説明

情報処理装置、ナビゲーション装置、および、記憶媒体

【課題】地図情報の更新が容易で、電源の供給が絶たれた場合でも、不具合を生じにくく、内部の解析が困難な更新情報を生成可能な情報処理装置を提供すること。
【解決手段】地図を表示して目的地までの経路を案内するナビゲーション装置が有する地図情報を更新する情報処理装置において、ナビゲーション装置が有する磁気記憶手段に地図情報を記憶させた場合の格納形態に応じたイメージデータに地図情報を変換する変換手段(CPU11)と、変換手段によって得られたイメージデータとしての更新情報を記憶媒体(DVD20)に記憶させる記憶手段(DVD駆動装置18)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、ナビゲーション装置、および、記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のナビゲーション装置は、複数のGPS(Global Positioning Systems)衛星から送信される信号を受信して自車の現在位置を検出するとともに、各種センサにより検出される自車に関する情報およびナビゲーション装置の記録装置に記録されている地図情報に基づいて、自車の現在位置と地図上の道路とをマッチング(マップマッチング)させ、表示部に表示された地図上に自車の現在位置を表示する。そして、目的地が設定された場合には、当該目的地までの案内(ナビゲーション)を実行する。
【0003】
ところで、道路または施設は変化するため、ナビゲーション装置に記憶されている地図情報は、例えば、一定の期間が経過する毎に更新する必要がある。従来においては、例えば、地図情報が記憶されたDVD(Digital Versatile Disk)を交換することにより、地図情報を更新することが一般的であった。
【0004】
近年では、ナビゲーション装置に内蔵された磁気記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)に地図情報を記憶する場合が多い。このようなナビゲーション装置では、地図情報を更新するためには、例えば、更新用の地図情報が記憶されたDVD等の記憶媒体を購入し、当該DVDからHDDに地図情報を含むファイルをコピーすることにより、地図情報の更新を行うことが一般的である(特許文献1および特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−148004号公報(段落0068)
【特許文献2】特開2005−242636号公報(請求項5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1および特許文献2に記載の技術では、ファイル単位で情報を更新するために、以下のような手続きを繰り返す必要がある。すなわち、ファイルシステムは、(1)HDDのディレクトリエントリから目的のファイルを書き込むディレクトリを探し、(2)当該ディレクトリエントリの増加サイズを計算してクラスタチェーンから空き領域を探索して使用済みにセットし、(3)ディレクトリエントリを修正し、(4)データを格納する空き領域をクラスタチェーンから探して使用済みにセットし、(5)実際にデータを空きクラスタの指す領域に書き込む。通常、地図情報を構成するファイルは、数千から数万程度存在する。したがって、このような処理を、これら多数のファイルに対して繰り返す必要があることから、更新に時間を要するという問題点がある。
【0007】
また、ナビゲーション装置は、車載されているため、エンジンが停止された場合には、本体への電源の供給が絶たれる。このため、ディレクトリエントリ等の管理情報を更新中に、エンジンが停止された場合には、管理情報に不具合が発生する場合も想定される。そのような場合には、ファイルシステムが毀損して修復不能となるので、全てのファイルを再度更新する必要が生じるという問題がある。
【0008】
また、地図情報は10GB程度以上の容量を有する場合があるが、更新情報が格納されるDVDの容量は、9GB程度であることから、全ての更新情報を1枚のDVDに収めるには、情報を圧縮する必要がある。しかしながら、地図情報は、数バイトから数百バイト程度の大小様々な多数のファイルを含んでいるため、このように多数かつ多様なサイズのファイルを解凍処理するには時間を要するという問題がある。また、前述の電源の供給が絶たれる問題に関連して、容量が大きいファイルを解凍処理中に電源の供給が絶たれた場合には、当該ファイルの解凍は不可能となるため、再度、電源が投入された場合に、同様の処理を最初から繰り返す必要があり、処理が無駄になるという問題点がある。
【0009】
また、DVDに地図情報をファイルとして格納した場合、悪意のユーザによって、データの内部が容易に解析されてしまうという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記の事情に基づきなされたもので、その目的とするところは、地図情報の更新が容易で、電源の供給が絶たれた場合でも、不具合を生じにくく、内部の解析が困難な更新情報を生成可能な情報処理装置、そのような更新情報によって地図情報を更新可能なナビゲーション装置、および、そのような更新情報を記憶した記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明の情報処理装置は、地図を表示して目的地までの経路を案内するナビゲーション装置が有する地図情報を更新する情報処理装置において、ナビゲーション装置が有する磁気記憶手段に地図情報を記憶させた場合の格納形態に応じたイメージデータに地図情報を変換する変換手段と、変換手段によって得られたイメージデータとしての更新情報を記憶媒体に記憶させる記憶手段と、を有する。
【0012】
また、他の発明の情報処理装置は、上述の発明に加えて、変換手段が、磁気記憶手段がデータを管理するための管理情報を、イメージデータの先頭に配置するようにしている。
【0013】
また、他の発明の情報処理装置は、上述の発明に加えて、変換手段が、ディレクトリ情報を、管理情報に含めて配置するようにしている。
【0014】
また、他の発明の情報処理装置は、上述の発明に加えて、変換手段によって生成されたイメージデータを、複数のデータに分割する分割手段をさらに有する。
【0015】
また、他の発明の情報処理装置は、上述の発明に加えて、分割手段によって分割されたそれぞれのデータを圧縮する圧縮手段をさらに有する。
【0016】
また、本発明のナビゲーション装置は、地図を表示して目的地までの経路を案内するナビゲーション装置において、地図情報を記憶した磁気記憶手段と、地図情報を更新するための更新情報であって、磁気記憶手段に地図情報を記憶させた場合の格納形態に応じたイメージデータとしての更新情報が予め記憶された記憶媒体から当該更新情報を読み出す読み出し手段と、読み出し手段によって読み出された更新情報によって、磁気記憶手段に記憶されている地図情報を更新する更新手段と、を有する。
【0017】
また、本発明の記憶媒体は、地図を表示して目的地までの経路を案内するナビゲーション装置が有する地図情報を更新するための更新情報を記憶するとともに、当該ナビゲーション装置に地図情報を更新するための処理を実行させるプログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体において、コンピュータを、地図情報を更新するための更新情報であって、磁気記憶手段に地図情報を記憶させた場合の格納形態に応じたイメージデータとしての更新情報が予め記憶された記憶媒体から当該更新情報を読み出す読み出し手段、読み出し手段によって読み出された更新情報によって、磁気記憶手段に記憶されている地図情報を更新する更新手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、地図情報の更新が容易で、電源の供給が絶たれた場合でも、不具合を生じにくく、内部の解析が困難な更新情報を生成可能な情報処理装置、そのような更新情報によって地図情報を更新可能なナビゲーション装置、および、そのような更新情報を記憶した記憶媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る情報処理装置の構成例を示すブロック図である。この図に示すように、CPU(Central Processing Unit)11、グラフィックプロセッサ12、HDD13、メモリ14、ビデオメモリ15、表示装置16、入力装置17、および、DVD駆動装置18を有している。
【0021】
ここで、変換手段、分割手段、および、圧縮手段としてのCPU11は、HDD13またはメモリ14に格納されているプログラムに応じて、各種演算処理を実行するとともに、装置の各部を制御する中央処理装置である。
【0022】
グラフィックプロセッサ12は、HDD13から読み出され、ビデオメモリ15に展開されたコマンドリストに応じて描画処理を実行し、得られた画像を映像信号に変換し、表示装置16に供給して表示させる描画処理装置である。
【0023】
HDD13は、地図情報DB(Data Base)13aおよび制御プログラム13bを有する記憶装置である。ここで、地図情報DB13aは、地図情報を有している。なお、本明細書中において、地図情報とは、後述するナビゲーション装置50に地図(地形、道路、施設等)を表示させるための情報、施設に関する情報、目的地検索を行うために必要な情報(住所、電話番号、郵便番号等の情報)、VICS(Vehicle Information and Communication System)情報を表示するための情報、経路探索を行うために必要な情報、および、経路案内を行うために必要な情報(音声情報等)等をいう。なお、これら以外の情報を地図情報に含めることも可能である。
【0024】
制御プログラム13bは、情報処理装置10の各部を制御するとともに、地図情報DB13aに格納されている地図情報に基づいて、ナビゲーション装置50のHDD53に格納されている地図情報を更新するための更新情報を生成する処理等を実行する。
【0025】
メモリ14は、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等の半導体記憶装置によって構成され、CPU11が実行するプログラム等を格納するとともに、CPU11が実行する対象となるプログラムまたはデータを一時的に記憶する。
【0026】
ビデオメモリ15は、グラフィックプロセッサ12の処理対象となるコマンドリストが一時的に格納される半導体記憶装置である。
【0027】
表示装置16は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)モニタまたはLCD(Liquid Crystal Display)によって構成され、グラフィックプロセッサ12によって生成された映像信号を入力して、対応する画像を表示出力する。
【0028】
入力装置17は、例えば、キーボードまたはマウス等であり、ユーザの操作に応じた情報を生成して出力する。
【0029】
記憶手段としてのDVD駆動装置18は、記憶媒体としてのDVD20に対して、後述する処理によって生成された更新情報を書き込む処理を実行する。
【0030】
図2は、本発明の実施の形態に係るナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。この図に示すように、本発明の実施の形態に係るナビゲーション装置50は、CPU51、グラフィックプロセッサ52、HDD53、メモリ54、ビデオメモリ55、LCD56、GPSレシーバ57、ジャイロ装置58、センサ群59、入力装置60、DVD駆動装置61、および、タッチパネル62を有している。なお、ナビゲーション装置50は、移動体としての自動車等に搭載される。
【0031】
ここで、更新手段としてのCPU51は、HDD53またはメモリ54に格納されているプログラムに応じて、各種演算処理を実行するとともに、装置の各部を制御する中央処理装置である。
【0032】
グラフィックプロセッサ52は、HDD53から読み出され、ビデオメモリ55に展開されたコマンドリストに応じて描画処理を実行し、得られた画像を映像信号に変換してLCD56に供給して表示させる描画処理装置である。
【0033】
磁気記憶手段としてのHDD53は、地図情報DB53aおよび制御プログラム53bを有する記憶装置である。ここで、地図情報DB53aは、地図情報を有している。
【0034】
制御プログラム53bは、ナビゲーション装置50の各部を制御するとともに、GPSレシーバ57から供給される自車位置と、地図情報DB53aに格納された地図情報に基づいて地図を表示する処理等を実行する。また、必要に応じて目的地までの経路案内処理を実行する。
【0035】
メモリ54は、ROMまたはRAM等の半導体記憶装置によって構成され、CPU51が実行するプログラム等を格納するとともに、CPU51が実行する対象となるプログラムまたはデータを一時的に記憶する。
【0036】
ビデオメモリ55は、グラフィックプロセッサ52の処理対象となるコマンドリストが一時的に格納される半導体記憶装置である。
【0037】
LCD56は、グラフィックプロセッサ52によって生成された映像信号を入力して、対応する画像を表示出力する。
【0038】
GPSレシーバ57は、複数のGSP衛星(不図示)からの電波を受信し、当該電波に重畳されている時刻情報を抽出し、それぞれの電波の到達時間差から現在位置を特定し、位置情報(例えば、緯度情報および経度情報)としてCPU51に供給する。
【0039】
ジャイロ装置58は、車両が方向転換した場合等において、各制御軸に対する車両の角速度を検出して、CPU51に供給する。
【0040】
センサ群59は、例えば、車速を検出するための車速センサ、サイドブレーキが操作されたことを検出するサイドブレーキセンサ等を有している。
【0041】
入力装置60は、例えば、LCD56の表示部の周辺部に設けられた操作ボタン、および、リモートコントローラ等である。
【0042】
読み出し手段としてのDVD駆動装置61は、記憶媒体としてのDVD20が挿入された場合には、当該DVD20に記録されている情報を読み出す処理を実行する。例えば、地図情報を更新(バージョンアップ)するための更新情報が記憶されたDVD20が挿入された場合には、後述する処理に基づいて、地図情報DB53aに格納されている地図情報を更新する。なお、映像および音声等が記録されたDVDが挿入された場合には、記憶されている映像および音声が読み出されて再生される。
【0043】
タッチパネル62は、LCD56に重畳するように配置されており、LCD56に画像として表示されているボタン等を参照して、これらの部分をユーザが操作することにより、所望の情報を入力することができる。
【0044】
つぎに、本発明の動作について説明する。
【0045】
1.更新情報が格納されたDVD20を作成する動作
【0046】
まず、情報処理装置10において、更新情報が格納されたDVD20を作成する処理について説明する。
【0047】
ナビゲーション装置50のHDD53の地図情報DB53aに記憶されている地図情報は、自動的には更新されない固定情報であるので、時間の経過とともに古くなっていく。したがって、ナビゲーション装置50の提供者である製造メーカは、最新の地図情報を格納したDVD20を作成し、ユーザに有償/無償で配布することにより、当該地図情報を更新させる。
【0048】
そのような場合、最新の地図情報が格納されたDVD20を作成する必要があるが、そのような場合に実行される処理の一例を、図3を参照して説明する。図3の処理が実行されると、以下のステップが実行される。
【0049】
ステップS10:CPU11は、新しい地図情報を構成すべきファイルを収集し、HDD13に格納する。すなわち、CPU11は、操作者(主に、製造メーカまたはソフトウエア製造メーカの担当者)の操作に応じて、更新すべきファイルを収集し、HDD13の地図情報DB13aに格納する。
【0050】
ステップS11:CPU11は、対象となるナビゲーション装置50に内蔵されているHDD53の特性を取得する。具体的には、HDD53の記憶容量およびファイルシステムの種類等の情報が取得される。
【0051】
ステップS12:CPU11は、ステップS11において取得したHDD53の情報に基づいて、ステップS10で収集した地図情報を、HDD53に格納した場合の格納形態に応じたイメージデータを生成する。
【0052】
図4および図5は、イメージデータについて説明するための図である。図4に示すように、地図情報は複数のファイル#1〜#jによって構成されている。ファイル#1〜#jは、例えば、数バイトから数百メガバイト程度の容量を有するファイルであり、それぞれのファイルの容量は一定でない。このようなファイルをHDD53のハードディスク530に記憶させると、ハードディスク530の外周部分の領域には、後述する管理情報としてのFAT(File Allocation Table)およびディレクトリに関する情報が記憶され、また、その内側の領域にはデータがクラスタ単位で格納される。
【0053】
図5は、ステップS12において生成されるイメージデータ(図4のハードディスク530に格納されている状態のデータ)の一例を示す図である。この図に示すように、ハードディスク530に格納されている情報は、管理情報とデータとによって構成される。管理情報は、FATクラスタチェーンおよびディレクトリエントリによって構成される。FATクラスタチェーンは、クラスタに分割して配置されるファイルの位置と順番を示す情報を有している。ディレクトリエントリは、ファイルの名前および記憶場所を示す情報を有している。この例では、ディレクトリエントリ#1〜#nのn個のディレクトリエントリを有している。
【0054】
一方、データは、複数のクラスタに分割されて記憶されており、この例では、データ#1〜データ#mのm個のデータを有している。
【0055】
なお、ファイルをHDDに格納した場合、一般的には、図6に示すように、ディレクトリエントリと、データとが混在した状態となる。しかしながら、本実施の形態では、ディレクトリエントリ#1〜#nについては、ひとまとめとしてFATクラスタチェーンの直後に配置している。
【0056】
ステップS13:CPU11は、ステップS12において生成したイメージデータから、図5に示す管理情報を抽出する。すなわち、図5の例では、CPU11は、イメージデータから、FATクラスタチェーンと、ディレクトリエントリ#1〜#nをひとまとまりのデータとして抽出する。
【0057】
ステップS14:CPU11は、ステップS12において生成したイメージデータから、図5に示すデータを抽出する。すなわち、図5の例では、CPU11は、イメージデータから、データ#1〜#mをひとまとまりのデータとして抽出する。
【0058】
ステップS15:CPU11は、ステップS14において抽出したデータを、128kBサイズのブロックに分割する。なお、128kBサイズに分割する理由については、後述する。
【0059】
ステップS16:CPU11は、ステップS13において抽出した管理情報に対して圧縮処理を施すとともに、ステップS15において128kBサイズのブロックに分割したデータのそれぞれに対して圧縮処理を施す。図7は、ステップS16において実行される処理の概要を示している。この図6に示すように、FATクラスタチェーンおよびディレクトリエントリ#1〜#nからなる管理情報は、圧縮処理が施されて、圧縮管理情報が生成される。また、データ#1〜#mからなるデータは、128kBサイズのブロックに分割された後、それぞれのブロック(128kBサイズのブロック)に対して圧縮処理が施され、p個の圧縮データ#1〜#pが生成される。
【0060】
ステップS17:CPU11は、ステップS16において圧縮処理が施されて生成された圧縮管理情報と、圧縮データ#1〜#pをDVD20に書き込む処理を実行する。すなわち、CPU11は、圧縮管理情報と、圧縮データ#1〜#pをDVD駆動装置18に送り、DVD20に書き込むように指示する。その結果、DVD駆動装置18は、CPU11から受け取った圧縮管理情報と、圧縮データ#1〜#pをDVD20に書き込む処理を実行する。なお、このとき、HDD53の地図情報を更新するプログラム(以下、「更新プログラム」と称する。)も同時にDVD20に書き込んでおく。
【0061】
以上の処理により、地図情報を更新するための更新情報が格納されたDVD20が完成する。このようにして完成されたDVD20は、販売店等を介してユーザに有償/無償で配布される。なお、当該DVD20自体を配布するのではなく、例えば、DVD20をマスターDVDとして複数のDVDを複製し、複製されたDVDを配布するようにしてもよい。
【0062】
2.DVD20によってナビゲーション装置50の地図情報を更新する動作
【0063】
このようにして製造されたDVD20の配布を受けたユーザは、図2に示すナビゲーション装置50が装着された車両のエンジンを始動し、ナビゲーション装置50の電源をオンの状態とする。そして、ユーザは、DVD20を、DVD駆動装置61の図示せぬ挿入口に挿入する。すると、DVD駆動装置61は、DVD20に格納されている情報を読み出し、当該DVD20が地図情報更新用のDVDであることを認識する。すると、CPU51は、DVD20に格納されている更新プログラムを読み出し、メモリ54に格納してこれを実行する。
【0064】
更新プログラムが実行されると、図8に示す以下の処理が実行される。
【0065】
ステップS30:CPU51は、DVD20に格納されている圧縮管理情報を読み出す。すなわち、CPU51は、DVD駆動装置61に圧縮管理情報を読み出すように指示をする。その結果、DVD駆動装置61は、DVD20に格納されている圧縮管理情報を読み出し、CPU51に供給する。
【0066】
ステップS31:CPU51は、ステップS30で読み出した圧縮管理情報に対して解凍処理を施す。その結果、圧縮前のもとの管理情報を得る。
【0067】
ステップS32:CPU51は、ステップS31の解凍処理により得られた管理情報をHDD53に供給し、HDD53に書き込ませる。その結果、HDD53には、図5と同様の状態で管理情報が格納される。
【0068】
ステップS33:CPU51は、処理回数をカウントするための変数iに初期値1を代入する。
【0069】
ステップS34:CPU51は、DVD駆動装置61から圧縮データ#iを読み出す。すなわち、CPU51は、DVD駆動装置61に圧縮データ#iを読み出すように指示する。その結果、DVD駆動装置61は、DVD20に格納されている圧縮データ#iを読み出し、CPU51に供給する。例えば、i=1である場合には、圧縮データ#1が読み出される。
【0070】
ステップS35:CPU51は、ステップS34において読み出した圧縮データ#iに対して解凍処理を施す。その結果、128kBサイズのもとのデータを得る。
【0071】
ステップS36:CPU51は、ステップS35の解凍処理により得られたデータを、HDD53に転送する。HDD53では、CPU51から転送されたデータを、所定の領域に書き込む。その結果、データは、図5に示す状態で格納される。
【0072】
ステップS37:CPU51は、変数iの値を1インクリメントする。
【0073】
ステップS38:CPU51は、ナビゲーション装置50の電源がオフの状態にされたか否かを判定し、オフの状態にされた場合にはステップS39に進み、それ以外の場合にはステップS40に進む。
【0074】
ステップS39:CPU51は、レジューム処理を実行する。すなわち、CPU51は、電源が再度オンの状態にされた場合に、今回の処理において、HDD53への転送が終了したデータの次のデータから更新を継続するために、変数iの値を退避するとともに、システムを安全に停止するための処理を実行する。
【0075】
このステップS39の処理により、地図情報を更新中に電源がオフの状態にされた場合であっても、システムを安全に停止するとともに、次回、電源がオンの状態にされた場合には、つぎのデータがHDD53に転送されて書き込まれることになる。
【0076】
なお、本実施の形態では、データのサイズは、128kBとされている。これは、地図情報を更新している最中に、電源がオフの状態にされた場合であっても、直ちに、更新処理を中断するとともに、システムを安全に停止することが可能なサイズに設定されている。すなわち、128kB程度の容量を処理の単位とすれば、例えば、読み出し処理中または解凍処理中に電源がオフの状態にされたとしても、読み出し処理および解凍処理を実行し、HDD53にデータを格納した後に、システムの停止処理に移行する時間的な余裕を確保することができる。また、読み出し処理、解凍処理、または、書き込み処理中に、直ちに、システムを停止したとしても、失われるのは128kBのデータのみであり、それ以前のデータは有効であるので、損失を少なくすることができる。
【0077】
ステップS40:CPU51は、全てのデータの処理が終了したか否かを判定し、終了していない場合にはステップS34に戻って同様の処理を繰り返し、それ以外の場合には処理を終了する。例えば、図7の例では、p回処理が繰り返される。
【0078】
以上の処理が完了すると、HDD53には、図5に示すのと同様の順序および配列により、管理情報およびデータが格納される。ユーザまたはCPU51は、システムを再起動することにより、更新が終了した地図情報を有効化する。
【0079】
以上の処理によれば、HDD53に格納されるイメージデータを生成し、当該イメージデータに基づいて、地図情報を更新するようにしたので、ファイル単位で更新する場合に比較し、更新に必要な時間を短縮することができる。
【0080】
また、以上の実施の形態では、FATクラスタチェーンと、ディレクトリエントリを先頭にまとめて管理情報とし、当該管理情報を最先にHDD53に転送して格納するようにしたので、ファイルを管理する上で重要な情報である管理情報を優先して転送することができる。なお、管理情報の更新は、数秒程度で完了する。したがって、更新処理の初期の段階(電源がオフの状態にされる可能性が低い期間)で、最も重要な情報を転送することができる。また、その後は、管理情報に対してはアクセスする必要がないので、電源がオフされたとしても、当該管理情報の毀損によりファイルシステム全体が修復不能となり、全ての更新処理を最初から繰り返す必要が生じることがない。
【0081】
また、以上の実施の形態では、データを128kBサイズのブロックに分割し、それぞれを圧縮処理するようにしたので、サイズの異なる種々のファイルが混在する場合に比較して、圧縮処理および解凍処理を効率よく実行することが可能になる。また、更新処理中に電源がオフの状態にされた場合でも、処理を確実に完了することができるので、それまでの処理が無駄になることを防止できる。さらに、電源が再びオンの状態にされた場合には、更新処理を確実に再開することができる。
【0082】
また、以上の実施の形態では、地図情報をHDD53に格納された場合に対応するイメージデータとしてDVD20に格納するようにしたので、もともとのファイルの状態で格納する場合に比較して、データの解析が困難となる。したがって、悪意あるユーザから情報を保護することが可能になる。
【0083】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0084】
例えば、以上の実施の形態では、DVD20に記憶されている更新データを読み込んで、HDD53に記憶されている地図情報を更新するようにしたが、例えば、DVD20以外の記憶媒体(例えば、CD−ROM)に記憶された更新情報を読み込んだり、または電気通信手段(例えば、インターネット)を介して更新情報を読み込んだりしてもよい。
【0085】
また、以上の実施の形態では、ファイルの更新順序については、特に言及していないが、ファイルを機能単位でまとめて、機能単位で更新を行い、更新が終了した機能については、逐次有効化して使用可能としてもよい。具体的には、基本的な地図(100m以上のスケールの地図)を表示するためのファイルについては最先に更新し、それ以外の地図(100m未満のスケールの地図)についてはその後に更新し、他の機能(例えば、目的地検索機能、VICS表示機能、経路探索機能、および、経路案内機能)については、ユーザの嗜好または過去の使用頻度に基づいた順番で更新するようにしてもよい。そのような実施の形態によれば、地図情報の更新処理中であっても、更新が終了した機能については使用することができるので、ユーザの利便性を高めることができる。
【0086】
また、以上の実施の形態では、管理情報についても圧縮処理を施すようにしたが、管理情報については、容量も少なく、また、迅速に更新を行う必要があることから、圧縮処理を施さないようにしてもよい。
【0087】
また、以上の実施の形態では、データについては、128kBに分割して圧縮処理するようにしたが、これ以外のサイズに分割してもよい。また、圧縮処理しないでそのまま格納するようにしてもよい。
【0088】
また、以上の実施の形態では、プログラムによって、地図情報をイメージデータに変換するようにしたが、例えば、標準的なHDDを準備しておき、これに実際にファイルを記憶させることにより、イメージデータを生成するようにしてもよい。そのような処理によれば、変換用のプログラムを作成する手間を省略できる。
【0089】
なお、上記の処理機能は、例えば、図1に示すようなコンピュータによって実現される。その場合、画像処理装置およびナビゲーション装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記録装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD、DVD−RAM(Random Access Memory)、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical Disk)などがある。
【0090】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0091】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送される毎に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、地図を表示して目的地までの経路を案内するナビゲーション装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るナビゲーション装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図1に示す情報処理装置において実行される処理の一例を示す図である。
【図4】図3に示す処理によりイメージデータが生成される様子を示す図である。
【図5】図3に示す処理において生成されるイメージデータの概略を説明するための図である。
【図6】普通にHDDに情報を格納した場合の格納形態を示す図である。
【図7】図3に示す処理において生成されたイメージデータを圧縮する様子を説明するための図である。
【図8】図2に示すナビゲーション装置において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0094】
10 情報処理装置
11 CPU(変換手段、分割手段、圧縮手段)
18 DVD駆動装置(記憶手段)
20 DVD(記憶媒体)
50 ナビゲーション装置
51 CPU(更新手段)
53 HDD(磁気記憶手段)
61 DVD駆動装置(読み出し手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図を表示して目的地までの経路を案内するナビゲーション装置が有する地図情報を更新する情報処理装置において、
上記ナビゲーション装置が有する磁気記憶手段に上記地図情報を記憶させた場合の格納形態に応じたイメージデータに上記地図情報を変換する変換手段と、
上記変換手段によって得られたイメージデータとしての更新情報を記憶媒体に記憶させる記憶手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記変換手段は、前記磁気記憶手段がデータを管理するための管理情報を、前記イメージデータの先頭に配置することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記変換手段は、ディレクトリ情報を、前記管理情報に含めて配置することを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記変換手段によって生成されたイメージデータを、複数のデータに分割する分割手段をさらに有することを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記分割手段によって分割されたそれぞれのデータを圧縮する圧縮手段をさらに有することを特徴とする請求項4記載の情報処理装置。
【請求項6】
地図を表示して目的地までの経路を案内するナビゲーション装置において、
地図情報を記憶した磁気記憶手段と、
上記地図情報を更新するための更新情報であって、上記磁気記憶手段に上記地図情報を記憶させた場合の格納形態に応じたイメージデータとしての更新情報が予め記憶された記憶媒体から当該更新情報を読み出す読み出し手段と、
上記読み出し手段によって読み出された上記更新情報によって、上記磁気記憶手段に記憶されている地図情報を更新する更新手段と、
を有することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項7】
地図を表示して目的地までの経路を案内するナビゲーション装置が有する地図情報を更新するための更新情報を記憶するとともに、当該ナビゲーション装置に地図情報を更新するための処理を実行させるプログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体において、
コンピュータを、
上記地図情報を更新するための更新情報であって、上記磁気記憶手段に上記地図情報を記憶させた場合の格納形態に応じたイメージデータとしての更新情報が予め記憶された記憶媒体から当該更新情報を読み出す読み出し手段、
上記読み出し手段によって読み出された上記更新情報によって、上記磁気記憶手段に記憶されている地図情報を更新する更新手段、
として機能させることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−108260(P2007−108260A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297126(P2005−297126)
【出願日】平成17年10月12日(2005.10.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】