説明

形状検査装置及び形状検査方法

【課題】一度のスリット光の走査により、任意の断面線における断面形状を検査することができる形状検査装置及び形状検査方法を提供する。
【解決手段】撮像光学系12を用いて被検査物20の形状を検査する形状検査装置10であって、被検査物20にスリット光を投射する投射手段13と、スリット光の走査により被検査物20上に順次形成される形状線を撮像する撮像手段14と、順次形成された各形状線の撮像データに基いて、被検査物20の三次元形状を点群データとして取得する点群データ取得手段と、点群データに基いて表示された被検査物に、入力に応じて切断線を設定する切断線設定手段と、切断線に対応した点群データにより、切断線における被検査物20の断面形状を算出する断面形状算出手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の三次元形状の点群データに基いて、任意の断面線における断面形状を検査することができる形状検査装置及び形状検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査物にスリット光を照射して被検査物の形状を検査する検査装置が知られている。このような検査装置においては、スリット光照射により、被検査物の表面に形成された形状線を撮像し、この形状線における断面形状を求めることができる。そして、この断面形状に基いて被検査物の形状を検査することができる。
【0003】
また、被検査物の表面にスリット光を走査することにより、走査範囲内の各形状線における断面形状を求めることができ、被検査物の容積の算出も可能になる。例えば、下記特許文献1、2には、1スリット毎に容積を算出し、これらを積分して被検査物全体の容積を求める測定装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−301707号公報
【特許文献2】特開平8−94330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のような検査装置では、スリット光の走査を終えた後においては、評価可能な断面はスリット光の走査により被検査物の表面に形成された形状線における断面に限られる。このため、スリット光の走査により形成された形状線とは異なる形状線における断面を評価するには、改めて評価対象の位置を切断する形状線が得られるように、スリット光を走査する必要があった。
【0006】
例えば複数の溶接ビードのそれぞれについて、異なる切断線における断面の評価が必要な場合には、各溶接ビードのそれぞれについて、スリット光の走査方向を変えて評価断面を取得する必要があった。また、検査対象が円形や湾曲形状の場合、これらの形状に沿ってスリット光を走査させる必要があり、複雑かつ高度な制御が必要であった。
【0007】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、一度のスリット光の走査により、任意の断面線における断面形状を検査することができる形状検査装置及び形状検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の形状検査装置は、撮像光学系を用いて被検査物の形状を検査する形状検査装置であって、被検査物にスリット光を投射する投射手段と、前記スリット光の走査により被検査物上に順次形成される形状線を撮像する撮像手段と、前記順次形成された各形状線の撮像データに基いて、被検査物の三次元形状を点群データとして取得する点群データ取得手段と、前記点群データに基いて表示された被検査物に、入力に応じて切断線を設定する切断線設定手段と、前記切断線に対応した前記点群データにより、前記切断線における被検査物の断面形状を算出する断面形状算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の形状検査方法は、撮像光学系を用いて被検査物の形状を検査する形状検査方法であって、被検査物にスリット光を投射し、前記スリット光の走査により被検査物上に順次形成される形状線を撮像し、前記順次形成された各形状線の撮像データに基いて、被検査物の三次元形状を点群データとして取得し、前記点群データに基いて表示した被検査物に切断線を設定し、前記切断線に対応した前記点群データにより、前記切断線における被検査物の断面形状を算出することを特徴とする。
【0010】
前記本発明においては、取得した被検査物の三次元形状の点群データに基いて被検査物を表示し、この表示した被検査物に切断線を設定することになる。そして、設定した切断線に対応した点群データにより、切断線における被検査物の断面形状を算出することができる。切断線を設定する時点では、被検査物の三次元形状の点群データは取得済みである。このため、被検査物上の任意の位置に切断線を設定しても、切断線に対応した点群データが得られ、設定した切断線における断面形状を算出することが可能になる。すなわち、本発明によれば、一度のスリット光の走査により、任意の断面線における断面形状を検査することが可能になる。
【0011】
前記本発明においては、被検査物の点群データから得られた三次元形状の基準面を設定する基準面設定手段を備えており、前記断面形状算出手段は被検査物の断面形状を、前記基準面を基準とする座標系に変換して算出することが好ましい。この構成によれば、スリット光の走査時に、被検査物が位置決めばらつきや溶接による被検査物の歪みにより、傾斜や高さのばらつきが生じている場合であっても、被検査物に傾斜や高さのばらつきが生じていない状態における被検査物の断面形状を算出することができる。
【0012】
断面形状の検査は、数値表現した断面形状の特徴量に基いて行うことにより、断面形状に求める品質に応じた検査が可能になる。断面形状の特徴量としては、例えば、幅、高さ、重心、断面積が挙げられる。これらの特徴量は、断面形状を算出した点群データに基いて算出可能である。このため、本発明においては、断面形状算出手段が算出した断面形状の特徴量を算出する特徴量算出手段を備えていることが好ましい。この構成によれば、求める品質に応じた検査が可能になるとともに、複数の特徴量を算出することにより多面的な検査が可能になる。
【0013】
また、本発明においては、あらかじめ設定された基準値に基いて前記特徴量の良否を判定する判定手段を備えていることが好ましい。この構成によれば、算出した特徴量の自動判定ができるので、検査が容易になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、取得した被検査物の三次元形状の点群データに基いて被検査物を表示し、この表示した被検査物に切断線を設定することになる。そして、設定した切断線に対応した点群データにより、切断線における被検査物の断面形状を算出することができる。切断線を設定する時点では、被検査物の三次元形状の点群データは取得済みである。このため、被検査物上の任意の位置に切断線を設定しても、切断線に対応した点群データが得られ、設定した切断線における断面形状を算出することが可能になる。すなわち、本発明によれば、一度のスリット光の走査により、任意の断面線における断面形状を検査することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る形状検査装置の概略図。
【図2】被検査物をレーザ光源からのスリット光で走査している様子を示す斜視図。
【図3】図2の形状線22〜24の点群データを表示した図。
【図4】本発明の一実施形態に係る形状検査のフローチャート。
【図5】被検査物をスリット光で走査途中の状態を示す斜視図。
【図6】被検査物上に、点群データに対応する点群を示した模式図。
【図7】基準面の設定の様子を示す斜視図。
【図8】(a)図は断面線を設定する様子を示す斜視図、(b)図は設定した断面線を示す斜視図。
【図9】(a)図は断面線と点群との関係を摸式的に示した平面図、(b)図は、(a)図における断面線上の点及び断面線近傍の点を抜き出した図。
【図10】(a)図は図9(b)の断面線42上及びその近傍の点群データにより、断面線42における断面の外形線を図示した図、(b)図は(a)図の座標系を変換して表示した図。
【図11】断面線の設定の別の例を示す斜視図。
【図12】断面検査の別の例を示した図であり、(a)図は点群データと近似曲線との関係を示した図、(b)図は(a)図のA部の拡大図。
【図13】断面線のさらに別の例を示す斜視図。
【図14】複数の溶接ビードが形成された被検査物の走査途中の状態を示した図。
【図15】本発明の別の一実施形態に係る形状検査装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る形状検査装置の概略図を示している。形状検査装置10は、ケース11内に撮像光学系12を収納している。撮像光学系12は、投射手段であるレーザ光源13と撮像手段である計測カメラ14(CCDカメラ)とで構成されている。ステージ15上には、被検査物20が載置されている。
【0017】
形状検査装置10は、コンピュータを備えており、図1に示した画像処理部30、制御部31、入力部32及び表示部33は、コンピュータの構成部分である。レーザ光源13からは、スリット光が発せられる。このスリット光を被検査物20に投射すると、被検査物20上には被検査物20の形状に沿って、形状線が形成されることになる。この形状線は計測カメラ14で撮像され、計測カメラ14からの信号は、画像処理部30に送られる。画像処理部30では、形状線を点群として認識し、この点群の各点における3次元座標を光切断法により算出する。
【0018】
制御部31の制御により、撮像光学系12をX軸方向に移動させると、レーザ光源13からのスリット光は被検査物20上をX軸方向に走査することになる。図1では撮像光学系12を移動させる例を示しているが、ステージ15を移動させてもよい。
【0019】
スリット光の走査に伴い、被検査物20上には連続的に新たな形状線が順次形成されることになる。これらの順次形成される形状線を撮像することにより、被検査物20の全体に亘り形状線の点群データを取得できる。このことにより、被検査物20全体の点群データを取得でき、被検査物20の三次元形状を計測することが可能になる。以下、図2、3を参照しながら三次元形状の計測についてより具体的に説明する。
【0020】
図2は、被検査物20をレーザ光源13(図1)からのスリット光で走査している様子を示す斜視図である。被検査物20は凸状部21を形成している。スリット光はX軸方向に走査され、被検査物20の全体がスリット光で走査されることになる。スリット光の走査により、被検査物20上にはX軸方向における位置を変えながら形状線が順次形成されることになる。図2では、凸状部21の後方部、中央部及び前方部の3個所における形状線22〜24を図示している。形状線22〜24は、それぞれ計測カメラ14(図1)で撮像される。
【0021】
形状線22〜24における断面形状は、光切断法によって求めることができる。具体的には以下の通りである。図1に示したように、計測カメラ14の光軸は、被検査物20の垂直線(Z軸)に対して傾斜している。一方、図2において、被検査物20は凸状部21が形成されているので、形状線22〜24は、Y軸方向において、高さ(Z軸方向)が変化している。したがって、各形状線の計測カメラ14による撮像画像は、凸状部21の高さの変化に応じて、高さが変化していることになる。
【0022】
この撮像画像における形状線の高さを、画像処理部30(図1)において、三角測量法により実際の高さに換算して、形状線の点群の各点における3次元座標が算出されることになる。
【0023】
図3(a)〜(c)は、それぞれ形状線22〜24の点群データを表示した図である。形状線のデータは、点群データの集合体として取得される。点群における各点のデータは、3次元座標(X軸上の値、Y軸上の値、Z軸上の値)で表される。例えば図3(a)の形状線22においては、各点のX軸上の値は共通である。図3(a)は、Y軸方向における高さ(Z軸方向)の変化を図示していることになる。したがって、図3(a)は、図2の凸状部21の形状線22における断面形状の計測値を示していることになる。
【0024】
図3(a)〜(c)に示された各形状線の点群データの3次元座標は、X軸上の値が共通である。しかしながら、被検査物20の全体をスリット光で走査することにより、被検査物20の全体に亘り形状線の点群データが得られることになる。このことにより、被検査物20全体の点群データを取得でき、被検査物20の3次元形状を計測することができることになる。
【0025】
ここで、被検査物20の三次元形状を計測した段階では、得られる被検査物20の断面形状は、スリット光の走査で形成された形状線における断面形状に限られる。例えば、形状線と傾斜した方向の断面線における断面形状や形状線と直交する方向における断面形状を算出することはできない。本実施形態では、被検査物20の三次元形状のデータに基いて、形状線とは異なる断面線における断面形状が得られるようにしている。このことについて、具体例を参照しながら説明する。
【0026】
図4は、本実施形態に係る形状検査のフローチャートである。図5は、被検査物26を示す斜視図である。被検査物26には穴27を囲むように溶接ビード25が形成されている。形状検査には、図1に示した形状検査装置10を用いる。以下、図4のフローチャートに沿って、図5に示した被検査物26の形状検査について説明する。
【0027】
最初に、被検査物26全体の点群データを取得する(図4のステップ100)。点群データの取得は、制御部31(図1)が備える点群データ取得手段により行う。点群データの取得方法は、図2、3を用いて説明した通りである。すなわち、被検査物26の全体をスリット光で走査することにより、被検査物26の全体に亘り形状線の点群データが得られ、被検査物26全体の点群データを取得することができる。
【0028】
図5は、被検査物26をスリット光で走査途中の状態を示した斜視図である。図5の例では、スリット光の投射により溶接ビード25上に形状線28が形成されている。スリット光の走査により、X軸方向の位置を変えながら形状線が順次形成されていくことになる。画像処理部30(図1)は、順次形成される各形状線の点群データを取得することにより、被検査物26全体の点群データを取得する。図6は、被検査物26上に、取得した点群データに対応する点群を示した模式図である。点群データ取得後は、図6に示した被検査物26上の各点における3次元座標が取得されていることになる。
【0029】
点群データの取得後は、被検査物26の3次元形状を表示部33(図1)に表示する(図4のステップ101)。具体的には、図1の画像処理部30で算出された点群データは、制御部31に送られる。制御部31では点群データの3次元座標に基いて3次元形状を作成し、これを表示部33に出力する。
【0030】
ユーザは、表示部33の3次元形状に基いて基準面を設定する(図4のステップ102)。被検査物26は治具により位置決めされているが、位置決めのばらつきや溶接による被検査物26の歪みにより、被検査物26に傾斜や高さのばらつきが生じる場合がある。この場合は、溶接基準面に対する溶接ビード25の正確な高さは得られないことになる。例えば、被検査物26が傾斜している場合、被検査物26の水平面は傾斜面として算出され、溶接ビード25は、傾斜面上の凸部として算出されることになる。したがって、この算出状態において、水平線を基準として溶接ビード25の高さを計測しても、溶接基準面に対する溶接ビード25の正確な高さは得られないことになる。
【0031】
本実施形態では、制御部31(図1)は基準面設定手段を備えており、形状検査をする前に基準面を設定するようにしている。基準面は被検査物26の例では、被検査物26の点群データから算出した平面であり、被検査物26の水平面とみなすことができる平面である。基準面の設定後は、制御部31の基準面設定手段は、検査断面を基準面を基準とする座標系に変換して算出するようにしている。このことにより、検査断面を被検査物26に傾斜が生じていない状態における形状で算出することができる。
【0032】
図7は基準面の設定の様子を示す斜視図である。被検査物26の面上に円34、円35及び円36を選択している。この選択は、表示部33(図1)の画面を見ながら、入力部32(図1)による入力により行う。この入力は、例えばマウスクリックにより行うことができる。
【0033】
前記の通り、被検査物26の点群データは取得済みであるので、3つの円30〜32内における点群データも取得済みである。したがって、3つの円34〜36内における点群データを用いて、近似平面を求めることができ、これを基準面とする。図7では、3つの円を選択しているが、基準面の精度を高めるために、4つ以上の円を選択してもよい。また、各選択位置は分散していることが望ましい。例えば、矩形状の被検査物であれば、4隅の近傍を選択位置とするのがよい。被検査物26の例では、基準面を平面としたが、基準面は平面に限らず曲面でもよい。曲率のある被検査物や溶接歪みの大きい被検査物の場合は、基準となる自由曲面を算出しこれを基準面とすればよい。
【0034】
次に、ユーザは、表示部33(図1)の3次元形状に基いて、断面線を設定する(図4のステップ103)。図8は、断面線を設定する様子を示す斜視図である。図8(a)では被検査物26の面上に、始点40と終点41とを設定している。この設定は、表示部33(図1)の画面を見ながら、例えばマウスクリックにより入力部32(図1)で行う。
【0035】
図8(b)では、始点40と終点41とを結ぶ断面線42が設定されている。本実施形態では、制御部31(図1)は切断線設定手段を備えている。切断線設定手段は、始点と終点とが設定されると、始点と終点とを最短経路で結んで断面線を設定する。
【0036】
断面線42が設定されると、断面線42における断面形状の算出が開始する(図4のステップ104)。断面形状の算出は、制御部31(図1)が備える断面形状算出手段により行う。断面形状の算出について、図9を参照しながら説明する。図9(a)は、断面線42と点群43との関係を摸式的に示した平面図である。図9(b)は、図9(a)における断面線42上の点及び断面線42近傍の点を抜き出した図である。
【0037】
図9(a)、(b)において、断面線42上における点は、断面線42における断面の外形線上の点になる。前記の通り、点群43の各点における3次元座標は取得している。このため、断面線42の線上の各点の3次元座標を用いて、断面線42における断面の外形線を算出でき、断面線42における断面形状を算出できることになる。
【0038】
一方、断面線42上における点の数が不足している場合もある。このため、本実施形態では、断面線42の近傍の点についても、断面線42上の点として、断面形状の算出に用いるようにしている。断面線42の近傍の範囲については、点群における点の密度に応じてユーザが設定できるようにしておけばよい。
【0039】
図10(a)は、断面線42上及びその近傍の点群データにより、断面線42における断面の外形線を図示したものである。この外形線は、点群データから得られた点を移動平均処理したものである。図10(a)において下に凸になった部分が図8の穴27に対応し、上に凸になった部分が溶接ビード25に対応している。
【0040】
前記の通り、被検査物26が傾斜して位置決めされている場合は、被検査物26の水平面は傾斜面として算出され、溶接ビード25は、傾斜面上の凸部として算出されることになる。この場合、図10(a)の表示は、画面上の水平軸及び垂直軸を2軸とする座標系を基準とした場合は、被検査物26が傾斜した状態で表示されていることになる。
【0041】
本実施形態では、前記の通り被検査物26の平面とみなすことができる基準面をあらかじめ設定している。このため、画面上の表示を基準面を基準とする座標系に変換することにより、被検査物26に傾斜が生じていない状態で断面形状を表示することができる。
【0042】
図10(b)は、水平軸を基準面上の線に変換している。このため図10(b)では、水平軸が被検査物26の水平面上の線であり、表示された形状は被検査物26の水平面が傾斜していない状態を表示していることになる。
【0043】
図10(b)の断面形状に基づいて、溶接ビードの判定に用いる各種特徴量を算出する(図4のステップ105)。特徴量の算出は、制御部31(図1)が備える特徴量算出手段により行う。特徴量としては、例えばビード幅W、ビード高さH、重心G、断面積Sが挙げられる。これらの特徴量は、図10(b)の表示に変換後の点群データから算出可能である。
【0044】
各種特徴量の算出手順は、制御部31(図1)にあらかじめ設定されている。一方、ユーザは、検査対象の断面形状に応じて、必要な特徴量及びこの特徴量の算出位置、範囲を入力しておく。特徴量の算出は、制御部31(図1)が備える特徴量算出手段により行う。特徴量算出手段は、あらかじめ設定してある算出手順に基いて、ユーザの入力した算出要領に従い各種特徴量を算出する。
【0045】
各種特徴量の算出後は、あらかじめ登録している各種特徴量の許容範囲と比較し、算出した各種特徴量の良否を判定する(図4のステップ106)。この判定は、制御部31(図1)が備える判定手段により行う。例えば、各種特徴量がビード幅W、ビード高さH、重心G及び断面積Sとした場合は、これらの特徴量の許容範囲(上限値及び下限値)を登録しておく。そして、各種特徴量の算出値のそれぞれが、各種特徴量の許容範囲内にあるときに良品であると判定する。
【0046】
以上、被検査物26について、断面線42における断面の断面検査について説明したが、断面線42は一例であり、各種断面線を設定することができる。図11は、断面線の設定の別の例を示す斜視図である。図11の例では、0から9の番号を付した10本の放射線状の断面線を設定している。
【0047】
断面線の設定及び断面形状の算出は、断面線42の場合と同様である。すなわち、始点と終点とを設定すれば、断面線が自動設定され(図4のステップ103)、各断面線における断面形状が算出されることになる(図4のステップ104)。
【0048】
図11では、さらに放射状の各断面線を横切るように、円弧状の断面線37を設定している。このことにより、番号0から9の各切断線における断面形状において、円弧状の断面線37の位置における高さを知ることができる。図11のように、放射線状の断面線や円弧状の断面線を設定することにより、より詳細な断面検査が可能になる。
【0049】
図12は、断面検査の別の例を示した図である。図12(a)は、点群データと近似曲線との関係を示している。図12(b)は、図12(a)のA部の拡大図を示している。図12(a)に示した点群データは、断面線上の点群データであり、近似曲線38は点群データから算出した近似曲線である。図12(b)において、点群中の点と近似曲線38とのずれΔhを凹凸と定義し、図12(a)の点群全体についてΔhを算出することにより、断面形状の表面が滑らかであるかどうかを判定することが可能になる。
【0050】
図13は、切断線の設定のさらに別の例を示す斜視図である。被検査物51は、平面部上に縦長に蛇行した凸状の溶接ビード50が形成されている。断面線44、45及び46は、放射状に伸びており、図11の例と同様に各断面線における断面形状を算出することができる。図13の例では、溶接ビード50の縦長の蛇行形状に沿って、曲線の断面線47を設定している。この設定によれば、溶接ビード50の蛇行形状に沿った曲線の断面線47における断面形状を算出することができるとともに、溶接ビード50の蛇行形状に沿った全長の算出が可能になる。すなわち、断面線は直線に限るものではなく、検査対象の形状に応じて設定可能であり、スプライン曲線などの自由曲線とすることもできる。
【0051】
ここで、前記の断面検査は、検査対象が一つの溶接ビードの例で説明したが、断面検査は、スリット光の走査範囲内の全体において可能である。したがって、スリット光の走査範囲内に複数の溶接ビードがあれば、一度のスリット光の走査により、複数の溶接ビードのすべてについて、断面検査が可能になる。
【0052】
図14は、複数の溶接ビードが形成された被検査物53をスリット光が走査している様子を示す断面図である。被検査物53には、孔52を囲むように3つの溶接ビード54〜56が形成されている。図14は、スリット光の走査途中の状態を示しており、被検査物53の中央部に形状線57が形成されている。
【0053】
スリット光の走査が完了すれば、3つの溶接ビード54〜56を含む被検査物53全体の点群データが得られることになる。このため、一度の点群データの取得により、3つの溶接ビード54〜56のすべての断面検査が可能になる。また、溶接ビード1個単位の検査のみならず、複数の溶接ビードに跨る断面線における断面形状の検査も可能になる。
【0054】
以上、本実施形態で説明した形状検査装置10(図1)は、計測カメラ14が1個の例であるが、計測カメラ14を2個備えたものであってもよい。図15に別の実施形態に係る形状検査装置を示している。図15に示した形状検査装置は、計測カメラ14aと計測カメラ14bの合計2個の計測カメラを用いている点が、図1の形状検査装置10と異なっている。
【0055】
被検査物上に急峻な凸形状等の突起物が形成されていると、計測カメラの撮像方向が一方向の場合は、突起物の影の部分が計測できなくなる場合がある。図15に示した形状検査装置は、計測カメラ14aに加えて、計測カメラ14bを備えている。このことにより、計測カメラ14aのみでは、計測できない突起物の裏側の部分についても、もう一方の計測カメラ14bにより計測可能になる。
【0056】
また、本実施形態では、溶接ビードの形状検査の例について説明したが、検査対象はこれに限るものではなく、各種形状の検査に用いることができる。例えば、樹脂成形品の検査に用いてもよく、航空機の機体の検査に用いてもよい。また、医療分野の検査に用いてもよく、例えば骨の検査に用いることもできる。
【符号の説明】
【0057】
10 形状検査装置
12 撮像光学系
13 レーザ光源
14,14a,14b 計測カメラ
20,26,51,53 被検査物
22,23,24,28 形状線
37,42,44,45,46,47 断面線
25,50,54,55,56 溶接ビード
43 点群


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系を用いて被検査物の形状を検査する形状検査装置であって、
被検査物にスリット光を投射する投射手段と、
前記スリット光の走査により被検査物上に順次形成される形状線を撮像する撮像手段と、
前記順次形成された各形状線の撮像データに基いて、被検査物の三次元形状を点群データとして取得する点群データ取得手段と、
前記点群データに基いて表示された被検査物に、入力に応じて切断線を設定する切断線設定手段と、
前記切断線に対応した前記点群データにより、前記切断線における被検査物の断面形状を算出する断面形状算出手段とを備えたことを特徴とする形状検査装置。
【請求項2】
被検査物の点群データから得られた三次元形状の基準面を設定する基準面設定手段を備えており、前記断面形状算出手段は被検査物の断面形状を、前記基準面を基準とする座標系に変換して算出する請求項1に記載の形状検査装置。
【請求項3】
前記断面形状算出手段が算出した断面形状の特徴量を算出する特徴量算出手段を備えている請求項1又は2に記載の形状検査装置。
【請求項4】
あらかじめ設定された基準値に基いて前記特徴量の良否を判定する判定手段を備えている請求項3に記載の形状検査装置。
【請求項5】
撮像光学系を用いて被検査物の形状を検査する形状検査方法であって、
被検査物にスリット光を投射し、
前記スリット光の走査により被検査物上に順次形成される形状線を撮像し、
前記順次形成された各形状線の撮像データに基いて、被検査物の三次元形状を点群データとして取得し、
前記点群データに基いて表示した被検査物に切断線を設定し、
前記切断線に対応した前記点群データにより、前記切断線における被検査物の断面形状を算出することを特徴とする形状検査方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−37487(P2012−37487A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180508(P2010−180508)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(593118128)コアテック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】