射出装置およびパターン形成装置、並びに、射出方法およびパターン形成方法
【課題】高粘度の材料を射出して基板上にパターンを形成することができるパターン形成技術を提供する。
【解決手段】透明な基材41の表面に加熱により圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その層の上に複数の射出孔46を設けたノズルプレート45を接着している。複数の射出孔46には被射出材たる金属ペースト43を装填している。そして、レーザー光照射部60が基板Wに対して相対移動しつつ、レーザー光照射をオンオフして複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42を加熱する。レーザー光照射によって加熱された圧力発生部材42の一部では、樟脳の昇華に起因した急激な体積膨張により圧力波が発生する。こうして発生した圧力により、射出孔46に装填された金属ペースト43を基板Wに向けて射出し、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンを形成する。
【解決手段】透明な基材41の表面に加熱により圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その層の上に複数の射出孔46を設けたノズルプレート45を接着している。複数の射出孔46には被射出材たる金属ペースト43を装填している。そして、レーザー光照射部60が基板Wに対して相対移動しつつ、レーザー光照射をオンオフして複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42を加熱する。レーザー光照射によって加熱された圧力発生部材42の一部では、樟脳の昇華に起因した急激な体積膨張により圧力波が発生する。こうして発生した圧力により、射出孔46に装填された金属ペースト43を基板Wに向けて射出し、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被射出材を対象物に向けて射出する射出装置および方法、並びに、射出した被射出材によって基板上にパターンを形成するパターン形成装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウェハーやフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板等の基板に金属配線(電気配線)を形成する手法としては、基板上にフォトレジスト膜(感光性樹脂膜)を形成してパターン露光および現像処理を行い、その状態で銅などの配線材料となる金属の層を形成するいわゆるフォトリソグラフィ技術が広く使用されてきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、近年、金属を含む液滴をインクジェットノズルから吐出して所定の配線パターンを形成するというインクジェット技術を用いた金属配線形成の開発も進められている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−135168号公報
【特許文献2】特開2005−93702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フォトリソグラフィ技術を用いて金属配線を形成する場合には、フォトレジストの塗布、露光、現像、エッチング、金属層の蒸着等、多数の工程を必要とするため、処理に長時間を要することとなる。また、これらの処理はそれぞれ専用の処理ユニットで行われるため、多数の処理ユニットが必要となって配線形成に要するコストが増大することともなっていた。
【0006】
一方、インクジェット技術を用いて金属配線を形成する場合には、金属を含む液滴が低粘度(通常0.01Pa・s(パスカル秒)以下)であるため、着液後に基板上で濡れ広がりが生じ、微細な配線パターンを形成することは困難であった。この問題を解決するために、基板上の回路パターンに沿って親水化処理(または撥水化処理)を施し、液滴の濡れ広がりを抑制するという手法が考えられるが、かかる処理には長時間を要するために実用化はされていない。
【0007】
このため、特許文献2には、液滴を着液すべき領域を凸形状の堤防部で囲み、その囲まれた領域にインクジェットノズルから金属を含む液滴を吐出して濡れ広がりを防止する技術が提案されている。しかし、かかる技術を採用したとしても、堤防の形成自体にフォトリソグラフィ技術を用いているために、上記と同様の問題が生じる。
【0008】
また、インクジェットノズルからは高粘度の液滴を吐出することが出来ないため、特に厚い電気配線を形成する場合には複数回の重ね塗りが必要となり、処理時間がさらに長くなることとなる。
【0009】
これらの課題を解決するためには、より高粘度の材料(例えば、金属ペースト)を直接吐出することができれば、濡れ広がりを抑制しつつ厚い配線も可能となるのであるが、従来そのような技術は存在していなかった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被射出材として高粘度の材料を対象物に向けて射出することができる射出装置および方法、並びに、高粘度の材料を射出して基板上にパターンを形成することができるパターン形成装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、射出装置に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を表面に積層した基材を支持する支持手段と、前記圧力発生部材に当接して設けられ、その内部に被射出材が装填された複数の射出孔を有する射出板と、前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、射出装置に、基材を支持する支持手段と、前記基材の表面に当接して設けられ、その内部に前記基材から近い順に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材と被射出材とが装填された複数の射出孔を有する射出板と、前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る射出装置において、前記複数の射出孔は前記射出板に格子状に設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る射出装置において、前記加熱手段は、前記複数の射出孔のうちの一部に対応する圧力発生部材を加熱することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、射出装置に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を表面に積層した基材を支持する支持手段と、前記圧力発生部材に当接して設けられ、その内部に被射出材が装填された所定形状のパターン孔を有する射出板と、前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明は、射出装置に、基材を支持する支持手段と、前記基材の表面に当接して設けられ、その内部に前記基材から近い順に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材と被射出材とが装填された所定形状のパターン孔を有する射出板と、前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る射出装置において、前記被射出材と前記圧力発生部材との間に空隙を設けることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係る射出装置において、前記加熱手段は、前記基材の裏面から光を照射して前記圧力発生部材を加熱する光照射手段を含み、前記基材は前記光照射手段から照射される光に対して透明であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明に係る射出装置において、前記圧力発生部材は、前記光照射手段から照射される光を吸収して発熱することにより前記圧力発生部材を加熱する光吸収材料を含むことを特徴とする。
【0020】
また、請求項10の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係る射出装置において、前記加熱手段は、前記圧力発生部材を加熱するヒータを含むことを特徴とする。
【0021】
また、請求項11の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係る射出装置において、前記加熱手段は、前記圧力発生部材に通電して発熱させる通電加熱手段を含むことを特徴とする。
【0022】
また、請求項12の発明は、請求項1から請求項11のいずれかの発明に係る射出装置において、前記圧力発生部材は、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる樟脳を含むことを特徴とする。
【0023】
また、請求項13の発明は、請求項1から請求項12のいずれかの発明に係る射出装置において、前記被射出材は、粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の高粘度材料を含むことを特徴とする。
【0024】
また、請求項14の発明は、パターン形成装置に、請求項1から請求項13のいずれかの発明に係る射出装置と、前記射出板に対向する位置に基板を保持する基板保持手段と、を備え、前記射出装置から射出された被射出材によって基板上にパターン形成を行うことを特徴とする。
【0025】
また、請求項15の発明は、射出方法に、基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層し、当該圧力発生部材に複数の射出孔を有する射出板を当接させる当接工程と、前記射出板の前記複数の射出孔に被射出材を装填する装填工程と、前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0026】
また、請求項16の発明は、射出方法に、射出板に設けられた複数の射出孔に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を装填する第1装填工程と、前記圧力発生部材が装填された前記射出板に基材を当接させる当接工程と、前記射出板の前記複数の射出孔に、前記基材とは反対側より被射出材を装填する第2装填工程と、前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0027】
また、請求項17の発明は、請求項15または請求項16の発明に係る射出方法において、前記複数の射出孔は前記射出板に格子状に設けられていることを特徴とする。
【0028】
また、請求項18の発明は、請求項17の発明に係る射出方法において、前記加熱工程では、前記複数の射出孔のうちの一部に対応する圧力発生部材を加熱することを特徴とする。
【0029】
また、請求項19の発明は、射出方法に、基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層し、当該圧力発生部材に所定形状のパターン孔を有する射出板を当接させる当接工程と、前記射出板の前記パターン孔に被射出材を装填する装填工程と、前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0030】
また、請求項20の発明は、射出方法に、射出板に設けられた所定形状のパターン孔に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を装填する第1装填工程と、前記圧力発生部材が装填された前記射出板に基材を当接させる当接工程と、前記射出板の前記パターン孔に、前記基材とは反対側より被射出材を装填する第2装填工程と、前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0031】
また、請求項21の発明は、請求項15から請求項20のいずれかの発明に係る射出方法において、前記被射出材と前記圧力発生部材との間に空隙を設けることを特徴とする。
【0032】
また、請求項22の発明は、請求項15から請求項21のいずれかの発明に係る射出方法において、前記加熱工程は、前記基材の裏面から光を照射して前記圧力発生部材を加熱する工程を含み、前記基材は前記光に対して透明であることを特徴とする。
【0033】
また、請求項23の発明は、請求項22の発明に係る射出方法において、前記圧力発生部材は、前記基材の裏面から照射された前記光を吸収して発熱することにより前記圧力発生部材を加熱する光吸収材料を含むことを特徴とする。
【0034】
また、請求項24の発明は、請求項15から請求項23のいずれかの発明に係る射出方法において、前記圧力発生部材は、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる樟脳を含むことを特徴とする。
【0035】
また、請求項25の発明は、請求項15から請求項24のいずれかの発明に係る射出方法において、前記被射出材は、粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の高粘度材料を含むことを特徴とする。
【0036】
また、請求項26の発明は、パターン形成方法に、請求項15から請求項25のいずれかの発明に係る射出方法と、前記射出板に対向する位置に基板を配置する基板配置工程と、を備え、前記射出板から射出された被射出材によって基板上にパターン形成を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
請求項1から請求項13の発明によれば、圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて複数の射出孔またはパターン孔に装填された被射出材を射出板に対向配置された対象物に向けて射出させるため、被射出材が高粘度の材料であっても対象物に向けて射出することができる。
【0038】
特に、請求項7の発明によれば、被射出材と圧力発生部材との間に空隙を設けるため、射出された被射出材に圧力発生部材が付着して汚染源となることを防止することができる。
【0039】
請求項14の発明によれば、圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて複数の射出孔またはパターン孔に装填された被射出材を射出板に対向配置された対象物に向けて射出させるため、高粘度の材料を射出して基板上にパターンを形成することができる。
【0040】
請求項15から請求項25の発明によれば、圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて複数の射出孔またはパターン孔に装填された被射出材を射出板に対向配置された対象物に向けて射出させるため、被射出材が高粘度の材料であっても対象物に向けて射出することができる。
【0041】
特に、請求項21の発明によれば、被射出材と圧力発生部材との間に空隙を設けるため、射出された被射出材に圧力発生部材が付着して汚染源となることを防止することができる。
【0042】
請求項26の発明によれば、圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて複数の射出孔またはパターン孔に装填された被射出材を射出板に対向配置された対象物に向けて射出させるため、高粘度の材料を射出して基板上にパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るパターン形成装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1のパターン形成装置の正面図である。
【図3】第1実施形態の積層体を上面から見た平面図である。
【図4】図3の積層体のA−A切断面を示す断面図である。
【図5】制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態におけるパターン形成の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の積層体の形成手順を説明する図である。
【図8】第1実施形態の積層体の形成手順を説明する図である。
【図9】圧力発生部材が加熱されて被射出材が射出される様子を説明する図である。
【図10】第2実施形態の積層体の断面図である。
【図11】第2実施形態におけるパターン形成の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態の積層体の形成手順を説明する図である。
【図13】第2実施形態の積層体の形成手順を説明する図である。
【図14】第2実施形態において被射出材が射出される様子を説明する図である。
【図15】第3実施形態のパターン形成装置の概略構成を示す斜視図である。
【図16】第3実施形態のパターン形成装置の正面図である。
【図17】第3実施形態の積層体を上面から見た平面図である。
【図18】第5実施形態の積層体の構造を示す断面図である。
【図19】第6実施形態の積層体の構造を模式的に示す図である。
【図20】圧力発生部材の加熱手段の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0045】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係るパターン形成装置1の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、図1のパターン形成装置1の正面図である。なお、図1および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0046】
このパターン形成装置1は、高粘度の金属ペーストを基板Wに向けて射出することにより、基板W上に金属配線のパターンを形成する装置である。パターン形成装置1は、基板Wを保持するステージ10と、ステージ10をX方向に沿って移動させるステージ移動機構20と、ステージ10に保持された基板Wに向けて金属ペーストを射出する射出装置5と、を備える。射出装置5は、基材の表面に圧力発生部材を積層し、その上からさらにノズルプレートを接着して形成した積層体Sを支持しつつ搬送する支持搬送機構50と、その圧力発生部材にレーザー光を照射して加熱するレーザー光照射部60と、を備える。また、パターン形成装置1は、射出装置5を含む上記の各部を制御してパターン形成処理を実行させる制御部3を備える。
【0047】
ステージ10は、射出装置5の上方に設けられており、その下面に基板Wを保持する。射出装置5は、ステージ10の下面に保持された基板Wに向けて金属ペーストを射出する。ステージ10の下面に基板Wを保持する機構としては、例えば基板Wの端縁部を機械的に保持するクランプ機構または基板Wの裏面を真空吸着する吸着機構(いずれも図示省略)をステージ10に備えるようにすれば良い。
【0048】
第1実施形態のパターン形成装置1において、パターン形成の対象となる基板Wとしては、半導体ウェハー、液晶表示装置(LCD)やプラズマ表示装置(PDP)を含むフラットパネルディスプレイ用のガラス基板、樹脂またはセラミックスのプリント基板など、電気配線を形成する対象となる公知の種々の基板を用いることができる。基板Wの形状も特に限定されるものではなく、半導体ウェハーのように円形状であっても良いし、ガラス基板のように矩形状であっても良い。基板Wは、表面を下側に向けてステージ10の下面に保持される。なお、本明細書において、基板Wの表面とはパターン形成が行われる面であり、裏面はその反対側の面である。
【0049】
ステージ移動機構20は、固定設置された基台21の下側にモータ22、ボールネジ23およびガイドシャフト24を取り付けて構成される。ボールネジ23およびガイドシャフト24はX方向に沿って延設されている。ボールネジ23は、モータ22の回転軸に連結されており、モータ22によって回転される。ステージ10の上側に固定されたスライドブロック12は、ボールネジ23に螺合されるとともに、ガイドシャフト24に摺動自在に嵌合されている。モータ22がボールネジ23を回転させると、それに螺合するスライドブロック12とともにステージ10がガイドシャフト24に案内されてX方向に沿って滑らかに移動する。
【0050】
射出装置5は、ステージ10の下方に設けられており、上方に向けて金属ペーストを射出する。射出装置5は、支持搬送機構50およびレーザー光照射部60を備えて構成される。支持搬送機構50は、主動ローラ51および従動ローラ52を備える。主動ローラ51および従動ローラ52は、ともに回転軸がY方向に沿うように所定間隔を隔てて互いに平行に設けられている。主動ローラ51および従動ローラ52の周面の最高高さ位置は相等しい。2つのローラのうち少なくとも主動ローラ51には図示を省略する駆動モータが連結されている。その駆動モータによって主動ローラ51はY方向に沿った回転軸を中心に図2の紙面上面から見て時計回りに回転される。一方の従動ローラ52はY方向に沿った回転軸を中心に回転自在とされている。なお、従動ローラ52にも別途駆動モータを設けるようにしても良いし、リンク機構などにより主動ローラ51と連動して従動ローラ52が回転するようにしても良い。
【0051】
2つのローラ51,52には、シート状の積層体Sが架け渡されている。図3は、第1実施形態の積層体Sを上面から見た平面図である。また、図4は、図3の積層体SのA−A切断面を示す断面図である。第1実施形態の積層体Sは、透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42の層を形成し、その圧力発生部材42の層の上に複数の射出孔46が穿設されたノズルプレート45を当接して構成される。複数の射出孔46のそれぞれには金属ペースト43が装填されている。基材41としては、可撓性を有するとともにレーザー光照射部60から出射されるレーザー光に対して透明な樹脂フィルムが用いられており、例えばポリイミドのフィルムを採用することができる。
【0052】
また、圧力発生部材42には、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる昇華性材料が含まれており、そのような昇華性材料としては例えば樟脳(カンフル:C10H16O)を用いることができる。樟脳は、液体を経ずに固体から気体へと相転移する昇華性を有しており、加熱されると急速に気化して600倍〜1000倍に体積膨張する。圧力発生部材42には、昇華性材料としての樟脳の他に、グリセリン(C3H5(OH)3)およびカーボンパウダーが含まれている。基材41の表面に形成される圧力発生部材42の層の厚さは特に限定されるものではないが、本実施形態では約10μmとしている。
【0053】
ノズルプレート45は、樹脂フィルム(本実施形態では、基材41と同じくポリイミドのフィルム)を用いて構成されたシート状の部材に複数の射出孔46が穿設された射出板である。シート状のポリイミドフィルムに複数の射出孔46が格子状(より厳密には、正方格子状)に穿設されてノズルプレート45が構成されている。第1実施形態においては、射出孔46の形状を孔径50μmの円形とし、隣り合う射出孔46の間隔(配列ピッチ)を100μmとしている。また、ノズルプレート45の厚さは数10μmとしている。なお、第1実施形態の射出孔46の形状、大きさおよび配置間隔は一例であって、これらは特に限定されるものではなく、パターン形成に要求されている精度(解像度)に応じて適宜のものとすることができる。複数の射出孔46の穿設間隔を短くして配置密度を高くすると高精度なパターン形成が可能となり、逆に穿設する間隔を大きくして配置密度を低くするとパターン形成の精度も低くならざるを得ない。
【0054】
このようなノズルプレート45が圧力発生部材42の層の上に接着され、そのノズルプレート45の複数の射出孔46に金属ペースト43が装填される。金属ペースト43は、主成分としての金属粒子を有機溶剤等によってペースト状とした高粘度材料である。基板Wに形成すべき金属配線の種類に応じて適切な金属粒子を含む金属ペースト43を選択することができる。例えば、基板Wに銅配線を形成する場合であれば銅ペーストを用い、アルミ配線を形成する場合であればアルミペーストを用いることができる。高粘度材料としての金属ペースト43の粘度は、0.1Pa・s(パスカル秒)以上1000Pa・s以下とされる。
【0055】
射出孔46に装填された金属ペースト43の厚さは約10μm程度であり、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。すなわち、ノズルプレート45は圧力発生部材42の層の上に接着されており、射出孔46の下端開口は圧力発生部材42によって閉塞されている。一方、金属ペースト43は射出孔46の下端には装填されておらず、金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成されることとなる。このため、積層体Sにおいて、金属ペースト43と圧力発生部材42とは非接触である。
【0056】
図4に示すように、積層体Sは、可撓性を有するポリイミドのフィルムにて形成された基材41と、同じくポリイミドのフィルムにて形成されたノズルプレート45との間に圧力発生部材42を挟み込んで積層されたものであるため、変形自在である。このため、2つのローラ51,52に架け渡された積層体Sは各ローラの円筒表面に沿って変形する。そして、積層体Sが架け渡された状態で主動ローラ51が回転すると、両ローラ51,52間の積層体Sに弱い張力が作用し、積層体SがXY平面(水平面)に沿って張られた状態となる。さらに主動ローラ51が回転すると、それとともに積層体Sも移動および変形し、従動ローラ52も回転する。具体的には、従動ローラ52よりも上流側の積層体Sは上昇し、主動ローラ51よりも下流側の積層体Sは下降し、両ローラ51,52間の積層体SはX方向に沿って移動する。
【0057】
両ローラ51,52間で水平面に沿って張られた積層体Sの直上、すなわちその張られた積層体Sのノズルプレート45に対向する位置に基板Wはステージ10によって保持される。そして、両ローラ51,52間で張られた積層体Sとステージ10に保持された基板Wの表面との間隔が数100μmとなるようにパターン形成装置1は構成されている。
【0058】
図1,2に戻り、両ローラ51,52間で水平面に沿って張られた積層体Sの下方には、レーザー光照射部60が設けられる。レーザー光照射部60はレーザー光源61を内蔵している。また、レーザー光照射部60の上面には出射孔62が形設されている。レーザー光源61から出力されたレーザー光は出射孔62から鉛直方向上方に向けて((+Z)方向に向けて)出射される。
【0059】
また、レーザー光照射部60は、レーザー光走査機構65によってY方向に沿って往復移動される。レーザー光走査機構65は、モータ68、ボールネジ66およびガイドシャフト67を備えている。ボールネジ66およびガイドシャフト67はY方向に沿って延設されている。ボールネジ66は、モータ68の回転軸に連結されており、モータ68によって回転される。レーザー光照射部60は、ボールネジ66に螺合されるとともに、ガイドシャフト67に摺動自在に嵌合されている。このため、モータ68がボールネジ66を回転させると、それに螺合するレーザー光照射部60がガイドシャフト67に案内されてY方向に沿って滑らかに移動する。
【0060】
レーザー光照射部60は両ローラ51,52間の積層体Sの下方に設けられており、レーザー光照射部60から上方に向けて出射されたレーザー光は基材41の裏面から積層体Sに照射される。基材41は透明であるため、照射されたレーザー光は基材41を透過して圧力発生部材42に吸収される。その結果、レーザー光照射部60からのレーザー光照射によって圧力発生部材42が加熱されることとなる。
【0061】
制御部3は、パターン形成装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。図5は、制御部3の構成を示すブロック図である。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU31、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM32、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM33および制御用プログラムやデータなどを記憶しておく磁気ディスク34をバスライン39に接続して構成されている。
【0062】
また、バスライン39には、ステージ10に保持された基板WをX方向に沿って移動させるステージ移動機構20、積層体Sを支持しつつX方向に沿って移動させる支持搬送機構50、レーザー光照射部60をY方向に沿ってスキャンさせるレーザー光走査機構65、および、積層体Sの圧力発生部材42にレーザー光を照射して加熱するレーザー光照射部60等が電気的に接続されている。制御部3のCPU31は、磁気ディスク34に格納された制御用プログラムを実行することにより、これらの各動作機構を制御して基板W上に所定のパターンの金属配線を形成する。
【0063】
さらに、バスライン39には、表示部35および入力部36が電気的に接続されている。表示部35は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理結果やレシピ内容等の種々の情報を表示する。入力部36は、例えばキーボードやマウス等を用いて構成されており、コマンドやパラメータ等の入力を受け付ける。装置のオペレータは、表示部35に表示された内容を確認しつつ入力部36からコマンドやパラメータ等の入力を行うことができる。なお、表示部35と入力部36とを一体化してタッチパネルとして構成するようにしても良い。
【0064】
上記の要部構成以外にもパターン形成装置1は、基板W、積層体Sおよびレーザー光照射部60のそれぞれの位置を検出するための位置センサを備えている(いずれも図示省略)。位置センサとしては、基板W等の位置を直接検知する光学センサやモータの回転量から検知するエンコーダ等を使用することができる。また、パターン形成装置1は、未処理の積層体Sを送り出すフィード機構および使用済みの積層体Sを回収する回収機構を備えている。さらに、パターン形成装置1には、基板Wおよび積層体Sの周辺雰囲気を調整する機構を備えるようにしても良い。
【0065】
次に、基板Wに金属配線のパターン形成を行う処理手順について説明する。図6は、パターン形成の処理手順を示すフローチャートである。パターン形成装置1での処理に先立って、積層体Sが形成される(ステップS11〜ステップS13)。まずは積層体Sを形成する手順について図7および図8を参照しつつ説明する。
【0066】
ステップS11では、図7(a)に示すような長尺シート状(帯状)の基材41を用意し、その表面に圧力発生部材42を積層する。第1実施形態では、基材41としてポリイミドのフィルムを用いている。透明なポリイミドのフィルムを長尺シート状に加工してなる基材41の表面の全面に均一な厚さで圧力発生部材42の層を形成する。層として形成される前の圧力発生部材42は、昇華性材料である樟脳およびカーボンパウダーをグリセリンと混合して生成されるスラリー状ものであり、塗布法によって基材41の表面に塗布することが可能である。
【0067】
このような塗布法としては、公知の種々の手法を用いることが可能であり、第1実施形態では図7(b)に示すようなドクターブレード法によって圧力発生部材42を基材41の表面に塗布している。ドクターブレード法は、ノズル71から圧力発生部材42のスラリーを基材41の表面に供給しつつ、ドクターブレード72によってスラリーを平坦に均すことにより、均一な厚さの圧力発生部材42の層を形成する塗布法である。すなわち、圧力発生部材42のスラリーを連続して吐出するノズル71が基材41に対して矢印AR7の向きに相対移動される。ノズル71としては、例えば基材41の幅方向に沿って延びるスリット状の吐出口を有するスリットノズルを用いれば良い。
【0068】
ノズル71にはドクターブレード72が装着されている。ドクターブレード72は、ノズル71の進行方向(矢印AR7の向き)において吐出口よりも後端側に取り付けられている。また、ドクターブレード72は、その下端が基材41の表面と正確に所定間隔を隔てるようにノズル71に取り付けられている。ドクターブレード72がその下端を圧力発生部材42のスラリーに接触させながら基材41の上方を矢印AR7の向きに沿って相対移動することにより、スラリーの上面は平坦に均され、その厚さは均一とされる。
【0069】
基材41の表面に圧力発生部材42のスラリーが均一に塗布された後、その乾燥処理を行うことによって、図7(c)に示すように基材41の表面の全面に厚さ約10μmの圧力発生部材42の層が均一な厚さにて形成される。なお、基材41の表面に圧力発生部材42を積層する塗布法としては、基材41の表面に均一な厚さで塗布できるものであれば良く、ドクターブレード法の他に、スリットコート法やバーコート法などを用いるようにしても良い。
【0070】
次に、図8(a)に示すように、基材41の表面に形成された圧力発生部材42の層の上に、複数の射出孔46が穿設されたノズルプレート45が接着される(ステップS12)。このための接着剤としては、例えば合成ゴム系接着剤を用いるようにすれば良い。また、ノズルプレート45の複数の射出孔46は、例えばポリイミドのフィルムにエキシマレーザーを照射することによって格子状に穿設すれば良い。ノズルプレート45が接着されることにより、図8(b)に示すように、複数の射出孔46を有するノズルプレート45と基材41との間に圧力発生部材42の層が挟み込まれるように積層された積層体Sが形成される。
【0071】
そして、図8(c)に示すように、ノズルプレート45の複数の射出孔46に被射出材としての金属ペースト43が装填される(ステップS13)。金属ペースト43は、金属粒子を含む高粘度材料であり、上記の圧力発生部材42と同様に塗布法によって複数の射出孔46に装填することが可能である。金属ペースト43を射出孔46に装填する塗布法としても、公知の種々の手法を用いることが可能であるが、第1実施形態ではドクターブレード法を用いている。すなわち、金属ペースト43を連続して吐出するノズル71がノズルプレート45に対して矢印AR8の向きに相対移動される。ドクターブレード72は、その下端がノズルプレート45の上面に接触するようにノズル71に取り付けられている。ノズル71から金属ペースト43を供給しつつ、ドクターブレード72がその下端をノズルプレート45の上面に接触させながら矢印AR8の向きに沿って相対移動することにより、複数の射出孔46に金属ペースト43が押し込まれるとともに、射出孔46以外の領域では金属ペースト43がドクターブレード72によって掻き取られる。このようにしてノズルプレート45の複数の射出孔46に金属ペースト43が装填される。なお、ノズルプレート45の上面の射出孔46以外の領域に金属ペースト43が若干残留していても良い。
【0072】
ところで、金属ペースト43が射出孔46に装填される際に、射出孔46の下側開口は圧力発生部材42によって閉塞されている。このため、射出孔46の上側開口から高粘度の金属ペースト43が押し込まれると、その射出孔46の内部に残留していた空気がそのまま金属ペースト43と圧力発生部材42との間に閉じこめられることとなる。その結果、金属ペースト43が残留空気によって射出孔46の底まで入り込まなくなり、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。
【0073】
こうして形成された積層体Sが主動ローラ51および従動ローラ52に架け渡される(ステップS14)。積層体Sは、ノズルプレート45が両ローラ51,52間で上方を向くようにセットされる。よって、両ローラ51,52間では、複数の射出孔46の形設方向が鉛直方向を向く。
【0074】
続いて、処理対象となる基板Wがステージ10の下面に保持される(ステップS15)。基板Wは、両ローラ51,52間における積層体Sのノズルプレート45に対向する位置に、パターン形成が行われる表面を下側に向けてステージ10に保持される。すなわち、基板Wは積層体Sの上方にて積層体Sに対向配置される。
【0075】
そして、基板Wとレーザー光照射部60との相対位置関係がパターン形成のための初期位置となるように、制御部3の制御によりステージ移動機構20およびレーザー光走査機構65がそれぞれ基板Wおよびレーザー光照射部60を移動させる。具体的には、相対位置関係のX方向の調整はステージ移動機構20が基板Wを移動させることによって行われ、Y方向の調整はレーザー光走査機構65がレーザー光照射部60を移動させることによって行われる。また、積層体Sについても支持搬送機構50によって初期位置に移動される。なお、両ローラ51,52間の積層体Sと基板Wの表面との間隔は数100μmとしておく。
【0076】
基板W、レーザー光照射部60および積層体Sの初期配設が完了した後、制御部3がレーザー光照射部60によるレーザー光照射の制御を開始する(ステップS16)。また、それと同時に、制御部3はレーザー光照射部60の相対移動を開始させる(ステップS17)。具体的には制御部3は、基板Wおよび積層体Sを停止させたまま、レーザー光走査機構65を制御してレーザー光照射部60をY方向に走査させる。
【0077】
制御部3の記憶部(RAM33または磁気ディスク34)には、基板Wに形成すべき金属配線のパターンのデータが予め格納されている。制御部3は、その格納されたパターンデータに従って、レーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う。すなわち、基板W上の所定のX方向位置にてレーザー光照射部60がY方向に沿って走査しているときに、パターン形成すべきY方向位置にレーザー光照射部60が到達した時点で制御部3がレーザー光源61からレーザー光を出射させる。なお、レーザー光源61がオンとされるのは、ノズルプレート45の射出孔46の直下にレーザー光照射部60が位置しているときとなるようにパターンデータは作成されている。よって、ノズルプレート45の射出孔46が存在しない領域の直下にレーザー光照射部60が到達したときにはレーザー光源61からのレーザー光照射は停止される。
【0078】
レーザー光照射部60のレーザー光源61から鉛直方向上方に向けて出射されたレーザー光は積層体Sの裏面側から入射する。積層体Sの最下層を構成する基材41は透明であるため、レーザー光照射部60から照射されたレーザー光は基材41を透過して圧力発生部材42に到達して吸収される。その結果、レーザー光照射を受けた圧力発生部材42の領域では急激な温度上昇が生じる。すなわち、レーザー光照射部60が基材41の裏面からレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部の直下に位置する圧力発生部材42を加熱するのである。これにより、圧力発生部材42のレーザー光照射領域は短時間のうちに150℃以上にまで加熱される。なお、レーザー光照射領域の大きさは特に限定されるものではないが、例えば射出孔46の孔径と同程度の直径50μm程度の円形とすれば良い。
【0079】
図9は、圧力発生部材42が加熱されて被射出材たる金属ペースト43が射出される様子を説明する図である。レーザー光照射部60から基材41を透過して複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42にレーザー光が照射されると、その圧力発生部材42はレーザー光を吸収して短時間のうちに150℃以上にまで昇温する。特に、圧力発生部材42は黒色のカーボンパウダーを含有しているため、効率良くレーザー光を吸収して昇温する。
【0080】
圧力発生部材42が昇温すると、圧力発生部材42に含まれている昇華性材料である樟脳が急速に気化して600倍〜1000倍に体積膨張する。その結果、図9(a)に示すように、レーザー光照射によって加熱された圧力発生部材42の一部では、樟脳の昇華に起因した急激な体積膨張により、圧力波が発生する。そして、その発生した圧力波によってレーザー光照射領域の直上に位置する射出孔46内の空隙47の圧力が急激に上昇し、図9(b)に示すように、当該射出孔46に装填された金属ペースト43が上方に向けて、すなわちノズルプレート45に対向配置された基板Wに向けて射出されるのである。
【0081】
このように、第1実施形態においては、レーザー光照射部60が積層体Sの基材41の裏面からレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42を加熱することにより、その圧力発生部材42に急激な体積膨張による圧力を生じさせている。そして、その圧力によって当該圧力発生部材42の直上に位置する射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43をステージ10に保持された基板Wに向けて射出させている。昇華性材料である樟脳を加熱したときの急激な体積膨張によって生じた圧力を利用しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43であっても基板Wに向けて射出することができる。また、樟脳であれば、昇華したときに有害なガスや汚染物質を発生することもない。
【0082】
上方に向けて射出された金属ペースト43は基板Wの表面に到達し、その位置にて基板Wの表面に付着する。このようにして、金属配線を形成するための金属ペースト43が基板Wに供給される。なお、金属ペースト43は基板Wの下側から付着することとなるが、金属ペースト43が粘度が0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料であるため、積層体Sに再度落下する液ダレのおそれはなく、また基板Wの表面に沿って濡れ広がりが生じることも防止される。
【0083】
レーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う射出処理はレーザー光照射部60が走査終了位置に到達するまで行われる。そして、レーザー光照射部60が走査終了位置に到達した時点で基板W上の所定のX方向位置における1ライン分の処理が完了となる。1ライン分の処理が完了したら、基板Wおよび積層体SをX方向に沿ってステップ送りする。すなわち、制御部3がステージ移動機構20を制御して基板WをX方向に沿って所定距離だけ移動させる。これにより、レーザー光照射部60が基板Wに対してX方向に相対移動することとなり、基板W上の新たなX方向位置におけるレーザー光照射部60の走査が可能となる。また、制御部3が支持搬送機構50を制御して積層体SをX方向に沿って所定距離だけ移動させる。これにより、レーザー光照射部60は積層体Sに対してもX方向に相対移動することとなる。このようにしているのは、積層体SをX方向に移動させなければ、既にレーザー光を照射して使用済みとなっている積層体Sの射出孔46に再度レーザー光を照射する可能性があるためである。
【0084】
このような基板Wおよび積層体Sのステップ送りが終了した後、再び制御部3がレーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う。以降、パターン形成処理が終了するまで上記と同様の手順が繰り返される。その結果、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿ってレーザー光照射部60から積層体Sにレーザー光を照射させて圧力発生部材42の一部を加熱することとなり、そのパターンに沿ってノズルプレート45から金属ペースト43が上方に射出されて基板Wの表面に付着して金属配線のパターン形成がなされる。
【0085】
以上のように、第1実施形態においては、まず、透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その圧力発生部材42の層の上に複数の射出孔46を設けたノズルプレート45を接着している。そして、ノズルプレート45の複数の射出孔46に被射出材たる金属ペースト43を装填して積層体Sを形成している。このとき、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。
【0086】
次に、形成された積層体Sと処理対象となる基板Wとを相対向させて配置する。そして、レーザー光照射部60が基板Wに対して相対移動しつつ、レーザー光照射部60からのレーザー光照射をオンオフして圧力発生部材42におけるレーザー光照射位置が所定のパターンを描くように、制御部3がレーザー光走査機構65、ステージ移動機構20およびレーザー光照射部60を制御する。こうして積層体Sの基材41の裏面から所定のパターンに沿ってレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42を加熱し、その圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせてノズルプレート45の複数の射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出し、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンを形成している。
【0087】
第1実施形態の射出装置5は、昇温すると急激に体積膨張する樟脳を含む圧力発生部材42をレーザー光照射によって加熱し、圧力発生部材42に急激な体積膨張に起因した圧力を生じさせ、その圧力を利用して射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出している。昇華性材料である樟脳を加熱したときの急激な体積膨張によって生じた圧力を利用しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43であっても基板Wに向けて射出することができる。
【0088】
また、パターン形成装置1は、射出装置5を用いて圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を射出しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
【0089】
特に、第1実施形態のパターン形成装置1は、所定のパターンデータに基づいて、レーザー光照射部60を基板Wに対して相対移動させつつ、レーザー光照射部60にレーザー光照射をオンオフさせて、基材41の裏面から所定のパターンに沿ってレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42を加熱している。そして、圧力発生部材42のレーザー光照射領域に体積膨張による圧力を生じさせて複数の射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出しているため、基板W上に所定のパターンに沿って正確に金属ペースト43を付着させることができる。
【0090】
また、射出装置5は、ノズルプレート45に鉛直方向に沿って設けられた射出孔46から金属ペースト43を射出しているため、金属ペースト43を正確に鉛直方向上方に向けて射出することができる。
【0091】
また、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成されているため、双方は接触していない。このため、射出された金属ペースト43に圧力発生部材42が付着して基板Wの汚染源となることのを防止することができる。
【0092】
また、高粘度の金属ペースト43を直接射出して基板Wに供給しているため、パターン形成に要する工程数が少なく、処理時間も短くすることができる。その結果、基板Wに対するパターン形成に要する処理コストの増大を抑制することができる。
【0093】
また、パターン形成装置1においては、高粘度の金属ペースト43を直接基板Wに供給することができるため、いわゆる濡れ広がりが生じることはない。さらに、基板Wに厚い電気配線を形成する場合であっても、高粘度の金属ペースト43を1回射出するだけで配線形成が可能となり、処理に要する時間を短くすることができる。
【0094】
さらに、第1実施形態のパターン形成装置1においては、射出装置5がステージ10に保持された基板Wよりも下方に設けられており、金属ペースト43が上方に向けて射出される。このため、射出時に発生した金属ペースト43のミスト等は下方の積層体Sに落下することとなるため、そのようなミストが基板Wに付着して汚染源となるのを防止することができる。
【0095】
また、圧力発生部材42が黒色のカーボンパウダーを含有しているため、レーザー光照射部60から照射されるレーザー光を効率よく吸収して発熱することにより、圧力発生部材42に含まれる昇華性材料である樟脳を効果的に加熱することができる。圧力発生部材42に含まれる昇華性材料である樟脳は光を透過しやすい、言い換えると光を吸収しにくいので、樟脳自体を直接に光で加熱することは難しい。また、圧力発生部材42に含まれるグリセリンも光を透過しやすい、つまりは光を吸収しにくいので、光照射によってグリセリンを加熱することも困難である。そこで、光を吸収しやすい材料、例えばカーボンパウダーなどの黒色の粒子を圧力発生部材42に含ませて、そのような黒色粒子に光を吸収させて発熱させることにより、樟脳を加熱しているのである。
【0096】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、積層体Sの構造および形成手順である。第2実施形態の積層体Sを上面から見た平面図は図3と同じである。図10は、第2実施形態の積層体Sの断面図である。なお、図10以降において、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付している。
【0097】
第2実施形態の積層体Sは、透明な基材41の表面に直接ノズルプレート45を当接して構成される。ノズルプレート45には複数の射出孔46が穿設され、複数の射出孔46のそれぞれには加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42および金属ペースト43が装填されている。基材41、圧力発生部材42、金属ペースト43およびノズルプレート45の材質は第1実施形態と同様である。また、ノズルプレート45には複数の射出孔46が格子状に穿設されている。複数の射出孔46の形状、大きさおよび配置間隔も第1実施形態と同様である。
【0098】
第2実施形態においては、基材41の表面に複数の射出孔46を有するノズルプレート45が接着され、複数の射出孔46の内部には基材41から近い順に圧力発生部材42と被射出材たる金属ペースト43とが装填される。また、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。すなわち、射出孔46の下端開口は圧力発生部材42が装填されて閉塞され、上端開口は金属ペースト43が装填されて閉塞され、それらの間に空隙47が形成されている。このため、積層体Sにおいて、金属ペースト43と圧力発生部材42とは非接触である。
【0099】
第2実施形態の積層体Sも可撓性を有するポリイミドのフィルムにて形成された基材41とノズルプレート45とを積層したものであるため変形自在である。従って、2つのローラ51,52を有する支持搬送機構50によって積層体Sを支持して搬送することが可能である。残余の射出装置5およびパターン形成装置1の構成は第1実施形態と同様である。
【0100】
図11は、第2実施形態におけるパターン形成の処理手順を示すフローチャートである。図6に示した第1実施形態と相違するのはステップS21〜ステップS24までの積層体Sの形成手順である。第2実施形態の積層体Sを形成する手順について図12および図13を参照しつつ説明する。
【0101】
まず、例えばポリイミドのフィルムにエキシマレーザーを照射して複数の射出孔46を格子状に穿設し、図12(a)に示す如きノズルプレート45を準備する。そして、図12(b)に示すように、ノズルプレート45の複数の射出孔46に圧力発生部材42を装填する(ステップS21の第1装填工程)。第2実施形態にて射出孔46に装填するときの圧力発生部材42も樟脳およびカーボンパウダーをグリセリンと混合して生成されるスラリー状ものであるが、第1実施形態のステップS11にて基材41の表面に塗布する圧力発生部材42のスラリーを溶剤で10倍程度に希釈したものであり、その粘度は低い。
【0102】
第2実施形態の圧力発生部材42のスラリーも塗布法によって複数の射出孔46に装填される。圧力発生部材42のスラリーを射出孔46に装填する塗布法としても、公知の種々の手法を用いることが可能であるが、第2実施形態ではドクターブレード法を用いている。すなわち、圧力発生部材42のスラリーを連続して吐出するノズル71がノズルプレート45に対して矢印AR12の向きに相対移動される。ドクターブレード72は、その下端がノズルプレート45の上面に接触するようにノズル71に取り付けられている。ノズル71から圧力発生部材42のスラリーを供給しつつ、ドクターブレード72がその下端をノズルプレート45の上面に接触させながら矢印AR12の向きに沿って相対移動することにより、複数の射出孔46に圧力発生部材42のスラリーが押し込まれるとともに、射出孔46以外の領域ではスラリーがドクターブレード72によって掻き取られる。このようにしてノズルプレート45の複数の射出孔46に圧力発生部材42が装填される。
【0103】
第2実施形態では、射出孔46の下端開口が開放された状態で圧力発生部材42のスラリーが装填され、しかもそのスラリーの粘度は第1実施形態よりも低いため、射出孔46内部の空気はスラリー装填時に外部に放出される。その結果、図12(b)に示すように、圧力発生部材42のスラリーは射出孔46の全体に満たされるように装填(つまり充填)される。
【0104】
次に、図12(c)に示すように、複数の射出孔46に圧力発生部材42のスラリーが装填されたノズルプレート45の下側面に基材41が接着される(ステップS22)。このための接着剤としては、例えば合成ゴム系接着剤を用いるようにすれば良い。基材41が接着されることにより、図13(a)に示すように、圧力発生部材42のスラリーが装填された複数の射出孔46を有するノズルプレート45と基材41とが積層された積層体Sが形成される。
【0105】
基材41が接着された後、ステップS23に進み、圧力発生部材42のスラリーの乾燥処理を行うことによって溶剤成分が揮発して容積が減少し、射出孔46の下端部(基材41が接着された側の端部)に圧力発生部材42の層が形成される。その結果、図13(b)に示すように、下端部に圧力発生部材42の層が形成された複数の射出孔46を有するノズルプレート45と基材41とが積層された状態となる。
【0106】
そして、図13(c)に示すように、ノズルプレート45の複数の射出孔46に基材41とは反対側より被射出材としての金属ペースト43が装填される(ステップS24の第2装填工程)。複数の射出孔46に対する金属ペースト43の装填工程は第1実施形態と同じであり、塗布法としてドクターブレード法を用いて実行している。すなわち、金属ペースト43を連続して吐出するノズル71がノズルプレート45に対して矢印AR13の向きに相対移動される。ドクターブレード72は、その下端がノズルプレート45の上面に接触するようにノズル71に取り付けられている。ノズル71から金属ペースト43を供給しつつ、ドクターブレード72がその下端をノズルプレート45の上面に接触させながら矢印AR13の向きに沿って相対移動することにより、複数の射出孔46に金属ペースト43が押し込まれるとともに、射出孔46以外の領域では金属ペースト43がドクターブレード72によって掻き取られる。このようにしてノズルプレート45の複数の射出孔46に金属ペースト43が装填される。
【0107】
また、第1実施形態と同じく、射出孔46の下側開口が圧力発生部材42によって閉塞された状態で上側開口から(つまり、基材41とは反対側から)高粘度の金属ペースト43が押し込まれることによって、射出孔46の内部に残留していた空気がそのまま金属ペースト43と圧力発生部材42との間に閉じこめられることとなる。その結果、金属ペースト43が残留空気によって射出孔46の奥まで入り込まなくなり、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。
【0108】
その後の、ステップS25〜ステップS28までの処理は、第1実施形態の図6に示したステップS14〜ステップS17までの処理と同じである。すなわち、上記のようにして形成された積層体Sが主動ローラ51および従動ローラ52に架け渡され(ステップS25)、処理対象となる基板Wがノズルプレート45に対向するようにステージ10の下面に保持される(ステップS26)。そして、制御部3がレーザー光照射部60によるレーザー光照射の制御を開始するとともに(ステップS27)、レーザー光照射部60の相対移動を開始させる(ステップS28)。制御部3は、記憶部に予め格納されたパターンデータに従って、レーザー光照射部60を相対移動させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う。
【0109】
図14は、第2実施形態において被射出材たる金属ペースト43が射出される様子を説明する図である。レーザー光照射部60から基材41を透過して射出孔46に装填された圧力発生部材42にレーザー光が照射されると、その圧力発生部材42はレーザー光を吸収して短時間のうちに150℃以上にまで昇温する。圧力発生部材42が昇温すると、圧力発生部材42に含まれている昇華性材料である樟脳が急速に気化して600倍〜1000倍に体積膨張する。その結果、図14(a)に示すように、レーザー光照射によって加熱された圧力発生部材42は、樟脳の昇華に起因した急激な体積膨張により圧力波を発生する。そして、その発生した圧力波によって当該圧力発生部材42が装填されている射出孔46内の空隙47の圧力が急激に上昇し、図14(b)に示すように、その射出孔46に装填された金属ペースト43が上方に向けて、すなわちノズルプレート45に対向配置された基板Wに向けて射出されるのである。
【0110】
このように、第2実施形態においては、レーザー光照射部60が積層体Sの基材41の裏面からレーザー光を照射して射出孔46に装填された圧力発生部材42を加熱することにより、その圧力発生部材42に急激な体積膨張による圧力を生じさせている。そして、その圧力によって当該圧力発生部材42と同じ射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43をステージ10に保持された基板Wに向けて射出させている。昇華性材料である樟脳を加熱したときの急激な体積膨張によって生じた圧力を利用しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43であっても基板Wに向けて射出することができる。
【0111】
上方に向けて射出された金属ペースト43は基板Wの表面に到達し、その位置にて基板Wの表面に付着する。このようにして、金属配線を形成するための金属ペースト43が基板Wに供給される。レーザー光照射部60の相対移動およびレーザー光源61のオンオフ制御は第1実施形態と同じである。従って、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿ってレーザー光照射部60から積層体Sにレーザー光を照射させて複数の射出孔46のうちの一部に装填された圧力発生部材42を加熱することとなり、そのパターンに沿ってノズルプレート45から金属ペースト43が上方に射出されて基板Wの表面に付着して金属配線のパターン形成がなされる。
【0112】
以上のように、第2実施形態においては、まず、ノズルプレート45の複数の射出孔46に圧力発生部材42を装填し、そのノズルプレート45に透明な基材41を接着している。そして、ノズルプレート45の複数の射出孔46に被射出材たる金属ペースト43を装填して積層体Sを形成している。複数の射出孔46のそれぞれにおいては、基材41から近い順に圧力発生部材42と金属ペースト43とが装填され、それらの間には空隙47が形成される。
【0113】
次に、形成された積層体Sと処理対象となる基板Wとを相対向させて配置する。そして、レーザー光照射部60が基板Wに対して相対移動しつつ、レーザー光照射部60からのレーザー光照射をオンオフして積層体Sにおけるレーザー光照射位置が所定のパターンを描くように、制御部3がレーザー光走査機構65、ステージ移動機構20およびレーザー光照射部60を制御する。こうして積層体Sの基材41の裏面から所定のパターンに沿ってレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部に装填された圧力発生部材42を加熱し、その圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて同じ射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出し、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンを形成している。
【0114】
第2実施形態の射出装置5も、昇温すると急激に体積膨張する樟脳を含む圧力発生部材42をレーザー光照射によって加熱し、圧力発生部材42に急激な体積膨張に起因した圧力を生じさせ、その圧力を利用して射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出している。昇華性材料である樟脳を加熱したときの急激な体積膨張によって生じた圧力を利用しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43であっても基板Wに向けて射出することができる。
【0115】
また、第2実施形態のパターン形成装置1は、射出装置5を用いて圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を射出しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。これ以外にも、第2実施形態のパターン形成装置1は、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0116】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態ではノズルプレート45に複数の射出孔46が格子状に設けられていたが、第3実施形態においては予め所定形状にパターン化されたパターン孔146がノズルプレート45に設けられている。図15は、第3実施形態のパターン形成装置1aの概略構成を示す斜視図である。また、図16は、第3実施形態のパターン形成装置1aの正面図である。
【0117】
基板Wを保持するステージ10およびステージ10を移動させるステージ移動機構20については第1実施形態と全く同じである。また、射出装置5のレーザー光照射部60およびレーザー光走査機構65についても第1実施形態と同様である。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは積層体Sのノズルプレート45に複数の射出孔46に代えてパターン孔146を設けている点、および、そのノズルプレート45にて構成された積層体Sを支持して搬送する支持搬送機構150である。第1実施形態の支持搬送機構50は可撓性を有する積層体Sを2つのローラによって搬送するローラ搬送方式を採用していたが、第3実施形態の支持搬送機構150は積層体Sをステージに支持して搬送するステージ搬送方式を採用している。
【0118】
ステージ移動機構20もステージ搬送方式によるものであり、第3実施形態の支持搬送機構150はステージ移動機構20と類似する構成を備えている。すなわち、支持搬送機構150は、モータ152の回転軸に連結されたボールネジ153にステージ151を螺合させて構成されている。モータ152がボールネジ153を回転させると、それに螺合するステージ151がX方向に沿って移動する。なお、ステージ移動機構20と同様に、ステージ151をX方向に沿って案内するガイドシャフトを設けるようにしても良い。
【0119】
支持搬送機構150のステージ151は、環状に構成されており、積層体Sの周縁部を保持することによって基板Wと積層体Sとを対向配置する。ステージ151の環状部分の内側は中空であるため、ステージ151がレーザー光照射の障害となることはない。なお、ステージ151をレーザー光に対して透明な素材(例えば、石英ガラス)にて形成する場合には、板状のステージ151にて積層体Sの全面を載置して保持するようにしても良い。
【0120】
図17は、第3実施形態の積層体Sを上面から見た平面図である。第3実施形態の積層体Sの断面構造は、複数の射出孔46に代えてパターン孔146とされている点を除いては図4に示した第1実施形態と概ね同じである。すなわち、第3実施形態の積層体Sは、透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42の層を形成し、その圧力発生部材42の層の上にパターン孔146が穿設されたノズルプレート45を当接して構成される。ノズルプレート45のパターン孔146には金属ペースト43が装填される。
【0121】
第1実施形態では2つのローラ51,52に沿って積層体Sが撓む必要があったために基材41として樹脂フィルムを用いていたが、第3実施形態では積層体Sに可撓性は不要であるため、基材41はレーザー光照射部60から出射されるレーザー光に対して透明な素材であれば良く、例えばガラス基板などを使用することができる。また、ノズルプレート45にも可撓性は不要であるため、例えば金属プレートを使用することができる。なお、圧力発生部材42および金属ペースト43については第1実施形態と全く同じである。
【0122】
第3実施形態のパターン形成装置1aの残余の構成は第1実施形態と同じである。また、第3実施形態におけるパターン形成の処理手順も第1実施形態(図6)と同様である。但し、第3実施形態では圧力発生部材42の層を形成する塗布法として、回転する基材41に圧力発生部材42のスラリーを供給して均一な厚さの層を形成するスピンコート法を用いるようにしても良い。
【0123】
また、第3実施形態のノズルプレート45は、金属プレートにフォトリソグラフィまたはレーザー加工などの手法によって所定形状のパターン孔146を穿設して形成される。パターン孔146の形状は、処理対象となる基板Wに形成すべきパターンの形状と同じである。このようなパターン孔146を有するノズルプレート45が基材41の表面に形成された圧力発生部材42の層の上に当接され、そのパターン孔146に被射出材としての金属ペースト43が装填される。
【0124】
また、制御部3がレーザー光照射部60を相対移動させつつ、レーザー光照射の制御を行う点も第1実施形態と同じであるが、第3実施形態では必ずしもレーザー光源61のオンオフ制御を行う必要はなく、レーザー光源61からレーザー光を連続照射するようにしても良い。このようにしても、レーザー光照射部60から基材41を透過して圧力発生部材42にレーザー光が照射されると、その圧力発生部材42はレーザー光を吸収して短時間のうちに150℃以上にまで昇温して急激な体積膨張による圧力を発生する。そして、その圧力によってパターン孔146に装填された被射出材たる金属ペースト43がステージ10に保持された基板Wに向けて射出される。第3実施形態では、レーザー光照射のパターンにかかわらずパターン孔146の形状に沿って金属ペースト43が射出されることとなるため、相対移動するレーザー光照射部60からレーザー光を連続照射するようにしても、基板Wの表面にパターン孔146の形状に沿って金属配線のパターン形成を行うことができる。
【0125】
このように、第3実施形態においては、まず、透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その圧力発生部材42の層の上に所定形状のパターン孔146を設けたノズルプレート45を当接している。そして、ノズルプレート45のパターン孔146に被射出材たる金属ペースト43を装填して積層体Sを形成している。装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。
【0126】
次に、形成された積層体Sと処理対象となる基板Wとを相対向させて配置する。そして、レーザー光照射部60が基板Wに対して相対移動しつつ、積層体Sの基材41の裏面から圧力発生部材42にレーザー光を照射する。このとき、レーザー光照射部60からレーザー光を連続照射するようにしても良い。こうして積層体Sの基材41の裏面からレーザー光を照射してパターン孔146に対応する圧力発生部材42を加熱し、その圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせてノズルプレート45のパターン孔146に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出し、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンを形成している。
【0127】
従って、第3実施形態のパターン形成装置1は、第1実施形態と同様に、射出装置5を用いて圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を射出しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
【0128】
また、第3実施形態のパターン形成装置1は、所定形状のパターン孔146を予め穿設したノズルプレート45を用いて積層体Sを構成しているため、レーザー光照射のパターンにかかわらずパターン孔146の形状に沿って金属ペースト43が射出されることとなる。このため、相対移動するレーザー光照射部60からレーザー光を連続照射するようにしても、パターン孔146に沿った形状にて金属ペースト43が射出され、その形状にて基板Wに金属配線のパターン形成を行うことができる。よって、制御部3は必ずしもパターンデータを保持しておく必要はなく、レーザー光照射の制御は容易である。
【0129】
このような第3実施形態のパターン形成装置1aは、基板Wに形成すべきパターンの形状が確定しているような場合に好適である。もっとも、基板Wに形成するパターンを自由に変更したい場合には、第1,第2実施形態のパターン形成装置1の方が好適である。
【0130】
また、ノズルプレート45として金属プレートを使用するのであれば、使用済みのノズルプレート45を回収して再利用するのが望ましい。具体的には、使用済みのノズルプレート45を回収する機構、回収したノズルプレート45を洗浄する機構、および、洗浄後のノズルプレート45を備えた積層体Sに金属ペースト43を装填する機構等をパターン形成装置1に付設するようにすれば良い。
【0131】
第3実施形態のパターン形成装置1aが奏する残余の効果は第1実施形態と同様である。
【0132】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第2実施形態の複数の射出孔46に代えて第3実施形態と同様の予め所定形状にパターン化されたパターン孔146をノズルプレート45に設けたものである。第4実施形態は、積層体Sの構造および形成手順を除いて第3実施形態と同じである。
【0133】
第4実施形態の積層体Sの断面構造は、複数の射出孔46に代えてパターン孔146とされている点を除いては図10に示した第2実施形態と概ね同じである。すなわち、第4実施形態の積層体Sは、透明な基材41の表面に直接ノズルプレート45を当接して構成される。ノズルプレート45には所定形状のパターン孔146が穿設され、そのパターン孔146には加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42および金属ペースト43が装填される。
【0134】
第4実施形態の積層体Sの形成手順は第2実施形態と同じである。すなわち、ノズルプレート45の所定形状のパターン孔146に圧力発生部材42を装填し、そのノズルプレート45に透明な基材41を接着している。そして、ノズルプレート45のパターン孔146に被射出材たる金属ペースト43を装填して積層体Sを形成している。ノズルプレート45のパターン孔146においては、基材41から近い順に圧力発生部材42と金属ペースト43とが装填され、それらの間には空隙47が形成される。
【0135】
パターン形成に際しては、形成された積層体Sと処理対象となる基板Wとを相対向させて配置する。そして、レーザー光照射部60が基板Wに対して相対移動しつつ、積層体Sの基材41の裏面から圧力発生部材42にレーザー光を照射する。このとき、レーザー光照射部60からレーザー光を連続照射するようにしても良い。こうして積層体Sの基材41の裏面からレーザー光を照射してパターン孔146に装填された圧力発生部材42を加熱し、その圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせてノズルプレート45のパターン孔146に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出し、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンを形成している。
【0136】
第4実施形態のパターン形成装置は、第1実施形態と同様に、射出装置5を用いて圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を射出しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。第4実施形態のパターン形成装置1が奏する残余の効果は第1実施形態と同様である。
【0137】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第1実施形態から第4実施形態ではレーザー光照射部60からのレーザー光照射によって圧力発生部材42を加熱していたが、第5実施形態においてはヒータによって圧力発生部材42を加熱するようにしている。
【0138】
図18は、第5実施形態の積層体Sの構造を示す断面図である。第5実施形態では、第1実施形態と同様の積層体Sに射出装置5を構成する複数のヒータ160が付設されている。具体的には、積層体Sの複数の射出孔46の直下のそれぞれにおいて、基材41の下面にヒータ160が付設されている。
【0139】
複数のヒータ160のそれぞれは電力供給を受けて発熱し、基材41を介して当該ヒータ160の直上に位置している圧力発生部材42を加熱する。すなわち、個々のヒータ160は圧力発生部材42の一部を加熱する加熱手段である。複数のヒータ160に対しては、制御部3の制御下にて個別に電力供給がなされる。従って、制御部3は、複数のヒータ160のうちの一部に電力供給がなされるように制御し、その一部のヒータ160によって形成されるパターンに沿って圧力発生部材42を加熱して体積膨張による圧力を発生させることができる。
【0140】
第5実施形態においては、基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42の層を形成し、その上に複数の射出孔46が穿設されたノズルプレート45を接着して積層体Sを構成している。複数の射出孔46のそれぞれには金属ペースト43が装填され、その装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。第5実施形態の基材41は、透明である必要はないが、ヒータ160の熱を円滑に圧力発生部材42に伝導させるために熱伝導率が高い素材にて形成するのが好ましく、例えばセラミックスや金属を用いて形成しても良い。圧力発生部材42および金属ペースト43については第1実施形態と同様のものを用いることができる。但し、第5実施形態のようにヒータ160で加熱する場合には、圧力発生部材42に光吸収体として機能する黒色のカーボンパウダーを混合する必要はない。
【0141】
このような積層体Sの下面(基材41の下面)に複数のヒータ160が格子状に付設される。複数のヒータ160は複数の射出孔46に1対1で対応して設けられるため、複数のヒータ160によって形成される格子形状は、複数の射出孔46によって形成される格子形状(図3参照)と同様である。
【0142】
パターン形成処理を行う際には、複数のヒータ160が付設された積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。第5実施形態では、複数のヒータ160が付設された積層体Sおよび基板Wがともに移動することなく定位置に保持される。そして、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿って複数のヒータ160のうちの一部に電力供給がなされるように制御し、そのパターンに沿って圧力発生部材42の一部を急速に加熱して体積膨張させている。その結果、当該パターンに従って圧力発生部材42の一部に体積膨張による圧力が生じ、電力供給がなされたヒータ160の直上に位置する射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43が基板Wに向けて射出され、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンが形成される。なお、パターンに対応する複数のヒータ160に同時に電力供給を行うようにしてもよいし、順次に電力供給を行って発熱させるようにしても良い。
【0143】
このように、第5実施形態においては、加熱手段たる複数のヒータ160と基板Wとを相対移動させる必要はなく、ステージ10が基板Wを定位置に保持していれば足りるため、ステージ移動機構20は必ずしも必要な構成要素ではない。同様に、複数のヒータ160を付設した積層体Sと基板Wとを相対移動させる必要もなく、支持搬送機構50も必須の要素ではない。但し、パターン形成処理前に積層体Sと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を行うために、ステージ移動機構20および/または支持搬送機構50を設けておく方が好ましい。
【0144】
第5実施形態においては、複数のヒータ160の一部によって圧力発生部材42の一部が加熱されて急激に体積膨張して圧力が発生し、その圧力によって射出孔46に装填された金属ペースト43を射出している。従って、第1実施形態から第4実施形態と同様に、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
【0145】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第5実施形態では積層体Sに付設したヒータによって圧力発生部材42を加熱していたが、第6実施形態においては圧力発生部材42自体に直接通電して加熱するようにしている。
【0146】
図19は、第6実施形態の積層体Sの構造を模式的に示す図である。第6実施形態では、第5実施形態の複数のヒータ160に代えて、射出装置5を構成する複数の電極260が積層体Sに設けられている。具体的には、図19に示すように、積層体Sの基材41の上面に一対の陽極260aおよび陰極260bからなる電極260を立設している。電極260の高さ(基材41の上面から電極260の上端までの距離)は圧力発生部材42の層の厚さよりも小さくするのが好ましい。また、陽極260aおよび陰極260bはそれぞれ電源261の正極および負極と電気的に接続されている。
【0147】
圧力発生部材42にはカーボンパウダーが含有されている。このカーボンパウダーは、第1実施形態から第4実施形態ではレーザー光の吸収効率を高めるものであったが、第6実施形態では通電によって発熱する添加剤として機能する。カーボンパウダーが含まれていることによって圧力発生部材42は通電によって発熱する抵抗発熱体となる。このため、複数の電極260のそれぞれに電圧を印加すると、当該電極260を構成する陽極260aと陰極260bとの間の圧力発生部材42が通電によって発熱する。すなわち、個々の電極260および電源261は圧力発生部材42の一部を通電加熱する通電加熱手段である。
【0148】
第5実施形態と同様に、積層体Sには複数の電極260が格子状に設けられている。複数の電極260は複数の射出孔46に1対1で対応して設けられるため、複数の電極260によって形成される格子形状は、複数の射出孔46によって形成される格子形状(図3参照)と同様である。
【0149】
複数の電極260に対しては、制御部3の制御下にて電源261から個別に電圧が印加される。これを実現する手法としては、複数の電極260のそれぞれと電源261との間に設けられたスイッチ(図示省略)を制御部3によって開閉するようにしても良いし、複数の電極260に個別に設けた電源261自体のオンオフを制御部3が制御するようにしても良い。これにより、制御部3は、複数の電極260のうちの一部に電圧が印加されるように制御し、その一部の電極260によって形成されるパターンに沿って圧力発生部材42を加熱して体積膨張による圧力を発生させることができる。
【0150】
第6実施形態においては、複数の電極260を取り付けた基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42の層を形成し、その上に複数の射出孔46が穿設されたノズルプレート45を接着して積層体Sを構成している。複数の射出孔46のそれぞれには金属ペースト43が装填され、その装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。圧力発生部材42にはカーボンパウダーが含有されている。第6実施形態の基材41は、透明である必要はないが、短絡防止のために絶縁性を有する素材にて形成する必要があり、例えばセラミックスや樹脂を用いて形成するのが好ましい。金属ペースト43については第1実施形態と同様である。
【0151】
パターン形成処理を行う際には、複数の電極260が設置された積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。第6実施形態では、複数の電極260が設置された積層体Sおよび基板Wがともに移動することなく定位置に保持される。そして、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿って複数の電極260のうちの一部に電圧が印加されるように制御し、そのパターンに沿って圧力発生部材42の一部を通電加熱して体積膨張させている。その結果、当該パターンに従って圧力発生部材42の一部に体積膨張による圧力が生じ、通電された電極260の直上に位置する射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43が基板Wに向けて射出され、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンが形成される。なお、パターンに対応する複数の電極260に同時に電圧を印加するようにしてもよいし、順次に電圧を印加するようにしても良い。
【0152】
第6実施形態においても、加熱手段たる複数の電極260と基板Wとを相対移動させる必要はなく、ステージ10が基板Wを定位置に保持していれば足りるため、ステージ移動機構20は必ずしも必要な構成要素ではない。同様に、複数の電極260を設置した積層体Sと基板Wとを相対移動させる必要もなく、支持搬送機構50も必須の要素ではない。但し、パターン形成処理前に積層体Sと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を行うために、ステージ移動機構20および/または支持搬送機構50を設けておく方が好ましい。
【0153】
第6実施形態においては、複数の電極260の一部によって圧力発生部材42の一部が通電加熱されて急激に体積膨張して圧力が発生し、その圧力によって射出孔46に装填された金属ペースト43を射出している。従って、第1実施形態から第5実施形態と同様に、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
【0154】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第4実施形態においては、積層体Sの裏面に対してレーザー光を走査して(つまり、パターン孔146に装填された圧力発生部材42を順次加熱して)いたが、これに代えてパターン孔146に装填された圧力発生部材42の全部を一括して加熱するようにしても良い。
【0155】
このような一括加熱の手法としては、例えば図20に示すようにマイクロ波加熱を用いることができる。同図において、積層体Sの構造は第4実施形態と同様である。すなわち、積層体Sは、基材41の表面に直接ノズルプレート45を当接して構成される。ノズルプレート45には所定形状のパターン孔146が穿設され、そのパターン孔146には基材41から近い順に圧力発生部材42と金属ペースト43とが装填される。また、圧力発生部材42と金属ペースト43との間には空隙47が形成される。
【0156】
マイクロ波加熱部360は、積層体Sの下方に設けられており、積層体Sに所定周波数のマイクロ波を照射する。マイクロ波加熱部360は、積層体Sの裏面全面に同時にマイクロ波を照射する。照射されたマイクロ波は積層体Sの基材41を透過してパターン孔146に装填された圧力発生部材42を加熱する。このとき、マイクロ波は積層体Sの全面に同時に照射されるため、パターン孔146に装填された圧力発生部材42の全部が一括して加熱されることとなる。すなわち、マイクロ波加熱部360は、圧力発生部材42の全部を一括して加熱する加熱手段である。
【0157】
図20の構成において基板Wへのパターン形成処理を行う際には、積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。このとき、積層体Sおよび基板Wがともに移動することなく定位置に保持される。そして、制御部3が所定のタイミングにてマイクロ波加熱部360からマイクロ波を照射させることにより、パターン孔146に装填された圧力発生部材42が一括して加熱されて体積膨張する。その結果、圧力発生部材42の体積膨張によって生じた圧力によってパターン孔146に装填された被射出材たる金属ペースト43が基板Wに向けて射出され、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンが形成される。
【0158】
このようにしても、ノズルプレート45のパターン孔146に装填された圧力発生部材42を一括して加熱することにより、圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を射出しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。また、圧力発生部材42が一括して加熱されてパターン孔146に装填された金属ペースト43が同時に射出されるため、極めて短時間に基板W上にパターンを形成することができる。
【0159】
図20の構成において圧力発生部材42の全部を一括して加熱する加熱手段として、マイクロ波加熱部360に代えて短い発光時間で大きなエネルギーの閃光を照射するフラッシュランプを用いるようにしても良い。
【0160】
また、上記各実施形態においては、圧力発生部材42に昇華性材料として樟脳を含ませて圧力発生機能を付与するようにしていたが、他の昇華性材料によって圧力発生部材42に圧力発生機能を付与するようにしても良い。例えば、圧力発生部材42に昇華性材料としてドライアイスを含ませるようにしても良い。他の昇華性材料であっても加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じるため、上記各実施形態と同様の処理を行うことができる。
【0161】
また、圧力発生部材42は、昇華性材料を含むものに限定されず、加熱により圧力を発生するものであれば良い。例えば、圧力発生部材42を爆薬にて構成するようにしても良い。また、圧力発生部材42としてガス吸蔵材料を用いるようにしても良い。
【0162】
また、上記各実施形態においては、レーザー光の吸収効率を高めるために圧力発生部材42にカーボンパウダーを含ませていたが、これに限定されるものではなく、カーボンパウダー以外の黒色の粒子を含ませるようにしても良い。要するに、光を吸収しやすい材料、換言すれば光を反射や透過しにくい材料を圧力発生部材42に含ませるようにすれば良い。なお、昇華性材料自体が光を吸収しやすい材料、例えば黒色の昇華性材料であれば、カーボンパウダーのような黒色粒子を圧力発生部材42に含ませなくても良い。
【0163】
第1実施形態から第4実施形態では、基板WをX方向に移動させるとともに、レーザー光照射部60をY方向に移動させることによって相対移動を行っていたが、これに限定されるものではなく、レーザー光照射部60をステージ10に保持された基板Wに対してX方向およびY方向に相対移動させる種々の構成を採用することができる。例えば、基板Wを移動させることなく定位置に保持し、レーザー光照射部60のみをX方向およびY方向に移動させるようにしても良い。
【0164】
また、レーザー光照射部60をX方向に沿って一列に並ぶ複数本のレーザー光を出射するマルチレーザー光照射部として構成するようにしても良い。複数本のレーザー光のピッチは、複数の射出孔46の設置間隔と同じである。このように構成した場合には、レーザー光照射部60をY方向に走査してのパターン形成処理が複数ライン分同時に行われることとなるため、パターン形成に要する処理時間を短縮することができる。
【0165】
また、第1から第4実施形態では、レーザー光を照射して圧力発生部材42を加熱していたが、レーザー光照射に限定されるものではなく、他の光照射によって圧力発生部材42を加熱するようにしても良い。例えば、光源としてランプを用い、そのランプからの光を集光して圧力発生部材42に照射するようにしても良いし、発光ダイオード(LED)からの光を圧力発生部材42に照射して加熱するようにしても良い。
【0166】
また、上記各実施形態においては、射出装置5から上方の基板Wに向けて金属ペースト43を射出するようにしていたが、射出装置5とステージ10との上下関係を反転し、射出装置5から下方の基板Wに向けて金属ペースト43を射出するようにしても良い。
【0167】
また、金属ペースト43に代えて被射出材として粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の接着剤(例えば、エポキシ樹脂系接着剤)を用いるようにしても良い。加熱された圧力発生部材42の体積膨張に起因した圧力によって接着剤を射出し、例えばセンサと半導体素子との接合部のような微小領域に塗布することができる。本発明に係る技術によれば、そのような微小領域に高価な接着剤を必要量だけ塗布することができ、無駄な接着剤の消費を抑制することが可能となる。
【0168】
また、金属ペースト43に代えて金属粒を射出するようにしても良い。具体的には、第1実施形態から第6実施形態において、金属ペースト43に代えて複数の金属粒を分散させた高粘度材料を射出孔46(またはパターン孔146)に装填する。金属粒の材質や粒径は特に限定されるものではなく、金属粉末であっても良い。また、高粘度材料は0.1Pa・s〜1000Pa・sの粘度を有しており、例えば接着剤などを用いることができる。パターン形成処理を行うときには、多数の金属粒を含む高粘度材料が複数の射出孔46に装填された積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。そして、所定のパターンに沿って圧力発生部材42が加熱されると体積膨張による圧力が生じ、被射出材である金属粒を含む高粘度材料が射出される。射出された高粘度材料は基板Wの表面に付着し、当該表面に金属粒のパターンが形成される。なお、高粘度材料に金属粒を分散させるのに代えて、圧力発生部材42の層の上に直接金属粒を分散させ、それを射出孔46から射出するようにしても良い。
【0169】
さらに、本発明に係る射出装置5から金属ペースト43を半導体素子のインナーリードに繋がるようなパターンに射出し、その金属ペースト43によってアウターリードを形成するようにしても良い。すなわち、本発明に係る技術を用いて半導体装置のワイヤーボンディングを行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明は、基板上に各種電気配線のパターン形成を行う技術に好適に適用することができ、特に高粘度材料を用いてパターン形成を行うのに適している。また、本発明は、微細領域への接着剤の塗布や半導体装置のワイヤーボンディングにも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0171】
1,1a パターン形成装置
3 制御部
5 射出装置
10 ステージ
20 ステージ移動機構
41 基材
42 圧力発生部材
43 金属ペースト
45 ノズルプレート
46 射出孔
50,150 支持搬送機構
60 レーザー光照射部
65 レーザー光走査機構
146 パターン孔
160 ヒータ
260 電極
360 マイクロ波加熱部
S 積層体
W 基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、被射出材を対象物に向けて射出する射出装置および方法、並びに、射出した被射出材によって基板上にパターンを形成するパターン形成装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウェハーやフラットパネルディスプレイ(FPD)用のガラス基板等の基板に金属配線(電気配線)を形成する手法としては、基板上にフォトレジスト膜(感光性樹脂膜)を形成してパターン露光および現像処理を行い、その状態で銅などの配線材料となる金属の層を形成するいわゆるフォトリソグラフィ技術が広く使用されてきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、近年、金属を含む液滴をインクジェットノズルから吐出して所定の配線パターンを形成するというインクジェット技術を用いた金属配線形成の開発も進められている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−135168号公報
【特許文献2】特開2005−93702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フォトリソグラフィ技術を用いて金属配線を形成する場合には、フォトレジストの塗布、露光、現像、エッチング、金属層の蒸着等、多数の工程を必要とするため、処理に長時間を要することとなる。また、これらの処理はそれぞれ専用の処理ユニットで行われるため、多数の処理ユニットが必要となって配線形成に要するコストが増大することともなっていた。
【0006】
一方、インクジェット技術を用いて金属配線を形成する場合には、金属を含む液滴が低粘度(通常0.01Pa・s(パスカル秒)以下)であるため、着液後に基板上で濡れ広がりが生じ、微細な配線パターンを形成することは困難であった。この問題を解決するために、基板上の回路パターンに沿って親水化処理(または撥水化処理)を施し、液滴の濡れ広がりを抑制するという手法が考えられるが、かかる処理には長時間を要するために実用化はされていない。
【0007】
このため、特許文献2には、液滴を着液すべき領域を凸形状の堤防部で囲み、その囲まれた領域にインクジェットノズルから金属を含む液滴を吐出して濡れ広がりを防止する技術が提案されている。しかし、かかる技術を採用したとしても、堤防の形成自体にフォトリソグラフィ技術を用いているために、上記と同様の問題が生じる。
【0008】
また、インクジェットノズルからは高粘度の液滴を吐出することが出来ないため、特に厚い電気配線を形成する場合には複数回の重ね塗りが必要となり、処理時間がさらに長くなることとなる。
【0009】
これらの課題を解決するためには、より高粘度の材料(例えば、金属ペースト)を直接吐出することができれば、濡れ広がりを抑制しつつ厚い配線も可能となるのであるが、従来そのような技術は存在していなかった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被射出材として高粘度の材料を対象物に向けて射出することができる射出装置および方法、並びに、高粘度の材料を射出して基板上にパターンを形成することができるパターン形成装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、射出装置に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を表面に積層した基材を支持する支持手段と、前記圧力発生部材に当接して設けられ、その内部に被射出材が装填された複数の射出孔を有する射出板と、前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、射出装置に、基材を支持する支持手段と、前記基材の表面に当接して設けられ、その内部に前記基材から近い順に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材と被射出材とが装填された複数の射出孔を有する射出板と、前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明に係る射出装置において、前記複数の射出孔は前記射出板に格子状に設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る射出装置において、前記加熱手段は、前記複数の射出孔のうちの一部に対応する圧力発生部材を加熱することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、射出装置に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を表面に積層した基材を支持する支持手段と、前記圧力発生部材に当接して設けられ、その内部に被射出材が装填された所定形状のパターン孔を有する射出板と、前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明は、射出装置に、基材を支持する支持手段と、前記基材の表面に当接して設けられ、その内部に前記基材から近い順に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材と被射出材とが装填された所定形状のパターン孔を有する射出板と、前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る射出装置において、前記被射出材と前記圧力発生部材との間に空隙を設けることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係る射出装置において、前記加熱手段は、前記基材の裏面から光を照射して前記圧力発生部材を加熱する光照射手段を含み、前記基材は前記光照射手段から照射される光に対して透明であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明に係る射出装置において、前記圧力発生部材は、前記光照射手段から照射される光を吸収して発熱することにより前記圧力発生部材を加熱する光吸収材料を含むことを特徴とする。
【0020】
また、請求項10の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係る射出装置において、前記加熱手段は、前記圧力発生部材を加熱するヒータを含むことを特徴とする。
【0021】
また、請求項11の発明は、請求項1から請求項7のいずれかの発明に係る射出装置において、前記加熱手段は、前記圧力発生部材に通電して発熱させる通電加熱手段を含むことを特徴とする。
【0022】
また、請求項12の発明は、請求項1から請求項11のいずれかの発明に係る射出装置において、前記圧力発生部材は、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる樟脳を含むことを特徴とする。
【0023】
また、請求項13の発明は、請求項1から請求項12のいずれかの発明に係る射出装置において、前記被射出材は、粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の高粘度材料を含むことを特徴とする。
【0024】
また、請求項14の発明は、パターン形成装置に、請求項1から請求項13のいずれかの発明に係る射出装置と、前記射出板に対向する位置に基板を保持する基板保持手段と、を備え、前記射出装置から射出された被射出材によって基板上にパターン形成を行うことを特徴とする。
【0025】
また、請求項15の発明は、射出方法に、基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層し、当該圧力発生部材に複数の射出孔を有する射出板を当接させる当接工程と、前記射出板の前記複数の射出孔に被射出材を装填する装填工程と、前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0026】
また、請求項16の発明は、射出方法に、射出板に設けられた複数の射出孔に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を装填する第1装填工程と、前記圧力発生部材が装填された前記射出板に基材を当接させる当接工程と、前記射出板の前記複数の射出孔に、前記基材とは反対側より被射出材を装填する第2装填工程と、前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0027】
また、請求項17の発明は、請求項15または請求項16の発明に係る射出方法において、前記複数の射出孔は前記射出板に格子状に設けられていることを特徴とする。
【0028】
また、請求項18の発明は、請求項17の発明に係る射出方法において、前記加熱工程では、前記複数の射出孔のうちの一部に対応する圧力発生部材を加熱することを特徴とする。
【0029】
また、請求項19の発明は、射出方法に、基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層し、当該圧力発生部材に所定形状のパターン孔を有する射出板を当接させる当接工程と、前記射出板の前記パターン孔に被射出材を装填する装填工程と、前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0030】
また、請求項20の発明は、射出方法に、射出板に設けられた所定形状のパターン孔に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を装填する第1装填工程と、前記圧力発生部材が装填された前記射出板に基材を当接させる当接工程と、前記射出板の前記パターン孔に、前記基材とは反対側より被射出材を装填する第2装填工程と、前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、を備えることを特徴とする。
【0031】
また、請求項21の発明は、請求項15から請求項20のいずれかの発明に係る射出方法において、前記被射出材と前記圧力発生部材との間に空隙を設けることを特徴とする。
【0032】
また、請求項22の発明は、請求項15から請求項21のいずれかの発明に係る射出方法において、前記加熱工程は、前記基材の裏面から光を照射して前記圧力発生部材を加熱する工程を含み、前記基材は前記光に対して透明であることを特徴とする。
【0033】
また、請求項23の発明は、請求項22の発明に係る射出方法において、前記圧力発生部材は、前記基材の裏面から照射された前記光を吸収して発熱することにより前記圧力発生部材を加熱する光吸収材料を含むことを特徴とする。
【0034】
また、請求項24の発明は、請求項15から請求項23のいずれかの発明に係る射出方法において、前記圧力発生部材は、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる樟脳を含むことを特徴とする。
【0035】
また、請求項25の発明は、請求項15から請求項24のいずれかの発明に係る射出方法において、前記被射出材は、粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の高粘度材料を含むことを特徴とする。
【0036】
また、請求項26の発明は、パターン形成方法に、請求項15から請求項25のいずれかの発明に係る射出方法と、前記射出板に対向する位置に基板を配置する基板配置工程と、を備え、前記射出板から射出された被射出材によって基板上にパターン形成を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
請求項1から請求項13の発明によれば、圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて複数の射出孔またはパターン孔に装填された被射出材を射出板に対向配置された対象物に向けて射出させるため、被射出材が高粘度の材料であっても対象物に向けて射出することができる。
【0038】
特に、請求項7の発明によれば、被射出材と圧力発生部材との間に空隙を設けるため、射出された被射出材に圧力発生部材が付着して汚染源となることを防止することができる。
【0039】
請求項14の発明によれば、圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて複数の射出孔またはパターン孔に装填された被射出材を射出板に対向配置された対象物に向けて射出させるため、高粘度の材料を射出して基板上にパターンを形成することができる。
【0040】
請求項15から請求項25の発明によれば、圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて複数の射出孔またはパターン孔に装填された被射出材を射出板に対向配置された対象物に向けて射出させるため、被射出材が高粘度の材料であっても対象物に向けて射出することができる。
【0041】
特に、請求項21の発明によれば、被射出材と圧力発生部材との間に空隙を設けるため、射出された被射出材に圧力発生部材が付着して汚染源となることを防止することができる。
【0042】
請求項26の発明によれば、圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて複数の射出孔またはパターン孔に装填された被射出材を射出板に対向配置された対象物に向けて射出させるため、高粘度の材料を射出して基板上にパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るパターン形成装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1のパターン形成装置の正面図である。
【図3】第1実施形態の積層体を上面から見た平面図である。
【図4】図3の積層体のA−A切断面を示す断面図である。
【図5】制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】第1実施形態におけるパターン形成の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の積層体の形成手順を説明する図である。
【図8】第1実施形態の積層体の形成手順を説明する図である。
【図9】圧力発生部材が加熱されて被射出材が射出される様子を説明する図である。
【図10】第2実施形態の積層体の断面図である。
【図11】第2実施形態におけるパターン形成の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態の積層体の形成手順を説明する図である。
【図13】第2実施形態の積層体の形成手順を説明する図である。
【図14】第2実施形態において被射出材が射出される様子を説明する図である。
【図15】第3実施形態のパターン形成装置の概略構成を示す斜視図である。
【図16】第3実施形態のパターン形成装置の正面図である。
【図17】第3実施形態の積層体を上面から見た平面図である。
【図18】第5実施形態の積層体の構造を示す断面図である。
【図19】第6実施形態の積層体の構造を模式的に示す図である。
【図20】圧力発生部材の加熱手段の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0045】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係るパターン形成装置1の概略構成を示す斜視図である。また、図2は、図1のパターン形成装置1の正面図である。なお、図1および以降の各図にはそれらの方向関係を明確にするためZ方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。また、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0046】
このパターン形成装置1は、高粘度の金属ペーストを基板Wに向けて射出することにより、基板W上に金属配線のパターンを形成する装置である。パターン形成装置1は、基板Wを保持するステージ10と、ステージ10をX方向に沿って移動させるステージ移動機構20と、ステージ10に保持された基板Wに向けて金属ペーストを射出する射出装置5と、を備える。射出装置5は、基材の表面に圧力発生部材を積層し、その上からさらにノズルプレートを接着して形成した積層体Sを支持しつつ搬送する支持搬送機構50と、その圧力発生部材にレーザー光を照射して加熱するレーザー光照射部60と、を備える。また、パターン形成装置1は、射出装置5を含む上記の各部を制御してパターン形成処理を実行させる制御部3を備える。
【0047】
ステージ10は、射出装置5の上方に設けられており、その下面に基板Wを保持する。射出装置5は、ステージ10の下面に保持された基板Wに向けて金属ペーストを射出する。ステージ10の下面に基板Wを保持する機構としては、例えば基板Wの端縁部を機械的に保持するクランプ機構または基板Wの裏面を真空吸着する吸着機構(いずれも図示省略)をステージ10に備えるようにすれば良い。
【0048】
第1実施形態のパターン形成装置1において、パターン形成の対象となる基板Wとしては、半導体ウェハー、液晶表示装置(LCD)やプラズマ表示装置(PDP)を含むフラットパネルディスプレイ用のガラス基板、樹脂またはセラミックスのプリント基板など、電気配線を形成する対象となる公知の種々の基板を用いることができる。基板Wの形状も特に限定されるものではなく、半導体ウェハーのように円形状であっても良いし、ガラス基板のように矩形状であっても良い。基板Wは、表面を下側に向けてステージ10の下面に保持される。なお、本明細書において、基板Wの表面とはパターン形成が行われる面であり、裏面はその反対側の面である。
【0049】
ステージ移動機構20は、固定設置された基台21の下側にモータ22、ボールネジ23およびガイドシャフト24を取り付けて構成される。ボールネジ23およびガイドシャフト24はX方向に沿って延設されている。ボールネジ23は、モータ22の回転軸に連結されており、モータ22によって回転される。ステージ10の上側に固定されたスライドブロック12は、ボールネジ23に螺合されるとともに、ガイドシャフト24に摺動自在に嵌合されている。モータ22がボールネジ23を回転させると、それに螺合するスライドブロック12とともにステージ10がガイドシャフト24に案内されてX方向に沿って滑らかに移動する。
【0050】
射出装置5は、ステージ10の下方に設けられており、上方に向けて金属ペーストを射出する。射出装置5は、支持搬送機構50およびレーザー光照射部60を備えて構成される。支持搬送機構50は、主動ローラ51および従動ローラ52を備える。主動ローラ51および従動ローラ52は、ともに回転軸がY方向に沿うように所定間隔を隔てて互いに平行に設けられている。主動ローラ51および従動ローラ52の周面の最高高さ位置は相等しい。2つのローラのうち少なくとも主動ローラ51には図示を省略する駆動モータが連結されている。その駆動モータによって主動ローラ51はY方向に沿った回転軸を中心に図2の紙面上面から見て時計回りに回転される。一方の従動ローラ52はY方向に沿った回転軸を中心に回転自在とされている。なお、従動ローラ52にも別途駆動モータを設けるようにしても良いし、リンク機構などにより主動ローラ51と連動して従動ローラ52が回転するようにしても良い。
【0051】
2つのローラ51,52には、シート状の積層体Sが架け渡されている。図3は、第1実施形態の積層体Sを上面から見た平面図である。また、図4は、図3の積層体SのA−A切断面を示す断面図である。第1実施形態の積層体Sは、透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42の層を形成し、その圧力発生部材42の層の上に複数の射出孔46が穿設されたノズルプレート45を当接して構成される。複数の射出孔46のそれぞれには金属ペースト43が装填されている。基材41としては、可撓性を有するとともにレーザー光照射部60から出射されるレーザー光に対して透明な樹脂フィルムが用いられており、例えばポリイミドのフィルムを採用することができる。
【0052】
また、圧力発生部材42には、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる昇華性材料が含まれており、そのような昇華性材料としては例えば樟脳(カンフル:C10H16O)を用いることができる。樟脳は、液体を経ずに固体から気体へと相転移する昇華性を有しており、加熱されると急速に気化して600倍〜1000倍に体積膨張する。圧力発生部材42には、昇華性材料としての樟脳の他に、グリセリン(C3H5(OH)3)およびカーボンパウダーが含まれている。基材41の表面に形成される圧力発生部材42の層の厚さは特に限定されるものではないが、本実施形態では約10μmとしている。
【0053】
ノズルプレート45は、樹脂フィルム(本実施形態では、基材41と同じくポリイミドのフィルム)を用いて構成されたシート状の部材に複数の射出孔46が穿設された射出板である。シート状のポリイミドフィルムに複数の射出孔46が格子状(より厳密には、正方格子状)に穿設されてノズルプレート45が構成されている。第1実施形態においては、射出孔46の形状を孔径50μmの円形とし、隣り合う射出孔46の間隔(配列ピッチ)を100μmとしている。また、ノズルプレート45の厚さは数10μmとしている。なお、第1実施形態の射出孔46の形状、大きさおよび配置間隔は一例であって、これらは特に限定されるものではなく、パターン形成に要求されている精度(解像度)に応じて適宜のものとすることができる。複数の射出孔46の穿設間隔を短くして配置密度を高くすると高精度なパターン形成が可能となり、逆に穿設する間隔を大きくして配置密度を低くするとパターン形成の精度も低くならざるを得ない。
【0054】
このようなノズルプレート45が圧力発生部材42の層の上に接着され、そのノズルプレート45の複数の射出孔46に金属ペースト43が装填される。金属ペースト43は、主成分としての金属粒子を有機溶剤等によってペースト状とした高粘度材料である。基板Wに形成すべき金属配線の種類に応じて適切な金属粒子を含む金属ペースト43を選択することができる。例えば、基板Wに銅配線を形成する場合であれば銅ペーストを用い、アルミ配線を形成する場合であればアルミペーストを用いることができる。高粘度材料としての金属ペースト43の粘度は、0.1Pa・s(パスカル秒)以上1000Pa・s以下とされる。
【0055】
射出孔46に装填された金属ペースト43の厚さは約10μm程度であり、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。すなわち、ノズルプレート45は圧力発生部材42の層の上に接着されており、射出孔46の下端開口は圧力発生部材42によって閉塞されている。一方、金属ペースト43は射出孔46の下端には装填されておらず、金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成されることとなる。このため、積層体Sにおいて、金属ペースト43と圧力発生部材42とは非接触である。
【0056】
図4に示すように、積層体Sは、可撓性を有するポリイミドのフィルムにて形成された基材41と、同じくポリイミドのフィルムにて形成されたノズルプレート45との間に圧力発生部材42を挟み込んで積層されたものであるため、変形自在である。このため、2つのローラ51,52に架け渡された積層体Sは各ローラの円筒表面に沿って変形する。そして、積層体Sが架け渡された状態で主動ローラ51が回転すると、両ローラ51,52間の積層体Sに弱い張力が作用し、積層体SがXY平面(水平面)に沿って張られた状態となる。さらに主動ローラ51が回転すると、それとともに積層体Sも移動および変形し、従動ローラ52も回転する。具体的には、従動ローラ52よりも上流側の積層体Sは上昇し、主動ローラ51よりも下流側の積層体Sは下降し、両ローラ51,52間の積層体SはX方向に沿って移動する。
【0057】
両ローラ51,52間で水平面に沿って張られた積層体Sの直上、すなわちその張られた積層体Sのノズルプレート45に対向する位置に基板Wはステージ10によって保持される。そして、両ローラ51,52間で張られた積層体Sとステージ10に保持された基板Wの表面との間隔が数100μmとなるようにパターン形成装置1は構成されている。
【0058】
図1,2に戻り、両ローラ51,52間で水平面に沿って張られた積層体Sの下方には、レーザー光照射部60が設けられる。レーザー光照射部60はレーザー光源61を内蔵している。また、レーザー光照射部60の上面には出射孔62が形設されている。レーザー光源61から出力されたレーザー光は出射孔62から鉛直方向上方に向けて((+Z)方向に向けて)出射される。
【0059】
また、レーザー光照射部60は、レーザー光走査機構65によってY方向に沿って往復移動される。レーザー光走査機構65は、モータ68、ボールネジ66およびガイドシャフト67を備えている。ボールネジ66およびガイドシャフト67はY方向に沿って延設されている。ボールネジ66は、モータ68の回転軸に連結されており、モータ68によって回転される。レーザー光照射部60は、ボールネジ66に螺合されるとともに、ガイドシャフト67に摺動自在に嵌合されている。このため、モータ68がボールネジ66を回転させると、それに螺合するレーザー光照射部60がガイドシャフト67に案内されてY方向に沿って滑らかに移動する。
【0060】
レーザー光照射部60は両ローラ51,52間の積層体Sの下方に設けられており、レーザー光照射部60から上方に向けて出射されたレーザー光は基材41の裏面から積層体Sに照射される。基材41は透明であるため、照射されたレーザー光は基材41を透過して圧力発生部材42に吸収される。その結果、レーザー光照射部60からのレーザー光照射によって圧力発生部材42が加熱されることとなる。
【0061】
制御部3は、パターン形成装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。図5は、制御部3の構成を示すブロック図である。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU31、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM32、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM33および制御用プログラムやデータなどを記憶しておく磁気ディスク34をバスライン39に接続して構成されている。
【0062】
また、バスライン39には、ステージ10に保持された基板WをX方向に沿って移動させるステージ移動機構20、積層体Sを支持しつつX方向に沿って移動させる支持搬送機構50、レーザー光照射部60をY方向に沿ってスキャンさせるレーザー光走査機構65、および、積層体Sの圧力発生部材42にレーザー光を照射して加熱するレーザー光照射部60等が電気的に接続されている。制御部3のCPU31は、磁気ディスク34に格納された制御用プログラムを実行することにより、これらの各動作機構を制御して基板W上に所定のパターンの金属配線を形成する。
【0063】
さらに、バスライン39には、表示部35および入力部36が電気的に接続されている。表示部35は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理結果やレシピ内容等の種々の情報を表示する。入力部36は、例えばキーボードやマウス等を用いて構成されており、コマンドやパラメータ等の入力を受け付ける。装置のオペレータは、表示部35に表示された内容を確認しつつ入力部36からコマンドやパラメータ等の入力を行うことができる。なお、表示部35と入力部36とを一体化してタッチパネルとして構成するようにしても良い。
【0064】
上記の要部構成以外にもパターン形成装置1は、基板W、積層体Sおよびレーザー光照射部60のそれぞれの位置を検出するための位置センサを備えている(いずれも図示省略)。位置センサとしては、基板W等の位置を直接検知する光学センサやモータの回転量から検知するエンコーダ等を使用することができる。また、パターン形成装置1は、未処理の積層体Sを送り出すフィード機構および使用済みの積層体Sを回収する回収機構を備えている。さらに、パターン形成装置1には、基板Wおよび積層体Sの周辺雰囲気を調整する機構を備えるようにしても良い。
【0065】
次に、基板Wに金属配線のパターン形成を行う処理手順について説明する。図6は、パターン形成の処理手順を示すフローチャートである。パターン形成装置1での処理に先立って、積層体Sが形成される(ステップS11〜ステップS13)。まずは積層体Sを形成する手順について図7および図8を参照しつつ説明する。
【0066】
ステップS11では、図7(a)に示すような長尺シート状(帯状)の基材41を用意し、その表面に圧力発生部材42を積層する。第1実施形態では、基材41としてポリイミドのフィルムを用いている。透明なポリイミドのフィルムを長尺シート状に加工してなる基材41の表面の全面に均一な厚さで圧力発生部材42の層を形成する。層として形成される前の圧力発生部材42は、昇華性材料である樟脳およびカーボンパウダーをグリセリンと混合して生成されるスラリー状ものであり、塗布法によって基材41の表面に塗布することが可能である。
【0067】
このような塗布法としては、公知の種々の手法を用いることが可能であり、第1実施形態では図7(b)に示すようなドクターブレード法によって圧力発生部材42を基材41の表面に塗布している。ドクターブレード法は、ノズル71から圧力発生部材42のスラリーを基材41の表面に供給しつつ、ドクターブレード72によってスラリーを平坦に均すことにより、均一な厚さの圧力発生部材42の層を形成する塗布法である。すなわち、圧力発生部材42のスラリーを連続して吐出するノズル71が基材41に対して矢印AR7の向きに相対移動される。ノズル71としては、例えば基材41の幅方向に沿って延びるスリット状の吐出口を有するスリットノズルを用いれば良い。
【0068】
ノズル71にはドクターブレード72が装着されている。ドクターブレード72は、ノズル71の進行方向(矢印AR7の向き)において吐出口よりも後端側に取り付けられている。また、ドクターブレード72は、その下端が基材41の表面と正確に所定間隔を隔てるようにノズル71に取り付けられている。ドクターブレード72がその下端を圧力発生部材42のスラリーに接触させながら基材41の上方を矢印AR7の向きに沿って相対移動することにより、スラリーの上面は平坦に均され、その厚さは均一とされる。
【0069】
基材41の表面に圧力発生部材42のスラリーが均一に塗布された後、その乾燥処理を行うことによって、図7(c)に示すように基材41の表面の全面に厚さ約10μmの圧力発生部材42の層が均一な厚さにて形成される。なお、基材41の表面に圧力発生部材42を積層する塗布法としては、基材41の表面に均一な厚さで塗布できるものであれば良く、ドクターブレード法の他に、スリットコート法やバーコート法などを用いるようにしても良い。
【0070】
次に、図8(a)に示すように、基材41の表面に形成された圧力発生部材42の層の上に、複数の射出孔46が穿設されたノズルプレート45が接着される(ステップS12)。このための接着剤としては、例えば合成ゴム系接着剤を用いるようにすれば良い。また、ノズルプレート45の複数の射出孔46は、例えばポリイミドのフィルムにエキシマレーザーを照射することによって格子状に穿設すれば良い。ノズルプレート45が接着されることにより、図8(b)に示すように、複数の射出孔46を有するノズルプレート45と基材41との間に圧力発生部材42の層が挟み込まれるように積層された積層体Sが形成される。
【0071】
そして、図8(c)に示すように、ノズルプレート45の複数の射出孔46に被射出材としての金属ペースト43が装填される(ステップS13)。金属ペースト43は、金属粒子を含む高粘度材料であり、上記の圧力発生部材42と同様に塗布法によって複数の射出孔46に装填することが可能である。金属ペースト43を射出孔46に装填する塗布法としても、公知の種々の手法を用いることが可能であるが、第1実施形態ではドクターブレード法を用いている。すなわち、金属ペースト43を連続して吐出するノズル71がノズルプレート45に対して矢印AR8の向きに相対移動される。ドクターブレード72は、その下端がノズルプレート45の上面に接触するようにノズル71に取り付けられている。ノズル71から金属ペースト43を供給しつつ、ドクターブレード72がその下端をノズルプレート45の上面に接触させながら矢印AR8の向きに沿って相対移動することにより、複数の射出孔46に金属ペースト43が押し込まれるとともに、射出孔46以外の領域では金属ペースト43がドクターブレード72によって掻き取られる。このようにしてノズルプレート45の複数の射出孔46に金属ペースト43が装填される。なお、ノズルプレート45の上面の射出孔46以外の領域に金属ペースト43が若干残留していても良い。
【0072】
ところで、金属ペースト43が射出孔46に装填される際に、射出孔46の下側開口は圧力発生部材42によって閉塞されている。このため、射出孔46の上側開口から高粘度の金属ペースト43が押し込まれると、その射出孔46の内部に残留していた空気がそのまま金属ペースト43と圧力発生部材42との間に閉じこめられることとなる。その結果、金属ペースト43が残留空気によって射出孔46の底まで入り込まなくなり、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。
【0073】
こうして形成された積層体Sが主動ローラ51および従動ローラ52に架け渡される(ステップS14)。積層体Sは、ノズルプレート45が両ローラ51,52間で上方を向くようにセットされる。よって、両ローラ51,52間では、複数の射出孔46の形設方向が鉛直方向を向く。
【0074】
続いて、処理対象となる基板Wがステージ10の下面に保持される(ステップS15)。基板Wは、両ローラ51,52間における積層体Sのノズルプレート45に対向する位置に、パターン形成が行われる表面を下側に向けてステージ10に保持される。すなわち、基板Wは積層体Sの上方にて積層体Sに対向配置される。
【0075】
そして、基板Wとレーザー光照射部60との相対位置関係がパターン形成のための初期位置となるように、制御部3の制御によりステージ移動機構20およびレーザー光走査機構65がそれぞれ基板Wおよびレーザー光照射部60を移動させる。具体的には、相対位置関係のX方向の調整はステージ移動機構20が基板Wを移動させることによって行われ、Y方向の調整はレーザー光走査機構65がレーザー光照射部60を移動させることによって行われる。また、積層体Sについても支持搬送機構50によって初期位置に移動される。なお、両ローラ51,52間の積層体Sと基板Wの表面との間隔は数100μmとしておく。
【0076】
基板W、レーザー光照射部60および積層体Sの初期配設が完了した後、制御部3がレーザー光照射部60によるレーザー光照射の制御を開始する(ステップS16)。また、それと同時に、制御部3はレーザー光照射部60の相対移動を開始させる(ステップS17)。具体的には制御部3は、基板Wおよび積層体Sを停止させたまま、レーザー光走査機構65を制御してレーザー光照射部60をY方向に走査させる。
【0077】
制御部3の記憶部(RAM33または磁気ディスク34)には、基板Wに形成すべき金属配線のパターンのデータが予め格納されている。制御部3は、その格納されたパターンデータに従って、レーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う。すなわち、基板W上の所定のX方向位置にてレーザー光照射部60がY方向に沿って走査しているときに、パターン形成すべきY方向位置にレーザー光照射部60が到達した時点で制御部3がレーザー光源61からレーザー光を出射させる。なお、レーザー光源61がオンとされるのは、ノズルプレート45の射出孔46の直下にレーザー光照射部60が位置しているときとなるようにパターンデータは作成されている。よって、ノズルプレート45の射出孔46が存在しない領域の直下にレーザー光照射部60が到達したときにはレーザー光源61からのレーザー光照射は停止される。
【0078】
レーザー光照射部60のレーザー光源61から鉛直方向上方に向けて出射されたレーザー光は積層体Sの裏面側から入射する。積層体Sの最下層を構成する基材41は透明であるため、レーザー光照射部60から照射されたレーザー光は基材41を透過して圧力発生部材42に到達して吸収される。その結果、レーザー光照射を受けた圧力発生部材42の領域では急激な温度上昇が生じる。すなわち、レーザー光照射部60が基材41の裏面からレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部の直下に位置する圧力発生部材42を加熱するのである。これにより、圧力発生部材42のレーザー光照射領域は短時間のうちに150℃以上にまで加熱される。なお、レーザー光照射領域の大きさは特に限定されるものではないが、例えば射出孔46の孔径と同程度の直径50μm程度の円形とすれば良い。
【0079】
図9は、圧力発生部材42が加熱されて被射出材たる金属ペースト43が射出される様子を説明する図である。レーザー光照射部60から基材41を透過して複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42にレーザー光が照射されると、その圧力発生部材42はレーザー光を吸収して短時間のうちに150℃以上にまで昇温する。特に、圧力発生部材42は黒色のカーボンパウダーを含有しているため、効率良くレーザー光を吸収して昇温する。
【0080】
圧力発生部材42が昇温すると、圧力発生部材42に含まれている昇華性材料である樟脳が急速に気化して600倍〜1000倍に体積膨張する。その結果、図9(a)に示すように、レーザー光照射によって加熱された圧力発生部材42の一部では、樟脳の昇華に起因した急激な体積膨張により、圧力波が発生する。そして、その発生した圧力波によってレーザー光照射領域の直上に位置する射出孔46内の空隙47の圧力が急激に上昇し、図9(b)に示すように、当該射出孔46に装填された金属ペースト43が上方に向けて、すなわちノズルプレート45に対向配置された基板Wに向けて射出されるのである。
【0081】
このように、第1実施形態においては、レーザー光照射部60が積層体Sの基材41の裏面からレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42を加熱することにより、その圧力発生部材42に急激な体積膨張による圧力を生じさせている。そして、その圧力によって当該圧力発生部材42の直上に位置する射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43をステージ10に保持された基板Wに向けて射出させている。昇華性材料である樟脳を加熱したときの急激な体積膨張によって生じた圧力を利用しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43であっても基板Wに向けて射出することができる。また、樟脳であれば、昇華したときに有害なガスや汚染物質を発生することもない。
【0082】
上方に向けて射出された金属ペースト43は基板Wの表面に到達し、その位置にて基板Wの表面に付着する。このようにして、金属配線を形成するための金属ペースト43が基板Wに供給される。なお、金属ペースト43は基板Wの下側から付着することとなるが、金属ペースト43が粘度が0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料であるため、積層体Sに再度落下する液ダレのおそれはなく、また基板Wの表面に沿って濡れ広がりが生じることも防止される。
【0083】
レーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う射出処理はレーザー光照射部60が走査終了位置に到達するまで行われる。そして、レーザー光照射部60が走査終了位置に到達した時点で基板W上の所定のX方向位置における1ライン分の処理が完了となる。1ライン分の処理が完了したら、基板Wおよび積層体SをX方向に沿ってステップ送りする。すなわち、制御部3がステージ移動機構20を制御して基板WをX方向に沿って所定距離だけ移動させる。これにより、レーザー光照射部60が基板Wに対してX方向に相対移動することとなり、基板W上の新たなX方向位置におけるレーザー光照射部60の走査が可能となる。また、制御部3が支持搬送機構50を制御して積層体SをX方向に沿って所定距離だけ移動させる。これにより、レーザー光照射部60は積層体Sに対してもX方向に相対移動することとなる。このようにしているのは、積層体SをX方向に移動させなければ、既にレーザー光を照射して使用済みとなっている積層体Sの射出孔46に再度レーザー光を照射する可能性があるためである。
【0084】
このような基板Wおよび積層体Sのステップ送りが終了した後、再び制御部3がレーザー光照射部60をY方向に走査させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う。以降、パターン形成処理が終了するまで上記と同様の手順が繰り返される。その結果、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿ってレーザー光照射部60から積層体Sにレーザー光を照射させて圧力発生部材42の一部を加熱することとなり、そのパターンに沿ってノズルプレート45から金属ペースト43が上方に射出されて基板Wの表面に付着して金属配線のパターン形成がなされる。
【0085】
以上のように、第1実施形態においては、まず、透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その圧力発生部材42の層の上に複数の射出孔46を設けたノズルプレート45を接着している。そして、ノズルプレート45の複数の射出孔46に被射出材たる金属ペースト43を装填して積層体Sを形成している。このとき、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。
【0086】
次に、形成された積層体Sと処理対象となる基板Wとを相対向させて配置する。そして、レーザー光照射部60が基板Wに対して相対移動しつつ、レーザー光照射部60からのレーザー光照射をオンオフして圧力発生部材42におけるレーザー光照射位置が所定のパターンを描くように、制御部3がレーザー光走査機構65、ステージ移動機構20およびレーザー光照射部60を制御する。こうして積層体Sの基材41の裏面から所定のパターンに沿ってレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42を加熱し、その圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせてノズルプレート45の複数の射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出し、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンを形成している。
【0087】
第1実施形態の射出装置5は、昇温すると急激に体積膨張する樟脳を含む圧力発生部材42をレーザー光照射によって加熱し、圧力発生部材42に急激な体積膨張に起因した圧力を生じさせ、その圧力を利用して射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出している。昇華性材料である樟脳を加熱したときの急激な体積膨張によって生じた圧力を利用しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43であっても基板Wに向けて射出することができる。
【0088】
また、パターン形成装置1は、射出装置5を用いて圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を射出しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
【0089】
特に、第1実施形態のパターン形成装置1は、所定のパターンデータに基づいて、レーザー光照射部60を基板Wに対して相対移動させつつ、レーザー光照射部60にレーザー光照射をオンオフさせて、基材41の裏面から所定のパターンに沿ってレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部に対応する圧力発生部材42を加熱している。そして、圧力発生部材42のレーザー光照射領域に体積膨張による圧力を生じさせて複数の射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出しているため、基板W上に所定のパターンに沿って正確に金属ペースト43を付着させることができる。
【0090】
また、射出装置5は、ノズルプレート45に鉛直方向に沿って設けられた射出孔46から金属ペースト43を射出しているため、金属ペースト43を正確に鉛直方向上方に向けて射出することができる。
【0091】
また、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成されているため、双方は接触していない。このため、射出された金属ペースト43に圧力発生部材42が付着して基板Wの汚染源となることのを防止することができる。
【0092】
また、高粘度の金属ペースト43を直接射出して基板Wに供給しているため、パターン形成に要する工程数が少なく、処理時間も短くすることができる。その結果、基板Wに対するパターン形成に要する処理コストの増大を抑制することができる。
【0093】
また、パターン形成装置1においては、高粘度の金属ペースト43を直接基板Wに供給することができるため、いわゆる濡れ広がりが生じることはない。さらに、基板Wに厚い電気配線を形成する場合であっても、高粘度の金属ペースト43を1回射出するだけで配線形成が可能となり、処理に要する時間を短くすることができる。
【0094】
さらに、第1実施形態のパターン形成装置1においては、射出装置5がステージ10に保持された基板Wよりも下方に設けられており、金属ペースト43が上方に向けて射出される。このため、射出時に発生した金属ペースト43のミスト等は下方の積層体Sに落下することとなるため、そのようなミストが基板Wに付着して汚染源となるのを防止することができる。
【0095】
また、圧力発生部材42が黒色のカーボンパウダーを含有しているため、レーザー光照射部60から照射されるレーザー光を効率よく吸収して発熱することにより、圧力発生部材42に含まれる昇華性材料である樟脳を効果的に加熱することができる。圧力発生部材42に含まれる昇華性材料である樟脳は光を透過しやすい、言い換えると光を吸収しにくいので、樟脳自体を直接に光で加熱することは難しい。また、圧力発生部材42に含まれるグリセリンも光を透過しやすい、つまりは光を吸収しにくいので、光照射によってグリセリンを加熱することも困難である。そこで、光を吸収しやすい材料、例えばカーボンパウダーなどの黒色の粒子を圧力発生部材42に含ませて、そのような黒色粒子に光を吸収させて発熱させることにより、樟脳を加熱しているのである。
【0096】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、積層体Sの構造および形成手順である。第2実施形態の積層体Sを上面から見た平面図は図3と同じである。図10は、第2実施形態の積層体Sの断面図である。なお、図10以降において、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付している。
【0097】
第2実施形態の積層体Sは、透明な基材41の表面に直接ノズルプレート45を当接して構成される。ノズルプレート45には複数の射出孔46が穿設され、複数の射出孔46のそれぞれには加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42および金属ペースト43が装填されている。基材41、圧力発生部材42、金属ペースト43およびノズルプレート45の材質は第1実施形態と同様である。また、ノズルプレート45には複数の射出孔46が格子状に穿設されている。複数の射出孔46の形状、大きさおよび配置間隔も第1実施形態と同様である。
【0098】
第2実施形態においては、基材41の表面に複数の射出孔46を有するノズルプレート45が接着され、複数の射出孔46の内部には基材41から近い順に圧力発生部材42と被射出材たる金属ペースト43とが装填される。また、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。すなわち、射出孔46の下端開口は圧力発生部材42が装填されて閉塞され、上端開口は金属ペースト43が装填されて閉塞され、それらの間に空隙47が形成されている。このため、積層体Sにおいて、金属ペースト43と圧力発生部材42とは非接触である。
【0099】
第2実施形態の積層体Sも可撓性を有するポリイミドのフィルムにて形成された基材41とノズルプレート45とを積層したものであるため変形自在である。従って、2つのローラ51,52を有する支持搬送機構50によって積層体Sを支持して搬送することが可能である。残余の射出装置5およびパターン形成装置1の構成は第1実施形態と同様である。
【0100】
図11は、第2実施形態におけるパターン形成の処理手順を示すフローチャートである。図6に示した第1実施形態と相違するのはステップS21〜ステップS24までの積層体Sの形成手順である。第2実施形態の積層体Sを形成する手順について図12および図13を参照しつつ説明する。
【0101】
まず、例えばポリイミドのフィルムにエキシマレーザーを照射して複数の射出孔46を格子状に穿設し、図12(a)に示す如きノズルプレート45を準備する。そして、図12(b)に示すように、ノズルプレート45の複数の射出孔46に圧力発生部材42を装填する(ステップS21の第1装填工程)。第2実施形態にて射出孔46に装填するときの圧力発生部材42も樟脳およびカーボンパウダーをグリセリンと混合して生成されるスラリー状ものであるが、第1実施形態のステップS11にて基材41の表面に塗布する圧力発生部材42のスラリーを溶剤で10倍程度に希釈したものであり、その粘度は低い。
【0102】
第2実施形態の圧力発生部材42のスラリーも塗布法によって複数の射出孔46に装填される。圧力発生部材42のスラリーを射出孔46に装填する塗布法としても、公知の種々の手法を用いることが可能であるが、第2実施形態ではドクターブレード法を用いている。すなわち、圧力発生部材42のスラリーを連続して吐出するノズル71がノズルプレート45に対して矢印AR12の向きに相対移動される。ドクターブレード72は、その下端がノズルプレート45の上面に接触するようにノズル71に取り付けられている。ノズル71から圧力発生部材42のスラリーを供給しつつ、ドクターブレード72がその下端をノズルプレート45の上面に接触させながら矢印AR12の向きに沿って相対移動することにより、複数の射出孔46に圧力発生部材42のスラリーが押し込まれるとともに、射出孔46以外の領域ではスラリーがドクターブレード72によって掻き取られる。このようにしてノズルプレート45の複数の射出孔46に圧力発生部材42が装填される。
【0103】
第2実施形態では、射出孔46の下端開口が開放された状態で圧力発生部材42のスラリーが装填され、しかもそのスラリーの粘度は第1実施形態よりも低いため、射出孔46内部の空気はスラリー装填時に外部に放出される。その結果、図12(b)に示すように、圧力発生部材42のスラリーは射出孔46の全体に満たされるように装填(つまり充填)される。
【0104】
次に、図12(c)に示すように、複数の射出孔46に圧力発生部材42のスラリーが装填されたノズルプレート45の下側面に基材41が接着される(ステップS22)。このための接着剤としては、例えば合成ゴム系接着剤を用いるようにすれば良い。基材41が接着されることにより、図13(a)に示すように、圧力発生部材42のスラリーが装填された複数の射出孔46を有するノズルプレート45と基材41とが積層された積層体Sが形成される。
【0105】
基材41が接着された後、ステップS23に進み、圧力発生部材42のスラリーの乾燥処理を行うことによって溶剤成分が揮発して容積が減少し、射出孔46の下端部(基材41が接着された側の端部)に圧力発生部材42の層が形成される。その結果、図13(b)に示すように、下端部に圧力発生部材42の層が形成された複数の射出孔46を有するノズルプレート45と基材41とが積層された状態となる。
【0106】
そして、図13(c)に示すように、ノズルプレート45の複数の射出孔46に基材41とは反対側より被射出材としての金属ペースト43が装填される(ステップS24の第2装填工程)。複数の射出孔46に対する金属ペースト43の装填工程は第1実施形態と同じであり、塗布法としてドクターブレード法を用いて実行している。すなわち、金属ペースト43を連続して吐出するノズル71がノズルプレート45に対して矢印AR13の向きに相対移動される。ドクターブレード72は、その下端がノズルプレート45の上面に接触するようにノズル71に取り付けられている。ノズル71から金属ペースト43を供給しつつ、ドクターブレード72がその下端をノズルプレート45の上面に接触させながら矢印AR13の向きに沿って相対移動することにより、複数の射出孔46に金属ペースト43が押し込まれるとともに、射出孔46以外の領域では金属ペースト43がドクターブレード72によって掻き取られる。このようにしてノズルプレート45の複数の射出孔46に金属ペースト43が装填される。
【0107】
また、第1実施形態と同じく、射出孔46の下側開口が圧力発生部材42によって閉塞された状態で上側開口から(つまり、基材41とは反対側から)高粘度の金属ペースト43が押し込まれることによって、射出孔46の内部に残留していた空気がそのまま金属ペースト43と圧力発生部材42との間に閉じこめられることとなる。その結果、金属ペースト43が残留空気によって射出孔46の奥まで入り込まなくなり、装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。
【0108】
その後の、ステップS25〜ステップS28までの処理は、第1実施形態の図6に示したステップS14〜ステップS17までの処理と同じである。すなわち、上記のようにして形成された積層体Sが主動ローラ51および従動ローラ52に架け渡され(ステップS25)、処理対象となる基板Wがノズルプレート45に対向するようにステージ10の下面に保持される(ステップS26)。そして、制御部3がレーザー光照射部60によるレーザー光照射の制御を開始するとともに(ステップS27)、レーザー光照射部60の相対移動を開始させる(ステップS28)。制御部3は、記憶部に予め格納されたパターンデータに従って、レーザー光照射部60を相対移動させつつ、レーザー光源61のオンオフ制御を行う。
【0109】
図14は、第2実施形態において被射出材たる金属ペースト43が射出される様子を説明する図である。レーザー光照射部60から基材41を透過して射出孔46に装填された圧力発生部材42にレーザー光が照射されると、その圧力発生部材42はレーザー光を吸収して短時間のうちに150℃以上にまで昇温する。圧力発生部材42が昇温すると、圧力発生部材42に含まれている昇華性材料である樟脳が急速に気化して600倍〜1000倍に体積膨張する。その結果、図14(a)に示すように、レーザー光照射によって加熱された圧力発生部材42は、樟脳の昇華に起因した急激な体積膨張により圧力波を発生する。そして、その発生した圧力波によって当該圧力発生部材42が装填されている射出孔46内の空隙47の圧力が急激に上昇し、図14(b)に示すように、その射出孔46に装填された金属ペースト43が上方に向けて、すなわちノズルプレート45に対向配置された基板Wに向けて射出されるのである。
【0110】
このように、第2実施形態においては、レーザー光照射部60が積層体Sの基材41の裏面からレーザー光を照射して射出孔46に装填された圧力発生部材42を加熱することにより、その圧力発生部材42に急激な体積膨張による圧力を生じさせている。そして、その圧力によって当該圧力発生部材42と同じ射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43をステージ10に保持された基板Wに向けて射出させている。昇華性材料である樟脳を加熱したときの急激な体積膨張によって生じた圧力を利用しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43であっても基板Wに向けて射出することができる。
【0111】
上方に向けて射出された金属ペースト43は基板Wの表面に到達し、その位置にて基板Wの表面に付着する。このようにして、金属配線を形成するための金属ペースト43が基板Wに供給される。レーザー光照射部60の相対移動およびレーザー光源61のオンオフ制御は第1実施形態と同じである。従って、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿ってレーザー光照射部60から積層体Sにレーザー光を照射させて複数の射出孔46のうちの一部に装填された圧力発生部材42を加熱することとなり、そのパターンに沿ってノズルプレート45から金属ペースト43が上方に射出されて基板Wの表面に付着して金属配線のパターン形成がなされる。
【0112】
以上のように、第2実施形態においては、まず、ノズルプレート45の複数の射出孔46に圧力発生部材42を装填し、そのノズルプレート45に透明な基材41を接着している。そして、ノズルプレート45の複数の射出孔46に被射出材たる金属ペースト43を装填して積層体Sを形成している。複数の射出孔46のそれぞれにおいては、基材41から近い順に圧力発生部材42と金属ペースト43とが装填され、それらの間には空隙47が形成される。
【0113】
次に、形成された積層体Sと処理対象となる基板Wとを相対向させて配置する。そして、レーザー光照射部60が基板Wに対して相対移動しつつ、レーザー光照射部60からのレーザー光照射をオンオフして積層体Sにおけるレーザー光照射位置が所定のパターンを描くように、制御部3がレーザー光走査機構65、ステージ移動機構20およびレーザー光照射部60を制御する。こうして積層体Sの基材41の裏面から所定のパターンに沿ってレーザー光を照射して複数の射出孔46のうちの一部に装填された圧力発生部材42を加熱し、その圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて同じ射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出し、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンを形成している。
【0114】
第2実施形態の射出装置5も、昇温すると急激に体積膨張する樟脳を含む圧力発生部材42をレーザー光照射によって加熱し、圧力発生部材42に急激な体積膨張に起因した圧力を生じさせ、その圧力を利用して射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出している。昇華性材料である樟脳を加熱したときの急激な体積膨張によって生じた圧力を利用しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43であっても基板Wに向けて射出することができる。
【0115】
また、第2実施形態のパターン形成装置1は、射出装置5を用いて圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を射出しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。これ以外にも、第2実施形態のパターン形成装置1は、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0116】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態ではノズルプレート45に複数の射出孔46が格子状に設けられていたが、第3実施形態においては予め所定形状にパターン化されたパターン孔146がノズルプレート45に設けられている。図15は、第3実施形態のパターン形成装置1aの概略構成を示す斜視図である。また、図16は、第3実施形態のパターン形成装置1aの正面図である。
【0117】
基板Wを保持するステージ10およびステージ10を移動させるステージ移動機構20については第1実施形態と全く同じである。また、射出装置5のレーザー光照射部60およびレーザー光走査機構65についても第1実施形態と同様である。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは積層体Sのノズルプレート45に複数の射出孔46に代えてパターン孔146を設けている点、および、そのノズルプレート45にて構成された積層体Sを支持して搬送する支持搬送機構150である。第1実施形態の支持搬送機構50は可撓性を有する積層体Sを2つのローラによって搬送するローラ搬送方式を採用していたが、第3実施形態の支持搬送機構150は積層体Sをステージに支持して搬送するステージ搬送方式を採用している。
【0118】
ステージ移動機構20もステージ搬送方式によるものであり、第3実施形態の支持搬送機構150はステージ移動機構20と類似する構成を備えている。すなわち、支持搬送機構150は、モータ152の回転軸に連結されたボールネジ153にステージ151を螺合させて構成されている。モータ152がボールネジ153を回転させると、それに螺合するステージ151がX方向に沿って移動する。なお、ステージ移動機構20と同様に、ステージ151をX方向に沿って案内するガイドシャフトを設けるようにしても良い。
【0119】
支持搬送機構150のステージ151は、環状に構成されており、積層体Sの周縁部を保持することによって基板Wと積層体Sとを対向配置する。ステージ151の環状部分の内側は中空であるため、ステージ151がレーザー光照射の障害となることはない。なお、ステージ151をレーザー光に対して透明な素材(例えば、石英ガラス)にて形成する場合には、板状のステージ151にて積層体Sの全面を載置して保持するようにしても良い。
【0120】
図17は、第3実施形態の積層体Sを上面から見た平面図である。第3実施形態の積層体Sの断面構造は、複数の射出孔46に代えてパターン孔146とされている点を除いては図4に示した第1実施形態と概ね同じである。すなわち、第3実施形態の積層体Sは、透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42の層を形成し、その圧力発生部材42の層の上にパターン孔146が穿設されたノズルプレート45を当接して構成される。ノズルプレート45のパターン孔146には金属ペースト43が装填される。
【0121】
第1実施形態では2つのローラ51,52に沿って積層体Sが撓む必要があったために基材41として樹脂フィルムを用いていたが、第3実施形態では積層体Sに可撓性は不要であるため、基材41はレーザー光照射部60から出射されるレーザー光に対して透明な素材であれば良く、例えばガラス基板などを使用することができる。また、ノズルプレート45にも可撓性は不要であるため、例えば金属プレートを使用することができる。なお、圧力発生部材42および金属ペースト43については第1実施形態と全く同じである。
【0122】
第3実施形態のパターン形成装置1aの残余の構成は第1実施形態と同じである。また、第3実施形態におけるパターン形成の処理手順も第1実施形態(図6)と同様である。但し、第3実施形態では圧力発生部材42の層を形成する塗布法として、回転する基材41に圧力発生部材42のスラリーを供給して均一な厚さの層を形成するスピンコート法を用いるようにしても良い。
【0123】
また、第3実施形態のノズルプレート45は、金属プレートにフォトリソグラフィまたはレーザー加工などの手法によって所定形状のパターン孔146を穿設して形成される。パターン孔146の形状は、処理対象となる基板Wに形成すべきパターンの形状と同じである。このようなパターン孔146を有するノズルプレート45が基材41の表面に形成された圧力発生部材42の層の上に当接され、そのパターン孔146に被射出材としての金属ペースト43が装填される。
【0124】
また、制御部3がレーザー光照射部60を相対移動させつつ、レーザー光照射の制御を行う点も第1実施形態と同じであるが、第3実施形態では必ずしもレーザー光源61のオンオフ制御を行う必要はなく、レーザー光源61からレーザー光を連続照射するようにしても良い。このようにしても、レーザー光照射部60から基材41を透過して圧力発生部材42にレーザー光が照射されると、その圧力発生部材42はレーザー光を吸収して短時間のうちに150℃以上にまで昇温して急激な体積膨張による圧力を発生する。そして、その圧力によってパターン孔146に装填された被射出材たる金属ペースト43がステージ10に保持された基板Wに向けて射出される。第3実施形態では、レーザー光照射のパターンにかかわらずパターン孔146の形状に沿って金属ペースト43が射出されることとなるため、相対移動するレーザー光照射部60からレーザー光を連続照射するようにしても、基板Wの表面にパターン孔146の形状に沿って金属配線のパターン形成を行うことができる。
【0125】
このように、第3実施形態においては、まず、透明な基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42を積層し、その圧力発生部材42の層の上に所定形状のパターン孔146を設けたノズルプレート45を当接している。そして、ノズルプレート45のパターン孔146に被射出材たる金属ペースト43を装填して積層体Sを形成している。装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。
【0126】
次に、形成された積層体Sと処理対象となる基板Wとを相対向させて配置する。そして、レーザー光照射部60が基板Wに対して相対移動しつつ、積層体Sの基材41の裏面から圧力発生部材42にレーザー光を照射する。このとき、レーザー光照射部60からレーザー光を連続照射するようにしても良い。こうして積層体Sの基材41の裏面からレーザー光を照射してパターン孔146に対応する圧力発生部材42を加熱し、その圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせてノズルプレート45のパターン孔146に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出し、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンを形成している。
【0127】
従って、第3実施形態のパターン形成装置1は、第1実施形態と同様に、射出装置5を用いて圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を射出しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
【0128】
また、第3実施形態のパターン形成装置1は、所定形状のパターン孔146を予め穿設したノズルプレート45を用いて積層体Sを構成しているため、レーザー光照射のパターンにかかわらずパターン孔146の形状に沿って金属ペースト43が射出されることとなる。このため、相対移動するレーザー光照射部60からレーザー光を連続照射するようにしても、パターン孔146に沿った形状にて金属ペースト43が射出され、その形状にて基板Wに金属配線のパターン形成を行うことができる。よって、制御部3は必ずしもパターンデータを保持しておく必要はなく、レーザー光照射の制御は容易である。
【0129】
このような第3実施形態のパターン形成装置1aは、基板Wに形成すべきパターンの形状が確定しているような場合に好適である。もっとも、基板Wに形成するパターンを自由に変更したい場合には、第1,第2実施形態のパターン形成装置1の方が好適である。
【0130】
また、ノズルプレート45として金属プレートを使用するのであれば、使用済みのノズルプレート45を回収して再利用するのが望ましい。具体的には、使用済みのノズルプレート45を回収する機構、回収したノズルプレート45を洗浄する機構、および、洗浄後のノズルプレート45を備えた積層体Sに金属ペースト43を装填する機構等をパターン形成装置1に付設するようにすれば良い。
【0131】
第3実施形態のパターン形成装置1aが奏する残余の効果は第1実施形態と同様である。
【0132】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第2実施形態の複数の射出孔46に代えて第3実施形態と同様の予め所定形状にパターン化されたパターン孔146をノズルプレート45に設けたものである。第4実施形態は、積層体Sの構造および形成手順を除いて第3実施形態と同じである。
【0133】
第4実施形態の積層体Sの断面構造は、複数の射出孔46に代えてパターン孔146とされている点を除いては図10に示した第2実施形態と概ね同じである。すなわち、第4実施形態の積層体Sは、透明な基材41の表面に直接ノズルプレート45を当接して構成される。ノズルプレート45には所定形状のパターン孔146が穿設され、そのパターン孔146には加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42および金属ペースト43が装填される。
【0134】
第4実施形態の積層体Sの形成手順は第2実施形態と同じである。すなわち、ノズルプレート45の所定形状のパターン孔146に圧力発生部材42を装填し、そのノズルプレート45に透明な基材41を接着している。そして、ノズルプレート45のパターン孔146に被射出材たる金属ペースト43を装填して積層体Sを形成している。ノズルプレート45のパターン孔146においては、基材41から近い順に圧力発生部材42と金属ペースト43とが装填され、それらの間には空隙47が形成される。
【0135】
パターン形成に際しては、形成された積層体Sと処理対象となる基板Wとを相対向させて配置する。そして、レーザー光照射部60が基板Wに対して相対移動しつつ、積層体Sの基材41の裏面から圧力発生部材42にレーザー光を照射する。このとき、レーザー光照射部60からレーザー光を連続照射するようにしても良い。こうして積層体Sの基材41の裏面からレーザー光を照射してパターン孔146に装填された圧力発生部材42を加熱し、その圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせてノズルプレート45のパターン孔146に装填された被射出材たる金属ペースト43を基板Wに向けて射出し、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンを形成している。
【0136】
第4実施形態のパターン形成装置は、第1実施形態と同様に、射出装置5を用いて圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を射出しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。第4実施形態のパターン形成装置1が奏する残余の効果は第1実施形態と同様である。
【0137】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第1実施形態から第4実施形態ではレーザー光照射部60からのレーザー光照射によって圧力発生部材42を加熱していたが、第5実施形態においてはヒータによって圧力発生部材42を加熱するようにしている。
【0138】
図18は、第5実施形態の積層体Sの構造を示す断面図である。第5実施形態では、第1実施形態と同様の積層体Sに射出装置5を構成する複数のヒータ160が付設されている。具体的には、積層体Sの複数の射出孔46の直下のそれぞれにおいて、基材41の下面にヒータ160が付設されている。
【0139】
複数のヒータ160のそれぞれは電力供給を受けて発熱し、基材41を介して当該ヒータ160の直上に位置している圧力発生部材42を加熱する。すなわち、個々のヒータ160は圧力発生部材42の一部を加熱する加熱手段である。複数のヒータ160に対しては、制御部3の制御下にて個別に電力供給がなされる。従って、制御部3は、複数のヒータ160のうちの一部に電力供給がなされるように制御し、その一部のヒータ160によって形成されるパターンに沿って圧力発生部材42を加熱して体積膨張による圧力を発生させることができる。
【0140】
第5実施形態においては、基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42の層を形成し、その上に複数の射出孔46が穿設されたノズルプレート45を接着して積層体Sを構成している。複数の射出孔46のそれぞれには金属ペースト43が装填され、その装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。第5実施形態の基材41は、透明である必要はないが、ヒータ160の熱を円滑に圧力発生部材42に伝導させるために熱伝導率が高い素材にて形成するのが好ましく、例えばセラミックスや金属を用いて形成しても良い。圧力発生部材42および金属ペースト43については第1実施形態と同様のものを用いることができる。但し、第5実施形態のようにヒータ160で加熱する場合には、圧力発生部材42に光吸収体として機能する黒色のカーボンパウダーを混合する必要はない。
【0141】
このような積層体Sの下面(基材41の下面)に複数のヒータ160が格子状に付設される。複数のヒータ160は複数の射出孔46に1対1で対応して設けられるため、複数のヒータ160によって形成される格子形状は、複数の射出孔46によって形成される格子形状(図3参照)と同様である。
【0142】
パターン形成処理を行う際には、複数のヒータ160が付設された積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。第5実施形態では、複数のヒータ160が付設された積層体Sおよび基板Wがともに移動することなく定位置に保持される。そして、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿って複数のヒータ160のうちの一部に電力供給がなされるように制御し、そのパターンに沿って圧力発生部材42の一部を急速に加熱して体積膨張させている。その結果、当該パターンに従って圧力発生部材42の一部に体積膨張による圧力が生じ、電力供給がなされたヒータ160の直上に位置する射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43が基板Wに向けて射出され、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンが形成される。なお、パターンに対応する複数のヒータ160に同時に電力供給を行うようにしてもよいし、順次に電力供給を行って発熱させるようにしても良い。
【0143】
このように、第5実施形態においては、加熱手段たる複数のヒータ160と基板Wとを相対移動させる必要はなく、ステージ10が基板Wを定位置に保持していれば足りるため、ステージ移動機構20は必ずしも必要な構成要素ではない。同様に、複数のヒータ160を付設した積層体Sと基板Wとを相対移動させる必要もなく、支持搬送機構50も必須の要素ではない。但し、パターン形成処理前に積層体Sと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を行うために、ステージ移動機構20および/または支持搬送機構50を設けておく方が好ましい。
【0144】
第5実施形態においては、複数のヒータ160の一部によって圧力発生部材42の一部が加熱されて急激に体積膨張して圧力が発生し、その圧力によって射出孔46に装填された金属ペースト43を射出している。従って、第1実施形態から第4実施形態と同様に、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
【0145】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第5実施形態では積層体Sに付設したヒータによって圧力発生部材42を加熱していたが、第6実施形態においては圧力発生部材42自体に直接通電して加熱するようにしている。
【0146】
図19は、第6実施形態の積層体Sの構造を模式的に示す図である。第6実施形態では、第5実施形態の複数のヒータ160に代えて、射出装置5を構成する複数の電極260が積層体Sに設けられている。具体的には、図19に示すように、積層体Sの基材41の上面に一対の陽極260aおよび陰極260bからなる電極260を立設している。電極260の高さ(基材41の上面から電極260の上端までの距離)は圧力発生部材42の層の厚さよりも小さくするのが好ましい。また、陽極260aおよび陰極260bはそれぞれ電源261の正極および負極と電気的に接続されている。
【0147】
圧力発生部材42にはカーボンパウダーが含有されている。このカーボンパウダーは、第1実施形態から第4実施形態ではレーザー光の吸収効率を高めるものであったが、第6実施形態では通電によって発熱する添加剤として機能する。カーボンパウダーが含まれていることによって圧力発生部材42は通電によって発熱する抵抗発熱体となる。このため、複数の電極260のそれぞれに電圧を印加すると、当該電極260を構成する陽極260aと陰極260bとの間の圧力発生部材42が通電によって発熱する。すなわち、個々の電極260および電源261は圧力発生部材42の一部を通電加熱する通電加熱手段である。
【0148】
第5実施形態と同様に、積層体Sには複数の電極260が格子状に設けられている。複数の電極260は複数の射出孔46に1対1で対応して設けられるため、複数の電極260によって形成される格子形状は、複数の射出孔46によって形成される格子形状(図3参照)と同様である。
【0149】
複数の電極260に対しては、制御部3の制御下にて電源261から個別に電圧が印加される。これを実現する手法としては、複数の電極260のそれぞれと電源261との間に設けられたスイッチ(図示省略)を制御部3によって開閉するようにしても良いし、複数の電極260に個別に設けた電源261自体のオンオフを制御部3が制御するようにしても良い。これにより、制御部3は、複数の電極260のうちの一部に電圧が印加されるように制御し、その一部の電極260によって形成されるパターンに沿って圧力発生部材42を加熱して体積膨張による圧力を発生させることができる。
【0150】
第6実施形態においては、複数の電極260を取り付けた基材41の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材42の層を形成し、その上に複数の射出孔46が穿設されたノズルプレート45を接着して積層体Sを構成している。複数の射出孔46のそれぞれには金属ペースト43が装填され、その装填された金属ペースト43と圧力発生部材42との間には空隙47が形成される。圧力発生部材42にはカーボンパウダーが含有されている。第6実施形態の基材41は、透明である必要はないが、短絡防止のために絶縁性を有する素材にて形成する必要があり、例えばセラミックスや樹脂を用いて形成するのが好ましい。金属ペースト43については第1実施形態と同様である。
【0151】
パターン形成処理を行う際には、複数の電極260が設置された積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。第6実施形態では、複数の電極260が設置された積層体Sおよび基板Wがともに移動することなく定位置に保持される。そして、制御部3は予め記憶部に格納されたパターンデータに沿って複数の電極260のうちの一部に電圧が印加されるように制御し、そのパターンに沿って圧力発生部材42の一部を通電加熱して体積膨張させている。その結果、当該パターンに従って圧力発生部材42の一部に体積膨張による圧力が生じ、通電された電極260の直上に位置する射出孔46に装填された被射出材たる金属ペースト43が基板Wに向けて射出され、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンが形成される。なお、パターンに対応する複数の電極260に同時に電圧を印加するようにしてもよいし、順次に電圧を印加するようにしても良い。
【0152】
第6実施形態においても、加熱手段たる複数の電極260と基板Wとを相対移動させる必要はなく、ステージ10が基板Wを定位置に保持していれば足りるため、ステージ移動機構20は必ずしも必要な構成要素ではない。同様に、複数の電極260を設置した積層体Sと基板Wとを相対移動させる必要もなく、支持搬送機構50も必須の要素ではない。但し、パターン形成処理前に積層体Sと基板Wとの位置合わせ(アライメント)を行うために、ステージ移動機構20および/または支持搬送機構50を設けておく方が好ましい。
【0153】
第6実施形態においては、複数の電極260の一部によって圧力発生部材42の一部が通電加熱されて急激に体積膨張して圧力が発生し、その圧力によって射出孔46に装填された金属ペースト43を射出している。従って、第1実施形態から第5実施形態と同様に、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。
【0154】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第4実施形態においては、積層体Sの裏面に対してレーザー光を走査して(つまり、パターン孔146に装填された圧力発生部材42を順次加熱して)いたが、これに代えてパターン孔146に装填された圧力発生部材42の全部を一括して加熱するようにしても良い。
【0155】
このような一括加熱の手法としては、例えば図20に示すようにマイクロ波加熱を用いることができる。同図において、積層体Sの構造は第4実施形態と同様である。すなわち、積層体Sは、基材41の表面に直接ノズルプレート45を当接して構成される。ノズルプレート45には所定形状のパターン孔146が穿設され、そのパターン孔146には基材41から近い順に圧力発生部材42と金属ペースト43とが装填される。また、圧力発生部材42と金属ペースト43との間には空隙47が形成される。
【0156】
マイクロ波加熱部360は、積層体Sの下方に設けられており、積層体Sに所定周波数のマイクロ波を照射する。マイクロ波加熱部360は、積層体Sの裏面全面に同時にマイクロ波を照射する。照射されたマイクロ波は積層体Sの基材41を透過してパターン孔146に装填された圧力発生部材42を加熱する。このとき、マイクロ波は積層体Sの全面に同時に照射されるため、パターン孔146に装填された圧力発生部材42の全部が一括して加熱されることとなる。すなわち、マイクロ波加熱部360は、圧力発生部材42の全部を一括して加熱する加熱手段である。
【0157】
図20の構成において基板Wへのパターン形成処理を行う際には、積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。このとき、積層体Sおよび基板Wがともに移動することなく定位置に保持される。そして、制御部3が所定のタイミングにてマイクロ波加熱部360からマイクロ波を照射させることにより、パターン孔146に装填された圧力発生部材42が一括して加熱されて体積膨張する。その結果、圧力発生部材42の体積膨張によって生じた圧力によってパターン孔146に装填された被射出材たる金属ペースト43が基板Wに向けて射出され、基板Wの表面に金属ペースト43のパターンが形成される。
【0158】
このようにしても、ノズルプレート45のパターン孔146に装填された圧力発生部材42を一括して加熱することにより、圧力発生部材42に体積膨張による圧力を生じさせて被射出材たる金属ペースト43を射出しているため、0.1Pa・s〜1000Pa・sの高粘度材料である金属ペースト43を射出して基板W上にパターンを形成することができる。また、圧力発生部材42が一括して加熱されてパターン孔146に装填された金属ペースト43が同時に射出されるため、極めて短時間に基板W上にパターンを形成することができる。
【0159】
図20の構成において圧力発生部材42の全部を一括して加熱する加熱手段として、マイクロ波加熱部360に代えて短い発光時間で大きなエネルギーの閃光を照射するフラッシュランプを用いるようにしても良い。
【0160】
また、上記各実施形態においては、圧力発生部材42に昇華性材料として樟脳を含ませて圧力発生機能を付与するようにしていたが、他の昇華性材料によって圧力発生部材42に圧力発生機能を付与するようにしても良い。例えば、圧力発生部材42に昇華性材料としてドライアイスを含ませるようにしても良い。他の昇華性材料であっても加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じるため、上記各実施形態と同様の処理を行うことができる。
【0161】
また、圧力発生部材42は、昇華性材料を含むものに限定されず、加熱により圧力を発生するものであれば良い。例えば、圧力発生部材42を爆薬にて構成するようにしても良い。また、圧力発生部材42としてガス吸蔵材料を用いるようにしても良い。
【0162】
また、上記各実施形態においては、レーザー光の吸収効率を高めるために圧力発生部材42にカーボンパウダーを含ませていたが、これに限定されるものではなく、カーボンパウダー以外の黒色の粒子を含ませるようにしても良い。要するに、光を吸収しやすい材料、換言すれば光を反射や透過しにくい材料を圧力発生部材42に含ませるようにすれば良い。なお、昇華性材料自体が光を吸収しやすい材料、例えば黒色の昇華性材料であれば、カーボンパウダーのような黒色粒子を圧力発生部材42に含ませなくても良い。
【0163】
第1実施形態から第4実施形態では、基板WをX方向に移動させるとともに、レーザー光照射部60をY方向に移動させることによって相対移動を行っていたが、これに限定されるものではなく、レーザー光照射部60をステージ10に保持された基板Wに対してX方向およびY方向に相対移動させる種々の構成を採用することができる。例えば、基板Wを移動させることなく定位置に保持し、レーザー光照射部60のみをX方向およびY方向に移動させるようにしても良い。
【0164】
また、レーザー光照射部60をX方向に沿って一列に並ぶ複数本のレーザー光を出射するマルチレーザー光照射部として構成するようにしても良い。複数本のレーザー光のピッチは、複数の射出孔46の設置間隔と同じである。このように構成した場合には、レーザー光照射部60をY方向に走査してのパターン形成処理が複数ライン分同時に行われることとなるため、パターン形成に要する処理時間を短縮することができる。
【0165】
また、第1から第4実施形態では、レーザー光を照射して圧力発生部材42を加熱していたが、レーザー光照射に限定されるものではなく、他の光照射によって圧力発生部材42を加熱するようにしても良い。例えば、光源としてランプを用い、そのランプからの光を集光して圧力発生部材42に照射するようにしても良いし、発光ダイオード(LED)からの光を圧力発生部材42に照射して加熱するようにしても良い。
【0166】
また、上記各実施形態においては、射出装置5から上方の基板Wに向けて金属ペースト43を射出するようにしていたが、射出装置5とステージ10との上下関係を反転し、射出装置5から下方の基板Wに向けて金属ペースト43を射出するようにしても良い。
【0167】
また、金属ペースト43に代えて被射出材として粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の接着剤(例えば、エポキシ樹脂系接着剤)を用いるようにしても良い。加熱された圧力発生部材42の体積膨張に起因した圧力によって接着剤を射出し、例えばセンサと半導体素子との接合部のような微小領域に塗布することができる。本発明に係る技術によれば、そのような微小領域に高価な接着剤を必要量だけ塗布することができ、無駄な接着剤の消費を抑制することが可能となる。
【0168】
また、金属ペースト43に代えて金属粒を射出するようにしても良い。具体的には、第1実施形態から第6実施形態において、金属ペースト43に代えて複数の金属粒を分散させた高粘度材料を射出孔46(またはパターン孔146)に装填する。金属粒の材質や粒径は特に限定されるものではなく、金属粉末であっても良い。また、高粘度材料は0.1Pa・s〜1000Pa・sの粘度を有しており、例えば接着剤などを用いることができる。パターン形成処理を行うときには、多数の金属粒を含む高粘度材料が複数の射出孔46に装填された積層体Sと基板Wとを相対向させて配置する。そして、所定のパターンに沿って圧力発生部材42が加熱されると体積膨張による圧力が生じ、被射出材である金属粒を含む高粘度材料が射出される。射出された高粘度材料は基板Wの表面に付着し、当該表面に金属粒のパターンが形成される。なお、高粘度材料に金属粒を分散させるのに代えて、圧力発生部材42の層の上に直接金属粒を分散させ、それを射出孔46から射出するようにしても良い。
【0169】
さらに、本発明に係る射出装置5から金属ペースト43を半導体素子のインナーリードに繋がるようなパターンに射出し、その金属ペースト43によってアウターリードを形成するようにしても良い。すなわち、本発明に係る技術を用いて半導体装置のワイヤーボンディングを行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明は、基板上に各種電気配線のパターン形成を行う技術に好適に適用することができ、特に高粘度材料を用いてパターン形成を行うのに適している。また、本発明は、微細領域への接着剤の塗布や半導体装置のワイヤーボンディングにも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0171】
1,1a パターン形成装置
3 制御部
5 射出装置
10 ステージ
20 ステージ移動機構
41 基材
42 圧力発生部材
43 金属ペースト
45 ノズルプレート
46 射出孔
50,150 支持搬送機構
60 レーザー光照射部
65 レーザー光走査機構
146 パターン孔
160 ヒータ
260 電極
360 マイクロ波加熱部
S 積層体
W 基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を表面に積層した基材を支持する支持手段と、
前記圧力発生部材に当接して設けられ、その内部に被射出材が装填された複数の射出孔を有する射出板と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、
を備えることを特徴とする射出装置。
【請求項2】
基材を支持する支持手段と、
前記基材の表面に当接して設けられ、その内部に前記基材から近い順に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材と被射出材とが装填された複数の射出孔を有する射出板と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、
を備えることを特徴とする射出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の射出装置において、
前記複数の射出孔は前記射出板に格子状に設けられていることを特徴とする射出装置。
【請求項4】
請求項3記載の射出装置において、
前記加熱手段は、前記複数の射出孔のうちの一部に対応する圧力発生部材を加熱することを特徴とする射出装置。
【請求項5】
加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を表面に積層した基材を支持する支持手段と、
前記圧力発生部材に当接して設けられ、その内部に被射出材が装填された所定形状のパターン孔を有する射出板と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、
を備えることを特徴とする射出装置。
【請求項6】
基材を支持する支持手段と、
前記基材の表面に当接して設けられ、その内部に前記基材から近い順に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材と被射出材とが装填された所定形状のパターン孔を有する射出板と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、
を備えることを特徴とする射出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の射出装置において、
前記被射出材と前記圧力発生部材との間に空隙を設けることを特徴とする射出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の射出装置において、
前記加熱手段は、前記基材の裏面から光を照射して前記圧力発生部材を加熱する光照射手段を含み、
前記基材は前記光照射手段から照射される光に対して透明であることを特徴とする射出装置。
【請求項9】
請求項8記載の射出装置において、
前記圧力発生部材は、前記光照射手段から照射される光を吸収して発熱することにより前記圧力発生部材を加熱する光吸収材料を含むことを特徴とする射出装置。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の射出装置において、
前記加熱手段は、前記圧力発生部材を加熱するヒータを含むことを特徴とする射出装置。
【請求項11】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の射出装置において、
前記加熱手段は、前記圧力発生部材に通電して発熱させる通電加熱手段を含むことを特徴とする射出装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の射出装置において、
前記圧力発生部材は、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる樟脳を含むことを特徴とする射出装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の射出装置において、
前記被射出材は、粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の高粘度材料を含むことを特徴とする射出装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の射出装置と、
前記射出板に対向する位置に基板を保持する基板保持手段と、
を備え、
前記射出装置から射出された被射出材によって基板上にパターン形成を行うことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項15】
基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層し、当該圧力発生部材に複数の射出孔を有する射出板を当接させる当接工程と、
前記射出板の前記複数の射出孔に被射出材を装填する装填工程と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、
を備えることを特徴とする射出方法。
【請求項16】
射出板に設けられた複数の射出孔に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を装填する第1装填工程と、
前記圧力発生部材が装填された前記射出板に基材を当接させる当接工程と、
前記射出板の前記複数の射出孔に、前記基材とは反対側より被射出材を装填する第2装填工程と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、
を備えることを特徴とする射出方法。
【請求項17】
請求項15または請求項16に記載の射出方法において、
前記複数の射出孔は前記射出板に格子状に設けられていることを特徴とする射出方法。
【請求項18】
請求項17記載の射出方法において、
前記加熱工程では、前記複数の射出孔のうちの一部に対応する圧力発生部材を加熱することを特徴とする射出方法。
【請求項19】
基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層し、当該圧力発生部材に所定形状のパターン孔を有する射出板を当接させる当接工程と、
前記射出板の前記パターン孔に被射出材を装填する装填工程と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、
を備えることを特徴とする射出方法。
【請求項20】
射出板に設けられた所定形状のパターン孔に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を装填する第1装填工程と、
前記圧力発生部材が装填された前記射出板に基材を当接させる当接工程と、
前記射出板の前記パターン孔に、前記基材とは反対側より被射出材を装填する第2装填工程と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、
を備えることを特徴とする射出方法。
【請求項21】
請求項15から請求項20のいずれかに記載の射出方法において、
前記被射出材と前記圧力発生部材との間に空隙を設けることを特徴とする射出方法。
【請求項22】
請求項15から請求項21のいずれかに記載の射出方法において、
前記加熱工程は、前記基材の裏面から光を照射して前記圧力発生部材を加熱する工程を含み、
前記基材は前記光に対して透明であることを特徴とする射出方法。
【請求項23】
請求項22記載の射出方法において、
前記圧力発生部材は、前記基材の裏面から照射された前記光を吸収して発熱することにより前記圧力発生部材を加熱する光吸収材料を含むことを特徴とする射出方法。
【請求項24】
請求項15から請求項23のいずれかに記載の射出方法において、
前記圧力発生部材は、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる樟脳を含むことを特徴とする射出方法。
【請求項25】
請求項15から請求項24のいずれかに記載の射出方法において、
前記被射出材は、粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の高粘度材料を含むことを特徴とする射出方法。
【請求項26】
請求項15から請求項25のいずれかに記載の射出方法と、
前記射出板に対向する位置に基板を配置する基板配置工程と、
を備え、
前記射出板から射出された被射出材によって基板上にパターン形成を行うことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項1】
加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を表面に積層した基材を支持する支持手段と、
前記圧力発生部材に当接して設けられ、その内部に被射出材が装填された複数の射出孔を有する射出板と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、
を備えることを特徴とする射出装置。
【請求項2】
基材を支持する支持手段と、
前記基材の表面に当接して設けられ、その内部に前記基材から近い順に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材と被射出材とが装填された複数の射出孔を有する射出板と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、
を備えることを特徴とする射出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の射出装置において、
前記複数の射出孔は前記射出板に格子状に設けられていることを特徴とする射出装置。
【請求項4】
請求項3記載の射出装置において、
前記加熱手段は、前記複数の射出孔のうちの一部に対応する圧力発生部材を加熱することを特徴とする射出装置。
【請求項5】
加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を表面に積層した基材を支持する支持手段と、
前記圧力発生部材に当接して設けられ、その内部に被射出材が装填された所定形状のパターン孔を有する射出板と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、
を備えることを特徴とする射出装置。
【請求項6】
基材を支持する支持手段と、
前記基材の表面に当接して設けられ、その内部に前記基材から近い順に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材と被射出材とが装填された所定形状のパターン孔を有する射出板と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、当該圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱手段と、
を備えることを特徴とする射出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の射出装置において、
前記被射出材と前記圧力発生部材との間に空隙を設けることを特徴とする射出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の射出装置において、
前記加熱手段は、前記基材の裏面から光を照射して前記圧力発生部材を加熱する光照射手段を含み、
前記基材は前記光照射手段から照射される光に対して透明であることを特徴とする射出装置。
【請求項9】
請求項8記載の射出装置において、
前記圧力発生部材は、前記光照射手段から照射される光を吸収して発熱することにより前記圧力発生部材を加熱する光吸収材料を含むことを特徴とする射出装置。
【請求項10】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の射出装置において、
前記加熱手段は、前記圧力発生部材を加熱するヒータを含むことを特徴とする射出装置。
【請求項11】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の射出装置において、
前記加熱手段は、前記圧力発生部材に通電して発熱させる通電加熱手段を含むことを特徴とする射出装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の射出装置において、
前記圧力発生部材は、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる樟脳を含むことを特徴とする射出装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の射出装置において、
前記被射出材は、粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の高粘度材料を含むことを特徴とする射出装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の射出装置と、
前記射出板に対向する位置に基板を保持する基板保持手段と、
を備え、
前記射出装置から射出された被射出材によって基板上にパターン形成を行うことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項15】
基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層し、当該圧力発生部材に複数の射出孔を有する射出板を当接させる当接工程と、
前記射出板の前記複数の射出孔に被射出材を装填する装填工程と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、
を備えることを特徴とする射出方法。
【請求項16】
射出板に設けられた複数の射出孔に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を装填する第1装填工程と、
前記圧力発生部材が装填された前記射出板に基材を当接させる当接工程と、
前記射出板の前記複数の射出孔に、前記基材とは反対側より被射出材を装填する第2装填工程と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記複数の射出孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、
を備えることを特徴とする射出方法。
【請求項17】
請求項15または請求項16に記載の射出方法において、
前記複数の射出孔は前記射出板に格子状に設けられていることを特徴とする射出方法。
【請求項18】
請求項17記載の射出方法において、
前記加熱工程では、前記複数の射出孔のうちの一部に対応する圧力発生部材を加熱することを特徴とする射出方法。
【請求項19】
基材の表面に加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を積層し、当該圧力発生部材に所定形状のパターン孔を有する射出板を当接させる当接工程と、
前記射出板の前記パターン孔に被射出材を装填する装填工程と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、
を備えることを特徴とする射出方法。
【請求項20】
射出板に設けられた所定形状のパターン孔に、加熱されることにより圧力を発生する圧力発生部材を装填する第1装填工程と、
前記圧力発生部材が装填された前記射出板に基材を当接させる当接工程と、
前記射出板の前記パターン孔に、前記基材とは反対側より被射出材を装填する第2装填工程と、
前記圧力発生部材を加熱することにより、前記圧力発生部材に体積膨張による圧力を生じさせて前記パターン孔に装填された被射出材を前記射出板に対向配置された対象物に向けて射出させる加熱工程と、
を備えることを特徴とする射出方法。
【請求項21】
請求項15から請求項20のいずれかに記載の射出方法において、
前記被射出材と前記圧力発生部材との間に空隙を設けることを特徴とする射出方法。
【請求項22】
請求項15から請求項21のいずれかに記載の射出方法において、
前記加熱工程は、前記基材の裏面から光を照射して前記圧力発生部材を加熱する工程を含み、
前記基材は前記光に対して透明であることを特徴とする射出方法。
【請求項23】
請求項22記載の射出方法において、
前記圧力発生部材は、前記基材の裏面から照射された前記光を吸収して発熱することにより前記圧力発生部材を加熱する光吸収材料を含むことを特徴とする射出方法。
【請求項24】
請求項15から請求項23のいずれかに記載の射出方法において、
前記圧力発生部材は、加熱されたときに昇華によって体積膨張を生じる樟脳を含むことを特徴とする射出方法。
【請求項25】
請求項15から請求項24のいずれかに記載の射出方法において、
前記被射出材は、粘度が0.1Pa・s以上1000Pa・s以下の高粘度材料を含むことを特徴とする射出方法。
【請求項26】
請求項15から請求項25のいずれかに記載の射出方法と、
前記射出板に対向する位置に基板を配置する基板配置工程と、
を備え、
前記射出板から射出された被射出材によって基板上にパターン形成を行うことを特徴とするパターン形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−151384(P2012−151384A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10491(P2011−10491)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]