説明

懸架された膜を含む弾性波共振器の製作方法

【課題】懸架された膜を含む弾性波共振器の製作方法を提供する。
【解決手段】第一の基板表面上にある第一圧電材料の少なくとも1つの層を含む第一の堆積を作るステップと、少なくとも1つの第二の基板を含む第二の堆積を作るステップと、次の接合ステップの前に、堆積のうちの一つの表面を、突き出たナノ構造物が局部的に与えられたままにしている、抑制された大きさの粒子の堆積又は生成により、少なくとも1つの非接合の開始領域を作るステップと、非接合の開始領域の存在に起因する、堆積同士の間に気泡を作り出す、2つの堆積をダイレクトボンディングするステップと、少なくとも第一の基板を除去するための、第一の堆積の薄層化ステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性波共振器フィルターの分野である。最近約10年間にわたる無線周波数通信における拡大は、許可された周波数帯域の過密化をもたらしている。利用可能な周波数範囲から利益を得るために、システムは狭い遷移帯域を伴う帯域のフィルタリングを含まなければならない。材料の圧電特性を用いる、SAW(表面波=surface waves)又はBAW(バルク波=bulk waves)技術を採用した共振器を有するフィルターのみが、低損失と減少した過密化を伴うこれらの仕様に適合することができる。今日、これらのフィルターに使用される圧電層は、堆積によって作られる(BAW“Bulk Acoustic Wave”[バルク弾性波]フィルター)か、又は固体の基板(SAW“Surface Acoustic Wave”[表面弾性波]フィルター)に基づいて作られる。
【背景技術】
【0002】
一般に、BAW素子の動作原理は、バルク波フィルター構造を示す図1に例証される。圧電基板Spiezo,vが、バルク波の伝搬を可能にする2つの金属被覆MとMとの間に挿入されている。
【0003】
以下の論文はBAWタイプ及びSAWタイプの共振器に基づくフィルターの、完全な概説を叙述している:W. Steichen, S. Ballandras, “Composants acoustiques utilises pour le filtrage: revues de differentes technologies” [Acoustic components used for filtering: reviews of various technologies][W. Steichen, S. Ballandras、フィルタリングに使用される音響構成要素:各種技術のレビュー], Editions de Techniques de l‘Ingenieur[エンジニアの技術編], E−2000, 31 pages, 2008; R. Aigner, Bringing BAW technology into volume production: the Ten Commandments and the seven deadly sins[R. Aigner、BAW技術の大量生産への適用:十戒と七つの大罪], Proceedings of the third international symposium on acoustic wave devices for future mobile communication systems[将来の移動体通信システム用の弾性波デバイスに対する第3回国際シンポジウムの会議録] (2007). J. Kaitila: Review of wave propagation in BAW thin film devices: progress and prospects[J. Kaitila、BAW薄膜デバイスにおける波動伝搬のレビュー:進歩と見通し], Proceedings of the 2007 IEEE Ultrasonics Symposium[2007年度、IEEE(《米》電気電子技術者協会)超音波シンポジウムの会議録]. P. Muralt et al.: Is there a better material for thin film BAW applications than AlN[P. Muralt他、薄膜BAWの適用に対してAlNよりも良い材料は有るか], Proceedings of the 2005 IEEE Ultrasonics Symposium[2005年度、IEEE超音波シンポジウムの会議録].
【0004】
バルク波フィルターは、主としてインピーダンス素子、又は狭帯域の用途向けのクオーツに対する横方向結合を有する構造を用いて、数MHz〜数十MHzの周波数において、数十年間存在して来ているが、無線周波数におけるそれらの実施は、当該目的用の陰極スパッタリングにより堆積された、圧電層の使用に対するLakinの先駆的業績に続いて、僅かおよそ10年前に遡る。その「FBARフィルター」(Film Bulk Acoustic Resonator[膜バルク音響共振器])部門が、再編成されたAVAGO社を生じさせたAgilent社は、多結晶材料を堆積した窒化アルミニウム(AlN)の薄膜を活用している、インピーダンス素子に基づくRFフィルター(無線周波数フィルター)を最初に開発した。これらの技術的進歩に続いて、多数の学術研究者や企業内研究者達が熱心にこの路線を追求し、ここ10年の間に持続的な発明活動の原因となっている。
【0005】
一般的に、BAW共振器は膜(AVAGO Technologiesによって用いられているFBAR技術)、又はブラッグ格子(Infineonによって用いられているSMR技術)のいずれかによって、基板から音響的に絶縁されている、薄い圧電層の厚さに応じた共振を利用する。現在、BAW技術と共に最も広く採用されている材料は、窒化アルミニウム(AlN)であり、それは6.5%のオーダーの圧電結合係数を有し、そしてまた小さい音響損失及び誘電損失を有する利点を示し、それにより2〜4GHzの間に局限された、大多数の通信規格によって規定されている仕様に適合する通過帯域を示す、複数のフィルターの合成を可能にする。
【0006】
それにもかかわらず、DCS規格のような幾つかの周波数帯域によって示される、極度に制約の多い仕様に、幾つかの問題は引き続き直面し続ける。
【0007】
第一に、AlNによって許容される圧電結合係数は、6%を超える相対通過帯域を許可しない。そのような帯域幅は次の論文:R. Aigner, Bringing BAW technology into volume production: the Ten Commandments and the seven deadly sins[R. Aigner、BAW技術の大量生産への適用:十戒と七つの大罪], Proceedings of the third international symposium on acoustic wave devices for future mobile communication systems[将来の移動体通信システム用の弾性波デバイスに対する第3回国際シンポジウムの会議録] (2007); J. Kaitila, Review of wave propagation in BAW thin film devices: progress and prospects[J. Kaitila、BAW薄膜デバイスにおける波動伝搬のレビュー:進歩と見通し], Proceedings of the 2007 IEEE Ultrasonics Symposium[2007年度、IEEE超音波シンポジウムの会議録]に記述されているように、弾性エネルギーを圧電層内に閉じ込めるため、非常に大きな音響インピーダンスを示す(モリブデン又はタングステン製)電極及び、共振器の圧電結合係数に対するそれらの影響を最大化するために、注意深く決定された厚さの使用を既に必要としている。現在、一定の損失において、この相対帯域(幅)を広げるための信頼できる解決策は存在しない。
【0008】
より高い圧電結合係数を示す他の材料を見出すための研究が行なわれているが、論文:P. Muralt et al., Is there a better material for thin film BAW applications than AlN[P. Muralt他、薄膜BAWの適用に対してAlNよりも良い材料は有るか], Proceedings of the 2005 IEEE Ultrasonics Symposium[2005年度、IEEE超音波シンポジウムの会議録]に記述されているように、低い音響損失を提供し、現在、再現可能かつ一様に堆積され得る、他の材料が存在しないことに注目されたい。
【0009】
逆に、ニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムのような単結晶材料は、非常に高い電気機械結合係数を提供し、50%のオーダーの相対帯域幅を示すフィルターの製作を可能にする。
【0010】
その後、DCSのような規格もまた広い通過帯域と、近接した規格の強い拒絶の双方を必要とする。これら2つの制約を同時に満たすことは、非常に大きな品質係数を持つ共振器の使用を要する。共振器の弾性波閉じ込め特性を改善するために、ここ10年の間、多くの作業が行なわれて来た(J. Kaitila: Review of wave propagation in BAW thin film devices: progress and prospects[J. Kaitila、BAW薄膜デバイスにおける波動伝搬のレビュー:進歩と見通し], Proceedings of the 2007 IEEE Ultrasonics Symposium[2007年度、IEEE超音波シンポジウムの会議録])。従って、構造よりも材料自体によって課される制限が現われ始めており、多結晶材料は、特に10GHzに向かう基準の周波数における上昇に直面して、結局は品質係数の上昇にもはや対処出来ないであろう確率が非常に高い。1GHzを超える周波数における数万オーダーの固有の品質係数:D. Gachon et al., Filters using high overtone bulk acoustic resonators on thinned single−crystal piezoelectric layer, presented at the 2008 European Frequency and Time Forum[2008年度のヨーロッパ周波数と時間のフォーラムにおいて発表された、D. Gachon他による、薄層化された単結晶圧電層上の高倍音バルク音響共振器を用いるフィルター]と共に、ここで再び単結晶材料はそれら自体を興味深い解決策として示している。
【0011】
FBARタイプの共振器に関して、Campanella他はプラチナ/チタンの金属電極上に堆積された窒化アルミニウム(AlN)の膜に基づいて、FBAR共振器を製作した。その上にこれらの層が留まる使用基板は、空洞を形成するために反応性プラズマ(RIE)によりエッチングされたシリコンで作られる。(H. Campanella, J. Esteve, E. Martincic, P. Nouet, A. Uranga, N. Barniol, IEEE SENSORS 2008)[2008年度、IEEEセンサー]
【0012】
著者Pijolat他は、ダイレクトボンディング及び機械的薄層化に基づくプロセスのおかげで、LiNbOの薄膜をシリコン基板上に移すことによる、そのような共振器の製作を示している(M. Pijolat, S. Loubriat, S. Queste, D. Mercier, A. Reinhardt, E. Defay, C. Deguet, L. Clavelier, H. Moriceau, M. Aid,及び、S. Ballandras, Appl. Phys. Lett 95 (2009) 182106)[2009年度、応用物理学レター95号]。
【0013】
他の著者たちは、LiNbOの懸架層を有し、200MHzにおけるその電気特性評価が実施された、FBAR構造を作ることを提案している:Y. Osugi, T. Yoshino, K. Suzuki and T. Hirai(大杉幸久、吉野隆史、鈴木憲次、平井隆己), IEEE 2007。ウェーハ全体にわたる厚さの不均一は品質係数Qに対して悪影響を持つが、移されたLiNbOの層は固体の基板に近い結合係数Ktを有する。
【0014】
他のタイプの共振器(SAW共振器を含む)は、有利なことに懸架された膜の上に作られる。
【0015】
現在、薄膜を移すための2つの主な技術:軽イオン(一般的には水素)の注入と、注入された領域のレベルにおける破壊に基づく技術、そして接合と機械的薄層化に基づく前述の技術が既に提案されている。これらの技術は単結晶層をホストの基板上へ移すことを可能にする。これらの技術は、とりわけSOI(Silicon On Insulator[シリコン・オン・インシュレータ])の小さな板の工業生産を可能にするシリコンに対して、完全にマスターされている。
【0016】
注入/破壊による移動のプロセスは、特にM.Bruelによる論文:“Silicon on insulator material technology“[シリコン・オン・インシュレータ材料の技術], Electronic letters, 31 (14), p1201−1202 (1995)に記述され、それはSOI”Silicon On Insulator“[シリコン・オン・インシュレータ]基板の製作を可能にする。
【0017】
このプロセスは図2に例証されている次の4ステップにより、概略的に要約され得る:
ステップ1:例えばシリコンのドナー基板Aが、埋め込まれた脆い領域を形成するために気体の種類(例えば水素及び/又は希ガス)と共に注入され、移される薄膜の範囲をこの基板内に定める。
ステップ2:ドナー基板はその後、例えば(分子接合とも呼ばれる)ダイレクトボンディングにより、前に定義された薄膜のレベルで受容基板Bと接合される。
ステップ3:破壊ステップは、場合によっては機械応力を加えることにより補助される熱処理により、埋め込まれた脆い領域のレベルで、その後に得られる。こうして、一方では受容基板に固着された薄膜が得られ、他方で移される薄膜から剥がされた当初のドナー基板Aに対応する、ドナー基板の残余物が得られる。後者は次に別の移動を行なうためにリサイクルされ得る。
ステップ4:場合により、移された薄膜と受容基板との間の接合界面を強固にするため、例えば高温焼鈍しの最終処理が実施され得る。
【0018】
移された薄膜の厚さは、イオンビームの注入エネルギーに直接関係する。例として、移されたシリコンの厚さは(注入エネルギーが一般に250keV未満である)従来の注入装置を用いることにより、数十nm〜数μmに及び得る。
【0019】
移された層は、それらが機械的薄層化によらず、注入深さにより定義されるため、厚さの点で均一かつ均質である。
【0020】
欧州特許第0741910号明細書は、空洞を備える基板上への薄膜移動の実施を提案している。空洞は接合ステップの前にフォトリソグラフィー及びエッチングによって作られ、それは従って前述のプロセスに対して高価なステップを加える。更に、空洞に対して達成可能な寸法は、そのプロセスのために制限される。
【0021】
欧州特許第0851465号明細書は、接合界面のレベルで注入によりその支持体から膜を局部的に剥離させるように提案している。この場合、(接合界面の周りの)強力な注入領域は、材料特性の局部的変更を生じ得る、著しい損傷を受ける。
【0022】
今日、MEMS“Micro−Electro−Mechanical Systems[マイクロ電気機械システム]”用の大部分の素子において、圧電材料の層はPVD“Plasma Vapor Deposition[プラズマ蒸着]”タイプの堆積技術により作られ、これらの素子用に作られる層は数百nm〜1μmの間の厚さ範囲内にある厚みを示す一方で、この範囲の厚さに対する単結晶圧電層及び電歪層の製作に熟達することは、著しい技術的ハードルを成す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
このような状況において、本発明の主題は圧電材料の薄い層を含む膜を備えた、バルク弾性波共振器を製作するための革新的方法である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
より正確には、本発明は圧電材料層を含む懸架された膜を備えた、弾性波共振器を製作するための方法に関し、方法が次のステップ:
―第一の基板表面上にある第一圧電材料の少なくとも1つの層を含む第一の堆積を作るステップと、
―少なくとも1つの第二の基板を含む第二の堆積を作るステップと、
―次の接合ステップの前に、前記堆積のうちの一つの表面を、突き出たナノ構造物が局部的に与えられたままにしている、抑制された大きさの粒子の堆積又は生成により、少なくとも1つの非接合の開始領域を作るステップと、
―非接合の開始領域の存在に起因する、堆積同士の間に気泡を作り出す、前記2つの堆積をダイレクトボンディングするステップと、
―少なくとも第一の基板を除去するための、第一の堆積の薄層化ステップと
を含むことを特徴とする。
【0025】
「ダイレクトボンディング」の表現は、接着性物質の存在を必要としない、任意のタイプの接合を意味すると理解される。それは有利なことに直接接触による接合を含み得るが、それは熱圧着又は陽極接合、あるいは溶融接合による接合もまた含み得る。
【0026】
非接合の開始領域の目的は、従ってその位置又はその近辺における、2つの堆積間の接合を局部的に防ぐことであり、こうして第一の圧電材料と第二の堆積間に気泡を発生させ、これら2つの素子の局部的な音響の非干渉化を可能にする。
【0027】
ナノ構造は(基板の平面内で)1μm未満の、そして有利には10〜100nmの間にある横方向寸法を有する。
【0028】
本発明は従って、100μm〜1mmに及ぶ横方向寸法を有するウェーハ上に、懸架された膜を集合的に製作出来るようにする。
【0029】
有利なことに、気泡の生成及び/又は成長を促進させるように、熱処理ステップはダイレクトボンディング段階の間又は後に行われ得る。一般的に、この熱処理は100℃〜500℃の間にある温度において行われ得る。このステップはまた、より大きな寸法の気泡を形成するために、一緒になる2つ以上の隣接する気泡を許容できる。
【0030】
非接合の開始領域は突き出たナノ構造、即ち1ミクロン未満の寸法の、表面に対する局部的な突起であり得る。生成された気泡は、次にこのナノ構造の両側に広がる。
【0031】
本発明の1つの変形において、この突き出たナノ構造を生成するステップは、リソグラフィー及びエッチングによって行なわれる。
【0032】
本発明の1つの変形において、この突き出たナノ構造を生成するステップは、局部的なやり方で制御された大きさの粒子の堆積により行なわれる。
【0033】
本発明の1つの変形において、突き出たナノ構造は数十nm〜数百nmのオーダーの高さを示し、気泡は1000μmのオーダーの直径範囲を示す。
【0034】
接合段階の間又は後に行なわれる熱処理は、突き出たナノ構造の表面を、それに対向している堆積の表面から、局部的に剥離させるのも又可能にすることに注意されたい。
【0035】
同じように、突き出たナノ構造を囲む表面、又はそのナノ構造に対向している表面が、例えば熱処理の間に気泡の拡張を容易にするか、あるいは適応させるように、接合に先立って用意され得る。
【0036】
この用意は、気泡の横の拡張を促進したい場合、とりわけ表面の親水性を低減し、及び/又は粗さを増すことにあり得るが、逆もまた正しい。
【0037】
親水性を変えるため、例えばプラズマ処理又は紫外線(UV)/オゾン処理に頼ることができる。粗さを変えるため、例えば化学エッチング、湿式又は乾式エッチングに頼ることができる。
【0038】
本発明の1つの変形によれば、非接合の開始領域は、例えば原子間力顕微鏡(AFM)の焦点の助けにより、炭化水素の局部的堆積又は、気体の副生成物を発生し得る液体あるいは固体の生成物の、局部的堆積により得られる。この領域は熱処理の後で、非接合領域内の圧力の影響を通じて寸法的に成長させられ得る、非接合領域又は気泡を作り出す。
【0039】
有利なことに、第一の堆積及び/又は第二の堆積は表面に、そのレベルにおいてダイレクトボンディングが行なわれる接合層を含むことができる。
【0040】
有利なことに第一の堆積は、第一の圧電材料の層と、場合により存在する接合層(又は表面)との間に、電極として役立つことを目的とする金属層を含み得る。
【0041】
有利なことに、第一の圧電材料は単結晶である。そのような層は適切な基板上のエピタキシーによって得ることができるか、或いは第一の基板の表層部分を構成し得る。この場合、第一の基板は第一の圧電材料の固体基板であり得る。その層はまた第一の基板上に堆積されることができる。
【0042】
本発明の1つの変形によれば、本方法は第一の堆積内に、第一の圧電材料の層を少なくとも部分的に備えた領域の境界を、前記堆積の表面と共に定める、埋め込まれた脆い領域を作り出すために、イオン注入ステップを更に含む。
【0043】
本発明のこの変形によれば、薄層化は次に、埋め込まれた脆い領域のレベルにおける破壊によって得られる。
【0044】
本発明の別の変形によれば、薄層化は研削及び研磨によって得られる。
【0045】
有利なことに、研磨ステップは(頭字語CMP(chemical and mechanical polishing=化学的及び機械的研磨)によって、より広く知られている)メカノケミカル研磨ステップである。この研磨は、例えばコロイド状シリカに基づく、(「スラリー」“slurry”として知られる)研磨材を含む溶液の助けによって行なわれる。
【0046】
本発明の1つの変形によれば、圧電材料はLiNbO又はLiTaO、或いは更に一般的にはLi(TaNb1−x)Oである。層が堆積された場合、圧電材料は特にAIN又はPZTであり得る。
【0047】
本発明の1つの変形によれば、第二の基板はシリコン又は水晶或いはダイヤモンド、もしくはサファイヤで作られる。それは単純、又は複合であり得る。
【0048】
本発明の1つの変形によれば、少なくとも1つの接合層は、SiOであり得る誘電材料で作られる。
【0049】
本発明の1つの変形によれば、本方法は前記金属層において、電極の定義のステップをさらに含む。
【0050】
本発明の1つの変形によれば、本方法は薄層化ステップの後に、第一と第二の堆積の最終堆積の表面上に上部電極を作るステップをさらに含む。
【0051】
本発明は以下に続く記述を読むことにより、そして添付図のおかげで、より良く理解され、その他の利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】バルク弾性波の伝搬を強調している、BAW素子の動作原理を例証している。
【図2】既知の技術に従う注入/破壊による、基板を移動させる様々なプロセスのステップを例証している。
【図3a】本発明によるFBARタイプの共振器を作る1つの例示的プロセスのステップを説明している。
【図3b】本発明によるFBARタイプの共振器を作る1つの例示的プロセスのステップを説明している。
【図3c】本発明によるFBARタイプの共振器を作る1つの例示的プロセスのステップを説明している。
【図3d】本発明によるFBARタイプの共振器を作る1つの例示的プロセスのステップを説明している。
【図3e】本発明によるFBARタイプの共振器を作る1つの例示的プロセスのステップを説明している。
【図4a】熱処理作業前の、本発明による製作プロセスの1ステップの間に作り出される気泡を図式的に示す。
【図4b】熱処理作業後の、本発明による製作プロセスの1ステップの間に作り出される気泡を図式的に示す。
【図5】本発明のプロセスに従って作られたFBARタイプの共振器を例証している。
【図6】基板から剥離されていない膜の電気的応答(曲線6a)及び懸架された膜の応答(曲線6b)を例証している。
【発明を実施するための形態】
【0053】
一般に、本発明の方法は、例えばバルク弾性波の伝搬を生じるために、下部電極及び上部電極を有する圧電材料の懸架された膜を備える、バルク弾性波素子及び特にFBAR共振器タイプの素子である、バルク弾性波に基づく素子の製作を可能にし、前記膜はその1つが表面上に少なくとも1つの非接合の開始領域、例えば突き出たナノ構造を含む、2つの支持体の接合による組立てに基づいて生成される気泡の表面上に作られる。
【0054】
懸架された金属膜は薄い圧電材料層を含む。そのような膜を作る方法は、圧電材料の固体基板内に、前記薄い層をこの基板の中で境界を定める、埋め込まれた脆い領域を作り出すためにその固体基板の注入を含み、そして次に前記薄い圧電層を、例えば場合により機械的な力で補助される熱処理による、この脆い領域のレベルでの破壊によって全体的に圧電基板から分離することを含む、既知の熟達した方法に基づき得る。
【0055】
例示的実施形態
固体の圧電基板SPiezo(例えばLiNbO、LiTaOタイプ等)が、(方向性、材料の性質等の観点から)BAW用途のために選定される。1つの変形として、それは圧電材料の表層のみを示す(例えばシリコンの)支持基板であり得る。それは有利なことに、最終的な共振器用の埋め込まれた電極を目的とする、少なくとも1つの金属層CM1の堆積を含む。この金属層は、銅(Cu)、銅アルミニウム(AlCu)、ケイ酸アルミニウム(AlSi)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、プラチナ(Pt)、クロム(Cr)等に基づき得る。
【0056】
全体としての堆積は、その後に場合によっては接合層CC1で覆われる。これは図3aに例証されるように、次に続くダイレクトボンディング作業を容易にすることが目的の、表面において数百nm(例えば200nm)の、例えば酸化ケイ素(SiO)である、例えば誘電層であってもよい。
【0057】
イオン注入作業は、圧電固体基板内において移されるべき圧電材料の薄い層の境界を定める、埋め込まれた脆い領域(Zfr)を作り出すため、この基板内で(金属層及び接合層の堆積前又は後に)行なわれる。この注入は、図3bに例証されているように、例えば1016〜1017at/cmの間の量を有し、そして選ばれる圧電層の厚さに応じて、50keV〜250keVの間のエネルギーを有する、水素又はヘリウム、或いはこれら2種類の混合物に基づいて行われ得る。
【0058】
接合作業を目的とする、表面における例えば酸化ケイ素(SiO)である、例えば誘電体の接合層の堆積は、図3cに例証されるように、例えばシリコン、サファイヤ、水晶等の圧電材料又は非圧電材料で作られ得る、第二の基板Sに対して平行に行なわれる。この層は選択的であってもよく、前記第二の基板の性質に依存し得ることに注意されたい。
【0059】
基板は、次に続くダイレクトボンディング・ステップに適合できるように、その後、例えばメカノケミカル研磨によって準備される。この準備は次に続くダイレクトボンディングに対して要望される平坦度及び粗さを得ることを可能にできる。
【0060】
このステップの間/後に、抑制された大きさの粒子が2つの接合界面の1つの上に堆積/生成される。これらの粒子又はμ−パッドは、例えばその後にエッチング、或いは局部的なやり方による抑制された大きさの粒子の堆積が続く、リソグラフィーによって生成され得る。図3dはμ−パッド、μPが層CC1の表面上に作られる構成を例証している。これらの粒子は、非接合の開始領域である。それらは局部的に、これらの領域及び/又はこれらの領域の周りのレベルにおける、2つの基板の接合を防止する。他のタイプの非接合の開始領域はこの後で説明されるであろう。
【0061】
図3eは、接合段階の前に接触している2つの堆積の配置を例証する。
【0062】
2つの基板はその後、論文:Tong & Gosele 1999, Q.−Y. Tong, U. Gosele, Semiconductor Wafer Bonding: Science and Technology[半導体ウェーハ接合:科学と技術], Wiley, New York, 1999, 297 pp.に例証されているように、ダイレクトボンディングにより接合される。この論文はとりわけ接合界面における粒子の挙動を記述している。粒子の大きさ(特にその高さ)に応じて、粒子のものと同じ特定の半径及び高さの気泡が形成される。
【0063】
(材料に対応する変形係数及び表面エネルギーに関して)ニオブ酸リチウムの場合に応用すると、理論計算により見出される気泡の半径と、実験的に見出されるその半径の大きさのオーダーは一致している。
【0064】
本発明の場合、出願者は気泡の高さが明らかに粒子の高さよりも大きいことを観察した。気泡の直径及び高さは、加えられる熱収支によって制御される。
【0065】
本発明の方法によれば、埋め込まれた脆い領域のレベルにおける破壊により圧電材料の薄膜の移動を開始するため、熱処理(100℃〜500℃の間、望ましくは250℃)が加えられる。この熱処理はまた、突き出たナノ構造の周りに最初に形成される気泡を成長させることができる。粒子の無い領域及び誘発された気泡領域の外側に対しては、その面のダイレクトボンディングが行なわれる。
【0066】
(一旦破壊が得られたとき)例えば100〜500℃の間(望ましくは約250℃)における、追加の熱収支の適用は、所望される気泡の横方向寸法の制御を可能にする。(図4bに例証されるように)それはまた突き出たナノ構造から、膜を剥離させることを可能にし得る。
【0067】
この熱収支はまた、大きな寸法の気泡を形成するために、2つ以上の隣接する気泡が一緒になることを可能にし得る。
【0068】
追加の封入層が、本構造を固定するために堆積され得る。図4a及び4bは、従って前記気泡の拡張をもたらす熱処理の前後に、ナノ構造μPの上方の気泡CAVの形成を図式的に示す(圧電材料層のみが表わされている)。
【0069】
一般的に、100nmオーダーの高さの粒子に対して、達成される最大の気泡は直径1000μmのオーダーである。
【0070】
(経験に基づいて、素子の製作に適合する粗さを得るための熱処理及び/又は研磨のような)仕上げプロセスが行われ得る。
【0071】
ホストの基板上の追加的な層と共に、圧電材料CPiezoの薄い層がそれゆえ得られる。最終のFBAR共振器は、バルク弾性波の伝搬の領域ZBAWをさらに際立たせている、図5に例証されるように、気泡として形成されたCAVのレベルにおいて、上部の金属電極CM2の堆積により作られる。
【0072】
電気的試験が、懸架された膜の共振圧電特性を示す、そのような構造に対して行なわれた。図6の曲線は、本発明の方法に従って得られる、懸架された膜の電気的応答を例証している。曲線6aは、基板から剥離していない圧電層の応答に対応し、曲線6bは前記剥離した膜に関し、従ってFBAR共振器の最終構造に関する。
【0073】
前述のように、非接合の開始領域は、接合される2つの基板のダイレクトボンディングを局部的に妨げるため、及びそれゆえ界面において局部的に、これら2つの基板を音響的に分離する気泡を生成するために、接合される一方又は双方の基板の表面上に作られ得る。これは、とりわけ表面に存在する炭化水素種又は、液体種或いは固体種を含み得る。これらの種は気体の副産物を生成し得る。適切な熱処理を用いて、この領域は(横方向に保持されている)懸架された膜の領域を生じるように、非接合領域における圧力の影響を通じて、寸法的に成長させられる。寸法決めの影響に関して、Tong and Goesele (book 1999 p.42)の論文が言及され得る。
【0074】
ガス抜きの場合、F.Rieutord(ECS2010)の論文は、例えば所与の温度において(利用可能な分子又は原子の数Nを示す)圧力の関数として、気泡の限界半径寸法Rc(非接合の領域)を与える。Rcは所与の温度Tにおいて気泡が安定する値である。
【0075】
熱処理の間、圧力はPV=NRTのように増加する。接合エネルギーは、この熱処理の間に増加するが、しかしながらそれは、非接合領域の横方向寸法r及びその高さhの増加のために、その領域が開くことを防ぐには十分でない。
【0076】
さらに、F. Rieutord (ECS 2010)の論文あるいはTong and Goesele (book 1999 p.42)の論文において定義されているように、rが限界半径よりも大きい場合、非接合領域は吸収されない。
【0077】
これらの制御された汚染は、限界寸法よりも大きい非接合領域の誘発を可能にする。
【0078】
製作において、ガス抜きをし得る汚染物質を、例えばAFMの焦点により接合領域の表面上に堆積させることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
金属被覆
金属被覆
BAW バルク弾性波
piezo,v 圧電基板
C1 接合層
M1 金属層
fr 埋め込まれた脆い領域
C2 接合層
第二の基板
μP ナノ構造(μ−パッド)
CAV 気泡
Piezo 圧電材料
M2 上部の金属電極
BAW バルク弾性波の伝搬の領域
FBAR 膜バルク音響共振器
SAW 表面弾性波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料層を含む懸架された膜を備えた、弾性波共振器を製作するための方法であって、
―第一の基板表面上にある第一圧電材料(CPiezo)の少なくとも1つの層を含む第一の堆積を作るステップと、
―少なくとも1つの第二の基板を含む第二の堆積を作るステップと、
―次の接合ステップの前に、前記堆積のうちの一つの表面を、突き出たナノ構造物が局部的に与えられたままにしている、抑制された大きさの粒子の堆積又は生成により、少なくとも1つの非接合の開始領域を作るステップと、
―非接合の開始領域の存在に起因する、前記堆積同士の間に気泡(CAV)を作り出す、前記2つの堆積をダイレクトボンディングするステップと、
―少なくとも前記第一の基板を除去するための、前記第一の堆積の薄層化ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ダイレクトボンディングが、前記2つの堆積を直接接触するように又は熱圧着、或いは陽極接合、もしくは溶融接合によって置くことにより、行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項3】
気泡の生成及び/又は成長を促進するように、前記ダイレクトボンディングのステップの間又は後に行なわれる熱処理ステップを更に含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項4】
非接合の開始領域が、ミクロン・オーダーの寸法の前記堆積の表面に対して局部的な突起に相当する、突き出たナノ構造であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項5】
前記突き出たナノ構造を生成するステップが、リソグラフィー及びエッチングによって行なわれることを特徴とする、請求項4に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項6】
前記突き出たナノ構造を生成するステップが、局部的なやり方で、制御された大きさの粒子を堆積することにより行なわれることを特徴とする、請求項4に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項7】
前記突き出たナノ構造が数十nm〜数百nmのオーダーの高さを示し、前記気泡が1000μmのオーダーの直径範囲を示すことを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項8】
接合に先立って、熱処理の間に気泡の拡張を容易にするか、あるいは適応させるように、前記突き出たナノ構造を囲む表面、又は前記ナノ構造に対向している表面を準備するステップを更に含み、前記準備するステップが前記表面の親水性を低減し、及び/又は粗さを変えることにあることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項9】
前記親水性を低減するための前記準備するステップが、プラズマ処理又は紫外線(UV)/オゾン処理によって行なわれることを特徴とする、請求項8に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項10】
前記粗さを変えることにある、前記準備するステップが、化学エッチング、湿式又は乾式エッチングにより行なわれることを特徴とする、請求項8に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項11】
前記非接合の開始領域が、気体の副産物を生成可能な、炭化水素又は液体或いは固体の生成物の局部的な堆積によって得られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項12】
前記炭化水素の局部的な堆積が、原子間力顕微鏡の焦点を用いて行なわれることを特徴とする、請求項11に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項13】
前記第一の堆積及び/又は前記第二の堆積が表面に接合層を含み、そのレベルにおいて次に続く接合ステップが行なわれることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項14】
前記第一の堆積が、第一の圧電材料の層と、場合により存在する接合層(又は表面)との間に、電極として役立つことを目的とする金属層を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項15】
前記第一の圧電材料が単結晶であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項16】
前記第一の堆積内に、前記第一の圧電材料の層を少なくとも部分的に備えた領域の境界を前記堆積の表面と共に定める、埋め込まれた脆い領域を作り出すために、イオン注入ステップを更に含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項17】
薄層化が、前記埋め込まれた脆い領域のレベルにおける破壊によって得られることを特徴とする、請求項16に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項18】
前記薄層化が、メカノケミカル・タイプであり得る研磨によって得られることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項19】
前記圧電材料がLi(TaNb1−x)Oであることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項20】
AIN又はPZTの圧電材料層の堆積を含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項21】
前記第二の基板がシリコン又は水晶或いはダイヤモンドもしくはサファイヤ、又は前記材料の1つを含む複合材料で作られることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項22】
少なくとも1つの接合層が、SiOであり得る誘電材料で作られることを特徴とする、請求項1〜21のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項23】
金属層において電極を定義するステップを更に含むことを特徴とする、請求項1〜22のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。
【請求項24】
薄膜化ステップの後で、前記第一及び第二の堆積の最終堆積の表面に上部電極を作るステップを更に含むことを特徴とする、請求項1〜23のいずれか一項に記載の弾性波共振器を製作するための方法。

【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−147423(P2012−147423A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−270459(P2011−270459)
【出願日】平成23年12月9日(2011.12.9)
【出願人】(510074896)
【Fターム(参考)】