説明

広範囲温度チャック装置

処理チャンバ内にワークピースを支持する装置が設けられ、その装置は、ワークピースを支持する表面を有する第1の「ホット・チャック」を有し、そのホット・チャックは当該ホット・チャックを加熱する電気的な加熱要素を含んでおり、当該装置はまた熱伝導流体を循環させるためにそこに形成された流路を有する第2の「コールド」チャックを有する。ホット・チャックとコールド・チャックとの間の熱伝達の比率を変化させるために、コールド・チャックはホット・チャックに向けてまたはホット・チャックから離れて選択的に移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、半導体処理装置のワークピース支持チャックの温度制御に関するものであり、特定的には、そのようなチャックの迅速な加熱と冷却の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、エッチング、デポジション、アニーリグなどの、多くの半導体処理過程において、(たとえば、シリコンウエハ、ガラス基板などの)ワークピースが処理チャンバ内に支持される。ワークピースが特定の温度まで加熱されている間、ガス、および/または、プラズマ反応剤(reactant)がワークピースの表面に提供される。
【0003】
代表的には、高い温度が高い反応率を実現することを援助するから、それゆえ、より高いワークピースのスループットが得られことを援助する。他方、高い温度は時折、部分的に形成された集積回路の構造にダメージを与える可能性がある。さらに、ある種の化学的な反応が低温度において最も効率的に遂行される。
【0004】
チャンバ内のワークピースの温度を制御するための多くの構造と方法が知られている。たとえば、石英で製造された透明な「冷たい壁」を通してワークピースに放射熱が収束されうる。放射熱はしばしば、(たとえば、500℃以上の)非常に高い温度処理に使用されており、各ワークピースの処理サイクルの期間、温度を上昇させたり低下させることが望まれている。
【0005】
他の構成としては、ワークピースの温度は、ワークピース支持部またはチャックを加熱することによって調整できる。便宜的に、用語「チャック」は、処理ワークピースの支持部として参照されており、この処理ワークピースはワークピースとしての一定の温度に維持されており、サイクル内で、処理チャンバ内で転送され、処理され、そして、処理チャンバの外に転送される。
【0006】
ある装置は、特にプラズマ処理装置は、所望のチャック温度を維持するために、チャックを加熱することよりもチャックを冷却することを要求している。化学的および処理用パラメータに依存して、あるプラズマ処理は、チャックに対して非常な熱負荷を与える。もしチャックがその熱を除去する手段を有していない場合、チャックの温度は所望の設定点を越えて上昇する可能性がある。このことは、代表的には、低温の処理において起こる。その理由は、チャックの温度は周囲のチャンバの温度に接近しており、チャックとチャンバとの間の放射熱伝達が行われにくいからである。この状況は、チャンバの温度がチャックの温度より高い時に最悪となる。
【0007】
高温処理においては、チャックと周囲のチャンバとの間の放射熱伝達は一般的には、処理によって発生した熱負荷をオフセットするために十分である。チャックを加熱し、余剰の熱を除去するための両者に液体を用いることは、この技術において通常行われている。液体を用いた加熱による高い温度による処理を行うことは、しかしながら、危険であり、経済的でない。さらに、チャックの温度を変化させることは、低速となり、スループットを低下させる可能性がある、流体の温度を変化させることを要求する。
【特許文献1】米国特許第6,461,801号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
チャックを用いて2つの温度の水準を実現する方法は、高温処理を行うある電気加熱ソースと、低温処理を行う液体加熱源とを用いる。そのような装置は、たとえば、米国特許第6,461,801号に開示されている。しかしながら、そのような装置においては、高温度処理を行っているとき、チャック内で液体が沸騰することを防止するために、液体をチャックからパージしなければならない。このことは代表的には、時間を消費し、スループットを低下させる可能性かある。それゆえ、ワークピースの支持チャックの温度制御を提供する改良された装置の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
それゆえ、1実施形態に基づけば、処理チャンバ内においてワークピースを処理する方法が提供される。この実施形態の方法は、第1のチャックを第1の温度まで加熱する処理と、第2のチャンバを第1の温度より低い第2の温度まで冷却する処理と、処理すべきワークピースを第1のチャックの支持面に位置させる処理と、第1のチャックと第2のチャックとの間の熱伝達(heat transfer)の比率を調整することによって第1のチャックの温度を制御する処理とを具備する。
【0010】
1実施形態において、熱伝達の比率を調整処理は、第1のチャックを第2のチャックから物理的に距離を変化させる処理を具備する。第2のチャックを第1のチャックから物理的に隔離する距離を変化させる処理は、両者のチャックを相互に直接分離的に接触するように配置する処理を具備する。他の実施形態において、熱伝達の比率を調整する処理は、第1のチャックと第2のチャックとの間の空間に導入されるガスの流量を変化させる処理を具備する。さらに他の実施形態においては、熱伝達の比率を調整する処理は、第2のチャックから除去される熱の比率に影響を与えるパラメータを変換させる処理を具備する。たとえば、第2のチャックを通した循環する冷却用流体の流量比率が調整され得る。
【0011】
他の実施形態は、処理チャンバ内にワークピースを支持するための装置を提供する。この実施形態における装置は、ワークピースを支持する表面を有する第1のチャックに結合されたヒータを具備する。その装置はさらに、冷却デバイス(装置)を有し、その冷却デバイス(装置)に結合されている第2のチャックを具備する。第2のチャックは、第1のチャックと第2のチャックとの間の熱伝達の比率を変化させるために、第1のチャックに熱的に結合可能である。ある実施形態においては、その装置はさらに、第1のチャックと第2のチャックとの間の熱伝達の比率を変化させることによって第1のチャックの温度を制御するように構成された自動制御システム(装置)を具備する。
【0012】
さらに他の実施形態は、装置内のワークピースを処理する方法を提供する。この実施形態の方法は、第1のチャックにワークピースを配置する処理と、第2のチャックを第1のチャックに対して相対的な第1の距離に位置決めする処理と、第1の温度でワークピースに第1の処理を行う処理とを具備する。第2のチャックはそれから、第2のチャックが第1のチャックに対する相対的な第2の位置に位置するまで、第1のチャックに移動され、第2の温度でワークピースに第2の処理が行われる。
【0013】
さらに他の実施形態においては、装置内のワークピースを処理する方法を提供する。この実施形態のこの方法は、第2のチャックが第1のチャックから離れている第1の距離に位置決めされるとともに、ワークピースを第1のチャックに位置決めする処理を具備する。この方法は、ワークピースにホトレジスト・ストリップ(剥離)処理を開始する処理と、第2のチャックを第1のチャックから離れている第2の距離の位置に移動させることによって第1のチャックの温度を変化させる処理と、ワークピースにホトレジスト・ストリップ処理を行うことを継続する処理を具備する。
【0014】
また他の実施形態においては、方法は、第1の温度で第1のバッチのワークピースに第1のホトレジスト・ストリップ処理を行う処理と、第2のチャックを第1のチャックに向けて移動させる処理と、第1の温度より低い第2の温度で第2のバッチのワークピースに清浄処理を行う処理を具備する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の一般的な特質を要約すれば、本発明の実施形態とその変形態様は、下記に図面を参照した詳細な記述から当業者にとって明瞭となるのであって、添付図面は下記の通りである。
【0016】
添付図面を参照して、ワークピースを支持するための温度制御型装置のある好適な実施形態は、ワークピース支持部に熱を入力するように構成された熱源と、ワークピース支持部から熱を除去するように構成されたヒートシンクとを具備する。図1に例示的に図解されている1つの実施形態において、熱源は第1のチャック10に設けることができ、その第1のチャック10によってワークピースが支持でき、ヒートシンクが第1のチャック10に近接して位置している第2のチャック20内に設けられている。
【0017】
一般的に、第1のチャック(または「ホット・チャック」10は、能動的に(actively) 加熱されるように構成されており、ワークピースをその上面に(またはそれから上方に延びる支持ピンの上に)おいて支持するように構成されている。第2のチャック(またはコールド・チャック)20は、一般的に第1のチャック10の温度より低い温度に維持されており、ホット・チャック10から、放射、対流、および/または、熱伝導(conductive heat transfer) によって、熱を取り除くように構成されている。ホット・チャックとコールド・チャックとの間の熱伝達(heat transfer))の比率は、たとえば、2つのチャック10と20とを隔離する距離、コールド・チャックの温度または熱伝達の比率、2つのチャックの間の空間を占めるガスの組成の量などのパラメータのいずれかを調整するか、または、熟練した技術者によって認識されている他のパラメータを調整することによって変更することができる。
【0018】
図1に図解した実施の形態において、チャック10はチャック10内に埋め込まれている電気的な加熱要素36によって加熱される。熟練した技術者は、ここで記述したように、ワークピースのチャックに使用する、適切な加熱要素または化の熱源を選択することができよう。加熱要素を備えたチャックの例示が米国特許第6,660,975号に記述されている。代替的に、ホット・チャックは、たとえば、放射型ヒータ、流体ヒータ、熱電気デバイスなどの他の手段によって加熱され得る。
【0019】
ホット・チャック10は、任意の適切な構成を取りうる。たとえば、チャック10はワークピースをそこに保持するために真空チャネルを含み得る、または、ワークピースは基本的に重力によってそこに保持され得る。ホットチャック10は任意の適切な材料で製造でき、代表的には、そのような材料は高い熱伝導度(thermal conductivity)を持つ。1実施の形態として、ホット・チャック10は、たとえば、アルミニウム・ナイトライド(AlN)などのセラミックで形成されており、約700グラムと約2,500グラムの間の質量を持ち、1つの好適な実施の形態においては約1,200グラムの質量を持つ。AlNは、比較的高い熱伝導度を持ち、高い温度に剛性(rigidity) があり、腐食に対抗性を持つ、現在のシステムに使用するために、望ましい材料である。代替的には、ホット・チャック10は任意の他の適切な金属、またはセラミック材料で製造でき得る。図解した実施の形態において、ホット・チャック10はチャンバ50(図2および図3を参照されたい)に対して安定に保持されているまたは固定されており、当該チャックはチャンバ50内に位置している。しかしながら、代替的な実施の形態においては、ホット・チャック10は処理チャンバ内に移動可能になるように構成され得る。
【0020】
コールド・チャック20も任意の適切な材料で製造され得る。1つの実施形態においては、コールド・チャック20の材料は、高い熱伝導度を持つように選択され、ある実施形態においては、コールド・チャック20はまた、好ましくは比較的小さな質量と熱容量を持つホット・チャック10に対して大きな質量と高い温度容量を持つように(すなわち、特定的な熱と密度の材料の製造物の製品であるように)選択される。ある実施形態においては、コールド・チャック20は純粋なアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成され、その質量は約3,000グラムから約10,000グラムの間であり、ある好適な実施形態においてはその質量は約5,000グラムである。それゆえ、いくつかの実施形態においては、ホット・チャックは、利益的には、コールド・チャックの質量の約20%〜約30%の範囲の質量を持ちうる。ある好適な実施形態においては、ホット・チャックはコールド・チャックの質量の約23%〜約28%の範囲の質量を持ち、ある特定的な実施形態においては、ホット・チャックの質量はコールド・チャックの約24%である。
【0021】
ある実施形態においては、約1,200グラムの質量を持つAlNセラミック製のホット・チャックを、約5,000グラムの質量を持つアルミニウム製のコール・ドチャックと組み合わせて用いることが望ましい。これらの材料は相互にユニークな好ましい物理的かつ熱的な特性を持つ。代替的には、実質的に大きな熱容量を持つ材料、たとえば、ベリリウム(beryllium)、ホウ素(boron) 、クロム(chromium)、銅などが適切な質量として用いることも出来得る。しかしながら、アルミニウム(Al)を除く金属は、代表的には、半導体製造処理期間におけるプラズマ環境において存続させ、かつ、金属汚染を回避するため、保護用メッキが設けられる。詳細は後述するある実施形態においては、ホット・チャック10とコールド・チャック20との間の隔離間隔(またはギャップ)24を増減するため、コールド・チャック20はホット・チャック10に対して移動可能であることが望ましい。
【0022】
図1に図解した実施形態においては、複数の流体流路チャンネル30がコールド・チャック20内に設けられている。複数のチャンネル30がチャック20を介して巻いてある単一の流路を規定するように直列に接続でき得ること、または、コールド・チャック20を介して複数の流体流路を提供するように並列に接続でき得ることが理解されよう。熱伝達(heat transfer)流体、たとえば、水、水とエチレン・グリコールの混合物、または、他の適切なガスまたは液体が、コールド・チャック20を冷却するために、コールド・チャック20内を循環させられる。
【0023】
そのような流体式冷却系統(システム)はまた、代表的には、コールド・チャック20内に複数のチャンネル30を介して冷却用流体を循環させるためのポンプまたは他の装置を含む。比較的低い温度で熱伝達流体を蓄積している流体源(図示せず)は、供給ライン42と戻りライン44を介してコールド・チャック20内における複数のチャンネルと連通している。流量制御弁(図示せず)は、コールド・チャック20を介して流れる熱伝達流体の流量比率を調整するために、流体ライン内に設けられ得る。代表的には、熱伝達流体の流量の比率はポンピング比率または他のパラメータを変化させることにより制御でき得る。
【0024】
他のさらなる変形態様においては、コールド・チャック20は、望ましい他の方法または装置によって冷却され得る。たとえば、コールド・チャックは複数の熱電クーラー(thermoelectric coolers: TEC's)または対象物から熱を除去可能な他の任意の装置によって冷却され得る。
【0025】
ここで図2および図3を参照すると、ホット・チャック10およびコールド・チャック20は処理チャンバ50内に示されている。図示のごとく、複数のレッグ(legs) 54が、処理チャンバ50内にホット・チャック10を支持させるために、ホット・チャック10と処理チャンバ50の下部面との間に延びるように設けられ得る。代替的には、ホット・チャック10は適切と認識される他の任意の手法で支持され得る。いくつかの実施形態においては、ホット・チャック10の位置は処理チャンバ50に対して固定され得る。代替的には、ホット・チャックは、コールド・チャック20に加えて、または、コールド・チャック20に代えて、チャンバ内において移動可能に構成され得る。多数のリフト・ピン38が、ワークピースを装荷し(loading) そして再装荷する期間、ホット・チャック10からワークピースを上昇させて外す(リフト・オフする)ために、設けることができる。
【0026】
図2および図3に図解したように、コールド・チャック20は中心カラム58によってホット・チャック10の下に支持されている。カラム58は、処理チャンバ50の下部を通してコールド・チャック20の中心から位置制御系統(システム)62まで延びている。多数のスルーホール60が、ホット・チャック10のレッグ54がホット・チャック10を通して処理チャンバ50の下部表面まで延びることを可能にするように、コールド・チャック20内に設けられることができる。代替的には、第1のチャック10は、たとえば、処理チャンバ50の側壁から延びるブラケットの上に、または、他の適切な方法で、その周辺が支持され得る。
【0027】
複数の入力通路64が、処理ガスが入力バッフル・プレート(inlet baffle plate) 65およびシャワー・ヘッド・プレート(shower head plate)66を介して処理チャンバ50に入ることを可能にするために、処理チャンバ50の頭部を介して設けられている。複数の廃棄通路68は処理チャンバ50の底部を介して設けられ得る。図示のごとく、中心開口72を持つ中心(セントラル)ドロー・バッフル(central-draw baffle )70が、コールド・チャック20の下部に設けられ得る。バッフル70は、ワークピースを越えて入力通路64から廃棄通路68まで処理ガスがより均一に流れるようにする。
【0028】
図2に示したような実施形態においては、処理チャンバ50の処理ガスから、供給ライン42、戻りライン44、ガス供給ライン74および支持カラム58を隔離するために、可撓性のあるベローズ(flexible bellows)76がカラム58の周囲に設けられている。ベローズ76はまた好ましくは、処理チャンバ50とベローズ76内の空間の間の大気の差を維持するために、コールド・チャック20をチャンバ内を垂直方向に移動するとき、曲がるように構成されている。ベローズ76は、たとえば、INCONEL(登録商標)合金または他のニッケルベースの合金などの適切な任意の耐腐食性材料(corrosion resistant material) で製造され得る。供給ライン42および戻りライン44は、ベローズ76を通りコールド・チャック20までカラム58の脇に沿って延びている。ガス供給ライン74も好ましくは、2つのチャック10と20との間のギャップ24に不活性ガスを供給するために、ベローズ76を通り支持カラム58に脇に沿って延びる。実施形態においては、図示のように、ガス供給ラインはガス出口75で終端してもよい。変形態様においては、ガス供給ライン74および/または2つのライン42、44は、コールド・チャック20に対して、および/または、2つのチャックの間のギャップ24に対して所望の流体連通が提供されるように、レッグ54を介して、または、他の任意の構造を介して、支持カラムの中心を通して経路づけることができる。さらに他の変形態様においては、ガスおよび/または流体のラインは、チャンバの側壁を通って延びることができ、(これらのラインが処理ガスからの損傷に対抗する適切な材料で製造されている場合)、直接、処理ガスに晒されてもよい。流体ラインが側壁を通して延びているガスは、コールド・チャックがチャンバ内に固定されているシステムのためには、特に利用度が高い。
【0029】
図解した実施形態において、コールド・チャック20は第1のチャック10に対して垂直方向に相対的に移動可能である。望むならば、適切なモータと位置制御装置が、支持カラム58とコールド・チャック20とをホット・チャック10に向けて、または、ホット・チャック10から離して駆動するように、設けられ得る。たとえば、いくつかの実施形態において、中心カラム58は、ラックとピニオン、または、ウォームネジによって、上昇されたり、下降されることができる。代替的には、コールド・チャック20は単一のカラムよりも複数の移動可能な支持体によって支持され得る。
【0030】
図1〜図3を参照して、温度制御型ワークピース支持の実施形態の動作方法が記述される。温度制御型ワークピース支持の実施形態は利益的には、広範囲の温度にわたって、ホット・チャック10を迅速に加熱し、冷却することを可能にする。ホット・チャック10の温度は通常、ホット・チャック10内のヒータ36に供給する電力を増加させることによって(または、流体加熱系統の流体の温度または流量比率を変化させることによって)上昇させることができる。ホット・チャック10の温度を低下させることは、ホット・チャック10からコールド・チャック20への熱伝達の比率を変化させることによって達成することができる。ホット・チャック10とコールド・チャック20との間の熱伝達の比率は、たとえば、ホット・チャック10とコールド・チャック20とを分離(隔離)しているギャップ24の寸法、コールド・チャックの温度、2つのチャックの間の空間を占めるガスの量とガスの種別、または、他の熟練技術者によって認識されている他のパラメータなどのパラメータのあるものを調整することによって変化させることができる。
【0031】
好適な実施形態においては、不活性ガスが2つのチャックの間の隔離(分離)間隔(またはギャップ)24に連続的に注入される。このことは、その不活性ガスによる「自由対流」および(ある程度の)熱伝導(conduction)によって、ホット・チャックからコールド・チャックに熱が伝導されることを可能にする。熟練技術者は、ガスの種類と、そのガスの注入比率および/またはガスの除去比率が2つのチャックの間の熱伝達の比率に影響を及ぼすことを認識しているであろう。もし、2つのチャック10、20が物理的に接触している場合、熱伝達がそれら2つのチャックの間の熱伝達において支配的なモードとなる。熟練技術者は、熱伝導(conductive heat transfer)が、温度差、および、2つのチャック材料の比熱(specific heat )、さらに他の要因に依存することを認識していよう。それゆえ、好適な実施形態においては、ホット・チャック10の温度は、ホット・チャック10とコールド・チャック20との間のギャップ24を増減することにより(ゼロにすることも可能である)、制御される。
【0032】
ここでは、用語「熱結合(または、熱的に結合すること、thermal couple)」は、通常の意味で用いられており、所望のレベルまでまたは所望のレベル以上に、ホット・チャックとコールド・チャックとの間の熱伝達の比率を増加させる作用には制限がないものと考えている。熟練技術者は、熱伝達の最大比率がホット・チャックとコールド・チャックとを直接物理的に接触させることによって達成されることを認識していよう。しかしながら、2つのチャックを「熱結合」させるためる十分な熱伝達の所望のレベルは、与えられた系統のために可能な最大値よりも低くても良い。それゆえ、いくつかの実施形態においては、2つのチャックが相互に接近しているが(約2mm未満に接近しているが)相互に直接物理的に接触はしていないとき、2つのチャックが「熱的に結合されている」と考えられる。同様に、用語「熱非結合(または、熱的結合が解かれていること、thermal decouple)5は、通常の意味で用いられており、所望の最小値まで、ホット・チャックとコールド・チャックとの間の熱伝達の比率を減少させる作用には制限がないものと考えている。熟練技術者は、熱伝達の比率の所望の最小値が与えられた系統が実現可能な絶対的な最小値である必要がないことを認識していよう。
【0033】
高温(たとえば、約110℃以上の温度)での処理のために、ホット・チャックからコールド・チャックへの熱伝達の比率は、2つのチャックを熱的に非結合させる(熱的な結合を解く)ことによって増加させることができる。いくつかの実施形態においては、2つのチャックが、ホット・チャック10からコールド・チャック20を下方に離して移動させることによって熱的に非結合にされる。1つの実施形態においては、コールド・チャック20がホット・チャック10から少なくとも約0.5インチ(約1.27cm)だけ位置を移動されると、コールド・チャック20はホット・チャック10から熱的に非結合にされる。さらに他の実施形態においては、2つのチャックがより小さな距離またはより大きな距離だけ離されているとき、または、2つのチャックの間のギャップに注入される冷却流体またはガスの流量比率などの他のパラメータが特定のレベルに調整されるとき、2つのチャックが熱的に非結合されるように構成され得る。
【0034】
低温(たとえば、約110℃以下の温度)での処理のために、コールド・チャック20はホット・チャック10の上方にまたはホット・チャック10に向かって移動される。好ましくは、コールド・チャック20は、ホット・チャック10とコールド・チャック20との間の熱伝達の比率を増加させるように、ホット・チャック10と接触状態になるように移動可能である。さらに他の変形態様においては、2つのチャックの間の熱伝達の比率を変化させるために、ホット・チャックとコールド・チャックとの間に、中間の熱伝達性構造または材料、または、中間の熱隔離構造または材料を配置することができる。
【0035】
1つの実施形態においては、ホット・チャック10の所望の温度は、熱電対80から温度測定値を受け入れ、ここで討議している熱伝達の比率に影響を与えるパラメータを制御するように構成されている外部の閉ループ式温度制御器(図示せず)によって制御される。もしホット・チャック10の測定温度が所望の温度より高いときには、制御器が加熱要素36に供給される電力を低減し、または、電力の供給を停止する。制御器はまた、2つのチャック10、20の熱的な結合を行うために、コールド・チャック20の温度をホット・チャック10の温度に向かって上昇させる。
【0036】
いくつかの実施形態においては、コールド・チャック20がホット・チャック10から約0.5インチ(約1.27mm)未満だけ離れた位置に移動されると、コールド・チャック20がホット・チャック10と熱的に結合される。特定的な実施形態においては、コールド・チャック20がホット・チャック10と接触するまで移動されると、コールド・チャック20はホット・チャック10と熱的に結合される。コールド・チャック20がホット・チャック10と接触すると、代表的には、ホット・チャック10の温度が、コールド・チャック20の質量と熱容量と比較するとホット・チャック10の質量と熱容量が低いことにより、急速に低下する。コールド・チャック20の温度は、コールド・チャック20の質量とその熱容量に起因して、適度に上昇する。
【0037】
討議したように、ホット・チャック10とコールド・チャック20との間にガスが存在するとき、ホット・チャック10とコールド・チャック20との間の熱伝達の比率を増加させるために、不活性ガスがホット・チャック10とコールド・チャック20との間に供給されうる。たとえば、ホット・チャック10とコールド・チャック20とが相互に物理的に接触しているとき、2つのチャックの対向面における面の不均一さ(rough variations)の結果として、ギャップが存在する可能性がある。熟練技術者は、もし真空状態の場合よりもガスが存在している場合、熱が任意のギャップを横切って迅速に伝達されることを認識していよう。したがって、いくつかの実施形態においては、不活性ガスが可能な限り高い熱伝導度を持つものとして選択されることができる。それゆえ、ホット・チャック10とコールド・チャック20との間の熱の均衡が比較的迅速に到達され得る。
【0038】
所望の範囲にホット・チャック10の温度を維持するために、制御器がホット・チャック10から伝達される熱の比率を増減するシステムパラメータを調整することができ、その結果として、ホット・チャック10の温度を増減することができる。実施形態によれば、ホット・チャック10の測定温度が所望の温度より低い場合、制御器が、ホット・チャック10の温度を上昇させるために、ホット・チャック10の加熱要素36を再び活動させる。ホット・チャック10の望ましい低い質量と熱容量とが、ホット・チャック10の温度が迅速に変化することを可能にする。もし測定した温度がホット・チャック10の所望の温度より高い場合は、ホット・チャック10とコールド・チャック20から余剰の熱を除去するために熱伝達(heat transfer)流体がコールド・チャック20を介して循環している間、加熱要素36は駆動されない状態が維持される。
ある実施形態においては、図解したワークピース支持装置は、集積回路ワークピースから有機ホトレジストを剥離(ストリップ)するためのマイクロウェーブアッシャ内に用いることができる。そのアッシャは、処理チャンバの酸素基および/またはフッ素基(fluorine radicalのアップストリームを生成する遠隔式(リモート)マイクロウェーブプラズマ源を用いることができる。代替的には、その装置は、処理チャンバ内に内部高周波(RF)プラズマ発生装置を用いることができる。
【0039】
前に注目したように、図解した装置のいくつかの実施形態は、ホトレジスト・ストリップ(剥離)処理および/または清浄造作のために特に有用である。ホトレジストは、半導体製造の種々の段階におけるワークピースに適用され、ワークピースから除去される。下記の例示に記述されるように、図解した装置は多くのレジスト・ストリップ処理の文脈において実用性を示している。たとえば、図解した装置は特に、2段階ホトレジスト・ストリップ処理に有用であり、その2段階ホトレジスト・ストリップ処理においては、ある処理段階が他より高い温度で処理を行う。ホット・チャック10とコールド・チャック20との間の熱伝達の比率を調整することにより、1つの処理段階が、処理チャンバ50からワークピースを取り出すことなく、他の処理の後、直後に遂行され得る。さらに、異なるバッチのワークピースが、図解した装置を用いて異なる温度で処理することができる。第1バッチのワークピースは、第1の温度で処理チャンバ50内で処理することができる。それから、ホット・チャック10とコールド・チャック20との間の距離を調整することによって(あるいは、2つのチャックの間の熱伝達の比率に影響を与える他のパラメータを調整することによって)、第2バッチのワークピースが、上記処理の直後に、第2の温度で処理チャンバ50内で処理できる。
【0040】
図4は、2段階ポスト・インプラント(post-implant)・レジスト・ストリップ処理における温度制御型ワークピース支持装置を用いた方法の1例示を図解している。半導体製造の初期段階の期間、半導体基板の領域は、ホトレジスト・マスクを介してドーパント(たとえば、ホウ素、リン、ヒ素)が注入される。多くの他のドーピング段階において、マスクを介してイオン注入が同様に行われる。イオン注入処理は、ホトレジストの頭部の表面に固化外皮(固化クラスト、hardened crust)を生じさせる。高温度段階の期間に出てくるガスが、部分的に製造されたワークピースと反応容器の両者を損傷させる可能性がある爆発的な圧力がホトレジスト内に形成されるまで、固化クラストによって捕捉される可能性がある。これまでは、過剰なガスの発生を回避しこの危険を最小にするため、低温度でのストリップ処理が用いられている。
【0041】
それゆえ、レジスト・ストリップ処理の実施形態において、熱伝達流体がコールド・チャック20を介して循環され、捕捉されたクラストがホトレジストから除去されるまで低温で第1のストリップ処理がまず行われる期間、ステップ120、ホット・チャック10とコールド・チャック20とが熱的に結合される。初期段階の期間のワークピースの温度は好ましくは約100℃〜140°の間に維持される、さらに好ましくは約110℃〜125℃の間に維持される。反応ガスとして下記のガスが含まれ得る、レジストの酸化を促進するオキシダント(たとえば、O 、好ましくは、酸素基(酸素ラジカル)に変換されたもの)、注入部分の除去を促進するためフッ素ソース(たとえば、NF またはCF、好ましくは、フッ素基に変換されたもの)、および、希釈ガス(diluting gas) (たとえば、HeまたはAr)および/またはキャリアとして提供する形成ガス(H /H )。反応物(リアクタント)が任意の方法で、ワークピースの表面に提供され得る。基(ラジカル)が遠隔式マイクロウェーブプラズマ発生装置または他の適切なプラズマ源に発生され得る。レジストの注入された上部は代表的には、約30秒で除去される。
【0042】
一旦クラストが除去されると、ホット・チャック10とコールド・チャック20とは熱的に非結合にされ(熱的な結合が解かれ)、ステップ130、ホット・チャック10の温度が上昇し、ステップ140、反応が継続する、ステップ150。好ましくは、温度は、約150℃〜300℃の間まで上昇する、さらに好ましくは約200℃〜250℃の間まで上昇する。この高温処理段階の期間、コールド・チャック20は好ましくは、ホット・チャック102ら熱的に非結合にされる。たとえば、コールド・チャック20はホット・チャック10から少なくとも0.5インチ(12.7mm)だけ離されて移動され得る。一旦ホット・チャック10がコールド・チャック20から隔離されると、電気的な加熱要素36がホット・チャック10の温度を上昇させる。同じ反応化学物質(reactant chemistry) が第2段階のステップ処理の期間流され続ける。しかしながら、ある実施形態においては、N (または形成ガス)がO とともに流れ、フッ素の流れは継続されない。上昇した温度はエッチング比率を非常に高め、それにより、ワークピースのスループットを向上させる。特に、約250℃の温度は7μm/分のスループット比率をもたらす。約1μmの代表的なホトレジスト・マスクはしたがって、約5〜10秒以内に除去され得る。
図5を参照して、ポスト・ビア(post-via)レジスト・ストリップ処理における温度制御型ワークピース支持装置を用いた方法を述べる。いくつかの半導体製造処理期間における種々の段階において、複数のビアが層(レイヤー)、代表的には、TEOS(tetraethylorthosilicate )から形成されたBPSG(borophosphosilicate )または酸化物(oxides)などの絶縁層を介して生成される。ホトレジスト・マスクが所定のパターンに照射されて現像(展開)され、正のレジストが用いられるか負のレジストが用いられるかに依存して、現像されたレジストまたは現像されなかった(未現像の)レジストが除去される。ビアはそれから、パターン化されたホトレジスト・マスクを介して、そして、アンダーレイヤー、代表的には、酸化部分(oxide )の照射部分を介して、形成される。
【0043】
ビアの形成の後、ホトレジスト・マスクが除去される。不幸なことに、ビア形成の処理は、しばしば除去することが難しい有機残留物(organic residue )をビア内に生成する。この残留物はしばしば、この業界において、ポリマー「ベイル(veil) 」として参照されており、特に、製造のバックエンドまたは金属化段階のためのビアの、その後に続く反応性イオンエッチング処理の問題となる。このポリマー残留物を除去するために、比較的強力な清浄用化学物質がしばしば使用されている間、構造物へのオーバーエッチングがビア内の照射された特性に対して損傷を与える危険がある。したがって、比較的低い温度での迅速なレジスト・ストリップ処理の後、ポスト・ビア形成清浄を行うことが利益となる。
【0044】
ホット・チャックとコールド・チャックとが熱的に非結合であり(熱的な結合が解かれており)、ステップ210、そして、ホット・ワークピース・チャック10の温度が上昇しているとき(たとえば、200℃〜250℃)、ポスト・インプラント処理の第2段階に関して上記に開示したように、高い温度のレジスト・ストリップ処理が迅速な比率で行われ得る、ステップ220。反応物(リアクタント)もまた、上述した例示において討議したように、オプショナルなフッ素の流れとともに、提供され得る。1つの実施の形態において、熱的な非結合が、ホット・チャック10から少なくとも0.5インチ(12.7mm)離して移動させることにより、実現される。
【0045】
図解した2つのチャックシステムは、高温度でのレジスト・ストリップ処理、ステップ220、として同じ処理チャンバ内において行われるべきポスト・ビア清浄を可能にする。したがって、高温度でのレジスト・ストリップ処理の後、ステップ220の後、ホット・チャックとコールド・チャックとが熱的に結合され、ステップ230、「ホット」チャック10が低温度での清浄処理、ステップ250のために、冷却され得る、ステップ240。ポスト・ストリップ・清浄処理の期間、ワークピースの温度が代表的には、ほぼ室温と約100℃の間、より好ましくは約50℃と約80℃の間に、保持される。この処理の期間の化学物質は好ましくは、オキシダント(O )、希釈ガス(たとえば、He、Ar、および/または、H /N などの形成ガス)、および、フッ素ソースガス(たとえば、NF またはCF )を含む。ポリマーの除去を援助している期間、フッ素もまた、ビアの側壁の酸化物を攻撃する。オキシダントとフッ素リアクタントは、反応チャンバの上流に形成されたラジカル(基)を具備しうる。
【0046】
ポスト・ストリップ・清浄処理は、チャンバ内にある高周波(RF)プラズマ発生器を用いることができ、処理の期間において低下した温度を補償する。N または形成ガスはプラズマ放電の維持を助ける。さらに、酸素とフッ素のソースを用いた処理の直後に、オプアョナルな物理的なスパッタ・エッチングが簡単に適用できる。
【0047】
ビア清浄処理段階、ステップ250が終了すると、ワークピースがチャンバ50から除去される、ステップ260。コールド・チャック20とホット・チャック10とがそれから熱的に非結合にされ、ステップ270、ホット・チャック10が再び他のワークピースのための準備として加熱される、ステップ280。
【0048】
図6は後述するde−scum処理において使用する温度制御型ワークピース支持装置を用いる方法の例示を図解している。上記で討議したように、ある半導体製造における種々の段階において、ホトレジスト・マスクが所望のパターンに選択的に照射されて現像され、現像されたレジストまたは現像されていないレジストが、(正のレジストが行われたか負のレジストが行われたかに依存して)除去される。現像されたレジストまたは未現像のレジストの除去の後、しばしば、薄いポリマー残留物が残る。望ましくは、残留物を除去するために、エッチングまたは他のマスクする処理(たとえば、イオン注入処理)の前に、清浄処理または「de−scum」処理が行われる。
【0049】
それゆえ、図6に図解した実施の形態において、第1の現像チャンバ(図示せず)の中でレジスト層が現像される(展開される)、ステップ310。現像段階の後または現像段階の期間、処理チャンバ50内の二重(dual)チャックシステムの2つのチャック10、20は、熱的に結合されて、ステップ320、ワークピース支持チャック10が所望の「冷却(cool) 」温度まで冷却される。それから、2つのワークピースが「冷却」チャックシステムに装荷され、ステップ330、de−scum処理が「冷却」温度で行われる、ステップ340。de−scum処理は好ましくは、ホトレジスト・マスクの除去を回避するため、比較的低い温度(たとえば、約100℃)で行われる。de−scum処理が終了すると、ワークピースが処理チャンバ50から取り外されて、ステップ350、マスク化処理またはエッチング段階のために他のチャンバに移動される、ステップ360。マスク化処理の後またはマスク処理の期間、二重チャックシステムのホット・チャック10およびコールド・チャック20は熱的に非結合にされ、ステップ370、所望の「高い」温度まで上昇させられる。ワークピースはそれから処理チャンバ50内に再装荷され、ステップ380、レジスト・ストリップ処理が行われ得る、ステップ390。
【0050】
熟練技術者は、ワークピースがここで述べた処理に従って、「バッチモード」または個別モードにおいて、処理され得ることを認識するであろう。たとえば、ある実施の形態において、新しいウエハの処理の前に、単一のウエハが図6に図解した方法によって処理され得る。代替的には、2またはそれ以上のワークピースが、同時に処理するために、図6の種々の処理チャンバの間で移動され得る。それゆえ、1または両者のチャンバのオーバーヘッド時間を最小にするため、1バッチのワークピースが2つのチャンバを介してサイクル的に循環される。ここで開示した観点において、実施の形態によって理解されるように、他の構成において、1バッチのワークピースが、2つのチャックの非結合処理、および、「高い」温度での1バッチのウエハの処理の前に、「冷却」温度で処理チャンバ50内において二重チャック装置を用いて処理され得る。そのようなバッチ処理サイクルまたは個別処理サイクルはまた、(異なるチャンバ内で行われる中間の処理と共に、あるいは、そのような処理なしに)高温処理が低温処理によって続けられる処理に適用できる。
【0051】
再び図5を参照すると、シリコンまたは他の酸化物の損失を低減するために、温度制御型ワークピース支持装置を用いる方法の1例示が記述される。ポストビア・ストリップ処理に関連づけて討議したように、バックエンド金属化処理の期間、RIEによって形成された複数のビア内の残留物が、ホトレジスト・ストリップ処理の後、清浄にされる。しかしながら、コンタクト開口または穴もまた、ウェトエッチング、ドライ・ベーパー・エッチングまたはRIEのいずれかによって、集積回路製造の種々の他の段階において形成される。
【0052】
集積回路は、導電性要素を電気的に絶縁するため多くの誘電体要素を含む。そのような誘電体要素の共通の材料は、シリコン・ナイトライド(窒化シリコン)もまた多くの用途において通常使用されているにもかかわらず、種々の形態におけるシリコン・オキサイド(酸化シリコン)である。
【0053】
導電性要素のなかで電気的な接触を形成する場合において、コンタクトホールまたは開口は、インターレベル・ダイエレクトリック(ILD、interlevel dielctrics )として知られている絶縁層を介して形成される。半導体基板内の領域を活性化するコンタクトホールを開口することは、しばしば、トランジスタのゲート電極を越えて絶縁用(insulative)側壁スペーサを照射する。そのようなコンタクトエッチングはまた代表的には、基板う越えて犠牲オキサイド(sacrificial oxid)を照射する。これらの例示の各々において、ホールまたはビアを規定するためマスクが用いられ、そして、エッチング処理がオキサイド表面を照射する。
【0054】
そのようなオキサイド表面は、回路設計によって選択された寸法を規定する。集積回路(IC)の動作速度を高速にし、電力消費を低減することを実現することを高めるためにデバイス・パッキング密度(device packing density)が連続するとき、これらの寸法を維持することがより重要であり、オーバーエッチングのための耐久性(toleranc)がそれと釣り合って減少される。それゆえ、ホトレジスト・マスクの除去の後の開口を清浄にすることが、照射された絶縁性表面のオーバーエッチングを回避するために、注意深く制御されることが、非常に重要である。
【0055】
したがって、オキサイドの損失を低減する方法の実施の形態は、ホット・チャックとコールド・チャックとの熱的な非結合処理、ステップ210を具備し、それから、(好ましくは約100℃と300℃の間の)高温で、(より好ましくは約200℃〜250℃の範囲の)高温で、ポストコンタクト・エッチング・レジスト・ストリップ処理の第1段階を行う、ステップ220。例示的なリアクタントの流量は、N :Oの比率が1:10である。
【0056】
ポストコンタクト・エッチング・レジスト・ストリップ処理の後、低温度でポスト・ストリップ・清浄処理を行うために、二重チャック装置が使用され得る。したがって、ホット・チャックとコールド・チャックとは熱的に結合され、ステップ230、ホット・チャックが所望の温度まで冷却され、ステップ240、ポスト・ストリップ・清浄処理が行われる、ステップ250。ポスト・ビア清浄処理に関連づけて留意したように、フッ素はリソグラフィ・バイ・プロダクト(lithography by-product)の酸化表面の清浄を助ける。望むならば、比較的少ないパーセント(比率)のフッ素ガスソース(たとえば、約5%CF 未満)がフローに加えられる。
【0057】
利益的には、遠隔式プラズマ発生器に加えて、RFプラズマを用いることが、与えられたエッチング比率のために要求される処理温度を低くする。低温度の清浄段階、ステップ250の期間、ホット・チャック10の温度は好ましくは、約15℃〜100℃の範囲、より好ましくは約20℃〜100℃の範囲、さらに好ましくは約25℃〜50℃の範囲に、維持される。迅速なエッチング比率にも拘らず、ポスト・ストリップ・清浄処理はRF電極が給電される時間を制限することによって、厳格に制御されうる(その時間はたとえば、15秒である)。
上述した2段階処理の例示に加えて、図1〜図3の二重チャック装置が、高温度で行われる単一の温度処理を含む、任意の所望の処理のためのワークピースのスループットを利益的に増加させることができる。そのような向上したスループットは、ワークピースの・ポスト処理冷却の速度と効率を改善することによって達成され得る。
【0058】
図7に例示として図解した、そのような処理のために、迅速なレジスト・ストリップ処理段階、ステップ420、(好ましくは約100℃〜300℃の範囲、より好ましくは200℃〜250℃の範囲で行うレジスト・ストリップ処理)は、ワークピースが商業用保存カセットによって耐用可能なレベルにホット・チャック10に位置されている期間、ワークピースの温度を低下させることが続けられ得る、ステップ440。その方法は一般的には、コールド・チャック20をホット・チャック10に熱的に結合する処理段階、ステップ430を含み、ワークピースおよびホット・チャック10の温度を所望の除去温度まで低下させる、ステップ440。ある実施の形態においては、ワークピースとチャックとは約100℃未満の温度、ある実施の形態においては約70℃未満の温度まで、冷却される。それゆえ、ワークピースはホット・チャック10と処理チャンバ50から除去され、ステップ450、そして、チャンバ・ゲート弁を開け、ワークピースを乗せるために転送ロボットを広げるのに要求されている時間を越えて待機することなく、低温度の貯蔵カセット内に直接、配置される。
【0059】
したがって、複数の利益が上述した装置において得られる。たとえば、異なる温度で2段階の処理を要求する処理が、同じ処理チャンバ内で効率的に行われる。さらに、低価格の貯蔵カセットに配置する前にワークピースを冷却するために従来使用されている分離型冷却ステーションを除去することにより、ワークピースのスループットが向上する。
【0060】
ここではある複数の実施の形態と例示が記述されたが、この開示において示され、記述された方法と装置についての種々の観点が、さらなる実施の形態を形成するために、異なるように組み合わせたり、および/または、改変することが、当業者によって理解されうる。さらに、ここで記述された方法が、繰り返し段階を行うために適切な任意の構造を用いて実施されることが認識されよう。そのような変形態様、および/または、上述した方法と装置の使用、そして、明らかな改変とその均等物は、この開示の範囲内にあるべきことが意図されている。それゆえ、本発明の範囲は上述した特定的な実施の形態によって限定されるべきではなく、特許請求の範囲に記載の内容を公平に読むことによってのみ決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、温度制御型二重チャック装置の概略的な図解を示す図である。
【図2】図2は、処理チャンバ内に設けられた二重チャック装置の概略的な断面を示す図である。
【図3】図3は、図2に図解した装置を拡大した、断面を示す斜視図である。
【図4】図4は、二重チャック装置を用いた1の方法を図解したフローチャートである。
【図5】図5は、二重チャック装置を用いた他の方法を図解したフローチャートである。
【図6】図6は、二重チャック装置を用いた他の方法を図解したフローチャートである。
【図7】図7は、二重チャック装置を用いたさらに他の方法を図解したフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバ内のワークピースを支持する装置であって、当該装置は、
前記ワークピースを支持する表面を有する第1のチャックに結合されたヒータと、
冷却デバイスを有する第2のチャックであって、前記冷却デバイスが当該第2のチャックに結合されている、第2のチャックと
を具備し、
前記第2のチャックは、前記第1のチャックと前記第2のチャックとの間の熱伝達の比率を変化させるために前記第1のチャックに熱的に結合可能である、
装置。
【請求項2】
前記第1のチャックと前記第2のチャックとの間の熱伝達の比率を変化させることによって前記第1のチャックの温度を制御するようにプログラムされている制御装置をさらに具備する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記冷却デバイスは、前記第2のチャックを介して熱伝達流体を循環させるため、前記第2のチャックを介して延びる流体通路を具備する、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第2のチャックは、前記第2のチャックを前記第1のチャックに向かっておよび前記第1のチャックから離れて選択的に移動させるように構成されている位置制御装置に結合されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ヒータは電気抵抗式加熱要素を具備する、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1のチャックと前記第2のチャックとの間の空間にガスを注入するように構成されている、少なくとも1つの流体アウトレットをさらに具備する、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記流体アウトレットは、前記第2のチャックの上面にある、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第2のチャックは、前記第1のチャックの垂直方向の下部に位置する前記処理チャンバ内に配設されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第2のチャックは、前記第1のチャックの下表面と接触して移動すべきように構成されている上表面を具備する、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記第2のチャックは、前記第1のチャックから少なくとも0.5インチ(1.27cm)離れて移動可能である、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第2のチャックは、ベローズによって包囲されている中心カラムによって支持されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記第2のチャックは、アルミニウムまたはアルミニウム合金で製造されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記第1のチャックは、セラミック材料で形成されている、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記セラミック材料は、アルミニウム・ナイトライドである、
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
第1の加熱されたチャックと第2の冷却されたチャックを具備する装置内のワークピースを処理する方法であって、当該方法が下記の諸段階、すなわち、
前記ワークピースを前記第1のチャックに配置する段階、
前記第2のチャックを前記第1のチャックに対して相対的な第1の位置に位置決めする段階、
第1の温度で前記ワークピースに第1の処理を行う段階、
前記第2のチャックが前記第1のチャックに対して相対的な第2の位置に位置するまで、前記第2のチャックを前記第2のチャックに対して相対的に移動させる段階、および、
第2の温度で前記ワークピースに第2の処理を行う段階
を具備する方法。
【請求項16】
当該方法は、チャンバから前記ワークピースを取り除く段階をさらに具備する、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のチャックを移動させる段階は、前記第2のチャックを前記第1のチャックに対して相対的に垂直に移動させる段階を具備する、
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
当該方法は、前記第1のチャックと前記第2のチャックとの間の空間にガスを注入する段階をさらに具備する、
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
当該方法は、前記第2のチャックを介して冷却流体をポンピングする段階をさらに具備する、
請求項15に記載の方法。
【請求項20】
当該方法は、前記第1のチャック内の電気抵抗式ヒータに電力を供給する段階をさらに具備する、
請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の温度は前記第2の温度より低く、前記第1の位置は前記第2の位置より前記第1のチャックに接近している、
請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記第2のチャックを前記第1の位置に配置する段階は、前記第2のチャックを前記第1のチャックに接触させて配置する段階を具備する、
請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の処理は、低温度のリジスト・ストリップ処理である、
請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の処理は、de−scum処理である、
請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記de−scum処理の後前記チャンバから前記ワークピースを取り除き、第2のチャンバにおいてレジスト・マスクを用いて第2の処理を行う段階をさらに具備する、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記チャンバに前記ワークピースを戻し、高温度で第3の処理を行う段階をさらに具備する、
請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第3の処理は、リジスト・ストリップ処理である、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1の温度は前記第2の温度より高く、前記第1の位置は前記第2の位置より前記第1のチャックから離れている、
請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の位置に前記第2のチャックを位置決めする処理は、前記第1のチャックの下部の少なくとも0.5インチメートル(1.27cm)において前記第2のチャックを位置決めする処理を具備する、
請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の処理は、高温度でのリジスト・ストリップ処理である、
請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の処理は、低温度での清浄処理である、
請求項28に記載の方法。
【請求項32】
第1のチャックおよび第2のチャックを具備する装置内においてワークピースを処理する方法であって、当該方法は下記の段階、すなわち、
前記ワークピースを前記第1のチャックに配置する段階であって、ここで、前記第2のチャックは前記第1のチャックより第1の距離だけ離れている、段階と、
前記ワークピースにホトレジスト・ストリップ処理を開始する段階と、
前記第2のチャックを前記第1のチャックから第2の距離だけ離れた位置に移動させることにより前記第1のチャックの温度を変化させる段階と、
前記ワークピースにおける前記ホトレジスト・ストリップ処理を行うことを継続する段階と
を具備する、方法。
【請求項33】
前記第1の距離は前記第2の距離より短く、前記第1の温度は前記第2の温度より低い、
請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の距離は前記第2の距離より長く、前記第1の温度は前記第2の温度より高い、
請求項32に記載の方法。
【請求項35】
第1のチャックおよび第2のチャックを具備する装置内においてワークピースを処理する方法であって、当該方法は下記の段階、すなわち、
前記第2のチャックが前記第1のチャックから第1の距離だけ離れている間、第1の温度で第1バッチのワークピースに第1のホトレジスト・ストリップ処理を行う段階と、
前記第2のチャックを前記第1のチャックから第2の距離だけ離す段階であって、ここで、当該第2の距離は前記第1の距離より接近している、段階と、
前記第2のチャックが前記第1のチャックに対する前記第2の距離にある間、前記第1の温度より低い第2の温度で第2のバッチのワークピースに清浄処理を行う段階と
を具備する、方法。
【請求項36】
前記第1の温度は、約150℃と約300℃との間の温度である、
請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記清浄処理は、前記ワークピースの上にホトレジスト・マスクを現像した後であるが、前記ホトレジスト・マスクを介して前記ワークピースにおける処理を行う前に、前記第2のバッチのワークピースに行うde−scum処理である、
請求項35に記載の方法。
【請求項38】
処理チャンバ内においてワークピースを処理する方法であって、当該方法は下記の段階、すなわち、
第1のチャックを第1の温度まで加熱する段階と、
第2のチャックを前記第1の温度より低い第2の温度まで冷却する段階と、
前記第1のチャックの支持面に処理すべきワークピースを配置する段階と、
前記第1のチャックと前記第2のチャックとの間の熱伝達の比率を調整することにより前記第1のチャックの温度を制御する段階と
を具備する、方法。
【請求項39】
前記熱伝達の比率を調整する処理は、前記第1のチャックを前記第2のチャックから物理的に隔てる距離を変化させる処理を具備する、
請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第1のチャックを前記第2のチャックから物理的に距離を隔てる処理は、前記第1および第2のチェックを直接物理的に接触させるように配置する処理を具備する、
請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記熱伝達の比率を調整する処理は、前記第1のチャックと前記第2のチャックの間の空間に導入するガスの流量を制御する処理を具備する、
請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記熱伝達の比率を調整する処理は、前記第2のチャックから除去される熱の比率に影響を及ぼすパラメータを変化させる処理を具備する、
請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記熱伝達の比率を調整する処理は、前記第2のチャックを介して循環する冷却流体の流量の比率を変化させる処理を具備する、
請求項42に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−515781(P2007−515781A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532812(P2006−532812)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/014093
【国際公開番号】WO2004/102640
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505413587)アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド (53)
【Fターム(参考)】