説明

感光性組成物及びそれを用いた感光性グリーンシートならびにセラミックス多層基板

【課題】感光性組成物の粘度上昇、ゲル化の抑制をより簡便かつ汎用的な手段で可能とする感光性組成物を提供すること。
【解決手段】(A)酸性基を有する樹脂を有する感光性有機成分、(B)少なくともアルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する無機粉末、(C)有機溶剤を混合して得られる感光性組成物、および(D)少なくとも1種の油溶性キレート形成化合物を含有することを特徴とする感光性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物及び感光性グリーンシート、それらを用いたセラミック多層基板に関する。本発明の感光性組成物は、高周波無線用セラミックス多層基板などの回路材料や、高密度サーマルビア、電子部品用チップインダクターやノイズフィルタ用セラミックス多層電子部品用材料、プラズマディスプレイの隔壁、前面板誘電体、フィールドエミッションディスプレイの絶縁層などのディスプレイ部材などに用いられる。
【背景技術】
【0002】
携帯電話をはじめとする無線通信技術の普及が著しい。従来の携帯電話は800MHz〜1.5GHzの準マイクロ波帯を用いたものであったが、情報量の増大に伴い、搬送周波数をより高周波であるマイクロ波帯からミリ波帯とした無線技術が提案され、実現される状況にある。こうした高周波無線回路は、移動体通信やネットワーク機器としての応用が期待されており、中でもブルートゥース(Bluetooth)やITS(Intelligent Transport System,高度交通情報システム)での利用によってますます重要な技術となりつつある。
【0003】
これらの高周波回路を実現するためには、そこで使用される基板材料も、当該使用周波数帯、すなわち、1〜100GHzで優れた高周波伝送特性をもつ必要がある。優れた高周波伝送特性を実現するためには、低誘電率でかつ誘電損失が低いこと、加工精度が高いこと、寸法安定性がよいといった要件が必要であり、なかでもセラミックス基板が有望視されてきた。
【0004】
しかしながら、これまでのセラミックス基板材料は、寸法安定性に優れているものの、微細加工度が低かったため、特に高周波領域において十分な特性を得ることができなかった。このような微細加工精度の問題を改良する方法として、感光性組成物から形成したグリーンシートを用いたフォトリソグラフィー技術によるビアホール形成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、フォトリソグラフィー技術を用いた場合、パターン形成可能とするためにバインダ等の樹脂に極性基をもたせた構造をとることが多い。その場合、主に金属酸化物から構成されるセラミックス粉末とバインダ樹脂の反応が進行し、粘度上昇、ゲル化といった問題が生じる。そのため、用いることのできるセラミックス粉末が制限され材料選択の幅が狭かった。これらの課題を解決する方法として、ゲル化抑制剤としてベンゾトリアゾールを添加する方法、溶剤として高沸点のアルコール系溶剤を用いることが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開平6−202323号公報
【特許文献2】特開平9−218508号公報
【特許文献3】特開2000−272971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2、3記載の方法は、たしかにゲル化を抑制するのに有効な手段であるが、反応性の官能基を有する樹脂をバインダとして用いる時や、感光性を付与するために樹脂性分が多い時には、大量に添加する必要があったり、また加熱処理の場合は高温のオーブン中で長時間加熱する必要があるため、経時析出の問題や工程時間が長くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、感光性組成物の粘度上昇、ゲル化の抑制をより簡便かつ汎用的な手段で可能とする感光性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、(A)酸性基を有する樹脂を有する感光性有機成分、(B)少なくともアルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する無機粉末、(C)有機溶剤を混合して得られる感光性組成物、および(D)少なくとも1種の油溶性キレート形成化合物を含有することを特徴とする感光性組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成により粘度上昇、ゲル化が抑制され、酸性基を有する樹脂を含有した感光性組成物として用いることが可能な無機粉末の選択の幅が広がり、より多様な無機粉末において感光性機能を付与することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の組成物は(A)酸性基を有する樹脂を有する感光性有機成分、(B)少なくともアルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する無機粉末、(C)有機溶剤を混合して得られる感光性組成物、および(D)少なくとも1種の油溶性キレート形成化合物を含有する。本発明において用いられる感光性有機成分は、バインダとなる樹脂成分とそれに感光性を付与する有機成分の総体を指す。感光性有機成分は、感光性を発現する化合物(成分A1)、バインダーポリマー(A2)、油溶性キレート形成化合物(D)およびその他の成分に大別される。また、本発明において感光性組成物は、ペースト体として、塗布・積層に際して、(C)有機溶剤が用いられるものではあるが、組成物中の各組成に関するパラメータ(各成分の含有割合など)についての説明においては、原則として溶剤成分は除外して算出されたものである。
【0011】
感光性を発現する化合物(成分A1)は、光によって硬化するネガタイプでも、光によって可溶化するポジタイプでも良く、a)エチレン性不飽和基含有化合物および光重合開始剤、b)グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物からなる群から選択された1種以上のカチオン重合性化合物および光カチオン重合開始剤、またはc)キノンジアジド化合物、ジアゾニウム化合物、アジド化合物から選択された1種以上の化合物等が好ましく用いられる。
【0012】
a)成分のうちのエチレン性不飽和基含有化合物は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、また、これらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素または臭素原子に置換したモノマー、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボキシメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに変えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなど、さらにアクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸などが挙げられる。その他、各種アルコール類(例えばエタノール、プロパノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)とアクリル酸(またはメタクリル酸)とのエステル、カルボン酸(例えば酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸など)とアクリル酸グリシジル(あるいは、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジル、またはテトラグリシジルメタキシリレンジアミン)との反応生成物、アミド誘導体(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドなど)、エポキシ化合物とアクリル酸(またはメタクリル酸)との反応物、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、各種ウレタンアクリレート、ロジン変成アクリレートなどが挙げられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができ、そのa)成分中に占める割合としては50重量%以上99.95重量%以下が好ましく、より好ましくは60重量%以上90重量%以下である。50重量%以上とすることで精細なパターン加工が可能となり、99.95重量%以下とすることで焼成後のパターン形状を良好に保つことができる。
【0013】
a)成分のうちの光重合開始剤は、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組み合わせなどがあげられる。特に波長400〜450nmの可視光に感度を有するものを用いるのが好ましい。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0014】
光重合開始剤のa)成分中に占める割合としては、0.05重量%以上50重量%以下が好ましく、より好ましくは、1重量%以上35重量%以下である。この範囲内であれば感度もよく、露光部の現像残渣の残存率も少なくできる。
【0015】
b)成分のうちのグリシジルエーテル化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールヘキサフルオロアセトンジグリシジルエーテル、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテル、1,3−ビス(1−(2,3−エポキシプロポキシ)−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−(2,3−エポキシプロポキシ)−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロエチル)シクロヘキシル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)オクタフルオロビフェニル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂等あるいは、これらエポキシ樹脂のカルボン酸変性物等が挙げられる。
【0016】
b)成分のうちの脂環式エポキシ化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル−8,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン、商品名セロキサイド2021(エポキシ当量128〜145g/eq)、商品名セロキサイド2080(エポキシ当量190〜210)などのダイセル化学工業(株)製、2官能性脂環式エポキシ化合物、商品名エポリードGT−301(エポキシ当量200〜220g/eq)、商品名エポリードGT−401(エポキシ当量210〜235g/eq)などのダイセル化学工業(株)製、3及び4官能性脂環式エポキシ化合物、商品名EHPE(エポキシ当量170〜190g/eq、軟化点70〜90℃)、商品名EHPEL3150CEなどのダイセル化学工業(株)製、固形の脂環式エポキシ化合物等の脂環式エポキシ化合物(A−1)等が挙げられる。
【0017】
b)成分のうちのオキセタン化合物の具体例としては、2−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3 ―エチル― 3 ―ヒドロキシメチルオキセタン、2 ―エチルヘキシシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3 ―エチル― 3{[(3 ―エチルオキセタン― 3 ―イル)メトキシ]メチル}オキセタン、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、シリコン変性オキセタン化合物等のオキセタン化合物等が挙げられる。
【0018】
グリシジルエーテル化合物、脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物からなる群から選択された1種以上のカチオン重合性化合物のb)成分中に占める割合としては、75重量%以上99.9重量%以下が好ましく、より好ましくは75重量%以上90重量%以下である。この範囲内とすることでパターン形状を良好に保つことができる。
【0019】
b)成分のうちの光カチオン重合開始剤の具体例としては、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族スルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート等の芳香族ヨードニウム塩、芳香族ヨードシル塩、芳香族スルホキソニウム塩、メタロセン化合物等が挙げられる。光カチオン重合開始剤のb)成分中に占める割合として0.01重量%以上25重量%以下が好ましい。
【0020】
また、光カチオン重合促進剤として、9,10−ジメトキシ−2−エチル−アントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2,4−ジエチルチオキサントン等を加えることも好ましく行われる。
【0021】
c)成分のうちのキノンジアジド化合物としては、アミノ基に対しオルソまたはパラの位置に水酸基を持つ芳香族化合物をジアゾ化して得られる化合物、ベンゼンやナフタレン誘導体のジアゾニウム塩でジアゾ基に対しオルソまたはパラに水酸基を有する化合物をアルカリ水溶液中で加熱することにより得られる化合物等のことを言い、一般的には後述のジアゾニウム化合物のようにジアゾ基がイオン化せず塩を形成しない。具体的には、通常ポジ型PS版、ワイポン版、フォトレジストなどに用いられているベンゾキノンジアジドスルホン酸およびその誘導体、ナフトキノンジアジドスルホン酸およびその誘導体などが挙げられる。 具体的には1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸クロリド、1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ベンゾキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸クロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン 酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸クロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−6−スルホン酸クロリド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−6−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−6−スルホン酸などが挙げられる。
【0022】
これらの中では1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸およびその誘導体、および1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸およびその誘導体が有効である。
【0023】
これらナフトキノンジアジド化合物は、ポリヒドロキシフェニルやピロガロールアセトン樹脂、パラヒドロキシスチレン共重合体や、フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂などのアルカリ可溶性成分と混合、もしくは誘導体化して用いることが好ましい。好ましい誘導体の具体例としては、1,2−ナフトキノン−2−ジアジドスルホン酸のポリヒドロキシフェニルやピロガロールアセトン樹脂、パラヒドロキシスチレン共重合体や、フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂などとのエステルが挙げられる。
【0024】
これらキノンジアジド化合物を含む場合の感光性有機成分中に占める割合としては、1重量%以上90重量%以下が好ましく、さらには3重量%以上80重量%以下が好ましい。キノンジアジド化合物が1重量%より少ない場合は露光時のキノンジアジド化合物による溶剤溶解性の変化が少なくなるためパターン形成性が悪くなり、一方、90重量%より多い場合は感光性組成物の分散性などに問題を生じる場合がある。
【0025】
c)成分のうちのジアゾニウム化合物としては、ジアゾモノマーと縮合剤との縮合生成物がある。ここでジアゾモノマーとしては、4−ジアゾジフェニルアミン、1−ジアゾ−4−N,N−ジメチルアミノベンゼン、1−ジアゾ−4−N,N−ジエチルアミノベンゼン、1−ジアゾ−4−N−エチル−N−ヒドロキシエチルアミノベンゼン、1−ジアゾ−4−N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノベンゼン、1−ジアゾ−2,5−ジエトキシ−4−ベンゾイルアミノベンゼン、1−ジアゾ−4−N−ベンジルアミノベンゼン、1−ジアゾ−4−N,N−ジメチルアミノベンゼン、1−ジアゾ−4−モルホリノベンゼン、1−ジアゾ−2,5−ジメトキシ−4−p−トリルメルカプトベンゼン、1−ジアゾ−2−エトキシ−4−N,N−ジメチルアミノベンゼン、p−ジアゾジメチルアニリン、1−ジアゾ−2,5−ジブトキシ−4−モルホリノベンゼン、1−ジアゾ−2,5−ジエトキシ−4−モルホリノベンゼン、1−ジアゾ−2,5−ジメトキシ−4−モルホリノベンゼン、1−ジアゾ−2,5−ジエトキシ−4−p−トリルメルカプトベンゼン、1−ジアゾ−4−N−エチル−N−ヒドロキシエチルアミノベンゼン、1−ジアゾ−3−エトキシ−4−N−メチル−N−ベンジルアミノベンゼン、1−ジアゾ−3−クロロ−4−N,N−ジエチルアミノベンゼン、1−ジアゾ−3−メチル−4−ピロリジノベンゼン、1−ジアゾ−2−クロロ−4−N,N−ジメチルアミノ−5−メトキシベンゼン、1−ジアゾ−3−メトキシ−4−ピロリジノベンゼン、3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン、3−エトキシ−4−ジアゾジフェニルアミン、3−(n−プロポキシ)−4−ジアゾジフェニルアミン、3−(イソプロポキシ)−4−ジアゾジフェニルアミンなどが挙げられる。また、縮合剤としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、またはベンズアルデヒドなどが挙げられる。更に塩素イオンやテトラクロロ亜塩酸などを用いることにより水溶性のジアゾ樹脂を得ることができ、また四フッ化ホウ素、六フッ化隣酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、4,4’−ビフェニルジスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルベンゼンスルホン酸などを用いることにより、有機溶剤可溶性のジアゾ樹脂を得ることができる。
【0026】
また、ジアゾニウム化合物とヒドロキシベンゾフェノン類との当モル反応物も用いることができる。ただし両者が反応してアゾ化合物を形成することのないよう、pHは7.5以下で接触させる。ジアゾニウム化合物は上記に示したジアゾ樹脂と同様のものが用いられる。ヒドロキシベンゾフェノン類としては、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノンのアルカリ塩、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸などが用いられる。特にスルホン酸基を含むものは安定性に優れている。
【0027】
これらジアゾニウム化合物を含む場合の感光性有機成分中に占める割合としては、5重量%以上〜80重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以上〜50重量%以下である。ジアゾニウム化合物が少なすぎる場合は、硬化が不十分となる場合があり、逆に多すぎる場合は組成物の保存安定性に問題が生じる場合がある。
【0028】
c)成分のうちのアジド化合物としては、分子中にアジド基を有するものであり、具体的には、2,6−ジクロロ−4−ニトロアジドベンゼン、アジドジフェニルアミン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアジドジフェニル、4’−メトキシ−4−アジドジフェニルアミン、4,4’−ジアジドジフェニルアミン、4,4’−ジアジドジフェニルメタン、4’−ニトロフェニルアゾベンゼン−4−アジド、1−アジドピレン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアジドジフェニル,4,4’−ジアジドフェニルアゾナフタレン、p−フェニレン−ビスアジド、p−アジドベンゾフェノン、4,4’−ジアジドベンゾフェノン、4,4’−ジアジドジフェニルメタン、4,4’−ジアジドスチルベン、4,4’−ジアジドカルコン、2,6−ジ−(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ジ−(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノンなどが挙げられる。これらアジド化合物は単独で用いられるが、感光波長域の短いものでは、例えば1−ニトロピレンのような増感剤を用いて感光波長域を長波長側に分光増感することが好ましい。
【0029】
これらアジド化合物を含む場合の感光性有機成分中に占める割合としては、5重量%以上〜70重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以上〜50重量%以下である。アジド化合物が少なすぎる場合は、感光性成分の硬化が不十分となる場合があり、逆に多すぎる場合は組成物の安定性に悪影響をもたらす場合がある。
これらの中で、材料選択のバリエーションの多さ、それに基づく性能のコントロールし易さなどから、a)エチレン性不飽和基含有化合物および光ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0030】
a)〜c)成分から選ばれる化合物、すなわち成分A1のうち、a)およびb)の含有量は感光性有機成分に対して5〜93重量%が好ましい。より好ましくは10〜70重量%である。5〜93重量%の範囲とすることで、パターン加工性を良好に維持することができる。
【0031】
本発明では成分A1は、光によるパターン形成をより効果的に行うために用いられる。成分A1の分子構造形態について、直鎖状、分枝状、環状、あるいはそれらの組み合わせなど、なんら限定されるものではないが、相溶性の点から直鎖状が好ましい。成分A1の重量平均分子量は好ましくは100〜100000、より好ましくは100〜50000、更に好ましくは300〜45000である。前記範囲内であれば、柔軟性が良好で、かつ現像時の溶解性も良好である。成分A1は、エチレン性不飽和基以外に有機基(結合)を有してもよい。そのような有機基(結合)の例としては、アルキレンオキサイド基、アルキル基、アリール基、アリーレン基、アラルキル基、ヒドロキシアルキル基、ウレタン結合などが例示できる。これらの中でも、相溶性の点からアルキレンオキサイド、特にエチレンオキサイドなどの極性基が好ましい。このような化合物を光反応性成分として用いることにより、感光性有機成分の相溶性を向上し、フォトリソ加工性を向上させることができる。成分A1中のエチレンオキサイド含有量としては、成分A1に対して8〜70重量%が好ましい。このような化合物の中でも、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを含む化合物は、焼け飛び性が良いため特に好ましい。
【0032】
本発明において感光性有機成分は、さらにバインダーポリマー(成分A2)を有する。成分A2としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシフェニルやピロガロールアセトン樹脂、パラヒドロキシスチレン共重合体や、フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂などの各種ポリマーを用いることができるが、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが好ましい。さらに、無機粉末の分散性や現像性の観点から、成分A2はカルボキシル基やフェノール性水酸基などの酸性基を有する。また、感光によるパターン形成性の観点から、側鎖にエチレン性不飽和二重結合などの反応性官能基を有していることが好ましい。また、無機粉末との反応を抑制する観点から側鎖に導入するエチレン性不飽和二重結合化合物は嵩高い脂環式や芳香環を有していることが好ましい。側鎖にエチレン性不飽和基を有することでパターン形成性が向上し、またカルボキシル基を含有することにより、アルカリ水溶液での現像を可能にする。
【0033】
このようなバインダーポリマーは例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニルまたはこれらの酸無水物などのカルボキシル基含有モノマーおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのモノマーを選択し、ラジカル重合開始剤を用いて重合または共重合させて重合体を得たのち、ポリマー中の活性水素含有基であるメルカプト基、アミノ基、水酸基やカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させることにより得られるが、これらに限定されるものではない。グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジル、イソクロトン酸グリシジル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレートなどがある。イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリロイルイソシアネート、メタアクリロイルイソシアネート、アクリロイルエチルイソシアネート、メタアクリロイルエチルイソシアネートなどがある。また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中の活性水素含有基に対して0.05〜0.95モル当量付加させることが好ましい。活性水素含有基がメルカプト基、アミノ基、水酸基の場合にはその全量を側鎖基の導入に利用することもできるが、カルボキシル基の場合には、ポリマーの酸価が好ましい範囲になるよう付加量を調整することが好ましい。なお、酸価の測定は、JIS−K0070(1992)に準拠して求める。
【0034】
また、成分A2の熱分解温度が500℃以下であること、さらには450℃以下であること、また150℃以上、さらに好ましくは400℃以上であることが好ましい。熱分解温度が150℃以上であると、感光性組成物の熱安定性が保持され、組成物を塗布し、パターン加工に到るまでの各工程において、感光性を損なうことなく良好なパターン加工が可能となる。また熱分解温度が500℃以下であると、焼成工程でのクラック、剥がれ、反りや変形を防止できる。熱分解温度を調整する手法は、共重合成分のモノマーを選択することで可能となる。特に低温で熱分解するモノマーを共重合成分とすることで共重合体の熱分解温度を低くできる。このように低温で熱分解する成分として、例えばメチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、α−メチルスチレン等を挙げることができる。熱分解温度は、TG測定装置(TGA−50、(株)島津製作所(株)製)にて約5mgの試料をセットし、空気雰囲気で流量20ml/min、昇温速度20〜0.6℃/minで700℃まで昇温する。その結果、温度(縦軸)と重量変化(横軸)の関係がプロットされたチャートを印刷し、分解前(横軸に平行納部分)の部分と分解中の部分の接線を引き、その交点の温度を熱分解温度とする、等の方法で測定できる。
【0035】
また、成分A2のTg(ガラス転移温度)は、−60〜150℃が好ましい。より好ましくは−40〜130℃で、さらに好ましくは−20〜100℃である。Tgを−60℃以上とすることでシートの粘着性を低減することができ、Tgを150℃以下とすることでシートの柔軟性を保持することができる。Tgの測定法は、島津製作所(株)製DSC−50型測定装置を用い、サンプル重量10mg、窒素気流下で昇温速度20℃/分で昇温し、ベースラインの偏起が開始する温度をTgとした。
【0036】
さらに用いる成分A2の重量平均分子量は10万以下が好ましい。より好ましくは5千〜8万である、さらに好ましくは1万〜3万である。重量平均分子量を10万以下とすることにより、現像液溶解性が保持され、その結果より精細なパターン化が可能となる。さらに成分A2の粘度は重量平均分子量に比例して増大するため、感光性組成物の粘度を低くして、濾過や脱気、塗布工程での作業性を保持するためには、成分A2の重量平均分子量を低くすることが好ましい。重量平均分子量はテトラヒドロフランを移動相としたサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。カラムはShodex KF−803を用い、重量平均分子量はポリスチレン換算により計算した。
【0037】
感光性有機成分に、a)成分を用いた場合の好ましい成分A2は、上述のようなエチレン性不飽和二重結合含有化合物の共重合により、あるいは共重合で得られた成分A2の反応性官能基の一部に、反応性官能基を有するエチレン性不飽和基含有化合物を付加するなどして得ることができる。具体的には、不飽和カルボン酸を共重合成分に持つ成分A2のカルボキシル基の一部に、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有アクリレート化合物を付加させる方法により、カルボキシル基とエチレン性不飽和二重結合を有するバインダーポリマーが得られる。このような成分A2の酸価は50〜140(mgKOH/g)であることが好ましい。酸価を140以下とすることで、現像許容幅を広くすることができ、酸価を50以上とすることで、未露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が保持され、高精細なパターンを得ることができる。さらに、成分A2の二重結合密度を0.1〜4mmol/gとすることが好ましく、さらには0.2〜3mmol/gが好ましい。二重結合密度が0.1mmol/g未満では露光によるパターン形成が十分でなく膜減りが大きく、現像性が著しく悪くなる。一方4mmol/gを越える範囲では焼成工程でのクラック、剥がれ、反りなどが発生する。
【0038】
成分A2の感光性有機成分中に占める割合としては1重量%以上60重量%以下が好ましい。より好ましくは5重量%以上50重量%以下である。1重量%以上60重量%以下の範囲とすることで、パターン加工性と、焼成時の収縮などの特性を両立させることができる。
【0039】
さらに、感光性有機成分のその他の成分として、紫外線吸収剤、増感剤、重合禁止剤、可塑剤、分散剤、酸化防止剤などの添加剤と(C)有機溶剤を含有することができる。紫外線吸収剤は、高アスペクト比、高精細、高解像度を得るために添加される。紫外線吸収剤としては有機系染料からなるもの、中でも350〜450nmの波長範囲で高UV吸収係数を有する有機系染料が好ましく用いられる。具体的には、アゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、クマリン系染料、アミノケトン系染料、アントラキノン系、ベンゾフェノン系、ジフェニルシアノアクリレート系、トリアジン系、p−アミノ安息香酸系染料などが使用できる。有機系染料は紫外線吸収剤として添加した場合にも、焼成後の隔壁中に残存しないで紫外線吸収剤による絶縁膜特性の低下を少なくできるので好ましい。これらの中でもアゾ系およびベンゾフェノン系染料が吸収波長を所望の波長域に制御しやすく好ましい。紫外線吸収剤を含む場合の感光性有機成分中の含有量は0.05重量%以上5重量%以下が好ましい。より好ましくは0.1重量%以上1重量%以下である。この範囲であれば、焼成後の絶縁膜特性を低下させることなく高アスペクト比、高精細、高解像度が得られる。
【0040】
増感剤は、感度を向上させるために添加される。増感剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニル−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。なお、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものがある。増感剤を添加する場合、その含有量は感光性有機成分中0.05重量%以上30重量%以下が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上20重量%以下である。増感剤の量が少なすぎれば光感度を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば露光部の現像後の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0041】
さらに、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤の具体的な例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられる。重合禁止剤を添加する場合、その含有量は、感光性有機成分中0.01重量%以上10重量%以下が好ましい。
【0042】
また、可塑剤、酸化防止剤を添加してもよい。可塑剤の具体的な例としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリンなどがあげられる。酸化防止剤の具体的な例として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−4−エチルフェノール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、ジラウリルチオジプロピオナート、トリフェニルホスファイトなどが挙げられる。酸化防止剤を添加する場合、その含有量は感光性有機成分中0.01重量%以上10重量%以下が好ましい。
【0043】
酸性基を有する樹脂を有する感光性有機成分(A)の感光性組成物全体に占める割合は10重量%以上、90重量%以下が好ましく、15重量%以上70重量%以下がより好ましく、20重量%以上、50重量%以下がさらに好ましい。
【0044】
(C)有機溶剤はスラリーもしくはペーストを作製する際に感光性有機成分を溶解し得るものであればよい。例えば、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ −ブチロラクトン、トルエン、トリクロロエチレン、メチルイソブチルケトン、イソフォロン、エチレングリコールモノブチルエーテル( BG )、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル( BD G) 、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、3 −メトキシ− 3− メチル− 1 −ブタノール、3 −メトキシ− 3− メチルーブチルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレンカーボネート、メトキシブチルアセテートなどや、これのうち1種以上を含有する有機溶剤混合物が用いられる。本発明では感光性有機成分には酸性基を有する樹脂を含有するため、有機溶剤は極性溶媒が好ましい。
【0045】
前記有機溶剤がペーストに含まれる量は目的用途に応じて様々であり、所望の粘度範囲ならば、なんら制限されるものではないが、例えば、塗布段階においては、ペースト(無機粉末を除く)中に10〜30重量%含まれていることが好ましい。
【0046】
なお、組成物中の各成分の含有量の記載において、「感光性有機成分中」と記載されている場合は、(C)有機溶剤は、「感光性有機成分」に含めずに算出するものとする。
【0047】
さらに本発明では(D)少なくとも1種の油溶性のキレート形成化合物が用いられる。本発明で用いる成分A2は酸性基を有しており、本発明の必須成分である無機粉末の金属イオンと反応し、しばしば粘度上昇、ゲル化といった問題を引き起こす。このような問題に対し、油溶性のキレート形成化合物を用いることで、無機粉末の金属イオンとキレートを形成し、金属イオンと成分A2の酸性基との反応を抑制することが可能となる。最初から有機金属錯体を添加した場合は、錯体の金属イオン部分が障害となり、酸性基との反応を有効に抑制することができない。なお、本発明において、油溶性キレート形成化合物は感光性有機成分に含まれるものとして、組成物中の各成分の含有量を算出するものとする。
【0048】
本発明で用いられる油溶性キレート形成化合物としてβ―ジケトン類、例えばアセチルアセトン、アセト酢酸エチル、トリフルオロアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ジピバロイルメタン、ピバロイルトリフルオロアセトン、テノイルトリフルオロアセトン、ビスアセチルアセトン、シュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ヒドラジン誘導体、リン酸誘導体、アミノカルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体、アミン誘導体、1,10−フェナントロリン、2,2ビピリジンなどが挙げられる。
【0049】
これらの中でもアミノカルボン酸誘導体がより好ましい。アミノカルボン酸は一般には有機溶剤には非常に溶解しにくい。そこで、本発明では、アミノカルボン酸に含まれるカルボキシル基の一部または全部をアミンと反応させ、アミノカルボン酸のアミン塩(以下、単に「アミン塩」という)とすることで油溶性として用いる。アミノカルボン酸としてはキレート作用を奏するために分子中に2以上のカルボキシル基を含むものであれば特に限定されないが、このカルボキシル基の数は2〜6であることが好ましい。分子中に2つのカルボキシル基を含むアミノカルボン酸としては、例えば、エチレンジアミン二(o−ヒドキシフェニル)酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、エチレンジアミン二酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸など;分子中に3つのカルボキシル基を含むアミノカルボン酸としては、例えば、ニトリロ三酢酸(NTA)やヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三プロピオン酸、メチルグリシン二酢酸など;分子中に4つのカルボキシル基を含むアミノカルボン酸としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)や1,3−プロパンジアミン四酢酸(1,3PDTA)、1,2−プロパンジアミン四酢酸(1,2PDTA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸(1,3PDTA −OH)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、トランス1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸(CMGA)、ジカルボキシメチルアスパラギン酸(CMAA)、S,S−エチレンジアミン二琥珀酸(S,S−EDDS)など;分子中に5つのカルボキシル基を含むアミノカルボン酸としては、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)など;分子中に6つのカルボキシル基を含むアミノカルボン酸としては、例えば、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)などが挙げられる。これらのアミノカルボン酸は、単独で、あるいは任意に選ばれる2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
本発明で用いられるアミンとしてはアルキルアミンが好ましく、アルキルアミンは、アルキル基を有し、且つ、アルキルアミン全体の炭素数の合計が8以上のものである。アルキルアミンの炭素数の合計が8未満ではキレート剤が親油性とならず、所望の効果が得られないため、炭素数の合計は8以上とする。好ましくは10以上である。しかし炭素数の合計が40を超えるアルキルアミンは殆ど市販されておらず入手困難であり、しかもコスト高となるため炭素数の合計は40以下とすることが好ましい。より好ましくは36以下である。なお、上記アルキルアミンに含まれるアルキル基の炭素数は4以上であることが好ましい。
【0051】
上記アルキルアミンとしては、炭素数の合計が8以上のものであれば特に限定されず、1級〜3級アルキルアミンや、分子内に1級アルキルアミンと2級アルキルアミンの両方を有するジアミンの何れも用いることができる。1級アルキルアミンとしては、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ココナットアミン(混合アミン)、ソヤアミン(混合アミン)、牛脂アミン(混合アミン)、硬化牛脂アミン(混合アミン)等を使用できる。
【0052】
1級混合アルキルアミンとしては、例えば、花王株式会社製の「ファーミン86T(商品名)」、ライオン株式会社製の「アーミン16D(商品名)」などが入手可能である。
【0053】
2級アルキルアミンとしては、例えば、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジミリスチルアミン、ジパルミチルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジココナットアミン(混合アミン)、ジソヤアミン(混合アミン)、ジ牛脂アミン(混合アミン)、ジ硬化牛脂アミン(混合アミン)等を使用できる。
【0054】
2級混合アミンとしては、例えば、ライオン株式会社製の「アーミン2C(商品名)」、花王株式会社製の「ファーミンD86(商品名)」などが入手可能である。
【0055】
3級アルキルアミンとしては、例えば、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオレイルアミン、ジメチルココナットアミン(混合アミン)、ジメチルソヤアミン(混合アミン)ジメチル牛脂アミン(混合アミン)、ジメチル硬化牛脂アミン(混合アミン)等を使用できる。
【0056】
3級混合アミンとしては、例えば、花王株式会社製の「ファーミンDM20(商品名)」、ライオン株式会社製の「アーミンDMSD(商品名)」などが入手可能である。
【0057】
ジアミンとしては、分子内に1級アミンと2級アミンを有するものであれば特に限定されないが、例えば、オクチルプロピレンジアミン、デシルプロピレンジアミン、ラウリルプロピレンジアミン、ミリスチルプロピレンジアミン、パルミチルプロピレンジアミン、ステアリルプロピレンジアミン、オレイルプロピレンジアミン、ココナットプロピレンジアミン(混合アミン)、ソヤプロピレンジアミン(混合アミン)、牛脂プロピレンジアミン(混合アミン)、硬化牛脂プロピレンジアミン(混合アミン)等を使用できる。
【0058】
混合ジアミンとしては、例えば、ライオン株式会社製の「デュオミンCD(商品名)」、日本油脂株式会社製の「ニッサンアミンDT(商品名)」などが入手可能である。
【0059】
これらのアルキルアミンは、単独で、あるいは任意に選択される2種以上を混合して用いることができる。
【0060】
なお、上記アルキルアミンの他に、ベンジルアミンやジベンジルアミン等の芳香族アミンや、アルキルイミダゾール、アルキルイミダゾリンなども使用できるが、比較的高価となる。また上記のアミンはアミン誘導体として単独あるいは複数として添加しても良い。
【0061】
このような油溶性のアミノカルボン酸アミン塩としてはキレスト株式会社製の「MZ−2」「MZ−4A」「MZ−8」、ナガセケムテックス株式会社製の「テークランDO」などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0062】
本発明における油溶性キレート形成化合物の混合量は、無機粉末に対して1重量%以上20重量%未満であることが好ましい。さらには1.5重量%以上10重量%未満が好ましい。無機粉末に対して1重量%未満であれば粘度上昇抑制効果が不十分でありゲル化する場合がある。20重量%以上であれば、感光性有機成分に対する割合が増えすぎ、パターン加工性が低下する場合がある。
【0063】
なお、上記混合量は、感光性組成物を得るために油溶性キレート形成化合物と無機粉末を混合する際の量比であり、混合後の感光性組成物においては、これらの成分の一部が反応してキレートを形成し、量比が変わる可能性がある。
【0064】
感光性有機成分の相溶性はヘイズ値(曇値)で評価できる。感光性有機成分のヘイズ値は感光性有機成分をガラス基板に塗布、乾燥した後、ヘイズメーターの測定によって得られる。この際の塗布膜厚は100μmである。本発明において用いられる感光性有機成分は、ヘイズ値が10以下であることが好ましい。前記範囲内においては相溶性が良好であり、光線の透過率が高いため、フォトリソ加工を効果的に行うことができる。
【0065】
本発明において用いられる感光性組成物は、上記感光性有機成分の他に無機粉末を必須成分とする。この無機粉末は焼成工程において焼結するものであり、本発明の目的とする基板形成では、1000℃以下、特に400〜900℃の温度での焼成が好ましいので、いわゆる低温焼成無機粉末が好ましい。もちろん、これらの無機粉末が基板の電気的特性、強度、熱膨張係数などの基本物性を決めるものであるため、目的とする特性に応じて選択されるものである。
【0066】
本発明で用いられる無機粉末として少なくともアルカリ金属、アルカリ土類金属を有するガラス粉末、セラミックス粉末、ガラスセラミックス粉末などが挙げられ、用途に応じて粉末が選択される。これらは単独で用いても良いし、複数組み合わせて用いても良い。
【0067】
本発明で用いる無機粉末の平均粒子径としては0.01μm〜10μmであることが好ましい。無機粉末の平均粒子径はレーザー回折法やBET法にて比表面積を測定した後に、粒子を球と仮定して換算することなどにより求められる。粒子がナノサイズとなる場合、正確に測定することは困難となるので、BET法換算値を用いるのが好ましい。
【0068】
無機粉末の混合量としては、感光性組成物中10重量%以上90重量%以下が好ましく、30重量%以上85重量%以下がより好ましく、50重量%以上80重量%以下がさらに好ましい。10重量%以上とすることで、焼成時のパターン形状を好ましくすることができ、一方、90重量%以下とすることで良好な感光特性が得られる。
【0069】
本発明の感光性組成物をプラズマディスプレイの隔壁、前面板誘電体、フィールドエミッションディスプレイの絶縁層などのディスプレイ部材に用いる場合には、低融点ガラスを含むことが好ましい。低融点ガラスとしては、成分として、SiO、Al、B、ZnO、PbO、Bi、ZrO、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物などを含有したものであって、例えば、ホウケイ酸ガラス、アルカリ珪酸ガラス、Pb系ガラス、Bi系ガラスなどが挙げられる。低融点ガラスの組成としては、非酸化鉛系または低酸化鉛系であることが望ましい。非酸化鉛系または低酸化鉛系である場合、軟化点の調節の容易性からアルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属酸化物を含有することが好ましい。また、結晶化ガラスである場合は結晶化温度が600℃以下であるガラスを利用することが望ましい。低温焼成によるコスト削減と生産性の向上はもちろんのこと、安価なガラス基板を利用できるメリットが生じる。低融点ガラスの熱軟化点温度は350℃から700℃であることが好ましい。ディスプレイ部材に用いる場合における感光性組成物の無機粉末として、上記ガラス粉末などのほかにフィラーを入れてもよい。具体的なフィラーとしては、SiO、Al、ZrO、ムライト、スピネル、マグネシア、ZnO、酸化チタンなどのセラミック粉末が挙げられ、これらは単独種で用いても複数種組み合わせて用いても良い。フィラーの添加量は、感光性組成物の全体積に対して、10体積%未満が好ましい。それ以上にすると焼結時にひび割れが発生する場合がある。フィラーは焼結時において溶融しないものであることが好ましい。
【0070】
ディスプレイ部材に用いられる無機粉末に含まれるガラス粉末の平均粒子径は、0.1〜10μmであることが好ましく、さらには0.1〜2μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。平均粒子径0.1μm以上のガラス粉末を使用することにより分散安定性の良好な感光性組成物が得られ、平均粒子径10μm以下のガラス粉末を用いることにより、薄膜での微細なフォトリソグラフィーによる加工が可能となる。ディスプレイ部材に用いられる無機粉末に含まれるフィラーの平均粒子径としては、0.01μm〜0.5μmであることが好ましく、さらには0.01〜0.05μmであることが好ましい。0.01μm以上のフィラー添加により、焼成後の部材の強度を向上することができ、0.5μm以下のフィラーを使用することにより、良好な感光特性を得ることができる。
【0071】
本発明の感光性組成物をセラミック多層基板部材に用いる場合には融点を低下させ、低温での焼成を可能にするために、たとえば次のような5つの態様が好ましく用いられるが、この中でも低温焼結という観点からガラスセラミックス粉末が好ましい。
【0072】
前記の第1の態様は、一般式RO−Al−SiO系材料(x=1のとき、Rはアルカリ土類金属から選ばれ、x=2のときRはアルカリ金属から選ばれる)で表されるアルミノケイ酸塩系化合物である。特に限定されるものではないが、アノーサイト(CaO−Al−2SiO)、セルジアン(BaO−Al−2SiO)などであり、低温焼結セラミックス材料として用いられる無機粉末である。
【0073】
前記の第2の態様の無機粉末としては、ガラス粉末30〜70重量%と、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、スピネル、フォルステライト、アノーサート、セルジアン、コーディエライト、および窒化アルミからなる群より選ばれた少なくとも1種類のセラミックス成分30〜70重量%との混合物である。ガラス粉末にはアルカリ金属、アルカリ土類金属が含有されているのが好ましい。
【0074】
前記の第3の態様の無機粉末としては、ホウ珪酸ガラス粉末50〜90重量%と、石英粉末および/またはアモルファスシリカ粉末10〜50重量%の割合からなるものである。この時高純度シリカ(石英)は、ほう珪酸ガラスと溶解しないことが好ましい。また、球状シリカである方が、スラリーの充填性が上がり好ましい。
【0075】
前記の第4の態様は、酸化物換算表記でSiO:30〜70重量%、Al:3〜40重量%、CaO:3〜25重量%、MgO:3〜10重量%、B:3〜50重量%の組成範囲で、総量が85重量%以上となるガラス粉末を30〜60重量%と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コーディエライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルジアン、シリカおよび窒化アルミの群から選ばれた少なくとも1種類のセラミックス粉末40〜70重量%との混合物である。ガラス粉末のSiO、Al、CaO、MgOおよびBなどの成分は、ガラス粉末中で総量85重量%以上であることが好ましい。残りの15重量%未満はNaO、KO、BaO、PbO、ZrO、TiO、Fe、Mn酸化物、Cr酸化物、NiO、Co酸化物などを含有することができる。
【0076】
前記の第5の態様は、酸化物換算表記でSiO:80〜90重量%、B:10〜15重量%、Al:0〜5重量%、KO:0〜5重量%の割合で含まれる無機粉末である。
【0077】
無機粉末はフィラー成分を含むことが可能であり、フィラー成分として前記の通りセラミックス粉末が用いられることが多く、基板の機械的強度の向上や熱膨張係数を制御するのに有効であり、特に、アルミナ、ジルコニア、ムライト、コーディエライト、アノーサイトはその効果が優れている。これらのセラミックス粉末の混合により、焼成温度を800〜900℃とし、強度、誘電率、熱膨張係数、焼結密度、体積固有抵抗、収縮率を所望の特性とすることができる。
【0078】
無機粉末に含まれるガラス粉末の熱軟化温度は500℃から700℃であることが好ましい。セラミック多層基板部材に用いる場合における無機粉末に含まれるガラス粉末の平均粒子径は、1〜10μmであることが好ましく、さらには2〜3μmが好ましい。セラミック多層基板部材に用いる場合における無機粉末に含まれるセラミックス粉末の平均粒子径は0.01〜5μm、さらには0.03〜0.2μmが好ましい。この範囲内であれば、微細なフォトリソグラフィーによる加工が可能となる。
【0079】
本発明で用いる無機粉末は、Cu、Ag、Auなどを配線導体として多層化した場合、600〜900℃での焼成が可能であり、チップ部品やプリント基板の熱膨張係数と近似した熱膨張係数を有し、高周波領域においても低誘電率でかつ誘電損失が低い基板を与える材料を選ぶ必要がある。
【0080】
一般に、感光性有機成分および無機粉末を含有する感光性ペーストにおいて、感光性有機成分の平均屈折率と無機粉末の平均屈折率は、なるべく近い方が好ましい。屈折率が近いと、感光性有機成分と無機粉末との界面での光散乱が起きにくく、フォトリソグラフィーを用いてパターン形成をする際に、精細なパターン加工が可能となる。
【0081】
しかしながら、本発明に好ましく用いられるガラスセラミックス粉末は、焼成温度が低い反面、屈折率が大きいことが多く、平均屈折率を感光性有機成分に近づけることは困難である。したがって、感光性有機成分と無機粉末との屈折率差は非常に大きい。屈折率差が大きいと、感光性有機成分と無機粉末との界面での光散乱のために、感光性ペーストの内部に光が十分到達せず、露光面から遠い部分が硬化しにくくなる。
【0082】
そのため、このような場合においては、感光性有機成分中に、光を吸収して、該吸収した光より長波長の光線を発する化合物(以下、波長変換化合物という)を含有することが好ましい。このような波長変換化合物を含有していると、感光性有機成分と無機粉末との屈折率差が大きい場合でも、露光面から遠い部分も硬化させることが可能となる。波長変換化合物は、露光に用いられる波長の光を吸収し、吸収した光より長波長の光線を発し、発した光線が感光性有機成分を硬化あるいは可溶化させる。波長変換化合物は、紫外線を吸収することで散乱を抑制し、しかも紫外線よりも透過性が高い長波長の蛍光を発するため、露光面から遠い部分も硬化させることができる。
【0083】
本発明における波長変換化合物の含有量は、感光性有機成分中、0.1〜30重量%が好ましい。なお、組成物中の各成分の含有量の記載において、「感光性有機成分中」と記載されている場合は、波長変換物質も「感光性有機成分」に含めて算出するものとする。
【0084】
本発明の感光性組成物は次のようにして調製できる。まずa)〜c)成分から選択される感光性有機成分A1に、(D)油溶性キレート形成化合物、波長変換物質、酸性基を有するバインダーポリマー成分A2や、各種添加剤、(C)有機溶剤を混合した後、濾過し、有機ビヒクルを調製する。これに、必要に応じて前処理された無機粉末を添加し、ボールミルなどの混練機で均質に混合、分散して感光性組成物を作製する。感光性組成物の粘度は無機成分、増粘剤、(C)有機溶剤、可塑剤および沈殿防止剤などの添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は2〜200Pa・s(パスカル・秒)である。例えば基材への塗布をスピンコートで行う場合は、2〜5Pa・sが好ましい。スクリーン印刷で1回塗布して膜厚10〜20μmを得るには、50〜200Pa・sが好ましい。ブレードコーター法やダイコーター法などを用いる場合は、2〜20Pa・sが好ましい。
本発明の感光性組成物は、フラットパネルディスプレイの各種部材や、セラミックス多層基板などに好ましく用いられるが、セラミックス多層基板部材として特に好ましく用いられる。
【0085】
次に、セラミックス多層基板部材の製造方法について説明する。本発明の感光性組成物をドクターブレード法、押し出し成形法などの一般的な方法でポリエステルなどの支持体上に成形し、溶剤を乾燥除去することにより、支持体と、感光性組成物からなる感光性グリーンシートを積層した支持体付シートが得られる。感光性グリーンシートの厚みは0.03〜0.5mmが好ましい。溶剤の乾燥除去温度は、構成する感光性組成物の組成によって異なるが、50℃〜120℃で5分から60分程度施すのが好ましい。また、乾燥は対流式乾燥炉やIR乾燥炉で行うことが望ましい。
【0086】
なお、この後の現像工程において感光性グリーンシートの溶剤含有量は10重量%以下であることが好ましいため、溶剤を乾燥除去する工程において、残存溶剤量が10重量%以下となるようにすることが好ましい。支持体の材質は、一般的にポリエチレンテレフタレートや、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン等のキャリアテープが好適に用いられる。
【0087】
このようにして得られた支持体付シートに対して、ビアホール形成用パターンを有するフォトマスクを通したパターン露光を行い、現像液で現像するパターン加工工程によってビアホールを形成する。露光は、フォトマスクを用いてマスク露光する方法とレーザー光等で直接描画露光する方法を用いることができるが、フォトマスクを用いた露光のほうが、露光時間を短くできる。この場合の露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機等を用いることができる。使用される活性光源は、例えば、可視光線、近紫外線、紫外線、近赤外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられるが、これらの中で、紫外線が好ましく、その光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、LED,殺菌灯などが使用できる。これらの中でも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は感光性グリーンシートの厚みによって異なるが、5〜100mW/cmの出力の超高圧水銀灯であれば5秒〜30分間露光を行うことが好ましい。特に、露光量が0.05〜1J/cm程度の露光を行うことが好ましい。
【0088】
なお、ビアホール形成と同じ手法でシート積層時のアライメント用ガイド孔を形成しておくことができる。
【0089】
その後、現像液を使用して現像を行うが、この場合、浸漬法やスプレー法、ブラシ法で行う。現像液は、感光性組成物中の有機成分が溶解または分散可能な有機溶剤や水溶液を使用する。また、有機溶剤含有の水溶液を使用してもよい。感光性組成物中にカルボキシル基やフェノール性水酸基、シラノール基等の官能基を持つ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液でも現像できるので好ましい。アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム水溶液などのような金属アルカリ水溶液を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリとしては、一般的なアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液のアルカリ成分の濃度は0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5重量%である。アルカリ濃度が低すぎれば未露光部が除去されず、アルカリ濃度が高すぎれば、パターン部を剥離させ、また露光部を腐食させるおそれがあり好ましくない。現像時の現像液の温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。また、現像液には、感光性組成物の塗布膜への塗れ性改善、現像の均一性や残査の低減などのために、界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン、アニオン、カチオン、両性の各種界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の添加量としては、0.01〜20重量%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。添加量が20重量%を越えると、現像性が不十分になる可能性が生じ、0.01重量%より少ないと、界面活性剤添加の効果が発現しにくくなることがある。
【0090】
なお、現像時においては感光性グリーンシートと支持体の密着性が強い状態であることが望ましい。これは、特に現像時間が長い場合、シートと支持体の密着性が下がり、現像途中で剥がれやすくなることを防ぐためである。
【0091】
また、現像時に、必要に応じて現像液中で超音波処理を行ってもよい。この場合、周波数変調型超音波処理が、特に20〜50KHzの間の波長範囲で変調される周波数変調型超音波処理が好ましい。このような超音波処理により、微細で均一なパターンの形成と共に、残査の低減に大きな効果が得られる。
【0092】
このようにして、焼成前の厚みが10〜500μm、最密なビアホールパターン部分がビアホール直径20〜200μm、ビアホールピッチ30〜250μmのシートを作製することができる。必要に応じて、現像された感光性グリーンシートに対して、導体や抵抗体ペーストなどを用いて、ビアホールの穴埋め、配線の形成などを行ってもよい。
【0093】
次に、パターン加工された感光性グリーンシートを支持体から剥離する。剥離工程に先立って、加熱処理を行っても良い。加熱処理をすることによって、感光性グリーンシートの架橋がより進行するために、感光性グリーンシートの粘着性を低減し、支持体との剥離を容易にすることができる。シートの加熱処理温度は、感光性グリーンシートの組成により異なるが、短時間で十分反応可能な温度にて行う。さらに、加熱処理することは、感光性グリーンシートの耐溶剤性を向上させる効果がある。特に、感光性グリーンシート剥離後に、シートの裏面に導体や抵抗体ペーストなどを用いてパターンの形成を行う場合において、加熱処理を施しておくと、シートが導体ペースト等に含まれる溶剤からの浸食を受けにくくなる。
【0094】
本発明の感光性グリーンシートは、焼成工程を経て回路用基板等に加工される。例えば、導体ペーストを用いて必要な枚数の配線パターンの形成された感光性グリーンシートをガイド孔を用いて積み重ね、80〜150℃の温度で5〜25MPaの圧力で接着し、多層シートを作製する。この多層シートの両面に、難焼結性のセラミックスシートを積層して焼成してもよい。焼成は焼成炉において行う。焼成雰囲気や温度は感光性セラミックス組成物中の無機粉末や有機成分の種類によって異なるが、空気中、窒素雰囲気中、または水素還元雰囲気中で焼成する。本発明において好ましく用いられる感光性組成物の焼成は、まず室温〜600℃で有機物を分解、飛散させる工程(脱バインダー工程)を経たのち、600〜950℃の温度で焼結を行う。このようにして得られたセラミックス多層基板は高周波回路用基板として用いられる。
【実施例】
【0095】
以下に、実施例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。なお、濃度(%)は特に断らない限り重量%である。実施例に用いた感光性有機成分および無機粉末は次の通りである。
【0096】
A.感光性有機成分
モノマーI(成分A1):トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート(“カラヤッドTPA−330”日本化薬(株)製)
モノマーII(成分A1):ウレタンアクリレート(“EBECRYL270”ダイセル・サイテック(株)製)
バインダーポリマーI(成分A2):スチレン30%、メチルメタクリレート30%およびメタクリル酸40%からなる共重合体のカルボキシル基に対して0.4当量のグリシジルメタクリレートを付加したもの。75℃に保った溶剤“ソルフィット”中にスチレン、メチルメタクリレート、メタクリル酸、アゾイソブチロニトリルを溶解したものをゆっくり滴下し、5時間反応後、グリシジルメタクリレート、テトラブチルアンモニウムクロライド、p−メトキシフェノールを溶解したものをゆっくり滴下し、3時間反応して得られた。重量平均分子量30000、酸価110
バインダーポリマーII(成分A2):30%のアクリル酸メチル、40%のアクリル酸エチル、30%のメタクリル酸からなる共重合体のカルボキシル基に対し、0.4当量のグリシジルメタクリレート(GMA)を付加反応させたもの。重合体Iのスチレン、メチルメタクリレート、メタクリル酸をアクリル酸メチル30%、アクリル酸エチル40%、メタクリル酸30%に置き換えた以外は、全く同様の方法で共重合体を合成し、同じくグリシジルメタクリレート、テトラブチルアンモニウムクロライド、p−メトキシフェノールを滴下し、3時間反応して得られた。重量平均分子量30000、酸価107
バインダーポリマーIII(成分A2):脂環式側鎖導入アクリル系ポリマー(ダイセル・サイテック(株)製、商品名“サイクロマーP(ACAZ251)”)重量平均分子量15000、酸価70
光重合開始剤(成分A1):2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1(“イルガキュア369”チバ・スペシャリティケミカルズ社製)
増感剤:2,4−ジメチルチオキサントン(日本化薬(株)製、商品名“DETX−S”)
油溶性キレート形成化合物I:アミノカルボン酸のアミン塩(キレスト(株)製、商品名“MZ−2”)
油溶性キレート形成化合物II:アミノカルボン酸のアミン塩(キレスト(株)製、商品名“MZ−4A”)
波長変換物質:クマリン系誘導体(日本化薬(株)製、商品名“Kayalight B”)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール溶液中での紫外線の吸収最大波長は370nm、蛍光の最大発光波長は441nmであった。
紫外線吸収剤:クマリン系有機染料:“KayasetSF−G”(日本化薬(株)製)、
重合禁止剤:p−メトキシフェノール(和光純薬工業(株)製)
分散剤: リン酸エステル系分散剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、商品名“W9010”)
有機溶剤:“ソルフィット”((株)クラレ製)。
【0097】
B.無機粉末
無機粉末I:アルミナ粉末55%+ガラス粉末45%のガラスセラミックス複合粉末
上記アルミナ粉末の特性:平均粒子径2μm
上記ガラス粉末の組成:SiO(60%)、PbO(17.5%)、CaO(7.5%)、MgO(3%)、NaO(3.15%)、KO(2%)、B(5.8%)
上記ガラス粉末の特性:ガラス転移点565℃、熱膨張係数60.5×10−7/K、誘電率8.0(1MHz)、平均粒子径2μm
無機粉末II:アルミナ粉末50%+ガラス粉末50%のガラスセラミックス複合粉末
上記アルミナ粉末の特性:平均粒子径37nm
上記ガラス粉末の組成:SiO(60%)、PbO(17.5%)、CaO(7.5%)、MgO(3%)、NaO(3.15%)、KO(2%)、B(5.8%)
上記ガラス粉末の特性:ガラス転移点565℃、熱膨張係数60.5×10−7/K、誘電率8.0(1MHz)、平均粒子径2μm
無機粉末III:ガラスセラミックス複合粉末(“MLS−22”日本電気硝子(株)製)
上記粉末の組成:SiO−CaO−Al系複合セラミックス
上記粉末の特性:ガラス転移点700℃、熱膨張係数54×10−7/K、誘電率7.6(15GHz)、平均粒子径2.4μm
無機粉末IV:Al−SiO−B系ガラス粉末85%+石英15%のガラスセラミックス複合粉末
上記ガラス粉末の組成:Al(1.87%)、SiO(67.3%)、KO(1.22%)、B(11.8%)、
上記ガラス粉末の特性:ガラス転移点507℃、熱膨張係数46×10−7/K、誘電率4.6(1MHz)、平均粒子径2.2μm
無機粉末V:Al−SiO−B系ガラスセラミックス粉末
上記ガラス粉末の組成:Al(0.34%)、SiO(84.3%)、KO(1.29%)、B(11.7%)、
上記ガラス粉末の特性:ガラス転移点509℃、熱膨張係数22×10−7/K、誘電率4.5(1MHz)、平均粒子径2.5μm
無機粉末VI:ガラスセラミックス複合粉末(“MLS−25M”日本電気硝子(株)製)
上記粉末の組成:Al−SiO−B系ガラス粉末75%+アルミナ粉末25%の複合粉末
上記ガラス粉末の組成:Al(8.7%)、SiO(67.0%)、KO(1.56%)、B(12.5%)、ZrO(2.7%)、Y(0.14%)
上記ガラス粉末の特性:ガラス転移点500℃、熱膨張係数42×10−7/K、誘電率4.7(1MHz)、平均粒子径3μm
無機粉末VII:ガラスセラミックス複合粉末(“MLS−62”日本電気硝子(株)製)
上記粉末の組成:TiO−CaO−SiO系粉末
上記ガラス粉末の特性:ガラス転移点720℃、熱膨張係数81×10−7/K、誘電率8.5(1MHz)、平均粒子径1.8μm
無機粉末VIII:アルミナ粉末50%+ガラス粉末50%のガラスセラミックス複合粉末
上記アルミナ粉末の特性:平均粒子径2μm
上記ガラス粉末の組成:Al(3.4%)、SiO(54.0%)、CaO(8.2%)、MgO(5.0%)、B(16.7%)、ZrO(2.4%)、TiO(1.8%)、NaO(1%)、KO(1%)
上記ガラス粉末の特性:ガラス転移点630℃、熱膨張係数58×10−7/K、誘電率6.9(2.4GHz)、平均粒子径2.0μm。
【0098】
C.現像液
現像液I:水酸化テトラメチルアンモニウム 0.25%水溶液
現像液II:水酸化テトラメチルアンモニウム 0.05%水溶液。
【0099】
D.有機ビヒクルの作製
有機溶剤およびバインダーポリマーを混合し、撹拌しながら60℃に加熱し、すべてのバインダーポリマーを溶解させた。溶液を室温まで冷却し、モノマー、光重合開始剤を加えて溶解させた。その溶液を真空脱泡した後、250メッシュのフィルターで濾過し、有機ビヒクルを作製した。
【0100】
E.ペースト調製
上記の有機ビヒクルに無機粉末、油溶性キレート形成化合物および必要に応じてその他の添加剤を混合し、ボールミルで20時間湿式混合しスラリーまたはペーストとした。
【0101】
F.感光性セラミックスシートの作製
紫外線を遮断した室内でポリエステルの支持体とブレードとの間隔を0.1〜0.8mmとし、成形速度0.2m/分でドクターブレード法によって感光性セラミックスシートを作製した。支持体上に積層された感光性セラミックスシートを、所定温度で所定時間乾燥し、有機溶剤を蒸発させた後、126mm角に切断した。感光性セラミックスシートの厚みは50μmであった。
【0102】
G.ビアホ−ルの形成
ビア径50〜150μm、ビアホールピッチ500μmのクロムマスクを用いて、支持体付シートの上面から、15〜25mW/cmの出力の超高圧水銀灯を用いて支持体付シートとマスクの間を密着条件下で、300mJ/cm〜500mJ/cmの紫外線を照射してパターン露光した。次に、25℃に保持した現像液により現像し、その後、スプレーを用いてビアホールを水洗浄した。
【0103】
H.導体回路の形成
剥離したシートの裏面に、導体ペースト“H−4767” (昭栄化学工業(株)製)を用いて導体回路をスクリーン印刷にて形成した。
【0104】
I.積層焼成
感光性セラミックスシートを5〜6枚積層し、90℃でプレス圧力15MPaにて熱圧着した。得られた多層体を空気中で、900℃の温度で30分間焼成して、多層基板を作製した。
【0105】
実施例1
無機粉末として無機粉末I(75重量部)を、感光性有機成分としてバインダーポリマーII(7.2重量部)、モノマーI(5.6重量部)、モノマーII(1.6重量部)および光重合開始剤(1重量部)、増感剤(1重量部)、波長変換物質(3重量部)、油溶性キレート形成化合物(3.75重量部)、紫外線吸収剤(0.05重量部)、重合禁止剤(0.3重量部)、分散剤(1.5重量部)、有機溶剤(18重量部)を用いてペーストを調整し、シート製膜後、有機溶剤乾燥除去温度100℃にて乾燥し、厚み50μmの支持体付感光性セラミックスシートを得た。露光現像工程を経てビアホールを形成した。現像液は現像液IIを用い、現像時間は30秒であった。パターン加工可能なビア径の最小寸法は60μmであった。現像後のシートにクラックは生じなかった。シートを支持体から剥離したところ、シートに変形無く剥離することができた。また、剥離後のシートの裏面に導体回路をスクリーン印刷し積層焼成した結果、焼成後のシートの反りは全く生じず、積層体の剥離もまったく見られなかった。シートを室温保存し、一週間後同様に露光現像工程を経てビアホールを形成したところ、同じ現像時間でビア径60μmのビアホールを形成することができた。同様に積層焼成した結果、焼成後のシートの反りは全く生じず、積層体の剥離もまったく見られなかった。
【0106】
実施例2〜16
表1に示す成分を用いて実施例1の操作を繰り返した。その結果を表1に示した。実施例15では、キレート効果が充分ではないため一週間室温保存後はビアホールの形成ができなかった。また、実施例16では、現像後のシートにクラックが見られ、このシートを支持体から剥離したところ、シートに変形が生じた。また、積層焼成した結果、焼成後のシートの反りは生じなかったが、積層体の剥離が一部に見られた。
【0107】
比較例1
表1に示すように、キレート形成化合物を添加しない以外は、実施例1と同じ成分を用いて支持体付感光性セラミックスシートを作製しようとしたが、すぐにゲル化して作製できなかった。
【0108】
比較例2
表1に示すように、キレート形成化合物を添加しない以外は、実施例10と同じ成分を用いて支持体付感光性セラミックスシートを作製しようとしたが、すぐにゲル化して作製できなかった。
【0109】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)酸性基を有する樹脂を有する感光性有機成分、(B)少なくともアルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する無機粉末、(C)有機溶剤を混合して得られる感光性組成物、および(D)少なくとも1種の油溶性キレート形成化合物を含有することを特徴とする感光性組成物。
【請求項2】
(D)の油溶性キレート形成化合物がアミノカルボン酸誘導体またはアミン誘導体であることを特徴とする請求項1記載の感光性組成物。
【請求項3】
混合の際に用いられる(D)の油溶性キレート形成化合物が、(B)の無機粉末に対して1重量%以上20重量%未満の割合である請求項1または2記載の感光性組成物。
【請求項4】
無機粉末がガラスセラミックスである請求項1から3のいずれか記載の感光性組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか記載の感光性組成物を支持体上に成型し、乾燥して得られる感光性グリーンシート。
【請求項6】
請求項5記載の感光性グリーンシートを積層し、焼成して得られるセラミックス多層基板。

【公開番号】特開2010−117614(P2010−117614A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291687(P2008−291687)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】