されている。
【0039】
搬送ローラとしては、同図に示すように、処理槽12の上流端および下流端にそれぞれ配備される一対の第1種搬送ローラ21Aと、これらの間に等間隔で並ぶ複数の第2種搬送ローラ21Bとを備えている。
【0040】
第1種搬送ローラ21Aは、処理槽12の側板12a(図3参照)に亘って支持される一本のローラ軸24に、基板Sの幅方向両端部分を支持する一対の円錐型のローラ22と、これらローラ22の間の部分で基板Sを支持する複数の円盤型のローラ23とが一体に設けられた構成となっている。なお、一対の円錐型のローラ22は、それぞれ基板Sのうちパターンが形成される領域(パターン形成領域Pe;図3参照)よりも幅方向外側の部分を支持するように設けられている。
【0041】
これに対して、第2種搬送ローラ21Bは、図3に示すように、基板Sの幅方向両端部分(パターン形成領域Peよりも外側の部分)を支持する円錐型の一対のローラ26を有し、これらローラ26が、ローラ軸28を介して処理槽12の各側板12aにそれぞれ片持ち状態で支持された構成となっている。つまり、第2種搬送ローラ21Bは、一対のローラ26が各側板12aに対して別個独立に支持された構成となっている。
【0042】
前記駆動機構については詳細図を省略するが、モータを駆動源として備え、このモータの回転駆動力を、ベルト伝動機構を介して各ローラ軸24,28に伝達することにより、各搬送ローラ21A,21Bを同期して回転させるようになっている。
【0043】
流体圧支持装置17は、流体を上向きに噴出させ、その流体圧で前記ローラコンベア16により搬送される基板Sを支持するものである。図2および図3に示すように、この流体圧支持装置17は、各第2種搬送ローラ21Bに対応してこれらのローラ26間にそれぞれ配備される複数のノズル32(本発明に係る単位支持部に相当する)と、このノズル32に対して流体を供給する流体供給手段とから構成されている。
【0044】
ノズル32は、幅方向に細長で、かつ上面に水平な液供給面33(図3では上面)を有する断面矩形の箱形のノズルであり、液供給面33に形成される多数の吐出口から流体を上向きに噴出するように構成されている。各ノズル32は、前記各ローラ22,26による基板Sの支持位置よりも僅かに液供給面33が下方に位置にするように配備され、それぞれ処理槽12に固定されている。
【0045】
ノズル32から噴出する流体としては、この装置10の処理液であるエッチング液が用いられている。そのため、前記流体供給手段は、前記ノズル18に対するエッチング液の供給系統の大部分を利用した構成となっている。すなわち、図1に示すように、前記供給管46にはその途中部分から分岐する分岐管47が設けられ、この分岐管47を通じて各ノズル32に対してエッチング液が供給されるようになっている。分岐管47の途中部分には流量調整バルブが介設されており、このバルブにより流量調整が行われることにより、各ノズル32からそれぞれ所定圧力でエッチング液が噴出するようになっている。
【0046】
ノズル32から噴出するエッチング液の圧力は、第2種搬送ローラ21Bにより両端が支持された基板Sがその液圧(流体圧)により水平姿勢に保たれる程度の圧力(実際には各吐出口からエッチング液が湧出する程度の圧力)とされ、基板Sの材質やサイズに応じて制御されるようになっている。
【0047】
なお、以下の説明では、便宜上、ノズル18を上部ノズル18と呼ぶ一方、ノズル32を下部ノズル32と呼び、また、下部ノズル32から供給されるエッチング液については、特に必要な場合を除き単に流体と呼ぶことにする。
【0048】
次に、エッチング装置10における基板Sの処理動作についてその作用と共に説明する。
【0049】
前工程である処理槽11での基板Sの処理が終了すると、導入口14aが開かれて基板Sが水平姿勢で処理槽12内に搬入される。詳しくは、処理槽11内の搬送ローラからローラコンベア16の各搬送ローラ21A,21Bに順次基板Sが受け渡され、これら搬送ローラ21A,21Bの駆動により処理槽12内の所定の処理位置(図1の位置)に基板Sがセットされる。この際、流体圧支持装置17の各下部ノズル32からは流体が噴出(湧出)しており、この流体圧が基板Sに対してその下側から作用ことにより、基板Sが撓むことなく水平姿勢のままで第1種搬送ローラ21Aから第2種搬送ローラ21Bに受け渡されて前記処理位置にセットされることとなる。
【0050】
基板Sが処理位置にセットされると、導入口14aが閉じ、上部ノズル18から基板Sの上面にエッチング液が供給される。これにより基板Sのエッチング処理が開始される。
【0051】
この処理中、基板Sは、第2種搬送ローラ21B(ローラ26)により支持されているため、各ローラ26と基板Sとの接触部分で熱伝導によりエッチング液の温度が低下することとなるが、各ローラ26は上記の通りパターン形成領域Peよりも幅方向外側の部分を支持しているため、当該温度低下によるエッチング処理への実質型な影響は殆ど無い。また、基板Sは各下部ノズル32から噴出される流体の圧力により水平姿勢に保たれているので、撓みにより基板Sが破損することもない。しかも、この流体は上記の通り、上部ノズル18から供給されるエッチング液と同様にタンク40で温調されたエッチング液であるため、上記のように基板Sに接することにより基板S上のエッチング液の温度維持に有効に作用する。従って、基板S上に供給されたエッチング液、特にパターン形成領域Peに供給されたエッチング液の温度低下が有効に防止され、これによりパターン形成領域Peにおけるエッチング処理がムラなく均一に進行することとなる。
【0052】
こうして所定時間だけエッチング処理が行われると、上部ノズル18によるエッチング液の供給が停止される。そして、上記導出口14bが開かれるとともにローラコンベア16が作動し、これにより基板Sが各搬送ローラ21B,21Aに順次受け渡されつつ導出口14bを通じて処理槽13に搬出され、当該処理槽12における一連のエッチング処理が終了する。なお、各下部ノズル32における流体の噴出は、基板Sの搬出後、停止されることとなる。
【0053】
以上のようなエッチング装置10によると、水平姿勢で基板Sのエッチング液を進めながらも、基板Sに供給されたエッチング液の温度低下を効果的に防止することができる。そのため、ムラの無い高品質のエッチング処理を提供することができるようになる。しかも、構成的には、処理用のエッチング液を供給する上部ノズル18の他には、主に基板Sの幅方向両端部を支持した状態で基板Sを支持して搬送するローラコンベア16と、下部ノズル32から流体(エッチング液)を噴出させて基板Sにその流体圧を作用させる流体圧支持装置17とを設けただけの簡単な構成であるため、従来の所謂ディップ方式の処理装置のような複雑な機構は必要なく、従って、高品質のエッチング処理を安価な装置構成で提供することができる。
【0054】
特に、上記流体圧支持装置17では、基板Sを支持するための流体として、エッチング装置10で使用される処理液と同じエッチング液を使用することによって、下部ノズル32に対する流体の供給系統や回収系統を、上記のように上部ノズル18に対するエッチング液の供給系統や回収系統(タンク40、ヒータ41,ポンプ44、廃液管48)と共通化した合理的な構成となっている。従って、この点でもエッチング装置10が簡素で、安価な構成となっている。
【0055】
なお、流体圧支持装置17は、下部ノズル32から流体を噴出させて基板Sに対して流体圧を与え、これにより基板Sを水平姿勢に保つようにしているが、当実施形態では、上記のように複数の下部ノズル32を設け、これら下部ノズル32を搬送方向に所定の間隔を隔てて配備しているため、基板Sが反り返る(上向きに撓む)のを有効に防止することができるという利点もある。すなわち、例えば下部ノズル32として、図4に示すように、上流側の第1種搬送ローラ21Aから下流側の第1種搬送ローラ21Aに亘る単一の下部ノズル32を設けるようにしてもよい。しかし、この構成では、液供給面33の面積が大きくなると、噴出した流体が液供給面33の特に中央部分に溜まり易くなり、その結果、溜まった流体により基板Sが持ち上げられて上向きに撓むことが考えられる。これに対して、上記実施形態の構成によると、下部ノズル32が複数個に細分化されてノズル間に隙間が形成されているため、液吐出口から噴出した流体は順次その隙間に速やかに流れ込むこととなり液供給面33に液溜まりが生じ難くなる。そのため、基板Sが上向きに撓むのを有効に防止して、より確実に基板Sを水平姿勢に保つことができる。
【0056】
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0057】
図5は本発明に係る基板処理装置である現像装置の概略を側面図で示している。なお、以下の説明では、上述したエッチング装置10と共通する構成については同一符号を付して説明を省略し、相違点についてのみ詳細に説明することとする。
【0058】
この図に示すように、現像装置10′は、エッチング液を供給する複数の上記ノズル18に代えて、基板Sに現像液(処理液)を供給する単一のノズル19(本発明に係る処理液供給手段に相当する)を備えている。
【0059】
ノズル19は、幅方向に延びるスリット状の液吐出口を備えたスリットノズルであり、同図に示すように導入口14aの近傍に配備されている。このノズル19(以下、スリットノズル19という)は、供給管56を通じて図外の現像液タンクに接続されており、この現像液タンクから所定温度に温調された現像液が供給されるようになっている。
【0060】
この現像装置10′のローラコンベアは、基本的にはエッチング装置10のものと共通しているが、流体圧支持装置17は、各下部ノズル32からエアを噴出させるように構成されている点でエッチング装置10のものと構成が相違している。詳しくは、各下部ノズル32は、エア供給管52、温調器54および図外の流量調整バルブ等を介してコンプレッサ50に接続されており、コンプレッサ50で生成される圧縮エアを温調器54で所定温度に温調した後、具体的には現像液と同じ温度に温調した後、各下部ノズル32から噴出させるように構成されている。
【0061】
この現像装置10′では、導入口14aを通じて基板Sが水平姿勢で処理槽12内に搬入され、この搬入に同期してスリットノズル19から基板S上に現像液が供給される。つまり基板S上に現像液の液層が形成される。そして、液層形成後、現像装置10′内で基板Sが静止状態に保持される。この際、流体圧支持装置17の各下部ノズル32からはエア(流体)が噴出しており、このエア圧により基板Sが下側から支持されるこれにより基板Sが水平姿勢に保たれることとなる。また、基板Sに作用するエアは、上記の通り現像液と同じ温度に温調されているため、基板S上に形成された液層の温度が良好に保たれ、その結果、現像処理がムラなく均一に進行することとなる。
【0062】
こうして所定時間が経過すると、ローラコンベア16が作動し、基板Sが導出口14bを通じて次工程、例えば洗浄工程へと搬送されることとなる。
【0063】
このような現像装置10′においても、水平姿勢で基板Sを搬送する一方で、基板Sに供給された現像液の温度を良好に保つことができる。従って、簡単、かつ安価な構成でムラの無い高品質の現像処理を提供することができる。
【0064】
以上説明したエッチング装置10や現像装置10′は、本発明に係る基板処理装置の実施の形態の一例であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成を採用することも可能である。
【0065】
(1)実施形態の各装置10,10′では、搬送ローラとして導出口14bの近傍にも第1種搬送ローラ21Aを配備しているが、これは導出口14bの近傍では十分に処理が進行していて処理液の温度変化による影響がないことと、また、基板Sを安定的に水平に保った状態で導出口14bから搬出するためである。従って、処理液の温度変化に影響が出るような場合には、導出口14bの近傍についても第2種搬送ローラ21Bを配備するようにすればよい。
【0066】
(2)実施形態の流体圧支持装置17は、上記のように幅方向に細長い複数の下部ノズル32を有し、これらノズル32が基板Sの搬送方向に一定間隔で並んだ構成となっているが、例えば搬送方向に細長い複数の下部ノズルを設け、これらノズルを幅方向に一定間隔で並設した構成としてもよい。また、格子状の隙間が形成されるように複数の下部ノズルを縦横(搬送方向および幅方向)に並設した構成としてもよい。要するに、下部ノズル32から噴出される流体の圧力により基板Sを水平姿勢に支持することができるものであればよい。従って、基板Sを水平姿勢に支持することができれば、図4に示すような単一構造の下部ノズル32を設けるようにしてもよい。但し、上述した通り、下部ノズル32を細分化した構成の方が、液供給面33の液溜まりを防止するという観点から望ましい。
【0067】
また、実施形態の下部ノズル32は、水平な液供給面33(図3では上面)を有する断面矩形の箱形の構成となっているが、具体的な下部ノズル32の構成もこれに限定されるものではなく、噴出する流体により基板Sを水平姿勢に支持することができれば種々の形態を採用することが可能である。
【0068】
(3)例えば図6に示すように、流体圧支持装置17において、第2種搬送ローラ21Bと下部ノズル32とを基板搬送方向にオフセットし、さらに第2種搬送ローラ21Bとして、同図に示すように、側板12aに亘って支持される一本のローラ軸28′に前記ローラ26を設けたものを適用するようにしてもよい。
【0069】
この構成によれば、ローラ26を片持ち支持する上記実施形態の第2種搬送ローラ21Bの構成に比べて第2種搬送ローラ21Bの支持強度が向上する。また、各搬送ローラ21A,21Bの一端側だけで動力伝達(ベルト伝動)を行うことが可能となる。すなわち、各ローラ26が分離している図2に示す第2種搬送ローラ21Bの構成では、各ローラ26を同期回転させるために各搬送ローラ21A,21Bの両端側で動力伝達を行う必要があるが、上記のような構成によれば、各搬送ローラ21A,21Bの一端側だけで動力伝達を行うことができる。そのため、各搬送ローラ21A,21Bを同期回転させるための駆動機構を簡素化することができるというメリットがある。
【0070】
(4)上記エッチング装置10において、下部ノズル32毎に流体の噴出圧力を調整可能に構成し、例えば下部ノズル32のうち上部ノズル18に対向するものの噴出圧力をそれ以外の下部ノズル32よりも高目に設定するようにしてもよい。つまり、上部ノズル18が存在する位置では、上部ノズル18からのエッチング液の供給により基板Sに対して下向きに液圧が作用し、これによって基板Sが下向きに撓むことが考えられる。この点、上記のように下部ノズル32のうち上部ノズル18に対向するものの噴出圧力を高目に設定しておけば、基板Sに対して下向きに作用する液圧を相殺することが可能となり、その結果、基板Sをより確実に水平に保つことができるようになる。
【0071】
(5)上記エッチング装置10では、エッチング液を供給するためのノズル18としてシャワー型のノズルを適用し、また、現像装置10′では、現像液を供給するためのノズルとしてスリットノズル19を適用しているが、勿論これら以外の形状のノズルを用いることも可能であり、ノズル形状はその液種に応じて適宜選定すればよい。例えば、エッチング装置10の上部ノズル18として、図7に示すように、流体圧支持装置17の下部ノズル32と同形状のものを下向きに配備してエッチング液を基板S上に供給するようにしてもよい。このような上部ノズル18によれば、より均一にエッチング液を吐出させることが可能となるため、エッチングムラの発生を防止する上で有効となる。
【0072】
(6)上記エッチング装置10の流体圧支持装置17では、下部ノズル32から噴出する流体として処理液と同じエッチング液を使用しているが、勿論、異なる種類の液体、あるいは気体(エアや不活性ガス)を用いてもよい。但し、エッチング液を用いる構成によれば、上述したように上部ノズル18および下部ノズル32に対する流体の供給系統や回収系統を共通化することが可能となるため、エッチング装置10を合理的に、かつ安価に構成することができるというメリットがある。同様に、現像装置10′についても、下部ノズル32から噴出させる流体として現像液を用いるようにしてもよい。
【0073】
(7)上記実施形態では、本発明をエッチング装置10および現像装置10′に適用した例について説明したが、勿論、本発明はこれらの装置10,10′以外の基板処理装置についても適用可能である。この場合、流体圧支持装置17の具体的な構成や、下部ノズル32から噴出させる流体の種類等は、その基板処理装置に応じて適宜変更可能である。また、基板Sを搬送する搬送手段も、実施形態のようなローラコンベア16以外に、ベルトコンベア等を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る基板処理装置(第1の実施の形態)であるエッチング装置の概略を示す側面図である。
【図2】エッチング装置に適用される搬送手段の概略を示す平面図である。
【図3】搬送手段の概略を示す図2のIII−III線断面図である。
【図4】搬送手段(流体圧支持装置)の変形例を示す平面図である。
【図5】本発明に係る基板処理装置(第2の実施の形態)である現像装置の概略を示す側面図である。
【図6】搬送手段の変形例を示す平面図である。
【図7】エッチング装置の変形例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0075】
10 エッチング装置
10′ 現像装置
12 処理槽
16 ローラコンベア
17 流体圧支持装置
18,32 ノズル
21A 第1種搬送ローラ
21B 第2種搬送ローラ
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平姿勢で搬送される基板の上面に、処理液供給手段により処理液を供給することにより当該基板に処理を施す基板処理装置において、
前記基板のうち、その搬送方向と直交する方向である幅方向の両端部分であって、かつ所定のパターン形成領域よりも外側の領域を支持部材により支持した状態で前記基板を搬送する搬送手段と、
前記支持部材による基板の支持位置よりも幅方向内側の位置で前記処理液と同温度の流体を噴出することによりその流体圧により前記基板をその下側から支持する流体圧支持手段とを備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記流体圧支持手段は、前記基板に対し、少なくとも前記パターン形成領域における幅方向全体に亘って流体圧が作用するように前記流体を噴出することを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板処理装置において、
前記流体圧支持手段は、それぞれ前記流体を噴出し、かつ所定の配列で配備される複数の単位支持部を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置において、
前記単位支持部は、基板の搬送方向に所定間隔を隔てて複数並べて配備されており、前記搬送手段は、前記支持部材として基板の幅方向両端部分を支持する一対のローラをローラ軸により連結した複数の搬送ローラが基板の搬送方向に並設されてなるローラコンベアからなり、前記搬送ローラは、前記流体圧支持手段の各単位支持部の間にそれぞれ配備されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の基板処理装置において、
前記処理液供給手段は、基板の搬送方向に所定間隔を隔てて配備されており、前記流体圧支持手段は、前記処理液供給手段に対応する部分の流体の噴出圧力がそれ以外の部分の噴出圧力よりも高くなるように構成されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかに記載の基板処理装置において、
前記流体圧支持手段は、前記処理液供給手段よる処理液の供給位置よりも基板搬送方向における下流側に配備されていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の基板処理装置において、
前記流体圧支持手段は、水平面に多数の開口が形成された前記流体の噴出面をもつ箱形のノズルを有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の基板処理装置において、
前記流体圧支持手段は、前記流体として前記処理液と同種の処理液を噴出することを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れかに記載の基板処理装置において、
前記流体圧支持手段は、前記流体として気体を噴出することを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−117889(P2008−117889A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298758(P2006−298758)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】