説明

成形金型、弾性ロール及びその製造方法、電子写真プロセスカートリッジ並びに画像形成装置

【課題】ロールの金型成形において、弾性層の硬化終了後、成形金型からロールを脱型させる際に、成形金型の冷却及び成形金型内表面への離型剤の使用を行わずに、弾性層が優れた形状精度を得ることができる成形金型を提供する。
【解決手段】軸芯体上に弾性層を有する弾性ロールを製造するための成形金型であって、成形金型の内表面は、窒素含有量が3mol%以上8mol%以下であることを特徴とする成形金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性ロールの製造に用いる成形金型に関するものである。また、この成形金型を用いた弾性ロールの製造方法及びこの製造方法により製造した弾性ロール、並びにこの弾性ロールを搭載した電子写真装置用プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属等の剛性のある軸芯体の外周上に、弾性、導電性等の様々な機能を有する種々の材料を含有する多層の弾性層を形成した弾性ロールが製造されている。この弾性ロールの製造方法としては、研磨などの後工程を必要とせずに比較的、再現性良く所望の形状精度の弾性ロールが得られることから、金型成形が多く使用されている。
【0003】
この金型成形においては、円筒金型内に、軸芯体の両端を注入口のついたコマで支持することにより配し、この注入口から液状の弾性層材料を注入する。この後、この金型を加熱することにより液状の弾性層材料を熱硬化させて所望形状の弾性層を成形する。次に、加熱により弾性層材料の熱硬化が終了した弾性ロールを、金型から取り出す(以後、「脱型」と記載する)ことにより、弾性ロールを得ている。
【0004】
しかしながら、この脱型の際には、金型内部の弾性層がその熱膨張により金型内表面に強い力で押し付けられている状態となっている。このため、成形直後に弾性ロールを脱型すると、弾性層が変形したり弾性層の破壊が起こる場合があった。
【0005】
そこで、以下のように、従来から脱型時の金型内表面と弾性層の接触面での摩擦力を低減する方法が試みられている。
(1)第一の方法としては、弾性層の成形後に、金型及びその内部の弾性層を充分に冷却して弾性層が熱膨張していない状態とした後に脱型をする方法を挙げることができる。
【0006】
(2)第二の方法としては、金型内表面に離型剤を塗布する手法を挙げることができる。
(3)第三の方法としては、金型内表面に離型性に優れた離型性被膜を設ける方法を挙げることができる。特許文献1には、PTFE粉体を混入させたフッ素樹脂から構成され、表面の十点平均粗さ(Rz):10以上、接触角度(濡れ性):80°以上の離型性被膜を内周面に有するOAローラ成形用金型が開示されている。
【0007】
一方、近年、製品としての弾性ロールに要求される機能が多様化及び高度化し、これに伴って弾性ロールにも多くの特性が求められるようになってきている。そこで、これらの要求に対応するため、従来よりも弾性層中に使用できる材料の選択幅は狭いものとなっており、有用な材料としてシリコーンゴムが多用されるようになってきている。一般的に、このシリコーンゴムは反撥弾性に優れるものの引裂き強度が弱く、金型からの脱型性には劣るものとなっている。
【特許文献1】特開2006−096004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記(1)〜(3)の方法は何れも様々な問題点を有しており、この問題点はシリコーンゴムを材料とする弾性層を有する弾性ロールを形成する場合にはより顕著となっていた。
【0009】
すなわち、上記(1)の方法では、弾性ロールの冷却に時間を要し、生産性が劣ることとなっていた。また、金型の材質や弾性層の機械的特性、更にこれら両材質間の親和性の程度によっては、充分に冷却した場合であっても、金型の内表面と弾性層との間に大きな接触ストレスがかかる場合があった。このような場合には、脱型時に弾性層の機械的強度が接触ストレスに耐えられず、弾性層が変形・破壊される場合があった。
【0010】
また、弾性層の成形後に冷却した金型は常温まで温度が下がっており、この金型を用いて加熱成形する場合には、常温から弾性ロール材料の硬化温度までの昇温に大きな熱量が必要となっていた。この結果、成形サイクルの増加や、使用電力が大きくなるという問題が生じていた。更に、弾性ロール材料の加熱、及び弾性ロールの冷却のために熱交換機等の設備が必要となり、コスト高や装置スペースが必要となる等の問題が生じていた。
【0011】
上記(2)の方法では、離型剤が弾性ロールの弾性層中に浸透したり、弾性層の表面特性を変化させるなど、弾性層の特性に悪影響を及ぼす場合があった。
また、上記(3)の方法では、金型を長期間、使用すると、金型内表面に部分的に離型性被膜が剥離した部分が生じて、弾性層の離型性が部分的に劣る部分が生じる場合があった。この結果、脱型時には、弾性層内に部分的に、離型性の低下による過度な接触ストレスがかかり、弾性層の破壊・変形を誘発する場合があった。
【0012】
そこで、本発明者は鋭意検討した結果、成形金型の内表面を、窒素含有量が3mol%以上8mol%以下となるように構成すれば良いことを発見した。すなわち、本発明は、成形金型の内表面を特別な窒素含有量とすることで、弾性ロールを脱型する際に、金型を冷却したり、金型内表面に離型剤を塗布することなく、金型内表面と弾性層間の剥離性を向上させるものである。この結果、弾性層の変形・破壊を防止して、形状精度に優れた弾性層を形成可能な成形金型を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、以下の構成を有する。
1.軸芯体上に弾性層を有する弾性ロールを製造するための成形金型であって、
前記成形金型の内表面は、窒素含有量が3mol%以上8mol%以下であることを特徴とする成形金型。
【0014】
2.前記成形金型の内表面は、金属から構成される金型の内表面を窒化処理することにより、窒素含有量を3mol%以上8mol%以下としたものであることを特徴とする上記1に記載の成形金型。
3.(1)上記1又は2に記載の成形金型内に軸芯体を挿入する工程と、
(2)前記成形金型内に弾性層材料を充填した後、前記弾性層材料を加熱硬化させることにより、前記軸芯体の外周面上に弾性層を形成する工程と、
(3)前記弾性層を形成した軸芯体を、前記成形金型から脱型する工程と、
(4)前記弾性層の外周面上に樹脂層を形成する工程と、
を有することを特徴とする弾性ロールの製造方法。
【0015】
4.上記3に記載の弾性ロールの製造方法により製造したことを特徴とする弾性ロール。
5.前記弾性層は、付加反応架橋型シリコーンゴムを含有することを特徴とする上記4に記載の弾性ロール。
【0016】
6.前記樹脂層は、ウレタン結合を有する樹脂を含有することを特徴とする上記4又は5に記載の弾性ロール。
7.前記弾性ロールが現像剤担持ロールであることを特徴とする上記4から6の何れか1項に記載の弾性ロール。
【0017】
8.画像形成体と、
前記画像形成体に当接するように設けられた上記7に記載の弾性ロールであって、前記弾性ロールの表面に形成した現像剤の薄層を前記画像形成体の表面に供給することにより、前記画像形成体上の静電潜像を現像する弾性ロールと、
を有する電子写真プロセスカートリッジ。
【0018】
9.画像形成体と、
前記画像形成体に当接するように設けられた上記7に記載の弾性ロールであって、前記弾性ロールの表面に形成した現像剤の薄層を前記画像形成体の表面に供給することにより、前記画像形成体上の静電潜像を現像する弾性ロールと、
前記画像形成体上の現像剤を記録材に転写する転写ロールと、
定着ロールと、前記定着ロールとニップ部を形成し前記ニップ部により前記記録材を圧接して搬送する加圧ロールと、
を有する画像形成装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、金型成形において、弾性層材料の硬化終了後、弾性ロールを脱型する際に、成形金型を冷却したり、成形金型の内表面に離型剤を塗布することなく、成形金型の内表面と弾性層間の剥離性を向上させることができる。この結果、弾性層の変形・破壊を防止して、形状精度に優れた弾性層を有する弾性ロールを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔成形金型〕
本発明の成形金型は、軸芯体と、軸芯体上に弾性層を有する弾性ロールを製造するためのものである。なお、この弾性ロールは、弾性層の形成後、更に弾性層の外周上に樹脂層を形成しても良い。この成形金型の内表面は、窒素含有量が3mol%以上8mol%以下である点に特徴を有する。
【0021】
ここで、成形金型内表面の窒素含有量が3mol%より小さい場合、金型内表面と成形後の弾性層との剥離性が低下して、弾性層の変形・破壊が起こりやすくなる。一方、金型内表面の窒素含有量が8mol%より大きい場合、弾性層の硬化時に加熱した成形金型から弾性層材料への熱伝導が不均一となったり、弾性層の硬化が過度に阻害されるものと考えられる。この結果、弾性層の変形が起こり、成形金型の形成加工精度が劣るものとなる。
【0022】
この成形金型内表面の窒素含有量は、4mol%以上8mol%以下が好ましく、5mol%以上8mol%以下がより好ましく、6mol%以上8mol%以下が更に好ましい。成形金型内表面の窒素含有量がこれらの範囲内にあることによって、弾性層は金型内表面に対して優れた剥離性を有すると共に、優れた加工精度で弾性層を形成することができる。
【0023】
本発明の成形金型の内表面は、金属から構成される金型の内表面を窒化処理することにより、窒素含有量を3mol%以上8mol%以下とすることが好ましい。この場合、使用できる窒化処理方法としては、ガス窒化法・塩浴窒化法・ガス軟窒化法が挙げられる。
【0024】
ガス窒化法とは、500℃から550℃のアンモニア分解ガス中で、被処理物を50時間以上、処理する方法である。
また、塩浴窒化法とは、KCNやK2CO3などをいれた550℃程度の処理槽中に、空気を送り込みながら4時間程度、処理する方法である。
【0025】
これらの方法の中でも、金型内表面の寸法変化が少なく、処理時間が比較的短い等の理由から、ガス軟窒化法が好ましい。このガス軟窒化法では、金型を電気炉に入れた後、アンモニアガスを吹き込み、炉内温度を500〜600℃にすることで、アンモニアガスの一部を分解させて窒素を発生させる。そして、この窒素が金型内表面近傍の金属元素と結合することにより窒化物を形成するものである。
【0026】
なお、この時の温度、炉内処理時間及び炉内の雰囲気ガス中のアンモニアガスの含量を調節することによって、金型内表面の窒素含有量を制御することができる。この温度及び炉内処理時間は、所望する窒素含有量に応じて適宜、選択できるが、処理温度は480℃以上520℃以下が好ましく、処理時間は3時間以上6時間以下が好ましい。
【0027】
〔弾性ロール及びその製造方法〕
本発明では、上記の成形金型を用いて、以下の工程により弾性ロールを製造することができる。
(1)成形金型内に軸芯体を挿入する工程。
(2)成形金型内に弾性層材料を充填した後、弾性層材料を加熱硬化させることにより、軸芯体の外周面上に弾性層を形成する工程。
(3)弾性層を形成した軸芯体を、成形金型から脱型する工程。
(4)弾性層の外周面上に樹脂層を形成する工程。
【0028】
ここで、工程(1)では、中空円筒状の成形金型を使用し、成形金型と軸芯体の中心軸が一致するように、成形金型内に軸芯体を挿入する。そして、成形金型内に存在する固定治具により、成形金型内で軸芯体の位置を固定する。
次に、工程(2)では、成形金型内の注入口から成形金型内に液状の弾性層材料を注入する。この後、所定の条件で弾性層材料を加熱硬化させることにより、軸芯体の外周面上に弾性層を形成する。
【0029】
この後、工程(3)では、弾性層を形成した軸芯体を、成形金型から脱型する。本発明の成形金型は典型的には、中心軸に平行な面で2分割できるようになっている。このため、加熱硬化後には、成形金型を2分割して分割片をそれぞれ、弾性層を形成した軸芯体から取り外すことによって脱型できる。なお、成形金型はこの2分割タイプのものに限られず、成形金型の一部が取り外し可能となっており、この取り外した部分から、加熱硬化後の弾性層を形成した軸芯体を取り出せるように構成されて入れば良い。
【0030】
次に、工程(4)では、弾性層の外周面上に樹脂層を形成する。この樹脂層の形成方法としては例えば、樹脂層用の塗工液を準備した後、スプレー塗工法、ディッピング法等により弾性層の外周面上に塗工し、更にこの後、樹脂層用の塗工液を加熱乾燥する方法を挙げることができる。
【0031】
本発明では、上記成形金型を使用することにより、軸芯体上に弾性層を形成した弾性ロールを金型から脱型する際にも、金型内表面と弾性層間の剥離性が高くなる(弾性層にかかる摩擦力が小さくなる)。このため、弾性層を変形・破壊させることなく、金型から容易に弾性ロールを脱型することができる。この結果、優れた寸法精度の弾性ロールを製造することができる。
また、上記の製造方法により製造された弾性ロールは、軸芯体の外周上に弾性層、弾性層の外周上に樹脂層をそれぞれ、有するものとなる。
以下、本発明の製造方法で使用する各部材について説明する。
【0032】
〔軸芯体〕
本発明で使用する軸芯体は、例えば、炭素鋼合金表面に5μm厚さの工業ニッケルメッキを施した円柱である。軸芯体を構成する材料としてはこれ以外にも例えば、以下の材料を挙げることができる。
・鉄、アルミニウム、チタン、銅及びニッケル等の合金やこれらの金属を含むステンレス、ジュラルミン、真鍮及び青銅等の合金。
・カーボンブラックや炭素繊維をプラスチックで固めた複合材料等
・その他、剛直で導電性を示す公知の材料。
また、軸芯体の形状としては円柱状の他に、中心部分を空洞とした円筒形状とすることもできる。
【0033】
〔弾性層〕
弾性層は、軸芯体の外周上に設けられるものである。弾性層材料としては、所望の特性を満たす液状のものであれば、特に限定されるわけではない。この弾性層材料としては例えば、ポリマー、導電剤及び微粒子を適宜の割合で含有したものを用いることができ、この弾性層材料を成形金型内に注入することによって成形できる。
以下、弾性層材料中に含まれる各材料について説明する。
【0034】
<ポリマー>
ポリマーとしては、付加反応架橋型シリコーンゴムを用いることが好ましい。以下、付加反応架橋型シリコーンゴムについて詳細に説明する。
【0035】
付加反応架橋型シリコーンゴムは以下のような利点を有している。
・加工性に優れる。
・硬化反応に伴う副生成物の発生が無いため、寸法安定性が良好である。
・硬化後の物性が安定している。
【0036】
また、弾性層材料として付加反応架橋型シリコーンゴムを使用し、成形金型内表面の窒素含有量が3mol%以上8mol%以下であると、金型内表面近傍でのシリコーンゴムの硬化反応が部分的に阻害されるものと考えられる。この結果、成形金型内の付加反応架橋型シリコーンゴム内には、完全に硬化した部分と、硬化の度合いが小さい部分とが適度な割合で混在して分布することとなる。そして、成形後の弾性層は、場所によって、硬化の度合いに応じてそれぞれ異なった量の硬化収縮を示すものとなる。この場所による硬化収縮量の違いにより成形金型の内表面と弾性層表面とは完全には密着した状態とはならず、部分的・局所的に密着していない部分が生じる。この結果、成形金型の内表面と弾性層表面の接触面積を小さくして、脱型の際に弾性層にかかる接触ストレスを小さくすることができる。
【0037】
また、付加反応架橋型シリコーンゴムの硬化は、金型内表面中に存在する窒素原子に、シリコーンゴム中の白金触媒等の触媒が配位することで、局所的に阻害されるものと考えられる。そして、この硬化の阻害の度合いは、金型内表面中に存在する窒素原子量の影響を大きく受ける。
【0038】
ここで、成形金型内表面中の窒素含有量が3mol%より小さい場合、金型内表面近傍における付加反応架橋型シリコーンゴムの硬化は阻害されず、均一に高い割合で進行する。このため、弾性層表面と成形金型内表面との密着性は、化学ニッケルメッキや鉄の内表面を有する金型と同様に高くなり、硬化後の弾性層の、成形金型に対する離型性が低くなる。また、弾性層の成形後、弾性ロールを脱型する際に、弾性層表面へ負荷されるストレスが大きくなり、形状精度を高く保ったままで弾性ロールを脱型することができなくなる。
【0039】
また、逆に、成形金型の内表面の窒素含有量が8mol%より大きいと金型内表面近傍における付加反応架橋型シリコーンゴムの硬化が大幅に阻害されることとなる。この結果、金型内表面近傍のシリコーンゴムの硬化が充分に完了せず、成形品の形状精度が不十分なものとなる。
【0040】
この付加反応架橋型シリコーンゴムは例えば、下記式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、及び下記式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有する。また、付加反応架橋型シリコーンゴム中には架橋触媒が添加されている。
【0041】
【化1】

【0042】
(式中、Rはアルケニル基であり、xは正の整数である。)
このオルガノポリシロキサンは付加反応架橋型シリコーンゴムのベースポリマーであり、その重量平均分子量は特に限定されないが、10万以上100万以下が好ましく、40万以上70万以下がより好ましい。更に、加工特性及び得られる弾性層の特性等の観点から、オルガノポリシロキサンの粘度は、10Pa・s以上250Pa・s以下が好ましい。
【0043】
上記オルガノポリシロキサンのアルケニル基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位であり、その種類は特に限定されない。活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基及びアリル基の少なくとも一方であることが好ましく、ビニル基がより好ましい。
【0044】
【化2】

【0045】
(式中、yは2以上の正の整数であり、zは正の整数である。)
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤の働きをするもので、一分子中のケイ素原子に結合した水素原子の数は2個以上である。硬化反応を適切に行わせる為に、比較的、低分子量の重量平均分子量1000以上5000以下が好ましい。
【0046】
<架橋触媒>
オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンの反応の架橋触媒としては例えば、塩化白金酸六水和物を使用することができる。また、ヒドロシリル化反応において触媒作用を示す遷移金属化合物も使用可能である。架橋触媒としては、下記のものを使用することができる。
・Fe(CO)5、Co(CO)8、RuCl3、IrCl3、〔(オレフィン)PtCl22、ビニル基含有ポリシロキサン−Pt錯体、L2Ni(オレフィン)、L4Pd、L4Pt。
・L2NiCl2
(但し、LはPPh3若しくはPR’3であり、ここでPはリン、Phはフェニル基、R’はアルキル基を示す)。
【0047】
これらの中でも、好ましい架橋触媒は、白金、パラジウム、ロジウム系遷移金属化合物触媒である。
上記架橋触媒が白金系金属化合物触媒の場合、その配合量は、付加反応架橋型シリコーンゴム中に、白金として1質量ppm以上100質量ppmとなる量が好ましいが、この範囲に限定されるわけではない。架橋触媒の配合量は、目標とする硬化時間、製品形状等により適宜、選択すれば良い。
【0048】
<導電剤>
弾性層中には、必要に応じて導電剤を配合することができる。導電剤としては、以下のものを挙げることができる。
・アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維。
・酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物。
・硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物粉。
・表面に、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブテンを付着させた粒子。電解処理、スプレー塗工又は混合振とうなどにより、表面に、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金又はロジウムを付着させた粉体。
・アセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN系カーボンブラック、ピッチ系カーボンブラック等のカーボン粉。
・KSCN、LiClO4、NaClO4、4級アンモニウム塩等のイオン伝導物質。
【0049】
これらの導電剤の中でも、比較的、少量の添加で電気抵抗率を低下させることができ、ゴム組成物の硬度を大きくすることなく導電性を付与することができることから、カーボンブラックが好ましい。
【0050】
<微粒子>
本発明の弾性層材料中には、補強充填剤及び増量剤として微粒子を添加することができる。この微粒子としては例えば、以下のものを挙げることができる。
・ヒュームドシリカ、湿式シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、カーボンブラック、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム。
・ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、ゴム用カーボンブラック、有機補強剤、有機充填剤。
【0051】
<添加剤>
また、弾性層材料中には、上記材料以外にも様々な添加剤を添加することができる。可塑剤としては例えば、ポリジメチルシロキサンオイル、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール、フタル酸誘導体、アジピン酸誘導体等を用いることができる。
軟化剤としては例えば、潤滑油、プロセスオイル、コールタール、ヒマシ油等を用いることができる。
【0052】
老化防止剤としては例えば、フェニレンジアミン類、フォスフェート類、キノリン類、クレゾール類、フェノール類、ジチオカルバメート金属塩類等を用いることができる。
耐熱剤としては例えば、酸化鉄、酸化セリウム、水酸化カリウム、ナフテン酸鉄、ナフテン酸カリウム等を用いることができる。
また、その他、加工助剤、着色剤、紫外線吸収剤、難燃剤、耐油性向上剤、発泡剤、スコーチ防止剤、粘着付与剤、滑剤等を添加できる。
【0053】
〔樹脂層〕
上記弾性層上には、更に表面層として樹脂層を形成することができる。
樹脂層中には例えば、各種のポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、オレフィン樹脂等を含有することができる。これらの中でも、樹脂層中にはウレタン結合を有する樹脂材料(ウレタン樹脂など)を含有することが好ましい。樹脂層中にウレタン結合を有する樹脂材料を含有することによって、弾性層材料が弾性ロールの表面に染み出すのを防止すると共に、弾性ロールに優れた表面特性を付与することができる。
【0054】
また、これらの材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した、従来公知の分散装置を使用して、適当な溶媒中に分散させることができる。この溶媒としては、メチルエチルケトン・トルエン・メチルイソブチルケトン等を使用することができる。この分散処理を行うことにより、表面欠損の少ない樹脂層を形成可能な塗工液を得ることができる。得られた塗工液は、スプレー塗工法、ディッピング法等により弾性層上に塗工することができる。
【0055】
電子写真プロセスに用いる弾性ロールの場合、樹脂層の厚みとしては、弾性層成分の染み出しによる画像形成体の汚染を防止するため、5μm以上が好ましい。また、弾性ロール表面の高硬度化及び現像剤融着を防止する観点から、樹脂層の厚みは500μm以下が好ましく、10μm以上30μm以下がより好ましい。
【0056】
〔現像剤担持ロール〕
本発明の弾性ロールは、現像剤担持ロールとして画像形成装置内で使用することが好ましい。このように弾性ロールを、画像形成装置内で現像剤担持ロールとして使用することにより、安定して均一な量の現像剤を画像形成体上まで供給することができる。
【0057】
また、このように現像剤担持ロールとして使用する場合、弾性層及び樹脂層を有する現像ロールとし、樹脂層中に平均粒径が1μm以上20μm以下の微粒子を分散させることが好ましい。これにより、現像剤担持ロール表面の現像剤の搬送を容易にすることができ、充分な量の現像剤を現像領域に搬送することができる。また、このような目的で使用する微粒子としては例えば、以下のものを挙げることができる。
・ポリメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリスチレン微粒子、アミノ樹脂微粒子、フェノール樹脂微粒子等のプラスチックピグメント。
【0058】
これらの微粒子の中でも特に、ポリメタクリル酸メチル微粒子及びポリウレタン微粒子が好ましい。また、上記に挙げた微粒子は、微粒子を除いた樹脂層の構成成分の総質量に対して3質量%以上、200質量%以下の範囲で樹脂層中に添加することが好ましい。
【0059】
〔電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置〕
次に、図3を用いて、本発明の現像剤担持ロールが組み込まれた電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置を説明する。
図3の画像形成体501は帯電ロール502によりその表面に対し、所定の極性で、電位が一様になるように帯電処理される。この後、目的画像情報の露光503を受け、画像形成体501の表面に目的画像に対応した静電潜像が形成される。
【0060】
また、この画像形成体に当接するように現像剤担持ロール504が設けられており、その表面に形成した現像剤の薄層を画像形成体の表面に供給できるようになっている。そして、この静電潜像は、現像剤担持ロール504により供給された現像剤505により可視化される。この可視化された画像は、給紙ロール506によって搬送された記録材507の裏面から転写ロール508によって電圧を印加し、記録材507に転写される。
【0061】
次に、定着ロール509と加圧ロール510によって構成されたニップ部へ搬送され、圧接により像定着を受けると共に画像形成物として出力される。画像形成体501はその上に残存する現像剤、ごみ等を除くためにクリーニング部511によりクリーニングされ、除電部材(図示していない)にて除電され、再び帯電過程に進む。なお、クリーニング部511によって取り除かれた現像剤は廃現像剤容器512へ集められる。また、クリーニング部511の部材としてクリーニングロールを用いることも可能である。
【0062】
一方、現像剤担持ロール504は、その表面に現像剤供給ロール513により現像剤が現像剤貯槽514から供給され、現像ブレード515にて均一厚みになるようにそれぞれ現像剤供給ロール513、現像ブレード515が当接されている。現像剤担持ロール504上の画像形成体で静電潜像を現像する際に使用されなかった現像剤は現像剤供給ロール513で一旦、現像剤担持ロール504から掻き落とされる。また、帯電ロール502、現像剤担持ロール504及び転写ロール508はバイアス印加電源により必要電圧が印加されている。
【0063】
なお、電子写真プロセスカートリッジはここに記載した部材等で転写ロール、定着部を除くものが一体とされているものである。また、ブラック、マゼンダ、シアン、イエローの4色の電子写真プロセスカートリッジを並べ、記録材にそれぞれの現像剤を転写し、像定着を行うことにより、カラーの画像形成物を出力することが可能な現像剤である。
【実施例】
【0064】
以下、実施例によって本案を詳細に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。なお、以下、特に明記しない限り、薬品等として市販の高純度品を用いた。
なお、実施例1、2及び比較例1、2では、以下のようにして成形金型、弾性ロールの製造、及びその評価を行った。
【0065】
〔成形金型〕
まず、図1に示すような、内径がφ16で、外径がφ26の円筒状の、鋼鉄製の成形金型を準備した。次に、この成形金型の内径を所望の形状に加工した後、その内表面にガス軟窒化処理を行うことで所望の窒素含有量の窒化物を形成した。この際、窒化処理は、窒素ガス中にアンモニアガスを30mol%添加し、450℃以上、550℃以下の範囲の温度に設定した雰囲気の炉内に、上記成形金型を挿入し、この雰囲気中で2〜8時間の範囲で行った。そして、成形金型の内表面近傍に所望の窒素含有量の窒化物層を形成させた。なお、各実施例及び比較例では、上記範囲内で炉内温度及び炉内処理時間を変更することにより、窒化物層中の窒素含有量のコントロールを行った。
【0066】
〔成形金型の内表面の窒素含有量の測定方法〕
上記のようにして製造した成形金型内表面の窒素含有量を、電子線マイクロアナライザー(日本電子株式会社製、JXA−8500F(商品名))により測定した。測定用の試験片としては、成形金型の中央部を1cm角に切り取り、その内表面にあたる部分を準備して、分析に供した。
【0067】
〔弾性層の形成方法〕
上記成形金型内に、外径8mm、長さ280mmの鉄製丸棒に厚み5μmの化学ニッケルメッキを施した軸芯体の両端を支持することで配した。次に、成形金型の、軸芯体を支持する部材に設けられた注入口を介して、弾性層材料を成形金型の内部に注入した。なお、弾性層材料は、付加反応架橋型シリコーンゴムと導電性カーボンブラックを配合したものであり、この弾性層材料の硬化前の粘度は150Pa・sで、硬化後のアスカーC硬度は40°の物性を有していた。
【0068】
また、成形金型内への弾性層材料の注入は、成形金型の支持部材の材料注入口に注入ノズルを接触させ、材料注入口から弾性層材料がオーバーフローするまで約10秒間、一定流速で注入することにより行った。この後、成形金型を加熱して成形金型内の弾性層材料を硬化させた。硬化後、金型を冷却することなく、弾性層を設けた軸芯体を成形金型から脱型することで、弾性層の外径が約16mm、弾性層長さが240mmのロールを得た。
【0069】
〔軸芯体上に弾性層を設けたロールの真円度の測定〕
以下に、上記のようにして得たロールの真円度の測定方法を説明する。図2に示すように、ロールを、レーザー測長器(キーエンス社製、LS−5040(商品名))のレーザー光間に挿入し、ロールを回転速度120°/sで回転させた。そして、一つの外径測定ポイントにつき、その外径を外周方向に0.33ms間隔(回転角3.6°毎;合計100点)で測定した。また、外径測定ポイントは、弾性層の一方の端部からロール長手方向に5mmの位置をL1とし、L1から弾性層の他方の端部に至るまで5mm間隔で測定した。
【0070】
そして、各外径測定ポイント(弾性層の長手方向の位置を固定し、外周方向に測定したポイント)でのロール1周分(100個)の外径データの最大値と最小値との差を、その外径測定ポイントでの真円度とした。また、一つのロールにつき、上記のようにして得られた各外径測定ポイントの真円度のうち、真円度の最大値をそのロールの真円度とした。
【0071】
〔軸芯体上に弾性層を設けたロールの表面硬度の測定〕
以下に、上記のようにして得たロールの表面硬度の測定方法を説明する。まず、ロールを、マイクロ硬度測定器(高分子計器社製、MD1−TypeA(商品名);触針部径0.1mm)の測定台の上に置き、振り下ろし長さ8mmとして測定した。また、測定ポイントは、弾性層の一方の端部からロール長手方向に5mmの位置をL1(0°)、弾性層の他方の端部からロール長手方向に5mmの位置をL2(0°)、L1(0°)とL2(0°)の中間の位置をLC(0°)として。そして、L1、L2及びLCについてそれぞれ120°ずつ回転させたものを、L1(120°)、L1(240°)、L2(120°)、L2(240°)、LC(120°)、LC(240°)として、測定を行った。このようにして、1本のロール中、計9箇所の測定を行い、その平均値をロールの表面硬度とした。
【0072】
〔樹脂層の形成方法〕
さらに、上記のようにして軸芯体上に形成した弾性層の外周上に、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン粒子(平均粒径15μm)及び導電性カーボンブラックを含有する塗工液を、ディップ塗工により配した。
この後、150℃のオーブンにより、塗工液を4時間、硬化させることで、弾性層の外周上に樹脂層を配した弾性ロールを得た。
【0073】
〔画像評価方法〕
以下に、上記のようにして製造した弾性ロールを現像剤担持ロールとして使用した場合の画像評価の方法について説明する。本画像評価で使用した電子写真式レーザービームプリンター(LBP2510(商品名)、キヤノン社製)は、A4版出力用のマシンで、記録メディアの出力スピードはA4縦16枚/分、画像の解像度は600dpiである。また、このプリンターに内蔵される画像形成体は、アルミシリンダーにOPC(有機光導電体)層をコートした反転現像方式の画像形成体であり、最外層は変性ポリカーボネートをバインダー樹脂とする電荷輸送層となっている。
【0074】
このプリンターの動作時には、画像形成体上で現像された画像は転写ロールで記録材に転写され、定着部で熱定着される。また、転写ロールで転写しなかった現像剤はクリーニングブレードにより画像形成体から掻き取られる。更に、現像部分はカートリッジ化されており、現像剤担持ロールには現像剤層厚規制部材である現像ブレードがカウンタ方向に当接し、現像剤の層厚を規制している。このプリンターを用いて記録した記録画像の画像評価は、ベタ画像及びハーフトーン画像について、以下の基準により行った。
画像濃度が十分に濃く、印字面全体に渡って濃度ムラのないレベル:○、
微小な濃度ムラは発生するが実用上問題のないレベル:△、
濃度ムラが印字面全体に渡って発生するもの:×。
【0075】
(実施例1)
上記手法により、その内表面の窒化物層中の窒素含有率が3mol%の円筒状の成形金型を得た。この成形金型を使用して、上記方法に従い軸芯体の外周上に長さ230mm、厚み4mmの弾性層を配した。この際、シリコーンゴム層の硬化条件は100℃、30分とし、成形後のロールを金型から脱型する際には、従来、行っていた金型内表面への離型剤の塗布及び金型冷却を行わなかった。次に、このようにして得られたロールに対して、200℃のオーブン中で4時間、二次硬化を行った。そして、二次硬化終了済の弾性層に対し上記方法により真円度の測定、表面硬度の測定を行った。この結果を表1に示す。
【0076】
次に、上記のようにして、弾性層の外周上に、ディッピング法により樹脂層を配した。このようして得た弾性ロールを、画像形成装置内で現像剤担持ロールとして使用して画像評価を実施した。この結果を表1に示す。
【0077】
(実施例2)
上記成形金型内表面の窒化物層中の窒素含有率を8mol%とした以外は、実施例1と同様にして弾性ロールを作成した。また、上記方法により、真円度測定、表面硬度の測定及び画像評価を行った。この結果を表1に示す。
【0078】
(比較例1)
上記成形金型内表面の窒化物層中の窒素含有率を1.5mol%とした以外は、実施例1と同様にして弾性ロールを作成した。これ以外は、実施例1と同様にして弾性ロールを作成した。また、上記方法により、真円度測定、表面硬度の測定及び画像評価を行った。この結果を表1に示す。
【0079】
(比較例2)
上記成形金型内表面の窒化物層中の窒素含有率を10mol%とした以外は、実施例1と同様にして弾性ロールを作成した。また、上記方法により、真円度測定、表面硬度の測定及び画像評価を行った。この結果を表1に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1に示すように、実施例1では、窒化処理条件が500℃で3時間と処理時間が短いため、表面近傍に存在する窒素含有量は3mol%と少ないものとなった。また、成形金型内表面に離型剤を塗布せず、脱型時に金型を冷却せずに製造した弾性ロールであっても、現像剤担持ロールとして使用した場合に、画像評価結果は「△」、ロール真円度は5μmであった。このため、使用上、問題の無いレベルの弾性ロールを得ることが出来た。
【0082】
また、500℃で5時間、窒化処理をした実施例2の成形金型は、成形金型内表面の窒素含有量が8mol%となった。この弾性ロールでは、弾性層形成後の脱型の際に、成形金型と弾性層とのストレスを充分に緩和させることができ、ロール真円度が3μmと小さい弾性ロールを得ることができた。また、この弾性ロールを現像剤担持ロールとして使用した場合の画像評価結果は「○」であり、印字面の濃度ムラが無く、非常に良好なものであった。
【0083】
一方、低温での窒化処理により、比較例1の成形金型では、成形金型内表面の窒素含有量が1.5mol%となった。また、この成形金型内表面への離型剤の塗布及び脱型時の金型冷却無しの場合では、弾性層形成後のロール脱型時に弾性層にかかるストレスが大きくなった。このため、比較例1では、弾性ロールの真円度は10μm、この弾性ロールを現像剤担持ロールとして使用した場合の画像評価結果は「×」となり、濃度ムラが印字面全体に渡って発生し、使用に耐えないレベルのものとなった。従って、この比較例1の成形金型を用いて、現像剤担持ロールとしての使用に耐えうる形状精度の弾性ロールを得るためには、成形時に金型表面への離型剤の塗布及び脱型時の冷却が必要であることが分かる。
【0084】
更に、高温での窒化処理により、成形金型内表面の窒素含有量を10mol%とした比較例2の成形金型では、弾性層材料の熱硬化の際、弾性層材料と金型内表面との相互作用により硬化を抑制する作用が強くなった。即ち、金型内表面の窒化物が硬化用触媒の触媒毒となり、弾性層の硬化が完全に終了せず、弾性層材料は液状のままであった。このため、画像性能を確認するのに耐える弾性ロールを得ることが出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の弾性ロールは、電子写真プロセスカートリッジ、画像形成装置用の現像剤担持ロールとして、好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の成形金型を表す断面図である。
【図2】ロールの真円度の測定過程を表す概念図である。
【図3】本発明の電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置を表す概念図である。
【符号の説明】
【0087】
2:成形金型
11:芯金
21:成形金型の円筒部
22、23:駒
24、24’:芯金保持窪み
25:成形金型の中空内部
26:注入口
27:ランナー部
28、29:オーバーフロー部
501:画像形成体
502:帯電ロール
503:露光
504:現像剤担持ロール
505:現像剤
506:給紙ロール
507:記録材
508:転写ロール
509:定着ロール
510:加圧ロール
511:クリーニング部
512:廃現像剤容器
513:現像剤供給ロール
514:現像剤貯槽
515:現像ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体上に弾性層を有する弾性ロールを製造するための成形金型であって、
前記成形金型の内表面は、窒素含有量が3mol%以上8mol%以下であることを特徴とする成形金型。
【請求項2】
前記成形金型の内表面は、金属から構成される金型の内表面を窒化処理することにより、窒素含有量を3mol%以上8mol%以下としたものであることを特徴とする請求項1に記載の成形金型。
【請求項3】
(1)請求項1又は2に記載の成形金型内に軸芯体を挿入する工程と、
(2)前記成形金型内に弾性層材料を充填した後、前記弾性層材料を加熱硬化させることにより、前記軸芯体の外周面上に弾性層を形成する工程と、
(3)前記弾性層を形成した軸芯体を、前記成形金型から脱型する工程と、
(4)前記弾性層の外周面上に樹脂層を形成する工程と、
を有することを特徴とする弾性ロールの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の弾性ロールの製造方法により製造したことを特徴とする弾性ロール。
【請求項5】
前記弾性層は、付加反応架橋型シリコーンゴムを含有することを特徴とする請求項4に記載の弾性ロール。
【請求項6】
前記樹脂層は、ウレタン結合を有する樹脂を含有することを特徴とする請求項4又は5に記載の弾性ロール。
【請求項7】
前記弾性ロールが現像剤担持ロールであることを特徴とする請求項4から6の何れか1項に記載の弾性ロール。
【請求項8】
画像形成体と、
前記画像形成体に当接するように設けられた請求項7に記載の弾性ロールであって、前記弾性ロールの表面に形成した現像剤の薄層を前記画像形成体の表面に供給することにより、前記画像形成体上の静電潜像を現像する弾性ロールと、
を有する電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項9】
画像形成体と、
前記画像形成体に当接するように設けられた請求項7に記載の弾性ロールであって、前記弾性ロールの表面に形成した現像剤の薄層を前記画像形成体の表面に供給することにより、前記画像形成体上の静電潜像を現像する弾性ロールと、
前記画像形成体上の現像剤を記録材に転写する転写ロールと、
定着ロールと、前記定着ロールとニップ部を形成し前記ニップ部により前記記録材を圧接して搬送する加圧ロールと、
を有する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−260216(P2008−260216A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104888(P2007−104888)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】