説明

成形用金型、及びダイナミックダンパの製造方法

【課題】成形用金型、及びダイナミックダンパの製造方法において、ダイナミックダンパの見栄えを良くすることにある。
【解決手段】ウェイト11及びプレート金具12にゴム弾性体13を加硫一体化成形するための成形用金型20の内面には、ウェイト11の第3及び第4側面11e,11fのウェイト長辺方向中央部に対向する部分に凸部22lがそれぞれ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用金型、及びこれを用いたダイナミックダンパの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両などの振動源の振動を減衰するダイナミックダンパが知られている。特許文献1〜3に示されるダイナミックダンパは、ウェイトと、振動源に取り付けられるプレート金具と、これらのウェイトとプレート金具とを互いに連結するゴム弾性体とを備えている。
【特許文献1】特開平1−316539号公報
【特許文献2】特開平8−247213号公報
【特許文献3】特開平8−135732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなダイナミックダンパの一例として、以下に示すようなものがある。つまり、図12に示すように、ウェイト111は、それぞれ互いに対向する長方形状の第1及び第2底面111a,111bと、それぞれ底面111a,111bの短辺方向(以下、ウェイト短辺方向という)と平行に延びて互いに対向する第1及び第2側面111c(第2側面は不図示)と、それぞれ底面の長辺方向(以下、ウェイト長辺方向という)と平行に延びて互いに対向する第3及び第4側面111e(第4側面は不図示)とを有する直方体状のものである。図13に示すように、プレート金具112は、ウェイト111の第1底面111aと対向し、かつ第1底面111aの中央部に対向する部分にゴム注入用のゴム注入孔(不図示)が形成された底壁部112aを有するものである。図12〜図14に示すように、ゴム弾性体113は、ウェイト111の外面を覆う被覆部113aと、ウェイト111の第1底面111aとプレート金具112の底壁部112aとを互いに連結する連結部113bと、プレート金具112のゴム注入孔を埋める充填部113cとを有している。そして、このダイナミックダンパ110は、成形用金型(不図示)を用いてウェイト111及びプレート金具112にゴム弾性体113を加硫一体化成形することにより製造される。
【0004】
ここで、ウェイト111の第1及び第2側面111cはそれぞれウェイト短辺方向と平行に延びる一方、第3及び第4側面111eはそれぞれウェイト長辺方向と平行に延びるので、ウェイト111の第1底面111aの中央部から第1又は第2側面111cを通って第2底面111bの中央部に至るまでの距離は、ウェイト111の第1底面111aの中央部から第3又は第4側面111eを通って第2底面111bの中央部に至るまでの距離よりも長い。
【0005】
このため、ダイナミックダンパ110の成形では、ウェイト110の第1又は第2側面111cと成形用金型との間を流れてきたゴム材料は、ウェイト111の第3又は第4側面111eと成形用金型との間を流れてきたゴム材料よりもウェイト111の第2底面111bと成形用金型との間に至るのが遅い。このゴム材料の到達時間の違いによって、ゴム弾性体113の被覆部113aにおけるウェイト111の第2底面111bを覆う部分に、ウェイト長辺方向に延びる、比較的長く大きいエアポケット(空気溜まり)ができ、この部分が欠肉113cとなる。この欠肉113cによって、ダイナミックダンパ110の見栄えが悪くなるおそれがある。特に、被覆部113aにおけるウェイト111の第2底面111bを覆う部分に、材質記号やロゴマーク、キャビティ番号、製造年月日指示マークなどを刻印する場合、欠肉113cによって刻印が欠けてしまい、ダイナミックダンパ110が不良になるおそれがある。尚、図12の矢印は、ゴム材料の流れを示している。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、成形用金型、及びこれを用いたダイナミックダンパの製造方法において、ダイナミックダンパの見栄えを良くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、それぞれ互いに対向する長方形状の第1及び第2底面とそれぞれ該底面の短辺方向と平行に延びて互いに対向する第1及び第2側面とそれぞれ上記底面の長辺方向と平行に延びて互いに対向する第3及び第4側面とを有する直方体状のウェイトと、該ウェイトの第1底面と対向し、該第1底面の中央部に対向する部分にゴム注入用のゴム注入孔が形成された底壁部を有するプレート金具と、上記ウェイトの外面を覆う被覆部と上記ウェイトの第1底面と上記プレート金具の底壁部とを互いに連結する連結部とを有するゴム弾性体とを備えたダイナミックダンパの、上記ウェイト及びプレート金具に上記ゴム弾性体を加硫一体化成形するための成形用金型であって、上記成形用金型の内面には、上記ウェイトの第3及び第4側面の上記長辺方向中央部に対向する部分に凸部がそれぞれ形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
これにより、成形用金型の内面の、ウェイトの第3及び第4側面におけるウェイト底面の長辺方向(以下、ウェイト長辺方向という)中央部に対向する部分に、凸部をそれぞれ形成しているので、このような成形用金型を用いてウェイト及びプレート金具にゴム弾性体を加硫一体化成形すると、ウェイトの第3又は第4側面のウェイト長辺方向中央部と成形用金型との間を流れてきたゴム材料は凸部によって堰き止められ、凸部を迂回して流れる。そして、凸部を迂回したゴム材料は、ウェイトの第1又は第2側面と成形用金型との間を流れてきたゴム材料と合流する。このように、ウェイトの第3又は第4側面のウェイト長辺方向中央部と成形用金型との間を通って直接第2底面と成形用金型との間に至るゴム材料はほとんどないので、ゴム弾性体の被覆部におけるウェイトの第2底面を覆う部分にできる欠肉を、該第2底面を覆う部分のウェイト長辺方向中央部に形成された、比較的短く小さいものにすることができる。よって、ダイナミックダンパの見栄えを良くすることができる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記成形用金型の内面には、上記ウェイトの第2底面に対向する部分に、上記被覆部のうち上記第2底面を覆う部分に刻印するための刻印部が形成されているものである。
【0010】
上記のように、ゴム弾性体の被覆部におけるウェイトの第2底面を覆う部分にできる欠肉を、該第2底面を覆う部分のウェイト長辺方向中央部に形成された、比較的短く小さいものにすることができるので、本発明のように、第2底面を覆う部分に刻印する場合でも、その刻印が欠けてダイナミックダンパが不良になるのを抑制することができる。
【0011】
第3の発明は、上記第1又は2の発明において、上記凸部は、上記成形用金型の内面の、上記ウェイトの第3及び第4側面の第2底面側端部に対向する部分にそれぞれ形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
ところで、凸部を、成形用金型の内面の、ウェイトの第3及び第4側面における第2底面側の端部以外の部分に対向する部分にそれぞれ形成すると、凸部を迂回したゴム材料は、ウェイトの第3及び第4側面における凸部に対応する部分の下側部分と成形用金型との間にまで回らず、ゴム弾性体の被覆部におけるウェイトの第3及び第4側面を覆う部分の、凸部に対応する部分の下側部分に、欠肉ができるおそれがある。
【0013】
ここで、本発明によれば、凸部を、成形用金型の内面の、ウェイトの第3及び第4側面における第2底面側の端部に対向する部分にそれぞれ形成しているので、そのような欠肉ができるのを抑制することができる。
【0014】
第4の発明は、それぞれ互いに対向する長方形状の第1及び第2底面とそれぞれ該底面の短辺方向と平行に延びて互いに対向する第1及び第2側面とそれぞれ上記底面の長辺方向と平行に延びて互いに対向する第3及び第4側面とを有する直方体状のウェイトと、該ウェイトの第1底面と対向し、該第1底面の中央部に対向する部分にゴム注入用のゴム注入孔が形成された底壁部を有するプレート金具と、上記ウェイトの外面を覆う被覆部と上記ウェイトの第1底面と上記プレート金具の底壁部とを互いに連結する連結部とを有するゴム弾性体とを備えたダイナミックダンパの製造方法であって、上記ウェイト及びプレート金具に上記ゴム弾性体を加硫一体化成形するための成形用金型の内面の、上記ウェイトの第3及び第4側面の上記長辺方向中央部に対向する部分に、凸部をそれぞれ形成しておき、上記成形用金型を用いて上記ウェイト及びプレート金具に上記ゴム弾性体を加硫一体化成形することを特徴とするものである。
【0015】
これにより、上記第1の発明と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、成形用金型の内面の、ウェイトの第3及び第4側面のウェイト長辺方向中央部に対向する部分に、凸部をそれぞれ形成しているので、このような成形用金型を用いてウェイト及びプレート金具にゴム弾性体を加硫一体化成形すると、ウェイトの第3又は第4側面のウェイト長辺方向中央部と成形用金型との間を流れてきたゴム材料は凸部によって堰き止められ、凸部を迂回して流れる。そして、凸部を迂回したゴム材料は、ウェイトの第1又は第2側面と成形用金型との間を流れてきたゴム材料と合流する。このように、ウェイトの第3又は第4側面のウェイト長辺方向中央部と成形用金型との間を通って直接第2底面と成形用金型との間に至るゴム材料はほとんどないので、ゴム弾性体の被覆部におけるウェイトの第2底面を覆う部分にできる欠肉を、該第2底面を覆う部分のウェイト長辺方向中央部に形成された、比較的短く小さいものにすることができる。よって、ダイナミックダンパの見栄えを良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
−ダイナミックダンパの構成−
以下、本発明の実施形態に係るダイナミックダンパの構成について説明する。
【0019】
図1〜図3に示すように、ダイナミックダンパ10は、ウェイト11(図1〜図3のうち図3のみ図示)と、プレート金具12と、これらのウェイト11とプレート金具12とを互いに連結するゴム弾性体13とを備えている。
【0020】
図3に示すように、ウェイト11は、それぞれ互いに対向する長方形状の第1及び第2底面11a,11b(図8〜図10も参照。図3では第1底面11aは下面、第2底面11bは上面。図8〜図10ではその逆)と、それぞれウェイト11底面11a,11bの短辺方向(以下、ウェイト短辺方向という)と平行に延びて互いに対向する長方形状の第1及び第2側面11c(図10を参照。第2側面は不図示)と、それぞれウェイト11底面11a,11bの長辺方向(以下、ウェイト長辺方向という)と平行に延びて互いに対向する長方形状の第3及び第4側面11e,11f(図8〜図10も参照)とを有する、直方体状の金属製マス部材である。
【0021】
図1〜図4に示すように、プレート金具12は、ウェイト11の第1底面11aと所定間隔を隔てて対向する底壁部12aを有するブラケット部材である。底壁部12aには、ウェイト11の第1底面11aの中央部に対向する部分にその厚み方向に貫通するゴム注入用の円状のゴム注入孔12b(図1〜図4のうち図4のみ図示)が形成されている。つまり、このゴム注入孔12bは、ウェイト11の第2底面11bの裏側に配置されている。底壁部12aには、そのウェイト短辺方向一方側で二股に分岐することで一対の分岐部12c,12cが形成されている。この分岐部12cの中央部近傍には、締結具挿通用の挿通孔12dが形成されている。この挿通孔12dに挿通された締結具(不図示)によって分岐部12dが車両の振動源に締結固定されることで、ダイナミックダンパ10がその振動源に取り付けられ、振動源の振動を減衰するようになっている。
【0022】
図1〜図3に示すように、ゴム弾性体13は、ウェイト11の外面全体を覆うウェイト11防錆用の被覆部13aと、ウェイト11の第1底面11aとプレート金具12の底壁部12aとの間に設けられてこれらを互いに連結する連結部13bと、プレート金具12のゴム注入孔12bを埋める充填部13c(図9〜図11を参照)とを有している。
【0023】
被覆部13aのうちウェイト11の第2底面11b全体を覆う部分(以下、刻印形成部13dという)には、材質記号13e(本実施形態では「>NR+SBR<」)やロゴマーク13f(本実施形態では「○ ××××」)、キャビティ番号13g(本実施形態では「1−1」)、製造年月日指示マーク13h(本実施形態では「890123」)の浮き出し模様が刻印されている。材質記号13eは刻印形成部13dにおける図2の左上に、ロゴマーク13fは刻印形成部13dにおける図2の右上に、キャビティ番号13gは刻印形成部13dにおける図2の左下に、製造年月日指示マーク13hは刻印形成部13dにおける図2の左下及び右下に、それぞれ配置されている。このように、浮き出し模様13e〜13hは、刻印形成部13dにおけるウェイト長辺方向中央部以外の部分に形成されている。
【0024】
刻印形成部13dのウェイト長辺方向中央部には、そのウェイト短辺方向両端部に比較的短く小さい欠肉13iがそれぞれ形成されている(図1、図2では、図を見易くするため、欠肉13iの図示を省略。図11のみ図示)。この欠肉13iの詳細については後述する。刻印形成部13dの四隅には、凹部13jがそれぞれ形成されている。被覆部13aのうちウェイト11の第3及び第4側面11e,11f全体を覆う部分には、その第2底面11b側端部(図1〜図3では上端部)のウェイト長辺方向中央部に側面視長方形状の凹部13kがそれぞれ形成されている。
【0025】
−成形用金型の構成−
以下、成形用金型の構成について説明する。
【0026】
図5〜図9に示すように、成形用金型20は、上型21と、下型22と、これらの上型21及び下型22の間に配置される中型23とを備えている。
【0027】
上型21には、型閉め時におけるプレート金具12の底壁部12aのゴム注入孔12bに対向する部分に、ゴム注入用のゴム注入通路21aが形成されている。
【0028】
下型22の上面には、ゴム弾性体13の被覆部13aを中型23とともに形成するための平面視長方形状の凹部22aが形成されている。この凹部22aの内面は、長方形状の底面22bと、それぞれ底面22bの短辺方向と平行に延びて互いに対向する長方形状の第1及び第2側面22c,22dと、それぞれ底面22bの長辺方向と平行に延びて互いに対向する長方形状の第3及び第4側面22e,22fとを有している。凹部22a内には、型閉め時において、ウェイト11が中型23に跨ってセットされる。底面22bは、型閉め時において、ウェイト11の第2底面11bと所定間隔を隔てて対向する。第1〜第4側面22c〜22fは、型閉め時おいて、ウェイト11の第1〜第4側面11c,11e,11fと所定間隔を隔ててそれぞれ対向する。
【0029】
下型22の内面の、型閉め時におけるウェイト11の第2底面11bに対向する部分、すなわち、凹部22aの底面22bには、ゴム弾性体13の被覆部13aの刻印形成部13dに浮き出し模様を刻印するための刻印凹部(刻印部)が形成されている。この刻印凹部には、凹部22aの底面22bにおける図6の右上に配置された材質記号用刻印凹部22gと、凹部22aの底面22bにおける図6の左上に配置されたロゴマーク用刻印凹部22hと、凹部22aの底面22bにおける図6の右下に配置されたキャビティ番号用刻印凹部22iと、凹部22aの底面22bにおける図6の右下及び左下に配置された製造年月日指示マーク用刻印凹部22jとが含まれている。このように、刻印凹部22g〜22jは、凹部22aの底面22bにおける長辺方向中央部以外の部分に形成されている。
【0030】
凹部22aの底面22bの四隅には、型閉め時におけるウェイト11の第2底面11bの四隅を支持してウェイト11を下型22内面の凹部22a底面22bから浮かす支持部22kがそれぞれ形成されている。
【0031】
下型22内面の、型閉め時におけるウェイト11第3及び第4側面11e,11fの第2底面11b側端部(図8、図9では下端部)のウェイト長辺方向中央部に対向する部分、すなわち、凹部22aの第3及び第4側面22e,22f下側部分の長辺方向中央部には、型閉め時におけるウェイト11に向かって突出する側面視長方形状の凸部22lが第3及び第4側面22e,22fの長辺方向に延びるようにそれぞれ形成されている。
【0032】
中型23には、第1孔部23aと、この第1孔部23aの下側に第1孔部23aと連通するように配置された、ゴム弾性体13の連結部13bを形成するための第2孔部23bと、この第2孔部23bの下側に第2孔部23bと連通するように配置された、ゴム弾性体13の被覆部13aを下型22とともに形成するための平面視長方形状の第3孔部23cとが形成されている。第1孔部23a内には、成形用金型20の型閉め時(以下、単に型閉め時という)において、プレート金具12がセットされる。第3孔部23cの内面は、それぞれ下型22の凹部22a底面22bの短辺方向と平行に延びて互いに対向する長方形状の第1及び第2側面(不図示)と、それぞれ下型22の凹部22a底面22bの長辺方向と平行に延びて互いに対向する長方形状の第3及び第4側面23e,23fとを有している。第3孔部23c内には、型閉め時において、ウェイト11が下型22に跨ってセットされる。第1〜第4側面23e,23fは、型閉め時おいて、ウェイト11の第1〜第4側面11c,11e,11fと所定間隔を隔ててそれぞれ対向する。
【0033】
−ダイナミックダンパの成形方法−
以下、成形用金型20を用いたダイナミックダンパ10の成形方法について説明する。
【0034】
まず、図8に示すように、成形用金型20内にウェイト11及びプレート金具12をセットして、成形用金型20を型締め状態にする。
【0035】
次に、図9に示すように、上型21のゴム注入通路21a及びプレート金具12のゴム注入孔12bを介して、成形用金型20のキャビティ20a内にゴム弾性体13の成形材料(以下、ゴム材料という)を注入充填して、ウェイト11及びプレート金具12にゴム弾性体13を加硫一体化成形する。
【0036】
上記のように、ウェイト11の第1底面11aの中央部とプレート金具12のゴム注入孔12bとが対向するため、図9、図10に示すように、プレート金具12のゴム注入孔12bから注ぎ入れられたゴム材料は、まずウェイト11の第1底面11aの中央部とプレート金具12のゴム注入孔12bとの間に至った後、そこからウェイト11の第1底面11aとプレート金具12の底壁部12aとの間を通ってウェイト11の各側面11c,11e,11fと成形用金型20との間へとそれぞれ流れていき、最終的にはウェイト11の第2底面11bと成形用金型20との間に流れ着く。尚、図10の矢印は、ゴム材料の流れを示している。
【0037】
ここで、ウェイト11の第1及び第2側面11cはそれぞれウェイト短辺方向と平行に延びる一方、第3及び第4側面11e,11fはそれぞれウェイト長辺方向と平行に延びるので、ウェイト11の第1底面11aの中央部から第1又は第2側面11cを通って第2底面11bの中央部に至るまでの距離は、ウェイト11の第1底面11aの中央部から第3又は第4側面11e,11fを通って第2底面11bの中央部に至るまでの距離よりも長い。
【0038】
このため、上記のような従来のものでは、ウェイトの第1又は第2側面と成形用金型との間を流れてきたゴム材料は、ウェイトの第3又は第4側面と成形用金型との間を流れてきたゴム材料よりもウェイトの第2底面と成形用金型との間に至るのが遅い。このゴム材料の到達時間の違いによって、ゴム弾性体の被覆部における刻印形成部の中央部、すなわち、被覆部におけるゴム注入孔に対し影になる部分に、ウェイト長辺方向に延びる、比較的長く大きいエアポケット(空気溜まり)ができ、この部分が欠肉となった。そして、この欠肉によって、ゴム弾性体の被覆部の刻印形成部の、材質記号やロゴマーク、キャビティ番号、製造年月日指示マークが欠けてしまい、ダイナミックダンパが不良になるおそれがあった。
【0039】
そこで、本実施形態では、下型22凹部22aの第3及び第4側面22e,22fの、型閉め時におけるウェイト11第3及び第4側面11e,11fの第2底面11b側端部のウェイト長辺方向中央部に対向する部分に、型閉め時におけるウェイト11に向かって突出する凸部22lをウェイト長辺方向に延びるようにそれぞれ形成した。
【0040】
このため、ウェイト11の第3又は第4側面11e,11fのウェイト長辺方向中央部と成形用金型20との間を通るゴム材料は凸部22lによって堰き止められ、凸部22lを迂回して流れる。そして、凸部22lを迂回したゴム材料は、ウェイト11の第3又は第4側面11e,11fと成形用金型20との間を流れてきたゴム材料と合流する。このように、ウェイト11の第3又は第4側面11e,11fのウェイト長辺方向中央部と成形用金型20との間の隙間が小さく、ウェイト11の第3又は第4側面11e,11fのウェイト長辺方向中央部と成形用金型20との間を通って直接第2底面11bと成形用金型20との間に至るゴム材料はほとんどないためため、図11に示すように、ゴム弾性体13の被覆部13aの刻印形成部13dにできる欠肉13iを比較的短く小さいものにすることができる。よって、ダイナミックダンパ10の見栄えを良くすることができる。尚、図11では、図を見易くするため、浮き出し模様13e〜13hの図示を省略している。
【0041】
また、上記のように、欠肉13iを比較的短く小さいものにすることができるため、ゴム弾性体13の被覆部13aの刻印形成部13dの、材質記号13eやロゴマーク13f、キャビティ番号13g、製造年月日指示マーク13hが欠けてダイナミックダンパ10が不良になるのを抑制することができる。
【0042】
さらに、欠肉13iを比較的短く小さいものにすることができるため、ウェイト11の露出部分を比較的小さくすることができ、ゴム弾性体13の被覆部13aの、ウェイト11の防錆効果を発揮することができる。
【0043】
ところで、凸部22lを、成形用金型20の内面の、型閉め時におけるウェイト11第3及び第4側面11e,11fの第2底面11b側端部以外の部分に対向する部分にそれぞれ形成すると、凸部22lを迂回したゴム材料は、ウェイト11の第3及び第4側面11e,11fにおける凸部22lに対応する部分の下側部分と成形用金型20との間にまで回らず、ゴム弾性体13の被覆部13aにおけるウェイト11の第3及び第4側面11e,11fを覆う部分の、凸部22lに対応する部分の下側部分に、欠肉ができるおそれがある。
【0044】
ここで、本実施形態によれば、凸部22lを、成形用金型20の内面の、型閉め時におけるウェイト11第3及び第4側面11e,11fの第2底面11b側端部に対向する部分にそれぞれ形成しているので、そのような欠肉ができるのを抑制することができる。
【0045】
そして、上記加硫一体化成形後、成形用金型20を型開き状態にする。こうして、ダイナミックダンパ10の成形が完了する。成形完了後のダイナミックダンパ10におけるゴム弾性体13の被覆部13aのうち刻印形成部13dには、下型22の刻印凹部22g〜22jに対応する位置に浮き出し模様13e〜13hが、下型22の支持部22kに対応する位置に凹部13jが、それぞれ形成されている。また、ゴム弾性体13の被覆部13aのうち、ウェイト11の第3及び第4側面11e,11fを覆う部分には、下型22の凸部22lに対応する位置に凹部13kがそれぞれ形成されている。
【0046】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、凸部22lを、成型用金型20の内面の、型閉め時におけるウェイト11第3及び第4側面11e,11fの第2底面11b側端部に対向する部分にそれぞれ形成しているが、この第2底面11b側端部以外の部分に対向する部分にそれぞれ形成しても良い。例えば、中型23の内面の、型閉め時におけるウェイト11の第3及び第4側面11e,11fに対向する部分、すなわち、中型23の第3孔部23cの第3及び第4側面23e,23fに形成しても良い。但し、欠肉ができるのを抑制する観点からは、第2底面11b側端部に対向する部分に形成するのが望ましい。尚、下型23凹部22aの第3及び第4側面22e,22fの上側部分に形成すると、ダイナミックダンパ10を下型22から取り外すことができなくなる。
【0047】
また、上記実施形態では、ウェイト11の第1及び第2側面11cを長方形状のものにしているが、正方形状のものにしても良い。
【0048】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0049】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明にかかる成形用金型、及びダイナミックダンパの製造方法は、ダイナミックダンパの見栄えを良くする用途等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係るダイナミックダンパの斜視図である。
【図2】ダイナミックダンパの平面図である。
【図3】ダイナミックダンパの側面図である。
【図4】プレート金具の斜視図である。
【図5】成形用金型の断面図である。
【図6】下型の平面図である。
【図7】図6のVII−VII線矢視断面図である。
【図8】成形用金型を用いたダイナミックダンパの成形工程の一部を示す図である。
【図9】成形用金型を用いたダイナミックダンパの成形工程の一部を示す図である。
【図10】ゴム材料の流れを説明するための、プレート金具を除いた状態のダイナミックダンパの部分断面図である。
【図11】プレート金具を除いた状態のダイナミックダンパの斜視図である。
【図12】ゴム材料の流れを説明するための、プレート金具を除いた状態の従来のダイナミックダンパの部分断面図である。
【図13】従来のダイナミックダンパの斜視図である。
【図14】プレート金具を除いた状態の従来のダイナミックダンパの斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
10 ダイナミックダンパ
11 ウェイト
11a 第1底面
11b 第2底面
11c 第1側面
11e 第3側面
11f 第4側面
12 プレート金具
12a 底壁部
12b ゴム注入孔
13 ゴム弾性体
13a 被覆部
13b 連結部
13d 刻印形成部
20 成形用金型
22 下型
22g 材質記号用刻印凹部(刻印部)
22h ロゴマーク用刻印凹部(刻印部)
22i キャビティ番号用刻印凹部(刻印部)
22j 製造年月日指示マーク用刻印凹部(刻印部)
22l 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ互いに対向する長方形状の第1及び第2底面とそれぞれ該底面の短辺方向と平行に延びて互いに対向する第1及び第2側面とそれぞれ上記底面の長辺方向と平行に延びて互いに対向する第3及び第4側面とを有する直方体状のウェイトと、該ウェイトの第1底面と対向し、該第1底面の中央部に対向する部分にゴム注入用のゴム注入孔が形成された底壁部を有するプレート金具と、上記ウェイトの外面を覆う被覆部と上記ウェイトの第1底面と上記プレート金具の底壁部とを互いに連結する連結部とを有するゴム弾性体とを備えたダイナミックダンパの、上記ウェイト及びプレート金具に上記ゴム弾性体を加硫一体化成形するための成形用金型であって、
上記成形用金型の内面には、上記ウェイトの第3及び第4側面の上記長辺方向中央部に対向する部分に凸部がそれぞれ形成されていることを特徴とする成形用金型。
【請求項2】
請求項1記載の成形用金型において、
上記成形用金型の内面には、上記ウェイトの第2底面に対向する部分に、上記被覆部のうち上記第2底面を覆う部分に刻印するための刻印部が形成されていることを特徴とする成形用金型。
【請求項3】
請求項1又は2記載の成形用金型において、
上記凸部は、上記成形用金型の内面の、上記ウェイトの第3及び第4側面の第2底面側端部に対向する部分にそれぞれ形成されていることを特徴とする成形用金型。
【請求項4】
それぞれ互いに対向する長方形状の第1及び第2底面とそれぞれ該底面の短辺方向と平行に延びて互いに対向する第1及び第2側面とそれぞれ上記底面の長辺方向と平行に延びて互いに対向する第3及び第4側面とを有する直方体状のウェイトと、該ウェイトの第1底面と対向し、該第1底面の中央部に対向する部分にゴム注入用のゴム注入孔が形成された底壁部を有するプレート金具と、上記ウェイトの外面を覆う被覆部と上記ウェイトの第1底面と上記プレート金具の底壁部とを互いに連結する連結部とを有するゴム弾性体とを備えたダイナミックダンパの製造方法であって、
上記ウェイト及びプレート金具に上記ゴム弾性体を加硫一体化成形するための成形用金型の内面の、上記ウェイトの第3及び第4側面の上記長辺方向中央部に対向する部分に、凸部をそれぞれ形成しておき、
上記成形用金型を用いて上記ウェイト及びプレート金具に上記ゴム弾性体を加硫一体化成形することを特徴とするダイナミックダンパの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−76327(P2010−76327A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248897(P2008−248897)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】