説明

基板処理装置

【課題】所定の液供給地点に基板が到達する以前に、ミスト状の処理液が基板に付着することを抑制し、これによって基板の品質向上を図る。
【解決手段】基板処理装置1は、処理室10を備え、この処理室10内で基板Sを搬送しながら当該基板Sにリンス液を供給して洗浄処理を施すように構成される。処理室10内には、搬入されてきた基板Sの上面全幅に亘って搬送方向上流側から下流側に向かって垂直方向に対して斜め方向にリンス液を吐出する液ナイフ16と、当該液ナイフ16から吐出されるリンス液の軌道よりも上流側の位置であって、かつ基板Sの搬送経路の下方に配置され、前記搬送方向上流側へのミスト状処理液の拡散を防止する遮蔽板17とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD、PDP用ガラス基板および半導体基板等の基板に処理液を供給して各種処理を施す基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板を搬送しながらその表面に各種処理液を供給することにより所定のプロセス処理を基板に施すことが行われており、例えば特許文献1には、薬液処理後の基板を処理槽内で搬送しながら、液ナイフおよびシャワーノズルにより順次基板に洗浄液を供給して洗浄処理を施すものが開示されている。この装置では、搬入されて来る基板に対し、まず液ナイフにより搬送方向上流側から下流側に向かって斜め方向に帯状(基板搬送方向と直交する方向に沿って幅を有する状態)の洗浄液を吐出させ、これにより基板の先端側から順に、薬液反応を迅速に、かつ基板の幅方向に均一に終息させ、その後、シャワーノズルから吐出される洗浄液により基板に仕上げ洗浄を施す構成となっている。
【0003】
また、特許文献2には、上記装置に類似する装置として、まず、液ナイフにより帯状の洗浄液を吐出させ、基板の先端側から順に、かつ基板の幅方向に均一に洗浄液の薄膜(保護膜)を形成し、その後、高圧ノズルから吐出される洗浄液により基板に洗浄処理を施すものが開示されている。この装置では、高圧ノズルの噴圧が前記薄膜形成に影響を与えないように、液ナイフの配設領域が遮蔽体で被われた構成となっている。
【特許文献1】特開2004−273984号公報
【特許文献2】特開2004−273743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような従来装置では、通常、液ノズルから洗浄液を吐出させておき、この状態で基板を処理槽内に搬入して洗浄処理を基板に施す。ところが、液ノズルから洗浄液を吐出させると、搬送ローラや処理槽内底部への洗浄液の衝突によってミスト(ミスト状の洗浄液)が発生し、次のような不都合を招くことが考えられる。
【0005】
すなわち、ミストが基板の搬入口側へも拡散し、液ナイフによる洗浄液の供給地点よりも上流側で、基板にミストが付着することが考えられる。このような場合には、本来の処理開始位置(洗浄液の供給地点)よりも上流側で薬液の一部が早期に置換されるため、基板面内での薬液反応時間の均一性が損なわれるおそれがある。従って、このような不都合を未然に回避することが求められる。なお、特許文献2の構成も、遮蔽体の内側で発生したミストが洗浄液の供給地点よりも上流側に拡散して基板に付着し得るため、事情は同じである。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、所定の液供給地点に到達する以前に、ミスト状の処理液が基板に付着することを抑制し、これによって基板の品質向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、搬入された基板を搬出口へ向かわせる搬送経路を有する処理槽を備え、この処理槽内で基板を搬送しながら当該基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理装置において、前記処理槽の搬入側に設けられ、搬入されてきた基板の上面全幅に亘って搬送方向上流側から下流側に向かって垂直方向に対して斜め方向に処理液を吐出するノズル部材と、前記ノズル部材から吐出される処理液の軌道よりも搬送方向上流側の位置であって、かつ前記搬送経路の下方に配置され、搬送方向上流側へのミスト状処理液の拡散を防止する遮蔽板と、を備えているものである。より具体的に、前記遮蔽板は、前記処理槽の内底部に立設され、その先端が前記搬送経路における処理液の供給地点近傍に位置するように設けられているものである。
【0008】
このような構成によれば、液ノズルから吐出された処理液が処理槽内底部に衝突する等してミスト(ミスト状の処理液)が発生しても、遮蔽板により基板搬送方向上流側へのミストの拡散が効果的に防止される。従って、基板の搬送経路のうち処理液の供給地点よりも上流側部分へのミストの拡散を抑えることができ、前記供給地点に到達する前の基板に対するミストの付着を軽減することが可能となる。
【0009】
上記装置においては、前記ノズル部材と前記遮蔽板先端との隙間部分を通じてミスト状処理液が前記搬送方向上流側に拡散するのを防止する隙間遮蔽手段をさらに備えているのが好適である。
【0010】
この構成によれば、上流側のミストの拡散をより確実に防止して、基板に対するミストの付着をより効果的に軽減することができる。
【0011】
より具体的には、前記隙間遮蔽手段は、前記ノズル部材と前記遮蔽板先端との隙間部分に、前記搬送方向上流側から下流側に向かう気流を形成する気流形成手段である。
【0012】
この構成によれば、ノズル部材と遮蔽板の先端との間に形成される気流によって上流側のミストの拡散が阻止される。
【0013】
なお、気流形成手段は、上記の気流を生成できれば種々の構成を適用可能であり、例えば気体の噴射手段を含み、前記遮蔽板よりも前記搬送方向上流側において前記噴射手段から気体を噴出させることにより前記気流を生成するものでもよいし、若しくは処理槽内の雰囲気を、前記遮蔽板よりも前記搬送方向下流側において吸引する吸引手段を含み、前記ノズル部材から吐出される処理液と前記遮蔽板とにより囲まれた空間内の雰囲気を前記吸引手段により吸引することにより前記気流を生成するものでもよい。
【0014】
また、別の構成として、前記隙間遮蔽手段は、前記遮蔽板に昇降可能に設けられる昇降板と、この昇降板を駆動制御する制御手段とを有し、前記昇降板は、その先端が前記ノズル部材から吐出される処理液の軌道の下方であって、かつ前記搬送経路に沿って搬送される基板の上面よりも上方に位置する上昇位置と前記先端が搬送経路よりも下方に位置する下降位置とに亘って昇降可能に構成され、前記制御手段は、前記処理槽への基板の非搬入時には前記昇降板を上昇位置に配置し、搬入時には前記昇降板を下降位置に配置すべく前記昇降板を駆動制御するように構成されているものであってもよい。
【0015】
この構成は、ノズル部材と前記遮蔽板先端との隙間部分を昇降板によって開閉するように構成したものである。この構成によれば、基板の非搬入時に、ノズル部材からリンス液が吐出されている状態で昇降板が上昇位置に配置されると、リンス液と昇降板とが協働して上記隙間部分を塞ぐこととなり、これによって上記気流形成手段を設ける場合と同様に、前記隙間部分から上流側へのミストの拡散が阻止される。
【0016】
なお、上記の基板処理装置においては、前記基板搬送方向における前記ノズル部材から上流側の部分において前記基板搬送路をその上方から被うカバー部材を備えているのがより好適である。
【0017】
この構成によれば、ノズル部材の上方を回り込んで基板搬送方向上流側にミストが拡散した場合に、当該ミストが基板に付着することを防止することができる。従って、基板に対するミストの付着をより効果的に軽減することができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜8に係る基板処理装置によると、ノズル部材から吐出された処理液が処理槽内底部に衝突することにより発生したミスト(ミスト状の処理液)が、所定の処理液供給地点に到達する以前の基板に付着することを効果的に軽減することができる。従って、このようなミストの付着を軽減できる分、基板の品質向上を図ることができる。特に、請求項3〜7に係る基板処理装置の構成によれば、ノズル部材から吐出される処理液と遮蔽板の先端部との間を通って上流側へミストが拡散することを効果的に阻止することができ、従って、上記のような基板へのミストの付着をより効果的に軽減することができる。また、請求項8に係る基板処理装置の構成によれば、ノズル部材の上方を回り込んで基板搬送方向上流側にミストが拡散した場合に、当該ミストが基板に付着することを防止することができる。従って、より一層効果的に基板へのミストの付着を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0020】
< 第1の実施の形態 >
図1は、本発明に係る基板処理装置を断面図で概略的に示している。この図に示す基板処理装置1は、基板Sを図中の矢印方向に水平姿勢で搬送しながら、前工程で薬液処理(例えばエッチング処理)が施された当該基板Sに対して洗浄処理を施すものである。
【0021】
基板処理装置1は、同図に示すように略密閉された処理室10(本発明に係る処理槽に相当する)を有している。この処理室10には、複数の搬送ローラ14が所定間隔で配備されており、これら搬送ローラ14によって構成される搬送経路に沿って基板Sが水平姿勢で搬送されるようになっている。
【0022】
なお、図中符号12aは、処理室10の側壁に形成される基板Sの搬入口を示し、符号12bは、同搬出口を示している。また、符号13aは、搬入口12aを開閉する搬入口側シャッタを示し、符号13bは搬出口12bを開閉する搬出口側シャッタを示している。これらのシャッタ13a,13bは、処理室10の側壁に沿って昇降可能に設けられており、モータにより開閉駆動されるように構成されている。
【0023】
処理室10の内部には、基板Sに対してリンス液(当例では純水;本発明の処理液に相当する)を供給するための2種類の液ノズルが配備されている。具体的には、搬入口12aの直ぐ近傍に液ナイフ16(本発明に係る液ノズル部材に相当する)が配備され、この液ナイフ16の下流側(同図では右側)にシャワーノズル18a,18bが配備されている。
【0024】
前記液ナイフ16は、処理室10の搬入口側壁面に突設された取付板15に固定されている。液ナイフ16は、基板Sの搬送経路の幅方向(基板Sの搬送方向と直交する方向;同図では紙面に直交する方向)に細長で、かつ、その長手方向に連続的に延びる細長の吐出口をもつ所謂スリットノズルからなり、吐出口を斜め下向きにした状態で搬送ローラ14の上部に配置されている。これによって、液ナイフ16から基板Sに対して、その搬送方向上流側から下流側に向かって垂直方向に対して斜め下向きに帯状(搬送方向と直交する方向に沿って幅を有する状態)にリンス液を吐出する構成となっている。
【0025】
なお、液ナイフ16が固定される前記取付板15は、ミスト状のリンス液(以下、ミストという)が基板S上に飛散するのを防止するためのカバー部材を兼ねており、基板Sの搬送方向における液ナイフ16の位置から前記搬入口側の壁面に亘る部分において基板Sの搬送経路をその上方から被っている。取付板15の上流側端部および幅方向端部は、それぞれ処理室10の側壁に隙間無く接合されている。
【0026】
一方、前記シャワーノズル18a,18bは、搬送ローラ14を挟んで上下両側に配置されており、例えばマトリクス状に配備されたノズル口からそれぞれ液滴状にリンス液を吐出して基板Sに吹き付ける構成となっている。
【0027】
なお、リンス液は、同図に示すように処理室10の下方に配置されたタンク20に貯溜されており、ポンプ22の作動により導出管24を通じてタンク20から導出され、この導出管24から分岐する供給管26〜28を通じてそれぞれ液ナイフ16および各シャワーノズル18a,18bに供給される構成となっている。各供給管26〜28にはそれぞれ、開閉バルブV1〜V3が介設されており、これら開閉バルブV1〜V3の操作により液ナイフ16等によるリンス液の供給・停止、あるいは供給量が制御される。
【0028】
処理室10の内底部には、漏斗状の回収パン(図示省略)が設けられており、使用済みのリンス液がこの回収パンにより収集されながら回収管30を通じて前記タンク20に戻されるようになっている。つまり、この基板処理装置1では、タンク20と液ナイフ16等との間でリンス液を循環させながら繰り返し使用するようにリンス液の給排系統が構成されている。
【0029】
前記処理室10には、さらにその内底部に、ミストの上流側への拡散を阻止するための遮蔽板17が設けられる共に、この遮蔽板17の上流側にエアノズル32(本発明に係る噴射手段に相当する)が配置されている。
【0030】
遮蔽板17は、図2(a)に示すように、基板Sの非搬送状態において液ナイフ16から吐出されるリンス液の軌道よりも上流側の位置であって、基板Sの搬送経路(以下、単に搬送経路という)上における基板Sに対するリンス液の供給地点P(図2(b)参照)の下方に設けられている。この遮蔽板17は、処理室10の内底面から垂直方向に沿って真っ直ぐに延び、その先端(上端)が、搬送経路に沿って搬送される基板Sの下方に近接するように形成されている。
【0031】
遮蔽板17の幅方向両端は、それぞれ処理室10の側壁に接合されており、これによって処理室10内の空間が、前記取付板15、液ナイフ16、遮蔽板17及び処理室10の側壁によって囲まれた前記搬入口12aを含む上流側端の空間Spとその下流側の空間とに仕切られ、基板Sが、液ナイフ16と前記遮蔽板17の先端(上端)との間を通じて搬送される構成となっている。
【0032】
前記エアノズル32は、遮蔽板17の近傍であって、かつ処理室10の内底面近傍に配置されている。このエアノズル32は、幅方向に延びる細長で、かつ、その長手方向に複数の円形の吐出口が並んだスプレーノズル、又は長手方向に連続的(又は断続的)に延びる細長の吐出口をもつスリットノズルからなり、遮蔽板17側から処理室10の搬入口12a側の壁面に向けて斜め上向きに所定圧のエアを噴射するように構成されている。
【0033】
このエアノズル32は、図1に示すように、エア供給管34を介してエア供給源36に接続されており、エア供給管34に介設される開閉バルブV4の操作によりエアの噴射・停止が制御されるように構成されている。
【0034】
なお、この基板処理装置1には、CPU等を構成要素とするコントローラ(本発明の制御手段に相当する)が設けられており、搬送ローラ14の駆動、シャッタ13a,13bの開閉切換え及び開閉バルブV1〜V4の切換え等がこのコントローラにより統括的に制御されるように構成されている。そして、この装置1には、図1に示すように、処理室10外の前記搬入口12aよりもやや上流側と、処理室10内の前記搬出口12bの近傍とにそれぞれ基板Sを検知するセンサ(第1センサ42,第2センサ44という)が配置されおり、コントローラは、これらセンサ42,44による基板Sの検知に基づきシャッタ13a,13b及び開閉バルブV1〜V4等を開閉制御するように構成されている。
【0035】
次に、基板処理装置1による基板Sの洗浄処理についてその作用効果と共に説明する。
【0036】
この基板処理装置では、第1センサ42により基板Sが検出されるまでは、各開閉バルブV1〜V4が閉止(OFF)され、従って、液ナイフ16及びシャワーノズル18a,18bによるリンス液の供給は停止されている。これに対して開閉バルブV4は開放(ON)されている。従って、エアノズル32からは所定圧のエアが噴射されており、これによって処理室10内では、図2(a)に示すように、遮蔽板17等により仕切られた上記空間Sp内においてエアが対流しつつこのエアが液ナイフ16と遮蔽板17の先端との間に形成される隙間部分Osを通じて下流側へ流動している。つまり、上記空間Spから上記隙間部分Osを通じて下流側に向かうエア流(気流Aという)が形成されている。
【0037】
そして、基板Sが搬送され、その先端が第1センサ42により検出されると、開閉バルブV1〜V3が閉止(OFF)から開放(ON)に切換えられ、これにより液ナイフ16およびシャワーノズル18a,18bからのリンス液の吐出が開始される。
【0038】
このように各ノズル16,18a,18bからリンス液が吐出されると、処理室10内にミストが発生し、基板Sがリンス液の供給地点Pに到達する前に基板Sにミストが付着することが懸念されるが、この装置1では、そのような不都合が良好に回避される。
【0039】
すなわち、この装置1では、基板Sの搬送経路上方のうち供給地点Pよりも上流側の部分の大半が取付板15等により被われており、さらに液ナイフ16からリンス液が吐出されると、図2(a)に示すように、当該液ナイフ16から供給地点Pとの間に液カーテンが形成されている。そのため、同図中に符号M1を付して示すように、リンス液の供給地点Pよりも上流側への搬送経路上方からのミストの拡散が有効に防止される。
【0040】
また、搬送経路の下方においては、上記のように供給地点Pの下方に遮蔽板17が設けられているため、処理室内底面で発生したミストが供給地点Pよりも上流側へ拡散することが防止される。しかも、エアノズル32からエアが噴射され、液ナイフ16と遮蔽板17との隙間部分Osに、上記空間Spから下流側に向かう気流Aが形成されている結果、当該隙間部分Osを通じた上流側へのミストの拡散も阻止されることとなる。具体的には、同図中に符号M2を付して示すように、処理室内底面から遮蔽板17に沿って巻き上がったミストや搬送ローラ14の衝突により供給地点Pの近傍で発生したミストが上記隙間部分Osを通じて上流側に拡散することが有効に防止されることとなる。従って、供給地点Pに基板Sが到達する以前に、当該基板Sにミストが付着するといった不都合が防止される。
【0041】
そして、搬入口側シャッタ13aが開かれ、基板Sが処理室10内に搬入されて供給地点Pに達すると、液ナイフ16から吐出されるリンス液が、基板Sの搬送に伴いその先端側から順に幅方向全体に亘って供給され、これによって薬液反応が迅速に、かつ基板Sの幅方向に均一に終息することとなる。
【0042】
なお、このように基板Sが供給地点Pを通過する最中、基板Sにおける当該供給地点Pより上流側の部分は、取付板15等によりその上方から被われており、又液ナイフ16と基板Sとの間には液カーテンが形成されている。また、基板Sの下方においては、図2(b)に示すように、エアノズル32から噴射されるエアにより基板Sの下面に沿って上流側から下流側に向かう気流Aが形成される結果、供給地点Pより上流側へのミストの拡散が防止される。従って、基板Sのうち供給地点Pよりも上流側に対するミストの付着が有効に防止されることとなる。
【0043】
そして、基板Sが液ナイフ16の位置を通過すると、次いでシャワーノズル18a,18bから吐出される大量のリンス液が基板Sの上面および下面に対して供給され、これにより基板Sが仕上げ洗浄される。そしてさらに基板Sが搬送され、第2センサ44により基板Sの先端が検知されると、開閉バルブV1が開放(ON)から閉止(OFF)に切換えられ、これにより液ナイフ16からのリンス液の吐出が停止し、さらに、基板Sの後端が第2センサ44により検知されると、開閉バルブV2,V3がそれぞれ開放(ON)から閉止(OFF)に切換えられ、これによりシャワーノズル18a,18bからのリンス液の吐出が停止する。以上により、基板Sの一連の洗浄処理が終了する。
【0044】
このように、上記の基板処理装置1では、液ナイフ16によるリンス液の供給地点Pに基板Sが到達する前に、当該基板Sにミストが付着することを有効に防止することができる。従って、このようなミスト付着による不都合、つまり供給地点Pに基板Sが到達する以前に、それよりも上流側の位置で基板Sにミストが付着することによって薬液反応が部分的に早期に終息し、その結果、薬液処理の均一性が損なわれるといった事態が生じるのを有効に防止することができる。従って、このような事態を回避できる分、基板Sに対して薬液処理をより均一に施すことが可能となり、基板の品質を一層高めることができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、処理室10の内底面の近傍にエアノズル32を配置し、遮蔽板17側から処理室10の搬入口側の壁面に向けて斜め上向きにエアを噴射させるように構成されているが、図3に示すように、エアノズル32を搬入口12aの上方に配置し、液ナイフ16と遮蔽板17との間に向けて直接エアノズル32から所定圧のエアを噴射させることにより上記気流Aを形成するように構成してもよい。この構成によれば、エアの圧力損失を抑えることができ、前記空間Spへのミストの侵入をより効果的に防止することが可能になるという利点がある。
【0046】
< 第2の実施の形態 >
図4は、第2の実施形態に係る基板処理装置1の要部を断面図で概略的に示している。
【0047】
第2の実施形態の基板処理装置1は、前記エアノズル32の代わりに吸引ノズル40(本発明に係る吸引手段に相当する)が設けられている点で第1の実施形態と構成が相違している。すなわち、同図に示すように、遮蔽板17の下流側であって、かつ液ナイフ16から吐出されるリンス液の軌道より上流側の位置には吸引ノズル40が配置されている。
【0048】
吸引ノズル40は、幅方向に延びる細長で、かつその長手方向に複数の円形の吸引口が並んだノズルである。この吸引ノズル40は、図外の吸引用配管及び開閉バルブを介して負圧発生源に接続されており、前記コントローラによる開閉バルブの制御に応じて吸引状態と吸引停止状態とに切換えられるように構成されている。
【0049】
第2の実施形態の基板処理装置1では、液ナイフ16等からのリンス液の吐出開始に同期して吸引ノズル40による処理室10内の吸引が開始される。つまり、液ナイフ16から吐出されるリンス液と遮蔽板17との間に形成される空間内の雰囲気を吸引することにより、当該空間内のミストを排気すると共に、この吸引に伴い液ナイフ16と遮蔽板17との上記隙間部分Osに、上記空間Sp内から下流側に向かう気流Aを形成させることにより、隙間部分Osを通じた上流側へのミストの拡散を防止するように構成されている。
【0050】
このような第2の構成においても、上記供給地点Pよりも上流側に対するミストの拡散を防止することができ、従って、供給地点Pに基板Sが到達する以前に、基板Sにミストが付着することを防止するという、第1の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0051】
つまり、第1の実施形態と第2の実施形態とは、本発明に係る隙間遮蔽手段として、共に上記隙間部分Osに上流側から下流側に向かう気流Aを形成する気流形成手段を有する点で構成が共通するが、第1の実施形態では、エアノズル32からのエアの噴射により気流Aを形成するように気流形成手段が構成されているのに対して、第2の実施形態では、吸引ノズル40による雰囲気の吸引により気流Aを形成するように気流形成手段が構成されている。
【0052】
< 第3の実施の形態 >
図5は、第3の実施形態に係る基板処理装置1の要部を断面図で概略的に示している。
【0053】
第3の実施形態の基板処理装置1は、前記エアノズル32の代わりにシャッタ41(本発明に係る昇降板に相当する)が設けられている点で第1の実施形態と構成が相違する。
【0054】
シャッタ41は、液ナイフ16と遮蔽板17との上記隙間部分Osを略式的に開閉するものである。このシャッタ41は、上記遮蔽板17の上流側の面に昇降可能に設けられており、図外のモータにより昇降駆動されるように構成されると共に、前記コントローラにより開閉制御されるように構成されている。
【0055】
シャッタ41は、その上端(先端)が液ナイフ16から吐出される処理液の軌道の下方であって、かつ搬送経路に沿って搬送される基板Sの上面よりも上方に位置する位置(上昇位置;同図の実線位置)と、上端が搬送経路よりも下方、具体的には遮蔽板17の上端と略等しくなる高さに位置(下降位置;同図の一点鎖線位置)とに亘って昇降可能に構成されている。すなわち、液ナイフ16からリンス液が吐出されている状態でシャッタ41を上昇位置に配置することにより、液ナイフ16から吐出されるリンス液(液カーテン)と当該シャッタ41とが協働して液ナイフ16と遮蔽板17との上記隙間部分Osを閉止するようになっている。つまり、この実施形態では、上記遮蔽板17等により本発明に係る隙間遮蔽手段が構成されている。
【0056】
この第3の実施形態の基板処理装置1では、液ナイフ16等からのリンス液の吐出開始後、基板Sが搬入されるまでの間、シャッタ41が上昇位置に配置され、液ナイフ16と遮蔽板17との隙間部分Osが上記の通りシャッタ41により閉止される。これによって当該隙間部分Osを通じた上流側(空間Sp)へのミストの拡散が防止されることとなる。
【0057】
従って、このような第2の構成においても、上記供給地点Pよりも上流側に対するミストの拡散を抑制することができ、供給地点Pに基板Sが到達する以前に、基板Sにミストが付着するという不都合を効果的に防止することができる。
【0058】
なお、基板Sが処理室10内に搬入されて来ると、シャッタ41は下降位置に配置され、これによって基板Sの搬送が難なく行われることとなる。
【0059】
ところで、上述した各基板処理装置1は、本発明に係る基板処理装置の好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0060】
例えば、遮蔽板17の具体的な構成は、上流側へのミストの拡散を防止することができればその具体的な形状等は上記実施形態に限定されるものでない。例えば、実施形態では、遮蔽板17の幅方向両側は処理室10の側壁に隙間無く接合されているが、基板Sの処理への影響が少ない場合には、遮蔽板17の幅方向両側と処理室10の側壁との間に多少の隙間が形成される構成であってもよい。この点は、取付板15についても同じである。
【0061】
また、上記実施形態では、遮蔽板17は、その上端(先端)がリンス液の供給地点Pの下方に位置するように設けられているが、必ずしも厳密に供給地点Pの下方である必要なく、供給地点Pの近傍であればその上流側又は下流側であってもよい。但し、供給地点Pより上流側でのミストの付着をより確実に防止する上では、遮蔽板17の上端は、リンス液の軌道よりも上流側において、上記供給地点P又はこれよりも下流側に位置するのが好ましい。
【0062】
なお、上記の各実施形態では、基板Sに洗浄処理を施す基板処理装置1について本発明を適用した例について説明したが、勿論、本発明は、洗浄処理に限らず薬液処理を行う基板処理装置についても適用可能である。また、実施形態では、基板Sを水平搬送しながら処理を施す基板処理装置1に本発明を適用した場合について説明したが、勿論、基板Sを傾斜搬送しながら基板Sに処理を施す基板処理装置についても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る基板処理装置(第1の実施形態)の全体構成を示す断面略図である。
【図2】液ナイフ近傍の具体的な構造を示す図1の要部拡大図である。
【図3】本発明に係る基板処理装置(第2の実施形態)を示す断面略図である((a)はリンス液の吐出開始後、基板の搬入前の状態、(b)は基板の搬入後の状態をそれぞれ示す)。
【図4】本発明に係る基板処理装置(第2の実施形態)の液ナイフ近傍の構造を示す要部断面図である。
【図5】本発明に係る基板処理装置(第3の実施形態)の液ナイフ近傍の構造を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 基板処理装置
10 処理室
14 搬送ローラ
16 液ナイフ
17 遮蔽板
18a,18b シャワーノズル
32 エアノズル
S 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入された基板を搬出口へ向かわせる搬送経路を有する処理槽を備え、この処理槽内で基板を搬送しながら当該基板に処理液を供給して所定の処理を施す基板処理装置において、
前記処理槽の搬入側に設けられ、搬入されてきた基板の上面全幅に亘って搬送方向上流側から下流側に向かって垂直方向に対して斜め方向に処理液を吐出するノズル部材と、
前記ノズル部材から吐出される処理液の軌道よりも搬送方向上流側の位置であって、かつ前記搬送経路の下方に配置され、搬送方向上流側へのミスト状処理液の拡散を防止する遮蔽板と、を備えている
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置において、
前記遮蔽板は、前記処理槽の内底部に立設され、その先端が前記搬送経路における処理液の供給地点近傍に位置するように設けられていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板処理装置において、
前記ノズル部材と前記遮蔽板先端との隙間部分を通じてミスト状処理液が前記搬送方向上流側に拡散するのを防止する隙間遮蔽手段をさらに備えていることを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置において、
前記隙間遮蔽手段は、前記ノズル部材と前記遮蔽板先端との隙間部分に、前記搬送方向上流側から下流側に向かう気流を形成する気流形成手段であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記気流形成手段は、気体の噴射手段を含み、前記遮蔽板よりも前記搬送方向上流側において前記噴射手段から気体を噴出させることにより前記気流を形成することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の基板処理装置において、
前記気流形成手段は、前記処理槽内の雰囲気を、前記遮蔽板よりも前記搬送方向下流側において吸引する吸引手段を含み、前記ノズル部材から吐出される処理液と前記遮蔽板とにより囲まれた空間内の雰囲気を前記吸引手段により吸引することにより前記気流を形成することを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項3に記載の基板処理装置において、
前記隙間遮蔽手段は、前記遮蔽板に昇降可能に設けられる昇降板と、この昇降板を駆動制御する制御手段とを有し、前記昇降板は、その先端が前記ノズル部材から吐出される処理液の軌道の下方であって、かつ前記搬送経路に沿って搬送される基板の上面よりも上方に位置する上昇位置と前記先端が搬送経路よりも下方に位置する下降位置とに亘って昇降可能に構成され、前記制御手段は、前記処理槽への基板の非搬入時には前記昇降板を上昇位置に配置し、搬入時には前記昇降板を下降位置に配置すべく前記昇降板を駆動制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の基板処理装置において、
前記搬送方向における前記ノズル部材から上流側の部分において前記搬送経路をその上方から被うカバー部材を備えていることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−147260(P2009−147260A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325710(P2007−325710)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】