説明

微粒子含有体及び微粒子含有体の製造方法並びに記憶素子、半導体装置及び電子機器

【課題】良好な特性が得られる微粒子含有体と、比較的少ない手間で良好な特性の微粒子含有体を製造できる微粒子含有体の製造方法を提供すること。
【解決手段】シリコン基板100の表面に、膜厚が約50nmのシリコン酸化膜110を熱酸化によって形成する。シリコン酸化膜110中に、約30keVの注入エネルギーで、負イオン注入法によって銀を注入する。銀が注入されたシリコン酸化膜110を、200℃よりも高く、かつ、銀の融点未満の温度で熱処理して、銀微粒子を形成する。酸化雰囲気中で熱処理をして、微粒子の表面部分を酸化して、被覆層としての酸化銀140を形成する。ナノメートルサイズの複数の微粒子130および被覆層140を、少ない工程で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を含む微粒子含有体及び微粒子含有体の製造方法並びに記憶素子、半導体装置及び電子機器に関し、特に、ナノメートルサイズの微粒子を用いた微粒子含有体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノメートルサイズの微粒子を用いた超微小な電子装置として、例えば、単電子トランジスタや、ナノドットおよびナノクリスタルとよばれる微粒子をゲート絶縁膜に含むメモリ等が提案されている。
【0003】
このような電子装置の微粒子を形成する方法としては、例えばSi(シリコン)微粒子では、シリコン熱酸化膜上にLPCVD(低圧化学的気相堆積)装置によってアモルフアスシリコンを堆積した後、アニール処理をしてSi微結晶を形成し、このSi微結晶を形成した上記シリコン熱酸化膜上に、さらに、CVD(化学的気相堆積)法によってシリコン酸化膜を堆積する方法が提案されている(例えば、特許文献1:特開2000−22005号公報参照)。
【0004】
また、他の微粒子を形成する方法としては、CVDや蒸着、MBE(分子線エピタキシ)などを用いて基板上に薄膜を形成した後、この薄膜をフォトリソグラフィーおよびエッチングなどの微細加工技術を用いて微細化する方法が提案されている。このような方法では、上記微粒子を形成した後、その上に絶縁体層を積層している。
【0005】
また、他の微粒子を形成する方法としては、イオン注入によって絶縁膜中に金属イオンを注入し、この注入したイオンを熱処理によって凝集して、金属微粒子を形成する方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記シリコン熱酸化膜上にアニール処理でSi微結晶を形成する方法は、上記シリコン熱酸化膜を堆積する工程を繰り返すので、製造に手間がかかるという問題がある。また、上記Si微粒子は、1つの工程で一つの平面上にしか作成できないので、上記Si微粒子の面密度をあげるには、上記シリコン熱酸化膜を堆積する工程からアニール処理を施す工程までを、何度も繰り返す必要があって、製造の手間が増大するという問題がある。
【0007】
また、上記エッチング等の微細加工技術を用いる方法では、上記微粒子の大きさと微粒子間の距離とを同時にナノメートルオーダーまで縮小することは極めて困難であるという問題がある。
【0008】
一方、上記イオン注入法によって絶縁体中に微粒子を形成する方法では、ナノメートルサイズの微粒子を、比較的簡単に絶縁体中に孤立した状態で形成することが可能である。しかしながら、上記イオン注入法で微粒子を形成した場合、一般的に、上記微粒子と絶縁体との界面に、界面準位が多数生成される。したがって、上記微粒子が形成された絶縁体を用いて素子を作成すると、所定の性能が得られなかったり、特性がばらついたりするという問題が生じる。例えば、上記微粒子が形成された絶縁体を用いて記憶素子を作成すると、電荷を保持すべき微粒子からの電荷のリークが生じ易く、また、上記微粒子の電荷の保持特性のばらつきが生じる。このように、従来の微粒子を形成する方法では、良好な特性の微粒子含有体を安定して得難いという問題がある。
【特許文献1】特開2000−22005号公報(段落0015,第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題は、良好な特性が得られる微粒子含有体と、比較的少ない手間で良好な特性の微粒子含有体を製造できる微粒子含有体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の微粒子含有体は、
第1の層と、
第2の層と、
上記第1の層と第2の層との間に形成され、第1の材料からなる媒体と、
上記媒体中にあると共に第2の材料からなる少なくとも1つの微粒子と、
上記微粒子を被覆すると共に第3の材料からなる被覆層とを備え、
上記第2の材料は、電荷を保持する機能を有する材料であり、
上記第3の材料は、上記第2の材料よりも電気伝導度が低い材料であることを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、上記第2の材料からなる微粒子は、上記第3の材料からなる被覆層に覆われているので、上記微粒子と媒体等との間で電荷が不必要な出入りをすることが防止される。したがって、上記微粒子に保持された電荷の量は、長時間に亘って変動が少なくなるので、この微粒子含有体は、電荷の保持特性が長時間に亘って安定する。また、上記微粒子は被覆層に覆われているので、上記微粒子の構成成分が流出したり、他の部分の構成成分が微粒子に流入したりすることが防止される。したがって、微粒子含有体の経時変化による特性の劣化が防止される。
【0012】
また、上記微粒子は、電荷を保持する機能を有する第2の材料からなるので、保持できる電荷量が比較的多い。したがって、たとえ電荷の多少の増減が生じても、上記微粒子に保持された全電荷量に対する変動の割合が比較的小さい。したがって、長時間に亘る電荷の変動量が少なくなるので、この微粒子含有体は、電荷の保持特性が長時間に亘って安定する。
【0013】
なお、本明細書において、層とは、平面方向に延在する形状を有する物体をいうのみに限られず、当初は一体であった物体のうち、例えば不純物拡散などにより他の領域と異なる特性を有するように形成された一部の領域をもいう。
【0014】
また、上記第1および第2の層は、上記媒体と接している必要は無く、上記第1および第2の層の間に上記媒体が位置していればよい。
【0015】
また、本明細書において、微粒子とは、粒径(直径)が1μm未満の粒子をいう。
【0016】
また、上記微粒子が「上記媒体中にある」とは、上記微粒子が上記媒体内に完全に含まれている状態を言うのみでなく、上記微粒子の一部が上記媒体内に没していると共に、他の部分が上記媒体の表面から突出したような状態をも言う。
【0017】
一実施形態の微粒子含有体は、
上記微粒子の少なくとも1つは、その微粒子を覆う被覆層の一部が、上記媒体から露出している。
【0018】
上記実施形態によれば、上記媒体から露出した上記被覆層の一部を介して、上記媒体を介することなく、上記微粒子と他の部分との間で電荷のやりとりを行うことができる。したがって、したがって、電荷のやりとりに必要な電圧を低減でき、また、電荷のやりとりに必要な時間を短縮することができる。したがって、低電圧で高速動作が可能な電子デバイスを構成できる。
【0019】
一実施形態の微粒子含有体は、上記微粒子の少なくとも1つは、その微粒子を覆う被覆層の一部が、上記第1および第2の層のうちの少なくとも1つに接している
ことを特徴としている。
【0020】
上記実施形態によれば、上記微粒子の少なくとも1つは、その微粒子を覆う被覆層の一部が、上記第1および第2の層のうちの少なくとも1つに接しているので、上記媒体を介することなく上記第1および第2の層のうちの少なくとも1つに対して電荷のやり取りが可能となる。したがって、電荷のやりとりに必要な電圧を低減でき、また、電荷のやりとりに必要な時間を短縮することができる。したがって、低電圧で高速動作が可能な電子デバイスを構成できる。
【0021】
一実施形態の微粒子含有体は、上記微粒子の少なくとも1つは、上記媒体を通過しないで上記微粒子と上記第1または第2の層とを結ぶ経路を有する。
【0022】
上記実施形態によれば、上記微粒子は、上記媒体を介することなく被覆層を介して第1または第2の層に対して電荷のやり取りが可能となる。したがって、電荷のやりとりに必要な電圧を低減でき、また、電荷のやりとりに必要な時間を短縮することができる。したがって、低電圧で高速動作が可能な電子デバイスを構成できる。
【0023】
一実施形態の微粒子含有体は、複数の上記微粒子を備え、
上記複数の微粒子のうちの少なくとも2つは、上記媒体を通過しないで互いの微粒子の間を結ぶ経路を有する。
【0024】
上記実施形態によれば、上記複数の微粒子の間には媒体が存在しないので、この媒体中への微粒子の配置密度を高めることができる。
【0025】
一実施形態の微粒子含有体は、上記微粒子の少なくとも1つは略球状であり、
上記略球状の微粒子は、重心とこの重心から最も遠い外周面部分との間の距離と、上記重心とこの重心に最も近い外周面部分との間の距離の比の値が1.0以上1.5以下である。
【0026】
上記実施形態によれば、上記微粒子は略真球の形状を有するので、電界集中が生じ難い。したがって、微粒子の部分に生じる電界集中に起因する電気的特性の変動やばらつき等を抑制できるので、信頼性が比較的高い電子デバイスを構成できる。
【0027】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第1および第2の層は、導電性を有する。
【0028】
上記実施形態によれば、上記第1および第2の層を、例えば電極として、上記微粒子に対して電荷の出し入れを行うことができる。したがって、電子デバイスを構成できる。
【0029】
なお、本明細書において、「導電体」または「導電性」を有するものには、金属や半導体が含まれ、また、導電性を有する限り、有機物からなるものをも含まれる。
【0030】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第3の材料は、電気的絶縁性を有する材料である。
【0031】
上記実施形態によれば、上記第3の材料で形成される被覆層によって、上記微粒子が電気的に絶縁されるので、この微粒子の電荷保持特性が向上する。
【0032】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第2の材料の伝導帯下端と真空準位との間のエネルギー差は、上記第3の材料の伝導帯下端と真空準位との間のエネルギー差よりも大きい。
【0033】
上記実施形態によれば、上記第2の材料で形成される微粒子は、電子を効果的に保持することができる。
【0034】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第2の材料の価電子帯上端と真空準位との間のエネルギー差は、上記第3の材料の価電子帯上端と真空準位との間のエネルギー差よりも小さい。
【0035】
上記実施形態によれば、上記第3の材料で形成される微粒子は、ホールを効果的に保持することができる。
【0036】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第1および第3の材料は、電気的絶縁性を有する材料であり、
上記第2の材料は、導電性を有する材料である。
【0037】
上記実施形態によれば、上記微粒子は上記第2の材料で形成されて導電性を有し、この微粒子を覆う被覆層は、上記第3の材料で形成されて電気的絶縁性を有し、上記微粒子および被覆層を保持する媒体は、上記第1の材料で形成されて電気的絶縁性を有する。したがって、上記微粒子が単位体積あたりに保持できる電荷量を比較的多くすることができる。これにより、上記微粒子が保持する電荷量が多少変動しても、全体の電荷量に対する変化の割合が少なくなる。その結果、安定した電荷保持特性が得られる。また、上記微粒子は、電気的絶縁性を有する上記被覆層に覆われると共に、電気的絶縁性を有する上記媒体中にあるので、この微粒子による電荷の保持特性が効果的に安定する。
【0038】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第2の材料は、半導体である。
【0039】
上記実施形態によれば、上記微粒子は、上記第2の材料である半導体で形成されるので、安定した電荷保持特性の下、所定量の電荷を保持することができる。
【0040】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第1および第3の材料は、互いに異なる絶縁性材料である。
【0041】
上記実施形態によれば、上記微粒子および被覆層を保持する媒体と、上記被覆層とが互いに異なる絶縁性材料からなるので、上記微粒子に対する電荷の流入および流出が効果的に抑制される。したがって、この微粒子含有体は、安定した電荷の保持特性が得られる。
【0042】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第3の材料は、上記第2の材料が絶縁化されてなる。
【0043】
上記実施形態によれば、上記第3の材料で形成される被覆層と、上記第2の材料で形成される微粒子との界面は、例えば界面準位が比較的少なくて、良好な状態になる。したがって、上記第2の材料からなる微粒子は、保持する電荷のリークが比較的少ないので、良好な電荷保持特性の微粒子含有体が得られる。
【0044】
なお、本明細書において、絶縁化とは、導電性を有する物質を、導電性が実質的に無い物質に変化させることをいう。また、物質の導電性を、実質的に失わせることをもいう。
【0045】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第3の材料は、上記第2の材料が酸化または窒化されてなる。
【0046】
上記実施形態によれば、上記第3の材料は、上記第2の材料から、半導体産業で広く用いられている既存の酸化炉等を使用して形成できる。したがって、従来の製造設備を用いることにより、良好な特性を有する微粒子含有体を安価に製造できる。
【0047】
なお、上記第3の材料は、上記第2の材料が、この第2の材料よりも高抵抗となる程度に酸化または窒化されて形成されていればよい。また、上記第3の材料は、完全に絶縁体となる程度に上記第2の材料が酸化また窒化されているのが好ましい。
【0048】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第1の材料は、シリコン酸化物またはシリコン窒化物であり、
上記第2の材料は、半導体または金属であり、
上記第3の材料は、半導体酸化物または金属酸化物である。
【0049】
上記実施形態によれば、上記第1の材料は、シリコン酸化物またはシリコン窒化物であり、上記第3の材料の半導体酸化物または金属酸化物は、上記第2の材料の半導体または金属を酸化してなるものであるから、いずれも、半導体産業で用いられている既存の装置を用いて作製できる。したがって、良好な特性を有する微粒子含有体を、比較的容易かつ安価に形成できる。
【0050】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第2の材料は、シリコンであり、
上記第3の材料は、シリコン窒化物である。
【0051】
上記実施形態によれば、上記微粒子を覆う被覆層が、上記第3の材料であるシリコン窒化物で形成され、このシリコン窒化物は誘電率が高い。したがって、上記被覆層の電界が大きくなるので、上記微粒子に対する電荷の出し入れを効率的に行うことができる。また、シリコン窒化物は半導体産業で多く用いられているので、既存の製造装置を用いて比較的容易に量産できる。例えば、上記シリコンからなる微粒子の表面部分を窒化することにより、上記シリコン窒化物からなる被覆層を既存の半導体製造装置を用いて比較的容易に形成できる。したがって、良好な特性を有する微粒子含有体を、比較的容易かつ安価に形成できる。
【0052】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第2の材料は、アルミニウムであり、
上記第3の材料は、酸化アルミニウムである。
【0053】
上記実施形態によれば、上記アルミニウムからなる微粒子は、緻密で強固な絶縁体である上記酸化アルミニウムで形成された被覆層で覆われている。したがって、上記微粒子は、保持する電荷のリークが効果的に防止され、また、上記電荷の保持状態が安定して保たれるので、良好な信頼性を有する微粒子含有体が得られる。また、例えば、上記アルミニウムからなる微粒子の表面部分を酸化することにより、上記酸化アルミニウムからなる被覆層を既存の半導体製造装置を用いて比較的容易に形成できる。
【0054】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第2の材料は、ハフニウムであり、
上記第3の材料は、酸化ハフニウムである。
【0055】
上記実施形態によれば、上記微粒子を覆う被覆層は、誘電率が比較的高い酸化ハフニウムで形成されているので、誘電率が比較的低い物質で形成された場合と比較して、同一電圧を印加した場合に大きい電界を生成することができる。したがって、上記微粒子に対する電荷の出し入れを効率良く行うことができる。また、例えば、上記ハフニウムからなる微粒子の表面部分を酸化することにより、上記酸化ハフニウムからなる被覆層を既存の半導体製造装置を用いて比較的容易に形成できる。
【0056】
一実施形態の微粒子含有体は、上記第1の層は、シリコン基板であり、
上記第1の材料は、シリコン酸化物またはシリコン窒化物である。
【0057】
上記実施形態によれば、既存の半導体製造装置によって容易かつ安価に微粒子含有体が製造できる。また、他の素子を容易に混載できて、高い汎用性および実用性が得られる。また、例えば、シリコン基板の表面部分を酸化または窒化することにより、シリコン基板からなる第1の層と、この第1の層上のシリコン酸化物またはシリコン窒化物からなる媒体とを比較的容易に形成できる。
【0058】
本発明の微粒子含有体の製造方法は、上記微粒子含有体を製造する方法であって、
第1または第2の層上に、微粒子を形成するための物質が導入された媒体を形成する工程と、
上記媒体中に導入された上記物質から、微粒子を形成する工程と、
上記微粒子の表面部分を改質する工程と
を備えることを特徴としている。
【0059】
上記構成によれば、第1または第2の層上に、微粒子を形成するための物質が導入された媒体を形成し、上記物質から微粒子を形成し、この微粒子の表面部分を改質する。この表面部分の改質により、例えば微粒子の表面部分を絶縁化して被覆層を形成する。あるいは、例えば水素イオンの注入等により、ダングリングボンド等の欠陥を水素分子で終端させて欠陥を減少させる。このような改質により、上記微粒子の表面が、界面準位等が少ない良好な状態になる。したがって、この製造方法によれば、上記微粒子に安定して電荷を保持できる微粒子含有体を製造できる。
【0060】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記第1または第2の層上に、微粒子を形成するための物質が導入された媒体を形成する工程は、
上記第1または第2の層上に、媒体を形成する工程と、
上記媒体中に、上記微粒子を形成するための物質を導入する工程とを含む。
【0061】
上記実施形態によれば、上記第1または第2の層上に媒体が形成され、この媒体中に、上記微粒子を形成するための物質が導入される。上記媒体を1つの工程で形成することにより、例えば複数の媒体形成工程と微粒子形成工程とを繰り返す従来の微粒子含有体の製造方法よりも、簡単に微粒子含有体を製造できる。
【0062】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記媒体中に上記微粒子を形成するための物質を導入する工程は、注入によって上記物質を上記媒体中に導入する工程である。
【0063】
上記実施形態によれば、注入によって、上記媒体中に一度に多量の上記微粒子を形成するための物質を導入できる。したがって、上記微粒子を、少ない工程で容易に形成することができる。
【0064】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記媒体中に上記微粒子を形成するための物質を導入する工程は、イオン注入法によって上記物質を上記媒体中に導入する工程である。
【0065】
上記実施形態によれば、イオン注入法によって、上記媒体中に一度に多量の上記微粒子を形成するための物質が注入される。したがって、上記微粒子を、少ない工程で容易に形成することができる。
【0066】
なお、上記媒体中に上記微粒子を形成するための物質を導入する工程は、イオン注入法以外の例えばスパッタリング等のように、粒子状の上記物質に、所定の速度を与えて上記媒体に突入させる工程であってもよい。
【0067】
なお、注入を行う条件によっては、例えば熱処理等の微粒子を形成する工程を行わなくても、注入のみによって微粒子が形成されることがある。つまり、所定の種類の微粒子形成物質を、所定の条件で注入する場合は、微粒子を形成するための物質の導入工程が、微粒子を形成する工程を兼ねることができる。したがって、工程数を低減することができる。また、比較的高温で注入を行う場合は、微粒子の形成に加えて、熱処理による上記微粒子の表面部分の改質も行われる場合がある。つまり、微粒子を形成するための物質の導入工程が、微粒子を形成する工程と、表面部分を改質する工程とを兼ねることができて、工程数を低減できる。
【0068】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記物質は、上記媒体中に、この媒体の表面に対して鋭角をなす方向から注入する。
【0069】
上記実施形態によれば、上記媒体の表面に対して鋭角をなす方向から上記物質が注入されるので、この媒体の浅い位置に微粒子が形成される。また、上記媒体の厚み方向の比較的狭い範囲に、上記微粒子が形成される。したがって、上記微粒子を含む媒体の薄膜化が可能となる。
【0070】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記微粒子を形成するための物質を、負イオン化する工程を備える。
【0071】
上記実施形態によれば、上記微粒子を形成するための物質が負イオン化されているので、上記物質が正イオン化されて注入されたとした場合と比較して、注入を受ける媒体が高電圧に帯電することが防止される。この正イオン化された場合の帯電の問題は、特に、媒体が絶縁体である場合や媒体が絶縁体などで電気的に浮遊している場合に著しい。したがって、上記物質を負イオン化することにより、この物質の注入深さのばらつきや、上記物質が注入される媒体における欠陥の生成が、効果的に防止される。
【0072】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記媒体中に微粒子を形成するための物質を導入する工程よりも後に、
上記媒体の表面から所定深さまでの部分を除去する工程を備える。
【0073】
上記実施形態によれば、上記媒体について、上記微粒子を形成するための物質の導入密度が比較的低い部分である上記表面から所定深さまでの部分を除去する。したがって、上記媒体を薄膜化できると共に、全体として微粒子の密度が比較的大きい媒体を形成できる。
【0074】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記媒体中に微粒子を形成するための物質を導入する工程は、
上記媒体中に、固層拡散法によって上記微粒子を形成するための物質を導入する工程である。
【0075】
上記実施形態によれば、固層拡散法によって、上記媒体中に微粒子を形成するための物質を多量に拡散できる。また、上記固層拡散法は、比較的簡易な構成の装置で実行できるので、上記媒体中に、多数の微粒子を比較的容易に形成できる。
【0076】
なお、固層拡散法を行う条件によっては、例えば熱処理等の微粒子を形成する工程を行わなくても、固層拡散のみによって微粒子が形成されることがある。つまり、所定の種類の微粒子形成物質を、所定の条件で拡散する場合は、微粒子を形成するための物質の導入工程が、微粒子を形成する工程を兼ねることができる。したがって、工程数を低減することができる。また、比較的高温で固層拡散を行う場合は、微粒子の形成に加えて、熱処理による上記微粒子の表面部分の改質も行われる場合がある。つまり、微粒子を形成するための物質の導入工程が、微粒子を形成する工程と、表面部分を改質する工程とを兼ねることができて、工程数を低減できる。
【0077】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記媒体の表面に、微粒子を形成するための物質が含まれた溶液を塗布する工程を備える。
【0078】
上記構成では、上記媒体に、上記微粒子を形成するための物質を少ない工程で容易に導入することができる。また、溶液を塗布する工程は、比較的簡易な装置で実行できる。したがって、上記媒体中に、多数の微粒子を比較的容易に形成できる。
【0079】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、第1または第2の層上に、微粒子を形成するための物質が導入された媒体を形成する工程は、
上記第1または第2の層上に、上記物質を含んだ上記媒体の液体材料を塗布する工程を含む。
【0080】
上記実施形態によれば、溶液を塗布する工程は比較的簡易な装置で実行できるので、上記第1または第2の層上に、上記物質が導入された媒体を、少ない工程で容易に形成できる。
【0081】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記微粒子の表面部分を改質する工程は、上記微粒子の表面部分を酸化または窒化する工程を含む。
【0082】
上記実施形態によれば、上記微粒子の表面部分を、酸化または窒化することにより改質する。上記微粒子の表面部分を酸化または窒化する工程は、既存の半導体製造装置を用いて比較的容易に行われる。したがって、上記微粒子を覆う被覆層を、比較的容易かつ安価に形成できる。
【0083】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記微粒子の表面部分を改質する工程は、上記媒体中に、酸素または窒素を含む分子を注入する工程を含む。
【0084】
上記実施形態によれば、上記媒体中に、酸素または窒素を含む分子を注入するので、上記媒体の深さ方向における上記酸素または窒素の濃度分布を制御できる。したがって、表面から所定の深さに位置する領域の酸素または窒素の濃度を、他の領域よりも高くすることにより、上記所定領域の微粒子を局所的に高度に酸化または窒化することができる。
【0085】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記媒体中に導入された上記物質から微粒子を形成する工程、および、上記微粒子の表面部分を改質する工程は、
上記注入によって上記微粒子を形成するための物質が導入された上記媒体を、酸化雰囲気中または窒化雰囲気中で熱処理する工程である。
【0086】
上記実施形態によれば、上記酸化雰囲気中または窒化雰囲気中で熱処理する工程は、既存の半導体製造装置を用いて行うことができるので、微粒子の表面部分に、この微粒子の形成材料の酸化物または窒化物からなる被覆層を、容易かつ安価に形成できる。
【0087】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記媒体中に導入された上記物質から微粒子を形成する工程よりも後に、
上記媒体の表面から所定深さまでの部分を除去する工程を備える。
【0088】
上記実施形態によれば、上記媒体について、上記微粒子の形成密度が比較的低い部分である上記表面から所定深さまでの部分を除去する。したがって、上記媒体を薄膜化できると共に、全体として微粒子の密度が比較的大きい媒体を形成できる。
【0089】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記媒体中に微粒子を形成するための物質を導入する工程と共に、上記媒体の表面部分を除去する工程を行う。
【0090】
上記実施形態によれば、上記媒体の表面部分を除去するので、上記物質が導入された厚み方向の部分のうち、例えば上記物質の濃度が小さい部分を除去することにより、上記物質の濃度が比較的大きい部分を露出させることができる。また、上記媒体中に物質を導入すると共に、上記媒体の表面部分を除去するので、迅速に上記物質の所定濃度の部分を露出させることができる。また、上記工程を高温雰囲気で行う場合、表面部分が除去して露出した部分の近傍に存在する上記物質を効率良く加熱することができるので、微粒子を効率良く生成することができる。
【0091】
本発明の微粒子含有体の製造方法は、上記微粒子含有体を製造する方法であって、
媒体の前駆体に、微粒子を形成するための物質を導入する工程と、
上記物質が導入された上記前駆体の一部を改質する工程と、
上記前駆体の改質された部分を除去する工程と、
上記前駆体の上記除去された部分以外の部分を改質する工程と
を備えることを特徴としている。
【0092】
上記構成によれば、上記媒体の前駆体に、上記微粒子を形成するための物質を導入し、この物質が導入された上記前駆体の一部を改質して、この改質された部分を除去する。上記前駆体のうち、除去すべき領域を改質することにより、この領域を比較的容易に選択して除去できる。また、上記前駆体の上記除去された部分以外の部分を改質するので、この除去された部分以外の部分に導入された上記物質の例えば濃度等の条件に応じて、適切に改質を行うことができる。これにより、上記前駆体の上記除去された部分以外の部分に、媒体、被覆層および微粒子を適切に形成できる。
【0093】
本発明の微粒子含有体の製造方法は、上記微粒子含有体を製造する方法であって、
媒体の前駆体の表面に、微粒子を形成するための物質の導入を制御する制御層を形成する工程と、
上記前駆体に、微粒子を形成するための物質を、上記制御層を介して導入する工程と、
上記前駆体に導入された上記物質から、微粒子を形成する工程と、
上記制御層を除去する工程と、
上記制御層が除去された上記前駆体を改質する工程と
を備えることを特徴としている。
【0094】
上記構成によれば、上記制御層を介して、上記物質を前駆体に導入するので、上記前駆体に適切な濃度の上記物質を導入できる。また、上記前駆体の深さ方向における上記物質の分布範囲を適切な範囲に調節できる。したがって、上記前駆体に、適切な範囲に適切な密度で分布する微粒子を形成できる。また、上記制御層が除去された上記前駆体を改質することにより、媒体と、上記微粒子を覆う被覆層とを得ることができる。
【0095】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記制御層を除去する工程の前に、上記微粒子を形成する工程を行う。
【0096】
上記実施形態によれば、上記前駆体に微粒子を形成した後に、上記制御層を除去するので、微粒子が所定の密度で形成された前駆体の面を露出させることができる。
【0097】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記制御層を除去する工程の後に、上記微粒子を形成する工程を行う。
【0098】
上記実施形態によれば、上記制御層の影響が無い状態で、上記前駆体に微粒子を形成できる。
【0099】
一実施形態の微粒子含有体の製造方法は、上記前駆体に微粒子を形成するための物質を導入する工程と共に、上記制御層を除去する工程を行う。
【0100】
上記実施形態によれば、上記前駆体に上記物質を導入すると共に、上記制御層を除去するので、迅速に上記物質の所定濃度の部分を露出させることができる。また、上記工程を高温雰囲気で行う場合、前駆体の表面部分が露出した部分の近傍に存在する上記物質を効率良く加熱することができるので、微粒子を効率良く生成することができる。
【0101】
本発明の記憶素子は、上記微粒子含有体を用いて形成された電界効果型トランジスタを備える。
【0102】
上記構成によれば、上記電界効果型トランジスタにより、上記微粒子含有体の微粒子が保持する電荷の量に応じてメモリ動作を行うと共に、例えばドレイン電流の大きさを検出することにより上記微粒子含有体によるメモリ状態を判別することができる。これにより、高い量産性を有し、リーク耐性に優れ、さらに、微細化が可能な記憶素子が得られる。
【0103】
本発明の半導体装置は、上記記憶素子が集積された記憶回路を備える。
【0104】
上記構成によれば、上記記憶素子は微細化が容易であるので、記憶回路の占有面積を縮小して、半導体装置の小型化が有効に行なえる。
【0105】
本発明の電子機器は、上記半導体装置を備える。
【0106】
上記構成によれば、記憶回路の占有面積が比較的小さくて小型の上記半導体装置を備えるので、効果的に小型化が可能な図電子機器を得ることができる。
【発明の効果】
【0107】
以上のように、本発明の微粒子含有体は、第1の層と、第2の層と、上記第1の層と第2の層との間に形成され、第1の材料からなる媒体と、上記媒体中にあると共に第2の材料からなる少なくとも1つの微粒子と、上記微粒子を被覆すると共に第3の材料からなる被覆層とを備え、上記第2の材料は、電荷を保持する機能を有する材料であり、上記第3の材料は、電荷の通り抜けに対する障壁として働く材料であり、上記微粒子の少なくとも1つは、その微粒子を覆う被覆層の一部が、上記第1または第2の層に接しているので、上記微粒子と媒体等との間で電荷が不必要な出入をすることを防止できる一方、上記媒体を介することなく上記第1または第2の層に対して電荷のやり取りが可能となる。したがって、良好な電荷保持特性が得られると共に、電荷のやりとりに必要な電圧および時間を低減できて、低電圧で高速動作が可能な電子デバイスを構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0108】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0109】
(第1実施形態)
図1A〜図1Eは、本発明の第1実施形態としての微粒子含有体の製造方法を示す工程図である。本実施形態では、第1の層としてシリコン基板100を用いた。第2の層は特に図示していないが、金属や半導体で形成された電極や保護膜等を用いることができる。なお、上記第1の層についても、金属や半導体で形成された電極や保護膜等を用いることができる。また、本実施形態では、微粒子としての銀微粒子130を形成すると共に、この銀微粒子を覆う被覆層として、絶縁体であるシリコン酸化膜140を形成した。
【0110】
まず、図1Aに示すように、シリコン基板100の表面に、熱酸化工程によって、媒体としてのシリコン酸化膜110を形成する。本実施の形態では、およそ50nmの膜厚に形成する。
【0111】
次に、図1Bに示すように、上記シリコン酸化膜110中に、微粒子を形成するための物質としての銀を、イオン注入法により導入する。ここで、注入エネルギーはあまり高エネルギーであると、注入分布が広がり過ぎるので、比較的薄い上記シリコン酸化膜110への注入に相応しくなく、また、上記シリコン酸化膜110にダメージを与えて欠陥を生じてしまう。したがって、注入エネルギーは、100keV未満が好ましく、特に、50keV未満が好ましい。本実施形態では、上記シリコン酸化膜110の厚み方向の中央付近に微粒子を形成すべく、約30keVで注入を行った。
【0112】
また、注入ドーズ量があまりに多いと微粒子の粒径が大きくなりすぎ、また、シリコン膜110へのダメージも多くなる一方、少な過ぎると、微粒子密度が小さくなり過ぎてしまう。したがって、注入ドーズ量は、1×1012/cm2より多く1×1020/cm2より少ないほうが良い。例えば、1×10e13/cm2より多く1×10e17/cm2より少ない注入ドーズ量が、より好ましい。本実施の形態では、およそ30keVのエネルギー、かつ、およそ1×1015/cm2の注入量で、銀を導入した。
【0113】
いうまでもなく、イオン種によって、選択すべき注入エネルギー及び注入量は異なる。
【0114】
また、上記銀を注入するイオン注入法としては、負イオン注入法であるのが好ましい。負イオンを用いて注入を行なった場合、注入を受ける絶縁体(本実施形態ではシリコン酸化膜110)の表面電位は、正イオンを用いた場合の正イオンの加速電圧近くまで上昇することが無く、数V程度の非常に低い値に抑えることができる。すなわち、正イオン注入法では、正の電荷のイオンが絶縁体の表面に入射した際、負の電荷の二次電子が放出されるので、上記絶縁体表面は正に帯電する一方であり、最終的に正イオンの加速電圧まで上昇する。一方、負イオン注入法の場合、負の電荷のイオンが入射して負の電荷の二次電子が放出し、表面電位は±数V程度に収まるのである。したがって、正イオン注入法と比べて、実効的な加速電圧の変動が少なくなるため、導電性微粒子を形成するための物質(銀)の注入深さのばらつきを抑制することが可能となる。また、上記絶縁体は、殆ど帯電しないので、絶縁破壊等による欠陥の発生を抑制することが可能となる。本実施形態では、日新電機株式会社製の負イオン注入装置を用いた。
【0115】
続いて、上記銀が注入されたシリコン酸化膜110に、熱処理を加える。この熱処理によって、注入元素(銀)を凝集または拡散することにより、図1Cに示すように、所定の粒径の銀微粒子120が形成される。また、イオン注入時に発生した上記シリコン酸化膜110の欠陥を修復することも可能である。上記熱処理の温度は、あまりに低いと効果がなく、あまりに高温であると注入元素が拡散、溶融して微粒子が形成できない。したがって、上記熱処理の温度は、200℃より高く、注入元素(銀)の融点未満であることが好ましい。また、同一温度であっても、処理時間を長くすればその温度での効果は増大するが、あまりに長時間であると、微粒子の粒径が過度に大きくなる場合や、あるいは、微粒子を形成すべき領域外まで注入元素が拡散する場合があるので、24時間より短いほうが好ましい。
【0116】
続いて、改質工程としての熱処理工程により、銀微粒子の表面部分に被覆層を形成する。通常の熱処理は、アルゴン等の不活性雰囲気中で実行するが、本発明では、微粒子の表面部分が絶縁化される雰囲気中で実施する。本実施の形態では、酸素を含む気相中で熱処理を実施し、銀微粒子120を形成するとともに、シリコン酸化膜110中に酸素を拡散させて銀微粒子120の表面に酸素を供給することによって、上記銀微粒子120の表面部分を酸化して絶縁化を行なう。
【0117】
上記熱処理における温度、時間、気相の流量等の条件は、用いる材料や所望の微粒子径およびその表面に形成する絶縁層の厚さによって異なる。
【0118】
本実施の形態では、シリコン熱酸化条件よりもやや低い温度で、数時間程度、酸化雰囲気中で熱処理を実施する。これによって、図1Dに示すように、上記銀微粒子120の表面部分を絶縁化して、被覆層としての酸化銀140を形成する。すなわち、微粒子の表面部分を改質する工程を行う。
【0119】
上記熱処理において、酸化による他に、窒化によって絶縁化を行なって被覆層を形成することもできる。例えば微粒子を形成するための物質としてシリコンを注入した後、例えばアンモニア雰囲気中で熱処理を実行することにより、微粒子の表面に、シリコン窒化物からなる被覆層を形成できる。
【0120】
また、当初はアルゴンや窒素等の不活性雰囲気中で熱処理を行って、ある程度微粒子が形成されてから、この形成された微粒子が絶縁化される雰囲気中での熱処理に切り替えて、その表面部分の改質を行うこともできる。この方法では、上記微粒子の大きさを任意の大きさに調整してから絶縁化を行うことができるので、より多様な大きさの微粒子を正確に形成することができる。例えば、通常の熱処理炉であれば、アルゴンや窒素等の不活性雰囲気中、おおよそ300℃〜900℃程度で当初の熱処理を行なうのが好ましく、本実施形態では、アサヒ理化製作所製のセラミクス電気管状炉を用いて、アルゴン雰囲気中で約1時間熱処理を行った。もちろん、これは銀微粒子の場合であって、微粒子を形成する元素によって、最適な熱処理条件は異なる。
【0121】
このように、微粒子の表面部分を酸化または窒化により改質する工程は、既存の半導体製造装置を用いて行うことができる。したがって、上記微粒子の表面部分を比較的安価に改質できる。
【0122】
さらに、微粒子形成のための熱処理が比較的低温である場合、注入によって媒体に発生した欠陥を修復するために、500〜1000℃程度の熱処理を行うことが好ましい。この時、長時間熱処理を行うと、微粒子が融解したり拡散したりするので、RTA(Rapid Thermal Annealing)、すなわち、短時間の熱処理を行うのが好ましい。
【0123】
また、本実施形態の微粒子含有体の製造方法によれば、負イオン注入法を用いることにより、注入を受ける媒体の帯電を抑制できるので、上記媒体において、狙い通りの深さおよび濃度の注入を行ない易いという利点を有する。また、注入によって、微粒子を形成するための物質を媒体に導入するので、上記媒体中の適切位置に散在するナノメートルサイズの微粒子を、一度の工程で形成できる。したがって、従来におけるように、薄膜形成工程とこの薄膜の微細加工工程とを、何度も繰り返す必要が無い。また、ナノスケールの微細加工技術を用いる必要がないので、生産性が良い。
【0124】
さらに、上記負イオン注入法を用いた工程以外の工程は、既存の半導体製造装置で実行可能である。また、負イオン注入法は、既存のイオン注入装置をごく一部変更して実行できる。したがって、微粒子含有体を安価に製造できる。また、既存の半導体製造装置を用いることにより、他の半導体素子に微粒子を混載することができて、実用的である。
【0125】
本実施形態の微粒子含有体の製造方法によって形成した微粒子130の様子を、断面TEM(透過型電子顕微鏡)観察によって調べた。その結果、図1Dに示すように、イオン注入された銀が凝集して、粒径(直径)がおよそ2〜3nm程度のいわゆるナノメートルサイズの銀微粒子130が形成された。そして、この銀微粒子130を覆うように、酸化銀140が形成された。上記銀微粒子130は、銀イオンの加速エネルギーから予想される深さに、正確に分布して形成された。図1Eは、図1Dの一部を拡大したものである。
【0126】
図1Dにおいて、媒体としてのシリコン酸化膜110上に、例えば金属からなる図示しない第2の層としての電極層を形成することにより、本発明の微粒子含有体が得られる。この微粒子含有体は、第1の層としてのシリコン基板100と、上記電極層と、上記シリコン基板100と電極層との間の媒体としてのシリコン酸化膜110とを備え、このシリコン酸化膜110に、被覆層としてのシリコン酸化膜140に覆われた微粒子としての銀微粒子130が少なくとも1つ保持される。
【0127】
上記構成の微粒子含有体によれば、上記銀微粒子130はシリコン酸化膜140に覆われているので、この銀微粒子130と上記シリコン酸化膜110との間で電荷が不必要に出入りすることが防止される。また、上記銀微粒子130の銀成分が流出することや、他の成分が銀微粒子130に流入することが防止される。したがって、上記銀微粒子130に保持される電荷の量は、長時間に亘って変動が少なくなるので、この微粒子含有体は、長時間に亘って安定して電荷を保持することができる。また、経時変化による特性の変化を防止できる。
【0128】
さらに、上記銀微粒子130は、電荷を保持する機能を有する銀で形成されているので、保持できる電荷量が比較的多い。したがって、たとえ電荷の多少の増減があっても、銀微粒子130に保持された全電荷量に対する変動の割合を抑制することが可能となる。したがって長時間に亘って電荷量の変動が少なくなるので、この微粒子含有体は、電荷保持を長時間に亘って安定にできる。
【0129】
なお、本実施形態では、微粒子として銀を用いたが、その他の金、銅などの金属や、シリコン、ゲルマニウムなどの半導体等の導伝体を用いることができる。ただし、金は酸化され難いので、微粒子の表面部分の絶縁化が多少困難である。一方、例えばアルミニウムなどのような、酸化によってその表面に強固な酸化被膜を形成する物質は、微粒子を覆う絶縁体(被覆層)が安定して形成される点で好ましく、アルミニウムの他に、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、チタン、クロム、スズ、コバルト、ニッケル、鉄、アンチモン、鉛などが好ましい。
【0130】
また、微粒子が形成される媒体として、シリコン基板上の熱酸化膜の例をあげたが、ガラス基板など、その他の絶縁体、あるいは半導体の基板等をも用いることができる。
【0131】
(第2実施形態)
本実施形態の微粒子含有体の形成方法では、第1実施形態の微粒子含有体の形成方法に加えて、微粒子を形成する工程と被覆層を形成する工程との間にエッチング工程を設け、上記微粒子が形成された媒体の表面から所定深さまでの領域を除去する。
【0132】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、微粒子として銀微粒子を形成する。
【0133】
まず、図2Aに示すように、第1の層としてのシリコン基板200の表面に、熱酸化工程によって、媒体としてのシリコン酸化膜210を形成する。本実施形態では、およそ100nmの膜厚に形成する。
【0134】
次に、図2Bのように、上記シリコン酸化膜210中に、銀をイオン注入法によって導入する。ここで、注入エネルギーは注入深さが50nm程度になるように設定する。
【0135】
通常、上記イオン注入では注入分布が生じて、注入物質の濃度が、所定の深さを最大濃度として、深さ方向にガウス分布に類似した濃度分布となる。本実施形態では、表面からおよそ50nmの深さにおいて、注入された銀が最大濃度となる。したがって、第1実施形態と同様に微粒子220を形成すると、この微粒子220は、上記イオン濃度に依存した粒径の分布を形成する。すなわち、注入濃度が最大である深さに、粒径が比較的大きい微粒子220が形成される。そして、この粒径が比較的大きい微粒子が形成される位置の上下の位置に、粒径が比較的小さい微粒子220が形成される。
【0136】
ここで、本実施形態では、エッチングによって、上記シリコン酸化膜210の表面から所定の深さまでの部分を除去する。これによって、図2Cに示すように、粒径が比較的大きい銀微粒子220がシリコン酸化膜210の表面付近に位置する。また、上記シリコン酸化膜210の表面付近から基板側に向うにつれて、微粒子220の粒径が小さくなるようにする。上記シリコン酸化膜210を除去するエッチングは、ウエットエッチングとドライエッチングのいずれも用いることができる。本実施形態では、濃度が0.5%の沸酸溶液を用いてウエットエッチングを行なった。
【0137】
上記エッチングで除去するシリコン酸化膜210の部分の厚みは、このシリコン酸化膜210への微粒子を形成するための物質の注入深さと、同程度またはそれ以上とする。本実施の形態では、表面から約50nmの深さまでエッチングを行った。
【0138】
その後、第1実施形態と同様に、例えば熱酸化によって、上記微粒子の表面部分の改質を行なう。これによって、図2Dに示すように、銀微粒子の表面に酸化銀を形成する。この絶縁化の工程では、国際電気株式会社製のロードロック式酸化炉を用いた。上記銀微粒子は、シリコン酸化膜210の表面に近いものほど酸化される度合いが大きいと共に、上記シリコン酸化膜210の表面に近いものほど粒径が大きい。したがって、表面に酸化銀を形成した後の銀微粒子230の粒径は、深さ方向において、酸化銀を形成する前の銀微粒子220の粒径よりもばらつきが比較的少なくなる。
【0139】
上記表面に酸化銀が被覆された銀微粒子230を形成した後、上記シリコン酸化膜210の表面に第2の層を形成して、本発明の微粒子含有体が完成する。
【0140】
本実施形態の微粒子含有体の形成方法は、媒体としてのシリコン酸化膜210に、微粒子を形成するための物質である銀を導入し、この銀の導入工程の後に、上記シリコン酸化膜210の表面から所定深さまでの部分を除去する。これにより、上記物質(銀)の導入密度が比較的低い部分が除去される。したがって、上記シリコン酸化膜210が薄膜化されると共に、このシリコン酸化膜210全体における銀微粒子220,230の密度を増大することができる。また、上記シリコン酸化膜210の深さ方向における上記銀微粒子230の分布範囲を狭めることができる。
【0141】
(第3実施形態)
本実施形態では、微粒子を形成するための物質を導入する工程と、微粒子を形成する熱処理工程との間にエッチング工程を備える。このエッチング工程で、微粒子を形成するための物質が導入された絶縁体について、表面から所定深さまでの領域を除去する。
【0142】
本実施形態では、媒体としてのシリコン酸化膜に、微粒子としての銀微粒子を形成する。また、微粒子を形成するための物質をイオン注入により導入する。
【0143】
まず、シリコン基板300の表面に、熱酸化工程によって、媒体としてのシリコン酸化膜310を形成する。本実施形態では、およそ100nmの膜厚に形成する。上記シリコン基板300のうち、酸化されずにシリコンが残った部分が第1の層となる。
【0144】
次に、図3Aに示すように、上記シリコン酸化膜310中に、銀をイオン注入法によって導入する。ここで、注入エネルギーは、注入深さが50nm程度になるように設定する。
【0145】
ここで、上記銀の注入濃度は、上記シリコン酸化膜310表面からおよそ50nmの深さを最大濃度として、深さ方向に、ガウス分布に類似した濃度分布が形成される。
【0146】
続いて、図3Bに示すように、上記銀の注入濃度が高い部分が表面付近になるように、上記シリコン酸化膜310の表面部分をエッチングで除去する。すなわち、上記シリコン酸化膜210を、上記注入深さと同程度かもしくはそれ以上の深さに亘って、エッチング除去する。本実施形態では、表面から約50nmの深さまでエッチングを行った。エッチングの方法は、第2実施形態と同様、ウエットエッチングでもドライエッチングでもよい。本実施形態では、濃度が0.5%の沸酸溶液を用いてウエットエッチングを行なった。
【0147】
その後、第2実施形態と同様に、上記シリコン酸化膜310の熱処理、および、銀微粒子の絶縁化を行なう。
【0148】
まず、上記シリコン酸化膜310の熱処理を行うことにより、図3Cに示すように、銀微粒子320が、その粒径がシリコン酸化膜310の表面付近から基板300側向って小さくなるように分布して形成される。
【0149】
そして、上記銀微粒子の表面部分について、熱酸化によって絶縁化を行う。本実施形態では、国際電気株式会社製のロードロック式酸化炉を用いた。その結果、図3Dのように、銀微粒子330の表面に、被覆層としての銀酸化膜が形成される。この銀酸化膜は、上記シリコン酸化膜310の表面付近の銀微粒子330については比較的厚く形成される一方、シリコン基板300側、すなわち、シリコン酸化膜310表面から遠い位置の銀微粒子330については、比較的薄く形成される。これによって、上記被覆層が形成された後の銀微粒子330は、上記シリコン酸化膜310の厚み方向において、粒径が略同じになった。その結果、形成当初の銀微粒子320の中心部分であって、絶縁化されずに残った銀微粒子330の粒径は、上記形成当初の銀微粒子320に比べて、ばらつきが比較的少ない粒径分布となった。
【0150】
なお、第1乃至第3実施形態では、注入工程、熱処理工程、絶縁化工程を別々に行ったが、注入条件によっては、熱処理工程を施すことなく、銀のイオン注入と略同時に微粒子を形成することができる。また、上記被覆層を形成する工程は、例えば熱酸化のように熱を伴う工程であるので、実質的に熱処理による微粒子形成工程を兼ねることも可能である。
【0151】
しかしながら、所定寸法の微粒子を得るために他の条件が厳しくなったり、工程が不安定になったりするので、夫々別工程とするほうが、大量生産を行なう上では好ましい。
【0152】
本実施形態の微粒子含有体の製造方法は、媒体に、微粒子を形成するための物質を導入する工程の後に、上記媒体を表面から所定深さまで除去する工程を備える。したがって、上記物質の深さ方向の分布範囲を実質的に狭めることができる。したがって、上記物質から微粒子を形成したときの上記微粒子の深さ方向への分布範囲を狭めることが可能となる。
【0153】
(第4実施形態)
本実施形態では、媒体の前駆体である基板中に、微粒子を形成するための物質を注入し、その後に、上記基板の一部を改質する。この基板の改質工程は、上記物質の注入濃度が高い領域付近まで改質するように行う。この基板の改質工程に続いて、例えば改質した基板が溶けるような溶液によってエッチングを行い、上記改質領域を除去する。この時点で、上記物質の注入濃度が高い部分が表面に現れる。そして、上記注入濃度が高い部分が表面に現れた基板を熱処理して、上記注入した物質を拡散または凝集させて、この時点で、所定の微粒子を形成する。続いて、上記基板の改質を行い、上記基板の表面部分に媒体を形成すると共に、上記微粒子の表面部分に被覆層を形成する。
【0154】
図4A乃至4Dは、本実施形態の微粒子含有体の製造方法を説明する図である。
【0155】
本実施形態では、第1乃至第3実施形態と異なり、媒体の前駆体としてのシリコン基板中に、シリコン酸化膜が無い状態で、あるいは、薄いパッド膜越しに、銀イオン注入を行う。すなわち、図4Aに示すように、シリコン基板400中に銀をイオン注入法により導入する。ここで、注入エネルギーは、上記銀イオンの注入深さが50nm程度になるように設定した。
【0156】
この工程においても、第1乃至第3実施形態と同様に、上記銀イオンの注入濃度は、深さ方向において、シリコン基板400の表面からおよそ50nmの深さの位置が最大濃度となるガウス分布に類似した濃度分布となる。
【0157】
その後、酸化により上記前駆体の一部を改質する工程を実行する。すなわち、図4Bに示すように、上記シリコン基板400の一部を酸化して、シリコン酸化膜410を形成する。このシリコン酸化膜410とシリコン基板400との界面付近に、銀の注入濃度が高い部分が位置するように上記酸化を行なう。すなわち、上記シリコン基板400の酸化深さは、およそ銀の注入深さと同程度またはそれ以上とする。本実施形態では、酸化前のシリコン基板表面から約50nmの深さまで酸化を行った。この酸化を行ったときの熱によって、銀微粒子420が形成される。なお、上記酸化工程により、上記シリコン酸化膜410内の銀微粒子の表面部分には、酸化銀が形成される。
【0158】
次に、上記シリコン酸化膜410を除去する。本実施形態では、希弗酸によって上記シリコン酸化膜410を除去する。その結果、図4Cのように、上記シリコン酸化膜410が除去された後のシリコン基板400には、表面付近の粒径が最も大きいと共に、このシリコン基板400の表面から深さ方向に向かうにつれて小さい粒径の銀微粒子420が含まれることになる。
【0159】
その後、再び、上記シリコン基板400について、酸化(改質)を行なう。この酸化は、熱酸化法によって行ない、これによって、上記シリコン基板400の表面に、膜厚が約50nm程度のシリコン酸化膜440を形成する。つまり、上記シリコン基板400の表面部分は、媒体の前駆体であり、この前駆体が酸化されて、媒体としてのシリコン酸化膜440が形成される。その結果、図4Dに示すように、銀微粒子420の表面部分もまた酸化(改質)されて、表面が酸化銀で覆われた銀微粒子430が形成された。この表面に酸化銀で覆われた銀微粒子430の粒径について、第3実施形態と同様に、酸化銀が形成される前の銀微粒子420の粒径よりも、ばらつきが比較的少ない分布となった。
【0160】
上記シリコン酸化膜440の表面に、第2の層を形成することにより、本発明の微粒子含有体が完成する。
【0161】
本実施形態の微粒子含有体の製造方法は、媒体の前駆体としての基板に、微粒子を形成するための物質を導入した後に、上記前駆体の表面から所定の深さまで基板を除去するので、微粒子を形成するための物質の深さ方向の分布範囲を実質的に狭めることができる。したがって微粒子を形成したときの微粒子の深さ方向の分布範囲を狭めることが可能となる。
【0162】
(第5実施形態)
本実施形態では、微粒子を形成するための物質の注入の前に、この物質の注入を行なう媒体としての半導体基板上に、制御層を形成しておく。
【0163】
次に、上記制御層越しに、上記半導体基板に上記物質を注入する。この時、上記制御層と基板との界面付近が、上記物質の注入濃度が高い部分になるように、予め上記制御層の厚みと注入条件とを設定しておく。
【0164】
上記物質の注入後、熱処理を施して、上記物質により微粒子を形成する。その後、上記制御層の除去を行う。このとき、制御層中に形成された微粒子も同時に除去される。
【0165】
次に、上記基板の表面部分を改質(絶縁化)すると共に、上記微粒子の表面部分の改質(絶縁化)を行なう。上記微粒子は、上記基板の表面付近にあるもの程絶縁化の程度を大きくする。上記基板の表面付近の微粒子は径が比較的大きいので、絶縁化後の微粒子の径は、上記半導体基板の深さ方向において、ばらつきが比較的少なくなる。
【0166】
本実施形態の具体例を、図5A乃至5Dを用いて説明する。
【0167】
まず、媒体の前駆体としてのシリコン基板500の表面に、熱酸化工程によって、制御層としてのシリコン酸化膜510を形成する。このシリコン酸化膜510は、約25nmの厚みに形成する。
【0168】
次に、図5Aに示すように、上記シリコン酸化膜510およびシリコン基板500中に、銀をイオン注入法によって導入する。ここで、注入エネルギーは、上記銀の注入深さが、シリコン酸化膜510とシリコン基板500との界面付近になるように設定する。本実施の形態では、注入深さが約50nm程度になるように注入を行なった。
【0169】
本実施形態においても、上記銀の注入濃度は、制御層であるシリコン酸化膜510の表面から約50nmの深さを最大濃度として、深さ方向にガウス分布に類似した濃度分布となる。
【0170】
次に、熱処理工程を行って、銀微粒子520を形成する。上記シリコン酸化膜510とシリコン基板500とでは、母材の違いから、上記銀微粒子520の形成状態は異なるが、図5Bのように、それぞれの母材中ではイオン濃度に依存した粒径分布をなす。
【0171】
ここで、酸化膜エッチングによって、制御層としてのシリコン酸化膜510を除去する。このシリコン酸化膜510を除去した結果、図5Cに示すように、媒体の前駆体であるシリコン基板500の表面が露出する。このシリコン基板500には、表面付近から深さ方向に向って粒径が小さくなるように銀微粒子520が分布している。
【0172】
上記酸化膜エッチングは、ウエットエッチングとドライエッチングのいずれも用いることができる。本実施形態では、濃度が0.5%の沸酸溶液によるウエットエッチングを行なった。
【0173】
その後、第4実施形態と同様に、熱酸化工程によって、シリコン基板500の改質、および、微粒子の表面部分の改質を行なう。この工程では、国際電気株式会社製のロードロック式酸化炉を用いた。この熱酸化工程によって、上記前駆体であるシリコン基板500の表面部分が、媒体であるシリコン酸化膜540となる。このシリコン酸化膜540は、約30nmの厚みに形成された。また、このシリコン酸化膜540内の銀微粒子の表面部分が改質されて、被覆層としての銀酸化膜が形成される。この銀微粒子530は、上記シリコン酸化膜540の表面に近いものほど銀酸化膜が厚く形成された。ここにおいて、上記シリコン酸化膜540表面に近い銀微粒子530は、銀酸化膜の形成前の粒径が上記表面に近いほど大きいので、銀酸化膜の形成後の銀微粒子530の粒径は、銀酸化膜の形成前よりも粒径のばらつきが少なくなった。
【0174】
上記シリコン酸化膜540の表面に、第2の層を形成することにより、本発明の微粒子含有体が完成する。
【0175】
本実施形態の微粒子含有体の製造方法は、媒体の前駆体に微粒子を形成した後に、上記前駆体の表面から所定深さまでの部分を除去するので、この後に更に微粒子を形成したとき、上記微粒子の深さ方向の分布範囲を狭めることが可能となる。
【0176】
本実施形態では、制御層として酸化シリコンを用いたが、レジストや他の酸化物や窒化物、あるいは、ポリシリコン等のように、媒体の前駆体と異なる性質のものであればよい。すなわち、除去工程において前駆体に対して選択比を充分有する制御層であればよい。
【0177】
(第6実施形態)
本実施形態では、第5実施形態に対して、制御層を除去する工程と熱処理工程との順序が異なる。
【0178】
すなわち、本実施形態では、制御層を介して、媒体の前駆体に、微粒子を形成するための物質の注入を行った後、上記制御層を除去し、その後、熱処理を実施して微粒子を形成する。この後、絶縁化工程を行って、上記前駆体の表面部分を改質(絶縁化)すると共に、微粒子の表面部分を改質(絶縁化)する。
【0179】
図6A乃至6Dは、本実施形態の微粒子含有体の製造方法を示す工程図である。
【0180】
まず、シリコン基板600の表面に、熱酸化によって、制御層としてのシリコン酸化膜610を形成する。本実施形態では、上記制御層を、約25nmの厚みに形成した。
【0181】
次に、図6Aに示すように、上記シリコン酸化膜610と、このシリコン酸化膜610下に位置する媒体の前駆体であるシリコン基板600に、イオン注入法によって銀を導入する。ここで、注入エネルギーは、最大の注入深さがシリコン酸化膜610とシリコン基板600との界面付近になるように設定する。本実施の形態では、約50nm程度の注入深さになるように設定した。
【0182】
上記銀の注入濃度は、シリコン酸化膜610表面から約50nmの深さが最大濃度となるガウス分布に類似した分布となる。
【0183】
なお、条件によっては、銀イオンを注入した時点でシリコン酸化膜610とシリコン基板600に銀微粒子が形成される場合がある。
【0184】
次に、図6Bに示すように、酸化膜エッチングによって、制御層としてのシリコン酸化膜610を除去し、媒体の前駆体としてのシリコン基板600の表面を露出させると共に、この表面付近に、上記銀の注入濃度が高い部分が位置するように加工する。上記エッチングは、ウエットエッチングとドライエッチングのいずれも用いることができる。本実施の形態では、除去すべき制御層が酸化シリコンであるので、濃度が0.5%の沸酸溶液を用いたウエットエッチングを行なった。
【0185】
その後、熱処理および酸化工程を行なう。
【0186】
まず、熱処理を行って、図6Cに示すように、シリコン基板600に銀微粒子620を形成する。この銀微粒子620は、シリコン基板600の表面付近から深さ方向に向って粒径が小さくなるように形成される。
【0187】
そして、熱酸化によって、前駆体および微粒子の表面部分の改質(絶縁化)工程を行う。本実施形態では、国際電気株式会社製のロードロック式酸化炉を用いた。その結果、図6Dに示すように、シリコン基板600の表面部分に、厚みが約30nmのシリコン酸化膜640が形成される。また、このシリコン酸化膜640の表面近傍の銀微粒子630は、比較的厚い酸化銀が表面に形成される。そして、上記シリコン酸化膜640の深さ方向に向うにつれて、銀微粒子630の表面に形成される酸化銀の厚みが薄く形成される。その結果、上記絶縁化後の銀微粒子630は、絶縁前の銀微粒子620と比べて、上記シリコン酸化膜640の深さ方向において、粒径のばらつきが比較的少なく形成された。
【0188】
上記シリコン酸化膜640の表面に、第2の層を形成することにより、本発明の微粒子含有体が完成する。
【0189】
なお、上記制御層として酸化シリコンを用いたが、微粒子を形成するための物質の導入量を制御可能であると共に、上記物質の導入よりも後に除去できるものであれば、どのようなものでもよい。例えば、SiN膜により制御層を構成し、除去工程において、上記制御層をリン酸で除去してもよい。
【0190】
上記第1乃至第6実施形態では、微粒子を形成する第2の材料として銀を用いたが、銀以外の例えば金、銅、アルミニウム、錫、ニッケル、白金、亜鉛、ハフニウム、マンガン、タンタル、チタン、タングステン、インジウムなど他の金属を用いることもできる。
【0191】
特に、アルミニウムなどのように表面に緻密な酸化被膜を形成する物質は、微粒子を欠陥の少ない絶縁体(被覆層)で覆うことができるため、このアルミニウム微粒子に電荷が保持された場合、効果的に電荷のリーク現象を抑制することができる。したがって、電荷の保持特性の優れた微粒子含有体が形成できる。
【0192】
あるいは、微粒子を形成する第2の材料として、ハフニウムなどのように、絶縁化により高い誘電率の絶縁体(ハフニウムの場合は、酸化ハフニウム)が得られるものを用いた場合、微粒子を高誘電率の絶縁体で覆うことができる。これにより、この微粒子に電荷が保持された場合、効果的に電荷の有無によるクーロン力の大小を外部に与える事ができる。また、高誘電率の絶縁体において、電界を高めることができるので、微粒子に効率的に電荷の出し入れを行うことができる。したがって、動作特性の優れたメモリ機能体が形成できる。例えばメモリトランジスタのフローティングゲートに上記微粒子を用いれば、メモリウィンドウを大きくすることが可能であるので、信頼性の高いメモリトランジスタを構成することができる。
【0193】
また、微粒子には、シリコン、ゲルマニウム等の半導体を用いることも可能であり、半導体以外の合金や化合物を用いることも可能である。
【0194】
特に、微粒子としてシリコンを用いると共に、このシリコン微粒子の表面部分を、酸化または窒化によって絶縁化して、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜で被覆層を形成した場合、この被覆層は、上記シリコン微粒子に保持された電荷に対して、有効な障壁として機能することができる。すなわち、電荷のリークが殆ど無くて、良好な保持特性を有するメモリ機能体を形成することができる。
【0195】
また、第1の層としてシリコン基板600を用いると共に、媒体を形成する第1の材料としてシリコン酸化物またはシリコン窒化物を用いるので、この微粒子含有体は、既存の半導体製造装置を用いて形成できる。したがって、微粒子含有体を比較的容易かつ安価に製造できる。また、他の素子と容易に混載できて、高い汎用性および実用性が得られる。
【0196】
また、本実施形態の微粒子含有体の製造方法は、媒体の前駆体上に制御層を形成するので、微粒子を形成するための物質を上記前駆体に導入した後、上記制御層を除去する工程において、この除去すべき層を、厚みのばらつきが少ない状態で、除去することができる。
【0197】
(第7実施形態)
本実施形態では、第6実施形態において、微粒子を形成するための物質をイオン注入によって制御層および媒体前駆体に導入する際、上記注入を、上記制御層の表面に対して鋭角をなす方向から行なう。すなわち、上記制御層の表面に対して0度よりも大きく90度よりも小さい注入角でイオン注入を行う。
【0198】
具体的には、媒体の前駆体としてのシリコン基板と、このシリコン基板上に形成した制御層としてのシリコン酸化膜に、このシリコン酸化膜表面の法線に対して約70°程度の入射角をなして、銀負イオンを注入する。上記シリコン酸化膜厚は、約100nmである。上記銀負イオンの注入条件は、第6実施形態と略同様の条件である。
【0199】
この後、第6実施形態と同様に、制御層の除去工程と、熱処理による銀微粒子の形成工程と、熱酸化による媒体(シリコン酸化膜)の形成工程を行った結果、上記銀微粒子は、上記シリコン酸化膜の深さ方向において、第6実施形態よりも狭い領域に分布して形成された。本実施形態では、第6実施形態に対して約半分程度の厚みの領域に銀微粒子を形成することができた。
【0200】
ここで、正イオンを用いた注入法では、注入を受けるシリコン酸化膜などの絶縁体が帯電してしまい、鋭角をなして銀イオンの注入を行っても、銀イオンの注入分布が広がる場合や、所望の注入深さが得られない場合が多い。これに対して、本実施形態では、負イオン注入法を用いるので、上記シリコン酸化膜等が高電圧に帯電することがなく、注入した銀イオンを設定通りに分布させることができ、その結果、所望の深さに比較的狭い分布幅をなして微粒子を形成することができる。したがって、例えば、前駆体としてのシリコン基板上に形成された制御層としてのシリコン酸化膜を薄膜化しても、上記シリコン基板のうちの前駆体の領域内で銀イオンの注入を止めることができて、上記シリコン基板の第1層となる領域にまで銀イオンを注入してしまうといった不都合を避けることが可能となる。
【0201】
同様の条件で、シリコン酸化膜厚を約50nmに薄膜化した制御層を介して銀微粒子を形成した結果、厚みが100nmのシリコン酸化膜の制御層を用いた場合と同様に、シリコン基板の前駆体の部分に、所定の深さの領域に渡って正確に銀微粒子を形成することができた。また、注入エネルギーを低エネルギー化することや、上記シリコン酸化膜表面に対する注入角度を高角度にすることによって、さらに薄膜化したシリコン酸化膜を用いることが可能となる。
【0202】
なお、上記微粒子を形成するための物質を注入する角度は、比較的大きいと注入効率が低下するので、注入を受ける面の法線方向に対して80度以下にするのが好ましい。
【0203】
(第8実施形態)
本実施形態では、微粒子を保持する媒体に、微粒子を形成するための物質の注入を行いながら、上記媒体の表面をエッチングする。例えば、シリコン基板上に形成されたシリコン酸化膜に銀イオンを注入しながら、上記シリコン酸化膜に対してエッチングを行う。
【0204】
図7A,Bは、微粒子を形成するための物質を媒体に注入する装置を示す概略図である。図7A,Bに示すように、この装置は、ドライエッチング装置の反応室710に、イオン注入装置のビーム輸送部720の出口を設け、イオン注入装置の注入室を兼ねる構造を有する。このドライエッチング装置は、コイル740、マイクロ波導波管750、エッチングガス導入管760、真空排気口770を有する。また本装置では、ビーム輸送部720の周りに磁気シールド780を設けて、コイル740などからの外部磁場によってイオンビームが影響を受けるのを防いでいる。
【0205】
また、本実施形態では、微粒子を形成するためのイオンを媒体に対して斜めに注入するため、図7Aに示すように、イオンの入射方向が、基板保持台730の法線に対して約70°の角度を有する構造になっている。また、ビーム輸送部720の取り付け方向を変更することによって、あるいは、ビーム輸送部720にビーム径路の変更機構を備えることによって、上記導電体イオンの注入方向を所望の方向に設定することも可能である。
【0206】
あるいは、基板保持台730に可動機構を備えることにより、基板保持台730の傾きを変化することによって、基板上の媒体等に対する注入方向を任意に設定することができる。図7Bは、図7Aの状態から基板保持台730のみを約15°傾けた状態を模式的に示した図である。したがって、図7Bの状態では、導電体イオンの注入角度は約55°となる。
【0207】
ここで、シリコン基板上に形成されて、膜厚が約40nmの媒体としてのシリコン酸化膜に対して、図7Aの装置を用いて、銀負イオンを約30KeVの注入エネルギーで1×1015/cm程度注入した。これと共に、ドライエッチングによって、上記シリコン酸化膜を一定レートで約10nmエッチング行った。本実施形態では、ビームの平均電流密度は約1μA/cmであり、エッチングレートはおよそ4nm/min程度であった。
【0208】
その後、第1乃至第6実施形態と同様の方法で熱処理を行って、媒体中に微粒子を形成した。第1乃至第6実施形態では、媒体としてのシリコン酸化膜表面から所定の深さにおいて、最も大きい粒径の微粒子が形成され、この所定深さの上下に、上記粒径よりも小さい粒径の微粒子が形成された。また、微粒子の密度が、媒体としてのシリコン酸化膜の膜厚方向において、不均一になる傾向があった。しかしながら、本実施形態では、媒体としてのシリコン酸化膜の表面付近から約10nm程度の深さまでの領域において、比較的均一な粒径の銀微粒子の分布が得られ、上記微粒子の大きさや密度のばらつきが少なくなった。
【0209】
また、本実施形態では、上記媒体の表面に対して鋭角をなす方向から微粒子材料を注入する斜め注入を行なっているので、微粒子が形成される領域を、媒体の膜厚方向において狭い範囲に設定することが可能である。また、上記微粒子材料の注入角度を調節すれば、上記媒体における微粒子の形成範囲を調整することが可能である。さらに、本実施形態におけるように、負イオンを用いることによって、微粒子形成範囲のばらつきをさらに抑制することが可能になるので、微粒子の形成範囲を良好な精度で調整することができる。
【0210】
また、上記媒体における微粒子の大きさや密度のばらつきを小さくできるので、媒体の深さに応じた粒径の密度を、上記媒体の平面方向において均一に形成することができる。したがって、上記媒体の平面方向において、電荷の保持特性を均一にできる。
【0211】
さらに、上記微粒子の絶縁化工程を行なうことによって、他の実施形態と同様に、微粒子の粒径を縮小することができ、また、上記微粒子の電荷保持特性を向上することができる。特に、本実施形態では、上記媒体の膜厚方向において、狭い範囲に微粒子を形成することができるので、媒体の薄膜化を行なうことができる。また、上記微粒子を、薄膜中の狭い厚み方向の範囲に形成できるので、短い時間で略全ての微粒子表面を絶縁化して被覆層を形成することができ、絶縁化工程の時間の短縮を行なうことができる。また、微粒子表面の絶縁化のばらつきを抑制できるので、信頼性と生産性を向上することができる。
【0212】
本実施形態において、媒体としてのシリコン酸化膜に対してイオン注入を行ったが、媒体の前駆体の表面に制御層を形成し、この制御層を介して前駆体にイオン注入を行ってもよい。
【0213】
(第9実施形態)
本実施形態では、本発明の微粒子含有体の製造方法によって、ナノメートルサイズの微粒子を含む微粒子含有体を形成して、メモリ機能体を構成した。
【0214】
図8Aは、本実施形態の微粒子含有体を用いたメモリ機能体を示す模式図である。図8Bは、図8Aの一部を拡大した図である。このメモリ機能体は、第1の層としての基板800上に、媒体としてのシリコン酸化膜810を備え、このシリコン酸化膜810中に、被覆層としての銀酸化膜825で覆われた銀微粒子820が形成されている。上記シリコン酸化膜810上に、アルミニウムで形成した第2の層としての電極830を設けている。
【0215】
上記メモリ機能体のシリコン基板800とアルミニウム電極830との間に電圧Vgを印加したときの上記シリコン酸化膜810の容量Cを測定して実験を行なった結果、図9に示すような曲線が得られた。図9において、横軸が電圧Vg(V)であり、縦軸が容量C(pF)である。図9から分かるように、上記メモリ機能体は、ヒステリシス特性を示す。このように、本実施形態のナノメートルサイズの銀微粒子820を含むシリコン酸化膜810は、ヒステリシス特性を有するので、上記シリコン基板800とアルミニウム電極830との間に同一電圧を印加したときの容量の大小を比較することによって、2値の判別を行うことができ、メモリ機能を奏することができる。
【0216】
また、本実施形態の微粒子含有体は、微粒子を形成するための物質を負イオン注入で媒体に導入し、熱処理により微粒子を形成した後、絶縁化工程によって微粒子の表面部分を改質して、銀酸化膜825で覆われた銀微粒子820を形成する。したがって、上記媒体としてのシリコン酸化膜810は、負イオン注入によって上記物質が導入されるのでダメージが少なくて、単一熱酸化膜と同等の品質を有している。したがって、このメモリ機能体は、信頼性が非常に高い。しかも、例えばCVD法によって絶縁膜および微粒子を形成する場合と較べて、製造にかかる時間が短いので、優れた生産性を有する。
【0217】
また、上記銀微粒子の表面部分を改質する工程において、例えば、水素やその他の分子を注入することにより、上記銀微粒子の表面に存在するダングリングボンド等の欠陥を終端させて、欠陥を減らすことができる。これにより、例えば界面準位の形成等が少ない良好な表面を有する銀微粒子820が得られる。
【0218】
また、上記被覆層としての銀酸化膜825を形成する第3の材料としての酸化銀は、上記銀微粒子820を形成する第2の材料としての銀が絶縁化されてなるので、上記銀酸化膜825と銀微粒子820との界面は、例えば界面準位が比較的少なくて、良好な状態になる。したがって、上記銀微粒子820は、保持する電荷のリークが従来よりも少なくなって、従来よりも長時間に亘って電荷の保持が可能なメモリ機能体が実現できる。
【0219】
また、上記第3の材料としての酸化銀は、上記第2の材料としての銀を酸化して得られるので、半導体産業で広く用いられている既存の酸化炉などを使用して微粒子含有体を製造できる。したがって、微粒子含有体のための新たな製造装置が不要になり、設備投資が少額にできて、安価なメモリ機能体が得られる。
【0220】
また、上記媒体としてのシリコン酸化膜810に、負イオン注入によって上記物質としての銀イオンを注入するので、帯電による銀微粒子の形成位置のばらつきを抑えることができ、上記銀微粒子を含むシリコン酸化膜810は、薄膜化と微細化が可能である。さらに、厚みが比較的厚い場合と比較して、電極間に同じ電圧を加えても、厚みが比較的薄いことによってシリコン酸化膜810にかかる実効電場が強くなるので、メモリ機能体の低電圧化が可能となり、生産性および低消費電力性を向上することができる。
【0221】
また、上記銀イオンの注入の際に、シリコン酸化膜810の表面に対して鋭角をなして注入を行うことにより、シリコン酸化膜810の厚み方向における銀微粒子820の分布の広がりを抑制することができる。したがって、上記シリコン酸化膜810は薄膜化が可能となり、効果的に微細化を行なうことができる。
【0222】
なお、上記シリコン酸化膜810の厚みについて、第1実施形態のシリコン酸化膜110を用いて、シリコン酸化物のみを増やして70nmに厚みを増大した試料を形成し、この試料に電位差を与えて実験を行なった。その結果、上記試料の膜では、電位差を10V近くまで上昇させなければメモリ機能体として動作しなかった。また、10Vの電位差を与えると、絶縁破壊が生じてしまった。したがって、上記シリコン酸化膜810の厚みは、70nm未満であることが好ましい。
【0223】
また、本実施形態のメモリ機能体を、従来のDRAM(Dynamic Random Access Memory)のキャパシタに用いれば、リフレッシュが必要ないか、あるいは、少なくともリフレッシュ回数を大幅に削減できる低消費DRAMが実現可能となる。また、強誘電体メモリの強誘電体のような特殊な材料を用いる必要が無いので、簡単な工程で成作でき、優れた生産性を有するDRAMが得られる。
【0224】
なお、上記銀微粒子820の大きさは、大きすぎると微細化が困難になる一方、小さすぎるとメモリ機能が低下するので、ナノメートルサイズ、すなわち、1μm未満の大きさが好ましく、特に、粒径が、0.1nmよりも大きく4nmよりも小さい範囲に含まれる銀微粒子820が多数となるのが好ましい。
【0225】
また、上記電極830は、導電性の物質であれば、金属以外のポリシリコン等の半導体を用いることができる。また、上記第1の層としてのシリコン基板800は、導電性を有するものであれば、他のものでもよい。
【0226】
本実施形態において、媒体としてのシリコン酸化膜810中に、酸化銀825で覆われた微粒子としての銀微粒子820を形成した場合を説明したが、上記微粒子は、金、銅、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウム、タングステン、ニオブ、ジルコニウム、チタン、クロム、スズ、コバルト、ニッケル、鉄、アンチモンおよび鉛などの他のもので形成してもよい。この微粒子の材料に応じて、この微粒子を酸化してなる絶縁体(被覆層)によって、上記微粒子を覆うように形成すればよい。
【0227】
また、被覆層として、微粒子の表面部分を酸化してなる酸化膜を用いたが、微粒子の表面部分を窒化してなる窒化膜を用いてもよい。被覆層として窒化膜を用いる場合においても、既存の半導体製造装置を用いて微粒子の表面部分に上記被覆層を形成できるから、微粒子含有体を比較的容易かつ安価に形成できる。
【0228】
また、上記微粒子および絶縁体を保持する媒体(絶縁体)は、上記シリコン酸化物に限らず、シリコン窒化物、ガラス基板および他の半導体などで形成してもよい。
【0229】
また、上記銀イオンの注入条件によっては、熱処理等の微粒子を形成する工程を行わなくても、注入と略同時に微粒子が形成されることがある。この微粒子の寸法等が所定の条件を満たしていれば、注入工程が微粒子形成工程を兼ねることができ、工程数を削減できる。また、銀微粒子を改質する工程において、例えば熱を加える場合には熱処理効果が得られる場合があり、その場合には改質工程は微粒子形成工程を兼ねることができ、工程数を削減できる。
【0230】
(第10実施形態)
本実施形態では、第9実施形態と異なる材料によって微粒子含有体を形成し、メモリ機能体を作製する。すなわち、媒体としてのシリコン熱酸化膜中に、銀に換えてシリコンを、10〜15KeVの注入エネルギーの下で、1×1015〜1×1016/cmの注入量で注入する。そして、熱処理を窒化雰囲気で行って、シリコン微粒子の表面が被覆層としてのSiNで覆われたSiN/Si微粒子を形成する。上記熱処理は、アンモニア雰囲気中で約900℃の温度の下で、数時間行なう。
【0231】
本実施形態で作製したメモリ機能体は、従来のCVDでシリコン微粒子を形成して作製したメモリ機能体に比べて、ヒステリシスが大きく(すなわちメモリウィンドウが大きく)、また、電荷の保持特性にも優れていることが分かった。これは、微粒子を含む媒体となる絶縁体が、シリコン熱酸化膜であるため、CVD膜や多結晶シリコンの酸化膜よりも良質であることによる。また、上記シリコン微粒子の表面に、CVDによるSiN膜ではなく、アニール処理によってSiN膜を形成するので、上記シリコン微粒子とSiN膜との間に形成される界面準位が少なくできて、保持電荷のリークが少ない優れた特性が得られることによる。
【0232】
また、上記被覆層を形成する第3の材料としてのSiNは、シリコン窒化物であるので誘電率が高い。したがって、電圧が印加された際の電界強度を増大できて、効率的にシリコン微粒子に電荷の出し入れを行うことができる。またSiNは半導体産業で多く用いられる物質であり、既存の半導体製造装置を用いて形成できるので、比較的容易かつ安価に被覆層を形成できる。
【0233】
(第11実施形態)
本実施形態では、第9実施形態と異なる材料によって微粒子含有体を形成し、メモリ機能体を作製する。すなわち、銀に換えてアルミニウムによって、導電性微粒子を形成する。媒体としてのシリコン酸化膜に、アルミニウムを、5〜15KeVの注入エネルギーで、約1×1014〜1×1016/cmの注入量で注入し、第10実施形態と同様に熱処理を行なう。この熱処理温度は、600℃以下である。これによって、アルミニウム微粒子表面が被覆層としてのアルミナで覆われたAl/Al微粒子が、離散的に存在するシリコン酸化膜を有するメモリ機能体が作製できた。
【0234】
本実施形態のメモリ機能体は、従来の方法で作製した微粒子を有するメモリ機能体よりもヒステリシスが大きく(すなわちメモリウィンドウが大きく)、また、優れた電荷保持特性を有する。これは、導電性微粒子は、金属であるアルミニウムを用いたので電荷蓄積能力が優れていることと、この導電性微粒子を、良好な絶縁体であるアルミナで囲んでいるので電荷保持能力が優れていることによる。また、上記アルミナは、いわゆる不動態であり、上記アルミニウム微粒子の表面に酸化でアルミナが形成された後は、それ以上酸化が殆ど進まないため、電荷に関する特性が殆ど変化しない。その結果、特性の経時変化が殆ど無く、安定したメモリ動作が可能な信頼性の高いメモリ機能体を実現できる。
【0235】
(第12実施形態)
本実施形態では、第11実施形態のメモリ機能体と異なる方法で、導電性微粒子を形成した。すなわち、媒体中に導電性微粒子を形成する物質を導入する方法として、イオン注入法に換えて固層拡散法を用いた。例えば、第11実施形態と同様に、媒体としてのシリコン酸化膜中にアルミニウム微粒子を形成する場合について、説明する。
【0236】
まず、第1実施形態と同様に、媒体としてのシリコン酸化膜を形成する。このシリコン酸化膜上に、真空蒸着装置でアルミニウムを蒸着してアルミニウム膜を製膜する。蒸着法に換えてスパッタ法を用いても良く、アルミニウム膜が形成できればどのような方法を用いても良い。
【0237】
この後、およそ400℃〜600℃程度で熱処理を行い、上記アルミニウム膜から、媒体としてのシリコン酸化膜中に、アルミニウムを拡散させた。続いて、上記拡散を行う温度よりも低温で熱処理を行って微粒子を形成し、この後、酸化により上記微粒子の表面部分に被覆層を形成した。
【0238】
この後、第11実施形態と同様に、第2の層としての電極を形成して微粒子含有体を形成した。この微粒子含有体は、第11実施形態と同様に、優れたメモリ特性を有することが分かった。
【0239】
本実施形態によれば、拡散法を用いることによって、イオン注入によるよりも簡単に、優れた特性のメモリ機能体を作製できる。
【0240】
なお、媒体としてのシリコン酸化膜の表面に、アルミニウム膜に換えてAlSi膜を形成する方が、上記シリコン酸化膜の表面付近が非常に高濃度になることを防ぐことができるため、より好ましい。また、微粒子として、アルミニウムに代表されるような、酸化物が不動態を形成する材質を用いれば、微粒子の表面を、酸化によって良質の絶縁膜で覆うことができるので、他の材質よりも有利である。
【0241】
このように、本実施形態では、前記固層拡散法によって、微粒子を形成するための物質を、少ない工程数で媒体に多量に拡散できる。また、上記固層拡散法は、比較的簡易な装置で実行できるので、上記媒体中に多数の微粒子を比較的容易に形成できる。
【0242】
なお、上記固層拡散の条件によっては、熱処理等の微粒子を形成する工程を用いなくても、拡散と略同時に微粒子が形成されることがある。この微粒子が所定の寸法等の条件を満たしていれば、拡散工程が、微粒子を形成する工程を兼ねることができる。あるいは、微粒子の表面部分の改質工程において例えば熱が加える場合には、微粒子を形成する熱処理効果が得られる場合があり、その場合には微粒子形成工程と改質工程とを1つの工程で行うことができる。
【0243】
(第13実施形態)
本実施形態では、半導体基板上に形成された微粒子含有体を用いて、記憶素子を形成する。すなわち、半導体基板上の絶縁体中に、本発明による微粒子形成方法によって作製したナノメートルサイズの導伝性微粒子を形成し、さらに、上記絶縁体の上に通常用いられる方法で電極を形成する。上記電極は導電性の物質であれば金属あるいはポリシリコン等の電導性を有する物質を用いることができる。上記半導体基板に、フラッシュメモリ等通常のトランジスタの製造において用いられる方法でソース・ドレイン領域を形成し、電界効果型トランジスタを構成して、本発明の記憶素子を作製した。
【0244】
図10は、本実施形態の記憶素子を示す模式図である。シリコン基板上1000に、媒体としてのシリコン酸化膜1010を形成し、このシリコン酸化膜1010中に、被覆層としての銀酸化膜で覆われた銀微粒子を形成する。このシリコン酸化膜1010上にアルミニウム膜を形成し、このアルミニウム膜から、フオトリソグラフイーおよびエッチングによって第2の層としてのゲート電極1020を作製する。そして、通常のイオン注入法によって、上記シリコン基板1000にソース/ドレイン領域1030を形成する。このソース/ドレイン領域1030は導電性を有し、微粒子含有体の第1の層として機能する。さらに、通常の方法によって配線工程を実施し、トランジスタを形成する。
【0245】
本実施形態で作製した記憶素子は、第9実施形態で述べた容量の大小に対応して、閾値の大小が得られた。すなわち、書き込みおよび消去を行うには、フローティングゲート型メモリと同様に、ゲート電極1020に十分大きな正または負の電圧を印加する。読み出しを行なうには、ソース/ドレイン1030間に流れる電流を検出すればよい。本実施形態の記憶素子では、ゲート電極1020に+15Vを印加した直後と、−15Vを印加した直後とで、閾値におよそ2Vの差が生じた。したがって、本実施の形態の記憶素子は、フラッシュメモリなどと同様のメモリ動作を行なうことができる。
【0246】
また、上記シリコン酸化膜1010は薄膜化が可能であるので、微細化、低電圧化が可能である。さらに、フラッシュメモリのような複雑な工程を必要とせず、強誘電体メモリのように特殊な材料を用いていないので、優れた生産性を有する。
【0247】
また、上記記憶素子に含まれる微粒子含有体の銀微粒子は、電気的絶縁性を有する酸化膜で覆われているので、上記木微粒子の電荷保持特性を向上でき、これにより、記憶素子の記憶保持特性を向上できる。
【0248】
また、上記銀微粒子は導電性を有するので、この銀微粒子が単位体積あたりに保持できる電荷量を多くすることができる。したがって、上記銀微粒子が保持する電荷量に多少の変化があったとしても、全体の電荷量に対する変化の割合が少なくなるので、記憶素子の記憶保持特性を安定にできる。
【0249】
また、上記シリコン酸化膜1010と銀酸化膜は、互いに異なる絶縁体であるので、上記銀微粒子内への電荷の流入あるいは流出を、効果的に抑制できる。したがって、記憶素子の特性を安定にできる。
【0250】
また、被覆層としての銀酸化膜は、微粒子の材料である銀が絶縁化されたものであるので、上記銀酸化膜と銀微粒子と界面を、界面準位が比較的少なくて良好な状態にできる。したがって、上記銀微粒子が保持する電荷のリークを少なくできて、長時間に亘って電荷の保持が可能な記憶素子を実現できる。
【0251】
また、上記銀酸化膜は、微粒子の材料である銀を、半導体産業で広く用いられている既存の酸化炉などを使用して酸化して得られる。したがって、記憶素子のための新たな製造装置が不要になり、設備投資が少額にできて、安価な記憶素子が得られる。
【0252】
また、上記シリコン酸化膜1010は、シリコン基板1000の一部を酸化して形成できるので、半導体産業で用いられている既存の装置を用いて比較的容易に作製できる。したがって、信頼性の高い記憶素子を安価に形成できる。
【0253】
また、上記微粒子の表面に銀酸化膜を形成する工程では、例えば水素を添加した熱酸化により、銀微粒子の表面に存在したダングリングボンド等の欠陥を低減して改質することができる。これにより、上記銀微粒子の表面を、例えば界面準位が少ない良好な状態に形成できる。その結果、本実施形態の記憶素子は、上記微粒子で保持された電荷のリークが少なく、長時間に亘って安定してメモリ状態を保持することができる。
【0254】
また、上記銀微粒子の形成は、上記シリコン酸化膜1010に、微粒子を形成するための銀イオンを、イオン注入法によって注入するのが好ましい。上記イオン注入法を用いることにより、上記シリコン酸化膜1010に一度に多量の銀イオンを注入でき、その結果、上記シリコン酸化膜1010中に多数の微粒子を形成できる。
【0255】
特に、上記イオン注入は、上記銀イオンを負イオン化して行うのが好ましい。この場合、正イオン化して注入する場合よりも、絶縁体であるシリコン酸化膜1010が電気的に浮遊している状態において、このシリコン酸化膜1010の高電圧の帯電を効果的に抑制できる。したがって、銀イオンの注入深さのばらつきや、上記シリコン酸化膜1010の欠陥の発生を、効果的に防止できる。また、上記負イオン注入法は、既存のイオン注入装置をごく一部変更して実行できるので、微粒子を安価に製造できる。
【0256】
また、上記微粒子含有体の製造工程のうち、上記シリコン基板1000の部分を酸化してシリコン酸化膜1010を形成する工程と、上記銀微粒子の表面部分を酸化して銀酸化膜を形成する工程は、既存の半導体製造装置を使用して従来より多く行われている工程である。したがって、例えば不純物拡散によるソース/ドレイン領域1030を形成する工程等と共に、一連の半導体素子の製造工程を構成できる。すなわち、この半導体素子は、従来より多く用いられている製造装置により、比較的容易かつ安価に製造できる。また、上記微粒子含有体を他の半導体素子に比較的容易に混載できる。
【0257】
なお、本実施形態では、ゲート絶縁膜(シリコン酸化膜1010)の厚さを約50nmとしたが、更に薄膜化が可能であるのはいうまでもなく、微粒子の大きさより薄くならない範囲で薄膜化を図ることができる。上記ゲート電極は5nm未満とすることが好ましく、これによって、記憶素子の低電圧化が可能となって、10V未満で駆動可能となる。
【0258】
このように、本実施形態の記憶素子は、本発明の微粒子含有体を用いて構成されるので、高い量産性を有し、リーク耐性に優れ、従来よりも微細化が可能となる。そして、上記記憶素子を集積して記憶回路を形成することにより、小型の半導体装置を形成することができる。さらに、上記半導体装置を用いて、例えば携帯通信機器などの電子機器を構成することにより、この電子機器の小型化を図ることができる。
【0259】
(第14実施形態)
本実施形態では、第10実施形態で作製したシリコン熱酸化膜について、約5〜10nm程度の厚みに薄膜化したものをゲート絶縁膜として、電界効果型トランジスタを構成し、記憶素子を作製した。この記憶素子は、上記ゲート絶縁膜以外は、第13実施形態と同様の構成を有する。
【0260】
上記ゲート絶縁膜は、第10実施形態の微粒子を含むシリコン熱酸化膜と同様の方法で作製したが、微粒子を形成するための物質をイオン注入により導入する工程では、シリコン熱酸化膜の表面の法線に対して約65〜80°程度をなす入射角で、銀イオンの注入を行った。また、上記イオン注入時のシリコン熱酸化膜の厚みは約25nmであり、その後の工程で、上記シリコン熱酸化膜を約10〜20nm程度エッチングして、薄膜化した。
【0261】
本実施形態の記憶素子について、第10実施形態と同様に測定を行った結果、ゲートに+3Vを印加した直後と、−3Vを印加した直後とで、閾値にしておよそ2Vの差が生じた。
【0262】
このように、本実施形態の記憶素子は、通常のフラッシュメモリでは動作が困難な低電圧でも、フラッシュメモリ等と同様のメモリ動作が可能であることがわかった。
【0263】
これは、上記ゲート絶縁膜として働くシリコン熱酸化膜において、このシリコン熱酸化膜中の銀微粒子が、銀酸化物で覆われているので、量子効果を顕著に発現させることが可能になったため、低電圧で電子を銀微粒子に注入可能になったからであると考えられる。さらに、クーロンブロッケイド効果等により、微粒子からの電子のリークが抑制されるためと考えられる。
【0264】
本実施形態の記憶素子は、上記ゲート絶縁膜の厚さを、このゲート絶縁膜に含まれる微粒子の大きさよりも薄くならない程度に薄くするのが好ましく、具体的には、5nm未満とすることが好ましい。これによって、記憶素子の低電圧化が可能になり、10V未満で駆動可能となる。
【0265】
また、本実施形態の微粒子含有体は、製造が容易であり、この製造方法は従来のシリコンプロセスとの親和性を有するので、この微粒子含有体を含む記憶素子を、他の回路に容易に組み込んで半導体装置を構成できる。このような半導体装置は、小型化および低消費電力化が容易であるので、この半導体装置を用いて形態通信機器等の電子機器を構成することにより、この電子機器の小型化および低消費電力化を効果的に行うことができる。
【0266】
(第15実施形態)
本実施形態では、微粒子含有体について、媒体の膜厚と、この媒体への微粒子を形成するための物質の注入エネルギーの値および注入量とを変えて、上記微粒子含有体の特性の変化を観察する実験を行った。
【0267】
本実施形態では、厚みが30nm以下の媒体を用いて微粒子含有体を形成した。より詳しくは、約10nmから30nm程度の膜厚のシリコン酸化膜を媒体として用いた。このシリコン酸化膜は、シリコン基板の表面部分を熱酸化して作製した。
【0268】
図11乃至15は、シリコン酸化膜の厚みと、微粒子形成物質の注入エネルギーと、微粒子形成物質の注入量とを変えて得られる微粒子含有体を各々示した図である。
【0269】
図11A,Bは、微粒子形成物質の注入エネルギーを比較的大きくした場合に、図12A,Bは、注入エネルギーを比較的小さくした場合に、図13A,Bは、シリコン酸化膜110を薄膜化した場合に、図14A乃至Dおよび図15A乃至Dは、注入量を増大した場合に得られる微粒子含有体を模式的に示す図である。本実施形態において、シリコン基板100上にシリコン酸化膜110を形成し、このシリコン酸化膜110に微粒子130を形成し、この微粒子130の表面部分を酸化して被覆層140を形成し、この後、上記シリコン酸化膜110上に電極102を形成した。
【0270】
上記シリコン基板100を第1の電極とし、上記シリコン酸化膜上の電極102を第2の電極として微粒子含有体の電気的特性を評価した結果、基本的に、第1実施形態で得られた特性と同様に、良好な電荷保持特性を有することが分かった。
【0271】
図11Aの微粒子含有体では、微粒子130を覆う被覆層140の部分が、第1の層としての半導体基板100と接している。図11Bの微粒子含有体では、被覆層140の一部が半導体基板100内に没したような形態を有する。図11A,Bの微粒子含有体は、媒体としてのシリコン酸化膜110を通過しないで、微粒子130と半導体基板100とを結ぶ経路を有する。
【0272】
図11A,Bの微粒子含有体では、半導体基板100からの電荷の出し入れが容易であった。この微粒子含有体をゲート絶縁膜に用いて、第13および14実施形態と同様のトランジスタを構成して電気的特性を調べた結果、書き換え電圧が低電圧で可能であった。このように、上記微粒子含有体を用いた記憶素子は、低電圧動作が可能で、書き換え消費電力の低減が可能となる。
【0273】
図11A,Bの微粒子含有体のいずれも、微粒子130とシリコン基板100は、その間にシリコン酸化膜110が存在しなくて、上記微粒子130を覆う被覆層140のみで隔てられている。微粒子を囲む被覆層が無い従来の微粒子含有体では、微粒子がシリコン基板に接触すると、この微粒子には電荷を保持する機能が生じなかった。これに対して、本発明の微粒子含有体は、微粒子の表面が被覆層で覆われており、この被覆層は電荷に対する障壁となる絶縁体等で形成されているので、この微粒子を覆う被覆層がシリコン基板に接触しても、電荷保持能力を奏することができる。したがって、微粒子の分布等に関して、ばらつきが多少生じたとしても、電荷保持特性を良好に保つことが可能であり、生産性や信頼性を向上することができる。
【0274】
図12Aは、被覆層140が電極102に接している場合を示している。図12Bでは、被覆層140の一部が電極102内に没したような形態を有する。図12A,Bの微粒子含有体は、媒体としてのシリコン酸化膜110を通過しないで、微粒子130と半導体基板電極102とを結ぶ経路を有する。
【0275】
図12A,Bの微粒子含有体では、電極102からの電荷の出し入れが容易であった。この微粒子含有体を、第13および14実施形態と同様のトランジスタを構成して電気的特性を調べた結果、比較的広いメモリウィンドウが得られた。したがって、上記微粒子含有体を用いて記憶素子を構成した場合、この記憶素子の信頼性を向上することができる。
【0276】
図12A,Bのいずれの微粒子含有体も、微粒子130と電極102は、その間にシリコン酸化膜110が存在しなくて、上記微粒子130を覆う被覆層140のみで隔てられている。この被覆層140を、電荷に対する障壁となる絶縁体等で形成することにより、この被覆層140が電極102に接していても、微粒子130の電荷保持特性を良好に保つことができる。したがって、製造のばらつきが多少生じたとしても、微粒子含有体の特性を良好に保つことが可能であり、この微粒子含有体を用いて構成した記憶素子等の生産性や信頼性の向上ができる。
【0277】
図13A,Bの微粒子含有体は、微粒子130を覆う被覆層140がシリコン基板100と電極102との両方に接している場合を示している。すなわち、図13A,Bの微粒子含有体は、媒体としてのシリコン酸化膜110を通過しないで、微粒子130と半導体基板100および電極102とを結ぶ経路を有する。図13A,Bの微粒子含有体は、微粒子130に電荷を出し入れする動作電圧を非常に小さくすることができる。また、比較的大きいメモリウィンドウを得ることができる。したがって、低消費電力、高速動作、高信頼性のメモリトランジスタを構成することが可能となる。
【0278】
特に、図13Bの微粒子含有体は、被覆層140の互いに異なる部分が、シリコン基板100と電極102との両方にそれぞれ没したような形態を有する。上記微粒子と、上記シリコン基板100および電極102は、その間にシリコン酸化膜110が存在しなくて、上記微粒子130を覆う被覆層140のみで隔てられている。上記被腹膜140を、電荷に対する障壁となる絶縁体等で形成することにより、上記シリコン酸化膜110を薄膜化しても、上記微粒子130をシリコン基板100および電極102に短絡することなく、上記微粒子130に確実に電荷保持機能を奏することができる。したがって、この微粒子含有体は、製造工程にばらつきが多少生じたとしても、良好な特性の得ることが可能であり、生産性や信頼性の向上ができる。また、上記シリコン酸化膜110を非常に薄く形成することができるので、微粒子含有体の微細化を効果的に行うことができる。
【0279】
なお、本実施形態において、被覆層140の一部が、シリコン基板100と電極102のいずれか一方に没したような形態を有してもよい。
【0280】
図14A乃至Dの微粒子含有体は、被覆層が互いに接触して形成された2つの微粒子を備え、この2つの微粒子が媒体の幅方向に並んで保持されている。上記微粒子含有体は、いずれも比較的広いメモリウィンドウが得られ、また、電荷保持特性も良好であった。したがって、これらの微粒子含有体を用いて、信頼性の高いメモリトランジスタを実現することができる。
【0281】
図14Aは、2つの微粒子130の被覆層140が互いに接すると共に、シリコン酸化膜110中に保持された場合を示している。図14Bの微粒子含有体は、2つの微粒子130の被覆層140がシリコン基板100と接しており、媒体としてのシリコン酸化膜110を通過しないで、微粒子130と電極102とを結ぶ経路を有する。図14Cの微粒子含有体は、被覆層140が電極102と接しており、媒体としてのシリコン酸化膜110を通過しないで、微粒子130と電極102とを結ぶ経路を有する。図14Dは、被覆層140が、シリコン基板100と電極102との両方に接しており、媒体としてのシリコン酸化膜110を通過しないで、微粒子130とシリコン基板100および電極102とを結ぶ経路を有する。
【0282】
いずれの微粒子含有体においても、2つの微粒子130は、その間にシリコン酸化膜110が存在しなくて、上記微粒子130を覆う被覆層140のみで隔てられている。媒体中に微粒子のみを保持した従来の微粒子含有体では、微粒子同士が接触した場合、微粒子の寸法および形状のばらつきが大きくなり、電気的特性がばらつく不都合があった。これに対して、本実施形態の微粒子含有体は、電荷に対する障壁となる絶縁体等で形成された被覆層140で微粒子130を覆うことにより、微粒子130の形状のばらつきを抑制し、微粒子130の電気的特性のばらつきを抑制することができる。また、良好な特性の微粒子を安定して得ることができるので、微粒子含有体の生産性や信頼性を向上することができる。また、シリコン酸化膜110の厚み方向における微粒子130の密度を高くすることができるので、この微粒子含有体を用いた記憶素子の高性能化や微細化を行うことができる。
【0283】
また、図14A乃至Dの微粒子含有体は、媒体としてのシリコン酸化膜110を経由しないで被覆層140のみを介して電荷のやり取りが可能となる。したがって、電荷のやりとりに必要な電圧の低減、および電荷のやりとりに必要な時間を短縮することができる。したがって、この微粒子含有体を記憶素子に用いた場合、この記憶素子の動作電圧の低電圧化、および、動作の高速化が可能である。また、2つの微粒子130,130の間に媒体が存在しないので、微粒子130の配置密度を高めることが可能である。
【0284】
なお、被覆層140が互いに接する上記微粒子130の個数は、2個より多くてもよい。
【0285】
図15A乃至Dは、被覆層が互いに接触して形成された2つの微粒子を備え、この2つの微粒子が媒体の厚み方向に並んで保持されている。上記微粒子含有体について電気的特性を調べた結果、多値メモリを実現可能であることが分かった。
【0286】
図15Aは、2つの微粒子130の被覆層140が互いに接すると共に、シリコン酸化膜110中に保持された場合を示している。図15Bの微粒子含有体は、2つの微粒子130の被覆層140がシリコン基板100と接しており、媒体としてのシリコン酸化膜110を通過しないで、微粒子130と電極102とを結ぶ経路を有する。図15Cの微粒子含有体は、被覆層140が電極102と接しており、媒体としてのシリコン酸化膜110を通過しないで、微粒子130と電極102とを結ぶ経路を有する。図15Dの微粒子含有体は、被覆層140が、シリコン基板100と電極102との両方に接しており、媒体としてのシリコン酸化膜110を通過しないで、微粒子130とシリコン基板100および電極102とを結ぶ経路を有する。
【0287】
いずれの微粒子含有体においても、2つの微粒子130は、その間にシリコン酸化膜110が存在しなくて、上記微粒子130を覆う被覆層140のみで隔てられている。媒体中に微粒子のみを保持した従来の微粒子含有体では、微粒子同士が接触した場合、微粒子の寸法および形状のばらつきが大きくなり、電気的特性がばらつく不都合があった。これに対して、本実施形態の微粒子含有体は、電荷に対する障壁となる絶縁体等で形成された被覆層140で微粒子130を覆うことにより、微粒子130の形状のばらつきを抑制し、微粒子130の電気的特性のばらつきを抑制することができる。また、良好な特性の微粒子を安定して得ることができるので、微粒子含有体の生産性や信頼性を向上することができる。また、シリコン酸化膜110の厚み方向における微粒子130の密度を高くすることができるので、この微粒子含有体を用いた記憶素子の高性能化や微細化を行うことができる。
【0288】
図15A乃至Dの微粒子含有体の電気的特性を調べた結果、多値メモリが実現可能であることが分かった。図15Aの微粒子含有体について、メモリトランジスタを形成し、初期状態の電圧に対して+V1の電圧を印加したところ、初期状態の閾値を0とした場合、閾値がVT1に変化した。次に、初期状態の電圧に対して−V2の電圧を印加したところ、閾値はVT2に変化した。次に、+V2の電圧を印加したところ、閾値はVT1に戻った。次に、−V1の電圧を印加したところ、閾値は初期状態の0に戻った。また、VT1>VT2>0の関係であった。これにより、少なくとも3値のメモリトランジスタが実現可能である。また、図15B、CおよびDは、更に、書き換え電圧の低電圧化が可能であった。
【0289】
また、図15A乃至Dの微粒子含有体は、媒体としてのシリコン酸化膜110を経由しないで被覆層140のみを介して電荷のやり取りが可能となる。したがって、電荷のやりとりに必要な電圧の低減、および電荷のやりとりに必要な時間を短縮することができる。したがって、この微粒子含有体を記憶素子に用いた場合、この記憶素子の動作電圧の低電圧化、および、動作の高速化が可能である。また、2つの微粒子130,130の間に媒体が存在しないので、微粒子130の配置密度を高めることが可能である。
【0290】
なお、被覆層140が互いに接する上記微粒子130の個数は、2個より多くてもよい。
【0291】
本実施形態において、注入エネルギーの値および注入量を変えて比較例の微粒子含有体を作製したところ、複数の微粒子が融着したような扁平の微粒子が得られた。このような微粒子を含んだ微粒子含有体を用いてメモリトランジスタを形成し、電気的特性を調べた結果、保持特性が劣ることがわかった。他の形状の微粒子を含む微粒子含有体について、同様の電気的特性の検討を行うと共に、断面TEM(透過型電子顕微鏡)観察を行った。その結果、微粒子の形状が球状もしくは球状に近い形状である方が、良好な電気的特性が得られることが分かった。すなわち、断面TEM観察において、微粒子の最も扁平な断面の形状を楕円に近似したとき、長径と短径との比が2以下であることが好ましく、特に、上記長径と短径との比が1.2以下であることが好ましい。また、CVD法で形成された非球状の微粒子について観察した結果、同様に、形状が真球状から離れるに伴って電気的特性が劣化することが判明した。これらの実験結果等を検討した結果、微粒子の断面において、重心から最も遠い縁までの距離と、重心から最も近い縁までの距離との比が2以下であることが好ましく、特に、1.5以下であることが好ましいことが分かった。このような外形を有する微粒子は、突起部が殆ど無くて電界集中が発生しにくい。したがって、局所的な電界集中による電気的特性の変動やばらつきが抑制され、その結果、良好な特性を安定して得ることができるのである。
【0292】
(第16実施形態)
本実施形態において、物質の伝導帯下端と真空準位との間のエネルギー差を、「電子親和力」と定義する。また、物質のフェルミレベルと真空準位との間のエネルギー差を、「仕事関数」と定義する。また、物質の価電子帯上端と真空準位との間のエネルギー差を、「イオン化エネルギー」と定義する。
【0293】
本実施形態では、微粒子含有体の構成部分のうち、微粒子を形成する第2の材料としてHfO(酸化ハフニウム)を用いると共に、被覆層を形成する第3の材料としてAlを用いている。図16は、上記微粒子および被覆層のエネルギーバンドを示す模式図である。300は微粒子の模式的なバンドギャップであり、400は被覆層の模式的なバンドギャップである。図16に示すバンド構造は、簡単のため、全てのバンドをフラットに描いている。実際には、電極間に電位差を与えない場合であっても、エネルギーバンドは変形している。図16の模式図に示すように、上記第3の材料の伝導帯下端Ec3と真空準位Lvとの間のエネルギー差、つまり電子親和力Aは、上記第2の材料の伝導帯下端Ec2と真空準位Lvとの間のエネルギー差、つまり電子親和力Bよりも小さい。また、上記第3の材料の価電子帯上端Ev3と真空準位Lvとの間のエネルギー差、つまりイオン化エネルギーaは、上記第2の材料の価電子帯上端Ev2と真空準位Lvとの間のエネルギー差、つまりイオン化エネルギーbよりも大きい。すなわち、上記第2の材料と第3の材料との間に、電子親和力A,Bと、イオン化エネルギーa,bとに関して、A<Bおよびa>bの関係が成立する。このような関係が成立する第2の材料および第3の材料を用いることにより、上記第2の材料で形成する微粒子は、電子を効果的に保持することができる。
【0294】
なお、このような関係が成立する他の材料を用いて、第2の材料および第3の材料としてもよい。例えば、第3の材料としてシリコン窒化物、イットリウム酸化物、ジルコニウム酸化物、ランタン酸化物、あるいはこれらとシリコン酸化物との混合物等の材料を使用することができる。また、第3の材料としてシリコン酸化物などの材料を使用することができる。
【0295】
また、上記第2の材料と第3の材料について、第2の材料の価電子帯上端と真空準位との間のエネルギー差が、第3の材料の価電子帯上端と真空準位との間のエネルギー差よりも小さい関係を有するものを用いた場合、上記第3の材料にホールを効果的に保持することができる。
【0296】
(第17実施形態)
本実施形態では、微粒子を含んだ絶縁体を形成するためにSOG(Spin-On-Glass)を用いた。SOG中には、微粒子を形成するための物質である銀を予め添加した。通常のSOGと同様に、液体材料を基板上に塗布し、熱処理を行って絶縁体を形成した。この絶縁体には銀が含まれているので、上記他の実施の形態同様に熱処理によって銀微粒子が形成される。本実施形態では、絶縁体として酸化シリコンを形成する。銀微粒子が形成された後、酸化雰囲気中で更に熱処理を行うことによって、酸化シリコンの酸素欠損を低減することができ、また、銀微粒子表面に被覆層としての酸化銀を形成する。
【0297】
なお、液体材料に微粒子を形成するための物質(銀)を混合するかわりに、微粒子そのものを混合させてもよい。本実施形態の微粒子は直径が1μm未満のナノメートルサイズであるから、微粒子を液体材料に略均一に分散させることが可能である。
【0298】
他の実施形態では、アルミニウム微粒子を含む微粒子含有体を形成した。アルミニウム微粒子が予め混合されたSOG溶液を基板上に塗布し、熱処理して、アルミニウム微粒子を含む絶縁体(SOGを用いているので酸化シリコン)を形成した。熱処理の際、酸化雰囲気で行うのが、アルミニウムの表面部分の酸化と、絶縁体の欠陥を減少することが可能であり、電荷保持能力が向上する点で好ましい。
【0299】
本実施形態の微粒子含有体は、いずれも良好な電荷保持特性を示した。本実施形態によれば、SOGの液体材料の塗布工程と、熱処理工程とを、比較的簡易な装置で比較的容易に実行できる。したがって、良好な特性の微粒子含有体を、容易かつ安価に作製できる。
【0300】
(第18実施形態)
本実施形態では、微粒子含有体の製造方法に関して、微粒子の表面部分の改質工程で、媒体に酸素を含む分子をイオン注入する。
【0301】
上記酸素を含む分子の注入エネルギーは、注入後の酸素濃度の分布が、微粒子の粒径分布とできるだけ同じになるように設定した。具体的には、媒体中に注入された酸素の濃度が最大となる深さが、微粒子の粒径が最大となる深さと略一致するように、酸素を含む分子を注入した。この後、酸素が注入された媒体および微粒子に熱処理を行って、上記微粒子の表面部分を酸化させた。
【0302】
上記微粒子の粒径分布と酸素濃度の分布とを略同じにすることにより、粒径が大きい程酸化の度合いを大きくできるので、酸化工程後に残った微粒子(酸化工程前の微粒子の表面部分以外の部分)について、酸化工程前の微粒子の粒径のばらつきよりも、粒径のばらつきが小さくなる。したがって、上記酸化工程によって、微粒子の粒径のばらつきを低減することができる。その結果、本実施形態の微粒子含有体、および、それを用いたデバイスは、特性のばらつきを少なくできる。
【0303】
上記実施形態において、酸素を含む分子を注入して微粒子の表面部分の酸化を行ったが、窒素を含む分子を注入して微粒子の表面部分の窒化を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0304】
【図1A】第1実施形態の微粒子含有体の製造方法を示す工程図である。
【図1B】図1Aの工程に続く工程を示す図である。
【図1C】図1Bの工程に続く工程を示す図である。
【図1D】図1Cの工程に続く工程を示す図である。
【図1E】図1Dの微粒子および被覆層を拡大して示した図である。
【図2A】第2実施形態の微粒子含有体の製造方法を示す工程図である。
【図2B】図2Aの工程に続く工程を示す図である。
【図2C】図2Bの工程に続く工程を示す図である。
【図2D】図2Cの工程に続く工程を示す図である。
【図3A】第3実施形態の微粒子含有体の製造方法を示す工程図である。
【図3B】図3Aの工程に続く工程を示す図である。
【図3C】図3Bの工程に続く工程を示す図である。
【図3D】図3Cの工程に続く工程を示す図である。
【図4A】第4実施形態の微粒子含有体の製造方法を示す工程図である。
【図4B】図4Aの工程に続く工程を示す図である。
【図4C】図4Bの工程に続く工程を示す図である。
【図4D】図4Cの工程に続く工程を示す図である。
【図5A】第5実施形態の微粒子含有体の製造方法を示す工程図である。
【図5B】図5Aの工程に続く工程を示す図である。
【図5C】図5Bの工程に続く工程を示す図である。
【図5D】図5Cの工程に続く工程を示す図である。
【図6A】第6実施形態の微粒子含有体の製造方法を示す工程図である。
【図6B】図6Aの工程に続く工程を示す図である。
【図6C】図6Bの工程に続く工程を示す図である。
【図6D】図6Cの工程に続く工程を示す図である。
【図7A】微粒子の材料を媒体に注入するための装置を示す概略図である。
【図7B】微粒子の材料を媒体に注入するための装置を示す概略図である。
【図8A】本実施形態の微粒子含有体を用いたメモリ機能体を示す模式図である。
【図8B】図8Aの一部を拡大して示した図である。
【図9】メモリ機能体への印加電圧の変化に対する容量の変化を示す図である。
【図10】第13実施形態の記憶素子を示す模式図である。
【図11A】微粒子形成物質の注入エネルギーを比較的大きくした場合に得られる微粒子含有体を示す模式図である。
【図11B】微粒子形成物質の注入エネルギーを比較的大きくした場合に得られる微粒子含有体を示す模式図である。
【図12A】微粒子形成物質の注入エネルギーを比較的小さくした場合に得られる微粒子含有体を示す模式図である。
【図12B】微粒子形成物質の注入エネルギーを比較的小さくした場合に得られる微粒子含有体を示す模式図である。
【図13A】シリコン酸化膜110を薄膜化した場合に得られる微粒子含有体を示す模式図である。
【図13B】シリコン酸化膜110を薄膜化した場合に得られる微粒子含有体を示す模式図である。
【図14A】微粒子形成物質の注入量を増大した場合に得られる微粒子含有体を示す模式図である。
【図14B】微粒子形成物質の注入量を増大した場合に得られる微粒子含有体を示す模式図である。
【図14C】微粒子形成物質の注入量を増大した場合に得られる微粒子含有体を示す模式図である。
【図14D】微粒子形成物質の注入量を増大した場合に得られる微粒子含有体を示す模式図である。
【図15A】被覆層が互いに接触すると共に、媒体の厚み方向に並んで保持された2つの微粒子を備える微粒子含有体を示す図である。
【図15B】被覆層が互いに接触すると共に、媒体の厚み方向に並んで保持された2つの微粒子を備える微粒子含有体を示す図である。
【図15C】被覆層が互いに接触すると共に、媒体の厚み方向に並んで保持された2つの微粒子を備える微粒子含有体を示す図である。
【図15D】被覆層が互いに接触すると共に、媒体の厚み方向に並んで保持された2つの微粒子を備える微粒子含有体を示す図である。
【図16】微粒子含有体が有する微粒子および被覆層のエネルギーバンドを示す模式図である。
【符号の説明】
【0305】
100 シリコン基板
110 媒体としてのシリコン酸化膜
120 被覆層形成前の銀微粒子
130 被覆層形成後の銀微粒子
140 被覆層としてのシリコン酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層と、
第2の層と、
上記第1の層と第2の層との間に形成され、第1の材料からなる媒体と、
上記媒体中にあると共に第2の材料からなる少なくとも1つの微粒子と、
上記微粒子を被覆すると共に第3の材料からなる被覆層とを備え、
上記第2の材料は、電荷を保持する機能を有する材料であり、
上記第3の材料は、上記第2の材料よりも電気伝導度が低い材料である
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項2】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記微粒子の少なくとも1つは、その微粒子を覆う被覆層の一部が、上記媒体から露出していることを特徴とする微粒子含有体。
【請求項3】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記微粒子の少なくとも1つは、その微粒子を覆う被覆層の一部が、上記第1および第2の層のうちの少なくとも1つに接している
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項4】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記微粒子の少なくとも1つは、上記媒体を通過しないで上記微粒子と上記第1または第2の層とを結ぶ経路を有することを特徴とする微粒子含有体。
【請求項5】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
複数の上記微粒子を備え、
上記複数の微粒子のうちの少なくとも2つは、上記媒体を通過しないで互いの微粒子の間を結ぶ経路を有することを特徴とする微粒子含有体。
【請求項6】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記微粒子の少なくとも1つは略球状であり、
上記略球状の微粒子は、重心とこの重心から最も遠い外周面部分との間の距離と、上記重心とこの重心に最も近い外周面部分との間の距離の比の値が1.0以上1.5以下である
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項7】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第1および第2の層は、導電性を有することを特徴とする微粒子含有体。
【請求項8】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第3の材料は、電気的絶縁性を有する材料である
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項9】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第2の材料の伝導帯下端と真空準位との間のエネルギー差は、上記第3の材料の伝導帯下端と真空準位との間のエネルギー差よりも大きい
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項10】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第2の材料の価電子帯上端と真空準位との間のエネルギー差は、上記第3の材料の価電子帯上端と真空準位との間のエネルギー差よりも小さい
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項11】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第1および第3の材料は、電気的絶縁性を有する材料であり、
上記第2の材料は、導電性を有する材料である
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項12】
請求項11に記載の微粒子含有体において、
上記第2の材料は、半導体である
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項13】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第1および第3の材料は、互いに異なる絶縁性材料である
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項14】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第3の材料は、上記第2の材料が絶縁化されてなる
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項15】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第3の材料は、上記第2の材料が酸化または窒化されてなる
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項16】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第1の材料は、シリコン酸化物またはシリコン窒化物であり、
上記第2の材料は、半導体または金属であり、
上記第3の材料は、半導体酸化物または金属酸化物である
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項17】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第2の材料は、アルミニウムであり、
上記第3の材料は、酸化アルミニウムである
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項18】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第2の材料は、ハフニウムであり、
上記第3の材料は、酸化ハフニウムである
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項19】
請求項1に記載の微粒子含有体を製造する方法であって、
第1または第2の層上に、微粒子を形成するための物質が導入された媒体を形成する工程と、
上記媒体中に導入された上記物質から、微粒子を形成する工程と、
上記微粒子の表面部分を改質する工程と
を備えることを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の微粒子含有体の製造方法において、
上記第1または第2の層上に、微粒子を形成するための物質が導入された媒体を形成する工程は、
上記第1または第2の層上に、媒体を形成する工程と、
上記媒体中に、上記微粒子を形成するための物質を導入する工程と
を含むことを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の微粒子含有体の製造方法において、
上記媒体中に上記微粒子を形成するための物質を導入する工程は、注入によって上記物質を上記媒体中に導入する工程であることを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項22】
請求項21に記載の微粒子含有体の製造方法において、
上記物質は、上記媒体中に、この媒体の表面に対して鋭角をなす方向から注入することを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項23】
請求項21に記載の微粒子含有体の製造方法において、
上記微粒子を形成するための物質を、負イオン化する工程を備えることを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項24】
請求項20に記載の微粒子含有体の製造方法において、
上記媒体中に微粒子を形成するための物質を導入する工程よりも後に、
上記媒体の表面から所定深さまでの部分を除去する工程を備えることを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項25】
請求項19に記載の微粒子含有体の製造方法において、
上記微粒子の表面部分を改質する工程は、上記微粒子の表面部分を酸化または窒化する工程を含むことを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項26】
請求項21に記載の微粒子含有体の製造方法において、
上記媒体中に導入された上記物質から微粒子を形成する工程、および、上記微粒子の表面部分を改質する工程は、
上記注入によって上記微粒子を形成するための物質が導入された上記媒体を、酸化雰囲気中または窒化雰囲気中で熱処理する工程であることを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項27】
請求項1に記載の微粒子含有体を製造する方法であって、
媒体の前駆体に、微粒子を形成するための物質を導入する工程と、
上記物質が導入された上記前駆体の一部を改質する工程と、
上記前駆体の改質された部分を除去する工程と、
上記前駆体の上記除去された部分以外の部分を改質する工程と
を備えることを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項28】
請求項1に記載の微粒子含有体を製造する方法であって、
媒体の前駆体の表面に、微粒子を形成するための物質の導入を制御する制御層を形成する工程と、
上記媒体前駆体に、微粒子を形成するための物質を、上記制御層を介して導入する工程と、
上記前駆体に導入された上記物質から、微粒子を形成する工程と、
上記制御層を除去する工程と、
上記制御層が除去された上記前駆体を改質する工程と
を備えることを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項29】
請求項1に記載の微粒子含有体を用いて形成された電界効果型トランジスタを備える記憶素子。
【請求項30】
請求項29に記載の記憶素子が集積された記憶回路を備える半導体装置。
【請求項31】
請求項30に記載の半導体装置を備える電子機器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層と、
第2の層と、
上記第1の層と第2の層との間に形成され、第1の材料からなる媒体と、
上記媒体中にあると共に第2の材料からなる少なくとも1つの微粒子と、
上記微粒子を被覆すると共に第3の材料からなる被覆層とを備え、
上記第2の材料は、電荷を保持する機能を有する材料であり、
上記第3の材料は、上記第2の材料よりも電気伝導度が低い材料である
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項2】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記微粒子の少なくとも1つは、その微粒子を覆う被覆層の一部が、上記媒体から露出していることを特徴とする微粒子含有体。
【請求項3】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記微粒子の少なくとも1つは、その微粒子を覆う被覆層の一部が、上記第1および第2の層のうちの少なくとも1つに接している
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項4】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記微粒子の少なくとも1つは、上記媒体を通過しないで上記微粒子と上記第1または第2の層とを結ぶ経路を有することを特徴とする微粒子含有体。
【請求項5】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
複数の上記微粒子を備え、
上記複数の微粒子のうちの少なくとも2つは、上記媒体を通過しないで互いの微粒子の間を結ぶ経路を有することを特徴とする微粒子含有体。
【請求項6】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記微粒子の少なくとも1つは略球状であり、
上記略球状の微粒子は、重心とこの重心から最も遠い外周面部分との間の距離と、上記重心とこの重心に最も近い外周面部分との間の距離の比の値が1.0以上1.5以下である
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項7】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第2の材料の伝導帯下端と真空準位との間のエネルギー差は、上記第3の材料の伝導帯下端と真空準位との間のエネルギー差よりも大きい
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項8】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第2の材料の価電子帯上端と真空準位との間のエネルギー差は、上記第3の材料の価電子帯上端と真空準位との間のエネルギー差よりも小さい
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項9】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第1の材料は、シリコン酸化物またはシリコン窒化物であり、
上記第2の材料は、半導体または金属であり、
上記第3の材料は、半導体酸化物または金属酸化物である
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項10】
請求項1に記載の微粒子含有体において、
上記第2の材料は、ハフニウムであり、
上記第3の材料は、酸化ハフニウムである
ことを特徴とする微粒子含有体。
【請求項11】
請求項1に記載の微粒子含有体を製造する方法であって、
上記第1または第2の層上に、媒体を形成する工程と、
上記媒体中に、上記微粒子を形成するための物質を導入する工程と、
上記媒体中に導入された上記物質から、微粒子を形成する工程と、
上記微粒子の表面部分を改質する工程と
を備え、
上記媒体中に微粒子を形成するための物質を導入する工程よりも後に、
上記媒体の表面から所定深さまでの部分を除去する工程を備えることを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の微粒子含有体を製造する方法であって、
媒体の前駆体に、微粒子を形成するための物質を導入する工程と、
上記物質が導入された上記前駆体の一部を改質する工程と、
上記前駆体の改質された部分を除去する工程と、
上記前駆体の上記除去された部分以外の部分を改質する工程と
を備えることを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の微粒子含有体を製造する方法であって、
媒体の前駆体の表面に、微粒子を形成するための物質の導入を制御する制御層を形成する工程と、
上記媒体前駆体に、微粒子を形成するための物質を、上記制御層を介して導入する工程と、
上記前駆体に導入された上記物質から、微粒子を形成する工程と、
上記制御層を除去する工程と、
上記制御層が除去された上記前駆体を改質する工程と
を備えることを特徴とする微粒子含有体の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の微粒子含有体を用いて形成された電界効果型トランジスタを備える記憶素子。
【請求項15】
請求項14に記載の記憶素子が集積された記憶回路を備える半導体装置。
【請求項16】
請求項15に記載の半導体装置を備える電子機器。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図13A】
image rotate

【図13B】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図14C】
image rotate

【図14D】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図15C】
image rotate

【図15D】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2006−66804(P2006−66804A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250421(P2004−250421)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】