説明

工作機械における工作物測定方法およびその装置

【課題】計測器を別途使用しなくても、工作物測定用の測定ヘッドが本来有している測定機能を有効利用して測定ヘッドの3次元オフセットを取得して、測定ヘッドで工作物を測定する工作物測定方法を提供する。
【解決手段】工作機械に取付けられた測定ヘッド10を所定角度旋回させて基準球30を第1の方向E1と第2の方向E2から測定することによって、基準球における中心点A1の座標を取得する。測定ヘッドが基準球の中心点を第1の方向から測定したときの測定ヘッドの第1の機械座標と、測定ヘッドが基準球の中心点を第2の方向から測定したときの測定ヘッドの第2の機械座標とに基づいて、測定ヘッドの3次元オフセットを取得する。その後、測定ヘッドの3次元オフセットを使用して、工作物を測定ヘッドで測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に取り付けられる測定ヘッドが、工作物に対して相対移動可能で且つ旋回可能な工作機械において、3次元オフセットを含む測定ヘッドで工作物を測定する方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタや複合加工機など工作機械において、加工後の工作物を工作機械から取り外さずに工作機械に取付けたまま、工作物の表面の形状を測定する技術はすでに提案されている。
そのために、工作機械に測定ヘッドを取付け、この測定ヘッドを工作物に対して相対移動させることにより工作物を測定する。このような、工作機械に取付けられる測定ヘッド自身の長さ寸法は、タッチセンサなど計測器を別途使用して測定される場合が多い。
また、基準球など基準物を工作機械の所定位置に高精度に設置して、この基準物を測定ヘッドで測定することにより、測定ヘッドの長さ寸法を取得することも可能である。ところが、この場合には、基準物を予めダイヤルゲージなどで測定しておく必要があった。
【0003】
特許文献1(特開平4−203917号公報)には、3次元測定器の校正方法が記載されている。この技術は、非球面レンズなどの自由曲面の形状の測定に使用される3次元測定器に関するものである。この測定器は、プローブ(本発明の測定ヘッドに相当)で測定を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−203917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の3次元測定器では、プローブを使用してプローブ自身の長さ寸法などを測定するようにはなっていない。
この従来技術における3次元測定器の校正方法は、基準球面を使用しているが、この基準球面を測定するための測定器を別途使用する必要があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、タッチセンサやダイヤルゲージなど計測器を別途使用しなくても、また、基準球など基準物を任意の位置に設置するだけで、工作物測定用の測定ヘッド自身が本来有している測定機能を有効利用して、測定ヘッド自身の3次元オフセット(「オフセット」は、測定ヘッドの固有の機械座標と測定ヘッドの計測基準位置座標との間の、長さと方向を持つベクトル)を取得して、工作物を測定ヘッドで測定することができる工作機械における工作物測定方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる工作機械における工作物測定方法は、工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドが、工作物に対して直交3軸方向または直交2軸方向に相対移動可能で、且つ1軸以上の旋回軸により前記工作物に対する相対角度方向を変化させることができる前記工作機械において、3次元オフセットを含む前記測定ヘッドで前記工作物を測定する方法であって、任意の位置に設置された基準物を、前記測定ヘッドで前記相対角度方向を変化させながら複数回にわたって測定し、この相対角度方向から測定された前記直交3軸方向の測定結果の変化から、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを算出し、その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定する。
具体的には、第1の工作物測定方法は、工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドが、工作物に対して直交3軸方向または直交2軸方向に相対移動可能で且つ旋回可能な前記工作機械において、3次元オフセットを含む前記測定ヘッドで前記工作物を測定する方法であって、前記測定ヘッドを所定角度旋回させて、任意の位置に設置された基準物を前記測定ヘッドで第1の方向と第2の方向からそれぞれ測定することによって、前記基準物における固有の特定点の座標を取得し、前記測定ヘッドが前記基準物の前記特定点を前記第1の方向から測定したときの前記測定ヘッドの第1の機械座標と、前記測定ヘッドが前記基準物の前記特定点を前記第2の方向から測定したときの前記測定ヘッドの第2の機械座標とに基づいて、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを算出し、その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定する。
第2の工作物測定方法は、工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドが、工作物に対して、直交3軸方向のうち移動しない1軸方向以外の直交2軸方向に相対移動可能で且つ旋回可能な前記工作機械において、3次元オフセットを含む前記測定ヘッドにより、前記工作物をレーザ光で測定する方法であって、前記測定ヘッドを所定角度旋回させて、任意の位置に設置された基準物を前記測定ヘッドで第1の方向と第2の方向からそれぞれ測定することによって、前記基準物における固有の特定点の座標を取得し、前記測定ヘッドが前記基準物の前記特定点を前記第1の方向から測定したときの前記測定ヘッドの第1の機械座標と、前記測定ヘッドが前記基準物の前記特定点を前記第2の方向から測定したときの前記測定ヘッドの第2の機械座標とにより、前記測定ヘッドにおける、前記移動する直交2軸方向の各オフセットを取得し、所定の手段で前記レーザ光の傾き角度を取得し、このレーザ光の傾き角度から、前記測定ヘッドにおける前記移動しない1軸方向のオフセットを算出し、前記測定ヘッドにおける、前記移動する直交2軸方向の前記各オフセットと、前記移動しない1軸方向の前記オフセットとに基づいて、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを算出し、その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定する。
第3の工作物測定方法は、テーブルが旋回中心のまわりに旋回可能な工作機械において、この工作機械に取付けられるとともに3次元オフセットを含む有線式または無線式の測定ヘッドにより、前記テーブルに取付けられた工作物をレーザ光で測定する方法であって、固有の特定点を有する基準物を前記テーブル上の任意の位置に設置し、第1の方向を向く前記テーブル上の前記基準物を前記測定ヘッドで測定することによって、この測定ヘッドの第1の機械座標の点群と、前記レーザ光の焦点である基準位置からの距離データとを取得し、この取得した点群と距離データから、実際の前記基準物における前記特定点の座標と、第1の架空の基準物における第1の特定点の座標とを算出し、次いで、前記テーブルを前記旋回中心を中心として所定角度旋回させ、第2の方向を向く前記テーブル上の前記基準物を前記測定ヘッドで測定することによって、前記測定ヘッドの第2の機械座標の点群と、前記基準位置からの距離データとを取得し、この取得した点群と距離データから、実際の前記基準物における前記特定点の座標と、第2の架空の基準物における第2の特定点の座標とを算出し、前記第1の架空の基準物における前記第1の特定点と、前記第2の架空の基準物における前記第2の特定点と、架空の旋回中心とにより形成される架空の三角形が、前記テーブルが前記所定角度旋回する前後の実際の前記基準物におけるそれぞれの前記特定点と、実際の前記旋回中心とにより形成される実際の三角形と合同であることに基づいて、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを取得し、その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定する。
第3の工作物測定方法の変形例は、工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドが、工作物に対して、直交3軸方向のうち移動しない1軸方向以外の直交2軸方向に相対移動可能で且つ旋回可能で、テーブルが旋回中心のまわりに旋回可能な前記工作機械において、3次元オフセットを含む前記測定ヘッドにより、前記工作物をレーザ光で測定する方法であって、固有の特定点を有する基準物を前記テーブル上の任意の位置に設置し、第1の方向を向く前記テーブル上の前記基準物を前記測定ヘッドで測定することによって、この測定ヘッドの第1の機械座標の点群と、前記レーザ光の焦点である基準位置からの距離データとを取得し、この取得した点群と距離データから、実際の前記基準物における前記特定点の座標と、第1の架空の基準物における第1の特定点の座標とを算出し、次いで、前記テーブルを前記旋回中心を中心として所定角度旋回させ、第2の方向を向く前記テーブル上の前記基準物を前記測定ヘッドで測定することによって、前記測定ヘッドの第2の機械座標の点群と、前記基準位置からの距離データとを取得し、この取得した点群と距離データから、実際の前記基準物における前記特定点の座標と、第2の架空の基準物における第2の特定点の座標とを算出し、前記第1の架空の基準物における前記第1の特定点と、前記第2の架空の基準物における前記第2の特定点と、架空の旋回中心とにより形成される架空の三角形が、前記テーブルが前記所定角度旋回する前後の実際の前記基準物におけるそれぞれの前記特定点と、実際の前記旋回中心とにより形成される実際の三角形と合同であることに基づいて、前記測定ヘッドにおける前記移動する直交2軸方向の各オフセットを取得し、所定の手段で前記レーザ光の傾き角度を取得し、このレーザ光の傾き角度から、前記測定ヘッドにおける前記移動しない1軸方向のオフセットを算出し、前記測定ヘッドにおける、前記移動する直交2軸方向の前記各オフセットと、前記移動しない1軸方向の前記オフセットとに基づいて、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを算出し、その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定する。
第4の工作物測定方法は、工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドが、工作物に対して直交3軸方向または直交2軸方向に相対移動可能で且つ旋回でき、テーブルが旋回中心のまわりに旋回可能な前記工作機械において、3次元オフセットを含む前記測定ヘッドにより前記工作物をレーザ光で測定する方法であって、前記第1,前記第2または前記第3の工作物測定方法の各手順単独により(または、これらの手順を複数組合わせることにより)、前記測定ヘッドにおける前記移動する直交2軸方向の各オフセットを取得し、前記第2または前記第3の工作物測定方法における各手順により、前記測定ヘッドにおける残りの1軸方向のオフセットを取得し、前記測定ヘッドにおける、前記移動する直交2軸方向の各オフセットと、前記残りの1軸方向のオフセットとに基づいて、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを算出し、その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定する。
これらの工作物測定方法において、前記測定ヘッドは、前記工作物を非接触で測定する機能と、前記工作物に接触子が接触して測定する機能の、いずれか一方または両方の機能を有するのが好ましい。
本発明にかかる工作機械の工作物測定装置は、上述の測定方法により前記測定ヘッドで前記工作物を測定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる工作機械における工作物測定方法およびその装置は、上述のように構成したので、タッチセンサやダイヤルゲージなど計測器を別途使用しなくても、また、基準球など基準物を任意の位置に設置するだけで、工作物測定用の測定ヘッド自身が本来有している測定機能を有効利用して、測定ヘッド自身の3次元オフセットを取得して、工作物を測定ヘッドで測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1ないし図9は本発明の第1実施例を示す図で、図1は、有線式の測定ヘッドを有する工作物測定装置が設けられた工作機械の斜視図である。
【図2】無線式の測定ヘッドを有する工作物測定装置が設けられた工作機械の斜視図である。
【図3】非接触形の測定ヘッドを示す概略構成図である。
【図4】接触形の測定ヘッドを示す概略構成図である。
【図5】測定ヘッドを旋回させる前に基準球を測定している説明図である。
【図6】測定ヘッドを旋回させた後に基準球を測定している説明図である。
【図7】測定ヘッドで測定される各要素の関係を示す説明図である。
【図8A】基準球の中心点を取得する方法を示す説明図である。
【図8B】基準球の中心点を取得する他の方法を示す説明図である。
【図8C】基準物が多角錐である場合の外観図である。
【図8D】基準物が直方体である場合の外観図である。
【図9】測定ヘッドの3次元オフセットを取得する手順を示すフローチャートである。
【図10】図10ないし図13は本発明の第2実施例を示す図で、図10は、有線式の測定ヘッドを有する工作物測定装置が設けられた工作機械の斜視図である。
【図11】無線式の測定ヘッドを有する工作物測定装置が設けられた工作機械の斜視図である。
【図12A】レーザ光の傾き角度からY軸方向のオフセットを算出するための説明図である。
【図12B】レーザ光の傾き角度からY軸方向のオフセットを算出するための説明図である。
【図13】レーザ光の傾き角度を取得する手段を示す説明図である。
【図14】図14ないし図19は本発明の第3実施例を示す図で、図14は、有線式の測定ヘッドを有する工作物測定装置が設けられた工作機械の斜視図である。
【図15】無線式の測定ヘッドを有する工作物測定装置が設けられた工作機械の斜視図である。
【図16】テーブルを旋回させる前に基準球を測定している説明図である。
【図17】テーブルを旋回させた後に基準球を測定している説明図である。
【図18】測定ヘッドの3次元オフセットを取得する方法の説明図である。
【図19】測定ヘッドの3次元オフセットを取得する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる工作物測定方法において、工作機械は、工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドが、工作物に対して直交3軸方向または直交2軸方向に相対移動可能で、且つ1軸以上の旋回軸により工作物に対する相対角度方向を変化させることができる。そして、3次元オフセットを含む測定ヘッドで工作物を測定する。
この方法では、任意の位置に設置された基準物を、測定ヘッドで相対角度方向を変化させながら複数回にわたって測定する。この相対角度方向から測定された直交3軸方向の測定結果の変化から、測定ヘッドの3次元オフセットを算出する。その後、この測定ヘッド自身の3次元オフセットを使用して、工作物を測定ヘッドで測定する。
これにより、タッチセンサやダイヤルゲージなど計測器を別途使用しなくても、また、工作物測定用の測定ヘッド自身の測定機能を有効利用して、測定ヘッド自身の3次元オフセットを取得して工作物を測定ヘッドで測定するという目的が実現される。
【0011】
下記の各実施例では、工作機械が複合加工機の場合を示している。なお、工作機械は、立形マシニングセンタ,横形マシニングセンタ,旋盤または研削盤であってもよい。
【実施例】
【0012】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例を図1ないし図9を参照して説明する。
図1は、有線式の測定ヘッドを有する工作物測定装置が設けられた工作機械の斜視図、図2は、無線式の測定ヘッドを有する工作物測定装置が設けられた工作機械の斜視図である。
図3は非接触形の測定ヘッドを示す概略構成図、図4は接触形の測定ヘッドを示す概略構成図である。図5は、測定ヘッドを旋回させる前に基準球を測定している説明図、図6は、測定ヘッドを旋回させた後に基準球を測定している説明図、図7は、測定ヘッドで測定される各要素の関係を示す説明図である。
図8Aは、基準球の中心点を取得する方法を示す説明図、図8Bは、基準球の中心点を取得する他の方法を示す説明図、図8Cは、基準物が多角錐である場合の外観図、図8Dは、基準物が直方体である場合の外観図である。図9は、測定ヘッドの3次元オフセットを取得する手順を示すフローチャートである。
【0013】
図1ないし図3に示すように、本実施例では、工作機械1が複合加工機の場合を示している。工作機械1は、刃物台3と、工作物4を支持する主軸台5と、工作物4の先端部を支持する補助主軸台(または、心押し台)6と、タレット7とを備えている。
主軸台5のチャック8は、矢印C1に示すように、工作物4を把持して回転駆動する。タレット7には複数の工具が取付けられている。刃物台3に設けられた主軸2には、工作物4を旋削加工または切削加工するための工具18が着脱可能に装着される。工具18は、ATC(自動工具交換装置)16により交換される。
工具18は、主軸台5のチャック8に把持されている工作物4を加工する。主軸2に装着される工具18の種類としては、旋削加工を行うための工具や、主軸2で回転駆動される回転工具などがある。
【0014】
工作機械1は、刃物台3の工具18やタレット7の工具で工作物4を旋削加工する旋盤の機能と、刃物台3の工具18で工作物4を切削加工するマシニングセンタの機能とを有している。
工作機械1を旋盤として使用するときには、主軸2に装着された工具18は回転せず、工作物4を回転させて工具18で旋削加工を行う。また、タレット7に取付けられた工具を使用し、工作物4を回転させてこの工具で旋削加工を行う。
工作機械1をマシニングセンタとして使用するときには、主軸2で工具18を回転させて、非回転の工作物4を切削加工する。このときの刃物台3は、マシニングセンタの主軸頭としての機能を発揮することになる。
【0015】
工作機械1を正面から見て、上下方向,前後方向,左右方向をそれぞれX軸方向,Y軸方向,Z軸方向とする。互いに直交するX軸,Y軸およびZ軸により、直交3軸が構成されている。
【0016】
工作機械1の機械本体12に設けられたZ軸用移動部13は、Z軸用駆動機構に駆動されてZ軸方向に移動する。Z軸用移動部13に設けられたX軸用移動部14は、X軸用駆動機構に駆動されてX軸方向に移動する。X軸用移動部14に設けられたY軸用移動部15は、Y軸用駆動機構に駆動されてY軸方向に移動する。
補助主軸台6は、主軸台5に対して対向配置されており、Z軸方向と平行なZ1軸方向に移動可能である。補助主軸台6のチャックは、矢印C2に示すように、工作物4を把持して回転可能である。
タレット7は、X軸方向と平行なX1軸方向と、Z軸方向と平行なZ2軸方向にそれぞれ移動可能である。
【0017】
工作機械1は、NC(数値制御)装置11とPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)とを有する工作機械用制御装置により制御されている。
NC装置11は、Z軸用駆動機構,X軸用駆動機構およびY軸用駆動機構をそれぞれ制御する。NC装置11は、補助主軸台6の移動機構およびタレット7の移動機構と、主軸2に対して工具18を自動的に交換するATC16を制御する。
【0018】
移動体としての刃物台3は、Y軸用移動部15の前方に取付けられている。図1に示す工作機械1では、刃物台3に、工作物測定装置20の有線式測定ヘッド10が取付けられている。図2に示す工作機械1では、刃物台3に、工作物測定装置20aの無線式測定ヘッド10aが取付け可能になっている。
【0019】
刃物台3は、Z軸用移動部13,X軸用移動部14およびY軸用移動部15にそれぞれ駆動されて、Z軸方向,X軸方向,Y軸方向にそれぞれ移動する。Y軸移動部15の中心軸すなわちB軸は、Y軸と平行になっている。
刃物台3に取付けられた工具18や測定ヘッド10,10aは、Z軸用移動部13,X軸用移動部14およびY軸用移動部15にそれぞれ駆動されて、Z軸方向,X軸方向,Y軸方向にそれぞれ移動する。
こうして、刃物台3の主軸2に着脱可能に装着される工具18と、刃物台3に取付けられた測定ヘッド10,10aは、工作物4に対して直交3軸方向(または、直交2軸方向)に相対移動可能である。矢印B1に示すように、刃物台3はB軸まわりに旋回可能である。したがって、刃物台に取付けられた測定ヘッド10,10aも、B軸まわりに旋回することができる。
【0020】
図1に示す工作機械1において、刃物台3の前面には、有線式の測定ヘッド10を収納するための筐体19が取付けられている。筐体19は、測定ヘッド10を出退可能に支持している。
測定ヘッド10は、その使用時には筐体19から下方に突出し、非使用時には筐体19の内部に収納される。測定ヘッド10は、筐体19から下方に露出した状態で工作物4を測定する。なお、測定ヘッド10を支持する筐体19を、刃物台3の側面に設けてもよい。
【0021】
図1に示す工作物測定装置20は、工作機械1を制御するNC装置11と、刃物台3に取付けられて工作物4を測定する有線式の測定ヘッド10と、工作物測定装置20を制御する測定装置用制御装置(たとえば、パーソナルコンピュータ)24とを有している。
刃物台3に取付けられた測定ヘッド10は、配線40を介して工作物測定装置20に電気的に接続されている。工作物測定装置20で工作物4を測定する場合、刃物台3の測定ヘッド10と測定装置用制御装置24とあいだで、測定指令や、工作物4に対する距離のデータなどが、配線40によって送られる。
【0022】
工作物測定装置20において、測定ヘッド10で測定された距離データは、測定ヘッド10から配線40を介して測定装置用制御装置24に出力される。NC装置11は、測定ヘッド10の位置データを測定装置用制御装置24に出力する。
測定装置用制御装置24は、位置データと距離データとに基づいて演算を行うことにより、工作物4の2次元形状データまたは3次元形状データを得る。このようにして、工作物測定装置20は、工作物4を2次元測定または3次元測定することができる。
【0023】
図2に示す工作機械1では、工作物4を測定するとき、無線式の測定ヘッド10aが刃物台3の主軸2に着脱可能に装着される。NC装置11は、主軸2に対して工具18と測定ヘッド10aを自動的に交換するATC16を制御する。
したがって、刃物台3の主軸2に取付けられた工具18や測定ヘッド10aは、Z軸用移動部13,X軸用移動部14およびY軸用移動部15にそれぞれ駆動されて、Z軸方向,X軸方向,Y軸方向にそれぞれ移動する。
刃物台3の主軸2に着脱可能に装着される工具18や測定ヘッド10aは、工作物4に対して直交3軸方向(または、直交2軸方向)に相対移動可能であり、矢印B1に示すように、B軸まわりに旋回することもできる。
【0024】
図2に示す工作物測定装置20aは、NC装置11と、主軸2に着脱可能に装着されて工作物4を測定する無線式の測定ヘッド10aと、測定ヘッド10aとのあいだで送受信を行う送信受信部23と、工作物測定装置20aを制御する測定装置用制御装置24とを有している。
工作物測定装置20aで工作物4を測定する場合、送信受信部23と、主軸2に装着された状態の測定ヘッド10aとのあいだで、測定指令や、工作物4に対する距離のデータなどの信号Fが、無線によって送受信される。
【0025】
工作物測定装置20aにおいて、測定ヘッド10aで測定されたデータの信号Fは、測定ヘッド10aから送信受信部23に無線で送信される。送信受信部23が測定ヘッド10aから受信した工作物4に関する距離データは、測定装置用制御装置24に出力される。NC装置11は、測定ヘッド10aの位置データを測定装置用制御装置24に出力する。
測定装置用制御装置24は、位置データと距離データとに基づいて演算を行うことにより、工作物4の2次元形状データまたは3次元形状データを得る。このようにして、工作物測定装置20aは、工作物4を2次元測定または3次元測定することができる。
【0026】
図1ないし図3に示すように、工作機械1における工作物測定装置20,20aおよびこれを使用した工作物測定方法は、工作機械1の移動体としての刃物台3に取付けられる有線式の測定ヘッド10(または、無線式の測定ヘッド10a)により、工作物4をレーザ光21(または、図示しない超音波,熱もしくは電磁波)で非接触で測定可能である。
測定ヘッド10,10aには、レーザ光21の軸線上に存在する基準位置Paと、レーザ光21とは反対方向に位置する固有の機械座標Pbとが設定されている。測定ヘッド10,10aにおいて、基準位置Paは、レーザ発振器で発生したレーザ光21が集光する点である。
工作物4の表面の被測定点が基準位置Paに一致すれば、レーザ光21は、工作物4の表面の被測定点に照射されて集光した後、この被測定点で反射する。反射したレーザ光21は、測定ヘッド10,10a内のCCD〔電荷結合素子(Charge Coupled Device)〕カメラの撮像面で環状像として収束される。
【0027】
本発明は、上述の非接触形の測定ヘッド10,10aの他に、有線式または無線式の接触形の測定ヘッド10bにも適用可能である(図4)。すなわち、測定ヘッドは、レーザ光21,超音波,熱または電磁波により、工作物を非接触で測定する機能と、工作物に接触子が接触して測定する機能の、いずれか一方または両方の機能を有する。
測定ヘッドが、接触形で接触子22を有しているときには、工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッド10bにより、接触子22が工作物4に接触して測定する。接触形の測定ヘッド10bでは、接触子22の先端部で工作物4に接触する位置が基準位置Paになる。
【0028】
図1ないし図3に示すように、測定ヘッド10,10aは、基準位置Paにおける距離を±0mmとし、工作物4までの距離D1,D2を測定する。
たとえば、工作物4が基準位置Paより下方に距離D1だけ離れているとき、測定ヘッド10,10aを基準位置Paより下方に距離D1だけ移動させる。すると、基準位置Paが工作物4の表面に一致して、この表面でレーザ光21が集光する。測定ヘッドの移動により、工作物4までの距離D1(たとえば、D1=+5mm)が分かるので、工作物4の表面の位置が測定される。
これとは反対に、工作物4が基準位置Paより上方に距離D2だけ離れたところに位置しているときは、測定ヘッド10,10aを基準位置Paより上方に距離D2だけ移動させる。すると、基準位置Paが工作物4の表面に一致して、この表面でレーザ光21が集光する。その結果、測定ヘッドの移動により、工作物4までの距離D2(たとえば、D2=−5mm)が分かるので、工作物4の表面の位置が測定される。
【0029】
測定ヘッド10,10aにおいて、固有の機械座標Pbを通ってX軸方向(上下方向)と平行な軸線CL1と、測定ヘッド10,10aで発生するレーザ光21の軸線方向とが一致すれば、理想的である。
ところが、測定ヘッド10,10aの製造時や組立時の誤差などにより、レーザ光21の軸線方向が、X軸方向と平行な軸線CL1に対して傾いている場合が多い。たとえば、レーザ光21に関して、X,Z平面においてレーザ光21が傾き角度αで傾いており、X,Y平面においてレーザ光21が傾き角度βで傾いているとする。
その結果、測定ヘッド10,10aは、3次元オフセットRを含むことになる。測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRは、測定ヘッドの計測基準位置Paの座標と、測定ヘッドの固有の機械座標(たとえば、主軸2の先端部位置)Pbとの間の、長さと方向を持つベクトルである。
【0030】
このように、工作物測定装置20,20aでは、測定ヘッド10,10aで工作物4を測定するとき、レーザ光21の光軸の向きと、光軸上にある基準位置(レーザ光21の焦点)Paから測定ヘッド10,10aの固有の機械座標Pbまでの長さとを含む3次元オフセットRが、測定結果の計算に必要になる。
そして、この測定ヘッド10,10a自身の3次元オフセットRを使用して、工作物4を測定ヘッド10,10aで測定することができる。
【0031】
次に、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを取得する方法について説明する。
図1ないし図9に示すように、刃物台3とともに測定ヘッド10,10aを、所定の角度θだけ旋回させる。そして、任意の位置に設置された基準物としての基準球30を、測定ヘッド10,10aで、第1の方向E1と第2の方向E2からそれぞれ測定する。これにより、基準物(基準球30)における固有の特定点(ここでは、中心点A1)の座標(xc,yc,zc)を、NC装置11から取得する。
次いで、測定ヘッド10,10aが基準物(基準球30)の特定点(中心点A1)を第1の方向E1から測定したときの、測定ヘッド10,10aの第1の機械座標P1(x1,y1,z1)を、NC装置11から取得する。
また、測定ヘッド10,10aが基準物(基準球30)の特定点(中心点A1)を第2の方向E2から測定したときの、測定ヘッド10,10aの第2の機械座標P2(x2,y2,z2)を、NC装置11から取得する。
これら第1の機械座標P1(x1,y1,z1)と第2の機械座標P2(x2,y2,z2)に基づいて、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを取得する。
その後、工作物測定装置20,20aは、測定ヘッド10,10a自身の3次元オフセットRを使用して、工作物4を測定ヘッド10,10aで測定する。
【0032】
上述の測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを取得する手順について、詳しく説明する。
まず最初に、刃物台3をX軸方向に向けることにより、測定ヘッド10,10aを下方に向けて位置決めする(ステップ101)。
タレット7(または、主軸台5のチャック8)を、非回転状態で且つ所定位置に位置決めする。この状態で、支持部材31を介して基準球30をタレット7(または、主軸台5のチャック8)上に一時的に載置する(ステップ102)。
このとき、支持部材31と基準球30は、予め高精度に決められた所定位置に取付ける必要性はなく、任意の位置に適当に取付ければよい。なお、支持部材31の一部または全体を永久磁石で構成すれば、タレット7に対して支持部材31と基準球30を容易に取付け,取外し可能なので好ましい。
基準物として、中心点A1を有する基準球30の場合を示している(図8A,図8B)。なお、基準物は、固有の特定点として頂点A2を有する三角錐や四角錐など多角錐30aや(図8C)、固有の特定点として頂点A3を有する直方体30b(図8D)であってもよい。
【0033】
こうして、基準球30をタレット7に位置決めした後、手動操作で刃物台3を移動させて、測定ヘッド10,10aを基準球30の真上に位置決めする。すると、測定ヘッド10,10aは、下方を向いて基準球30に対向する(ステップ103)。
そして、測定ヘッド10,10aにより、基準球30の中心点A1の座標を取得する(ステップ104)。この場合、図8Aに示すように、レーザ光21で、基準球30の複数の断面の位置をそれぞれ計測し、各計測により取得した複数の点から最小二乗法を使って中心点A1の座標を得る。
なお、この座標を得るための他の方法として、図8Bに示すように、基準球30の外周面における多数の点を螺旋状にそれぞれ計測する。計測により取得した多数の点から、最小二乗法で中心点A1の座標を得ることができる。
図8A,図8Bにおける線Lは、レーザ光21で測定したとき、基準球30の表面上を走査するレーザ光21の軌跡を示している。
【0034】
一般的に、最小二乗法により下記の計算ができる。m個の座標x,y,zから基準球30の中心点A1の座標(xc,yc,zc)と半径rを算出する。球の方程式は次式の通りである。

(x−xc)2+(y−yc)2+(z−zc)2=r2 ……(1)

次式のように、係数a,b,c,dを使用する。

xc=−a/2 ……(2)
yc=−b/2 ……(3)
zc=−c/2 ……(4)
r=SQRT[(a2+b2+c2)/4−d] ……(5)

すると、球の方程式は次式で示される。

(x2+y2+z2)+ax+by+cz+d=0 ……(6)
【0035】
解析学で知られているように、各変数に関する偏導関数が0にならなければならない。

∂J/∂a=Σ[(x2+y2+z2)+ax+by+cz+d]×(x)=0 ……(7)
∂J/∂b=Σ[(x2+y2+z2)+ax+by+cz+d]×(y)=0 ……(8)
∂J/∂c=Σ[(x2+y2+z2)+ax+by+cz+d]×(z)=0 ……(9)
∂J/∂d=Σ[(x2+y2+z2)+ax+by+cz+d]×(1)=0 ……(10)
【0036】
これらの式から次の方程式が得られる。
【数1】

【0037】
逆行列をかけて係数a,b,c,dの値を算出し、これら係数を次式に代入して、基準球30の中心点A1 の座標(xc,yc,zc )と半径rを算出する。

xc=−a/2 ……(11)
yc=−b/2 ……(12)
zc=−c/2 ……(13)
r=SQRT[(a2+b2+c2 )/4−d] ……(14)

第1の方向E1を向いている測定ヘッド10,10aが、基準球30の中心点A1を第1の方向E1から測定したときの、測定ヘッド10,10aの第1の機械座標P1(x1,y1,z1 )を、NC装置11から取得する(ステップ105)。
【0038】
図1ないし図7において、刃物台3を、B軸まわりに旋回させるとともに、X軸方向とZ軸方向に移動させる。すると、測定ヘッド10,10aは、基準球30の中心点A1を中心として所定の角度θだけ旋回する。これにより、測定ヘッド10,10aは、第2の方向E2を向く(ステップ106)。
この状態で、上述の第1の方向E1から測定した方法と同じ方法により、基準球30の中心点A1の座標(xc,yc,zc )を取得する。こうして、第2の方向E2から取得した基準球30の中心点A1の座標(xc,yc,zc )が、第1の方向E1から取得した基準球30の中心点A1と同じ座標になるように、測定ヘッド10,10aの位置を調整する(ステップ107)。
そして、第2の方向E2を向いている測定ヘッド10,10aが、基準球30の中心点A1を第2の方向E2から測定したときの、測定ヘッド10,10aの第2の機械座標P2(x2,y2,z2)を、NC装置11から取得する(ステップ108)。
【0039】
こうして取得された測定ヘッド10,10aの第1の機械座標P1と第2の機械座標P2を使用して、次式により、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを算出する。
【数2】

【0040】
基準球30の中心点A1(xc,yc,zc )に対して、測定ヘッド10,10aの第1の機械座標P1(x1,y1,z1)と第2の機械座標P2(x2,y2,z2)と旋回角度θが分かっている(図7)。
したがって、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRは、そのZ成分Rz,X成分Rx,Y成分Ryが分かれば取得できる。そこで、Z成分Rz,X成分Rx,Y成分Ryは、それぞれ次式により算出することができる。

Rz=[−(x1−x2)×sinθ−(z1−z2)×(cosθ−1)]/(2−2×cosθ)……(15)
Rx=[z1−z2 +Rz ×(cosθ−1)]/sinθ ……(16)
Ry= 0 ……(17)
【0041】
こうして算出された測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRのZ成分Rz,X成分Rx,Y成分Ryに基づいて、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを算出することができる(ステップ109)。
その後は、こうして算出された測定ヘッド10,10a自身の3次元オフセットRを使用して、工作物4を測定ヘッド10,10aで測定することができる(ステップ110)。
【0042】
(第2実施例)
本発明の第2実施例を、図3ないし図6,図10ないし図13を参照して説明する。
図10は、有線式の測定ヘッド10を有する工作物測定装置20が設けられた工作機械1aの斜視図、図11は、無線式の測定ヘッド10aを有する工作物測定装置20aが設けられた工作機械1aの斜視図である。
図12A,図12Bは、レーザ光21の傾き角度α,βからY軸方向のオフセット(Y成分)Ryを算出するための説明図、図13は、レーザ光21の傾き角度α,βを取得する手段を示す説明図である。
なお、第1実施例と同一または相当部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0043】
図10,図11に示す工作機械1aは、刃物台3aがY軸方向に移動しないが、これ以外は、第1実施例の工作機械1と同じ構成である。
工作機械1aにおいて、有線式の測定ヘッド10(または、無線式の測定ヘッド10a)が、移動体としての刃物台3aに取付けられている。
測定ヘッド10,10aは、工作物4に対して、直交3軸方向(X,Y,Z軸方向)のうち、移動しない1軸方向(Y軸方向、すなわち前後方向)以外の直交2軸方向(X,Z軸方向)に相対移動可能である。また、矢印B1に示すように、測定ヘッド10,10aはB軸まわりに旋回可能である。
測定ヘッド10,10aは、3次元オフセットRを含んでおり、工作物4をレーザ光21で測定する。有線式の測定ヘッド10は、刃物台3aに取付けられた筐体19に出退可能に支持され、配線40で電気的に接続されている(図10)。無線式の測定ヘッド10aは、刃物台3aの主軸2に着脱可能に装着されている(図11)。
【0044】
図5,図6,図10ないし図13に示すように、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを取得するためには、刃物台3aとともに測定ヘッド10,10aを所定角度θだけ旋回させる。
そして、任意の位置に設置された基準物(基準球30)を、測定ヘッド10,10aで第1の方向E1と第2の方向E2からそれぞれ測定する。これにより、基準物(基準球30)における固有の特定点(中心点A1)の座標(xc,yc,zc)を、NC装置11から取得する。
【0045】
次いで、測定ヘッド10,10aが基準物(基準球30)の特定点(中心点A1)を第1の方向E1から測定したときの、測定ヘッド10,10aの第1の機械座標P1(x1,y1,z1)を、NC装置11から取得する。
測定ヘッド10,10aが基準物(基準球30)の特定点(中心点A1)を第2の方向E2から測定したときの、測定ヘッド10,10aの第2の機械座標P2(x2,y2,z2)を、NC装置11から取得する。
測定ヘッド10,10aの第1の機械座標P1(x1,y1,z1)と第2の機械座標P2(x2,y2,z2)とにより、測定ヘッド10,10aにおける、移動する直交2軸方向(X軸方向,Z軸方向)の各オフセットRx,Rzを取得する。
このようにして、3次元オフセットRのX成分RxとZ成分Rzは、第1実施例で算出した方法と同じ方法で算出することができる。
【0046】
次いで、所定の手段でレーザ光21の傾き角度α,βを取得する。この場合、X,Z平面におけるレーザ光21の傾き角度αと、X,Y平面におけるレーザ光21の傾き角度βは、たとえば、米国特許US06199024号に記載の方法で算出される。
また他の方法としては、図13に示す下記の手順1から手順5までを実行する方法がある。
(手順1):初めに、ブロックゲージ32を、たとえばタレット7の上部に仮に位置決めしておく。そして、測定ヘッド10,10aを、Z軸方向に関して任意の位置に固定し、X軸方向に走査して、ブロックゲージ32のエッジを検出した位置のX成分を記録する。
(手順2):手順1において、測定ヘッド10,10aを、X軸方向に関して±の両方向から走査して、ブロックゲージ32のエッジを検出した位置の平均値を採る。
(手順3):測定ヘッド10,10aを、Z軸方向に関して次の任意の位置に移動させて、手順2と手順3の操作を行う。
(手順4):手順1ないし手順3で取得されたブロックゲージ32のエッジの検出位置により、レーザ光21のX軸方向の傾きα(X,Z平面における傾きα)を算出する。
(手順5):レーザ光21のY軸方向の傾きβ(すなわち、X,Y平面における傾きβ)についても、手順1ないし手順4の操作を行なって算出する。
こうして、レーザ光21の傾き角度α,βを取得することができる。
【0047】
レーザ光21の傾き角度α,βから、測定ヘッド10,10aにおける、移動しない1軸方向(Y軸方向)のオフセットRyを算出する。
この場合、図12A,図12Bにおいて、測定ヘッド10,10aの、X軸方向のオフセット(すなわち、X成分Rx)とZ軸方向のオフセット(すなわち、Z成分Rz)と、レーザ光21の傾き角度α,βは、すでに算出されている。
したがって、図12Aに示すように、基準位置PaからZ成分Rzの先端の位置n2と、機械座標Pbとのあいだに、交点n1が位置する。よって、交点n1から位置n2までの距離L1と、交点n1から機械座標Pbまでの距離L2が、算出される。
図12Bに示すように、距離L1,L2とX成分Rxとレーザ光21の傾き角度βがすでに取得されている。よって、測定ヘッド10,10aにおける、Y軸方向のオフセット(すなわち、Y成分Ry)を算出することができる。
Z成分Rzと傾き角度α,βから、次式によりY成分Ryを算出することができる。

Ry=(Rz/tanα)× tanβ ……(18)
【0048】
その結果、測定ヘッド10,10aにおける、移動する直交2軸方向(X軸方向,Z軸方向)の各オフセットRx,Rzと、移動しない1軸方向(Y軸方向)のオフセットRyとに基づいて、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを算出することができる。
その後、この測定ヘッド10,10a自身の3次元オフセットRを使用して、工作物4を測定ヘッド10,10aで測定する。
【0049】
本実施例では、測定ヘッド10,10aが、直交3軸方向のうち1軸方向(ここでは、Y軸方向)に移動しない場合であっても、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを算出することができる。
【0050】
第1実施例,第2実施例の工作機械1,1aでは、工作物4が、主軸台5のチャック8に把持されて回転したり、または非回転状態で支持される。なお、この変形例として、旋回可能な刃物台3,3aの下方にテーブルを設け、このテーブルに工作物4を取付ける場合であってもよい。
【0051】
(第3実施例)
本発明の第3実施例を、図3,図14ないし図19を参照して説明する。
図14は、有線式の測定ヘッド10を有する工作物測定装置20が設けられた工作機械101の斜視図、図15は、無線式の測定ヘッド10aを有する工作物測定装置20aが設けられた工作機械101の斜視図である。
図16は、テーブル106を旋回させる前に基準球30を測定している説明図、図17は、テーブル106を旋回させた後に基準球30を測定している説明図、図18は、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットR(Rx,Ry,Rz)を取得する方法の説明図、図19は、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを取得する手順を示すフローチャートである。
なお、第1実施例,第2実施例と同一または相当部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0052】
図3,図14ないし図19において、工作機械101は、テーブル106が旋回中心軸Bのまわりに旋回可能である。工作機械101は、5軸制御の立形マシニングセンタを基本とする5軸加工機であり、工作物4を旋削加工および切削加工可能な複合加工機である。工作機械101は立形マシニングセンタを基本とするが、本発明は、テーブルが旋回する構成であれば横形マシニングセンタにも適用可能である。
【0053】
工作機械101における移動体としての主軸頭105には、配線40で電気的に接続された有線式の測定ヘッド10が取付けられている。有線式の測定ヘッド10は、主軸頭105に取付けられた筐体19に出退可能に支持されている(図14)。
無線式の測定ヘッド10aは、主軸頭105の主軸104に着脱可能に装着されている(図15)。
主軸頭105に取付けられる測定ヘッド10,10aは、テーブル106に取付けられた工作物4をレーザ光21で測定可能であり、3次元オフセットRを含んでいる。
【0054】
5軸制御の工作機械101は、測定ヘッド10,10aと工作物4とを相対的にX軸,Y軸,Z軸の直交3軸方向に直線移動させる3軸制御と、測定ヘッド10,10aと工作物4とを相対的に旋回させて割り出す少なくとも1軸制御(この例では、B軸制御とC軸制御からなる2軸制御)と、を行なっている。
【0055】
工作機械101は、基体102と、基体102上に設置されたコラム103と、コラム103上に設置されたクロスレール107と、クロスレール107に取付けられ、主軸104を有する主軸頭105とを備えている。工作機械101は、NC装置11により制御されている。
コラム103は、基体102上に配置されて、前後の水平方向(Y軸方向)に移動可能である。クロスレール107は、コラム103上に配置されて左右の水平方向(X軸方向)に移動可能である。主軸頭105は、クロスレール107に支持されて、上下方向(Z軸方向)に移動可能になっている。互いに直交するX軸,Y軸およびZ軸により、直交3軸が構成されている。
主軸104には工具18が着脱可能に装着される。主軸104は、その中心軸線がZ軸と平行で且つ中心軸線まわりに回転可能に、主軸頭105に支持されている。
【0056】
基体102上に配置されているコラム103は、Y軸送り機構に駆動されてY軸方向に移動する。コラム103上に配置されているクロスレール107は、X軸送り機構に駆動されてX軸方向に移動する。クロスレール107に支持されている主軸頭105は、Z軸送り機構に駆動されてZ軸方向に移動する。
これにより、測定ヘッド10,10aは、工作物4に対して相対的にX軸,Y軸,Z軸の直交3軸方向に直線移動する。
【0057】
工作機械101のテーブル106は、B軸制御により旋回中心を中心として旋回動作可能で、且つC軸制御により回転可能である。テーブル106は、測定ヘッド10,10aに対して工作物4を、B軸制御,C軸制御により相対的に旋回させて割り出すことができる。B軸はY軸方向と平行であり、C軸はテーブル106の回転中心である。
【0058】
基体102には、矢印Kに示すように、B軸制御により旋回する旋回板109が設けられている。旋回板109には、この旋回板109から前方に突出してテーブル106を支持するテーブル支持台110が固定されている。
テーブル用駆動装置は、テーブル106をB軸制御により旋回させるためのB軸用駆動装置111と、テーブル106をC軸制御により回転させるためのC軸用駆動装置112とを有している。
B軸用駆動装置111を駆動することにより、旋回板109,テーブル支持台110,テーブル106および工作物4などが、B軸制御により旋回するとともに所定の位置に割出される。
C軸用駆動装置112を駆動することにより、工作物4が取付けられたテーブル106が、C軸制御により所望の角度だけ回転して割出され、また、連続的に回転することもできる。
【0059】
旋削加工時には、C軸用駆動装置112を駆動すると、テーブル106と工作物4がC軸制御により回転する。こうして、テーブル106に工作物4が載置されている状態で、工作物4をC軸制御により所定の回転速度で回転させる。これにより、工作物4は、主軸104に装着された工具18で旋削加工される。
一方、主軸104に回転工具18を装着してこの回転工具18で切削加工を行うときには、C軸用駆動装置112を制御して、C軸用駆動装置112でテーブル106上の工作物4をC軸制御により所定位置に割出す。この状態で、テーブル106に載置された工作物4は、主軸104の回転工具18で切削加工される。
【0060】
工作機械101に設けられた工作物測定装置20,20aは、第1実施例にかかる工作機械1と第2実施例にかかる工作機械1aに設けられた工作物測定装置20,20aと同じ構成を有している。
工作物測定装置20,20aおよびこれを使用した工作物測定方法は、主軸頭105に取付けられた測定ヘッド10,10aにより、レーザ光,超音波,熱および電磁波のうちの1つで工作物4を非接触で測定可能である。
【0061】
次に、3次元オフセットRを含む測定ヘッド10,10aにより、テーブル106に取付けられた工作物4をレーザ光21で測定する方法について説明する。
測定ヘッド10,10aで工作物4を測定するとき、レーザ光21の光軸の向きと、光軸上にある基準位置(レーザ光21の焦点)Paから測定ヘッド10,10aの固有の機械座標(たとえば、主軸104の先端)Pbまでの3次元オフセットRが、測定結果の計算に必要になる。
【0062】
そのためには、主軸頭105に取付けられた測定ヘッド10,10aの3次元オフセットR(ベクトル)を取得する必要がある。そこで、最初に、固有の特定点(ここでは、中心点A1)を有する基準物(ここでは、基準球30)を、支持部材31を介してテーブル106上の任意の位置に設置する。
次いで、第1の方向E11を向くテーブル106上の基準物(基準球30)を、測定ヘッド10,10aで測定する。すなわち、測定ヘッド10,10aからレーザ光21を基準球30に照射し、レーザ光21を軌跡Lのように走査させることにより、基準球30を測定する。
これによって、測定ヘッド10,10aの第1の機械座標Pbの点群と、レーザ光21の焦点である基準位置Paからの距離データとを取得する(図3)。
この取得した測定ヘッド10,10aの第1の機械座標Pbの点群と距離データから、実際の基準物(基準球30)における特定点(中心点A1)の座標と、第1の架空の基準物(基準球30f)における第1の特定点(第1の中心点A1a)の座標とを算出する。
【0063】
次いで、テーブル106を、旋回中心O1を中心としてB軸制御により、X,Z平面で所定の角度θだけ旋回させる。
そして、第2の方向E12を向くテーブル106上の基準物(基準球30)を、測定ヘッド10,10aで測定する。すなわち、測定ヘッド10,10aからレーザ光21を基準球30に照射し、レーザ光21を軌跡Lのように走査させることにより、基準球30を測定する。
これにより、測定ヘッド10,10aの第2の機械座標Pbの点群と、レーザ光21の焦点である基準位置Paからの距離データとを取得する(図3)。
この取得した第2の機械座標Pbの点群と距離データから、実際の基準物(基準球30)における特定点(中心点B1)の座標と、第2の架空の基準物(基準球30g)における第2の特定点(第2の中心点B1a)の座標とを算出する(図17)。
【0064】
テーブル106が所定の角度θだけ旋回する前後の、実際の基準物(基準球30)におけるそれぞれの特定点(中心点A1,B1)と、実際の旋回中心O1とにより、実際の三角形Gが形成される。
この実際の三角形G(すなわち、三角形O1,A1,B1)は、辺O1,A1の長さと辺O1,B1の長さとが同じで且つ頂角がθの、二等辺三角形である(図18)。
【0065】
第1の架空の基準物(基準球30f)における第1の特定点(中心点A1a)と、第2の架空の基準物(基準球30g)における第2の特定点(第2の中心点B1a)と、架空の旋回中心O1aとにより、架空の三角形Gaが形成される。
この架空の三角形Ga(すなわち、三角形O1a,A1a,B1a)は、辺O1a,A1aの長さと辺O1a,B1aの長さとが同じで且つ頂角がθの、二等辺三角形である(図18)。
【0066】
実際の三角形Gと架空の三角形Gaとを比較すると、頂角θが同じで、この頂角θを挟む二辺(すなわち辺O1,A1と、辺O1,B1と、辺O1a,A1aと、辺O1a,B1a)は、いずれも同じ長さである。したがって、実際の三角形Gと架空の三角形Gaは、合同である。
こうして、実際の三角形Gと架空の三角形Gaが合同であることに基づいて、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを取得する。
その後、測定ヘッド10,10a自身の3次元オフセットRを使用して、工作物4を測定ヘッド10,10aで測定する。
【0067】
テーブル106が旋回する工作機械101であっても、こうして、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを取得することができる。
また、測定ヘッド10,10aのレーザ光21の傾き角度α,βの情報がなくても、測定ヘッド10,10aの直交3軸方向における3次元オフセットR(Rx ,Ry ,Rz)を取得することができる。
【0068】
次に、工作物測定装置20,20aにおいて、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットRを取得する手順について説明する。
まず最初に、基準球30を、テーブル106上の任意の位置に、支持部材31を介して一時的に載置する(ステップ201)。このとき、設置位置は予め設定されていないので、オペレータは基準球30をテーブル106上に適当の適当な場所に設置すればよい。
無線式の測定ヘッド10aの場合には、ATC16(または、手動)で測定ヘッド10aを主軸104に装着する(ステップ202)。なお、有線式の測定ヘッド10の場合には、このステップ202の手順は不要である。
【0069】
次に、テーブル106を第1の方向E11に向けて位置決めする。そして、主軸頭105を基準球30の上部に手動動作で移動させ、測定ヘッド10,10aを基準球30の真上に位置決めする。測定ヘッド10,10aは、下方を向いて基準球30に対向している(ステップ203)。
こうして第1の方向E11を向いているテーブル106上の基準球30を、測定ヘッド10,10aで測定する。このときの、測定ヘッド10,10aの第1の機械座標Pb(図3)の点群と、基準位置Pa(図3)からの距離データとが、NC装置11から取得される(ステップ204)。図16中の符号Lは、レーザ光21により測定された軌跡であり、たとえば螺旋状をなしている。
こうして取得した測定ヘッド10,10aの第1の機械座標Pbの点群と、基準位置Paからの距離データとを使用して、最小二乗法で、実際の基準球30における中心点A1の座標と、第1の架空の基準球30fにおける第1の中心点A1aの座標とを算出する(ステップ205)。
【0070】
次いで、B軸制御により、テーブル106を、旋回中心O1を中心としてX,Z平面で所定角度θだけ旋回して第2の方向E12に向ける(ステップ206)。
第2の方向E12を向いているテーブル106上の基準球30を、測定ヘッド10,10aで測定する。このときの、測定ヘッド10,10aの第2の機械座標Pbの点群と、基準位置Paからの距離データとが、NC装置11から取得される(ステップ207)。
こうして取得した測定ヘッド10,10aの第2の機械座標Pbの点群と、基準位置Paからの距離データとを使用して、最小二乗法で、実際の基準球30における中心点B1の座標と、第2の架空の基準球30gにおける第2の中心点B1aの座標とを算出する(ステップ208)。
【0071】
架空の三角形Gaが実際の三角形Gと合同であることを利用して、測定ヘッド10,10aの3次元オフセットR(Rx,Ry,Rz)を取得する(ステップ209)。
この場合、テーブル106を角度θだけ旋回させる前の基準球30の中心点A1の座標(X1,Y1,Z1)と、テーブル106を角度θだけ旋回させた後の基準球30の中心点B1の座標(X2,Y2,Z2)と、旋回角度θとにより、旋回中心O1から基準球30の中心点A1までのベクトルO1A1(Rx1,Ry1,Rz1)を算出する。
【0072】
ベクトルO1A1を算出するための式は、下記の通りである。
【数3】

【0073】
テーブル106がX,Z平面で角度θだけ旋回した場合の行列式は、下記の通りである。
【数4】

【0074】
この場合にベクトルO1B1を(Rx1′,Ry1′,Rz1′)とすると、次式(19)ないし(21)が成り立つ。

X2 −X1 =Rx1′−Rx1 =Rx1(cosθ−1)+Rz1(−sinθ) ……(19)
Y2 −Y1 = 0 ……(20)
Z2 −Z1 =Rz1′−Rz1 =Rx1 sinθ+Rz1(cosθ−1) ……(21)
【0075】
2つの式(19),(21)では未知数はRx1,Rz1だけになり、また、テーブル106はX,Z平面で旋回するので、ベクトルO1A1のY成分Ry1はゼロである。その結果、2つの式(19),(21)からベクトルO1A1を算出することができる。
次いで、旋回中心O1から、テーブル106が旋回する前の第1の架空の基準球30fの中心点A1aまでの、ベクトルO1A1aを算出する。
算出したベクトルO1A1aから上述のベクトルO1A1を引くことにより、測定ヘッド10,10aにおける3次元オフセットR(すなわち、ベクトルA1A1a)を算出することができる。この算出のための計算式は下記の通りである。
【数5】

【0076】
こうして算出した測定ヘッド10,10a自身の3次元オフセットR(Rx,Ry,Rz)を使用して、工作物4を測定ヘッド10,10aで測定する(ステップ210)。
【0077】
次に、第3実施例の変形例(図示せず)にかかる工作物測定方法を説明する。
この方法では、第2実施例と第3実施例の各手順を組み合わせている。工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドは、工作物に対して、直交3軸方向のうち移動しない1軸方向以外の直交2軸方向に相対移動可能で且つ旋回可能である。テーブルは、旋回中心のまわりに旋回可能である。3次元オフセットを含む測定ヘッドにより、工作物をレーザ光で測定する。
【0078】
この方法では、第3実施例で説明したように、固有の特定点を有する基準物をテーブル上の任意の位置に設置する。そして、第1の方向を向くテーブル上の基準物を測定ヘッドで測定することによって、この測定ヘッドの第1の機械座標の点群と、レーザ光の焦点である基準位置からの距離データとを取得する。
この取得した点群と距離データから、実際の基準物における特定点の座標と、第1の架空の基準物における第1の特定点の座標とを算出する。
【0079】
次いで、テーブルを旋回中心を中心として所定角度旋回させる。第2の方向を向くテーブル上の基準物を測定ヘッドで測定する。これにより、測定ヘッドの第2の機械座標の点群と、基準位置からの距離データとを取得する。
この取得した点群と距離データから、実際の基準物における特定点の座標と、第2の架空の基準物における第2の特定点の座標とを算出する。
第1の架空の基準物における第1の特定点と、第2の架空の基準物における第2の特定点と、架空の旋回中心とにより形成される架空の三角形が、テーブルが所定角度旋回する前後の実際の基準物におけるそれぞれの特定点と、実際の旋回中心とにより形成される実際の三角形と合同であることに基づいて、測定ヘッドにおける移動する直交2軸方向の各オフセットを取得する。
【0080】
第2実施例で説明したように、所定の手段でレーザ光の傾き角度を取得し、このレーザ光の傾き角度から、測定ヘッドにおける移動しない1軸方向のオフセットを算出する。
測定ヘッドにおける、移動する直交2軸方向の各オフセットと、移動しない1軸方向のオフセットとに基づいて、測定ヘッドの3次元オフセットを算出する。その後、この測定ヘッド自身の3次元オフセットを使用して、工作物を測定ヘッドで測定する。
【0081】
(第4実施例)
第4実施例にかかる工作物測定方法において、工作機械は、工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッド10,10a,10bが、工作物に対して直交3軸方向(または、直交2軸方向)に相対移動可能で且つ旋回でき、テーブルが旋回中心のまわりに旋回可能である。そして、3次元オフセットRを含む測定ヘッドにより、工作物をレーザ光21で測定する。
この方法は、第1実施例,第2実施例および第3実施例にかかる方法の各手順単独により(または、これらの手順を複数組合わせることにより)、測定ヘッドにおける前記移動する直交2軸方向の各オフセットを取得する。次いで、第2実施例または第3実施例にかかる方法における各手順により、測定ヘッドにおける残りの1軸方向のオフセットを取得する。
そして、測定ヘッドにおける、前記移動する直交2軸方向の各オフセットと、前記残りの1軸方向のオフセットとに基づいて、測定ヘッドの3次元オフセットRを算出する。その後、この測定ヘッド自身の3次元オフセットRを使用して、工作物を測定ヘッドで測定する。
【0082】
上述の第1実施例ないし第4実施例で説明した工作物測定装置20,20aは、工作機械に取付けられる測定ヘッド10,10a,10bで工作物4を測定し、その前またはその後に、主軸に装着された工具18で工作物4を加工することができる。
したがって、タッチセンサやダイヤルゲージなど計測器を別途使用しなくても、また、基準球30など基準物を任意の位置に設置するだけで、測定ヘッド10,10a,10bが本来有している測定機能を有効利用して、測定ヘッド10,10a,10b自身の3次元オフセットRを取得して、工作物4を測定ヘッド10,10a,10bで測定することができる。
【0083】
各実施例では、測定ヘッド10,10a,10bは工作機械の移動体に取り付けられている。
変形例として、測定ヘッドが取付けられた工作機械の部材(たとえば、主軸頭)が移動せず、この部材は、テーブルが移動することでテーブル上の工作物に対して相対的に移動する工作機械でもよい。その結果、この部材に取付けられた測定ヘッドは、テーブルが移動することで工作物に対して相対的に座標移動する。
また、基準物が設置される「任意の位置」は、回転軸を回転させると測定ヘッドに対して相対的に旋回する位置で、且つ測定ヘッドで基準物を計測可能な位置である。
【0084】
工具18は工具マガジンに収納可能である。NC装置11で制御されるATC16により、工具18は、主軸に対して自動的に交換されるとともに着脱可能である。したがって、主軸に装着された工具18で工作物4を加工する工程の前に(または、加工工程の途中に、もしくは加工工程後に)、測定ヘッド10,10a,10bで工作物4を測定する工程を設けることができる。
こうすれば、加工動作と測定動作が、順番にまたはこれとは逆の順に連続する。すなわち、加工動作と測定動作とを、任意の組合せで実行することが可能である。
その結果、測定のために工作物4をチャック8やテーブル106から取り外さなくても、工作物4を加工したのちチャック8やテーブル106に取付けたままで直ちに、工作物4を2次元測定または3次元測定することができる。
また、加工前の工作物4を測定した後に、工作物4を取付けたままでこの工作物4を加工する動作に移行することもできる。さらに、工作物4を加工後に測定した後に、工作物4を取付けたままで再び工作物4を加工する動作に移行することもできる。
【0085】
測定ヘッド10,10aは、測定指令を受けると、測定ヘッド10,10aから工作物4までの距離を測定することにより、この工作物4を非接触で測定する。
測定動作の際に、測定ヘッド10,10aは工作物4に接触しないので、測定ヘッド10,10aを高速で安全に且つ振動なし(または、低振動)で走査して、工作物4を短時間で広い範囲を測定することができる。
【0086】
以上、本発明の実施例(変形例を含む。以下同じ)を説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明にかかる工作機械における工作物測定方法およびその装置は、マシニングセンタと複合加工機の他に、旋盤,研削盤などの工作機械に適用して、有線式または無線式の測定ヘッドにより非接触で(または、接触して)工作物を測定できる。
【符号の説明】
【0088】
1,1a,101 工作機械
4 工作物
10 有線式の測定ヘッド
10a 無線式の測定ヘッド
10b 測定ヘッド(接触形の測定ヘッド)
20,20a 工作物測定装置
21 レーザ光
22 接触子
30 基準球(基準物)
30a 多角錐(基準物)
30b 直方体(基準物)
30f 第1の架空の基準球(基準物)
30g 第2の架空の基準球(基準物)
106 テーブル
A1 中心点(特定点)
A1a 第1の中心点(特定点)
A2 頂点(特定点)
A3 頂点(特定点)
B1a 第2の中心点(特定点)
E1 ,E11 第1の方向
E2 ,E12 第2の方向
G 実際の三角形
Ga 架空の三角形
O1 旋回中心
O1a 架空の旋回中心
P1 第1の機械座標
P2 第2の機械座標
Pa 基準位置
R 3次元オフセット
X,Y,Z 直交3軸
α レーザ光の傾き角度
β レーザ光の傾き角度
θ 所定角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドが、工作物に対して直交3軸方向または直交2軸方向に相対移動可能で、且つ1軸以上の旋回軸により前記工作物に対する相対角度方向を変化させることができる前記工作機械において、3次元オフセットを含む前記測定ヘッドで前記工作物を測定する方法であって、
任意の位置に設置された基準物を、前記測定ヘッドで前記相対角度方向を変化させながら複数回にわたって測定し、
この相対角度方向から測定された前記直交3軸方向の測定結果の変化から、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを算出し、
その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定するようにしたことを特徴とする工作機械における工作物測定方法。
【請求項2】
工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドが、工作物に対して直交3軸方向または直交2軸方向に相対移動可能で且つ旋回可能な前記工作機械において、3次元オフセットを含む前記測定ヘッドで前記工作物を測定する方法であって、
前記測定ヘッドを所定角度旋回させて、任意の位置に設置された基準物を前記測定ヘッドで第1の方向と第2の方向からそれぞれ測定することによって、前記基準物における固有の特定点の座標を取得し、
前記測定ヘッドが前記基準物の前記特定点を前記第1の方向から測定したときの前記測定ヘッドの第1の機械座標と、前記測定ヘッドが前記基準物の前記特定点を前記第2の方向から測定したときの前記測定ヘッドの第2の機械座標とに基づいて、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを算出し、
その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定するようにしたことを特徴とする工作機械における工作物測定方法。
【請求項3】
工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドが、工作物に対して、直交3軸方向のうち移動しない1軸方向以外の直交2軸方向に相対移動可能で且つ旋回可能な前記工作機械において、3次元オフセットを含む前記測定ヘッドにより、前記工作物をレーザ光で測定する方法であって、
前記測定ヘッドを所定角度旋回させて、任意の位置に設置された基準物を前記測定ヘッドで第1の方向と第2の方向からそれぞれ測定することによって、前記基準物における固有の特定点の座標を取得し、
前記測定ヘッドが前記基準物の前記特定点を前記第1の方向から測定したときの前記測定ヘッドの第1の機械座標と、前記測定ヘッドが前記基準物の前記特定点を前記第2の方向から測定したときの前記測定ヘッドの第2の機械座標とにより、前記測定ヘッドにおける前記移動する直交2軸方向の各オフセットを取得し、
所定の手段で前記レーザ光の傾き角度を取得し、このレーザ光の傾き角度から、前記測定ヘッドにおける前記移動しない1軸方向のオフセットを算出し、
前記測定ヘッドにおける、前記移動する直交2軸方向の前記各オフセットと、前記移動しない1軸方向の前記オフセットとに基づいて、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを算出し、
その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定するようにしたことを特徴とする工作機械における工作物測定方法。
【請求項4】
テーブルが旋回中心のまわりに旋回可能な工作機械において、この工作機械に取付けられるとともに3次元オフセットを含む有線式または無線式の測定ヘッドにより、前記テーブルに取付けられた工作物をレーザ光で測定する方法であって、
固有の特定点を有する基準物を前記テーブル上の任意の位置に設置し、
第1の方向を向く前記テーブル上の前記基準物を前記測定ヘッドで測定することによって、この測定ヘッドの第1の機械座標の点群と、前記レーザ光の焦点である基準位置からの距離データとを取得し、
この取得した点群と距離データから、実際の前記基準物における前記特定点の座標と、第1の架空の基準物における第1の特定点の座標とを算出し、
次いで、前記テーブルを前記旋回中心を中心として所定角度旋回させ、
第2の方向を向く前記テーブル上の前記基準物を前記測定ヘッドで測定することによって、前記測定ヘッドの第2の機械座標の点群と、前記基準位置からの距離データとを取得し、
この取得した点群と距離データから、実際の前記基準物における前記特定点の座標と、第2の架空の基準物における第2の特定点の座標とを算出し、
前記第1の架空の基準物における前記第1の特定点と、前記第2の架空の基準物における前記第2の特定点と、架空の旋回中心とにより形成される架空の三角形が、前記テーブルが前記所定角度旋回する前後の実際の前記基準物におけるそれぞれの前記特定点と、実際の前記旋回中心とにより形成される実際の三角形と合同であることに基づいて、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを取得し、
その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定するようにしたことを特徴とする工作機械における工作物測定方法。
【請求項5】
工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドが、工作物に対して、直交3軸方向のうち移動しない1軸方向以外の直交2軸方向に相対移動可能で且つ旋回可能で、テーブルが旋回中心のまわりに旋回可能な前記工作機械において、3次元オフセットを含む前記測定ヘッドにより、前記工作物をレーザ光で測定する方法であって、
固有の特定点を有する基準物を前記テーブル上の任意の位置に設置し、
第1の方向を向く前記テーブル上の前記基準物を前記測定ヘッドで測定することによって、この測定ヘッドの第1の機械座標の点群と、前記レーザ光の焦点である基準位置からの距離データとを取得し、
この取得した点群と距離データから、実際の前記基準物における前記特定点の座標と、第1の架空の基準物における第1の特定点の座標とを算出し、
次いで、前記テーブルを前記旋回中心を中心として所定角度旋回させ、
第2の方向を向く前記テーブル上の前記基準物を前記測定ヘッドで測定することによって、前記測定ヘッドの第2の機械座標の点群と、前記基準位置からの距離データとを取得し、
この取得した点群と距離データから、実際の前記基準物における前記特定点の座標と、第2の架空の基準物における第2の特定点の座標とを算出し、
前記第1の架空の基準物における前記第1の特定点と、前記第2の架空の基準物における前記第2の特定点と、架空の旋回中心とにより形成される架空の三角形が、前記テーブルが前記所定角度旋回する前後の実際の前記基準物におけるそれぞれの前記特定点と、実際の前記旋回中心とにより形成される実際の三角形と合同であることに基づいて、前記測定ヘッドにおける前記移動する直交2軸方向の各オフセットを取得し、
所定の手段で前記レーザ光の傾き角度を取得し、このレーザ光の傾き角度から、前記測定ヘッドにおける前記移動しない1軸方向のオフセットを算出し、
前記測定ヘッドにおける、前記移動する直交2軸方向の前記各オフセットと、前記移動しない1軸方向の前記オフセットとに基づいて、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを算出し、
その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定するようにしたことを特徴とする工作機械における工作物測定方法。
【請求項6】
工作機械に取付けられる有線式または無線式の測定ヘッドが、工作物に対して直交3軸方向または直交2軸方向に相対移動可能で且つ旋回でき、テーブルが旋回中心のまわりに旋回可能な前記工作機械において、3次元オフセットを含む前記測定ヘッドにより前記工作物をレーザ光で測定する方法であって、
請求項2,3または4に記載の前記各手順単独により、またはこれらの手順を複数組合わせることにより、前記測定ヘッドにおける前記移動する直交2軸方向の各オフセットを取得し、
請求項3または4に記載の前記各手順により、前記測定ヘッドにおける残りの1軸方向のオフセットを取得し、
前記測定ヘッドにおける、前記移動する直交2軸方向の各オフセットと、前記残りの1軸方向のオフセットとに基づいて、前記測定ヘッドの前記3次元オフセットを算出し、
その後、この測定ヘッド自身の前記3次元オフセットを使用して、前記工作物を前記測定ヘッドで測定するようにしたことを特徴とする工作機械における工作物測定方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかの項に記載の工作機械における工作物測定方法であって、
前記測定ヘッドは、前記工作物を非接触で測定する機能と、前記工作物に接触子が接触して測定する機能の、いずれか一方または両方の機能を有することを特徴とする工作機械における工作物測定方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかの項に記載の測定方法により前記測定ヘッドで前記工作物を測定することを特徴とする工作機械における工作物測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−257302(P2011−257302A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133077(P2010−133077)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】