説明

基板洗浄装置

【課題】比較的長期間使用することができるとともに、超音波照射器が洗浄液に超音波を照射した際に一時的に低下したガスの溶存濃度を早急に超音波照射前のガスの溶存濃度まで回復させることができ、洗浄液に浸漬された被処理基板を安定して洗浄することができる基板洗浄装置を提供する。
【解決手段】基板洗浄装置10は、洗浄液を貯留する洗浄槽12と、洗浄槽12内に貯留された洗浄液に超音波を照射する超音波照射器30と、を備えている。また、洗浄槽12内には、当該洗浄槽12内に貯留された洗浄液にガスを供給することによりこの洗浄液に気泡を発生させる気泡発生器61が設けられている。気泡発生器61は、表面が親水化処理された樹脂部材から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理基板を洗浄液に浸漬するとともにこの洗浄液に超音波を照射して、被処理基板に付着したパーティクル等の不純物を除去する基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体ウエハやLCD用ガラス基板等の被処理基板を、純水や薬液等の洗浄液に浸漬するとともにこの洗浄液に超音波を照射することにより、被処理基板に付着したパーティクル等の不純物を除去する超音波洗浄方法(メガソニック処理方法を含む)が従来より知られている(例えば、特許文献1、2等参照)。
【0003】
特許文献1には、洗浄槽内に洗浄液やガスを供給する手段をそれぞれ当該洗浄槽の側壁下部に配設し、洗浄槽内に洗浄液を供給するとともにガスを供給することにより洗浄液内に気泡を発生させる方法が開示されている。このような、洗浄液にガスを溶解させ、洗浄液に対するガスの溶存濃度を飽和濃度としながらこの洗浄液に被処理基板を浸漬する方法によれば、被処理基板の洗浄時にこの被処理基板の表面近傍にキャビテーションを発生させることができ、被処理基板に対する洗浄効果を高めることができるようになる。
【0004】
また、特許文献2には、多孔質部材からなる中空の棒状部材の気泡発生器を、洗浄槽の内部に設けた基板洗浄装置が開示されている。このような基板洗浄装置によれば、洗浄槽内に洗浄液を供給するとともに気泡発生器により発生した気泡を洗浄液に送ることにより、洗浄液に浸漬された被処理基板に気泡を触れさせ、キャビテーション効果により被処理基板に対する洗浄効果を高めることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−296868号公報
【特許文献2】特開2005−211718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、多孔質部材からなる中空の棒状部材の気泡発生器を洗浄槽の内部に設置し、洗浄槽内に貯留された洗浄液に対してこの気泡発生器によりガスを供給し、洗浄液に気泡を発生させるような方法においては、棒状部材として例えばポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等が用いられることが好ましい。なぜならば、例えば特許文献2に示すような基板洗浄装置においては気泡発生器(バブラー)の材料としてシリカ多孔体(SiC)や石英ガラス等が挙げられているが、このようなシリカ多孔体(SiC)や石英ガラス等の材料は耐薬品性が低く、洗浄液として薬液を用いた場合には、気泡発生器が短時間(例えば、2、3ヶ月程度)で腐食、損傷等してしまうおそれがあるからである。
【0007】
これに対して、洗浄液の内部に気泡発生器を設置する際に、この気泡発生器を構成する部材として、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等を用いた場合には、このようなフッ素樹脂は耐薬品性が高いので、気泡発生器を長期間使用することが可能である。しかしながら、このようなフッ素樹脂は表面が疎水性となっているのが一般的であり、多孔質部材からなる棒状部材から外部に放出される気泡は、この棒状部材の外周面が疎水性であることにより比較的大きなものとなってしまう。
【0008】
ここで、洗浄液に対するガスの溶存濃度は、超音波照射器が洗浄液に超音波を照射した際に飽和濃度から一時的に低下し、その後、超音波照射前のガスの溶存濃度(すなわち、飽和濃度)までゆっくりと回復するが、洗浄液に供給される気泡が比較的大きなものである場合には、洗浄液に対するガスの溶解濃度が小さくなり、結果としてガスの溶存濃度の回復が遅くなってしまう。このように、ガスの溶存濃度の回復が遅くこのガスの溶存濃度の経時的変化が大きくなってしまう場合には、洗浄液に浸漬された被処理基板を安定して洗浄することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、比較的長期間使用することができるとともに、超音波照射器が洗浄液に超音波を照射した際に一時的に低下したガスの溶存濃度を早急に超音波照射前のガスの溶存濃度まで回復させることができ、洗浄液に浸漬された被処理基板を安定して洗浄することができる基板洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の基板洗浄装置は、洗浄液を貯留する洗浄槽と、前記洗浄槽内に貯留された洗浄液に超音波を照射する超音波照射器と、前記洗浄槽内に設置され、表面が親水化処理された樹脂部材を有し、前記洗浄槽内に貯留された洗浄液に前記樹脂部材からガスを供給することによりこの洗浄液に気泡を発生させる気泡発生器と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
このような基板洗浄装置によれば、洗浄槽内に設置された気泡発生器が樹脂部材を有することにより、洗浄槽内に貯留される洗浄液(例えば、薬液)により気泡発生器が腐食、損傷等させられることが抑制されるようになり、このため基板洗浄装置を比較的長期間使用することができるようになる。また、この樹脂部材は表面が親水化処理されたものであるので、気泡発生器によって洗浄槽内の洗浄液に発生する気泡をきめ細かなものとすることができ、洗浄液に対するガスの溶解速度を大きくすることができる。このため、超音波照射器が洗浄液に超音波を照射し、洗浄液に対するガスの溶存濃度が一時的に低下した場合であっても、このガスの溶存濃度を早急に超音波照射前のガスの溶存濃度まで回復させることができ、このことにより洗浄液に浸漬された被処理基板を安定して洗浄することができる。
【0012】
本発明の基板洗浄装置においては、前記樹脂部材は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、およびポリプロピレン(PP)からなる群から選択された少なくとも1つのものであることが好ましい。また、前記気泡発生器の樹脂部材には中空部分が設けられているとともに当該樹脂部材の表面には前記中空部分に連通する複数の貫通孔が設けられており、この中空部分から樹脂部材の外方に貫通孔を介してガスが送られるようになっていることが好ましい。
【0013】
本発明の基板洗浄装置においては、前記気泡発生器の樹脂部材は、前記洗浄槽内において当該洗浄槽の底面近傍に設置されていることが好ましい。このことにより、洗浄液に対する気泡の接触時間を長くすることができ、このため洗浄液に対するガスの溶解速度を大きくすることができる。
【0014】
本発明の基板洗浄装置においては、前記気泡発生器の樹脂部材は、その表面に薬品処理を行うことにより親水化処理されたものであることが好ましい。あるいは、前記気泡発生器の樹脂部材は、その表面にコーティング処理を行うことにより親水化処理されたものであることが好ましい。
【0015】
本発明の基板洗浄装置においては、前記洗浄槽内において、当該洗浄槽内に洗浄液を供給するための洗浄液供給部(例えば、ノズル等)が前記気泡発生器よりも上方に設置されていることが好ましい。このような基板洗浄装置によれば、気泡発生器により洗浄液内に発生した気泡は、洗浄液内を上昇する間に洗浄液供給部から供給された洗浄液の水流により拡散されるので、洗浄液に対するガスの溶解速度をより大きくすることができる。とりわけ、前記洗浄液供給部は、前記洗浄槽内に洗浄液を供給する際に洗浄液を斜め下方に向けて噴射するようになっていることが好ましい。この場合、気泡が洗浄液内を上昇する際に、洗浄液が斜め下方に向けて噴射されているのでこの気泡をより拡散させることができる。
【0016】
本発明の基板洗浄装置においては、前記気泡発生器の樹脂部材は、前記洗浄槽内において前記超音波照射器から照射される超音波が当たらないような位置に設置されていることが好ましい。このような基板洗浄装置によれば、超音波照射器から照射される超音波により気泡発生器の樹脂部材が損傷してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の基板洗浄装置によれば、当該基板洗浄装置を比較的長期間使用することができるとともに、超音波照射器が洗浄液に超音波を照射した際に一時的に低下したガスの溶存濃度を早急に超音波照射前のガスの溶存濃度まで回復させることができ、洗浄液に浸漬された被処理基板を安定して洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一の実施の形態について説明する。図1乃至図4は、本発明による基板洗浄装置の一の実施の形態を示す図である。
このうち、図1は、本発明の一の実施の形態における基板洗浄装置の構成の概略を示す図であり、図2(a)は、表面が親水化処理されたガス供給用ノズルパイプによって洗浄液に生成された気泡を示す図であり、図2(b)は、表面が疎水性であるガス供給用ノズルパイプによって洗浄液に生成された気泡を示す図である。また、図3は、ガス供給用ノズルパイプに対する気泡の接触角を説明するための図であり、図4は、超音波照射機構により超音波が洗浄液に照射された際における、洗浄液に対するガスの溶存濃度の経時変化を示すグラフである。
なお、以下の実施の形態においては、本発明による基板洗浄装置を半導体ウエハ(単にウエハともいう)の洗浄装置に適用した例を説明する。ただし、本発明による基板洗浄装置は、半導体ウエハの洗浄への適用に限られるものではなく、広く基板の洗浄に適用することができる。
【0019】
図1に示すように、本実施の形態における基板洗浄装置10は、洗浄槽(DIP槽)12と、洗浄槽12に接続され当該洗浄槽12内に洗浄液を供給する洗浄液供給機構40と、洗浄槽12内の洗浄液に超音波を発生させる超音波発生機構30と、洗浄槽12に接続され当該洗浄槽12内に貯留された洗浄液にガスを供給するガス供給機構60とを備えている。このような基板洗浄装置10は、洗浄槽12内に貯留された洗浄液にウエハWを浸漬した状態で洗浄液に超音波を発生させることにより、ウエハWを超音波洗浄する装置である。
【0020】
まず、洗浄槽12について説明する。洗浄槽12は、図1に示すように略直方体の輪郭を有しており、ウエハWの出し入れを行うための上部開口が形成されている。また、洗浄槽12の底面には、当該洗浄槽12に貯留された洗浄液を排出するための排出管13が設けられており、この排出管13は洗浄槽12から洗浄液を選択的に排出するようになっている。また、図1に示すように、洗浄槽12の下部は、後述するガス供給用ノズルパイプ61を収容する収容スペースを形成するために外方に膨らむようになっている。
【0021】
また、図1に示すように、洗浄槽12の上方開口を取り囲むようにして外槽15が設けられている。この外槽15は、洗浄槽12の上方開口からあふれ出した洗浄液を回収するようになっている。洗浄槽12と同様に、外槽15にも当該外槽15に貯留された洗浄液を排出するための排出管16が設けられており、この排出管16は外槽15から洗浄液を選択的に排出するようになっている。
【0022】
次に、ウエハWを保持する保持機構20について説明する。図1に示すように、保持機構20は、図1の紙面に対して垂直方向に(すなわち、略水平方向に)延びる4本の棒状部材22と、4本の棒状部材22を片側から片持支持する基部24とを有している。棒状部材22は、一度に洗浄処理される複数のウエハW、例えば50枚のウエハWを下方から支持するようになっている。このため、各棒状部材22には、その長手方向に沿って一定間隔を空けて配列された溝が形成されている。ウエハWは、この溝に係合し、各ウエハWの板面が棒状部材の延びる方向と略直交するようにして、すなわち、各ウエハWの板面が鉛直面に沿うようにして、棒状部材22によって保持されるようになっている(図1参照)。
【0023】
保持機構20の基部24は、図示しない昇降機構に連結されている。この昇降機構によって、ウエハWを保持した棒状部材22を降下させることにより、洗浄槽12内に貯留された洗浄液中にウエハWを浸漬することができる。
【0024】
次に、洗浄槽12内に純水や薬液等の洗浄液を供給する洗浄液供給機構40について詳述する。図1に示すように、洗浄液供給機構40は、洗浄槽12に接続された洗浄液供給管41を有している。この洗浄液供給管41の上流側端部には当該洗浄液供給管41に純水や薬液等の洗浄液を供給する洗浄液供給源49が設けられている。また、洗浄液供給管41には洗浄液搬送ポンプ45が介設されている。洗浄液搬送ポンプ45は、洗浄液供給源49から洗浄液を洗浄槽12内に供給するようになっている。このような洗浄液搬送ポンプ45としては、例えば、エア圧力を調節することによって吐出量を調整し得るエア駆動式のベローズポンプを用いることができる。
【0025】
また、外槽15には戻り管44が接続されており、この戻り管44は洗浄液供給管41の途中部分に接続されている。この戻り管44は洗浄槽12から外槽15にあふれ出た洗浄液を回収するようになっている。このようにして、洗浄液供給管41、戻り管44および洗浄液搬送ポンプ45によって洗浄槽12に対する洗浄液の循環路が形成されている。
【0026】
また、図1に示すように、洗浄液供給管41には、当該洗浄液供給管41内を流れる洗浄液の温度を調節するヒータ46と、洗浄液供給管41内を流れる洗浄液からパーティクル等の不純物を除去して洗浄液を清浄化するフィルタ47と、がそれぞれ介設されている。
【0027】
図1に示すように、洗浄液供給管41の洗浄槽12側(下流側)の端部には2つの洗浄液供給用ノズルパイプ42が設けられている。各洗浄液供給用ノズルパイプ42は、洗浄槽12の対向する壁面に沿って設けられている。具体的には、洗浄液供給用ノズルパイプ42は、洗浄槽12の壁面に沿って細長状に延びる筒状の部材から構成されており、この筒状部材には、その長手方向に沿って一定の間隔を空けて複数のノズル孔が設けられている。このノズル孔から洗浄槽12内に洗浄液を供給する際に洗浄液を斜め下方に向けて噴射するよう、洗浄液供給用ノズルパイプ42におけるノズル孔の向きが設定されている。
【0028】
次に、超音波発生機構30について説明する。図1に示すように、超音波発生機構30は、洗浄槽12の底部外面に取り付けられた振動子38と、振動子38を駆動するための高周波駆動電源32と、高周波駆動電源32に接続された超音波発振器34と、を有している。本実施の形態においては、複数の振動子38が設けられており、各振動子38が洗浄槽12の底部外面を部分的に占めるよう配列されている。また、図1に示すように、超音波発生機構30は、超音波発振器34および各振動子38の間に設けられた駆動切換部36を更に有している。この駆動切換部36によって、複数の振動子38を全体駆動させることと、一または二以上の振動子38を個別に駆動することと、のいずれもが実行可能となっている。
【0029】
振動子38が駆動されて振動すると、洗浄槽12の底部を介し、洗浄槽12内に貯留された洗浄液に超音波が伝播する。このことにより、洗浄槽12内の洗浄液に超音波が照射させられる。
【0030】
次に、洗浄槽12内に貯留された洗浄液にガスを供給するガス供給機構60について説明する。図1に示すように、ガス供給機構60は、洗浄槽12に接続されたガス供給管62を有している。また、ガス供給機構60は、第1のガスを供給する第1ガス供給原69aと、第1のガスとは異なる種類の第2のガスを供給する第2ガス供給源69bとを有している。洗浄槽12に接続されたガス供給管62は、その上流側において第1ガス供給管62aおよび第2ガス供給管62bに分岐し、第1ガス供給管62aの上流側端部は第1ガス供給源69aに接続されるとともに第2ガス供給管62bの上流側端部は第2ガス供給源69bに接続されるようになっている。本実施の形態において、第1ガス供給源69aは窒素を供給し、第2ガス供給源69bは酸素を供給するようになっている。
【0031】
第1ガス供給管62aには、上流側から下流側に向けて、第1ガス供給管62a内の圧力を調整するレギュレータ67a、第1ガス供給管62a内を流れるガスの流量を計測するマスフローメータ(MFM)66a、第1ガス供給管62a内を流れるガスを清浄化するためのフィルタ65a、および第1ガス供給管62aを開閉する開閉弁64aが介設されている。また、第2ガス供給管62bにも、第1ガス供給管62aと同様に、レギュレータ67b、マスフローメータ66b、フィルタ65bおよび開閉弁64bが介設されている。
【0032】
図1に示すように、ガス供給管62の洗浄槽12側(下流側)の端部には2つのガス供給用ノズルパイプ61が設けられている。具体的には、各ガス供給用ノズルパイプ61は、洗浄槽12内において当該洗浄槽12の底面近傍に設置されている。ここで、図1に示すように、各ガス供給用ノズルパイプ61は、洗浄槽12の対向する壁面の内面に沿って、この洗浄槽12の下部における外方に膨らんだスペース内に設置されている。このため、各ガス供給用ノズルパイプ61には、洗浄槽12内において超音波発生機構30により洗浄液に照射される超音波が当たらないようになっている。
【0033】
各ガス供給用ノズルパイプ61は、洗浄槽12の壁面に沿って細長状に延びる筒状の部材から構成されており、この筒状部材には、その長手方向に沿って一定の間隔を空けて複数のノズル孔(貫通孔)が設けられている。このようなガス供給用ノズルパイプ61においては、筒状部材の中空部分から当該筒状部材の外方にノズル孔を介してガスが送られるようになっている。なお、図1に示すように、各ガス供給用ノズルパイプ61は洗浄液供給用ノズルパイプ42よりも下方に位置するようになっている。
【0034】
ここで、各ガス供給用ノズルパイプ61は樹脂部材から構成されており、より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、およびポリプロピレン(PP)からなる群から選択された少なくとも1つのものから構成されている。このため、洗浄槽12内に貯留される洗浄液(例えば、薬液)によりガス供給用ノズルパイプ61が腐食、損傷等させられることが抑制されるようになり、このためガス供給用ノズルパイプ61を比較的長期間使用することができるようになる。
【0035】
また、各ガス供給用ノズルパイプ61の表面は親水化処理されている。具体的には、各ガス供給用ノズルパイプ61の表面は、薬品処理を行うことにより親水化処理されたものとなっている。しかしながら、親水化処理方法としては、上述のような薬品処理に限定されることはなく、例えば親水性ポリマー等をガス供給用ノズルパイプ61の表面にコーティングするコーティング処理方法等、他の方法を用いることもできる。ここで、各ガス供給用ノズルパイプ61の表面は、洗浄液中におけるガス供給用ノズルパイプ61の表面に対する気泡の接触角が90°以上となるよう、親水化処理されることが好ましい。なお、洗浄液中におけるガス供給用ノズルパイプ61の表面に対する気泡の接触角とは、図3に示すように、洗浄液中にガス供給用ノズルパイプ61が浸された状態で気泡がこのガス供給用ノズルパイプ61の表面に付着したときの、図3における角度aのことをいう。
【0036】
次に、このような構成からなる基板洗浄装置10の動作について説明する。
【0037】
まず、洗浄液が洗浄槽12に貯留される。具体的には、洗浄液供給源49から洗浄液供給管41に洗浄液が送られ、この洗浄液は洗浄槽12内において洗浄液供給用ノズルパイプ42から斜め下方に向かって噴射される。洗浄槽12に貯留された洗浄液は、その一部が外槽15にあふれ出すが、外槽15にあふれ出た洗浄液は戻り管44により再び洗浄液供給管41に戻される。このようにして、洗浄液は、洗浄槽12、戻り管44および洗浄液供給管41によって形成される循環路内を循環するようになる。
【0038】
次に、洗浄槽12内の洗浄液にガスを飽和するまで溶解させる。すなわち、洗浄槽12内の洗浄液に対するガスの溶存濃度を飽和濃度まで上昇させる。より具体的には、超音波発生機構30からの超音波の照射を行わないような状態で、ガス供給機構60から洗浄槽12内に窒素や酸素からなるガスを供給し、洗浄槽12内の洗浄液に溶解したガスの溶存濃度を飽和濃度まで上昇させる。
【0039】
本実施の形態においては、ガス供給機構60の第1ガス供給源69aから窒素が、ガス供給管62およびガス供給用ノズルパイプ61を介して、微細な気泡として洗浄槽12内の洗浄液に供給される。同様に、ガス供給機構60の第2ガス供給源69bから酸素が、ガス供給管62およびガス供給用ノズルパイプ61を介して、微細な気泡として洗浄槽12内の洗浄液に供給される。この間、洗浄液は、洗浄槽12、戻り管44および洗浄液供給管41によって形成される循環路内を循環し続けている。
【0040】
ここで、ガス供給用ノズルパイプ61によって洗浄液に生成される気泡について図2を用いて説明する。図2(a)は、本実施の形態における、表面が親水化処理されたガス供給用ノズルパイプ61によって洗浄液に生成された気泡を示す図である。一方、図2(b)は、表面が疎水性であるような比較用の従来のガス供給用ノズルパイプ61aによって洗浄液に生成された気泡を示す図である。このように、表面が疎水性であるような従来のガス供給用ノズルパイプ61aと比較して、表面が親水化処理されたガス供給用ノズルパイプ61によって洗浄液に生成された気泡は、よりきめ細かなものとなる。本実施の形態においては、このようなきめ細かな気泡が洗浄液に生成されることにより、洗浄液に対するガスの溶解速度を大きくすることができる。このように、ガス供給機構60からガスを洗浄槽12内の洗浄液に供給することにより、洗浄液に対するガスの溶存濃度を飽和濃度とする。
【0041】
次に、ガス供給機構60から洗浄槽12内の洗浄液へのガスの供給を停止し、この洗浄槽12内にウエハWを浸漬させる。そして、超音波発生機構30により洗浄槽12内の洗浄液に超音波を照射させる。このことにより、ウエハWに対して超音波洗浄(メガソニック処理)が行われるので、ウエハWに付着したパーティクル等の不純物を除去することができる。なお、洗浄槽12内の洗浄液に超音波が照射されると、洗浄液中に溶存していたガスが気泡となり、洗浄液面に浮上する。その結果、洗浄槽12内の洗浄液に対するガスの溶存濃度が低下する。
【0042】
図4は、超音波発生機構30により超音波が洗浄液に照射された際における、洗浄液に対するガスの溶存濃度の経時変化を示すグラフである。図4の時刻Aにおいて洗浄液に対する超音波の照射が開始され、時刻Bにおいて洗浄液に対する超音波の照射が終了するようになっている。図4のグラフに示すように、洗浄液に対して超音波が照射される前は洗浄液に対するガスの溶存濃度は飽和濃度であったが、洗浄液に対して超音波が照射されることにより洗浄液に対するガスの溶存濃度が減少する。
【0043】
洗浄液に対する超音波の照射が終了した後、再びガス供給機構60により洗浄槽12内の洗浄液へガスを供給する。このことにより、洗浄液に対するガスの溶存濃度が徐々に増加し、最終的にはガスの溶存濃度は飽和濃度まで回復する。ここで、図4のグラフにおける実線は、本実施の形態における、表面が親水化処理されたガス供給用ノズルパイプ61によって洗浄液にきめ細かな気泡を生成した場合(図2(a)参照)における、ガスの溶存濃度の経時的変化を示している。一方、図4のグラフにおける二点鎖線は、表面が疎水性であるような従来のガス供給用ノズルパイプ61aによって洗浄液に比較的大きな気泡を生成した場合(図2(b)参照)における、ガスの溶存濃度の経時的変化を示している。
【0044】
図4のグラフに示すように、表面が親水化処理されたガス供給用ノズルパイプ61を使用することにより、洗浄液にきめ細かな気泡が生成されることになるので、洗浄液に対するガスの溶解速度を大きくすることができ、その結果、ガスの溶存濃度を短時間で飽和濃度まで回復させることができる。すなわち、表面が疎水性であるような従来のガス供給用ノズルパイプ61aによって洗浄液に比較的大きな気泡を生成した場合には、洗浄液に対するガスの溶存濃度が飽和濃度まで回復する時刻は図4のDとなるが、表面が親水化処理されたガス供給用ノズルパイプ61によって洗浄液にきめ細かな気泡を生成した場合には、洗浄液に対するガスの溶存濃度が飽和濃度まで回復する時刻は図4のCとなり、ガスの溶存濃度がより短時間で飽和濃度まで回復することとなる。
【0045】
以上のように本実施の形態の基板洗浄装置10によれば、洗浄槽12内に設置されるガス供給用ノズルパイプ61は、表面が親水化処理された樹脂部材からなり、洗浄槽12内に貯留された洗浄液に当該ガス供給用ノズルパイプ61からガスを供給することによりこの洗浄液に気泡を発生させるようになっている。このような基板洗浄装置10によれば、洗浄槽12内に設置されたガス供給用ノズルパイプ61が樹脂部材からなることにより、洗浄槽12内に貯留される洗浄液(例えば、薬液)によりガス供給用ノズルパイプ61が腐食、損傷等させられることが抑制されるようになり、このため基板洗浄装置10を比較的長期間使用することができるようになる。
【0046】
また、このガス供給用ノズルパイプ61は表面が親水化処理されたものであるので、ガス供給機構60のガス供給用ノズルパイプ61によって洗浄槽12内の洗浄液に発生する気泡をきめ細かなものとすることができ、洗浄液に対するガスの溶解速度を大きくすることができる。このため、超音波発生機構30が洗浄液に超音波を照射し、洗浄液に対するガスの溶存濃度が一時的に低下した場合であっても、このガスの溶存濃度を早急に超音波照射前のガスの溶存濃度まで回復させることができ、このことにより洗浄液に浸漬されたウエハWを安定して洗浄することができる。
【0047】
また、ガス供給用ノズルパイプ61は、洗浄槽12内において当該洗浄槽12の底面近傍に設置されている。このことにより、洗浄液に対する気泡の接触時間を長くすることができ、このため洗浄液に対するガスの溶解速度を大きくすることができる。
【0048】
また、洗浄槽12内において、当該洗浄槽12内に洗浄液を供給するための洗浄液供給用ノズルパイプ42がガス供給用ノズルパイプ61よりも上方に設置されている。このため、ガス供給用ノズルパイプ61により洗浄液内に発生した気泡は、洗浄液内を上昇する間に洗浄液供給用ノズルパイプ42から供給された洗浄液の水流により拡散されるので、洗浄液に対するガスの溶解速度をより大きくすることができる。とりわけ、洗浄液供給用ノズルパイプ42は、洗浄槽12内に洗浄液を供給する際に洗浄液を斜め下方に向けて噴射するようになっていることが好ましい。この場合、気泡が洗浄液内を上昇する際に、洗浄液が斜め下方に向けて噴射されているのでこの気泡をより拡散させることができる。
【0049】
また、ガス供給用ノズルパイプ61は、洗浄槽12内において超音波発生機構30から照射される超音波が当たらないような位置に設置されていることが好ましい。このような基板洗浄装置10によれば、超音波発生機構30から照射される超音波によりガス供給用ノズルパイプ61が損傷してしまうことを抑制することができる。
【0050】
なお、本発明による基板洗浄装置は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。例えば、上記の態様では、本発明による基板洗浄装置10を半導体ウエハの洗浄に適用した場合について説明したが、半導体ウエハ以外のLCD用ガラス基板やCD基板等にも適用することができる。
【0051】
また、洗浄槽12内の洗浄液に超音波を照射する際に、この洗浄槽12内の洗浄液に対するガスの溶存濃度を必ずしも飽和濃度としておく必要はない。
【0052】
また、ガス供給機構60は、窒素や酸素以外のガスを洗浄槽12内の洗浄液に供給し、当該洗浄液に窒素や酸素以外のガスの気泡を発生させるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一の実施の形態における基板洗浄装置の構成の概略を示す図である。
【図2】(a)は、表面が親水化処理されたガス供給用ノズルパイプによって洗浄液に生成された気泡を示す図であり、(b)は、表面が疎水性である比較用のガス供給用ノズルパイプによって洗浄液に生成された気泡を示す図である。
【図3】ガス供給用ノズルパイプに対する気泡の接触角を説明するための図である。
【図4】超音波照射機構により超音波が洗浄液に照射された際における、洗浄液に対するガスの溶存濃度の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
10 基板洗浄装置
12 洗浄槽
13 排出管
15 外槽
16 排出管
20 保持機構
22 棒状部材
24 基部
30 超音波発生機構
32 高周波駆動電源
34 超音波発振器
36 駆動切換部
38 振動子
40 洗浄液供給機構
41 洗浄液供給管
42 洗浄液供給用ノズルパイプ
44 戻り管
45 洗浄液搬送ポンプ
46 ヒータ
47 フィルタ
49 洗浄液供給源
60 ガス供給機構
61 ガス供給用ノズルパイプ
61a 比較用の従来のガス供給用ノズルパイプ
62 ガス供給管
62a 第1ガス供給管
62b 第2ガス供給管
64a、64b 開閉弁
65a、65b フィルタ
66a、66b マスフローメータ
67a、67b レギュレータ
69a 第1ガス供給源
69b 第2ガス供給源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液を貯留する洗浄槽と、
前記洗浄槽内に貯留された洗浄液に超音波を照射する超音波照射器と、
前記洗浄槽内に設置され、表面が親水化処理された樹脂部材を有し、前記洗浄槽内に貯留された洗浄液に前記樹脂部材からガスを供給することによりこの洗浄液に気泡を発生させる気泡発生器と、
を備えたことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項2】
前記樹脂部材は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、およびポリプロピレンからなる群から選択された少なくとも1つのものであることを特徴とする請求項1記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
前記気泡発生器の樹脂部材には中空部分が設けられているとともに当該樹脂部材の表面には前記中空部分に連通する複数の貫通孔が設けられており、この中空部分から樹脂部材の外方に貫通孔を介してガスが送られるようになっていることを特徴とする請求項1または2記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記気泡発生器の樹脂部材は、前記洗浄槽内において当該洗浄槽の底面近傍に設置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記気泡発生器の樹脂部材は、その表面に薬品処理を行うことにより親水化処理されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記気泡発生器の樹脂部材は、その表面にコーティング処理を行うことにより親水化処理されたものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄槽内において、当該洗浄槽内に洗浄液を供給するための洗浄液供給部が前記気泡発生器よりも上方に設置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄液供給部は、前記洗浄槽内に洗浄液を供給する際に洗浄液を斜め下方に向けて噴射するようになっていることを特徴とする請求項7記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記気泡発生器の樹脂部材は、前記洗浄槽内において前記超音波照射器から照射される超音波が当たらないような位置に設置されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−98270(P2009−98270A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267896(P2007−267896)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】