説明

形状可変素子及びそれを有するレンズ装置

【課題】 色収差及び諸収差を良好に補正可能な形状可変素子およびこれを用いた光学系を提供すること。
【解決手段】 複数の光学材料からなり、少なくとも一面の形状を変化させることが可能な形状可変素子であって、該形状可変素子を構成する該複数の光学材料のうち少なくとも1つは、
|θgF−(1.665×10-7×νd+5.213×10-5×νd
−5.656×10-3×νd+0.7278)| > 0.0272
を満足する。但し、νdはd線に関するアッベ数、θgFはg線とF線に関する部分分散比であり、ng、nF、nd、nCをそれぞれg線、F線、d線およびC線に関する屈折率としたとき、
νd=(nd−1)/(nF−nC)、 θgF=(ng−nF)/(nF−nC)
である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子に関し、特に面形状を変化させる形状可変素子及びそれを有するレンズ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやビデオカメラ等の光学機器に用いられる光学系には高性能であり、かつ小型軽量であることが求められている。一般に、光学系は小型化を図るほど諸収差、特に軸上色収差や倍率色収差に代表される色収差が多く発生し、光学性能が低下する。
【0003】
既存のガラス等の光学材料のみを用いた光学系では、高性能化と小型軽量化を同時に満足することは難しい。このため、光学系の一部に、界面の面形状を変化させて屈折力を変化させる形状可変素子を用いる方法が知られている。
【0004】
このような形状可変素子は、屈折力が固定の光学素子と比較して、収差補正の自由度が大きい。色収差を考慮した形状可変素子を含む光学系が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−518133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された従来技術では、形状可変素子で発生する色収差を低減させる波長分散の条件が考慮されているが、光学系全系としての色収差を補正するための特性とはなっていない。また、可視領域における短波長側の分散特性が考慮されていない。
【0007】
そこで、本発明は、色収差及び諸収差を良好に補正可能な形状可変素子およびこれを用いた光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の形状可変素子は、複数の光学材料からなり、少なくとも1つの面の形状を変化させることが可能な形状可変素子であって、該形状可変素子を構成する該複数の光学材料のうち少なくとも1つは、
【0009】
|θgF−(1.665×10−7×νd+5.213×10−5×νd
−5.656×10−3×νd+0.7278)| > 0.0272
を満足することを特徴とする。但し、νdはd線に関するアッベ数、θgFはg線とF線に関する部分分散比であり、ng、nF、nd、nCをそれぞれg線、F線、d線およびC線に関する屈折率としたとき、
νd=(nd−1)/(nF−nC)
θgF =(ng−nF)/(nF−nC)
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、面形状を変化させて屈折力を変化させる形状可変素子であって、光学系に用いた場合に色収差等を十分に補正する(低減する)ことが可能な光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電気駆動方式の形状可変素子の構成例を説明する図である。
【図2】弾性膜駆動方式の形状可変素子の構成例を説明する図である。
【図3】本発明の実施例1である形状可変素子を用いた光学系の広角端(a)及び望遠端(b)の断面図である。
【図4】実施例1の光学系の広角端(a)、中間ズーム位置(b)、望遠端(c)での収差図である。
【図5】本発明の実施例2である形状可変素子を用いた光学系の広角端(a)及び望遠端(b)の断面図である。
【図6】実施例2の光学系の広角端(a)、中間ズーム位置(b)、望遠端(c)での収差図である。
【図7】本発明の実施例3である形状可変素子を用いた光学系の広角端(a)及び望遠端(b)の断面図である。
【図8】実施例3の光学系の広角端(a)、中間ズーム位置(b)、望遠端(c)での収差図である。
【図9】本発明の実施例4である形状可変素子を用いた光学系の無限遠合焦時の断面図である。
【図10】実施例4の光学系の無限遠合焦時(a)、結像倍率−0.5の場合(b)、結像倍率−1.0の場合(c)での収差図である。
【図11】本発明の実施例5である形状可変素子を用いた光学系の無限遠合焦時の断面図である。
【図12】実施例5の光学系の無限遠合焦時(a)、結像倍率−0.5の場合(b)、結像倍率−1.0の場合(c)での収差図である。
【図13】本発明の実施例6である形状可変素子を用いた光学系の無限遠合焦時の断面図である。
【図14】実施例6の光学系の無限遠合焦時(a)、結像倍率−0.5の場合(b)、結像倍率−1.0の場合(c)での収差図である。
【図15】本発明の実施例7である形状可変素子を用いた光学系の広角端(a)及び望遠端(b)の断面図である。
【図16】実施例7の光学系の広角端(a)、中間ズーム位置(b)、望遠端(c)での収差図である。
【図17】本発明の実施例8である形状可変素子を用いた光学系の広角端(a)及び望遠端(b)の断面図である。
【図18】実施例8の光学系の広角端(a)、中間ズーム位置(b)、望遠端(c)での収差図である。
【図19】本発明の実施例9である形状可変素子を用いた光学系の広角端(a)及び望遠端(b)の断面図である。
【図20】実施例9の光学系の広角端(a)、中間ズーム位置(b)、望遠端(c)での収差図である。
【図21】本発明の実施例10である形状可変素子を用いた光学系の広角端(a)及び望遠端(b)の断面図である。
【図22】実施例10の光学系の広角端(a)、中間ズーム位置(b)、望遠端(c)での収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
特許文献1に開示された従来技術の形状可変素子では、形状可変素子で発生する色収差を小さくするように構成する材料を選択している。すなわち、形状可変素子自体で発生する色収差が小さくなるように構成されている。
【0013】
しかし、形状可変素子と他の光学素子を組み合わせて使用する光学系においては、光学系全系としての色収差が小さければ良く、必ずしも形状可変素子自体の色収差が補正されている必要は無い。むしろ、形状可変素子が大きな色収差を有している場合や、異常分散特性を有している場合には、屈折力を変化させることによって光学系の色収差を補正することが可能となる。ズーミングやフォーカシングによってレンズユニットの間隔が変動する光学系においては、各配置での諸収差及び色収差が変動する。この変動を良好に補正するためには形状可変素子自体が色消しされた光学系を用いても効果を得難いが、本発明の形状可変素子の光学特性を満足することで諸収差及び色収差の変動を補正することが可能となる。
【0014】
また、従来技術の形状可変素子を構成する材料特性においては、可視光領域の短波長側の分散特性が考慮されていないため、可視光全域において諸収差及び色収差を補正するような構成とはなっていない。可視光領域の短波長側の分散特性は材料固有であり、材料が特定されない場合にはどのような特性となるかを推定することが難しい。そこで本発明においては、形状可変素子を構成する材料の分散特性について規定することで、可視光領域の全域において色収差を補正するようにしている。
【0015】
例えば、光学系がフォーカスする際に変動する収差は形状可変素子を用いれば補正することが可能である。特に、形状可変素子が異常分散特性を有する場合には、フォーカスによって変動する色収差を良好に補正することが可能となる。また、光学系が変倍する際に変動する収差は、形状可変素子を用いれば補正することが可能である。特に、形状可変素子が異常分散特性を有する場合には、変倍によって変動する色収差を良好に補正することが可能となる。
【0016】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
まず、後述する本発明の実施例に共通する事項について説明する。実施例の形状可変素子は、面形状及び素子厚が変化する素子であり、この形状可変素子を構成する材料の光学特性は後述する条件を満足する。
【0017】
実施例の形状可変素子は、デジタルスチルカメラ、銀塩フィルムカメラ、ビデオカメラ、望遠鏡、双眼鏡、複写機、プロジェクタ等の光学機器の光学系(レンズ装置)の一部に用いられる。
実施例の形状可変素子は、複数の材料から構成されており、その面形状を変化させることで屈折力を変化させており、凸レンズもしくは凹レンズとして作用する。
【0018】
形状可変素子としては、電気駆動方式の素子によって実現することが可能である。図1に示す電気駆動方式とは、互いに混合しない2以上の液体材料からなり、電圧を印加することによって液体界面の形状を変化させるものである。例えば、電解液としては水(nd=1.33307、νd=55.5、θgF=0.527)や水の混合体等の液体材料を用いることができる。非電解液としては、オイル系媒質A(nd=1.48,vd=54.6),B(nd=2.32,vd=7),C(nd=1.64,vd=21.2)を任意の体積比で混合することで、これらの領域内の任意の特性を得ることができる。媒質に異常分散特性を持たせるためには、例えば無機酸化物の微粒子を混合させることが考えられる。無機酸化物としては、例えば、TiO(nd=2.304,νd=13.8,θgF=0.87)、Nb(nd=2.367,νd=14.0)、ITO(nd=1.8571,νd=5.69,θgF=0.290)がある。また、他の無機酸化物として、CrO(nd=2.2178,νd=13.4)、BaTiO(nd=2.4362,νd=11.3)等もある。
【0019】
異常分散特性を有する非電解液としては、水と混ざり合わないオイル系媒質であるCARGILLE社の商品名標準屈折液Eシリーズ(nd=1.64269、νd=13.49、θgF=0.810)や商品名標準屈折液EHシリーズ(nd=2.0108、νd=14.0、θgF=0.540)、商品名標準屈折液GHシリーズ(nd=2.2210、νd=7.6、θgF=0.610)やこれらの混合体等の液体材料を用いることができる。
【0020】
また、図2に示す界面に弾性膜を使用してアクチュエーターなどの駆動手段を設け、機構的制御を加えることでも形状可変の効果を得ることが可能である。これによれば、互いに混合する液体であっても実現が可能であり、材料の選択性が高いという利点がある。
【0021】
形状可変素子を構成する光学材料のうち、少なくとも1つ以上の光学材料の波長分散は以下の条件式を満足する。
|θgF−(−1.665×10−7νd+5.213×10−5νd
−5.656×10−3νd+0.7278)| > 0.0272 …(1)
このとき、波長λの光線に関する屈折率をnλとする時、フラウンフォーファー線であるg線(435.8nm)、F線(486.1nm)、d線(587.6nm)およびC線(656.3nm)に関する屈折率はそれぞれng、nF、nd、nCで表される。d線に関するアッベ数νd、g線とF線に関する部分分散比θgFはそれぞれ以下で表される。
【0022】
νd=(nd−1)/(nF−nC)
θgF =(ng−nF)/(nF−nC)
一般的な光学ガラスの波長分散は類似の傾向があり、そのためにd線に関するアッベ数νdに対するg線とF線に関する部分分散比θgFはほぼ曲線状に分布する。これらの曲線状に分布した一般ガラスと異なる波長分散を有するとき、異常分散特性を有するという。一般的な光学材料の波長分散特性は、下記のようにθgF0およびθgd0等として表現できる。
【0023】
θgd0=−1.687×10−7νd+5.702×10−5νd
−6.603×10−3νd+1.462
θgF0=−1.665×10−7νd+5.213×10−5νd
−5.656×10−3νd+0.7278
異常分散性とは、この標準値からの差分を示す。すなわち、異常分散性Δθgd,ΔθgFはそれぞれ以下のように表される。
Δθgd=θgd−θgd0
ΔθgF=θgF−θgF0
式(1)は、形状可変素子を構成する光学材料のうち、少なくとも1つ以上の光学材料が異常分散特性を有することを意味している。これによれば、形状可変素子の面形状を変化させることにより、色収差を大きくコントロールすることが可能となり、ズームやフォーカスに際して変動する色収差を補正することが可能となる。
【0024】
d線、F線、C線に加えg線の4波長光線の収差補正を考える場合、可視光領域全域において良好な性能を得ることが可能となる。このとき、色収差を補正する場合にはΔθgFおよびΔθgdの絶対値が大きいような異常分散性を有する光学材料を用いる方法等が考えられる。つまり、g線に関する屈折率の変化がd線、C線およびF線に関する屈折率の変化と大きく異なるときに、色収差を良好に補正することが可能となる。光学系の色収差を補正する際には、変倍やフォーカスによって必要な異常分散特性が変化する。このため、異常分散特性を有する光学材料で構成した形状可変素子の屈折力を変化させることで、変倍やフォーカスによって変動する色収差を良好に補正することが可能となる。
【0025】
条件(1)が成り立つとき、形状可変素子が有する異常分散性がより顕著となる。条件(1)の左辺が下限値を下回る場合には、異常分散性による色収差補正効果を得ることができない。条件(1)の左辺は下限値より大きくなるほど、異常分散性が顕著となり、大きく屈折力を変動させることなく良好に色収差補正をすることが可能となる。
【0026】
前記形状可変素子を構成する光学材料において、隣接する光学材料のd線に関するアッベ数を各々νd1、νd2とする時、以下の条件式を満足する。
|νd1−νd2| > 5.0 …(2)
界面形状が変化する形状可変素子においては、境界面によって分けられた隣接する光学材料の分散の差が大きいほど、界面における色収差をコントロールしやすい。逆に、分散の差が小さい場合には、界面の形状を大きく変動させないと色収差の補正効果を得難い。しかし、界面の形状を大きく変動させると、諸収差の変動が大きくなりやすく、色収差及び諸収差の両者を良好に補正することが困難となりやすい。また、大きく面形状を変動させるためには形状可変素子の構成を工夫する必要がある。
【0027】
条件(2)において、左辺の値が下限値を下回ると形状を大きく変化させないと色収差の補正が困難となる。条件(2)左辺が下限値を上回る場合には、適切に形状可変素子の面形状を変化させることで色収差の補正効果を得ることができ、この値が大きいほどより効果を得やすくなる。
【0028】
前記形状可変素子を構成する光学材料において、隣接する光学材料の異常分散性を各々ΔθgF1、ΔθgF2とするとき、以下の条件式を満足する。
|ΔθgF1−ΔθgF2| > 0.0250 …(3)
条件(3)は形状可変素子が異常分散特性を有するような構成材料の条件を表している。隣接する光学材料の異常分散性が同程度の値となる場合には、一般的な光学材料と同程度の波長分散となるため、形状可変素子としての異常分散性は小さくなる。つまり、条件(3)左辺の値が形状可変素子の異常分散性を表す数値であり、この値が大きくなるほど異常分散性が大きくなることを意味している。条件(3)の左辺が下限値を下回る場合に色収差補正効果を得ることが困難となる。条件(3)の左辺は下限値よりも大きくなるほど異常分散性が強まるため、大きく面形状を変化させずに色収差補正効果を得ることが可能となるため、好ましい。
【0029】
実施例の形状可変素子は、一般の光学材料と組み合わせて、色収差をはじめとする諸収差を補正する。このため、部分分散比は異常分散性を持つことが収差補正上必要ではあるが、異常分散性が大き過ぎると色収差の補正が困難となる。
【0030】
一般の光学材料とかけ離れた特性を有するレンズを用いた場合、色収差係数の波長依存特性の変化は特に大きくなる。その大きな変化を補正し、色収差補正をするには、他のレンズのパワーも大きく変化させる必要がある。但し、パワーを大きく変化させると球面収差やコマ収差や非点収差等の収差に大きな影響を及ぼすため、収差補正が困難となる。
【0031】
このため、波長分散に関する条件(1)の数値範囲を以下の範囲とすれば、更に良好に色収差を補正することができる。
0.030<|θgF−(−1.665×10-7νd+5.213×10-5νd
−5.656×10-3νd+0.7278)|<0.800 …(1a)
また、収差補正の観点から、更に望ましくは、(1a)の数値範囲を以下に示す範囲とするのがよい。
0.030<|θgF−(−1.665×10-7νd+5.213×10-5νd
−5.656×10-3νd+0.7278)|<0.750 …(1b)
【0032】
更に望ましくは、(1b)の数値範囲を以下に示す範囲とするのがよい。
0.030<|θgF−(−1.665×10-7νd+5.213×10-5νd
−5.656×10-3νd+0.7278)|<0.700 …(1c)
形状可変素子を構成する光学材料の、d線に関するアッベ数の条件(2)の数値範囲を以下の範囲とすれば、更に良好に色収差を補正することが可能となる。
|νd1−νd2| > 7.5 …(2a)
更に望ましくは、(1b)の数値範囲を以下に示す範囲とするのがよい。
|νd1−νd2| > 10.0 …(2b)
【0033】
以下、上述した形状可変素子を用いた光学系の具体的な実施例について説明する。
【0034】
各実施例の光学系は、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、銀塩フィルムカメラ等の撮像装置に用いられる撮影レンズ系である。図3,5,7,9,11,13,15,17,19,21のレンズ断面図において、左方が物体側(前方)、右方が像側(後方)である。なお、各実施例の光学系をプロジェクタ等の投射レンズとして用いるときは、左方が投射面(スクリーン)側、右方が投射面に投射される原画側である。
【0035】
レンズ群とは、ズーミングもしくはフォーカシングによって変化する光軸方向のレンズ間隔によって分けられる部分とする。また、光学防振のために、光軸と垂直方向に稼動させるブロックについてもレンズ群としてもよい。
【0036】
レンズ断面図において、iは物体側からのレンズの順番を示し、Liは第iレンズ群である。SPは開口絞りである。IPは像面であり、撮像装置における固体撮像素子の撮像面や銀塩フィルムカメラのフィルム面に相当する感光面が配置され、像面上でレンズ装置によって形成された被写体像を撮像することができる。
【0037】
AOj(j=1、2、3…)は形状可変素子を表す。各実施例の光学系は、形状可変素子を少なくとも1つ含んでいる。BSj(j=1,2,3、…)は形状可変が変化する界面を表す。界面BSjの形状を変化させる場合には界面BSjの頂点は光軸方向に移動することもあるが、素子の構成により、本発明のように頂点位置を変化させずに面形状を変化させるように制御することが可能である。
【0038】
形状可変素子を構成する際には、液体材料は基材で封入する必要がある。例えば、複数の平板ガラスや弾性膜等の間に1以上の液体材料を入れ、周辺部分を封入することで素子を構成することが可能である。本発明の例である各実施例では、形状可変素子の基材部分を省略しているものもある。
【0039】
図4,6,8,10,12,14,16,18,20,22の収差図において、d、g、C、Fはそれぞれd線、g線、C線およびF線に関する収差であることを示す。ΔMおよびΔSはそれぞれメリディオナル像面およびサジタル像面である。倍率色収差はg線によって表している。ωは半画角、FnoはFナンバーである。
【実施例1】
【0040】
図3(a)、(b)はそれぞれ、実施例1によるレンズ装置の広角端及び望遠端における光学系の断面図である。実施例1(数値実施例1)のレンズ装置の光学系は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズL1と、負の屈折力を有する第2レンズ群L2と、開口絞りSPを含み正の屈折力を有する第3レンズ群L3、正の屈折力を有する第4レンズ群L4、形状可変素子AO1を含む第5レンズ群L5から構成されている。変倍に際して、第2レンズ群L2、第4レンズ群L4を光軸に沿って移動させて焦点距離を4.94mmから60.02mmに変倍させる、ズーム比12.15のズームレンズである。図3中の矢印(実線)は広角端から望遠端へ変倍するときのレンズ群の移動軌跡を示している。フォーカスに際して、第4レンズ群L4を光軸にそって移動させることで、無限遠から近距離へのフォーカシングをしている。
【0041】
実施例1では、開口絞りSPよりも像側の第5レンズ群L5に形状可変素子AO1が配置されている。形状可変素子AO1は、電解液の液体材料11と、非電解液の液体材料12から構成される、電気駆動方式の素子で構成することが可能である。形状が変化する界面BS1は電解液の液体材料11と、非電解液の液体材料12が隣接する面である。非電解液の液体材料12は異常分散特性を有しており、一般的な光学材料と比較してθgFは大きいという特徴がある。形状可変素子AO1は、広角端から望遠端へズームする際に、正の屈折力から負の屈折力へと変化する。実施例1のような比較的ズーム比の大きい光学系では、広角端と望遠端において、色収差が変動しやすく、形状可変素子を導入することで諸収差の変動を補正している。
図4(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例1のレンズ装置が広角端、中間ズーム位置、望遠端において無限遠物体に合焦したときの収差図である。特に、実施例1のレンズ装置の光学系においては、開口絞りSPよりも像側に形状可変素子AO1を配置することにより、ズーミングによる倍率色収差の変動を補正している。
【実施例2】
【0042】
図5(a)、(b)はそれぞれ、実施例2によるレンズ装置の広角端及び望遠端における光学系の断面図である。実施例2(数値実施例2)のレンズ装置の光学系は、基本的な構成は、実施例1の光学系と同様の構成を有する。本実施例のレンズ装置は、変倍に際して、第2レンズ群L2、第4レンズ群L4を光軸に沿って移動させて焦点距離を4.94mmから58.20mmに変倍させる、ズーム比11.78のズームレンズである点で、実施例1のレンズ装置と異なる。
【0043】
実施例2では、開口絞りSPよりも像側の第5レンズ群L5に形状可変素子AO1が配置されている。形状可変素子AO1は、電解液の液体材料21と、非電解液の液体材料22から構成される、電気駆動方式の素子で構成することが可能である。形状が変化する界面BS1は電解液の液体材料21と、非電解液の液体材料22が隣接する面である。非電解液の液体材料22は異常分散特性を有しており、一般的な光学材料と比較してθgFが小さいという特徴がある。形状可変素子AO1は、広角端から望遠端へズームする際に、正の屈折力から負の屈折力へと変化する。実施例2のような比較的ズーム比の大きい光学系では、広角端と望遠端において、色収差が変動しやすく、形状可変素子を導入することで諸収差の変動を補正している。図6(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例2のレンズ装置が広角端、中間ズーム位置、望遠端において無限遠物体に合焦したときの収差図である。特に、実施例2のレンズ装置の光学系においては、開口絞りSPよりも像側に形状可変素子AO1を配置することにより、ズーミングによる倍率色収差の変動を補正している。
【実施例3】
【0044】
図7(a)、(b)はそれぞれ、実施例3のレンズ装置の光学系の広角端及び望遠端におけるレンズ断面図である。実施例3(数値実施例3)のレンズ装置の光学系は、基本的な構成は、実施例1の光学系と同様の構成を有する。変倍に際して、第2レンズ群L2、第4レンズ群L4を光軸に沿って移動させて焦点距離を4.94mmから59.24mmに変倍させる、ズーム比11.99のズームレンズである点が実施例1とは異なる。
【0045】
実施例3の、形状可変素子AO1は、電解液の液体材料31と、非電解液の液体材料32から構成される。形状が変化する界面BS1は電解液の液体材料31と、非電解液の液体材料32が隣接する面である。非電解液の液体材料32は異常分散特性を有しており、一般的な光学材料と比較してθgFが大きいという特徴がある。形状可変素子AO1は、広角端から望遠端へズームする際に、正の屈折力から負の屈折力へと変化する。実施例3のような比較的ズーム比の大きい光学系では、広角端と望遠端において、色収差が変動しやすく、形状可変素子を導入することで諸収差の変動を補正している。図8(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例3のレンズ装置が広角端、中間ズーム位置、望遠端において無限遠物体に合焦したときの収差図である。特に、実施例3のレンズ装置の光学系においては、開口絞りSPよりも像側に形状可変素子AO1を配置することにより、ズーミングによる倍率色収差の変動を補正している。
【実施例4】
【0046】
図9は実施例4のレンズ装置の無限遠合焦時における光学系の断面図である。実施例4(数値実施例4)のレンズ装置の光学系は、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズL1と、負の屈折力を有する第2レンズ群L2と、開口絞りSP、正の屈折力を有する第3レンズ群L3、正の屈折力を有する第4レンズ群L4から構成されている。形状可変素子AO1は、第1レンズ群L1に配置されている。実施例4のレンズ装置の光学系は、無限遠から結像倍率βが−1.0となる、等倍までフォーカシング可能なマクロレンズである。図9中の矢印(点線)は無限遠から至近端へフォーカシングするときのレンズ群の移動軌跡を示している。フォーカスに際して、第2レンズ群L2を像面側へ、第3レンズ群L3を物体側へと光軸にそって移動させることで、無限遠から近距離へのフォーカシングをしている。
【0047】
実施例4では、開口絞りSPよりも物体側の第1レンズ群L1に形状可変素子AO1が配置されている。形状可変素子AO1は、電解液の液体材料41と、非電解液の液体材料42から構成される、電気駆動方式の素子で構成することが可能である。実施例4の形状可変素子AO1では、2つの平板ガラスによって液体材料41及び液体材料42が封入されている。形状が変化する界面BS1は電解液の液体材料41と、非電解液の液体材料42が隣接する面である。非電解液の液体材料42は異常分散特性を有しており、一般的な光学材料と比較してθgFが大きいという特徴がある。実施例4のように比較的近距離までフォーカシング可能な光学系では、無限遠と近距離において、諸収差及び色収差が変動しやすく、形状可変素子を導入することで変動を補正している。図10(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例4のレンズ装置が無限遠に合焦したときの収差図、結像倍率−0.5における収差図、結像倍率−1.0における収差図である。特に、実施例4のレンズ装置の光学系においては、開口絞りSPよりも物体側に形状可変素子AO1を配置することにより、フォーカシングによる球面収差及び色収差の変動を補正している。
【実施例5】
【0048】
図11は実施例5のレンズ装置の無限遠合焦時における光学系の断面図である。実施例5(数値実施例5)のレンズ装置の光学系は、実施例4の光学系と基本的に同様の構成を有する。図11中の矢印(点線)は無限遠から至近端へフォーカシングするときのレンズ群の移動軌跡を示している。
【0049】
実施例5では、開口絞りSPよりも物体側の第1レンズ群L1に形状可変素子AO1が配置されている。形状可変素子AO1は、非電解液の液体材料51と、弾性膜及び駆動装置から構成される、弾性膜駆動方式の素子で構成することが可能である。実施例5の形状可変素子AO1は、平板ガラスと弾性膜によって封入されている。形状が変化する界面BS1は非電解液の液体材料51と、弾性膜が隣接する面である。非電解液の液体材料51は異常分散特性を有しており、一般的な光学材料と比較してθgFが大きいという特徴がある。実施例5のように比較的近距離までフォーカシング可能な光学系では、無限遠と近距離において、諸収差及び色収差が変動しやすく、形状可変素子を導入することで変動を補正している。図12(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例5のレンズ装置の光学系が無限遠に合焦したときの収差図、結像倍率−0.5における収差図、結像倍率−1.0における収差図である。特に、実施例5の光学系においては、開口絞りSPよりも物体側に形状可変素子AO1を配置することにより、フォーカシングによる球面収差及び色収差の変動を補正している。
【実施例6】
【0050】
図13は実施例6のレンズ装置の無限遠合焦時における光学系の断面図である。実施例6(数値実施例6)のレンズ装置の光学系は、実施例4のレンズ装置の光学系と同様の構成を有する。図13中の矢印(点線)は無限遠から至近端へフォーカシングするときのレンズ群の移動軌跡を示す。
【0051】
実施例6では、開口絞りSPよりも物体側の第1レンズ群L1に形状可変素子AO1が配置されている。形状可変素子AO1は、非電解液の液体材料61と、弾性膜及び駆動装置から構成される、弾性膜駆動方式の素子で構成することが可能である。形状が変化する界面BS1は非電解液の液体材料61と、弾性膜が隣接する面である。非電解液の液体材料61は異常分散特性を有しており、一般的な光学材料と比較してθgFが大きいという特徴がある。実施例6のように比較的近距離までフォーカシング可能な光学系では、無限遠と近距離において、諸収差及び色収差が変動しやすく、形状可変素子を導入することで変動を補正している。図14(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例6のレンズ装置が無限遠に合焦したときの収差図、結像倍率−0.5における収差図、結像倍率−1.0における収差図である。特に、実施例6の光学系においては、開口絞りSPよりも物体側に形状可変素子AO1を配置することにより、フォーカシングによる球面収差及び色収差の変動を補正している。
【実施例7】
【0052】
図15(a)、(b)はそれぞれ、実施例7のレンズ装置の広角端及び望遠端における光学系の断面図である。実施例7(数値実施例7)のレンズ装置の光学系は、物体側から像側へ順に、形状可変素子AO1を含む正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、負の屈折力を有する第2レンズ群L2と、開口絞りSP、正の屈折力を有する第3レンズ群L3、正の屈折力を有する第4レンズ群L4から構成されている。変倍に際して、第2レンズ群L2、第3レンズ群L3、第4レンズ群L4を光軸に沿って移動させて焦点距離を6.15mmから71.28mmに変倍させる、ズーム比11.59のズームレンズである。図15中の矢印(実線)は広角端から望遠端へ変倍するときのレンズ群の移動軌跡を示している。フォーカスに際して、第4レンズ群L4を光軸にそって移動させることで、無限遠から近距離へのフォーカシングをしている。
【0053】
実施例7では、開口絞りSPよりも物体側の第1レンズ群L1に形状可変素子AO1が配置されている。形状可変素子AO1は、電解液の液体材料71と、非電解液の液体材料72から構成される、電気駆動方式の素子で構成することが可能である。形状が変化する界面BS1は電解液の液体材料71と、非電解液の液体材料72が隣接する面である。非電解液の液体材料72は異常分散特性を有しており、一般的な光学材料と比較してθgFは小さいという特徴がある。形状可変素子AO1は、広角端から望遠端へズームする際に、正の屈折力を弱めるようにパワーが変化する。実施例7のような比較的ズーム比の大きい光学系では、広角端と望遠端において、色収差が変動しやすく、形状可変素子を導入することで諸収差の変動を補正している。図16(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例7の光学系が広角端、中間ズーム位置、望遠端において無限遠物体に合焦したときの収差図である。特に、実施例7の光学系においては、開口絞りSPよりも物体側に形状可変素子AO1を配置することにより、ズーミングによる望遠端の軸上色収差及び倍率色収差の変動を補正している。
【実施例8】
【0054】
図17(a)、(b)はそれぞれ、実施例8のレンズ装置の広角端及び望遠端における光学系の断面図である。図17中の矢印(実線)は広角端から望遠端へ変倍するときのレンズ群の移動軌跡を示している。実施例8(数値実施例8)のレンズ装置の光学系は、基本的に実施例7のレンズ装置の光学系の構成と同様であるが、実施例7においては、形状可変素子AO1が正の屈折力を有する第1レンズ群L1に含まれていたのに対し、実施例8においては、形状可変素子AO1は正の屈折力を有する第4レンズ群L4に含まれていることが異なる。
【0055】
実施例8では、開口絞りSPよりも像側の第4レンズ群L4に形状可変素子AO1が配置されている。形状可変素子AO1は、非電解液の液体材料81と、電解液の液体材料82から構成される、電気駆動方式の素子で構成することが可能である。形状が変化する界面BS1は非電解液の液体材料81と、電解液の液体材料82が隣接する面である。非電解液の液体材料81は異常分散特性を有しており、一般的な光学材料と比較してθgFは小さいという特徴がある。形状可変素子AO1は、広角端から望遠端へズームする際に、負の屈折力から正の屈折力へと変化する。実施例8のような比較的ズーム比の大きい光学系では、広角端と望遠端において、色収差が変動しやすく、形状可変素子を導入することで諸収差の変動を補正している。図18(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例8のレンズ装置が広角端、中間ズーム位置、望遠端において無限遠物体に合焦したときの収差図である。特に、実施例8の光学系においては、開口絞りSPよりも像側に形状可変素子AO1を配置することにより、ズーミングによる倍率色収差の変動を補正している。
【実施例9】
【0056】
図19(a)、(b)はそれぞれ、実施例9のレンズ装置の光学系の広角端及び望遠端における光学系の断面図である。実施例9(数値実施例9)のレンズ装置の光学系は、基本的に実施例7の光学系と同様の構成を有する。図19中の矢印(実線)は広角端から望遠端へ変倍するときのレンズ群の移動軌跡を示す。
【0057】
実施例9では、開口絞りSPよりも物体側の第1レンズ群L1に形状可変素子AO1が配置されている。形状可変素子AO1は、非電解液の液体材料91と、非電解液の液体材料92と、弾性膜から構成される、機械駆動方式の素子で構成することが可能である。弾性膜は非電解液である液体材料91と液体材料92が混合しないよう、2材料の界面BS1に配置されており、この界面BS1を駆動させている。非電解液の液体材料91は異常分散特性を有しており、一般的な光学材料と比較してθgFは小さいという特徴がある。非電解液の液体材料92も異常分散特性を有しており、一般的な光学材料と比較してθgFは大きいという特徴がある。形状可変素子を構成する液体材料の異常分散特性を、一般的な光学材料と比較してθgFが大きい材料と小さい材料で構成することによって、より効果的に色収差を補正することが可能となる。形状可変素子AO1は、広角端から望遠端へズームする際に、正の屈折力から負の屈折力へとパワーが変化する。実施例9のような比較的ズーム比の大きい光学系では、広角端と望遠端において、色収差が変動しやすく、形状可変素子を導入することで諸収差の変動を補正している。図20(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例9のレンズ装置が広角端、中間ズーム位置、望遠端において無限遠物体に合焦したときの収差図である。特に、実施例9の光学系においては、開口絞りSPよりも物体側に形状可変素子AO1を配置することにより、ズーミングによる望遠端の軸上色収差及び倍率色収差の変動を補正している。
【実施例10】
【0058】
図21(a)、(b)はそれぞれ、実施例10のレンズ装置の広角端及び望遠端における光学系の断面図である。実施例10(数値実施例10)のレンズ装置の光学系は、物体側から像側へ順に、形状可変素子AO1を含む正の屈折力を有する第1レンズL1と、負の屈折力を有する第2レンズ群L2と、開口絞りSPを含み正の屈折力を有する第3レンズ群L3、正の屈折力を有する第4レンズ群L4、形状可変素子AO2を含む第5レンズ群L5から構成されている。変倍に際して、第2レンズ群L2、第4レンズ群L4を光軸に沿って移動させて焦点距離を4.94mmから60.30mmに変倍させる、ズーム比12.21のズームレンズである。図21中の矢印(実線)は広角端から望遠端へ変倍するときのレンズ群の移動軌跡を示している。フォーカスに際して、第4レンズ群L4を光軸にそって移動させることで、無限遠から近距離へのフォーカシングをしている。
【0059】
実施例10では、開口絞りSPよりも物体側の第1レンズ群L1に形状可変素子AO1、開口絞りSPよりも像側の第5レンズ群L5に形状可変素子AO2が配置されている。形状可変素子AO1は、電解液の液体材料101と、非電解液の液体材料102から構成される、電気駆動方式の素子で構成することが可能である。形状可変素子AO2は、電解液の液体材料103と、非電解液の液体材料104から構成される、電気駆動方式の素子で構成することが可能である。形状が変化する界面BS1は電解液の液体材料101と、非電解液の液体材料102が隣接する面であり、BS2は電解液の液体材料103と非電解液の液体材料104が隣接する面である。非電解液の液体材料102及び液体材料104は異常分散特性を有しており、一般的な光学材料と比較してθgFが大きいという特徴がある。形状可変素子AO1は、広角端から望遠端へズームする際に、正の屈折力を弱めるように屈折力が変化する。形状可変素子AO2は、広角端から望遠端へズームする際に、正の屈折力から負の屈折力へと変化する。実施例10のような比較的ズーム比の大きい光学系では、広角端と望遠端において、色収差が変動しやすく、形状可変素子を導入することで諸収差の変動を補正している。図22(a)、(b)、(c)はそれぞれ、実施例10のレンズ装置が広角端、中間ズーム位置、望遠端において無限遠物体に合焦したときの収差図である。特に、実施例10の光学系においては、開口絞りSPよりも物体側に形状可変素子AO1を配置することにより、ズーミングによる軸上色収差及び倍率色収差の変動を補正している。また、開口絞りSPよりも像面側に形状可変素子AO2を配置することにより、ズーミングによる倍率色収差の変動を補正している。
尚、上記条件(1)を満足する形状可変素子は、実施例1〜10の光学系に限らず、種々の光学系に用いることができる。
【0060】
以下、各実施例に対応する具体的な数値実施例を示す。各数値実施例において、iは物体側から数えた面の番号を示す。Riはi番目の光学面(第i面)の曲率半径であり、Diは第i面と第(i+1)面との間の軸上間隔である。距離の単位はミリメートルとして表記している。
【0061】
Ndi,Ngi,NCi,NFiは各々d線、g線、C線、F線に対するi番目の光学材料の屈折率を表す。νdiは、d線に関するアッベ数を表す。
【0062】
また、非球面形状は、xを光軸方向の面頂点からの変位量とし、hを光軸に直交する方向の光軸からの高さとし、rを近軸曲率半径とし、kを円錐定数とし、B,C,D,E,…を各次数の非球面係数とするとき、
【数1】

で表す。
なお、各数値における「E±XX」は「×10±XX」を意味する。
【0063】
各実施例の形状可変素子で使用した光学材料、液体材料のd線、g線、C線、F線における屈折率、アッベ数および部分分散比等の数値を表11に示す。尚、表11中のΔθgFとは異常分散性を示す指標であり、条件式(1)の左辺を表している。また、Δνdは条件式(2)の左辺を表している。
Fnoは有効Fナンバー、ωは半画角で単位は度である。
【0064】
更に、これらの形状可変素子はフォーカス手段として用いられる場合には、物体距離変動に対して屈折力を変化させ、像面に合焦するように制御すればよい。これによればフォーカスに際して稼動させるレンズユニットの移動量を減少させたり、稼動させなくてよくなる。ズーム手段として用いる場合には、変倍に際して屈折力を変化させるように界面の面形状を制御すればよい。これによれば、ズームに際して稼動させるレンズユニットの移動量を減少させたり、移動させなくてよくなる。
【0065】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0066】
【表1】


ズーム比 12.15

広角端 中間位置 望遠端
焦点距離 4.94 23.04 60.02
Fナンバー 1.85 2.70 3.00
画角 28.12 6.54 2.52
像高 2.64 2.64 2.64
レンズ全長 62.70 62.70 62.70
BF 0.50 0.50 0.50
D5 0.70 14.21 18.48
D11 18.59 5.08 0.81
D18 5.60 2.21 8.58
D21 4.92 8.31 1.94

群 始面 焦点距離 レンズ構成長
1 1 29.81 9.35
2 6 -6.33 5.16
3 12 16.92 11.13
4 19 17.84 2.75
5 22 (可変) 4.00

広角端 中間位置 望遠端
R23 27.067 336.393 -37.643
5群焦点距離 86.56 1075.80 -120.38

K B C D E
第12面 5.3151E-01 -3.1985E-04 -1.9885E-06 -9.8013E-08 0.0000E+00
第17面 -1.7331E+00 2.6141E-05 -5.3929E-06 3.6592E-07 0.0000E+00
【0067】
【表2】


ズーム比 11.78

広角端 中間位置 望遠端
焦点距離 4.94 23.20 58.20
Fナンバー 1.85 2.70 3.00
画角 28.12 6.49 2.60
像高 2.64 2.64 2.64
レンズ全長 60.80 60.80 60.80
BF 0.50 0.50 0.50
D5 0.70 14.29 18.58
D11 18.59 5.00 0.71
D18 5.81 2.61 8.99
D21 5.48 8.68 2.30

群 始面 焦点距離 レンズ構成長
1 1 29.81 8.93
2 6 -6.32 4.90
3 12 16.50 9.16
4 19 17.84 2.73
5 22 (可変) 4.00

広角端 中間位置 望遠端
R24 -56.344 -68.560 -144.160
5群焦点距離 -82.76 -100.71 -211.75

K B C D E
第12面 5.3151E-01 -1.3179E-04 -1.0490E-06 -1.0629E-08 0.0000E+00
第17面 -1.7331E+00 6.7525E-05 1.0091E-06 2.3382E-10 0.0000E+00
【0068】
【表3】


ズーム比 11.99

広角端 中間位置 望遠端
焦点距離 4.94 22.96 59.24
Fナンバー 1.85 2.70 3.00
画角 28.12 6.56 2.55
像高 2.64 2.64 2.64
レンズ全長 62.70 62.70 62.70
BF 0.50 0.50 0.50
d5 0.70 14.22 18.50
d11 18.59 5.06 0.79
d18 5.91 2.42 8.62
d21 4.61 8.10 1.90

群 始面 焦点距離 レンズ構成長
1 1 29.81 9.57
2 6 -6.26 5.06
3 12 6.59 10.66
4 19 17.84 3.10
5 22 (可変) 4.00

広角端 中間位置 望遠端
R23 104.307 -157.359 -53.992
5群焦点距離 244.62 -369.04 -126.62

K B C D E
第12面 5.3151E-01 -1.4474E-04 -6.5763E-07 -1.7567E-08 0.0000E+00
第17面 -1.7331E+00 5.9433E-05 -1.1264E-06 7.4779E-08 0.0000E+00
【0069】
【表4】


最大撮影倍率 1.0倍

無限遠 β=-0.5 β=-1.0
焦点距離 180.00
Fナンバー 3.60 4.80 5.80
画角 6.85
像高 21.64 21.64 21.64
レンズ全長 217.80 217.80 217.80
BF 65.32 65.32 65.32
D17 1.36 16.64 31.94
D22 33.25 17.97 2.66
D23 14.12 6.38 1.10
D28 26.76 34.50 39.78

群 始面 焦点距離 レンズ構成長
1 1 (可変) 44.50
2 18 -54.05 12.14
3 23 170.93 27.42
4 29 316.06 7.05

無限遠 β=-0.5 β=-1.0
R11 1770.644 1682.775 1635.969
1群焦点距離 76.55 76.50 76.48
【0070】
【表5】


最大撮影倍率 1.0倍

無限遠 β=-0.5 β=-1.0
焦点距離 180.00
Fナンバー 3.50 4.80 5.80
画角 6.84
像高 21.60 21.60 21.60
レンズ全長 218.80 218.80 218.80
BF 50.79 50.79 50.79
d8 4.89 4.78 4.69
d9 1.51 1.62 1.71
d15 2.08 18.67 36.64
d20 36.55 19.96 1.99
d21 19.61 10.24 6.26
d26 35.96 45.34 49.31
d30 50.78 50.78 50.78

群 始面 焦点距離 レンズ構成長
1 1 (可変) 40.95
2 16 -63.15 11.57
3 22 158.96 11.88
4 27 463.81 9.40

無限遠 β=-0.5 β=-1.0
R9 321.089 276.049 253.194
1群焦点距離 84.39 82.57 81.43
【0071】
【表6】


最大撮影倍率 1.0倍

無限遠 β=-0.5 β=-1.0
焦点距離 180.00
Fナンバー 3.50 4.80 5.80
画角 6.84

像高 21.60 21.60 21.60
レンズ全長 223.50 223.50 223.50
BF 53.35 53.35 53.35
d8 3.61 3.28 3.04
d9 3.16 3.48 3.73
d15 2.35 16.89 32.43
d20 32.05 17.50 1.96
d21 26.40 14.85 10.09
d26 34.49 46.04 50.79
d30 53.35 53.72 54.87

群 始面 焦点距離 レンズ構成長
1 1 (可変) 40.69
2 16 -60.28 11.88
3 22 145.77 11.90
4 27 536.09 10.40

無限遠 β=-0.5 β=-1.0
R9 101.095 94.155 89.949
1群焦点距離 83.32 80.91 79.34
【0072】
【表7】


ズーム比 11.59

広角端 中間位置 望遠端
焦点距離 6.15 20.45 71.28
Fナンバー 2.88 3.80 3.55
画角 30.34 9.98 2.89
像高 3.60 3.60 3.60
レンズ全長 82.26 85.37 86.99
BF 10.63 13.68 7.85
d8 0.80 17.28 31.28
d14 26.78 13.07 1.32
d15 7.66 1.20 2.58
d21 4.10 7.85 11.69
d24 10.63 13.68 7.85


群 始面 焦点距離 レンズ構成長
1 1 (可変) 11.48
2 9 -10.94 8.90
3 16 24.41 8.41
4 22 20.84 3.50

広角端 中間位置 望遠端
R5 -225.279 -148.627 -122.414
1群焦点距離 46.15 48.52 50.15

K B C D E
第16面 -4.7373E-01 -7.6618E-05 -1.7216E-06 6.4486E-08 -1.3793E-09
【0073】
【表8】


ズーム比 11.59

広角端 中間位置 望遠端
焦点距離 6.15 20.48 71.28
Fナンバー 2.76 3.80 3.55
画角 30.34 9.97 2.89
像高 3.60 3.60 3.60
レンズ全長 82.86 86.47 86.98
BF 10.49 13.81 8.17
d5 0.80 17.36 29.99
d11 27.96 13.07 1.36
d12 6.42 1.20 1.88
d18 4.12 7.95 12.51
d24 10.49 13.81 8.17

群 始面 焦点距離 レンズ構成長

1 1 48.17 10.19
2 6 -10.76 8.93
3 13 24.09 7.94
4 22 (可変) 6.01

広角端 中間位置 望遠端
R20 814.193 4182.087 -3177.585
4群焦点距離 21.84 21.45 21.24

K B C D E
第13面 -4.0085E-01 -6.3941E-05 -1.2480E-06 3.9745E-08 -8.6468E-10
【0074】
【表9】


ズーム比 11.59

広角端 中間位置 望遠端
焦点距離 6.15 20.45 71.28
Fナンバー 2.88 3.90 3.55
画角 30.34 9.98 2.89
像高 3.60 3.60 3.60
レンズ全長 87.00 83.31 87.00
BF 3.33 9.61 3.03
d8 0.80 14.83 30.22
d14 32.82 11.19 1.31
d15 4.43 1.20 1.20
d21 12.91 13.75 18.51
d24 3.33 9.61 3.03


群 始面 焦点距離 レンズ構成長
1 1 (可変) 12.00
2 9 -10.63 8.45
3 16 18.17 8.78
4 22 37.10 3.50

広角端 中間位置 望遠端
R5 -102.461 -419.426 87.456
1群焦点距離 49.65 49.83 50.17

K B C D E
第16面 -4.3545E-01 -6.9874E-05 -3.1591E-08 -2.9893E-08 7.7453E-10
【0075】
【表10】


ズーム比 12.21

広角端 中間位置 望遠端
焦点距離 4.94 24.05 60.30
Fナンバー 1.85 2.70 3.00
画角 28.12 6.26 2.51
像高 2.64 2.64 2.64
レンズ全長 67.25 67.25 67.25
BF 0.50 0.50 0.50
D10 0.70 14.47 18.82
D16 18.59 4.81 0.46
D23 4.66 1.48 7.03
D26 4.44 7.63 2.07

群 始面 焦点距離 レンズ構成長
1 1 (可変) 16.53
2 11 -6.39 5.21
3 17 16.62 10.06
4 24 14.47 2.56
5 27 (可変) 4.00

広角端 中間位置 望遠端
R6 509.154 518.243 657.336
R28 23.054 337.735 -19.882
1群焦点距離 30.59 30.60 30.71
5群焦点距離 73.73 1080.10 -63.58

K B C D E
第12面 5.3151E-01 -2.4059E-04 -2.1513E-06 -3.6755E-08 0.0000E+00
第17面 -1.7331E+00 -4.9430E-05 2.5661E-06 -1.2590E-07 0.0000E+00
【0076】
【表11】

【符号の説明】
【0077】
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L3 第3レンズ群
L4 第4レンズ群
L5 第5レンズ群
SP 開口絞り
IP 像面
AO1 形状可変素子
AO2 形状可変素子
BS1 面形状が変化する面
BS2 面形状が変化する面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学材料からなり、少なくとも1つの面の形状を変化させることが可能な形状可変素子であって、
該形状可変素子を構成する該複数の光学材料のうち少なくとも1つは、
|θgF−(1.665×10-7×νd+5.213×10-5×νd
−5.656×10-3×νd+0.7278)| > 0.0272
を満足することを特徴とする形状可変素子。
但し、νdはd線に関するアッベ数、θgFはg線とF線に関する部分分散比であり、ng、nF、nd、nCをそれぞれg線、F線、d線およびC線に関する屈折率としたとき、
νd =(nd−1)/(nF−nC)
θgF =(ng−nF)/(nF−nC)
である。
【請求項2】
前記形状可変素子は互いに混合しない複数の液体材料からなり、
液体界面の面形状を変化させることを特徴とする請求項1に記載の形状可変素子。
【請求項3】
前記形状可変素子を構成する液体材料のうち、隣接する液体材料のd線に関するアッベ数をνd1、νd2とするとき、
|νd1−νd2| > 5.0
を満足することを特徴とする請求項2に記載の形状可変素子。
【請求項4】
前記形状可変素子を構成する液体材料のうち、隣接する液体材料のg線とF線に関する異常分散性を各々ΔθgF1、ΔθgF2とするとき、
|ΔθgF1−ΔθgF2| > 0.0250
を満足することを特徴とする請求項2又は3に記載の形状可変素子。
但し、ΔθgF=θgF−(−1.665×10-7νd+5.213×10-5νd
−5.656×10-3νd+0.7278)|
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の形状可変素子を少なくとも1つ含むレンズ装置。
【請求項6】
前記形状可変素子は液体材料と弾性膜を有し、
前記レンズ装置は、該形状可変素子の該液体材料の面形状を変化させるための駆動手段を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記レンズ装置は各レンズ群の間隔を変化させて変倍をするズームレンズであり、
変倍に際して前記形状可変素子の屈折力を変化させる、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記レンズ装置は各レンズ群の間隔を変化させて合焦をするレンズ装置であり、
フォーカスに際して前記形状可変素子の屈折力を変化させる、
ことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のレンズ装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか1項に記載のレンズ装置と、該レンズ装置によって形成される被写体像を撮像するカメラ装置を有する、撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−93471(P2012−93471A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239308(P2010−239308)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】