説明

層形成方法、配線基板、電子機器、電気光学装置、および層形成装置

【課題】 物体上で液状の材料の塗れ広がりの度合いを部分的に異ならせる層形成方法を提供すること。
【解決手段】 層形成方法は物体上の第1部分と第2部分とを覆う層をインクジェット法で形成する。ここで、前記第2部分は前記第1部分に接する部分である。この層形成方法は、(a)前記第1部分へ感光性樹脂を含んだ液状の材料を吐出するステップと、(b)前記第1部分へ前記液状の材料が吐出された時点から層形成期間内に前記第1部分上の前記液状の材料へUV光の照射を開始するステップと、(c)前記ステップ(b)の後で、前記第2部分へ前記液状の材料を吐出するステップと、(d)前記第2部分へ前記液状の材料が吐出された時点から前記層形成期間内に亘って、前記第2部分上の前記液状の材料が塗れ広がるように、前記第2部分上の前記液状の材料を放置するステップと、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層形成方法および層形成装置に関し、より具体的には、配線基板、電子機器、電気光学装置の製造に好適な層形成方法および層形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷法によるアディティブプロセス(Additive Process)を用いて回路基板を製造する方法が注目されている。薄膜の塗布プロセスとフォトリソグラフィープロセスとを繰り返して回路基板を製造する方法に比べて、アディティブプロセスのコストは低いからである。
【0003】
このようなアディティブプロセスに利用される技術の一つとして、インクジェット法による金属配線の形成技術が知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−6578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット法で物体上に膜や層のパターンを形成する場合に、形成されるべきパターンの形状によっては、吐出された材料の物体上での塗れ広がりの度合いを部分的に異ならせることが求められることがある。例えば、層の境界部を形成する場合であれば、物体上に着弾した材料がなるべく塗れ広がらないことが好ましい。層の境界部の形状を明確にしたいからである。一方、同じ層であっても、層の内部を形成する場合には、物体上に着弾後の材料は塗れ広がってもよい。
【0006】
塗れ広がりの度合いを変えるためには、物体上の部分毎に異なる材料を用いるか、形成されるべきパターンに応じて物体に対して行う表面改質処理を部分毎に変えるか、の少なくともどちらか一方を行えばよい。しかしながら、上記のような方法では手間がかかる。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、物体上での液状の材料の塗れ広がりの度合いを部分的に異ならせる層形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の層形成方法は、第1部分と前記第1部分に接する第2部分とを覆う層をインクジェット法で形成する層形成方法である。この層形成方法は、(a)前記第1部分へ感光性樹脂を含んだ液状の材料を吐出するステップと、(b)前記第1部分へ前記液状の材料が吐出された時点から層形成期間内に前記第1部分上の前記液状の材料への光の照射を開始するステップと、(c)前記ステップ(b)の後で、前記第2部分へ前記液状の材料を吐出するステップと、(d)前記第2部分へ前記液状の材料が吐出された時点から前記層形成期間内に亘って、前記第2部分上の前記液状の材料が塗れ広がるように、前記第2部分上の前記液状の材料を放置するステップと、を含んでいる。
【0009】
上記構成によって得られる効果の一つは、吐出する材料を交換することなく、物体上での液状の材料の塗れ広がりの度合いを部分的に異ならせることができることである。このため、上記構成によれば、インクジェット法で層の境界部と内部とを容易に形成できる。
【0010】
本発明のある態様によれば、上記層形成方法は、(e)前記第2部分へ前記液状の材料が吐出された時点から前記層形成期間が経過した後で、前記第2部分上の前記液状の材料に前記光を照射するステップ、をさらに含んでいる。
【0011】
上記構成によって得られる効果の一つは、層の活性化の工程に必要となる時間が短くなることである。
【0012】
本発明の他の態様によれば、前記層を貫通するコンタクトホールの外形が規定されるように前記第1部分が設けられている。
【0013】
上記構成によって得られる効果の一つは、インクジェット法を用いてコンタクトホールを形成できることである。
【0014】
本発明の層形成方法は、第1部分と前記第1部分に接する第2部分とを覆う層をインクジェット法で形成する層形成方法である。この層形成方法は、(a)前記第1部分へ感光性樹脂を含んだ液状の材料を吐出するステップと、(b)前記第1部分へ前記液状の材料が吐出された時点から第1の時間期間後に前記第1部分上の前記液状の材料に光を照射するステップと、(c)前記ステップ(b)の後で、前記第2部分へ前記液状の材料を吐出するステップと、(d)前記第2部分へ前記液状の材料が吐出された時点から前記第1の時間期間よりも長い第2の時間期間後に、前記第2部分上の前記液状の材料に前記光を照射するステップと、を含んでいる。
【0015】
上記構成によって得られる効果の一つは、吐出する材料を交換することなく、物体上での液状の材料の塗れ広がりの度合いを部分的に異ならせることができることである。このため、上記構成によれば、インクジェット法で層の境界部と内部とを容易に形成できる。
【0016】
本発明の配線基板は、上記層形成方法で製造される。また本発明の電子機器は、上記形成方法で製造された配線基板を備えている。さらに本発明の電気光学装置は、上記形成方法で製造された配線基板を備えている。
【0017】
上記構成によって得られる効果の一つは、インクジェット法で、配線基板、電子機器、および電気光学装置を製造できることである。
【0018】
本発明の層形成装置は、被吐出部を有する物体の位置を決めるステージと、ノズルを有するとともに感光性樹脂を含んだ液状の材料を前記ノズルから前記物体側へ吐出するヘッドと、前記ヘッドに対する相対位置が固定されているとともに、前記物体側へ光を射出する光照射装置と、前記物体と前記ヘッドおよび前記光照射装置の組との少なくとも1つを他方に対して移動させる走査部と、を備えている。そして、前記ノズルと前記光照射装置とは所定方向に並んでいて、前記ノズルから吐出された前記液状の材料が前記被吐出部に着弾した後で、前記着弾した前記液状の材料に前記光が照射されるように、前記走査部は前記物体に対する前記光照射装置の相対位置を前記所定方向に変える。
【0019】
上記構成によって得られる効果の一つは、吐出する材料を交換することなく、物体上での液状の材料の塗れ広がりの度合いを部分的に異ならせることができることである。このため、上記構成によれば、層の境界部と内部とを容易に形成できる。
【0020】
本発明のある態様では、前記2つの光照射装置は前記ヘッドに対して同じ側に位置している。しかも、前記ヘッドと前記2つの光照射装置のそれぞれとの間のそれぞれの距離は互いに異なっている。そして、前記ノズルによって吐出された前記液状の材料が前記物体上で前記2つの光照射装置のいずれか一つからの前記光で照射されるように、前記走査部は、前記物体に対する前記2つの光照射装置の相対位置を前記所定方向に変える。
【0021】
上記構成によって得られる効果の一つは、層の活性化の工程に必要となる時間が短くなることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本実施形態の配線基板は、テープ形状を有するベース基板から製造される。ここでベース基板は、ポリイミドからなっており、フレキシブル基板とも呼ばれる。ベース基板上には、後述する製造工程によって、導電層と絶縁層とが形成される。そして、導電層と絶縁層とが形成された後で、ベース基板はプレス処理を受けて、ベース基板から複数の基板が切り抜かれる。この結果、ベース基板から、それぞれが導電配線を有する複数の基板が得られる。ここで、本実施形態では、複数の基板のそれぞれに設けられた導電配線は、どれも同じパターンを構成している。このように、「配線基板」とは導電配線が形成された基板を意味する。
【0023】
本実施形態の配線基板は、5つの層形成装置が行う層形成工程を経て製造される。5つの層形成装置の構造はいずれも基本的に同じである。
【0024】
(A.層形成装置)
図1の層形成装置10は、これら5つの層形成装置の1つである。層形成装置10は、所定のレベルに位置する面上に絶縁層を形成する装置である。この層形成装置10は、一対のリールW1と、吐出装置10Aと、オーブン10Bと、を含んでいる。吐出装置10Aは、物体上の任意の位置に向けて液状の材料を吐出する装置である。吐出装置10Aによって付与または塗布された液状の材料は、物体上で任意のパターンを呈し得る。また、オーブン10Bは、吐出装置10Aによって付与または塗布された液状の材料を加熱することで活性化する装置である。
【0025】
層形成装置10において、ベース基板1aがリールW1の一方から巻き出されて他方に巻き取られるまでに、吐出装置10Aとオーブン10Bとによって、ベース基板1aに対してそれぞれの処理が行われる。このような処理方式は、リール・トゥ・リール(Reel To Reel)とも呼ばれる。
【0026】
(B.吐出装置の全体構成)
以下では、吐出装置10Aについて構成・機能を説明する。なお、他の層形成装置における吐出装置の構成も、基本的に吐出装置10Aの構成と同じなので、他の吐出装置において吐出装置10Aの構成要素と同様の構成要素には、吐出装置10Aの構成要素と同一の参照符号を付す。
【0027】
図2に示す吐出装置10Aはインクジェット装置である。より具体的には、吐出装置10Aは、液状の材料111を保持するタンク101と、チューブ110と、チューブ110を介してタンク101から液状の材料111が供給される吐出走査部102と、を備えている。ここで、吐出走査部102は、グランドステージGSと、吐出ヘッド部103と、ステージ106と、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、制御部112と、支持部104aと、を備えている。
【0028】
吐出ヘッド部103は、ヘッド114(図3)と、4つの光照射装置113A、113B、113C、113D(図3)と、キャリッジ103A(図3)と、を有する。吐出ヘッド部103におけるヘッド114はチューブ110によってタンク101に連結されている。このことによって、タンク101からチューブ110を介してヘッド114に液状の材料111が供給される。そして、ヘッド114は、制御部112からの信号に応じて、供給された液状の材料111の液滴をステージ106側に吐出する。
【0029】
ステージ106はベース基板1aの位置を決めるための平面を提供している。具体的には、さらにステージ106は、吸引力を用いてベース基板1aを上記平面に密着させて、ベース基板1aの位置を決める。
【0030】
第1位置制御装置104は、支持部104aによって、グランドステージGSから所定の高さの位置に固定されている。この第1位置制御装置104は、制御部112からの信号に応じて、吐出ヘッド部103をX軸方向と、X軸方向に直交するZ軸方向と、に沿って移動させる機能を有する。さらに、第1位置制御装置104は、Z軸に平行な軸の回りで吐出ヘッド部103を回転させる機能も有する。ここで、本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向(つまり重力加速度の方向)に平行な方向である。
【0031】
第2位置制御装置108は、制御部112からの信号に応じて、ステージ106をグランドステージGS上でY軸方向に移動させる。ここで、Y軸方向は、X軸方向およびZ軸方向の双方と直交する方向である。
【0032】
上記のような機能を有する第1位置制御装置104の構成と第2位置制御装置108の構成とは、リニアモータおよびサーボモータを利用した公知のXYロボットを用いて実現できる。このため、ここでは、それらの詳細な構成の説明を省略する。なお、本明細書では、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108を、「ロボット」または「走査部」とも表記する。
【0033】
さて上述のように、第1位置制御装置104によって、吐出ヘッド部103はX軸方向に移動する。そして、第2位置制御装置108によって、ベース基板1aはステージ106と共にY軸方向に移動する。これらの結果、ベース基板1aに対するヘッド114の相対位置が変わる。より具体的には、これらの動作によって、吐出ヘッド部103、光照射装置113A・113B・113C・113D、ヘッド114、またはノズル118(図3)は、ベース基板1aに対して、Z軸方向に所定の距離を保ちながら、X軸方向およびY軸方向に相対的に移動、すなわち相対的に走査する。「相対移動」または「相対走査」とは、液状の材料111を吐出する側と、そこからの吐出物が着弾する側(被吐出部)の少なくとも一方を他方に対して相対移動することを意味する。
【0034】
制御部112は、液状の材料111の液滴を吐出すべき相対位置を表す吐出データ(例えばビットマップデータ)を外部情報処理装置から受け取るように構成されている。制御部112は、受け取った吐出データを内部の記憶装置に格納するとともに、格納された吐出データに応じて、第1位置制御装置104と、第2位置制御装置108と、ヘッド114と、を制御する。
【0035】
上記構成を有する吐出装置10Aは、吐出データに応じて、ヘッド114のノズル118(図3)をベース基板1aに対して相対移動させるとともに、被吐出部に向けてノズルから液状の材料111を吐出する。「吐出データ」は、ベース基板1a上に、材料を所定パターンで付与するためのデータである。なお、吐出装置10Aによるヘッド114の相対移動と、ヘッド114からの液状の材料111の吐出と、をまとめて「塗布走査」または「吐出走査」と表記することもある。
【0036】
また「被吐出部」とは、液状の材料111の液滴が着弾して塗れ広がる部分である。さらに「被吐出部」は、液状の材料111が所望の接触角を呈するように、下地の物質に表面改質処理が施されることによって形成された部分でもある。ただし、表面改質処理を行わなくても下地の物質の表面が、液状の材料111に対して所望の撥液性または親液性を呈する(つまり着弾した液状の材料111が下地の物質の表面上で望ましい接触角を呈する)場合には、下地の物質の表面そのものが「被吐出部」であってもよい。なお、本明細書では、「被吐出部」を「ターゲット」または「受容部」とも表記する。
【0037】
以下では、吐出装置10Aにおける主要な構成要素をより詳細に説明する。
【0038】
(C.吐出ヘッド部)
図3に示すように、吐出ヘッド部103において、4つの光照射装置113A、113B、113C、113Dとヘッド114とは、キャリッジ103Aに固定されている。このため、光照射装置113A、113B、113C、113Dのそれぞれとヘッド114との間の相対位置関係は固定されている。そして、相対位置関係が固定されているので、吐出ヘッド部103がステージ106に対して相対移動する場合に、ヘッド114とともに光照射装置113A、113B、113C、113Dも相対移動する。
【0039】
また、ヘッド114は、光照射装置113Aと光照射装置113Cとの間に位置している。そして、ヘッド114と光照射装置113A、113Cとは、光照射装置113Bと光照射装置113Dとの間に位置している。さらに、これら光照射装置113A、113B、113C、113Dと、ヘッド114と、はY軸方向に沿って並んでいる。
【0040】
図3に示すように、ヘッド114は、複数のノズル118を有するインクジェットヘッドである。具体的には、ヘッド114は、それぞれがX軸方向に延びる2つのノズル列116を有している。ノズル列116とは、180個のノズル118が一列に並んだ列のことである。また、図3において、1つのヘッド114における2つのノズル列116は、互いに半ピッチだけ互いにずれて位置している。本実施形態の場合には、ノズル列116の半ピッチは、約70μmである。なお、2つのノズル116列の間の距離はDAである。
【0041】
複数のノズル118のそれぞれの端部は、上記X軸方向およびY軸方向で定義される仮想的な平面上に位置している。なお、ノズル118の直径は、およそ27μmである。
【0042】
図4(a)および(b)に示すように、より具体的には、ヘッド114は、振動板126と、ノズルプレート128と、をも備えている。振動板126と、ノズルプレート128と、の間には、液たまり129が位置しており、この液たまり129には、図示しない外部タンクから孔131を介して供給される液状の材料111が常に充填される。
【0043】
また、振動板126と、ノズルプレート128と、の間には、複数の隔壁122が位置している。そして、振動板126と、ノズルプレート128と、一対の隔壁122と、によって囲まれた部分がキャビティ120である。キャビティ120はノズル118に対応して設けられているため、キャビティ120の数とノズル118の数とは同じである。キャビティ120には、一対の隔壁122間に位置する供給口130を介して、液たまり129から液状の材料111が供給される。
【0044】
さて、振動板126上には、それぞれのキャビティ120に対応して、それぞれの振動子124が位置する。振動子124のそれぞれは、ピエゾ素子124Cと、ピエゾ素子124Cを挟む一対の電極124A、124Bと、を含む。制御部112が、この一対の電極124A、124Bの間に駆動電圧を与えることで、対応するノズル118から液状の材料111の液滴Dが吐出される。ここで、ノズル118から吐出される液状の材料111の体積は、0pl以上42pl(ピコリットル)以下の間で可変である。なお、ノズル118からZ軸方向に液状の材料111の液滴Dが吐出されるように、ノズル118の形状が調整されている。
【0045】
本明細書では、1つのノズル118と、ノズル118に対応するキャビティ120と、キャビティ120に対応する振動子124と、を含んだ部分を「吐出部127」と表記することもある。この表記によれば、1つのヘッド114は、ノズル118の数と同じ数の吐出部127を有する。吐出部127は、ピエゾ素子の代わりに電気熱変換素子を有してもよい。つまり、吐出部127は、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用して材料を吐出する構成を有していてもよい。
【0046】
さて、図3に示すように、ヘッド114の中心線と、光照射装置113Aの光射出部EAと、の間のY軸方向の距離はd1である。ここで、ヘッド114の中心線とは、2つのノズル列116の双方に平行であるとともに、これら2つのノズル列116から等距離にある仮想線である。また、ヘッド114の中心線と、光照射装置113Bの光射出部EAと、の間のY軸方向の距離はd2である。ここで、距離d2は距離d1より長い。また、本実施形態では、d2とd1との差はDAよりも大きい。上述したように、DAは2つのノズル116間の距離である。なお、光射出部EAのX軸方向に沿った長さは、ノズル列116の長さとほぼ同じである。
【0047】
光照射装置113C、113Dは、ヘッド114に関して、光照射装置113A、113Bの位置と対称な位置にそれぞれ設けられている。このため、ヘッド114の中心線と、光照射装置113Cの光射出部EAと、の間のY軸方向の距離もd1である。また、ヘッド114の中心線と、光照射装置113Dの光射出部EAと、の間のY軸方向の距離もd2である。
【0048】
図3に示す光照射装置113A、113B、113C、113Dは、いずれも紫外域の波長の光(以下UV光)を射出する装置である。そして、光照射装置113A、113B、113C、113Dのそれぞれの光射出部EAから射出したUV光がベース基板1aを照らすように、光照射装置113A、113B、113C、113Dのそれぞれが配置されている。より具体的には、光照射装置113A、113B、113C、113Dのそれぞれの光射出部EAの光軸がZ軸方向を向くように、光照射装置113A、113B、113C、113Dのそれぞれはキャリッジ103Aに固定されている。このため、本実施形態では、光射出部EAのほぼ真下に位置する部分にUV光が照射される。
【0049】
本実施形態では、光照射装置113A、113B、113C、113Dが射出する光は、400nmから365nm程度の範囲の波長の光である。もちろん、本発明の光照射装置が射出する光は、上記波長域の光に限られない。本発明の光照射装置が射出する光は、液状の材料111に含まれる感光性樹脂(後述)を硬化できる波長の光であればよい。
【0050】
光照射装置113A、113B、113C、113Dのそれぞれは、制御部112からの信号に応じて、ON状態とOFF状態とのいずれかの状態を独立して取る。ここで、「ON状態」とは光射出部EAからUV光を射出している状態を意味し、「OFF状態」とはなんらUV光を射出していない状態を意味する。そして、ベース基板1aに対してヘッド114の相対位置が変化している場合には、ヘッド114の相対的な進行方向に関して、ヘッド114よりも後方に位置する2つの光照射装置の少なくとも1つがON状態になり、ヘッド114よりも前方に位置する2つの光照射装置はOFF状態になる。そして、ヘッド114の相対的な進行方向が反転すれば、反転前にON状態であった光照射装置113はOFF状態になり、反転前にOFF状態であった光照射装置の少なくとも1つはON状態になる。
【0051】
以下では、説明の便宜上、光照射装置113Aから遠い側のノズル列116に属する複数のノズル118の一つを、「ノズル118T」と表記する。そして、吐出ヘッド部103がベース基板1aに対して等速に相対移動する場合の相対速度を「V」とする。
【0052】
本実施形態では、吐出ヘッド部103がY軸方向の正の方向(図3の紙面の上方向)に相対移動する場合に、光照射装置113A、113Bがヘッド114の後方に位置する。したがってこの場合には、ヘッド113A、113Bのどちらか一方がON状態になる。そして、光照射装置113AがON状態であるとともに、光照射装置113BがOFF状態である場合には、ノズル118Tから吐出された液状の材料111の液滴には、吐出された時点からほぼ(d1+DA/2)/Vの時間後にUV光が照射される。
【0053】
吐出ヘッド部103がY軸方向の正の方向に相対移動している場合であって、光照射装置113AがOFF状態であるとともに、光照射装置113BがON状態である場合には、ノズル118Tから吐出された液状の材料111の液滴には、吐出された時点から(d1+DA/2)/Vの時間が経過しても、UV光は照射されない。その代わり、吐出された時点からほぼ(d2+DA/2)/Vの時間後にUV光が照射される。
【0054】
本実施形態では、(d1+DA/2)/Vの時間の長さが層形成期間の長さ以下になるとともに、(d2+DA/2)/Vの時間の長さが、層形成期間の長さよりも長くなるように、d1、d2、およびVが設定されている。「層形成期間」とは、ターゲット上に着弾した液状の材料111の液滴がターゲット(被吐出部)上で塗れ広がり終えるのに必要な時間期間である。この層形成期間は、ターゲットと液状の材料111との組合せ毎に異なり得る。
【0055】
このように、ノズル118からの距離が異なる2つの位置のそれぞれにそれぞれの光照射装置が位置している。このため、吐出装置10Aは、吐出された液状の材料111の液滴を硬化し始めるタイミングを異ならせることができる。
【0056】
(D.制御部)
次に、制御部112の構成を説明する。図5に示すように、制御部112は、入力バッファメモリ200と、記憶装置202と、処理部204と、光源駆動部205と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208と、を備えている。入力バッファメモリ200と処理部204とは相互に通信可能に接続されている。処理部204と、記憶装置202と、光源駆動部205と、走査駆動部206と、ヘッド駆動部208とは、図示しないバスによって相互に通信可能に接続されている。
【0057】
光源駆動部205は、光照射装置113A、113B、113C、113Dのそれぞれと通信可能に接続されている。さらに、走査駆動部206は、第1位置制御装置104および第2位置制御装置108と相互に通信可能に接続されている。同様にヘッド駆動部208は、ヘッド114と相互に通信可能に接続されている。
【0058】
入力バッファメモリ200は、吐出装置10Aの外部に位置する外部情報処理装置(不図示)から、液状の材料111の液滴を吐出するための吐出データを受け取る。入力バッファメモリ200は、吐出データを処理部204に供給し、処理部204は吐出データを記憶装置202に格納する。図5では、記憶装置202はRAMである。
【0059】
処理部204は、記憶装置202内の吐出データに基づいて、被吐出部に対するノズル118の相対位置を示すデータを走査駆動部206に与える。走査駆動部206はこのデータと、吐出周期と、に応じたステージ駆動信号を第2位置制御装置108に与える。この結果、被吐出部に対する吐出ヘッド部103の相対位置が変わる。一方、処理部204は、記憶装置202に記憶された吐出データに基づいて、液状の材料111の吐出に必要な吐出信号をヘッド114に与える。この結果、ヘッド114における対応するノズル118から、液状の材料111の液滴が吐出される。
【0060】
また、処理部204は、記憶装置202内の吐出データに基づいて、光照射装置113A、113B、113C、113DのそれぞれをON状態およびOFF状態のどちらかの状態にする。具体的には、光源駆動部205が光照射装置113A、113B、113C、113Dの状態をそれぞれ設定できるように、処理部204は、ON状態またはOFF状態を示すそれぞれの信号を光源駆動部205へ供給する。
【0061】
制御部112は、CPU、ROM、RAM、バスを含んだコンピュータであってもよい。この場合には、制御部112の上記機能は、コンピュータによって実行されるソフトウェアプログラムによって実現される。もちろん、制御部112は、専用の回路(ハードウェア)によって実現されてもよい。
【0062】
(E.液状の材料)
上述の「液状の材料111」とは、ヘッド114のノズル118から液滴として吐出されうる粘度を有する材料をいう。ここで、液状の材料111が水性であると油性であるとを問わない。ノズル118から吐出可能な流動性(粘度)を備えていれば十分で、固体物質が混入していても全体として流動体であればよい。ここで、液状の材料111の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であるのが好ましい。粘度が1mPa・s以上である場合には、液状の材料111の液滴Dを吐出する際にノズル118の周辺部が液状の材料111で汚染されにくい。一方、粘度が50mPa・s以下である場合は、ノズル118における目詰まり頻度が小さく、このため円滑な液滴の吐出を実現できる。
【0063】
後述する導電性材料211(図6、図8)は、上述の液状の材料111の一種である。本実施形態の導電性材料211は、平均粒径が10nm程度の銀粒子と、分散剤と、有機溶媒と、を含む。そして導電性材料211において、銀粒子は分散剤に覆われている。分散剤に覆われた銀粒子は有機溶媒中に安定して分散されている。ここで、分散剤は、銀原子に配位可能な化合物である。
【0064】
このような分散剤として、アミン、アルコール、チオールなどが知られている。より具体的には、分散剤として、特開2002−299833号公報に記載されているように、2−メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、ジエチルメチルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミンなどのアミン化合物、アルキルアミン類、エチレンジアミン、アルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、アルキルチオール類、エタンジチオールを用いることができる。
【0065】
なお、平均粒径が1nm程度から数100nmまでの粒子は、「ナノ粒子」とも表記される。この表記によれば、導電性材料211は銀のナノ粒子を含んでいる。
【0066】
さらに、後述する絶縁材料311(図6、図7、図8、図9)も、液状の材料111である。より具体的には、本実施形態の絶縁材料311は、感光性樹脂として、感光性ポリイミドの前駆体を含んだ液状の材料111である。感光性樹脂とは、所定の波長の光が照射された場合に、硬化する物質である。
【0067】
以下では、本実施形態の層形成方法を利用した配線基板の製造方法を説明する。
【0068】
(F.第1導電層)
最初に、ベース基板1aのほぼ同一レベル上に第1導電層21を形成する。具体的には、図6(a)に示すように、まず、ベース基板1aを第1吐出装置のステージ106上に位置させる。そうすると第1吐出装置は、第1ビットマップデータに応じて、ベース基板1a上に第1導電性材料層21Bを形成する。
【0069】
より具体的には、まず、第1吐出装置は、ベース基板1aに対するノズル118の相対位置を、2次元的(つまりX軸方向およびY軸方向)に変化させる。そして、形成すべきパターンに対応する位置にノズル118が達した場合に、第1吐出装置はノズル118から導電性材料211の液滴を吐出する。吐出された導電性材料211の液滴は、ベース基板1aの被吐出部に着弾する。そして導電性材料211の液滴が被吐出部に着弾することによって、ベース基板1a上に第1導電性材料層21Bが得られる。
【0070】
上述の第1ビットマップデータは上述の「吐出データ」の一種である。なお、後述する第2ビットマップデータ、第3ビットマップデータ、第4ビットマップデータ、第5ビットマップデータ、および第6ビットマップデータのそれぞれも「吐出データ」である。
【0071】
第1導電性材料層21Bを形成した後で、第1導電性材料層21Bを活性化する。このために本実施形態では、ベース基板1aを第1オーブンの内部に位置させる。そして、第1導電性材料層21Bを加熱することで、第1導電性材料層21Bにおける銀の微粒子を燒結または融着させる。このような活性化の結果、図6(b)に示すように、ベース基板1a上に、第1パターン形状を有する第1導電層21が得られる。
【0072】
第1パターン形状を有する第1導電層21は、図6(c)に示すような配線25Aと、配線25Bと、配線25Cと、を含む。具体的には、これら配線25A、25B、25Cのそれぞれは、ベース基板1aのそれぞれの被吐出部上に位置している。つまり、これら配線25A、25B、25Cはいずれも、ほぼ同一のレベルにある面上に位置している。ただし、これら配線25A、25B、25Cのうちのどの2つの配線も、上記の面上では互いから物理的に分離されている。なお、後述の工程によって、配線25Aと配線25Bとは、互いに電気的に接続されるべき配線である。一方、配線25Cは、配線25Aと配線25Bとのどちらからも電気的に絶縁されるべき配線である。
【0073】
(G.第1絶縁層)
第1パターン形状の第1導電層21が設けられた後では、ベース基板1a上に第1導電層21の厚さに相当する段差が生じる。そこで、図6(d)に示すように、本実施形態では、ベース基板1aの部分であって第1導電層21がない部分に第1絶縁層31を形成する。第1絶縁層31は第1導電層21の側面を覆うので、このことで第1導電層21によって生じた段差がなくなる。
【0074】
具体的には、図6(d)に示すように、まず、第1導電層21が設けられたベース基板1aを第2吐出装置のステージ106上に位置させる。そうすると第2吐出装置は、第2ビットマップデータに応じて、ベース基板1aの被吐出部上に第1絶縁材料層31Bを形成する。
【0075】
より具体的には、まず、第2吐出装置は、ベース基板1aに対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、ノズル118が被吐出部に対応する位置に達した場合に、第2吐出装置はノズル118から絶縁材料311の液滴を吐出する。吐出された絶縁材料311の液滴は、ベース基板1aの被吐出部に着弾する。そして絶縁材料311の液滴が被吐出部に着弾することで、ベース基板1a上に第1絶縁材料層31Bが得られる。
【0076】
ここで、着弾後の絶縁材料311が第1導電層21の側面を覆って塗れ広がるまで、絶縁材料311が流動性を維持できるように、本実施形態の絶縁材料311の濃度は十分低く設定されている。このため、被吐出部に着弾した絶縁材料311は、被吐出部上で、均一な厚さの層(第1絶縁材料層31B)を形成する。
【0077】
第1絶縁材料層31Bを形成した後で、第1絶縁材料層31Bを活性化する。このために本実施形態では、ベース基板1aを第2オーブンの内部に位置させる。そして、第1絶縁材料層31Bを加熱することで、第1絶縁材料層31Bにおけるポリイミド前駆体を重合してポリイミド層を得る。このような活性化の結果、図7(a)に示すように、ベース基板1a上に、第1絶縁層31(ポリイミド層)を得る。
【0078】
第1絶縁層31が形成されると、第1導電層21によって形成されたベース基板1a上の段差が吸収される。第1導電層21の表面と、第1絶縁層31の表面と、がほぼ同一のレベルに位置するからである。本明細書では、第1導電層21の表面と、第1絶縁層31の表面と、によって提供される表面を、「第2レベルの表面」とも表記する。
【0079】
(H.第2絶縁層)
第1絶縁層31を形成した後で、第1導電層21と第1絶縁層31とを覆う第2絶縁層を形成する。
【0080】
まず、ベース基板1aを、第3吐出装置のステージ106上に位置させる。そうすると第3吐出装置は、第3ビットマップデータに応じて、第1導電層21の被吐出部上と第1絶縁層の被吐出部上とに第2絶縁材料層を形成する。そして、第3オーブンが第2絶縁材料層を活性化することで、第2絶縁層を得る。
【0081】
この工程によって形成されるべき第2絶縁材料層(後の第2絶縁層)は、「層境界部」と「層内部」とからなる。「層境界部」とは、第2絶縁材料層または第2絶縁層の最も外側に位置する部分である。一方、「層内部」とは、その「層境界部」に囲まれた部分である。ただし、「層境界部」が、第2絶縁材料層においてコンタクトホールやビアホールの外形を形取る場合には、「層境界部」が「層内部」に囲まれる。いずれにしても、「層境界部」と「層内部」とは互いに密着している。
【0082】
本明細書では、絶縁材料311が付与されるべき被吐出部のうち、層境界部に対応する被吐出部を「第1部分41」とも表記する。同様に、絶縁材料311が付与されるべき被吐出部のうち、層内部に対応する被吐出部を「第2部分42」とも表記する。第1部分41は、被吐出部の最も外側に位置する部分でもある。一方、第2部分42は、第1部分41によって囲まれた部分でもある。そして、これら第1部分41と第2部分42とは互いに接している。なお、本実施形態では、第1部分41と第2部分42とは、どちらも同じレベル(第2レベル)の表面上に位置している。ただしもちろん、これら第1部分41と第2部分42とが異なるレベルの表面上に位置していてもよい。
【0083】
(H1.層境界部(第1部分41への吐出))
以下では、第2絶縁層の形成をより具体的に説明する。まず、図7(b)に示すように、吐出装置10A(第3吐出装置)は、ベース基板1aに対するノズル118T(図4)の相対位置をY軸方向の正の方向に、相対速度Vで変化させる。そして、ノズル118Tが第1部分41に対応する位置に達した場合に、ヘッド114は絶縁材料311の液滴を吐出する。ここで、吐出装置10Aは、ベース基板1aに対するヘッドの相対的な進行方向に関して、ヘッド114よりも後方に位置する光照射装置113A、113Bのうち、ヘッド114に近い側の光照射装置113Aの状態をON状態に維持する。そして、残りの3つの光照射装置113B、113C、113Dの状態をいずれもOFF状態に維持する。
【0084】
第1部分41に着弾した絶縁材料311の液滴へは、UV光が照射される。ノズル118Tに引き続いて、ON状態にある光照射装置113Aが第1部分41の上方を通過するからである。
【0085】
そして、ヘッド114のX軸方向への相対移動とY軸方向への相対移動とを繰り返すことで、吐出装置10Aは、ベース基板1a上の第1部分41のすべての範囲に絶縁材料311の液滴を着弾させる。そうすると、第1部分41を覆う第2絶縁材料層(層境界部)32Bが得られる。ここで、第1部分41へ吐出された絶縁材料311の複数の液滴へはいずれも、吐出されたそれぞれの時点からほぼ(d1+DA/2)/Vの時間後に、第1部分41上でUV光が照射される。UV光が照射されれば、絶縁材料311の粘度は上昇する。
【0086】
上述したように、(d1+DA/2)/Vの時間の長さは、上述の層形成期間以下である。したがって、着弾した絶縁材料311の1つの液滴が第1部分41上で塗れ広がる範囲が狭く、この結果、層境界部の形状が維持できる。例えば、図7(c)に示すように、第1部分41がコンタクトホールの外形に対応するように位置する場合には、層境界部が形取るコンタクトホールは、層境界部が活性化(硬化)されるまで、その開口を維持し得る。なお、(d1+DA/2)/Vの時間は、本発明の「第1の時間期間」に対応する。
【0087】
(H2.層内部(第2部分42への吐出))
第2絶縁材料層の層境界部を形成した後で、層内部を形成する。具体的にはまず、図7(d)に示すように、吐出装置10Aは、ベース基板1aに対するノズル118T(図4)の相対位置をY軸方向の正の方向に、相対速度Vで変化させる。そして、ノズル118Tが第2部分42に対応する位置に達した場合に、ヘッド114は絶縁材料311の液滴を吐出する。ここで、吐出装置10Aは、ヘッド114の相対的な進行方向に関して、ヘッド114よりも後方に位置する光照射装置113A、113Bのうち、ヘッド114から遠い側の光照射装置113Bの状態をON状態に維持する。残りの3つの光照射装置113A、113C、113Dの状態はそれぞれOFF状態に維持される。
【0088】
第2部分42上へ吐出された絶縁材料311の複数の液滴のそれぞれへは、吐出されたそれぞれの時点から(d2+DA/2)/Vの時間後になるまでUV光が照射されない。上述したように、(d2+DA/2)/Vの時間の長さは、上述の層形成期間よりも長い。つまり、絶縁材料311の複数の液滴がそれぞれ吐出されたそれぞれの時点から層形成期間に亘って、第2部分42上の絶縁材料311の複数の液滴のそれぞれは放置される。なお、(d2+DA/2)/Vの時間は、本発明の「第2の時間期間」に対応する。
【0089】
UV光が照射されるまで、絶縁材料311の粘度の上昇は溶媒の気化のみに依存する。この理由から、第2部分42に着弾した絶縁材料311の1つの液滴が塗れ広がる面積は、第1部分41に着弾した絶縁材料311の1つの液滴が塗れ広がる面積よりも広い。このため、層内部を平坦な層にすることがより容易になる。
【0090】
吐出装置10Aは、ヘッド114のX軸方向への相対移動とY軸方向への相対移動とを繰り返すことで、層境界部によって縁取られた部分(第2部分42)を絶縁材料311で満たす。この結果、吐出装置10Aは層内部を形成する。ここで、すでに層境界部は形成されているので、層境界部と層内部とからなる第2絶縁材料層32Bが得られる。
【0091】
このように吐出装置10Aによれば、吐出する液状の材料111(ここでは絶縁材料311)が同じであっても、物体上に施される表面改質処理が同じであっても、物体上での液状の材料111の塗れ広がりの度合いを部分的に異ならせることができる。ヘッド114からの距離が異なる2つの位置に2つの光照射装置113A、113Bがそれぞれ位置しているので、液状の材料111が吐出された時点からUV光が照射されるまでの時間を可変にでき、この結果、液状の材料111の重合反応が始るタイミングを可変にできるからである。
【0092】
第2絶縁材料層32Bを形成した後で、第2絶縁材料層32Bを活性化する。このために本実施形態では、ベース基板1aを第3オーブン(オーブン10B)の内部に位置させる。そして、第2絶縁材料層32Bを加熱することで、第2絶縁材料層32Bにおけるポリイミド前駆体を重合してポリイミド層を得る。このような活性化の結果、図7(e)に示すように、第1導電層21と第1絶縁層31とを覆う第2絶縁層32(ポリイミド層)を得る。さらに上述したように、この第2絶縁層32は、配線25A上と配線25C上とに、それぞれコンタクトホール35を有している。
【0093】
(I.第2導電層および第3導電層)
第2絶縁層32を形成した後で、第2絶縁層32に設けられたコンタクトホール35を貫通する第2導電層を形成する。
【0094】
具体的には、図8(a)に示すように、まず、ベース基板1aを第4吐出装置のステージ106上に位置させる。そうすると第4吐出装置は、第4ビットマップデータに応じて、第2絶縁層32に設けられたコンタクトホール35を貫通する第2導電性材料層22Bを形成する。
【0095】
より具体的には、まず、第4吐出装置は、第2絶縁層32に対するノズル118の相対位置を2次元的に変化させる。そして、コンタクトホール35に対応する位置にノズル118が達した場合に、第4吐出装置はノズル118から導電性材料211の液滴を吐出する。吐出された導電性材料211の液滴は、コンタクトホール35によって露出した第1導電層21の被吐出部に着弾する。そしてコンタクトホール35内を満たすのに充分な数の液滴がコンタクトホール35内に着弾することによって、図8(b)に示すように、コンタクトホール35を貫通する第2導電性材料層22Bが得られる。
【0096】
第2導電性材料層22Bを形成した後で、第2絶縁層32上と第2導電性材料層22B上とに第3導電層23を形成する。
【0097】
具体的には、第4吐出装置は、第5ビットマップデータに応じて、第2パターン形状を有する第3導電性材料層23Bを第2絶縁層32上に形成する。ここで、第2パターン形状とは、2つのコンタクトホール35のそれぞれに設けられた第2導電層22を結ぶ形状である。
【0098】
より具体的には、まず、図8(c)に示すように、第4吐出装置は、ベース基板1aに対するノズル118の相対位置を、2次元的(つまりX軸方向およびY軸方向)に変化させる。そして、形成すべきパターンに対応する位置にノズル118が達した場合に、第4吐出装置はノズル118から導電性材料211の液滴を吐出する。吐出された導電性材料211の液滴は、第2絶縁層32の被吐出部と第2導電層22の被吐出部とに着弾する。そして導電性材料211の液滴が被吐出部に着弾することによって、第2絶縁層32上と第2導電層22上とに第3導電性材料層23Bが得られる。
【0099】
第2導電性材料層22Bおよび第3導電性材料層23Bを形成した後で、第2導電性材料層22Bおよび第3導電性材料層23Bを活性化する。このために本実施形態では、ベース基板1aを第4オーブンの内部に位置させる。そして、第2導電性材料層22Bおよび第3導電性材料層23Bを加熱することで、第2導電性材料層22Bおよび第3導電性材料層23Bにおける銀の微粒子を燒結または融着させる。このような活性化の結果、図8(d)に示すように、2つのコンタクトホール35のそれぞれの内に位置する第2導電層22と、第2導電層22のそれれぞれに電気的に連結された第3導電層23とが得られる。
【0100】
第2導電層22と第3導電層23とによって、第1導電層21の一部である配線25Aと配線25Cとは、互いに電気的に連結される。ここで、第1導電層21の一部である配線25Bは、配線25Aに対しても配線25Cに対しても電気的絶縁が保たれる。
【0101】
(J.第3絶縁層)
第3導電層23を形成した後で、第3導電層23を覆う第3絶縁層を形成する。具体的には、図9(a)に示すように、まず、ベース基板1aを第5吐出装置のステージ106上に位置させる。そうすると第5吐出装置は、第6ビットマップデータに応じて、第3導電層23を覆う第3絶縁材料層33Bを形成する。
【0102】
より具体的には、まず、第5吐出装置は、ベース基板1aに対するノズル118の相対位置を、2次元的(つまりX軸方向およびY軸方向)に変化させる。そして、形成すべきパターンに対応する位置にノズル118が達した場合に、第5吐出装置はノズル118から絶縁材料311の液滴を吐出する。吐出された絶縁材料311の液滴は、第2絶縁層32の被吐出部と第3導電層23の被吐出部とに着弾する。そして絶縁材料311の液滴が被吐出部に着弾することによって、ベース基板1a上に第3絶縁材料層33Bが得られる。
【0103】
第3絶縁材料層33Bを形成した後で、第3絶縁材料層33Bを活性化する。このために本実施形態では、ベース基板1aを第5オーブンの内部に位置させる。そして、第3絶縁材料層33Bを加熱することで、第3絶縁材料層33Bにおける感光性ポリイミド前駆体を重合してポリイミド層を得る。このような活性化の結果、図9(b)に示すように、第3導電層23を覆う第3絶縁層33が得られる。
【0104】
このように、本実施形態によれば、インクジェット法を利用して立体的な配線構造を有する配線基板を製造することができる。配線基板の一例は、液晶表示装置において液晶パネルに接続される基板である。つまり、本実施形態の層形成方法は、液晶表示装置の製造に適用できる。
【0105】
さらに、本実施形態の層形成方法は、液晶表示装置の製造だけでなく、種々の電気光学装置の製造にも適用され得る。ここでいう「電気光学装置」とは、複屈折性の変化や、旋光性の変化や、光散乱性の変化などの光学的特性の変化(いわゆる電気光学効果)を利用する装置に限定されず、信号電圧の印加に応じて光を射出、透過、または反射する装置全般を意味する。
【0106】
具体的には、電気光学装置は、液晶表示装置、エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ表示装置、表面伝導型電子放出素子を用いたディスプレイ(SED:Surface−Conduction Electron−Emitter Display)、および電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)を含む用語である。
【0107】
さらに、本実施形態の層形成方法は、種々の電子機器の製造方法に適用され得る。例えば、図10に示すような、液晶表示装置52を備えた携帯電話機50の製造方法や、図11に示すような、液晶表示装置62を備えたパーソナルコンピュータ60の製造方法にも、本実施形態の製造方法が適用される。
【0108】
(変形例1)
上記実施形態では、第2部分42に着弾した絶縁材料311の液滴には、層形成期間が経過した後で光照射装置113BからのUV光が照射される。しかしながら、第2部分42に着弾した絶縁材料311には、層形成期間が経過した後でも、なんら光照射がなされなくてもよい。このような方法であっても、第1部分41に着弾した絶縁材料311の塗れ広がりの度合いと、第2部分42に着弾した絶縁材料311の塗れ広がりの度合いとを、異ならせることができるからである。
【0109】
(変形例2)
上記実施形態では、第1絶縁層31および第2絶縁層32は、ポリイミドからなる。ただし、ポリイミドに代えて、他のポリマーからなってもよい。第1絶縁層31および第2絶縁層32が他のポリマーからなる場合には、絶縁材料311が、感光性ポリイミド前駆体に代えて、対応する感光性ポリマー前駆体を含んでいればよい。
【0110】
上記本実施形態では、第1絶縁層31も、第2絶縁層32も、互いに同じ構造のポリイミド、すなわち同じ構造のポリマー、からなる。しかしながら、結果として生じる絶縁層の線膨張率が近いのであれば、第1絶縁層31と第2絶縁層32とが、互いに異なる構造のポリマーであってもよい。
【0111】
(変形例3)
上記実施形態では、ポリイミドからなるベース基板1a上に導電配線が形成される。しかしながら、このようなベース基板1aに代えて、セラミック基板やガラス基板やエポキシ基板やガラスエポキシ基板やシリコン基板などが利用されても、上記実施形態で説明した効果と同様の効果が得られる。なお、シリコン基板を利用する場合には、導電性材料を吐出する前に、基板表面にパシベーション膜を形成してもよい。なお、どのような基板や膜が用いられても、上述したように、ノズル118からの液状の材料111が着弾して塗れ広がることになる部分は「被吐出部」に対応する。
【0112】
(変形例4)
上記実施形態の導電性材料211には、銀のナノ粒子が含まれている。しかしながら、銀のナノ粒子に代えて、他の金属のナノ粒子が用いられてもよい。ここで、他の金属として、例えば、金、白金、銅、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、亜鉛、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウムのいずれか1つが利用されてもよいし、または、いずれか2つ以上が組合せられた合金が利用されてもよい。ただし、銀であれば比較的低温で還元できるため、扱いが容易であり、この点で、インクジェット法を利用する場合には、銀のナノ粒子を含む導電性材料211を利用することは好ましい。
【0113】
また、導電性材料211が、金属のナノ粒子に代えて、有機金属化合物を含んでいてもよい。ここでいう有機金属化合物は、加熱(すなわち活性化)による分解によって金属が析出するような化合物である。このような有機金属化合物には、クロロトリエチルホスフィン金(I)、クロロトリメチルホスフィン金(I)、クロロトリフェニルフォスフィン金(I)、銀(I)2,4−ペンタンヂオナト錯体、トリメチルホスフィン(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銀(I)錯体、銅(I)ヘキサフルオロペンタンジオナトシクロオクタジエン錯体、などがある。
【0114】
このように、導電性材料211に含まれる金属の形態は、ナノ粒子に代表される粒子の形態でもよいし、有機金属化合物のような化合物の形態でもよい。
【0115】
さらに、導電性材料211は、金属に代えて、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどの高分子系の可溶性材料を含んでいてもよい。
【0116】
(変形例5)
上記実施形態によれば、オーブンによる加熱によって第1絶縁材料層31B、第2絶縁材料層32B、第1導電性材料層21B、第2導電性材料層22B、第3導電性材料層23Bを最終的に活性化させる。ただし、加熱することに代えて、紫外域・可視光域の波長の光や、マイクロウェーヴなどの電磁波を照射することで、これら導電性材料層または絶縁材料層を活性化してもよい。また、このような活性化に代えて、導電性材料層または絶縁材料層を単に乾燥させてもよい。付与された導電性材料層または絶縁材料層を放置するだけでも導電層または絶縁層が生じるからである。ただし、導電性材料層または絶縁材料層を単に乾燥させる場合よりも、何らかの活性化を行う場合の方が、導電層または絶縁層の生成時間が短い。このため、導電性材料層または絶縁材料層を活性化することがより好ましい。
【0117】
(変形例6)
上記実施形態によれば、第1導電層21はインクジェット法によって形成された銀配線である。ただし、銀配線に代えて、第1導電層21がフォトリソグラフィー工程によって形成された銅配線であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】層形成装置の模式図。
【図2】吐出装置の模式図。
【図3】吐出装置における吐出ヘッド部の模式図。
【図4】吐出装置におけるヘッドの模式図。
【図5】吐出装置における制御部の模式図。
【図6】(a)から(b)は層形成方法を示す図。
【図7】(a)から(e)は層形成方法を示す図。
【図8】(a)から(d)は層形成方法を示す図。
【図9】(a)および(b)は層形成方法を示す図。
【図10】本実施形態の携帯電話機を示す模式図。
【図11】本実施形態のパーソナルコンピュータを示す模式図。
【符号の説明】
【0119】
W1…リール、1a…ベース基板、10…層形成装置、10A…吐出装置、10B…オーブン、21…第1導電層、21B…第1導電性材料層、22…第2導電層、22B…第2導電性材料層、23…第3導電層、23B…第3導電性材料層、25A…配線、25B…配線、25C…配線、31…第1絶縁層、31B…第1絶縁材料層、32…第2絶縁層、32B…第2絶縁材料層、33…第3絶縁層、33B…第3絶縁材料層、35…コンタクトホール、41…第1部分、42…第2部分、101…タンク、102…吐出走査部、103…吐出ヘッド部、103A…キャリッジ、106…ステージ、111…液状の材料、112…制御部、113A、113B、113C、113D…光照射装置、114…ヘッド、118、118T…ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分と前記第1部分に接する第2部分とを覆う層をインクジェット法で形成する層形成方法であって、
(a)前記第1部分へ感光性樹脂を含んだ液状の材料を吐出するステップと、
(b)前記第1部分へ前記液状の材料が吐出された時点から層形成期間内に前記第1部分上の前記液状の材料への光の照射を開始するステップと、
(c)前記ステップ(b)の後で、前記第2部分へ前記液状の材料を吐出するステップと、
(d)前記第2部分へ前記液状の材料が吐出された時点から前記層形成期間内に亘って、前記第2部分上の前記液状の材料が塗れ広がるように、前記第2部分上の前記液状の材料を放置するステップと、
を含んだ層形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の層形成方法であって、
(e)前記第2部分へ前記液状の材料が吐出された時点から前記層形成期間が経過した後で、前記第2部分上の前記液状の材料に前記光を照射するステップ、
をさらに含んでいる層形成方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の層形成方法であって、
前記層を貫通するコンタクトホールの外形が規定されるように前記第1部分が設けられている、
層形成方法。
【請求項4】
第1部分と前記第1部分に接する第2部分とを覆う層をインクジェット法で形成する層形成方法であって、
(a)前記第1部分へ感光性樹脂を含んだ液状の材料を吐出するステップと、
(b)前記第1部分へ前記液状の材料が吐出された時点から第1の時間期間後に前記第1部分上の前記液状の材料に光を照射するステップと、
(c)前記ステップ(b)の後で、前記第2部分へ前記液状の材料を吐出するステップと、
(d)前記第2部分へ前記液状の材料が吐出された時点から前記第1の時間期間よりも長い第2の時間期間後に、前記第2部分上の前記液状の材料に前記光を照射するステップと、
を含んだ層形成方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つ記載の層形成方法で製造された配線基板。
【請求項6】
請求項5記載の配線基板を備えた電子機器。
【請求項7】
請求項5記載の配線基板を備えた電気光学装置。
【請求項8】
被吐出部を有する物体の位置を決めるステージと、
ノズルを有するとともに感光性樹脂を含んだ液状の材料を前記ノズルから前記物体側へ吐出するヘッドと、
前記ヘッドに対する相対位置が固定されているとともに、前記物体側へ光を射出する光照射装置と、
前記物体と、前記ヘッドおよび前記光照射装置の組と、の少なくとも1つを他方に対して移動させる走査部と、
を備えた層形成装置であって、
前記ノズルと前記光照射装置とは所定方向に並んでいて、
前記ノズルから吐出された前記液状の材料が前記被吐出部に着弾した後で、前記着弾した前記液状の材料に前記光が照射されるように、前記走査部は前記物体に対する前記光照射装置の相対位置を前記所定方向に変える、
層形成装置。
【請求項9】
2つの前記光照射装置を備えた請求項8記載の層形成装置であって、
前記2つの光照射装置は前記ヘッドに対して同じ側に位置しており、
前記ヘッドと前記2つの光照射装置のそれぞれとの間のそれぞれの距離は互いに異なっていて、
前記ノズルによって吐出された前記液状の材料が前記物体上で前記2つの光照射装置のいずれか一つからの前記光で照射されるように、前記走査部は、前記物体に対する前記2つの光照射装置の相対位置を前記所定方向に変える、
層形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−773(P2006−773A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181053(P2004−181053)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】