説明

外観検査装置および外観検査方法

【課題】 他の板状部材に保持された被検査物に対して、正確な検査を行うことのできる外観検査装置および外観検査方法を提供する。
【解決手段】 外観検査装置の保持部は、被検査物を少なくとも3つの先端で支持して載置する。駆動部は、保持部の先端をそれぞれ上下動させる。撮像手段は、保持部に載置された被検査物を撮像する。相対移動手段は、保持部および撮像手段の少なくとも一方を相対的に移動させる。検出手段は、撮像手段から保持部に載置された被検査物までのその撮像手段の視線方向距離を、その被検査物の複数位置に対して検出する。制御部は、検出手段が検出した各距離に基づいて駆動部の動作を制御し、それら距離が所定の条件を満たすように保持部の先端をそれぞれ上下動させる。オートフォーカス手段は、撮像手段の上下位置を制御してその撮像手段の焦点を保持部に載置された被検査物に合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観検査装置および外観検査方法に関し、より特定的には、ガラスマスクやフィルムマスク等の薄板状の部材をカメラで撮像することによって外観検査する外観検査装置および外観検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品等が実装されるプリント基板等の表面に導体配線等のパターンを形成する際、マスクが用いられることがある。マスクは、ガラスやフィルム等(以下、それらの代表としてフィルムマスクを記載する)で構成されており、基板に転写するパターンの原版となるものである。そして、外観検査装置を用いて、フィルムマスクに形成された配線パターンにおける欠陥の有無が外観検査される。例えば、パターンが形成された面を上面として、フィルムマスクが外観検査装置のステージ面に載置される。外観検査装置は、ステージ面に載置されたフィルムマスク上の空間に、CCD(Charged Coupled Device)カメラ等の撮像カメラを有している。外観検査装置は、ステージ面を主走査方向に水平に移動させ、撮像カメラの下を通過したフィルムマスクを撮像していく。そして、外観検査装置は、主走査方向の走査が1回完了する毎に撮像カメラを副走査方向へ順次シフトし、最終的にフィルムマスクの検査領域全体を撮像して画像データを得る。その後、外観検査装置は、得られた画像データに対して、パターンマッチング処理等を行って、パターンの欠陥を検出する。
【0003】
このようなフィルムマスク等を被検査物とする外観検査装置において、パターンの欠陥を検出する精度を上げる場合、撮像手段となる撮像カメラの焦点を被検査物の上面に一致させることが重要となる。これは、検査分解能が上がるにしたがって顕著になり、一般的には、オートフォーカス機能を備えた撮像カメラを用いてリアルタイムに被検査物の上面に焦点を合わせながら検査する手法が用いられる。例えば、オートフォーカスの方法は、被検査物に対して非接触を前提にしており、レーザ変位センサを用いて得られた被検査物の高さ情報を用いたり、取り込み画像自体のボケ量を用いたりして焦点が調整される。
【0004】
また、被検査物の高さや形状に関する情報を用いて、撮像カメラの焦点位置を変化させる装置が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1で開示された外観検査装置は、被検査物を搬送中に高さセンサによって被検査物の基準面の高さ変位量を検出し、当該変位量に基づいて撮像カメラを焦点方向へ相対的に移動させることによって焦点を合わせる。特許文献2で開示された装置は、試料の形状を検出して作成した焦点マップに基づいて、焦点位置を変化させて撮影している。特許文献3で開示された欠陥検査装置は、被検査物の表面における撮像位置を挟んだ2点を含む複数点の高さ情報を検出し、当該高さ情報を用いて撮像装置の焦点を合わせる。このように、検査前にステージ面に載置された被検査物の高さや形状を計測し、あるいは、被検査物の変位を計測しながら、計測結果に応じて撮像カメラを焦点方向に上下させたりして、焦点距離を最適に調整しつつ被検査物を走査するという方法が取られている。
【特許文献1】特開2000−266691号公報
【特許文献2】特開2002−42706号公報
【特許文献3】特開2003−177101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述した撮像システムの分解能を向上させるためには、撮像カメラのレンズ倍率を上げる必要がある。しかし、撮像カメラのレンズ倍率を上げることは、当該レンズの焦点深度幅を小さくすることになる。
【0006】
一方、被検査物であるフィルムマスクやガラスマスク等は、それらの製造途中で他の物と直接触れることがないように、製造者が取り扱うことが多い。そのため、アクリル板等の板状部材(保持板)に被検査物を保持して取り扱われることがある。例えば、フィルムマスクは、保持板の主面と接面して保持される。また、ガラスマスクは、枠形状の保持板の開口部にはめ込まれて保持される。このような保持板は、被検査物に対して相対的に硬度が高い物質が用いられるが、精密な平面度や下面と上面間の平行度が保証されていないことがある。このような被検査物を保持する保持板を外観検査装置のステージ面上に載置したとしても、当該保持板とステージ面とが接面せず、当該保持板がステージ面に倣わない。つまり、外観検査装置のステージ面に対して載置した保持板に傾きが生じ、上述した焦点深度幅以上の傾きが生じることがある。このような場合、上記撮像カメラが被検査物をあるタイミングで撮像した画像において、当該画像の一部(例えば、注視点)には焦点が合うが、上記焦点深度幅を逸脱する当該画像における他の部位には焦点が合わない状態となってしまう。
【0007】
それ故に、本発明の目的は、他の板状部材に保持された被検査物に対して、正確な検査を行うことのできる外観検査装置および外観検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下に述べるような特徴を有している。
第1の発明は、被検査物を撮像して検査する外観検査装置である。外観検査装置は、保持部、駆動部、撮像手段、相対移動手段、検出手段、制御部、およびオートフォーカス手段を備える。保持部は、被検査物を少なくとも3つの先端で支持して、その被検査物を載置する。駆動部は、保持部の先端をそれぞれ上下動させる。撮像手段は、保持部に載置された被検査物を撮像する。相対移動手段は、保持部および撮像手段の少なくとも一方を相対的に移動させる。検出手段は、撮像手段から保持部に載置された被検査物までのその撮像手段の視線方向距離を、その被検査物の複数位置に対して検出する。制御部は、検出手段が検出した各距離に基づいて駆動部の動作を制御し、それら距離が所定の条件を満たすように保持部の先端をそれぞれ上下動させる。オートフォーカス手段は、相対移動手段が保持部および撮像手段の少なくとも一方を相対的に移動させるとき、その撮像手段の上下位置を制御してその撮像手段の焦点を保持部に載置された被検査物に合わせる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、検出手段は、被検査物上の3つの位置に対して距離を検出する。制御部は、3つの位置に対する距離がそれぞれ等しくなるように保持部の先端をそれぞれ上下動させる。
【0010】
第3の発明は、上記第1の発明において、検出手段は、被検査物上の3つ以上の位置に対して距離を検出する。制御部は、検出手段が検出した被検査物上の全ての位置に対する距離がそれぞれ所定の範囲内になるように保持部の先端をそれぞれ上下動させる。
【0011】
第4の発明は、上記第1の発明において、被検査物は、平板状の保持板に保持されている。保持部は、保持板の下面を少なくとも3つの先端で支持する。
【0012】
第5の発明は、上記第4の発明において、検出手段が距離を検出する複数位置は、保持板を保持部の先端で支持する位置から最も近い被検査物上の位置を含む。
【0013】
第6の発明は、上記第1の発明において、被検査物は、平板状の保持板に保持されている。保持部は、保持板の下面を4つの先端で支持する。
【0014】
第7の発明は、上記第6の発明において、検出手段が距離を検出する複数位置は、保持板を保持部の先端で支持する隣接した2つの位置からそれぞれ最も近い被検査物上の位置と、保持板を保持部の先端で支持する他の2つの位置の中点から最も近い被検査物上の位置とに設定される。
【0015】
第8の発明は、上記第1の発明において、外観検査装置は、被検査物を載置する載置面がその上面に形成された固定枠を、さらに備える。保持部は、固定枠の内部に配設される。
【0016】
第9の発明は、撮像部を用いて被検査物を撮像して検査する外観検査方法である。外観検査方法は、保持ステップ、検出ステップ、制御ステップ、およびオートフォーカスステップを含む。保持ステップは、被検査物を少なくとも3つの先端で支持して、その被検査物を載置する。検出ステップは、撮像部から先端に載置された被検査物までのその撮像部の視線方向距離を、その被検査物の複数位置に対して検出する。制御ステップは、検出ステップで検出した各距離に基づいて、それら距離が所定の条件を満たすように先端をそれぞれ上下動させる。オートフォーカスステップは、距離が所定の条件を満たした後、被検査物および撮像部の少なくとも一方を相対的に移動させながら、撮像部の焦点を被検査物に合わせて撮像する。
【0017】
第10の発明は、上記第9の発明において、検出ステップは、被検査物上の3つの位置に対して距離を検出するステップを含む。制御ステップは、3つの位置に対する距離がそれぞれ等しくなるように先端をそれぞれ上下動させるステップを含む。
【0018】
第11の発明は、上記第9の発明において、検出ステップは、被検査物上の3つ以上の位置に対して距離を検出するステップを含む。制御ステップは、検出ステップで検出した被検査物上の全ての位置に対する距離がそれぞれ所定の範囲内になるように先端をそれぞれ上下動させるステップを含む。
【発明の効果】
【0019】
上記第1の発明によれば、撮像手段に対して保持部に載置された被検査物の傾きを制御することができる。例えば、平面精度が悪い被検査物を撮像手段があるタイミングで撮像した画像であっても、全ての範囲を撮像手段の焦点深度幅内に収めることができる。したがって、撮像手段の焦点を全ての範囲で被検査物の上面に一致させた画像を得ることができるため、当該画像を用いて正確な外観検査が可能となる。
【0020】
上記第2の発明によれば、撮像手段に対して保持部に載置された被検査物上の3点が同じ視点方向距離となるように制御されるため、当該3点を含む平面が当該視点方向と垂直となり、少ない検出位置によって当該視点方向に対して垂直に被検査物を載置できる。
【0021】
上記第3の発明によれば、撮像手段に対して保持部に載置された被検査物上の3点以上が所定の範囲内の視点方向距離となるように制御されるため、当該視線方向に対して垂直な平面に対する被検査物の平行度を制御することができる。
【0022】
上記第4の発明によれば、精密な平面度や下面と上面間の平行度が保証されていない保持板に保持されて被検査物が取り扱われていても、当該保持板に保持された状態で被検査物の傾きを制御することができる。例えば、下面に対して上面の平行度が悪い保持板に保持された被検査物を撮像手段があるタイミングで撮像した画像であっても、全ての範囲を撮像手段の焦点深度幅内に収めることができる。
【0023】
上記第5の発明によれば、被検査物を上下動させる位置と距離を検出する位置が近接しているため、上下動に応じた距離の変化を容易に予想することができる。
【0024】
上記第6の発明によれば、3点で保持板を支持することで予想される自重による保持板端部の垂れ下がりを防止することができる。
【0025】
上記第7の発明によれば、先端で支持する2つの位置から最も近い被検査物上の位置に検出位置が設定されているため、当該2つの位置を支持する先端を常に同じ調整長さだけ同じ方向に上下動させることによって当該検出位置の距離を制御することができ、これによって、4つの先端の1つと保持板とが非接触となって、載置が不安定になることを防止できる。
【0026】
上記第8の発明によれば、平面度および平行度が保証されたガラステーブル等に密着保持された被検査物を撮像する場合、撮像手段の視線方向に対して垂直に載置面を形成することによって、固定枠上面に当該ガラステーブルを載置して被検査物の撮像が可能となる。つまり、被検査物の形態に応じて、最適な載置方法を選択することができる。
【0027】
また、本発明の外観検査方法によれば、上述した外観検査装置と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る外観検査装置について説明する。なお、図1は、当該外観検査装置の全体構成を模式的に示す上面図および正面図である。ここでは、説明を具体的にするために、配線パターンの描かれたフィルムマスクを被検査物として検査する場合を一例として説明する。なお、本発明は、フィルムマスクに限らず、ガラスマスク、プリント基板、フレキシブルな薄板基板等、薄板状の部材を被検査物とする検査に対して有効である。また、さらなる被検査物の例として、被検査物の一例であるフィルムマスクがアクリル板等の板状部材(保持板)に保持して取り扱われる場合について説明を行う。例えば、フィルムマスクは、保持板の主面と接面して保持される。また、ガラスマスクの場合、枠形状の保持板の開口部にはめ込まれて保持される。
【0029】
図1において、外観検査装置1は、大略的にステージ搬送機構部2、撮像機構部3、および制御部4(図2参照)を備えている。ステージ搬送機構部2は、ステージ部21、旋回部22、Y軸方向駆動機構23、ベース部24、および傾き調整機構25を備えている。撮像機構部3は、撮像カメラ31、支持部材32、X軸方向駆動部材33、カメラ支持部材34、X軸方向駆動機構35、Z軸方向駆動機構36、および高さ検出センサ37を備えている。
【0030】
ステージ部21は、平面部材の一方主面上の全周に枠体が固設されている。そして、上記平面部材上の枠体内部には、複数の傾き調整機構25が設置されている。後述により明らかとなるが、フィルムマスクを保持する保持板は、複数の傾き調整機構25上に載置される。ここでは、一例として、ステージ部21に4つの傾き調整機構25a〜25dを設置している。なお、4つの傾き調整機構25a〜25dを総称して説明する場合、傾き調整機構に参照符号25を付して説明を行う。ここで、傾き調整機構25は、後述する傾き調整モータ251、傾き調整ドライバ252、および傾き調整保持ピン253を含んでいる(図2、図3参照)。なお、本発明の保持部は、傾き調整保持ピン253等に相当する。また、本発明の上下駆動手段は、傾き調整モータ251および傾き調整ドライバ252等に相当する。
【0031】
ステージ部21の平面部材の他方主面は、旋回部22によって支持されており、旋回部22の回動動作によって図示θ方向にステージ部21が回動可能に構成されている。撮像機構部3の下方を通るように、ベース部24が上記ステージ面と平行の図示Y軸方向に延設されて固定される。Y軸方向駆動機構23は、ベース部24の上面のY軸方向に設けられたガイドに沿って滑動し、その上面に旋回部22が固設されている。なお、Y軸方向駆動機構23は、後述するY軸駆動モータ231およびY軸NCドライバ232を含んでいる(図2参照)。これによって、Y軸方向駆動機構23がY軸駆動モータ231からの駆動力によってベース部24のガイドに沿った図示Y軸方向(主走査方向)に移動可能になり、旋回部22に支持されたステージ部21の主走査方向への水平移動も可能になる。なお、ステージ搬送機構部2は、傾き調整機構25a〜25d上に載置された保持板の下方に図示しない透過照明用光源を有している。この透過照明用光源は、保持板を介してフィルムマスクの下面に照明光を照射する。
【0032】
支持部材32は、ベース部24上を水平移動するステージ部21の上部空間に架設されている。支持部材32上にはX軸方向駆動機構35が設けられており、X軸方向駆動部材33を上記ステージ面と平行で、かつ上記Y軸方向と垂直の図示X軸方向(副走査方向)に移動させる。なお、X軸方向駆動機構35は、後述するX軸駆動モータ351およびX軸NCドライバ352を含んでいる(図2参照)。X軸方向駆動部材33にはZ軸方向駆動機構36が設けられており、カメラ支持部材34を上記X軸およびY軸方向と垂直の図示Z軸方向に移動させる。なお、Z軸方向駆動機構36は、後述するZ軸駆動モータ361およびZ軸NCドライバ362を含んでいる(図2参照)。
【0033】
撮像カメラ31は、例えばCCDカメラにより構成され、その視線方向(撮像方向)が図示Z軸下方向となるようにカメラ支持部材34に支持されている。撮像カメラ31は、入射された光をその色や強度を示す電気信号に変換する。図1に示す外観検査装置1の例では、2つの撮像カメラ31aおよび31bが設けられており、それらの視線方向が図示Z軸下方向となるようにカメラ支持部材34に支持されている。例えば、外観検査装置1におけるパターンマッチング処理用の画像データを得るための撮像カメラ31aと、外観検査装置1のユーザによる目視検査用の画像データを得るための撮像カメラ31bとによって構成され、それぞれ上記透過照明用光源からフィルムマスクに照射された透過光を受光する。なお、本発明は、複数の撮像カメラ31をカメラ支持部材34に固設してもいいし、1つの撮像カメラ31のみをカメラ支持部材34に固設してもかまわない。
【0034】
このような構成によって、撮像カメラ31は、図示X軸方向(副走査方向)およびZ軸方向(視線方向)に移動可能になっている。そして、撮像カメラ31のX軸方向の位置を固定した状態でステージ部21が主走査方向(Y軸方向)に移動することにより主走査が行われる。次に、フィルムマスクの検査領域の一端から他端までの主走査が完了する毎に、撮像カメラ31は副走査方向(X軸方向)に沿って所定距離だけ移動する。この結果、フィルムマスクの検査領域全体についての画像データが撮像カメラ31から得られることとなる。さらに、撮像カメラ31は、Z軸方向駆動機構36によってZ軸方向(視線方向)に移動可能となっている。後述で明らかとなるが、Z軸方向駆動機構36は、高さ検出センサ37が検出したフィルムマスク(被検査物)のZ軸方向への高さに応じてカメラ支持部材34をZ軸方向に適宜移動させて、撮像カメラ31のオートフォーカスを実現する。つまり、高さ検出センサ37が検出したZ軸方向の高さデータに応じて、Z軸方向駆動機構36は、フィルムマスクを走査する間、撮像カメラ31の焦点位置が常にフィルムマスクの上面となるように撮像カメラ31のZ軸方向の位置を制御する。なお、本発明の相対移動手段は、X軸方向駆動機構35およびY軸方向駆動機構23に相当する。
【0035】
高さ検出センサ37は、後述する撮像動作の前に、傾き調整機構25a〜25d上に載置された保持板に保持されているフィルムマスクに設定された所定の傾き測定ポイントに対して、それぞれの高さ(高さ検出センサ37から測定ポイントまでの距離)を検出する。また、撮像動作の際、撮像カメラ31aおよび31bのオートフォーカスのためにフィルムマスクまでの高さを撮像箇所に合わせて順次検出する。例えば、高さ検出センサ37は、レーザ変位センサ、光変位センサ、超音波センサ等が用いられる。高さ検出センサ37は、その高さ検出方向を撮像カメラ31の視線方向と同様にステージ部21の上面に向かうZ軸方向とし、撮像カメラ31やカメラ支持部材34に固設される。なお、後述により明らかとなるが、高さ検出センサ37は、被検査物のZ軸方向への高さを検出するものであるため、ステージ部21に対して相対的にX軸方向およびY軸方向へ移動可能しながら当該高さを検出できれば、他の部位に固設してもかまわない。
【0036】
次に、図2を参照して、外観検査装置1における制御機能の概略構成について説明する。なお、図2は、外観検査装置1の制御機能を示すブロック図である。
【0037】
図2において、外観検査装置1は、メイン制御部41、フォーカス制御部42、および記憶部43を含む制御部4を備えている。メイン制御部41およびフォーカス制御部42は、例えばCPUボードによって構成され、互いに接続されている。また、メイン制御部41およびフォーカス制御部42には、記憶部43が接続されている。記憶部43は、メイン制御部41およびフォーカス制御部42の処理の際に記憶領域として用いられ、処理に必要なデータ群を格納している。記憶部43は、高さテーブル431を格納している。
【0038】
メイン制御部41は、主にX軸NCドライバ352およびフォーカス制御部42の動作を制御する。X軸NCドライバ352は、メイン制御部41の制御に応じてX軸駆動モータ351を駆動する。そして、X軸駆動モータ351は、X軸方向駆動部材33をX軸方向(副走査方向;図1参照)に移動させ、撮像カメラ31および高さ検出センサ37をX軸方向に移動させる。これらの構成によって、メイン制御部41は、副走査方向に対する撮像カメラ31および高さ検出センサ37の動作を制御することができる。
【0039】
フォーカス制御部42は、主にY軸NCドライバ232、Z軸NCドライバ362、および傾き調整ドライバ252a〜252dの動作を制御する。Y軸NCドライバ232は、フォーカス制御部42の制御に応じてY軸駆動モータ231を駆動する。そして、Y軸駆動モータ231は、Y軸方向(主走査方向;図1参照)にステージ部21を水平移動させる。これらの構成によって、フォーカス制御部42は、主走査方向に対するステージ部21の動作を制御することができる。また、Z軸NCドライバ362は、フォーカス制御部42の制御に応じてZ軸駆動モータ361を駆動する。そして、Z軸駆動モータ361は、Z軸方向(視線方向;図1参照)にカメラ支持部材34を移動させ、撮像カメラ31および高さ検出センサ37をZ軸方向にさせる。これらの構成によって、フォーカス制御部42は、視線方向(焦点方向)に対する撮像カメラ31の動作を制御することができる。
【0040】
傾き調整ドライバ252a〜252dは、それぞれフォーカス制御部42の制御に応じて傾き調整モータ251a〜251dを駆動する。そして、傾き調整モータ251a〜251dは、それぞれ傾き調整保持ピン253a〜253d(後述)をZ軸方向に移動させる。後述により明らかとなるが、傾き調整保持ピン253a〜253dの上先端部にはフィルムマスクを保持する保持板が載置されており、これらの構成によって、フォーカス制御部42は、視線方向に対する保持板の高さ(傾き)を調整することができる。
【0041】
ここで、メイン制御部41およびフォーカス制御部42は、被検査物を外観検査する前に被検査物上をXおよびY軸方向にスキャンして、予め高さテーブル431を作成して、記憶部43に格納する。高さテーブル431を作成する際、高さ検出センサ37は、保持板に保持された被検査物上面の高さ情報DLをフォーカス制御部42へ出力する。また、高さ検出センサ37と被検査物とのY軸方向の相対的な位置関係は、Y軸駆動モータ231から出力されるフィードバックパルスPFをフォーカス制御部42へ出力することによって、フォーカス制御部42で検出することができる。さらに、高さ検出センサ37と被検査物とのX軸方向の相対的な位置関係は、X軸方向駆動部材33をX軸方向へ移動させる制御量をメイン制御部41から得ることによって、フォーカス制御部42で検出することができる。つまり、フォーカス制御部42は、高さ検出センサ37と保持板に保持された被検査物とのX軸方向およびY軸方向への相対的な位置関係に基づいて、高さ検出センサ37が検出している被検査物上の位置を得ることができる。そして、フォーカス制御部42は、高さ検出センサ37が検出している被検査物上の位置に対する高さ情報DLを得ることができる。
【0042】
次に、図3および図4を参照して、傾き調整機構25の構成について説明する。なお、図3は、図1の断面iiをj方向から見た図であり、保持板Paに保持されたフィルムマスクFをステージ部21に載置した状態を示すステージ部21の断面図である。ここで、ステージ部21と他の構成要素との違いを明確にするために、ステージ部21の平面部材および枠体の断面のみを斜線領域で示している。図4は、保持板Paに保持されたフィルムマスクFをステージ部21に載置した状態を示すステージ部21の上面図である。
【0043】
図3において、傾き調整保持ピン253a〜253dは、それぞれ傾き調整モータ251a〜251dの駆動によってZ軸方向へ上下動可能に配設されている。そして、傾き調整保持ピン253a〜253dは、傾き調整モータ251a〜251dの駆動に応じて、それらの上先端部がステージ部21の最上位置(枠体のZ軸方向最上位置)より突出/退避可能となる。例えば、傾き調整モータ251a〜251dは、ステッピングモータやカムを駆動するモータ等によって構成され、それらの駆動量によって傾き調整保持ピン253a〜253dの上下方向位置を制御する。また、傾き調整モータ251a〜251dは、傾き調整保持ピン253a〜253dに上下運動を発生させるピエゾ素子等の他のアクチュエータでもかまわない。
【0044】
一方、被検査物であるフィルムマスクFは、保持板Paの上面の略中央位置に保持されている。そして、傾き調整保持ピン253a〜253dそれぞれの上先端部と保持板Paの下面とが接するように、保持板Paが傾き調整保持ピン253a〜253d上に載置される。ここで、保持板Paがステージ部21の枠体より大きなものであっても、傾き調整保持ピン253a〜253dをステージ部21の最上位置より突出させることによって、保持板Paを傾き調整保持ピン253a〜253dの先端部のみと接することによって、外観検査装置1に載置することが可能となる。
【0045】
図4において、傾き調整機構25a〜25dは、ステージ部21の枠体内の所定位置にそれぞれ固設されている。例えば、図4に示すように、傾き調整機構25aおよび25bは、ステージ部21の枠体内の矩形に対して、X軸に平行な一方辺の両端隅部にそれぞれ設置される。そして、傾き調整機構25cおよび25dは、上記矩形に対して、X軸に平行な他方辺の近傍位置にそれぞれ設置される。なお、傾き調整機構25cおよび25dは、一方辺の両端隅部に設置された傾き調整機構25aおよび25bの間の距離より互いに近接して(例えば、他方辺を3等分する距離)設置される。
【0046】
ここで、傾き調整機構25cおよび25dの間の距離を傾き調整機構25aおよび25bの間の距離よりも小さくしているのは、傾き調整機構25cおよび25dを近接させることで4点支持でありながら擬似的に3点で支持する効果を与えるためである。すなわち、理論的には1平面の傾斜を制御するためには3点が理想であるが、フィルムマスクFを保持する保持板Paの一辺をその中間の1点のみで支持するとその両端に垂れ下がりが生じる可能性がある。一方、4点で保持板Paの4隅を支持した場合は、当該保持板Paの歪み等によっていずれか1点に浮き上がりを生じる。すなわち、保持板Paと傾き調整機構とが離間してしまい、傾き調整が不可能になる可能性がある。このため、上記実施形態では、4つの傾き調整機構のうち2つを近接させることで、上記保持板Paと傾き調整機構との離間を極力生じないようにし、かつ保持板Paを支持する点を4点にすることで両端の垂れ下がりを防止している。
【0047】
次に、上述した高さ検出センサ37を用いて高さ測定する傾き測定ポイントについて説明する。傾き測定ポイントは、全てフィルムマスクF上に少なくとも3点設定される。そして、好ましくは、傾き測定ポイントは、傾き調整保持ピン253a〜253dと保持板Paとが当接する領域に最も近いフィルムマスクF上の位置にそれぞれ設定される。例えば、上述したような位置に設置された傾き調整機構25a〜25dに対して3点の傾き測定ポイントを設定する場合、一方辺の両端隅部に設置された傾き調整機構25aおよび25bから最も近いフィルムマスクF上の位置にそれぞれ傾き測定ポイントhaおよびhbを設定する。そして、傾き調整機構25cおよび25dの間の中点Mから最も近いフィルムマスクF上の位置に傾き測定ポイントhmを設定する。このように、上下動可能な傾き調整機構25付近に傾き測定ポイントを設定することによって、それぞれの傾き調整保持ピン253の上下動に応じた傾き測定ポイントの変化が容易に予想することができる。なお、これらの傾き測定ポイントは、予め被検査物の形状に応じてそれらの位置を設定して記憶部43の高さテーブル431の測定位置として記述すればよい。
【0048】
なお、図4では、傾き調整保持ピン253a〜253dと保持板Paとが当接する領域上にフィルムマスクFが保持されていない例を示しているが、当該領域上にフィルムマスクFが保持されている場合は、当該領域上および上記中点M上に傾き測定ポイントを設定すればよい。また、上述した傾き測定ポイントの変化を容易に予想する効果を期待しない場合、これらの設定例以外に傾き測定ポイントを設定してもかまわない。例えば、傾き測定ポイントは、フィルムマスクF上であれば4点以上設定してもいいし、傾き調整機構25から離れた位置に設定してもかまわない。
【0049】
次に、図5〜図7を参照して、外観検査装置1を用いて保持板Paに保持されたフィルムマスクFを外観検査する動作について説明する。なお、図5は、外観検査装置1を用いて外観検査する動作を示すフローチャートである。図6は、高さ検出センサ37の動作の一例を示す正面図である。図7は、傾き調整機構25の動作の一例を示す正面図である。
【0050】
図5において、外観検査装置1のユーザは、保持板Paに保持されたフィルムマスクFを、傾き調整保持ピン253a〜253dそれぞれの上先端部と接し、ステージ部21に対して所定の位置となるように載置する(ステップS91;図3および図4参照)。ここで、保持板Paを載置する際、撮像機構部3の直下の空間から外れた位置にステージ搬送機構部2を水平移動させておく。これによって、撮像機構部3と保持板Paとが接触することなく被検査物を外観検査装置1に供給する作業を行うことができる。
【0051】
次に、外観検査装置1は、高さ検出センサ37を用いて傾き測定ポイントまでの距離をそれぞれ検出し、計測結果をその位置に応じて高さテーブル431に記述する(ステップS92)。図6において、高さ検出センサ37は、フィルムマスクF上に設定された傾き測定ポイント毎に距離Lを検出して、高さ情報DLを出力する。ここで、設定された各傾き測定ポイント上へ高さ検出センサ37を移動させる動作は、メイン制御部41およびフォーカス制御部42がそれぞれX軸NCドライバ352およびY軸NCドライバ232を制御することによって行われる。つまり、Z軸方向については、高さ検出センサ37の位置は固定である。このように、メイン制御部41およびフォーカス制御部42による制御によって、高さ検出センサ37とフィルムマスクFとがXおよびY軸方向に相対的に移動することによって、設定された各傾き測定ポイント上へ高さ検出センサ37が移動する(図示矢印S)。なお、高さ検出センサ37が検出する距離Lは、絶対距離でなくてよく、予め設定された基準距離に対する相対的な距離を検出してもかまわない。
【0052】
次に、外観検査装置1は、高さテーブル431を参照して、各傾き測定ポイントにおける距離Lが設定条件を満足する距離となるように、傾き調整機構25の傾き調整保持ピン253を図示T方向にそれぞれ上下動させる(ステップS93)。
【0053】
上記設定条件の第1の例は、各傾き測定ポイントにおける距離Lを全て等しくすることである。例えば、図4で示した3点の傾き測定ポイントha、hb、およびhmを設定した場合、各傾き測定ポイントha、hb、およびhmにおける距離Lが全て同じになるように傾き調整機構25a〜25dを上下動させる。具体的には、フォーカス制御部42は、傾き測定ポイントhaの距離Lを調整するために、傾き調整ドライバ252aを制御して傾き調整モータ251aを駆動させて傾き調整保持ピン253aを上下動させる。また、フォーカス制御部42は、傾き測定ポイントhbの距離Lを調整するために、傾き調整ドライバ252bを制御して傾き調整モータ251bを駆動させて傾き調整保持ピン253bを上下動させる。さらに、フォーカス制御部42は、傾き測定ポイントhmの距離Lを調整するために、傾き調整ドライバ252cおよび252dを制御して傾き調整モータ251cおよび251dを駆動させて傾き調整保持ピン253cおよび253dを上下動させる。ここで、フォーカス制御部42は、傾き測定ポイントhmが傾き調整機構25cおよび25dの間の中点Mから最も近いフィルムマスクF上の位置に設定されているため、傾き調整保持ピン253cおよび253dを常に同じ調整長さだけ同じ方向に上下動させる。これによって、4つの傾き調整保持ピン253a〜253dの1つと保持板Paとが非接触となって、載置が不安定になることを防止できる。
【0054】
上記設定条件の第2の例は、各傾き測定ポイントにおける距離Lを所定の範囲内にすることである。例えば、フィルムマスクF上に4点以上の傾き測定ポイントを設定した場合、保持板Paの平面度が高精度でない限りそれら全ての距離Lを等しくすることは困難である。しかしながら、フィルムマスクF上の全面に多数の傾き測定ポイントを設定し、それらの傾き測定ポイントにおける距離Lを所定の範囲内に調整する(つまり、距離Lの最大値と最小値との差を範囲内になるように調整する)ことによって、X−Y平面に対するフィルムマスクFの平行度を制御することができる。なお、フォーカス制御部42は、第2の例を用いる場合も、傾き調整保持ピン253cおよび253dを常に同じ調整長さだけ同じ方向に上下動させることによって、4つの傾き調整保持ピン253a〜253dの1つと保持板Paとが非接触となって、載置が不安定になることを防止する。
【0055】
次に、外観検査装置1は、撮像カメラ31で傾き調整機構25上に載置された保持板Paに保持されたフィルムマスクFを撮像する(ステップS94)。以下、撮像カメラ31による撮像手順について詳述する。
【0056】
上述したように、撮像カメラ31は、X軸方向(副走査方向)およびZ軸方向(視線方向)に移動可能になっている(図1参照)。そして、撮像カメラ31のX軸方向の位置を固定した状態でステージ部21が主走査方向(Y軸方向)に移動することにより主走査が行われる。例えば、フォーカス制御部42は、傾き調整機構25上に載置されているフィルムマスクFの所定位置に撮像カメラ31の焦点が合うようにZ軸方向駆動機構36を制御し、焦点が合った時点に高さ検出センサ37から出力される高さ情報DLから得られる距離を基準距離とする。なお、この基準距離は、撮像カメラ31の倍率等を変更しない限り固定値であるため、予めデフォルト値として基準距離を設定して記憶部43に記憶しておいてもかまわない。
【0057】
次に、フィルムマスクFを走査する間、高さ検出センサ37のZ軸方向直下に位置するフィルムマスクFと当該高さ検出センサ37との距離が上記基準距離となるようにフォーカス制御部42がZ軸方向駆動機構36を制御して撮像カメラ31のZ軸方向の位置を移動させる。これによって、常に撮像カメラ31の焦点位置が常にフィルムマスクFの上面になるように撮像カメラ31のZ軸方向位置が制御され、フィルムマスクFのX−Y軸方向へ走査する間のオートフォーカスが実現される。
【0058】
次に、メイン制御部41は、フィルムマスクFの検査領域の一端から他端までの主走査が完了する毎に、X軸方向駆動機構35を制御して撮像カメラ31を副走査方向(X軸方向)に沿って所定距離だけ移動させる。そして、フォーカス制御部42は、撮像カメラ31のX軸方向の位置を固定した状態でステージ部21を前回と逆のY軸方向に移動させて走査する。このときも、フォーカス制御部42は、高さ検出センサ37のZ軸方向直下に位置するフィルムマスクFと当該高さ検出センサ37との距離が上記基準距離となるようにフォーカス制御部42がZ軸方向駆動機構36を制御して撮像カメラ31のZ軸方向の位置を移動させる。このような動作を繰り返すことによって、フィルムマスクFを走査する間、撮像カメラ31の焦点位置が常にフィルムマスクFの上面にあたるように撮像カメラ31のZ軸方向の位置が制御されながら、フィルムマスクFの検査領域全体の画像データが撮像カメラ31から出力される。
【0059】
このように、本発明の外観検査装置1は、撮像カメラ31に対して保持板に保持された被検査物の傾きを制御することができる。例えば、精密な平面度や下面と上面間の平行度が保証されていない保持板を用いて被検査物が製造されていたとしても、当該保持板に保持された状態で被検査物の傾きを制御することができる。また、下面に対して上面の平行度が悪い保持板に保持された被検査物を撮像カメラ31があるタイミングで撮像した画像であっても、全ての範囲を撮像カメラ31の焦点深度幅内に収めることができる。したがって、撮像カメラの焦点を全ての範囲で被検査物の上面に一致させた画像を得ることができるため、当該画像を用いて正確な外観検査が可能となる。
【0060】
また、被検査物を外観検査装置1内に載置するために、予め精密に位置調整されたステージ(テーブル)が不要であるため、外観検査装置1自体のコストダウンが図れる。なお、このようなコストダウン効果を期待しない場合、被検査物の形態に応じてステージ部21の枠体上に被検査物を載置して撮像を行ってもかまわない。この場合、ステージ部21の枠体上面は、所定の平面度以下の加工精度で形成され、撮像カメラ31に対する傾きが位置調整されて設置される。例えば、平面度および平行度が保証されたガラステーブル等に密着保持された被検査物を撮像する場合、上述したステージ部21の枠体上面に当該ガラステーブルを載置することによって、従来と同様の被検査物の撮像も可能である。
【0061】
また、上述したステージ部21の枠体上面に被検査物が密着保持されたガラステーブルを載置して被検査物の撮像する場合であっても、上述した傾き調整を行ってもかまわない。例えば、枠体上面に被検査物が密着保持されたガラステーブルを載置した後に、当該被検査物上に設定した傾き測定ポイントに対する距離L(図6参照)を検出する。そして、それらの距離Lが所定範囲上のばらつきを含んでいる場合、傾き調整機構25の傾き調整保持ピン253を枠体上面より突出する位置まで上昇させる。これによって、上記ガラステーブルは、傾き調整保持ピン253の上先端部と接して載置されるため、上述した保持板Paと同様の傾き調整が可能となる。
【0062】
また、上記ステップS93の動作の後に、再度傾き測定ポイントまでの距離Lを検出してもかまわない。例えば、傾き調整機構25の上下動に応じた変化の予想が難しい場合、調整後の距離Lを確認することによって、保持板Paに保持された被検査物の傾きが保証され、さらに調整が必要な場合に同様の調整を繰り返すことが可能となる。
【0063】
また、上述した説明では、ステージ部21に4つの傾き調整機構25a〜25dを設置した。これによって、傾き調整機構25上に載置される保持板Paの端部(例えば、図4に示す保持板Paの右上角部および左上角部)が、自重により垂れ下がることを防止することができる。このような効果を期待しない場合、または保持板自体に上記垂れ下がりが生じない剛性が確保されている場合、ステージ部21に3つの傾き調整機構を設置すればよい。この場合、2つの傾き調整機構は、上記傾き調整機構25aおよび25bと同様の位置(図4参照)に配設される。また、1つの傾き調整機構は、ステージ部21の枠体内の矩形に対して、他の2つの傾き調整機構が配設された他方辺の中点近傍(例えば、図4に示す中点Mの位置)に配設される。このように、傾き調整機構の設置数を限定することによって、それらの上に載置する保持板との接触を確実にすることが可能となり、それぞれの傾き調整保持ピンの上下動に応じた傾き測定ポイントの変化を容易に予想することができる。
【0064】
なお、このような効果を期待しない場合、ステージ部21に5つ以上の傾き調整機構を設置しても本発明が実現可能であることは言うまでもない。また、ステージ部21に5つ以上の傾き調整機構を設置する場合でも、被検査物を保持する保持板のサイズに応じて、接触させる4つ(または3つ)の傾き調整機構を選択する形態も考えられる。
【0065】
また、小さなサイズの保持板に被検査物が保持されていても、ステージ部21に上述した4つの傾き調整機構25a〜25dによって本発明の実現が可能である。例えば、4つの傾き調整保持ピン253a〜253dの先端部全てと接触可能な板状部材(例えば、ガラステーブル)を別に用意する。そして、傾き調整保持ピン253a〜253d上に当該板状部材を載置し、その上面に被検査物を保持した小さなサイズの保持板を配置すれば、当該保持板の傾きを4つの傾き調整機構25a〜25dによって調整することができる。
【0066】
また、上述した説明では、撮像カメラ31が保持板Paの下方に設けられた透過照明用光源から被検査物に照射された透過光を受光する例を説明したが、光源は保持板Paの上部に設けてもかまわない。この場合、撮像カメラ31が保持板Paの上部に設けられた光源から被検査物で反射した反射光を受光することになる。
【0067】
また、本実施形態ではステージ部21がY軸方向へ移動することによって主走査を行うとしたが、本発明はこれに限らず、撮像カメラ31を主走査方向に移動させることによって主走査を行うようにしてもよい。同様に、撮像カメラ31を副走査方向に移動させる替わりに、ステージ部21を副走査方向に移動させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る外観検査装置および方法は、精度の高い検査を行うことができ、保持板等に保持された薄板状の部材等を被検査物として外観検査する外観検査装置や外観検査方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態に係る外観検査装置の全体構成を模式的に示す上面図および正面図
【図2】図1の外観検査装置1の制御機能を示すブロック図
【図3】保持板Paに保持されたフィルムマスクFを載置したステージ部21について図1の断面iiをj方向から見た断面図
【図4】保持板Paに保持されたフィルムマスクFを載置したステージ部21の上面図
【図5】外観検査装置1を用いて外観検査する動作を示すフローチャート
【図6】高さ検出センサ37の動作の一例を示す正面図
【図7】傾き調整機構25の動作の一例を示す正面図
【符号の説明】
【0070】
1…外観検査装置
2…ステージ搬送機構部
21…ステージ部
22…旋回部
23…Y軸方向駆動機構
231…Y軸駆動モータ
232…Y軸NCドライバ
24…ベース部
25…傾き調整機構
251…傾き調整モータ
252…傾き調整ドライバ
253…傾き調整保持ピン
3…撮像機構部
31…撮像カメラ
32…支持部材
33…X軸方向駆動部材
34…カメラ支持部材
35…X軸方向駆動機構
351…X軸駆動モータ
352…X軸NCドライバ
36…Z軸方向駆動機構
361…Z軸駆動モータ
362…Z軸NCドライバ
37…高さ検出センサ
4…制御部
41…メイン制御部
42…フォーカス制御部
43…記憶部
431…高さテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を撮像して検査する外観検査装置であって、
被検査物を少なくとも3つの先端で支持して、当該被検査物を載置する保持部と、
前記保持部の先端をそれぞれ上下動させる駆動部と、
前記保持部に載置された被検査物を撮像する撮像手段と、
前記保持部および前記撮像手段の少なくとも一方を相対的に移動させる相対移動手段と、
前記撮像手段から前記保持部に載置された被検査物までの当該撮像手段の視線方向距離を、当該被検査物の複数位置に対して検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した各距離に基づいて前記駆動部の動作を制御し、当該距離が所定の条件を満たすように前記保持部の先端をそれぞれ上下動させる制御部と、
前記相対移動手段が前記保持部および前記撮像手段の少なくとも一方を相対的に移動させるとき、当該撮像手段の上下位置を制御して当該撮像手段の焦点を前記保持部に載置された被検査物に合わせるオートフォーカス手段とを備える、外観検査装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記被検査物上の3つの位置に対して前記距離を検出し、
前記制御部は、前記3つの位置に対する前記距離がそれぞれ等しくなるように前記保持部の先端をそれぞれ上下動させることを特徴とする、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記被検査物上の3つ以上の位置に対して前記距離を検出し、
前記制御部は、前記検出手段が検出した前記被検査物上の全ての位置に対する前記距離がそれぞれ所定の範囲内になるように前記保持部の先端をそれぞれ上下動させることを特徴とする、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記被検査物は、平板状の保持板に保持されており、
前記保持部は、前記保持板の下面を少なくとも3つの先端で支持することを特徴とする、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記検出手段が前記距離を検出する複数位置は、前記保持板を前記保持部の先端で支持する位置から最も近い被検査物上の位置を含むことを特徴とする、請求項4に記載の外観検査装置。
【請求項6】
前記被検査物は、平板状の保持板に保持されており、
前記保持部は、前記保持板の下面を4つの先端で支持することを特徴とする、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項7】
前記検出手段が前記距離を検出する複数位置は、前記保持板を前記保持部の先端で支持する隣接した2つの位置からそれぞれ最も近い被検査物上の位置と、前記保持板を前記保持部の先端で支持する他の2つの位置の中点から最も近い被検査物上の位置とに設定されることを特徴とする、請求項6に記載の外観検査装置。
【請求項8】
前記外観検査装置は、被検査物を載置する載置面がその上面に形成された固定枠を、さらに備え、
前記保持部は、前記固定枠の内部に配設されることを特徴とする、請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項9】
撮像部を用いて被検査物を撮像して検査する外観検査方法であって、
被検査物を少なくとも3つの先端で支持して、当該被検査物を載置する保持ステップと、
前記撮像部から前記先端に載置された被検査物までの当該撮像部の視線方向距離を、当該被検査物の複数位置に対して検出する検出ステップと、
前記検出ステップで検出した各距離に基づいて、当該距離が所定の条件を満たすように前記先端をそれぞれ上下動させる制御ステップと、
前記距離が所定の条件を満たした後、被検査物および前記撮像部の少なくとも一方を相対的に移動させながら、前記撮像部の焦点を被検査物に合わせて撮像するオートフォーカスステップとを含む、外観検査方法。
【請求項10】
前記検出ステップは、前記被検査物上の3つの位置に対して前記距離を検出するステップを含み、
前記制御ステップは、前記3つの位置に対する前記距離がそれぞれ等しくなるように前記先端をそれぞれ上下動させるステップを含む、請求項9に記載の外観検査方法。
【請求項11】
前記検出ステップは、前記被検査物上の3つ以上の位置に対して前記距離を検出するステップを含み、
前記制御ステップは、前記検出ステップで検出した前記被検査物上の全ての位置に対する前記距離がそれぞれ所定の範囲内になるように前記先端をそれぞれ上下動させるステップを含む、請求項9に記載の外観検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−33202(P2007−33202A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216117(P2005−216117)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】