説明

微粒子の両性、水性ポリマー分散液、その製造方法および使用

二工程重合により得られる微粒子の、両性、水性ポリマー分散液であり、その際第1重合工程で、
(a)それぞれ遊離アミノ基、プロトン化されたアミノ基および/または四級化されたアミノ基を有する少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリルアミド15〜40質量%
(b)少なくとも1種の置換されたまたは置換されていないスチレン40〜70質量%
(c)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル0〜25質量%
(d)少なくとも1種の酸基を有するエチレン不飽和モノマー0.5〜5質量%および
(e)少なくとも1種の、(b)および(c)と異なる非イオン性、エチレン不飽和モノマー0〜30質量%
からなり、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)の合計は100質量%になるモノマー混合物からなるプレポリマーを、溶液重合で、水と部分的に混合可能から完全に混合可能までの溶剤中で製造し、プレポリマーの溶液/分散液を引き続き水と混合し、引き続きプレポリマーの水溶液中で、第2重合工程で少なくとも1種の非イオン性、エチレン不飽和モノマーを乳化重合する。本発明は更に二工程重合によるポリマー分散液の製造および紙、厚紙およびボール紙のサイズ剤としてのポリマー分散液の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1重合工程で、カチオンモノマーおよびアニオンモノマーを含有するモノマー混合物を水と部分的に混合可能から完全に混合可能までの溶剤中で溶液重合の形式により重合させ、溶液を水で希釈し、こうして得られた反応混合物中で、第2重合工程で、少なくとも1種の非イオン性エチレン不飽和モノマーを乳化重合の形式により重合させることによる、二工程の重合により得られる微粒子の両性、水性ポリマー分散液、その製造方法および紙、厚紙およびボール紙のサイズ剤としてのその使用に関する。
【0002】
ドイツ特許第2452585号から、まず酸基含有モノマーおよびエチレン不飽和モノマーからなる少なくとも1種のコポリマーを第三級または第四級アミノ基または窒素を有する複素環の基と一緒に水相中で共重合させ、引き続き更に共重合させてスチレンおよび/またはアクリロニトリルおよび場合により(メタ)アクリル酸エステルおよび場合により他のオレフィン不飽和モノマーを添加し、重合することにより水相中で二工程重合により得られる水性コポリマー分散液が公知である。こうして製造したポリマー分散液を紙のサイズ剤として使用する。
【0003】
ドイツ特許第2454397号から、カチオンポリマー分散剤/保護コロイドの存在でオレフィン不飽和モノマーの乳化共重合により製造されるカチオン水性コポリマー分散液が公知である。このために、水と混合可能な溶剤、有利にアルコールまたはアセトンの存在での疎水性エチレン不飽和モノマーと第四級または第三級窒素を有するモノマーとの溶液重合によりプレポリマーを製造する。水と蟻酸の添加後、第三級アミノ基をプロトン化するために、引き続きプレポリマーの水溶液中で乳化重合の形式により疎水性モノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはブタジエンを、場合により10質量%までのα、β−モノオレフィン不飽和カルボン酸と共重合する。コポリマーのガラス温度が−15℃〜+60℃になるようにモノマーを選択する。こうして得られた分散液を紙、皮革または織物表面形成物の被覆剤および紙のサイズ剤として使用する。
【0004】
欧州特許第0051144号は二工程重合により製造される両性、微粒子、水性ポリマー分散液を記載する。製造の第1工程で、水と混合可能な溶剤中の溶液重合で、低分子プレポリマーを製造し、その際使用されるモノマー混合物は他のモノマーのほかに、アミノ基および/または第四級アミノ基を有する窒素含有モノマー1モル当たり0.5〜1.5モルのエチレン不飽和カルボン酸を含有する。プレポリマーを引き続き水に分散させ、非イオン性エチレン不飽和モノマーとの乳化重合で通常の水溶性開始剤を使用して反応させる。得られた分散液を紙の原料サイズ剤および表面サイズ剤として使用する。
【0005】
欧州特許第0058313号から、まずN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートおよび/またはメタクリレート、スチレンおよびアクリロニトリルからなる水溶性カチオン三元ポリマーをアルコール中で溶液重合により製造することにより得られる紙のカチオンサイズ剤が公知である。引き続く四級化反応の後に得られたN,N−ジメチルアミノ基の少なくとも10%を四級化し、残りはプロトン化されて存在する。この三元ポリマーはアクリロニトリル/メタクリロニトリルおよび(メタ)アクリル酸エステルのモノマー混合物のこれに続くラジカル開始乳化重合の際に乳化剤として使用する。
【0006】
米国特許第4659431号には同様に二工程法により製造される紙のカチオンサイズ剤が記載されている。まずN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートおよびメタクリレート、スチレンおよびアクリロニトリルからなるモノマー混合物を溶液重合の形式によりアルコール中で重合することにより三元ポリマーを製造する。引き続きN,N−ジメチルアミノ基の少なくとも10%を四級化し、残りはプロトン化された形で存在する。この三元ポリマーはアクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル90質量%まで、スチレン5〜95質量%および(メタ)アクリル酸エステル5〜95質量%を含有するモノマー混合物のラジカル開始乳化重合の際に乳化剤として使用する。
【0007】
欧州特許第1180527号から紙の原料サイズ剤および表面サイズ剤として使用されるカチオン、微粒子、水性ポリマー分散液が公知である。分散液の製造は同様に二工程法で実施し、まずC〜C飽和カルボン酸中で溶液ポリマーを製造し、引き続きポリマーを場合により置換されたスチレンおよび(メタ)アクリル酸エステルの乳化重合に使用する。乳化重合は通常の水溶性開始剤、例えばペルオキシドを使用してレドックス系と一緒に実施する。
【0008】
本発明の課題は、公知のポリマー分散液に比べて紙のサイズ剤として改良された作用を有する他のポリマー分散液を提供することである。
【0009】
前記課題は、本発明により、二工程重合により得られる微粒子の両性、水性ポリマー分散液により解決され、その際
第1重合工程で、
(a)それぞれ1個の遊離アミノ基、プロトン化されたおよび/または四級化されたアミノ基を有する少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリルアミド15〜40質量%
(b)少なくとも1種の置換されたまたは置換されていないスチレン40〜70質量%
(c)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル0〜25質量%
(d)少なくとも1種の、酸基を有するエチレン不飽和モノマー0.5〜5質量%および
(e)少なくとも1種の、(b)および(c)と異なる非イオン性エチレン不飽和モノマー0〜30質量%
からなり、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)の合計が100質量%になるモノマー混合物からなるプレポリマーを、溶液重合で、水と部分的に混合可能から完全に混合可能までの溶剤中で製造し、プレポリマーの溶液/分散液を引き続き水と混合し、その後プレポリマーの水溶液中で、第2重合工程で、少なくとも1種の非イオン性エチレン不飽和モノマーを乳化重合させる。
【0010】
第2重合工程で、有利に
(a)少なくとも1種の、置換されたまたは置換されていないスチレン0〜80質量%
(b)少なくとも1種のC〜C18−(メタ)アクリル酸エステル0〜100質量%および
(c)少なくとも1種の、(a)および(b)と異なる非イオン性エチレン不飽和モノマー0〜30質量%
からなり、(a)+(b)+(c)の合計が100質量%になるモノマー混合物を、開始剤の存在で重合する。
【0011】
有利に第1重合工程で、
(a)それぞれ1個の遊離アミノ基、プロトン化されたおよび/または四級化されたアミノ基を有する少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリルアミド15〜40質量%
(b)少なくとも1種の置換されたまたは置換されていないスチレン40〜70質量%
(c)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル0〜25質量%
(d)少なくとも1種の、エチレン不飽和カルボン酸またはカルボン酸無水物の酸基を有するエチレン不飽和モノマー、0.5〜5質量%および
(e)少なくとも1種の、(b)および(c)と異なる非イオン性エチレン不飽和モノマー0〜30質量%
からなり、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)の合計が100質量%になるモノマー混合物を、溶液重合の形式により、水と部分的に混合可能から完全に混合可能までの有機溶剤中で重合することによりプレポリマーを製造する。
【0012】
第1重合工程で、
(a)少なくとも1種の無機酸または有機酸との塩の形のおよび/または四級化された形のジメチルアミノプロピルメタクリルアミド
(b)スチレン
(c)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル
(d)アクリル酸および/またはメタクリル酸および
(e)n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート
からなるモノマー混合物から製造されるプレポリマーが特に有利である。第2工程の乳化重合に関して、有利に
(a)スチレン30〜70質量%および
(b)n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレートの混合比3;1〜1:3の混合物70〜30質量%または
(c)t−ブチルアクリレートまたはn−ブチルアクリレート70〜30質量%からなるモノマー混合物を使用する。n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレートからなる混合物の代わりにn−ブチルアクリレートまたはt−ブチルアクリレートをそれぞれ単独にスチレンと共重合することもできる。
【0013】
プレポリマーの製造のために、群(a)のモノマーとして、置換基としてそれぞれ1個の遊離アミノ基、プロトン化されたおよび/または四級化されたアミノ基を有する少なくとも1種のカチオンまたは塩基性(メタ)アクリル酸エステルおよび/または少なくとも1種のカチオンまたは塩基性(メタ)アクリルアミドを使用する。置換基としてアミノ基を有する群(a)のモノマーは例えば式(I)により特徴付けられる。
【0014】
第1重合工程で製造される低分子プレポリマーは成分(a)として、アミノ基および/または第四級アミノ基を有する少なくとも1種の窒素含有モノマーを含有する。この形式の化合物は、一般式(I):
【化1】

(式中、
AはOまたはNHであり、
BはC2n(n=1〜8)であり、
、RはC2m+1(m=1〜4)であり、
はHまたはCHである)
を有する。
【0015】
四級化された化合物は以下の式II:
【化2】

(式中、
はOH、Cl、Br、CH−OSOであり、
はC2m+1(m=1〜4)である)
により特徴付けられる。その他の置換基はすでに示された意味を表す。
【0016】
式IIの化合物は一般にカチオンモノマーとして示され、式Iの化合物は塩基性モノマーとして示される。塩基性エチレン不飽和モノマーは例えばアミノアルコールのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、例えばジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、ジブチルアミノプロピルアクリレート、ジブチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノネオペンチルアクリレート、アクリルアミドまたはメタクリルアミドのアミノ基含有誘導体、例えばアクリルアミドジメチルプロピルアミン、メタクリルアミドジメチルプロピルアミンおよびメタクリルアミドジメチルプロピルアミンである。
【0017】
式IIの四級化合物は、式Iの塩基性モノマーを公知の四級化剤、例えば塩化メチル、塩化ベンジル、塩化エチル、臭化ブチル、ジメチルスルフェート、ジエチルスルフェートまたはエピクロロヒドリンと反応させることにより得られる。これらのモノマーは四級化された形でその塩基特性を喪失する。
【0018】
有利に群(a)のモノマーとして、少なくとも1種の無機酸またはカルボン酸との塩の形のおよび/または四級化された形のジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを使用する。該当する有利な四級化剤は塩化メチルである。
【0019】
群(a)のモノマーはプレポリマーの製造の際にモノマー混合物(a)〜(e)に対して15〜40質量%、有利に20〜35質量%の量で使用する。モノマー(a)〜(e)に関する質量%の表示の合計は常に100である。
【0020】
プレポリマーを製造するために、群(b)のモノマーとしてスチレンおよび置換されたスチレン、例えばα−メチルスチレンまたはエチルスチレンを使用する。群(b)のモノマーは(a)〜(e)からなるモノマー混合物に40〜70質量%、有利に45〜60質量%含まれている。
【0021】
群(c)のモノマーとしてアクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびアクリロニトリルとメタクリロニトリルの任意の比の混合物が該当する。モノマー(c)として有利にアクリロニトリルを使用する。郡(c)のモノマーは選択的にプレポリマーの製造の際にモノマー混合物に含まれる。群(c)のモノマーは場合によりモノマー(a)〜(e)の合計に対して25質量%までの量で使用する。本発明の1つの有利な実施態様において、この群のモノマーは5〜20質量%の量でモノマー混合物に含まれる。
【0022】
群(d)のモノマーの例はエチレン不飽和C〜C−カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、エタクリル酸、クロトン酸、エチレン不飽和ジカルボン酸のモノエステル、例えばモノメチルマレイネート、モノメチルフマレート、モノエチルマレイネート、モノエチルフマレート、モノプロピルマレイネート、モノプロピルフマレート、モノ−n−ブチルマレイネート、およびモノ−n−ブチルフマレート、およびスチレンカルボン酸、およびエチレン不飽和無水物、例えば無水マレイン酸、および無水イタコン酸である。第1重合工程で使用される溶剤の含水量に依存してモノマーの無水物基をカルボキシル基に加水分解する。すなわち第1重合工程で得られたポリマー溶液を水で希釈する場合は、無水物基はそれぞれの場合に第2重合工程の前に加水分解する。更にモノマー(d)としてスルホン酸基およびホスホン酸基を有するモノマー、例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびビニルホスホン酸が適している。酸基を有するモノマーは遊離酸基の形でおよび部分的にまたは完全にアルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、アンモニアおよび/またはアミンで中和された形で使用することができる。モノマーの酸基の中和のために、例えば水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モルホリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、またはジエチレントリアミンを使用する。中和剤として2種以上の塩基を使用することももちろん可能である。有利にこれらのモノマー群からアクリル酸およびメタクリル酸またはアクリル酸とメタクリル酸の任意の比の混合物を使用する。群(d)のモノマーは(a)〜(e)からのモノマー混合物に0.5〜5質量%、有利に0.7〜3.5質量%の量で含まれる。
【0023】
プレポリマーの製造に使用されるモノマー混合物は場合によりモノマー(b)および(c)と異なる非イオン性、エチレン不飽和モノマー(e)を含有することができる。これらのモノマーの例はアミド、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、およびN−メチルメタクリルアミド、ビニル化合物、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、またはビニルホルムアミド、C〜C18−(メタ)アクリル酸エステル、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、または少なくとも1個のエチレンオキシド単位の反応により製造されたアクリル酸またはメタクリル酸のエステル、例えばヒドロキシエチルメタクリレート、またはジエチレングリコールモノメチルメタクリレートである。前記モノマーの混合物を使用することももちろん可能である。群(e)のモノマーを使用する場合は、前記モノマーはモノマー(a)〜(e)の全量に対して15質量%までの量でモノマー混合物に含まれる。
【0024】
第1重合工程でモノマー(a)〜(e)を溶液重合の形式により15質量%までの水を含有してもよい、水と部分的に混合可能から完全に混合可能までの溶剤中で重合する。有利にほとんど水を含有しない溶剤を使用する。溶剤は少なくとも約1質量%までの水を含有する。適当な溶剤の例はC〜C−カルボン酸、例えば蟻酸、酢酸およびプロピオン酸、アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノール、ケトン、例えばアセトン、およびメチルエチルケトン、アミド、例えばジメチルホルムアミド、およびジメチルスルホキシド、カーボネート、例えばプロピレンカーボネートまたはエチレンカーボネート、およびテトラヒドロフランである。酸基不含の溶剤を使用する場合は、酸基含有モノマー(d)を有利に重合の前に中和する。第1重合工程で有利に水不含蟻酸または水不含酢酸を使用する。その他の反応パートナーを引き続き有利に同様に水不含の形で使用する。
【0025】
第1重合工程で溶液重合を重合条件下でラジカルを形成する開始剤の存在で、20〜160℃、有利に60〜120℃の温度で実施する。重合温度を使用される溶剤の沸点より高くすべき場合は、重合を高圧下で、例えば攪拌機を備えたオートクレーブ中で実施する。有利に水と混合可能な有機溶剤に溶解する開始剤、例えばアゾイソブチロジニトリル、t−ブチルペルオクトエート、t−ブチルペルベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルピバレート、ラウロイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、および過酸化水素を、場合により重金属カチオンの存在で使用する。
【0026】
第1工程で重合を、場合により調節剤の存在で実施することができる。適当な調節剤は例えばメルカプタン、例えばエチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、またはt−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、テルピノール、または四臭化炭素である。重合調節剤を使用する場合は、調節剤の量は例えば0.1〜15質量%である。第1工程で製造されるポリマーは比較的低い分子量、例えばM1000〜100000、有利に5000〜50000(光散乱により測定)を有する。分子量分布および質量平均分子量の測定は当業者に知られた方法により、例えばゲル浸透クロマトグラフィー、光散乱または超遠心分離により実施できる。
【0027】
モノマーは第1重合工程で、溶剤に対して15〜70質量%、有利に30〜65質量%のポリマー含量を有するポリマー溶液が得られるような量で使用する。ポリマーは水と部分的に混合可能から完全に混合可能までの有機溶剤中で有利に清澄に溶解している。第1工程で製造される溶液ポリマーは分散剤/保護コロイドとしてまたは場合により種として引き続く乳化重合に利用する。このためにプレポリマーの溶液に水を添加するかまたはポリマー溶液を水に導入することが必要である。分散部分を含有してもよい水性ポリマー溶液(コロイド溶液)が得られ、前記溶液から水ロ部分的に混合可能から完全に混合可能までの有機溶剤を場合により蒸留分離できる。水と混合したポリマー溶液中の第1重合工程で製造される溶液ポリマーの濃度は例えば2〜35質量%、有利に15〜25質量%である。水と混合したプレポリマーの溶液を、引き続き重合の第2工程で装入物または乳化剤/保護コロイドとしてまたは種として乳化重合に使用する。重合の第2工程でプレポリマー1質量部に対して0.1〜10質量部、有利に0.8〜3質量部の少なくとも1種の非イオン性、エチレン不飽和モノマーを使用する。
【0028】
第2工程で乳化重合する非イオン性、エチレン不飽和モノマーの例はスチレン、置換されたスチレン、例えばα−メチルスチレン、C〜C22−(メタ)アクリレート、例えば特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、n−デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、およびステアリルメタクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アミド、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、またはn−メチロールアクリルアミド、ビニルホルムアミド、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルエチルエーテル、およびビニル−t−ブチルエーテル、ジエン、例えばブタジエン、またはイソプレンおよび少なくとも1個のエチレンオキシド単位と反応することにより製造されたアクリル酸またはメタクリル酸のエステル、例えばヒドロキシエチルメタクリレートまたはジエチレングリコールモノメタクリレートである。有利に第2重合工程で
(a)スチレン30〜70質量%、および
(b)n−ブチルアクリレートとt−ブチルアクリレートの質量比3:1〜1:3の混合物70〜30質量%または
(c)t−ブチルアクリレートまたはn−ブチルアクリレート70〜30質量%
からなるモノマー混合物を乳化重合させる。n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレートの混合物の代わりにn−ブチルアクリレートまたはt−ブチルアクリレートをそれぞれ単独でスチレンと共重合することもできる。
【0029】
本発明の対象は更に前記微粒子の、両性、水性ポリマー分散液の製造方法であり、その際第1重合工程で、
(a)それぞれ遊離アミノ基、アンモニウム基および/または第四級アミノ基を有する少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリルアミド15〜40質量%
(b)少なくとも1種の置換されたまたは置換されていないスチレン40〜70質量%
(c)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル0〜25質量%
(d)少なくとも1種の酸基を有するエチレン不飽和モノマー0.5〜5質量%および
(e)少なくとも1種の、(b)および(c)と異なる非イオン性、エチレン不飽和モノマー0〜30質量%
からなり、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)の合計は100質量%になるモノマー混合物からなるプレポリマーを、溶液重合で、水と部分的に混合可能から完全に混合可能までの溶剤中で製造し、プレポリマーの溶液/分散液を引き続き水と混合し、引き続きプレポリマーの水溶液中で第2重合工程で少なくとも1種の非イオン性、エチレン不飽和モノマーを乳化重合する。
【0030】
乳化重合は多くの場合に40〜150℃、有利に60〜90℃の温度範囲で通常の量の有利に水溶性の重合開始剤の存在で実施する。多くの場合に重合すべきモノマーに対して0.2〜4質量%、有利に0.5〜2質量%の少なくとも1種の開始剤を使用する。開始剤として、例えばアゾ化合物、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、過酸化水素、無機ペルオキシド、およびレドックス系、例えば過酸化水素とアスコルビン酸またはt−ブチルヒドロペルオキシドとアスコルビン酸の組み合わせが該当する。レドックス系は更に活性化のために更に重金属カチオン、例えばセリウム、マンガンまたは鉄(III)イオンを含有することができる。
【0031】
乳化重合の際にモノマーを、直接装入物に配量するかまたは水性エマルジョンまたはミニエマルジョンの形で重合バッチに供給することができる。モノマーを水に乳化するために、例えば第1重合工程からの水で希釈したプレポリマーの一部を乳化剤として利用するかまたはモノマーを通常の非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性乳化剤を使用して水に乳化する。通常の乳化剤は場合によってのみ使用する。使用される量は例えば0.05〜3質量%であり、有利に0.5〜2質量%の範囲である。通常の乳化剤は文献に詳細に記載され、例えばM.Ash、I.Ash、Handbook of Industrial Surfactabts,Third Edition、Synapse Information Resources.Inc.を参照。通常の乳化剤の例は長鎖一価アルコール(C10〜C22−アルカノール)とアルコール1モル当たり4〜50モルのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの反応生成物またはエトキシル化フェノールまたは硫酸でエステル化されたアルコキシル化アルコールであり、前記アルコールは多くの場合にアルカリ液で中和された形で使用する。他の通常の乳化剤は例えばアルキルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホ琥珀酸エステル、第四級アルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩、例えばジメチル−C12〜C18−アルキルベンジル塩化アンモニウム、第一級、第二級および第三級脂肪アミン塩、第四級アミドアミン化合物、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリニウム塩およびアルキルオキサゾリニウム塩である。
【0032】
その際乳化重合を実施するためにモノマーの配量は連続的にまたは不連続的に行うことができる。モノマー混合物を使用する際にモノマーの配量は混合物としてまたは別々にまたは段階的方法または勾配法の形式で行うことができる。その際配量時間にわたる添加は均一にまたは不均一に、すなわち配量速度を変動して行うことができる。プレポリマーの水性溶液/分散液を含有する装入物へのモノマーの部分量の添加により膨張法による配量が可能である。もちろん乳化重合の間に適当な調節剤、例えばメルカプタン、例えばエチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、またはt−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、テルピノール、または四臭化炭素を分子量の調節に使用することができる。調節剤を使用する際に有利にモノマーの全量に対して調節剤を0〜5質量%の量で使用する。
【0033】
反応混合物のpH値は第2重合工程で例えば1〜5の範囲であり、多くは2〜4である。乳化重合の際に生じる水性分散液のポリマー濃度は例えば15〜45質量%、有利に25〜35質量%である。
【0034】
第2重合工程で、プレポリマーの組成により両性を有する微粒子の、水性ポリマー分散液が得られる。分散した粒子の平均粒度は例えば5〜250nm、有利に100nmより小さく、特に有利に10〜60nmである。平均粒度は当業者に知られた方法により、例えばレーザー相関分光分析、超遠心分離、またはCHDFにより測定できる。分散したポリマー粒子の粒度に関するほかの基準はLD値である。LD値(光透過性)を測定するために、それぞれ検査すべきポリマー分散液を0.1質量%水性に調節して2.5cmの辺の長さを有するキュベット中で波長600nmの光を使用して測定する。測定値から平均粒度を計算することができる、B.Verner、M.Barta、B.Sedlacek,Tables of Scattering Functions for Spherical Particles、Prag1976、Edice Marco、Rada D−DATA、SVAZEK D−1参照。
【0035】
前記微粒子の両性、水性ポリマー分散液は紙、厚紙およびボール紙のサイズ剤として使用する。前記分散液は特に紙製造の表面サイズに適しているが、原料サイズに使用することもできる。サイズ剤として使用するために、水性ポリマー分散液を、多くの場合にポリマー含量に対して0.05〜3質量%の水の添加により希釈する。このプレポリマー溶液は場合により他の物質、例えば澱粉、顔料、光学的清澄剤、殺菌剤、紙の硬化剤、定着剤、消泡剤、保留剤、および/または脱水剤を含有することができる。
【0036】
実施例の%表示はほかに記載されない限り質量%を意味する。
【0037】
例1
攪拌機および内部温度計を備えた2リットル平面研磨フラスコに水不含酢酸(氷酢酸)101.4gを入れ、窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下に45分の時間にわたりスチレン125.0g、アクリロニトリル25.0g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド55.0g、アクリル酸5.0g、およびn−ブチルアクリレート5.0gからなる混合物を均一に供給した。モノマーの供給と同時に、イソプロパノール16.5g中のt−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、供給物を60分以内で反応混合物に供給した。開始剤の供給が終了後、反応混合物を105℃の温度で更に30分攪拌した。
【0038】
均一なポリマー材料を引き続き85℃で、30分以内で脱イオン水975gと混合した。10%硫酸鉄(II)溶液0.75gの添加後、5%過酸化水素溶液20gを30分以内で供給した。その後85℃で、スチレン142.5g、n−ブチルアクリレート71.3gおよびt−ブチルアクリレート71.3gからなる混合物を120分以内で均一に供給した。モノマーの供給と同時に5%過酸化水素溶液80.0gの別の供給物を150分にわたり供給した。添加が終了後、85℃で更に60分後攪拌し、引き続き反応混合物を50℃に冷却した。後活性化のために、ロンガリット(Rongalit)(登録商標)C(重亜硫酸ナトリウムへのホルムアルデヒドの付加生成物)11.3gを添加し、50℃で更に30分後攪拌した。固形分29.3%およびLD値(0.1%)89.6%を有する微粒子のポリマー分散液が得られた。
【0039】
例2
攪拌機および内部温度計を備えた2リットル平面研磨フラスコに氷酢酸101.4gを入れ、窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下に45分の時間にわたりスチレン110.5g、アクリロニトリル22.1g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド48.6g、アクリル酸4.4g、およびn−ブチルアクリレート4.4gからなる混合物を均一に供給した。モノマーの供給と同時に、イソプロパノール16.5g中のt−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、供給物を60分以内で反応混合物に供給した。開始剤の供給が終了後、反応混合物を105℃の温度で更に30分攪拌した。
【0040】
均一なポリマー材料を引き続き85℃で、30分以内で脱イオン水975gと混合した。10%硫酸鉄(II)溶液0.75gの添加後、5%過酸化水素溶液20gを30分以内で供給した。その後85℃で、スチレン155.0gおよびt−ブチルアクリレート155.0gからなる混合物を120分の時間にわたり均一に供給した。モノマーの供給と同時に5%過酸化水素溶液80.0gの別の供給物を150分にわたり供給した。添加が終了後、85℃で更に60分後攪拌し、引き続き反応混合物を50℃に冷却した。後活性化のために、ロンガリット(Rongalit)(登録商標)C11.3gを添加し、50℃で更に30分後攪拌した。固形分29.2%およびLD値(0.1%)89%を有する微粒子のポリマー分散液が得られた。
【0041】
例3
乳化重合の第2工程で、スチレン142.5gおよびt−ブチルアクリレート142.5gのモノマー混合物を使用することを除いて例1を繰り返した。固形分29.5%およびLD値(0.1%)90%を有する微粒子のポリマー分散液が得られた。
【0042】
例4
攪拌機および内部温度計を備えた2リットル平面研磨フラスコに氷酢酸101.4gを入れ、窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下に45分の時間にわたりスチレン133.0g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド57.0g、およびメタクリル酸5.0gからなる混合物を均一に供給した。モノマーの供給と同時に、イソプロパノール17.5g中のt−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、供給物を60分以内で反応混合物に供給した。開始剤の供給が終了後、反応混合物を105℃の温度で更に30分攪拌した。
【0043】
均一なポリマー材料を引き続き85℃で、30分以内で脱イオン水975gと混合した。10%硫酸鉄(II)溶液0.75gの添加後、5%過酸化水素溶液20gを30分以内で供給した。その後85℃で、スチレン152.5gおよびt−ブチルアクリレート152.5gからなる混合物を120分の時間にわたり均一に供給した。モノマーの供給と同時に5%過酸化水素溶液80.0gの別の供給物を150分にわたり供給した。添加が終了後、85℃で更に60分後攪拌し、引き続き反応混合物を70℃に冷却した。後重合のために、ロンガリット(Rongalit)(登録商標)C11.3gを添加した。反応混合物を引き続き70℃で30分後攪拌した。固形分29.3%およびLD値(0.1%)89%を有する微粒子のポリマー分散液が得られた。
【0044】
例5
攪拌機および内部温度計を備えた2リットル平面研磨フラスコに氷酢酸101.4gを入れ、窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下に45分の時間にわたりスチレン112.5g、アクリロニトリル25.0g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート72.5gおよびアクリル酸5.0gからなる混合物を均一に供給した。モノマーの供給と同時に、イソプロパノール16.5g中のt−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、供給物を60分以内で反応混合物に供給した。開始剤の供給が終了後、反応混合物を105℃の温度で更に30分攪拌した。
【0045】
均一なポリマー材料を引き続き85℃で、30分以内で脱イオン水962gと混合した。1%硫酸鉄(II)溶液7.5gの添加後、5%過酸化水素溶液20gを30分以内で供給した。その後85℃で、スチレン142.5gおよびt−ブチルアクリレート142.5gからなる混合物を120分の時間にわたり均一に供給した。モノマーの供給と同時に5%過酸化水素溶液80.0gの別の供給物を150分にわたり供給した。添加が終了後、85℃で更に60分後攪拌し、引き続き反応混合物を冷却した。固形分28.9%およびLD値(0.1%)85%を有する微粒子のポリマー分散液が得られた。
【0046】
例6
攪拌機および内部温度計を備えた2リットル平面研磨フラスコに氷酢酸101.4gを入れ、窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下に45分の時間にわたりスチレン133.0g、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート57.0gおよびアクリル酸5.0gからなる混合物を均一に供給した。モノマーの供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のt−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、供給物を60分以内で反応混合物に供給した。開始剤の供給が終了後、反応混合物を105℃の温度で更に30分攪拌した。
【0047】
均一なポリマー材料を引き続き60℃で、30分以内で脱イオン水971.5gと混合した。1%硫酸鉄(II)溶液7.5gおよび10%アスコルビン酸水溶液5.0gの添加後、5%過酸化水素溶液20gを30分以内で供給した。その後60℃で、スチレン119.2gおよびt−ブチルアクリレート119.2gからなる混合物を120分の時間にわたり均一に供給した。モノマーの供給と同時に5%過酸化水素溶液80.0gの別の供給物を150分にわたり供給した。添加が終了後、60℃で更に60分後攪拌し、引き続き反応混合物を冷却した。固形分26.0%およびLD値(0.1%)86%を有する微粒子のポリマー分散液が得られた。
【0048】
例7
攪拌機および内部温度計を備えた2リットル平面研磨フラスコに氷酢酸101.7gを入れ、窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下に45分の時間にわたりスチレン133.0g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート47.0g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド10.0gおよびアクリル酸5.0gからなる混合物を均一に供給した。モノマーの供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のt−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、供給物を60分以内で反応混合物に供給した。開始剤の供給が終了後、反応混合物を105℃の温度で更に30分攪拌した。
【0049】
均一なポリマー材料を引き続き60℃で、30分以内で脱イオン水955.1gと混合した。1%硫酸鉄(II)溶液7.5gおよび10%アスコルビン酸水溶液5.0gの添加後、5%過酸化水素溶液20gを30分以内で供給した。その後60℃で、スチレン152.5gおよびt−ブチルアクリレート152.5gからなる混合物を120分の時間にわたり均一に供給した。モノマーの供給と同時に5%過酸化水素溶液80.0gの別の供給物を150分にわたり供給した。添加が終了後、60℃で更に60分後攪拌し、引き続き反応混合物を冷却した。固形分28.7%およびLD値(0.1%)91%を有する微粒子のポリマー分散液が得られた。
【0050】
例8
攪拌機および内部温度計を備えた2リットル平面研磨フラスコに氷酢酸101.7gを入れ、窒素雰囲気下で105℃に加熱した。攪拌下に45分の時間にわたりスチレン133.0g、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート57.0gおよびアクリル酸5.0gからなる混合物を均一に供給した。モノマーの供給と同時に、イソプロパノール18.2g中のt−ブチルペルオクトエート8.8gの供給を開始し、供給物を60分以内で反応混合物に供給した。開始剤の供給が終了後、反応混合物を105℃の温度で更に30分攪拌した。
【0051】
均一なポリマー材料を引き続き85℃で、30分以内で脱イオン水800.0gと混合した。1%硫酸鉄(II)溶液7.5gおよび10%アスコルビン酸水溶液5.0gの添加後、5%過酸化水素溶液20gを30分以内で供給した。その後85℃で、スチレン119.2gおよびt−ブチルアクリレート119.2gからなる混合物を120分の時間にわたり均一に供給した。モノマーの供給と同時に5%過酸化水素溶液80.0gの別の供給物を150分にわたり供給した。添加が終了後、85℃で更に60分後攪拌し、引き続き反応混合物を冷却した。固形分29.1%およびLD値(0.1%)43%を有する微粒子のポリマー分散液が得られた。
【0052】
EP−A0051144による比較例
攪拌機および内部温度計を備えた2リットル平面研磨フラスコ中で、窒素雰囲気下で、氷酢酸60g、スチレン60g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド33g、アクリル酸15gおよびアゾビスイソブチロニトリル1gを混合し、攪拌下で85℃に加熱し、この温度で更に30分攪拌した。引き続き同じ温度でアセトン1gに溶解したアゾビスイソブチロニトリル1.25gを60分の時間にわたり供給した。添加が終了後、105℃で更に30分後重合した。
【0053】
得られた均一なポリマー溶液を引き続き85℃で脱イオン水590gと混合し、これにより均一なわずかに濁った溶液が得られた。6%過酸化水素溶液20gおよび10%硫酸鉄(II)溶液1.2gを添加後、120分の時間にわたり6%過酸化水素溶液80gおよびスチレン66gおよびイソブチルアクリレート126gの混合物を均一に攪拌下で、85℃の温度で別に供給した。添加が終了後、同じ温度で更に60分後重合した。固形分28.4%およびLD値(0.1%)66%を有する微粒子のポリマー分散液が得られた。
【0054】
EP−A1180527による比較例2
攪拌機および内部温度計を備えた2リットル平面研磨フラスコに、スチレン105.4g、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド40.0g、t−ドデシルメルカプタン(95%)0.8gおよび氷酢酸117.8gからなる混合物を室温で入れ、窒素雰囲気下、攪拌下で95℃に加熱した。反応温度に達した後に、引き続き攪拌下で、アセトン13.4g中のアゾビスイソブチロニトリル2.0gの溶液を120分の時間にわたり均一に反応混合物に供給した。バッチを引き続き95℃で更に120分後攪拌し、引き続き冷却した。
【0055】
プレポリマーを室温で、攪拌下で、脱イオン水1260gと混合した。混合物を窒素雰囲気下および攪拌を持続して85℃に加熱した。均一なわずかに濁った液相が得られた。反応温度に達した後に、装入物混合物を15分更に攪拌し、引き続き1%硫酸鉄(II)溶液20.0gと混合した。その後同時に一定の供給速度で別の供給物からスチレン、129.5g、n−ブチルアクリレート92.5gおよび3%過酸化水素溶液64.8gからなる混合物を供給し、その際温度を一定に保持した。供給が終了後、バッチを85℃で更に15分後攪拌し、引き続きt−ブチルヒドロペルオキシド(70%)を後活性化のために添加した。85℃で60分の再度の後攪拌時間の後にバッチを冷却し、室温でトリロン(Trilon)(登録商標)B水溶液を添加した。固形分19.7%およびLD値(0.1%)66%を有する微粒子のポリマー分散液が得られた。
【0056】
実施例および比較例により得られたポリマー分散液の使用技術的試験
表面サイズ作用の使用技術的試験のために、本発明の分散液および比較分散液を実験用サイズプレスを使用して、試験紙材(100%古紙、面質量80g/m2、サイズ処理せず)に塗布した。さ酸化したジャガイモ澱粉(EmoxTSC)を95℃に加熱することにより水に溶解し、引き続き所望の濃度に調節した。引き続き澱粉溶液に試験すべき分散液を供給し、これによりサイズプレス液は、酸化され、溶解したジャガイモ澱粉(EmoxTSC)80g/lおよび分散液0.1〜1.5g/lを含有した。
【0057】
例1〜4および比較例1および2により得られた分散液のサイズ作用を引き続きサイズ処理していない試験用紙材への表面塗装により測定した。このために紙材を二回サイズプレスを通過し、その際平均して約65%の質量の増加が達成された。
【0058】
表面サイズ処理した紙材の乾燥を乾燥シリンダー上で約90℃で行った。引き続き紙材を夜通し空気調節室(23℃、相対大氣湿度50%)に保存し、サイズの程度を測定した。
【0059】
表面サイズ処理した紙材のサイズの程度を測定するために、DIN53132によりCobb60値およびCobb120値を測定した。Cobb60値として水と接触して、60秒の接触時間の後の紙片の水の吸収が定義され、Cobb120値として水と接触して、120秒の接触時間の後の紙片の水の吸収が定義される。Cobb値が低いほど、使用される分散液のサイズ作用が良好である。試験結果を表に示す。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二工程重合により得られる微粒子の、両性、水性ポリマー分散液であり、その際第1重合工程で、
(a)それぞれ遊離アミノ基、プロトン化されたアミノ基および/または四級化されたアミノ基を有する少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリルアミド15〜40質量%
(b)少なくとも1種の置換されたまたは置換されていないスチレン40〜70質量%
(c)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル0〜25質量%
(d)少なくとも1種の酸基を有するエチレン不飽和モノマー0.5〜5質量%および
(e)少なくとも1種の、(b)および(c)と異なる非イオン性、エチレン不飽和モノマー0〜30質量%
からなり、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)の合計は100質量%になるモノマー混合物からなるプレポリマーを、溶液重合で、水と部分的に混合可能から完全に混合可能までの溶剤中で製造し、プレポリマーの溶液/分散液を引き続き水と混合し、引き続きプレポリマーの水溶液中で、第2重合工程で少なくとも1種の非イオン性、エチレン不飽和モノマーを乳化重合する
ことからなる二工程重合により得られる微粒子の、両性、水性ポリマー分散液。
【請求項2】
第2重合工程で、
(a)少なくとも1種の、置換されたまたは置換されていないスチレン0〜80質量%
(b)少なくとも1種のC〜C18−(メタ)アクリル酸エステル0〜100質量%および
(c)少なくとも1種の、(a)および(b)と異なる非イオン性エチレン不飽和モノマー0〜30質量%
からなり、(a)+(b)+(c)の合計が100質量%になるモノマー混合物からなるエマルジョンポリマーを、開始剤の存在で重合する、請求項1記載の微粒子の、両性、水性ポリマー分散液。
【請求項3】
第1重合工程で、
(a)それぞれ1個の遊離アミノ基、プロトン化されたアミノ基および/または四級化されたアミノ基を有する少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリルアミド15〜40質量%
(b)少なくとも1種の置換されたまたは置換されていないスチレン40〜70質量%
(c)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル5〜25質量%
(d)少なくとも1種の、エチレン不飽和カルボン酸またはカルボン酸無水物0.5〜5質量%および
(e)少なくとも1種の、(b)および(c)と異なる非イオン性エチレン不飽和モノマー0〜30質量%
からなり、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)の合計が100質量%になるモノマー混合物からプレポリマーを、溶液重合の形式により、水と部分的に混合可能から完全に混合可能までの有機溶剤中で製造する請求項1または2記載の微粒子の、両性、水性ポリマー分散液。
【請求項4】
第1重合工程で、
(a)少なくとも1種の無機酸またはカルボン酸との塩の形のおよび/または四級化された形のジメチルアミノプロピルメタクリルアミド
(b)スチレン
(c)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル
(d)アクリル酸および/またはメタクリル酸および
(e)n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよび/またはt−ブチルアクリレート
からなるモノマー混合物からプレポリマーを製造する請求項1から3までのいずれか1項記載の微粒子の、両性、水性ポリマー分散液。
【請求項5】
第2重合工程で
(a)スチレン30〜70質量%および
(b)n−ブチルアクリレートおよびt−ブチルアクリレートの質量比3:1〜1:3の混合物70〜30質量%または
(c)t−ブチルアクリレートまたはn−ブチルアクリレート70〜30質量%からなるモノマー混合物を乳化重合する請求項1から4までのいずれか1項記載の微粒子の、両性、水性ポリマー分散液。
【請求項6】
二工程重合による請求項1から5までのいずれか1項記載の微粒子の、両性、水性ポリマー分散液の製造方法において、第1重合工程で、
(a)それぞれ遊離アミノ基、アンモニウム基および/または第四級アミノ基を有する少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリルアミド15〜40質量%
(b)少なくとも1種の置換されたまたは置換されていないスチレン40〜70質量%
(c)アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリル0〜25質量%
(d)少なくとも1種の酸基を有するエチレン不飽和モノマー0.5〜5質量%および
(e)少なくとも1種の、(b)および(c)と異なる非イオン性、エチレン不飽和モノマー0〜30質量%
からなり、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)の合計は100質量%になるモノマー混合物からなるプレポリマーを、溶液重合で、水と部分的に混合可能から完全に混合可能までの溶剤中で製造し、プレポリマーの溶液を引き続き水と混合し、引き続きプレポリマーの水溶液中で、第2重合工程で少なくとも1種の非イオン性、エチレン不飽和モノマーを乳化重合することを特徴とする、二工程重合による請求項1から5までのいずれか1項記載の微粒子の、両性、水性ポリマー分散液の製造方法。
【請求項7】
生じる水性溶液/分散液が2〜35質量%の濃度を有するようにプレポリマーの溶液を水で希釈する請求項6記載の方法。
【請求項8】
乳化重合をレドックス触媒の存在で実施する請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
紙、厚紙およびボール紙のサイズ剤としてのおよび皮革および織物の被覆剤としての請求項1から5までのいずれか1項記載の微粒子の、両性、水性ポリマー分散液の使用。

【公表番号】特表2008−501830(P2008−501830A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526255(P2007−526255)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005961
【国際公開番号】WO2005/121195
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】