説明

情報提供装置

【課題】運転者に与える不快感を低減させることが可能な情報提供装置の提供。
【解決手段】情報提供装置は、車両に搭載され、互いに情報を通信可能な複数の車載装置によって構成されており、車載装置では、衝突予測報知処理を実行する。その衝突予測報知処理では、自車両の走行状態の他に、自車両に予定経路が設定されている場合には、その予定経路を含む自車両情報を取得し(S110)、他車両の走行状態の他に、他車両に予定経路が設定されている場合には、その予定経路を含む他車両情報を取得する(S120)。自車両情報、他車両情報の少なくともいずれか一方に、予定経路が含まれていれば(S150:YES)、その予定経路を用いて各車両の予想範囲を求める(S190)。各車両の予想範囲における重複の度合が大きいほど、自車両と判定対象車とが衝突する可能性の高い地点として報知する(S210)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突事故を低減するための情報を提供する情報提供装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両の周辺に位置する他車両の車速、及び走行履歴(即ち、現在位置と、過去に移動してきた経路)からなる他車状態を取得する通信装置と、自車両の車速、及び走行履歴からなる自車状態を取得する自車状態取得装置と、通信装置にて取得した他車状態、及び自車状態取得装置にて取得した自車状態とに基づいて、自車両と他車両とが衝突する可能性を推定し、推定された結果(即ち、衝突する確率等)を報知する制御装置とを備えた情報提供装置が知られている。
【0003】
具体的に、この種の情報提供装置における制御装置では、自車両、他車両共に、走行履歴に示された経路を今後も取り続ける(例えば、過去の経路が直進であれば、今後の経路も直進である)ものと推定することで、今後、走行すると予想される予想経路を導出する。これと共に、その導出された予想経路を、自車状態取得装置(もしくは、通信装置)にて取得した車速で、各車両が走行し続けた場合に、それぞれの車両が所定時間後に到達すると予想される予想範囲を推定する。さらに、自車両の予想範囲と他車両の予想範囲とが重複する領域を、自車両と他車両とが衝突する可能性のある地点(以下、衝突予測地点とする)として導出すると共に、互いの予想範囲の重なり度合により衝突する確率を求めることがなされている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−145479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の情報提供装置では、例えば、図6に示すように、自車両、他車両共に、走行履歴から導出された予想経路が直進であることを示しており、衝突予測地点として、自車両の予想経路上に位置する交差点が導出されている場合、この交差点での自車両と他車両との衝突する確率等が報知されることになる。しかし、自車両が、衝突予測地点とされた交差点よりも手前(即ち、交差点に到達する前)で左折(なお、右折でも良い)することを予定している場合、上述した報知は不要なものとなる。
【0005】
つまり、特許文献1に記載された情報提供装置では、自車両、他車両共に、走行履歴のみを用いて予想経路を導出しているため、予想経路の導出精度が低く、不必要な報知がなされることで、自車両の運転者に不快感を与える可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、運転者に与える不快感を低減させることが可能な情報提供装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の情報提供装置は、自車情報取得手段が、自車両の走行状態に関する自車走行情報に加えて、目的地までの自車両の予定経路が設定されている場合には、その予定経路を示す経路情報も取得し、他車情報取得手段が、他車両の走行状態に関する他車走行情報に加えて、目的地までの他車両の予定経路が設定されている場合には、その予定経路を示す経路情報も取得する。そして、衝突予測推定手段が、自車情報取得手段で取得された自車走行情報、他車情報取得手段で取得された他車走行情報、及び経路情報に基づいて、自車両と他車両とが衝突する可能性のある地点である衝突予測地点を推定すると共に、報知制御手段が、衝突予測推定手段にて推定された衝突予測地点についての情報である衝突予測情報を報知する情報報知制御を実行する。
【0008】
つまり、本発明の情報提供装置では、自車情報取得手段で取得した情報、または他車情報取得手段で取得した情報の少なくともいずれか一方に経路情報が含まれている場合、その経路情報が示す予定経路に基づいて、衝突予測地点が推定されることになる。このため、従来の情報提供装置と異なり、自車両または他車両が衝突予測地点を走行する可能性が高くなる。
【0009】
したがって、本発明の情報提供装置によれば、自車両や、他車両が走行する可能性の高い衝突予測地点についての衝突予測情報のみを報知することができ、結果として、不必要な衝突予測情報を報知することが低減される。このため、本発明の情報提供装置によれば、不必要な衝突予測情報が報知されることにより、本情報提供装置の利用者が不快感を感じる可能性を低減することができ、利便性を向上させることができる。
【0010】
なお、ここで言う走行状態とは、自車両(もしくは他車両、以下、車両とする)が、今後、移動すると予想される経路を推定するための指標であり、車両の現在位置、及び車速を少なくとも含み、他には、走行履歴(即ち、過去の予め規定された時間における位置の軌跡、つまり、移動経路)、加速度、進行方向等が含まれていても良い。
【0011】
また、本発明の情報提供装置における衝突予測手段は、自車両の予定経路と他車両の予定経路と(ここでは、自車両または他車両のいずれか一方のみが予定経路であっても良い)の交点を衝突予測地点とすることが望ましいが、自車走行情報、及び他車走行情報に基づいて、衝突予測地点の候補である衝突予測地点候補を推定し、その衝突予測地点候補が予定経路上に位置している場合、その衝突予測地点候補を衝突予測地点として取り扱うようにしても良い。
【0012】
さらに、本発明の情報提供装置における報知制御手段は、請求項2に記載のように、通過判定手段が、衝突予測推定手段で推定された衝突予測地点を自車両が通過したか否かを判定し、その判定の結果、自車両が衝突予測地点を通過していれば、報知制御解除手段が、情報報知制御の実行を解除するように構成されていても良い。
【0013】
このように構成された本発明の情報提供装置では、衝突予測地点を自車両が通過することで不必要となった衝突予測情報を報知することが無くなる。
したがって、本発明の情報提供装置によれば、不必要な衝突予測情報が報知されることをより確実に低減することができ、運転者が不快感を感じる可能性をより低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
〈全体構成について〉
まず、図1は、本発明が適用され、車両間の衝突事故を低減するための情報を提供する情報提供システムの概略構成を示したブロック図である。
【0015】
情報提供システム1は、車両に搭載され、互いに情報を通信可能に構成された複数の車載装置10によって構成され、各車載装置10では、自車両の走行状態や、目的地までの経路、及び他車両の走行状態や、目的地までの経路に基づいて、自車両と他車両とが衝突する可能性のある位置について警告を発する。なお、以下では、他車両に搭載された車載装置10(各構成を含む)は、自車両に搭載された車載装置10と同様に構成されているため、符号aを付して(即ち、他車両に搭載された車載装置10a)説明を省略する。
【0016】
これを実現するために、車載装置10は、自車両の車速を検出する車速センサ12と、他車両との間で通信する通信装置11と、外部からの入力に従って目的地までの経路を案内する周知の処理に加えて、自車両と他車両とが衝突する可能性を求め、警告を発するナビゲーション装置20とを備えている。
【0017】
車速センサ12は、車輪の回転速度に基づき、自車両の車速を検出するものであり、検出した車速をナビゲーション装置20に出力するように構成されている。
通信装置11は、車々間通信を行うためのものであり、自車両の周辺に位置し、他車両に搭載された車載装置10aの通信装置11aとの間で無線通信を行うように構成されている。
〈ナビゲーション装置について〉
次に、ナビゲーション装置20について説明する。
【0018】
ナビゲーション装置20は、自車両の現在位置を検出する位置検出器21と、地図データや各種データを格納する地図データ格納部25と、情報を表示する表示装置26と、ユーザーからの各種指示を入力するための操作スイッチ群27と、各種のガイド音声等を出力するための音声出力部28と、ユーザーが発話した音声に基づく電気信号を出力するマイクロフォン(図示せず)と、位置検出器21、地図データ格納部25、操作スイッチ群27、マイクロフォン等の入力に従って、表示装置26、及び音声出力部28を制御すると共に、車載装置10全体を制御する制御部30とを備えている。
【0019】
位置検出器21は、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波を図示しないGPSアンテナを介して受信して、その受信信号を出力するGPS受信機22と、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するジャイロセンサ23と、地磁気から進行方位を検出するための地磁気センサ24とを備えている。そして、これら各センサ等22〜24からの出力信号に基づいて制御部30が、車両の現在位置、進行方向の方位等を算出する。
【0020】
また、地図データ格納部25は、データを記憶する記憶装置であり、地図データ(ノードデータ、リンクデータ、コストデータ、道路データ、地形データ、マークデータ、交差点データ、施設のデータ等)、案内用の音声データ、音声認識データ等が記憶されている。
【0021】
さらに、表示装置26は、カラー表示装置であり、液晶ディスプレイ,有機ELディスプレイ,CRTなどがあるが、その何れを用いてもよい。
そして、操作スイッチ群27は、表示装置26の表示面と一体に構成されたタッチパネル、及び表示装置26の周囲に設けられたキースイッチ等から構成されている。なお、タッチパネルと表示装置26とは積層一体化されており、タッチパネルには、感圧方式、電磁誘導方式、静電容量方式、あるいはこれらを組み合わせた方式など各種の方式があるが、その何れを用いてもよい。
【0022】
音声出力部28は、制御部30からの信号を音声に変換して出力するスピーカであり、具体的には、地図データ格納部25に格納された施設のガイドや各種案内の音声を出力する。
【0023】
さらに、マイクロフォンは、利用者が音声を入力(発話)するとその入力した音声に基づく電気信号(音声信号)を制御部30に出力するものである。このマイクロフォンを介して入力される音声コマンドによって、ナビゲーション装置20の操作が可能なように構成されている。
【0024】
一方、制御部30は、プログラム等を格納するROM31と、データを一時的に格納するRAM32と、ROM31や、RAM32に格納されたプログラムに従って、各種処理を実行するCPU33とを備えている。
【0025】
そして、ROM31には、現在位置付近の地図を表示してその中に車両現在位置マークを表示する現在位置表示処理、目的地までの経路を設定する経路設定処理、経路設定処理により設定された経路に従って表示装置26への表示や音声出力部28からの音声出力による経路案内を行う経路案内処理等を実行するための処理プログラムが格納されている。これと共に、ROM31には、自車両の走行状態や、目的地までの経路、及び他車両の走行状態や、目的地までの経路に基づいて、自車両と他車両とが衝突する可能性のある位置について警告を発する衝突予測報知処理を実行するための処理プログラムも格納されている。
【0026】
また、ROM31には、図2に示すように、衝突予測報知処理をCPU33が実行する時に参照され、車速が0から予め規定された規定車速までは、車速が高いほど増加し、車速が規定車速以上では、最高値となるように、車速と重みとが対応付けられた予想範囲決定マップ等の各種マップが格納されている。
【0027】
つまり、制御部30は、現在位置表示処理、経路設定処理、経路案内処理等を実行することに加えて、衝突予測報知処理を実行可能に構成されている。
〈衝突予測報知処理〉
次に、制御部30が実行する衝突予測報知処理について説明する。
【0028】
ここで、図3は、衝突予測報知処理の処理手順を説明するためのフローチャートである。
この衝突予測報知処理は、起動されると、まず、S110にて、自車両情報を取得すると共に、取得した自車両情報を通信装置11から他車両の車載装置10aに出力する。その自車両情報には、自車両の走行状態の他に、経路設定処理にて目的地までの経路(以下、予定経路とする)が設定されている場合には、その予定経路も含むものとする。
【0029】
具体的に、本実施形態では、走行状態として、車速センサ12で検出された車速、GPS受信機22にて検出された現在位置、ジャイロセンサ23、及び地磁気センサ24での検出結果から求められた進行方向、車両が走行してきた位置の履歴(以下、走行履歴とする、即ち、過去に移動してきた経路)を取得している。
【0030】
続く、S120では、他車両の車載装置10aから出力され、通信装置11にて受信した他車両の走行状態、及び予定経路(ただし、他車両において経路設定処理にて目的地までの経路が設定されている場合のみ)を他車両情報として取得する。即ち、他車両情報とは、車載装置10aにて本処理のS110が実行された時に、車載装置10aから出力される情報である。なお、このS120では、通信装置11と通信装置11aとが通信可能な範囲内(例えば、500m程度)に位置する全ての他車両から、他車両情報を受信している。
【0031】
そして、S130では、先のS120で他車両情報を受信した全ての他車両の中から一台の他車両を、自車両と衝突する可能性のある車両であるか否かを判定する判定対象車として抽出する。
【0032】
続くS140では、S130で抽出した判定対象車が、自車両から予め規定された規定範囲内に位置しているか否かを判定する。具体的に、本実施形態では、現在位置表示処理にて表示装置26に表示される地図の範囲内を規定範囲としている。したがって、表示装置26に表示される地図が縮小されれば、規定範囲は大きくなり(即ち、自車両からの距離が離れていても範囲内となりうる)、拡大されれば、規定範囲は小さくなる。
【0033】
そして、S140での判定の結果、判定対象車が規定範囲内に位置していれば、S150へと進む。
そのS150では、先のS110で取得した自車両情報、またはS120で取得し、S130で抽出された判定対象車の他車両情報の少なくともいずれか一方に、予定経路が含まれているか否かを判定する。その判定の結果、自車両情報または他車両情報の少なくともいずれかに予定経路が含まれているものと判定された場合、S160へと進む。
【0034】
そして、S160では、自車両、及び判定対象車が、今後進むと予想される経路である予想経路を導出する。具体的に、本実施形態では、自車両、及び他車両ともに、予定経路が設定されている場合には、その予定経路を予想経路とする。また、自車両、または他車両のいずれかにのみ予定経路が設定されている場合には、予定経路が設定されている車両については、予定経路を予想経路とし、予定経路が設定されていない車両については、走行履歴に示された経路を今後も取り続ける(例えば、過去の経路が直進であれば、今後の経路も直進である)ものと推定して、予想経路を導出する。
【0035】
一方、S150における判定の結果、自車両情報、及び他車両情報の両方共に予定経路が含まれていないものと判定された場合には、S170にて、自車両、判定対象車共に、走行履歴に示された経路を今後も取り続けるものと推定して、予想経路を導出した上で、S180へと進む。
【0036】
つまり、S160、S170では、自車両、及び判定対象車共に、それぞれの予想経路を導出した上で、S180へと進む。
続く、S180では、先のS160(もしくは、S170)にて導出された自車両の予想経路と、他車両の予想経路とが交差する経路交差地点が存在するか否かを判定する。そして、判定の結果、経路交差地点が存在しない場合には、S230へと進み、経路交差地点が存在する場合には、S190へと進む。
【0037】
そのS190では、S110で取得された自車両の車速に基づき、自車両が経路交差地点に到達するまでに要する到達時間を求めると共に、先に導出された自車両の予想経路を到達時間だけ走行した後に、自車両が位置すると予想される予想範囲を推定する。また、S190では、先に導出された判定対象車の予想経路を、S120で取得された判定対象車の車速で走行した場合、到達時間後に判定対象車が到達すると予想される予想範囲を推定する。
【0038】
具体的に、本実施形態では、自車両の予想範囲を経路交差地点を中心に描き、その後、判定対象車の予想範囲を描く。ただし、本実施形態における予想範囲は、自車両、他車両共に、それぞれの車速に応じた重みをROM31に格納された予想範囲決定マップから読み出して、その重みを車両の全長に乗じた値を半径とした円である。
【0039】
つまり、S190では、自車両、判定対象車共に、それぞれの車両が到達時間後に走行しているであろう予想範囲を求めている。
続く、S200では、S190で求めた自車両の予想範囲と、判定対象車の予想範囲とが、重複するか否かを判定する。そして、判定の結果、互いの予想範囲が重複するものと判定された場合、S210へと進む。
【0040】
そのS210では、自車両の予想範囲と、判定対象車の予想範囲との重複の度合を求め、その度合が大きいほど、S180で判定した経路交差地点を、自車両と判定対象車とが衝突する可能性(即ち、衝突する確率)の高い地点(以下、衝突予測地点とする)として報知する。
【0041】
具体的に、本実施形態では、衝突予測地点を走行する判定対象車(他車両)が、衝突予測地点を走行しない他車両とは異なる色彩で表示されるように、映像信号を表示装置26に出力する。これに加えて、衝突予測地点には、自車両が他車両と衝突する可能性のある旨を示す表示マーカを、衝突予測地点以外の他の交差点とは異なる色彩であり、かつ自車両と判定対象車との衝突する確率が高いほど大きなものとして表示するように、映像信号を表示装置26に出力する。さらに、例えば、「100メートル(衝突予測地点までの距離)先、他車両と衝突する危険があります」等、警告メッセージが出力されるように音声信号を音声出力部28に出力する。
【0042】
さらに、S220では、S130で抽出され、S140からS210までのステップを実行する対象とした判定対象車を、報知の対象であることを示す報知対象として設定する。具体的には、報知対象であることを表す報知対象フラグをセットする。これにより、その判定対象車と自車両との衝突予測地点について繰り返し報知される(即ち、表示装置26には、表示マーカ等が表示され続け、音声出力部28からは予め規定された間隔で音声が出力される)。
【0043】
なお、S140での判定の結果、判定対象車が規定範囲外に位置している場合や、S180での判定の結果、経路交差地点が存在しないものと判定された場合には、S230へと進む。また、S200での判定の結果、自車両の予想範囲と、判定対象車の予想範囲とが、重複しなかった場合には、S230へと進む。
【0044】
つまり、判定対象車が自車両から離れた位置を走行している場合や、自車両と判定対象車との進路が全く異なる方向である場合、自車両もしくは判定対象車が衝突予測地点を通過した場合等には、S230へと進む。
【0045】
そのS230では、判定対象車を報知対象から除外して、S240へと進む。即ち、判定対象車に報知対象フラグがセットされていれば、報知対象フラグを解除する。
これにより、例えば、判定対象車が規定範囲外であるもの、衝突予測地点が存在しないものと判定されたことによって、S230へと進んだ場合には、始めから報知がなされず、自車両が衝突予測地点を通過したことによって、S230へと進んだ場合には、その衝突予測地点についての報知は、解除されることになる。ただし、他車両の位置のみは表示される。
【0046】
S240では、S120にて他車両情報を受信した全ての他車両について、S130からS230までの処理を実行したか否かを判定し、判定の結果、まだ処理が終了していない他車両があれば、S130へと戻り、次の判定対象車を抽出する。
【0047】
一方、判定の結果、全ての他車両について処理が終了していれば、S110へと戻る。
つまり、衝突予測報知処理では、自車両、または他車両の少なくともいずれか一方に予定経路が設定されている場合、その予定経路に基づいて、衝突予測地点を導出している。このため、衝突予測報知処理にて報知される衝突予測地点は、自車両、または他車両が通行する可能性の高い地点となる。
〈車載装置10の動作例〉
次に、車載装置10の動作例について説明する。
【0048】
ここで、図4は、自車両と他車両との位置関係を示した模式図であり、図5は、自車両と他車両とが図4に示した位置関係である時の報知内容を説明するための説明図である。
まず、図4に示すように、自車両には、交差点にて左折するように予定経路が設定されており、通信装置11が通信可能な範囲内に、予定経路が設定された3台の他車両(図中、他車両A,B,C)が存在している。
【0049】
この状況下において、制御部30が先の衝突予測報知処理を実行すると、自車両に設定された予定経路を含む自車両情報を取得すると共に、3台の他車両から予定経路を含む他車両情報を取得する。
【0050】
ただし、図4に示すような状況下では、自車両の予定経路と交差する他車両の予定経路が、他車両Aにて設定された予定経路のみであることから、自車両の予定経路と他車両Aの予定経路が交差する地点のみが経路交差地点となる。さらに、その経路交差地点を中心として、自車両の予想範囲と、他車両Aの予想範囲とを描き、これらの予想範囲が重複することから、この経路交差地点を自車両と他車両Aとが衝突する可能性のある衝突予測地点とする。また、予想範囲の重なり度合に応じて、自車両と他車両Aとが衝突する確率を求める。
【0051】
そして、このような状況下にある場合、表示装置26は、通常のナビゲーション装置と同様に、自車両の位置、自車両の予定経路、目的地、その他の道路を表示することの他に、図5に示すように、衝突予測地点に表示マーカを表示すると共に、他車両Aを他車両B,Cと識別可能なように異なる色彩にて表示する。
【0052】
一方、他車両B,Cにて設定された予定経路は、自車両の予定経路と交差しないことから、経路交差地点とならず、表示装置26には、図5に示すように、他車両B,Cの位置のみが表示されることになる。
【0053】
ただし、表示マーカは、自車両と他車両Aとの衝突する確率が高いほど大きなものとなり、例えば、自車両又は他車両Aが、衝突予測地点を通過したような場合には、表示マーカの表示は解除される。
【0054】
なお、本実施形態の衝突予測報知処理のS110が、本発明の自車情報取得手段に、衝突予測報知処理のS120が、本発明の他車情報取得手段に、衝突予測報知処理のS130からS200までが、本発明の衝突予測推定手段に、衝突予測報知処理のS210、及びS230が報知制御手段に相当する。
[実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態の情報提供システム1によれば、自車両または判定対象車の少なくともいずれか一方に予定経路が設定されている場合、その予定経路上に衝突予測地点が必ず位置することになる。特に、自車両、及び他車両の両方共に予定経路が設定されている場合には、予定経路同士の交点のみが衝突予測地点となるため、自車両及び他車両がその衝突予測地点を走行する可能性が極めて高くなる。
【0055】
したがって、本実施形態の情報提供システム1によれば、自車両、他車両共に、走行状態(つまり、走行履歴、現在位置、車速)のみから衝突予測地点を導出する場合と比較して、自車両と他車両とが衝突する可能性の高い地点についての情報、即ち、当該情報提供システム1の使用者にとって有益な情報を報知することができる。この結果、情報提供システム1によれば、当該情報提供システム1の使用者にとって不必要な情報(即ち、自車両と他車両とが衝突する可能性の低い地点についての情報)が報知されることを低減することができる。
【0056】
また、情報提供システム1における衝突予測報知処理では、規定範囲外に位置する判定対象車を報知対象から除外し、規定範囲内に位置する判定対象車であっても、自車両の予想経路と判定対象車の予想経路とが交差しない場合には、その判定対象車を報知対象から除外している。
【0057】
つまり、情報提供システム1によれば、自車両と衝突する可能性の低い判定対象車を報知対象から除外することで、今サイクルでの処理を軽減すると共に、表示装置26に表示される情報(画面)をより見やすくすることができる。
【0058】
さらに、自車両の予想経路と判定対象車の予想経路とが交差する場合であっても、自車両の予想範囲と判定対象車の予想範囲が重複しない場合、例えば、自車両もしくは判定対象車が衝突予測地点を通過した場合には、その衝突予測地点についての報知を解除する。
【0059】
このため、情報提供システム1によれば、衝突予測地点を通過することで不必要となった情報を報知することが無くなり、表示装置26に表示される情報(画面)をより見やすくすることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の情報提供システム1によれば、従来の情報提供装置と異なり、不必要な情報が報知されることを低減することで、利用者が不快感を感じる可能性を低減することができる。これと共に、情報提供システム1によれば、表示装置26に表示される情報を見やすくすることで、利便性を向上させることができる。
【0061】
なお、本実施形態の情報提供システム1によれば、衝突予測地点を走行する判定対象車と、衝突予測地点を走行しない他車両とを、それぞれ異なる色彩で表示しているため、利用者が注意すべき判定対象車(即ち、衝突する可能性の高い車両)が走行している位置を、利用者に容易に認識させることができる。
【0062】
さらに、本実施形態の情報提供システム1によれば、衝突予測地点を示す表示マーカを、他の交差点とは異なる色彩にて表示しているため、衝突予測地点を利用者に容易に認識させることができる。また、情報提供システム1によれば、表示マーカを、自車両と判定対象車との衝突する確率が高いほど大きなものとして表示しているため、利用者が注意すべき衝突予測地点(即ち、衝突する可能性の高い地点)を、利用者に容易に認識させることができる。
【0063】
ところで、本実施形態の情報提供システム1によれば、音声出力部28から衝突予測地点についての警告メッセージを出力するため、当該情報提供システム1の利用者に衝突予測地点をより確実に認識させることができる。
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施することが可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態における衝突予測報知処理では、自車両、判定対象車共に予定経路が設定されていない場合には、自車両、判定対象車共にそれぞれの走行履歴に基づいて、経路交差地点(即ち、衝突予測地点)を導出したが、自車両、判定対象車共に予定経路が設定されていない場合、衝突予測地点を導出しなくとも良い。つまり、衝突予測報知処理のS150での判定の結果、自車両、判定対象車共に予定経路が設定されていないものと判定した場合には、S230へと進むようにしても良い。
【0065】
このような衝突予測報知処理では、予定経路に基づく衝突予測地点のみが導出されるため、自車両もしくは他車両が衝突予測地点を走行する可能性が高くなる。このため、自車両と他車両とが衝突する可能性の高い地点についてのみ報知することができ、結果として、不必要な報知を低減することができる。
【0066】
さらに、上記実施形態における衝突報知処理では、自車両または判定対象車の少なくともいずれか一方に予定経路が設定されていれば、その予定経路に基づいて経路交差地点を導出していたが、自車両及び他車両の走行履歴から導出される予想経路の交差地点が、自車両または判定対象車の少なくともいずれか一方に設定された予定経路上に位置していれば、その交差地点を経路交差地点としても良い。
【0067】
なお、上記実施形態における衝突予測報知処理にて表示装置26に表示される表示マーカは、自車両と判定対象車とが衝突する確率が高いほど大きなものとしたが、衝突する確率が高いほど明度が高いものとしても良い。また、表示マーカは、大きさと色との両方を変化させても良いし、点滅させても良い。
【0068】
これらの結果、衝突予測地点を他の交差点等と、明確に区別することができ、使用者が一見しただけで、衝突予測地点であることを認識することができる。
また、上記実施形態における通信装置11では、車々間通信により他車両との間で情報の通信を行ったが、通信の方法は、車々間通信に限るものではなく、路車間通信や、中継器を用いて他車両との間で情報の通信を行っても良い。
【0069】
さらに、上記実施形態における表示装置26は、カラー表示装置を用いていたが、モノクロの表示装置であっても良い。また、ヘッドアップディスプレイを表示装置26として用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】情報提供システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】予想範囲を決定するための予想範囲決定マップを示す説明図である。
【図3】衝突予測報知処理の処理手順を示したフローチャーである。
【図4】自車両と他車両との位置関係を示した模式図である。
【図5】ディスプレイに表示される報知内容を説明するための説明図である。
【図6】従来技術の課題を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1…情報提供システム 10…車載装置 11…通信装置 12…車速センサ 20…ナビゲーション装置 21…位置検出器 22…GPS受信機 23…ジャイロセンサ 24…地磁気センサ 25…地図データ格納部 26…表示装置 27…操作スイッチ群 28…音声出力部 30…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行状態に関する自車走行情報に加えて、目的地までの前記自車両の予定経路が設定されている場合には、その予定経路を示す経路情報も取得する自車情報取得手段と、
他車両の走行状態に関する他車走行情報に加えて、目的地までの前記他車両の予定経路が設定されている場合には、その予定経路を示す経路情報も取得する他車情報取得手段と、
前記自車情報取得手段で取得された自車走行情報、前記他車情報取得手段で取得された他車走行情報、及び前記経路情報に基づいて、前記自車両と前記他車両とが衝突する可能性のある地点である衝突予測地点を推定する衝突予測推定手段と、
前記衝突予測推定手段にて推定された衝突予測地点についての情報である衝突予測情報を報知する情報報知制御を実行する報知制御手段と
を備えることを特徴とする情報提供装置。
【請求項2】
前記自車走行情報は、前記自車両の現在位置を含み、
前記報知制御手段は、
前記自車情報取得手段で取得された自車走行情報に基づき、前記衝突予測推定手段で推定された衝突予測地点を前記自車両が通過したか否かを判定する通過判定手段と、
前記通過判定手段で自車両が衝突予測地点を通過したものと判定した場合、前記情報報知制御の実行を解除する報知解除手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の情報提供装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−3538(P2009−3538A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161479(P2007−161479)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】