説明

基板処理装置

【課題】基板の処理温度を急速に昇降温させることができる基板処理装置を提供する。
【解決手段】第2のプロセスモジュール50は、チャンバ29内に配置された載置台51を有し、載置台51は、ジャケット40、冷媒流入室53及び伝熱断熱切換室57を内部に有し、ジャケット40は、載置台51の内部上方のウエハWの載置面に配置され、このジャケット40はガス流入室52を内部に有し、このガス流入室52にはガス導入管42を介して高温ガス供給部45が接続され、冷媒流入室53には冷媒導入管54を介して冷媒供給部56が接続され、伝熱断熱切換室57はジャケット40と冷媒流入室53との間に配置され、この伝熱断熱切換室57には伝熱ガス導出入管58を介して伝熱ガス供給排気部59が接続されており、伝熱断熱切換室57には伝熱ガスが流入、真空排気される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置に関し、特に、基板を載置すると共に該載置した基板の処理温度を制御する載置台を備える基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)から半導体デバイスを製造する半導体デバイスの製造方法では、ウエハの表面に導電膜や絶縁膜を成膜するCVD(Chemical Vapor Deposition)等の成膜工程、成膜された導電膜や絶縁膜上に所望のパターンのフォトレジスト層を形成するリソグラフィ工程、及びフォトレジスト層をマスクとして用いて処理ガスから生成されたプラズマによって導電膜をゲート電極に成形し、或いは絶縁膜に配線溝やコンタクトホールを成形するエッチング工程が順次繰り返して実行される。
【0003】
例えば、或る半導体デバイスの製造方法では、ウエハ上に形成されたポリシリコン層をエッチングすることがある。この場合、ウエハ上に形成されたトレンチ(溝)の側面にはSiOを主成分とするデポジット膜が形成される。
【0004】
ところで、デポジット膜は半導体デバイスの不具合、例えば、導通不良の原因となるため、除去する必要がある。デポジット膜の除去方法として、ウエハにCOR(Chemical Oxide Removal)処理及びPHT(Post Heat Treatment)処理を施す基板処理方法が知られている。COR処理は、デポジット膜のSiOとガス分子を化学反応させて生成物を生成する処理であり、PHT処理は、COR処理が施されたウエハを加熱して、COR処理の化学反応によってウエハに生成された生成物を気化・昇華させて該ウエハから除去する処理である。
【0005】
このCOR処理及びPHT処理からなる基板処理方法を実行する基板処理装置として、化学反応処理装置と、該化学反応処理装置に接続された熱処理装置とを備える基板処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
一方、処理効率化、コスト削減の観点から1つの処理装置で化学反応処理と加熱処理とを行うことが検討されている。この場合、ウエハの処理温度は載置台の温度によって制御されるので、処理装置内のウエハを載置する載置台の温度を処理に応じて変更する必要がある。
【特許文献1】特開2005−39185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、載置台の温度を処理に応じて変更する場合、載置台の内部に載置台の温度を昇温させるヒータ及び降温させる冷媒流路を併設する必要がある。ヒータは熱容量が大きく、載置台の内部にヒータを設けることにより載置台の熱容量が大きくなる。このため、ヒータにより載置台の温度を昇温させることができるものの、急速に載置台の温度を昇温させることはできない。また、冷媒流路を通過させる冷媒は液体であるため高速度で冷媒流路を通過させることができない。このため、冷媒流路により載置台の温度を降温させることができるものの、急速に載置台の温度を降温させることができない。
【0008】
したがって、1つの処理装置内では、載置台の温度を処理に応じて急速に変更することができず、ウエハの処理温度を急速に昇降温させることができない。
【0009】
本発明の目的は、基板の処理温度を急速に昇降温させることができる基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の基板処理装置は、基板を載置すると共に該載置した基板の処理温度を制御する載置台を備える基板処理装置であって、前記載置台は前記基板の載置面に配置された温度制御装置と、冷媒が流入される冷媒流入室と、前記温度制御装置と前記冷媒流入室との間に配置され、伝熱ガスが流入、真空排気される伝熱断熱切換室とを有し、前記温度制御装置は高温ガスが流入されるガス流入室を内部に有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の基板処理装置は、請求項1記載の基板処理装置において、前記ガス流入室を画成する壁部を構成する材料はカーボン、アルミニウム、銅、真鍮、鉄、銀、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素のいずれか1つであることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の基板処理装置は、請求項2記載の基板処理装置において、前記壁部の肉厚は2mm以下であることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の基板処理装置は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記高温ガスは200℃以上の高温ガスであることを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項5記載の基板処理装置は、基板を載置すると共に該載置した基板の処理温度を制御する載置台を備える基板処理装置であって、前記載置台は前記基板の載置面に配置された温度制御装置を有し、前記温度制御装置は低温ガス又は高温ガスが流入されるガス流入室を内部に有することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の基板処理装置は、請求項5記載の基板処理装置において、前記ガス流入室を画成する壁部を構成する材料はカーボン、アルミニウム、銅、真鍮、鉄、銀、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素のいずれか1つであることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の基板処理装置は、請求項6記載の基板処理装置において、前記壁部の肉厚は2mm以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の基板処理装置は、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記低温ガスは−20℃以下のガスであり、前記高温ガスは200℃以上のガスであることを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の基板処理装置は、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の基板処理装置において、前記低温ガスは乾燥ガスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の基板処理装置によれば、内部に高温ガスが流入されるガス流入室を有し、且つ基板の載置面に配置された温度制御装置と、冷媒が流入される冷媒流入室との間に配置された伝熱断熱切換室に伝熱ガスが流入、真空排気される。伝熱断熱切換室に伝熱ガスが流入されることにより冷媒流入室に流入された冷媒の温度が温度制御装置へ伝熱され、該伝熱された冷媒の温度により温度制御装置の温度が急速に降温される。一方、伝熱断熱切換室の伝熱ガスが真空排気されることにより冷媒流入室に流入された冷媒の温度の温度制御装置への伝熱が遮断され、ガス流入室に流入された高温ガスの温度によって温度制御装置の温度が急速に昇温される。また、基板処理装置内の基板の温度は温度制御装置の温度によって制御される。したがって、1つの基板処理装置内で基板の処理温度を急速に昇降温させることができる。
【0020】
請求項2記載の基板処理装置及び請求項6記載の基板処理装置によれば、温度制御装置が内部に有するガス流入室を画成する壁部がカーボン、アルミニウム、銅、真鍮、鉄、銀、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素のいずれか1つ材料から構成される。カーボン、アルミニウム、銅、真鍮、鉄、銀、窒化アルミニウムや炭化ケイ素は熱伝導率が大きく且つ比熱容量が小さい物質である。したがって、温度制御装置の熱伝導性を高くすることができる。
【0021】
請求項3記載の基板処理装置及び請求項7記載の基板処理装置によれば、ガス流入室を画成する壁部の肉厚が2mm以下である。したがって、温度制御装置の質量を小さくすることができ、もって、温度制御装置の熱容量を確実に小さくすることができる。
【0022】
請求項4記載の基板処理装置によれば、ガス流入室に200℃以上の高温ガスが流入される。その結果、温度制御装置の温度を急速に昇温させることができ、もって、基板の処理温度を急速に昇温させることができる。
【0023】
請求項5記載の基板処理装置によれば、内部に低温ガス又は高温ガスが流入されるガス流入室を有する温度制御装置が基板の載置面に配置される。ガス流入室に低温ガスが流入されることにより該低温ガスの温度によって温度制御装置の温度が急速に降温される。一方、ガス流入室に高温ガスが流入されることにより該高温ガスの温度によって温度制御装置の温度が急速に昇温される。また、基板処理装置内の基板の温度は温度制御装置の温度によって制御される。したがって、1つの基板処理装置内で基板の処理温度を急速に昇降温させることができる。
【0024】
請求項8記載の基板処理装置によれば、ガス流入室に200℃以上の高温ガス又は−20℃以下の低温ガスが流入される。その結果、温度制御装置の温度を急速に昇降温させることができ、もって、基板の処理温度を急速に昇降温させることができる。
【0025】
請求項9記載の基板処理装置によれば、低温ガスとして乾燥ガスがガス流入室に流入される。したがって、低温ガスを効率よくガス流入室に流入することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置を備える基板処理システムについて説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態に係る基板処理装置を備える基板処理システムの構成を概略的に示す平面図である。
【0029】
図1において、基板処理システム10は、半導体デバイス用のウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)W(基板)にプラズマ処理を施す第1のプロセスシップ11と、該第1のプロセスシップ11と平行に配置され、第1のプロセスシップ11においてプラズマ処理が施されたウエハWに化学反応処理及び加熱処理を施す第2のプロセスシップ12と、第1のプロセスシップ11及び第2のプロセスシップ12がそれぞれ接続された矩形状の共通搬送室としてのローダーモジュール13とを備える。
【0030】
ローダーモジュール13には、上述した第1のプロセスシップ11及び第2のプロセスシップ12の他、25枚のウエハWを収容する容器としてのフープ(Front Opening Unified Pod)14がそれぞれ載置される3つのフープ載置台15と、フープ14から搬出されたウエハWの位置をプリアライメントするオリエンタ16とが接続されている。
【0031】
第1のプロセスシップ11及び第2のプロセスシップ12は、ローダーモジュール13の長手方向に沿う側壁に接続されると共にローダーモジュール13を挟んで3つのフープ載置台15と対向するように配置され、オリエンタ16はローダーモジュール13の長手方向に関する一端に配置される。
【0032】
ローダーモジュール13は、内部に配置された、ウエハWを搬送するスカラ型デュアルアームタイプの搬送アーム機構17と、各フープ載置台15に対応するように側壁に配置されたウエハWの投入口としての3つのロードポート18とを有する。搬送アーム機構17は、フープ載置台15に載置されたフープ14からウエハWをロードポート18経由で取り出し、該取り出したウエハWを第1のプロセスシップ11、第2のプロセスシップ12、オリエンタ16へ搬出入する。
【0033】
第1のプロセスシップ11は、ウエハWにプラズマ処理を施す第1のプロセスモジュール19と、該第1のプロセスモジュール19にウエハWを受け渡すリンク型シングルピックタイプの第1の搬送アーム20を内蔵する第1のロードロックモジュール21とを有する。
【0034】
第1のプロセスモジュール19は、円筒状の処理室容器(チャンバ)と、該チャンバ内に配置された上部電極及び下部電極(いずれも図示しない)とを有し、該上部電極及び下部電極の間の距離はウエハWにプラズマ処理としてのエッチング処理を施すための適切な間隔に設定されている。また、下部電極はウエハWをクーロン力等によってチャックするESC22をその頂部に有する。
【0035】
第1のプロセスモジュール19では、チャンバ内部に処理ガスを導入し、上部電極及び下部電極間に電界を発生させることによって導入された処理ガスをプラズマ化してイオン及びラジカルを発生させ、該イオン及びラジカルによってウエハWにエッチング処理を施す。
【0036】
第1のプロセスシップ11では、ローダーモジュール13の内部圧力は大気圧に維持される一方、第1のプロセスモジュール19の内部圧力は真空に維持される。そのため、第1のロードロックモジュール21は、第1のプロセスモジュール19との連結部に真空ゲートバルブ23を備えると共に、ローダーモジュール13との連結部に大気ゲートバルブ24を備えることによって、その内部圧力を調整可能な真空予備搬送室として構成される。
【0037】
第1のロードロックモジュール21の内部には、略中央部に第1の搬送アーム20が設置され、該第1の搬送アーム20より第1のプロセスモジュール19側に第1のバッファ25が設置され、第1の搬送アーム20よりローダーモジュール13側には第2のバッファ26が設置される。第1のバッファ25及び第2のバッファ26は、第1の搬送アーム20の先端部に配置されたウエハWを支持する支持部(ピック)27が移動する軌道上に配置され、エッチング処理済みのウエハWを一時的に支持部27の軌道の上方に待避させることにより、エッチング未処理のウエハWとエッチング処理済みのウエハWとの第1のプロセスモジュール19における円滑な入れ換えを可能とする。
【0038】
第2のプロセスシップ12は、ウエハWに化学反応処理及び加熱処理を施す第2のプロセスモジュール28(基板処理装置)と、該第2のプロセスモジュール28に真空ゲートバルブ29を介して接続され、且つ第2のプロセスモジュール28にウエハWを受け渡すリンク型シングルピックタイプの第2の搬送アーム30を内蔵する第2のロードロックモジュール31とを有する。
【0039】
図2は、図1における線I−Iに沿う断面図である。
【0040】
図2において、第2のプロセスモジュール28は、円筒状の処理室容器(チャンバ)29と、該チャンバ29内に配置され、ウエハWを載置すると共に該載置したウエハWの処理温度を制御する載置台30と、チャンバ29の上方において載置台30と対向するように配置されたシャワーヘッド31と、チャンバ29内のガス等を排気するTMP(Turbo Molecular Pump)32と、チャンバ29及びTMP32の間に配置され、チャンバ29内の圧力を制御する可変式バタフライバルブとしてのAPC(Adaptive Pressure Control)バルブ33とを有する。
【0041】
シャワーヘッド31は円板状の下層ガス供給部34及び円板状の上層ガス供給部35からなり、下層ガス供給部34に上層ガス供給部35が重ねられている。また、下層ガス供給部34及び上層ガス供給部35はそれぞれ第1のバッファ室36及び第2のバッファ室37を有する。第1のバッファ室36及び第2のバッファ室37はそれぞれガス通気孔38,39を介してチャンバ29内に連通する。
【0042】
シャワーヘッド31の下層ガス供給部34における第1のバッファ室36は不活性ガス供給系(図示しない)に接続されている。該不活性ガス供給系は第1のバッファ室36へ不活性ガス、例えばN(窒素)ガスを供給する。該供給されたNガスはガス通気孔38を介してチャンバ29内へ供給される。
【0043】
また、シャワーヘッド31の上層ガス供給部35における第2のバッファ室37はHF(弗化水素)ガス供給系(図示しない)に接続されている。該HFガス供給系は第2のバッファ室37へHFガスを供給する。該供給されたHFガスはガス通気孔39を介してチャンバ29内へ供給される。シャワーヘッド31の上層ガス供給部35はヒータ(図示しない)、例えば加熱素子を内蔵する。この加熱素子は、第2のバッファ室35内のHFガスの温度を制御する。
【0044】
載置台30の内部上方のウエハWの載置面には、ジャケット40(温度制御装置)が配置される。ジャケット40は熱伝導率が大きく且つ比熱容量が小さい物質、例えば、カーボン、アルミニウム、銅、真鍮、鉄、銀、窒化アルミニウムや炭化ケイ素等から形成されると共に質量が小さくなるように、具体的には肉厚が2mm以下に形成された壁部40aを有する。これにより、ジャケット40は熱伝導性が高く且つ熱容量が小さくなるように構成されている。なお、本実施の形態では、ジャケット40の熱伝導率が80W/m・K以上であるのが好ましい。
【0045】
また、ジャケット40は壁部40aによって画成され、低温ガス又は高温ガスが流入されるガス流入室41を内部に有しており、このガス流入室41にはガス導入管42とガス導出管43とが接続されている。ガス導入管42の上流には該ガス導入管42を介してガス流入室41内に、−20℃以下の低温ガスを高速供給する低温ガス供給部44、及び200℃以上の高温ガスを高速供給する高温ガス供給部45が接続されている。低温ガス供給部44内では、例えば超低温空気発生器(ボルテックスチューブ)を用いて−20℃以下の低温ガスを生成する。また、低温ガスとしてはNガス等の乾燥ガスを用いる。高温ガス供給部45内では、ガスを加熱することにより200℃以上の高温ガスを生成する。また、高温ガス供給部45内では、上記加熱されるガスとして、ボルテックスチューブを用いて低温ガスを生成した際に生成される高温ガスを用いてもよい。
【0046】
また、載置台30の内部上方には、ジャケット40を取り囲むように形成された断熱材46が配置される。該断熱材46はジャケット40から載置台30内部への熱伝導を抑える障壁として作用する。
【0047】
第2のプロセスモジュール28では、ウエハWに化学反応処理を施す際、低温ガス供給部44はガス流入室41内に上述した低温ガスを高速供給する。これにより、該高速供給された低温ガスの温度によってジャケット40の温度が急速に降温され、該急速に降温されたジャケット40の温度によってウエハWの温度が急速に降温され、ウエハWの処理温度が化学反応処理に適した低温に設定される。また、第2のプロセスモジュール28では、ウエハWに加熱処理を施す際、高温ガス供給部45はガス流入室41内に上述した高温ガスを高速供給する。これにより、該高速供給された高温ガスの温度によってジャケット40の温度が急速に昇温され、該急速に昇温されたジャケット40の温度によってウエハWの温度が急速に昇温され、ウエハWの処理温度が加熱処理に適した高温に設定される。
【0048】
図1に戻り、第2のロードロックモジュール31は、第2の搬送アーム30を内蔵する筐体状の搬送室(チャンバ)47を有する。また、ローダーモジュール13の内部圧力は大気圧に維持される一方、第2のプロセスモジュール28の内部圧力は大気圧以下に維持される。そのため、第2のロードロックモジュール31は、第2のプロセスモジュール28との連結部に真空ゲートバルブ61を備えると共に、ローダーモジュール13との連結部に大気ドアバルブ48を備えることによって、その内部圧力を調整可能な真空予備搬送室として構成される。
【0049】
また、基板処理システム10は、ローダーユニット13の長手方向に関する一端に配置されたオペレーションパネル49を備える。オペレーションパネル49は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)からなる表示部を有し、該表示部は基板処理システム10の各構成要素の動作状況を表示する。
【0050】
次に、本実施の形態に係る基板処理装置を備える基板処理システムが実行する基板処理について説明する。
【0051】
図3は、図1の基板処理システム10が実行する基板処理を示すフローチャートである。
【0052】
まず、ポリシリコン膜が均一に形成され、且つポリシリコン膜上にハードマスクが所定のパターンに従って形成されてポリシリコン膜を部分的に露出させるウエハWを準備する。そして、該ウエハWを第1のプロセスモジュール19のチャンバ内に搬入し、ESC22上に載置する。
【0053】
次いで、チャンバ内に処理ガスを導入し、上部電極及び下部電極間に電界を発生させることによって処理ガスをプラズマ化してイオン及びラジカルを発生させ、該イオン及びラジカルによって露出するポリシリコン膜にエッチング処理を施す(ステップS31)。このとき、ポリシリコン膜がエッチングされてビアホールやトレンチが形成され、該形成されたトレンチの側面にSiOBr層からなるデポジット層が形成される。なお、SiOBr層は、SiO層に似た性質を有する疑似SiO層である。
【0054】
次いで、ウエハWを第1のプロセスモジュール19のチャンバ内から搬出し、ローダーモジュール13を経由して第2のプロセスモジュール28のチャンバ29内に搬入する。このとき、ウエハWを載置台30上に載置する。
【0055】
次いで、チャンバ29内の圧力をAPCバルブ33等によって4000Pa(30Torr)以下の高圧に設定する。そして、低温ガス供給部44からガス流入室41内に−20℃以下の低温ガスを高速供給する(ステップS32)。これにより、該高速供給された−20℃以下の低温ガスの温度によってジャケット40の温度が急速に降温され、該急速に降温されたジャケット40の温度によってウエハWの温度が急速に、具体的には10秒以内で降温され、ウエハWの処理温度が10〜40℃に設定される。
【0056】
次いで、シャワーヘッド31の上層ガス供給部35からHFガスを流量3000SCCMでウエハWに向けて供給する(ステップS33)。ここで、ポリシリコン膜上に形成されたハードマスクはHFガスと化学的に反応して除去される。また、トレンチの側面に形成されたデポジット層はHFガスと化学的に反応して液状の生成物となる(化学反応処理)。具体的には、以下の化学反応を起こし、
SiO+6HF → HSiF+2H
デポジット層は液状の生成物(HSiF及びHO)となる。
【0057】
次いで、HFガスのチャンバ29内への供給を中止した後、高温ガス供給部45からガス流入室41内に200℃以上の高温ガスを高速供給する(ステップS34)。これにより、該高速供給された200℃以上の高温ガスの温度によってジャケット40の温度が急速に昇温され、該急速に昇温されたジャケット40の温度によってウエハWの温度が急速に、具体的には10秒以内で昇温され、ウエハWの処理温度が175〜200℃に設定される。ここで、上述した液状の生成物は加熱されることにより気化する(加熱処理)。具体的には、以下の化学反応を起こし、
SiF → SiF↑+2HF↑
O → HO↑
液状の生成物は四弗化珪素、弗化水素及び水蒸気となり気化する。
【0058】
次いで、シャワーヘッド31の下層ガス供給部34からチャンバ29内にパージガスとしてNガスを供給し(ステップS35)、上記気化したガスをチャンバ29内より排気する。
【0059】
次いで、ウエハWを第2のプロセスモジュール28のチャンバ29から搬出し、本処理を終了する。
【0060】
図3の処理によれば、低温ガス供給部44からガス流入室41内に−20℃以下の低温ガスが高速供給されることにより該低温ガスの温度によってジャケット40の温度が急速に降温される。一方、高温ガス供給部45からガス流入室41内に200℃以上の高温ガスが高速供給されることにより該高温ガスの温度によってジャケット40の温度が急速に昇温される。また、処理装置内のウエハWの温度はジャケット40の温度によって制御される。したがって、1つの処理装置内でウエハWの処理温度を急速に昇降温させることができ、もって、1つの処理装置内で化学反応処理と加熱処理とを迅速にウエハWに施すことができる。その結果、従来の基板処理装置における1つの処理装置を削減することができるので、処理効率化、コスト削減を実現することができる。
【0061】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置を備える基板処理システムについて説明する。
【0062】
本実施の形態は、その構成や作用が上述した第1の実施の形態と基本的に同じであり、第2のプロセスモジュールの載置台の構成が上述した第1の実施の形態と異なるのみである。したがって、同様の構成については説明を省略し、以下に第1の実施の形態と異なる構成や作用についてのみ説明を行う。
【0063】
図4は、本実施の形態における第2のプロセスモジュールの断面図である。
【0064】
図4において、第2のプロセスモジュール50(基板処理装置)は、チャンバ29内に配置され、ウエハWを載置すると共に該載置したウエハWの処理温度を制御する載置台51を有する。
【0065】
載置台51の内部上方のウエハWの載置面には、第1の実施の形態と同様のジャケット40が配置される。ジャケット40のガス流入室52にはガス導入管42とガス導出管43とが接続されている。ガス導入管42の上流には該ガス導入管42を介してガス流入室52内に200℃以上の高温ガスを高速供給する高温ガス供給部45が接続されている。
【0066】
また、載置台51は冷媒が流入される冷媒流入室53を内部に有しており、この冷媒流入室53には冷媒導入管54と冷媒導出管55とが接続されている。冷媒導入管54の上流には該冷媒導入管54を介して冷媒流入室53内に所定温度の冷媒、例えば、冷却水やガルデン液を常時、供給する冷媒供給部56が接続されている。
【0067】
また、載置台51はジャケット40と冷媒流入室53との間に配置され、伝熱ガスが流入、真空排気される伝熱断熱切換室57を内部に有しており、この伝熱断熱切換室57には伝熱ガス導出入管58が接続されている。伝熱ガス導出入管58の上流には該伝熱ガス導出入管58を介して、伝熱断熱切換室57内に伝熱ガスを供給し、或いは伝熱断熱切換室57内の伝熱ガスを真空排気する伝熱ガス供給排気部59が接続されている。
【0068】
また、載置台51の内部上方には、ジャケット40、伝熱断熱切換室57及び冷媒流入室53を取り囲むように形成された断熱材60が配置される。該断熱材60はジャケット40、伝熱断熱切換室57及び冷媒流入室53から載置台51内部への熱伝導を抑える障壁として作用する。
【0069】
第2のプロセスモジュール50では、ウエハWに化学反応処理を施す際、伝熱ガス供給排気部59は伝熱断熱切換室57内に伝熱ガスを供給し、該供給された伝熱ガスが冷媒流入室53内に供給された冷媒の温度をジャケット40へ伝熱する。これにより、冷媒の温度によってジャケット40の温度が急速に降温され、該急速に降温されたジャケット40の温度によってウエハWの温度が急速に降温され、ウエハWの処理温度が化学反応処理に適した低温に設定される。また、第2のプロセスモジュール50では、ウエハWに加熱処理を施す際、伝熱ガス供給排気部59は伝熱断熱切換室57内の伝熱ガスを真空排気する。これにより、冷媒流入室53内に供給された冷媒の温度のジャケット40への伝熱が遮断される。また、このとき、高温ガス供給部45はガス流入室52内に200℃以上の高温ガスを高速供給する。これにより、該高速供給された高温ガスの温度によってジャケット40の温度が急速に昇温され、該急速に昇温されたジャケット40の温度によってウエハWの温度が急速に昇温され、ウエハWの処理温度が加熱処理に適した高温に設定される。
【0070】
なお、本実施の形態では、ガス導入管42の上流に該ガス導入管42を介してガス流入室52内に−20℃以下の低温ガスを高速供給する低温ガス供給部を接続させ、ウエハWに化学反応処理を施す際に、ジャケット40への伝熱を遮断するだけでなく、低温ガス供給部からガス流入室52内に低温ガスを高速供給させて、さらにジャケット40の温度を急速に降温させてもよい。
【0071】
次に、本実施の形態に係る基板処理装置を備える基板処理システムが実行する基板処理について説明する。
【0072】
図5は、本実施の形態に係る基板処理装置を備える基板処理システムが実行する基板処理を示すフローチャートである。
【0073】
図5の処理は、図3の処理と基本的に同じであり、図3のステップと同一のステップには同一符号を付して重複した説明を省略し、以下に図3の処理と異なる部分についてのみ説明する。
【0074】
まず、図3の処理におけるステップS31を実行する。次いで、ウエハWを第1のプロセスモジュール19のチャンバ内から搬出し、ローダーモジュール13を経由して第2のプロセスモジュール50のチャンバ29内に搬入する。このとき、ウエハWを載置台51上に載置する。
【0075】
次いで、チャンバ29内の圧力をAPCバルブ33等によって4000Pa(30Torr)以下の高圧に設定する。そして、伝熱ガス供給排気部59から伝熱断熱切換室57内に伝熱ガスを供給し(ステップS51)、該供給された伝熱ガスが冷媒流入室53内に供給された冷媒の温度をジャケット40へ伝熱する。これにより、冷媒の温度によってジャケット40の温度が急速に降温され、該急速に降温されたジャケット40の温度によってウエハWの温度が急速に、具体的には10秒以内で降温され、ウエハWの処理温度が10〜40℃に設定される。
【0076】
次いで、図3の処理におけるステップS33を実行し、HFガスのチャンバ29内への供給を中止した後、伝熱ガス供給排気部59は伝熱断熱切換室57内の伝熱ガスを真空排気し(ステップS52)、冷媒流入室53内に供給された冷媒の温度のジャケット40への伝熱を遮断する。また、高温ガス供給部45はガス流入室52内に200℃以上の高温ガスを高速供給する(ステップS53)。これにより、該高速供給された200℃以上の高温ガスの温度によってジャケット40の温度が急速に昇温され、該急速に昇温されたジャケット40の温度によってウエハWの温度が急速に、具体的には10秒以内で昇温され、ウエハWの処理温度が175〜200℃に設定される。
【0077】
次いで、図3の処理におけるステップS35を実行し、ウエハWを第2のプロセスモジュール50のチャンバ29から搬出し、本処理を終了する。
【0078】
図5の処理によれば、伝熱ガス供給排気部59から伝熱断熱切換室57内に伝熱ガスが供給されることにより冷媒流入室53内に供給された冷媒の温度がジャケット40へ伝熱され、該伝熱された冷媒の温度によりジャケット40の温度が急速に降温される。一方、伝熱ガス供給排気部59により伝熱断熱切換室57内の伝熱ガスが真空排気されることにより冷媒流入室53内に供給された冷媒の温度のジャケット40への伝熱が遮断されてから、高温ガス供給部45によりガス流入室52内に200℃以上の高温ガスが高速供給され、該高温ガスの温度によってジャケット40の温度が急速に昇温される。また、処理装置内のウエハWの温度はジャケット40の温度によって制御される。したがって、上述した第1の実施の形態と同様の効果を実現することができる。
【0079】
上述した各実施の形態における基板処理は、ウエハの温度を降温させた後に昇温させる処理であったが、本発明は、ウエハに施す処理に応じて、ウエハの温度を昇温させた後に降温させる処理にも適用することができる。
【0080】
また、上述した各実施の形態に係る基板処理装置を備える基板処理システムとして、2つのプロセスシップが平行に配置されたものについて説明したが、基板処理システムの構成はこれに限られない。具体的には、複数のプロセスモジュールがタンデムに配置されたものやクラスター状に配置されたものであってもよい。
【0081】
また、化学反応処理や加熱処理が施される基板は半導体デバイス用のウエハに限られず、LCDやFPD(Flat Panel Display)等に用いる各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る基板処理装置を備える基板処理システムの構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図1における線I−Iに沿う断面図である。
【図3】図1の基板処理システムが実行する基板処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施の形態における第2のプロセスモジュールの断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る基板処理装置を備える基板処理システムが実行する基板処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
W ウエハ
10 基板処理システム
28,50 第2のプロセスモジュール
30,51 載置台
40 ジャケット
40a 壁部
41,52 ガス流入室
44 低温ガス供給部
45 高温ガス供給部
46,60 断熱材
53 冷媒流入室
56 冷媒供給部
57 伝熱断熱切換室
59 伝熱ガス供給排気部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置すると共に該載置した基板の処理温度を制御する載置台を備える基板処理装置であって、
前記載置台は前記基板の載置面に配置された温度制御装置と、冷媒が流入される冷媒流入室と、前記温度制御装置と前記冷媒流入室との間に配置され、伝熱ガスが流入、真空排気される伝熱断熱切換室とを有し、
前記温度制御装置は高温ガスが流入されるガス流入室を内部に有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記ガス流入室を画成する壁部を構成する材料はカーボン、アルミニウム、銅、真鍮、鉄、銀、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素のいずれか1つであることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記壁部の肉厚は2mm以下であることを特徴とする請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記高温ガスは200℃以上の高温ガスであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板を載置すると共に該載置した基板の処理温度を制御する載置台を備える基板処理装置であって、
前記載置台は前記基板の載置面に配置された温度制御装置を有し、
前記温度制御装置は低温ガス又は高温ガスが流入されるガス流入室を内部に有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
前記ガス流入室を画成する壁部を構成する材料はカーボン、アルミニウム、銅、真鍮、鉄、銀、窒化アルミニウム及び炭化ケイ素のいずれか1つであることを特徴とする請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記壁部の肉厚は2mm以下であることを特徴とする請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記低温ガスは−20℃以下のガスであり、前記高温ガスは200℃以上のガスであることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記低温ガスは乾燥ガスであることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−192643(P2008−192643A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22331(P2007−22331)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】