説明

常閉型電磁弁および車両用ブレーキ液圧制御装置

【課題】耐久性に優れ良好なシール性を得る常閉型電磁弁および車両用ブレーキ液圧制御装置を提供する。
【解決手段】弁体64およびシート部62aの少なくとも一方は弾性部材を含んで構成されており、さらに、可動コア63と弁座部材62との対向部位には、規制部64A,64Bと、この規制部64A,64Bに対向する受け部(弁座部材62の上面)とが設けられており、規制部64A,64Bは、着座時に受け部に当接して可動コア63の移動を規制するとともに、可動コア63と弁座部材62との間を密着する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常閉型電磁弁および車両用ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ブレーキ液圧制御装置として、特許文献1に開示されたものが知られている。
この車両用ブレーキ液圧制御装置では、主に、マスタシリンダ側から車輪ブレーキのホイールシリンダ(以下、単に車輪ブレーキと称することがある)へのブレーキ液圧の伝達を許容する入口弁と、車輪ブレーキ内の液圧を逃がす出口弁と、出口弁の開放により逃がされたブレーキ液圧を吸収するリザーバ等を主に備えており、ポンプを有さない液圧回路となっている。そして、この車両用ブレーキ液圧制御装置では、ブレーキレバーを操作して車輪ブレーキにブレーキ液圧が作用している状態において、車輪がロックしそうになると、アンチロックブレーキ制御が行われる。
【0003】
そして、アンチロックブレーキ制御において、ブレーキ液圧を減圧させる減圧制御が実行されると、入口弁が閉弁し、出口弁が開弁する。このようにすると、入口弁よりも車輪ブレーキ側にあるブレーキ液がリザーバに流入することになるので、車輪ブレーキに作用していたブレーキ液圧が減圧することになる。
【0004】
ところで、一般に、車両用ブレーキ液圧制御装置に用いられる出口弁では、シール部分にメタルシールを採用してシール性の向上を図っているが、シール性のさらなる向上を図りたいという要望があった。
【0005】
一方、シール部分に弾性部材を用いてシール性を高めた電磁弁も開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−207739号公報
【特許文献2】特開2006−153207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記した特許文献2の電磁弁では、弁部のストローク規制を弾性部材からなるシール部分で行っている。このため、高圧の作動液が作用した場合や弁部のストローク時に生じる衝撃によって、シール部分が変形する虞があった。
【0008】
本発明は、耐久性に優れ良好なシール性を得ることができる常閉型電磁弁および車両用ブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために創案された本発明の常閉型電磁弁は、貫通した収容空間を有するボディ部材と、前記ボディ部材の一端側に固着された固定コアと、前記ボディ部材の他端側に固着された弁座部材と、前記固定コアと前記弁座部材との間の前記収容空間内に摺動可能に組み込まれた可動コアと、前記可動コアの前記弁座部材側に設けられた弁体と、前記弁座部材に形成され、前記弁体が着座可能なシート部と、を備え、前記可動コアが付勢手段により前記弁座部材側に付勢されて移動することで前記弁体が前記シート部に着座し、コイルユニットへの通電により前記固定コアが励磁されて前記可動コアが前記固定コア側に移動することで前記弁体が前記シート部から離座する常閉型電磁弁であって、前記弁体および前記シート部の少なくとも一方は弾性部材を含んで構成されており、前記可動コアと前記弁座部材との対向部位には、規制部と、この規制部に対向する受け部とが設けられており、前記規制部は、前記着座時に前記受け部に当接して前記可動コアの移動を規制するとともに、前記可動コアと前記弁座部材との間を密着することを特徴とする。
【0010】
かかる常閉型電磁弁によると、弁体およびシート部の少なくとも一方は弾性部材を含んで構成されているので、シール性に優れ、作動液の漏れに対する信頼性の向上を図ることができる。
また、可動コアと弁座部材との対向部位には、規制部と、この規制部に対向する受け部とが設けられており、規制部は、着座時に受け部に当接して可動コアの移動を規制するとともに、可動コアと弁座部材との間を密着するようになっているので、シート部に対して弁体が必要以上に強く当接することがなくなり、弁体は、着座時に、シート部に対して所定の当接力をもって当接することとなる。
これによって、高圧の作動液圧が作用した場合や、弁体のストローク時(移動時)に衝撃が生じたとしても、弾性部材を含んで構成される部分が変形することがなくなり、耐久性に優れる。したがって、長期に亘って良好なシール性を確保することができる。
【0011】
また、本発明は、前記弁体は、前記シート部に着座可能な環状の突出部を備えて構成されているので、シール性の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明は、前記シート部は、前記弁座部材に形成された弁孔の開口縁をテーパ状に面取りしてなり、前記弁体は、前記シート部に着座可能な突出部を備えて構成されているのがよい。
【0013】
かかる常閉型電磁弁によると、弁座部材に形成された弁孔の開口縁をテーパ状に面取りしてなるシート部に、着座可能な突出部を備えて弁体が構成されているので、シール性の向上を図ることができる。
また、弁孔の開口縁を囲むようにしてシールする構造に比べてシール面積が小さくなる。したがって、着座に必要な推力を抑えることができコイルユニットの消費電力の低減を図ることができる。
【0014】
また、本発明は、前記シート部は、前記弁座部材に形成された弁孔の開口縁をテーパ状に面取りしてなり、前記弁体は、球状の剛性体を含んで、表面に弾性部材が被覆されており、前記剛性体は、前記着座時に弾性部材を介して前記シート部に当接し、前記規制部として機能するように構成するのがよい。
【0015】
かかる常閉型電磁弁によると、弁座部座に形成された弁孔の開口縁をテーパ状に面取りしてなるシート部に、球状の剛性体の表面に弾性部材が被覆された弁体が着座するようになっているので、着座時にはシート部に弾性部材が密着するようになり、シール性が良好である。
また、弁体は、規制部として機能する球状の剛性体を備えているので、着座時には、可動コアの移動が規制されるとともに、可動コアと弁座部材との間が弾性部材を介して間接的に密着する状態となる。したがって、シール性に優れ、耐久性に優れた常閉型電磁弁が得られる。
また、弁孔の開口縁を囲むようにしてシールする構造に比べてシール面積が小さくなる。したがって、着座に必要な推力を抑えることができコイルユニットの消費電力の低減を図ることができる。
【0016】
また、本発明の車両用ブレーキ液圧制御装置は、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に配置され、制御手段によってアンチロックブレーキ制御時に制御可能な入口弁および出口弁と、前記出口弁と前記マスタシリンダに設けられた大気開放型のタンクとの間を接続する開放路と、を備え、前記開放路には、常閉型電磁弁が配置されており、前記出口弁を通じて逃がされた作動液が、前記制御手段によって開弁制御された前記常閉型電磁弁を通じて前記タンクに戻される車両用ブレーキ液圧制御装置であって、常閉型電磁弁に前記常閉型電磁弁を用いたことを特徴とする。
【0017】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によると、開放路には、前記常閉型電磁弁が設けられているので、必要に応じて、開放路を遮断あるいは開放することができるとともに、開放路のシール性を向上させることができる。このことは車両用ブレーキ液圧制御装置の耐久性の向上に寄与する。
これによって、例えば、アンチロックブレーキ制御の減圧制御時には、常閉型電磁弁を開放することによって、出口弁を通じて逃がされた作動液を、開放路を通じてマスタシリンダに直接戻すことができる。したがって、制御の自由度を高めることができる。
また、通常のブレーキ時には、常閉型電磁弁を閉弁状態にして、開放路を閉塞状態にすることができる。
したがって、通常のブレーキ時において、仮に、出口弁から開放路に作動液が流出するような事態が生じたとしても、閉弁状態とされた常閉型電磁弁によって開放路の閉塞状態が好適に確保され、作動液が開放路を通じてマスタシリンダに戻るのを阻止することができる。
これによって、開放路の閉塞状態が良好に確保され、最低必要な制動力を確保することができ、フェールセーフ機能を好適に実現することができる。
【0018】
また、本発明は、前記制御手段が、アンチロックブレーキ制御中に前記常閉型電磁弁を開弁制御し続け、アンチロックブレーキ制御終了時に前記常閉型電磁弁を閉弁制御する構成とするのがよい。
【0019】
かかる車両用ブレーキ液圧制御装置によれば、アンチロックブレーキ制御が開始されると、常閉型電磁弁が開弁制御され、制御中は開弁制御され続けるので、常閉型電磁弁の作動回数が少なくなり、耐久性に優れる。したがって、長期的に安定したアンチロックブレーキ制御の実現が可能となる。
【0020】
また、アンチロックブレーキ制御中は、常閉型電磁弁が開弁制御され続けることとなるが、常閉型電磁弁に対してブレーキ液圧が作用するのは減圧制御時のみであり、さらに、開弁状態を保持するためには、例えば、常閉型電磁弁の構成部品として備わる可動コアの重量や、ソレノイド内のスプリング荷重を保持するための電磁力を発生させるための電流を考慮すればよいので、コイルユニットの消費電力が少なくて済む。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る車両用ブレーキ液圧制御装置によると、耐久性に優れ良好なシール性を得ることができる常閉型電磁弁および車両用ブレーキ液圧制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図2】マスタシリンダの構造を示す拡大断面図である。
【図3】第1実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置に適用される制御装置のブロック構成図である。
【図4】第1実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置の開放路用電磁弁として適用される常閉型電磁弁の開弁状態を示す断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、可動コアが下方向に移動する際の様子を示す要部拡大図である。
【図6】第2実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置の開放路用電磁弁として適用される常閉型電磁弁の開弁状態を示す断面図である。
【図7】(a)〜(c)は、可動コアが下方向に移動する際の様子を示す要部拡大図である。
【図8】第3実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置の開放路用電磁弁として適用される常閉型電磁弁の開弁状態を示す断面図である。
【図9】(a)〜(c)は、可動コアが下方向に移動する際の様子を示す要部拡大図である。
【図10】第4実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置の開放路用電磁弁として適用される常閉型電磁弁の断面図である。
【図11】第5実施形態の車両用ブレーキ液圧制御装置の開放路用電磁弁として適用される常閉型電磁弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
参照する図面において、図1は本発明の第1実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ制御装置」という。)Uは、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)、自動四輪車などの車両に好適に用いられるものであり、車両の車輪に付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御する。以下においては、ブレーキ制御装置Uを自動二輪車に適用した例について説明するが、ブレーキ制御装置Uが搭載される車両を限定する趣旨ではない。
【0025】
ブレーキ制御装置Uは、前輪側のブレーキ系統K1および後輪側のブレーキ系統K2を備えて構成される。前輪側のブレーキ系統K1は、ブレーキレバーL1の操作に応じて前輪の車輪ブレーキFを制動するものであり、車輪ブレーキFに付与する制動力を制御手段としての制御装置7により適宜制御することによって、車輪ブレーキFのアンチロックブレーキ制御が可能になっている。後輪側のブレーキ系統K2は、ブレーキレバーL2の操作で車輪ブレーキRが直接作動されるコンベンショナルブレーキとして構成されている。
【0026】
以下、図1に示すブレーキ液圧回路を詳細に説明する。
ブレーキ系統K1は、マスタシリンダMC1に通じる入口ポートJ1から出口ポートJ2に至る流路を備えている。また、マスタシリンダMC1の戻し口11bに通じる開放ポートJ3を備えている。なお、マスタシリンダMC1と入口ポートJ1との間は、配管H1で接続され、出口ポートJ2は、配管H2を通じて前輪の車輪ブレーキF(車輪ブレーキFの図示しないホイールシリンダ)に接続されている。また、開放ポートJ3と戻し口11bとの間は、配管H3で接続されている。
【0027】
マスタシリンダMC1は、作動液としてのブレーキ液を貯蔵するオイルリザーブタンク10Aが接続されたシリンダ10を有しており、シリンダ10内にはブレーキレバーL1の操作によりシリンダ10の軸方向へ摺動してブレーキ液を流出するピストン11が組み付けられている。
ピストン11の外周には、図2に示すように、その軸方向に間隔をあけて並ぶ一対のカップシール12、13が装着されており、これらのカップシール12、13は、シリンダ10の内周面に摺動自在に密接する。
カップシール12とシリンダ10の端壁との間には、油圧室14が形成され、この油圧室14にピストン11を後退方向(図中右方向)へ付勢する戻しばね15が縮設されている。油圧室14には、ブレーキ液の出入口15aが形成されている。出入口15aには、配管H1が接続されている。
【0028】
また、両カップシール12、13間には、ピストン11の外周に環状の補給油室11aが形成されている。そしてこの補給油室11aに連通するように、ブレーキ液の戻し口11bが形成されている。戻し口11bには、配管H3が接続されている。
シリンダ10とオイルリザーブタンク10Aとの間には、ピストン11が最後退位置に位置するときに、カップシール12の直前で油圧室14およびオイルリザーブタンク10A間を連通するリリーフポート16と、ピストン11の進退動にかかわらず、常に、補給油室11aおよびオイルリザーブタンク10A間を連通するサプライポート17とが設けられている。
【0029】
これによって、ピストン11が最後退位置に位置するとき、油圧室14の圧力は、リリーフポート16を介してオイルリザーブタンク10A内に開放されているが、ブレーキレバーL1の操作によりピストン11が前進駆動され、カップシール12がリリーフポート16を横切ると、油圧室14に油圧を発生させることができる。また、ピストン11の後退時に油圧室14が補給油室11aの圧力以下に減圧すると、両室の圧力差によってカップシール12の外周リップ部が収縮し、ピストン11の左端部外周部を通して、補給油室11aから油圧室14へブレーキ液が流入する。これによって、ブレーキ液の補給が行われる。
【0030】
また、シリンダ10には、ストッププレート18、ダストブーツ19等が組み付けられている。また、オイルリザーブタンク10Aの底部には、オイルリザーブタンク10Aの内部で波立により気泡が発生したときに、その気泡がシリンダ内に入るのを防止するプロテクタ20が組み付けられ、オイルリザーブタンク10Aの上部開口には、ねじ孔21aに螺着されるねじ21によりダイヤフラム22を介してリザーバキャップ23が固着される。
【0031】
次に、図1を参照して、ブレーキ系統K1について説明する。
ブレーキ系統K1は、前輪制御弁部1と、チェック弁5と、リザーバ4(減圧用のリザーバ)と、開放路用電磁弁(常閉型電磁弁(開放弁))6と、制御装置7と、を備えている。前輪制御弁部1は、入口弁2と、出口弁3と、チェック弁2aとを備えている。
【0032】
なお、ここでは、入口ポートJ1から入口弁2に至る流路(油路)を「出力液圧路D1」と称し、入口弁2から出口ポートJ2に至る流路を「車輪液圧路E1」と称し、車輪液圧路E1から出口弁3を通じてリザーバ4に至り、リザーバ4から開放路用電磁弁6を通じて開放ポートJ3に至る流路を「開放路Q1」と称し、開放路Q1からチェック弁5を通じて出力液圧路D1に至る流路を「戻り路T1」と称する。
【0033】
前輪制御弁部1は、車輪液圧路E1を開放(入口弁2が開)しつつ開放路Q1を遮断(出口弁3が閉)する状態(通常ブレーキ時、あるいはアンチロックブレーキ制御における増圧制御時)、車輪液圧路E1を遮断(入口弁2が閉)しつつ開放路Q1を開放(出口弁3が開)する状態(アンチロックブレーキ制御における減圧制御時)、および車輪液圧路E1と開放路Q1とを遮断(入口弁2、出口弁3が閉)する状態(アンチロックブレーキ制御における保持制御時)を切り換える機能を有している。
【0034】
入口弁2は、出力液圧路D1と車輪液圧路E1との間に介設された常開型電磁弁である。入口弁2は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMC1からのブレーキ液圧が出力液圧路D1から車輪液圧路E1を通じて車輪ブレーキFへ伝達するのを許容している。
また、入口弁2は、前輪がロックしそうになったときに制御装置7の制御により閉塞されることで、マスタシリンダMC1からのブレーキ液圧が出力液圧路D1から車輪液圧路E1を通じて車輪ブレーキFへ伝達するのを遮断する。
【0035】
出口弁3は、車輪液圧路E1と開放路Q1との間に介設された常閉型電磁弁である。出口弁3は、通常時に閉塞されているが、前輪がロックしそうになったときに制御装置7の制御により開放されることで、車輪ブレーキFに作用するブレーキ液圧を車輪液圧路E1から開放路Q1に逃がす(アンチロックブレーキ制御における減圧制御時)。これにより、開放路Q1に逃がされたブレーキ液は、リザーバ4へ一時的に流入しつつ、開放路Q1(開弁した開放路用電磁弁6)を通じてマスタシリンダMC1に戻される。
【0036】
チェック弁2aは、入口弁2に並列に接続されている。このチェック弁2aは、車輪ブレーキF側からマスタシリンダMC1側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、ブレーキレバーL1からの入力が解除された場合に、入口弁2を閉じた状態にしたときにおいても、車輪ブレーキF側からマスタシリンダMC1側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0037】
リザーバ4は、開放路Q1に設けられており、出口弁3が開放されることによって車輪液圧路E1から逃がされるブレーキ液を一時的に貯溜する機能を有している。リザーバ4に一時的に貯溜されたブレーキ液は、開放路Q1を通じてマスタシリンダMC1に戻される。
【0038】
チェック弁5は、戻り路T1に設けられた一方向弁である。チェック弁5は、開放路Q1側からマスタシリンダMC1側へのブレーキ液の流入のみを許容し、ブレーキレバーL1からの入力が解除された場合に、リザーバ4側からマスタシリンダMC1側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0039】
開放路用電磁弁6は、開放路Q1に設けられた常閉型電磁弁である。開放路用電磁弁6は、通常時に閉塞されているが、前輪がロックしそうになったときに(アンチロックブレーキ制御時に)制御装置7の制御によって開放される。これによって、出口弁3を通じて開放路Q1に逃がされたブレーキ液がマスタシリンダMC1に戻される。
本実施形態では、この開放路用電磁弁6に、弁体64(図4参照)が弾性部材を含んで構成される常閉型電磁弁を採用している。開放路用電磁弁6の詳細な説明は後記する。
【0040】
一方、第2のブレーキ系統K2は、前記したように後輪を制動するためのものであり、液圧源であるマスタシリンダMC2から配管H4を通じて後輪の車輪ブレーキRに接続されている。
これによって、ブレーキレバーL2を操作するとマスタシリンダMC2からのブレーキ液圧が車輪ブレーキRに直接作用するようになっている。
なお、第2のブレーキ系統K2は、配管H4に代えてワイヤーを用い、ブレーキレバーL2の操作力がワイヤーを介して車輪ブレーキRに直接伝達されるように構成してもよい。
【0041】
制御装置7には、図示しない車輪に付設された車輪速度センサからの計測値W、Wが入力され、制御装置7は、ブレーキ系統K1の各機器の作動を制御する。
制御装置7は、図3に示すように、マスタシリンダ圧MPを推定するマスタシリンダ圧推定部73と、車輪ブレーキFのブレーキ液圧を推定する車輪ブレーキ圧推定部74と、車輪ブレーキFから抜いたブレーキ液の流量を推定する流量推定部75と、マスタシリンダ圧MPと車輪ブレーキ圧との差圧を推定する差圧推定部76と、車輪ブレーキFに接続された車輪にスリップ状態が発生しているか否かを判断する判断部77と、ブレーキ制御部78と、とを備えている。
【0042】
マスタシリンダ圧推定部73は、公知の方法によりマスタシリンダMC1の液圧を推定する。推定方法としては、例えば、ブレーキ開始時に車輪の各車輪速センサ71、72がそれぞれ出力した車輪速度W,Wを入力し、これらと前後の車輪の減速度との関係から、路面摩擦係数別に作られた図示しないマップ等に基づいてマスタシリンダ圧MPを推定する方法等がある。なお、マスタシリンダ圧MPは、図示しない圧力センサをマスタシリンダMC1からの流路に設けて検出するようにしてもよいし、また、ブレーキレバーL1のストロークを検出する図示しないストロークセンサを設けて、このストロークセンサと予め関連付けられたマップからマスタシリンダ圧MPを推定するようにしてもよい。
マスタシリンダ圧推定部73で推定された推定液圧は、差圧推定部76およびブレーキ制御部78に出力される。
【0043】
車輪ブレーキ圧推定部74は、公知の方法により車輪ブレーキFの液圧を推定する。推定方法としては、例えば、車輪の減速度の変化量に応じて推定液圧を求める方法等がある。この場合、車輪の減速度の変化量と所定の閾値との差分に応じて、減速度に所定値を乗じたものに、所定の定数を加えることで推定液圧を得ることができる。
車輪ブレーキ圧推定部74で推定された推定液圧は、差圧推定部76およびブレーキ制御部78に出力される。
【0044】
流量推定部75は、減圧制御時に、前輪用の車輪速センサ71の出力信号を受けて計算した前輪の車輪速度の変化量から、車輪ブレーキFから逃がされたブレーキ液の液量を推定する。推定方法としては、例えば、減圧制御開始時からの減圧制御の時間と、そのときの推定マスタシリンダ圧との関係よりブレーキ液の流量を推定する方法等がある。
流量推定部75は、推定した推定流量を積算し、その値をブレーキ制御部78に出力する。
【0045】
差圧推定部76は、マスタシリンダ圧推定部73で推定された推定液圧と、車輪ブレーキ圧推定部74で推定された推定液圧とを入力して、これらの差圧を算出する。
差圧推定部76は、算出した差圧の値を判断部77に出力する。
【0046】
判断部77は、車輪速度から求めた車体速度と、車輪速度との差より判断し、また、差圧推定部76で推定された差圧の値に基づいて、車輪ブレーキFに接続された車輪にスリップ状態が発生しているか否かを判断する。この場合、判断部77は、図示しない記憶部に予め記憶された設定値と比較すること等によってスリップ状態が発生しているか否かを判断する。
判断部77の判断結果は、ブレーキ制御部78に出力される。
【0047】
ブレーキ制御部78は、車輪ブレーキFに接続された車輪にスリップ状態が発生していると判断部77によって判断された場合に、アンチロックブレーキ制御を実現すべく、入口弁2、出口弁3および開放路用電磁弁6を開閉制御する。具体的に、ブレーキ制御部78は、前輪の車輪ブレーキFのブレーキ液圧制御量を、前輪の車輪速度や計算により求めた車体速度等から算出したスリップ率に応じて定め、これに基づいて入口弁2、出口弁3の開閉制御を行うことで、車輪ブレーキFに作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択してアンチロックブレーキ制御を行うようになっている。また、ブレーキ制御部78は、アンチロックブレーキ制御にあたって、車輪速センサ71、72で検出された車輪速度、マスタシリンダ圧推定部73で推定されたマスタシリンダ圧、車輪ブレーキ圧推定部74で推定された車輪ブレーキ圧、流量推定部75で推定された液量を適宜参照する。アンチロックブレーキ制御の詳細は後記する。
【0048】
また、ブレーキ制御部78は、流量推定部75で積算された推定流量から、マスタシリンダMC1のピストン11が最前進位置(ピストン11の前端部11cがシリンダ10の前端内面10c当接することなく所定の間隔を有して近接した状態(制動力の調整代を残した状態)となる位置)まで前進(前進移動)したか否かを判定する。なお、最前進位置まで前進したか否かの判定は、積算された推定流量と、試験により得られたデータに基づいてブレーキ制御部78の図示しない記憶部に予め記憶された設定値と、を比較すること等によって行われる。
そして、ブレーキ制御部78は、最前進位置にピストン11が前進したと判定した場合に、開放路用電磁弁6を閉弁制御するとともに、アンチロックブレーキ制御を終了する。
【0049】
次に、開放路用電磁弁6の詳細について説明する。なお、以下では、図4を参照して、開放路用電磁弁6の固定コア61が配置される一端側を「上側」、開放路用電磁弁6の弁座部材62が配置される他端側を「下側」と称して説明する。ここで、上下は便宜的なものであり、実際の上下とは異なる場合がある。
開放路用電磁弁6は、図4に示すように、ブレーキ制御装置U(図1参照)を構成する基体Kに内包された開放路Q1の閉塞あるいは開放を切り替えるための弁であり、主として、ボディ部材60と、固定コア61と、弁座部材62と、可動コア63と、弁体64と、コイルユニット50と、を備えて構成されている。
【0050】
基体Kは、開放路用電磁弁6が装着される有底の取付穴101を有しており、取付穴101には、開放路Q1として上流側の出口弁3(図1参照)に連通する流路Q11、下流側のマスタシリンダMC1(図1参照)のオイルリザーブタンク10A(図2参照)に至る流路Q12が連通している。取付穴101は、開放路用電磁弁6のボディ部材60の外形状に合わせて、流路Q12への連通口から基体Kの開口部101aに向かうにしたがって順次拡径する段付き円筒状に形成されている。
【0051】
開放路用電磁弁6は、通常時は、可動コア63の下端部に設けられた弁体64が弁座部材62のシート部(弁座部)62aに着座して流路Q11と流路Q12との間が閉塞されており、ブレーキ液の流れを遮断するようになっている。
そして、コイルユニット50への通電により可動コア63が上方向に移動して弁体64がシート部62aから離座すると、流路Q11と流路Q12との間が開放され、ブレーキ液の流れを許容するようになっている。
また、この状態からコイルユニット50への通電が遮断されると、戻しばね63aによって可動コア63が下方向に移動して弁体64がシート部62aに着座し、流路Q11と流路Q12との間が閉塞される。これによって、ブレーキ液の流れを遮断するようになっている。
【0052】
ボディ部材60は、非磁性体からなり、上下に貫通した収容空間Sを有する薄肉の円筒状に形成されており、各部品を収容するハウジングを兼ねている。ボディ部材60は、例えば、絞り加工により形成可能である。
ボディ部材60の上側には、固定コア61が挿入されて固着され、また、ボディ部材60の下側には、弁座部材62が挿入されて固着されており、固定コア61と弁座部材62との間の収容空間Sには、可動コア63が上下方向に摺動可能に配置されている。
【0053】
ボディ部材60は、ボディ部材60の下部が基体Kの取付穴101に嵌め込まれ、ボディ部材60の外周に嵌め込まれたプラグ65と取付穴101の内壁に形成された凹溝との間に係合する止め輪65aにより取付穴101から離脱しないように取り付けられている。
【0054】
また、ボディ部材60の下部外周には、上下方向に間隔を隔ててOリング60a、60bが嵌め込まれている。ボディ部材60には、これらのOリング60a、60bで上下に仕切られる部分に、透孔60cが形成され、この透孔60cを覆うようにフィルタ部材66が嵌め込まれている。フィルタ部材66は透孔60cを通じてボディ部材60の内側へ流れ込むブレーキ液をろ過する。
【0055】
固定コア61は、鉄や鉄基合金等の磁性材料からなり、ボディ部材60の上端開口から収容空間S内に挿入されて、ボディ部材60の上側(一端側)に固着されている。なお、固定コア61の固着は、ボディ部材60の外周を溶接することによって行われる。
【0056】
弁座部材62は、円筒状の部材であり、ボディ部材60の下側に固着されている。本実施形態では、ボディ部材60の上端開口からボディ部材60内に挿入され、その下部側がボディ部材60の下端内面に圧入されることによって、ボディ部材60に固着されている。弁座部材62は、ボディ部材60に固着された状態で、その上部側の外周面とボディ部材60の内周面との間に円筒状の空間S1を形成しており、この空間S1を通じて流路Q11からボディ部材60内に流入したブレーキ液が弁座部材62のシート部62aに向けて流れるようになっている。
【0057】
弁座部材62の上部中央には、軸方向に貫通する弁孔62bが形成されており、この弁孔62bは、弁座部材62の内側に形成された液室62cに連通している。この液室62cは、ボディ部材60の下端に設けられた連通孔60dを通じて、基体Kに形成された流路Q12と連通している。
【0058】
可動コア63は、鉄や鉄基合金等の磁性材料からなり、前記のように固定コア61と弁座部材62との間の収容空間Sに上下方向に摺動可能に配置されている。可動コア63は、コイルユニット50を励磁したときに、固定コア61に引き寄せられて上方向に移動し、また、コイルユニット50を非励磁としたときに、戻しばね63aに付勢されて下方向に移動する。
可動コア63の上部中央には、縦孔63bが形成されており、この縦孔63b内に戻しばね63aが挿入されている。戻しばね63aは、縦孔63bと固定コア61との間に縮設されており、可動コア63を弁座部材62に向けて付勢する。
また、可動コア63の外周部には、ブレーキ液の通流する縦溝63dが形成されている。
【0059】
可動コア63の下端部には、弾性部材からなる弁体64が設けられている。弁体64は、円環状を呈しており、弁座部材62や可動コア63をなす金属よりも大きい弾性を備えて変形しやすい、ゴム、合成ゴム等の弾性部材から成る。弁体64は、図5(a)に示すように、基部64aと、基部64aに一体的に形成された突出部64bとを有している。
基部64aは、断面略四角形状とされて、可動コア63の下端部に円環状に凹設された凹部63cに埋設される部位であり、接着剤を用いて(ゴム等を)焼き付ける取付手段等によって凹部63c内に固定されている。
なお、弁体64は、全体が弾性部材で形成されたものを例示したがこれに限られるものではなく、気密性を備えてシート部62aに着座するものであれば、一部に弾性部材を含んで形成されていてもよい。
突出部64bは、断面略三角形状を呈しており、三角形の頂部となる下端部が弁座部材62に向けて突出している。そして突出部64bは、可動コア63が下方向に移動することによって、弁座部材62の上面に当接し、弁孔62bの周りを同心円状に取り囲むように弁座部材62の上面に着座する。本実施形態では、弁座部材62の上面において弁体64の着座する部位が、特許請求の範囲に記載したシート部62a(図5各図参照)に対応している。
【0060】
可動コア63の下端面は、図5(a)に示すように、凹部63cと相対的に、内側部64Aおよび外側部64Bが弁座部材62に向けて突出した形状となっている。
本実施形態では、図5(c)に示すように、これらの内側部64A(規制部)および外側部64B(規制部)が、可動コア63の下方向の移動時に弁座部材62の上面(受け部)に直接当接するように構成されており、当接によって可動コア63の下方向の移動が規制(停止)されるようになっている。また、当接によって、可動コア63と弁座部材62との間が密着されるようになっている。
【0061】
なお、内側部64Aおよび外側部64Bは、可動コア63の下端部において、弁体64を径方向に挟むように位置している。
【0062】
ここで、内側部64Aおよび外側部64Bが弁座部材62の上面に当接するタイミングは、可動コア63が下方向に移動して、図5(b)に示すように、弁体64の突出部64bが弁座部材62のシート部62aに当接した後、図5(c)に示すように、さらに下方向に移動して、弁体64がシート部62aに気密性よく着座した後に弁座部材62の上面に当接するように設定されている。
つまり、弁座部材62の上面に弁体64が気密性よく着座した後に、可動コア63の下方向の移動が規制されるようになっている。したがって、シート部62aに弁体64が必要以上に押圧されない構造となっている。これによって、弁体64に作用する負荷を軽減することができる。また、シート部62aに対する弁体64の当接状態(シール性)を、長期間の使用を通じて好適に維持することが可能となっている。
【0063】
なお、内側部64Aまたは外側部64Bのいずれか一方を、凹部63cと相対的に弁座部材62に向けて突出するように形成してもよい。
また、内側部64Aおよび外側部64Bに対向している弁座部材62の部位の少なくとも一つを、可動コア63の下端部へ向けて突出するように形成して、可動コア63と弁座部材62との間を密着するようにしてもよい。
【0064】
コイルユニット50は、図4に示すように、樹脂製のボビン51にコイル52が巻かれて構成され、ボビン51の外側には、磁路を形成するヨーク53が配置されている。
なお、コイルユニット50は、ボディ部材60と固定コア61とに環装されている。
【0065】
次に、このようなブレーキ制御装置Uによって実現される前輪側の通常のブレーキ時およびアンチロックブレーキ制御について説明する。
(通常のブレーキ)
ブレーキレバーL1を操作して、マスタシリンダMC1のピストン11(図2参照、以下同じ)が前進動されると、マスタシリンダMC1の油圧室14(図2参照、以下同じ)がピストン11で圧縮される。これによって発生したブレーキ液圧は、出入口15aから配管H1を通じて入口ポートJ1に作用し、出力液圧路D1、入口弁2、車輪液圧路E1を通じて出口ポートJ2に作用し、配管H2を通じて車輪ブレーキFに作用する。
また、ブレーキレバーL1を戻すと、マスタシリンダMC1のピストン11が後退動され、油圧室14が広がって油圧室14にブレーキ液が戻され、油圧室14からリリーフポート16を経てオイルリザーブタンク10Aへ流入する。これによって、車輪ブレーキFは、ブレーキ液圧の不作動状態に戻る。
【0066】
このような通常のブレーキ制動が行われている間、出口弁3は制御されずに閉じられた状態となっているので、出口弁3を通じて開放路Q1にブレーキ液が流出することはない。
また、閉弁状態とされた開放路用電磁弁6によって開放路Q1が閉塞されているので、開放路Q1からマスタシリンダMC1にブレーキ液が戻されることもない。
【0067】
(アンチロックブレーキ制御)
次に、ブレーキレバーL1を操作して、車輪ブレーキFにブレーキ液圧が作用している状態において、車輪ブレーキFに接続された車輪にスリップ状態が発生して車輪がロックしそうになると、アンチロックブレーキ制御が行われる。
ここで、スリップ状態が発生しているか否かの判断は、車輪速度から求めた車体速度と、車輪速度との差より判断し、また、制御装置7の差圧推定部76で推定された差圧の値に基づいて、判断部77によって判断され、スリップ状態が発生していると判断された場合に、減圧、増圧および保持のいずれかのモードがブレーキ制御部78によって選択される。
本実施形態では、スリップ状態が発生していると判断された場合、つまり、アンチロックブレーキ制御が開始されるのに並行して、ブレーキ制御部78が開放路用電磁弁6を開弁制御する。ブレーキ制御部78は、アンチロックブレーキ制御中、開放路用電磁弁6を開弁制御し続け、アンチロックブレーキ制御終了時に開放路用電磁弁6を閉弁制御するようになっている。
【0068】
アンチロックブレーキ制御において、ブレーキ液圧を減圧させるモードが実行されると、入口弁2が閉弁し、出口弁3が開弁するとともに開放路用電磁弁6が開弁する。このようにすると、入口弁2よりも車輪ブレーキF側にあるブレーキ液が出口弁3から開放路Q1に流出することになるので、車輪ブレーキFに作用していたブレーキ液圧が減圧することになる。開放路Q1に流出したブレーキ液は、開放路Q1を通じてリザーバ4に一時的に流入し、その後、開放路Q1に再び流出し、開放路用電磁弁6を通じた後に、開放ポートJ3から配管H3を通じて戻し口11bからマスタシリンダMC1内に流入する。マスタシリンダMC1内に流入したブレーキ液は、補給油室11aを通じてオイルリザーブタンク10Aに戻される。
【0069】
次に、アンチロックブレーキ制御において、車輪ブレーキFに付与するブレーキ液圧を保持するモードが実行されると、入口弁2および出口弁3がともに閉弁する。このようにすると、入口弁2および出口弁3で閉じられた流路内にブレーキ液が閉じ込められることになるので、車輪ブレーキFに作用していたブレーキ液圧が保持されることになる。
【0070】
また、アンチロックブレーキ制御において、車輪ブレーキFに付与するブレーキ液圧を増圧させるモードが実行されると、入口弁2が開弁し、出口弁3が閉弁する。このようにすると、ブレーキレバーL1の操作に起因してマスタシリンダMC1で発生したブレーキ液圧が、出力液圧路D1、入口弁2、車輪液圧路E1を通じて車輪ブレーキFに作用するので、車輪ブレーキFのブレーキ液圧が増圧することになる。
【0071】
また、減圧制御時には、車輪ブレーキFから開放路Q1に流出した(抜いた)ブレーキ液の液量が、制御装置7の流量推定部75で推定される。そして、ブレーキ制御部78は、流量推定部75で積算された推定流量から、マスタシリンダMC1のピストン11が前記した最前進位置に位置するところまで前進(前進移動)したか否かが判定され、最前進位置まで移動したと判定したときに開放路用電磁弁6を閉弁制御する。これとともに、ブレーキ制御部78は、アンチロックブレーキ制御を終了する。
【0072】
なお、このようなアンチロックブレーキ制御の終了やアンチロックブレーキ制御中にブレーキレバーL1の操作力を解除してブレーキレバーL1が戻されると、入口弁2が開弁制御されるとともに、出口弁3が閉弁制御され、開放路用電磁弁6が閉弁制御される。そして、車輪ブレーキFに作用していたブレーキ液圧が、車輪液圧路E1から入口弁2(チェック弁2a)、出力液圧路D1、配管H1を経て油圧室14へ流入し、リリーフポート16を経てオイルリザーブタンク10Aへ戻る。これによって、車輪ブレーキFは、ブレーキ液圧の不作動状態に戻る。
ここで、このようなアンチロックブレーキ終了時に、リザーバ4の貯溜室に一時的に貯溜されたブレーキ液が残っている場合には、次のようにしてマスタシリンダMC1にブレーキ液が戻される。
すなわち、リザーバ4の貯溜室に残ったブレーキ液は、ピストン11が戻ることによる作用と、リザーバ4に備わるばねの弾発力とによって、開放路Q1に押し出され、戻し路T1のチェック弁5通じて、出力液圧路D1から配管H1を通じて油圧室14に戻され、リリーフポート16を通ってオイルリザーブタンク10Aに戻される。
つまり、このブレーキ制御装置Uでは、リザーバ4からのブレーキ液を汲み上げるポンプを有することなく、ブレーキレバーL1の戻しによって、チェック弁5を介してブレーキ液をマスタシリンダMC1に戻すことができる。
【0073】
また、前記した最前進位置に位置するところまでピストン11が前進(前進移動)したと判定されることによりアンチロックブレーキ制御が終了した場合に、リザーバ4の貯溜室に一時的に貯溜されたブレーキ液が残っている場合にも同様にしてマスタシリンダMC1にブレーキ液が戻されることとなる。
【0074】
次に、開放路用電磁弁6の開閉動作について、図1から図5を参照して説明する。
通常のブレーキ制動が行われている間は、前記したように開放路Q1を閉塞すべく、開放路用電磁弁6のコイルユニット50への通電は行われず、開放路用電磁弁6の戻しばね63aにより可動コア63が付勢されて、弁体64が弁座部材62のシート部62aに着座している(図5(c)参照)。
【0075】
次に、アンチロックブレーキ制御において、ブレーキ液圧を減圧させるモードが実行されると、開放路用電磁弁6のコイルユニット50へ通電され、可動コア63が固定コア61に吸引されて上方向に移動する。これによって、弁体64が弁座部材62のシート部62aから離座し、開放路Q1の流路Q11と流路Q12とが開放されて連通する(図5(a)参照)。
そうすると、出口弁3(図1参照)を通じて開放路Q1に流出したブレーキ液は、流路Q11を通じて開放路用電磁弁6内に流入し、離座した弁体64とシート部62aとの間を通じて弁孔62bから液室62cに流入し、連通孔60dを通じて流路Q12に流出する。
流路Q12に流出したブレーキ液は、開放路Q1を下流側へ流れて、マスタシリンダMC1(図1参照)内に流入する。
その後、アンチロックブレーキ制御が終了したときには、開放路用電磁弁6のコイルユニット50への通電が終了し、開放路用電磁弁6の戻しばね63aにより可動コア63が付勢されて、弁体64がシート部62aに着座する(図5(b)(c)参照)。これによって、開放路Q1が再び閉塞される。
【0076】
以上説明したブレーキ制御装置Uによれば、開放路Q1には、開放路用電磁弁6が設けられているので、必要に応じて、開放路Q1を遮断または開放することができる。
これによって、アンチロックブレーキ制御の減圧制御時には、開放路用電磁弁6を開放することによって、出口弁3を通じて逃がされたブレーキ液を、開放路Q1を通じてマスタシリンダMC1のオイルリザーブタンク10Aに戻すことができる。したがって、従来のように、リザーバにブレーキ液を流入させることのみによって、ブレーキ液圧の減圧を行っていた場合に比べて、減圧制御時の制御時間を長くとることができる。これによって、制御の自由度を高めることができる。
【0077】
また、通常のブレーキ時には、開放路用電磁弁6を閉弁状態にして、開放路Q1を閉塞状態にすることができる。
したがって、通常のブレーキ時において、仮に、出口弁3から開放路Q1にブレーキ液が流出するような事態が生じたとしても、閉弁状態とされた開放路用電磁弁6によってブレーキ液が開放路Q1を通じてマスタシリンダMC1のオイルリザーブタンク10Aに戻るのを阻止することができる。
これによって、フェールセーフ機能の確実性を高めることができる。
【0078】
また、制御装置7は、アンチロックブレーキ制御中に開放路用電磁弁6を開弁制御し続け、アンチロックブレーキ制御終了時に開放路用電磁弁6を閉弁制御するので、開放路用電磁弁6の作動回数が少なくなり、耐久性に優れるブレーキ制御装置Uが得られる。したがって、長期的に安定したアンチロックブレーキ制御の実現が可能となる。
【0079】
また、アンチロックブレーキ制御中は、開放路用電磁弁6が開弁制御され続けることとなるが、開放路用電磁弁6に対してブレーキ液圧が作用するのは減圧制御時のみであり、さらに、開弁状態を保持するためには、例えば、開放路用電磁弁6の構成部品として備わる可動コア63の重量や、戻しばね63aのスプリング荷重を保持する電磁力が生じるように、コイルユニット50に流す電流を考慮すればよいので、コイルユニット50の消費電力が少なくて済む。
【0080】
また、制御装置7のブレーキ制御部78は、流量推定部75により推定された液量に基づいて、マスタシリンダMC1のピストン11がフルストロークする前の段階で開放路用電磁弁6を閉弁制御するようになっているので、制動力の調整代を残した状態で減圧制御を終了することができ、制動力を好適に調整することが可能となって制御性の向上を図ることができる。
【0081】
また、アンチロックブレーキ制御に入るか否かの判断を、差圧推定部76で推定されたマスタシリンダ圧MPと車輪ブレーキFのブレーキ液圧との差圧から行うことができ、制御性の向上を図ることができる。
【0082】
また、開放路Q1における出口弁3と開放路用電磁弁6との間には、リザーバ4が設けられているので、減圧制御時に、出口弁3を通じて逃がされたブレーキ液をリザーバ4に一時的に貯溜することができ、リザーバ4の容量分、減圧量(減圧時間)に余裕をもたせることができる。これによって、減圧制御時の制御時間を実質的に長くとることができる。
また、逃がされたブレーキ液をリザーバ4に一時的に貯溜することができるので、減圧スピードが安定し制御性が向上する。
【0083】
本実施形態では、マスタシリンダ圧推定部73でマスタシリンダ圧MPを推定し、また、車輪ブレーキ圧推定部74で車輪ブレーキFのブレーキ液圧を推定するように構成したが、液圧回路に圧力センサを配置してマスタシリンダ圧MPと車輪ブレーキ圧とをそれぞれ検出するようにしてもよい。
【0084】
また、前記実施形態では、制御装置7が、アンチロックブレーキ制御中に開放路用電磁弁6を開弁制御し続け、アンチロックブレーキ制御終了時に開放路用電磁弁6を閉弁制御するようにしたが、これに限られることはなく、減圧制御時に対応してその都度、開放路用電磁弁6を開弁制御するように構成してもよい。
このように構成することによっても、減圧制御時に出口弁3を通じて逃がされたブレーキ液を、開放路Q1を通じてマスタシリンダMC1のオイルリザーブタンク10Aに確実に戻すことができ、減圧制御時の制御時間を長くとることができる。これによって、制御の自由度を高めることができる。
【0085】
また、この場合、出口弁3の開閉制御と開放路用電磁弁6の開閉制御とを並行して行う構成とすることにより、減圧制御時に出口弁3を通じて逃がされたブレーキ液を、開放路Q1を通じてマスタシリンダMC1のオイルリザーブタンク10Aにレスポンスよく戻すことができ、制御性の向上を図ることができる。
【0086】
また、本実施形態の開放路用電磁弁6によれば、弁体64は弾性部材で構成されているので、シール性の向上を図ることができる。
また、可動コア63の下端部には、規制部として機能する内側部64Aおよび外側部64Bが設けられており、これらは、着座時に受け部として機能する弁座部材62の上面に当接することにより、可動コア63の下方向の移動を規制するようになっているので、シート部62aに対して弁体64が必要以上に強く当接することがなくなり、弁体64は、着座時に、シート部62aに対して所定の当接力をもって当接することとなる。
これによって、高圧のブレーキ液圧が作用した場合や、弁体64のストローク時(移動時)に衝撃が生じたとしても、弾性部材で構成される弁体64が変形することがなく、耐久性に優れる。したがって、長期に亘って良好なシール性を確保することができる。
【0087】
また、弁体64は環状とされており、弁座部材62の弁孔62bの開口縁を囲むように弁座部材62のシート部62aに着座するようになっているので、良好なシール性を得ることができる。
【0088】
(第2実施形態)
次に、本発明の車両用ブレーキ液圧制御装置の第2実施形態について図6、図7を参照して説明する。
本実施形態では、図6、図7に示すように、シート部621が、弁座部材62に形成された弁孔62bの開口縁をテーパ状に面取りしてなり、弁体640は、このシート部621に着座可能な突出部640bを備えて構成されている点が異なっている。
【0089】
弁体640は、前記した弁体64と同様に、全体がゴム、合成ゴム等の弾性部材からなり、図7(a)に示すように、基部640aと、この基部640aに一体的に形成された突出部640bとを有している。
なお、弁体640は、一部に弾性部材を含んで構成してもよい。
基部640aは、円柱形状を呈しており、可動コア63の下端中央部に凹設された凹部631に埋設される部位である。基部640aは、接着剤を用いた取付手段等によって凹部631内に固定されている。
突出部640bは、半球状を呈しており、基部640aから弁座部材62に向けて突出している。そして突出部640bは、可動コア63が下方向に移動することによって、弁座部材62のシート部621に当接し、弁孔62bを塞ぐようにしてシート部621に着座する。
【0090】
また、可動コア63の凹部631の孔縁部640Bは、図7(a)に示すように、弁座部材62に向けて突出した形状となっており、本実施形態では、この孔縁部640Bが規制部として機能している。
すなわち、図7(c)に示すように、孔縁部640Bは、可動コア63の下方向の移動時に受け部として機能する弁座部材62の上面に直接当接するようになっており、可動コア63の下方向の移動を規制(停止)するとともに、可動コア63と弁座部材62との間を密着する。
【0091】
このような規制部として機能する孔縁部640Bを備えることによって、図7(b)に示すように、弁座部材62のシート部621に弁体640が当接し、そしてさらに可動コア63が下方向に移動して、図7(c)に示すように、シート部621に弁体640が気密性よく着座すると、可動コア63の下方向の移動が孔縁部640Bの当接によって規制され、シート部621に弁体640が必要以上に押圧されることが阻止される。
これによって、弁体640に作用する負荷を軽減することができ、シート部621に対する弁体640の当接状態(シール性)を、長期間の使用を通じて好適に維持することができる。
【0092】
(第3実施形態)
次に、本発明の車両用ブレーキ液圧制御装置の第3実施形態について図8、図9を参照して説明する。
本実施形態では、図8、図9に示すように、シート部621が、弁座部材62に形成された弁孔62bの開口縁をテーパ状に面取りしてなることに変わりはないが、弁体641は、このシート部621に着座可能な球状に構成されている点が異なっている。
【0093】
弁体641は、図9(a)に示すように、鉄や樹脂等の材料からなる球状の剛性体641aと、この剛性体641aの表面全体を被覆し、シート部621に着座する、ゴム、合成ゴム等の弾性部材(剛性体641aよりも大きい弾性を有する部材)641bと、を備えて構成されている。
【0094】
弁体641は、可動コア63の下端中央部に凹設された凹部632内に、弾性部材641bの弾性をもって嵌り込んでおり、可動コア63の下端中央部から弁座部材62に向けて突出している。
そして弁体641は、可動コア63が下方向に移動することによって、図9(b)に示すように、弁座部材62のシート部621に当接し、この当接した状態から可動コア63が下方向にさらに移動することによって、図9(c)に示すように、弾性部材641bがシート部621に気密性よく着座して弁孔62bを塞ぐようになっている。
【0095】
本実施形態では、着座時に、弁体641の内側に備わる剛性体641aが、弁座部材62と可動コア63との間に挟持されることで、規制部として機能するように構成されている。
図9(c)に示すように、弾性部材641bが弾性変形しつつシート部621に気密性よく着座すると、剛性体641aが弾性部材641bを介してシート部621に間接的に押圧され、また、可動コア63の凹部632の底部に対して、剛性体641aが弾性部材641bを介して間接的に押圧される。これによって、剛性体641aは、可動コア63と弁座部材62との間に弾性部材641bを介して挟み込まれた状態となり、剛性体641aが、可動コア63の下方向の移動を規制(停止)する。
【0096】
なお、弁体641は、剛性体641aに弾性部材641bが薄く被覆されてなるので、弾性部材641bの弾性変形量は、前記第1、第8実施形態で示した弁体64、640に比べて小さくなっており、長期間の使用を通じての経年変化も少なくなっている。これによって、長期間に亘って安定した弁体641の作動を実現することができる。
【0097】
なお、図9(c)に示した上面周縁部620Bを、可動コア63側へさらに突出形成し、下方向に移動した可動コア63の下端面に当接するように構成することで、上面周縁部620Bを規制部として機能させてもよい。
【0098】
(第4実施形態)
次に、本発明の車両用ブレーキ液圧制御装置の第4実施形態について図10を参照して説明する。
本実施形態では、図10に示すように、弁座部材62側に弾性部材からなるシート部623を設けており、第1実施形態で説明した開放路用電磁弁6の弁体64とシート部62aとの位置関係を上下逆にした構成となっている点が異なる。
【0099】
図10に示すように、弁座部材62の上端部には、弁孔62bの周りを囲むように円環状に凹設された凹部622が形成されており、この凹部622にシート部623が取り付けられている。
シート部623は、基部623aと、この基部623aに一体的に形成された突出部623bとを有している。基部623aは、断面略四角形状とされて凹部622に埋設され、また、突出部623bは、断面略三角形状とされて、三角形の頂部となる上端部が可動コア63の下端面642に向けて突出している。
【0100】
本実施形態では、可動コア63の下端部が弁体として機能しており、可動コア63が下方向に移動することによって、可動コア63の下端面642が弁座部材62のシート部623の突出部623bに当接する。そして、可動コア63は、下方向にさらに移動することで、その下端面642がシート部623の突出部623bを弾性変形させながら押圧してシート部623に着座するようになっている。
【0101】
そして、シート部623の周りに位置する内側部624および外側部625は、可動コア63の下方向の移動時に可動コア63の下端面642に直接当接するように構成されており、可動コア63と弁座部材62との間を密着するようになっている。また、内側部624および外側部625は、当接によって可動コア63の下方向の移動を規制(停止)する規制部としての役割も成す。
【0102】
ここで、内側部624および外側部625は、可動コア63の下端面642がシート部623に気密性よく着座した後に、続けて可動コア63の下端面642に当接するように設定されており、シート部623が可動コア63の下端面642で必要以上に押圧されないようになっている。これによって、シート部623に作用する負荷を軽減することができ、シート部623に対する可動コア63の下端面642の当接状態(シール性)を、長期間の使用を通じて好適に維持することができる。
【0103】
(第5実施形態)
次に、本発明の車両用ブレーキ液圧制御装置の第5実施形態について図11を参照して説明する。
本実施形態では、図11に示すように、弁座部材62側に弾性部材が配置されており、弁座部材62に形成された弁孔62bの開口縁をテーパ状に面取りして開口縁部621aを形成し、この部分に弾性部材を配置してシート部626を設けた点が異なる。
【0104】
弁体647は、鉄や樹脂等の材料からなる球状体であり、可動コア63の下端中央部に凹設された凹部632内に圧入され、可動コア63の下端中央部から弁座部材62に向けて突出している。
そして弁体647は、可動コア63が下方向に移動することによって、シート部626に気密性よく着座し、弁孔62bを塞ぐようになっている。
【0105】
本実施形態では、弁座部材62の上面周縁部620Bが、可動コア63へ向けて突出している。この上面周縁部620Bは、下方向に移動してきた可動コア63の下端面642に直接当接するように構成されており、当接によって可動コア63方向の移動を規制(停止)する規制部として機能するとともに、可動コア63と弁座部材62との間を密着するようになっている。
【0106】
ここで、上面周縁部620Bは、可動コア63の弁体647がシート部626に気密性よく着座した後に、続けて可動コア63の下端面642に当接するように設定されており、シート部626が弁体647で必要以上に押圧されないようになっている。これによって、シート部626に作用する負荷を軽減することができ、シート部626に対する弁体647の当接状態(シール性)を、長期間の使用を通じて好適に維持することができる。
【0107】
なお、前記実施形態では、前輪のブレーキ系統K1の開放路Q1にリザーバ4(図1参照)を設けたが、これに限られることはなく、リザーバ4を開放路Q1から排除してもよい。
このような構成とすることによって、リザーバ4(図1参照)がない分、ブレーキ制御装置Uを小型化できる。
【0108】
また、前輪のブレーキ系統K1に、ブレーキレバーL1の操作で二つの車輪ブレーキF、Rを制動する連動ブレーキ手段を設けてもよく、後輪のブレーキ系統K2に、ブレーキレバーL2の操作で二つの車輪ブレーキF,Rを制動する連動ブレーキ手段を設けてもよい。
また、後輪の車輪ブレーキRに機械式ブレーキを採用して、前後輪の連動ブレーキ制動が可能となる分岐装置やシリンダ装置を設けて、後輪のブレーキレバーL2が操作されたときに前後輪の連動ブレーキ制動が行われるように構成してもよい。
【0109】
なお、前記した開放路用電磁弁(常閉型電磁弁)6は、前記実施形態のブレーキ制御装置Uの使用に限らない。例えば、自動四輪車のように、前輪、後輪をともに制御するブレーキ制御装置Uに用いてもよい。
また、前記した開放路用電磁弁(常閉型電磁弁)6は、出口弁3として使用することもできる。
【符号の説明】
【0110】
2 入口弁(常開型電磁弁)
3 出口弁(常閉型電磁弁)
6 開放路用電磁弁(常閉型電磁弁)
7 制御装置(制御手段)
10A オイルリザーブタンク(タンク)
11 ピストン
50 コイルユニット
60 ボディ部材
61 固定コア
62 弁座部材
62a、621、623、626 シート部
62b 弁孔
63 可動コア
64、640、641、647 弁体
64A、624 内側部(規制部)
64B、625 外側部(規制部)
64b 突出部
73 マスタシリンダ圧推定部
74 車輪ブレーキ圧推定部
75 流量推定部(推定部)
76 差圧推定部
77 判断部
78 ブレーキ制御部
620B 上面周縁部(規制部)
640B 孔縁部(規制部)
640b 突出部
641a 剛性体
641b 弾性部材
F、R 車輪ブレーキ
K1、K2 ブレーキ系統
L1、L2 ブレーキレバー
MC1 マスタシリンダ
MC2 マスタシリンダ
Q1 開放路
U ブレーキ制御装置(車両用ブレーキ液圧制御装置)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通した収容空間を有するボディ部材と、
前記ボディ部材の一端側に固着された固定コアと、
前記ボディ部材の他端側に固着された弁座部材と、
前記固定コアと前記弁座部材との間の前記収容空間内に摺動可能に組み込まれた可動コアと、
前記可動コアの前記弁座部材側に設けられた弁体と、
前記弁座部材に形成され、前記弁体が着座可能なシート部と、を備え、
前記可動コアが付勢手段により前記弁座部材側に付勢されて移動することで前記弁体が前記シート部に着座し、コイルユニットへの通電により前記固定コアが励磁されて前記可動コアが前記固定コア側に移動することで前記弁体が前記シート部から離座する常閉型電磁弁であって、
前記弁体および前記シート部の少なくとも一方は弾性部材を含んで構成されており、
前記可動コアと前記弁座部材との対向部位には、規制部と、この規制部に対向する受け部とが設けられており、
前記規制部は、前記着座時に前記受け部に当接して前記可動コアの移動を規制するとともに、前記可動コアと前記弁座部材との間を密着することを特徴とする常閉型電磁弁。
【請求項2】
前記弁体は、前記シート部に着座可能な環状の突出部を備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の常閉型電磁弁。
【請求項3】
前記シート部は、前記弁座部材に形成された弁孔の開口縁をテーパ状に面取りしてなり、
前記弁体は、前記シート部に着座可能な突出部を備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の常閉型電磁弁。
【請求項4】
前記シート部は、前記弁座部材に形成された弁孔の開口縁をテーパ状に面取りしてなり、
前記弁体は、球状の剛性体を含んで、表面に弾性部材が被覆されており、
前記剛性体は、前記着座時に弾性部材を介して前記シート部に当接し、前記規制部として機能することを特徴とする請求項1に記載の常閉型電磁弁。
【請求項5】
マスタシリンダとホイールシリンダとの間に配置され、制御手段によってアンチロックブレーキ制御時に制御可能な入口弁および出口弁と、
前記出口弁と前記マスタシリンダに設けられた大気開放型のタンクとの間を接続する開放路と、を備え、
前記開放路には、常閉型電磁弁が配置されており、
前記出口弁を通じて逃がされた作動液が、前記制御手段によって開弁制御された前記常閉型電磁弁を通じて前記タンクに戻される車両用ブレーキ液圧制御装置であって、
前記常閉型電磁弁が請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の常閉型電磁弁であることを特徴とする車両用ブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、アンチロックブレーキ制御中に前記常開型電磁弁を開弁制御し続け、アンチロックブレーキ制御終了時に前記常開型電磁弁を閉弁制御することを特徴とする請求項5に記載の車両用ブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−58573(P2011−58573A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209515(P2009−209515)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】