情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法
【課題】安定した磁壁の移動を可能とし、確実に情報の書き込み、保持、読み出しを行い得る磁壁移動型の磁気メモリから成る情報記憶素子を提供する。
【解決手段】情報記憶素子は、帯状の強磁性材料層111を備えており、強磁性材料層111の一端には第1電極121、他端には第2電極122が設けられており、第1電極121と第2電極122との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、強磁性材料層111において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、強磁性材料層111の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域130が設けられている。
【解決手段】情報記憶素子は、帯状の強磁性材料層111を備えており、強磁性材料層111の一端には第1電極121、他端には第2電極122が設けられており、第1電極121と第2電極122との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、強磁性材料層111において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、強磁性材料層111の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域130が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報機器においては、現在、外部記憶装置として、ハードディスクドライブが広く用いられている。しかしながら、ハードディスクドライブは回転機構を伴うため、小型化や省電力化が難しい。そこで、小型機器用の外部記憶装置として、フラッシュメモリを用いたシリコンディスクドライブ(SSD)が用いられ始めているが、価格が高く、記憶容量も十分ではない。それ故、大記憶容量で、不揮発性、且つ、高速の情報書込み・読出しが可能な記憶装置が強く望まれている。
【0003】
このような記憶装置の1形態として、情報を磁性体の磁化状態として記録する磁気メモリの発展型である電流誘起磁壁移動型の磁気メモリが考案されている(例えば、特開2005−123617や特開2006−237183参照)。この電流誘起磁壁移動型の磁気メモリにあっては、帯状の強磁性材料層を複数の磁化領域(磁区)に分割して、強磁性材料層に電流を流すことで、磁化領域の境界である磁壁を移動させながら、強磁性材料層の磁化領域に情報を書き込み、また、情報の読み出しを行う。
【0004】
【特許文献1】特開2005−123617
【特許文献2】特開2006−237183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような電流誘起磁壁移動型の磁気メモリには、情報の保持、安定した磁壁の移動に未だ問題がある。磁壁を移動させ易くするためには、強磁性材料層の厚さを薄くしたり、強磁性材料層に軟磁性材料を用いることが考えられるが、このような解決手段は、情報を安定に保持することと反する。また、強磁性材料層内において磁壁が長い距離を移動したとき、磁壁間の距離が変化して情報誤りを起こし易くなる虞がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、安定した磁壁の移動を可能とし、確実に情報の書き込み、保持、読み出しを行い得る磁壁移動型の磁気メモリから成る情報記憶素子、及び、係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法は、
帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
強磁性材料層の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域が設けられている情報記憶素子における情報書込み・読出し方法であって、
磁壁の移動時、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させる。
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の情報記憶素子は、
帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
強磁性材料層の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域が設けられている。
【0009】
本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法あるいは本発明の情報記憶素子にあっては、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる。係る情報の書込み形態として、第3電極の構成、構造にも依るが、GMR(Giant MagnetoResistance,巨大磁気抵抗)効果あるいはTMR(Tunnel MagnetoResistance)効果に基づき、電流によるスピン注入磁化反転によって情報が書き込まれる形態を挙げることができる。あるいは又、電流によって形成された磁界に基づき情報が書き込まれる形態を挙げることができる。また、磁化状態が情報として読み出されるが、係る情報の読出し形態として、強磁性材料層における電気抵抗値の高低を検出する形態を挙げることができるし、あるいは又、強磁性材料層における磁界の方向を検出する形態を挙げることができる。磁化領域と磁化領域の境界(界面)である磁壁の移動時(磁壁の移動開始直前、移動開始と同時、移動中を含む)、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させるためには、強磁性材料層及び/又は反強磁性領域の温度を上昇させればよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の情報記憶素子、あるいは、本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、基本的には、
[A]強磁性材料層の軸線方向に沿って、強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせる。
[B]強磁性材料層の軸線方向に沿って、反強磁性領域のブロッキング温度TBを変化させる。あるいは又、
[C]反強磁性領域を周期的に配置する。
といった方策を採用する。ここで、室温においては反強磁性領域によって強磁性材料層の磁化方向が固定されるため、長期間に亙り確実に情報(磁化領域における磁化状態)を保持することができる。また、情報の書込みあるいは読出し時、強磁性材料層と反強磁性領域の交換結合を消滅あるいは低下させる結果、容易に磁壁を移動させることができるので、強磁性材料層内において磁壁が長い距離を移動したときでも、情報誤りを起こし易くなるといった問題の発生を確実に回避することができる。そして、以上の結果として、本発明によれば、安定して情報を保持しながら、確実に情報の書込み、記録、読出しを行うことができ、1つの連続した磁性体素子に多数の情報が記録可能となり、小型、軽量、且つ、安価な情報記憶装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法、全般に関する説明
2.実施例1(第1の構成の情報記憶素子及び第1の構成の情報書込み・読出し方法)
3.実施例2(実施例1の情報記憶素子の変形例)
4.実施例3(第2の構成の情報記憶素子及び第2の構成の情報書込み・読出し方法)
5.実施例4(第3の構成の情報記憶素子及び第3の構成の情報書込み・読出し方法)
6.実施例5(第4の構成の情報記憶素子及び第4の構成の情報書込み・読出し方法)
7.実施例6(第5の構成の情報記憶素子及び第5の構成の情報書込み・読出し方法)
【0012】
[本発明の情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法、全般に関する説明]
本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させる形態とすることができる。
【0013】
上記の好ましい形態を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、複数の反強磁性領域が離間して配置されている構成とすることができる。そして、この場合、記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第1の構成の情報書込み・読出し方法』と呼ぶ場合がある。強磁性材料層の軸線方向に沿った離間した反強磁性領域の長さや、隣接する反強磁性領域の間隔は、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。以上の説明は、後述する第1の構成の情報記憶素子においても同様である。
【0014】
あるいは又、上記の好ましい形態を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度(所謂、ブロッキング温度TBであり、強磁性材料層とこの強磁性材料層に接した反強磁性領域との間の交換結合が消滅する温度)が、各反強磁性領域において異なっている構成とすることができる。そして、この場合、記憶する情報のビット数をNとしたとき、上限温度が高い反強磁性領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第2の構成の情報書込み・読出し方法』と呼ぶ場合がある。磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度を異ならせるためには、各反強磁性領域の組成若しくは構造を異ならせればよい。強磁性材料層及び反強磁性領域を温度T0としたとき、反強磁性領域のブロッキング温度TBが温度T0より高い場合には、係る反強磁性領域とこの反強磁性領域に接した強磁性材料層の部分との間の交換結合は消滅しない。一方、反強磁性領域のブロッキング温度TBが温度T0より低い場合には、係る反強磁性領域とこの反強磁性領域に接した強磁性材料層の部分との間の交換結合が消滅する。従って、ブロッキング温度TBを各反強磁性領域において異ならせることで、反強磁性領域と強磁性材料層の温度に依存して、反強磁性領域と強磁性材料層との間の交換結合の消滅状態や低下状態を制御することができる。磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度が異なる反強磁性領域は、最低、2つの群に分けられればよい。上限温度が高い反強磁性領域と上限温度が低い反強磁性領域とは、交互に配置すればよい。強磁性材料層の軸線方向に沿った上限温度が高い反強磁性領域の長さは、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。反強磁性領域は、強磁性材料層の情報を記録する部分の全面に形成すればよい。反強磁性領域の組成を異ならせるためには、例えば、反強磁性領域に窒素イオンや酸素イオンを注入すればよい。また、反強磁性領域の構造を異ならせるためには、例えば、反強磁性領域の厚さを異ならせればよい。以上の説明は、後述する第2の構成の情報記憶素子においても同様である。
【0015】
あるいは又、上記の好ましい形態を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が、強磁性材料層の軸線方向に沿って変化している構成とすることができる。そして、この場合、強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が大きい領域と小さな領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられている構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の断面積が大きい領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第3の構成の情報書込み・読出し方法』と呼ぶ場合がある。ここで、断面積の変化あるいは大小は、強磁性材料層の幅の設定、あるいは又、強磁性材料層の厚さの設定、あるいは又、強磁性材料層の幅及び厚さの設定によって得ることができる。このように、強磁性材料層の断面積を強磁性材料層の軸線方向に沿って変化させることで、強磁性材料層に電流を流したとき、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせることができる。断面積が異なる強磁性材料層の領域は、最低、2つの群に分けられればよい。強磁性材料層の軸線方向に沿った断面積が異なる強磁性材料層の領域の長さは、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。反強磁性領域は、強磁性材料層の情報を記録する部分の全面に形成すればよいし、場合によっては、離間した複数の反強磁性領域を設けてもよい。以上の説明は、後述する第3の構成の情報記憶素子においても同様である。
【0016】
あるいは又、上記の好ましい形態を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の比抵抗値が強磁性材料層の軸線方向に沿って変化している構成とすることができる。そして、この場合、強磁性材料層の比抵抗値が高い領域と低い領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられている構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の比抵抗値が低い領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第4の構成の情報書込み・読出し方法』と呼ぶ場合がある。比抵抗値は、例えば、強磁性材料層の所望の部分あるいは領域に窒素イオンや酸素イオンを注入することで変化させることができる。このように、強磁性材料層の比抵抗値を強磁性材料層の軸線方向に沿って変化させることでも、強磁性材料層に電流を流したとき、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせることができる。比抵抗値が異なる強磁性材料層の領域は、最低、2つの群に分けられればよい。強磁性材料層の軸線方向に沿った比抵抗値が異なる強磁性材料層の領域の長さは、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。反強磁性領域は、強磁性材料層の情報を記録する部分の全面に形成すればよいし、場合によっては、離間した複数の反強磁性領域を設けてもよい。以上の説明は、後述する第4の構成の情報記憶素子においても同様である。
【0017】
あるいは又、上記の好ましい形態を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されている構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第5の構成の情報書込み・読出し方法』と呼ぶ場合がある。このように、温度制御手段を設け、必要に応じて温度制御手段を制御することでも、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせることができる。そして、この場合、強磁性材料層の温度が高い領域と低い領域が強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に生じるように温度制御手段を設け、必要に応じて温度制御手段を制御する構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の温度が低い領域の数がN以上となるように温度制御手段を設け、必要に応じて温度制御手段を制御する構成とすることができる。強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させるが、温度の異なる強磁性材料層の領域は、最低、2つの群に分けられればよい。強磁性材料層の軸線方向に沿った温度が異なる強磁性材料層の領域の長さは、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。反強磁性領域は、強磁性材料層の情報を記録する部分の全面に形成すればよいし、場合によっては、離間した複数の反強磁性領域を設けてもよい。以上の説明は、後述する第5の構成の情報記憶素子においても同様である。
【0018】
温度制御手段として、強磁性材料層及び反強磁性領域を加熱するためのヒータを挙げることができ、係るヒータを強磁性材料層及び反強磁性領域の近傍に配置すればよい。ヒータは、例えば、パターニングされた高抵抗体層から構成することができる。高抵抗体層を構成する材料として、例えば、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系抵抗体材料、SiN系材料、アモルファスシリコン等の半導体抵抗体材料、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化タンタル、窒化タンタル、酸化クロム、酸化チタン等の高融点金属酸化物や高融点金属窒化物を例示することができる。あるいは又、強磁性材料層の周囲の熱伝導を変化させてもよい。即ち、強磁性材料層を取り囲む領域の熱伝導率を変化させてもよい。具体的には、例えば、一種のヒートシンクを設ければよく、このような形態にあっては、係るヒートシンクが温度制御手段に相当する。以上の説明は、以下においても同様である。
【0019】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層(固着層、磁化固定層とも呼ばれる)から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態を情報として書き込む形態とすることができる。そして、この場合、第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値を情報として第3電極から読み出す形態とすることができる。尚、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層を挟んで第2電極と第3電極とが対向した状態に配置してもよいし、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層の同じ側に配置してもよいし、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層の異なる側に配置してもよい。以下の説明においても同様である。
【0020】
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の一部に隣接して磁界形成/検出手段が更に設けられており、磁界形成/検出手段に電流を流すことで各磁化領域に磁化状態を情報として書き込む形態とすることができる。そして、この場合、各磁化領域において生成した磁場を情報として磁界形成/検出手段によって読み出す形態とすることができる。磁界形成/検出手段として、具体的には、磁界を生成させるコイルあるいは配線を挙げることができる。磁界形成/検出手段に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態を情報として書き込むが、具体的には、コイルあるいは配線に電流を流すことで磁界を生成させ、係る磁界によって磁化領域に磁化状態を所望の方向に揃えればよい。また、各磁化領域において生成した磁場の方向を、情報として、磁界形成/検出手段であるコイルや配線によって読み出せばよい。尚、情報の読出し方法として、その他、光磁気効果(カー効果)を用いる方法を採用してもよい。以下の説明においても同様である。
【0021】
更には、以上に説明した好ましい各種の形態、構成を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、電流誘起磁壁移動を生じさせるために強磁性材料層に流す電流を規則的に変調する形態とすることが好ましい。これによって、磁壁の移動速度を一定に保ち、情報の書込みあるいは読出し中に磁化情報が消滅あるいは変化することを一層確実に抑制することができる。
【0022】
本発明の情報記憶素子にあっては、
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる形態とすることができる。そして、この場合、第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値が情報として第3電極から読み出される形態とすることができる。
【0023】
あるいは又、本発明の情報記憶素子にあっては、強磁性材料層の一部に隣接して磁界形成/検出手段が更に設けられており、磁界形成/検出手段に電流を流すことで各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる形態とすることができる。そして、この場合、各磁化領域において生成した磁場が、情報として磁界形成/検出手段によって読み出される形態とすることができる。
【0024】
上記の各種形態を含む本発明の情報記憶素子にあっては、複数の反強磁性領域が離間して配置されている構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第1の構成の情報記憶素子』と呼ぶ場合がある。
【0025】
あるいは又、上記の各種形態を含む本発明の情報記憶素子にあっては、磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度(ブロッキング温度TB)が、各反強磁性領域において異なっている構成とすることができる。そして、この場合、記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第2の構成の情報記憶素子』と呼ぶ場合がある。
【0026】
あるいは又、上記の各種形態を含む本発明の情報記憶素子にあっては、強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が、強磁性材料層の軸線方向に沿って変化している構成とすることができる。そして、この場合、強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が大きい領域と小さな領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられている構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の断面積が大きい領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第3の構成の情報記憶素子』と呼ぶ場合がある。
【0027】
あるいは又、上記の各種形態を含む本発明の情報記憶素子にあっては、強磁性材料層の比抵抗値が強磁性材料層の軸線方向に沿って変化している構成とすることができる。そして、この場合、強磁性材料層の比抵抗値が高い領域と低い領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられている構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の比抵抗値が低い領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第4の構成の情報記憶素子』と呼ぶ場合がある。
【0028】
あるいは又、上記の各種形態を含む本発明の情報記憶素子にあっては、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されている構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第5の構成の情報記憶素子』と呼ぶ場合がある。
【0029】
強磁性材料層の平面形状は帯状(ストライプ状)であればよく、直線状であってもよいし、曲がっていてもよいし、「U」字状等の立体形状とすることもできるし、「Y」字状等に分岐した形状とすることもできる。
【0030】
強磁性材料層(強磁性記録層)と反強磁性領域が磁気的交換結合することで強磁性材料層(強磁性記録層)の磁化方向が固定されるが、即ち、強磁性材料層は反強磁性領域との交換結合によってピニング(pinning)されるが、係る強磁性材料層(強磁性記録層)を構成する材料として、磁壁を少ない電流で動かすためにスピントルク効率のよい材料が好ましく、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)といった強磁性材料、これらの強磁性材料の合金(例えば、Co−Fe、Co−Fe−Ni、Ni−Fe等)、これらの合金に非磁性元素(例えば、タンタル、ホウ素、クロム、白金、シリコン、炭素、窒素、アルミニウム、リン、ニオブ、ジルコニウム等)を混ぜた合金(例えば、Co−Fe−B等)、Co、Fe、Niの内の1種類以上を含む酸化物(例えば、フェライト:Fe−MnO等)、ハーフメタリック強磁性材料と呼ばれる一群の金属間化合物(ホイスラー合金:NiMnSb、Co2MnGe、Co2MnSi、Co2CrAl等)、酸化物(例えば、(La,Sr)MnO3、CrO2、Fe3O4等)を挙げることができる。強磁性材料層の結晶性は、本質的に任意であり、多結晶であってもよいし、単結晶であってもよいし、非晶質であってもよい。また、強磁性材料層は、単層構成とすることもできるし、複数の異なる強磁性材料層を積層した積層構成とすることもできるし、強磁性材料層と非磁性材料層を積層した積層構成とすることもできる。
【0031】
反強磁性領域を構成する材料として、鉄−マンガン合金、ニッケル−マンガン合金、白金−マンガン合金、イリジウム−マンガン合金、ロジウム−マンガン合金、コバルト酸化物、ニッケル酸化物を挙げることができるが、強磁性材料層に効率よく電流を流すために、電気抵抗が高い鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)を基本とした酸化物が一層適している。
【0032】
反強磁性領域を、強磁性材料層の一部に接するように形成してもよいし、強磁性材料層の全面に形成してもよい。前者の構成を採用することで、前述した[C]項を達成することができる。一方、後者の構成を採用する場合、前述した[A]項あるいは[B]項が達成されるように、反強磁性領域や強磁性材料層の構成、構造の適切化を図ればよい。
【0033】
強磁性材料層や反強磁性領域は、例えば、スパッタリング法、イオンビーム堆積法、真空蒸着法に例示される物理的気相成長法(PVD法)、ALD(Atomic Layer Deposition)法に代表される化学的気相成長法(CVD法)にて形成することができる。強磁性材料層、反強磁性領域のパターニングは、反応性イオンエッチング法(RIE法)やイオンミーリング法(イオンビームエッチング法)にて行うことができる。
【0034】
第1電極や第2電極は、Cu、Au、Pt、Ti等の単層構造から成り、あるいは又、CrやTi等から成る下地層と、その上に形成されたCu層、Au層、Pt層等の積層構造を有していてもよい。更には、W、Ru、Ta等の単層あるいはCu、Cr、Ti等との積層構造から構成することもできる。これらの電極は、例えば、スパッタリング法に例示されるPVD法にて形成することができる。
【0035】
第3電極と強磁性材料層とによって、TMR効果あるいはGMR効果を有する一種の情報記録構造体が構成される。ここで、磁化参照層、非磁性体膜及び強磁性材料層によって構成されるTMR効果を有する情報記録構造体とは、磁化参照層と強磁性材料層との間に、トンネル絶縁膜として機能する非磁性体膜が挟まれた構造を指す。ここで、第3電極を構成する磁化参照層を構成する材料として、上述した強磁性材料層を構成する材料を挙げることができるし、積層フェリ構造[反強磁性的結合を有する積層構造であり、合成反強磁性結合(SAF:Synthetic Antiferromagnet)とも呼ばれる]を有する構成とすることができるし、静磁結合構造を有する構成とすることができる。積層フェリ構造とは、例えば、磁性材料層/ルテニウム(Ru)層/磁性材料層の3層構造(具体的には、例えば、CoFe/Ru/CoFeの3層構造、CoFeB/Ru/CoFeBの3層構造)を有し、ルテニウム層の厚さによって、2つの磁性材料層の層間交換結合が、反強磁性的あるいは強磁性的になる構造を指し、例えば、 S. S. Parkin et. al, Physical Review Letters, 7 May, pp 2304-2307 (1990) に報告されている。尚、2つの磁性材料層の層間交換結合が反強磁性的になる構造を、積層フェリ構造と呼ぶ。また、2つの磁性材料層において、磁性材料層の端面からの漏洩磁界によって反強磁性的結合が得られる構造を、静磁結合構造と呼ぶ。第3電極を構成する非磁性体膜を構成する材料として、マグネシウム酸化物(MgO)、マグネシウム窒化物、アルミニウム酸化物(AlOX)、アルミニウム窒化物(AlN)、シリコン酸化物、シリコン窒化物、TiO2あるいはCr2O3、Ge、NiO、CdOX、HfO2、Ta2O5、BN、ZnS等の絶縁材料を挙げることができる。一方、GMR効果を有する情報記録構造体を構成する非磁性体膜を構成する材料として、Cu、Ru、Cr、Au、Ag、Pt、Ta等、あるいは、これらの合金といった導電性材料を挙げることができるし、導電性が高ければ(抵抗率が数百μΩ・cm以下)、任意の非金属材料としてもよいが、強磁性材料層や磁化参照層と界面反応を起こし難い材料を、適宜、選択することが望ましい。
【0036】
絶縁材料から成る非磁性体膜は、例えば、スパッタリング法にて形成された金属膜を酸化若しくは窒化することにより得ることができる。より具体的には、非磁性体膜を構成する絶縁材料としてアルミニウム酸化物(AlOX)、マグネシウム酸化物(MgO)を用いる場合、例えば、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを大気中で酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムをプラズマ酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムをIPCプラズマで酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素中で自然酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素ラジカルで酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素中で自然酸化させるときに紫外線を照射する方法、アルミニウムやマグネシウムを反応性スパッタリング法にて成膜する方法、アルミニウム酸化物(AlOX)やマグネシウム酸化物(MgO)をスパッタリング法にて成膜する方法を例示することができる。
【0037】
以上の説明を纏めると、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)に温度分布を生じさせるためには、
[1]強磁性材料層(強磁性記録層)の断面積(幅及び/又は厚さ)を変化させてもよいし、
[2]強磁性材料層(強磁性記録層)に、例えば、不純物をイオン注入することで、強磁性材料層(強磁性記録層)の比抵抗値を変化させてもよいし、
[3]温度制御手段を強磁性材料層近傍に配置してもよいし、
[4]強磁性材料層の周囲の熱伝導を変化させてもよい。
このように温度分布を生じさせることで、反強磁性領域毎に、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合の消滅あるいは低下の制御を行うことができる。また、温度分布を生じさせなくとも、
[5]反強磁性領域を離間して配置する、
ことでも、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合の制御を行うことができるし、
[6]反強磁性領域の組成や構造を変化させて、ブロッキング温度を変化させる、
ことでも、反強磁性領域毎に、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合の消滅あるいは低下の制御を行うことができる。
【実施例1】
【0038】
実施例1は、本発明の情報記憶素子、及び、本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法に関し、具体的には、第1の構成の情報記憶素子、及び、第1の構成の情報書込み・読出し方法に関する。
【0039】
図1の(A)に模式的な部分的平面図を示し、図1の(B)に模式的な一部断面図を示すように、実施例1の情報記憶素子100は、帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)111を備えており、強磁性材料層111の一端には第1電極121が設けられており、強磁性材料層111の他端には第2電極122が設けられている。そして、実施例1の情報記憶素子100にあっては、第1電極121と第2電極122との間に電流を流すことで生じるスピントルクに起因した電流誘起磁壁移動が生じる。第1電極121と第2電極122との間に流す電流を、『磁壁駆動電流』と呼ぶ。また、強磁性材料層111において、磁化領域112に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出される。更には、強磁性材料層111の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域130が設けられている。参照番号113は、磁化領域112と磁化領域112の境界(界面)である磁壁を示す。強磁性材料層111の磁化容易軸は、強磁性材料層111の軸線と平行である。図1の(A)にあっては、層間絶縁層114の図示を省略している。また、参照番号124,125は、層間絶縁層114上に形成され、第1電極121及び第2電極122に接続された配線を指す。図1の(A)及び(B)に示した情報記憶素子100にあっては、強磁性材料層111の上方に第1電極121、第2電極122を設け、強磁性材料層111の下方に第3電極123を設けたが、これとは逆に、強磁性材料層111の下方に第1電極121、第2電極122を設け、強磁性材料層111の上方に第3電極123を設けてもよい。
【0040】
ここで、実施例1の情報記憶素子100にあっては、複数の反強磁性領域130が離間して配置されている。更には、記憶する情報のビット数をN(実施例1にあっては、例えば、N=16)としたとき、反強磁性領域130の数はN以上(実施例1にあっては、具体的には16)である。即ち、実施例1にあっては、上述した[C]項の方策を採用している。
【0041】
実施例1の情報記憶素子100は、強磁性材料層111の一部に接して設けられた第3電極123を更に備えている。第3電極123は、強磁性材料層111を挟んで、第2電極122と対向して配置されている。ここで、第3電極123は、強磁性材料層111の一部に接した非磁性体膜123A、及び、その上に(図示した状態では、その下であるが)形成された磁化参照層123Bから構成されている。磁化参照層123Bは、磁化領域112に記録する磁化の方向を決めるための基準磁化層として機能する。そして、第2電極121と第3電極123との間に電流を流すことで、各磁化領域112に磁化状態が情報として書き込まれる。また、第2電極121と第3電極123との間に電流を流すことで、各磁化領域112における電気抵抗値(電気抵抗値の高低)が情報として第3電極123から読み出される。第3電極123と強磁性材料層111とによって、GMR効果を有する一種の情報記録構造体が構成され、電流によるスピン注入磁化反転によって磁化領域112が形成され、磁壁113が生じ、強磁性材料層111に情報が書き込まれる。即ち、強磁性材料層111においては、電流の流れる方向により、その磁化の方向が、磁化参照層123Bに対して平行又は反平行に変えられる。
【0042】
実施例1にあっては、強磁性材料層111は、厚さ3nm、幅1μmの直線状のNi−Fe合金層から成り、反強磁性領域130は、厚さ0.2μmのNiOから成る。また、第3電極123を構成する非磁性体膜123Aは、厚さ1nmのCuから成り、磁化参照層123Bは、CoFe:1nm/Ru:0.8nm/CoFe:1nm/PtMn:30nm/Ta:5nmの積層膜から成る。第1電極121及び第2電極122はチタン層から構成されており、例えば、第1電極121は駆動電源(図示せず)に接続され、第2電極122は接地されている。尚、第3電極123と強磁性材料層111とによって、TMR効果を有する一種の情報記録構造体を構成してもよく、この場合には、非磁性体膜123Aを、例えば、MgOから構成すればよい。
【0043】
以下、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を、情報記憶素子100の概念図である図2の(A)〜図2の(F)、図3の(A)〜(E)を参照して説明する。ここで、実施例1の情報書込み・読出し方法にあっては、磁壁の移動時、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させる。実施例1の情報書込み・読出し方法は、所謂シーケンシャル方式である。
【0044】
図2の(A)〜(F)、図3の(A)〜(E)において、強磁性材料層111内部に描いた矢印は、磁化の方向を示し、便宜上、右向きの矢印を情報「0」とし、左向きの矢印を情報「1」とする。また、第3電極123に描いた矢印は、磁化参照層123Bにおける磁化の方向を示す。そして、第3電極123から第2電極122に電流を流すことで、情報「0」(右向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。一方、第2電極122から第3電極123に電流を流すことで、情報「1」(左向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。また、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間に交換結合が存在する状態を、図2及び図3においては、強磁性材料層111の一部に斜線を付すことで示している。
【0045】
ここで、図2の(A)に示す状態にあっては、強磁性材料層111に、既に4つの情報(1,1,1,1)が書き込まれているとする。この状態にあっては、強磁性材料層111に4つの磁化領域112が形成されているとみなせる。
【0046】
さて、次に、強磁性材料層111に情報「0」を書き込むことを想定する。この場合、図2の(B)に示すように、第3電極123に電圧+VWを印加して、第3電極123から第2電極122へと電流を流す。これによって、情報「0」(右向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。
【0047】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図2の(C)に示すように、第1電極121に電圧+Vmを印加し、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流す。これによって、図2の(D)に示すように、強磁性材料層111の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合が消滅あるいは低下する。しかも、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流すことによって、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく。つまり、磁壁が右に移動していく。ここで、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合が消滅あるいは低下しているので、磁壁113の移動は容易である。強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合の消滅あるいは低下が生じ、磁壁113が移動しても、強磁性材料層111に書き込まれた情報に変化は生じない。
【0048】
次いで、磁壁113が反強磁性領域130に接した部分を超えたとき、図2の(E)に示すように、第3電極123から第2電極122に電流を流すことを停止する。併せて、図2の(F)に示すように、磁壁駆動電流を流すことを停止するか、磁壁駆動電流の値を減少させる。磁壁駆動電流の値がある程度まで低下すると、強磁性材料層111の温度が低下し、反強磁性領域130による結合が回復し、各磁壁113は反強磁性領域130に接した部分の手前で停止する。こうして、1つの情報が、強磁性材料層111に書き込まれる。
【0049】
その後、強磁性材料層111に情報「1」を書き込むことを想定する。この場合、図3の(A)に示すように、第3電極123に電圧−VWを印加して、第2電極122から第3電極123へと電流を流す。これによって、情報「1」(左向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。
【0050】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図3の(B)に示すように、第1電極121に電圧+Vmを印加し、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流す。これによって、前述したと同様に、生成したジュール熱によって、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合が消滅あるいは低下し、しかも、電流誘起磁壁移動が生じる(図3の(C)参照)。
【0051】
次いで、図3の(D)に示すように、第3電極123から第2電極122に電流を流すことを停止する。併せて、図3の(E)に示すように、磁壁駆動電流を流すことを停止するか、磁壁駆動電流の値を減少させる。こうして、1つの情報が、強磁性材料層111に書き込まれる。この状態にあっては、強磁性材料層111には、6つの情報(1,1,1,1,0,1)が書き込まれているが、図3の(E)には最初の2つの情報は図示していない。第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流すことで磁壁113を移動させながら、強磁性材料層111に情報を、順次、書き込んでもよい。
【0052】
強磁性材料層111に書き込まれた情報を読み出す場合には、第2電極122から第1電極121へと磁壁駆動電流を流す。これによってジュール熱が生成し、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合が消滅あるいは低下する。併せて、磁壁113が移動する。次いで、第2電極122から第1電極121に磁壁駆動電流を流すことを停止することで、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合を回復させ、且つ、磁化領域112の移動を停止させる。そして、第3電極123から第2電極122に電流を流し、磁化領域112の電気抵抗値の高低を調べることで、書き込まれた情報が「0」であるか「1」であるかを判別することができる。ここで、強磁性材料層111と磁化参照層123Bの磁化方向が等しい場合、低抵抗となり、強磁性材料層111と磁化参照層123Bの磁化方向が反平行の場合、高抵抗となる。第2電極122から第1電極121へと磁壁駆動電流を流すことで磁壁113を移動させながら、強磁性材料層111に書き込まれた情報を、順次、読み出してもよい。
【0053】
以下、基板等の模式的な一部断面図である図4の(A)〜(D)を参照して、実施例1の情報記憶素子100の製造方法の概要を説明する。
【0054】
[工程−100]
先ず、シリコン半導体基板から成る基板110に第3電極123を形成する。第3電極123を基板110上に形成してもよいが、磁壁113の移動を妨げないように、基板110と第3電極123との段差は少ない方がよく、そのためには、基板110に埋め込まれた第3電極123を形成することが望ましい。具体的には、基板110にリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき溝部を形成する。そして、全面に、スパッタリング法に基づき磁化参照層123B、非磁性体膜123Aを形成する。次いで、基板110の表面の非磁性体膜123A及び磁化参照層123Bを例えばCMP法で除去することで、非磁性体膜123A及び磁化参照層123Bを溝部内に残す。こうして、図4の(A)に示すように、基板110に第3電極123を形成することができる。磁化参照層123Bは、基板110に設けられた配線(図示せず)を介して、情報書込み・読出し電源(図示せず)に接続されている。
【0055】
[工程−110]
次いで、全面に、スパッタリング法に基づき強磁性材料層を形成した後、強磁性材料層をパターニングすることで、帯状の強磁性材料層111を得る(図4の(B)参照)。強磁性材料層111のパターニングは、イオンミーリング法や反応性エッチング法等に基づき行うことができるし、リフトオフ法を採用してもよい。
【0056】
[工程−120]
その後、離間して配置された反強磁性領域130を形成する。具体的には、スパッタリング法にて全面に反強磁性材料層を形成した後、イオンミーリング法や反応性エッチング法等に基づき反強磁性材料層をパターニングすることで、離間して配置された反強磁性領域130を得ることができる(図4の(C)参照)。強磁性材料層及び反強磁性材料層を形成した後、反強磁性材料層をパターニングし、更に、強磁性材料層をパターニングしてもよい。
【0057】
[工程−130]
次いで、帯状の強磁性材料層111の両端に、周知の方法で第1電極121及び第2電極122を形成する(図4の(D)参照)。そして、全面に絶縁材料から成る層間絶縁層114を、例えば、CVD法に基づき形成する。その後、第1電極121及び第2電極122の上方の層間絶縁層114の部分に開口部を形成し、開口部内を含む層間絶縁層114上に配線124,125を形成する。こうして、図1の(A)及び(B)に示した実施例1の情報記憶素子100を完成させることができる。尚、層間絶縁層を構成する材料として、SiO2、NSG(ノンドープ・シリケート・ガラス)、BPSG(ホウ素・リン・シリケート・ガラス)、PSG、BSG、AsSG、SbSG、SOG(スピンオングラス)等のSiOX系材料(シリコン系酸化膜を構成する材料)、SiN、SiON、SiOC、SiOF、SiCN、低誘電率絶縁材料(例えば、フルオロカーボン、シクロパーフルオロカーボンポリマー、ベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、アモルファス・テトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG、パリレン、フッ化フラーレン)、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、Silk(The Dow Chemical Co. の商標であり、塗布型低誘電率層間絶縁膜材料)、Flare(Honeywell Electronic Materials Co. の商標であり、ポリアリルエーテル(PAE)系材料)を例示することができる。
【0058】
実施例1の情報記憶素子100にあっては、室温においては反強磁性領域130によって強磁性材料層111の磁化方向が固定されているため、長期間に亙り確実に情報を保持することができる。また、情報の書込みあるいは読出し時、強磁性材料層と反強磁性領域の交換結合を消滅あるいは低下させることで、容易に磁壁を移動させることができるので、強磁性材料層内において磁壁が長い距離を移動したときでも、情報誤りを起こし易くなるといった問題の発生を確実に回避することができる。そして、以上の結果として、本発明によれば、安定して情報を保持しながら、確実に情報の記録、読出しを行うことができ、1つの連続した磁性体素子に多数の情報が記録可能となり、小型、軽量、且つ、安価な情報記憶装置を実現することができる。
【実施例2】
【0059】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2の情報記憶素子200の模式的な部分的平面図を図5の(A)に示し、模式的な一部断面図を図5の(B)に示す。図5の(A)に示す例では、4つの情報記憶素子200が並置して設けられている。ここで、実施例2の情報記憶素子200、あるいは、後述する各実施例の情報記憶素子を構成する構成要素の参照番号における下2桁の数字と、実施例1の情報記憶素子100を構成する構成要素の参照番号における下2桁の数字が同じである構成要素は、同じ構成要素である。図5の(A)にあっては、層間絶縁層214の図示を省略している。また、図5の(A)、後述する図7の(A)、図8の(A)においては、反強磁性領域230、絶縁膜232、第1電極221、第2電極222、第3電極223を明示するために、これらに斜線を付している。
【0060】
実施例2の情報記憶素子200にあっては、反強磁性領域230が基板210に形成されている。また、第2電極222と第3電極223とが、強磁性材料層211の同じ側に配置されている。具体的には、基板210上に形成された強磁性材料層211の上に、第1電極221、第2電極222及び第3電極223が設けられている。
【0061】
以下、基板等の模式的な部分的平面図及び模式的な一部端面図である図6の(A)、(B)、図7の(A)、(B)、図8の(A)、(B)を参照して、実施例2の情報記憶素子200の製造方法の概要を説明する。
【0062】
[工程−200]
先ず、シリコン半導体基板から成る基板210に、離間して配置された反強磁性領域230を形成する。具体的には、シリコン半導体基板から成る基板210に、断面形状が「V」字状の溝部231をリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき形成する(図6の(A)及び(B)参照)。溝部231の幅を1μm、ピッチを1.5μm、深さを約0.5μmとし、1つの情報記憶素子200当たりの溝部の数を8本とした。次いで、全面に、スパッタリング法にて、厚さ0.2μmのNiOから成る反強磁性材料層、及び、厚さ0.5μmのSiO2から成る絶縁膜232を形成した後、基板210の表面の上の反強磁性材料層及び絶縁膜232をCMP法に基づき除去し、溝部231内に反強磁性材料層230A及び絶縁膜232を残す。こうして、基板210に離間して配置された16箇所の反強磁性領域230を形成することができる(図7の(A)及び(B)参照)。
【0063】
[工程−210]
その後、実施例1の[工程−110]と同様にして、全面にスパッタリング法に基づき強磁性材料層を形成した後、強磁性材料層をパターニングすることで、幅0.15μm、長さ30μmの帯状の強磁性材料層211を得る(図8の(A)及び(B)参照)。
【0064】
[工程−220]
次に、第3電極223を設けるために、全面にスパッタリング法に基づき非磁性体膜223A及び磁化参照層223Bを形成した後、周知の方法に基づき、磁化参照層223B上にTiから成る配線(図示せず)を設け、併せて、第1電極兼配線221及び第2電極兼配線222を形成する。その後、露出した磁化参照層223B、及び、非磁性体膜223Aを周知の方法でパターニングする。次いで、全面に絶縁材料から成る層間絶縁層214を、例えば、CVD法に基づき形成する。こうして、図5の(A)及び(B)に示した実施例2の情報記憶素子200を完成させることができる。
【0065】
こうして得られた実施例2の情報記憶素子200において、第1電極221と第2電極222との間の電気抵抗値は1.3kΩ、第2電極222と第3電極223との間の電気抵抗値は300Ωであった。
【0066】
第2電極222を接地して、第3電極223に振幅±1ボルトで周期trの矩形波電圧を加えながら、第1電極221に電圧+Vm、時間長16trの一定電圧を印加して、強磁性材料層211に16ビットの情報(「0」及び「1」の交互の情報から成る)を書き込んだ。次いで、情報の読み出しのために、第1電極221に電圧−Vmを印加した。そして、第3電極223と第2電極222との間で測定された抵抗値が何回変化したかにより、磁壁の数を測定した。そして、この測定を繰り返し行い、記録された磁壁数(具体的には16)に対する再生された磁壁数の割合(磁壁再生率)を求めた。磁壁再生率が「0」のときには磁壁が全く再生されていない状態を示し、磁壁再生率が「1」のときは記録した磁壁と同じ数の磁壁が再生されていることを示す。
【0067】
図9の(A)に、第1電極221への印加電圧+Vmにおいて周期trに対する磁壁再生率を示す。比較例として、[工程−200]を省き、反強磁性領域230を形成しない情報記憶素子を作製し、同様の測定を行った。その結果を図9の(B)に示す。図9の(A)から、第1電極221への印加電圧+Vm及び周期trを最適化することで、磁壁再生率「1」を達成することができることが判る。一方、図9の(B)から、反強磁性領域230を形成しない場合、磁壁が適切に固定されないため、磁壁再生率は「1」に達することがなかった。
【0068】
更には、図10の(A)に示すように、第1電極221に印加する電圧を変調した。具体的には、第1電極221に電圧+Vm及び電圧+Vsを交互に印加した。ここで、第1電極221に印加する電圧+Vmの値を2.5ボルト、3.0ボルト、3.5ボルト、4.0ボルトとし、電圧+Vmを印加する時間幅を2n秒とした。また、電圧+Vsの値を1.5ボルトとした。更には、1周期trに1つの電圧+Vmのパルスを印加した。このときの磁壁再生率の測定結果を図10の(B)に示す。電圧+Vmが3.0ボルト以上であって、周期trが15n秒以上の条件で、安定な動作が実現できることが判った。即ち、電流誘起磁壁移動を生じさせるために強磁性材料層211に流す電流を規則的に変調することで、磁壁の移動速度を一定に保ち、情報の書込みあるいは読出し中に磁化情報が消滅あるいは変化することを一層確実に抑制することができる。第1電極221から第2電極222へと磁壁駆動電流を流す際の磁壁駆動電流の変調、あるいは、第2電極222から第1電極221へと磁壁駆動電流を流す際の磁壁駆動電流の変調は、電圧変調でもよいし、パルス幅を変えたパルス幅変調でもよいし、これらの組み合わせとすることもできる。以下の実施例においても同様である。
【実施例3】
【0069】
実施例3も実施例1の変形であるが、第2の構成の情報記憶素子、及び、第2の構成の情報書込み・読出し方法に関し、強磁性材料層の軸線方向に沿って、反強磁性領域のブロッキング温度TBを変化させる(前述した[B]項)。
【0070】
図11の(A)に模式的な部分的平面図を示し、図11の(B)に模式的な一部断面図を示すように、実施例3にあっては、各反強磁性領域330の組成が異なっており、磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度(ブロッキング温度TB)が、各反強磁性領域330において異なっている。記憶する情報のビット数をNとしたとき、高いブロッキング温度TBを有する反強磁性領域330Hの数はN以上(実施例3にあってはNであり、具体的には、N=16)である。ブロッキング温度TBが異なる反強磁性領域330は、2つの群に分けられている。そして、ブロッキング温度TBが高い反強磁性領域330Hとブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lが、交互に配置さえれている。図11の(A)にあっては、層間絶縁層314の図示を省略している。また、図11の(B)にあっては、高いブロッキング温度TBを有する反強磁性領域330Hには千鳥状のハッチングを付している。このように、磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度(ブロッキング温度TB)を各反強磁性領域330において異ならせることで、強磁性材料層311に磁壁駆動電流を流し、強磁性材料層311及び反強磁性領域330を温度T0としたとき、反強磁性領域330Hのブロッキング温度TBが温度T0より高い場合には、係る反強磁性領域330Hとこの反強磁性領域330Hに接した強磁性材料層311の部分との間の交換結合は消滅しない。一方、反強磁性領域330Lのブロッキング温度TBが温度T0より低い場合には、係る反強磁性領域330Lとこの反強磁性領域330Lに接した強磁性材料層311の部分との間の交換結合が消滅する。従って、ブロッキング温度TBを各反強磁性領域330において異ならせることで、反強磁性領域330と強磁性材料層311の温度に依存して、反強磁性領域330と強磁性材料層311との間の交換結合の消滅状態や低下状態を制御することができる。実施例3にあっては、高いブロッキング温度TBを有する反強磁性領域330Hにおけるブロッキング温度TBを200゜C乃至250゜Cとし、低いブロッキング温度TBを有する反強磁性領域330Lにおけるブロッキング温度TBを室温以下とした。このようにブロッキング温度TBに変化をつけるには、各反強磁性領域330に対して酸素イオンをイオン注入するときの注入量を変えればよい。尚、各反強磁性領域330の厚さを異ならせるといった反強磁性領域330の構造を異ならせることでも、各反強磁性領域330のブロッキング温度TBを異ならせることができる。
【0071】
実施例3にあっては、反強磁性領域330は、強磁性材料層311の全面を覆うように形成されている。
【0072】
実施例3において、第1電極321から第2電極322へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極322から第1電極321へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層311の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層311及び反強磁性領域330の温度が上昇する。ここで、ブロッキング温度TBが高い反強磁性領域330Hにあっては、強磁性材料層311と反強磁性領域330との間の交換結合の消滅あるいは低下が生じない一方、ブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lにあっては、強磁性材料層311と反強磁性領域330との間の交換結合の消滅あるいは低下が生じるような状態が達成されるように、ブロッキング温度TBの設計、磁壁駆動電流の設定を行う。これによって、ブロッキング温度TBが高い反強磁性領域330Hにあっては、強磁性材料層311と反強磁性領域330との間の交換結合の消滅あるいは低下が生じない。一方、ブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lにあっては、強磁性材料層311と反強磁性領域330との間の交換結合の消滅あるいは低下が生じる。ここで、移動開始前にブロッキング温度TBが高い反強磁性領域330Hの下方に位置する強磁性材料層311の部分に位置していた磁壁は、磁壁駆動電流を流すと移動を開始し、ブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lの下方に位置する強磁性材料層311の部分を速やかに通過する。ブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lの下方に位置する強磁性材料層311の部分を磁壁が通過中、あるいは、通過が完了した時点で、磁壁駆動電流を流すことを停止すると、あるいは又、磁壁駆動電流の値を低減すると、ブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lの下方に位置する強磁性材料層311の部分にあっては、強磁性材料層311と反強磁性領域330との間の交換結合が直ちに再び生じる。それ故、磁壁の移動を、ブロッキング温度TBが高い反強磁性領域330Hの下方に位置する強磁性材料層311の部分において確実に停止させることができる。
【0073】
尚、実施例3にあっても、実施例2と同様に、基板側から、反強磁性領域330、強磁性材料層311が、この順に形成された構成、構造とすることもできる。後述する実施例4、実施例5、実施例6においても同様とすることができる。また、実施例3、あるいは、後述する実施例4、実施例5、実施例6にあっては、第3電極を強磁性材料層の下に位置する基板の部分に設け、第1電極及び第2電極を強磁性材料層上に設けたが、第1電極、第2電極、第3電極の配置を、実施例1あるいは実施例2と同様とすることもできる。後述する実施例4、実施例5、実施例6においても同様とすることができる。
【実施例4】
【0074】
実施例4も実施例1の変形であるが、第3の構成の情報記憶素子、及び、第3の構成の情報書込み・読出し方法に関し、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせる(前述した[A]項)。
【0075】
図12の(A)に模式的な部分的平面図を示し、図12の(B)に模式的な一部断面図を示すように、実施例4にあっては、強磁性材料層411の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層411を切断したときの強磁性材料層411の断面積が、強磁性材料層411の軸線方向に沿って変化している。より具体的には、強磁性材料層411の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層411を切断したときの強磁性材料層411の断面積が大きい領域411Lと小さな領域411Sが、強磁性材料層411の軸線方向に沿って交互に設けられている。そして、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の断面積が大きい領域の数はN以上(実施例4にあってはNであり、具体的には、N=16)である。断面積が異なる強磁性材料層411の領域は、2つの群に分けられている。このように、強磁性材料層411の断面積を強磁性材料層411の軸線方向に沿って変化させることで、強磁性材料層411に磁壁駆動電流を流したとき、強磁性材料層411の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)411の温度の上昇に分布を生じさせることができる。図12の(A)にあっては、層間絶縁層414の図示を省略している。
【0076】
実施例4にあっては、反強磁性領域430は、強磁性材料層411の全面を覆うように形成されている。
【0077】
実施例4において、第1電極421から第2電極422へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極422から第1電極421へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層411の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層411及び反強磁性領域430の温度が上昇する。ここで、強磁性材料層411の断面積が大きい領域411Lにおける温度上昇ΔTLは、小さな領域411Sにおける温度上昇ΔTSよりも少ない。従って、強磁性材料層411の断面積が小さな領域411Sにおいては、大きい領域411Lよりも、強磁性材料層411と反強磁性領域430との間の交換結合の消滅あるいは低下が、確実に生じる。ここで、移動開始前に強磁性材料層411の断面積が大きい領域411Lに位置していた磁壁は、磁壁駆動電流を流すと移動を開始し、強磁性材料層411の断面積が小さな領域411Sを速やかに通過する。強磁性材料層411の断面積が小さな領域411Sを磁壁が通過中、あるいは、通過が完了した時点で、磁壁駆動電流を流すことを停止すると、あるいは又、磁壁駆動電流の値を低減すると、強磁性材料層411の断面積が大きい領域411Lにあっては、その温度が直ちに低下し、強磁性材料層411と反強磁性領域430との間の交換結合が再び生じる。それ故、磁壁の移動を、強磁性材料層411の断面積が大きい領域411Lにおいて確実に停止させることができる。
【実施例5】
【0078】
実施例5も実施例1の変形であるが、第4の構成の情報記憶素子、及び、第4の構成の情報書込み・読出し方法に関し、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせる(前述した[A]項)。
【0079】
図13の(A)に模式的な部分的平面図を示し、図13の(B)に模式的な一部断面図を示すように、実施例5にあっては、強磁性材料層511の比抵抗値が強磁性材料層511の軸線方向に沿って変化している。より具体的には、強磁性材料層511の比抵抗値が高い領域511Hと低い領域511Lが、強磁性材料層511の軸線方向に沿って交互に設けられている。図13の(A)にあっては、層間絶縁層514の図示を省略している。また、図13の(B)にあっては、比抵抗値が高い領域511Hには千鳥状のハッチングを付している。そして、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層511の比抵抗値が低い領域511Lの数はN以上(実施例5にあってはNであり、具体的には、N=16)である。比抵抗値が異なる強磁性材料層511の領域は、2つの群に分けられている。このように、強磁性材料層511の比抵抗値を強磁性材料層511の軸線方向に沿って変化させることで、強磁性材料層511に磁壁駆動電流を流したとき、強磁性材料層511の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)511の温度の上昇に分布を生じさせることができる。強磁性材料層511の比抵抗値が高い領域511Hと低い領域511Lの形成は、強磁性材料層511に、窒素イオンや酸素イオンを注入することで行うことができる。
【0080】
実施例5にあっても、反強磁性領域530は、強磁性材料層511の全面を覆うように形成されている。
【0081】
実施例5において、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極522から第1電極521へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層511の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層511及び反強磁性領域530の温度が上昇する。ここで、強磁性材料層511の比抵抗値が低い領域511Lにおける温度上昇ΔTLは、比抵抗値が高い領域511Hにおける温度上昇ΔTHよりも少ない。従って、強磁性材料層511の比抵抗値が高い領域511Hにおいては、比抵抗値が低い領域511Lよりも、強磁性材料層511と反強磁性領域530との間の交換結合の消滅あるいは低下が、確実に生じる。ここで、移動開始前に強磁性材料層511の比抵抗値が低い領域511Lに位置していた磁壁は、磁壁駆動電流を流すと移動を開始し、強磁性材料層511の比抵抗値が高い領域511Hを速やかに通過する。強磁性材料層511の比抵抗値が高い領域511Hを磁壁が通過中、あるいは、通過が完了した時点で、磁壁駆動電流を流すことを停止すると、あるいは又、磁壁駆動電流の値を低減すると、強磁性材料層511の比抵抗値が低い領域511Lにあっては、その温度が直ちに低下し、強磁性材料層511と反強磁性領域530との間の交換結合が再び生じる。それ故、磁壁の移動を、強磁性材料層511の比抵抗値が低い領域511Lにおいて確実に停止させることができる。
【実施例6】
【0082】
実施例6も実施例1の変形であるが、第5の構成の情報記憶素子、及び、第5の構成の情報書込み・読出し方法に関し、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせる(前述した[A]項)。
【0083】
実施例6にあっては、強磁性材料層611の軸線方向に沿って強磁性材料層611の温度を変化させる温度制御手段640が、強磁性材料層611の近傍に配置されている。このように、温度制御手段640を設けることで、強磁性材料層611の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)611の温度の上昇に分布を生じさせることができる。
【0084】
図14に模式的な一部断面図を示すように、実施例6において、温度制御手段640は、強磁性材料層611を取り囲む領域の熱伝導率を変化させるための、一種のヒートシンクから成る。具体的には、強磁性材料層611を覆う反強磁性領域630の上には層間絶縁層614が設けられている。そして、強磁性材料層611の一部の上方の層間絶縁層614の部分には凹部が設けられており、凹部を含む層間絶縁層614の上には、強磁性材料層611と平行に、帯状に銅(Cu)層から成る温度制御手段640が形成されている。強磁性材料層611の部分(領域)611Lにおける温度制御手段640の底面から反強磁性領域630までの距離は、強磁性材料層611の部分(領域)611Sにおける温度制御手段640の底面から反強磁性領域630までの距離よりも長い。このように、強磁性材料層611の軸線方向に沿って強磁性材料層611の温度を変化させるが、温度の異なる強磁性材料層611の領域は、2つの群に分けられている。図14にあっては、領域611Sには千鳥状のハッチングを付している。
【0085】
実施例6にあっても、第1電極621から第2電極622へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極622から第1電極621へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層611の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層611及び反強磁性領域630の温度が上昇する。ここで、強磁性材料層の領域611Sにおける温度上昇ΔTSは、領域611Lにおける温度上昇ΔTLよりも少ない。従って、強磁性材料層611の領域611Lにおいては、領域611Sよりも、強磁性材料層611と反強磁性領域630との間の交換結合の消滅あるいは低下が、確実に生じる。ここで、移動開始前に強磁性材料層の領域611Sに位置していた磁壁は、磁壁駆動電流を流すと移動を開始し、強磁性材料層611の領域611Lを速やかに通過する。強磁性材料層611の領域611Lを磁壁が通過中、あるいは、通過が完了した時点で、磁壁駆動電流を流すことを停止すると、あるいは又、磁壁駆動電流の値を低減すると、強磁性材料層611の領域611Sにあっては、その温度が直ちに低下し、強磁性材料層611と反強磁性領域630との間の交換結合が再び生じる。それ故、磁壁の移動を、強磁性材料層611の領域611Sにおいて確実に停止させることができる。温度制御手段640として、一種のヒートシンクを設ける代わりに、ヒータを設けてもよい。
【0086】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが,本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した情報記憶素子の構成や構造、構成材料、製造方法等は例示であり、適宜、変更することができる。強磁性材料層(強磁性記録層)への情報の書込みあるいは読出しとして、代替的に、電流によって形成された磁界に基づき情報が書き込まれ、強磁性材料層における磁界の方向を検出することで情報が読み出される形態とすることもできる。ここで、この場合には、例えば、磁界形成/検出手段として、具体的には、磁界を生成させるコイルや配線を挙げることができる。
【0087】
実施例1の情報記憶素子の変形例を図15に模式的な一部断面図を示すように、情報記憶素子700における帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)711を、例えば、「U」字状の立体形状とすることもできる。係る情報記憶素子700は、例えば、以下の方法で製造することができる。即ち、シリコン半導体基板から成る基板710に、非磁性体膜723A及び磁化参照層723Bの積層構造を有する第3電極723を形成した後、基板710上に、層間絶縁層715及び反強磁性材料層730Aが、多段に積層された積層構造体を形成する。次いで、第3電極723の上方の積層構造体に開口部を形成し、係る開口部内に強磁性材料層711を形成し、強磁性材料層711上に絶縁膜732を形成し、開口部の底部に位置する絶縁膜732の部分、積層構造体の頂面上の絶縁膜732の一部分を除去する。その後、開口部内を第2電極722で埋め込み、更には、積層構造体の頂面上に露出した強磁性材料層711上に第1電極721を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1の(A)及び(B)は、実施例1の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図2】図2の(A)〜(F)は、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図である。
【図3】図3の(A)〜(E)は、図2の(F)に引き続き、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図である。
【図4】図4の(A)〜(D)は、実施例1の情報記憶素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。
【図5】図5の(A)及び(B)は、実施例2の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図6】図6の(A)及び(B)は、実施例2の情報記憶素子の製造方法を説明するための部分的な平面図、及び、基板等の模式的な一部断面図である。
【図7】図7の(A)及び(B)は、図6の(A)及び(B)に引き続き、実施例2の情報記憶素子の製造方法を説明するための部分的な平面図、及び、基板等の模式的な一部断面図である。
【図8】図8の(A)及び(B)は、図7の(A)及び(B)に引き続き、実施例2の情報記憶素子の製造方法を説明するための部分的な平面図、及び、基板等の模式的な一部断面図である。
【図9】図9の(A)は、実施例2の情報記憶素子の第1電極へ+Vm、周期trの電圧を印加したときの磁壁再生率を示すグラフであり、図9の(B)は、比較例の情報記憶素子の第1電極へ+Vm、周期trの電圧を印加したときの磁壁再生率を示すグラフである。
【図10】図10の(A)は、実施例2の情報記憶素子の第1電極に印加する電圧の変調例を示し、図10の(B)は、そのときの磁壁再生率の測定結果を示すグラフである。
【図11】図11の(A)及び(B)は、実施例3の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図12】図12の(A)及び(B)は、実施例4の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図13】図13の(A)及び(B)は、実施例5の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図14】図14は、実施例6の情報記憶素子の模式的な一部断面図である。
【図15】図15は、実施例1の情報記憶素子の変形例の模式的な一部断面図である。
【符号の説明】
【0089】
100,200,300,400,500,600,700・・・情報記憶素子、110,210,310,410,510,610,710・・・基板、111,211,311,411,511,611,711・・・強磁性材料層(強磁性記録層)、112・・・磁化領域、113・・・磁壁、114,214,313,414,514,614,715・・・層間絶縁層、121,221,321,421,521,621,721・・・第1電極、122,222,322,422,522,622,722・・・第2電極、123,223,323,423,523,623,723・・・第3電極、123A,223A,323A,423A,523A,623A,723A・・・非磁性体膜、123B,223B,323B,423B,523B,623B,723B・・・磁化参照層、124,125・・・配線、130,230,330,430,530,630,730・・・反強磁性領域、230A・・・反強磁性材料層、231・・・溝部、232,732・・・絶縁膜、640・・・温度制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報機器においては、現在、外部記憶装置として、ハードディスクドライブが広く用いられている。しかしながら、ハードディスクドライブは回転機構を伴うため、小型化や省電力化が難しい。そこで、小型機器用の外部記憶装置として、フラッシュメモリを用いたシリコンディスクドライブ(SSD)が用いられ始めているが、価格が高く、記憶容量も十分ではない。それ故、大記憶容量で、不揮発性、且つ、高速の情報書込み・読出しが可能な記憶装置が強く望まれている。
【0003】
このような記憶装置の1形態として、情報を磁性体の磁化状態として記録する磁気メモリの発展型である電流誘起磁壁移動型の磁気メモリが考案されている(例えば、特開2005−123617や特開2006−237183参照)。この電流誘起磁壁移動型の磁気メモリにあっては、帯状の強磁性材料層を複数の磁化領域(磁区)に分割して、強磁性材料層に電流を流すことで、磁化領域の境界である磁壁を移動させながら、強磁性材料層の磁化領域に情報を書き込み、また、情報の読み出しを行う。
【0004】
【特許文献1】特開2005−123617
【特許文献2】特開2006−237183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような電流誘起磁壁移動型の磁気メモリには、情報の保持、安定した磁壁の移動に未だ問題がある。磁壁を移動させ易くするためには、強磁性材料層の厚さを薄くしたり、強磁性材料層に軟磁性材料を用いることが考えられるが、このような解決手段は、情報を安定に保持することと反する。また、強磁性材料層内において磁壁が長い距離を移動したとき、磁壁間の距離が変化して情報誤りを起こし易くなる虞がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、安定した磁壁の移動を可能とし、確実に情報の書き込み、保持、読み出しを行い得る磁壁移動型の磁気メモリから成る情報記憶素子、及び、係る情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法は、
帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
強磁性材料層の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域が設けられている情報記憶素子における情報書込み・読出し方法であって、
磁壁の移動時、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させる。
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の情報記憶素子は、
帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
強磁性材料層の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域が設けられている。
【0009】
本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法あるいは本発明の情報記憶素子にあっては、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる。係る情報の書込み形態として、第3電極の構成、構造にも依るが、GMR(Giant MagnetoResistance,巨大磁気抵抗)効果あるいはTMR(Tunnel MagnetoResistance)効果に基づき、電流によるスピン注入磁化反転によって情報が書き込まれる形態を挙げることができる。あるいは又、電流によって形成された磁界に基づき情報が書き込まれる形態を挙げることができる。また、磁化状態が情報として読み出されるが、係る情報の読出し形態として、強磁性材料層における電気抵抗値の高低を検出する形態を挙げることができるし、あるいは又、強磁性材料層における磁界の方向を検出する形態を挙げることができる。磁化領域と磁化領域の境界(界面)である磁壁の移動時(磁壁の移動開始直前、移動開始と同時、移動中を含む)、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させるためには、強磁性材料層及び/又は反強磁性領域の温度を上昇させればよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の情報記憶素子、あるいは、本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、基本的には、
[A]強磁性材料層の軸線方向に沿って、強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせる。
[B]強磁性材料層の軸線方向に沿って、反強磁性領域のブロッキング温度TBを変化させる。あるいは又、
[C]反強磁性領域を周期的に配置する。
といった方策を採用する。ここで、室温においては反強磁性領域によって強磁性材料層の磁化方向が固定されるため、長期間に亙り確実に情報(磁化領域における磁化状態)を保持することができる。また、情報の書込みあるいは読出し時、強磁性材料層と反強磁性領域の交換結合を消滅あるいは低下させる結果、容易に磁壁を移動させることができるので、強磁性材料層内において磁壁が長い距離を移動したときでも、情報誤りを起こし易くなるといった問題の発生を確実に回避することができる。そして、以上の結果として、本発明によれば、安定して情報を保持しながら、確実に情報の書込み、記録、読出しを行うことができ、1つの連続した磁性体素子に多数の情報が記録可能となり、小型、軽量、且つ、安価な情報記憶装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法、全般に関する説明
2.実施例1(第1の構成の情報記憶素子及び第1の構成の情報書込み・読出し方法)
3.実施例2(実施例1の情報記憶素子の変形例)
4.実施例3(第2の構成の情報記憶素子及び第2の構成の情報書込み・読出し方法)
5.実施例4(第3の構成の情報記憶素子及び第3の構成の情報書込み・読出し方法)
6.実施例5(第4の構成の情報記憶素子及び第4の構成の情報書込み・読出し方法)
7.実施例6(第5の構成の情報記憶素子及び第5の構成の情報書込み・読出し方法)
【0012】
[本発明の情報記憶素子、及び、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法、全般に関する説明]
本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させる形態とすることができる。
【0013】
上記の好ましい形態を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、複数の反強磁性領域が離間して配置されている構成とすることができる。そして、この場合、記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第1の構成の情報書込み・読出し方法』と呼ぶ場合がある。強磁性材料層の軸線方向に沿った離間した反強磁性領域の長さや、隣接する反強磁性領域の間隔は、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。以上の説明は、後述する第1の構成の情報記憶素子においても同様である。
【0014】
あるいは又、上記の好ましい形態を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度(所謂、ブロッキング温度TBであり、強磁性材料層とこの強磁性材料層に接した反強磁性領域との間の交換結合が消滅する温度)が、各反強磁性領域において異なっている構成とすることができる。そして、この場合、記憶する情報のビット数をNとしたとき、上限温度が高い反強磁性領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第2の構成の情報書込み・読出し方法』と呼ぶ場合がある。磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度を異ならせるためには、各反強磁性領域の組成若しくは構造を異ならせればよい。強磁性材料層及び反強磁性領域を温度T0としたとき、反強磁性領域のブロッキング温度TBが温度T0より高い場合には、係る反強磁性領域とこの反強磁性領域に接した強磁性材料層の部分との間の交換結合は消滅しない。一方、反強磁性領域のブロッキング温度TBが温度T0より低い場合には、係る反強磁性領域とこの反強磁性領域に接した強磁性材料層の部分との間の交換結合が消滅する。従って、ブロッキング温度TBを各反強磁性領域において異ならせることで、反強磁性領域と強磁性材料層の温度に依存して、反強磁性領域と強磁性材料層との間の交換結合の消滅状態や低下状態を制御することができる。磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度が異なる反強磁性領域は、最低、2つの群に分けられればよい。上限温度が高い反強磁性領域と上限温度が低い反強磁性領域とは、交互に配置すればよい。強磁性材料層の軸線方向に沿った上限温度が高い反強磁性領域の長さは、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。反強磁性領域は、強磁性材料層の情報を記録する部分の全面に形成すればよい。反強磁性領域の組成を異ならせるためには、例えば、反強磁性領域に窒素イオンや酸素イオンを注入すればよい。また、反強磁性領域の構造を異ならせるためには、例えば、反強磁性領域の厚さを異ならせればよい。以上の説明は、後述する第2の構成の情報記憶素子においても同様である。
【0015】
あるいは又、上記の好ましい形態を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が、強磁性材料層の軸線方向に沿って変化している構成とすることができる。そして、この場合、強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が大きい領域と小さな領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられている構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の断面積が大きい領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第3の構成の情報書込み・読出し方法』と呼ぶ場合がある。ここで、断面積の変化あるいは大小は、強磁性材料層の幅の設定、あるいは又、強磁性材料層の厚さの設定、あるいは又、強磁性材料層の幅及び厚さの設定によって得ることができる。このように、強磁性材料層の断面積を強磁性材料層の軸線方向に沿って変化させることで、強磁性材料層に電流を流したとき、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせることができる。断面積が異なる強磁性材料層の領域は、最低、2つの群に分けられればよい。強磁性材料層の軸線方向に沿った断面積が異なる強磁性材料層の領域の長さは、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。反強磁性領域は、強磁性材料層の情報を記録する部分の全面に形成すればよいし、場合によっては、離間した複数の反強磁性領域を設けてもよい。以上の説明は、後述する第3の構成の情報記憶素子においても同様である。
【0016】
あるいは又、上記の好ましい形態を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の比抵抗値が強磁性材料層の軸線方向に沿って変化している構成とすることができる。そして、この場合、強磁性材料層の比抵抗値が高い領域と低い領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられている構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の比抵抗値が低い領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第4の構成の情報書込み・読出し方法』と呼ぶ場合がある。比抵抗値は、例えば、強磁性材料層の所望の部分あるいは領域に窒素イオンや酸素イオンを注入することで変化させることができる。このように、強磁性材料層の比抵抗値を強磁性材料層の軸線方向に沿って変化させることでも、強磁性材料層に電流を流したとき、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせることができる。比抵抗値が異なる強磁性材料層の領域は、最低、2つの群に分けられればよい。強磁性材料層の軸線方向に沿った比抵抗値が異なる強磁性材料層の領域の長さは、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。反強磁性領域は、強磁性材料層の情報を記録する部分の全面に形成すればよいし、場合によっては、離間した複数の反強磁性領域を設けてもよい。以上の説明は、後述する第4の構成の情報記憶素子においても同様である。
【0017】
あるいは又、上記の好ましい形態を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されている構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第5の構成の情報書込み・読出し方法』と呼ぶ場合がある。このように、温度制御手段を設け、必要に応じて温度制御手段を制御することでも、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせることができる。そして、この場合、強磁性材料層の温度が高い領域と低い領域が強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に生じるように温度制御手段を設け、必要に応じて温度制御手段を制御する構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の温度が低い領域の数がN以上となるように温度制御手段を設け、必要に応じて温度制御手段を制御する構成とすることができる。強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させるが、温度の異なる強磁性材料層の領域は、最低、2つの群に分けられればよい。強磁性材料層の軸線方向に沿った温度が異なる強磁性材料層の領域の長さは、情報記憶素子に要求される仕様に応じて、適宜、決定すればよい。反強磁性領域は、強磁性材料層の情報を記録する部分の全面に形成すればよいし、場合によっては、離間した複数の反強磁性領域を設けてもよい。以上の説明は、後述する第5の構成の情報記憶素子においても同様である。
【0018】
温度制御手段として、強磁性材料層及び反強磁性領域を加熱するためのヒータを挙げることができ、係るヒータを強磁性材料層及び反強磁性領域の近傍に配置すればよい。ヒータは、例えば、パターニングされた高抵抗体層から構成することができる。高抵抗体層を構成する材料として、例えば、シリコンカーバイド(SiC)やSiCNといったカーボン系抵抗体材料、SiN系材料、アモルファスシリコン等の半導体抵抗体材料、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化タンタル、窒化タンタル、酸化クロム、酸化チタン等の高融点金属酸化物や高融点金属窒化物を例示することができる。あるいは又、強磁性材料層の周囲の熱伝導を変化させてもよい。即ち、強磁性材料層を取り囲む領域の熱伝導率を変化させてもよい。具体的には、例えば、一種のヒートシンクを設ければよく、このような形態にあっては、係るヒートシンクが温度制御手段に相当する。以上の説明は、以下においても同様である。
【0019】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層(固着層、磁化固定層とも呼ばれる)から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態を情報として書き込む形態とすることができる。そして、この場合、第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値を情報として第3電極から読み出す形態とすることができる。尚、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層を挟んで第2電極と第3電極とが対向した状態に配置してもよいし、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層の同じ側に配置してもよいし、第2電極と第3電極とを、強磁性材料層の異なる側に配置してもよい。以下の説明においても同様である。
【0020】
あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、強磁性材料層の一部に隣接して磁界形成/検出手段が更に設けられており、磁界形成/検出手段に電流を流すことで各磁化領域に磁化状態を情報として書き込む形態とすることができる。そして、この場合、各磁化領域において生成した磁場を情報として磁界形成/検出手段によって読み出す形態とすることができる。磁界形成/検出手段として、具体的には、磁界を生成させるコイルあるいは配線を挙げることができる。磁界形成/検出手段に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態を情報として書き込むが、具体的には、コイルあるいは配線に電流を流すことで磁界を生成させ、係る磁界によって磁化領域に磁化状態を所望の方向に揃えればよい。また、各磁化領域において生成した磁場の方向を、情報として、磁界形成/検出手段であるコイルや配線によって読み出せばよい。尚、情報の読出し方法として、その他、光磁気効果(カー効果)を用いる方法を採用してもよい。以下の説明においても同様である。
【0021】
更には、以上に説明した好ましい各種の形態、構成を含む本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法にあっては、電流誘起磁壁移動を生じさせるために強磁性材料層に流す電流を規則的に変調する形態とすることが好ましい。これによって、磁壁の移動速度を一定に保ち、情報の書込みあるいは読出し中に磁化情報が消滅あるいは変化することを一層確実に抑制することができる。
【0022】
本発明の情報記憶素子にあっては、
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる形態とすることができる。そして、この場合、第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値が情報として第3電極から読み出される形態とすることができる。
【0023】
あるいは又、本発明の情報記憶素子にあっては、強磁性材料層の一部に隣接して磁界形成/検出手段が更に設けられており、磁界形成/検出手段に電流を流すことで各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる形態とすることができる。そして、この場合、各磁化領域において生成した磁場が、情報として磁界形成/検出手段によって読み出される形態とすることができる。
【0024】
上記の各種形態を含む本発明の情報記憶素子にあっては、複数の反強磁性領域が離間して配置されている構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第1の構成の情報記憶素子』と呼ぶ場合がある。
【0025】
あるいは又、上記の各種形態を含む本発明の情報記憶素子にあっては、磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度(ブロッキング温度TB)が、各反強磁性領域において異なっている構成とすることができる。そして、この場合、記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第2の構成の情報記憶素子』と呼ぶ場合がある。
【0026】
あるいは又、上記の各種形態を含む本発明の情報記憶素子にあっては、強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が、強磁性材料層の軸線方向に沿って変化している構成とすることができる。そして、この場合、強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が大きい領域と小さな領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられている構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の断面積が大きい領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第3の構成の情報記憶素子』と呼ぶ場合がある。
【0027】
あるいは又、上記の各種形態を含む本発明の情報記憶素子にあっては、強磁性材料層の比抵抗値が強磁性材料層の軸線方向に沿って変化している構成とすることができる。そして、この場合、強磁性材料層の比抵抗値が高い領域と低い領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられている構成とすることができ、更には、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の比抵抗値が低い領域の数はN以上である構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第4の構成の情報記憶素子』と呼ぶ場合がある。
【0028】
あるいは又、上記の各種形態を含む本発明の情報記憶素子にあっては、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されている構成とすることができる。係る構成を、便宜上、『第5の構成の情報記憶素子』と呼ぶ場合がある。
【0029】
強磁性材料層の平面形状は帯状(ストライプ状)であればよく、直線状であってもよいし、曲がっていてもよいし、「U」字状等の立体形状とすることもできるし、「Y」字状等に分岐した形状とすることもできる。
【0030】
強磁性材料層(強磁性記録層)と反強磁性領域が磁気的交換結合することで強磁性材料層(強磁性記録層)の磁化方向が固定されるが、即ち、強磁性材料層は反強磁性領域との交換結合によってピニング(pinning)されるが、係る強磁性材料層(強磁性記録層)を構成する材料として、磁壁を少ない電流で動かすためにスピントルク効率のよい材料が好ましく、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)といった強磁性材料、これらの強磁性材料の合金(例えば、Co−Fe、Co−Fe−Ni、Ni−Fe等)、これらの合金に非磁性元素(例えば、タンタル、ホウ素、クロム、白金、シリコン、炭素、窒素、アルミニウム、リン、ニオブ、ジルコニウム等)を混ぜた合金(例えば、Co−Fe−B等)、Co、Fe、Niの内の1種類以上を含む酸化物(例えば、フェライト:Fe−MnO等)、ハーフメタリック強磁性材料と呼ばれる一群の金属間化合物(ホイスラー合金:NiMnSb、Co2MnGe、Co2MnSi、Co2CrAl等)、酸化物(例えば、(La,Sr)MnO3、CrO2、Fe3O4等)を挙げることができる。強磁性材料層の結晶性は、本質的に任意であり、多結晶であってもよいし、単結晶であってもよいし、非晶質であってもよい。また、強磁性材料層は、単層構成とすることもできるし、複数の異なる強磁性材料層を積層した積層構成とすることもできるし、強磁性材料層と非磁性材料層を積層した積層構成とすることもできる。
【0031】
反強磁性領域を構成する材料として、鉄−マンガン合金、ニッケル−マンガン合金、白金−マンガン合金、イリジウム−マンガン合金、ロジウム−マンガン合金、コバルト酸化物、ニッケル酸化物を挙げることができるが、強磁性材料層に効率よく電流を流すために、電気抵抗が高い鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)を基本とした酸化物が一層適している。
【0032】
反強磁性領域を、強磁性材料層の一部に接するように形成してもよいし、強磁性材料層の全面に形成してもよい。前者の構成を採用することで、前述した[C]項を達成することができる。一方、後者の構成を採用する場合、前述した[A]項あるいは[B]項が達成されるように、反強磁性領域や強磁性材料層の構成、構造の適切化を図ればよい。
【0033】
強磁性材料層や反強磁性領域は、例えば、スパッタリング法、イオンビーム堆積法、真空蒸着法に例示される物理的気相成長法(PVD法)、ALD(Atomic Layer Deposition)法に代表される化学的気相成長法(CVD法)にて形成することができる。強磁性材料層、反強磁性領域のパターニングは、反応性イオンエッチング法(RIE法)やイオンミーリング法(イオンビームエッチング法)にて行うことができる。
【0034】
第1電極や第2電極は、Cu、Au、Pt、Ti等の単層構造から成り、あるいは又、CrやTi等から成る下地層と、その上に形成されたCu層、Au層、Pt層等の積層構造を有していてもよい。更には、W、Ru、Ta等の単層あるいはCu、Cr、Ti等との積層構造から構成することもできる。これらの電極は、例えば、スパッタリング法に例示されるPVD法にて形成することができる。
【0035】
第3電極と強磁性材料層とによって、TMR効果あるいはGMR効果を有する一種の情報記録構造体が構成される。ここで、磁化参照層、非磁性体膜及び強磁性材料層によって構成されるTMR効果を有する情報記録構造体とは、磁化参照層と強磁性材料層との間に、トンネル絶縁膜として機能する非磁性体膜が挟まれた構造を指す。ここで、第3電極を構成する磁化参照層を構成する材料として、上述した強磁性材料層を構成する材料を挙げることができるし、積層フェリ構造[反強磁性的結合を有する積層構造であり、合成反強磁性結合(SAF:Synthetic Antiferromagnet)とも呼ばれる]を有する構成とすることができるし、静磁結合構造を有する構成とすることができる。積層フェリ構造とは、例えば、磁性材料層/ルテニウム(Ru)層/磁性材料層の3層構造(具体的には、例えば、CoFe/Ru/CoFeの3層構造、CoFeB/Ru/CoFeBの3層構造)を有し、ルテニウム層の厚さによって、2つの磁性材料層の層間交換結合が、反強磁性的あるいは強磁性的になる構造を指し、例えば、 S. S. Parkin et. al, Physical Review Letters, 7 May, pp 2304-2307 (1990) に報告されている。尚、2つの磁性材料層の層間交換結合が反強磁性的になる構造を、積層フェリ構造と呼ぶ。また、2つの磁性材料層において、磁性材料層の端面からの漏洩磁界によって反強磁性的結合が得られる構造を、静磁結合構造と呼ぶ。第3電極を構成する非磁性体膜を構成する材料として、マグネシウム酸化物(MgO)、マグネシウム窒化物、アルミニウム酸化物(AlOX)、アルミニウム窒化物(AlN)、シリコン酸化物、シリコン窒化物、TiO2あるいはCr2O3、Ge、NiO、CdOX、HfO2、Ta2O5、BN、ZnS等の絶縁材料を挙げることができる。一方、GMR効果を有する情報記録構造体を構成する非磁性体膜を構成する材料として、Cu、Ru、Cr、Au、Ag、Pt、Ta等、あるいは、これらの合金といった導電性材料を挙げることができるし、導電性が高ければ(抵抗率が数百μΩ・cm以下)、任意の非金属材料としてもよいが、強磁性材料層や磁化参照層と界面反応を起こし難い材料を、適宜、選択することが望ましい。
【0036】
絶縁材料から成る非磁性体膜は、例えば、スパッタリング法にて形成された金属膜を酸化若しくは窒化することにより得ることができる。より具体的には、非磁性体膜を構成する絶縁材料としてアルミニウム酸化物(AlOX)、マグネシウム酸化物(MgO)を用いる場合、例えば、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを大気中で酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムをプラズマ酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムをIPCプラズマで酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素中で自然酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素ラジカルで酸化する方法、スパッタリング法にて形成されたアルミニウムやマグネシウムを酸素中で自然酸化させるときに紫外線を照射する方法、アルミニウムやマグネシウムを反応性スパッタリング法にて成膜する方法、アルミニウム酸化物(AlOX)やマグネシウム酸化物(MgO)をスパッタリング法にて成膜する方法を例示することができる。
【0037】
以上の説明を纏めると、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)に温度分布を生じさせるためには、
[1]強磁性材料層(強磁性記録層)の断面積(幅及び/又は厚さ)を変化させてもよいし、
[2]強磁性材料層(強磁性記録層)に、例えば、不純物をイオン注入することで、強磁性材料層(強磁性記録層)の比抵抗値を変化させてもよいし、
[3]温度制御手段を強磁性材料層近傍に配置してもよいし、
[4]強磁性材料層の周囲の熱伝導を変化させてもよい。
このように温度分布を生じさせることで、反強磁性領域毎に、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合の消滅あるいは低下の制御を行うことができる。また、温度分布を生じさせなくとも、
[5]反強磁性領域を離間して配置する、
ことでも、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合の制御を行うことができるし、
[6]反強磁性領域の組成や構造を変化させて、ブロッキング温度を変化させる、
ことでも、反強磁性領域毎に、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合の消滅あるいは低下の制御を行うことができる。
【実施例1】
【0038】
実施例1は、本発明の情報記憶素子、及び、本発明の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法に関し、具体的には、第1の構成の情報記憶素子、及び、第1の構成の情報書込み・読出し方法に関する。
【0039】
図1の(A)に模式的な部分的平面図を示し、図1の(B)に模式的な一部断面図を示すように、実施例1の情報記憶素子100は、帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)111を備えており、強磁性材料層111の一端には第1電極121が設けられており、強磁性材料層111の他端には第2電極122が設けられている。そして、実施例1の情報記憶素子100にあっては、第1電極121と第2電極122との間に電流を流すことで生じるスピントルクに起因した電流誘起磁壁移動が生じる。第1電極121と第2電極122との間に流す電流を、『磁壁駆動電流』と呼ぶ。また、強磁性材料層111において、磁化領域112に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出される。更には、強磁性材料層111の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域130が設けられている。参照番号113は、磁化領域112と磁化領域112の境界(界面)である磁壁を示す。強磁性材料層111の磁化容易軸は、強磁性材料層111の軸線と平行である。図1の(A)にあっては、層間絶縁層114の図示を省略している。また、参照番号124,125は、層間絶縁層114上に形成され、第1電極121及び第2電極122に接続された配線を指す。図1の(A)及び(B)に示した情報記憶素子100にあっては、強磁性材料層111の上方に第1電極121、第2電極122を設け、強磁性材料層111の下方に第3電極123を設けたが、これとは逆に、強磁性材料層111の下方に第1電極121、第2電極122を設け、強磁性材料層111の上方に第3電極123を設けてもよい。
【0040】
ここで、実施例1の情報記憶素子100にあっては、複数の反強磁性領域130が離間して配置されている。更には、記憶する情報のビット数をN(実施例1にあっては、例えば、N=16)としたとき、反強磁性領域130の数はN以上(実施例1にあっては、具体的には16)である。即ち、実施例1にあっては、上述した[C]項の方策を採用している。
【0041】
実施例1の情報記憶素子100は、強磁性材料層111の一部に接して設けられた第3電極123を更に備えている。第3電極123は、強磁性材料層111を挟んで、第2電極122と対向して配置されている。ここで、第3電極123は、強磁性材料層111の一部に接した非磁性体膜123A、及び、その上に(図示した状態では、その下であるが)形成された磁化参照層123Bから構成されている。磁化参照層123Bは、磁化領域112に記録する磁化の方向を決めるための基準磁化層として機能する。そして、第2電極121と第3電極123との間に電流を流すことで、各磁化領域112に磁化状態が情報として書き込まれる。また、第2電極121と第3電極123との間に電流を流すことで、各磁化領域112における電気抵抗値(電気抵抗値の高低)が情報として第3電極123から読み出される。第3電極123と強磁性材料層111とによって、GMR効果を有する一種の情報記録構造体が構成され、電流によるスピン注入磁化反転によって磁化領域112が形成され、磁壁113が生じ、強磁性材料層111に情報が書き込まれる。即ち、強磁性材料層111においては、電流の流れる方向により、その磁化の方向が、磁化参照層123Bに対して平行又は反平行に変えられる。
【0042】
実施例1にあっては、強磁性材料層111は、厚さ3nm、幅1μmの直線状のNi−Fe合金層から成り、反強磁性領域130は、厚さ0.2μmのNiOから成る。また、第3電極123を構成する非磁性体膜123Aは、厚さ1nmのCuから成り、磁化参照層123Bは、CoFe:1nm/Ru:0.8nm/CoFe:1nm/PtMn:30nm/Ta:5nmの積層膜から成る。第1電極121及び第2電極122はチタン層から構成されており、例えば、第1電極121は駆動電源(図示せず)に接続され、第2電極122は接地されている。尚、第3電極123と強磁性材料層111とによって、TMR効果を有する一種の情報記録構造体を構成してもよく、この場合には、非磁性体膜123Aを、例えば、MgOから構成すればよい。
【0043】
以下、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を、情報記憶素子100の概念図である図2の(A)〜図2の(F)、図3の(A)〜(E)を参照して説明する。ここで、実施例1の情報書込み・読出し方法にあっては、磁壁の移動時、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させる。実施例1の情報書込み・読出し方法は、所謂シーケンシャル方式である。
【0044】
図2の(A)〜(F)、図3の(A)〜(E)において、強磁性材料層111内部に描いた矢印は、磁化の方向を示し、便宜上、右向きの矢印を情報「0」とし、左向きの矢印を情報「1」とする。また、第3電極123に描いた矢印は、磁化参照層123Bにおける磁化の方向を示す。そして、第3電極123から第2電極122に電流を流すことで、情報「0」(右向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。一方、第2電極122から第3電極123に電流を流すことで、情報「1」(左向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。また、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間に交換結合が存在する状態を、図2及び図3においては、強磁性材料層111の一部に斜線を付すことで示している。
【0045】
ここで、図2の(A)に示す状態にあっては、強磁性材料層111に、既に4つの情報(1,1,1,1)が書き込まれているとする。この状態にあっては、強磁性材料層111に4つの磁化領域112が形成されているとみなせる。
【0046】
さて、次に、強磁性材料層111に情報「0」を書き込むことを想定する。この場合、図2の(B)に示すように、第3電極123に電圧+VWを印加して、第3電極123から第2電極122へと電流を流す。これによって、情報「0」(右向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。
【0047】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図2の(C)に示すように、第1電極121に電圧+Vmを印加し、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流す。これによって、図2の(D)に示すように、強磁性材料層111の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合が消滅あるいは低下する。しかも、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流すことによって、電流誘起磁壁移動が生じる。即ち、磁化状態が左から右に移動(伝搬)していく。つまり、磁壁が右に移動していく。ここで、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合が消滅あるいは低下しているので、磁壁113の移動は容易である。強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合の消滅あるいは低下が生じ、磁壁113が移動しても、強磁性材料層111に書き込まれた情報に変化は生じない。
【0048】
次いで、磁壁113が反強磁性領域130に接した部分を超えたとき、図2の(E)に示すように、第3電極123から第2電極122に電流を流すことを停止する。併せて、図2の(F)に示すように、磁壁駆動電流を流すことを停止するか、磁壁駆動電流の値を減少させる。磁壁駆動電流の値がある程度まで低下すると、強磁性材料層111の温度が低下し、反強磁性領域130による結合が回復し、各磁壁113は反強磁性領域130に接した部分の手前で停止する。こうして、1つの情報が、強磁性材料層111に書き込まれる。
【0049】
その後、強磁性材料層111に情報「1」を書き込むことを想定する。この場合、図3の(A)に示すように、第3電極123に電圧−VWを印加して、第2電極122から第3電極123へと電流を流す。これによって、情報「1」(左向きの矢印)が、第3電極123に対向する強磁性材料層111の部分に書き込まれる。
【0050】
そして、これと同時、あるいは、この直後に、図3の(B)に示すように、第1電極121に電圧+Vmを印加し、第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流す。これによって、前述したと同様に、生成したジュール熱によって、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合が消滅あるいは低下し、しかも、電流誘起磁壁移動が生じる(図3の(C)参照)。
【0051】
次いで、図3の(D)に示すように、第3電極123から第2電極122に電流を流すことを停止する。併せて、図3の(E)に示すように、磁壁駆動電流を流すことを停止するか、磁壁駆動電流の値を減少させる。こうして、1つの情報が、強磁性材料層111に書き込まれる。この状態にあっては、強磁性材料層111には、6つの情報(1,1,1,1,0,1)が書き込まれているが、図3の(E)には最初の2つの情報は図示していない。第1電極121から第2電極122へと磁壁駆動電流を流すことで磁壁113を移動させながら、強磁性材料層111に情報を、順次、書き込んでもよい。
【0052】
強磁性材料層111に書き込まれた情報を読み出す場合には、第2電極122から第1電極121へと磁壁駆動電流を流す。これによってジュール熱が生成し、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合が消滅あるいは低下する。併せて、磁壁113が移動する。次いで、第2電極122から第1電極121に磁壁駆動電流を流すことを停止することで、強磁性材料層111と反強磁性領域130との間の交換結合を回復させ、且つ、磁化領域112の移動を停止させる。そして、第3電極123から第2電極122に電流を流し、磁化領域112の電気抵抗値の高低を調べることで、書き込まれた情報が「0」であるか「1」であるかを判別することができる。ここで、強磁性材料層111と磁化参照層123Bの磁化方向が等しい場合、低抵抗となり、強磁性材料層111と磁化参照層123Bの磁化方向が反平行の場合、高抵抗となる。第2電極122から第1電極121へと磁壁駆動電流を流すことで磁壁113を移動させながら、強磁性材料層111に書き込まれた情報を、順次、読み出してもよい。
【0053】
以下、基板等の模式的な一部断面図である図4の(A)〜(D)を参照して、実施例1の情報記憶素子100の製造方法の概要を説明する。
【0054】
[工程−100]
先ず、シリコン半導体基板から成る基板110に第3電極123を形成する。第3電極123を基板110上に形成してもよいが、磁壁113の移動を妨げないように、基板110と第3電極123との段差は少ない方がよく、そのためには、基板110に埋め込まれた第3電極123を形成することが望ましい。具体的には、基板110にリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき溝部を形成する。そして、全面に、スパッタリング法に基づき磁化参照層123B、非磁性体膜123Aを形成する。次いで、基板110の表面の非磁性体膜123A及び磁化参照層123Bを例えばCMP法で除去することで、非磁性体膜123A及び磁化参照層123Bを溝部内に残す。こうして、図4の(A)に示すように、基板110に第3電極123を形成することができる。磁化参照層123Bは、基板110に設けられた配線(図示せず)を介して、情報書込み・読出し電源(図示せず)に接続されている。
【0055】
[工程−110]
次いで、全面に、スパッタリング法に基づき強磁性材料層を形成した後、強磁性材料層をパターニングすることで、帯状の強磁性材料層111を得る(図4の(B)参照)。強磁性材料層111のパターニングは、イオンミーリング法や反応性エッチング法等に基づき行うことができるし、リフトオフ法を採用してもよい。
【0056】
[工程−120]
その後、離間して配置された反強磁性領域130を形成する。具体的には、スパッタリング法にて全面に反強磁性材料層を形成した後、イオンミーリング法や反応性エッチング法等に基づき反強磁性材料層をパターニングすることで、離間して配置された反強磁性領域130を得ることができる(図4の(C)参照)。強磁性材料層及び反強磁性材料層を形成した後、反強磁性材料層をパターニングし、更に、強磁性材料層をパターニングしてもよい。
【0057】
[工程−130]
次いで、帯状の強磁性材料層111の両端に、周知の方法で第1電極121及び第2電極122を形成する(図4の(D)参照)。そして、全面に絶縁材料から成る層間絶縁層114を、例えば、CVD法に基づき形成する。その後、第1電極121及び第2電極122の上方の層間絶縁層114の部分に開口部を形成し、開口部内を含む層間絶縁層114上に配線124,125を形成する。こうして、図1の(A)及び(B)に示した実施例1の情報記憶素子100を完成させることができる。尚、層間絶縁層を構成する材料として、SiO2、NSG(ノンドープ・シリケート・ガラス)、BPSG(ホウ素・リン・シリケート・ガラス)、PSG、BSG、AsSG、SbSG、SOG(スピンオングラス)等のSiOX系材料(シリコン系酸化膜を構成する材料)、SiN、SiON、SiOC、SiOF、SiCN、低誘電率絶縁材料(例えば、フルオロカーボン、シクロパーフルオロカーボンポリマー、ベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、アモルファス・テトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG、パリレン、フッ化フラーレン)、ポリイミド系樹脂、フッ素系樹脂、Silk(The Dow Chemical Co. の商標であり、塗布型低誘電率層間絶縁膜材料)、Flare(Honeywell Electronic Materials Co. の商標であり、ポリアリルエーテル(PAE)系材料)を例示することができる。
【0058】
実施例1の情報記憶素子100にあっては、室温においては反強磁性領域130によって強磁性材料層111の磁化方向が固定されているため、長期間に亙り確実に情報を保持することができる。また、情報の書込みあるいは読出し時、強磁性材料層と反強磁性領域の交換結合を消滅あるいは低下させることで、容易に磁壁を移動させることができるので、強磁性材料層内において磁壁が長い距離を移動したときでも、情報誤りを起こし易くなるといった問題の発生を確実に回避することができる。そして、以上の結果として、本発明によれば、安定して情報を保持しながら、確実に情報の記録、読出しを行うことができ、1つの連続した磁性体素子に多数の情報が記録可能となり、小型、軽量、且つ、安価な情報記憶装置を実現することができる。
【実施例2】
【0059】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2の情報記憶素子200の模式的な部分的平面図を図5の(A)に示し、模式的な一部断面図を図5の(B)に示す。図5の(A)に示す例では、4つの情報記憶素子200が並置して設けられている。ここで、実施例2の情報記憶素子200、あるいは、後述する各実施例の情報記憶素子を構成する構成要素の参照番号における下2桁の数字と、実施例1の情報記憶素子100を構成する構成要素の参照番号における下2桁の数字が同じである構成要素は、同じ構成要素である。図5の(A)にあっては、層間絶縁層214の図示を省略している。また、図5の(A)、後述する図7の(A)、図8の(A)においては、反強磁性領域230、絶縁膜232、第1電極221、第2電極222、第3電極223を明示するために、これらに斜線を付している。
【0060】
実施例2の情報記憶素子200にあっては、反強磁性領域230が基板210に形成されている。また、第2電極222と第3電極223とが、強磁性材料層211の同じ側に配置されている。具体的には、基板210上に形成された強磁性材料層211の上に、第1電極221、第2電極222及び第3電極223が設けられている。
【0061】
以下、基板等の模式的な部分的平面図及び模式的な一部端面図である図6の(A)、(B)、図7の(A)、(B)、図8の(A)、(B)を参照して、実施例2の情報記憶素子200の製造方法の概要を説明する。
【0062】
[工程−200]
先ず、シリコン半導体基板から成る基板210に、離間して配置された反強磁性領域230を形成する。具体的には、シリコン半導体基板から成る基板210に、断面形状が「V」字状の溝部231をリソグラフィ技術及びエッチング技術に基づき形成する(図6の(A)及び(B)参照)。溝部231の幅を1μm、ピッチを1.5μm、深さを約0.5μmとし、1つの情報記憶素子200当たりの溝部の数を8本とした。次いで、全面に、スパッタリング法にて、厚さ0.2μmのNiOから成る反強磁性材料層、及び、厚さ0.5μmのSiO2から成る絶縁膜232を形成した後、基板210の表面の上の反強磁性材料層及び絶縁膜232をCMP法に基づき除去し、溝部231内に反強磁性材料層230A及び絶縁膜232を残す。こうして、基板210に離間して配置された16箇所の反強磁性領域230を形成することができる(図7の(A)及び(B)参照)。
【0063】
[工程−210]
その後、実施例1の[工程−110]と同様にして、全面にスパッタリング法に基づき強磁性材料層を形成した後、強磁性材料層をパターニングすることで、幅0.15μm、長さ30μmの帯状の強磁性材料層211を得る(図8の(A)及び(B)参照)。
【0064】
[工程−220]
次に、第3電極223を設けるために、全面にスパッタリング法に基づき非磁性体膜223A及び磁化参照層223Bを形成した後、周知の方法に基づき、磁化参照層223B上にTiから成る配線(図示せず)を設け、併せて、第1電極兼配線221及び第2電極兼配線222を形成する。その後、露出した磁化参照層223B、及び、非磁性体膜223Aを周知の方法でパターニングする。次いで、全面に絶縁材料から成る層間絶縁層214を、例えば、CVD法に基づき形成する。こうして、図5の(A)及び(B)に示した実施例2の情報記憶素子200を完成させることができる。
【0065】
こうして得られた実施例2の情報記憶素子200において、第1電極221と第2電極222との間の電気抵抗値は1.3kΩ、第2電極222と第3電極223との間の電気抵抗値は300Ωであった。
【0066】
第2電極222を接地して、第3電極223に振幅±1ボルトで周期trの矩形波電圧を加えながら、第1電極221に電圧+Vm、時間長16trの一定電圧を印加して、強磁性材料層211に16ビットの情報(「0」及び「1」の交互の情報から成る)を書き込んだ。次いで、情報の読み出しのために、第1電極221に電圧−Vmを印加した。そして、第3電極223と第2電極222との間で測定された抵抗値が何回変化したかにより、磁壁の数を測定した。そして、この測定を繰り返し行い、記録された磁壁数(具体的には16)に対する再生された磁壁数の割合(磁壁再生率)を求めた。磁壁再生率が「0」のときには磁壁が全く再生されていない状態を示し、磁壁再生率が「1」のときは記録した磁壁と同じ数の磁壁が再生されていることを示す。
【0067】
図9の(A)に、第1電極221への印加電圧+Vmにおいて周期trに対する磁壁再生率を示す。比較例として、[工程−200]を省き、反強磁性領域230を形成しない情報記憶素子を作製し、同様の測定を行った。その結果を図9の(B)に示す。図9の(A)から、第1電極221への印加電圧+Vm及び周期trを最適化することで、磁壁再生率「1」を達成することができることが判る。一方、図9の(B)から、反強磁性領域230を形成しない場合、磁壁が適切に固定されないため、磁壁再生率は「1」に達することがなかった。
【0068】
更には、図10の(A)に示すように、第1電極221に印加する電圧を変調した。具体的には、第1電極221に電圧+Vm及び電圧+Vsを交互に印加した。ここで、第1電極221に印加する電圧+Vmの値を2.5ボルト、3.0ボルト、3.5ボルト、4.0ボルトとし、電圧+Vmを印加する時間幅を2n秒とした。また、電圧+Vsの値を1.5ボルトとした。更には、1周期trに1つの電圧+Vmのパルスを印加した。このときの磁壁再生率の測定結果を図10の(B)に示す。電圧+Vmが3.0ボルト以上であって、周期trが15n秒以上の条件で、安定な動作が実現できることが判った。即ち、電流誘起磁壁移動を生じさせるために強磁性材料層211に流す電流を規則的に変調することで、磁壁の移動速度を一定に保ち、情報の書込みあるいは読出し中に磁化情報が消滅あるいは変化することを一層確実に抑制することができる。第1電極221から第2電極222へと磁壁駆動電流を流す際の磁壁駆動電流の変調、あるいは、第2電極222から第1電極221へと磁壁駆動電流を流す際の磁壁駆動電流の変調は、電圧変調でもよいし、パルス幅を変えたパルス幅変調でもよいし、これらの組み合わせとすることもできる。以下の実施例においても同様である。
【実施例3】
【0069】
実施例3も実施例1の変形であるが、第2の構成の情報記憶素子、及び、第2の構成の情報書込み・読出し方法に関し、強磁性材料層の軸線方向に沿って、反強磁性領域のブロッキング温度TBを変化させる(前述した[B]項)。
【0070】
図11の(A)に模式的な部分的平面図を示し、図11の(B)に模式的な一部断面図を示すように、実施例3にあっては、各反強磁性領域330の組成が異なっており、磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度(ブロッキング温度TB)が、各反強磁性領域330において異なっている。記憶する情報のビット数をNとしたとき、高いブロッキング温度TBを有する反強磁性領域330Hの数はN以上(実施例3にあってはNであり、具体的には、N=16)である。ブロッキング温度TBが異なる反強磁性領域330は、2つの群に分けられている。そして、ブロッキング温度TBが高い反強磁性領域330Hとブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lが、交互に配置さえれている。図11の(A)にあっては、層間絶縁層314の図示を省略している。また、図11の(B)にあっては、高いブロッキング温度TBを有する反強磁性領域330Hには千鳥状のハッチングを付している。このように、磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度(ブロッキング温度TB)を各反強磁性領域330において異ならせることで、強磁性材料層311に磁壁駆動電流を流し、強磁性材料層311及び反強磁性領域330を温度T0としたとき、反強磁性領域330Hのブロッキング温度TBが温度T0より高い場合には、係る反強磁性領域330Hとこの反強磁性領域330Hに接した強磁性材料層311の部分との間の交換結合は消滅しない。一方、反強磁性領域330Lのブロッキング温度TBが温度T0より低い場合には、係る反強磁性領域330Lとこの反強磁性領域330Lに接した強磁性材料層311の部分との間の交換結合が消滅する。従って、ブロッキング温度TBを各反強磁性領域330において異ならせることで、反強磁性領域330と強磁性材料層311の温度に依存して、反強磁性領域330と強磁性材料層311との間の交換結合の消滅状態や低下状態を制御することができる。実施例3にあっては、高いブロッキング温度TBを有する反強磁性領域330Hにおけるブロッキング温度TBを200゜C乃至250゜Cとし、低いブロッキング温度TBを有する反強磁性領域330Lにおけるブロッキング温度TBを室温以下とした。このようにブロッキング温度TBに変化をつけるには、各反強磁性領域330に対して酸素イオンをイオン注入するときの注入量を変えればよい。尚、各反強磁性領域330の厚さを異ならせるといった反強磁性領域330の構造を異ならせることでも、各反強磁性領域330のブロッキング温度TBを異ならせることができる。
【0071】
実施例3にあっては、反強磁性領域330は、強磁性材料層311の全面を覆うように形成されている。
【0072】
実施例3において、第1電極321から第2電極322へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極322から第1電極321へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層311の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層311及び反強磁性領域330の温度が上昇する。ここで、ブロッキング温度TBが高い反強磁性領域330Hにあっては、強磁性材料層311と反強磁性領域330との間の交換結合の消滅あるいは低下が生じない一方、ブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lにあっては、強磁性材料層311と反強磁性領域330との間の交換結合の消滅あるいは低下が生じるような状態が達成されるように、ブロッキング温度TBの設計、磁壁駆動電流の設定を行う。これによって、ブロッキング温度TBが高い反強磁性領域330Hにあっては、強磁性材料層311と反強磁性領域330との間の交換結合の消滅あるいは低下が生じない。一方、ブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lにあっては、強磁性材料層311と反強磁性領域330との間の交換結合の消滅あるいは低下が生じる。ここで、移動開始前にブロッキング温度TBが高い反強磁性領域330Hの下方に位置する強磁性材料層311の部分に位置していた磁壁は、磁壁駆動電流を流すと移動を開始し、ブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lの下方に位置する強磁性材料層311の部分を速やかに通過する。ブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lの下方に位置する強磁性材料層311の部分を磁壁が通過中、あるいは、通過が完了した時点で、磁壁駆動電流を流すことを停止すると、あるいは又、磁壁駆動電流の値を低減すると、ブロッキング温度TBが低い反強磁性領域330Lの下方に位置する強磁性材料層311の部分にあっては、強磁性材料層311と反強磁性領域330との間の交換結合が直ちに再び生じる。それ故、磁壁の移動を、ブロッキング温度TBが高い反強磁性領域330Hの下方に位置する強磁性材料層311の部分において確実に停止させることができる。
【0073】
尚、実施例3にあっても、実施例2と同様に、基板側から、反強磁性領域330、強磁性材料層311が、この順に形成された構成、構造とすることもできる。後述する実施例4、実施例5、実施例6においても同様とすることができる。また、実施例3、あるいは、後述する実施例4、実施例5、実施例6にあっては、第3電極を強磁性材料層の下に位置する基板の部分に設け、第1電極及び第2電極を強磁性材料層上に設けたが、第1電極、第2電極、第3電極の配置を、実施例1あるいは実施例2と同様とすることもできる。後述する実施例4、実施例5、実施例6においても同様とすることができる。
【実施例4】
【0074】
実施例4も実施例1の変形であるが、第3の構成の情報記憶素子、及び、第3の構成の情報書込み・読出し方法に関し、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせる(前述した[A]項)。
【0075】
図12の(A)に模式的な部分的平面図を示し、図12の(B)に模式的な一部断面図を示すように、実施例4にあっては、強磁性材料層411の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層411を切断したときの強磁性材料層411の断面積が、強磁性材料層411の軸線方向に沿って変化している。より具体的には、強磁性材料層411の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層411を切断したときの強磁性材料層411の断面積が大きい領域411Lと小さな領域411Sが、強磁性材料層411の軸線方向に沿って交互に設けられている。そして、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の断面積が大きい領域の数はN以上(実施例4にあってはNであり、具体的には、N=16)である。断面積が異なる強磁性材料層411の領域は、2つの群に分けられている。このように、強磁性材料層411の断面積を強磁性材料層411の軸線方向に沿って変化させることで、強磁性材料層411に磁壁駆動電流を流したとき、強磁性材料層411の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)411の温度の上昇に分布を生じさせることができる。図12の(A)にあっては、層間絶縁層414の図示を省略している。
【0076】
実施例4にあっては、反強磁性領域430は、強磁性材料層411の全面を覆うように形成されている。
【0077】
実施例4において、第1電極421から第2電極422へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極422から第1電極421へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層411の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層411及び反強磁性領域430の温度が上昇する。ここで、強磁性材料層411の断面積が大きい領域411Lにおける温度上昇ΔTLは、小さな領域411Sにおける温度上昇ΔTSよりも少ない。従って、強磁性材料層411の断面積が小さな領域411Sにおいては、大きい領域411Lよりも、強磁性材料層411と反強磁性領域430との間の交換結合の消滅あるいは低下が、確実に生じる。ここで、移動開始前に強磁性材料層411の断面積が大きい領域411Lに位置していた磁壁は、磁壁駆動電流を流すと移動を開始し、強磁性材料層411の断面積が小さな領域411Sを速やかに通過する。強磁性材料層411の断面積が小さな領域411Sを磁壁が通過中、あるいは、通過が完了した時点で、磁壁駆動電流を流すことを停止すると、あるいは又、磁壁駆動電流の値を低減すると、強磁性材料層411の断面積が大きい領域411Lにあっては、その温度が直ちに低下し、強磁性材料層411と反強磁性領域430との間の交換結合が再び生じる。それ故、磁壁の移動を、強磁性材料層411の断面積が大きい領域411Lにおいて確実に停止させることができる。
【実施例5】
【0078】
実施例5も実施例1の変形であるが、第4の構成の情報記憶素子、及び、第4の構成の情報書込み・読出し方法に関し、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせる(前述した[A]項)。
【0079】
図13の(A)に模式的な部分的平面図を示し、図13の(B)に模式的な一部断面図を示すように、実施例5にあっては、強磁性材料層511の比抵抗値が強磁性材料層511の軸線方向に沿って変化している。より具体的には、強磁性材料層511の比抵抗値が高い領域511Hと低い領域511Lが、強磁性材料層511の軸線方向に沿って交互に設けられている。図13の(A)にあっては、層間絶縁層514の図示を省略している。また、図13の(B)にあっては、比抵抗値が高い領域511Hには千鳥状のハッチングを付している。そして、記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層511の比抵抗値が低い領域511Lの数はN以上(実施例5にあってはNであり、具体的には、N=16)である。比抵抗値が異なる強磁性材料層511の領域は、2つの群に分けられている。このように、強磁性材料層511の比抵抗値を強磁性材料層511の軸線方向に沿って変化させることで、強磁性材料層511に磁壁駆動電流を流したとき、強磁性材料層511の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)511の温度の上昇に分布を生じさせることができる。強磁性材料層511の比抵抗値が高い領域511Hと低い領域511Lの形成は、強磁性材料層511に、窒素イオンや酸素イオンを注入することで行うことができる。
【0080】
実施例5にあっても、反強磁性領域530は、強磁性材料層511の全面を覆うように形成されている。
【0081】
実施例5において、第1電極521から第2電極522へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極522から第1電極521へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層511の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層511及び反強磁性領域530の温度が上昇する。ここで、強磁性材料層511の比抵抗値が低い領域511Lにおける温度上昇ΔTLは、比抵抗値が高い領域511Hにおける温度上昇ΔTHよりも少ない。従って、強磁性材料層511の比抵抗値が高い領域511Hにおいては、比抵抗値が低い領域511Lよりも、強磁性材料層511と反強磁性領域530との間の交換結合の消滅あるいは低下が、確実に生じる。ここで、移動開始前に強磁性材料層511の比抵抗値が低い領域511Lに位置していた磁壁は、磁壁駆動電流を流すと移動を開始し、強磁性材料層511の比抵抗値が高い領域511Hを速やかに通過する。強磁性材料層511の比抵抗値が高い領域511Hを磁壁が通過中、あるいは、通過が完了した時点で、磁壁駆動電流を流すことを停止すると、あるいは又、磁壁駆動電流の値を低減すると、強磁性材料層511の比抵抗値が低い領域511Lにあっては、その温度が直ちに低下し、強磁性材料層511と反強磁性領域530との間の交換結合が再び生じる。それ故、磁壁の移動を、強磁性材料層511の比抵抗値が低い領域511Lにおいて確実に停止させることができる。
【実施例6】
【0082】
実施例6も実施例1の変形であるが、第5の構成の情報記憶素子、及び、第5の構成の情報書込み・読出し方法に関し、強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)の温度の上昇に分布を生じさせる(前述した[A]項)。
【0083】
実施例6にあっては、強磁性材料層611の軸線方向に沿って強磁性材料層611の温度を変化させる温度制御手段640が、強磁性材料層611の近傍に配置されている。このように、温度制御手段640を設けることで、強磁性材料層611の軸線方向に沿って強磁性材料層(強磁性記録層)611の温度の上昇に分布を生じさせることができる。
【0084】
図14に模式的な一部断面図を示すように、実施例6において、温度制御手段640は、強磁性材料層611を取り囲む領域の熱伝導率を変化させるための、一種のヒートシンクから成る。具体的には、強磁性材料層611を覆う反強磁性領域630の上には層間絶縁層614が設けられている。そして、強磁性材料層611の一部の上方の層間絶縁層614の部分には凹部が設けられており、凹部を含む層間絶縁層614の上には、強磁性材料層611と平行に、帯状に銅(Cu)層から成る温度制御手段640が形成されている。強磁性材料層611の部分(領域)611Lにおける温度制御手段640の底面から反強磁性領域630までの距離は、強磁性材料層611の部分(領域)611Sにおける温度制御手段640の底面から反強磁性領域630までの距離よりも長い。このように、強磁性材料層611の軸線方向に沿って強磁性材料層611の温度を変化させるが、温度の異なる強磁性材料層611の領域は、2つの群に分けられている。図14にあっては、領域611Sには千鳥状のハッチングを付している。
【0085】
実施例6にあっても、第1電極621から第2電極622へと磁壁駆動電流を流すと、あるいは又、第2電極622から第1電極621へと磁壁駆動電流を流すと、強磁性材料層611の内部にジュール熱が生成し、生成したジュール熱によって、強磁性材料層611及び反強磁性領域630の温度が上昇する。ここで、強磁性材料層の領域611Sにおける温度上昇ΔTSは、領域611Lにおける温度上昇ΔTLよりも少ない。従って、強磁性材料層611の領域611Lにおいては、領域611Sよりも、強磁性材料層611と反強磁性領域630との間の交換結合の消滅あるいは低下が、確実に生じる。ここで、移動開始前に強磁性材料層の領域611Sに位置していた磁壁は、磁壁駆動電流を流すと移動を開始し、強磁性材料層611の領域611Lを速やかに通過する。強磁性材料層611の領域611Lを磁壁が通過中、あるいは、通過が完了した時点で、磁壁駆動電流を流すことを停止すると、あるいは又、磁壁駆動電流の値を低減すると、強磁性材料層611の領域611Sにあっては、その温度が直ちに低下し、強磁性材料層611と反強磁性領域630との間の交換結合が再び生じる。それ故、磁壁の移動を、強磁性材料層611の領域611Sにおいて確実に停止させることができる。温度制御手段640として、一種のヒートシンクを設ける代わりに、ヒータを設けてもよい。
【0086】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが,本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した情報記憶素子の構成や構造、構成材料、製造方法等は例示であり、適宜、変更することができる。強磁性材料層(強磁性記録層)への情報の書込みあるいは読出しとして、代替的に、電流によって形成された磁界に基づき情報が書き込まれ、強磁性材料層における磁界の方向を検出することで情報が読み出される形態とすることもできる。ここで、この場合には、例えば、磁界形成/検出手段として、具体的には、磁界を生成させるコイルや配線を挙げることができる。
【0087】
実施例1の情報記憶素子の変形例を図15に模式的な一部断面図を示すように、情報記憶素子700における帯状の強磁性材料層(強磁性記録層)711を、例えば、「U」字状の立体形状とすることもできる。係る情報記憶素子700は、例えば、以下の方法で製造することができる。即ち、シリコン半導体基板から成る基板710に、非磁性体膜723A及び磁化参照層723Bの積層構造を有する第3電極723を形成した後、基板710上に、層間絶縁層715及び反強磁性材料層730Aが、多段に積層された積層構造体を形成する。次いで、第3電極723の上方の積層構造体に開口部を形成し、係る開口部内に強磁性材料層711を形成し、強磁性材料層711上に絶縁膜732を形成し、開口部の底部に位置する絶縁膜732の部分、積層構造体の頂面上の絶縁膜732の一部分を除去する。その後、開口部内を第2電極722で埋め込み、更には、積層構造体の頂面上に露出した強磁性材料層711上に第1電極721を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1の(A)及び(B)は、実施例1の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図2】図2の(A)〜(F)は、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図である。
【図3】図3の(A)〜(E)は、図2の(F)に引き続き、実施例1の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法を説明するための情報記憶素子の概念図である。
【図4】図4の(A)〜(D)は、実施例1の情報記憶素子の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図である。
【図5】図5の(A)及び(B)は、実施例2の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図6】図6の(A)及び(B)は、実施例2の情報記憶素子の製造方法を説明するための部分的な平面図、及び、基板等の模式的な一部断面図である。
【図7】図7の(A)及び(B)は、図6の(A)及び(B)に引き続き、実施例2の情報記憶素子の製造方法を説明するための部分的な平面図、及び、基板等の模式的な一部断面図である。
【図8】図8の(A)及び(B)は、図7の(A)及び(B)に引き続き、実施例2の情報記憶素子の製造方法を説明するための部分的な平面図、及び、基板等の模式的な一部断面図である。
【図9】図9の(A)は、実施例2の情報記憶素子の第1電極へ+Vm、周期trの電圧を印加したときの磁壁再生率を示すグラフであり、図9の(B)は、比較例の情報記憶素子の第1電極へ+Vm、周期trの電圧を印加したときの磁壁再生率を示すグラフである。
【図10】図10の(A)は、実施例2の情報記憶素子の第1電極に印加する電圧の変調例を示し、図10の(B)は、そのときの磁壁再生率の測定結果を示すグラフである。
【図11】図11の(A)及び(B)は、実施例3の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図12】図12の(A)及び(B)は、実施例4の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図13】図13の(A)及び(B)は、実施例5の情報記憶素子の模式的な部分的平面図及び模式的な一部断面図である。
【図14】図14は、実施例6の情報記憶素子の模式的な一部断面図である。
【図15】図15は、実施例1の情報記憶素子の変形例の模式的な一部断面図である。
【符号の説明】
【0089】
100,200,300,400,500,600,700・・・情報記憶素子、110,210,310,410,510,610,710・・・基板、111,211,311,411,511,611,711・・・強磁性材料層(強磁性記録層)、112・・・磁化領域、113・・・磁壁、114,214,313,414,514,614,715・・・層間絶縁層、121,221,321,421,521,621,721・・・第1電極、122,222,322,422,522,622,722・・・第2電極、123,223,323,423,523,623,723・・・第3電極、123A,223A,323A,423A,523A,623A,723A・・・非磁性体膜、123B,223B,323B,423B,523B,623B,723B・・・磁化参照層、124,125・・・配線、130,230,330,430,530,630,730・・・反強磁性領域、230A・・・反強磁性材料層、231・・・溝部、232,732・・・絶縁膜、640・・・温度制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
強磁性材料層の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域が設けられている情報記憶素子における情報書込み・読出し方法であって、
磁壁の移動時、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させる、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項2】
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させる請求項1に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項3】
複数の反強磁性領域が離間して配置されており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である請求項2に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項4】
磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度が、各反強磁性領域において異なっており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である請求項2に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項5】
強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が大きい領域と小さな領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の断面積が大きい領域の数はN以上である請求項2に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項6】
強磁性材料層の比抵抗値が高い領域と低い領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の比抵抗値が低い領域の数はN以上である請求項2に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項7】
強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されている請求項1に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項8】
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態を情報として書き込む請求項1に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項9】
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値を情報として第3電極から読み出す請求項8に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項10】
電流誘起磁壁移動を生じさせるために強磁性材料層に流す電流を規則的に変調する請求項1に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項11】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
強磁性材料層の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域が設けられている情報記憶素子。
【請求項12】
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる請求項11に記載の情報記憶素子。
【請求項13】
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値が情報として第3電極から読み出される請求項12に記載の情報記憶素子。
【請求項14】
複数の反強磁性領域が離間して配置されており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である請求項11に記載の情報記憶素子。
【請求項15】
磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度が、各反強磁性領域において異なっており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である請求項11に記載の情報記憶素子。
【請求項16】
強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が大きい領域と小さな領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の断面積が大きい領域の数はN以上である請求項11に記載の情報記憶素子。
【請求項17】
強磁性材料層の比抵抗値が高い領域と低い領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の比抵抗値が低い領域の数はN以上である請求項11に記載の情報記憶素子。
【請求項18】
強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されている請求項11に記載の情報記憶素子。
【請求項1】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
強磁性材料層の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域が設けられている情報記憶素子における情報書込み・読出し方法であって、
磁壁の移動時、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させる、情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項2】
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで生成したジュール熱によって、強磁性材料層と反強磁性領域との間の交換結合を消滅あるいは低下させる請求項1に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項3】
複数の反強磁性領域が離間して配置されており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である請求項2に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項4】
磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度が、各反強磁性領域において異なっており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である請求項2に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項5】
強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が大きい領域と小さな領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の断面積が大きい領域の数はN以上である請求項2に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項6】
強磁性材料層の比抵抗値が高い領域と低い領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の比抵抗値が低い領域の数はN以上である請求項2に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項7】
強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されている請求項1に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項8】
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態を情報として書き込む請求項1に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項9】
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値を情報として第3電極から読み出す請求項8に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項10】
電流誘起磁壁移動を生じさせるために強磁性材料層に流す電流を規則的に変調する請求項1に記載の情報記憶素子における情報書込み・読出し方法。
【請求項11】
帯状の強磁性材料層を備えており、
強磁性材料層の一端には第1電極が設けられており、強磁性材料層の他端には第2電極が設けられており、
第1電極と第2電極との間に電流を流すことで電流誘起磁壁移動が生じ、
強磁性材料層において、磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれ、若しくは、磁化状態が情報として読み出され、
強磁性材料層の少なくとも一部に接して、反強磁性材料から成る反強磁性領域が設けられている情報記憶素子。
【請求項12】
強磁性材料層の一部に接して設けられた第3電極を更に備えており、
第3電極は、強磁性材料層の一部に接した非磁性体膜、及び、その上に形成された磁化参照層から構成されており、
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域に磁化状態が情報として書き込まれる請求項11に記載の情報記憶素子。
【請求項13】
第2電極と第3電極との間に電流を流すことで、各磁化領域における電気抵抗値が情報として第3電極から読み出される請求項12に記載の情報記憶素子。
【請求項14】
複数の反強磁性領域が離間して配置されており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である請求項11に記載の情報記憶素子。
【請求項15】
磁化領域の磁化状態を固定しておくことができる上限温度が、各反強磁性領域において異なっており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、反強磁性領域の数はN以上である請求項11に記載の情報記憶素子。
【請求項16】
強磁性材料層の軸線方向と直交する仮想平面で強磁性材料層を切断したときの強磁性材料層の断面積が大きい領域と小さな領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の断面積が大きい領域の数はN以上である請求項11に記載の情報記憶素子。
【請求項17】
強磁性材料層の比抵抗値が高い領域と低い領域が、強磁性材料層の軸線方向に沿って交互に設けられており、
記憶する情報のビット数をNとしたとき、強磁性材料層の比抵抗値が低い領域の数はN以上である請求項11に記載の情報記憶素子。
【請求項18】
強磁性材料層の軸線方向に沿って強磁性材料層の温度を変化させる温度制御手段が、強磁性材料層近傍に配置されている請求項11に記載の情報記憶素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−98096(P2010−98096A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267222(P2008−267222)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]