説明

容器の洗浄装置

【課題】 容器内部をまんべんなく適切に洗浄することができる容器の洗浄装置を課題とする。
【解決手段】 流体の噴射により容器内部5を洗浄する容器1の洗浄装置30であって、容器口部19から容器内部5に挿入され、容器内部5で流体を噴射する噴射体32を備える。噴射体32は、容器1の軸線に対して螺旋状に開口した噴射口143を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の噴射により容器内部を洗浄する容器の洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗浄装置として、ノズル等の噴射体から噴射した洗浄液により容器の内壁を洗浄するものが広く知られている(例えば、特許文献1ないし4参照。)。このうち、特許文献1に記載の洗浄装置は、洗浄液、エアブローおよび乾燥の一連の洗浄処理を行うものであり、洗浄液供給流路とエア供給流路とが二重管構造となったノズルを使用している。ノズルは、容器口部側から容器内部の奥側に向かって、洗浄液やエアを噴射する。
【特許文献1】特開平7−16554号公報(第2頁および第1図)
【特許文献2】特開2003−181404号公報
【特許文献3】特開2003−266039号公報
【特許文献4】特開平9−248537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の洗浄装置のノズルは、噴射口の噴射指向性が一定であるため、容器内部の形状によっては、ノズルから噴射された流体が到達しない死角ができる場合があった。それ故、洗浄ムラや水きりムラなどが生じ、乾燥時間が長期化するなど、一連の洗浄処理の効率が悪くなっていた。
【0004】
もっとも、かかる問題を解消するべく、噴射指向性の異なるノズルを併用することも考えられる。しかし、二つのノズルを同時に使用すると、噴射された流体が干渉して却って洗浄ムラ等が生じる。また、二つのノズルを交換するのでは、洗浄処理に時間がかかったり、洗浄装置が大型化したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、容器内部をまんべんなく適切に洗浄することができる容器の洗浄装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の容器の洗浄装置は、流体の噴射により容器内部を洗浄する容器の洗浄装置であって、容器口部から容器内部に挿入され、容器内部で流体を噴射する噴射体を備え、噴射体は、容器の軸線に対して螺旋状に開口した噴射口を有するものである。
【0007】
この構成によれば、容器内部に挿入された噴射体の噴射口からは流体が螺旋状に噴射されるようになる。これにより、噴射された流体の干渉を抑制することを可能としつつ且つ容器内部に死角を生じ難くさせることが可能となり、容器内部をまんべんなく適切に洗浄することが可能となる。なお、噴射口は、複数の穴を螺旋の軌跡に沿って開口したものでもよいし、単一または複数のスリットを螺旋の軌跡に沿って開口したものであってもよい。
【0008】
この場合、噴射体は、容器内部において容器の軸線上に位置することが、好ましい。
【0009】
この場合、噴射体からの流体の噴射に同期して、噴射体および容器の少なくとも一つを容器の軸線回りに回転させる回転装置を、更に備えたことが、好ましい。
【0010】
この構成によれば、噴射体が容器に対して相対回転しながら流体を螺旋状に噴射するため、例えば容器の内壁に付着した塵埃や液体などの付着物を掻き出すように、流体を容器の内壁に作用させることができる。これにより、ムラを抑制することができると共に、洗浄作用を高めることができる。また、回転装置を備えているため、容器の軸線回りに噴射口を一周に亘って設けなくても済む。
【0011】
これらの場合、噴射口は、水平方向において少なくとも約180度まで流体を噴射可能に螺旋状に開口していることが、好ましい。
【0012】
これらの場合、噴射口は、仰角、伏角、または仰角と伏角とを合計した角度が少なくとも約120度まで、流体を噴射可能に螺旋状に開口していることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、仰角や伏角の方向に流体を噴射することで、例えばタンク形状の容器の両端部を適切に洗浄し得る。
【0014】
これらの場合、噴射口は、螺旋状の第1の部分から噴射される流体の噴射方向と、螺旋状の第2の部分から噴射される流体の噴射方向とがねじれの関係にあることが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、噴射口の第1の部分および第2の部分から噴射された流体同士の干渉を抑制しつつ、且つ容器内部に死角を生じ難くさせることができる。これにより、容器内部をまんべんなく適切に洗浄し得る。
【0016】
これらの場合、容器口部を下側にまたは斜め下側に開放するように容器を支持する支持装置を、更に備えたことが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、噴射体の噴射した流体が液体である場合には、その使用済み液体を重力を利用して容器口部から排液することができる。また、噴射体の噴射した流体が気体である場合には、重力を利用した例えば水切りをし易くなる。
【0018】
これらの場合、噴射体および容器の少なくとも一つを容器の軸線方向に沿って移動させる移動装置を、更に備えたことが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、移動装置を利用して噴射体を容器口部から容器内部に挿入することができる。また、容器内部で噴射体を容器に対し相対移動させながら、容器内部で流体を噴射することができる。さらに、容器の軸線方向の長さに対応した長さの噴射口としなくても済む。
【0020】
これらの場合、噴射体が噴射する流体は、洗浄用流体、ブロー用流体および乾燥用流体の少なくとも一つであることが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、洗浄液などの洗浄用流体であれば容器内部の洗浄ムラを抑制することができ、圧縮ガスなどのブロー用流体であれば例えば容器内部の水切りムラを抑制することができる。また、温風などの乾燥用流体であれば、乾燥ムラの抑制や乾燥時間を短縮し得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明の容器の洗浄装置によれば、噴射口が螺旋状に開口しているため、容器内部をまんべんなく適切に洗浄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態に係る容器の洗浄装置について説明する。この洗浄装置は、タンク状の容器の内部で所定の流体(例えば、洗浄液、圧縮エア、温風)を螺旋状に噴射して、容器内部をまんべんなく洗浄することができるものである。以下では、先ず容器の構造について簡単に説明し、その後で洗浄装置について詳細に説明する。なお、第2実施形態以降では、第1実施形態と共通する構成については第1実施形態と同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0024】
<第1実施形態>
図1に示すように、容器1は、全体として密閉円筒状の容器本体2と、容器本体2の長手方向の両端部に取り付けられた口金3と、を具備している。容器本体2の内部(すなわち、容器内部)は、各種の気体や液体などの流体を貯留する貯留空間5となっている。容器1は、常圧の流体を充填することもできるし、常圧に比して圧力が高められた流体を充填することもできる。すなわち、容器1は、高圧タンクとして機能することができる。
【0025】
例えば、燃料電池システムでは、高圧の状態で用意された燃料ガスを減圧して、燃料電池の発電に供している。容器1は、高圧の燃料ガスを貯留するのに適用することができ、燃料ガスとしての水素ガスや、圧縮天然ガス(CNGガス)などを貯留することができる。容器1に充填される水素ガスの圧力としては、例えば35MPaあるいは70MPaであり、CNGガスの圧力としては、例えば20MPaである。以下では、水素ガスを高圧で貯留するためのタンク形状の容器1を一例に説明する。
【0026】
容器本体2は、その軸線方向にほぼ一定の径の胴部11と、胴部11の両端部に設けられ、胴部11よりも縮径した一対の端壁部12,12と、で構成されている。容器本体2は、例えば二層構造からなり、その二層構造は、ガスバリア性を有する樹脂製のライナ15(内殻)と、ライナ15の外周に配置された補強層16(外殻)と、で構成されている。
【0027】
ライナ15は、ポリエチレンなどの硬質の樹脂により形成され、ライナ15により容器1の内壁が主として構成されている。補強層16は、例えば炭素繊維とエポキシ樹脂を含むFRPからなり、ライナ15の外表面を被覆するようにこれを巻きつけている。なお、容器本体2自体をアルミニウム合金など金属製として構成してもよいし、ライナ15をアルミニウム等の金属製とし、補強層16を樹脂製としてもよい。
【0028】
口金3は、例えばステンレスなどの金属で形成されている。口金3は、半球面状をした容器本体2の端壁部12の中心に設けられている。口金3は、胴部11よりも小さい径の開口部19を有しており、この開口部19は、容器1の口部として機能し、容器1の内部と外部とを連通している。開口部19は、バルブや継手等の配管要素を一体的に組み込んだバルブアッセンブリなどの機能部品のほか、栓や配管をねじ込み接続可能に構成されている。
【0029】
例えば、燃料電池システム上の容器1は、バルブアッセンブリを介して、貯留空間5と図示省略した外部のガス流路との間が接続される。そして、容器1は、バルブアッセンブリおよびガス流路を介して、貯留空間5に例えば水素ガスが充填されると共に、貯留空間5から例えば水素ガスが放出される。なお、容器1の両端部に口金3を設けたが、もちろん片方の端壁部12にのみ口金3を設け、その端壁部12を閉塞端部として構成してもよい。
【0030】
このような容器1は、例えばブロー成形や射出成形等を経て製造される。製造後の容器1に水素ガスを初期充填する前には、容器1を洗浄して、水素ガス等に不純物や異物が混入されるのを防ぐ必要がある。また、製造時のみならず、適宜の点検時においても、容器1の内部を洗浄する場合がある。以下、容器1の内部を洗浄するための洗浄装置30について詳細に説明する。
【0031】
図2は、洗浄装置30の構成を模式的に示すシステム図であり、噴射体としてのノズル32を容器1の内部に挿入した図である。
【0032】
洗浄装置30は、容器1を支持する支持機構31と、ノズル32に洗浄液を供給する洗浄機構33と、ノズル32に圧縮エアを供給するブロー機構35と、ノズル32に温風を供給する乾燥機構37と、ノズル32を容器1の軸線方向に移動させる移動機構38と、容器1を回転させる回転機構39と、これら各機構(33,35,37,38,39)を統括制御する制御装置40と、を備えている。洗浄装置30は、支持機構31により支持された容器1の内部に対し、ノズル32を用いて、洗浄液による洗浄、圧縮エアによる水切り、および温風による乾燥の一連の洗浄処理を実行する。
【0033】
支持機構31は、容器1の口金3を下方に向けた状態(直立状態)で容器1を支持する。一連の洗浄処理中では、容器1の上側の口金3には図示省略した栓が接続される一方、容器1の下側の口金3は、下方に向けて開放されている。支持機構31に支持された容器1の軸線方向は、鉛直方向に合致している。
【0034】
支持機構31は、架台51の上部に設けられた支持体52と、支持体52に設けられて容器1の胴部11を上下二箇所で保持する一対の保持機構53,53と、を有している。支持機構31に支持された容器1は、その内部に噴射された洗浄液の排液が開口部19から下方に流れ落ちて、図示省略した排液パンなどに貯留されるようになっている。
【0035】
移動機構38は、例えば、駆動源となるモータ71と、モータ71に連結されたボールねじ72と、ボールねじ72に螺合するボールナット73と、ボールナット73に連結されると共にノズル32を支持する支持ベース61と、を備えている。モータ71は、制御装置40に接続されている。
【0036】
モータ71を正逆回転させることで、ボールねじ72およびボールナット73を介して、支持ベース61上のノズル32が、鉛直方向(容器1の軸線方向)に沿って上下移動する。例えば、支持ベース61が上動した場合には、ノズル32が口金3の開口部19から容器1の内部に挿入される。一方、支持ベース61が下動した場合には、容器1の内部のノズル32が開口部19から容器1の外部へと抜き出される。
【0037】
なお、モータ71をエアシリンダなどの他のアクチュエータで構成してもよいし、ボールねじ72およびボールナット73に代えてヘリカルレールを用いてもよいし、ラックとピニオンによる構成としてもよい。また、ノズル32を移動させるのでなく、ノズル32を固定配置し、これに対して容器1をその軸線方向に移動させるようにしてもよい。すなわち、移動機構38は、容器1に対してノズル32を容器1の軸線方向に沿って相対的に移動させる構成であればよい。
【0038】
回転機構39は、例えば、一対の保持機構53,53の間に設けられ、容器1をその軸線回りに回転させる。図2では、回転機構39は簡略化して示されている。回転機構39は、制御装置40に接続されており、一連の洗浄処理における各種流体の噴射に同期して駆動される。なお、回転機構39は、容器1を回転させるのでなく、ノズル32自体を回転させるものであってもよい。すなわち、回転機構39は、容器1およびノズル32の少なくとも一つを容器1の軸線回りに回転させる構成であればよい。
【0039】
ノズル32は、所定の流体が流動するパイプ91と、パイプ91の先端部に設けられ、所定の流体を噴射する噴射部92と、で構成されている。噴射部92は、後述するように、容器1の内壁に対して所定の流体を螺旋状に噴射可能に構成されている。
【0040】
パイプ91は、硬質の材料からなり、容器1の軸線方向に延在している。パイプ91および噴射部92は、口金3の開口部19を通過可能に構成されており、これらを容器1の内部に挿入した状態では、パイプ91と口金3との間には所定の間隙ができるようになっている。この間隙から使用済みの洗浄液が排液され、上記の排液パンに貯留される。
【0041】
ここで、ノズル32が噴射する所定の流体は、洗浄液、圧縮エアおよび温風であり、洗浄装置30には、この三つの流体を個別に噴出するために、互いに独立した三つのノズル32が用意されている。三つのノズル32は、各々、洗浄機構33、ブロー機構35および乾燥機構37に接続されており、一連の洗浄処理における洗浄、水切り、乾燥の各工程において切り替えられるようになっている。なお、図2では、一つのノズル32のみを示している。
【0042】
洗浄機構33は、容器1の内部に挿入したノズル32により、洗浄用の流体となる洗浄液を噴射することで、容器1の内壁(洗浄面)の付着物や汚れなどを洗い落とすことができるものである。洗浄液としては、水を用いることもできるし、水等に洗浄剤を溶かしてなる適宜のものを用いることができる。
【0043】
洗浄機構33は、所定量の洗浄液を貯留する洗浄槽81と、洗浄用ホース83と、を有している。洗浄用ホース83は、その一端が洗浄槽81の中に接続され、その他端が支持ベース61のところで、ノズル32のパイプ91に接続されている。洗浄用ホース83は、可撓性を有しており、ノズル32の上下移動に追従することができるようになっている。
【0044】
洗浄用ホース83には、洗浄槽81側から順に、洗浄槽81内の洗浄液をノズル32に圧送するポンプ84と、洗浄用ホース83を開閉する電磁式の遮断弁85と、圧送される洗浄液中の不純物を除去するフィルタ86と、が介設されている。ポンプ84と遮断弁85とは、制御装置40に接続されている。ポンプ84により洗浄液の圧力が高められるため、容器1の内壁に対して、洗浄液による高圧洗浄がなされるようになっている。
【0045】
ブロー機構35は、容器1の内部に挿入したノズル32により、ブロー用の流体となる圧縮ガスを噴射することで、容器1の内壁に付着して残る洗浄液を払い落とすことができるものである。すなわち、ブロー機構35は、その前工程である洗浄工程において洗浄液が付着した容器1に対し、水切りを行う。圧縮ガスとしては、窒素などの不活性ガスを用いることもできるが、本実施形態では圧縮エアを用いている。
【0046】
ブロー機構35は、空気を取り込んでノズル32に圧送するコンプレッサ101と、コンプレッサ101とノズル32とを接続するブロー用ホース102と、を有している。コンプレッサ101は、制御装置40に接続されている。ブロー用ホース102は、支持ベース61のところで、ノズル32のパイプ91に接続されている。ブロー用ホース102は、可撓性を有しており、ノズル32の上下移動に追従することができるようになっている。
【0047】
ブロー用ホース102には、コンプレッサ101側から順に、コンプレッサ101で圧送される圧縮エアの圧力を調整する圧力調整機104と、ブロー用ホース102を開閉する電磁式の遮断弁105と、圧送される圧縮エア中の不純物を除去するフィルタ106と、が介設されている。圧力調整機104および遮断弁105は、制御装置40に接続されている。なお、ブロー用ホース102に、圧縮エアの温度を調整する温度調整装置を設けてもよい。
【0048】
乾燥機構37は、容器1の内部に挿入したノズル32により、乾燥用の流体を噴射することで、容器1の内壁や内部を乾燥することができるものである。乾燥用の流体としては、例えば温風を用いることができる。乾燥機構37は、温風を発生してノズル32に圧送する温風発生装置121と、温風発生装置121とノズル32とを接続する乾燥用ホース122と、を有している。
【0049】
温風発生装置121は、例えば、大風量の圧送が可能なコンプレッサ123と、コンプレッサ123で取り込んだ空気を加熱するヒータ124と、を備えている。コンプレッサ123およびヒータ124は、制御装置40に接続されている。ヒータ124は、容器1の材料特性に応じた温度に空気を調整する調整装置として機能する。ヒータ124は、ライナ15に応じた所定の温度に空気を調整し、例えば120℃、好ましくは70〜80℃に調整する。
【0050】
乾燥用ホース122は、支持ベース61のところで、ノズル32のパイプ91に接続されている。乾燥用ホース122は、可撓性を有しており、ノズル32の上下移動に追従することができるようになっている。乾燥用ホース122には、温風発生装置121側から順に、乾燥用ホース122を開閉する電磁式の遮断弁125と、送風される温風中の不純物を除去するフィルタ126と、が介設されている。遮断弁125は、制御装置40に接続されている。
【0051】
制御装置40(ECU)は、いずれも図示省略したが、CPU、ROM、RAM、および入出力インターフェースを有し、これらは互いにバスを介して接続されている。制御装置40は、各噴射機能のノズル32を順次切り替えつつ、供給手段としての洗浄機構33、ブロー機構35および乾燥機構37を駆動し、容器1の内部で各流体を噴射するように制御する。この際、移動機構38や回転機構39を制御したり、各種流体供給のための機構(33,35,37)を制御したりする。
【0052】
例えば、洗浄工程では、開口部19から上側の端壁部12近傍の容器1内へと挿入したノズル32から洗浄液を噴射させながら、移動機構38によりノズル32を下方に移動させ且つ回転機構39により容器1を回転させる。これにより、容器1の内壁の全領域が洗浄され、汚れが落ちる。
【0053】
洗浄後には、洗浄機構35を制御して洗浄液の通液を遮断し、今度はブロー機構35の駆動を開始する。そして、ノズル32から圧縮エアを噴射させながら、移動機構38によりノズル32を下方に移動させ且つ回転機構39により容器1を回転させる。これにより、容器1の内壁に付着した洗浄液が掻き落とされ、水切りされる。
【0054】
水切り後には、圧縮エアの通気を遮断弁105等により遮断し、今度は乾燥機構37によりノズル32から温風を噴射させる。これにより、容器1の内壁を含め、容器1の内部が乾燥される。この乾燥工程においても、洗浄工程および水きり工程と同様に、移動機構38および回転機構39を駆動するようにしてもよい。
【0055】
そして、移動機構38によりノズル32を開口部19から抜き出すと、洗浄装置30による一連の洗浄処理が終了する。最終的に、容器1を支持機構31から取り外し、容器1の口金3にバルブアッセンブリなどをねじ込むと、容器1は例えば燃料電池システムに搭載されるようになる。
【0056】
以下、図3および図4を参照して、ノズル32について詳述する。
ここでは、エアブロー用のノズル32を中心に説明する。なおもちろん、エアブロー用のノズル32の構成を洗浄液用のノズル32および温風用のノズル32に適用することができるが、その詳細な説明を省略する。
【0057】
ノズル32は、上記の移動機構38により、容器1の内部において容器1の軸線上に位置するようになっている。それゆえ、ノズル32を容器1の内部に挿入した状態では、ノズル32のパイプ91および噴射部92の軸線は、容器1の軸線に合致する。
【0058】
噴射部92は、パイプ91の内部に連通する円筒部141と、円筒部141に連なる半球部142と、で構成されている。噴射部92の噴射口143は、円筒部141および半球部142の両者に亘って複数が開口してなり、その複数の噴射口143は、全体として、容器1の軸線に対して螺旋状に位置している。したがって、圧縮エアは、複数の噴射口143から螺旋状に噴射される。なお、噴射部92の形状は上記に限るものではない。またこの構成に代えて、噴射口143は、容器1の軸線から偏心した軸線に対して螺旋状に開口した構成としてもよい。
【0059】
図4に示すように、複数の噴射口143は、例えば直径が1.5mmの12個の小穴で構成されている。12個の噴射口143は、容器1の軸線の周りを半周の領域に亘って分散して形成されている。すなわち、12個の噴射口143は、容器1の軸線に直交する基準面(水平方向)において約0度〜約180度の範囲まで、圧縮エアを噴射可能に構成されている。12個の噴射口143を約0度〜約180度の範囲において均等に分散させた場合には、隣り合う二つの噴射口143の噴射方向がなす角度は、容器1の軸線に直交する基準面において、約16.4度となる。
【0060】
図3に示すように、複数の噴射口143は、容器1の軸線方向において約0度〜約120度の範囲に亘って、圧縮エアを噴射可能に構成されている。この約120度までの範囲は、容器1の軸線に直交する基準面に対し、仰角が約120度までの範囲、伏角が約120度までの範囲、または、仰角と伏角とを合計した角度が約120度までの範囲、とすることができる。
【0061】
本実施形態では、12個の噴射口143は、仰角と伏角との合計が約120度となる範囲まで圧縮エアを噴射可能に構成され、その全ての噴射方向が異なっている。例えば、12個の噴射口143の半数程度は、互いに異なる仰角で圧縮エアを噴射するように構成され、12個の噴射口143の残りの半数程度は、互いに異なる伏角で圧縮エアを噴射するように構成されている。
【0062】
好ましい態様としては、12個の噴射口143のうち、螺旋状の最外端に位置する2個の噴射口143の噴射角度が、最大の仰角および最大の伏角となるように設定すればよい。例えば、最外端の一方に位置する噴射口143の噴射角度θ1を仰角60度とし、最外端の他方に位置する噴射口143の噴射角度θ2を伏角60度とすればよい。そして、これらの間に位置する残りの10個の噴射口143の噴射角度については、噴射角度θ1の噴射口143から噴射角度θ2の噴射口143に向かって、仰角が徐々に小さくなり且つ途中から徐々に伏角が大きくなるように設定すればよい。
【0063】
このように、複数の噴射口143は、各々の噴射角度が容器1の軸線に直交する基準面上において異なり且つこの基準面に対して異なっており、各々の噴射方向がねじれの関係に位置するようになっている。このような噴射指向性に設定することで、各噴射口143から噴射される圧縮エア同士が干渉することを抑制することができる。これにより、容器1の内壁の目的箇所に圧縮エアを適切に衝突させることが可能となり、容器1の内壁の洗浄作用を高めることができる。
【0064】
なお、変形例としての複数の噴射口143は、水平方向において180度以下、例えば90度となる1/4周の領域において圧縮エアを噴射可能であってもよい。また、複数の噴射口143は、水平方向において180度以上であってもよい。例えば、容器1に対して噴射部92を相対回転させない場合には、複数の噴射口143は、360度となる1周の領域において圧縮エアを噴射可能に構成するとよい。
【0065】
また、変形例としての複数の噴射口143は、容器1の軸線方向において120度を越えた範囲まで圧縮エアを噴射するようにしてもよいし、あるいは120度未満、例えば90度の範囲で圧縮エアを噴射するようにしてもよい。また、変形例としての複数の噴射口143は、容器1の軸線方向に直交する基準面に対して噴射角度を異ならせるのでなく、この基準面に平行に圧縮エアを噴射するものであってもよい。
【0066】
図5は、ノズル32から噴射した圧縮エアが容器1に衝突する範囲や、衝突した圧縮エアによる洗浄液滴の動きを模式的に示す図である。
ノズル32の噴射口143から噴射された圧縮エアは、扇子のような平面状の流れとなって容器1の内壁に衝突する。噴射部92が、容器1の上側の端壁部12に臨む場合には、図5において斜線で囲まれた領域Aが、噴射口143からの圧縮エアが容器1に衝突する範囲となる。これから理解されるように、噴射口143からの圧縮エアは、端壁部12の内壁および胴部11の上側の内壁に螺旋状に衝突する。特に、仰角の噴射角度が設定された噴射口143からの圧縮エアは、上側の端壁部12の内壁に積極的に衝突する。
【0067】
この圧縮エアの衝突により、容器1の内壁に付着した洗浄液は、領域Aから液滴となって弾かれる。そして、容器1を軸線回りの矢印H方向に回転させることで、液滴は、噴射口143からの平面状の圧縮エアによって掻き出されるように移動される。上記のように、噴射口143からの圧縮エアの流れは螺旋状になっているため、容器1の回転を所定時間継続することで、上側の端壁部12の内壁および胴部11の上側の内壁に付着した液滴は、平面状の圧縮エアの最下部まで掻き出されるようになる。
【0068】
その後は、図6に示すように、噴射口143からの圧縮エアの噴射および容器1の回転を継続しながら、ノズル32を容器1の軸線方向の下方に移動させると、胴部11の内壁に螺旋状の圧縮エアが順次衝突する。これにより、胴部11の内壁に付着した液滴が、掻き出される。最終的に、噴射部92が容器1の下側の端壁部12に臨むと、伏角の噴射角度が設定された噴射口143からの圧縮エアが、この端壁部12の内壁に衝突する。これにより、下側の端壁部12の内壁に付着している液滴は、掻き出されて開口部19へと排液される。この一連の噴射、移動および回転により、容器1の内壁の水切りが完了する。
【0069】
ここで、圧縮エアの噴射中に容器1を回転させる方向(矢印H方向)は、容器1の内壁に付着した液滴を押し下げる作用が生じるように、噴射口143の螺旋の巻き方向と対応させることが好ましい。なお、上記したように、容器1を回転させるのでなく、ノズル32を回転させるようにしてもよい。また、ノズル32を軸線方向に移動させるのでなく、容器1を軸線方向に移動させてもよい。
【0070】
以上のように、本実施形態の洗浄装置30によれば、ノズル32の噴射口143が容器1の軸線に対して螺旋状に開口しているため、圧縮エアを容器1の内壁に対し螺旋状に噴射することができる。これにより、容器1の上下の端壁部12,12および胴部を含む容器1の内部に死角を生じさせることなく、ノズル32により容器1の内部をまんべんなく水切りすることが可能となる。
【0071】
<第2実施形態>
次に、図7を参照して、第2実施形態に係るノズル32について相違点を中心に説明する。第1実施形態との相違点は、噴射口143の形状を丸穴からスリット(長穴)に代えたことである。
【0072】
噴射口143は、単一のスリットからなり、容器1の軸線に対して螺旋状に開口するなど、噴射指向性などのその他の点は上記と同様である。噴射口143のスリット加工は、ワイヤーカットやホイールカッタなどで行えばよく、その幅は例えば0.5mmとすればよい。このような噴射口143の構成であっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、噴射口143は、螺旋の軌跡に沿って分散して設けた複数のスリットで構成してもよい。
【0073】
<第3実施形態>
次に、図8ないし図10を参照して、第3実施形態に係る洗浄装置30について相違点を中心に説明する。第1実施形態との主な第1の相違点は、容器1の形状に返しとなる突出部181を設けたことと、これに伴って、洗浄装置30で傾けて支持した容器1を回転させるようにしたことである。また、主な第2の相違点としては、洗浄装置30に吸引機構190を設けたことである。
【0074】
図8は、容器1の断面図である。
容器1は、その各端壁部12に形成され、容器本体2の内部に突出する突出部181を備えている。突出部181は、口金3が取り付けられるライナ15の口部に折り返されるように設けられ、容器1の軸線方向を軸線とする略筒状の形状を有している。突出部181の外周面とライナ15の内面との間には、ドーナツ状の空間182が構成されている。突出部181は、構造上のいわゆる返しとも言い換えることができ、ライナ15の強度、ひいては容器1の強度を確保するのに機能している。
【0075】
なお、容器1のその他の構造は、第1実施形態と同じである。また、容器1に上下一対の突出部181を設けたが、一方については省略してもよい。さらに、突出部181をライナ15に形成したが、もちろんこれに限るものではない。ライナ15を第1実施形態と同じように構成し、口金3が容器1の内部に突出するようにした場合には、口金3のその突出部分が突出部181となる。
【0076】
図9は、洗浄装置30を模式的に示すシステム図である。
洗浄装置30は、第1実施形態と同様に、支持機構31、洗浄機構33、ブロー機構35、乾燥機構37、移動機構38、回転機構39、および制御装置40を有している。
【0077】
支持機構31は、容器1の開口部19を斜め下側に開放するように、容器1を傾けた状態で支持する。容器1の上側の口金3には、洗浄処理においては図示省略した栓が接続される。支持機構31に支持された容器1の軸線方向は、鉛直方向に交差するように、鉛直方向から傾けられる。このときの、容器1の軸線方向の傾斜角度は、鉛直方向に対し90度(すなわち、水平姿勢で支持の状態)よりも小さければよく、好ましくは30〜60度である。例えば支持状態の容器1の高さを抑制する観点からすれば、容器1の軸線方向の傾斜角度は、35度が好ましい。
【0078】
移動機構38は、支持ベース61を介してノズル32を容器1の軸線方向に移動させる。回転機構39は、簡略化して示されているが、第1実施形態と同様に、支持機構31に支持された容器1をその軸線回りに回転させる。なお、上記同様に、移動機構38は、容器1に対しノズル32を軸線方向に相対移動させるものであればよい。
【0079】
図10に示すように、上記の通り、容器1には突出部181が設けられているため、洗浄工程で噴射された洗浄液の一部は、容器1の開口部19から自然流下により排液されずに、この開口部19の近傍の空間182に溜まる場合がある。吸引機構190は、この溜まった洗浄液を排液するためのものである。
【0080】
図9に示すように、吸引機構190は、容器1の開口部19を通って、容器1の内部の上記空間182に一端が位置する吸引用チューブ191と、吸引用チューブ191の他端が位置する排液受け部192と、吸引用チューブ191に介設された吸引ポンプ193と、を具備している。吸引ポンプ193は、制御装置40に接続されている。
【0081】
吸引ポンプ193の駆動により、容器1内の空間182に溜まった洗浄液が吸引用チューブ191を介して吸引され、排液受け部192に排液されるようになっている。したがって、空間182に溜まった洗浄液を吸引機構190により適切に除去することができる。
【0082】
ここで、一連の洗浄処理において吸引ポンプ193を駆動するタイミングは、ノズル32から洗浄液を噴射している洗浄工程中であってもよいし、ノズル32への洗浄液の送液を停止した洗浄工程後であってもよい。また、吸引ポンプ193の駆動タイミングは、ノズル32から圧縮エアを噴出している水きり工程中であってもよいし、ノズル32への圧縮エアの送気を停止した水切り工程後であってもよい。
【0083】
以上のように、本実施形態によれば、容器1の強度を突出部181で高めることができると共に、この突出部181に起因して洗浄液が溜まったとしても、これを吸引機構190により適切に除去することができる。したがって、螺旋状に噴射するノズル92によって、容器1の内壁をまんべんなく水切りすることができる。
【0084】
なお、上記各実施形態では、樹脂製の容器1を対象としたが、スチール製の容器1等の場合には、比較的高温の蒸気を用いて洗浄・乾燥することができる。もっとも、本実施形態のような洗浄方法をとることで、蒸気を用いないで樹脂製の容器1を洗浄することができる。また、ブロー用流体である圧縮エアの温度を、容器1の乾燥を兼ねるような所定の温度に設定することができれば、乾燥用流体を用いた乾燥時間の短縮または乾燥用流体を用いなくて済むようになる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
上記した本発明の洗浄装置30や洗浄方法により洗浄された容器1は、燃料電池システムを搭載した車両などに用いるのに好適である。また、車両以外の航空機や船舶など、容器1に貯留された流体を動力源として用いる輸送機関にも、本発明の容器1を好適に適用することができる。また、洗浄流体としてエアを用いた場合には、現像剤収納容器、その他の粉体を収納する粉体容器の内面に付着した残留物を好適に除去し得る。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1実施形態に係る容器の断面図である。
【図2】第1実施形態に係る容器の洗浄装置を模式的に示すシステム図である。
【図3】第1実施形態に係る噴射体を示す図であり、(a)正面図、(b)噴射口の螺旋構造および噴射角度についての説明図である。
【図4】第1実施形態に係る噴射体の平面図である。
【図5】第1実施形態に係る噴射体から圧縮エアを容器内部で噴射させた場合について、圧縮エアが容器に衝突する範囲や、洗浄液滴の動きを模式的に示す図である。
【図6】第1実施形態に係る噴射体を容器内部で相対移動させた場合について、圧縮エアが容器に衝突する範囲を模式的に示す図である。
【図7】第2実施形態に係る噴射体の正面図である。
【図8】第3実施形態に係る容器の断面図である。
【図9】第3実施形態に係る容器の洗浄装置を模式的に示すシステム図である。
【図10】第3実施形態に係る容器の洗浄装置で容器を洗浄した場合について、容器の突出部と洗浄液との関係を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0087】
1:容器、5:貯留空間(容器内部)、19:開口部(容器口部)、30:洗浄装置、31:支持機構、32:ノズル(噴射体)、33:洗浄機構、35:ブロー機構、37:乾燥機構、38:移動機構、39:回転機構、92:噴射部、143:噴射口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の噴射により容器内部を洗浄する容器の洗浄装置であって、
容器口部から前記容器内部に挿入され、当該容器内部で流体を噴射する噴射体を備え、
前記噴射体は、前記容器の軸線に対して螺旋状に開口した噴射口を有する容器の洗浄装置。
【請求項2】
前記噴射体は、前記容器内部において当該容器の軸線上に位置する請求項1に記載の容器の洗浄装置。
【請求項3】
前記噴射体からの前記流体の噴射に同期して、前記噴射体および前記容器の少なくとも一つを当該容器の軸線回りに回転させる回転装置を、更に備えた請求項2に記載の容器の洗浄装置。
【請求項4】
前記噴射口は、水平方向において少なくとも約180度まで前記流体を噴射可能に螺旋状に開口している請求項1ないし3のいずれか一項に記載の容器の洗浄装置。
【請求項5】
前記噴射口は、仰角、伏角、または仰角と伏角とを合計した角度が少なくとも約120度まで、前記流体を噴射可能に螺旋状に開口している請求項1ないし4のいずれか一項に記載の容器の洗浄装置。
【請求項6】
前記噴射口は、前記螺旋状の第1の部分から噴射される流体の噴射方向と、前記螺旋状の第2の部分から噴射される流体の噴射方向とがねじれの関係にある請求項1ないし5のいずれか一項に記載の容器の洗浄装置。
【請求項7】
前記容器口部を下側にまたは斜め下側に開放するように前記容器を支持する支持装置を、更に備えた請求項1ないし6のいずれか一項に記載の容器の洗浄装置。
【請求項8】
前記噴射体および前記容器の少なくとも一つを当該容器の軸線方向に沿って移動させる移動装置を、更に備えた請求項1ないし7のいずれか一項に記載の容器の洗浄装置。
【請求項9】
前記噴射体が噴射する前記流体は、洗浄用流体、ブロー用流体および乾燥用流体の少なくとも一つである請求項1ないし8のいずれか一項に記載の容器の洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−314947(P2006−314947A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141316(P2005−141316)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】